特許拒絶査定不服審判
2024-013260
イオン注入システム及び新規な加速器段構成を有する線形加速器
- 審判番号
- 2024-013260
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2023-507225
- 請求日
- 2024年08月16日
- 審決日
- 2026年01月26日
- 公報発行日
- 2026年07月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】園田・小林弁理士法人
- 審判長/審判官
- 審判長 藤田 年彦
- 審判官 吉野 三寛
- 審判官 堀井 康司
- 分類
- P18 .121-Z (H01J) / P18 .575-Z (H01J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2023-507225「イオン注入システム及び新規な加速器段構成を有する線形加速器」拒絶査定不服審判事件〔令和4年2月10日国際公開、WO2022/031392、令和5年9月1日国内公表、特表2023-537472〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2021年(令和3年)7月6日を国際出願日とする外国語特許出願であって(パリ条約による優先権主張外国庁受理2020年8月3日、米国)、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和5年 3月31日 :翻訳文の提出
同年11月14日付け:拒絶理由通知書
令和6年 2月28日 :意見書及び手続補正書の提出
同年 4月 8日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月16日 :原査定の謄本の送達)
同年 8月16日 :審判請求書及び手続補正書の提出
[同年10月 1日付け:前置報告書]
令和7年 1月15日 :上申書の提出
以下、2020年(令和2年)8月3日を「優先日」という。
第2 令和6年8月16日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年8月16日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 補正の内容
令和6年8月16日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の補正をするものであって、本件補正により、次の(1)に示す本件補正前(令和6年2月28日にされた手続補正後のものをいう。以下同じ。)の特許請求の範囲の請求項1の記載は、後記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正された。下線は補正箇所を示す。
(1) 本件補正前
「第1のエネルギーでイオンビームを生成するように構成された、イオン源及び抽出システム、並びに
前記イオン源の下流に配置された線形加速器であって、当該線形加速器が、前記イオンビームを束状にされたイオンビームとして受け入れ、且つ前記イオンビームを前記第1のエネルギーよりも大きい第2のエネルギーへ加速させるように構成されており、当該線形加速器が、複数の加速段を備え、前記複数の加速段のうちの所与の加速段が、
前記イオンビームを伝導するように構成されたドリフトチューブアセンブリと、
前記ドリフトチューブアセンブリに電気的に連結された共振器と、
前記共振器に連結され、前記共振器へRF信号を出力するように構成されたRF電力アセンブリと
を備え、前記所与の加速段が四重極要素を含まない、線形加速器
を備え、
前記ドリフトチューブアセンブリが、第1の接地ドリフトチューブ、前記第1の接地ドリフトチューブの下流に配置されたACドリフトチューブアセンブリ、及び前記ACドリフトチューブアセンブリの下流に配置された第2の接地ドリフトチューブを備え、
前記第1の接地ドリフトチューブ及び前記第2の接地ドリフトチューブのうちの少なくとも1つが、L/Dが2未満であるドリフトチューブ長(L)とドリフトチューブ径(D)とを有するコンパクトな構成を有する、
イオン注入システム。」
(2) 本件補正後
「第1のエネルギーでイオンビームを生成するように構成された、イオン源及び抽出システム、並びに
前記イオン源の下流に配置された線形加速器であって、当該線形加速器が、前記イオンビームを束状にされたイオンビームとして受け入れ、且つ前記イオンビームを前記第1のエネルギーよりも大きい第2のエネルギーへ加速させるように構成されており、当該線形加速器が、複数の加速段を備え、前記複数の加速段のうちの所与の加速段が、
前記イオンビームを伝導するように構成されたドリフトチューブアセンブリと、
前記ドリフトチューブアセンブリに電気的に連結された共振器と、
前記共振器に連結され、前記共振器へRF信号を出力するように構成されたRF電力アセンブリと
を備え、前記所与の加速段が四重極要素を含まない、線形加速器
を備え、
前記ドリフトチューブアセンブリが、第1の接地ドリフトチューブ、前記第1の接地ドリフトチューブの下流に配置され、前記共振器に接続するACドリフトチューブアセンブリ、及び前記ACドリフトチューブアセンブリの下流に配置された第2の接地ドリフトチューブを備え、
前記第1の接地ドリフトチューブ及び前記第2の接地ドリフトチューブのうちの少なくとも1つが、L/Dが2未満であるドリフトチューブ長(L)とドリフトチューブ径(D)とを有するコンパクトな構成を有する、
イオン注入システム。」
2 補正の目的
本件補正のうち請求項1についてする補正は、本件補正前の請求項1に記載された「ACドリフトチューブアセンブリ」について、「前記共振器に接続する」と限定するものである。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
したがって、本件補正により請求項1についてする補正は、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
3 独立特許要件の判断
本件補正は、前記2のとおり、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当するから、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。
(1) 本件補正発明
ア 本件補正発明の認定と分説
本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。
ここで、検討の便宜上、本件補正発明の構成を次のとおり構成Xと構成A~Eまでに分説する。また、参考図として、本願の【図1A】を掲載する。
<本件補正発明の分説>
A 第1のエネルギーでイオンビームを生成するように構成された、イオン源及び抽出システム、
B 並びに前記イオン源の下流に配置された線形加速器であって、
