特許拒絶査定不服審判
2023-005532
マルチビーム検査装置を使用してサンプルをスキャンするためのシステム及び方法
- 審判番号
- 2023-005532
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-566995外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年04月06日
- 審決日
- 2024年07月18日
- 公報発行日
- 2024年12月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
- 【請求人代理人】稲葉 良幸
- 【請求人代理人】大貫 敏史
- 【請求人代理人】江口 昭彦
- 【請求人代理人】内藤 和彦
- 分類
- P18 .121-WZ (H01J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-566995号「マルチビーム検査装置を使用してサンプルをスキャンするためのシステム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔令和元年12月19日国際公開、WO2019/238553号、令和3年10月7日国内公表、特表2021-526716号〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和元年6月7日(パリ条約による優先権主張 2018年6月12日、米国、2018年12月31日、米国)の出願であって、その手続の経緯の概要は、以下のとおりである。
令和4年 1月28日付け:拒絶理由通知書
同年 6月 2日 :意見書・手続補正書の提出
同年 7月22日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書
同年10月25日 :意見書・手続補正書の提出
同年12月 1日付け:(令和4年10月25日になされた手続補正
書の)補正の却下の決定、拒絶査定
令和5年 4月 6日 :審判請求書・手続補正書の提出
令和6年 3月 4日付け:拒絶理由通知書(以下「当審拒絶理由通知書
」という。)
同年 6月 4日 :意見書・手続補正書の提出
第2 本願発明の認定
本願の請求項1~9に係る発明は、令和6年6月4日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定されるものと認められるところ、そのうち、その請求項1の記載は以下のとおりである(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)。
「マルチビームツールであって、
ビーム構成システムを含み、前記ビーム構成システムは、荷電粒子の一次ビームを生成するための荷電粒子源、サンプルを保持するように構成されたステージ、及び前記一次ビームをビームのアレイに分割するように構成された前記荷電粒子源と前記ステージとの間の偏向器システム、を含み、
前記ビーム構成システムは、前記ビームのアレイの行内のビームの数に基づいて決定される回転角を伴う、回転ビーム構成を提供し、
前記ビームのアレイを偏向させて、同時にi)前記ステージと同じ速度で前記ステージの移動に追従し、ii)前記サンプルの表面エリアに渡って1つ又は複数の組のスキャンラインをスキャンする、ように構成される、マルチビームツール。」
第3 当審拒絶理由通知書における拒絶の理由
当審拒絶理由通知書における拒絶の理由は、請求項1に係る発明は、その最先の優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない旨を含むものである。
引用文献1.特開2018-17526号公報
引用文献2.特開平10-197463号公報(周知技術を示す文献)
第4 当審の判断
当審は、以下のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであると判断する。
1 本願発明の認定
本願発明の認定は、上記第2に記載したとおりである。
2 引用文献の記載及び引用発明等
(1)引用文献1
引用文献1には、次の事項が記載されている。
ア 発明の詳細な説明の記載事項
「【0001】
本発明は、電子ビーム検査装置及び電子ビーム検査方法に関する。例えば、電子線によるマルチビームを照射して放出されるパターンの2次電子画像を取得してパターンを検査する検査装置に関する。」
