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特許拒絶査定不服審判

2022-020460

広アクティブ領域高速検出器のアーキテクチャ

審判番号
2022-020460
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-546935外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年12月16日
審決日
2024年01月29日
公報発行日
2024年07月26日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (H01J)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-546935「広アクティブ領域高速検出器のアーキテクチャ」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年10月10日国際公開、WO2019/192821、令和 3年 7月26日国内公表、特表2021-517709〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 11項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本願は、2019年(平成31年)3月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2018年4月2日、米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。

令和3年10月 7日付け:拒絶理由通知書
令和4年 4月12日 :意見書、手続補正書の提出

同年 8月 4日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)

(同月17日 :原査定の謄本の送達)

同年12月16日 :審判請求書の提出

第2 本願発明

本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和4年4月12日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1の記載は、次のとおりのものである。

<本願発明>

「複数の感知素子を含む基板と、
第1の複数の感知素子のうちの1つ又は複数の感知素子を第1の出力に接続する第1のセクションと、第2の複数の感知素子のうちの1つ又は複数の感知素子を第2の出力に接続する第2のセクションと、を含む複数のセクションと、
を含む検出器であって、
前記複数の感知素子と、前記第1及び第2の出力と、前記第1及び第2のセクションと、は1つのダイで実装される、検出器。」

第3 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由の概要は、以下の内容を含むものである。

本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である引用文献1に記載された発明又は引用文献2に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1.特表2018-508789号公報(以下「引用文献1」という。)

2.CHEN W et al.,"High resistivity silicon active pixel sensors for recording data from STEM",NUCLEAR INSTRUMENTS & METHODS IN PHYSICS RESERCH A,2003年06月28日,Vol. 512,p. 368-377, https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0168900203019156(以下「引用文献2」という。)