B1 当該線形加速器が、前記イオンビームを束状にされたイオンビームとして受け入れ、且つ前記イオンビームを前記第1のエネルギーよりも大きい第2のエネルギーへ加速させるように構成されており、
B2 当該線形加速器が、複数の加速段を備え、
B3 前記複数の加速段のうちの所与の加速段が、前記イオンビームを伝導するように構成されたドリフトチューブアセンブリと、
B4 前記ドリフトチューブアセンブリに電気的に連結された共振器と、
B5 前記共振器に連結され、前記共振器へRF信号を出力するように構成されたRF電力アセンブリとを備え、
B6 前記所与の加速段が四重極要素を含まない、線形加速器を備え、
C 前記ドリフトチューブアセンブリが、第1の接地ドリフトチューブ、前記第1の接地ドリフトチューブの下流に配置され、前記共振器に接続するACドリフトチューブアセンブリ、及び前記ACドリフトチューブアセンブリの下流に配置された第2の接地ドリフトチューブを備え、
D 前記第1の接地ドリフトチューブ及び前記第2の接地ドリフトチューブのうちの少なくとも1つが、L/Dが2未満であるドリフトチューブ長(L)とドリフトチューブ径(D)とを有するコンパクトな構成を有する、
X イオン注入システム。
<参考図(図1A)>
[図:0001436684000001.jpg]
イ 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、イオン注入装置に関し、より具体的には、高エネルギービームラインイオン注入装置に関する。
【背景技術】
…(中略)…。
【0007】
周知の設計では、四重極構成要素は、所与の加速段の接地されたドリフトチューブの周囲に便宜的に配置され得る。ある設計では、2つの別々の四重極を加速段の両端に沿って配置することができ、他の設計では、段ごとに1つの四重極を使用することができる。しかしながら、既知のイオン注入装置のRF-LINACの加速段の設計は比較的複雑である。
【0008】
上記の観点から、イオン注入装置のRF-LINACの現在の構成をさらに改善することが有用である。
…(中略)…。
【0011】
一実施形態では、イオン注入システムは、第1のエネルギーでイオンビームを生成するように構成された、イオン源及び抽出システムと、イオン源の下流に配置された線形加速器とを備え、イオンビームを束状にされたイオンビームとして受け入れるように構成された線形加速器は、イオンビームを第1のエネルギーよりも大きい第2のエネルギーへ加速させ、線形加速器は、複数の加速段を備えている。このように、複数の加速段のうちの所与の加速段は、イオンビームを伝導するように構成されたドリフトチューブアセンブリと、ドリフトチューブアセンブリに電気的に連結された共振器と、共振器に連結され、共振器へRF信号を出力するように構成されたRF電力アセンブリをと含み得、所与の加速段は四重極要素を含まない。
…(中略)…。
【0034】
線形加速器段から四重極要素を取り外した結果、ドリフトチューブアセンブリが再構成されることがある。特に、既知のイオン注入装置線形加速器では、四重極要素は、接地されたドリフトチューブの位置に(例えば、接地されたドリフトチューブを囲むように)配置される。接地したドリフトチューブは、四重極要素を支持するように、この位置で伸長する傾向がある。四重極要素を取り外したことにより、接地されたドリフトチューブを他の考慮事項に応じてサイズ決定してもよく、特に、接地されたドリフトチューブの長さをよりコンパクトな構成に短縮してもよい。ここで、ドリフトチューブ長(L)の値は、ドリフトチューブ径(D)に基づいており、L/Dは2未満であり、場合によっては、1.5であってもよい。図1Aと図1Bを比較することによって、結果として比較的短くなったドリフトチューブアセンブリの長さが示される。」
(2) 各引用文献の記載事項及び引用発明等の認定
ア 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定
(ア) 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の優先日前に発行された文献である国際公開第2019/231782号(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(なお、日本語訳は、引用文献1のファミリー出願である特表2021-525446号公報を参酌した。また、当合議体により、後記(ウ)の引用発明の認定に直接用いる記載に下線を付した。)。
「[0017] Referring now to FIG.1, an exemplary apparatus is shown in block form. The apparatus 100 may represent a beamline ion implanter, with some elements not shown for clarity of explanation. The apparatus 100 may include an ion source 102, and a gas box 107 disposed in a terminal 104 as known in the art. The ion source 102 may include an extraction system including extraction components and filters (not shown) to generate an ion beam 106 at a first energy. Examples of suitable ion energy for the first ion energy range from 5 keV to 100 keV, while the embodiments are not limited in this context. To form a high energy ion beam, the apparatus 100 includes various additional components for accelerating the ion beam 106. The apparatus 100 includes a DC accelerator column 108, disposed downstream of the ion source 102, and arranged to accelerate the ion beam 106 to produce an accelerated beam 109 at a second ion energy, where the second ion energy is greater than the first ion energy, generated by the ion source 102. The DC accelerator column 108 may be arranged as in known DC accelerator column, such as those columns used in medium energy ion implanters.
