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特許拒絶査定不服審判

2024-011470

階層化されたパワー制御によるLIDARベースの距離測定

審判番号
2024-011470
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-538558
請求日
2024年07月11日
審決日
2025年08月20日
公報発行日
2026年02月27日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】ベロダイン ライダー ユーエスエー,インコーポレイテッド
  • 【請求人代理人】弁理士法人山崎国際特許事務所
  • 【請求人代理人】赤松 利昭
  • 【請求人代理人】内藤 忠雄
  • 【請求人代理人】今井 千裕
  • 【請求人代理人】朴 志恩
審判長/審判官
  • 審判長 道祖土 新吾
  • 審判官 谷垣 圭二
  • 審判官 井海田 隆
分類
P18 .121-Z (G01S) / P18 .561-Z (G01S) / P18 .575-Z (G01S)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第184条の12第2項、特許法第29条、特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第6項、特許法第184条の4第1項、特許法第17条の2第5項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-538558「階層化されたパワー制御によるLIDARベースの距離測定」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 2月13日国際公開、WO2020/032996、令和 3年 4月22日国内公表、特表2021-510417〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2019年(平成31年)1月10日を国際出願日とする外国語特許出願であって(パリ条約による優先権主張外国庁受理2018年1月10日(以下「最先の優先日」という。)、2019年1月10日、米国)、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。 令和2年 8月27日 :翻訳文の提出 令和4年11月29日付け:拒絶理由通知書 令和5年 6月 5日 :意見書、手続補正書の提出 同年 8月 8日付け:拒絶理由通知書(最後) 令和6年 1月15日 :意見書、手続補正書の提出 同年 3月 8日付け:補正の却下の決定 同日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) (同月12日 :原査定の謄本の送達) 同年 7月11日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 令和6年7月11日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和6年7月11日にされた手続補正を却下する。 [補正の却下の決定の理由] 1 補正の内容 令和6年7月11日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の補正をするものであり、本件補正により、次の(1)に示す本件補正前(令和5年6月5日にされた手続補正後のものをいう。以下同じ。)の特許請求の範囲の請求項1、9及び17の記載は、後記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1、9及び17の記載に補正された。下線は補正箇所を示す。 (1) 本件補正前 「【請求項1】 第1の量の電力に応答して、LIDAR装置から3次元環境に照明光のパルスを放出するように構成されたパルス照明源と、 少なくとも3つの異なる選択可能な量の電力の1つを特定の時間に前記パルス照明源に提供するように構成された照明ドライバであって、前記第1の量の電力は、前記少なくとも3つの異なる選択可能な量の電力のうちの第1の量であることを特徴とする、照明ドライバと、 照明光の前記パルスによって照明された前記3次元環境から反射された光の量を検出し、検出された光の量を示す戻り測定信号を生成するように構成された感光性検出器と、 コンピューティングシステムであって、 前記検出された光の量を示す戻り測定信号を受信し、 前記戻り測定信号の測定強度の表示を決定し、 前記戻り測定信号の測定強度と前記戻り測定信号の所望の強度との差を測定し、 前記戻り測定信号の測定強度を前記LIDAR装置の線形範囲内に維持するために、前記戻り測定信号の測定強度と前記戻り測定信号の所望の強度との間の差に基づいて、少なくとも3つの異なる選択可能な量の電力のいずれかを、前記照明ドライバに選択させる制御コマンドを前記照明ドライバに伝達することを特徴とするコンピューティングシステムと、 を具備する光検出及び測距(LIDAR)装置。」 「【請求項9】 第1の量の電力に応答して、LIDAR測定システムから3次元環境に照明光のパルスを放出するように構成されたパルス照明源と、 少なくとも3つの異なる選択可能な量の電力の1つを特定の時間に前記パルス照明源に提供するように構成された照明ドライバであって、前記第1の量の電力は、前記少なくとも3つの異なる選択可能な量の電力のうちの第1の量であることを特徴とする、照明ドライバと、 照明光の前記パルスによって照明された前記3次元環境から反射された光の量を検出し、検出された光の量を示す戻り測定信号を生成するように構成された感光性検出器と、 コンピュータ読み取り可能命令が格納された非一時的なコンピュータ読み取り可能媒体であって、前記コンピュータ読み取り可能命令は、 コンピューティングシステムに、前記検出された光の量を示す前記戻り測定信号を受信させるためのコードと、 前記コンピューティングシステムに、前記戻り測定信号の測定強度の表示を決定させるさせるためのコードと、 前記コンピューティングシステムに、前記戻り測定信号の測定強度と前記戻り測定信号の所望の強度との差を測定させるコードと、 前記コンピューティングシステムに、前記戻り測定信号の測定強度を前記LIDAR装置の線形範囲内に維持するために、前記戻り測定信号の測定強度と前記所望の強度との差に基づいて、前記少なくとも3つの異なる選択可能な量の電力のいずれかを前記照明ドライバに選択させる制御コマンドを前記照明ドライバへと伝達させるコードと、 を具備することを特徴とするコンピュータ読み取り可能命令が格納された非一時的なコンピュータ読み取り可能媒体と、 を具備するLIDAR測定システム。」 「【請求項17】 第1の量の電力に応答してLIDAR測定装置のパルス照明源から照明光のパルスを3次元環境に放射するステップと、 少なくとも3つの異なる選択可能な量の電力の1つを特定の時間に前記パルス照明源に提供するステップであって、前記第1の量の電力は、前記少なくとも3つの異なる選択可能な量の電力のうちの第1の量であることを特徴とする、ステップと、 照明光の前記パルスによって照明された前記3次元環境から反射された光の量を検出するステップと、 検出された前記光の量を表示する戻り測定信号を生成するステップと、 検出された前記光の量を表示する前記戻り測定信号を受信するステップと、 前記戻り測定信号の測定強度の表示を決定するステップと、 前記戻り測定信号の測定強度と前記戻り測定信号の所望の強度との差を測定するステップと、 前記戻り測定信号の測定強度を前記LIDAR装置の線形範囲内に維持するために、前記戻り測定信号の測定強度と前記戻り測定信号の所望の強度との間の差に基づいて、少なくとも3つの異なる選択可能な量の電力のいずれかを、照明ドライバに選択させる制御コマンドを前記照明ドライバに伝達するステップと、 を具備する方法。」 (2) 本件補正後 「【請求項1】 第1の量の電力に応答して、LIDAR装置から3次元環境に照明光のパルスを放出するように構成されたパルス照明源と、 少なくとも3つの異なる選択可能な量の電力の1つを特定の時間に前記パルス照明源に提供するように構成された照明ドライバであって、前記第1の量の電力は、前記少なくとも3つの異なる選択可能な量の電力のうちの第1の量であることを特徴とする、照明ドライバと、 照明光の前記パルスによって照明された前記3次元環境から反射された光の量を検出し、検出された光の量を示す戻り測定信号を生成するように構成された感光性検出器と、 コンピューティングシステムであって、 前記検出された光の量を示す戻り測定信号を受信し、 前記戻り測定信号の測定強度の表示を決定し、 前記戻り測定信号の測定強度と前記戻り測定信号の所望の強度との差を測定し、 前記戻り測定信号の測定強度と前記戻り測定信号の所望の強度との間の差を複数の閾値と比較することであって、前記複数の閾値は、前記第1の量の電力に基づいて選択され、前記複数の閾値のうちのどの閾値が、前記戻り測定信号の測定強度と前記戻り測定信号の所望の強度との差を超えているかに基づいて、前記少なくとも3つの異なる選択可能な量の電力から所望の量の電力が選択されることを特徴とする比較を行い、 前記戻り測定信号の測定強度を前記LIDAR装置の線形範囲内に維持するために、前記照明ドライバに前記所望の量の電力を選択させるための制御コマンドを、前記照明ドライバに伝達することを特徴とする、 コンピューティングシステムと、 を具備する光検出及び測距(LIDAR)装置。」 「【請求項9】 第1の量の電力に応答して、LIDAR測定システムから3次元環境に照明光のパルスを放出するように構成されたパルス照明源と、 少なくとも3つの異なる選択可能な量の電力の1つを特定の時間に前記パルス照明源に提供するように構成された照明ドライバであって、前記第1の量の電力は、前記少なくとも3つの異なる選択可能な量の電力のうちの第1の量であることを特徴とする、照明ドライバと、 照明光の前記パルスによって照明された前記3次元環境から反射された光の量を検出し、検出された光の量を示す戻り測定信号を生成するように構成された感光性検出器と、 コンピュータ読み取り可能命令が格納された非一時的なコンピュータ読み取り可能媒体であって、前記コンピュータ読み取り可能命令は、 コンピューティングシステムに、前記検出された光の量を示す前記戻り測定信号を受信させるためのコードと、 前記コンピューティングシステムに、前記戻り測定信号の測定強度の表示を決定させるためのコードと、 前記コンピューティングシステムに、前記戻り測定信号の測定強度と前記戻り測定信号の所望の強度との差を測定させるコードと、 前記戻り測定信号の測定強度と前記戻り測定信号の所望の強度との間の差を複数の閾値と比較させるコードあって、前記複数の閾値は、前記第1の量の電力に基づいて選択され、前記複数の閾値のうちのどの閾値が、前記戻り測定信号の測定強度と前記戻り測定信号の所望の強度との差を超えているかに基づいて、前記少なくとも3つの異なる選択可能な量の電力から所望の量の電力が選択されることを特徴とするコードと、 前記コンピューティングシステムに、前記戻り測定信号の測定強度を前記LIDAR測定システムの線形範囲内に維持するために、前記照明ドライバに前記所望の量の電力を選択させるための制御コマンドを、前記照明ドライバに伝達させるコードと、 を具備することを特徴とするコンピュータ読み取り可能命令が格納された非一時的なコンピュータ読み取り可能媒体と、 を具備するLIDAR測定システム。」 