特許拒絶査定不服審判
2023-003462
プロタンパク質コンベルターゼスブチリシンケクシン9型(PCSK9)に対する抗原結合タンパク質
- 審判番号
- 2023-003462
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-231236
- 請求日
- 2023年03月01日
- 審決日
- 2025年10月22日
- 公報発行日
- 2026年04月24日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】アムジエン・インコーポレーテツド
- 【請求人代理人】大野 聖二
- 【請求人代理人】山口 裕司
- 【請求人代理人】多田 宏文
- 【請求人代理人】松任谷 優子
- 【請求人代理人】梅田 慎介
- 【請求人代理人】今野 智介
- 【請求人代理人】大栗 由美
- 審判長/審判官
- 審判長 長井 啓子
- 審判官 小暮 道明
- 審判官 名和 大輔
- 分類
- P18 .536-WZ (C12N) / P18 .537-WZ (C12N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条4項1号特許法36条6項1号特許法36条6項2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第2条第3項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-231236「プロタンパク質コンベルターゼスブチリシンケクシン9型(PCSK9)に対する抗原結合タンパク質」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 4月16日出願公開、特開2020- 58376〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2008年(平成20年)8月22日(パリ条約による優先権主張 2007年8月23日、2007年12月21日、2008年1月9日、2008年8月4日 いずれもアメリカ合衆国(US))を国際出願日とする特願2010-522084号の一部を、平成25年9月20日に新たな特許出願とした特願2013-195240号の一部を、平成27年2月23日に新たな特許出願とした特願2015-033054号の一部を、平成28年3月17日に新たな特許出願とした特願2016-053430号の一部を、平成30年2月26日に新たな特許出願とした特願2018-031718号の一部を、令和1年12月23日に新たに特許出願したものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 3年 2月18日付け:拒絶理由通知書
令和 3年 9月 2日 :意見書、手続補正書の提出
令和 3年12月27日付け:拒絶理由通知書
令和 4年 7月 8日 :意見書、手続補正書の提出
令和 4年10月26日付け:拒絶査定
令和 5年 3月 1日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 6年11月28日付け:拒絶理由通知書
令和 7年 6月 3日 :意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、令和7年6月3日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
第一の様式で配列番号303のPCSK9タンパク質に結合する単離されたモノクローナル抗体であって、第二の様式でPCSK9のバリアントに結合し、前記単離されたモノクローナル抗体はPCSK9とLDLR間の相互作用を中和し、前記PCSK9バリアントは、配列番号303の207、208、185、181、439、513、538、539、132、351、390、413、582、162、164、167、123、129、311、313、337、519、521及び554を含む又はこれらからなる群から選択される位置に1つの点変異を有し、前記第一の様式が第一のEC50を含み、前記第二の様式は第二のEC50を含み、並びに第一の様式に対する値は第二の様式に対する値と異なる、単離されたモノクローナル抗体。」(以下、「本願発明」という。)
第3 当審が通知した拒絶理由
令和6年11月28日付けで当審が通知した拒絶理由は、以下の理由を含むものである。
理由1.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
