特許拒絶査定不服審判
2023-014346
信号生成装置
- 審判番号
- 2023-014346
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-537396外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年08月25日
- 審決日
- 2024年12月25日
- 公報発行日
- 2025年04月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人酒井国際特許事務所
- 分類
- P18 .561-Z (G01S) / P18 .571-Z (G01S) / P18 .572-Z (G01S) / P18 .573-Z (G01S) / P18 .574-Z (G01S) / P18 .121-Z (G01S)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項、特許法第29条、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-537396「信号生成装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 元年 6月27日国際公開、WO2019/123831〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)10月25日を国際出願日とする日本語特許出願であって(優先権主張 平成29年12月22日)、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。なお、以下、平成29年12月22日を「優先日」という。
令和4年 8月29日付け:拒絶理由通知書
同年11月 4日 :意見書、手続補正書の提出
令和5年 1月24日付け:拒絶理由通知書(最後)
同年 3月29日 :意見書、手続補正書の提出
同年 6月22日付け:補正の却下の決定
同日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月27日 :原査定の謄本の送達)
同年 8月25日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和5年8月25日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年8月25日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 補正の内容
令和5年8月25日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について補正するものであり、この補正により、次の(1)に示す本件補正前(令和4年11月4日にされた手続補正後をいう。)の請求項1が、後記の(2)に示す本件補正後の請求項1に補正された。下線は、補正箇所を示す。
(1) 本件補正前の請求項1
「【請求項1】
測距対象に光を照射する光源に供給するパルスを生成する第1のパルス生成器と、
前記測距対象で反射された光を受光する画素に供給するパルスを生成する第2のパルス生成器と、
を備え、各前記パルス生成器は、
入力信号を用いて、前記測距対象の測距に用いる出力するパルスの位相を決定する第1のカウンタと、
前記入力信号を用いて、前記パルスの周波数を決定する第2のカウンタと、
を備え、
前記第1のパルス生成器は、第1のデューティの信号を生成し、
前記第2のパルス生成器は、前記第1のデューティとは異なる第2のデューティの信号を生成する、信号生成装置。」
(2) 本件補正後の請求項1
「【請求項1】
測距対象に光を照射する光源に供給するパルスを生成する第1のパルス生成器と、
前記測距対象で反射された光を受光する画素に供給するパルスを生成する第2のパルス生成器と、
を備え、各前記パルス生成器は、
入力信号を用いて、前記測距対象の測距に用いる出力するパルスの位相を決定する第1のカウンタと、
前記入力信号を用いて、前記パルスの周波数を第1の周波数又は前記第1の周波数より高い第2の周波数のいずれかに決定する第2のカウンタと、
を備え、
前記第1のパルス生成器は、第1のデューティの信号を生成し、
前記第2のパルス生成器は、前記第1のデューティとは異なる第2のデューティの信号を生成し、
前記パルスの周波数が前記第1の周波数である場合、前記第1のデューティは50%未満であり、前記第2のデューティは50%である、信号生成装置。」
2 本件補正の適否(新規事項の追加の有無)
本件補正が、願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載された事項の範囲内においてしたものであるかについて以下検討する。
(1) 本件補正の内容
ア 本件補正後の請求項1の記載は、前記1(2)に示したとおりであるところ、本件補正により、
(ア) 本件補正前の「第1のパルス生成器」及び「第2のパルス生成器」のそれぞれが備える「入力信号を用いて、前記パルスの周波数を決定する第2のカウンタ」が、「入力信号を用いて、前記パルスの周波数を第1の周波数又は前記第1の周波数より高い第2の周波数のいずれかに決定する第2のカウンタ」であるとして、「第2のカウンタ」により「決定」される「パルスの周波数」が、「第1の周波数又は前記第1の周波数より高い第2の周波数のいずれか」であることに限定されるとともに、
(イ) 本件補正前の「前記第1のパルス生成器」が生成する「第1のデューティの信号」、「前記第2のパルス生成器」が生成する「前記第1のデューティとは異なる第2のデューティの信号」について、本件補正後は「前記パルスの周波数が前記第1の周波数である場合、前記第1のデューティは50%未満であり、前記第2のデューティは50%である」としており、「パルスの周波数」と「第1のデューティ」及び「第2のデューティ」との関係が限定された。
イ 本件補正後のパルスの周波数とデューティの関係について
(ア) 本件補正後の請求項1には、「第1のデューティ」及び「第2のデューティ」(以下、それぞれ「D1」及び「D2」とする。)について、「第2のカウンタ」が「決定」する「パルスの周波数」(以下「f」とする。)が「第1の周波数」(以下「f1」とする。)である場合、「前記第1のデューティは50%未満であり、前記第2のデューティは50%である」と特定されているところ、これは、次の「周波数-デューティ構成A」として定式化される。
<周波数-デューティ構成A>
f=f1の場合、D1<50%、D2=50%
(イ) 本件補正後の請求項1は、前記パルスの周波数fが、第1の周波数f1より高い第2の周波数(以下「f2」とする。f1<f2の関係が成り立つ。)である場合、「第1のデューティ」及び「第2のデューティ」については、両者が異なるものであること(すなわち、D1≠D2であること)以外に何も特定されていない。
(ウ) そうすると、本件補正後の請求項1に記載される発明においては、次に示す構成が含まれることになる(以下、この構成を「周波数-デューティ構成B」という。)。
<周波数-デューティ構成B>
f=f2の場合、D1>50%、D2=50%
(2) 当初明細書等の記載
前記(1)に示した「周波数-デューティ構成A」と「周波数-デューティ構成B」を比べると、f=f1、f=f2のいずれの場合であっても、D2=50%であって共通するが、D1については、f=f1、f=f2のいずれの場合であるかによって、とり得る値の範囲が異なるものである。
そこで以下では、D1(すなわち、「測距対象に光を照射する光源に供給するパルス」のデューティ)に関する事項に着目して、当初明細書等の記載を検討すると、当初明細書等には次の記載がある(下線は当合議体が付した。)。
「【0198】
しかし、このデューティが50%の光源出力信号に基づいて発光させると、測距原理(コンティニュアス方式)によるサイクリックエラーが発生し、このサイクリックエラーによって測距誤差が発生しうる。図38は、サイクリックエラーによって測距誤差が発生する様子を示す説明図である。上段は、光源からの発光の波形が正弦波の場合を示し、下段は、光源からの発光の波形が方形波の場合を示している。それぞれのグラフは横軸に遅延量をとっており、値が100のときに遅延量が360度となるようにしている。コンティニュアス方式は、信号を理想サイン波として計算する。サイン波の光源出力信号で発光させる場合であれば、上段右側のグラフのように、位相遅延量に歪みは生じない。一方、方形波の光源出力信号で発光させる場合では、下段右側のグラフのように位相遅延量に歪みが生じる。この歪みは、そのまま測距のリニアリティを悪化させる原因となる。既存の距離画像センサは、ソフトウェア的にこの歪みを補正することで対処しているが、長距離の測距ほど、サイクリックエラーによる誤差が大きくなるために、影響が大きくなる。」
「【図38】
[図:0001420921000001.jpg]
」
「【0199】
そこで本件開示者は、上述した点に鑑み、特にインダイレクト方式を採用したToFカメラシステムに用いられる技術であって、簡易な構成でサイクリックエラーによって測距誤差を低減させることが可能な技術について鋭意検討を行った。その結果、本件開示者は、以下で説明するように、特にインダイレクト方式を採用したToFカメラシステムに用いられる技術であって、簡易な構成でサイクリックエラーによって測距誤差を低減させることが可能な構成を考案するに至った。
【0200】
本実施形態に係る距離画像センサは、光源出力信号のデューティを変化させることで、具体的には、光源出力信号のデューティを50%より小さくすることで、このサイクリックエラーを低減させる。そのために本実施形態に係る距離画像センサは、デューティを50%より小さくした光源出力信号を生成するパルス生成器を設ける。図39は、デューティが50%より小さい、30%及び25%の光源出力信号の波形の例を示す説明図である。」