「【0017】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1におけるパターン検査装置の構成を示す構成図である。図1において、基板に形成されたパターンを検査する検査装置100は、マルチ電子ビーム検査装置の一例である。検査装置100は、電子光学画像取得部150、及び制御系回路160(制御部)を備えている。電子光学画像取得部150は、電子ビームカラム102(電子鏡筒)、検査室103、検出回路106、チップパターンメモリ123、ステージ駆動機構142、及びレーザ測長システム122を備えている。電子ビームカラム102内には、電子銃201、照明レンズ202、成形アパーチャアレイ基板203、縮小レンズ205、制限アパーチャ基板206、対物レンズ207、主偏向器208、副偏向器209、一括ブランキング偏向器212、ビームセパレーター214、投影レンズ224,226、偏向器228、及びマルチ検出器222が配置されている。」
「【0023】
図2は、実施の形態1における成形アパーチャアレイ部材の構成を示す概念図である。図2において、成形アパーチャアレイ基板203には、2次元状の横(x方向)m列×縦(y方向)n段(m,nは2以上の整数)の穴(開口部)22がx,y方向に所定の配列ピッチL’で形成されている。なお、マルチビームの縮小倍率がa倍(マルチビーム径を1/aに縮小して基板101に照射する場合)である場合にはL’=aLとなる。その場合の基板101上でのx,y方向に対するマルチビームのビーム間ピッチをLとする。実施の形態1では、x方向に並ぶm個の穴22が、-y方向(或いは+y方向)に順にL’/mだけ位置がずれながら形成される場合を示している。図2の例では、x方向に並ぶ4個の穴22が、-y方向に順にL’/4だけ位置がずれながら形成される場合を示している。かかる配列によって、例えばy方向に同じ間隔で平行に並ぶ仮想的な複数の直線上に同一ピッチで配列されるように2次元状に複数の穴22が形成される。図2の例では、x軸に対して時計回りに角度θ(=tan-1(1/m))だけ傾いた複数の直線上に複数の穴22が同一ピッチで配列される。或いは、y軸と平行な複数の直線上に複数の穴22が同一ピッチで配列され、各線上に配置される穴22が順にL’/4だけ位置がずれる。このように、XYステージ105の移動方向(ここでは-x方向)に対して並ぶm個の穴22のy方向位置を順にL’/mずつずらせばよい。これにより、成形アパーチャアレイ基板203に形成されるすべての穴22が、XYステージ105が走査のために連続移動する移動方向(-x方向)或いは/及びXYステージ105の移動に伴いx方向に移動することになる検査方向に重ならないように形成できる。なお、穴22のサイズは、L’/mよりも十分小さいことは言うまでもない。次に検査装置100における電子光学画像取得部150の動作について説明する。」
「【0031】
図6は、実施の形態1におけるスキャン動作の細部の一例を説明するための概念図である。図6では、ある1つの単位検査領域33(照射領域34)を走査する場合の一例を示している。1つの照射領域34内には、x,y方向に(2次元状に)、m×n(L/M)個のグリッド29が配列されることになる。かかる状態で、電子ビームカラム102(カラムの一例)は、直線上に同一ピッチで配列されるビーム列が複数列並ぶ複数の電子ビーム(第1の電子ビーム)により構成されるマルチビーム20を用いて、XYステージ105が-x方向(所定の方向)に連続移動する間、XYステージ105の移動方向(-x方向)と平行な方向にマルチビーム20のビームの照射領域が重ならないように基板101にマルチビーム20を照射することによって、基板101上を走査する。具体的には、XYステージ105が-x方向に連続移動することで相対的にマルチビーム20の照射領域34が連続的にx方向に移動しながら、当該単位検査領域33内を走査(スキャン動作)する。図6の例では、1つの単位検査領域33とマルチビーム20の照射領域34とが一致するように重なった状態を示している。マルチビーム20を構成する各ビームは、互いに異なるいずれかのグリッド29を担当することになる。そして、各ショット時に、各ビームは、担当グリッド29内の同じ位置に相当する1つの測定用画素36を照射することになる。図6の例では、各ビームは、1ショット目に担当グリッド29内の最下段の左から1番目の測定用画素36を照射する。そして、副偏向器209によってマルチビーム20全体を一括してy方向に1測定用画素36分だけビーム偏向位置をシフトさせ、2ショット目に担当グリッド29内の下から2段目の左から1番目の測定用画素36を照射する。そして、副偏向器209によってマルチビーム20全体を一括してx方向に1測定用画素36分だけビーム偏向位置をシフトさせ、3ショット目に担当グリッド29内の下から2段目の左から2番目の測定用画素36を照射する。そして、副偏向器209によってマルチビーム20全体を一括して-y方向に1測定用画素36分だけビーム偏向位置をシフトさせ、4ショット目に担当グリッド29内の下から1段目の左から2番目の測定用画素36を照射する。かかる動作を繰り返し、1つのビームで1つのグリッド29内のすべての測定用画素36を順に照射していく。