理由2.(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
理由3.(実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
第4 当審の判断
1 理由3(実施可能要件)について
(1)本願明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明には、本願発明に関し、次の事項が記載されている。
ア 実施例以外の記載
(ア)「【0002】
発明の分野
本発明は、プロタンパク質コンベルターゼスブチリシンケクシン9型(PCSK9)に結合する抗原結合タンパク質並びに該抗原結合タンパク質を使用及び作製する方法に関する。」
(イ)「【0038】
幾つかの態様において、本発明は、PCSK9に結合し、LDLRに対するPCSK9の低密度リポタンパク質受容体(LDLR)低下効果を低減させる中和抗体を含む。幾つかの実施形態において、抗体はPCSK9に特異的に結合する。幾つかの実施形態において、抗体は、PCSK9の触媒ドメインに結合する。幾つかの実施形態において、抗体は、配列番号3の残基31から447内のエピトープに結合する。幾つかの実施形態において、抗体は、配列番号3と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有するPCSK9に結合する。」
(ウ)「【0050】
幾つかの態様において、本発明は、配列番号303のPCSK9タンパク質に第一の様式で結合し、及びPCSK9のバリアントに第二の様式で結合する抗原結合タンパク質を含む。PCSK9バリアントは、配列番号303及び/又は配列番号1の207、208、185、181、439、513、538、539、132、351、390、413、582、162、164、167、123、129、311、313、337、519、521及び554を含む又はこれらからなる群から選択される位置に、残基の少なくとも1つの点変異を有する。幾つかの実施形態において、第一の様式は第一のEC50、第一のBmax又は第一のEC50と第一のBmaxを含む。幾つかの実施形態において、第二の様式は第二のEC50、第二のBmax又は第二のEC50と第二のBmaxを含む。第一の様式に対する値は、第二の様式に対する値とは異なる。幾つかの実施形態において、第一の様式は第一のEC50を含み、第二の様式は第二のEC50を含み、及び点変異はR207E、D208R、E181R、R185E、R439E、E513R、V538R、E539R、T132R、S351R、A390R、A413R及びE582Rからなる又はこれらを含む群から選択される。幾つかの実施形態において、第一のEC50は第二のEC50と少なくとも20%異なる。幾つかの実施形態において、第一のEC50は第二のEC50と少なくとも50%異なる。幾つかの実施形態において、第二のEC50は第一のEC50より大きな数値である。幾つかの実施形態において、第一のEC50は多重ビーズ結合アッセイによって測定される。幾つかの実施形態において、第二のEC50は1μmより大きい。幾つかの実施形態において、抗原結合タンパク質は中和抗原結合タンパク質である。幾つかの実施形態において、中和抗原結合タンパク質は競合的中和抗原結合タンパク質である。幾つかの実施形態において、中和抗原結合タンパク質は非競合的中和抗原結合タンパク質である。・・・」
(エ)「【0064】
図1Aは、PCSK9の成熟形態のアミノ酸配列を図示しており、プロドメインに下線が付されている。・・・図3Aは、様々な抗原結合タンパク質の様々な重鎖の配列比較表である。図3Bは、様々な抗原結合タンパク質の様々な重鎖の配列比較表である。・・・図3IIIは、抗原結合タンパク質の幾つかの実施形態の様々な重鎖及び軽鎖の配列比較表である。図3JJJは、抗原結合タンパク質の幾つかの実施形態の様々な重鎖及び軽鎖の配列比較表である。」
(オ)「【0138】
「中和抗原結合タンパク質」又は「中和抗体」という用語は、リガンドに結合し、そのリガンドの生物学的効果を妨げ、又は低下させる、それぞれ、抗原結合タンパク質又は抗体を表す。これは、例えば、リガンド上の結合部位を直接封鎖することによって、又はリガンドに結合し、間接的な手段(リガンド中の構造的又はエネルギー的変化など)を通じて、リガンドの結合能を変化させることによって行うことができる。幾つかの実施形態において、この用語は、それが結合しているタンパク質が生物学的機能を発揮するのを妨げる抗原結合タンパク質も表し得る。