[0018] The apparatus 100 may include an analyzer 110, functioning to analyze the accelerated ion beam 109 as in known apparatus, by changing the trajectory of the ion beam 106, as shown. The apparatus 100 may also include a buncher 112, and a linear accelerator 114 (shown in the dashed line), disposed downstream of the DC accelerator column 108, where the linear accelerator 114 is arranged to accelerate the accelerated ion beam 109 to form a high energy ion beam 115 at a third energy, greater than the second energy. The linear accelerator 114 may include a plurality of accelerator stages 126, arranged in series, as shown. In various embodiments, the third energy may represent the final ion energy for the ion beam 106, or approximately the final ion energy. In various embodiments, the apparatus 100 may include additional components, such as filter magnet 116, a scanner 118, collimator 120, where the general functions of the scanner 118 and collimator 120 are well known and will not be described herein in further detail. As such, a high energy ion beam, represented by the high energy ion beam 115, may be delivered to an end station 122 for processing a substrate 124.」
(日本語訳:
[0017] ここで図1を参照すると、例示的な装置がブロック形式で示される。装置100は、ビームラインイオン注入装置を表し得、いくつかの要素は、説明を明確にするために示されない。装置100は、当技術分野で知られているように、イオン源102と、ターミナル104内に配置されたガスボックス107とを含み得る。イオン源102は、第1のエネルギーでイオンビーム106を生成するために、抽出構成要素およびフィルタ(図示せず)を含む抽出システムを含み得る。第1のイオンエネルギーのための適切なイオンエネルギーの例は、5keV~100keVの範囲であるが、実施形態は、この文脈に限定されない。高エネルギーイオンビームを生成するために、装置100は、イオンビーム106を加速するための様々な付加的な構成要素を含む。装置100は、イオン源102の下流に配置されたDC加速器カラム108を含む。DC加速器カラム108は、イオンビーム106を加速させ、第2のイオンエネルギーで加速ビーム109を生成するように構成されている。第2のイオンエネルギーは、イオン源102によって生成された第1のイオンエネルギーよりも大きい。DC加速器カラム108は、中型のエネルギーイオン注入装置で使用されるカラムなどの既知のDC加速器カラムのように構成されてもよい。
[0018] 図示のように、装置100は、既知の装置と同様、イオンビーム106の軌道を変化させることによって加速イオンビーム109を分析するよう機能する分析器110を含み得る。また、装置100は、DC加速器カラム108の下流に配置されたバンチャ(集束器、buncher)112および線形加速器114(破線で示される)を含み得、ここで、線形加速器114は、第2のエネルギーよりも大きい第3のエネルギーで、高エネルギーイオンビーム115を生成するために、加速イオンビーム109を加速するように構成される。線形加速器114は、図示のように直列に配置された複数の加速器段126を含み得る。様々な実施形態では、第3のエネルギーは、イオンビーム106の最終イオンエネルギー、またはほぼ最終イオンエネルギーを表し得る。様々な実施形態では、装置100は、フィルタ磁石116、スキャナ118、コリメータ120などの付加的な構成要素を含み得、スキャナ118およびコリメータ120の一般的な機能は周知であり、本明細書ではさらに詳細には記載しない。このようにして、高エネルギーイオンビーム115によって表される高エネルギーイオンビームは、基板124を処理するために、最終ステーション122に供給されてもよい。)
「図1
[図:0001436684000002.jpg]
」
「[0020] According to various embodiments of the disclosure, the linear accelerator 114 may include a plurality of accelerator stages to further accelerate the accelerated ion beam l09to a high energy. In some embodiments, the accelerator stages of the linear accelerator 114 may be a double gap accelerator stage, while in other embodiments the accelerator stages of the linear accelerator 114 may be a triple gap accelerator stage. In particular embodiments, the linear accelerator 114 may include at least three triple gap accelerator stages.」
(日本語訳:
[0020] 本開示の様々な実施形態によると、線形加速器114は、加速イオンビーム109を高エネルギーまでさらに加速するために、複数の加速器段を含み得る。いくつかの実施形態では、線形加速器114の加速器段は、二重間隙加速器段であってもよく、他の実施形態では、線形加速器114の加速器段は、三重間隙加速器段であってもよい。特定の実施形態では、線形加速器114は、少なくとも3つの三重間隙加速器段を含み得る。)
「[0021] FIG. 2 shows the structure of an exemplary accelerator stage of a linear accelerator, according to embodiments of the disclosure. FIG. 3 is a graph illustrating various parameters associated with the accelerator stage of the linear accelerator of FIG. 2. More particularly, FIG. 2 shows an embodiment of an accelerator stage 200, arranged as a triple gap accelerator stage. As is known, a linear accelerator (LINAC) receives an ion beam as a bunched ion beam. The bunched ion beam may be accelerated in two gaps within a double gap accelerator stage or in three gaps within a triple gap accelerator stage.
[0022] The configuration of FIG. 2 illustrates a triple gap accelerator stage, including a resonator 204, a high frequency generator 202, coupled to the resonator 204, and a series of acceleration drift tubes, shown as drift tube 210, drift tube 212, drift tube 214, and drift tube 216. The term“drift tube” is known to indicate a cavity or region of the beamline surrounded by a conductor at a controlled potential so no electric fields penetrate into the interior of the tube, but the electric fields are confined to the entrance and exit regions of the drift tube. Thus, the charged particle will travel at a constant speed or“drift” through this drift tube. The high frequency generator 202 may generate a radio frequency signal, such as 20 MHz or greater, and in some embodiments, may generate a 40 MHz signal. The resonator 204 may be configured as a step-up transformer to act as a voltage source to generate a high voltage, high frequency signal, such as a radio frequency voltage signal. This high voltage signal is used to control the voltage of the drift tubes and thus define the acceleration provided by the accelerator stage 200. A series of accelerator stages, arranged generally as shown in FIG. 2, may be arranged in series to incrementally increase the ion energy to a final targeted ion energy.」
(日本語訳:
[0021] 図2は、本開示の実施形態による、線形加速器の例示的な加速器段の構造を示す。図3は、図2の線形加速器の加速器段に関連する様々なパラメータを示すグラフである。より詳細には、図2は、三重間隙加速器段として配置された加速器段200の実施形態を示す。既知のように、線形加速器(LINAC)は集束イオンビームとしてイオンビームを受け取る。集束イオンビームは、二重間隙加速器段内の2つの間隙、または三重間隙加速器段内の3つの間隙で加速され得る。
[0022] 図2の構成は、共振器204と、共振器204に連結された高周波生成器202と、ドリフト管210、ドリフト管212、ドリフト管214、およびドリフト管216として示される一連の加速ドリフト管とを含む、三重間隙加速器段を示す。「ドリフト管」という用語は、電界がチューブの内部に侵入しないように制御された電位で導体によって囲まれたビームラインの空洞または領域を示すことが知られているが、該電界はドリフト管の入口領域および出口領域に制限される。したがって、荷電粒子は、このドリフト管を通って一定の速度で移動または「ドリフト」することになる。高周波生成器202は、例えば20MHz以上の無線周波数信号を生成し得、いくつかの実施形態では、40MHzの信号を生成し得る。共振器204は、無線周波電圧信号などの高電圧、高周波信号を生成するための電圧源として作用する昇圧器として構成され得る。この高電圧信号は、ドリフト管の電圧を制御するために使用され、したがって、加速器段200によって提供される加速を規定する。概して図2に示すように配置された一連の加速器段を直列に配置して、イオンエネルギーを最終的な目標イオンエネルギーまで漸増的に増加させることができる。)
「図2
[図:0001436684000003.jpg]
」
「[0023] Various considerations may be taken into account according to the embodiments of the disclosure for determining the length of drift tubes within an accelerator stage, as well as the number of accelerator stages in a linear accelerator, such as linear accelerator 114. To begin with, a brief description of the operating principles of accelerator stage 200 is provided. As shown in the configuration of FIG. 2, the first acceleration drift tube, drift tube 210, receives an ion beam 230 having a given ion energy, which ion energy is determined by the DC acceleration column 108. The RF voltage may be provided as an AC signal 302, shown in FIG. 3, where the AC signal 302 is shown along the z axis value corresponding to the time when the bunch of ions is at that location. As the bunch accelerates, the wavelength of this bunch gets longer, even though the temporal frequency is fixed. The bunch (represented by ion beam 230) is then accelerated through the accelerator stage 200 by application of an RF signal, applied to drift tubes of the accelerator stage. The RF signal may have a suitable shape, such as sinusoidal, as shown by the exemplary applied signal, AC signal 302, in FIG. 3. The AC signal 302 may be characterized by a maximum amplitude of applied voltage, Vmax, where the AC signal is applied between the drift tube 212 and the drift tube 214. Thus, the maximum value of voltage applied between drift tube 212 and drift tube 214 is 2Vmax. Notably, drift tube 210, and the final drift tube, drift tube 216, are grounded.
