2022-020317
基材を照射するための紫外線システム及び方法
- 審判番号
- 2022-020317
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-156986外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年12月15日
- 審決日
- 2023年11月13日
- 公報発行日
- 2024年04月26日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-Z (H01J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 11項目
第1 手続の経緯
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本願は、平成27年(2015年)7月24日に出願した特願2017-507995号(パリ条約による優先権主張外国庁受理2014年8月11日、米国、以下「原出願」という。)の一部を令和2年9月18日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯の概要は、以下のとおりである。
同年 6月20日 :意見書、手続補正書の提出
同年 8月10日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月15日 :原査定の謄本の送達)
第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和4年6月22日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1の記載は、以下のとおりである。
「基材を照射するためのUVシステムであって、内部を有するランプヘッドと、各々がRFエネルギを生成するように構成された複数の固体RF源と、所定の長さを有し、ランプヘッドの前記内部に位置決めされると共に、前記複数の固体RF源によって生成されるRFエネルギによって励起される時にUVエネルギを放出可能な細長UVバルブと、各々が前記複数の固体RF源の1つに結合された複数のRFトランスミッタと、を備え、前記複数のRFトランスミッタは、前記ランプヘッドの前記内部において、前記細長UVバルブの近傍に位置決めされており、前記複数のRFトランスミッタは、前記複数の固体RF源からRFエネルギを受容し、当該RFエネルギを前記細長UVバルブの前記長さに亘るように前記細長UVバルブに向けて差し向け、前記細長UVバルブのより均一で制御可能な加熱をもたらすように構成され配置されていることを特徴とするシステム。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の本願発明に対する拒絶の理由の概略は、以下の理由を含むものである。
(進歩性)本願発明は、原出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である引用文献3に記載された発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて、原出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献2.特開昭61-118958号公報
引用文献3.特開2011-45835号公報
第4 引用文献の記載事項及び引用発明等の認定
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1 引用文献3について
(1) 引用文献3の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用され、原出願の優先日前に発行された特開2011-45835号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある(下線は、当審で付した。以下同じ。)。
ア 【0001】
「【0001】この発明は、マイクロ波によって励起を行い、紫外線を発光させる無電極ランプを用いた紫外線照射装置に関する。」
イ 【0012】-【0022】