抗原結合タンパク質(例えば、抗体又は免疫学的に機能的なその断片)の結合及び/又は特異性を評価する際に、抗体の過剰が(インビトロ競合的結合アッセイで使用された場合に)少なくとも約1から20、20から30%、30から40%、40から50%、50から60%、60から70%、70から80%、80から85%、85から90%、90から95%、95から97%、97から98%、98から99%又はそれ以上、リガンドに結合された結合対の量を低下させるときに、抗体又は断片はその結合対へのリガンドの結合を大幅に阻害することができる。幾つかの実施形態において、PCSK9抗原結合タンパク質の場合には、このような中和分子は、PCSK9がLDLRを結合する能力を低減させることができる。幾つかの実施形態において、競合アッセイを介して、中和能力を性質決定し、及び/又は記載する。幾つかの実施形態において、中和能力は、IC50又はEC50値の観点で記載される。幾つかの実施形態において、ABP27B2、13H1、13B5及び3C4は、非中和ABPであり、3B6、9C9及び31A4は弱い中和物質であり、表2中の残りのABPは強い中和物質である。幾つかの実施形態において、抗体又は抗原結合タンパク質は、PCSK9へ結合し、PCSK9がLDLRに結合するのを妨げる(又はPCSK9がLDLRに結合する能力を低下させる)ことによって中和する。幾つかの実施形態において、抗体又はABPは、PCSK9に結合し、PCSK9をLDLRへ結合させながら、LDLRのPCSK9媒介性分解を妨げ、又は低下させることによって中和する。従って、幾つかの実施形態において、中和ABP又は抗体は、PCSK9/LDLR結合をなお可能にしながら、PCSK9が関与するLDLRのその後の分解を妨げる(又は低下させる)。」
(カ)「【0155】
ヒトPCSK9を含むPCSK9を結合する抗原結合タンパク質(ABP)は、本明細書中に記載されている。幾つかの実施形態において、提供される抗原結合タンパク質は、本明細書に記載されているように、1つ又はそれ以上の相補性決定領域(CDR)を含むポリペプチドである。同じ抗原結合タンパク質において、CDRは、CDRの適切な抗原結合特性が達成されるようにCDRを方向付ける「フレームワーク」領域中に包埋されている。幾つかの実施形態において、本明細書中に提供されている抗原結合タンパク質は、PCSK9とLDLR間の相互作用を妨害し、遮断し、低下させ、又は調節することができる。このような抗原結合タンパク質は、「中和」と表される。幾つかの実施形態において、抗原結合タンパク質が中和性であり、PCSK9に結合されている場合でさえ、PCSK9とLDLR間の結合はなお起こり得る。例えば、幾つかの実施形態において、ABPは、PCSK9上のLDLR結合部位を封鎖することなく、LDLRに対するPCSK9の悪影響を妨げ、又は低下させる。従って、幾つかの実施形態において、ABPは、PCSK9とLDLR間の結合相互作用を抑制する必要なしに、LDLRの分解をもたらすPCSK9の能力を調節し、又は変化させる。このようなABPは、「非競合的に中和する」ABPと特に記載することができる。幾つかの実施形態において、中和ABPは、PCSK9がLDLRに結合するのを妨げる位置及び/又は様式で、PCSK9に結合する。このようなABPは、「競合的に中和する」ABPと特に記載することができる。上記中和物質は何れも、対象中に存在している遊離のLDLRのより大きな量をもたらすことができ、これにより、LDLに結合しているより多くのLDLRがもたらされる(これにより、対象中のLDLの量を低下させる。)。続いて、これは、対象中に存在する血清コレステロールの量の低下をもたらす。」
(キ)「【0210】
完全ヒトABP(例えば、抗体)の調製
ある種の実施形態において、モノクローナル抗体を作製するために、ファージディスプレイ技術が使用される。ある種の実施形態において、このような技術は、完全ヒトモノクローナル抗体を作製する。ある種の実施形態において、単一のFab又はFv抗体断片をコードするポリヌクレオチドは、ファージ粒子の表面上に発現される。例えば、Hoogenboom et al., J. Mol.Biol., 227:381 (1991); Marks et al., J Mol Biol 222:581 (1991);米国特許第5,885,793号を参照されたい。ある種の実施形態において、標的に対する親和性を有する抗体断片を同定するために、ファージが「スクリーニング」された。従って、ある種のこのようなプロセスは、糸状バクテリオファージの表面上への抗体断片レパートリーのディスプレー及び標的への抗体断片レパートリーの結合によってファージのその後の選択を通じて免疫選択を模倣する。ある種のこのような手法では、高親和性機能的中和抗体断片が単離される。(以下により詳しく論述されている)ある種のこのような実施形態において、ヒト抗体遺伝子の完全なレパートリーは、末梢血リンパ球から天然に再配置されたヒトV遺伝子をクローニングすることによって作製される。例えば、「Mullinax et al, Proc Natl Acad Sci (USA), 87:8095-8099 (1990)」を参照されたい。