「【図39】
[図:0001420921000002.jpg]
」
「【0209】
このように、異なるデューティの信号を切り替えて選択して光源出力信号とすることで、例えば、遠距離の物体を測距する場合と、近距離の物体を測距する場合とで、異なる周波数で光源を発光させて、かつ、デューティを50%より小さくして、サイクリックエラーを低減させることができる。
【0210】
なお、本実施形態では、光源出力信号のデューティを50%と、50%未満の数字との中から選択する例を示したが、本開示は係る例に限定されるものでは無い。
【0211】
図44は、本開示の実施の形態に係るToF方式の距離画像センサの駆動例を示す説明図である。図44に示したのは、遠距離の物体の測距と、近距離の物体の測距とで、光源からの発光の周波数及びデューティを変化させている例である。」
「【図44】
[図:0001420921000003.jpg]
」
「【0212】
図44に示した例では、遠距離の物体の測距の際には、20MHzの周波数で、デューティ32%で光源から発光させ、近距離の物体の測距の際には、80MHzの周波数で、デューティ32%で光源から発光させている。そして図44に示した例では、遠距離の物体の測距と、近距離の物体の測距とにおいて、それぞれ0度、90度、180度、270度の4相での測距を行っている。
【0213】
本開示の実施の形態に係るToF方式の距離画像センサは、このように光源から発光させることでサイクリックエラーを低減させることができる。
【0214】
図45は、本開示の実施の形態に係るToF方式の距離画像センサの動作例を示す流れ図である。距離画像センサは、測距対象の物体が遠距離(所定の距離以上遠距離)にあるかどうか判定する(ステップS101)。遠距離であれば、低い周波数での測距を実施し(ステップS102)、遠距離のデプスマップを生成する(ステップS103)。距離画像センサは、この測距において光源を50%より小さいデューティで発光させる。そして距離画像センサは、遠距離のデプスマップに基づき、測距対象の物体の位置を推定(演算)する(ステップS104)。」
「【図45】
[図:0001420921000004.jpg]
」
「【0215】
一方、距離画像センサは、測距対象の物体が近距離にあれば、高い周波数での測距を実施し(ステップS105)、近距離のデプスマップを生成する(ステップS106)。距離画像センサは、この測距において光源を50%より小さいデューティで発光させる。そして距離画像センサは、近距離のデプスマップに基づき、測距対象の物体の位置を推定(演算)する(ステップS107)。
【0216】
このように、本開示の実施の形態に係るToF方式の距離画像センサは、光源から発光させる際に、設定により異なるデューティで発光させることが出来る。この際、光源を50%より小さいデューティで発光させることで、本開示の実施の形態に係るToF方式の距離画像センサは、サイクリックエラーの影響を低減させて、測距の精度を高めることが可能となる。」
(3) 新規事項の判断
ア 前記(2)をまとめると、当初明細書等には、次の(ア)~(オ)の事項が記載されていると認められる。
(ア) デューティがD1=50%の光源出力信号に基づいて発光させると、測距原理(コンティニュアス方式)によるサイクリックエラーが発生し、このサイクリックエラーによって測距誤差が発生し、長距離の測距ほど、サイクリックエラーによる誤差が大きくなること。(【0198】)
(イ) 光源出力信号のデューティをD1<50%とすることで、このサイクリックエラーを低減させること。(【0200】)
(ウ) 遠距離の物体を測距する場合(f=f1の場合)と、近距離の物体を測距する場合(f=f2の場合)とで、異なる周波数(f1<f2)で光源を発光させて、かつ、デューティをD1<50%として、サイクリックエラーを低減させること。(【0209】)
(エ) 遠距離の物体の測距(f=f1の場合)と、近距離の物体の測距(f=f2の場合)とで、光源からの発光の周波数(f)及びデューティ(D1)を変化させている例として、遠距離の物体の測距の際には、f1=20MHzの周波数で、デューティD1=32%で光源から発光させ、近距離の物体の測距の際には、f2=80MHzの周波数で、デューティD1=32%で光源から発光させていること。(【0211】、【0212】、【図44】)
(オ) 距離画像センサは、測距対象の物体が遠距離にあれば、低い周波数(f1)での測距を実施し、この測距において光源をデューティD1<50%で発光させ、近距離にあれば、高い周波数(f2)での測距を実施し、この測距において光源をデューティD1<50%で発光させること。(【0214】、【0215】、【図45】)
イ 前記アを踏まえると、当初明細書等には、遠距離の物体を測距する場合(f=f1の場合)と、近距離の物体を測距する場合(f=f2の場合)とで、異なる周波数(f1<f2)で光源を発光させることは記載されているものの、いずれの場合においても、サイクリックエラーを低減させるために、デューティをD1<50%にすることが記載されており、第1の周波数(遠距離にある物体を測距する低い周波数)の場合(f=f1の場合)のみデューティをD1<50%とし、第2の周波数(近距離にある物体を測距する高い周波数)の場合(f=f2の場合)は、デューティをD1>50%にすることは、当初明細書等には記載も示唆もされていない。
ウ また、前記ア(ア)の段落【0198】には、長距離の測距(f=f1の場合)ほど、サイクリックエラーによる誤差が大きくなることが記載されているものの、近距離の測距(f=f2の場合)においてもサイクリックエラーによる誤差があり、前記ア(ウ)~(オ)のとおり、遠距離及び近距離のいずれの測定の場合においても、デューティをD1<50%として、サイクリックエラーを低減させることしか記載されていないのであるから、段落【0198】の記載をもって、遠距離の場合(f=f1の場合)は、デューティをD1<50%とし、近距離の場合(f=f2の場合)は、デューティをD1>50%にすることが示されているものとは認められない。
エ したがって、前記(1)イ(ウ)に示した「周波数-デューティ構成B」は、当初明細書等に明示的な記載がなく、当該箇所の記載から自明であるとも認められないから、かかる「周波数-デューティ構成B」を含むような本件補正は、当初明細書等に記載された全ての事項を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。
3 本件補正の適否(目的該当性違反)
次に、本件補正前の請求項1に記載された発明の解決しようとする課題と、本件補正後の請求項1に記載される発明の解決しようとする課題が、同一かどうかについて検討する。
(1) 本件補正前の課題
ア 前記1(1)に示した、本件補正前の請求項1に係る発明は、次の構成を備えるものである。
「パルス生成器は、入力信号を用いて、前記測距対象の測距に用いる出力するパルスの位相を決定する第1のカウンタと、前記入力信号を用いて、前記パルスの周波数を決定する第2のカウンタと、を備え[る]」
イ 上記構成に関して、本願明細書には次の記載がある。
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インダイレクト方式を採用したToFカメラシステムでは、光をパルス状に照射するが、そのパルスを生成するパルス生成器を様々な周波数や位相の設定に対応するためには、従来は回路規模を増大させなければならなかった。
【0006】
そこで、本開示では、特にインダイレクト方式を採用したToFカメラシステムに用いられるパルス生成器であって、簡易な構成で様々な周波数や位相の設定に対応することが可能な、新規かつ改良されたパルス生成器および信号生成装置を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示によれば、入力信号を用いて、測距対象の測距に用いる出力するパルスの位相を決定する第1のカウンタと、前記入力信号を用いて、前記パルスの周波数を決定する第2のカウンタと、を備える、パルス生成器が提供される。
【0008】
また本開示によれば、測距対象に光を照射する光源に供給するパルスを生成する第1のパルス生成器と、前記測距対象で反射された光を受光する画素に供給するパルスを生成する第2のパルス生成器と、を備え、各前記パルス生成器は、入力信号を用いて、前記測距対象の測距に用いる出力するパルスの位相を決定する第1のカウンタと、前記入力信号を用いて、前記パルスの周波数を決定する第2のカウンタと、を備える、信号生成装置が提供される。」
ウ 前記ア及びイを踏まえると、本件補正前の請求項1に記載された発明の解決しようとする課題は、次のとおりであると認められる。
「インダイレクト方式を採用したToFカメラシステムに用いられるパルス生成器であって、従来のように回路規模を増大させることなく、簡易な構成で様々な周波数や位相の設定に対応することが可能なパルス生成器を提供すること。」
(2) 本件補正後の課題
ア 一方、前記1(2)に示した、本件補正後の請求項1に係る発明は、本件補正により、新たに次の構成を備えるものである。
「入力信号を用いて、前記パルスの周波数を第1の周波数又は前記第1の周波数より高い第2の周波数のいずれかに決定する第2のカウンタ」
「前記パルスの周波数が前記第1の周波数である場合、前記第1のデューティは50%未満であり、前記第2のデューティは50%である」
イ 上記構成に関して、本願明細書には、前記2(2)において示した「測距対象に光を照射する光源に供給するパルス」のデューティに関する事項が記載されている。