「【請求項17】 第1の量の電力に応答してLIDAR測定装置のパルス照明源から照明光のパルスを3次元環境に放射するステップと、 少なくとも3つの異なる選択可能な量の電力の1つを特定の時間に前記パルス照明源に提供するステップであって、前記第1の量の電力は、前記少なくとも3つの異なる選択可能な量の電力のうちの第1の量であることを特徴とする、ステップと、 照明光の前記パルスによって照明された前記3次元環境から反射された光の量を検出するステップと、 検出された前記光の量を表示する戻り測定信号を生成するステップと、 検出された前記光の量を表示する前記戻り測定信号を受信するステップと、 前記戻り測定信号の測定強度の表示を決定するステップと、 前記戻り測定信号の測定強度と前記戻り測定信号の所望の強度との差を測定するステップと、 前記戻り測定信号の測定強度と前記戻り測定信号の所望の強度との間の差を複数の閾値と比較するステップであって、前記複数の閾値は、前記第1の量の電力に基づいて選択され、前記複数の閾値のうちのどの閾値が、前記戻り測定信号の測定強度と前記戻り測定信号の所望の強度との差を超えているかに基づいて、前記少なくとも3つの異なる選択可能な量の電力から所望の量の電力が選択されることを特徴とする比較するステップと、 前記戻り測定信号の測定強度を前記LIDAR測定装置の線形範囲内に維持するために、前記照明ドライバに前記所望の量の電力を選択させるための制御コマンドを、前記照明ドライバに伝達するステップと、 を具備する方法。」 2 本件補正についての当審の判断 (1) 新規事項の追加について ア 新規事項の追加の有無についての当審の判断の概要 本件補正後の請求項1の記載は、「前記複数の閾値のうちのどの閾値が、前記戻り測定信号の測定強度と前記戻り測定信号の所望の強度との差を超えているかに基づいて、前記少なくとも3つの異なる選択可能な量の電力から所望の量の電力が選択される」という構成を特定するものであるところ、この点は、次のイにおいて詳細に説示するとおり、国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面(図面の中の説明に限る。)の特許法第184条の4第1項の翻訳文、国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の同項の翻訳文又は国際出願日における国際特許出願の図面(図面の中の説明を除く。)(以下「本願当初翻訳文等」という。)に記載された全ての事項を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるから、本件補正は同法第184条の12第2項において読み替えて準用する同法17条の2第3項の規定に違反するものである。 また、請求項9、17の記載に関しても同様である。 イ 新規事項の追加の有無についての当審の判断 (ア) 本願当初翻訳文等の記載について 「異なる選択可能な量の電力から所望の量の電力が選択される」ための、「戻り測定信号の測定強度と前記戻り測定信号の所望の強度との差」及び「複数の閾値」の比較について、本願当初翻訳文等の段落【0013】~【0015】、【0054】~【0063】には、次の事項が記載されている。(なお、下線は当合議体が付したものである。) 「【0013】 いくつかの実施形態では、照明パワー制御モジュールは、所望の強度レベルと測定された強度レベルとの間の差に基づいて制御信号を生成する。制御信号は、照明ドライバICに伝達され、これにより、照明ドライバICは、照明源によって生成された照明の強度を、1つの個別の照明パワーレベルから別のレベルに変化させる。これらの実施形態では、制御信号は、所望の照明パワーレベルを示すデジタル信号である。 【0014】 別の態様では、照明パワー制御モジュールは、強度差が一連の所定の階層化された閾値の1つを超えるかどうかに基づいて、所望の照明パワーレベルを決定する。 【0015】 強度差閾値は、事前に決定された値である(つまり、値は、望ましい戻りパルス強度と測定された戻りパルス強度の差の決定の前に既知となっている)。いくつかの実施形態では、各強度差閾値は、ルックアップテーブルに格納される。いくつかの実施形態では、各強度差閾値は非線形関数によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、各強度差閾値は、現在のパワーレベルにより定まる。いくつかの実施形態では、各強度差閾値は、固定の倍率によって変化する。一部の実施形態では、各強度差閾値は、所望戻り強度信号と測定された戻り強度信号との差が正であるか負であるかにより定まる。」 「【0054】 1つの実施形態では、VCTL171は、所望の照明パワーレベルを示すデジタル信号である。この実施形態では、照明ドライバIC140は、VCTL171の値に応答して、照明パワーレベルを所望のパワーレベルに調整する。1つの実施形態では、VCTL171は、VCTL171の値に応じて16の異なるパワーレベルのいずれかを示す4ビットのデジタル数である。しかしながら、一般に、この特許文書の範囲内で、任意の数の個別の離散的照明パワーレベルを考えることができる。 【0055】 別の態様では、照明パワー制御モジュール170は、強度差IDIFFが所定の階層化された一連の閾値のうちの1つを超えるかどうかに基づいて、所望の照明パワーレベルを決定する。 【0056】 図4A~4Dは、1つの実施形態における所定の閾値に基づく照明パワー制御スキームを示す。図4A~4Dの例では、LIDAR測定システムには、照明パワーを増加させる順序で、4つの照明パワーレベル、L1、L2、L3、及びL4が含まれる。1つの例では、LI(最低パワーレベル)は、図3に示すシステム応答曲線175Dに対応し、L2はシステム応答曲線175Cに対応し、L3はシステム応答曲線175Bに対応し、L4はシステム応答曲線175Aに対応する。 【0057】 図4Aに示されるように、戻り信号の所望の強度と戻り信号の測定された強度との差が強度差閾値IDTLI-L2を超える場合、照明パワー制御モジュール170は、制御信号VCTL171の値を伝達し、照明ドライバ140に照明パワーをL1からL2に増加させる。同様に、戻り信号の所望の強度と戻り信号の測定された強度との差が強度差閾値IDTLI-L3を超える場合、照明パワー制御モジュール170は、制御信号VCTL171の値を伝達し、これにより照明ドライバ140に照明パワーをL1からL3に増加させる。同様に、戻り信号の所望の強度と戻り信号の測定された強度との差が強度差閾値IDTL1-L4を超える場合、照明パワー制御モジュール170は、制御信号VCTL171の値を伝達し、これにより、照明ドライバ140に照明パワーをL1からL4に増加させる。 【0058】 図4Bに示されるように、戻り信号の所望の強度と戻り信号の測定された強度との差が強度差閾値IDTL2-L3を超える場合、照明パワー制御モジュール170は、制御信号VCTL171の値を伝達し、これにより、照明ドライバ140が照明パワーをL2からL3に増加させる。同様に、戻り信号の所望の強度と戻り信号の測定された強度との差が強度差閾値IDTL2-L4を超える場合、照明パワー制御モジュール170は、制御信号VCTL171の値を伝達し、これにより、照明ドライバ140が照明パワーをL2からL4に増加させる。同様に、戻り信号の所望の強度と戻り信号の測定された強度との差が強度差閾値IDTL2-L1を超える場合、照明パワー制御モジュール170は、制御信号VCTL171の値を伝達し、これにより、照明ドライバ140が照明パワーをL2からLIに減少させる。 【0059】 図4Cに示されるように、戻り信号の所望の強度と戻り信号の測定された強度との差が強度差閾値IDTL3-L4を超える場合、照明パワー制御モジュール170は、制御信号VCTL171の値を伝達し、これにより、照明ドライバ140が照明パワーをL3からL4に増加させる。同様に、戻り信号の所望の強度と戻り信号の測定された強度との差が強度差閾値IDTL3-L2を超える場合、照明パワー制御モジュール170は、制御信号VCTL171の値を伝達し、これにより、照明ドライバ140が照明パワーをL3からL2に減少させる。同様に、戻り信号の所望の強度と戻り信号の測定された強度との差が強度差閾値IDTL3-L1を超える場合、照明パワー制御モジュール170は、制御信号VCTL171の値を伝達し、これにより照明ドライバ140が照明パワーをL3からLIに減少させる。 【0060】 図4Dに示されるように、戻り信号の望ましい強度と戻り信号の測定された強度との差が強度差閾値IDTL4-L3を超える場合、照明パワー制御モジュール170は、制御信号VCTL171の値を伝達し、これにより照明ドライバ140が照明パワーをL4からL3に減少させる。同様に、戻り信号の所望の強度と戻り信号の測定された強度との差が強度差閾値IDTL4-L2を超える場合、照明パワー制御モジュール170は、制御信号VCTL171の値を伝達し、これにより照明ドライバ140が照明パワーをL4からL2に増加させる。同様に、戻り信号の所望の強度と戻り信号の測定された強度との差が強度差閾値IDTL4-LIを超える場合、照明パワー制御モジュール170は、制御信号VCTL171の値を伝達し、これにより照明ドライバ140が照明パワーをL4からL1に増加させる。 【0061】 強度差閾値は、あらかじめ定めた値である(つまり、値は、所望の戻りパルス強度と測定された戻りパルス強度の差の測定前に既知となっている)。いくつかの実施形態では、各強度差閾値は、ルックアップテーブルに格納される。いくつかの実施形態では、各強度差閾値は、非線形関数によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、各強度差閾値は、現在のパワーレベルにより定まる。いくつかの実施形態では、各強度差閾値は、固定倍率によって変化する。一部の実施形態では、各強度差閾値は、所望の強度信号と測定された戻り強度信号との差が正であるか負であるかにより定まる。 【0062】 図1に示す実施形態では、照明パワー制御モジュール170は、デジタル信号VCTL171を生成して、所望の照明パワーレベルを照明ドライバIC140に伝達する。しかし、いくつかの他の実施形態では、照明パワー制御モジュール170は、照明ドライバIC140に伝達される1つ以上のアナログ信号を生成し、これにより、照明ドライバIC140は所望の照明パワーレベルの照明パルス134を生成する。1つの例では、照明パワー制御モジュール170は、アナログ振幅制御信号VAMPを照明ドライバIC140に伝達する。それに応答して、照明ドライバIC140は、受信したVAMPの値に基づいてパルス振幅を変更する。別の例では、照明パワー制御モジュール170は、アナログ振幅制御信号VPWCを照明ドライバIC140に伝達する。それに応答して、照明ドライバIC140は、受信したVPWCの値に基づいて照明パルス持続時間を変更する。 【0063】 図5は、周期TPで周期的である、制御装置140によって生成されるパルス発射信号の3つのセグメントを示す。セグメント167Aでは、6つの連続したパルスのパルス強度が中程度の値で安定している。セグメント167Bでは、パルス強度は、6つの連続したパルスの間、高輝度設定と低輝度設定を交互に繰り返す。セグメント167Cでは、パルス強度は、1つのパルスは高く保持され、その後、10個の連続するパルスの間、2つの後続のパルスは低く保持される。一般に、LIDARシステムは、パルスごとに又はパルスのグループで任意の所望の方法でパルス強度を変化させて、戻り信号の強度をLIDAR測定システムの線形範囲内に維持するように構成することができる。」 (イ) 本件補正後の請求項の記載について a 本件補正後の請求項1においては、「異なる選択可能な量の電力から所望の量の電力が選択される」ための、「戻り測定信号の測定強度と前記戻り測定信号の所望の強度との差」及び「複数の閾値」の比較について、「前記複数の閾値のうちのどの閾値が、前記戻り測定信号の測定強度と前記戻り測定信号の所望の強度との差を超えているか」についての比較を行うことが特定されている。 b しかしながら、前記(ア)で摘記した内容から明らかなように、本願当初翻訳文等においては、「前記戻り測定信号の測定強度と前記戻り測定信号の所望の強度との差」が「閾値」を「超えているか」についての比較を行うことは記載されているものの、本願当初翻訳文等には、前記摘記箇所以外の記載を含めて検討しても、「閾値」が「前記戻り測定信号の測定強度と前記戻り測定信号の所望の強度との差」を「超えているか」についての比較を行うことは、記載も示唆もされていない。 c したがって、本件補正後の請求項1は、本願当初翻訳文等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものである。 また、請求項9、17に関しても同様である。 ウ 新規事項の追加の有無の判断についてのまとめ 以上検討のとおり、本件補正は、本願当初翻訳文等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであるから、本件補正は、本願当初翻訳文等に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、特許法第184条の12第2項において読み替えて準用する同法17条の2第3項の規定に違反するものである。 (2) 独立特許要件について 前記(1)において検討したとおり、本件補正は、特許法第184条の12第2項において読み替えて準用する特許法17条の2第3項の規定に違反するものであるが、その点はひとまず措くとして、本件補正後の請求項1における「前記複数の閾値のうちのどの閾値が、前記戻り測定信号の測定強度と前記戻り測定信号の所望の強度との差を超えているかに基づいて」との記載が「前記戻り測定信号の測定強度と前記戻り測定信号の所望の強度との差が、前記複数の閾値のうちのどの閾値を超えているかに基づいて」の誤記であると善解して、仮に、本件補正が特許法17条の2第3項の規定に適合するものであって、かつ特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとしたとしても、本件補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)は、以下に詳述するとおり、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 よって、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものであるとの結論に変わりはない。 ア 本件補正発明の認定 上記事項を踏まえると、本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項について、「前記複数の閾値のうちのどの閾値が、前記戻り測定信号の測定強度と前記戻り測定信号の所望の強度との差を超えているかに基づいて」との記載を「前記戻り測定信号の測定強度と前記戻り測定信号の所望の強度との差が、前記複数の閾値のうちのどの閾値を超えているかに基づいて」との記載に置き換えた事項により特定されるとおりのものであると認められる。 イ 本件補正発明の分説 検討の便宜上、前記アにおいて認定した本件補正発明の構成を、次のとおり構成Xと構成Aから構成D4までに分説する。また、参考図として、本願の【図1】に部材名等を記入した図及び【図12】を掲載する。 <本件補正発明の分説> A 第1の量の電力に応答して、LIDAR装置から3次元環境に照明光のパルスを放出するように構成されたパルス照明源と、 B 少なくとも3つの異なる選択可能な量の電力の1つを特定の時間に前記パルス照明源に提供するように構成された照明ドライバであって、前記第1の量の電力は、前記少なくとも3つの異なる選択可能な量の電力のうちの第1の量であることを特徴とする、照明ドライバと、 C 照明光の前記パルスによって照明された前記3次元環境から反射された光の量を検出し、検出された光の量を示す戻り測定信号を生成するように構成された感光性検出器と、 D1 コンピューティングシステムであって、 前記検出された光の量を示す戻り測定信号を受信し、 前記戻り測定信号の測定強度の表示を決定し、 前記戻り測定信号の測定強度と前記戻り測定信号の所望の強度との差を測定し、 前記戻り測定信号の測定強度と前記戻り測定信号の所望の強度との間の差を複数の閾値と比較することであって、 D2 前記複数の閾値は、前記第1の量の電力に基づいて選択され、 D3 前記戻り測定信号の測定強度と前記戻り測定信号の所望の強度との差が、前記複数の閾値のうちのどの閾値を超えているかに基づいて、前記少なくとも3つの異なる選択可能な量の電力から所望の量の電力が選択されることを特徴とする比較を行い、 D4 前記戻り測定信号の測定強度を前記LIDAR装置の線形範囲内に維持するために、前記照明ドライバに前記所望の量の電力を選択させるための制御コマンドを、前記照明ドライバに伝達することを特徴とする、 コンピューティングシステムと、 を具備する X 光検出及び測距(LIDAR)装置。 <参考図> 【図1】に部材名等を記入した図 [図:0001431760000001.jpg] 【図12】 [図:0001431760000002.jpg] ウ 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載 本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。(なお、下線は当合議体が付したものである。) 「【技術分野】 【0001】 …(中略)… 【0002】 開示した実施形態は、LIDARベースの3Dポイントクラウド測定システムに関する。 【背景技術】 【0003】 …(中略)… 【0009】 既存のLIDARシステムは光線を使用していつでも特定の範囲の周囲環境を調査する。戻り信号の検出では、測定範囲が拡大するにつれて悪化する顕著な測定ノイズ原が含まれる。多くのアプリケーションでは、測定信号の信号対雑音比はレーザーパルスの強度を上げることで改善させる。しかしながら、レーザーパルス強度が増加すると、特に短距離測定の場合、検出器、信号調整電子機器、アナログ・デジタル変換器、またはそれらの任意の組み合わせにおいて飽和が生じる可能性がある。 【0010】 高レベルの画像解像度と画像範囲を維持しつつ、LIDARシステムのパワー制御の改善が望まれる。 【発明の概要】 【課題を解決するための手段】 【0011】 離散的な照明パワー階層に基づく、LIDARベースの3次元画像化システムの照明パワーを制御するための方法及びシステムについてここで説明する。 【0012】 1つの態様では、LIDARシステムから放射される照明光のパルス化されたビームの照明強度は、測定された戻りパルスの強度に基づいて変化する。このようにして、測定された戻りパルスの強度は、LIDARシステムから広い範囲の距離にわたって検出されたオブジェクトのADCの線形範囲内に、及びLIDARシステムと検出されたオブジェクトとの間の光路内の広い環境条件の範囲内に維持される。測定されたリターンパルスの強度をADCの線形範囲内に維持することにより、信号対雑音比の低下と信号の飽和の両方が回避される。」 「【0047】 1つの態様では、LIDARシステムから放射される照明光のパルスビームの照明強度は、測定された戻りパルスの強度に基づいて変化する。このようにして、測定された戻りパルスの強度は、LIDARシステムから広範囲の距離にわたって検出されたオブジェクトのADCの線形範囲内と、LIDARシステムと検出されたシステム間の光路内の広範囲の環境条件内に維持される。測定されたリターンパルスの強度をADCの線形範囲内に維持することにより、信号対雑音比が低下することと飽和が生じることの両方が回避される。」 「【0048】 図3は、4つの異なる照明パワーレベル175A~DについてのLIDARシステムと測定中のターゲットとの間の距離の関数としての戻り信号強度の例示的なプロットを示す。図3に示すように、戻り信号強度は、測定された戻り信号139の強度を示す8ビットのデジタル値である。しかしながら、一般に、戻り信号強度は、任意の適切なデジタルまたはアナログ信号によって特徴付けることができる。」 「 [図:0001431760000003.jpg] 」 「【0049】 図3に示すように、測定システムの線形範囲内にある測定距離の範囲は、照明パワーレベルに応じて変化する。例えば、図3に示すように、プロットライン175Aは、比較的高いパワーレベルでのLIDAR測定システムの応答と特性を示す。このパワーレベルでは、200メートルから160メートルの測定距離で高い信号対雑音比(たとえば、50を超える信号強度)が期待される。ただし、160メートル未満の距離では、LIDAR測定システムは飽和する。パワーレベルが175B、175C、175Dに低下すると、LIDARシステムは徐々に短い距離で飽和することとなるが、その場合、所定の距離では信号対雑音比が低下することとなる(信号強度が低下する)。」 「 【0057】 図4Aに示されるように、戻り信号の所望の強度と戻り信号の測定された強度との差が強度差閾値IDTLI-L2を超える場合、照明パワー制御モジュール170は、制御信号VCTL171の値を伝達し、照明ドライバ140に照明パワーをL1からL2に増加させる。同様に、戻り信号の所望の強度と戻り信号の測定された強度との差が強度差閾値IDTLI-L3を超える場合、照明パワー制御モジュール170は、制御信号VCTL171の値を伝達し、これにより照明ドライバ140に照明パワーをL1からL3に増加させる。同様に、戻り信号の所望の強度と戻り信号の測定された強度との差が強度差閾値IDTL1-L4を超える場合、照明パワー制御モジュール170は、制御信号VCTL171の値を伝達し、これにより、照明ドライバ140に照明パワーをL1からL4に増加させる。 【0058】 図4Bに示されるように、戻り信号の所望の強度と戻り信号の測定された強度との差が強度差閾値IDTL2-L3を超える場合、照明パワー制御モジュール170は、制御信号VCTL171の値を伝達し、これにより、照明ドライバ140が照明パワーをL2からL3に増加させる。同様に、戻り信号の所望の強度と戻り信号の測定された強度との差が強度差閾値IDTL2-L4を超える場合、照明パワー制御モジュール170は、制御信号VCTL171の値を伝達し、これにより、照明ドライバ140が照明パワーをL2からL4に増加させる。同様に、戻り信号の所望の強度と戻り信号の測定された強度との差が強度差閾値IDTL2-L1を超える場合、照明パワー制御モジュール170は、制御信号VCTL171の値を伝達し、これにより、照明ドライバ140が照明パワーをL2からLIに減少させる。 【0059】 …(中略)… 【0061】 強度差閾値は、あらかじめ定めた値である(つまり、値は、所望の戻りパルス強度と測定された戻りパルス強度の差の測定前に既知となっている)。いくつかの実施形態では、各強度差閾値は、ルックアップテーブルに格納される。いくつかの実施形態では、各強度差閾値は、非線形関数によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、各強度差閾値は、現在のパワーレベルにより定まる。