特許拒絶査定不服審判
2023-005041
スルー流体接合連続繊維不織布ウェブ
- 審判番号
- 2023-005041
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-528456外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年03月28日
- 審決日
- 2025年03月06日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
- 【請求人代理人】宮嶋 学
- 【請求人代理人】出口 智也
- 【請求人代理人】村田 卓久
- 【請求人代理人】小島 一真
- 分類
- P18 .121-Z (A61F) / P18 .575-Z (A61F) / P18 .56 -Z (A61F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-528456「スルー流体接合連続繊維不織布ウェブ」拒絶査定不服審判事件〔令和2年6月4日国際公開、WO2020/112705、令和4年1月27日国内公表、特表2022-510597〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2019年(令和元年)11月26日(パリ条約による優先権主張2018年11月30日 US(米国))を国際出願日とする外国語特許出願であって、その主な手続の経緯は以下のとおりである。
令和4年 4月19日付け:拒絶理由の通知
令和4年10月 3日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年12月28日付け:拒絶査定(謄本送達日:令和5年1月6日)
令和5年 3月28日 :審判請求書と同時に手続補正書の提出
第2 令和5年3月28日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年3月28日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
【請求項1】
トップシートと、
バックシートと、
前記トップシートと前記バックシートとの間に少なくとも部分的に配置された吸収性コアと、
スルー流体接合不織布ウェブであって、前記不織布ウェブは複数の2成分連続繊維を含み、前記2成分連続繊維は第1のポリマー及び第2のポリマーを含み、前記第1のポリマーが第1の溶融温度を有し、前記第2のポリマーが第2の溶融温度を有し、前記第1の溶融温度は、前記第2の溶融温度とは少なくとも10℃異なるが、180℃未満である、スルー流体接合不織布ウェブと、を備え、
前記不織布ウェブは、
マーチンデール耐摩耗性等級試験による、1.0~2.5の範囲のマーチンデール平均耐摩耗性等級と、
DMA圧縮弾性試験による、25%~90%の範囲のDMA圧縮弾性率と、を有するものであり、
前記不織布ウェブは、基礎重量試験による、15gsm~30gsmの範囲の基礎重量を有するものであり、
前記吸収性物品は、おむつ、パンツ、又は大人用失禁物品であり、
前記吸収性物品は、前記バックシートの衣類対向面を被覆する外側カバー不織布材料を含み、前記外側カバー不織布材料は前記不織布ウェブを含む、
吸収性物品。
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和4年10月3日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の記載は次のとおりである(・・・は省略を示す。以下、請求項1に係る発明を「補正前発明1」などという。)。
【請求項1】
トップシートと、
バックシートと、
前記トップシートと前記バックシートとの間に少なくとも部分的に配置された吸収性コアと、
スルー流体接合不織布ウェブであって、前記不織布ウェブは複数の2成分連続繊維を含み、前記2成分連続繊維は第1のポリマー及び第2のポリマーを含み、前記第1のポリマーが第1の溶融温度を有し、前記第2のポリマーが第2の溶融温度を有し、前記第1の溶融温度は、前記第2の溶融温度とは少なくとも10℃異なるが、180℃未満である、スルー流体接合不織布ウェブと、を備え、
前記不織布ウェブは、
マーチンデール耐摩耗性等級試験による、1.0~2.5の範囲のマーチンデール平均耐摩耗性等級と、
DMA圧縮弾性試験による、25%~90%の範囲のDMA圧縮弾性率と、を有するものであり、
前記不織布ウェブは、基礎重量試験による、15gsm~30gsmの範囲の基礎重量を有する、
吸収性物品。
・・・
【請求項7】
前記吸収性物品は、おむつ、パンツ、又は大人用失禁物品である、請求項1~6のいずれか一項に記載の吸収性物品。
・・・
【請求項10】
前記吸収性物品は外側カバー不織布材料を含み、前記外側カバー不織布材料は前記不織布ウェブを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の吸収性物品。
・・・
2 補正の適否
上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「吸収性物品」について、上記1(1)のとおり補正前発明7及び10において発明特定事項であった「前記吸収性物品は、おむつ、パンツ、又は大人用失禁物品である」及び「前記吸収性物品は外側カバー不織布材料を含み、前記外側カバー不織布材料は前記不織布ウェブを含む」という限定を付加したものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であることから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用例の記載事項