ウ また、審判請求書の(3)において、請求人は、次のとおり主張している。
「[拒絶に対する意見]
新請求項1に係る発明(以下、本願発明とも記載します)は、「前記パルスの周波数を第1の周波数又は前記第1の周波数より高い第2の周波数のいずれかに決定」し、「前記パルスの周波数が前記第1の周波数である場合、前記第1のデューティは50%未満であり、前記第2のデューティは50%である」という技術的特徴を有します。
ここで、長距離の測距ほどサイクリックエラーによる誤差が大きくなります(段落[0197]参照)。そのため、本願発明では、パルスの周波数が、長距離を測定するための「前記第1の周波数である場合、前記第1のデューティは50%未満であり、前記第2のデューティは50%である」とします。これにより、本願発明は、サイクリックエラーによる誤差が大きくなる長距離の測距でも、このサイクリックエラーを低減することができます。」
エ 前記ア~ウを踏まえると、本件補正後の請求項1に記載される発明の解決しようとする課題には、次のとおりのものが含まれると認められる。
「インダイレクト方式を採用したToFカメラシステムにおいて、光源からの発光の周波数が低い場合(遠距離の物体を測距する場合)に、光源出力信号のデューティを50%より小さくして、サイクリックエラーを低減すること。」
(3) 課題の同一性についての当審の判断
ア 前記(1)及び(2)において検討した事項を踏まえると、本件補正前の請求項1に記載された発明の解決しようとする課題は、簡易な構成で様々な周波数や位相の設定に対応するパルス生成器を提供することであるのに対して、本件補正後の請求項1に記載される発明の解決しようとする課題には、光源からの発光の周波数が低い場合(遠距離の物体を測距する場合)に、光源出力信号のデューティを50%より小さくして、サイクリックエラーを低減するという課題が含まれるから、本件補正後の課題には、本件補正前の課題とは異なるものが追加されていることは明らかである。
そして、本件補正後の課題は、本件補正前の課題を概念的に下位にしたものでも、同種のものでもないなど、技術的に密接に関連しているとはいえないから、本件補正の前後において、発明の解決しようとする課題が同一であるとはいえない。
イ 以上によれば、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)を目的とするものに該当しない。
また、本件補正は、特許法17条の2第5項1号、3号又は4号に規定するいずれを目的としたものに該当しないことも明らかである。
4 本件補正の適否についてのまとめ
したがって、本件補正は、前記2において示したとおり、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものであるとはいえないから、特許法17条の2第3項に規定する要件に違反するものであり、また、本件補正は、前記3において示したとおり、特許法17条の2第5項各号のいずれを目的とするものではない補正であり、特許法17条の2第5項の規定に違反するもの(目的該当性違反)でもあるから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
本件補正は、前記第2に示したとおり却下したので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和4年11月4日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(前記第2の1(1)参照)により特定されるとおりのものである。
本願発明の構成を便宜上次のように構成Xと構成A~Eに分説するとともに、参考図として本願の明細書の図28に部材名を加筆したものを掲載する。
<本願発明の分説>
(構成A)測距対象に光を照射する光源に供給するパルスを生成する第1のパルス生成器と、
(構成B)前記測距対象で反射された光を受光する画素に供給するパルスを生成する第2のパルス生成器と、
を備え、
(構成C)各前記パルス生成器は、
入力信号を用いて、前記測距対象の測距に用いる出力するパルスの位相を決定する第1のカウンタと、
前記入力信号を用いて、前記パルスの周波数を決定する第2のカウンタと、
を備え、
(構成D)前記第1のパルス生成器は、第1のデューティの信号を生成し、
(構成E)前記第2のパルス生成器は、前記第1のデューティとは異なる第2のデューティの信号を生成する、
(構成X)信号生成装置。
<参考図>(図28)
[図:0001420921000005.jpg]
第4 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明に対する理由1(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。
本願発明は、優先日前に発行された下記の引用文献に記載された発明に基づいて、優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.国際公開第2017/085916号
引用文献2.実願平2-29357号(実開平3-120127号)のマイクロフィルム
引用文献3.実願昭56-103907号(実開昭58-11340号)のマイクロフィルム
引用文献4.特開2016-90436号公報
第5 各引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定
1 引用文献1に記載された事項と引用発明の認定
(1) 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用された、前記引用文献1(国際公開第2017/085916号)には、以下の事項が記載されている。下線は当合議体が付したものであり、以下同様である。
ア [0023]~[0035]、[図1]、[図2]
「[0023] (実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る撮像装置10の概略構成の一例を示す機能ブロック図である。同図に示すように、撮像装置10は、光源部1と、受光部2と、制御部(駆動制御部)3と、演算部4とを備える。この構成により、撮像装置10は、静止画だけでなく動画も撮影することができる。」
「[図1]
[図:0001420921000006.jpg]
」
「[0024] 光源部1は、駆動回路、コンデンサ及び発光素子を有し、コンデンサに保持した電荷を発光ダイオードへ供給することで照射光を発する。発光素子としてはレーザダイオード(LD)や発光ダイオード(LED)等のその他の発光素子を用いてもよい。照射光は、一例として赤外光(近赤外光、遠赤外光を含む)である。
[0025] 図2は、実施の形態1に係る制御部3の構成を示す機能ブロック図である。同図に示すように、制御部3は、発光信号の立ち上がり位相及び立ち下がり位相を指示する発光位相制御部32と、発光信号の繰り返し回数及び周期を指示する発光繰り返し制御部33と、発光位相制御部32の指示する立ち上がり位相及び立ち下がり位相と、発光繰り返し制御部33の指示する繰り返し回数及び周期に従った発光信号を合成して出力する発光信号合成部31と、を備える。
[0026] 更に、制御部3は、露光信号の立ち上がり位相及び立ち下がり位相を指示する露光位相制御部35と、露光信号の繰り返し回数及び周期を指示する露光繰り返し制御部36と、露光位相制御部35の指示する立ち上がり位相及び立ち下がり位相と、露光繰り返し制御部36の指示する繰り返し回数及び周期に従った露光信号を合成して出力する露光信号合成部34と、を備える。」
「[図2]
[図:0001420921000007.jpg]
」
「[0027] この構成により、制御部3は、発光信号及び露光信号の位相と繰り返し周期とを独立に決定することができ、発光信号と露光信号との位相関係の異なるパターンを複数生成することができる。更に、発光信号と露光信号との位相関係の異なるパターンの間で繰り返しの周期が異なるように、発光信号と露光信号とを出力することができる。なお、発光繰り返し制御部33および露光繰り返し制御部36が指示する繰り返し周期は、固定、周期的、規則的な変化、ランダムに変化するもののいずれでもよい。
[0028] 言い換えると、制御部3は、被写体(物体、測定対象物)への光照射を指示する発光信号と、当該被写体からの反射光の露光を指示する露光信号とを発生する。より具体的には、本実施の形態に係る制御部3は、受光部2の同一画素で検出する信号を蓄積する複数の信号蓄積部のそれぞれに、複数回の発光とそれらに対応する露光とにより信号を蓄積させる。また制御部3は、発光信号の繰り返し周期と、当該発光信号のタイミングに対して被写体からの反射光の露光を指示するタイミングが異なる露光信号の繰り返しの周期とを異ならせる。
[0029] なお、制御部3は、発光信号を発生する制御部と、露光信号を発生する制御部とを個別に有していても良い。制御部3は、例えば、マイクロコンピュータ等の演算処理装置によって構成される。マイクロコンピュータは、プロセッサ(マイクロプロセッサ)、メモリ等を含み、メモリに格納された駆動プログラムがプロセッサにより実行されることで、発光制御信号及び露光制御信号を出力する。なお、制御部3は、FPGAやISP等を用いてもよく、1つのハードウェアから構成されても、複数のハードウェアから構成されてもかまわない。
[0030] また、図2に示すように、制御部3は、制御部3の外からの基準信号(基準クロック)により、上述した発光信号合成部31、発光位相制御部32、発光繰り返し制御部33、露光信号合成部34、露光位相制御部35、及び露光繰り返し制御部36が制御されることが、より好ましい。さらに、発光位相制御部32は、制御部3の外からの信号(発光信号位相設定信号)で制御され、発光繰り返し制御部33は、制御部3の外からの信号(発光信号繰り返し設定信号)で制御され、露光位相制御部35は、制御部3の外からの信号(露光信号位相設定信号)で制御され、露光繰り返し制御部36は、制御部3の外からの信号(露光信号繰り返し設定信号)で制御されることが、より好ましい。