いくつかの実施形態では、各強度差閾値は、固定倍率によって変化する。一部の実施形態では、各強度差閾値は、所望の強度信号と測定された戻り強度信号との差が正であるか負であるかにより定まる。 …(中略)… 【0063】 図5は、周期TPで周期的である、制御装置140によって生成されるパルス発射信号の3つのセグメントを示す。セグメント167Aでは、6つの連続したパルスのパルス強度が中程度の値で安定している。セグメント167Bでは、パルス強度は、6つの連続したパルスの間、高輝度設定と低輝度設定を交互に繰り返す。セグメント167Cでは、パルス強度は、1つのパルスは高く保持され、その後、10個の連続するパルスの間、2つの後続のパルスは低く保持される。一般に、LIDARシステムは、パルスごとに又はパルスのグループで任意の所望の方法でパルス強度を変化させて、戻り信号の強度をLIDAR測定システムの線形範囲内に維持するように構成することができる。」 エ 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定 (ア) 引用文献1に記載された事項 原査定の拒絶の理由において引用された、最先の優先日前に発行された文献である特開2012-93195号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(なお、当合議体により、後記(イ)の引用発明の認定に直接用いる記載に下線を付した。)。 a 【0001】~【0009】 「【技術分野】 【0001】 本発明は、目標領域にレーザ光を照射したときの反射光をもとに目標領域の状況を検出するレーザレーダに関するものである。 【背景技術】 【0002】 近年、走行時の安全性を高めるために、レーザレーダが家庭用乗用車等に搭載されている。一般に、レーザレーダは、レーザ光を目標領域内でスキャンさせ、各スキャン位置における反射光の有無から、各スキャン位置における障害物の有無を検出する。さらに、各スキャン位置におけるレーザ光の照射タイミングから反射光の受光タイミングまでの所要時間をもとに、各スキャン位置における障害物までの距離が検出される(たとえば、特許文献1参照)。 【0003】 目標領域からの反射光は、レーザレーダ内の光検出器によって受光される。光検出器からは、受光光量に応じた大きさの信号が出力される。この信号が所定の閾値を超えると、当該スキャン位置に障害物が存在すると判定される。また、この信号が前記閾値を超えたタイミングが反射光の受光タイミングとされて、上記のように、当該スキャン位置における障害物までの距離が計測される。 …(中略) 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 上記構成において、障害物がレーザレーダに接近した位置にあると、強度の高い反射光が光検出器に入射する。このため、光検出器からの信号が飽和し、障害物までの距離の測定精度が低下する惧れがある。 【0006】 光検出器に強度の高い反射光が入射すると、光検出器からは、急激に立ち上がるパルス信号が出力される。かかるパルス信号は、緩やかに立ち上がるパルス信号よりも、早いタイミングで、上記閾値を超える。このため、上記のように光検出器からの出力信号が閾値を超えたタイミングを受光タイミングとして障害物までの距離を計測すると、計測された距離は、反射光の強度差による誤差を含むこととなってしまう。 【0007】 本発明は、かかる課題に鑑みて為されたものであり、障害物がレーザレーダに接近した位置に有る場合も、障害物までの距離を精度よく測定することができるレーザレーダを提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明に係るレーザレーダは、レーザ光を出射するレーザ光源と、目標領域において前記レーザ光を走査させるアクチュエータと、前記目標領域において反射されたレーザ光を受光するとともに受光したレーザ光の強度に応じた信号を出力する光検出器と、前記レーザ光源を制御するレーザ制御回路と、を備える。ここで、前記レーザ制御回路は、前記光検出器から出力される信号が所定の閾値を超えると、前記レーザ光源の出力を減少させる。 【発明の効果】 【0009】 本発明によれば、障害物がレーザレーダに接近した位置に有る場合も、障害物までの距離を精度よく測定することができるレーザレーダを提供することができる。」 b 【0013】~【0021】、【図1】 「【0013】 図1は、実施の形態に係るレーザレーダ1の構成を模式的に示す図である。同図(a)は、レーザレーダ1の内部を上面から透視した図、同図(b)は、投射窓50と受光窓60を装着する前のレーザレーダ1の正面図である。」 「【図1】 [図:0001431760000004.jpg] 」 「【0014】 同図(a)を参照して、レーザレーダ1は、筐体10と、投射光学系20と、受光光学系30と、回路ユニット40と、投射窓50と、受光窓60を備える。本実施の形態では、投射に関する構成と受光に関する構成が一つの筐体10に収容されているが、これら2つの構成が別々の筐体に収容され、両構成を電気的に接続することで、レーザレーダ1が構成されても良い。 …(中略)… 【0016】 投射光学系20は、レーザ光源21と、ビーム整形レンズ22と、ミラーアクチュエータ23とを備える。 …(中略)… 【0020】 受光光学系30は、フィルタ31と、受光レンズ32と、光検出器33とを備える。フィルタ31は、レーザ光源21から出射されるレーザ光の波長帯域の光のみを透過するバンドパスフィルタである。受光レンズ32は、目標領域から反射された光を集光する。光検出器33は、APD(アバランシェ・フォトダイオード)またはPINフォトダイオードからなり、受光光量に応じた大きさの電気信号を回路ユニット40に出力する。 【0021】 回路ユニット40は、CPUやメモリ等を備え、レーザ光源21およびミラーアクチュエータ23を制御する。また、回路ユニット40は、光検出器33からの信号に基づいて、目標領域における障害物の有無および障害物までの距離を測定する。具体的には、目標領域における所定の走査位置において、レーザ光源21からレーザ光が出射される。このときに光検出器33から信号が出力されると、この走査位置に障害物が存在することが検出される。また、この走査位置においてレーザ光が出射されたタイミングと、光検出器33から信号が出力されたタイミングの時間差から、この障害物までの距離が測定される。回路ユニット40の構成は、追って図7を参照して説明する。」 c 【0054】~【0057】、【図7】 「【0054】 図7は、レーザレーダ1の回路構成を示す図である。なお、同図には、便宜上、投射光学系20と受光光学系30の主要な構成が併せて示されている。図示の如く、レーザレーダ1は、PSD信号処理回路41と、サーボLD駆動回路42と、アクチュエータ駆動回路43と、スキャンLD駆動回路44と、PD信号処理回路45と、DSP46を備えている。これらの回路は、図1の回路ユニット40に含まれている。」 「【図7】 [図:0001431760000005.jpg] 」 「【0055】 PSD信号処理回路41は、PSD308からの出力信号をもとに求めた位置検出信号をDSP46に出力する。サーボLD駆動回路42は、DSP46からの信号をもとに、半導体レーザ303に駆動信号を供給する。アクチュエータ駆動回路43は、DSP46からの信号をもとに、ミラーアクチュエータ23を駆動する。具体的には、目標領域においてレーザ光を所定の軌道に沿って走査させるための駆動信号がミラーアクチュエータ23に供給される。 【0056】 スキャンLD駆動回路44は、DSP46からの信号をもとに、レーザ光源21に駆動信号を供給する。具体的には、目標領域にレーザ光を照射するタイミングで、パルス状の駆動信号(電流信号)がレーザ光源21に供給される。PD信号処理回路45は、光検出器33の受光光量に応じた電圧信号を増幅およびデジタル化してDSP46に供給する。 【0057】 DSP46は、PSD信号処理回路41から入力された位置検出信号をもとに、目標領域におけるレーザ光の走査位置を検出し、ミラーアクチュエータ23の駆動制御や、レーザ光源21の駆動制御等を実行する。また、DSP46は、PD処理回路7から入力される電圧信号にもとづいて、目標領域内のレーザ光照射位置に障害物が存在するかを判定し、同時に、レーザ光源21から出力されるレーザ光の照射タイミングと、光検出器33にて受光される目標領域からの反射光の受光タイミングの間の時間差をもとに、障害物までの距離を測定する。」 d 【0062】~【0065】、【図9】 「【0062】 本実施の形態では、各発光タイミングにおけるレーザ光源21の出力が、DSP46により制御される。スキャンLD駆動回路44は、レーザ光源21の出力を3段階に切り替えるための構成を備えている。 【0063】 図9は、スキャンLD駆動回路44の構成を示す図である。スキャンLD駆動回路44は、ドライバD1~D3と、FET1~3と、コンデンサC1~C3と、抵抗R1~R3を備えている。コンデンサC1~C3の容量は同じである。すなわち、コンデンサC1~C3には、同じコンデンサが用いられている。また、抵抗R1~R3の抵抗値も同じである。抵抗R1~R3には、それぞれ、電位V1~V3が印加される。電位V1~V3の大きさは、V1>V2>V3となっている。このため、コンデンサC1に蓄積された電荷が最大となり、コンデンサC3に蓄積された電荷が最小となる。」 「【図9】 [図:0001431760000006.jpg] 」 「【0064】 DSP46からドライバD1に駆動信号が印加されると、FET1がオンとなり、コンデンサC1に蓄積された電荷がパルス状にレーザ光源21に流れる。また、DSP46からドライバD2に駆動信号が印加されると、FET2がオンとなり、コンデンサC2に蓄積された電荷がパルス状にレーザ光源21に流れる。さらに、DSP46からドライバD3に駆動信号が印加されると、FET3がオンとなり、コンデンサC3に蓄積された電荷がパルス状にレーザ光源21に流れる。上記のように、コンデンサC1~C3に蓄積された電荷は互いに相違している。このため、ドライバD1~D3の何れに駆動信号が印加されるかによって、レーザ光源21に流れるパルス状の電流のピーク値が相違し、よって、レーザ光源21の出力が相違する。なお、コンデンサC1~C3の容量は同じであるため、ドライバD1~D3の何れに駆動信号が印加されても、レーザ光源21の発光期間は略同じである。 【0065】 DSP46は、各発光タイミングにおいて、ドライバD1~D3の何れに駆動信号を印加するかによって、レーザ光源21の出力を切り替える。」 e 【0066】~【0069】、【図10】 「【0066】 図10(a)は、レーザ光の強度制御のために行われる受光テーブルの生成処理を示すフローチャートである。このフローチャートは、目標領域の1回の走査に対する処理を示している。」 「【図10】 [図:0001431760000007.jpg] 」 「【0067】 目標領域の走査が開始すると、DSP46は、レーザ光源21の発光タイミングにおいて(S101:YES)、図9のドライバD1~D3の何れに駆動信号を印加し、レーザ光源21からレーザ光を出射させる(S102)。さらに、DSP46は、この発光タイミングから一定の期間、光検出器33の受光光量に応じた電圧信号を取得し、取得した電圧信号のピーク値(最大値)を受光電圧VRとして取得する(S103)。そして、DSP46は、取得した受光電圧VRを、当該発光タイミングに対応づけて、内蔵メモリ内の受光テーブルに格納する(S104)。 