第4 各引用文献の記載及び引用発明

1 引用文献1について

(1)引用文献1に記載された事項

原査定で引用された引用文献1には、次の記載がある。下線は当審が付した、以下同様。

「【0057】
図1は、本発明の実施形態による放射線イメージセンサ1を示す。この放射線イメージセンサは、ピクセルの少なくとも2つのグループを含む放射線検出器アレイ21を含む。放射線検出器アレイ21に配置された複数のピクセルは、例えば、複数の電離箱検出器、シンチレーション検出器、チェレンコフ(Cerenkov)カウンター、及び/又は、例えば、シリコン、ゲルマニウム又はダイヤモンドカウンタの半導体検出器のような固体の検出器を含む。…(後略)…。」
「【0064】
放射線イメージセンサ1は、さらに、少なくとも2つのグループのピクセルに対応する少なくとも2つの読み出しコネクタを有する。例えば、第1の読み出しコネクタが動作可能に第1の読み出し集積回路に接続するように適合され、第2の読み出しコネクタが動作可能に第2の読み出し集積回路に接続するように適合されてもよい。本発明の実施形態による放射線イメージセンサ1は、少なくとも1つのプラグイン可能な読み出しモジュール31、32を有してもよく、例えば、放射線イメージセンサ1は1つのプラグイン可能な読み出しモジュール31を有してもよい、少なくとも2つの読み出しコネクタ11、12の各読み出しコネクタは、除去及び/又は交換を可能にするよう、対応するプラグイン可能な読み出しモジュール31、32の機械的な切断を可能にするために適合されてもよい。少なくとも2つの読み出しコネクタ11、12の各読み出しコネクタは、プラグイン可能な読み出しモジュールを受けるための少なくとも1つのソケットを有してもよい。少なくとも2つの読み出しコネクタ11、12は、これらのピクセルに入射する放射線に応答してアレイ21のピクセルによって生成された電気信号を読み出すために適合されてもよい。プラグイン可能な読み出しモジュールは、電気信号を対応するデジタル信号に変換する電子読み出し装置であってもよい。例えば、各電子読み出し回路は、例えば、複数のピクセルの対応するピクセルにより提供される各電気信号のような複数の電気信号を受けるために適合され、例えば、例えば、電子読み出し回路の対応する複数の互いに独立した入力チャネルを介して入力される。各電子読み出し回路は、受信された電気信号のそれぞれを、増幅し、フィルタリングし、及び/又は、デジタル化するように適合されてもよい。各電子読み出し回路は、イメージセンサのフロントエンド読み出しチップであってもよい。プラグイン可能な読み出しモジュール、例えば、電子読み出し回路は、実質的に同一であってもよく、本質的に交換可能である。」
「【0065】
放射線イメージセンサ1は、また、例えば、少なくとも2つの読み出しコネクタの対応する読み出しコネクタに少なくとも2つのピクセルのグループの各々からの電気信号をルーティングするように構成された電気ルーティング回路10を有する。例えば、電気ルーティング回路10は、プリント回路基板(PCB)又は、電子回路基板のような電気回路基板上の電気ルーティング手段を有してもよく、電気回路基板は、例えば、フレキシブル回路基板のような機械的に指示され電気的に接続する電子部品に対する既知の代替物のようなものでもよい。電気ルーティング回路は、基板上及び/又は基板内に設けられた導電性パスを有してもよく、その導電性パスは、2酸化ケイ素又は非導電性ポリマーのような電気絶縁材料の基板上に提供された導電性金属からなるストリップ、バンド、レイヤ及び/又はワイヤのようなものでもよい。これらの導電性パスは、例えば、炭素系導電性材料、例えば、基板上に印刷された導電性カーボンインクを含んでもよい。このような炭素系材料の利点は、良好な電波透明性を達成することができること、例えば、導電性経路が測定されるガンマ線分布のような関心領域の放射線場を大幅に減衰させないことにある。いくつかの実施形態では、電気回路基板の形態の電気ルーティング回路10は、ボンドパッドのような複数のピクセルに電気回路基板を電気的に接続する接続手段18を有してもよい。したがって、電気回路基板は、電気回路基板の接続手段18を放射線撮像センサボード21上の相補的接続手段に電気的に接続するように、放射線撮像センサ基板21に電気回路基板を接触させることにより複数のピクセルに操作可能な接続するように適合されてもよい。しかしながら、他の実施形態では、放射線検出器アレイ21と電気ルーティング回路10は、単一の電気回路基板上に集積されてもよい。例えば、複数のピクセルは、ルーティング回路を含む電気回路基板上又は電気回路基板内で統合されてもよい。したがって、電気回路基板は、複数のピクセルと電気ルーティング回路を含む放射線イメージセンサ基板であってもよい。例えば、複数のピクセルは電気回路基板の第1の主面上に設けられていてもよく、一方、信号をピクセルに及びピクセルからルーティングする電気ルーティング手段は、電気回路基板の第2の主面上に設けられ、基板を通過するビアにより、それに接続されてもよい。」
「【0069】
電気ルーティング回路10がプラグイン可能な読み出しモジュール31に動作可能に接続するための第1の読み出しコネクタ11を有してもよい。例えば、複数のプラグイン可能な読み出しモジュール22は、アレイ21の粗い解像度読み出しを提供するための少なくとも1つの第1の集積回路31を含んでもよい。電気回路基板10は、また、第2のプラグイン可能な読み出しモジュール32に動作可能に接続するための第2の読み出しコネクタ12を有してもよい。例えば、粗い解像度読み出しと組み合わせた場合、複数の電子読み出し回路22は、アレイ21の詳細な読み出しを提供する少なくとも1つの第2のプラグイン可能な読み出しモジュール32を有してもよい。」
「【0073】
電気回路基板10は、また、放射線検出器アレイの第1の複数のピクセル33を第1の読み出しコネクタ11に電気的に接続し、放射線検出器アレイの第2の複数のピクセルを第2の読み出しコネクタ12に電気的に接続する電気ルーティング手段19を有する。例えば、電気的なルーティング手段は、例えば、アレイの各ピクセルに接続するためのボンドパッドとそれに対応する読み出しコネクタから、各ピクセル間で信号をルーティングするために電気回路基板内に及び/又は電気回路基板上に設けられた導電路を有してもよい。…(後略)…。」
「図1
[図:0001411795000001.jpg]
」

(2)引用発明1

前記(1)によれば、引用文献1には、図1に係る放射線イメージセンサ1について、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。なお、参考までに、引用発明1の認定に用いた引用文献1の記載に係る段落番号等を括弧内に付してある。