[0031] 光源部1は、制御部3で発生する発光信号のタイミングに従って光を点滅させ(パルス)、被写体に対して照射光(パルス光)の照射を行う。
[0032] 受光部2は、固体撮像素子20を有する。固体撮像素子20は、照射光が反射した反射光(パルス光)及び太陽光などの背景光(外乱光)を受光する。
[0033] また、固体撮像素子20は、被写体を含む領域に対して、制御部3で発生する露光信号が示すタイミングに従って複数回の露光を行い、画素毎に対応づけられる信号蓄積部を複数有し、当該複数の信号蓄積部に信号(蓄積信号)を蓄積して撮像を行った後、蓄積された信号(蓄積信号)を転送し、露光量に対応した撮像信号を出力する。より具体的には、本実施の形態に係る固体撮像素子20では、同一画素で検出する信号を蓄積する複数の信号蓄積部のそれぞれは、発光信号のタイミングに対して露光信号のタイミングが異なる露光期間に露光した信号を蓄積する。
[0034] 受光部2は、さらに、カメラレンズ、光源部1から照射される光の波長近傍のみを通過させる光学的バンドパスフィルタ(帯域通過フィルタ)、及びA/Dコンバータ等の回路を適宜有する。
[0035] 演算部4は、受光部2から受けた撮像信号及び第2撮像信号における信号量に基づいて、演算により被写体までの距離情報である距離信号(距離画像)を出力する。」
イ [0069]~[0071]、[図6]
「[0069] 図6(a)は、一般的な撮像装置の信号処理のシーケンスを表す図であり、一般的な「折り返し現象」の説明を含むものである。
[0070] 図6(a)の一般的な撮像装置では、S0、S1、S2において、それぞれ、発光信号(1)と露光信号(1)とが対応し、発光信号(2)と露光信号(2)とが対応する。しかし、広い空間(遠方、遠距離)での測距を行う場合、測距レンジの更に遠い距離の反射光を受光した場合、図6(a)の発光信号(1)と露光信号(2)とが対応し、発光信号(2)と露光信号(3)とが対応する「折り返し」が発生し、本来測距レンジ外の物体の距離が誤って見えてしまう現象(これを、「折り返し現象」と呼ぶ)が発生する。
[0071] また、図6(a)の発光信号(露光信号)は幅1Tで、休止期間が4Tで、Duty=20%の固定周期を繰り返しているが、この休止期間を4T→9T(Duty20%→10%)等に減らす事で、折り返しの影響は軽減される。しかし、同じDuty相当の信号量を得るためには、露光時間が倍になってしまい、フレームレート低下等の新たな問題が生じる。」
「[図6]
[図:0001420921000008.jpg]
」
ウ [0096]~[0098]、[図10]
「[0096] (実施の形態1の変形例2)
図10は、実施の形態1の変形例2に係る撮像装置の信号処理のシーケンスを表す図である。実施の形態1と同様に、S0、S1、S2の発光/露光信号の周期(Duty)が異なるようにし、さらに、未発光期間を設け、少なくとも発光に関する平均周期は同じになるようにする。」
「[図10]
[図:0001420921000009.jpg]
」
「[0097] このことにより、S0発光信号と、S2発光信号とで、時間あたりの熱量も同じになるため、特に、撮像装置の特性に大きく影響を与える光源部(光源(発光素子、LED、LD等))、光源の駆動回路(ドライバ)の熱特性の影響を防ぎ、測距値の性能・特性のバラツキを低減できる。
[0098] 従って、本実施の形態の変形例1では、実施の形態1と同様の効果に加え、更に測距精度が向上する効果を有する。」
(2) 引用文献1から読み取れる認定事項
引用文献1の[0071]及び[図6](a)から、次の事項が読み取れる。
「発光信号及び露光信号は、いずれもデューティ比が20%のパルス信号であること。」
(3) 引用発明の認定
前記(1)の記載事項及び前記(2)の認定事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(引用発明の認定に用いた記載箇所を参考までに括弧内に付してある。)。
<引用発明>
「光源部1と、受光部2と、制御部3と、演算部4とを備える撮像装置10の制御部3であって、([0023])
制御部3は、発光信号の立ち上がり位相及び立ち下がり位相を指示する発光位相制御部32と、発光信号の繰り返し回数及び周期を指示する発光繰り返し制御部33と、発光位相制御部32の指示する立ち上がり位相及び立ち下がり位相と、発光繰り返し制御部33の指示する繰り返し回数及び周期に従った発光信号を合成して出力する発光信号合成部31と、を備え、([0025])
更に、制御部3は、露光信号の立ち上がり位相及び立ち下がり位相を指示する露光位相制御部35と、露光信号の繰り返し回数及び周期を指示する露光繰り返し制御部36と、露光位相制御部35の指示する立ち上がり位相及び立ち下がり位相と、露光繰り返し制御部36の指示する繰り返し回数及び周期に従った露光信号を合成して出力する露光信号合成部34と、を備え、([0026])
この構成により、制御部3は、発光信号及び露光信号の位相と繰り返し周期とを独立に決定することができ、発光信号と露光信号との位相関係の異なるパターンを複数生成することができ、([0027])
制御部3は、マイクロコンピュータ等の演算処理装置によって構成され、([0029])
発光位相制御部32は、制御部3の外からの信号(発光信号位相設定信号)で制御され、発光繰り返し制御部33は、制御部3の外からの信号(発光信号繰り返し設定信号)で制御され、露光位相制御部35は、制御部3の外からの信号(露光信号位相設定信号)で制御され、露光繰り返し制御部36は、制御部3の外からの信号(露光信号繰り返し設定信号)で制御され、([0030])
光源部1は、制御部3で発生する発光信号のタイミングに従って光を点滅させ(パルス)、被写体に対して照射光(パルス光)の照射を行い、([0031])
受光部2は、固体撮像素子20を有し、固体撮像素子20は、照射光が反射した反射光(パルス光)及び太陽光などの背景光(外乱光)を受光し、([0032])
固体撮像素子20は、被写体を含む領域に対して、制御部3で発生する露光信号が示すタイミングに従って複数回の露光を行い、画素毎に対応づけられる信号蓄積部を複数有し、当該複数の信号蓄積部に信号(蓄積信号)を蓄積して撮像を行った後、蓄積された信号(蓄積信号)を転送し、露光量に対応した撮像信号を出力し、([0033])
演算部4は、受光部2から受けた撮像信号に基づいて、演算により被写体までの距離情報である距離信号(距離画像)を出力し、([0035])
発光信号及び露光信号は、いずれもデューティ比が20%のパルス信号である、(前記(2)の認定事項)
制御部3。」
2 引用文献2技術事項の認定
(1) 引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用された、前記引用文献2(実願平2-29357号(実開平3-120127号)のマイクロフィルム)には、以下の事項が記載されている。
ア 5頁2行~6頁17行、第1図
「第1図に示すように、基準パルス発生回路である発振回路1から出力された基準パルス信号は、例えば16進カウンタからなるカウンタ2に入力されるとともに、アンド回路3と1/8分周カウンタからなる分周回路4の各第1の入力端にそれぞれ入力するよう構成されている。前記分周回路4は基準パルス信号の繰り返し周波数を1/8に分周するもので、基準パルス信号8個の入力によって、1個のパルスを周期的に出力する。また、前記アンド回路3の第2の入力端はFF5の出力端に接続される一方、前記アンド回路3の出力端は前記分周回路4の第2の入力端に接続されている。そして、前記アンド回路3の出力端からは、その第2の入力端に前記FF5からの入力があると、前記分周回路4に対して発振回路1から入力された基準パルス信号が出力される。
一方、カウンタ2による基準パルス信号のカウント数はコンパレータ6に送られ、このコンパレータ6でMPU7から送られた位相差制御データと比較される。この位相差制御データは、具体的には分周回路4の第1の入力端に基準パルス信号が入力してから何パルス分遅らせて前記分周回路4の第2の入力端に基準パルス信号を入力するかを制御するパルス数制御信号である。そして、前記コンパレータ6で前記カウンタ2による基準パルス信号のカウント数と、前記MPU7からのパルス数制御信号が一致したことを検出すると、前記コンパレータ6は一致信号をFF5に出力し、このFF5の出力信号がアンド回路3に入力されて、前記分周回路4の第2の入力端に基準パルス信号が入力されるよう構成されている。
上述したように、前記分周回路4は、基準パルス信号を1/8に分周するので、前記分周回路4の第2の入力端への入力を第1の入力端への入力よりも1パルス分遅らせる毎に、各出力端からの出力は45度ずつ位相がずれたものとなる。」
「
[図:0001420921000010.jpg]
」
イ 8頁1行~9頁13行、第2図
「まず、位相を90度ずらす場合には、キーボード8を用いてMPU7へ位相差制御データを「90」と入力すると、前記MPU7からコンパレータ6に対して、この入力に応じたパルス数制御信号が”2”として出力される。発振回路1から基準パルス信号が出力される(第1図,第2図の各A参照)と、これがカウンタ2、アンド回路3及び分周回路4の各所定入力端に入力され、前記カウンタ2は入力したパルス数のカウントを開始し、また、前記分周回路4は入力したパルス信号の繰り返し周波数の分周動作を開始する(第1図,第2図の各B参照)。