1回のショットでは、成形アパーチャアレイ部材203の各穴22を通過することによって形成されたマルチビームによって、最大で各穴22と同数の複数のショットに応じた2次電子の束によるマルチ2次電子300が一度に検出される。マルチビーム20が担当するグリッド29内のすべての測定用画素36をスキャンするまで、XYステージ105の移動によって偏向位置がずれないように、主偏向器208は、XYステージ105の移動に追従するように、マルチビーム20を偏向する(トラッキング動作する)。マルチビーム20が、それぞれ担当するグリッド29内のすべての測定用画素36をスキャンすると、主偏向器208は、トラッキングリセットし、x方向に隣接するそれぞれ担当する次のグリッド29の1ショット目の画素36の位置に各ビームが照射されるようにマルチビーム20全体の偏向位置を一括してずらす。そして、同様に、スキャン動作を進める。
【0032】
なお、ここでは1ショット目、2ショット目、・・・とショットを区切って説明したが、マルチビーム20は、画素36毎にビームをON/OFFせずに照射し続けながら偏向位置を移動させるラスタースキャン動作を行ってもよい。
【0033】
以上のように、各ビームは、それぞれ対応する1つのグリッド29を走査することになる。マルチビーム20のショットにより、その都度、照射された測定用画素36から2次電子が上方に放出される。このように、基板101にマルチビーム20を照射することに起因して基板101から放出される2次電子をマルチ検出器222が検出する。マルチ検出器222は、各測定用画素36から上方に放出されたマルチ2次電子300を測定用画素36毎(或いはグリッド29毎)に検出する。
【0034】
以上のようにマルチビーム20を用いて走査することで、シングルビームで走査する場合よりも高速にスキャン動作(測定)ができる。」
「【0040】
図13は、実施の形態1と比較例とのスループットを比較した図である。図13(a)では、比較例として、縦横(x,y方向)に行列状に4×2本のビームが配列される場合を示している。y方向各段のx方向に並ぶ4つのビームは互いに重複してスキャンするため、結局、y方向に並ぶ2段のビームで異なる領域を同時スキャンすることと同じになる。よって、1本のシングルビームでスキャンする場合の2倍のスループットが得られることになる。一方、図13(b)では、実施の形態1として、y方向各段のx方向に並ぶ4つのビームを-y方向に順にスキャン範囲(グリッド29)が重ならないようにずらしているので、y方向に並ぶ8段のビームで異なる領域を同時スキャンすることと同じになる。よって、1本のシングルビームでスキャンする場合の8倍のスループットが得られることになる。
【0041】
以上のように、電子光学画像取得部150は、XYステージ105が連続移動する移動方向(-x方向)に重ならない複数の電子ビームによるマルチビーム20を用いて、図形パターンが形成された被検査基板101上を走査し、マルチビーム20が照射されたことに起因して被検査基板101から放出される、マルチ2次電子300を検出する。走査(スキャン)の仕方、及びマルチ2次電子300の検出の仕方は上述した通りである。マルチ検出器222によって検出された各測定用画素36からの2次電子の検出データは、測定順に検出回路106に出力される。検出回路106内では、図示しないA/D変換器によって、アナログの検出データがデジタルデータに変換され、チップパターンメモリ123に格納される。そして、1つのストライプ領域32分(或いはチップ332分)の検出データが蓄積された段階で、ストライプパターンデータ(或いはチップパターンデータ)として、位置回路107からの各位置を示す情報と共に、比較回路108に転送される。」
「【0055】
実施の形態2.
実施の形態1では、マルチビームを形成する時点で、形成位置自体をXYステージ105の移動方向に重ならない位置で形成するように構成した。しかし、これに限るものではない。実施の形態2における検査装置の構成は図1と同様である。また、以下、特に説明する点以外の内容は実施の形態1と同様である。
【0056】
図15は、実施の形態2における検査対象基板上でのビーム配列の一例を示す図である。実施の形態2では、成形アパーチャアレイ基板203でy方向各段のx方向に並ぶ複数のビームをy方向にずらさない。すなわち、x方向に沿ってm個のビーム列をそのままy方向にn段並べて配列する。言い換えれば、マルチビーム20は、x,y方向に行列状に配列される。このままでは、上述した比較例のように、XYステージ105の移動方向(-x方向)に各段のx方向に並ぶビーム列が重なってしまうので、同じ領域をx方向に並ぶビーム列で重複してスキャンしてしまう。そこで、実施の形態2では、図15に示すように、m×n本のマルチビーム20を基板101上に照射する前に、マルチビーム20像を角度θ(=tan-1(1/m))だけ例えば時計回りに回転させる。実施の形態2では、XYステージ105が連続移動する移動方向(-x方向)に重ならないように、電子光学系でマルチビーム20の像を回転させる。具体的には、マルチビーム20像の回転角θは、レンズ制御回路124が縮小レンズ205と対物レンズ207といった電子光学系に励磁する電流値を調整すればよい。或いは、図1に図示しない静電レンズ等の像の回転に影響を与える電子光学系を追加配置し、かかる静電レンズに印可する電位によって調整してもよい。或いは、成形アパーチャアレイ基板203自体を回転させてもよい。