ア 引用例1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された、本願優先日前に、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、米国特許出願公開第2017/0144405号明細書(2017年5月25日公表。以下「引用例1」という。)には、次の記載がある(丸括弧内は当審訳である。下線は当審で付した。・・・は省略を示す。以下同様。)。
[図:0001424927000001.jpg]
(本発明は、不織布、その製造方法、及び不織布を含む吸収性物品に関する。)
[図:0001424927000002.jpg]
[図:0001424927000003.jpg]
(表面平滑性、適切な量のクッション性及び望ましい嵩高性、及び/又は使用中の毛羽立ちの低減が改善された低コストの不織布は、引き続き必要である。触感、乾燥感と快適さが改善され及び/又は毛羽立ちが抑えられた吸収性物品も必要とされている。)
[図:0001424927000004.jpg]
(本発明は、トップシート、トップシートに結合するバックシートからなり、トップシートが本発明に係る不織布である、吸収性物品も提供する。)
[図:0001424927000005.jpg]
(本明細書において「吸収性物品」とは、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッド、陰唇間パッド、母乳パッド、汗取りシート、動物用排泄物処理物品、動物用おむつ等を含む。)
[図:0001424927000006.jpg]
(第1の芯鞘複合繊維)
[図:0001424927000007.jpg]
(本発明の第1の芯鞘複合繊維は、樹脂を含むコア成分及びコア成分の樹脂の融点よりも少なくとも約20℃低い融点を有する熱可塑性樹脂からなる鞘成分から構成されている。第1の芯鞘複合繊維は、約2.5デニール以下、又は約2.0デニール以下の繊度を有する。本発明による不織布は、理論に拘束されるものではないが、繊維の繊度が2.5デニールを超えると、不織布表面の平滑さは満足し得ないおそれがある。第1の芯鞘複合繊維は、好ましくは、約100mm未満の繊維長である。)
[図:0001424927000008.jpg]
[図:0001424927000009.jpg]
(第1の芯鞘複合繊維において、構成比、すなわち、芯成分/鞘成分の容積比は、好ましくは約80/20~約30/70、より好ましくは約70/30~約35/65、そしてさらに好ましくは約60/40~約40/60であるのが好ましい。理論に拘束されるものではないが、第1の芯鞘複合繊維において、芯成分は、主に、嵩高さ(初期厚さ)及び不織布の心地よい感触のような嵩回復性(圧縮し得る厚さ)特性に寄与することができ、鞘成分は、主として不織布の強度及び柔軟性に寄与することができる。この構成比は、約80/20~約30/70、好ましくは約70/30~約35/65、より好ましくは約60/40~約40/60であると、優れた不織布強度及び柔軟性並びに嵩回復特性を達成することができる。鞘成分の容積が大きくなると、得られる不織布の強度を向上させることができるが、その不織布は、より硬くなり、嵩高回復性が損なわれるおそれがある。一方、芯成分が過剰であると、結合点が不十分となることや不織布の強度が低下するおそれがあり、その結果、嵩回復特性に悪影響があり得る。)
[図:0001424927000010.jpg]
[図:0001424927000011.jpg]
(不織布の坪量は、不織布の用途に応じて適宜選択することができる。吸収性物品のトップシートとして用いた本発明の不織布では、この不織布の第1のウェブ層と第2のウェブ層の合計の坪量は、好ましくは約25g/m2~約70g/m2であり、より好ましくは約35g/m2~約65g/m2である。吸収性物品のトップシートとしてこの不織布を使用する場合、一実施形態では、不織布の坪量は約30g/m2~約70g/m2、好ましくは約35g/m2~約55g/m2の範囲である。)
[図:0001424927000012.jpg]
(第1ウェブ層と第2ウェブ層の坪量はそれぞれ、好ましくは約5g/m2~約50g/m2、より好ましくは約10g/m2~約40g/m2、及びさらに好ましくは約14g/m2~約35g/m2である。第1ウェブ層/第2ウェブ層の坪量の比は、好ましくは約80/20~約20/80、より好ましくは約60/40~約50/50である。第1ウェブ層の坪量が少なすぎる、及び/又は第2ウェブ層の坪量に対する第1ウェブ層の坪量の比が小さすぎると、第1ウェブ層表面における柔軟性及び平滑性が低下するおそれがある。第1ウェブ層の坪量が大きすぎる、及び/又は、第2ウェブ層の坪量に対する第1ウェブ層の坪量の比が大きすぎると、不織布の嵩高性とクッション性が低下するおそれがある。)
[図:0001424927000013.jpg]
(いくつかの実施形態では、試験方法の項で記載された毛羽立ちレベルの測定に従って測定したときに、この不織布は、3以下、又は2.5以下、又は2以下の毛羽立ち等級であり得る。)
[図:0001424927000014.jpg]
(不織布の製造工程)