前記カウンタ2のパルスカウント数がコンパレータ6に出力されて、ここでMPU7からの制御パルス数信号”2”と一致したと判断されると、あらかじめクリア信号が発せられてクリア状態にあるFF5に一致信号が出力され、前記FF5がオン動作し、その出力信号がアンド回路3の第2の入力端に入力される(第1図,第2図の各C参照)。これによって、前記アンド回路3は分周回路4の第2の入力端に、第1の入力端よりは2パルス分遅れて基準パルス信号を入力する(第1図,第2図の各D参照)。
したがって、前記分周回路4の第2の出力端からは、その第1の出力端よりも基準パルス信号の2パルス分遅れた時点から1/8に分周動作が開始されたパルス信号が出力される(第1図,第2図の各E参照)。すなわち、第2図B,Eで明らかなように、90度位相のずれた出力が得られるものである。そして、MPU7からスタート信号が出力されると、各アンド回路10,11に入力された、前述の90度位相のずれた信号が、その時点から同時にモータ9に対して出力される。」
「
[図:0001420921000011.jpg]
」
ウ 9頁14行~10頁1行、第3図
「次に、位相を45度ずらす場合には、MPU7へ位相差制御データを「45」と入力して、分周回路4の第2の入力端に入力する基準パルス信号を、第1の入力端に対して1パルス分だけ遅らせて入力させればよく、他の動作については上述した位相を90度ずらす場合と同様であるから、第2図と同様のタイミングチャートを第3図として示すに止め、詳細な説明は省略する。」
「
[図:0001420921000012.jpg]
」
(2) 引用文献2技術事項の認定
前記(1)の記載事項を総合すると、引用文献2には、次の技術事項(以下「引用文献2技術事項」という。)が記載されているものと認められる。
<引用文献2技術事項>
「基準パルス発生回路である発振回路1から出力された基準パルス信号が入力される、16進カウンタからなるカウンタ2であって、
カウンタ2による基準パルス信号のカウント数はコンパレータ6に送られ、このコンパレータ6でMPU7から送られた位相差制御データと比較され、この位相差制御データは、何パルス分遅らせて分周回路4の第2の入力端に基準パルス信号を入力するかを制御するパルス数制御信号であり、前記コンパレータ6で前記カウンタ2による基準パルス信号のカウント数と、前記MPU7からのパルス数制御信号が一致したことを検出すると、前記分周回路4の第2の入力端に基準パルス信号が入力されるよう構成され、前記分周回路4は、基準パルス信号を1/8に分周するので、前記分周回路4の第2の入力端への入力を第1の入力端への入力よりも1パルス分遅らせる毎に、各出力端からの出力は45度ずつ位相がずれたものとなる、カウンタ2。(5頁2行~6頁17行、第1図)」
3 引用文献3技術事項の認定
(1) 引用文献3に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用された、前記引用文献3(実願昭56-103907号(実開昭58-11340号)のマイクロフィルム)には、以下の事項が記載されている。
ア 3頁11行~4頁17行、図面
「次に動作を説明すると、発振回路1出力は、カウンター3の入力端子に接続され、カウント動作されるが、カウンタ3は、カウント状態を出力端子01~04に出力すると同時に1定数カウントした時にキヤリー端子に出力する。カウンター3のキヤリー端子は、カウンター4の入力端子に接続され、又カウンター4のキヤリー端子は、カウンター5の入力端子に接続され、本実施例では、3桁のカウントが可能となっている。各カウンタ3~5のカウンタ出力は、デイジタル比較器6~8の1入力端子群Aに入力され、デイジタル比較器6~8の他方入力端子群Bには、設定スイッチ群9~11の状態が接続入力されるようになっており、デイジタル比較器は、入力端子群Aと入力端子群Bのデータの比較を行ない、状態が一致した時に出力端子に出力を発生する。
各デイジタル比較器6~8の出力は、NANDIC12に入力されており、各デイジタル比較器6~8の出力が全て成立した時に、NAND IC12からパルスが出力される。NAND IC12の出力は各カウンター3~5のリセット端子に接続されており、NAND IC12の出力パルスにより、各カウンターはリセットされ、再びカウントを初期状態から開始する。上記動作の繰返しでカウント内容が、デイジタル比較器6~8のセツト内容に達つする毎にNAND IC12からパルス出力が得られる。」
「
[図:0001420921000013.jpg]
」
イ 4頁18行~5頁3行
「上記のように本考案は、基本クロックに水晶発振器を利用し、そのパルス数をカウントする事により、基本クロックを分周した周波数を得られるが、そのカウント数を、任意に設定する事により、低周波においても任意の安定した周波数を得る事ができる効果を有するものである。」
(2) 引用文献3技術事項の認定
前記(1)の記載事項を総合すると、引用文献3には、次の技術事項(以下「引用文献3技術事項」という。)が記載されているものと認められる。
<引用文献3技術事項>
「発振回路1出力が入力端子に接続され、カウント動作される、カウンター3であって、(3頁11行~4頁17行)
基本クロックに水晶発振器を利用し、そのパルス数をカウントする事により、基本クロックを分周した周波数を得られるが、そのカウント数を、任意に設定する事により、低周波においても任意の安定した周波数を得る事ができる、カウンター3。(4頁18行~5頁3行)」
4 引用文献4及び5に記載された事項と周知技術A及びBの認定
(1) 引用文献4に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された、前記引用文献4(特開2016-90436号公報)には、以下の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、変調光を空間に発光し、変調光が対象物で反射した戻り光を含む入射光を受光して電荷を蓄積し、その電荷の蓄積状態に基づいて変調光と戻り光との間の位相差を計測し、自装置から対象物までの距離を計算して取得する光飛行型測距装置に関する。」
「【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載した発明によれば、発光手段は、変調光を空間に発光する。受光手段は、発光手段から発光された変調光が対象物で反射した戻り光を含む入射光を受光して電荷を蓄積する。発光制御手段は、発光手段の発光動作を制御する。受光制御手段は、受光手段の受光動作を制御する。受光スロット特定手段は、変調光が発光手段から発光された時点を基点とする所定時間間隔の距離スロットのうち戻り光が受光手段に受光された距離スロットを受光スロットとして特定する。位相型TOF計測手段は、受光手段における電荷の蓄積状態に基づいて変調光と戻り光との間の位相差を計測する。距離取得手段は、受光スロット特定手段による特定結果と位相型TOF計測手段による計測結果とを組み合わせることで、自装置から対象物までの距離を計算して取得する。
【0007】
戻り光が受光された受光スロットを特定する方法は、高い分解能で距離を特定できなかったり、高範囲(高解像度)をカバーできなかったりする点で不利であるが、位相回りの発生を回避できたり、マルチパスやミックスドピクセルの影響を除去できたりする点で有利である。一方、変調光と戻り光との間の位相差を計測する方法は、位相回りが発生したり、マルチパスやミックスドピクセルの影響を受ける点で不利であるが、高い分解能で距離を特定できたり、高範囲をカバーできたりする点で有利である。
【0008】
本発明では、受光スロット特定手段による特定結果と位相型TOF計測手段による計測結果とを組み合わせることで、それぞれの方法による利点を両立する。即ち、受光スロット特定では、変調光の発光波形のデューティーを従来の50%よりも短くし(低デューティー化し)、その分、発光ピークパワーを高めることで、遠距離まで受光スロットを特定する。位相型TOF計測では、変調光の発光波形のデューティーを従来の50%よりも短くする、又は従来の50%のままとし、受光スロットの1周期内での位相差を計測する。このように受光スロット特定により自装置から対象物までの大まかな距離を遠距離まで計測し、位相型TOF計測により受光スロットの1周期内での位相差を計測することで、自装置から対象物までの詳細な距離を計算して取得することできる。これにより、発光強度を高めることを不要として装置全体の大型化を回避しつつ、遠距離測距でも必要な距離精度を維持することができる。」
(2) 引用文献5に記載された事項
令和5年6月22日付けの補正の却下の決定において引用された、優先日前に発行された文献である特表2017-530344号公報(以下「引用文献5」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【発明を実施するための形態】
【0039】
以下の実施形態に従って、修正され、それによってより効率的になった画像処理を用いるToFカメラを説明する。
【0040】
図5(a)~図5(d)は、画像センサ28、好ましくは図2による従来の画像センサを有する図3によるToFカメラの動作の第1の実施形態による時間制御を説明するための波形を有する時間図を示す。そこで、図5(a)は、時間tにわたって2つの異なる強度レベル「0」および「1」においてカメラ20内の光源23から光Lを放出するための時間制御を示す。一例として、レベル「1」において光が放出され、レベル「0」において光は放出されない。この事例において、光は時間パルス長tlを有する、時間的に制限された光パルス40として放出され、周期tpにおいてアイドル時間to後に、任意選択的に第2の時間パルス60および第3の時間パルス61などとして、繰り返される。それぞれ時間および位相の関係を理解しやすくするために、周期tpは、ここでは360°と等しくする。図示されている例において、光信号のパルス長tlはこのとき、tl=1/6*tpであり、それに応じてto=5/6*tpであるため、60°の位相値に対応する。」
