特許拒絶査定不服審判
2023-017328
検出装置および検出位置算出装置
- 審判番号
- 2023-017328
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-013542
- 請求日
- 2023年10月12日
- 審決日
- 2025年03月12日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】いすゞ自動車株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人鷲田国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 中塚 直樹
- 審判官 貝沼 憲司
- 審判官 濱野 隆
- 分類
- P18 .561-Z (G01S) / P18 .575-Z (G01S) / P18 .113-Z (G01S) / P18 .121-Z (G01S)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第5項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-13542号「検出装置および検出位置算出装置」拒絶査定不服審判事件〔令和3年8月19日出願公開、特開2021-120624号〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和2年1月30日の特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和5年 3月 6日付け:拒絶理由通知書
同年 5月10日 :意見書、手続補正書の提出
同年 7月28日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同年 8月 8日 :原査定の謄本の送達)
同年10月12日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和5年10月12日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年10月12日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の内容
令和5年10月12日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、次の(1)に示す本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載を、後記の(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正することを含むものである。下線は補正箇所を示す。
(1) 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
車両前部に配置されたキャブの一対の側部のうち一方の側部の前部近傍に配置され、車両前方を向いた検出面の正面に拡がる検出範囲に存在する対象物を検出する前方検出部と、
前記キャブの一方の側部の後部近傍に配置され、車両側方を向いた検出面の正面に拡がる検出範囲に存在する対象物を検出する側方検出部と
を備え、
前記側方検出部は、検出範囲が前記車両の一方の側部に沿って前記一方の側部の後部を検出範囲に含むまで、前記車両の中心軸に対して検出面を車両後方へ向けるように傾斜角度を設定して配置され、
前記前方検出部は、前記側方検出部と検出範囲が重なるように、前記車両の中心軸に直交する直交線に対して検出面を一方の側部側へ向けるように傾斜角度を設定して配置される検出装置。」
(2) 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
車両前部に配置されたキャブの一対の側部のうち一方の側部の前部近傍に配置され、車両前方を向いた検出面の正面に拡がる検出範囲に存在する対象物を検出する一方の前方検出部と、
前記キャブの他方の側部の前部近傍に配置され、車両前方を向いた検出面の正面に拡がる検出範囲に存在する対象物を検出する他方の前方検出部と、
前記キャブの一方の側部の後部近傍に配置され、車両側方を向いた検出面の正面に拡がる検出範囲に存在する対象物を検出する一方の側方検出部と、
前記キャブの他方の側部の後部近傍に配置され、車両側方を向いた検出面の正面に拡がる検出範囲に存在する対象物を検出する他方の側方検出部と
を備え、
前記一方の側方検出部は、検出範囲が前記車両の一方の側部に沿って前記一方の側部の後部を検出範囲に含むまで、前記車両の中心軸に対して検出面を車両後方へ向けるように傾斜角度を設定して配置され、
前記他方の前方検出部は、前記一方の側方検出部と検出範囲が重なるように、前記車両の中心軸に直交する直交線に対して検出面を一方の側部側へ向けるように傾斜角度を設定して配置され、
前記他方の側部は、運転席側に位置し、
前記他方の前方検出部および前記他方の側方検出部は、前記他方の前方検出部の検出範囲と前記他方の側方検出部の検出範囲との間に形成される第1空白領域の頂点のうち前記他方の前方検出部および前記他方の側方検出部から車両側方に離れた一頂点が前記他方の前方検出部と前記他方の側方検出部との間の中央部に対して車両前方に位置し、且つ、前記一方の前方検出部の検出範囲と前記一方の側方検出部の検出範囲との間に形成される第2空白領域の面積が前記第1空白領域の面積と比較して大きくなるように、前記一方の前方検出部および前記一方の側方検出部と傾斜角度を変えて配置される検出装置。」
2 本件補正についての当審の判断
本件補正後の請求項1の記載は、以下の発明特定事項(以下「発明特定事項A」という。)を含むところ、以下に詳述するとおり、発明特定事項Aを追加する補正はいわゆる新規事項を追加するものであるから、本件補正は特許法17条の2第3項の規定に違反するものである。なお、下線は審判合議体が付したものである。以下、同様とする。
<発明特定事項A>
「前記他方の側部は、運転席側に位置し、
前記他方の前方検出部および前記他方の側方検出部は、前記他方の前方検出部の検出範囲と前記他方の側方検出部の検出範囲との間に形成される第1空白領域の頂点のうち前記他方の前方検出部および前記他方の側方検出部から車両側方に離れた一頂点が前記他方の前方検出部と前記他方の側方検出部との間の中央部に対して車両前方に位置し、且つ、前記一方の前方検出部の検出範囲と前記一方の側方検出部の検出範囲との間に形成される第2空白領域の面積が前記第1空白領域の面積と比較して大きくなるように、前記一方の前方検出部および前記一方の側方検出部と傾斜角度を変えて配置されること」