「【0012】図1~図4は、この発明の紫外線照射装置に関する一実施形態について説明するための、図1はシステム構成図、図2は図1のIa-Ib線の構成図、図3は図1のIIa-IIb線の構成図、図4は図1の要部の構成図である。【0013】先ず、図1はシステム構成図を示し、図中白抜きの矢印は被照射体の移動方向を示している。被照射体の移動方向に直交する方向には、4台の紫外線照射器100a~100dが間隔をおいて配置される。紫外線照射器100a~100dの紫外線を照射させる無電極ランプ11vは、管軸が被照射体の移動方向に直交する方向に設置される。紫外線照射器100a~100dの照度は固定のものを使用する。無電極ランプ11vを備えた紫外線照射器100a~100dは、3列配置される。続きを表示(全22行)【0014】紫外線照射器100a~100dのそれぞれの間の被照射体の移動方向の後の位置には、3台の紫外線照射器200a~200cが配置される。紫外線照射器200a~200cは照度が可変できるものを使用する。紫外線照射器100a~100dの紫外線を照射させる無電極ランプ11vと同一構成の無電極ランプ11hは、管軸が被照射体の移動方向に設置される。さらに、無電極ランプ11hを備えた紫外線照射器200a~200cは、3列の紫外線照射器100a~100dの間に紫外線照射器200a~200cが配置される。【0015】図1中の破線は、紫外線照射器100a~100dの照射エリア12を示し、図1中の一点鎖線は、紫外線照射器200a~200cの照射エリア13を示している。【0016】図2は図1のIa-Ib線の構成図、すなわち、紫外線照射器100a~100dの構成図を示している。【0017】141a~141dは点灯装置であり、これら点灯装置141a~141dは、それぞれ高圧電源15およびこの高圧電源15でマグネトロン16を駆動してマイクロ波を発生させる。マイクロ波は、同軸/導波管変換部17を介してコネクタ18に送られる。点灯装置141a~141dは、それぞれ電磁的にシールド可能な材料で形成された筐体19に収納される。点灯装置141a~141dは、同じような構成をしており、以下では点灯装置141aについて主に説明し、点灯装置141b~141dについての説明は、これに置き換えることとする。【0018】さらに、点灯装置141aで発生させたマイクロ波は、同軸ケーブル20に送信する。同軸ケーブル20を介して送られてくるマイクロ波は、コネクタ21、整合器22を介して紫外線照射部231a~231dにそれぞれ供給される。紫外線照射部231a~231dは、同じような構成をしており、以下では紫外線照射部231aについて主に説明し、紫外線照射部231b~231dについての説明は、これに置き換えることとする。(審決注:引用文献3には「送られくるマイクロ波」と記載されているが、これは「送られてくるマイクロ波」の明らかな誤記なので、誤記を正して摘記した。)【0019】紫外線照射部231aの25は電磁シールド機能を有するランプハウスであり、このランプハウス25内の下方中央部には、無電極ランプ11vの長手方向の両端が取り付け配置してある。さらに、ランプハウス25の上部には、ランプハウス25の内部に、例えば、空気を送風することにより、無電極ランプ11v等を冷却させる冷却用ファン26が設置されている。【0020】無電極ランプ11vの背面側には反射板271,272が設置される。また、反射板271,272の反射面側と被照射体(図示せず)を搬送させる被照射部28との間には、スクリーン29がランプハウス25の下方に開けられた照射窓30に設けられている。スクリーン29は、照射窓30の全面を覆う格好でランプハウス25の底部にネジ等の固定手段で固定されている。【0021】スクリーン29は、赤外線をカットするIRカットフィルタ、それに金属線をメッシュ状に編み込んだり、金属板にパンチング加工したりすることにより形成することで、マグネトロン16の例えば2.45GHzの発振周波数によるマイクロ波が漏洩しない程度に、且つ紫外光を十分通過させることが可能な程度の大きさの目を持つRFスクリーンから構成する。【0022】スクリーン29は、紫外線照射部231a~231dの共通のものを使用することが考えられるが、無電極ランプ11vの交換を考えると、紫外線照射部231a~231dにそれぞれ個別のものを使用した場合が得策である。」
ウ 【0032】―【0033】