[0024] As further shown in FIG. 2, the accelerator stage 200 is characterized by a gap 220, between an end of drift tube 210 at point Pl and a beginning of drift tube 212 at point P2. The accelerator stage is further characterized by a gap 222, between an end of drift tube 212 at point P3 and a beginning of drift tube 214 at point P4. The accelerator stage is further characterized by a gap 224, between an end of drift tube 214 at point P5 and a beginning of drift tube 216 at point P6. Notably, within a given drift tube, the ion beam 230 does not accelerate, and merely drifts through the given drift tube at a given velocity. At each gap of the accelerator stage 200, the AC signal switches to accelerate the ion beam 230 (as a bunched ion beam) between adjacent drift tubes.」
(日本語訳:
[0023] 本開示の実施形態によると、加速器段内のドリフト管の長さのみならず、線形加速器114などの線形加速器内の加速器段の数を特定するためにも、様々な検討事項を考慮に入れることができる。最初に、加速器段200の動作原理について簡単に説明する。図2の構成に示すように、第1の加速ドリフト管であるドリフト管210は、所与のイオンエネルギーを有するイオンビーム230を受け取り、このイオンエネルギーはDC加速器カラム108によって規定される。RF電圧は、図3に示すAC信号302として提供され得、ここで、AC信号302は、イオンの束がその位置にある時間に対応するz軸値に沿って示される。束が加速すると、一時的な周波数は固定されているにもかかわらず、この束の波長は長くなる。次いで、束(イオンビーム230によって表される)は、加速器段のドリフト管に印加されるRF信号の印加によって、加速器段200を通って加速される。RF信号は、図3において、例示的な印加信号であるAC信号302によって示されるように、正弦波などの適切な形状を有し得る。AC信号302は、印加電圧の最大振幅Vmaxによって特徴付けられ得、ここで、AC信号は、ドリフト管212とドリフト管214との間に印加される。したがって、ドリフト管212とドリフト管214との間に印加される電圧の最大値は、2Vmaxである。特に、ドリフト管210、および最後のドリフト管であるドリフト管216は、接地されている。
[0024] 図2にさらに示されるように、加速器段200は、点P1におけるドリフト管210の端部と点P2におけるドリフト管212の始点との間の間隙220によって特徴付けられる。加速器段は、さらに、点P3におけるドリフト管212の端部と点P4におけるドリフト管214の始点との間の間隙222によって特徴付けられる。加速器段は、さらに、点P5におけるドリフト管214の端部と点P6におけるドリフト管216の始点との間の間隙224によって特徴付けられる。特に、所与のドリフト管内では、イオンビーム230は加速せず、所与の速度で所与のドリフト管を通って単にドリフトする。加速器段200の各間隙において、AC信号は、隣接するドリフト管の間でイオンビーム230(集束イオンビームとして)を加速するように切り替わる。)
「[0025] For a given AC voltage signal having a Vmax, the maximum amount of added energy imparted to the ion beam 230 may be shown to be equal to 4qVmax, where q is the charge on the ion. This maximum energy may be imparted to the ion beam 230 when the tube length of a given drift tube is matched to the velocity of the bunched ion beam. If the tube length is too long or too short, the amount of energy imparted to the ion beam across a given gap is less than 2Vmax of added energy. As is well known, the velocity of an ion depends merely on the ion energy and the ion mass - and is independent of the charge state of the ion. Thus, the maximum energy is typically higher for higher mass ions. Accordingly, the tube length of a given drift tube of the accelerator stage 200 may be designed by consideration of the ion energy and ion mass of ions to be used in the ion beam 230. As an example, the injection energy is to be higher for higher mass ions, as compared to lower mass ions.