「
[図:0001420921000014.jpg]
」
「【0041】
図3におけるカメラ20において、入射光Dが、画像センサ28を通じて検出される。関連する波形は、図5(a)にも示されている。放出される光パルス40の影響がなく、入射光は、一定であると仮定される強度レベルBを有する周辺光43のみから構成される。この周辺光に、入射光パルス42が加えられ、それによって、図示されている時間的波形Dが取得される。放出と入射との間で、光は、光源23から物体25、26へ、そして画像センサ28へと戻る距離をほぼ光速で進行しており、それゆえ、時間差tdだけ遅延されている。その上、光パルス40はまた、距離の法則による空間内の拡散、および、物体における反射が不十分であることによってその強度が低減されており、それによって、受け取られる光パルス42の強度は、一般的に、放出される光パルス40の強度よりも低い。」
「
[図:0001420921000015.jpg]
」
「【0042】
図3によれば、画像センサ28は、物体光ビームの復調を実行するように、同期ユニット21からの駆動信号32によって駆動される。この駆動信号32は、以下の実施形態において、3つの信号C0、C1およびC2によって形成される。それによって、画像センサ28の制御が、最初に言及したタイプの電気閉鎖デバイス(シャッタ)によって達成される。
【0043】
図5(b)において、第1の未処理画像を取得するために、図3に示す画像センサ28の電気シャッタを制御するための第1の制御信号C0が、時間tにわたって示されている。より詳細には、制御信号C0は、状態「0」および「1」をとり、電気シャッタは状態「0」において閉じられ、画像センサ28は光を受け取ることができず、一方で電気シャッタは状態「1」において開き、画像センサ28は光を受け取ることができる。制御信号C0は、第1の未処理画像を受信するために固定位相関係φ0で、図5(a)に示す放出される光パルス40、60および61に並列に印加される。この事例において、光パルス40の放出に対する電気シャッタの開放の間の位相関係φ0は、図示されている第1の実施形態においてφ0=60°となるようなものである。開放時間は各々180°である。
【0044】
それによって、周辺光43の信号部分47が、電気シャッタの開放時間の間に画像センサ28によって検出され、一方で、電気シャッタの開放時間外の周辺光43の別の信号部分48は、検出されない。加えて、入射光パルス42の信号部分45も、その遅延に従って検出され、一方で、入射光パルスの別の信号部分46は検出されない。
【0045】
これは、たとえば、制御信号C0が状態「0」をとるときに、図2による信号経路175と接続されている電気シャッタ(図示せず)を介して感光性領域172から電荷を除去することによって実現することができ、制御信号C0が状態「1」をとるとき、感光性領域172からの電荷は信号経路174を介して蓄積部173へと累積的に供給される。
【0046】
入射光から信号、たとえば、電荷、電圧、電流またはデジタル値が形成される。複数の光パルス40、60および61が放出されており、電気シャッタが複数回開いている限り、シャッタの個々の開放の信号が蓄積部173内に電荷として同様に、すなわち、加算関数49によって記号化されている電荷パケットとして付加または累積され、最終的に信号S0を形成する。この信号はそれぞれ、画素に割り当てられる。他の画素のさらなる信号S0とともに、第1の未処理画像が信号S0について生成される。任意選択的に、個々のシャッタ開放の信号が個々にデジタル化および処理されている場合、加算関数49は、図3に示す計算ユニット29においても実現されてもよい。同じことが、後に言及する(記号的)加算関数54および59にも当てはまる。
【0047】
図5(c)において、第2の未処理画像を取得するために時間tにわたって電気シャッタを制御するための第2の制御信号C1が示されている。使用されている表記は、図5(b)のものに対応する。この図において、ここでは別の位相関係が使用される。信号C0の立ち上がりエッジ44と信号C1の立ち上がりエッジ50との間の位相関係がφ1であり、図示されている例では、値φ1=120°を仮定する。開放時間は180°である。
【0048】
それによって、周辺光43の信号部分52が、電気シャッタの開放時間の間に受信され、一方で、電気シャッタの開放時間外の周辺光43の別の信号部分57は、受信されない。この事例において、その遅延によって、入射光パルス42の信号部分51全体が受信される。
【0049】
ここでも、入射光から信号が形成され、複数の光パルス40、60および61が放出されており、電気シャッタが複数回開いている限り、シャッタの個々の開放の信号が蓄積部173内に電荷として同様に、すなわち、加算関数54によって記号化されている電荷パケットとして付加または累積され、最終的に信号S1を形成する。この信号もまた、それぞれ、画素に割り当てられる。他の画素のさらなる信号S1とともに、第2の未処理画像が信号S1について生成される。任意選択的に、個々のシャッタ開放の信号が個々にデジタル化および処理されている場合、加算関数54は、図3に示す計算ユニット29においても実現されてもよい。
【0050】
最後に、図5(d)において、第3の未処理画像を取得するために時間tにわたって電気シャッタを制御するための第3の制御信号C2が示されている。使用されている表記は、図5(b)および図5(c)のものに対応する。図示されている例では、φ1とともに、φ2=120°である。ここでも、開放時間は180°である。
【0051】
それによって、周辺光43の信号部分58のみが、電気シャッタの開放時間の間に受信され、一方で、電気シャッタの開放時間外の周辺光43の別の信号部分57は、受信されない。この事例において、その遅延によって、入射光パルス42の信号部分56全体は受信されない。ここでも、シャッタの個々の開放の信号が、記号的加算関数59によって蓄積部173内に電荷として同様に、すなわち、電荷パケットとして付加または累積され、最終的に信号S2を形成する。この信号もまた、それぞれ、画素に割り当てられる。他の画素のさらなる信号S2とともに、第3の未処理画像が信号S2について生成される。任意選択的に、個々のシャッタ開放の信号が個々にデジタル化および処理される場合、加算関数59は、図3に示す計算ユニット29においても実現されてもよい。
【0052】
制御信号C0、C1およびC2は、光Lと同じ周期tpを有する。
【0053】
各画素について3つの未処理画像を組み合わせることによって、3つの信号S0、S1およびS2が最終的に取得される。物体が、3つの未処理画像キャプチャの間に実質的に動いておらず、周辺光43の受信光およびパルス42の強度が各画素について等しいと仮定すると、3つの信号S0、S1およびS2からの各画素についての計算によって、時間差tdを判定することができ、また、光速の知識によって、この画素上にイメージングされる物体22の信号部分の距離を判定することができる。それに基づいて、距離値が画素に割り当てられている、距離画像を計算することができる。
【0054】
3つの制御信号および信号の数の選択は、以下の考慮事項に基づいて行われる。光の伝播時間によって物体の距離を判定するとき、3つの未知数、すなわち、距離、周辺光の強度、および、入射光パルスの強度が存在する。この問題を3自由度で求めるために、少なくとも3つの異なる信号が必要とされる。同時に、高いビットレートを生成するために、未処理画像の数を可能な限り少ないままにすることが必要である。それゆえ、未処理画像の数および関連する制御信号の数は、3であるものとして選択され得る。」
(3) 周知技術Aの認定
前記引用文献4及び5に例示されているように、次の事項は周知技術であると認められる(以下「周知技術A」という)。
<周知技術A>
「TOFセンサにおいて、発光パルスのデューティ比を50%より小さくすること。」
(4) 周知技術Bの認定
前記引用文献5に例示されているように、次の事項は周知技術であると認められる(以下「周知技術B」という)。
<周知技術B>
「TOFセンサにおいて、発光パルスのデューティ比と、対象物において反射した光を検出するカメラの露光制御信号のデューティ比を異ならせること。」
第6 対比
1 対比分析
(1) 構成Xについて
ア 引用発明の「発光信号」及び「露光信号」は、本願発明の「信号」に相当する。
イ 引用発明の「制御部3」は、「マイクロコンピュータ等の演算処理装置によって構成される」ものであり、「装置」であるといえる。
ウ そして、引用発明の「制御部3」は、「発光信号と露光信号との位相関係の異なるパターンを複数生成する」ものであるから、前記ア及びイを踏まえると、信号を生成する装置であるといえる。
エ そうすると、引用発明の「制御部3」は、本願発明の「信号生成装置」に相当する。
オ したがって、本願発明と引用発明は、「信号生成装置」の発明である点において一致する。
(2) 構成Aについて
ア 引用発明においては、「被写体までの距離情報である距離信号(距離画像)」が「出力」されるから、引用発明の「被写体」は、本願発明の「測距対象」に相当する。
イ 引用発明の「被写体に対して照射光(パルス光)の照射を行[う]」「光源部1」は、前記アを踏まえると、本願発明の「測距対象に光を照射する光源」に相当する。
ウ 引用発明の「発光信号」は、「光源部1」が「光を点滅させ」るために従う「タイミング」を与える「パルス信号」であるから、前記イを踏まえると、本願発明の「測距対象に光を照射する光源に供給するパルス」に相当する。