<引用発明1>

「放射線イメージセンサ1であって、(【0057】)
前記放射線イメージセンサは、ピクセルの少なくとも2つのグループを含む放射線検出器アレイ21を含み、(【0057】)
前記放射線検出器アレイ21に配置された複数のピクセルは、半導体検出器のような固体の検出器を含み、(【0057】)
前記放射線イメージセンサ1は、前記少なくとも2つのグループのピクセルに対応する少なくとも2つの読み出しコネクタを有し、(【0064】)
前記放射線イメージセンサ1は、前記少なくとも2つの読み出しコネクタの対応する読み出しコネクタに前記少なくとも2つのピクセルのグループの各々からの電気信号をルーティングするように構成された電気ルーティング回路10を有し、(【0065】)
電気ルーティング回路10は、電気回路基板上の電気ルーティング手段を有し、(【0065】)
前記放射線検出器アレイ21と前記電気ルーティング回路10は、単一の電気回路基板上に集積され、前記電気回路基板は、前記複数のピクセルと前記電気ルーティング回路を含む放射線イメージセンサ基板である、(【0065】)
前記電気ルーティング回路10は、プラグイン可能な読み出しモジュール31に動作可能に接続するための第1の読み出しコネクタ11、第2のプラグイン可能な読み出しモジュール32に動作可能に接続するための第2の読み出しコネクタ12を有し、(【0069】)
前記電気回路基板10は、放射線検出器アレイの第1の複数のピクセル33を第1の読み出しコネクタ11に電気的に接続し、放射線検出器アレイの第2の複数のピクセルを第2の読み出しコネクタ12に電気的に接続する電気ルーティング手段19を有する、(【0073】)
放射線イメージセンサ。」

2 引用文献2について

(1)引用文献2に記載された事項

原査定で引用された引用文献2には、次の記載がある。日本語訳は当審によるものである。

ア 「Abstract
An X-ray Active Matrix Pixel Sensor (XAMPS) for recording Data from the Scanning Transmission Electron Microscope (STEM) was designed, produced and tested. The reason for measuring scattering angle of all STEM electrons is given together with the requirement on the performance of the XAMPS. Principles of the measurement of the number of STEM electrons scattered in a particular direction are summarized. Results of tests performed on a produced detector are described and the problem with the formation of an insulation layer between silicon and aluminum is identified. A change in the design of the pixel is proposed which results in a fully functioning XAMPS even with the insulation layer present.」(第1頁中段)

(日本語訳:

概要

走査型透過電子顕微鏡(STEM)からのデータを記録するためのX線アクティブマトリクスピクセルセンサー(XAMPS)を設計、製作、テストした。すべてのSTEM電子の散乱角を測定する理由と、XAMPSの性能に対する要求について述べる。特定の方向に散乱したSTEM電子の数を測定する原理をまとめる。製造された検出器で実施された試験の結果について説明し、シリコンとアルミニウムの間に絶縁層が形成される問題を特定する。絶縁層が存在しても完全に機能するXAMPSを実現する画素の設計変更を提案する。」

イ 「2. Active pixel sensors on high resistivity silicon
The readout architecture of XAMPS is shown schematically in Fig. 1. It consists of a silicon pixel array detector with matrix readout facilitated by integrated Junction Field Effect Transistor (JFET) switches. The XAMPS is conceptually similar to two other imaging devices: the CMOS passive pixel sensor used for visible light imaging [2,3] and the active-matrix flat panel imager (AMFPI) [4,5] which has applications in both visible light and Xray imaging. The XAMPS detector was conceived from the start as a device that addresses the needs of X-ray imaging for protein crystallography. It happened that the detector is also ideally suited for recording positions of electrons in STEM. The STEM application is somewhat less demanding than the application for X-ray imaging. Basically less pixels are needed and the charge produced by a single electron of STEM is larger than the charge produced by a single X-ray of energy of 12 keV typically used in protein crystallography. Moreover, the integration time in STEM is shorter than the integration time required for protein crystallography leading to less stringent limits of the leakage current of the detector.
Nine pixels, arranged in 3 rows and 3 columns are shown in Fig. 1. The vertical lines connected to the bottom of the array are the readout lines. Each line is bonded to an external charge sensitive preamplifier. The horizontal lines control the gates of the integrated JFET switches. Fig. 3 of Ref. [1] shows a 3D schematic of a single pixel in an XAMPS consisting of a 300?500 mm thick, high resistivity (several kΩ cm) n-type silicon. The volume of silicon is fully depleted of majority carriers (electrons) by applying relatively large negative potential (-100 to -200 V) to the rectifying junction at the bottom.」(第2頁右欄第18行~第3頁左欄第27行)