[図:0001424927000015.jpg]
[図:0001424927000016.jpg]
(この不織布は次の各工程を経て製造することができる:約2.5以下の繊度である第1の芯鞘複合繊維からなる第1の繊維性ウェブの形成、約2.5以下の繊度である第2の芯鞘複合繊維と第2の繊維性ウェブ重量の30%未満で約3以下の繊度のホモポリマー繊維とで構成された第2の繊維性ウェブの形成、その第2の繊維性ウェブ上にその第1の繊維性ウェブを重ねることによる複合繊維ウェブの形成、及び、第1及び第2の芯鞘複合繊維の鞘部分を介して第1及び第2の芯鞘複合繊維の少なくとも一部で熱結合するためのその複合繊維ウェブの熱処理。)
[図:0001424927000017.jpg]
(第1繊維性ウェブ及び第2繊維性ウェブは、パラレルウェブ、セミランダムウェブ、ランダムウェブ、クロスウェブ、クリスクロスウェブなどのカードウェブや、エアレイドウェブ、ウェットレイドウェブ及びスパンボンドウェブなどであってもよい。第1及び第2繊維性ウェブは、同じであっても異なっていてもよい。)
[図:0001424927000018.jpg]
(複合繊維ウェブの熱処理は従来から公知の任意の熱処理方法を用いて行うことができる。好ましい処理方法の例として、貫通型高温空気熱処理装置、熱風熱処理装置、赤外線熱処理装置等の熱処理装置が挙げられる。これらの熱処理装置は、典型的には、繊維ウェブを支持し搬送する搬送支持体が設けられている。熱処理は、第1及び第2の芯鞘複合繊維の鞘成分が繊維の交絡点又は交差点で十分に溶融及び/又は軟化して接着するような、そして、第1及び第2の芯鞘複合繊維の捲縮が崩壊しないような熱処理条件で行うことができる。例えば、熱処理温度は、約120℃~約150℃、好ましくは約128℃~約145℃であってよい。)
[図:0001424927000019.jpg]
(不織布の用途)
[図:0001424927000020.jpg]
(本発明の不織布は、皮膚にソフトで滑らかな感触をもたらし、不織布の表面に押し付けられたときに嵩高で羽毛状の触感を有し、適度なクッション性及び嵩高回復性を有している。)
[図:0001424927000021.jpg]
(このように、本発明の不織布は、不織布が皮膚と接触する用途、特に、第1のウェブ層が皮膚との接触表面である用途に好適に用いることができる。例えば、本発明の不織布は、ヒト又はヒト以外の動物の皮膚に接触する製品や、乳児用使い捨ておむつ、成人用の使い捨ておむつ、生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッド、陰唇間パッド、母乳パッド、汗取りシート、動物用排泄物処理物品、動物用おむつ及びこれらに類する様々な吸収性物品、フェイスマスク、冷却/加熱パッド及びこれに類する化粧用/医療用パッチの基布、創傷表面保護シート、不織布包帯、痔用パッド、皮膚と直接接触する加温デバイス(例えば、使い捨てカイロ)、種々の動物用パッチの基布及びこれらに類する皮膚被覆シート、化粧落としシート、制汗シート、おしりふき及びこれに類するヒトに用いる拭き取りシート、動物に用いる拭き取りシートなどの用途に使用することができる。本発明の不織布は、好ましくは、第1のウェブ層の面が皮膚と接触する吸収性物品のトップシートとして使用される。)
[図:0001424927000022.jpg]
(吸収性物品)
[図:0001424927000023.jpg]
[図:0001424927000024.jpg]
(本発明による吸収性物品は、トップシート及びトップシートに接合したバックシートを含み、トップシートは本発明の不織布を含む。さらに、トップシートとバックシートとの間に配置される吸収性コアを含むことができる。)
[図:0001424927000025.jpg]
(トップシート)
[図:0001424927000026.jpg]
(トップシートは、体液を捕獲でき、及び/又は吸収性物品内でその流体を浸透させることができる。本発明による不織布である、第1のウェブ層は、好ましくは、皮膚と接触する側に配置されている。)
[図:0001424927000027.jpg]
(試験方法)
[図:0001424927000028.jpg]
(不織布の厚さの測定)
・・・
[図:0001424927000029.jpg]
[図:0001424927000030.jpg]
(2.0gfの荷重での厚さを試料の初期厚さT0(mm)と定義する。最大圧力での厚さを、定義された最大荷重でのステージとプランジャとの間の距離Tm(mm)と定義する。T0とTmの差であるT0-Tmを、圧縮厚さ(Tc)と定義する。)
・・・
[図:0001424927000031.jpg]
(毛羽立ちレベルの測定 (図1及び図2も参照))
[図:0001424927000032.jpg]
(第1面及び第2面を有する不織の毛羽立ちは、以下のように、マーチンデール摩耗(YG(B)401G、Wenzhou DaRong社)を用いて測定される。)
[図:0001424927000033.jpg]
[図:0001424927000034.jpg]
(イ)上記記載から、引用例1には、次の技術的事項が記載されている。
a 本発明は、不織布及びその不織布を含む吸収性物品に関し。吸収性物品は、乳児用使い捨ておむつや成人用の使い捨ておむつ、失禁パッドなどを含む(段落[0001]、[0015]、[0066])。
b 本発明の吸収性物品は、本発明の不織布を含むトップシート、トップシートに接合したバックシート及びトップシートとバックシートとの間に配置される吸収性コアを含む(段落[0068])。