【0057】
マルチビーム20像を回転させることによって、各ビームのスキャン範囲が回転による変化分Δの影響を受ける。
【0058】
図16は、実施の形態2における回転変化分の説明をするための図である。図16(a)では、成形アパーチャアレイ基板203の回転が無い場合の各ビームのスキャン範囲のイメージを示している。図16(b)では、成形アパーチャアレイ基板203を回転させた場合の各ビームのスキャン範囲のイメージを示している。回転の有無による各ビームのスキャン範囲を重ねると、図16(c)に示すように、例えばy方向寸法に変化分Δだけ変化する。図16(c)に示す三角形を用いて、変化分Δを計算すると、Δ=2L(sin(α/2))2で定義できる。かかる変化分Δを用いて、各ビームのスキャン範囲を求める。実施の形態2におけるスキャン範囲(グリッド29)は、x方向に(L-Δ)となり、y方向に(L-Δ)/mとなる。
【0059】
以上のように、マルチビーム像を回転させた状態で、XYステージ105を連続移動させながらスキャンしても、実施の形態1と同様、基板101上の同じ小領域を複数のビームの走査範囲に送らないようにできる。よって、直線上に同一ピッチで配列されるビーム列が複数列並ぶマルチビームを用いたパターン検査においてスループットを向上できる。」
イ 図面
【図1】
「
[図:0001417105000001.jpg]
」
【図2】
「
[図:0001417105000002.jpg]
」
【図6】
「
[図:0001417105000003.jpg]
」
【図13】
「
[図:0001417105000004.jpg]
」
【図15】
「
[図:0001417105000005.jpg]
」
【図16】
「
[図:0001417105000006.jpg]
」
(2)引用発明の認定
上記(1)から、引用文献1には、実施の形態1と同様の構成の検査装置を備え、マルチビームは、画素毎にビームをON/OFFせずに照射し続けながら偏向位置を移動させるスキャン動作を行う(【0031】・【0032】)、実施の形態2におけるパターン検査装置(【0001】・【0017】)について、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(引用発明の認定に用いた段落番号等を参考までに括弧内に付してある。以下同じ。)。
<引用発明>
「電子光学画像取得部150、及び制御系回路160を備え、前記電子光学画像取得部150は、電子ビームカラム102、検査室103、検出回路106、チップパターンメモリ123、ステージ駆動機構142、及びレーザ測長システム122を備え、前記電子ビームカラム102内には、電子銃201、照明レンズ202、成形アパーチャアレイ基板203、縮小レンズ205、制限アパーチャ基板206、対物レンズ207、主偏向器208、副偏向器209、一括ブランキング偏向器212、ビームセパレーター214、投影レンズ224,226、偏向器228、及びマルチ検出器222が配置されている検査装置100であって、(【0017】)
前記電子光学画像取得部150は、XYステージ105が連続移動する移動方向(-x方向)に重ならない複数の電子ビームによるマルチビーム20を用いて、図形パターンが形成された被検査基板101上を走査し、マルチビーム20が照射されたことに起因して被検査基板101から放出される、マルチ2次電子300を検出し、(【0041】)
m×n本のマルチビーム20を基板101上に照射する前に、マルチビーム20像を角度θ(=tan-1(1/m))だけ時計回りに回転させ、XYステージ105が連続移動する移動方向(-x方向)に重ならないように、電子光学系でマルチビーム20の像を回転させるものであって、前記マルチビーム20像の回転角θは、静電レンズ等の像の回転に影響を与える電子光学系を追加配置し、かかる静電レンズに印可する電位によって調整し、(【0056】)