【0068】 こうして、一つの発光タイミングに対する処理が終了すると、DSP46は、当該目標領域に対する走査、すなわち、図8に示す走査ラインL1~L3の走査が終了したかを判定する(S105)。そして、当該目標領域に対する走査が終了していなければ(S105:NO)、DSP46は、S101に戻って、次の発光タイミングに対する処理を行う。こうして、最後の走査ラインL3の全ての発光タイミングに対する処理が終了すると(S105:YES)、DSP46は、当該目標領域に対する処理を終了する。 【0069】 図10(b)は、受光テーブルの構成を示す図である。図示の如く、受光テーブルには、目標領域を走査する際の全ての発光タイミングT1~Tnに対応づけて、各発光タイミングについて取得された受光電圧VR1~VRnが格納されている。すなわち、受光テーブルには、図8に示す走査ラインL1~L3の全ての発光タイミングT1~Tnにおける受光電圧VR1~VRnが格納される。目標領域に対する1回の走査が終わると、全ての発光タイミングに対して受光電圧が格納される。そして、目標領域に対する次回の走査が始まると、当該走査における各発光タイミングにて取得された受光電圧が、受光テーブルに上書きされる。」 f 【0070】~【0080】、【図11】 「【0070】 図11(a)は、受光テーブルを用いたレーザ光の発光強度の設定処理を示すフローチャートである。このフローチャートは、目標領域の1回の走査に対する処理を示している。」 「【図11】 [図:0001431760000008.jpg] 」 「【0071】 DSP46は、まず、変数iに1をセットする(S201)。次に、DSP46は、i番目の発光タイミングTiに対応付けられた受光電圧VRiを受光テーブルから取得し、取得した受光電圧VRiと閾値電圧VS1~VS4(VS1>VS2>VS3>VS4)とを比較する(S202~S205)。そして、この比較結果に応じて、内蔵メモリに保持された発光テーブルの発光強度を調節する。 【0072】 図11(b)は、発光テーブルの構成を示す図である。発光テーブルには、発光タイミングTiに対応付けて発光強度Pwiが保持されている。発光強度は、図9のドライバD1~D3の何れかに駆動信号が印加されたときのレーザ光の強度である。すなわち、発光強度は3段階に切替られる。発光強度Pwiの初期値は、図9のドライバD1に駆動信号が印加されたときのレーザ光の強度(最大強度)に設定される。 【0073】 図11(a)に戻り、受光電圧VRiが閾値電圧VS1よりも大きい場合(S202:YES)、DSP46は、発光タイミングTiにおける発光強度Pwiを2ステップ下げる(S206)。受光電圧VRiが閾値電圧VS1以下で、閾値電圧VS2よりも大きい場合(S203:YES)、DSP46は、発光タイミングTiにおける発光強度Pwiを1ステップ下げる(S207)。受光電圧VRiが閾値電圧VS2以下で、閾値電圧VS3よりも大きい場合(S204:YES)、DSP46は、発光タイミングTiにおける発光強度Pwiを変化させない。受光電圧VRiが閾値電圧VS3以下で、閾値電圧VS4よりも大きい場合(S205:YES)、DSP46は、発光タイミングTiにおける発光強度Pwiを1ステップ上げる(S208)。受光電圧VRiが閾値電圧VS4以下の場合(S205:YES)、DSP46は、発光タイミングTiにおける発光強度Pwiを2ステップ上げる(S209)。 …(中略)… 【0079】 なお、図9に示すように、発光強度Pwiは3段階でのみ切替可能であるため、S206またはS207による発光強度Pwiの減少、または、S206またはS207による発光強度Pwiの増加は、この3段階の範囲でのみ行われる。すなわち、3段階の中間の発光強度で発光させたときに、S206の処理(発光強度を2ステップ下げる)が行われても、当該発光タイミングにおける発光強度は、1ステップしか下げられない。 【0080】 こうして発光強度Pwiが調節された発光テーブルは、目標領域の次回の走査において、各発光タイミングにおけるレーザ光源21の発光強度を設定するために用いられる。すなわち、図10のS102では、当該発光タイミングにおける発光強度が、発光テーブルから取得され、取得された発光強度で、当該発光タイミングにおける発光が行われる。」 g 【0087】~【0092】、【図12】 「【0087】 以上、本実施の形態によれば、所定の発光タイミングにおける反射光の強度が閾値電圧VS2を超えると、次回の目標領域の走査の際に、当該発光タイミングにおけるレーザ光の強度が減少される。このため、障害物がレーザレーダ1に接近した位置にある場合にも、強度の高い反射光が光検出器33に入射するのを抑制できる。よって、光検出器33からの信号が飽和して障害物までの距離の測定精度が低下するのを抑制することができる。 【0088】 また、本実施の形態によれば、このようにレーザ光の強度が調節されるため、光検出器33から、急激に立ち上がるパルス信号が出力されるのを抑制することができる。よって、光検出器33からの出力信号が所定の閾値電圧VS0を超えたタイミングを受光タイミングとして障害物までの距離を計測する場合に、計測された距離が反射光の強度差による誤差を含むことを抑制することができる。 【0089】 さらに、本実施の形態によれば、スキャンLD駆動回路44を図9に示す構成としたため、レーザ光源21を発光させるために使用する電位を瞬時に切り替えることができる。よって、図8に示す発光間隔Δtが短くても、発光タイミング毎に、レーザ光の強度を切り替えることができる。 【0090】 また、上記実施の形態では、所定の発光タイミングにおける反射光の強度が閾値電圧VS3を下回ると、次回の目標領域の走査の際に、当該発光タイミングにおけるレーザ光の強度が増加される。よって、目標領域に照射されるレーザ光の強度が弱すぎる状態となるのを抑制することができ、障害物の検出を精度よく行うことができる。 【0091】 本実施の形態によれば、受光パルスのピークが図12の閾値VS2とVS3との間に収束するよう制御される。よって、障害物までの距離が異なっても、受光パルスのピークを同程度に揃えることができ、計測された距離が反射光の強度差による誤差を含むことを抑制することができる。」 「【図12】 [図:0001431760000009.jpg] 」 「【0092】 なお、本実施の形態によれば、図12に示すように、4つの閾値電圧VS1~VS4を用いて、発光強度Pwiの修正ステップ数を受光電圧VRiの大きさに応じて変えるようにしたため、受光パルスのピークが図12の閾値VS2とVS3との間に速やかに収束させることができる。」 (イ) 引用発明の認定 前記(ア)に摘記した引用文献1の記載事項を総合すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。 <引用発明> 「筐体10と、投射光学系20と、受光光学系30と、回路ユニット40と、投射窓50と、受光窓60を備えるレーザレーダ1であって、(【0014】) 投射光学系20は、レーザ光源21と、ビーム整形レンズ22と、ミラーアクチュエータ23とを備え、(【0016】) 受光光学系30は、フィルタ31と、受光レンズ32と、光検出器33とを備え、(【0020】) 光検出器33は、受光光量に応じた大きさの電気信号を回路ユニット40に出力するものであり、(【0020】) 回路ユニット40は、CPUやメモリ等を備え、レーザ光源21およびミラーアクチュエータ23を制御し、光検出器33からの信号に基づいて、目標領域における障害物の有無および障害物までの距離を測定するものであり、(【0021】) 回路ユニット40に含まれている、PSD信号処理回路41と、サーボLD駆動回路42と、アクチュエータ駆動回路43と、スキャンLD駆動回路44と、PD信号処理回路45と、DSP46を備えており、(【0054】) スキャンLD駆動回路44は、DSP46からの信号をもとに、レーザ光源21に駆動信号を供給し、目標領域にレーザ光を照射するタイミングで、パルス状の駆動信号(電流信号)がレーザ光源21に供給され、(【0056】) PD信号処理回路45は、光検出器33の受光光量に応じた電圧信号を増幅およびデジタル化してDSP46に供給するものであり、(【0056】) DSP46は、レーザ光源21から出力されるレーザ光の照射タイミングと、光検出器33にて受光される目標領域からの反射光の受光タイミングの間の時間差をもとに、障害物までの距離を測定し、(【0057】) 各発光タイミングにおけるレーザ光源21の出力が、DSP46により制御され、スキャンLD駆動回路44は、レーザ光源21の出力を3段階に切り替えるための構成を備えており、(【0062】) スキャンLD駆動回路44は、ドライバD1~D3と、FET1~3と、コンデンサC1~C3と、抵抗R1~R3を備えており、コンデンサC1~C3の容量は同じであり、抵抗R1~R3の抵抗値も同じであり、抵抗R1~R3には、それぞれ、電位V1~V3が印加され、電位V1~V3の大きさは、V1>V2>V3となっているため、コンデンサC1に蓄積された電荷が最大となり、コンデンサC3に蓄積された電荷が最小となり、(【0063】) DSP46からドライバD1に駆動信号が印加されると、FET1がオンとなり、コンデンサC1に蓄積された電荷がパルス状にレーザ光源21に流れ、DSP46からドライバD2に駆動信号が印加されると、FET2がオンとなり、コンデンサC2に蓄積された電荷がパルス状にレーザ光源21に流れ、DSP46からドライバD3に駆動信号が印加されると、FET3がオンとなり、コンデンサC3に蓄積された電荷がパルス状にレーザ光源21に流れ、ドライバD1~D3の何れに駆動信号が印加されるかによって、レーザ光源21に流れるパルス状の電流のピーク値が相違し、(【0064】) DSP46は、各発光タイミングにおいて、ドライバD1~D3の何れに駆動信号を印加するかによって、レーザ光源21の出力を切り替え、(【0065】) DSP46は、レーザ光源21の発光タイミングにおいて、ドライバD1~D3の何れかに駆動信号を印加し、レーザ光源21からレーザ光を出射させ、さらに、この発光タイミングから一定の期間、光検出器33の受光光量に応じた電圧信号を取得し、取得した電圧信号のピーク値(最大値)を受光電圧VRとして取得し、そして、取得した受光電圧VRを、当該発光タイミングに対応づけて、内蔵メモリ内の受光テーブルに格納し、(【0067】) 受光テーブルには、目標領域を走査する際の全ての発光タイミングT1~Tnに対応づけて、各発光タイミングについて取得された受光電圧VR1~VRnが格納され、(【0069】) 発光テーブルには、発光タイミングTiに対応付けて発光強度Pwiが保持されており、発光強度は、ドライバD1~D3の何れかに駆動信号が印加されたときのレーザ光の強度であり、発光強度は3段階に切替られるものであり、(【0072】) DSP46は、i番目の発光タイミングTiに対応付けられた受光電圧VRiを受光テーブルから取得し、取得した受光電圧VRiと閾値電圧VS1~VS4(VS1>VS2>VS3>VS4)とを比較し、【0071】 DSP46は、受光電圧VRiが閾値電圧VS1よりも大きい場合、発光タイミングTiにおける発光強度Pwiを2ステップ下げ、受光電圧VRiが閾値電圧VS1以下で、閾値電圧VS2よりも大きい場合、発光タイミングTiにおける発光強度Pwiを1ステップ下げ、受光電圧VRiが閾値電圧VS2以下で、閾値電圧VS3よりも大きい場合、発光タイミングTiにおける発光強度Pwiを変化させず、受光電圧VRiが閾値電圧VS3以下で、閾値電圧VS4よりも大きい場合、発光タイミングTiにおける発光強度Pwiを1ステップ上げ、受光電圧VRiが閾値電圧VS4以下の場合、発光タイミングTiにおける発光強度Pwiを2ステップ上げられ、【0073】 