[0026] Since components of a linear accelerator including the accelerator stages may not be easily switchable, the design of the various drift tubes of a given accelerator stage may account for various ion species and ion energies to be employed in an apparatus, such as apparatus 100. By way of reference, for known LINACs, generators have usually been restricted to operation at 13.56 MHz. In principle, 40 MHz power supplies including a 40 MHz generator may be used to drive a LINAC, where the resonator size may be scaled down accordingly as compared to a 13.56 MHz resonator. Notably, to obtain maximum voltage increase in a given tube, the tube length is matched to the energy of the ions. Thus, tube length increases along the beamline as the ion energy is increased. As detailed below, for heavier ions and lower energies, a shorter tube length is needed. For example, for a 100 keV phosphorous ion energy, a tube length of approximately 1 cm is called for in the case of 40 MHz resonator. Such a small length may be incompatible with beam control, where a width of the ion beam and thus the minimum inner diameter of the drift tube, may be on the order of one centimeter. With such a short length, the electric fields will penetrate the entire“length” of the drift tube, rendering the drift tube ineffective. For 13.56 MHz resonators, an ideal tube length in the case of 80 keV phosphorous is approximately 3 cm, presenting a more compatible geometry for conducting an ion beams as the ion beam enter the series of tubes to undergo acceleration to high energy. A disadvantage of such 13.56 MHz LINAC systems is the relatively larger resonators, and the concomitant larger LIN AC, generating a large footprint for such ion implanters.」
(日本語訳:
[0025] Vmaxを有する所与のAC電圧信号について、イオンビーム230に付与される付加エネルギーの最大量は、4qVmaxに等しいことが示され得る。ここで、qはイオンの電荷である。この最大エネルギーは、所与のドリフト管のチューブの長さが集束イオンビームの速度に適合されるときに、イオンビーム230に付与されてもよい。チューブの長さが長すぎるか短すぎる場合、所与の間隙にわたってイオンビームに付与されるエネルギーの量は、付加エネルギーの2Vmax未満である。周知のように、イオンの速度は、単にイオンエネルギーおよびイオン質量によって決まり、イオンの荷電状態の影響を受けない。したがって、最大エネルギーは、典型的には、より高いイオン質量に対してより高くなる。その結果、加速器段200の所与のドリフト管のチューブの長さは、イオンビーム230に使用されるイオンのイオンエネルギーおよびイオン質量を考慮して設計され得る。一例として、注入エネルギーは、より低いイオン質量と比較して、より高いイオン質量に対してより高くなる可能性がある。
[0026] 加速器段を含む線形加速器の構成要素は容易に切り換えることができないので、所与の加速器段の様々なドリフト管の設計は、装置100などの装置で採用される様々なイオン種およびイオンエネルギーを考慮に入れてよい。参考までに、既知のLINACに関しては、生成器は、通常、13.56MHzでの動作に制限されてきた。原理上は、40MHz生成器を含む40MHz電源を使用してLINACを駆動することができ、この場合、共振器サイズは、13.56MHz共振器と比較して、それに応じて縮小され得る。特に、所与のチューブにおける最大電圧増加を得るために、チューブの長さは、イオンのエネルギーに適合される。したがって、イオンエネルギーが増加するにつれて、チューブの長さはビームラインに沿って増加する。以下に詳述するように、より重いイオンおよびより低いエネルギーに対しては、より短い長さのチューブが必要とされる。例えば、100keVのリンイオンエネルギーに対しては、40MHz共振器の場合、約1cmの長さのチューブが要求される。かかる短い長さは、イオンビームの幅、したがってドリフト管の最小内径が1センチメートルのオーダーであり得る場合、ビーム制御と両立しないことがある。かかる短い長さでは、電界はドリフト管の「長さ」全体に侵入し、ドリフト管を無効にする。13.56MHzの共振器に関しては、80keVのリンの場合の理想的なチューブの長さは約3cmであり、イオンビームが一連のチューブに入って高エネルギーへの加速を受けるときに、イオンビームを伝導するためのより適合性の高い形状寸法を提示する。かかる13.56MHzのLINACシステムの欠点は、比較的大きな共振器およびそれに付随するより大きなLINACであり、かかるイオン注入装置のために大きな設置面積を生成する。)
「[0034] In view of the foregoing, at least the following advantages are achieved by the embodiments disclosed herein. By providing a DC acceleration subsystem to inject ions at relatively high energy, the present embodiments provide the advantage of a smaller overall footprint for a high energy ion implanter as compared to known linear accelerators. A related advantage is the shorter accelerator drift tubes used to generate a final beam energy, meaning the LINAC subsystem is shorter, and the overall tool is more compact. An additional advantage afforded by the present embodiments is the ability to use higher frequency resonators, meaning smaller resonators, because of the higher injection energy. A further related advantage is the ability to reduce breakdown risk by operating at higher frequency, eliminating the need to use cumbersome insulation means, such as SF6.」