(1) 当初明細書等の記載について
上記発明特定事項Aには、「前記他方の前方検出部の検出範囲と前記他方の側方検出部の検出範囲との間に形成される第1空白領域」の面積と「前記一方の前方検出部の検出範囲と前記一方の側方検出部の検出範囲との間に形成される第2空白領域」の面積を比較して、後者が前者よりも大きくなるように、他方の前方検出部及び他方の側方検出部が、一方の前方検出部及び一方の側方検出部と傾斜角度を変えて配置されることが含まれている。
この点に関して、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)には以下の記載がある。
「【0043】
(実施の形態2)
以下、本開示の実施の形態2について説明する。ここでは、上記の実施の形態1との相違点を中心に説明し、上記の実施の形態1との共通点については、共通の参照符号を使用して、その詳細な説明を省略する。
【0044】
上記の実施の形態1では、前方検出部7および側方検出部9と前方検出部8および側方検出部10とは、ほぼ同じ大きさの検出領域D1およびD2と検出領域D3およびD4を形成するように傾斜して配置された。しかしながら、前方検出部7および8は、直交線L2に対して検出面7aおよび8aを左側部側および右側部側へそれぞれ向けるように傾斜して配置され、側方検出部9および10は、中心軸L1に対して検出面9aおよび10aを車両後方へ向けるように傾斜して配置されていればよく、これに限られるものではない。
例えば、図2に示すように、実施の形態1の前方検出部8に換えて前方検出部21を配置することができる。」
「【図2】
[図:0001421953000001.jpg]
」
「【0045】
前方検出部21は、実施の形態1の前方検出部8と同様に、車両前方を向いた平らな検出面21aを有し、この検出面21aからミリ波を送受信して、検出面21aの正面に拡がる検出範囲D3に存在する対象物を検出する。前方検出部21は、車幅方向に幅広な板形状を有し、直交線L2に対して検出面21aを右側部側へ向けるように傾斜して配置されている。
【0046】
ここで、前方検出部21は、前方検出部7と比べて、直交線L2に対して小さな傾斜角度で配置されている。すなわち、前方検出部21は、前方検出部7と比べて検出面21aがより前方を向くように配置されている。
【0047】
これにより、前方検出部21の検出範囲D3と側方検出部10の検出範囲D4との間には、前方検出部7の検出範囲D1と側方検出部9の検出範囲D2との間に形成される空白領域B1より大きな空白領域B2が形成されることになる。すなわち、前方検出部21および側方検出部10は、空白領域B1の面積と比較して、空白領域B2の面積が大きくなるように傾斜して配置されている。
【0048】
このような構成により、前方検出部7および21と側方検出部9および10とからミリ波を送受信して、車両の周囲に存在する対象物を検出する。
ここで、前方検出部21および側方検出部10は、空白領域B2が大きくなるのに従って、空白領域B3を小さくするように傾斜角度を変えて配置されている。このため、車両前方に存在する対象物を前方検出部7および21でより確実に検出することができる。このとき、空白領域B2は、運転席1aが設けられたキャブ1の右側方に形成されており、空白領域B1と比較して、運転席1aから良好に視認することができる。すなわち、運転席1aからの視認性が高い空白領域B2を大きく形成する一方、空白領域B3を小さく形成する。これにより、車両の右側方における対象物の検出精度を維持しつつ車両前方における対象物の検出精度を向上させることができる。
【0049】
なお、本実施の形態では、前方検出部21が、前方検出部7と比べて、直交線L2に対して小さな傾斜角度となるように配置されたが、運転席1a側に形成される空白領域B2の面積が空白領域B1の面積と比較して大きくなるように前方検出部21および側方検出部10を傾斜して配置することができればよく、これに限られるものではない。すなわち、前方検出部21および側方検出部10は、空白領域B2を大きく形成するのに従って対象物の検出精度を向上するように傾斜角度を変えることができる。これにより、車両の右側方における対象物の検出精度を維持しつつ車両前方における対象物の検出精度を向上させることができる。
【0050】
本実施の形態によれば、前方検出部21および側方検出部10が、空白領域B1の面積と比較して、空白領域B2の面積が大きくなるように傾斜して配置されるため、車両の右側方における対象物の検出精度を維持しつつ車両前方における対象物の検出精度を向上させることができる。」
(2) 新規事項の追加の有無の検討
ア 「他方の前方検出部の検出範囲と他方の側方検出部の検出範囲との間に形成される第1空白領域の面積」について
(ア) 「他方の側部」の認定
本件補正後の請求項1においては、「前記他方の側部は、運転席側に位置し」との特定があるから、「車両前部に配置されたキャブの一対の側部のうち」「他方の側部」は「運転席側」に位置する側部であると認められる。
(イ) 「他方の前方検出部」と「他方の側方検出部」の配置
前記(ア)を踏まえると、「キャブの他方の側部の前部近傍に配置され」た「他方の前方検出部」及び「キャブの他方の側部の後部近傍に配置され」た「他方の側方検出部」は、いずれも運転席側の側部近傍に配置されたものであると認められる。
(ウ) 「他方の前方検出部」と「他方の側方検出部」の検出範囲
当初明細書等の【0049】の「運転席1a側」という記載を踏まえつつ、【図2】に示された「1a」の位置を参照すると、運転席1a側の側部近傍に配置された「他方の前方検出部」及び「他方の側方検出部」は、それぞれ前方検出部21及び側方検出部10が対応している。
そうすると、「他方の前方検出部の検出範囲」は、前方検出部21の検出範囲D3が対応し、「他方の側方検出部の検出範囲」は、側方検出部10の検出範囲D4が対応することになる。
(エ) 「第1空白領域の面積」
前記(ウ)を踏まえると、「他方の前方検出部の検出範囲と他方の側方検出部の検出範囲との間に形成される第1空白領域」は、前方検出部21の検出範囲D3と、側方検出部10の検出範囲D4が重ならない領域を意味するから、空白領域B2が対応することになり、「第1空白領域の面積」は、空白領域B2の面積が対応することになる。
イ 「一方の前方検出部の検出範囲と一方の側方検出部の検出範囲との間に形成される第2空白領域の面積」について