発光強度Pwiは3段階でのみ切替可能であるため、発光強度Pwiの減少、または、発光強度Pwiの増加は、この3段階の範囲でのみ行われ、すなわち、3段階の中間の発光強度で発光させたときに、発光強度を2ステップ下げる処理が行われても、当該発光タイミングにおける発光強度は、1ステップしか下げられず、(【0079】) こうして発光強度Pwiが調節された発光テーブルは、目標領域の次回の走査において、各発光タイミングにおけるレーザ光源21の発光強度を設定するために用いられ、すなわち、当該発光タイミングにおける発光強度が、発光テーブルから取得され、取得された発光強度で、当該発光タイミングにおける発光が行われ、(【0080】) 本実施の形態によれば、所定の発光タイミングにおける反射光の強度が閾値電圧VS2を超えると、次回の目標領域の走査の際に、当該発光タイミングにおけるレーザ光の強度が減少され、このため、障害物がレーザレーダ1に接近した位置にある場合にも、強度の高い反射光が光検出器33に入射するのを抑制でき、よって、光検出器33からの信号が飽和して障害物までの距離の測定精度が低下するのを抑制することができ、(【0087】) 所定の発光タイミングにおける反射光の強度が閾値電圧VS3を下回ると、次回の目標領域の走査の際に、当該発光タイミングにおけるレーザ光の強度が増加され、よって、目標領域に照射されるレーザ光の強度が弱すぎる状態となるのを抑制することができ、障害物の検出を精度よく行うことができ、(【0090】) 受光パルスのピークが閾値VS2とVS3との間に収束するよう制御され、よって、障害物までの距離が異なっても、受光パルスのピークを同程度に揃えることができ、計測された距離が反射光の強度差による誤差を含むことを抑制することができる、(【0091】) レーザレーダ1。」 オ 本件補正発明と引用発明の対比 (ア) 対比分析 本件補正発明と引用発明を対比する。 a 構成Xの観点 引用発明の「レーザレーダ1」が、LIDAR装置と同義であることは技術常識である。 また、引用発明の「レーザレーダ1」は、「光検出器33」を備えるから、光検出を行うものといえる。 したがって、本件補正発明と引用発明は、「光検出及び測距(LIDAR)装置」の発明である点において一致する。 b 構成Aの観点 (a) 構成Aは、「第1の量の電力に応答して、LIDAR装置から3次元環境に照明光のパルスを放出するように構成されたパルス照明源」を具備することである。 (b)i 引用発明における「レーザ光源21」は、「レーザレーダ1」が「備える」ものであるから、「レーザレーダ1」から「レーザ光を照射する」ものといえる。 ii そして、引用発明における「レーザ光源21」は、「目標領域にレーザ光を照射するタイミングで、パルス状の駆動信号(電流信号)が」「供給され[る]」ものであるところ、「目標領域」は、「障害物」が想定されているため、3次元環境であることが明らかであるから、前記i及びaも踏まえると、本件補正発明における「LIDAR装置から3次元環境に照明光のパルスを放出するように構成されたパルス照明源」に相当する。 (c)i 引用発明において、「DSP46からドライバD1に駆動信号が印加されると、FET1がオンとなり、コンデンサC1に蓄積された電荷がパルス状にレーザ光源21に流れ、DSP46からドライバD2に駆動信号が印加されると、FET2がオンとなり、コンデンサC2に蓄積された電荷がパルス状にレーザ光源21に流れ、DSP46からドライバD3に駆動信号が印加されると、FET3がオンとなり、コンデンサC3に蓄積された電荷がパルス状にレーザ光源21に流れ[る]」から、「レーザ光源21」は、「コンデンサC1に蓄積された電荷」、「コンデンサC2に蓄積された電荷」又は「コンデンサC3に蓄積された電荷」のいずれかの電荷が「パルス状にレーザ光源21に流れ[る]」ことに応答して「レーザ光を照射する」ものといえる。 ii そして、引用発明において、「ドライバD1~D3の何れに駆動信号が印加されるかによって、レーザ光源21に流れるパルス状の電流のピーク値が相違[する]」ところ、流れるパルス状の電流のピークの相違することは、電流が流れる際の電力量が相違することを意味するといえるから、「コンデンサC1に蓄積された電荷」、「コンデンサC2に蓄積された電荷」又は「コンデンサC3に蓄積された電荷」のいずれかの電荷が「パルス状にレーザ光源21に流れ[る]」ことに応答して「レーザ光を照射する」ことは、本件補正発明において、「第1の量の電力に応答して」「照明光」「を放出する」ことに相当する。 (d) 前記(b)及び(c)を踏まえると、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。 「第1の量の電力に応答して、LIDAR装置から3次元環境に照明光のパルスを放出するように構成されたパルス照明源」を具備する点。 c 構成Bの観点 (a) 構成Bは、「少なくとも3つの異なる選択可能な量の電力の1つを特定の時間に前記パルス照明源に提供するように構成された照明ドライバであって、前記第1の量の電力は、前記少なくとも3つの異なる選択可能な量の電力のうちの第1の量であることを特徴とする、照明ドライバ」を具備することである。 (b) 引用発明において、「スキャンLD駆動回路44」は、「DSP46からの信号をもとに、レーザ光源21に駆動信号を供給し、目標領域にレーザ光を照射するタイミングで、パルス状の駆動信号(電流信号)がレーザ光源21に供給」されるようにするものであるから、本件補正発明における「照明ドライバ」に相当する。 (c) そして、引用発明における「目標領域にレーザ光を照射するタイミング」は本件補正発明における「特定の時間」に相当し、前記b(c)において説示した事項も踏まえると、引用発明における「スキャンLD駆動回路44」が、本件補正発明における「少なくとも3つの異なる選択可能な量の電力の1つを特定の時間に前記パルス照明源に提供するように構成された」に相当する構成を備えること、及び、「前記第1の量の電力は、前記少なくとも3つの異なる選択可能な量の電力のうちの第1の量であること」に相当する構成を備えることは明らかである。 (d) 前記(b)及び(c)を踏まえると、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。 「少なくとも3つの異なる選択可能な量の電力の1つを特定の時間に前記パルス照明源に提供するように構成された照明ドライバであって、前記第1の量の電力は、前記少なくとも3つの異なる選択可能な量の電力のうちの第1の量であることを特徴とする、照明ドライバ」を具備する点。 d 構成Cの観点 (a) 構成Cは、「照明光の前記パルスによって照明された前記3次元環境から反射された光の量を検出し、検出された光の量を示す戻り測定信号を生成するように構成された感光性検出器」を具備することである。 (b) 引用発明においては、「目標領域からの反射光」は「光検出器33にて受光され」ており、「光検出器33は、受光光量に応じた大きさの電気信号を回路ユニット40に出力するもの」である。 (c) 引用発明における「目標領域からの反射光」は、「レーザ光源21から出力されるレーザ光」が目標領域で反射した光であることが明らかであるから、前記b(b)iiにおいて説示した事項を踏まえると、本件補正発明における「照明光の前記パルスによって照明された前記3次元環境から反射された光」に相当し、引用発明における「目標領域からの反射光」を「受光[する]」「光検出器33」は、本件補正発明における「3次元環境から反射された光の量を検出[する]」「感光性検出器」に相当する。 (d) 引用発明における「光検出器33」は、「受光光量に応じた大きさの電気信号を回路ユニット40に出力するもの」であるから、本件補正発明における「検出された光の量を示す戻り測定信号を生成する」に相当する構成を備えるといえる。 (e) 前記(c)及び(d)を踏まえると、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。 「照明光の前記パルスによって照明された前記3次元環境から反射された光の量を検出し、検出された光の量を示す戻り測定信号を生成するように構成された感光性検出器」を具備する点。 e 構成D1の観点 (a) 構成D1は、「前記検出された光の量を示す戻り測定信号を受信し、前記戻り測定信号の測定強度の表示を決定し、前記戻り測定信号の測定強度と前記戻り測定信号の所望の強度との差を測定し、前記戻り測定信号の測定強度と前記戻り測定信号の所望の強度との間の差を複数の閾値と比較する」「コンピューティングシステム」を具備することである。 (b) 引用発明において、「光検出器33は、受光光量に応じた大きさの電気信号を回路ユニット40に出力」し、「回路ユニット40に含まれている」「PD信号処理回路45は、光検出器33の受光光量に応じた電圧信号を増幅およびデジタル化してDSP46に供給する」ものであるところ、引用発明における「光検出器33の受光光量に応じた電圧信号」は、本件補正発明における「前記検出された光の量を示す戻り測定信号」に相当し、「光検出器33の受光光量に応じた電圧信号」が「供給[される]」「DSP46」は、「前記検出された光の量を示す戻り測定信号を受信[する]」「コンピューティングシステム」に相当する。 (c)i 本件補正後の請求項1を引用する請求項7における「前記戻り測定信号の測定強度の表示が前記1つ以上の戻り測定パルスのピーク値である」との記載を踏まえると、本件補正発明における「戻り測定信号の測定強度の表示」は、「戻り測定パルスのピーク値」を含むと解するのが相当である。 ii そのため、引用発明における「DSP46」は、「取得した電圧信号のピーク値(最大値)を受光電圧VRとして取得」しており、取得した電圧信号のピーク値の決定を行っていることが明らかであるから、前記iの解釈を踏まえると、本件補正発明における「前記戻り測定信号の測定強度の表示を決定し」に相当する構成を備えるといえる。 (d) 引用発明における「DSP46」が、「取得した受光電圧VRiと閾値電圧VS1~VS4(VS1>VS2>VS3>VS4)とを比較[する]」ことは、本件補正発明における「コンピューティングシステム」が、「前記戻り測定信号の測定強度と前記戻り測定信号の所望の強度との差を測定し、前記戻り測定信号の測定強度と前記戻り測定信号の所望の強度との間の差を複数の閾値と比較する」ことと、「戻り測定信号の測定強度に関する値を複数の閾値と比較する」点で共通する。 (e) 以上の検討結果を踏まえると、本件補正発明と引用発明の構成D1の観点における一致点及び相違点は、次のi及びiiに示すとおりである。 i 構成D1の観点における一致点 「前記検出された光の量を示す戻り測定信号を受信し、前記戻り測定信号の測定強度の表示を決定し、戻り測定信号の測定強度に関する値を複数の閾値と比較する」「コンピューティングシステム」を具備する点。 ii 構成D1の観点における相違点 戻り測定信号の測定強度に関する値が、 本件補正発明においては、「前記戻り測定信号の測定強度と前記戻り測定信号の所望の強度との差を測定し」て特定された「前記戻り測定信号の測定強度と前記戻り測定信号の所望の強度との間の差」であるのに対して、 引用発明においては、「受光電圧VRi」である点。 f 構成D2の観点 (a) 構成D2は、「コンピューティングシステム」において、「前記複数の閾値は、前記第1の量の電力に基づいて選択され[る]」ことである。 (b) 引用発明は、本件補正発明の構成D2に相当する構成を備えていないから、本件補正発明と引用発明は、次の点において相違する。 コンピューティングシステムにおいて、 本件補正発明では、「前記複数の閾値は、前記第1の量の電力に基づいて選択され[る]」のに対して、 引用発明においては、「3段階に切替られる」「発光強度」のいずれにおいても、「閾値電圧VS1~VS4」の組が用いられる点。 g 構成D3の観点 (a) 構成D3は、「コンピューティングシステム」において、「前記戻り測定信号の測定強度と前記戻り測定信号の所望の強度との差が、前記複数の閾値のうちのどの閾値を超えているかに基づいて、前記少なくとも3つの異なる選択可能な量の電力から所望の量の電力が選択されることを特徴とする比較を行[う]」ことである。 (b)i 引用発明における「DSP46」は、「受光電圧VRiが閾値電圧VS1よりも大きい場合、発光タイミングTiにおける発光強度Pwiを2ステップ下げ、受光電圧VRiが閾値電圧VS1以下で、閾値電圧VS2よりも大きい場合、発光タイミングTiにおける発光強度Pwiを1ステップ下げ、受光電圧VRiが閾値電圧VS2以下で、閾値電圧VS3よりも大きい場合、発光タイミングTiにおける発光強度Pwiを変化させず、受光電圧VRiが閾値電圧VS3以下で、閾値電圧VS4よりも大きい場合、発光タイミングTiにおける発光強度Pwiを1ステップ上げ、受光電圧VRiが閾値電圧VS4以下の場合、発光タイミングTiにおける発光強度Pwiを2ステップ上げ[る]」設定(以下「DSP46発光強度設定」という。)を行うものである。 ii 引用発明において、「発光強度Pwi」を「2ステップ下げ[る]」こと、「1ステップ下げ[る]」こと、「変化させ[ない]」こと、「1ステップ上げ[る]」こと、及び、「2ステップ上げ[る]」ことは、「コンデンサC1に蓄積された電荷」、「コンデンサC2に蓄積された電荷」又は「コンデンサC3に蓄積された電荷」のいずれかの電荷が「パルス状にレーザ光源21に流れ[る]」かを設定することにほかならないから、前記b(c)において説示した事項も踏まえると、本件補正発明における「前記少なくとも3つの異なる選択可能な量の電力から所望の量の電力が選択される」ことに相当する。 iii したがって、引用発明において、「DSP46」が、「DSP46発光強度設定」を行うことは、本件補正発明における「コンピューティングシステム」が、「前記戻り測定信号の測定強度と前記戻り測定信号の所望の強度との差が、前記複数の閾値のうちのどの閾値を超えているかに基づいて、前記少なくとも3つの異なる選択可能な量の電力から所望の量の電力が選択されることを特徴とする比較を行[う]」ことと、「前記戻り測定信号の測定強度に関する値が、前記複数の閾値のうちのどの閾値を超えているかに基づいて、前記少なくとも3つの異なる選択可能な量の電力から所望の量の電力が選択されることを特徴とする比較を行[う]」点で共通する。 (c) 以上の検討結果を踏まえると、本件補正発明と引用発明の構成D3の観点における一致点及び相違点は、次のi及びiiに示すとおりである。 i 構成D3の観点における一致点 「前記戻り測定信号の測定強度に関する値が、前記複数の閾値のうちのどの閾値を超えているかに基づいて、前記少なくとも3つの異なる選択可能な量の電力から所望の量の電力が選択されることを特徴とする比較を行[う]」点。 ii 構成D3の観点における相違点 戻り測定信号の測定強度に関する値が、 本件補正発明においては、「前記戻り測定信号の測定強度と前記戻り測定信号の所望の強度との間の差」であるのに対して、 引用発明においては、「受光電圧VRi」である点。 h 構成D4の観点 (a) 構成D4は、「コンピューティングシステム」が、「前記戻り測定信号の測定強度を前記LIDAR装置の線形範囲内に維持するために、前記照明ドライバに前記所望の量の電力を選択させるための制御コマンドを、前記照明ドライバに伝達することを特徴とする」ものであることである。 (b)i 本願明細書の発明の詳細な説明における【0012】、【0047】等の記載を参酌すると、本件補正発明において、「前記LIDAR装置の線形範囲内」であることは、LIDAR装置におけるADC(アナログ・デジタル変換器)の線形範囲内であることを包摂すると解するのが相当である。 ii 引用発明における「PD信号処理回路45」は、「光検出器33の受光光量に応じた電圧信号を増幅およびデジタル化してDSP46に供給する」から、アナログ・デジタル変換器を備えることが明らかである。 そして、引用発明は、前記「DSP46発光強度設定」を行うことによって、「次回の目標領域の走査の際に」、下記(i)~(iii)の効果を得ようとするものであるから、アナログ・デジタル変換器に入力される受光光量に応じた電圧信号を、アナログ・デジタル変換器の線形範囲内に収めようとするものであることが明らかである。 (i) 「障害物がレーザレーダ1に接近した位置にある場合にも、強度の高い反射光が光検出器33に入射するのを抑制でき、よって、光検出器33からの信号が飽和して障害物までの距離の測定精度が低下するのを抑制することができ[る]」こと (ii) 「目標領域に照射されるレーザ光の強度が弱すぎる状態となるのを抑制することができ、障害物の検出を精度よく行うことができ[る]」こと。 (iii) 「障害物までの距離が異なっても、受光パルスのピークを同程度に揃えることができ、計測された距離が反射光の強度差による誤差を含むことを抑制することができる」こと iii 前記i及びiiから、引用発明における前記「DSP46発光強度設定」に基づく「次回の目標領域の走査」が、本件補正発明における「前記戻り測定信号の測定強度を前記LIDAR装置の線形範囲内に維持するため」に相当する目的で行われることは明らかである。 (c) したがって、引用発明において、「DSP46」によって、「次回の目標領域の走査」の際に、前記「DSP46発光強度設定」に基づいて「スキャンLD駆動回路44」の「ドライバD1~D3の何れかに駆動信号が印加される」ことは、本件補正発明において、「コンピューティングシステム」が、「前記戻り測定信号の測定強度を前記LIDAR装置の線形範囲内に維持するために、前記照明ドライバに前記所望の量の電力を選択させるための制御コマンドを、前記照明ドライバに伝達すること」と、「コンピューティングシステム」が、「前記戻り測定信号の測定強度を前記LIDAR装置の線形範囲内に維持するために、前記照明ドライバに前記所望の量の電力を選択させるための処理を行う」点で共通する。 (d) 以上の検討結果を踏まえると、本件補正発明と引用発明の構成D4の観点における一致点及び相違点は、次のi及びiiに示すとおりである。 i 構成D4の観点における一致点 「コンピューティングシステム」が、「前記戻り測定信号の測定強度を前記LIDAR装置の線形範囲内に維持するために、前記照明ドライバに前記所望の量の電力を選択させるための処理を行う」点。 ii 構成D4の観点における相違点 照明ドライバに前記所望の量の電力を選択させるための処理が、 本件補正発明においては、「照明ドライバに前記所望の量の電力を選択させるための制御コマンドを、前記照明ドライバに伝達すること」であるのに対して、 引用発明においては、「DSP46からドライバD1に駆動信号が印加されると、FET1がオンとなり」、「DSP46からドライバD2に駆動信号が印加されると、FET2がオンとなり」、「DSP46からドライバD3に駆動信号が印加されると、FET3がオンとな[る]」点。 (イ) 一致点及び相違点 前記(ア)の対比分析の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次のaに示す一致点において一致し、後記bに示す相違点において相違すると認められる。 a 一致点 「第1の量の電力に応答して、LIDAR装置から3次元環境に照明光のパルスを放出するように構成されたパルス照明源と、 少なくとも3つの異なる選択可能な量の電力の1つを特定の時間に前記パルス照明源に提供するように構成された照明ドライバであって、前記第1の量の電力は、前記少なくとも3つの異なる選択可能な量の電力のうちの第1の量であることを特徴とする、照明ドライバと、 照明光の前記パルスによって照明された前記3次元環境から反射された光の量を検出し、検出された光の量を示す戻り測定信号を生成するように構成された感光性検出器と、 コンピューティングシステムであって、 前記検出された光の量を示す戻り測定信号を受信し、 前記戻り測定信号の測定強度の表示を決定し、 戻り測定信号の測定強度に関する値を複数の閾値と比較することであって、前記戻り測定信号の測定強度に関する値が、前記複数の閾値のうちのどの閾値を超えているかに基づいて、前記少なくとも3つの異なる選択可能な量の電力から所望の量の電力が選択されることを特徴とする比較を行い、 前記戻り測定信号の測定強度を前記LIDAR装置の線形範囲内に維持するために、前記照明ドライバに前記所望の量の電力を選択させるための処理を行うことを特徴とする、 コンピューティングシステムと、 を具備する光検出及び測距(LIDAR)装置」の発明である点。 b 相違点 (a) 相違点1 戻り測定信号の測定強度に関する値が、 本件補正発明においては、「前記戻り測定信号の測定強度と前記戻り測定信号の所望の強度との差を測定し」て特定された「前記戻り測定信号の測定強度と前記戻り測定信号の所望の強度との間の差」であるのに対して、 引用発明においては、「受光電圧VRi」である点。 (b) 相違点2 コンピューティングシステムにおいて、 本件補正発明では、「前記複数の閾値は、前記第1の量の電力に基づいて選択され[る]」のに対して、 引用発明においては、「3段階に切替られる」「発光強度」のいずれにおいても、「閾値電圧VS1~VS4」の組が用いられる点。 (c) 相違点3 照明ドライバに前記所望の量の電力を選択させるための処理が、 本件補正発明においては、「照明ドライバに前記所望の量の電力を選択させるための制御コマンドを、前記照明ドライバに伝達すること」であるのに対して、 引用発明においては、「DSP46からドライバD1に駆動信号が印加されると、FET1がオンとなり」、「DSP46からドライバD2に駆動信号が印加されると、FET2がオンとなり」、「DSP46からドライバD3に駆動信号が印加されると、FET3がオンとな[る]」ことである点。 カ 判断 (ア) 相違点1について a 引用発明において、「受光パルスのピークが閾値VS2とVS3との間に収束するよう制御され、よって、障害物までの距離が異なっても、受光パルスのピークを同程度に揃えることができ、計測された距離が反射光の強度差による誤差を含むことを抑制することができる」効果に関し、「閾値VS2とVS3との間」が狭いほど高い効果が見込めることが明らかであるから、当業者であれば、受光パルスのピークが「閾値VS2とVS3の間」の特定の値、例えば中間値、に近いほど、上記効果に照らして望ましいことを観念できるといえる。 ここで、参考図として、引用文献1の図12に、閾値VS2とVS3の間の中間値VS2-3、及び、受光パルスのピークに該当する「受光電圧VRi」を加筆した図を示す。 <参考図> [図:0001431760000010.jpg] b そして、前記aに示した参考図からも明らかであるが、引用発明のように、閾値電圧VS1~VS4に対する受光電圧VRiの大小関係を比較する処理を行う場合と、閾値電圧VS1~VS4と中間値VS2-3の差に対する受光電圧VRiと中間値VS2-3の差の大小関係を比較する処理を行う場合とで、その処理結果に差異は生じないから、いずれの処理を採用するかは、当業者が適宜決定すべき設計上の微差にすぎない。 