(日本語訳:
[0034] 上記に鑑みて、本明細書に開示される実施形態によって、少なくとも以下の利点が達成される。比較的高エネルギーでイオンを注入するためのDC加速サブシステムを提供することによって、本実施形態は、既知の線形加速器と比較して、高エネルギーイオン注入装置用の総設置面積がより小さいという利点を提供する。関連する利点は、最終ビームエネルギーを生成するために使用される加速器ドリフト管がより短いということであり、これは、LINACサブシステムがより短く、全体的なツールがよりコンパクトであることを意味する。本実施形態によって与えられる付加的な利点は、より高い周波数の共振器を使用する能力であり、注入エネルギーがより高いため、共振器がより小さいことを意味する。さらなる関連する利点は、より高い周波数で動作することによって破壊リスクを減少させる能力であり、SF6などの扱いにくい絶縁手段を使用する必要がなくなることである。)
(イ) 引用文献1の記載から把握できる技術事項の認定
前記(ア)に摘記した[0034]の記載によれば、次の技術事項(以下「引用文献1記載技術事項」という。)を把握できる。
<引用文献1記載技術事項>
「最終ビームエネルギーを生成するために使用される加速器ドリフト管をより短くすることにより、LINACサブシステムがより短く、全体的なツールがよりコンパクトとなること。」
(ウ) 引用発明の認定
前記(イ)において認定した事項及び前記(ア)に摘記した引用文献1の記載事項を総合すると、引用文献1には、請求項1に係る装置に含まれる実施形態による例示的な装置(図1及び2)について、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。
<引用発明>
「ビームラインイオン注入装置であって、
装置100は、イオン源102を含み、
イオン源102は、第1のエネルギーでイオンビーム106を生成するために、抽出システムを含み、
装置100は、イオン源102の下流に配置されたDC加速器カラム108を含み、
DC加速器カラム108は、イオンビーム106を加速させ、第2のイオンエネルギーで加速ビーム109を生成するように構成され、([0017])
装置100は、DC加速器カラム108の下流に配置されたバンチャ(集束器、buncher)112および線形加速器114を含み、
線形加速器114は、第2のエネルギーよりも大きい第3のエネルギーで、高エネルギーイオンビーム115を生成するために、加速イオンビーム109を加速するように構成され、
線形加速器114は、直列に配置された複数の加速器段126を含み、([0018])
線形加速器114は、少なくとも3つの三重間隙加速器段を含み、([0020])
三重間隙加速器段として配置された加速器段200は、共振器204と、共振器204に連結された高周波生成器202と、ドリフト管210、ドリフト管212、ドリフト管214、およびドリフト管216として示される一連の加速ドリフト管とを含み、([0021]・[0022])
ドリフト管は、電界がチューブの内部に侵入しないように制御された電位で導体によって囲まれたビームラインの空洞または領域を示し、
共振器204は、無線周波電圧信号などの高電圧、高周波信号を生成するための電圧源として作用する昇圧器として構成され、
この高電圧信号は、ドリフト管の電圧を制御するために使用され、([0022])
第1の加速ドリフト管であるドリフト管210は、所与のイオンエネルギーを有するイオンビーム230を受け取り、
RF電圧は、AC信号302として提供され、
束(イオンビーム230)は、加速器段のドリフト管に印加されるRF信号の印加によって、加速器段200を通って加速され、
AC信号は、ドリフト管212とドリフト管214との間に印加され、
ドリフト管210、および最後のドリフト管であるドリフト管216は、接地されており、([0023])
所与のドリフト管内では、イオンビーム230は加速せず、所与の速度で所与のドリフト管を通って単にドリフトし、
加速器段200の各間隙において、AC信号は、隣接するドリフト管の間でイオンビーム230(集束イオンビームとして)を加速するように切り替わり、([0024])
加速器段200の所与のドリフト管のチューブの長さは、イオンビーム230に使用されるイオンのイオンエネルギーおよびイオン質量を考慮して設計され得る、([0025])
ビームラインイオン注入装置」
イ 引用文献2及び3の記載事項及び周知技術の認定
当審において新たに引用する、本願の優先日前に発行された文献である特表2003-535439号公報及び特開平11-354298号公報(以下、それぞれを「引用文献2」及び「引用文献3」という。)には、次の記載がある。
(ア) 引用文献2の記載
「【0020】
図1cにおいて、抵抗RL及びキャパシタンスCsに並列接続した誘導コイルLを有する通常の共振回路100が図示されている。加速電極108は、インダクターLに接続され、イオンビーム110に関連するイオンを加速するのに役立つ。電極108は、2つの接地された電極112,114間に取り付けられ、そして、加速電極108と接地電極112,114は、イオンビームを加速するために「プッシュプル」動作で作用する。」
「【図1d】
[図:0001436684000004.jpg]
」
(イ) 引用文献3の記載
「【0025】 図1は本発明の実施の一形態の加速管31の構造を示す縦断面図であり、図2は図1の切断面線A-Aから見た断面図である。この加速管31は、3つの加速ギャップ32,33,34を備える直線型の加速管であり、大略的に、前記加速ギャップ32,33,34を形成するグランド電極35、ドリフトチューブ36、ドリフトチューブ37およびグランド電極38を備える加速室41と、共振用のインダクタ39,40を備えるタンク45とから構成されている。」
「【図3】
[図:0001436684000005.jpg]
」
(ウ) 周知技術の認定
前記(ア)及び(イ)に摘記した引用文献2及び3の摘記事項に例示される図面より、接地されるドリフト管の長さを短く、例えば、その直径に対して2倍未満に描画することが見てとれ、このような描画によれば、次の技術事項は、当業者にとって周知技術(以下「接地ドリフト管周知技術」という。)であったと認められる。
<接地ドリフト管周知技術>
「線形加速器における接地ドリフト管の長さを、その直径に対して2倍未満にすること。」
(3) 本件補正発明と引用発明の対比
ア 対比分析
本件補正発明と引用発明を、前記(1)アに記載した本件補正発明の分説に従い、以下に対比する。
(ア) 構成Xの観点(イオン注入システム)
a 構成Xは、「イオン注入システム」の発明であることを特定するものである。
b 引用発明は、「ビームラインイオン注入装置」の発明である。
c したがって、本件補正発明と引用発明は、「イオン注入システム」の発明である点において一致する。
(イ) 構成Aの観点(イオン注入システムについて)
a 構成Aは、「第1のエネルギーでイオンビームを生成するように構成された、イオン源及び抽出システム」を備えることである。