前記ア(ア)を踏まえると、「車両前部に配置されたキャブの一対の側部のうち」「一方の側部」は、「運転席側」ではなく、助手席側に位置する側部であると認められるから、「キャブの一方の側部の前部近傍に配置され」た「一方の前方検出部」及び「キャブの一方の側部の後部近傍に配置され」た「一方の側方検出部」は、いずれも助手席側の側部近傍に配置されたものであり、それぞれ【図2】の前方検出部7及び側方検出部9が対応している。
そうすると、「一方の前方検出部の検出範囲」及び「一方の側方検出部の検出範囲」は、それぞれ【図2】の前方検出部7の検出範囲D1及び側方検出部9の検出範囲D2が対応することになる。
したがって、「一方の前方検出部の検出範囲と一方の側方検出部の検出範囲との間に形成される第2空白領域」は、前方検出部7の検出範囲D1と、側方検出部9の検出範囲D2が重ならない領域を意味するから、【図2】の空白領域B1が対応し、「第2空白領域の面積」は、空白領域B1の面積が対応することになる。
ウ 「第1空白領域」と「第2空白領域」の面積の大小関係について
(ア) 発明特定事項Aが規定する空白面積の大小関係
発明特定事項Aは、「第2空白領域の面積」が「第1空白領域の面積」よりも大きくなるように、他方の前方検出部及び他方の側方検出部が、一方の前方検出部及び一方の側方検出部と傾斜角度を変えて配置されることを含むものであるところ、前記ア及びイの検討結果を踏まえて、【図2】に示された内容と対応づけると、これは、助手席側の空白領域B1の面積が、運転席側の空白領域B2の面積よりも大きくなるように、前方検出部21及び側方検出部10が、前方検出部7及び側方検出部9と傾斜角度を変えて配置されることを意味する。
すなわち、発明特定事項Aは以下の関係式1が満たされるような検出部の配置を規定している。
<関係式1>
(助手席側の空白領域B1の面積)>(運転席側の空白領域B2の面積)
(イ) 当初明細書等に開示された空白面積の大小関係
当初明細書等の【0047】には「これにより、前方検出部21の検出範囲D3と側方検出部10の検出範囲D4との間には、前方検出部7の検出範囲D1と側方検出部9の検出範囲D2との間に形成される空白領域B1より大きな空白領域B2が形成されることになる。すなわち、前方検出部21および側方検出部10は、空白領域B1の面積と比較して、空白領域B2の面積が大きくなるように傾斜して配置されている。」と記載されているから、以下の関係式2が満たされるような検出部の配置が開示されている。
<関係式2>
(助手席側の空白領域B1の面積)<(運転席側の空白領域B2の面積)
この点に関し、【図2】に示された空白領域B1及び空白領域B2の面積をみると、確かにB1よりもB2の方が大きい面積であることが読み取れるから、【図2】に示された内容は、上記【0047】の記載と整合する。
「【図2】
[図:0001421953000002.jpg]
」
(ウ) 空白面積の大小関係を設定することの技術上の意義
a 空白領域の面積の大小関係については、当初明細書等の【0048】に次の記載がある。
「【0048】
このような構成により、前方検出部7および21と側方検出部9および10とからミリ波を送受信して、車両の周囲に存在する対象物を検出する。
ここで、前方検出部21および側方検出部10は、空白領域B2が大きくなるのに従って、空白領域B3を小さくするように傾斜角度を変えて配置されている。このため、車両前方に存在する対象物を前方検出部7および21でより確実に検出することができる。このとき、空白領域B2は、運転席1aが設けられたキャブ1の右側方に形成されており、空白領域B1と比較して、運転席1aから良好に視認することができる。すなわち、運転席1aからの視認性が高い空白領域B2を大きく形成する一方、空白領域B3を小さく形成する。これにより、車両の右側方における対象物の検出精度を維持しつつ車両前方における対象物の検出精度を向上させることができる。」
b 上記記載を踏まえると、「第1空白領域」(B2)と「第2空白領域」(B1)の面積の大小関係が関係式2を満たすことの技術上の意義は、空白領域B2が運転席1aから良好に視認できるため、空白領域B2を大きくしても運転席からみて死角となる領域が増加することはなく、その分だけ前方の空白領域B3を小さくできるという点にあると認められる。
(エ) 発明特定事項A
前記(ア)の関係式1は、前記(イ)の関係式2の不等号を逆にした大小関係を規定しているから、関係式1は前記(ウ)に示した技術上の意義を導くものではなく、むしろ助手席側の空白領域B1を大きくして運転席からみて死角となる領域を増加させてしまうという新たな技術上の意義(不都合)を導くことになる。
そうすると、関係式1が満たされるような検出部の配置を規定している発明特定事項Aを追加する本件補正は、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであるとはいえない。
(3) 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、発明特定事項Aを追加する補正が、例えば、当初明細書等の【0039】、【0043】~【0050】、【図2】、【請求項7】に基づくものであると主張しているが(なお、審判請求書では「…旧請求項6に基づき、…補正したものです。」と記載されているが、旧請求項6及び旧請求項7の記載内容からみて、当該記載は「…旧請求項7に基づき、…補正したものです。」の誤記と認められる。)、これらの記載を見ても、関係式1が満たされるような検出部の配置とすることは開示されていないから、請求人の主張を採用することはできない。
(4) 小括
以上検討のとおり、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、特許法17条の2第3項の規定に違反しているから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
したがって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
3 独立特許要件についての当審の判断
前記2において検討したように、本件補正は当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない。