c 本発明の不織布は、第1繊維性ウェブ及び第2繊維性ウェブが重ねられた複合繊維ウェブであり、この第1繊維性ウェブ及び第2繊維性ウェブは、スパンボンドウェブなどである(段落[0061]~[0062])。
d 本発明の第1の芯鞘複合繊維は、樹脂を含むコア成分及びコア成分の樹脂の融点よりも少なくとも約20℃低い融点を有する熱可塑性樹脂からなる鞘成分から構成されており、第1及び第2の芯鞘複合繊維の鞘成分が熱処理で、溶融及び/又は軟化して接着する。このときの熱処理条件は、例えば、約120℃~約150℃、好ましくは約128℃~約145℃である(段落[0020]~[0021]、[0063])。
e 毛羽立ちレベルの測定は、マーチンデール摩耗で測定され。この不織布は2以下の毛羽立ち等級であり得る(段落[0058]、[0090]~[0091]及び図1~2)。
f 本発明の不織布は適度なクッション性及び嵩高回復性を有している(段落[0065])。
g 不織布の坪量は、不織布の用途に応じて適宜選択することができるが、ウェブ層の坪量が少なすぎると、ウェブ層表面における柔軟性及び平滑性が低下するおそれがあり、ウェブ層の坪量が大きすぎると、不織布の嵩高性とクッション性が低下すおそれがある。本発明の不織布では、この不織布の第1のウェブ層と第2のウェブ層の合計の坪量は、好ましくは約25g/m2~約70g/m2である(段落[0053]~[0054])。
(ウ)これらのことから、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「不織布を含む吸収性物品であって、
前記吸収性物品は、
トップシート、
トップシートに接合したバックシート、
トップシートとバックシートとの間に配置される吸収性コアを含み、
前記不織布は、第1の芯鞘複合繊維からなる第1繊維性ウェブ及び第2の芯鞘複合繊維とホモポリマー繊維とで構成された第2繊維性ウェブが重ねられた複合繊維ウェブであり、
前記複合繊維ウェブは、貫流型高温空気熱処理装置で熱処理されたものであり、
この第1繊維性ウェブ及び第2繊維性ウェブは、スパンボンドウェブであり、
前記第1の芯鞘複合繊維は、樹脂を含むコア成分及びコア成分の樹脂の融点よりも少なくとも約20℃低い融点を有する熱可塑性樹脂からなる鞘成分から構成されており、前記第1の芯鞘複合繊維の鞘成分は、約120℃~約150℃で溶融及び/又は軟化するものであり、
前記不織布はマーチンデール摩耗で測定すると、2以下の毛羽立ち等級であり、
前記不織布は適度なクッション性及び嵩高回復性を有しており、
前記不織布の坪量は、約25g/m2~約70g/m2であり、
前記吸収性物品は、乳児用使い捨ておむつや成人用の使い捨ておむつ、失禁パッドである、
前記吸収性物品。」
イ 引用例2
本願優先日前に、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、米国特許出願公開第2004/0224136号明細書(2004年11月11日公表。以下「引用例2」という。)には、次の記載がある。
[図:0001424927000035.jpg]
[図:0001424927000036.jpg]
(この技術分野における上述のニーズに応えて、本発明は、特定の2成分で、実質的に連続的な、A/B構造、すなわち、一般的に横並び又は偏心の芯/鞘構造の構成であって嵩高で低密度不織ウェブを生成するための構造の熱可塑性繊維の自然な巻縮特性を利用できる。この部類の繊維形態は、それ自体は、この技術分野で公知であるが、本発明では、嵩高、低密度布に加工するのに適した前駆フィラメントを導き出す特別な加工パラメータが適用される。それらの繊維は、フィラメント形成後に適用される新規な技術により、嵩高、低密度布になるようにその際にひだをつくる。さらに、それらフィラメントが巻縮された後、結果として得られる嵩高、低密度布の安定性を確かなものとするための方法も開発された。)
[図:0001424927000037.jpg]
(ふわふわの低密度の積層体は、そのふわふわの低密度布に積層される材料の種類によって、例えば、ライナー、液体移送層、吸収性コア被覆、及び外側カバーの構成要素のような吸収性物品用途で、製造及び使用されることができる。それゆえ、その積層体は、そのふわふわの低密度布の利点を保ちつつ、衣類でのそれら意図された層に関し、通気性、流体バリア特性、1つ以上の軸方向での伸張性または弾性、またはそれらの組み合わせといった、適切な機能(当審注:“flnctionalities”は“functionalities”の誤記と認められる。)を付与されることができる。)
[図:0001424927000038.jpg]
(本発明の追加の態様によれば、強度を増すために接合された単層ウェブは、より低い強度の非結合ウェブでは使用されないかもしれない積層やそれ以外の加工を含む、他の加工により適切に機能させることができる。そのような積層体は、特に物品の外側カバーなどにおいて使用するための柔らかい布状感触を有する通気性の液体バリア層を得るのに用いることができる。さらに、着用者へのフィット感と適応性を向上するために、望ましい伸長性及び収縮性がある他の積層体が提供されてもよい。)
[図:0001424927000039.jpg]