b 引用発明における「イオン源102」及び「抽出システム」は、「第1のエネルギーでイオンビーム106を生成するため」ものであるから、本件補正発明にいうところの「第1のエネルギーでイオンビームを生成するように構成された、イオン源及び抽出システム」であるといえる。
c したがって、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。
「第1のエネルギーでイオンビームを生成するように構成された、イオン源及び抽出システム」を備える点。
(ウ) 構成B、B1及びB2の観点(線形加速器について1)
a 構成Bは、「前記イオン源の下流に配置された線形加速器」(B)を備えることであり、当該「線形加速器」が、「前記イオンビームを束状にされたイオンビームとして受け入れ、且つ前記イオンビームを前記第1のエネルギーよりも大きい第2のエネルギーへ加速させるように構成されており」(B1)、当該「線形加速器」が、「複数の加速段を備える」(B2)ことである。
b 引用発明における「線形加速器114」は、イオン源102の下流に配置された「DC加速器カラム108」の下流に配置されたものであるから、本件補正発明にいうところの「前記イオン源の下流に配置された線形加速器」であるといえる。
c 引用発明における「線形加速器114」に含まれる「第1の加速ドリフト管であるドリフト管210」は、「所与のイオンエネルギーを有するイオンビーム230を受け取」っているところ、当該「イオンビーム230」は、「束(イオンビーム230)」であるから、引用発明における「線形加速器」は、本件補正発明にいうところの「前記イオンビームを束状にされたイオンビームとして受け入れ」との構成を満たしてる。
d 引用発明における「線形加速器114」は、「第2のエネルギーよりも大きい第3のエネルギーで、高エネルギーイオンビーム115を生成するために、加速イオンビーム109を加速するように構成され」ている。ここで、当該「加速イオンビーム109」は、「イオンビーム106を加速させ、」「生成する」ビームであるから、「イオンビーム106」よりエネルギーが大きいものと理解できるところ、「高エネルギーイオンビーム115」は、当該「加速イオンビーム109」よりエネルギーが大きいのであるから、引用発明における「高エネルギーイオンビーム115」は、「イオンビーム106」よりもエネルギーが大きいことを理解できる。そうすると、引用発明における「線形加速器114」は、本件補正発明にいうところの「前記イオンビームを前記第1のエネルギーよりも大きい第2のエネルギーへ加速させるように構成されており」との構成を満たしてる。
e 引用発明における「線形加速器」は、「少なくとも3つの三重間隙加速器段を含[む]」から、本件補正発明にいうところの「複数の加速段を備え」との構成を満たしてる。
f したがって、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。
「前記イオン源の下流に配置された線形加速器」を備え、「当該線形加速器が、前記イオンビームを束状にされたイオンビームとして受け入れ、且つ前記イオンビームを前記第1のエネルギーよりも大きい第2のエネルギーへ加速させるように構成されており、当該線形加速器が、複数の加速段」を備える点。
(エ) 構成B3~6の観点(線形加速器について2)
a 構成B3~6は、「所与の加速段」が、以下の特定事項を満たすことである。
(a) 「前記イオンビームを伝導するように構成されたドリフトチューブアセンブリ」を備えること。(構成B3)
(b) 「前記ドリフトチューブアセンブリに電気的に連結された共振器」を備えること。(構成B4)
(c) 「前記共振器に連結され、前記共振器へRF信号を出力するように構成されたRF電力アセンブリ」を備えること。(構成B5)
(d) 「四重極要素を含まない」こと。(構成B6)
b 前記a(a)について、引用発明における「加速器段200(三重間隙加速器段)」は、「ドリフト管210、ドリフト管212、ドリフト管214、およびドリフト管216として示される一連の加速ドリフト管」を含み、当該「一連の加速ドリフト管」により「イオンビームを加速する」のであるから、引用発明における「一連の加速ドリフト管」は、本件補正発明にいうところの「前記イオンビームを伝導するように構成されたドリフトチューブアセンブリ」であるといえる。
c 前記a(b)について、引用発明における「共振器204」は、「無線周波電圧信号などの高電圧、高周波信号を生成するための電圧源として作用する昇圧器として構成され」ており、「束(イオンビーム230)は、加速器段のドリフト管に印加されるRF信号の印加によって、加速器段200を通って加速され」るから、引用発明における「共振器204」は、「一連の加速ドリフト管」と電気的に接続されていると理解でき、本件補正発明にいうところの「前記ドリフトチューブアセンブリに電気的に連結された共振器」であるといえる。
d 前記a(c)について、引用発明における「共振器204」には、「高周波生成器202」が連結されているところ、「高周波生成」とは、RF信号を生成することと理解できる。そうすると、引用発明における「高周波生成器202」は、本件補正発明にいうところの「前記共振器に連結され、前記共振器へRF信号を出力するように構成されたRF電力アセンブリ」であるといえる。
e 前記a(d)について、引用発明は、「四重極要素」を含むことを発明特定事項とはしていないところ、引用文献1に「四重極要素」や、その配置を示唆する記載はなく、三重間隙加速器が「四重極要素」を必須とするとの技術常識もないことに鑑みれば、引用文献1に記載された三重間隙加速器を、「四重極要素」を含まないものと認定することは自然なことといえるから、引用発明は、本件補正発明にいうところの「四重極要素を含まない」との構成を満たしている。
f 以上を踏まえ、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。
「前記複数の加速段のうちの所与の加速段が、前記イオンビームを伝導するように構成されたドリフトチューブアセンブリと、前記ドリフトチューブアセンブリに電気的に連結された共振器と、前記共振器に連結され、前記共振器へRF信号を出力するように構成されたRF電力アセンブリとを備え、前記所与の加速段が四重極要素を含まない、線形加速器」を備える点。
(オ) 構成Cの観点(ドリフトチューブアセンブリについて)
a 構成Cは、「ドリフトチューブアセンブリ」が、「第1の接地ドリフトチューブ、前記第1の接地ドリフトチューブの下流に配置され、前記共振器に接続するACドリフトチューブアセンブリ、及び前記ACドリフトチューブアセンブリの下流に配置された第2の接地ドリフトチューブ」を備えることである。
b 引用発明における「一連の加速ドリフト管」は、「ドリフト管210、ドリフト管212、ドリフト管214、およびドリフト管216」であるところ、「ドリフト管210、および最後のドリフト管であるドリフト管216は、接地されて」いる。また、「RF電圧は、AC信号302として提供され」ているところ、「AC信号は、ドリフト管212とドリフト管214との間に印加され」ている。そうすると、引用発明における「ドリフト管210」、「ドリフト管212とドリフト管214」及び「ドリフト管216」は、それぞれ本件補正発明における「第1の接地ドリフトチューブ」、「ACドリフトチューブアセンブリ」及び「第2の接地ドリフトチューブ」に相当し、「ドリフト管210、ドリフト管212、ドリフト管214、およびドリフト管216」は、「一連の加速ドリフト管」であるから、この順に並ぶもの、すなわち本件補正発明にいうところの「(それぞれの)下流に配置され」るものと理解できる。
c したがって、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。
「前記ドリフトチューブアセンブリが、第1の接地ドリフトチューブ、前記第1の接地ドリフトチューブの下流に配置され、前記共振器に接続するACドリフトチューブアセンブリ、及び前記ACドリフトチューブアセンブリの下流に配置された第2の接地ドリフトチューブを備え」る点。