また、ここで仮に、本件補正の発明特定事項Aにおける「且つ、前記一方の前方検出部の検出範囲と前記一方の側方検出部の検出範囲との間に形成される第2空白領域の面積が前記第1空白領域の面積と比較して大きくなるように、」なる記載は「且つ、前記一方の前方検出部の検出範囲と前記一方の側方検出部の検出範囲との間に形成される第2空白領域の面積が前記第1空白領域の面積と比較して小さくなるように、」の誤記であって、前述した空白領域の面積の大小関係に関する関係式1は正しくは関係式2であると善解したとしても、以下に詳述するとおり、本件補正後における請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)は、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものであるとの結論に変わりはない。
(1) 本件補正の目的
ア 仮に本件補正が当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるとすれば、本件補正のうち請求項1の補正は、補正前の「前方検出部」及び「側方検出部」をそれぞれ「一方の前方検出部」及び「一方の側方検出部」とするとともに、「車両前部に配置されたキャブの一対の側部」に「一方の側部」と「他方の側部」があることを限定して、補正前の「検出装置」が、「前記キャブの他方の側部の前部近傍に配置され、車両前方を向いた検出面の正面に拡がる検出範囲に存在する対象物を検出する他方の前方検出部」及び「前記キャブの他方の側部の後部近傍に配置され、車両側方を向いた検出面の正面に拡がる検出範囲に存在する対象物を検出する他方の側方検出部」を備えると限定することを含むものである。
イ また、本件補正のうち請求項1の補正は、前述のように善解した発明特定事項Aを限定することを含むものである。
ウ そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
エ よって、本件補正のうち請求項1についての補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
(2) 本件補正発明
本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるものである。
ここで、検討の便宜上、本件補正発明の構成を次のように構成Xと構成A1から構成F2までに分説する。分説するにあたり、適宜改行を加えて表記した。
なお、構成Dの「前記他方の前方検出部は、前記一方の側方検出部と検出範囲が重なるように」は、本願の明細書及び図面の記載からみて、「前記一方の前方検出部は、前記一方の側方検出部と検出範囲が重なるように」の誤記であると思われるため、当該誤記を正した上で認定した。
また、構成F2の「第2空白領域の面積が前記第1空白領域の面積と比較して大きくなるように」は、「第2空白領域の面積が前記第1空白領域の面積と比較して小さくなるように」の誤記であると善解して認定した。
<本件補正発明>
(構成A1) 車両前部に配置されたキャブの一対の側部のうち一方の側部の前部近傍に配置され、車両前方を向いた検出面の正面に拡がる検出範囲に存在する対象物を検出する一方の前方検出部と、
(構成A2) 前記キャブの他方の側部の前部近傍に配置され、車両前方を向いた検出面の正面に拡がる検出範囲に存在する対象物を検出する他方の前方検出部と、
(構成B1) 前記キャブの一方の側部の後部近傍に配置され、車両側方を向いた検出面の正面に拡がる検出範囲に存在する対象物を検出する一方の側方検出部と、
(構成B2) 前記キャブの他方の側部の後部近傍に配置され、車両側方を向いた検出面の正面に拡がる検出範囲に存在する対象物を検出する他方の側方検出部と
を備え、
(構成C) 前記一方の側方検出部は、検出範囲が前記車両の一方の側部に沿って前記一方の側部の後部を検出範囲に含むまで、前記車両の中心軸に対して検出面を車両後方へ向けるように傾斜角度を設定して配置され、
(構成D) 前記一方の前方検出部は、前記一方の側方検出部と検出範囲が重なるように、前記車両の中心軸に直交する直交線に対して検出面を一方の側部側へ向けるように傾斜角度を設定して配置され、
(構成E) 前記他方の側部は、運転席側に位置し、
(構成F1) 前記他方の前方検出部および前記他方の側方検出部は、前記他方の前方検出部の検出範囲と前記他方の側方検出部の検出範囲との間に形成される第1空白領域の頂点のうち前記他方の前方検出部および前記他方の側方検出部から車両側方に離れた一頂点が前記他方の前方検出部と前記他方の側方検出部との間の中央部に対して車両前方に位置し、
(構成F2) 且つ、前記一方の前方検出部の検出範囲と前記一方の側方検出部の検出範囲との間に形成される第2空白領域の面積が前記第1空白領域の面積と比較して小さくなるように、前記一方の前方検出部および前記一方の側方検出部と傾斜角度を変えて配置される
(構成X) 検出装置。
(3) 引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定
ア 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶理由において引用され、本願の出願前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、
“ギガ ブラインドスポットモニター(BSM)”,YouTube [online][video],2019年12月26日,いすゞ自動車公式チャンネル[official],インターネット
<URL:https://www.youtube.com/watch?v=MU54H7X1qqk>
(以下「引用文献1」という。)
には、上記URLに係るYouTubeの動画を視聴することにより、次の(ア)~(オ)に示す画像が記録されていると認められる。
なお、例えば、(ア)の見出しに「0:02/0:35の画像」とあるのは、当該動画の再生時間が全体で35秒あり、再生開始から2秒経過した時点における動画を静止画としてキャプチャした画像であることを示す。以下同様である。
(ア) 0:02/0:35の画像
[図:0001421953000003.jpg]
(イ) 0:06/0:35の画像
[図:0001421953000004.jpg]
(ウ) 0:09/0:35の画像
[図:0001421953000005.jpg]
(エ) 0:18/0:35の画像
[図:0001421953000006.jpg]
(オ) 0:19/0:35の画像
[図:0001421953000007.jpg]
イ 引用文献1の記載事項から認定した事項
(ア) 前記ア(ア)~(オ)の各画像の左下に「2019/12/26」という記載があることを踏まえると、引用文献1に係る動画は、2019年12月26日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったと認められる。