エ 引用発明の「発光信号の立ち上がり位相及び立ち下がり位相を指示する発光位相制御部32」、「発光信号の繰り返し回数及び周期を指示する発光繰り返し制御部33」及び「発光位相制御部32の指示する立ち上がり位相及び立ち下がり位相と、発光繰り返し制御部33の指示する繰り返し回数及び周期に従った発光信号を合成して出力する発光信号合成部31」は、「パルス信号」である「発光信号」を生成するものであり、前記ウを踏まえると、本願発明の「測距対象に光を照射する光源に供給するパルスを生成する第1のパルス生成器」に相当する。
オ したがって、本願発明と引用発明は、「測距対象に光を照射する光源に供給するパルスを生成する第1のパルス生成器」を備える点において一致する。
(3) 構成Bについて
ア 引用発明の「受光部2」が有する「固体撮像素子20」は、「照射光が反射した反射光(パルス光)」を「受光」するものであるから、測距対象で反射された光を受光しているといえる。
イ 引用発明の「固体撮像素子20」は、「画素毎に対応づけられる信号蓄積部を複数有し」ているところ、引用発明の「固体撮像素子20」の「画素」は、前記アを踏まえると、本願発明の「前記測距対象で反射された光を受光する画素」に相当する。
ウ 引用発明の「露光信号」は、「固体撮像素子20」が「複数回の露光を行[う]」ために従う「タイミング」を与える「パルス信号」であるから、前記イを踏まえると、本願発明の「前記測距対象で反射された光を受光する画素に供給するパルス」に相当する。
エ 引用発明の「露光信号の立ち上がり位相及び立ち下がり位相を指示する露光位相制御部35」、「露光信号の繰り返し回数及び周期を指示する露光繰り返し制御部36」及び「露光位相制御部35の指示する立ち上がり位相及び立ち下がり位相と、露光繰り返し制御部36の指示する繰り返し回数及び周期に従った露光信号を合成して出力する露光信号合成部34」は、「パルス信号」である「露光信号」を生成するものであり、前記ウを踏まえると、本願発明の「前記測距対象で反射された光を受光する画素に供給するパルスを生成する第2のパルス生成器」に相当する。
オ したがって、本願発明と引用発明は、「前記測距対象で反射された光を受光する画素に供給するパルスを生成する第2のパルス生成器」を備える点において一致する。
(4) 構成Cについて
ア 「第1のパルス生成器」に係る構成について
(ア) 引用発明の「発光信号の立ち上がり位相及び立ち下がり位相を指示する発光位相制御部32」は、「パルス信号」である「発光信号」の「位相」を「決定」するものであるから、測距対象の測距に用いる出力するパルスの位相を決定する手段であるといえる。
(イ) 引用発明の「発光信号の繰り返し回数及び周期を指示する発光繰り返し制御部33」は、「パルス信号」である「発光信号」の「繰り返し周期」を「決定」するものであるから、測距対象の測距に用いる出力するパルスの周波数を決定する手段であるといえる。
(ウ) そうすると、本願発明と引用発明は、「第1のパルス生成器は、前記測距対象の測距に用いる出力するパルスの位相を決定する手段と、前記パルスの周波数を決定する手段と、を備え」るという点において共通する。
イ 「第2のパルス生成器」に係る構成について
(ア) 引用発明の「露光信号の立ち上がり位相及び立ち下がり位相を指示する露光位相制御部35」は、「パルス信号」である「露光信号」の「位相」を「決定」するものであるから、測距対象の測距に用いる出力するパルスの位相を決定する手段であるといえる。
(イ) 引用発明の「露光信号の繰り返し回数及び周期を指示する露光繰り返し制御部36」は、「パルス信号」である「露光信号」の「繰り返し周期」を「決定」するものであるから、測距対象の測距に用いる出力するパルスの周波数を決定する手段であるといえる。
(ウ) そうすると、本願発明と引用発明は、「第2のパルス生成器は、前記測距対象の測距に用いる出力するパルスの位相を決定する手段と、前記パルスの周波数を決定する手段と、を備え」るという点において共通する。
ウ 前記ア及びイを踏まえると、本願発明と引用発明は、次の点において共通する。
「各前記パルス生成器は、前記測距対象の測距に用いる出力するパルスの位相を決定する手段と、前記パルスの周波数を決定する手段と、を備える」点。
エ 一方、本願発明と引用発明は、構成Cに関して、次に示す点において相違する。
本願発明においては、
「前記測距対象の測距に用いる出力するパルスの位相を決定する手段」が、「入力信号を用いて」決定する「第1のカウンタ」であり、
「前記パルスの周波数を決定する手段」が、「前記入力信号を用いて」決定する「第2のカウンタ」であるのに対して、
引用発明においては、
「発光信号の立ち上がり位相及び立ち下がり位相を指示する発光位相制御部32」及び「露光信号の立ち上がり位相及び立ち下がり位相を指示する露光位相制御部35」が、それぞれカウンタを備えているのか不明であり、
「発光信号の繰り返し回数及び周期を指示する発光繰り返し制御部33」及び「露光信号の繰り返し回数及び周期を指示する露光繰り返し制御部36」が、それぞれカウンタを備えているのか不明であり、
「発光信号」及び「露光信号」の「位相」の「決定」が、それぞれ「発光信号位相設定信号」及び「露光信号位相設定信号」により行われ、
「発光信号」及び「露光信号」の「繰り返し周期」の「決定」が、それぞれ「発光信号繰り返し設定信号」及び「露光信号繰り返し設定信号」により行われる点。
(5) 構成Dについて
ア 前記(2)を踏まえると、本願発明の「第1のパルス生成器」に相当する引用発明の「発光位相制御部32」、「発光繰り返し制御部33」及び「発光信号合成部31」は「発光信号」を出力するところ、当該「発光信号」は、デューティ比が20%のパルス信号である。
イ したがって、本願発明と引用発明は、「前記第1のパルス生成器は、第1のデューティの信号を生成[する]」点において一致する。
(6) 構成Eについて
ア 前記(3)を踏まえると、本願発明の「第2のパルス生成器」に相当する引用発明の「露光位相制御部35」、「露光繰り返し制御部36」及び「露光信号合成部34」は「露光信号」を出力するところ、当該「露光信号」は、デューティ比が20%のパルス信号である。
イ 前記(5)を踏まえると、本願発明の「第1のデューティの信号」に相当する引用発明の「発光信号」と、本願発明の「第2のデューティの信号」に相当する引用発明の「露光信号」は、いずれもデューティ比が20%のパルス信号であるから、本願発明の「前記第1のデューティとは異なる第2のデューティの信号」と引用発明の「露光信号」は、「前記第1のデューティとは異なる」という点は措くとして、少なくとも「第2のデューティの信号」である点において共通する。
ウ したがって、本願発明と引用発明は、「前記第2のパルス生成器は、第2のデューティの信号を生成する」点において共通する。
エ 一方、本願発明と引用発明は、構成Eに関して、次に示す点において相違する。
「第2のパルス生成器」が生成する「第2のデューティの信号」が、
本願発明においては、
「第1のパルス生成器」が生成する「第1のデューティとは(デューティ比が)異なる」のに対して、
引用発明においては、
露光信号のデューティ比が20%であり、発光信号のデューティ比と同じである点。
2 一致点及び相違点
前記1を踏まえると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。
(1) 一致点
測距対象に光を照射する光源に供給するパルスを生成する第1のパルス生成器と、
前記測距対象で反射された光を受光する画素に供給するパルスを生成する第2のパルス生成器と、
を備え、各前記パルス生成器は、
前記測距対象の測距に用いる出力するパルスの位相を決定する手段と、
前記パルスの周波数を決定する手段と、
を備え、
前記第1のパルス生成器は、第1のデューティの信号を生成し、
前記第2のパルス生成器は、第2のデューティの信号を生成する、
信号生成装置、である点。
(2) 相違点
ア 相違点1
本願発明においては、
「前記測距対象の測距に用いる出力するパルスの位相を決定する手段」が、「入力信号を用いて」決定する「第1のカウンタ」であり、
「前記パルスの周波数を決定する手段」が、「前記入力信号を用いて」決定する「第2のカウンタ」であるのに対して、
引用発明においては、
「発光信号の立ち上がり位相及び立ち下がり位相を指示する発光位相制御部32」及び「露光信号の立ち上がり位相及び立ち下がり位相を指示する露光位相制御部35」が、それぞれ(第1の)カウンタを備えているのか不明であり、
「発光信号の繰り返し回数及び周期を指示する発光繰り返し制御部33」及び「露光信号の繰り返し回数及び周期を指示する露光繰り返し制御部36」が、それぞれ(第2の)カウンタを備えているのか不明であり、
「発光信号」及び「露光信号」の「位相」の「決定」が、それぞれ「発光信号位相設定信号」及び「露光信号位相設定信号」により行われ、
「発光信号」及び「露光信号」の「繰り返し周期」の「決定」が、それぞれ「発光信号繰り返し設定信号」及び「露光信号繰り返し設定信号」により行われる点。
イ 相違点2
「第2のパルス生成器」が生成する「第2のデューティの信号」が、
本願発明においては、
「第1のパルス生成器」が生成する「第1のデューティとは(デューティ比が)異なる」のに対して、
引用発明においては、
露光信号のデューティ比が20%であり、発光信号のデューティ比と同じである点。
第7 当審の判断
1 相違点1について
前記相違点1について検討する。
(1) 引用文献2技術事項について
ア 前記第5の2(2)において引用文献2技術事項として示したとおり、引用文献2には次の技術事項が記載されている。
「基準パルス発生回路である発振回路1から出力された基準パルス信号が入力される、16進カウンタからなるカウンタ2であって、
