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特許拒絶査定不服審判

2023-011654

電子機器、電子機器の制御方法、及び電子機器の制御プログラム

審判番号
2023-011654
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-500760外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2023年07月11日
審決日
2024年10月17日
公報発行日
2025年01月31日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .561-WZ (G01S) / P18 .121-WZ (G01S)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第17条の2第3項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-500760「電子機器、電子機器の制御方法、及び電子機器の制御プログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 4月16日国際公開、WO2020/075689〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2019年(令和元年)10月7日(優先権主張 平成30年10月12日(以下、この日を「最先の優先日」という。)、平成31年3月20日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和4年 9月 1日付け:拒絶理由通知書(最初) 同年11月 1日 :意見書、手続補正書の提出 同年12月 8日付け:拒絶理由通知書(最後) 令和5年 2月 1日 :意見書、手続補正書の提出 同年 4月 3日付け:令和5年2月1日にされた手続補正についての補正の却下の決定 同日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) (同月11日 :原査定の謄本の送達) 同年 7月11日 :審判請求書、手続補正書の提出 令和6年 6月 7日付け:令和5年7月11日にされた手続補正についての補正の却下の決定 同日付け:拒絶理由通知書(最後) 同年 8月 6日 :意見書、手続補正書の提出 第2 令和6年8月6日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和6年8月6日にされた手続補正を却下する。 [補正の却下の決定の理由] 1 補正の内容 令和6年8月6日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてした補正であり、この補正により、次の(1)に示す本件補正前(令和4年11月1日にされた手続補正後をいう。)の請求項1は、後記の(2)に示す本件補正後の請求項1に補正された。下線は、補正箇所を示す。 (1) 本件補正前の請求項1 「【請求項1】 送信波を送信する送信アンテナと、 前記送信波が反射された反射波を受信する受信アンテナと、 前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて、前記送信波を反射する物体を検出し、 前記物体を検出する範囲を前記送信波のフレームごとに設定する制御部と、 を備え、 前記制御部は、 前記物体を検出する範囲を過去に測定された物体の位置に基づいて設定し、 前記送信波の位相を制御して前記送信波を所定の方向において強め合うビームフォーミングの方向を、第1の方向及び当該第1の方向に一次独立な第2の方向の2つの方向の組み合わせからなる方向に設定して、前記送信波を送信する、電子機器。」 (2) 本件補正後の請求項1 「【請求項1】 送信波を送信する送信アンテナと、 前記送信波が反射された反射波を受信する受信アンテナと、 前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて、前記送信波を反射する物体を検出し、 前記物体を検出する範囲を前記送信波のフレームごとに設定する制御部と、 を備え、 前記制御部は、 前記物体を検出する範囲を過去に測定された物体の位置に基づいて設定し、 前記送信波の位相を制御して前記送信波を所定の方向において強め合うビームフォーミングの方向を、第1の方向及び当該第1の方向に一次独立な第2の方向の2つの方向の組み合わせを含む方向に設定し、 前記第1の方向に離れた少なくとも2つのアンテナ及び前記第2の方向に離れた少なくとも2つのアンテナを用いて、距離範囲の設定、前記第1の方向への第1のビームフォーミングの設定、及び前記第2の方向への第2のビームフォーミングの設定を組み合わせて、前記送信波の送信を行う第1のモードと、 前記第1の方向に離れた少なくとも2つのアンテナを用いて、距離範囲の設定及び前記第1のビームフォーミングの設定を組み合わせて、前記送信波の送信を行う第2のモードと、 を切り替えて、前記送信波を送信する、電子機器。」 2 本件補正の適否(新規事項の追加の有無) 本件補正が、願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載された事項の範囲内においてしたものであるかについて以下検討する。 (1) 本件補正の内容 ア 本件補正後の請求項1の記載は、前記1(2)に示したとおりであるところ、本件補正により、 (ア) 本件補正前の「前記送信波の位相を制御して前記送信波を所定の方向において強め合うビームフォーミングの方向を、第1の方向及び当該第1の方向に一次独立な第2の方向の2つの方向の組み合わせからなる方向に設定して、前記送信波を送信する」の「2つの方向の組み合わせからなる方向」が、「2つの方向の組み合わせを含む方向」に補正されるとともに、 (イ) 本件補正前の「前記送信波を送信する」が、「前記第1の方向に離れた少なくとも2つのアンテナ及び前記第2の方向に離れた少なくとも2つのアンテナを用いて、距離範囲の設定、前記第1の方向への第1のビームフォーミングの設定、及び前記第2の方向への第2のビームフォーミングの設定を組み合わせて、前記送信波の送信を行う第1のモードと、前記第1の方向に離れた少なくとも2つのアンテナを用いて、距離範囲の設定及び前記第1のビームフォーミングの設定を組み合わせて、前記送信波の送信を行う第2のモードと、を切り替えて、前記送信波を送信する」に補正された。 イ 前記1に示した本件補正により、本件補正前の「前記送信波の位相を制御して前記送信波を所定の方向において強め合うビームフォーミングの方向を」「設定[する]」「制御部」が、「前記第1の方向に離れた少なくとも2つのアンテナ及び前記第2の方向に離れた少なくとも2つのアンテナを用いて、距離範囲の設定、前記第1の方向への第1のビームフォーミングの設定、及び前記第2の方向への第2のビームフォーミングの設定を組み合わせて、前記送信波の送信を行う第1のモードと、前記第1の方向に離れた少なくとも2つのアンテナを用いて、距離範囲の設定及び前記第1のビームフォーミングの設定を組み合わせて、前記送信波の送信を行う第2のモードと、を切り替えて、前記送信波を送信する」ものであることが追加された。 (2) 当初明細書等の記載 そこで以下、前記(1)イの第1のモードと第2のモードの切り替えに関して当初明細書等の記載を検討すると、当初明細書等には次のア及びイの記載がある(下線は当合議体が付した。)。 ア 【0068】 「【0068】 パラメータ設定部16は、送信波Tを反射波Rとして反射する物体を検出する送信信号及び受信信号を規定する各種のパラメータを設定する。すなわち、パラメータ設定部16は、送信アンテナ25から送信波Tを送信するための各種のパラメータ、及び受信アンテナ31から反射波Rを受信するための各種のパラメータを設定する。パラメータ設定部16は、チャープ信号の、スロープという時間に対する周波数の変化の値、及び/又は、サンプリングレートを設定するとしてよい。すなわち、パラメータ設定部16が設定するスロープにより、レーダの距離範囲が変わる。また、パラメータ設定部16が設定するサンプリングレートにより、距離精度(距離分解能)が変わる。また、パラメータ設定部16の設定により、近距離3次元センシングモードと2次元ビームフォーミングモードを切り替えることもできる。近距離3次元センシングモードは垂直方向に半波長離れたアンテナを切り替えることで、3次元のセンシングを可能にする。2次元ビームフォーミングモードは高速度検出が可能である。2次元ビームフォーミングモードは、ビームフォーミングを行うことで長距距離に飛ばすことができる。2次元ビームフォーミングモードは、ビームを絞ることで、周辺の余分な干渉を減らすことが可能である。また、パラメータ設定部16は、チャープ信号の出力、位相、振幅、周波数、周波数範囲などを制御するとしてもよい。」 イ 【0097】、【0098】、【図6】 「【0097】 ここで、2つの送信アンテナ25A及び25Bは、図6に示すように、それぞれ水平方向(X軸方向)に、送信波Tの波長をλとして、間隔λ/2だけ離間して配置されている。また、2つの送信アンテナ25A’及び25B’も、図6に示すように、それぞれ水平方向(X軸方向)に、送信波Tの波長をλとして、間隔λ/2だけ離間して配置されている。このように、複数の送信アンテナ25を水平方向に並べて配置して、送信波Tを複数の送信アンテナ25によって送信することで、電子機器1は、送信波Tのビームの向きを、水平方向にも変化させることができる。 【0098】 一方、図6に示すように、2つの送信アンテナ25A及び25A’は、それぞれ垂直方向(Z軸方向)に、送信波Tの波長をλとして、間隔λ/2だけ離間して配置されている。また、図6に示すように、2つの送信アンテナ25B及び25B’も、それぞれ垂直方向(Z軸方向)に、送信波Tの波長をλとして、間隔λ/2だけ離間して配置されている。このように、図6に示す配置においても、複数の送信アンテナ25を垂直方向に並べて配置して、送信波Tを複数の送信アンテナ25によって送信することで、電子機器1は、送信波Tのビームの向きを、垂直方向に変化させることができる。」 「【図6】 [図:0001418020000001.jpg] 」 (3) 新規事項の判断 ア 明示的な記載の有無 まず、当初明細書等には「制御部」が、「前記第1の方向に離れた少なくとも2つのアンテナ及び前記第2の方向に離れた少なくとも2つのアンテナを用いて、距離範囲の設定、前記第1の方向への第1のビームフォーミングの設定、及び前記第2の方向への第2のビームフォーミングの設定を組み合わせて、前記送信波の送信を行う第1のモードと、前記第1の方向に離れた少なくとも2つのアンテナを用いて、距離範囲の設定及び前記第1のビームフォーミングの設定を組み合わせて、前記送信波の送信を行う第2のモードと、を切り替えて、前記送信波を送信する」ことについて、明示的な記載はない。 