「【0032】ここで、図4を参照してマイクロ波により紫外線の発光が可能な無電極ランプ11v(11h)の構成例について説明する。【0033】41は紫外光を透過させる石英ガラス製の長さが240mm程度の円筒形状のバルブである。バルブ41は、外径は例えば17mm程度である。バルブ41の発光空間42内には、不活性ガスとそれに水銀と鉄を主成分とするマイクロ波で放電させる放電媒体を封入する。バルブ41の両端にはバルブ41を支持する支持部43,44がバルブ41と一体的に形成される。」
エ 【図1】、【図2】及び【図4】
「[図:0001408600000001.jpg]【図2】[図:0001408600000002.jpg][図:0001408600000003.jpg]」
(2) 引用発明の認定
前記(1)で摘記した引用文献3の記載事項から、引用文献3には、図1の紫外線照射装置を構成する紫外線照射器101aについて、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(以下、引用発明の認定に用いた箇所の段落番号等を参考までに括弧内に付した。)。
<引用発明>
「紫外線照射器101aであって、(【0016】)点灯装置141aは、高圧電源15およびこの高圧電源15でマグネトロン16を駆動してマイクロ波を発生させ、マイクロ波は、同軸/導波管変換部17を介してコネクタ18に送られ、(【0017】)点灯装置141aで発生させたマイクロ波は、同軸ケーブル20に送信され、同軸ケーブル20を介して送られてくるマイクロ波は、コネクタ21、整合器22を介して紫外線照射部231aに供給され、(【0018】)紫外線照射部231aは電磁シールド機能を有するランプハウス25を備え、このランプハウス25内の下方中央部には、無電極ランプ11vの長手方向の両端が取り付け配置してあり、(【0019】)無電極ランプ11vは、マイクロ波により紫外線の発光が可能であり、(【0032】)無電極ランプ11vは、紫外光を透過させる円筒形状のバルブ41を備える(【0033】)紫外線照射器101a。」
2 引用文献2について
(1) 引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用され、原出願の優先日前に発行された特開昭61-118958号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。
ア 第3頁左上欄第1~7行
「以下に本発明を図示の実施例に基づいて説明する。第1図及び第2図において、1は照明装置を示しており、この照明装置1は概して、棒状の放電管2と、該放電管2の近傍に軸方向に沿って複数個配置されるマイクロ波放射手段3と、半導体素子を用いてマイクロ波を発生するマイクロ波発生手段4とからなっている。」
イ 第3頁左上欄第12行~右上欄第13行
「また、上記マイクロ波放射手段3は、マイクロストリップ線路からなり、このマイクロストリップ線路5は、次のようにして放電管2の近傍に軸方向に沿って複数個配置されている。すなわち、上記放電管2の一側近傍に、誘電体等からなる基板6が軸方向に沿って配置されており、この基板6の一方の面には全面に電極7が取付けられ、他方の面にはそれぞれ独立した複数の電極81~8nが一定間隔をおいて取付けられている。前記マイクロストリップ線路5は、基板6及び該基板6を介して対向する電極7,8とからなり、放電管2の近傍に軸方向に沿って一定間隔をおいて配置されている。このマイクロストリップ線路5の先端は、放電管2に近接した放射部9となっており、該放射部9は、基板6が放電管2の周面に沿って湾曲状に形成されていると共に、電極7,8は互いに接近するようわずか折曲されている。一方、マイクロ波発生手段4は、第3図に示すように、トランジスタを用いたマイクロ波発振回路10からなり、該マイクロ波発振回路10は、各マイクロストリップ線路5に適宜のマイクロ波伝達手段11を介してそれぞれ接続されている。」
ウ 第3頁右下欄第2~17行
「以上の構成において、照明装置は、次のように作動する。すなわち、上記マイクロ波共振回路10の出力端子15から出力されたマイクロ波は、マイクロ波伝達手段11を介して、放電管2の軸方向に沿って複数個配置されたマイクロストリップ線路5の電極7,8に印加され、該電極7,8の先端間にマイクロ波の電界が形成される。このマイクロ波の電界により、放電管2内のガスが励起されてガス放電が起こり、該放電管2の管壁が加熱される。次に、放電管2内の金属がガス化して放電が起こり、金属の種類に応じた発光スペクトルの光が放射される。前記マイクロストリップ線路5は、放電管2の軸方向全体に沿って、所定間隔をおいて複数配置されているので、放電管2は全体にわたって放電発光する。」