(日本語訳:

2.高抵抗シリコン上のアクティブピクセルセンサー

XAMPSの読み出しアーキテクチャを図1に模式的に示す。XAMPSの読み出しアーキテクチャは、JFET(Junction Field Effect Transistor:接合型電界効果トランジスタ)スイッチによってマトリクス読み出しを行うシリコンピクセルアレイ検出器で構成されている。XAMPSは、可視光イメージングに使用されるCMOSパッシブピクセルセンサー[2,3]や、可視光とX線の両方のイメージングに応用されるアクティブマトリクスフラットパネルイメージャ(AMFPI)[4,5]といった、他の2つのイメージングデバイスと概念的に類似している。XAMPS検出器は、当初からタンパク質結晶構造解析のためのX線イメージングのニーズに応えるデバイスとして考案された。その結果、この検出器はSTEMにおける電子の位置の記録にも最適であることが判明した。STEMのアプリケーションは、X線イメージングのアプリケーションよりも要求がやや低い。基本的に必要な画素数は少なく、STEMの1個の電子によって生成される電荷は、タンパク質結晶構造解析で一般的に使用される12keVのX線によって生成される電荷よりも大きい。さらに、STEMの積分時間はタンパク質結晶構造解析に必要な積分時間よりも短いため、検出器のリーク電流の制限もそれほど厳しくない。

3行3列に配列された9ピクセルを図1に示す。アレイの下部に接続された垂直ラインが読み出し線である。各ラインは外部の電荷検出プリアンプにボンディングされている。水平ラインは、集積JFETスイッチのゲートを制御する。参考文献[1]の図3に、3次元回路図を示す。参考文献[1]の図3は、厚さ300~500mm、高抵抗(数kΩcm)のn型シリコンからなるXAMPSの単一ピクセルの3D回路図である。底部の整流接合に比較的大きな負電位(-100~-200V)を印加することで、シリコンの体積から多数キャリア(電子)が完全に枯渇する。)

ウ 「
[図:0001411795000002.jpg]
」

(日本語訳:

図1 XAMPS検出器の等価回路)

(2)引用文献2の記載事項からみてとれる技術的事項

折りたたみ中(クリックで表示)

前記(1)イの記載事項及び前記(1)ウの図1より、次の技術的事項がみとてれる。

X線アクティブマトリクスピクセルセンサー検出器(XAMPS検出器)は、マトリクス(行列)に配列された複数のピクセル、各ピクセル毎に設けられ当該ピクセルのマトリクス読み出しを行う複数の接合型電界効果トランジスタスイッチ、各行の接合型電界効果トランジスタスイッチのゲートを制御する複数の水平ライン及び各列の接合型電界効果トランジスタスイッチのドレインに接続された読み出し線である複数の垂直ラインを有すること。

(3)引用発明2

前記(1)及び(2)によれば、引用文献2には、図1に係るX線アクティブマトリクスピクセルセンサー検出器について、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。

<引用発明2>

「X線アクティブマトリクスピクセルセンサー検出器であって、(第1頁中段Abstractの第1行)
X線アクティブマトリクスピクセルセンサー検出器は、マトリクス(行列)に配列した複数のピクセル、各ピクセル毎に設けられた当該ピクセルのマトリクス読み出しを行う複数の接合型電界効果トランジスタスイッチ、各行の接合型電界効果トランジスタスイッチのゲートを制御する複数の水平ライン及び各列の接合型電界効果トランジスタスイッチのドレインに接続された読み出し線である複数の垂直ラインを有し、(前記(2))
複数の垂直ラインは、外部の電荷検出プリアンプにボンディングされており、(第3頁左欄第17~19行)
X線アクティブマトリクスピクセルセンサーは、高抵抗シリコン上のアクティブピクセルセンサーである、(第2頁右欄第18行)
X線アクティブマトリクスピクセルセンサー検出器。」