イ 【0068】についての検討 (ア)a 次に、段落【0068】の記載について検討すると、段落【0068】には、「パラメータ設定部16が設定するスロープにより、レーダの距離範囲が変わる」ことと、「近距離3次元センシングモードと2次元ビームフォーミングモードを切り替える」ことが記載されている。そこで、「近距離3次元センシングモード」と「2次元ビームフォーミングモード」が、前記(1)イに示した事項でいう、いずれもビームフォーミングの設定を組み合わせて送信波の送信を行うモードである「第1のモード」と「第2のモード」に対応するものといえるかについて検討する。 b まず、「2次元ビームフォーミングモード」については、「ビームフォーミング」を行うモードであることが理解でき、「2次元」の方向は前記(1)イに示した事項でいう「第1の方向」及び「(第1の方向に一次独立な)第2の方向」と解されるから、「2次元ビームフォーミングモード」は前記(1)イに示した事項でいう「第1のモード」に対応するものと解される。 c 次に、「近距離3次元センシングモード」が「ビームフォーミング」を行うモードであるのかどうかは、その名称からは明らかではない。また、そもそも、「垂直方向に半波長離れたアンテナを切り替えることで3次元のセンシングを可能にする」「近距離3次元センシングモード」とはどのようなモードであるのか(垂直方向に半波長離れたアンテナを切り替えることで、なぜ3次元のセンシングが可能となるのか、「3次元センシング」においては水平方向に離れたアンテナを用いるのか用いないのか、など)、当初明細書等の他の記載を参酌しても具体的にどのようなモードであるのか理解できず、「近距離3次元センシングモード」が本願出願時の技術常識であるとも認められないから、技術常識に照らしても「近距離3次元センシングモード」が「ビームフォーミング」を行うモードであるとはいえない。かえって、段落【0068】の「2次元ビームフォーミングモードは、ビームフォーミングを行うことで長距距離(当合議体注:「長距離」の誤記)に飛ばすことができる。」という記載を踏まえると、近距離3次元センシングモードは、ビームフォーミングを行わないモードであるものと理解される。 d したがって、「近距離3次元センシングモード」は、前記(1)イに示した事項でいういずれもビームフォーミングの設定を組み合わせて送信波の送信を行うモードである「第1のモード」又は「第2のモード」のいずれに対応するものでもない。 (イ) そうすると、前記(1)イで示した、「前記第1の方向に離れた少なくとも2つのアンテナ及び前記第2の方向に離れた少なくとも2つのアンテナを用いて、距離範囲の設定、前記第1の方向への第1のビームフォーミングの設定、及び前記第2の方向への第2のビームフォーミングの設定を組み合わせて、前記送信波の送信を行う第1のモードと、前記第1の方向に離れた少なくとも2つのアンテナを用いて、距離範囲の設定及び前記第1のビームフォーミングの設定を組み合わせて、前記送信波の送信を行う第2のモードと、を切り替えて、前記送信波を送信する」ことは、段落【0068】には記載されていないし、段落【0068】の記載から自明であるとも認められない。 ウ 【0097】、【0098】、【図6】についての検討 (ア)a 段落【0097】、【0098】、【図6】には、複数の送信アンテナ25を水平方向に並べて配置すると、送信波Tのビームの向きを、水平方向に変化させることができ、複数の送信アンテナ25を垂直方向に並べて配置すると、送信波Tのビームの向きを、垂直方向に変化させることができることが記載されている。 b このように、段落【0097】、【0098】、【図6】には、送信波Tのビームの向きを水平方向及び垂直方向に変化させることが記載されており、ビームの向きを変更することは、ビームフォーミングのことであるから、段落【0097】、【0098】、【図6】には、「前記第1の方向に離れた少なくとも2つのアンテナ及び前記第2の方向に離れた少なくとも2つのアンテナを用いて、距離範囲の設定、前記第1の方向への第1のビームフォーミングの設定、及び前記第2の方向への第2のビームフォーミングの設定を組み合わせて、前記送信波の送信を行う第1のモード」について記載されているといえる(なお、【0097】、【0098】、【図6】においても距離範囲の設定を組み合わせて送信波の送信を行うことは、例えば前記イの【0068】の記載等からみて自明であると認められる。)。 (イ) しかしながら、「前記第1の方向に離れた少なくとも2つのアンテナを用いて、距離範囲の設定及び前記第1のビームフォーミングの設定を組み合わせて、前記送信波の送信を行う第2のモード」については、記載されているとはいえない。すなわち、当該「第2のモード」は、「前記第1の方向に離れた少なくとも2つのアンテナ及び前記第2の方向に離れた少なくとも2つのアンテナを用いて、距離範囲の設定、前記第1の方向への第1のビームフォーミングの設定、及び前記第2の方向への第2のビームフォーミングの設定を組み合わせて、前記送信波の送信を行う第1のモード」とは異なるモードであることを前提とすると、ビームの方向を水平方向のみに変化させるか、垂直方向のみに変化させるモードであると理解されるが、そのような構成は、段落【0097】、【0098】、【図6】には記載も示唆もされていないし、「第2のモード」が記載されていない以上、「第1のモード」と「第2のモード」を切り替えて送信波を送信することについても記載も示唆もされていない。 (ウ) したがって、前記(1)イに示した、「前記第1の方向に離れた少なくとも2つのアンテナ及び前記第2の方向に離れた少なくとも2つのアンテナを用いて、距離範囲の設定、前記第1の方向への第1のビームフォーミングの設定、及び前記第2の方向への第2のビームフォーミングの設定を組み合わせて、前記送信波の送信を行う第1のモードと、前記第1の方向に離れた少なくとも2つのアンテナを用いて、距離範囲の設定及び前記第1のビームフォーミングの設定を組み合わせて、前記送信波の送信を行う第2のモードと、を切り替えて、前記送信波を送信する」ことは、段落【0097】、【0098】、【図6】には記載されていないし、段落【0097】、【0098】、【図6】の記載から自明であるとも認められない。 エ 小括 (ア)a 前記ア~ウに示したとおり、前記(1)に示した本件補正後の請求項1に記載された事項は、当初明細書等に明示的な記載がなく、当初明細書等の段落【0068】、【0097】、【0098】、【図6】の箇所に実質的に記載されているともいえないし、当該箇所の記載から自明であるとも認められない。 b これに対し、請求人は、前記aで示した各段落等に本件補正に係る事項が記載されている旨主張するが、採用できない。 (イ) また、当初明細書等のその他の箇所にも、前記(1)イに示した事項について記載も示唆もされていない。 (ウ) したがって、本件補正により補正された前記(1)イの事項は、当初明細書等には記載がなく、当初明細書等の記載から自明でもないから、かかる事項を含む本件補正は、当初明細書等に記載された全ての事項を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。 (4) 本件補正の適否についてのまとめ 以上のとおり、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものであるとはいえないから、特許法17条の2第3項に規定する要件に違反するものであり、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。 よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明 本件補正は、前記第2に示したとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和4年11月1日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(前記第2の1(1)参照)により特定されるとおりのものである。 第4 当審拒絶理由の概要 当審において、本願発明に対する、令和6年6月7日付けで通知した拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)の概要は、次のとおりである。 (進歩性の欠如) 本願発明は、最先の優先日前に日本国内又は外国において発行された、下記引用文献に記載された発明に基づいて、最先の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献3.特開2016-114501号公報(周知技術を示す文献) 引用文献4.特開平8-248117号公報(主たる引用文献) 第5 各引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定 1 引用文献4に記載された事項と引用発明の認定 (1) 引用文献4に記載された事項 当審拒絶理由で引用された、前記引用文献4(特開平8-248117号公報)には、以下の事項が記載されている。(下線は当合議体が付したものであり、以下同様である。) ア 【0001】~【0003】 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、レーダ装置に関し、特に、フェーズドアレイアンテナを備えたレーダ装置に関する。 【0002】 【従来の技術】捜索と多目標追尾を同時に実施するフェーズドアレイアンテナを備えたレーダ装置は、例えば、特開平2-183191号公報に開示されている。この特開平2-183191号公報に開示されたレーダ装置は、フェーズドアレイアンテナが位相制御によりビーム幅を任意に設定可能であることを利用して、目標距離に応じて追尾時のビーム幅を制御することで、追尾精度の改善等を実現するというものである。 【0003】一般的に、このようなフェーズドアレイアンテナを備えたレーダ装置では、任意の方向にビームを形成することができるため、捜索ビームと追尾ビームの2種類のビームをそれぞれ別の方向へ照射している。捜索ビームは、ビーム走査方位やその仰角を順次変化させて所定の覆域をカバーするように照射し、目標を検知するために用いられる。また、追尾ビームは、捜索ビームにより検出された各目標に対して、捜索ビームが所定の覆域を走査する間に1回照射することにより、ビーム照射間隔を短くして追尾精度を向上させるために用いられる。」 イ 【0016】、【0017】、【図1】 「【0016】本実施例は、捕捉された追尾目標の情報に基づいて最適な追尾ビームの照射間隔を算出し、この算出された追尾ビーム照射間隔となるように、捜索ビーム照射のタイミング中に、必要に応じて追尾ビーム照射タイミングを割り込ませて捜索ビームと追尾ビームの走査順序を設定し、この走査順序にしたがって捜索ビームおよび追尾ビームを照射するというものである。 【0017】図1は、本実施例の構成を示すブロック図であり、フェーズドアレイアンテナ1からの受信RF信号を受信励振部2においてIF信号に変換し、信号処理部3において、入力されたIF信号に対して、例えば、目標に相当する信号の抽出などの目標検出処理等を施す。データ処理部4では、相関処理、予測処理および平滑処理等からなる航跡追尾処理が行われ、表示器5に追尾目標に相当するシンボルを表示する。