エ 第4頁右下欄第1~10行
「なお、上記の説明では、マイクロ波放射手段3として、マイクロストリップ線路5を用いた場合について説明したが、他に導波管の切口、ループアンテナ、ホーンアンテナなどを使用してもよい。また、マイクロ波発生手段4からマイクロ波放射手段3へマイクロ波を伝送するマイクロ波伝送手段11としては、同軸ケーブル、Gライン(表面波伝送線路),導波管,マイクロストリップ線路などが用いられる。」
オ 第5頁左下欄第3~13行
「(発明の効果)本発明は以上の構成及び作用よりなるもので、放電管の近傍に軸方向に沿って複数個のマイクロ波放射手段を配置し、各マイクロ波放射手段にそれぞれ半導体素子を用いたマイクロ波発生手段を接続してなるので、マイクロ波発生手段としてマグネトロンのような大型な部材を用いる必要がなく、半導体素子を用いた小型のマイクロ波発生手段で放電管全体を放電発光させることができ、従来に比べ大幅に小型化された無電極の放電管を用いた照明装置を提供することができる。」
カ 第1図-第2図
「[図:0001408600000004.jpg][図:0001408600000005.jpg]」
(2) 第1図から読み取れる事項の認定
第3頁左上欄第1~7行(上記(1)ア)及び第5頁左下欄第3~13行(上記(1)オ)を参照しつつ上記第1図を見ると、半導体素子を用いてマイクロ波を発生するマイクロ波発生手段4は複数個配置されていることが把握できる。
(3) 引用文献2に記載された技術的事項の認定
前記(1)で摘記した引用文献2の記載事項及び前記(2)で認定した第1図から読み取れる事項から、引用文献2には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
<引用文献2に記載された技術的事項>
「棒状の放電管2と、該放電管2の近傍に軸方向に沿って複数個配置されるマイクロ波放射手段3と、半導体素子を用いてマイクロ波を発生するマイクロ波発生手段4とからなる照明装置1であって、(第3頁左上欄第1~7行)上記マイクロ波発生手段4は複数個配置されており、(上記(2))上記マイクロ波放射手段3は、マイクロストリップ線路からなり、このマイクロストリップ線路5は、放電管2の近傍に軸方向に沿って複数個配置され、上記放電管2の一側近傍に、誘電体等からなる基板6が軸方向に沿って配置され、この基板6の一方の面には全面に電極7が取付けられ、他方の面にはそれぞれ独立した複数の電極81~8nが一定間隔をおいて取付けられ、前記マイクロストリップ線路5は、基板6及び該基板6を介して対向する電極7,8とからなり、放電管2の近傍に軸方向に沿って一定間隔をおいて配置され、(第3頁左上欄第12行~右上欄第13行)該電極7,8の先端間にマイクロ波の電界が形成され、このマイクロ波の電界により、放電管2内のガスが励起されてガス放電が起こり、該放電管2の管壁が加熱され、次に、放電管2内の金属がガス化して放電が起こり、金属の種類に応じた発光スペクトルの光が放射され、マイクロストリップ線路5は、放電管2の軸方向全体に沿って、所定間隔をおいて複数配置されているので、放電管2は全体にわたって放電発光し、(第3頁右下欄第2~17行)放電管2の近傍に軸方向に沿って複数個のマイクロ波放射手段3を配置し、各マイクロ波放射手段3にそれぞれ半導体素子を用いたマイクロ波発生手段4を接続してなるので、マイクロ波発生手段3としてマグネトロンのような大型な部材を用いる必要がなく、半導体素子を用いた小型のマイクロ波発生手段3で放電管全体を放電発光させることができ、従来に比べ大幅に小型化された無電極の放電管を用いた照明装置1を提供することができること。(第5頁左下欄第3~13行)」
第5 本願発明と引用発明との対比・判断
1 対比分析
(1) 本願発明の「基材を照射するためのUVシステム」及び「システム」の発明特定事項について
引用発明の「紫外線照射器」は、被照射体に紫外線を照射するシステムであるといえる。
したがって、引用発明は、上記発明特定事項を満たす。
(2) 本願発明の「内部を有するランプヘッド」の発明特定事項について