第5 対比・判断

1 本願発明と引用発明1との対比・判断について

(1)対比

本願発明と引用発明1を対比すると、以下のとおりである。

ア 本願発明の「複数の感知素子を含む基板と、第1の複数の感知素子のうちの1つ又は複数の感知素子を第1の出力に接続する第1のセクションと、第2の複数の感知素子のうちの1つ又は複数の感知素子を第2の出力に接続する第2のセクションと、を含む複数のセクションと、を含む検出器であって」との特定事項について

(ア)引用発明1の「放射線イメージセンサ1」は、本願発明の「検出器」に相当する。

(イ)引用発明1の「放射線検出器アレイ21」に配置された「複数のピクセル」は、本願発明の「複数の感知素子」に相当する。また、前記「放射線検出器アレイ21」は、「放射線イメージセンサ基板」である「電気回路基板上に集積され」ているから、当該「放射線イメージセンサ基板」は、本願発明の「基板」に相当する。

よって、引用発明1は、本願発明の前記特定事項における「複数の感知素子を含む基板」「を含む」との特定事項を満たしている。

(ウ)a 引用発明1の「電気ルーティング手段19」は、「放射線検出器アレイの第1の複数のピクセル33を第1の読み出しコネクタ11に電気的に接続し、放射線検出器アレイの第2の複数のピクセルを第2の読み出しコネクタ12に電気的に接続する」ものであるところ、当該構成は、「第1の複数のピクセル33」が、「第1の読み出しコネクタ11」に「電気的に接続」されており、「第2の複数のピクセル」が、「第2の読み出しコネクタ12」に「電気的に接続」されているものと理解でき、そうすると、引用発明1の「第1の複数のピクセル33」、「第1の読み出しコネクタ」、「第2の複数のピクセル」及び「第2の読み出しコネクタ」は、それぞれ本願発明の「第1の複数の感知素子のうちの」「複数の感知素子」、「第1の出力」、「第2の複数の感知素子のうちの」「複数の感知素子」及び「第2の出力」に相当するといえる。

b そして、「第1の複数のピクセル33を第1の読み出しコネクタ11に電気的に接続」し、「第2の複数のピクセルを第2の読み出しコネクタ12に電気的に接続」するものは、「電気ルーティング手段19」であるから、引用発明1の「第1の複数のピクセル33を第1の読み出しコネクタ11に電気的に接続[する]」「電気ルーティング手段19」及び「第2の複数のピクセルを第2の読み出しコネクタ12に電気的に接続[する]」「電気ルーティング手段19」は、それぞれ本願発明の「第1のセクション」及び「第2のセクション」に相当するといえる。

c 以上を踏まえると、引用発明1は、本願発明の前記特定事項における「第1の複数の感知素子のうちの」「複数の感知素子を第1の出力に接続する第1のセクションと、第2の複数の感知素子のうちの」「複数の感知素子を第2の出力に接続する第2のセクションと、を含む複数のセクションと、を含む」との特定事項を満たすといえる。

(エ)以上より、引用発明1は、本願発明の前記特定事項を満たすといえる。

イ 本願発明の「前記複数の感知素子と、前記第1及び第2の出力と、前記第1及び第2のセクションと、は1つのダイで実装される」との特定事項について

引用発明1が、本願発明の前記特定事項を満たすかは、不明である。

ウ 以上によれば、本願発明と引用発明1の一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>

「複数の感知素子を含む基板と、
第1の複数の感知素子のうちの複数の感知素子を第1の出力に接続する第1のセクションと、第2の複数の感知素子のうちの複数の感知素子を第2の出力に接続する第2のセクションと、を含む複数のセクションと、を含む検出器。」

<相違点1>

本願発明は、「前記複数の感知素子と、前記第1及び第2の出力と、前記第1及び第2のセクションと、は1つのダイで実装される」のに対し、引用発明1は、「前記放射線検出器アレイ21と前記電気ルーティング回路10は、単一の電気回路基板上に集積され、前記電気回路基板は、前記複数のピクセルと前記電気ルーティング回路を含む放射線イメージセンサ基板である」点。