一方、データ処理部4は、追尾目標の位置、速度および加速度等の計測情報を追尾制御部6に送信する。追尾制御部6では、送信された計測情報に基づいて、その追尾目標の追尾継続に必要な追尾データレートおよび脅威度に応じた追尾ビーム照射優先度を自動設定し送出する。この追尾データレートとは、同一目標に追尾ビームが照射される時間間隔を示し、また、追尾ビーム照射優先度とは、複数の追尾目標が存在する場合に、追尾ビームスロットを優先的に割り当てるべき順番を示す。例えば、速度や加速度の高い目標に対しては追尾データレートを高くし、また、速度や加速度が低い目標に対しては追尾データレートを低くする。また、敵機や未確認物体に対しては、追尾優先度を高くして、脅威度の低い民間機等よりも優先的に追尾ビームスロットを割り当てる。ビーム走査スケジューラ7では、追尾制御部6から追尾目標に対する追尾データレートおよび追尾ビーム照射優先度のデータを受け取り、所定の追尾データレートになるように、追尾ビームスロットを割り当てる。つまり、追尾ビームスロットを、捜索ビームスロットの並びの中に必要に応じて任意の場所に割り込ませる。ここで、同じスロットに、複数の追尾目標に対するそれぞれの追尾ビームスロットの割り込みが競合した場合には、追尾ビーム照射優先度の高い追尾目標への追尾ビームを照射するための追尾ビームスロットを割り当て、他方の追尾ビームスロットは、その前後のスロットに割り当てる。捜索ビームスロットには、予めビームの照射方向のデータが付与されており、また、追尾ビームスロットには、それらが、ビーム走査スケジューラ7で各追尾目標に割り当てられた時点で、その追尾目標へのビーム照射方向のデータが付与される。そして、ビーム走査スケジューラ7からは、ビーム照射方向のデータ等のビーム制御データがそれらが割り当てられたスロットの順序にしたがってアンテナ制御部8に送出される。アンテナ制御部8は、ビーム走査スケジューラ7からのビーム制御データに基づいて、所定の方向にビームを形成するためのフェーズドアレイアンテナ1を構成する各アンテナ素子の振幅位相制御データを作成し、それをフェーズドアレイアンテナ1に出力する。フェーズドアレイアンテナ1では、アンテナ制御部8からの振幅位相制御データと、受信励振部2からのパルスドRF信号により、所定の方向にビームを形成する。」 「【図1】 [図:0001418020000002.jpg] 」 ウ 【0018】、【図2】 「【0018】図2は、本実施例による目標追尾の一例を示す図であり、覆域9内において、フェーズドアレイアンテナ1が追尾ビーム10を形成している。低機動目標11は、直線飛行または低加速度旋回を行っているため、このような飛行条件にしたがって自動設定された低データレート追尾12が行われる。一方、高機動目標13に対しては、高機動飛行に応じて自動設定された高データレート追尾14が行われる。本実施例では、複数の追尾目標に対して、各目標の機動に応じて最適な追尾データレートで追尾処理を行うことができる。」 「【図2】 [図:0001418020000003.jpg] 」 (2) 引用発明の認定 ア 引用文献4の【0003】には、本願発明の「アンテナ」について、「一般的に、このようなフェーズドアレイアンテナを備えたレーダ装置では、任意の方向にビームを形成することができるため、捜索ビームと追尾ビームの2種類のビームをそれぞれ別の方向へ照射している。捜索ビームは、ビーム走査方位やその仰角を順次変化させて所定の覆域をカバーするように照射し、目標を検知するために用いられる。また、追尾ビームは、捜索ビームにより検出された各目標に対して、捜索ビームが所定の覆域を走査する間に1回照射することにより、ビーム照射間隔を短くして追尾精度を向上させるために用いられる。」と記載されているところ、当該記載から、フェーズドアレイアンテナ1のビーム照射方向は、ビーム走査方位やその仰角を順次変化させて所定の覆域をカバーするものであることが読み取れる。 イ 前記アを踏まえると、引用文献4には、実施例に係るフェーズドアレイアンテナを備えたレーダ装置について、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(引用発明の認定に用いた記載箇所を参考までに括弧内に付してある。)。 <引用発明> 「フェーズドアレイアンテナを備えたレーダ装置であって、(【0001】) フェーズドアレイアンテナ1からの受信RF信号を受信励振部2においてIF信号に変換し、信号処理部3において、入力されたIF信号に対して、目標に相当する信号の抽出などの目標検出処理を施し、(【0017】) データ処理部4は、追尾目標の位置、速度および加速度等の計測情報を追尾制御部6に送信し、追尾制御部6では、送信された計測情報に基づいて、その追尾目標の追尾継続に必要な追尾データレートおよび脅威度に応じた追尾ビーム照射優先度を自動設定し送出し、この追尾データレートとは、同一目標に追尾ビームが照射される時間間隔を示し、追尾ビーム照射優先度とは、複数の追尾目標が存在する場合に、追尾ビームスロットを優先的に割り当てるべき順番を示し、(【0017】) ビーム走査スケジューラ7では、追尾制御部6から追尾目標に対する追尾データレートおよび追尾ビーム照射優先度のデータを受け取り、所定の追尾データレートになるように、追尾ビームスロットを割り当て、つまり、追尾ビームスロットを、捜索ビームスロットの並びの中に必要に応じて任意の場所に割り込ませ、(【0017】) 