引用発明の「ランプハウス25」は、本願発明の「ランプヘッド」に相当する。
また、引用発明の「ランプハウス25内の下方中央部には、無電極ランプ11vの長手方向の両端が取り付け配置して」いることから、ランプハウス25は、内部を有し、内部に無電極ランプ11vを配置しているものといえる。
したがって、引用発明は、上記発明特定事項を満たす。
(3) 本願発明の「各々がRFエネルギを生成するように構成された複数の固体RF源」の発明特定事項について
ア まず、「RF」という用語の一般的な意味について検討すると、以下の例に見られるように、その周波数には定量的な定義があるわけではなく、用途によるものであるとされている。
(ア) 「RFとは、電波や電気信号のうち、無線通信の搬送波として利用できる周波数のもの。また、その周波数。用途や文脈により300Hz(極超長波)前後から3THz(サブミリ波)前後まで様々な周波数帯を指すことがある。」(IT用語辞典、https://e-words.jp/w/RF.html)
(イ) 「無線工学の文脈では、高周波とは無線周波数のことで、無線通信の搬送波に使用される周波数の電気信号または電波を指す。「何キロヘルツ以上が高周波である」という定量的な定義があるわけではなく、高周波または無線周波数と呼ぶかどうかは用途によるのである。例えば、オーディオ信号・電子回路では音声周波数帯域と同程度の数10kHz程度であっても低周波に分類されるが、無線通信で使用される場合は10kHz以上が高周波である。英語では radio frequency と言い、RFと略す。意訳的だが、日本語の「高周波」に訳すのが定着しているが、直訳的に「無線周波数」とすることもある。」(ウィキペディア、https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AB%98%E5%91%A8%E6%B3%A2)
イ 次に、「RF」の定義について明細書の記載を参酌すると、その具体的な周波数については記載がない。
ウ さらに、上記アのように「RF」の具体的な周波数は用途によるものであるとされていることに鑑みて、本願発明のUVバルブのような無電極放電ランプにおける「RF」について検討すると、無電極放電ランプに用いる高周波電源で生成される高周波は、一般的にマイクロ波を含んでいる(必要ならば、特開2001-202923号公報(特に、【0043】及び【0047】)、特開2004-79263号公報(特に、【0002】、【0005】及び【0035】)及び特開2008-275697号公報(特に、【0001】、【0006】及び【0029】)を参照されたい。)。
このことは、本願明細書の【0002】に、従来のUVシステムはマグネトロンを含み、マグネトロンは「RF」エネルギを生成する旨が記載されていることからも首肯できる(マグネトロンがマイクロ波を発生する装置であることは技術常識である。)。
エ 以上を踏まえると、本願発明の「RF」はマイクロ波を含むと解するのが相当であるから、引用発明の「マイクロ波を発生させ」る「マグネトロン」は、本願発明の上記発明特定事項と「RF源」である点で共通する。
(4) 本願発明の「所定の長さを有し、ランプヘッドの前記内部に位置決めされると共に、前記複数の固体RF源によって生成されるRFエネルギによって励起される時にUVエネルギを放出可能な細長UVバルブ」の発明特定事項について
ア 引用発明の「無電極ランプ11v」は、「円筒形状のバルブ41」を備えるものであるから、「所定の長さを有」するものであることは明らかである。
イ 引用発明は、「ランプハウス25内の下方中央部には、無電極ランプ11vの長手方向の両端が取り付け配置してあ」ることから、上記(2)も踏まえると、引用発明の「無電極ランプ11v」は、「ランプヘッドの前記内部に位置決めされる」ものであるといえる。
ウ 引用発明の「無電極ランプ11v」は、「マイクロ波により紫外線の発光が可能であり」、当該マイクロ波は、RF源であるマグネトロンを駆動して発生させたものであるから、「RF源によって生成されるRFエネルギによって励起される時にUVエネルギを放出可能な」ものであるといえる。
エ 引用発明の「無電極ランプ11v」は、「円筒形状のバルブ」を備え、「紫外線の発光が可能」であるから、「細長UVバルブ」であるといえる。