(イ) 前記ア(ア)~(オ)の画像の中央下には、それぞれ次の記載がある。
a 「ブラインドスポットモニター」(前記ア(ア)の画像)
b 「ドライバーの死角に潜む危険を、4箇所のミリ波レーダーで検知。」(前記ア(イ)の画像)
c 「右折左折時の巻き込み事故を抑制します。」(前記ア(ウ)の画像)
d 「また、左右後方から接近する車両を検知し、安全な車線変更をサポート。」(前記ア(エ)及び(オ)の画像)
以上を踏まえると、引用文献1に係る動画は、ドライバーの死角に潜む危険を4箇所のミリ波レーダーで検知するブラインドスポットモニターであって、右折左折時の巻き込み事故を抑制し、また、左右後方から接近する車両を検知し、安全な車線変更をサポートするブラインドスポットモニターを開示するものであると認められる。
(ウ) 前記ア(イ)の画像は、走行中のトラックが交差点に差し掛かった状態にあるとき当該トラックを上から見た画像であると認められるところ、前記(イ)bの記載を踏まえると、4つのミリ波レーダーの扇形状の検出範囲が一部重なり合うことにより、ブラインドスポットモニターの監視領域として、トラックの周囲に円形状の領域が設定されていると認められる。
(エ) 前記ア(オ)の画像に示されたバックミラー等の配置から、トラックの運転席は、トラックの進行方向に向かって、トラックの進行方向に沿った中心線から右側にあり、助手席はトラックの進行方向に沿った中心線から左側にあると認められる。
(オ) 前記ア(ウ)及び(エ)の画像に示されたミリ波レーダーの配置とその扇形状の検出範囲から、ブラインドスポットモニターが備える4つのミリ波レーダーは、以下のレーダー1~レーダー4であると認められる。
参考図1~参考図4は審判合議体が作成したものである。
<レーダー1>
トラックのキャビンの側部のうち、助手席側の側部の前部近傍に配置され、トラックの前方を向いた検出面の正面に拡がる検出範囲に存在する対象物を検出する助手席側の前方検出用ミリ波レーダー1
[参考図1]
[図:0001421953000008.jpg]
<レーダー2>
トラックのキャビンの側部のうち、運転席側の側部の前部近傍に配置され、トラックの前方を向いた検出面の正面に拡がる検出範囲に存在する対象物を検出する運転席側の前方検出用ミリ波レーダー2
[参考図2]
[図:0001421953000009.jpg]
<レーダー3>
トラックのキャビンの側部のうち、助手席側の側部の後部近傍に配置され、トラックの側方を向いた検出面の正面に拡がる検出範囲に存在する対象物を検出する助手席側の側方検出用ミリ波レーダー3
[参考図3]
[図:0001421953000010.jpg]
<レーダー4>
トラックのキャビンの側部のうち、運転席側の側部の後部近傍に配置され、トラックの側方を向いた検出面の正面に拡がる検出範囲に存在する対象物を検出する運転席側の側方検出用ミリ波レーダー4
[参考図4]
[図:0001421953000011.jpg]
(カ) 前記ア(イ)、(エ)の画像から、レーダー1~レーダー4の配置については以下のとおりであると認められる。
(参考図1~参考図4も参照。)
<レーダー1の配置>
助手席側の前方検出用ミリ波レーダー1は、助手席側の側方検出用ミリ波レーダー3と検出範囲が重なるように配置されていること。
<レーダー2の配置>
運転席側の前方検出用ミリ波レーダー2は、運転席側の側方検出用ミリ波レーダー4と検出範囲が重なるように配置されていること。
<レーダー3の配置>
助手席側の側方検出用ミリ波レーダー3は、検出範囲がトラックの助手席側の側部に沿って前記助手席側の側部の後部を検出範囲に含むように配置されていること。
<レーダー4の配置>
運転席側の側方検出用ミリ波レーダー4は、検出範囲がトラックの運転席側の側部に沿って前記運転席側の側部の後部を検出範囲に含むように配置されていること。
(キ) 前記ア(イ)、(エ)の画像から、レーダー1~レーダー4の検出範囲の関係については以下のとおりであると認められる。
(参考図1~4に基づいて審判合議体が作成した以下の参考図5も参照。)
<レーダー2とレーダー4の検出範囲の関係>
運転席側の前方検出用ミリ波レーダー2の検出範囲と運転席側の側方検出用ミリ波レーダー4の検出範囲との間には、空白領域Aが形成されること。
<レーダー1とレーダー3の検出範囲の関係>
助手席側の前方検出用ミリ波レーダー1の検出範囲と助手席側の側方検出用ミリ波レーダー3の検出範囲との間には、空白領域Bが形成されること。
[参考図5]
[図:0001421953000012.jpg]
ウ 引用発明の認定
前記イにおいて認定した事項を総合すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明>
「ドライバーの死角に潜む危険を4箇所のミリ波レーダーで検知するブラインドスポットモニターであって、(認定事項(イ))
4つのミリ波レーダーの扇形状の検出範囲が一部重なり合うことにより、ブラインドスポットモニターの監視領域として、トラックの周囲に円形状の領域が設定されており、(認定事項(ウ))
トラックの運転席は、トラックの進行方向に向かって、トラックの進行方向に沿った中心線から右側にあり、助手席はトラックの進行方向に沿った中心線から左側にあり、(認定事項(エ))
ブラインドスポットモニターが備える4つのミリ波レーダーは、以下のレーダー1~レーダー4であり、(認定事項(オ))
<レーダー1>
トラックのキャビンの側部のうち、助手席側の側部の前部近傍に配置され、トラックの前方を向いた検出面の正面に拡がる検出範囲に存在する対象物を検出する助手席側の前方検出用ミリ波レーダー1
<レーダー2>
トラックのキャビンの側部のうち、運転席側の側部の前部近傍に配置され、トラックの前方を向いた検出面の正面に拡がる検出範囲に存在する対象物を検出する運転席側の前方検出用ミリ波レーダー2
<レーダー3>
トラックのキャビンの側部のうち、助手席側の側部の後部近傍に配置され、トラックの側方を向いた検出面の正面に拡がる検出範囲に存在する対象物を検出する助手席側の側方検出用ミリ波レーダー3
<レーダー4>
トラックのキャビンの側部のうち、運転席側の側部の後部近傍に配置され、トラックの側方を向いた検出面の正面に拡がる検出範囲に存在する対象物を検出する運転席側の側方検出用ミリ波レーダー4
レーダー1~レーダー4の配置については、以下のとおりであり、(認定事項(カ))
<レーダー1の配置>
助手席側の前方検出用ミリ波レーダー1は、助手席側の側方検出用ミリ波レーダー3と検出範囲が重なるように配置されていること。
<レーダー2の配置>