捜索ビームスロットには、予めビームの照射方向のデータが付与されており、また、追尾ビームスロットには、それらが、ビーム走査スケジューラ7で各追尾目標に割り当てられた時点で、その追尾目標へのビーム照射方向のデータが付与され、(【0017】) ビーム走査スケジューラ7からは、ビーム照射方向のデータ等のビーム制御データがそれらが割り当てられたスロットの順序にしたがってアンテナ制御部8に送出され、アンテナ制御部8は、ビーム走査スケジューラ7からのビーム制御データに基づいて、所定の方向にビームを形成するためのフェーズドアレイアンテナ1を構成する各アンテナ素子の振幅位相制御データを作成し、それをフェーズドアレイアンテナ1に出力し、フェーズドアレイアンテナ1では、アンテナ制御部8からの振幅位相制御データと、受信励振部2からのパルスドRF信号により、所定の方向にビームを形成し、(【0017】) フェーズドアレイアンテナ1のビーム照射方向は、ビーム走査方位やその仰角を順次変化させて所定の覆域をカバーするものである、(前記アの認定事項) フェーズドアレイアンテナを備えたレーダ装置」 2 引用文献6に記載された事項と周知技術Aの認定 (1) 引用文献6に記載された事項 本審決において新たに引用する、最先の優先日前に発行された文献である特開2015-84576号公報(以下「引用文献6」という。)には、以下の事項が記載されている。 「【0031】 <第1の実施の形態> 本実施の形態にかかる無線通信システムは、ビームフォーミングのための指向性制御アンテナを有する送受信機400及び500を含む。送受信機400及び500が有する指向性制御アンテナの指向性制御機構は特に限定されない。例えば、送受信機400及び500が有する指向性制御アンテナは、フェーズドアレイアンテナ、セクタ切替アンテナ、又は機械式可動アンテナとしてもよい。 【0032】 図2に、指向性制御アンテナとしてフェーズドアレイアンテナを有する送受信機400の構成の一例を示す(動作の説明に不要な回路を除く)。M個の送信放射素子、N個の受信放射素子、それぞれがアンテナアレイを構成する。送信機401には、送信回路403があり、外部からデータが入力される。送信回路403の出力はM分岐され、アンテナ設定回路404に入力される。フェーズドアレイアンテナの場合、アンテナ設定回路404は、AWV(アレイ重みベクトル)制御回路404-1~Mから構成される。ここで各々の信号は、その振幅および位相もしくは何れか一方が変えられ、最終的には放射素子405-1~Mからなる送信アンテナアレイを通して出力される。AWV制御回路404-1~Mは、例えばアナログ移相器と可変利得増幅器の直列接続により実現でき、この場合には信号の振幅及び位相の双方が連続的に制御される。またAWV制御回路404-1~Mをデジタル移相器で実現した場合には、信号の位相のみが離散的に制御されることになる。」 「【0099】 <その他の実施の形態> 第1~5の実施の形態の記述においては、送受信機400及び500が、それぞれ送信アンテナ(405-1~M、又は505-1~K)と受信アンテナ(411-1~N、又は511-1~L)を両方具備する場合について述べた。しかしながら、送受信機400及び500の各々は、送信及び受信で兼用される1つの共用アンテナを有してもよい。」 (2) 周知技術Aの認定 前記引用文献6に例示されているように、次の事項は周知技術であると認められる(以下「周知技術A」という)。 <周知技術A> 「フェーズドアレイアンテナにおいて、送信アンテナと受信アンテナを、異なるアンテナとしたり、同じアンテナで兼用したりすること。」 3 引用文献3に記載された事項と周知技術Bの認定 (1) 引用文献3に記載された事項 当審拒絶理由に引用された、前記引用文献3(特開2016-114501号公報)には、以下の事項が記載されている。 「【技術分野】 【0001】 この発明は、レーダ装置に適用され、周波数変調した連続信号を生成するレーダ用信号波源に関するものである。 【背景技術】 【0002】 周波数変調した連続信号(例えばチャープ信号)であるFMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)信号を用いたレーダ装置では、FMCW信号を送信信号として送信し、この信号が対象物において反射され、これを受信信号として受信する。そして、その受信信号と受信時に送信されている送信信号との時間差から、対象物との距離、相対速度等を求めることができる。」 (2) 周知技術Bの認定 前記引用文献3に例示されているように、次の事項は周知技術であると認められる(以下「周知技術B」という)。 <周知技術B> 「レーダ装置の分野において、FMCW信号を送信信号として送信し、この信号が対象物において反射され、これを受信信号として受信して、その受信信号と受信時に送信されている送信信号との時間差から、対象物との距離、相対速度等を求めること。」 第6 対比 1 対比分析 (1) 引用発明においては、「フェーズドアレイアンテナ1」は、「所定の方向にビームを形成する」ものであり、引用発明の「ビーム」は本願発明の「送信波」に相当するから、引用発明の「フェーズドアレイアンテナ1」と、本願発明の「送信波を送信する送信アンテナ」は、「送信波を送信する」「アンテナ」である点において共通する。 (2)ア 引用発明においては、「フェーズドアレイアンテナ1からの受信RF信号を受信励振部2においてIF信号に変換[する]」ところ、レーダ装置においては一般に、受信信号は、目標物において送信波が反射された反射波を受信したアンテナから出力される信号であるから、引用発明の「フェーズドアレイアンテナ1」が本願発明でいう「前記送信波が反射された反射波」を受信していることは明らかである。 