【0211】
ある種の実施形態によれば、挿入されたヒト抗体産生ゲノムのかなりの部分を有するが、内在性マウス抗体の産生が欠失されたトランスジェニックマウスの使用を通じて、本発明の抗体が調製される。次いで、このようなマウスは、ヒト免疫グロブリン分子及び抗体を産生することができ、マウス免疫グロブリン分子及び抗体の産生を欠損している。この結果を達成するために使用される技術は、本明細書中に開示されている特許、出願及び参考文献中に開示されている。ある種の実施形態において、PCT公開出願WO98/24893又は「Mendez et al, Nature Genetics, 15:146-156 (1997)」(あらゆる目的のために、参照により、本明細書に組み込まれる。)に開示される方法などの方法を使用することができる。
【0212】
一般に、PCSK9に対して特異的な完全ヒトモノクローナルABP(例えば、抗体)は以下のように作製することができる。ヒト免疫グロブリン遺伝子を含有するトランスジェニックマウスは、目的の抗原(例えば、PCSK9)で免疫化され、抗体を発現するマウスからのリンパ細胞(B細胞など)が得られる。不死化ハイブリドーマ細胞株を調製するために、このような回収された細胞は骨髄性細胞株と融合され、目的の抗原に対して特異的な抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を同定するために、このようなハイブリドーマ細胞株はスクリーニング及び選択される。ある種の実施形態において、PCSK9に対して特異的な抗体を産生するハイブリドーマ細胞株の産生が提供される。」
(ク)「【0250】
抗原結合タンパク質及び本明細書において使用されるバリアントPCSK9の間の結合の変化(例えば、低下又は増加)は、(例えば、実施例中で以下に記載されているBiacore検査又はビーズをベースとしたアッセイなどの公知の方法によって測定した場合に)結合親和性、EC50の変化及び/又は(例えば、抗原結合タンパク質濃度対抗原濃度のプロットにおけるBmaxの減少によって明らかとなる)抗原結合タンパク質の総結合能力の変化(例えば、低下)が存在することを意味する。結合の著しい変化は、変異を受けた残基が抗原結合タンパク質への結合に直接関与しており、又は結合タンパク質が抗原に結合されたときに、結合タンパク質に近接していることを示唆する。
【0251】
幾つかの実施形態において、結合の著しい低下は、抗原結合タンパク質とバリアントPCSK9抗原間での結合親和性、EC50及び/又は能力が、抗原結合タンパク質と野生型PCSK9(例えば、配列番号1及び/又は配列番号303に示されている。)間での結合と比べて、10%超、20%超、40%超、50%超、55%超、60%超、65%超、70%超、75%超、80%超、85%超、90%超又は95%超低下していることを意味する。ある種の実施形態において、結合は、検出可能な限界を下回って低下する。
・・・
【0256】
幾つかの実施形態において、野生型PCSK9タンパク質(例えば、配列番号1又は配列番号303)と比べて、以下の変異:配列番号1又は配列番号303内のR207E、D208R、R185E、R439E、E513R、V538R、E539R、T132R、S351R、A390R、A413R及びE582Rの1つ又はそれ以上(例えば、1、2、3、4、5など)を有するバリアントPCSK9タンパク質に対して、ABPの結合が著しく低下又は増加する。幾つかの実施形態において、結合は低下する。幾つかの実施形態において、結合の低下は、EC50の変化として観察される。幾つかの実施形態において、EC50の変化は、EC50の数値の増加(従って、結合の減少)である。」
(ケ)「【0270】
ある種の治療的用途及び医薬組成物
ある種の事例において、PCSK9活性は、多数のヒトの病状と相関する。例えば、ある種の事例において、高すぎる又は低すぎるPCSK9活性は、高コレステロール血症などのある種の症状と相関する。従って、ある種の事例において、PCSK9活性を調節することは治療的に有用であり得る。ある種の実施形態において、PCSK9に対する中和的抗原結合タンパク質は、少なくとも1つのPCSK9活性(例えば、LDLRへの結合)を調節するために使用される。このような方法は、上昇した血清コレステロールレベルと関連する、又は上昇したコレステロールレベルが関連する疾患を治療し、及び/又は予防し、及び/又は疾患のリスクを低減することができる。」