カウンタ2による基準パルス信号のカウント数はコンパレータ6に送られ、このコンパレータ6でMPU7から送られた位相差制御データと比較され、この位相差制御データは、何パルス分遅らせて分周回路4の第2の入力端に基準パルス信号を入力するかを制御するパルス数制御信号であり、前記コンパレータ6で前記カウンタ2による基準パルス信号のカウント数と、前記MPU7からのパルス数制御信号が一致したことを検出すると、前記分周回路4の第2の入力端に基準パルス信号が入力されるよう構成され、前記分周回路4は、基準パルス信号を1/8に分周するので、前記分周回路4の第2の入力端への入力を第1の入力端への入力よりも1パルス分遅らせる毎に、各出力端からの出力は45度ずつ位相がずれたものとなる、カウンタ2。」
イ 上記引用文献2技術事項は、基準パルス信号のパルス数をカウントするカウンタを設けて、そのカウント数がパルス数制御信号により設定された値になったとき、基準パルス信号の位相からずれた位相を有するパルス信号が出力されるようにしたものであり、要するに、カウンタを用いてパルス信号の位相を所定量調整することを開示するものである。
(2) 引用文献3技術事項について
ア 前記第5の3(2)において引用文献3技術事項として示したとおり、引用文献3には次の技術事項が記載されている。
「発振回路1出力が入力端子に接続され、カウント動作される、カウンター3であって、基本クロックに水晶発振器を利用し、そのパルス数をカウントする事により、基本クロックを分周した周波数を得られるが、そのカウント数を、任意に設定する事により、低周波においても任意の安定した周波数を得る事ができる、カウンター3。」
イ 上記引用文献3技術事項は、基準クロックのパルス数をカウントするカウンタを設けて、そのカウント数が設定された値になったとき、基準クロックの周波数から異なる周波数を有するパルス信号が出力されるようにしたものであり、要するに、カウンタを用いてパルス信号の周波数を所定量調整することを開示するものである。
(3) 「位相を決定する第1のカウンタ」について
ア 引用発明においては、「発光信号」及び「露光信号」の「位相」の「決定」が、それぞれ「発光信号位相設定信号」及び「露光信号位相設定信号」を入力信号として行われるところ、引用文献1の段落[0030]の「制御部3は、制御部3の外からの基準信号(基準クロック)により、上述した発光信号合成部31、発光位相制御部32、発光繰り返し制御部33、露光信号合成部34、露光位相制御部35、及び露光繰り返し制御部36が制御されることが、より好ましい。」との記載を踏まえると、「発光信号位相設定信号」及び「露光信号位相設定信号」は、「基準信号(基準クロック)」に関連する信号であると考えることができる。
イ そうすると、引用発明においても、「発光信号の立ち上がり位相及び立ち下がり位相を指示する発光位相制御部32」及び「露光信号の立ち上がり位相及び立ち下がり位相を指示する露光位相制御部35」は、それぞれ「基準信号(基準クロック)」に関連する信号に基づいて、「パルス信号」の「位相」の調整を行っているということができるから、引用文献2技術事項に開示されたパルス信号の位相調整技術を適用する契機はあるというべきである。
ウ すなわち、引用発明に引用文献2技術事項を適用することにより、「発光信号の立ち上がり位相及び立ち下がり位相を指示する発光位相制御部32」及び「露光信号の立ち上がり位相及び立ち下がり位相を指示する露光位相制御部35」を、引用文献2技術事項に倣って、「カウンタ」により構成して、「基準信号(基準クロック)」を「入力信号」として、「発光信号」及び「露光信号」の「位相」を「決定」するように構成することに、格別の困難性があるものではない。
(4) 「周波数を決定する第2のカウンタ」について
ア 引用発明においては、「発光信号」及び「露光信号」の「繰り返し周期」の「決定」が、それぞれ「発光信号繰り返し設定信号」及び「露光信号繰り返し設定信号」を入力信号として行われるところ、引用文献1の段落[0030]の「制御部3は、制御部3の外からの基準信号(基準クロック)により、上述した発光信号合成部31、発光位相制御部32、発光繰り返し制御部33、露光信号合成部34、露光位相制御部35、及び露光繰り返し制御部36が制御されることが、より好ましい。」との記載を踏まえると、「発光信号繰り返し設定信号」及び「露光信号繰り返し設定信号」は、「基準信号(基準クロック)」に関連する信号であると考えることができる。
イ そうすると、引用発明においても、「発光信号の繰り返し回数及び周期を指示する発光繰り返し制御部33」及び「露光信号の繰り返し回数及び周期を指示する露光繰り返し制御部36」は、それぞれ「基準信号(基準クロック)」に関連する信号に基づいて、「パルス信号」の周波数の調整を行っているということができるから、引用文献3技術事項に開示されたパルス信号の周波数調整技術を適用する契機はあるというべきである。
ウ すなわち、引用発明に引用文献3技術事項を適用することにより、「発光信号の繰り返し回数及び周期を指示する発光繰り返し制御部33」及び「露光信号の繰り返し回数及び周期を指示する露光繰り返し制御部36」を、引用文献3技術事項に倣って、「カウンタ」により構成して、「基準信号(基準クロック)」を「入力信号」として、「発光信号」及び「露光信号」の「繰り返し周期」(周波数)を「決定」するように構成することに、格別の困難性があるものではない。
(5) 相違点1の検討のまとめ
前記(3)及び(4)の検討を踏まえると、引用発明において前記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
2 相違点2について
前記相違点2について検討する。
(1) 周知技術について
ア 周知技術A
前記第5の4(3)において周知技術Aとして示したとおり、次の事項は周知技術である。
「TOFセンサにおいて、発光パルスのデューティ比を50%より小さくすること。」
イ 周知技術B
前記第5の4(4)において周知技術Bとして示したとおり、次の事項は周知技術である。
「TOFセンサにおいて、発光パルスのデューティ比と、対象物において反射した光を検出するカメラの露光制御信号のデューティ比を異ならせること。」
(2) 「パルス」の「デューティ」について
ア 周知技術Bからみた容易想到性の判断
(ア) 引用発明及び周知技術Bは、いずれもTOFセンサに関するものであり、前記第5の1(1)ウに示したとおり、引用文献1には、発光信号のデューティ比を小さくする変形例(図10の未発光期間を含めると、S1やS2の発光信号には、そのデューティが露光信号のデューティよりも小さく設定されている部分がある)が記載されていることを踏まえると、引用発明において、発光信号のデューティ比と露光信号のデューティ比を同じにしないような設定は許容されるというべきである。
(イ) そうすると、引用発明において、前記周知技術Bに倣って、露光信号のデューティ比を発光信号のデューティ比と異ならせることは、当業者が容易に想到し得たことである。
イ 周知技術A及びBからみた容易想到性の判断
(ア) 前記第5の4(1)に摘記した引用文献4の段落【0008】にも示されているように、TOFセンサにおいて、発光信号のデューティ比と発光ピークパワーとは測距精度の向上に関しトレードオフの関係にあるところ、引用発明においても、測距精度を高めるという自明な課題が内在することを踏まえると、発光ピークパワーを大きくしておく一方で、発光信号のデューティ比を小さくできることは、当業者にとって自明な設計変更にすぎないというべきある。
(イ) そして、引用発明、周知技術A及び周知技術Bは、いずれもTOFセンサに関するものであり、引用発明において、周知技術A及び周知技術Bに倣って、発光信号のデューティ比を20%より小さくして、露光信号のデューティ比を発光信号のデューティ比と異ならせることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(3) 相違点2の検討のまとめ
前記(2)の検討を踏まえると、引用発明において前記相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
3 小括
前記1及び2の検討結果を総合的に勘案しても、引用発明において、前記相違点1及び相違点2に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本願発明の作用効果としては、本願発明の構成が奏するものとして、当業者が予測困難であり、格別顕著なものとは、認めることができない。
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明、引用文献2技術事項、引用文献3技術事項、周知技術A及び周知技術Bに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 請求人の主張について
(1) 請求人の主張の内容
請求人は審判請求の理由において、次の主張をしている。
請求項1に係る発明は、「前記パルスの周波数を第1の周波数又は前記第1の周波数より高い第2の周波数のいずれかに決定」し、「前記パルスの周波数が前記第1の周波数である場合、前記第1のデューティは50%未満であり、前記第2のデューティは50%である」という技術的特徴を有する。
一方、引用文献1~5には、当該技術的特徴を有する点について何ら開示も示唆もされておらず、引用文献1~5に記載された事項を組み合わせたとしても、請求項1に係る発明の構成は容易に想到できるものではない。
(2) 請求人の主張についての検討
請求人の前記主張は、本件補正により補正された構成に基づく主張であるところ、本件補正は、前記第2に示したとおり却下されたので、当該主張は、本願発明に係る請求項の記載に基づくものではない。
したがって、前記主張は採用できない。
第8 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-014346