(図2は、巻縮可能で2成分が横並びで実質的に連続している繊維を製造し、それらを拘束されない環境で巻縮させることにより、嵩高、低密度材料を製造するための本発明の典型的な方法及び装置を示す概略図である。図2に示されるように、2種類のポリマーA及びBは、2成分の横並び又はA/B構造のポリマー集合体23を形成するための既知の熱可塑性繊維紡糸装置21で紡糸される。そのポリマー集合体23は、次に、繊維24を形成するための繊維延伸ユニット(FDU)25を通される。本発明の一実施形態によれば、この技術分野における標準的な手法とは異なり、FDUは加熱されてなく、雰囲気温度(例えば、華氏65度)のままである。したがって、ポリマーは、ポリマー集合体を押し出すために加熱されるものとして認識される一方で、雰囲気温度のFDUで形成された実際の繊維は、堆積前に繊維に追加で加熱されることなく成形表面上に堆積される、ということが、ここで言及され、理解されるであろう。この繊維24は、実質的に連続状態のままであり、移動している成形用ワイヤ又は表面27上に堆積される。この繊維24の堆積は、負圧装置や下方のワイヤ排気口29でもたらされるワイヤ下の吸引により、補助される。)
[図:0001424927000040.jpg]
ウ 引用例3
本願優先日前に、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、米国特許出願公開第2017/0319401号明細書(2017年11月9日公表。以下「引用例3」という。)には、次の記載がある。
[図:0001424927000041.jpg]
(本発明は、複数の有益な物理的特性および性能特性をもたらすような方法で一体化されている吸収性コアの層を利用する吸収性構造に関するものである。吸収性コア構造は、おむつ、失禁用ブリーフ、トレーニングパンツ、おむつホルダー及びライナー、生理用衛生用品などの吸収性物品で有用である。)
[図:0001424927000042.jpg]
[図:0001424927000043.jpg]
[図:0001424927000044.jpg]
・・・
(表1に示すように、従来例1は市販製品であるオールウェイズのウルトラ、従来例2は製品であるオールウェイズのインフィニティ、発明3a、3b、3c、4a、4b及び4cは、不均一な塊状物の層を備えた不織布トップシートであり、発明3d及び4dは、不均一な塊状物の層を備えた2成分不織布トップシートである。・・・)
[図:0001424927000045.jpg]
[図:0001424927000046.jpg]
[図:0001424927000047.jpg]
(理論に拘束されるものではないが、圧縮回復も、消費者にとって重要であることが理解される。消費者は、皮膚に対して顕著な又は不快な圧力を作用させることなしにデリケートゾーンと接触したままの製品が欲しい。約10~20N・mmの間に最適な圧縮エネルギーがあることがわかった。20~50%の弾性率を有することも望ましい。さらに、以下の範囲内に収まる異なる圧縮率での力(N・mm)である圧縮プロファイルを有することが望ましい:
製品厚さの圧縮率(%) N/mmの最適な範囲
1~13 2.5~6
13~25 7~14
25~38 10~26
38~50 17~45)
[図:0001424927000048.jpg]
エ 周知技術
(ア)周知技術1
上記ウのとおり、引用例3の[0248]には、おむつなどの吸収性物品における望ましい弾性率として20~50%の数値範囲が記載されているほか、引用例3の表2Bでは、具体的に、40%や43%の弾性率の製品が記載されている。また、引用例3の表2Bには、従来製品の弾性率として77%や40%のものも記載されている。
そうすると、おむつなどの吸収性物品において「25%~90%の弾性率」に含まれるものは、従来から当業者にとっての周知のものであるから、以下の事項は周知技術(以下「周知技術1」という。)である。
「おむつなどの吸収性物品において、弾性率を25~90%の範囲とすること」
(イ)周知技術2
上記イのとおり、引用例2の[0007]には、吸収性物品の構成要素の例として「外側カバー」が記載されており、ここでの「外側カバー」は不織布の適用対象として例示されていることに鑑みると、以下の事項は従来から当業者にとって周知の技術的事項(以下「周知技術2」という。)である。
「外側カバーを備えた吸収性物品」
(3)対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「吸収性物品」、「トップシート」、「バックシート」及び「吸収性コア」はそれぞれ、本件補正発明の「吸収性物品」、「トップシート」、「バックシート」及び「吸収性コア」に相当するから、引用発明における「トップシート、トップシートに接合したバックシート、トップシートとバックシートとの間に配置される吸収性コアを含」む「吸収性物品」は、本件補正発明における「トップシートと、バックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に少なくとも部分的に配置された吸収性コアと、」を備える「吸収性物品」に相当する。
(イ)引用発明の「前記不織布は、・・・複合繊維ウェブであり、」「前記複合繊維ウェブは、貫流型高温空気熱処理装置で熱処理されたもの」である。