(2)判断

ア 相違点1について

引用発明1の「放射線イメージセンサ基板」である「電気回路基板」上には、「放射線検出器アレイ21」及び「電気ルーティング回路10」が「集積され」ているところ、「放射線検出器アレイに配置された複数のピクセル」は、「半導体検出器のような固体の検出器」であり、このような半導体検出器が、半導体ウェーハに集積され、分割により作成されることは文献を挙げるまでもない周知技術であるから、引用発明における「集積」を半導体ウェーハに行い、当該半導体ウェーハを分割して「放射線イメージセンサ」を得ることは、当業者であれば容易になし得たことといえる。

ここで、半導体ウェーハ上に集積された半導体デバイスを切り出した小片を、一般に「ダイ」と呼称することは技術常識といえるから、前記のように形成した引用発明1は、「放射線検出器アレイ21」及び「電気ルーティング回路10」が「1つのダイで実装される」ものということができる。

そして、引用発明1の「電気ルーティング回路10」は、「第1の読み出しコネクタ11」、「第2の読み出しコネクタ12」及び「電気ルーティング手段19」を有するのであるから、前記のように形成した引用発明1は結局、「放射線検出器アレイ21」、「第1の読み出しコネクタ11」、「第2の読み出しコネクタ12」及び「電気ルーティング手段19」が「1つのダイで実装される」ものとなる。

よって、引用発明1において、「放射線検出器アレイ21」、「第1の読み出しコネクタ11」、「第2の読み出しコネクタ12」及び「電気ルーティング手段19」が「1つのダイで実装される」ものとして、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者であれば容易になし得たことといえる。

イ 本願発明の効果について

本願発明の奏する作用効果は、引用発明1及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

(3)審判請求人の主張について

審判請求人は、引用文献1に記載された発明は、引用文献1の【0058】の記載に照らして、システムの安易な保守、交換及び/又はアップグレードを可能にするものであるから、放射検出器アレイ21と電気ルーティング回路10とを単一の電気回路基板上に集積することはない旨を主張している。

しかしながら、引用文献1の【0058】の記載は、読み出しモジュールがプラグイン可能であるようにされた場合に対応するものであり(【0064】・【0068】参照)、放射検出器アレイ21と電気ルーティング回路10とを単一の電気回路基板上に集積することを妨げるものではない。そして、引用文献1の【0065】には、放射検出器アレイ21と電気ルーティング回路10とを単一の電気回路基板上に集積することが明示的に記載されているから、前記審判請求人の主張を採用することはできない。

(4)小括

以上によれば、本願発明は、引用発明1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

2 本願発明と引用発明2との対比・判断について

(1)対比

本願発明と引用発明2を対比すると、以下のとおりである。

ア 本願発明の「複数の感知素子を含む基板と、第1の複数の感知素子のうちの1つ又は複数の感知素子を第1の出力に接続する第1のセクションと、第2の複数の感知素子のうちの1つ又は複数の感知素子を第2の出力に接続する第2のセクションと、を含む複数のセクションと、を含む検出器であって」との特定事項について

(ア)引用発明2は、「マトリクス(行列)に配列した複数のピクセル」を有する「X線アクティブマトリクスピクセルセンサー検出器」であるから、当該「マトリクス(行列)に配列したピクセル」及び「X線アクティブマトリクスピクセルセンサー検出器」は、それぞれ本願発明の「複数の感知素子」及び「検出器」に相当する。

そして、引用発明2の「X線アクティブマトリクスピクセルセンサー」は、「高抵抗シリコン上のアクティブピクセルセンサー」であるところ、このようなアクティブピクセルセンサーが何らかの基板上に形成されることは技術常識であるから、引用発明2が本願発明の「基板」に相当する構成を含むことは自明である。