オ 上記ア~エをまとめると、引用発明の「無電極ランプ11v」は、本願発明の上記発明特定事項と、「所定の長さを有し、ランプヘッドの前記内部に位置決めされると共に、」「RF源によって生成されるRFエネルギによって励起される時にUVエネルギを放出可能な細長UVバルブ」である点で共通する。
(5) 本願発明の「各々が前記複数の固体RF源の1つに結合された複数のRFトランスミッタと、を備え」の発明特定事項について
引用発明の「紫外線照射器」は、「マグネトロン16を駆動してマイクロ波を発生させ、マイクロ波は、同軸/導波管変換部17を介してコネクタ18に送られ」、「発生させたマイクロ波は、同軸ケーブル20に送信され、同軸ケーブル20を介して送られてくるマイクロ波は、コネクタ21、整合器22を介して紫外線照射部に供給され」るものであるから、引用発明の「マグネトロン16」から「発生させ」た「マイクロ波」を送る「同軸/導波管変換部17」、「コネクタ18」、「同軸ケーブル20」、「コネクタ21」及び「整合器22」は、本願発明の「各々が前記複数の固体RF源の1つに結合された複数のRFトランスミッタ」と、「RF源の1つに結合された」「RFトランスミッタ」である点で共通する。
(6) 本願発明の「前記複数のRFトランスミッタは、前記複数の固体RF源からRFエネルギを受容し、当該RFエネルギを前記細長UVバルブの前記長さに亘るように前記細長UVバルブに向けて差し向け、前記細長UVバルブのより均一で制御可能な加熱をもたらすように構成され配置されている」の発明特定事項について
ア 引用発明は、「マグネトロン16を駆動して」「発生させ」た「マイクロ波」を「同軸/導波管変換部17」、「コネクタ18」、「同軸ケーブル20」、「コネクタ21」及び「整合器22」を介して「ランプハウス25」を備える「紫外線照射部231aに供給」するものであるから、「同軸/導波管変換部17」、「コネクタ18」、「同軸ケーブル20」、「コネクタ21」及び「整合器22」は、「マグネトロン16」から「マイクロ波」を受容しているといえ、引用発明と本願発明の上記発明特定事項は、「RFトランスミッタは、RF源からRFエネルギを受容」するように構成され配置されている点で共通する。
イ 引用発明は、「無電極ランプ11vは、マイクロ波により紫外線の発光が可能であ」るものであるから、「マイクロ波」は「無電極ランプ11v」に差し向けられているといえるから、上記(4)エも踏まえると、引用発明と本願発明の上記発明特定事項は、「当該RFエネルギを前記細長UVバルブに向けて差し向け」るように構成され配置されている点で共通する。
ウ 上記ア及びイをまとめると、引用発明の「同軸/導波管変換部17」、「コネクタ18」、「同軸ケーブル20」、「コネクタ21」及び「整合器22」は、上記発明特定事項と、「前記」「RFトランスミッタは、前記」「RF源からRFエネルギを受容し、当該RFエネルギを前記細長UVバルブに向けて差し向け」る「ように構成され配置されている」点で共通する。
2 一致点及び相違点
以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
(1) 一致点
「基材を照射するためのUVシステムであって、内部を有するランプヘッドと、RF源と、所定の長さを有し、ランプヘッドの前記内部に位置決めされると共に、前記RF源によって生成されるRFエネルギによって励起される時にUVエネルギを放出可能な細長UVバルブと、前記RF源に結合されたRFトランスミッタと、を備え、前記RFトランスミッタは、前記RF源からRFエネルギを受容し、当該RFエネルギを前記細長UVバルブに向けて差し向けるように構成され配置されているシステム。」
(2) 相違点
【相違点1】
RF源につき、本願発明では、各々がRFエネルギを生成するように構成された複数の固体RF源であるのに対し、引用発明では、1つのマグネトロンである点。
【相違点2】
RFトランスミッタにつき、本願発明では、各々が前記複数の固体RF源の1つに結合される複数のRFトランスミッタであり、前記ランプヘッドの前記内部において、前記細長UVバルブの近傍に位置決めされており、複数の個体RF源からRFエネルギを受容し、当該RFエネルギを前記細長UVバルブの前記長さに亘るように前記細長UVバルブに差し向け、前記細長UVバルブのより均一で制御可能な加熱をもたらすように構成され配置されているものであるのに対し、引用発明では、「同軸/導波管変換部17」、「コネクタ18」、「同軸ケーブル20」、「コネクタ21」及び「整合器22」はそれぞれ1つであり、ランプハウスの内部に配置されたものではなく、上記のような配置とはなっていない点。