ここで、本件の明細書段落【0050】の「連続繊維は、・・・冷却されながら引き出され、連続繊維が中間連続繊維不織布ウェブを形成するように、移動多孔質ベルトなどの移動多孔質部材の上にランダムに敷設される。中間連続繊維不織布ウェブは、その後、例えば熱点ボンディング又はエアスルーボンディングなど、いくつかの既知の技術の1つを使用して接合されて、不織布ウェブを形成する。」という事項や段落【0053】の「中間連続繊維不織布ウェブ1200は、ウェブ1200が第1の位置1202の下流に移動する際に構造的一体性を提供するために、熱点接合ユニット1142又はスルー流体接合ユニットを通過してもよい。次いで、中間連続繊維不織布ウェブ1200は、移動多孔質部材1134又は他の搬送装置又はベルト上で、スルー流体接合炉1144内に搬送されてもよい。」という事項を踏まえると、本件補正発明での「スルー流体接合不織布ウェブ」における「スルー流体接合」とは、不織布生成時に絡み合う連続繊維を加熱して連続繊維を熱接合する手段として「スルー流体接合ユニット」や「スルー流体接合炉」を用いている事項を意味しているといえる。
そうすると、引用発明において「貫流型高温空気熱処理装置」(a hot air through-type thermal treatment apparatus)で熱処理されているウェブは、スルータイプで「高温空気」という流体による熱処理手段により接合されたウェブであって、「スルー流体接合」されたウェブといえるから、引用発明における「前記不織布」は、本件補正発明の「スルー流体接合不織布ウェブ」に相当する。
(ウ)引用発明の「この第1繊維性ウェブ及び第2繊維性ウェブは、スパンボンドウェブであ」るという事項における、「スパンボンドウェブ」は複数の連続繊維を用いた「ウェブ」であるから、引用発明において「第1繊維性ウェブ」を構成する「第1の芯鞘複合繊維」は連続繊維であるといえる。また、引用発明の「前記第1の芯鞘複合繊維」は「樹脂を含むコア成分」と「熱可塑性樹脂からなる鞘成分」という2つの成分からなるから、引用発明の「前記第1の芯鞘複合繊維」は、本件補正発明の「2成分連続繊維」に相当する。また、引用発明における「樹脂を含むコア成分」及び「熱可塑性樹脂からなる鞘成分」は、本件補正発明における「第1のポリマー及び第2のポリマー」に相当する。そうすると、引用発明における「前記不織布は、第1の芯鞘複合繊維からなる第1繊維性ウェブ及び・・・が重ねられた複合繊維ウェブであり、・・・この第1繊維性ウェブ及び第2繊維性ウェブは、スパンボンドウェブであ」るという事項は、本件補正発明における「前記不織布ウェブは複数の2成分連続繊維を含み、前記2成分連続繊維は第1のポリマー及び第2のポリマーを含」むという事項に相当する。
(エ)引用発明の「乳児用使い捨ておむつや成人用の使い捨ておむつ、失禁パッド」は少なくとも「おむつ」を含んでいるから、本件補正発明の「おむつ、パンツ、又は大人用失禁物品」という事項に相当する。
イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「トップシートと、
バックシートと、
前記トップシートと前記バックシートとの間に少なくとも部分的に配置された吸収性コアと、
スルー流体接合不織布ウェブであって、前記不織布ウェブは複数の2成分連続繊維を含み、前記2成分連続繊維は第1のポリマー及び第2のポリマーを含む、スルー流体接合不織布ウェブと、を備え、
吸収性物品は、おむつ、パンツ、又は大人用失禁物品である、
吸収性物品。」
<相違点1>
本件補正発明は、「前記第1のポリマーが第1の溶融温度を有し、前記第2のポリマーが第2の溶融温度を有し、前記第1の溶融温度は、前記第2の溶融温度とは少なくとも10℃異なるが、180℃未満である」のに対し、引用発明はそのようなものであるか明らかでない点。
<相違点2>
不織布ウェブに関し、本件補正発明は「マーチンデール耐摩耗性等級試験による、1.0~2.5の範囲のマーチンデール平均耐摩耗性等級」を有するのに対し、引用発明は「マーチンデール耐摩耗性等級試験」を行った場合にそのような事項を有するのかどうか明らかでない点。
<相違点3>
不織布ウェブに関し、本件補正発明は、「DMA圧縮弾性試験による、25%~90%の範囲のDMA圧縮弾性率」を有するのに対し、引用発明は「DMA圧縮弾性試験」を行った場合に「DMA圧縮弾性率」がどの程度であるか、明らかでない点。
<相違点4>
不織布ウェブに関し、本件補正発明は「15gsm~30gsm」の範囲の基礎重量を有するものであるのに対し、引用発明はそのような事項を有するのかどうか明らかでない点。
<相違点5>
本件補正発明は、「前記吸収性物品は、前記バックシートの衣類対向面を被覆する外側カバー不織布材料を含み、前記外側カバー不織布材料は前記不織布ウェブを含む」ものであるのに対し、引用発明は「外側カバー不織布材料」があるかどうか明らかでない点。
(4)判断
以下、相違点について検討する。
ア 相違点1について
引用発明の「前記第1の芯鞘複合繊維は、樹脂を含むコア成分及びコア成分の樹脂の融点よりも少なくとも約20℃低い融点を有する熱可塑性樹脂からなる鞘成分から構成され」、かつ「前記第1の芯鞘複合繊維の鞘成分は、約120℃~約150℃で溶融及び/又は軟化するもの」という事項から、引用発明の「前記第1の芯鞘複合繊維の鞘成分」は「溶融」するものを含んでいる。
ここで、「熱可塑性樹脂」の「溶融」温度は「軟化」温度よりも高いことを踏まえると、この「前記第1の芯鞘複合繊維の鞘成分」の「溶融」温度は、少なくとも「約150℃」以下であり、「コア成分の樹脂の融点」はそれより約20℃高い。
そうすると、引用発明における「前記第1の芯鞘複合繊維の鞘成分」の溶融温度は、約150℃以下であり、引用発明の「コア成分の樹脂」の「溶融温度」は約170℃以下となるから、引用発明における「鞘成分」と「コア成分」のいずれについても、その溶融温度は180℃未満となるし、この2つの成分の溶融温度は少なくとも10℃異なるという条件も満たす。