c したがって、引用発明において、中間値VS2-3と閾値電圧VS1~VS4の差に対する中間値VS2-3と受光電圧VRiの差の大小関係を比較する処理を行うようにすることは、当業者であれば適宜なし得たことであり、この場合、「中間値VS2-3」、「受光電圧VRiと中間値VS2-3の差」及び「閾値電圧VS1~VS4と中間値VS2-3の差」は、それぞれ、本件補正発明における「戻り測定信号の所望の強度」、「前記戻り測定信号の測定強度と前記戻り測定信号の所望の強度との差」及び「複数の閾値」に相当するから、そのようにして得られた発明は、前記相違点1に係る本件補正発明の構成を備えることになる。 (イ) 相違点2について a 前記オ(イ)b(b)において説示したとおり、引用発明においては、「3段階に切替られる」いずれの「発光強度」においても同じ閾値電圧の組が用いられており、「発光強度」に基づいた閾値電圧の選択がなされていない。 b ここで、引用発明においては、「発光強度Pwiは3段階でのみ切替可能であるため、発光強度Pwiの減少、または、発光強度Pwiの増加は、この3段階の範囲でのみ行われ[る]」から、「3段階の中間の発光強度で発光させたときに、発光強度を2ステップ下げる処理が行われても、当該発光タイミングにおける発光強度は、1ステップしか下げられ」ない。 このことは、3段階の中間の発光強度で発光させた場合の「受光電圧VRi」と閾値の比較を行う際に、発光強度の1ステップの上げ下げに関わる「閾値電圧VS2」及び「VS3」を用いれば十分で、発光強度の2ステップの上げ下げに関わる「閾値電圧VS1」及び「VS4」を用いる必要性は低いこと示唆する。 同様にして、引用発明における上記構成から、3段階の一番強い発光強度で発光させた場合の「受光電圧VRi」と閾値の比較を行う際に、発光強度を上げる制御に関わる「閾値電圧VS3」及び「VS4」を用いた比較が、次回の目標領域の走査の際の発光強度の制御に反映されず、3段階の一番弱い発光強度で発光させた場合の「受光電圧VRi」と閾値の比較を行う際に、発光強度を下げる制御に関わる「閾値電圧VS1」及び「VS2」を用いた比較が、次回の目標領域の走査の際の発光強度の制御に反映されないと解することができる。 c そして、制御にとって必要性の低い閾値との比較を省略しようとすることは、当業者が備える通常の創作能力の発揮にすぎないから、引用発明において、前記bの事情を踏まえて、下記(a)~(c)の閾値電圧の組を用いるように構成することは、当業者にとって自明な設計事項にすぎない。 (a) 3段階の中間の発光強度で発光させた場合の「受光電圧VRi」と閾値の比較を行う際に、「閾値電圧VS2」及び「VS3」の組 (b) 3段階の一番強い発光強度で発光させた場合の「受光電圧VRi」と閾値の比較を行う際に、「閾値電圧VS1」及び「VS2」の組 (c) 3段階の一番弱い発光強度で発光させた場合の「受光電圧VRi」と閾値の比較を行う際に、「閾値電圧VS3」及び「VS4」の組 d ここで、前記cにおいて採用される構成によって、発光強度に基づいて、「閾値電圧VS1」~「VS4」の中から必要な閾値が選択されることになるから、前記cによって得られる発明は、前記相違点2に係る本件補正発明の構成を備えるといえる。 e なお、前記c(b)の場合に、一番強い発光強度で発光させた場合でも受光強度が低いことの報知を行うために適宜設定した閾値電圧を追加で用いるようにし、前記c(c)の場合に、一番弱い発光強度で発光させた場合でも受光強度が高いことの報知を行うために適宜設定した閾値電圧を追加で用いるようにすることも、格別困難なことではない。 (ウ) 相違点3について a(a) 引用発明における、「DSP46からドライバD1に」「印加される」「駆動信号」、「DSP46からドライバD2に」「印加される」「駆動信号」、及び、「DSP46からドライバD3に」「印加される」「駆動信号」は、「スキャンLD駆動回路44」の「ドライバD1」~「D3」に伝達するコマンドであるといえるから、本件補正発明における、「照明ドライバに伝達する」「制御コマンド」に相当するといえる。 (b) また、引用発明において、「駆動信号」によって、「スキャンLD駆動回路44」の「ドライバD1」~「D3」の「FET1~3」のいずれかが「がオンとな[る]」ことは、これにより「駆動信号」によって「スキャンLD駆動回路44」の内部において「コンデンサC1に蓄積された電荷」、「コンデンサC2に蓄積された電荷」又は「コンデンサC3に蓄積された電荷」のいずれの電荷が「パルス状にレーザ光源21に流れ[る]」かが選択されるから、本件補正発明において、「制御コマンド」によって「照明ドライバ」が「前記所望の量の電力を選択[する]」ことに相当する。 そのため、引用発明における「駆動信号」は、本件補正発明でいうところの「前記照明ドライバに前記所望の量の電力を選択させるための制御コマンド」に相当するといえる。 (c) してみると、引用発明は、本件補正発明における「照明ドライバに前記所望の量の電力を選択させるための制御コマンドを、前記照明ドライバに伝達する」に相当する構成を備えるといえるから、前記相違点3が実質的な相違点であるとは認められない。 b また、本件補正発明において、「照明ドライバに前記所望の量の電力を選択させる」ことは、「照明ドライバ」の内部において、伝達された「制御コマンド」に基づいてどの電力を選択するかの決定を行うようにすることを意味すると解すべきであって、引用発明においては、「スキャンLD駆動回路44」の内部においては、「駆動信号」が「印加される」「FET」が「オン」となるだけで、実質的にそのような決定を行っていないから、前記相違点3が実質的な相違点であるとしたとしても、どの電力を選択するかの決定をどの回路に行わせるかは当業者が適宜決定すべき事項であるから、引用発明において、そのような決定を「スキャンLD駆動回路44」に行わせるようにすべく、前記相違点3に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、当業者にとって自明な設計的事項にすぎない。 (エ) 総合評価 前記(ア)~(ウ)において検討したとおり、引用発明において、前記相違点1~3に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、引用発明に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。 そして、相違点1~3を総合的に勘案しても、本件補正発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。 したがって、本件補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (オ) 請求人の主張について a 請求人の主張内容 請求人は、審判請求書において、引用発明においては、閾値そのものは変化せず固定された値となり、受光電圧が2つの固定された値の間になるよう発光強度を調整するために用いられており、閾値は、第1の量の電力に基づいて選択されるものではなく、本件補正発明は、複数の閾値が第1の量の電力に基づいて選択される点で、このような機能を有しない引用発明と異なる旨を主張している。 b 請求人の主張についての検討 請求人の主張は前記相違点2に係る構成についてのものであるところ、引用発明において前記相違点2に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることが、当業者が容易に想到し得たことであることは、前記(イ)において説示したとおりである。 また、仮に、請求人の主張に基づき、本件補正発明には、固定された複数の閾値の中から適切な閾値を選択する場合が含まれないと善解したとしても、引用発明において固定された閾値以外の閾値を用いるようにすることは、前記(イ)eにおいて説示した観点や、測定条件に応じた閾値を設定する観点で、当業者であれば適宜なし得たことである。 したがって、請求人の主張は、前記(エ)の結論を左右するものでない。 (カ) 独立特許要件の判断のまとめ 以上検討のとおり、本件補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 したがって、本件補正により請求項1についてする補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合しない。 (3) 本件補正の却下の決定の理由のむすび 前記(1)において検討したとおり、本件補正は、特許法第184条の12第2項において読み替えて準用する同法17条の2第3項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 また、前記(2)において検討したとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 したがって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明について 本件補正は、前記第2のとおり却下したので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(前記第2の1(1)参照)に記載された事項により特定されるとおりのものである。 2 原査定における拒絶の理由の概要 原査定の本願発明に対する拒絶の理由2(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。 理由2(進歩性の欠如) 本願発明は、最先の優先日前に発行された下記の引用文献に記載された発明に基づいて、最先の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 記 <主たる引用文献> 引用文献1.特開2012-093195号公報 <周知技術を示す文献> 引用文献3.特表2017-530261号公報 引用文献4.特開2007-324716号公報 引用文献5.特開昭60-64283号公報 3 引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定等 引用文献1に記載された事項及び引用発明は、前記第2の2(2)エ(ア)及び(イ)において示したとおりである。 4 対比 前記第2の2(2)オ(ア)の対比分析における検討結果を踏まえて、本願発明と引用発明を対比すると、両者は、前記第2の2(2)オ(イ)bに示した相違点1及び3で相違し、その余の点で一致する。 5 判断 前記第2の2(2)カ(ア)及び(ウ)において説示した判断を踏まえると、前記相違点1及び3に係る本願発明の構成は、引用発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。 そして、相違点1及び3を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果としては、当該構成のものとして、引用発明からは予測困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。 したがって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。 第4 むすび 以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-011470

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