イ 実施例の記載(摘示箇所に基づき当審がまとめた内容で示す。)
発明の詳細な説明において、本願発明の「配列番号303のPCSK9タンパク質」は、「野生型PCSK9タンパク質」と同義であると認められるので、以下においても、同義のものとする。
(ア)ヒト免疫グロブリン遺伝子を含有するXenoMouse(R)マウスに対してヒトPCSK9で免疫化する工程、PCSK9を用いてPCSK9とLDLRの結合を遮断・阻害する抗体を選択する工程、を含む工程(実施例1~9)によって、抗PCSK9抗体を選択した。この際、野生型PCSK9に結合する抗体を選択する一次スクリーニングでは合計3104のハイブリドーマを選択し(実施例3の【0326】~【0328】)、その中の3000個の陽性を再スクリーニングする二次スクリーニングでは合計2441のハイブリドーマを選択し(実施例3の【0329】)、その中からヒトとマウスPCSK9の両方に結合できる579個の抗体を選択し(実施例3の【0330】)、その中からPCSK9とLDLRの結合を遮断・阻害する384個の抗体を選択した(実施例3の【0331】~【0332】)。その後、競合ELISAを使用したエピトープビニングによりグループ分けを行い、その結果として、ビン1~5の5つの各ビンに属する抗体クローン名が以下の表37.1に示される(実施例37)。
[図:0001433371000001.jpg]
(イ)前記(ア)に記載するエピトープビニングでビン1に属する21B12、及びビン3に属する31H4について、PCSK9とLDLRの結合の遮断効果、野生型マウスにおける血清コレステロール低下効果等の生理学的活性を確認した。(実施例11~17)
(ウ)31H4のFab断片に結合された完全長PCSK9の結晶構造から、31H4の5オングストローム内に存在するPCSK9残基として、配列番号3における、W72、F150、A151、Q152、T214、R215、F216、H217、A220、S221、K222、S225、H226、C255、Q256、G257、K258、N317、F318、T347、L348、G349、T350、L351、E366、D367、D374、V380、S381、Q382、S383又はG384(これらアミノ酸位置は、【0533】~【0534】によれば、配列番号303における、W42、F120、A121、Q122、T184、R185、F186、H187、A190、S191、K192、S195、H196、C225、Q226、G227、K228、N287、F288、T317、L318、G319、T320、L321、E336、D337、D344、V350、S351、Q352、S353又はG354に当たる。)、31H4の5ないし8オングストローム内に存在するPCSK9残基として、配列番号3における、K69、D70・・・E211・・・Q387(これらアミノ酸配列は、配列番号303におけるK39、D40・・・E181・・・Q357)を同定した(実施例29)(本願発明で特定される位置に当審が下線を付した。)。
(エ)21B12のFab断片に結合されたPCSK9ProCat(配列番号3の31から449)の結晶構造から、21B12の5オングストローム内に存在するPCSK9残基として、配列番号3における、S153、S188、I189、Q190、S191、D192、R194、E197、G198、R199、V200、D224、R237、D238、K243、S373、D374、S376、T377及びF379(これらアミノ酸位置は、【0533】~【0534】によれば、配列番号303における、S123、S158、I159、Q160、S161、D162、R164、E167、G168、R169、V170、D194、R207、D208、K213、S343、D344、S346、T347及びF349に当たる。)を同定した(実施例30、本願発明で特定される位置に当審が下線を付した。)。