運転席側の前方検出用ミリ波レーダー2は、運転席側の側方検出用ミリ波レーダー4と検出範囲が重なるように配置されていること。
<レーダー3の配置>
助手席側の側方検出用ミリ波レーダー3は、検出範囲がトラックの助手席側の側部に沿って前記助手席側の側部の後部を検出範囲に含むように配置されていること。
<レーダー4の配置>
運転席側の側方検出用ミリ波レーダー4は、検出範囲がトラックの運転席側の側部に沿って前記運転席側の側部の後部を検出範囲に含むように配置されていること。
レーダー1~レーダー4の検出範囲の関係については、以下のとおりであり、(認定事項(キ))
<レーダー2とレーダー4の検出範囲の関係>
運転席側の前方検出用ミリ波レーダー2の検出範囲と運転席側の側方検出用ミリ波レーダー4の検出範囲との間には、空白領域Aが形成されること。
<レーダー1とレーダー3の検出範囲の関係>
助手席側の前方検出用ミリ波レーダー1の検出範囲と助手席側の側方検出用ミリ波レーダー3の検出範囲との間には、空白領域Bが形成されること。
右折左折時の巻き込み事故を抑制し、また、左右後方から接近する車両を検知し、安全な車線変更をサポートするブラインドスポットモニター。(認定事項(イ))」
(4) 対比・判断
ア 対比
(ア) 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
a 構成Xの観点
引用発明の「ブラインドスポットモニター」は、「ドライバーの死角に潜む危険を4箇所のミリ波レーダーで検知する」ものであるから、本件補正発明の「検出装置」に相当する。
したがって、本件補正発明と引用発明は、「検出装置」の発明である点において一致する。
b 構成A1の観点
(a) 引用発明の「トラックのキャビンの側部のうち、助手席側の側部」は、本件補正発明の「車両前部に配置されたキャブの一対の側部のうち一方の側部」に相当する。
(b) そうすると、引用発明の「トラックのキャビンの側部のうち、助手席側の側部の前部近傍に配置され、トラックの前方を向いた検出面の正面に拡がる検出範囲に存在する対象物を検出する助手席側の前方検出用ミリ波レーダー1」は、本件補正発明の「車両前部に配置されたキャブの一対の側部のうち一方の側部の前部近傍に配置され、車両前方を向いた検出面の正面に拡がる検出範囲に存在する対象物を検出する一方の前方検出部」に相当する。
(c) したがって、本件補正発明と引用発明は、「車両前部に配置されたキャブの一対の側部のうち一方の側部の前部近傍に配置され、車両前方を向いた検出面の正面に拡がる検出範囲に存在する対象物を検出する一方の前方検出部」を備える点において一致する。
c 構成A2の観点
(a) 引用発明の「トラックのキャビンの側部のうち、運転席側の側部」は、本件補正発明の「車両前部に配置されたキャブの一対の側部のうち他方の側部」に相当する。
(b) そうすると、引用発明の「トラックのキャビンの側部のうち、運転席側の側部の前部近傍に配置され、トラックの前方を向いた検出面の正面に拡がる検出範囲に存在する対象物を検出する運転席側の前方検出用ミリ波レーダー2」は、本件補正発明の「前記キャブの他方の側部の前部近傍に配置され、車両前方を向いた検出面の正面に拡がる検出範囲に存在する対象物を検出する他方の前方検出部」に相当する。
(c) したがって、本件補正発明と引用発明は、「前記キャブの他方の側部の前部近傍に配置され、車両前方を向いた検出面の正面に拡がる検出範囲に存在する対象物を検出する他方の前方検出部」を備える点において一致する。
d 構成B1の観点
前記b(a)を踏まえると、引用発明の「トラックのキャビンの側部のうち、助手席側の側部の後部近傍に配置され、トラックの側方を向いた検出面の正面に拡がる検出範囲に存在する対象物を検出する助手席側の側方検出用ミリ波レーダー3」は、本件補正発明の「前記キャブの一方の側部の後部近傍に配置され、車両側方を向いた検出面の正面に拡がる検出範囲に存在する対象物を検出する一方の側方検出部」に相当する。
したがって、本件補正発明と引用発明は、「前記キャブの一方の側部の後部近傍に配置され、車両側方を向いた検出面の正面に拡がる検出範囲に存在する対象物を検出する一方の側方検出部」を備える点において一致する。
e 構成B2の観点
前記c(a)を踏まえると、引用発明の「トラックのキャビンの側部のうち、運転席側の側部の後部近傍に配置され、トラックの側方を向いた検出面の正面に拡がる検出範囲に存在する対象物を検出する運転席側の側方検出用ミリ波レーダー4」は、本件補正発明の「前記キャブの他方の側部の後部近傍に配置され、車両側方を向いた検出面の正面に拡がる検出範囲に存在する対象物を検出する他方の側方検出部と」に相当する。
したがって、本件補正発明と引用発明は、「前記キャブの他方の側部の後部近傍に配置され、車両側方を向いた検出面の正面に拡がる検出範囲に存在する対象物を検出する他方の側方検出部と」を備える点において一致する。
f 構成Cの観点
引用発明の「助手席側の側方検出用ミリ波レーダー3は、検出範囲がトラックの助手席側の側部に沿って前記助手席側の側部の後部を検出範囲に含むように配置されていること」は、本件補正発明の「前記一方の側方検出部は、検出範囲が前記車両の一方の側部に沿って前記一方の側部の後部を検出範囲に含む」ように「配置」されることに相当する。
したがって、本件補正発明と引用発明は、「前記一方の側方検出部は、検出範囲が前記車両の一方の側部に沿って前記一方の側部の後部を検出範囲に含むように、配置される」点において共通する。
g 構成Dの観点
引用発明の「助手席側の前方検出用ミリ波レーダー1は、助手席側の側方検出用ミリ波レーダー3と検出範囲が重なるように配置されていること」は、本件補正発明の「前記一方の前方検出部は、前記一方の側方検出部と検出範囲が重なるように」「配置」されることに相当する。
したがって、本件補正発明と引用発明は、「前記一方の前方検出部は、前記一方の側方検出部と検出範囲が重なるように配置される」点において共通する。
h 構成Eの観点
引用発明の「トラックのキャビンの側部のうち、運転席側の側部」は、本件補正発明の「運転席側に位置」する「他方の側部」に相当する。
したがって、本件補正発明と引用発明は、「前記他方の側部は、運転席側に位置」する点において一致する。
i 構成F1の観点
引用発明の「運転席側の前方検出用ミリ波レーダー2の検出範囲と運転席側の側方検出用ミリ波レーダー4の検出範囲との間」に「形成」された「空白領域A」は、本件補正発明の「前記他方の前方検出部の検出範囲と前記他方の側方検出部の検出範囲との間に形成される第1空白領域」に相当する。