そして、引用発明の「前記第1の芯鞘複合繊維」において「コア成分の樹脂」及び「鞘成分」の「熱可塑性樹脂」は、本件補正発明における「第1のポリマー」及び「第2ポリマー」に相当するから、引用発明も、上記相違点1に係る本件補正発明の「前記第1のポリマーが第1の溶融温度を有し、前記第2のポリマーが第2の溶融温度を有し、前記第1の溶融温度は、前記第2の溶融温度とは少なくとも10℃異なるが、180℃未満である」という事項を有している。
してみると、上記相違点1は、表現による微差にすぎず、実質的な相違点ではない。
イ 相違点2について
一般的に、一定の課題を解決するための数値範囲の最適化又は好適化は、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。そして、「前記不織布はマーチンデール摩耗で測定すると、2以下の毛羽立ち等級であ」る引用発明は、マーチンデール平均耐摩耗性等級が2以下であって、その数値範囲が本件補正発明の数値範囲と一部重複するから、引用発明の吸収性物品の不織布ウェブについて最適化又は好適化を行う際に、上記相違点2の本件補正発明に係るマーチンデール平均耐摩耗性等級が1.0~2.5の数値範囲内のものは、当業者が容易に想到し得たものである。また、本件補正発明において、マーチンデール平均耐摩耗性等級が1.0~2.5であることに臨界的意義又は特異な効果はみられない。
そうすると、マーチンデール平均耐摩耗性等級が2以下である不織布を用いた引用発明を具現化するにあたり、マーチンデール平均耐摩耗性等級が1.0~2.5の数値範囲の不織布を採用して、相違点2に係る本件補正発明の事項を備えたものとすることは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎず、当業者が容易になし得た事項である。
ウ 相違点3について
「DMA圧縮弾性試験」とは、本件明細書の段落【0093】~【0101】を参酌するに、不織布の「弾性率(Resiliency)」を測定する試験であるといえる。
そして、「弾性率」は物性値であるから、引用発明も「弾性率」として、何らかの値を有しているといえる。ここで、吸収性物品の弾性率を「25%~90%の範囲」とすることは、上記(2)エ(ア)のとおり、周知技術1である。なお、本件明細書の段落【0087】における【表4】でも、本開示のサンプル1~8のみならず、関連技術1及び2を含むすべての例において、25%~90%の範囲に含まれるDMA圧縮弾性率を有している。
加えて、引用例1の[0007]、[0022]にあるように、引用発明は、適切なクッション性や望ましい嵩高性、嵩回復性を考慮した不織布である。
そうすると、「25%~90%の範囲のDMA圧縮弾性率」は、吸収性物品に用いられる不織布が通常有している弾性率である蓋然性が高く、また、そうでないとしても、「25%~90%の範囲」の弾性率は上記周知技術1にすぎないから、引用発明の不織布として「25%~90%の範囲のDMA圧縮弾性率」のものを用い、上記相違点3に係る本件補正発明の事項を備えることは、当業者が容易になし得た事項である。
エ 相違点4について
引用発明の「前記不織布の坪量」は本件補正発明の「前記不織布ウェブ」の「基礎重量」に相当する。そして、「基礎重量試験」とは「基礎重量」の測定手段であり、「基礎重量」の値を得るための試験にすぎない。また、引用発明の「g/m2」は本件補正発明の「gsm」を異なる表現としたものにすぎず、同じ単位である。そうすると、引用発明の「前記不織布の坪量は、約25g/m2~約70g/m2であ」るという事項は、本件補正発明の「前記不織布ウェブは、基礎重量試験による、15gsm~30gsmの範囲の基礎重量を有する」という事項と、その数値範囲が一部重複する。
一般的に、一定の課題を解決するための数値範囲の最適化又は好適化は、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。そして、引用発明の不織布の坪量は、本件補正発明の不織布の基礎重量(坪量)と一部範囲で重複し、また、引用例1の段落[0054]には、ウェブ層の坪量が少なすぎるとウェブ層表面における柔軟性及び平滑性が低下するおそれがあり、ウェブ層の坪量が大きすぎると不織布の嵩高性とクッション性が低下すると記載されているから、柔軟性及び平滑性や嵩高性及びクッション性を考慮した引用発明の不織布においても、それらを考慮して坪量を最適化し、15gsm~30gsmの数値範囲内とすることは当業者が容易に想到し得たものである。
また、本件補正発明において、基礎重量(坪量)を15gsm~30gsmの数値範囲とすることによる臨界的意義又は特異な効果はみられない。
そうすると、坪量が約25g/m2~約70g/m2である不織布を用いた引用発明を具現化するにあたり、15gsm~30gsmの数値範囲の不織布を採用して、相違点4に係る本件補正発明の事項を備えたものとすることは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎず、当業者が容易になし得た事項である。
オ 相違点5について