(オ)前記(ア)に記載するエピトープビニングでビン1に属する21B12、ビン3に属する31H4、ビン5に属する31A4、ビン2に属する12H11、及びビン4に属する3C4の抗PCSK9抗体について、アルギニン/グルタミン酸スキャニングによるエピトープマッピングを行った(実施例39の【0497】~【0500】)。以下の表39.1に示される、PCSK9の一アミノ酸をアルギニン又はグルタミン酸に変異させた種々のPCSK9バリアントを準備した上で、抗PCSK9抗体のPCSK9野生型とそのバリアントへの結合を同じウェル中で比較するビーズをベースとした多重化アッセイを行い、得られた結合データに対してフィッティングされたロジスティックモデルに基づきEC50を求め、変異型結合曲線と野生型結合曲線のEC50を比較した(実施例39の【0503】~【0516】)。その結果として、以下の表39.5において、21B12では、R207E、D208Rの各バリアントでEC50がシフトすること(D208RはEC50を減少させることも脚注で記載されている。)、31H4では、R185EのバリアントでEC50がシフトすること、31A4では、R439E、E513R、V538R、E539Rの各バリアントでEC50がシフトすること、12H11では、T132R、S351R、A390R、A413Rの各バリアントでEC50がシフトすること、3C4では、E582RのバリアントでEC50がシフトすることを示した(実施例39の【0517】~【0522】、本願発明で特定される位置に当審が下線を付した。)。
[図:0001433371000002.jpg]
[図:0001433371000003.jpg]
(2)判断
ア 本願発明
本願発明は、前記第2に示すとおりのものであって、「単離されたモノクローナル抗体」という物の発明が、次のとおりの「(a)PCSK9タンパク質及びその特定のバリアントへの結合のEC50の相違」及び「(b)PCSK9とLDLR間の相互作用の中和」という二つの性質によって特定されている。
(a)PCSK9タンパク質及びその特定のバリアントへの結合のEC50の相違に関する発明特定事項
「第一の様式で配列番号303のPCSK9タンパク質に結合する単離されたモノクローナル抗体であって、第二の様式でPCSK9のバリアントに結合し」、「前記PCSK9バリアントは、配列番号303の207、208、185、181、439、513、538、539、132、351、390、413、582、162、164、167、123、129、311、313、337、519、521及び554を含む又はこれらからなる群から選択される位置に1つの点変異を有し、前記第一の様式が第一のEC50を含み、前記第二の様式は第二のEC50を含み、並びに第一の様式に対する値は第二の様式に対する値と異なる」
(b)PCSK9とLDLR間の相互作用の中和に関する発明特定事項
「前記単離されたモノクローナル抗体はPCSK9とLDLR間の相互作用を中和し」
イ 実施可能要件の判断
物の発明における発明の「実施」とは、その物の生産、使用等をする行為をいう(特許法第2条第3項第1号)から、特許法第36条第4項第1号の「その実施をすることができる」(実施可能要件)とは、その物を生産することができ、かつ、その物を使用できることである。したがって、物の発明については、発明の詳細な説明の記載又はその示唆及び出願当時の技術常識に基づき、当業者が過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産することができ、かつ、その物を使用できるのであれば、上記の実施可能要件を満たすということができる。
本願発明は、前記アのとおり、「(a)PCSK9タンパク質及びその特定のバリアントへの結合のEC50の相違」及び「(b)PCSK9とLDLR間の相互作用の中和」という、2つの性質によって特定された「モノクローナル抗体」という物の発明であるから、実施可能要件を満たすためには、(a)及び(b)の性質を兼ね備えた「モノクローナル抗体」という本願発明の全体について、発明の詳細な説明において、本願出願日当時の技術常識にも基づき、当業者が過度の試行錯誤を要することなく生産することができるように記載されていることが必要である。以下、この観点から検討する。
(ア)発明の詳細な説明における抗PCSK9抗体の生産に関する記載
発明の詳細な説明には、抗PCSK9抗体の生産について、一般には、ヒト免疫グロブリン遺伝子を含有するトランスジェニックマウスをPCSK9で免疫化し、PCSK9に対する抗体を発現する当該マウスからリンパ細胞を得て、当該リンパ細胞から不死化ハイブリドーマ細胞株を調製し、当該ハイブリドーマ細胞株をスクリーニング、選択して、PCSK9に対して特異的な抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を取得できること(前記(1)ア(キ)の【0212】)、他の手段としては、単一のFab又はFv抗体断片をコードするポリヌクレオチドを有し、これをファージ粒子の表面上に発現させたファージを用いる、ファージディスプレイ技術を使用でき、当該技術においては、ヒト抗体遺伝子の完全なレパートリーが末梢血リンパ球からヒトV遺伝子をクローニングすることで作製されること(前記(1)ア(キ)の【0210】)が記載されている。