3 相違点に対する判断
以下、上記相違点について検討する。
(1) 相違点1及び2について
相違点1及び2について併せて検討する。
ア まず、引用発明は紫外線照射器であるところ、紫外線照射器において、小型化することは、周知の課題である。
イ そして、引用発明の紫外線照射器はマグネトロンを備えているところマグネトロンを備えた紫外線照射器は大型であることは引用文献2に記載された技術的事項に見られるとおりであり、当該周知の課題を解決するために、引用文献2に記載された技術的事項と同様に、当業者はマグネトロンに換えて小型のマイクロ波発生手段を用いようとする動機が存在しているといえる。
ウ そうすると、引用発明のマグネトロンに換えて、引用文献2に記載された技術的事項である半導体素子を用いてマイクロ波を発生する小型のマイクロ波発生手段を採用することは、当業者が容易に想到し得る事項である。
エ ここで、引用発明の「円筒形状のバルブ41を備える」「無電極ランプ11v」においても、引用文献2に記載された技術的事項の「棒状の放電管2」と同様に、無電極ランプ11v全体を放電発光させるのが望ましいことは明らかであるから、上記ウのように半導体素子を用いてマイクロ波を発生する小型のマイクロ波発生手段を採用するに際して、無電極ランプ11vの近傍に軸方向に沿って複数個のマイクロ波放射手段3を配置し、各マイクロ波放射手段3にそれぞれ半導体素子を用いたマイクロ波発生手段4を接続することは、当業者が適宜なし得た事項である。
オ そして、引用発明に上記ウ及びエのように引用文献2に記載された技術的事項を適用した構成と、相違点1及び2に係る本願発明の発明特定事項の関係を整理すると、以下のようになる。
(ア) 各マイクロ波放射手段3にそれぞれ接続された半導体素子を用いたマイクロ波発生手段4が、相違点1に係る本願発明の「各々がRFエネルギを生成するように構成された複数の固体RF源」に相当することとなる。
(イ) 複数個配置されるマイクロ波放射手段3が、相違点2に係る本願発明の「複数のRFトランスミッタ」に相当することとなる。
(ウ) 複数個配置されるマイクロ波放射手段3は、無電極ランプ11vの近傍に軸方向に沿って配置されるのであるから、ランプハウス25の内部において配置されることはごく自然なことである。この結果、相違点2に係る本願発明の「複数のRFトランスミッタは、前記ランプヘッドの前記内部において、前記細長UVバルブの近傍に位置決めされており」との発明特定事項を満たすこととなる。
(エ) 複数個配置されるマイクロ波放射手段3は、それぞれ半導体素子を用いたマイクロ波発生手段4が接続されており、無電極ランプ11vの近傍に軸方向に沿って複数個配置され、その電極7,8の先端間にマイクロ波の電界が形成され、無電極ランプ11vの全体放電発光するように無電極ランプ11vの軸方向全体に沿って、所定間隔をおいて複数配置されるから、相違点2に係る本願発明の「複数のRFトランスミッタは、複数の個体RF源からRFエネルギを受容し、当該RFエネルギを前記細長UVバルブの前記長さに亘るように前記細長UVバルブに差し向け[る]」「ように構成され配置されている」との発明特定事項を満たすこととなる。
(オ) 複数個配置されるマイクロ波放射手段3は、上記(エ)のマイクロ波の電界により、無電極ランプ11v内のガスが励起されてガス放電が起こり、該無電極ランプ11vの管壁が加熱され、無電極ランプ11vの全体にわたって放電発光するように配置されており、マイクロ波放射手段3が1つの場合よりもより均一で制御可能な加熱をもたらすものといえるから、相違点2に係る本願発明の「複数のRFトランスミッタは、」「前記細長UVバルブのより均一で制御可能な加熱をもたらすように構成され配置されている」との発明特定事項を満たすこととなる。
カ 以上検討のとおり、引用発明に引用文献2に記載された技術的事項を採用することにより、相違点1及び2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
(2) 総合検討
そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願発明の作用効果は、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項の奏する作用効果から予測される範囲のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
(3) 審判請求人の主張について
ア 審判請求人の主張内容
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審判請求人は、以下の旨を主張している。
(ア) 本願発明で用いられるRF(高周波)源で生成されるRF(高周波)エネルギの周波数は、3kHz~300MHz程度である一方、引用文献2及び3で用いられるマイクロ波の周波数は、300MHz~300GHz程度であって、両者は明確に異なる。従って、RF波(高周波)とマイクロ波とは、同一の構成装置において選択的に適用可能である場合もなくは無いが、一般的には両者を置換可能に用いることはない(不可能な場合もある)ことが技術常識である。
(イ) 引用文献2のマイクロストリップ線路5及び放電管2は、ランプヘッドの内部に位置決めされたものではない。
(ウ) 引用文献2及び引用文献3の記載から、両者の周波数が共通であるのか否かを容易に判別することはできないし、一般には共通ではなく、両者の周波数が共通でなければ、両者を単純に組み合わせた装置は作動できない。
(エ) 引用文献3に記載された発明は、各々の紫外線照射器において紫外線の均斉度の向上を図るのではなく、複数の紫外線照射器の配置を工夫することで、紫外線の均斉度の向上を図るものであり、大面積で紫外線照射である一方、引用文献2に記載された発明は、小型化を可能にした照明装置を提供するものであるから、両者を組み合わせることには阻害要因がある。
イ 審判請求人の主張についての検討
折りたたみ中(クリックで表示)
上記主張について検討する。
(ア) 上記ア(ア)について
上記1(3)で検討したとおり、本願発明の「RF」はマイクロ波を含むと解するのが相当であるから、請求人の主張は「本願発明で用いられるRF(高周波)源で生成されるRF(高周波)エネルギの周波数は、3kHz~300MHz程度である」との前提に根拠がなく、採用できない。
(イ) 上記ア(イ)について
上記(1)オ(ウ)で説示したとおりであり、引用発明に引用文献2に記載された技術的事項を適用することにより、当業者が容易になし得たことである。
(ウ) 上記ア(ウ)について
引用発明と引用文献2に記載された技術的事項はいずれも無電極ランプの励起にマイクロ波を用いるものであり、引用文献2、3の全記載を精査しても、マイクロ波の発生手段が置換できないと考えるべき理由は存在しない。また、引用文献2に記載された技術的事項は、マグネトロンに換えて半導体素子を用いていることから、周波数の明記がなくても、引用発明のマグネトロンに換えて引用文献2に記載された技術的事項の半導体素子を用いることは、当業者が想定する事項である。
(エ) 上記ア(エ)について
引用文献3において、複数の紫外線照射器からなる紫外線照射装置の照射面の均斉度の向上を図るためには、各紫外線照射器における無電極ランプ全体を放電発光させるのが望ましいことは明らかである(そうでなければ、各紫外線照射器100a~100dの照射エリア12内で他の照射エリア12と重ならない照射面で照度ムラが発生し、紫外線照射装置全体としても照射面の均斉度の向上を図ることができない)ことは上記(1)エでも説示したとおりである。そうすると、引用文献3に複数の紫外線照射器の配置を工夫することで紫外線の均斉度の向上を図ることが記載されていることが阻害要因になるとは考えられず、むしろ各紫外線照射器における無電極ランプ全体を放電発光させる動機付けが存在するというべきである。
また、引用文献3は、大面積で紫外線照射をするものであるが、大面積を維持しつつ照射面とは垂直の奥行き方向についての小型化をしようとすることを妨げるものではないから、引用発明に引用文献2に記載された技術的事項を組み合わせる阻害要因とはならない。
(オ) 以上のとおり、審判請求人の上記ア(ア)~(エ)の主張は、上記(1)の判断を左右するものではない。
(4) 小括
以上によれば、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-020317