上記(2)エ(イ)のとおり、「外側カバー」のある「吸収性物品」は周知技術2である。そして、引用例2の[0007]に「ふわふわの低密度の積層体は、そのふわふわの低密度布に積層される材料の種類によって、例えば、ライナー、液体移送層、吸収性コア被覆、及び外側カバーの構成要素のような吸収性物品用途で、製造及び使用されることができる。」とあることからみて、「特定の2成分による偏心の芯/鞘構造の熱可塑繊維を利用した嵩高で低密度不織ウェブ」は、吸収性物品で用いられているあらゆる不織布として、採用し得る。
そうすると、引用発明の吸収性物品として、周知技術2である「外側カバー」を含む吸収性物品として、その「外側カバー」についても引用発明の「不織布ウェブ」を用いたものとすることで、上記相違点5に係る本件補正発明の事項を備えることは、当業者が容易になし得たものである。
カ 本件補正発明の効果について
上記相違点1~5を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術1~2から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
キ 請求人の主張について
(ア)請求人は審判請求書の【請求の理由】(3)(c)において「しかしながら、この引用文献1(特に、[0007]、[0021]、[0026]、[0050]、[0062]、[0063]、[0066]、[0087]、[0091])では、前記吸収性物品は、おむつ、パンツ、又は大人用失禁物品であり、前記吸収性物品は、前記バックシートの衣類対向面を被覆する外側カバー不織布材料を含み、前記外側カバー不織布材料は前記不織布ウェブを含むことについての記載および示唆すらされていない。」と主張する。
しかしながら、上記主張については、上記オのとおりである。
(イ)請求人は、令和5年7月14日に提出した上申書【上申の内容】(2)において「さらに、本件出願人は、本件出願人は(原文ママ)、前置報告書で指摘された点に関して、令和5年3月28日付けの手続き補正書に記載の特許請求の範囲に対して、以下の特許請求の範囲の補正の準備がある。」とし、本件補正発明の限定事項に「前記吸収性物品は、おむつ、パンツ、大人用失禁物品、生理用ナプキン又はライナであり、
前記吸収性物品は、前記バックシートの衣類対向面を被覆する外側カバー不織布材料を含み、前記外側カバー不織布材料は前記不織布ウェブを含むものであり、
前記トップシートは前記不織布ウェブを含む」という事項を追加する予定がある旨、述べている。
しかしながら、引用発明の「不織布ウェブ」は「トップシート」である。なお、上記オでの検討では、「外側カバー」がある吸収性物品であれば、「外側カバー」についても「不織布ウェブ」とすることが容易、とするものであるから、上記オでの検討は、引用発明のトップシートが「不織布ウェブ」であることを変更するものではない。
そうすると、上申書の「本願の補正予定の特許請求の範囲」の請求項1に係る発明についても、当業者が容易に想到し得たものである。
ク 小括
したがって、本件補正発明は、引用発明及び上記周知技術1~2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
上記のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反してなされたものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下するものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和5年3月28日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和4年10月3日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~14に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1(2)【請求項1】に記載のとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由
本願発明に対する原査定の拒絶の理由は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:米国特許出願公開第2017/0144405号明細書
3 引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項は、上記第2[理由]2(2)アに記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、上記第2[理由]2で検討した本件補正発明から、「前記吸収性物品は、おむつ、パンツ、又は大人用失禁物品であり、前記吸収性物品は、前記バックシートの衣類対向面を被覆する外側カバー不織布材料を含み、前記外側カバー不織布材料は前記不織布ウェブを含む」という限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明と引用発明とは、上記第2[理由]2(3)イに記載した一致点で一致し、相違点1~4で相違する。
しかしながら、相違点1~2及び相違点4は上記第2[理由]2(4)ア~イ及びエと同様の理由により、引用発明に基づいて当業者が容易になし得たものである。
また、相違点3も上記第2[理由]2(4)ウと同様の理由により、引用文献及び周知技術1に基づいて当業者が容易になし得たものである。
したがって、本願発明は、引用発明及び上記周知技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-005041