したがって、本件補正発明と引用発明は、「前記他方の前方検出部の検出範囲と前記他方の側方検出部の検出範囲との間に第1空白領域が形成されている」という点において共通する。
j 構成F2の観点
引用発明の「助手席側の前方検出用ミリ波レーダー1の検出範囲と助手席側の側方検出用ミリ波レーダー3の検出範囲との間」に「形成」された「空白領域B」は、本件補正発明の「前記一方の前方検出部の検出範囲と前記一方の側方検出部の検出範囲との間に形成される第2空白領域」に相当する。
したがって、本件補正発明と引用発明は、「前記一方の前方検出部の検出範囲と前記一方の側方検出部の検出範囲との間に第2空白領域が形成されている」という点において共通する。
(イ) 一致点及び相違点の認定
前記(ア)の対比分析の検討結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の一致点において一致し、以下の相違点において相違する。
a 一致点
「車両前部に配置されたキャブの一対の側部のうち一方の側部の前部近傍に配置され、車両前方を向いた検出面の正面に拡がる検出範囲に存在する対象物を検出する一方の前方検出部と、
前記キャブの他方の側部の前部近傍に配置され、車両前方を向いた検出面の正面に拡がる検出範囲に存在する対象物を検出する他方の前方検出部と、
前記キャブの一方の側部の後部近傍に配置され、車両側方を向いた検出面の正面に拡がる検出範囲に存在する対象物を検出する一方の側方検出部と、
前記キャブの他方の側部の後部近傍に配置され、車両側方を向いた検出面の正面に拡がる検出範囲に存在する対象物を検出する他方の側方検出部と
を備え、
前記一方の側方検出部は、検出範囲が前記車両の一方の側部に沿って前記一方の側部の後部を検出範囲に含むように、配置され、
前記一方の前方検出部は、前記一方の側方検出部と検出範囲が重なるように、配置され、
前記他方の側部は、運転席側に位置し、
前記他方の前方検出部の検出範囲と前記他方の側方検出部の検出範囲との間に第1空白領域が形成されており、
前記一方の前方検出部の検出範囲と前記一方の側方検出部の検出範囲との間に第2空白領域が形成されている、
検出装置」である点。
b 相違点
(a) 相違点1
本件補正発明においては、「一方の側方検出部」について「前記車両の中心軸に対して検出面を車両後方へ向けるように傾斜角度を設定して」おり、「一方の前方検出部」について「前記車両の中心軸に直交する直交線に対して検出面を一方の側部側へ向けるように傾斜角度を設定して」いるのに対して、
引用発明においては、「助手席側の側方検出用ミリ波レーダー3」及び「助手席側の前方検出用ミリ波レーダー1」が、そのような傾斜角度に設定されていると明示されてはいない点。
(b) 相違点2
本件補正発明においては、「前記他方の前方検出部および前記他方の側方検出部は、前記他方の前方検出部の検出範囲と前記他方の側方検出部の検出範囲との間に形成される第1空白領域の頂点のうち前記他方の前方検出部および前記他方の側方検出部から車両側方に離れた一頂点が前記他方の前方検出部と前記他方の側方検出部との間の中央部に対して車両前方に位置し」(構成F1)、「且つ、前記一方の前方検出部の検出範囲と前記一方の側方検出部の検出範囲との間に形成される第2空白領域の面積が前記第1空白領域の面積と比較して小さくなるように、前記一方の前方検出部および前記一方の側方検出部と傾斜角度を変えて配置される」(構成F2)のに対して、
引用発明においては、そのような配置は示されていない点。
イ 判断
(ア) 相違点1について
a 引用発明においては、「ミリ波レーダー」が検出手段として用いられているところ、車載用の「ミリ波レーダー」は、送信アンテナと受信アンテナを含むモジュールとして構成されているのが通常であるから、当該モジュールの筐体におけるミリ波を送受信する箇所の表面が、本件補正発明の「検出面」に相当する。
b 引用発明の「助手席側の側方検出用ミリ波レーダー3」は、「検出範囲がトラックの助手席側の側部に沿って前記助手席側の側部の後部を検出範囲に含むように配置されている」のであるから、かかる配置を実現するために、ミリ波レーダー3のモジュールの筐体におけるミリ波を送受信する箇所の表面(検出面)について、トラックの中心軸に対して、トラック後方へ向けるように傾斜角度が設定されているのは、当業者にとって自明である。
c 同様に、引用発明の「助手席側の前方検出用ミリ波レーダー1」は、「助手席側の側方検出用ミリ波レーダー3と検出範囲が重なるように配置されている」のであるから、かかる配置を実現するために、ミリ波レーダー1のモジュールの筐体におけるミリ波を送受信する箇所の表面(検出面)について、トラックの中心軸に直交する直交線に対して、助手席側の側部側へ向けるように傾斜角度が設定されているのは、当業者にとって自明である。
d したがって、前記相違点1は実質的な相違点ではなく、仮に相違するところがあったとしても、当業者にとって自明な設計事項にすぎず格別のものではない。
(イ) 相違点2について
a 構成F1について
(a) 引用発明の「運転席側の前方検出用ミリ波レーダー2の検出範囲と運転席側の側方検出用ミリ波レーダー4の検出範囲との間」に「形成」された「空白領域A」は、以下の参考図5(再掲)を参照すれば明らかなように、レーダー2とレーダー4を結ぶ線分を底辺とする三角形により規定されると認められるところ、当該三角形の頂点の位置は、レーダー2の検出範囲とレーダー4の検出範囲をどのように設定するかにより定まることは明らかである。
[参考図5(再掲)]
[図:0001421953000013.jpg]
(b) ここで、引用発明において、「レーダー4」は、「検出範囲がトラックの運転席側の側部に沿って前記運転席側の側部の後部を検出範囲に含むように配置されている」から、レーダー4の検出範囲を変更することは想定されていないものの、レーダー2の検出範囲については、レーダー4との検出範囲の重なりなどを考慮して、全体として所望の検出範囲が構成されるように調整することは可能であるといえる。
(c) そして、引用発明において、トラックの前方の空白領域をできるかぎり少なくしたいことは、通常、前方へ照射されるレーダー波が衝突防止機能などを担うものであることを考慮すれば、当業者にとって自明の課題といえる。
一方、側方へ照射されるレーダー波は、通常、運転者の死角エリア内の歩行者などの巻き込み事故などに対応するものであるが、そもそも運転者は空白領域Aの多くを目視することができるから、レーダーの検出範囲でカバーすべき運転者の死角範囲は限定されたものである。
そうすると、レーダー2の検出範囲を、前方寄りになるように設定することは、当業者が適宜なし得た設計事項にすぎないというべきである。