1つの照射領域34内には、x,y方向に(2次元状に)、m×n(L/M)個のグリッド29が配列され、電子ビームカラム102は、直線上に同一ピッチで配列されるビーム列が複数列並ぶ複数の電子ビームにより構成されるマルチビーム20を用いて、XYステージ105が-x方向に連続移動する間、XYステージ105の移動方向と平行な方向にマルチビーム20のビームの照射領域が重ならないように基板101にマルチビーム20を照射することによって、基板101上を走査するものであって、各ビームは、1ショット目に担当グリッド29内の最下段の左から1番目の測定用画素36を照射し、そして、副偏向器209によってマルチビーム20全体を一括してy方向に1測定用画素36分だけビーム偏向位置をシフトさせ、2ショット目に担当グリッド29内の下から2段目の左から1番目の測定用画素36を照射し、マルチビーム20が担当するグリッド29内のすべての測定用画素36をスキャンするまで、XYステージ105の移動によって偏向位置がずれないように、主偏向器208は、XYステージ105の移動に追従するように、マルチビーム20を偏向し(トラッキング動作する)、マルチビーム20が、それぞれ担当するグリッド29内のすべての測定用画素36をスキャンすると、主偏向器208は、トラッキングリセットし、x方向に隣接するそれぞれ担当する次のグリッド29の1ショット目の画素36の位置に各ビームが照射されるようにマルチビーム20全体の偏向位置を一括してずらし、同様に、スキャン動作を進め、(【0031】)
マルチビーム20は、ショットに代えて、画素36毎にビームをON/OFFせずに照射し続けながら偏向位置を移動させるラスタースキャン動作を行い、(【0032】)
電子線によるマルチビームを照射して放出されるパターンの2次電子画像を取得してパターンを検査する検査装置100。(【0001】)」
3 対比・判断
(1)対比
ア 対比分析
本願発明と引用発明とを対比する。
(ア) 「マルチビームツールであって、ビーム構成システムを含み、前記ビーム構成システムは、荷電粒子の一次ビームを生成するための荷電粒子源、サンプルを保持するように構成されたステージ、及び前記一次ビームをビームのアレイに分割するように構成された前記荷電粒子源と前記ステージとの間の偏向器システム、を含[む]」との発明特定事項について
引用発明の「電子銃201」が一次電子ビームを生成することは明らかであるから、当該「電子銃201」が生成する一次電子ビームは、本願発明の「荷電粒子の一次ビーム」に相当する。
また、引用発明の「電子線によるマルチビームを照射して放出されるパターンの2次電子画像を取得してパターンを検査する検査装置100」、「電子光学画像取得部150」、「電子銃201」、「電子光学画像取得部150」の「XYステージ105」は、本願発明1の「マルチビームツール」、「ビーム構成システム」、「荷電粒子の一次ビームを生成するための荷電粒子源」、「サンプルを保持するように構成されたステージ」にそれぞれ相当する。
そして、引用発明の「成形アパーチャアレイ基板203、縮小レンズ205、制限アパーチャ基板206、対物レンズ207、主偏向器208、副偏向器209、一括ブランキング偏向器212、ビームセパレーター214、投影レンズ224,226、偏向器228」及び「追加配置し」た「静電レンズ等の像の回転に影響を与える電子光学系」からなるシステム(以下「システムA」という。)が、「電子銃201」が生成する電子ビームをm×n本のマルチビーム20に分割するように構成されたものであることは明らかであるから、引用発明の「システムA」は、「電子銃201」が生成する電子ビームをm×n本のマルチビーム20に分割し、当該マルチビームを偏向するように構成された偏向器といえ、当該「m×n本のマルチビーム20」はビームのアレイといえるから、引用発明は、本願発明の上記発明特定事項を備える。
(イ) 「前記ビーム構成システムは、前記ビームのアレイの行内のビームの数に基づいて決定される回転角を伴う、回転ビーム構成を提供し」との発明特定事項について
引用発明のシステムAは、「m×n本のマルチビーム20を基板101上に照射する前に、マルチビーム20像を角度θ(=tan-1(1/m))だけ例えば時計回りに回転させ、XYステージ105が連続移動する移動方向(-x方向)に重ならないように、電子光学系でマルチビーム20の像を回転させ[る]」ものであり、角度θを伴う、回転したm×n本のマルチビーム20の構成を提供するように構成されているから、引用発明は、上記発明特定事項を備える。
(ウ) 「前記ビームのアレイを偏向させて、同時にi)前記ステージと同じ速度で前記ステージの移動に追従し、ii)前記サンプルの表面エリアに渡って1つ又は複数の組のスキャンラインをスキャンする、ように構成される」との発明特定事項について
a 引用発明のシステムAは、「XYステージ105が-x方向に連続移動する間」、「各ビームは、1ショット目に担当グリッド29内の最下段の左から1番目の測定用画素36を照射し、そして、副偏向器209によってマルチビーム20全体を一括してy方向に1測定用画素36分だけビーム偏向位置をシフトさせ、2ショット目に担当グリッド29内の下から2段目の左から1番目の測定用画素36を照射」し、「マルチビーム20が担当するグリッド29内のすべての測定用画素36をスキャンするまで、XYステージ105の移動によって偏向位置がずれないように、主偏向器208は、XYステージ105の移動に追従するように、マルチビーム20を偏向する(トラッキング動作する)」ものであるから、副偏向器が1ショット目から2ショット目に向けてy方向にマルチビーム20を偏向する際に、主偏向器208は、XYステージ105が-x方向に連続移動する速度と同じ速度で、XYステージ105の移動に追従するように、マルチビーム20を偏向しているといえる。