(カ) 構成Dの観点(接地ドリフトチューブについて)
a 構成Dは、「前記第1の接地ドリフトチューブ及び前記第2の接地ドリフトチューブのうちの少なくとも1つが、L/Dが2未満であるドリフトチューブ長(L)とドリフトチューブ径(D)とを有するコンパクトな構成を有する」ことである。
b 引用発明は、本件補正発明の構成Dの観点について不明であるから、本件補正発明と引用発明は、次の点において相違する。
「前記第1の接地ドリフトチューブ及び前記第2の接地ドリフトチューブのうちの少なくとも1つが、L/Dが2未満であるドリフトチューブ長(L)とドリフトチューブ径(D)とを有するコンパクトな構成を有する」点。
イ 一致点及び相違点
前記アの対比分析の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次の(ア)及び(イ)に示すとおりである。
(ア) 一致点
「第1のエネルギーでイオンビームを生成するように構成された、イオン源及び抽出システム、
並びに前記イオン源の下流に配置された線形加速器であって、
当該線形加速器が、前記イオンビームを束状にされたイオンビームとして受け入れ、且つ前記イオンビームを前記第1のエネルギーよりも大きい第2のエネルギーへ加速させるように構成されており、
当該線形加速器が、複数の加速段を備え、前記複数の加速段のうちの所与の加速段が、前記イオンビームを伝導するように構成されたドリフトチューブアセンブリと、
前記ドリフトチューブアセンブリに電気的に連結された共振器と、
前記共振器に連結され、前記共振器へRF信号を出力するように構成されたRF電力アセンブリとを備え、
前記所与の加速段が四重極要素を含まない、線形加速器を備え、
前記ドリフトチューブアセンブリが、第1の接地ドリフトチューブ、前記第1の接地ドリフトチューブの下流に配置され、前記共振器に接続するACドリフトチューブアセンブリ、及び前記ACドリフトチューブアセンブリの下流に配置された第2の接地ドリフトチューブを備える、
イオン注入システム」の発明である点。
(イ) 相違点
本件補正発明は、「前記第1の接地ドリフトチューブ及び前記第2の接地ドリフトチューブのうちの少なくとも1つが、L/Dが2未満であるドリフトチューブ長(L)とドリフトチューブ径(D)とを有するコンパクトな構成を有する」との対し、引用発明は、そのようであるか不明な点。
(4) 判断
ア 相違点について
(ア) 引用文献1の記載によれば、前記(2)ア(イ)aの引用文献1記載技術事項1のとおり、「最終ビームエネルギーを生成するために使用される加速器ドリフト管をより短くすることにより、LINACサブシステムがより短く、全体的なツールがよりコンパクトとなる」との技術事項を把握でき、引用発明の装置をコンパクトとするために、引用発明における「一連の加速ドリフト管」をより短くすることに動機はあるといえる。
(イ) そうすると、「加速器段200の所与のドリフト管のチューブの長さは、イオンビーム230に使用されるイオンのイオンエネルギーおよびイオン質量を考慮して設計され得る」引用発明において、「加速器段200(三重間隙加速器段)」をより短くするために、各ドリフト管の長さをどの程度短くするかは、当業者の設計事項にすぎない。
そして、接地された「ドリフト管210」又は「ドリフト管216」の長さは、接地されたことによる作用が十分に機能する程度の長さであれば、それ以上に長くする必要がないことは明らかといえるから、接地ドリフト管周知技術も踏まえ、その長さを「L/Dを2未満」を満たすものとすることは、前記のとおり、「ドリフト管」をより短く設計するとの設計方針に従って、「ドリフト管210」又は「ドリフト管216」の長さを最適化した結果として満たされるにすぎず、当業者が適宜なし得た設計事項にすぎない。
イ 評価
前記アにおいて検討したとおり、引用発明において、前記相違点に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、引用発明、引用文献1記載技術事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本件補正発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明、引用文献1記載技術事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ 請求人の主張について
(ア) 請求人の主張の内容
請求人は、引用文献1の「使用される加速器ドリフト管がより短い」という記載は、「一連の加速ドリフト管」の全体がより短いと解釈することが妥当であり、本願補正発明の「第1の接地ドリフトチューブ及び第2の接地ドリフトチューブのうちの少なくとも1つを短くする」という具体的な技術思想を得ることはできず、さらには、「L/Dが2未満であるドリフトチューブ長(L)とドリフトチューブ径(D)とを有するコンパクトな構成を有する」との構成を得ることはできない旨を主張している。
(イ) 請求人の主張についての検討
前記アに説示のとおり、引用発明における(接地された)「ドリフト管210」又は「ドリフト管216」の長さをどの程度短くするかは、当業者の設計事項であり、接地ドリフト管周知技術を踏まえれば、「L/Dが2未満」との事項は、その結果として満たされる、当業者が適宜なし得た設計事項にすぎないものである。
したがって、請求人の前記(ア)の主張は、採用し得ないものである。
エ 独立特許要件の判断のまとめ
以上検討のとおり、本願補正発明は、引用発明、引用文献1記載技術事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正により請求項1についてする補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合しない。
4 本件補正の却下の決定の理由のむすび
前記3(4)エのとおり、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明について
本件補正は、前記第2のとおり却下したので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(前記第2の1(1)参照)に記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の本願発明に対する拒絶の理由(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。
(進歩性の欠如) 本願発明は、本願の優先日前に発行された下記の引用文献に記載された発明に基づいて、本願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.国際公開第2019/231782号
3 引用文献に記載された事項及び引用発明の認定等
引用文献1に記載された事項並びに引用発明及び引用文献1記載技術事項は、前記第2の3(2)ア(ア)並びに(ウ)及び(イ)において示したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の2において検討したとおり、本件補正発明から「前記共振器に接続する」の限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、その発明特定事項の一部を限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の3(4)において説示したとおり、引用発明、引用文献1記載技術事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により引用発明、引用文献1記載技術事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-013260