(d) その場合、「空白領域A」の三角形の頂点の位置が、レーダー2とレーダー4とを結ぶ線分の中点よりもトラック前方に位置することになるかどうかは、各レーダーの検出範囲角度や設置点の位置、カバーすべき運転者の死角範囲などによって決定される設計事項であって、当該頂点を中点よりの前方に配置することにより、当業者の容易に予想し得ない臨界的効果が生じるものとも認められない。
(e) したがって、引用発明において、前記相違点2に係る本件補正発明の構成F1のように構成することは、格別のものではない。
b 構成F2について
(a) 引用発明の「助手席側の前方検出用ミリ波レーダー1の検出範囲と助手席側の側方検出用ミリ波レーダー3の検出範囲との間」に「形成」された「空白領域B」は、以下の参考図5(再掲)を参照すれば明らかなように、レーダー1とレーダー3を結ぶ線分を底辺とする三角形により規定されると認められるところ、「空白領域B」の三角形の面積は、レーダー1の検出範囲とレーダー3の検出範囲をどのように設定するかにより定まることは明らかである。同様に、「空白領域A」の三角形の面積は、レーダー2の検出範囲とレーダー4の検出範囲をどのように設定するかにより定まることも明らかである。
[参考図5(再掲)]
[図:0001421953000014.jpg]
(b) ここで、前記a(c)の説示内容を踏まえると、引用発明において、運転者の死角範囲をカバーするように各レーダーの検出範囲を設定することは、当業者が適宜なし得た設計事項にすぎない。
そして、助手席側の側部におけるレーダーの検出範囲でカバーすべき運転者の死角範囲が、運転席側のそれよりも大きくなることは明らかであるから、これらの死角範囲をカバーするように各レーダーの検出範囲を設定すれば、レーダー2とレーダー4は、レーダー1とレーダー3と傾斜角度を変えて配置されることになり、「空白領域B」の面積は、「空白領域A」の面積よりも小さくなることは明らかである。
(c) したがって、引用発明において、前記相違点2に係る本件補正発明の構成F2のように構成することは、格別のものではない。
(ウ) 総合評価
前記(ア)及び(イ)の検討結果を総合的に勘案しても、前記相違点1、2に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、本件補正発明の奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5) 請求人の主張について
ア 審判請求書の主張の概要
本件補正発明は、構成E、構成F1及び構成F2を備えているのに対して、引用文献1は、一方の側方と他方の側方に形成される空白領域は互いに同じ大きさで形成されており、本件補正発明のような上記構成は開示も示唆もされていない。
イ 審判請求書の主張に対する当審の判断
請求人の主張は、要するに前記相違点2に係る構成についてのものであるところ、前記相違点2については、前記(4)イ(イ)において説示したとおり、引用発明に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、請求人の主張を採用することはできない。
(6) 小括
以上検討のとおり、本件補正発明は、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
したがって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明の認定
本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1~7に係る発明は、令和5年5月10日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は前記第2の1(1)に摘記した事項により特定されるとおりである。
2 拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての理由は、次のとおりである。
理由2(新規性の欠如)
本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、下記の引用文献1により電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。
理由3(進歩性の欠如)
本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、下記の引用文献1により電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1:“ギガ ブラインドスポットモニター(BSM)”,
YouTube [online][video],2019年12月26日,いすゞ自動車公式チャンネル[official],インターネット
<URL:https://www.youtube.com/watch?v=MU54H7X1qqk>
3 引用発明について
前記引用文献1に記載された事項及び引用発明は、前記第2の3(3)において示したとおりである。
4 対比・判断
(1) 対比
前記第2の3(4)ア(ア)の対比分析における検討結果も踏まえると、本願発明と引用発明の相違点は、次のとおりであり、両者はその余の点で一致する。
<本願発明と引用発明の相違点>
本願発明においては、「側方検出部」について「前記車両の中心軸に対して検出面を車両後方へ向けるように傾斜角度を設定して」おり、「前方検出部」について「前記車両の中心軸に直交する直交線に対して検出面を一方の側部側へ向けるように傾斜角度を設定して」いるのに対して、
引用発明においては、「助手席側の側方検出用ミリ波レーダー3」及び「助手席側の前方検出用ミリ波レーダー1」が、そのような傾斜角度に設定されていると明示されてはいない点。
(2) 判断
前記第2の3(4)イ(ア)において説示した判断を踏まえると、前記相違点は実質的な相違点ではなく、仮に相違するところがあったとしても、当業者にとって自明な設計事項にすぎず格別のものではない。
したがって、本願発明は、引用発明であり、そうでないとしても引用発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
第4 むすび
以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条1項3号に該当するから、特許を受けることができない。
また、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-017328