そして、引用発明が上記の動作を行うことは、本願発明の「前記ビームのアレイを偏向させて、同時にi)前記ステージと同じ速度で前記ステージの移動に追従[する]」ことに相当する。
b また、副偏向器が1ショット目から2ショット目に向けてy方向にマルチビーム20を偏向する際に、主偏向器208が、XYステージ105が-x方向に連続移動する速度と同じ速度で、XYステージ105の移動に追従することによって、1ショット目に担当グリッド29内の最下段の左から1番目の測定用画素36を照射し、2ショット目に、前記「最下段の左から1番目の測定用画素36」のy方向の真上に位置する「担当グリッド29内の下から2段目の左から1番目の測定用画素36」を照射することが可能となり、「マルチビーム20は、画素36毎にビームをON/OFFせずに照射し続けながら偏向位置を移動させるラスタースキャン動作を行[う]」から、このことは、本願発明の「スキャンラインをスキャン」することに相当する。
そして、引用発明は、「マルチビーム20が、それぞれ担当するグリッド29内のすべての測定用画素36をスキャンすると、主偏向器208は、トラッキングリセットし、x方向に隣接するそれぞれ担当する次のグリッド29の1ショット目の画素36の位置に各ビームが照射されるようにマルチビーム20全体の偏向位置を一括してずらし、同様に、スキャン動作を進め[る]」ことにより、一つのグリッド29のスキャンをした後に、x方向に隣接する次のグリッド29をスキャンすることが繰り返されるところ、前記グリッド29は、1つの照射領域34内に、x,y方向に(2次元状に)、m×n(L/M)個のグリッド29が配列されたものであり、前記スキャンを繰り返すことにより、1つの照射領域34のそれぞれのグリッド29が全てに渡って照射されることとなる。
そうすると、引用発明が上記の動作を行うことは、本願発明の「前記ビームのアレイを偏向させて、同時に、ii)前記サンプルの表面エリアに渡って1つ又は複数の組のスキャンラインをスキャンする」ことに相当する。
c 以上によれば、引用発明は、本願発明の上記発明特定事項を備える。
イ 一致点及び相違点
上記ア(ア)~(ウ)からみて、本願発明と引用発明は、下記の一致点で一致し、相違点はない。
<一致点>
「マルチビームツールであって、
ビーム構成システムを含み、前記ビーム構成システムは、荷電粒子の一次ビームを生成するための荷電粒子源、サンプルを保持するように構成されたステージ、及び前記一次ビームをビームのアレイに分割するように構成された前記荷電粒子源と前記ステージとの間の偏向器システム、を含み、
前記ビーム構成システムは、前記ビームのアレイの行内のビームの数に基づいて決定される回転角を伴う、回転ビーム構成を提供し、
前記ビームのアレイを偏向させて、同時にi)前記ステージと同じ速度で前記ステージの移動に追従し、ii)前記サンプルの表面エリアに渡って1つ又は複数の組のスキャンラインをスキャンする、ように構成される、マルチビームツール。」
(2)判断
上記のように、本願発明と引用発明との間に相違点はないし、仮に、相違点があるとしても、当該相違点は当業者が引用発明を実施する上で適宜採用する程度ものであるといえるから、本願発明は引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)請求人の主張について
ア 請求人は、令和6年6月4日に提出した意見書において、引用文献1の段落[0038]及び図11には、「ステージの移動に追従」すること、及び「ステージと同じ速度で」ステージの移動に追従することについては記載されていない旨主張する。
イ 請求人の主張について検討する。
引用文献1に、マルチビーム20を偏向することによって基板101上を走査するとともに、「ステージの移動に追従」すること、及び「ステージと同じ速度で」ステージの移動に追従することが記載されていることは、上記(1)ア(ウ)で説示したとおりであるから、請求人の上記主張は採用できない。
(4)小括
以上検討のとおり、本願発明は、引用発明と相違点がないか、仮に、相違点があるとしても、当該相違点は当業者が引用発明を実施する上で適宜採用する程度ものであるといえるから、本願発明の効果は、本願発明の構成が奏するものとして、引用発明から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものあるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-005532