イ 前記アを踏まえると、引用発明の「フェーズドアレイアンテナ1」と、本願発明の「前記送信波が反射された反射波を受信する受信アンテナ」は、「前記送信波が反射された反射波を受信する」「アンテナ」である点において共通する。 (3)ア 引用発明の「受信励振部2」、「信号処理部3」、「データ処理部4」、「追尾制御部6」、「ビーム走査スケジューラ7」及び「アンテナ制御部8」は、いずれも本願発明の「制御部」に相当する。 イ(ア) 引用発明の「信号処理部3」は、「フェーズドアレイアンテナ1からの受信RF信号を受信励振部2において」変換した「IF信号」に対して、「目標に相当する信号の抽出などの目標検出処理を施し」ているものであるところ、前記(2)も踏まえると、引用発明の「受信RF信号」は本願発明の「前記反射波として受信される受信信号」に相当する。 (イ) したがって、前記アも踏まえると、引用発明の「信号処理部3」と本願発明の「前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて、前記送信波を反射する物体を検出[する]」「制御部」は、「前記反射波として受信される受信信号に基づいて、前記送信波を反射する物体を検出[する]」「制御部」である点において共通する。 ウ(ア) 引用発明においては、「ビーム走査スケジューラ7」が、「追尾ビームスロットを、捜索ビームスロットの並びの中に」「割り込ませ」ているものであるところ、「捜索ビームスロットには、予めビームの照射方向のデータが付与されており、また、追尾ビームスロットには、それらが、ビーム走査スケジューラ7で各追尾目標に割り当てられた時点で、その追尾目標へのビーム照射方向のデータが付与され」ているものであるから、ビーム走査スケジューラ7において、捜索ビームスロット及び追尾ビームスロットにビーム照射方向のデータを付与していると理解される。 (イ) 前記(ア)を踏まえると、引用発明の「スロット」は、本願発明の「フレーム」に相当し、引用発明は、その「ビーム照射方向」における所定の範囲においてビームが照射されるものであることは技術常識に照らして自明のことであり、当該所定の範囲内の物体が検出されることになるから、当該所定の範囲が本願発明の「物体を検出する範囲」に相当する。 (ウ) したがって、前記アも踏まえると、引用発明の捜索ビームスロット及び追尾ビームスロットにビーム照射方向のデータを付与する「ビーム走査スケジューラ7」(前記(ア))は、本願発明の「前記物体を検出する範囲を前記送信波のフレームごとに設定する制御部」に相当する。 エ 前記ア~ウを踏まえると、引用発明の「信号処理部3」及び「ビーム走査スケジューラ7」と本願発明の「前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて、前記送信波を反射する物体を検出し、前記物体を検出する範囲を前記送信波のフレームごとに設定する制御部」は、「前記反射波として受信される受信信号に基づいて、前記送信波を反射する物体を検出し、前記物体を検出する範囲を前記送信波のフレームごとに設定する制御部」である点において共通する。 (4)ア 引用発明の「追尾目標の位置」は、データ処理部4から追尾制御部6に送信された計測情報であるところ、この計測情報は過去に測定されたものであることは明らかであるから、本願発明の「過去に測定された物体の位置」に相当する。 イ 引用発明は、「データ処理部4は、追尾目標の位置、速度および加速度等の計測情報などを追尾制御部6に送信し、追尾制御部6では、送信された計測情報に基づいて、その追尾目標の追尾継続に必要な追尾データレートおよび脅威度に応じた追尾ビーム照射優先度を自動設定」することから、追尾データレートは、「追尾目標の位置」に基づいて設定されている。 ウ 引用発明は、「ビーム走査スケジューラ7では、追尾制御部6から追尾目標に対する追尾データレートおよび追尾ビーム照射優先度のデータを受け取り、所定の追尾データレートになるように、追尾ビームスロットを割り当て、つまり、追尾ビームスロットを、捜索ビームスロットの並びの中に必要に応じて任意の場所に割り込ませ[る]」ものであるから、前記イも踏まえると、引用発明は、「追尾目標の位置」に基づいて、各スロットに捜索ビームスロットと追尾ビームスロットのいずれかが割り当てられるものであるといえる。 エ 引用発明は、「捜索ビームスロットには、予めビームの照射方向のデータが付与されており、また、追尾ビームスロットには、それらが、ビーム走査スケジューラ7で各追尾目標に割り当てられた時点で、その追尾目標へのビーム照射方向のデータが付与され[る]」ところ、前記ウも踏まえると、各スロットへのビーム照射方向のデータは、「追尾目標の位置」に基づいて付与されているといえる。 オ ここで、本願発明の「前記制御部は、前記物体を検出する範囲を過去に測定された物体の位置に基づいて設定[する]」における、「前記物体を検出する範囲」は、「前記送信波のフレームごとに設定」されたものである。そうすると、前記ア並びに(3)ア及びウ(イ)も踏まえると、本願発明と引用発明は、「前記制御部は、前記物体を検出する範囲を過去に測定された物体の位置に基づいて設定[する]」点で一致する。 (5) 引用発明は、「アンテナ制御部8からの振幅位相制御データと、受信励振部2からのパルスドRF信号により、所定の方向にビームを形成し、フェーズドアレイアンテナ1のビーム照射方向は、ビーム走査方位やその仰角を順次変化させて所定の覆域をカバーするものである」ところ、当該「ビーム走査方位やその仰角を順次変化させて所定の覆域をカバーする」ものである「ビ―ム照射方向」は、本願発明の「第1の方向及び当該第1の方向に一次独立な第2の方向の2つの方向の組み合わせからなる方向」に相当するから、本願発明と引用発明は、「前記送信波の位相を制御して前記送信波を所定の方向において強め合うビームフォーミングの方向を、第1の方向及び当該第1の方向に一次独立な第2の方向の2つの方向の組み合わせからなる方向に設定して、前記送信波を送信する」点で一致する。 (6) 引用発明の「フェーズドアレイアンテナを備えたレーダ装置」は、本願発明の「電子機器」に相当する。 2 一致点及び相違点 前記1を踏まえると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。 (1) 一致点 送信波を送信するアンテナと、 前記送信波が反射された反射波を受信するアンテナと、 前記反射波として受信される受信信号に基づいて、前記送信波を反射する物体を検出し、 前記物体を検出する範囲を前記送信波のフレームごとに設定する制御部と、 を備え、 前記制御部は、 前記物体を検出する範囲を過去に測定された物体の位置に基づいて設定し、 前記送信波の位相を制御して前記送信波を所定の方向において強め合うビームフォーミングの方向を、第1の方向及び当該第1の方向に一次独立な第2の方向の2つの方向の組み合わせからなる方向に設定して、前記送信波を送信する、電子機器、である点。 (2) 相違点 ア 相違点1 本願発明においては、 「送信波を送信するアンテナ」が「送信アンテナ」であり、「前記送信波が反射された反射波を受信するアンテナ」が「受信アンテナ」であり、それぞれのアンテナが異なるアンテナであるのに対して、 引用発明においては、 両アンテナが、同じ「フェーズドアレイアンテナ1」である点。 イ 相違点2 送信波を反射する物体の検出が、 本願発明においては、 「前記送信波として送信される送信信号及び前記反射波として受信される受信信号に基づいて」行われているのに対して、 引用発明においては、 フェーズドアレイアンテナ1からの受信RF信号を、受信励振部2において変換したIF信号、すなわち、受信信号に基づいて行われているが、送信信号及び受信信号の両方に基づいて行われているか不明な点。 第7 当審の判断 1 相違点1について 前記相違点1について検討する。 記第5の2(2)において周知技術Aとして示したとおり、フェーズドアレイアンテナにおいて、送信アンテナと受信アンテナを、異なるアンテナとしたり、同じアンテナで兼用したりすることはいずれも周知であるから、引用発明において、前記周知技術Aを適用し、本願発明の前記相違点1に係る構成とすることは、当業者が適宜になし得る設計事項にすぎない。 2 相違点2について 前記相違点2について検討する。 (1) 前記第5の3(2)において周知技術Bとして示したとおり、次の事項は周知技術である。 「レーダ装置の分野において、FMCW信号を送信信号として送信し、この信号が対象物において反射され、これを受信信号として受信して、その受信信号と受信時に送信されている送信信号との時間差から、対象物との距離、相対速度等を求めること。」 (2) 引用発明は、追尾目標の位置を計測しているところ、当該位置がビーム照射方向と対象物との距離から求まることは明らかであるから、引用発明において、対象物との距離を求めるために上記周知技術Bを適用し、本願発明の前記相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 3 小括 前記1及び2の検討結果を踏まえると、引用発明において、前記相違点1及び相違点2に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 そして、本願発明の作用効果としては、本願発明の構成が奏するものとして、当業者が予測困難であり、格別顕著なものとは、認めることができない。 以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明並びに周知技術A及びBに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 請求人の主張について (1) 請求人の主張の内容 請求人は令和6年8月6日付け意見書において、本件補正後の請求項1に係る発明は、「前記第1の方向に離れた少なくとも2つのアンテナ及び前記第2の方向に離れた少なくとも2つのアンテナを用いて、距離範囲の設定、前記第1の方向への第1のビームフォーミングの設定、及び前記第2の方向への第2のビームフォーミングの設定を組み合わせて、前記送信波の送信を行う第1のモードと、前記第1の方向に離れた少なくとも2つのアンテナを用いて、距離範囲の設定及び前記第1のビームフォーミングの設定を組み合わせて、前記送信波の送信を行う第2のモードと、を切り替え」るという構成を含むものであるが、いずれの引用文献も前記構成を開示も示唆もしていない旨、本件補正後の請求項1に係る発明は、前記構成に起因して、垂直方向も距離範囲とし得る第1のモードと第2のモードとを切り替えることにより、適切な物体検出を行うことができるという独自の効果を奏する旨を主張している。 (2) 請求人の主張についての検討 請求人の前記主張は、本件補正により補正された構成に基づく主張であるところ、本件補正は、前記第2に示したとおり却下されたので、当該主張は、請求項の記載に基づくものではない。 したがって、前記主張は採用できない。 第8 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-011654

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