よって、引用発明2は、本願発明の前記特定事項における「複数の感知素子を含む基板」「を含む検出器」との特定事項を満たすといえる。

(イ)a 引用発明2は、「マトリクス(行列)に配列した複数のピクセル」、「各ピクセル毎に設けられた当該ピクセルのマトリクス読み出しを行う複数の接合型電界効果トランジスタスイッチ」、「各列の接合型電界効果トランジスタスイッチのドレインに接続された読み出し線である複数の垂直ライン」及び「複数の垂直ライン」がボンディングされる「外部の電荷検出プリアンプ」を有しているところ、「複数のピクセル」のうちの一のピクセルの出力は、当該一のピクセルに設けられた「接合型電界効果トランジスタスイッチ」(以下「JFETスイッチ」という。)によりマトリクス読み出しされ、当該「JFETスイッチ」を介して接続された「垂直ライン」へ出力されるものと理解できる。

そうすると、引用発明2の一のピクセルに設けられた「JFETスイッチ」及び当該「垂直ライン」は、それぞれ本願発明の「第1のセクション」及び「第1の出力」に相当するといえ、引用発明2は、本願発明の前記特定事項における「第1の複数の感知素子のうちの1つ」「の感知素子を第1の出力に接続する第1のセクション」との構成を満たすといえる。

そして、前記「一のピクセル」とは異なる他の列の他のピクセルも、前記一のピクセルと同様の構成を備えるものであるから、前記一のピクセルについてと同様に、前記他のピクセルに設けられた「JFETスイッチ」及び前記他の列の「垂直ライン」は、それぞれ本願発明の「第2のセクション」及び「第2の出力」に相当するといえ、引用発明2は、本願発明の前記特定事項における「第2の複数の感知素子のうちの1つ」「の感知素子を第2の出力に接続する第2のセクション」との構成を満たすといえる。

b よって、引用発明2は、本願発明の前記特定事項における「第1の複数の感知素子のうちの1つ」「の感知素子を第1の出力に接続する第1のセクションと、第2の複数の感知素子のうちの1つ」「の感知素子を第2の出力に接続する第2のセクションと、を含む複数のセクション」「を含む検出器」との特定事項を満たすといえる。

(ウ)以上より、引用発明2は、本願発明の前記特定事項を満たすといえる。

イ 本願発明の「前記複数の感知素子と、前記第1及び第2の出力と、前記第1及び第2のセクションと、は1つのダイで実装される」との特定事項について

引用発明2が、本願発明の前記特定事項を満たしているといえるかは、不明である。

ウ 以上によれば、本願発明と引用発明2の一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>

「複数の感知素子を含む基板と、
第1の複数の感知素子のうちの1つの感知素子を第1の出力に接続する第1のセクションと、第2の複数の感知素子のうちの1つの感知素子を第2の出力に接続する第2のセクションと、を含む複数のセクションと、を含む検出器。」

<相違点2>

本願発明は、「前記複数の感知素子と、前記第1及び第2の出力と、前記第1及び第2のセクションと、は1つのダイで実装される」のに対し、引用発明2は、そのようにいえるか不明である点。

(2)判断

ア 前記(1)ア(ア)に説示とおり、引用発明2の「X線アクティブマトリクスピクセルセンサー」は、「高抵抗シリコン上のアクティブピクセルセンサー」であるところ、シリコン基板上にピクセル、スイッチ及び垂直ラインを集積することは、文献を挙げるまでもなく半導体の技術分野における周知技術であり、そのような周知技術を用いて引用発明2を構成する動機はあるといえる。

したがって、引用発明2の「複数のピクセル」、「接合型電界効果トランジスタスイッチ」及び「垂直ライン」を、シリコン基板上に集積して構成することは、当業者が容易になし得たことといえる。

そして、前記1(2)アに説示のとおり、半導体ウェーハ上に集積された半導体デバイスを切り出した小片を、一般に「ダイ」と呼称することに照らせば、シリコン基板上に集積して構成することは、相違点2に係る本願発明でいう「1つのダイで実装される」ものであると言うことができる。

よって、引用発明2において、「複数のピクセル」、「接合型電界効果トランジスタスイッチ」及び「垂直ライン」を「1つのダイで実装される」ものとして、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

イ 本願発明の効果について

本願発明の奏する作用効果は、引用発明2及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

(3)小括

以上によれば、本願発明は、引用発明2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび

以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び周知技術に基づき、又は引用発明2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-020460

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