抗PCSK9抗体とPCSK9タンパク質又はPCSK9バリアントとの結合のEC50については、抗PCSK9抗体がPCSK9タンパク質と比較してPCSK9バリアントとの間で結合能力の変化が生じるときにEC50の変化も生じること、結合の著しい変化をもたらすバリアントにおける変異は、変異を受けたPCSK9残基が抗PCSK9抗体との結合において関与、近接することを示唆すること(前記(1)ア(ク)の【0250】)が記載されている。
また、抗PCSK9抗体によるPCSK9とLDLR間の相互作用の中和については、「「中和抗原結合タンパク質」又は「中和抗体」という用語は、リガンドに結合し、そのリガンドの生物学的効果を妨げ、又は低下させる、それぞれ、抗原結合タンパク質又は抗体を表す。これは、例えば、リガンド上の結合部位を直接封鎖することによって、又はリガンドに結合し、間接的な手段(リガンド中の構造的又はエネルギー的変化など)を通じて、リガンドの結合能を変化させることによって行うことができる。・・・PCSK9抗原結合タンパク質の場合には、このような中和分子は、PCSK9がLDLRを結合する能力を低減させることができる。幾つかの実施形態において、競合アッセイを介して、中和能力を性質決定し、及び/又は記載する。幾つかの実施形態において、中和能力は、IC50又はEC50値の観点で記載される。」(前記(1)ア(オ)の【0138】)と記載されている。
そして、発明の詳細な説明の実施例においては、ヒト免疫グロブリン遺伝子を含有するXenoMouse(R)マウスに対してPCSK9を抗原として免疫化することで抗PCSK9抗体を作製し、PCSK9とLDLRの結合を遮断・阻害する抗体を選択した後、エピトープビニングによるグループ分けを行ったこと(前記(1)イ(ア))、エピトープビニングの結果、異なるビンに属することとなった21B12、31H4、31A4、12H11、及び3C4について、PCSK9の一アミノ酸をアルギニン又はグルタミン酸に変異させた種々のPCSK9バリアントを用いたアルギニン/グルタミン酸スキャンニングを行い、野生型とバリアントでEC50がシフトする残基を同定したこと(前記(1)イ(オ))が具体的に記載されている。
以上のとおり、発明の詳細な説明には、PCSK9とLDLR間の相互作用を中和する抗PCSK9抗体をスクリーニングにより得ること、得られた抗PCSK9抗体について、野生型PCSK9への結合のEC50と一アミノ酸を変異させた種々のPCSK9バリアントへの結合のEC50とを測定して、それらの値を比較することが記載されているに過ぎない。すなわち、PCSK9とLDLR間の相互作用を中和する抗PCSK9抗体について、PCSK9タンパク質及びそのバリアントへの結合のEC50の測定をすることにより、どのようなバリアントにおいてEC50の相違を有するかを調べる方法が記載されるにとどまっている。PCSK9とLDLR間の相互作用を中和する抗PCSK9抗体であって、PCSK9タンパク質及びその「特定の」バリアントへの結合のEC50の相違を生じるものをどのように作製するかについて何ら技術的な情報が記載されていない以上、発明の詳細な説明に、ある抗PCSK9抗体が(a)及び(b)の両性質を兼ね備えているか否かを調べる方法が記載されているだけでは、(a)及び(b)の両性質を兼ね備えた抗体の生産方法が記載されているとは認めることができない。
(イ)発明の詳細な説明において具体的に示されている本願発明に属する抗体
発明の詳細な説明において、PCSK9バリアントに対して野生型と比較して、抗PCSK9抗体との結合のEC50がシフトするPCSK9残基を同定したことを具体的に開示する記載は、実施例39(前記(1)イ(オ))のみであるところ、前記アに示す「(a)PCSK9タンパク質及びその特定のバリアントへの結合のEC50の相違」に関する発明特定事項を満たすことが具体的に実証されている抗PCSK9抗体は、表39.5に記載される21B12、31H4、31A4、12H11、及び3C4の五つのみである。
そして、これら五つの抗体は、PCSK9とLDLRの結合を遮断・阻害する抗体を選択することで同定されたものであるから、基本的には、前記アに示す「(b)PCSK9とLDLR間の相互作用の中和」に関する発明特定事項を満たすものと推認できるにもかかわらず、発明の詳細な説明には、「幾つかの実施形態において、ABP27B2、13H1、13B5及び3C4は、非中和ABPであり、3B6、9C9及び31A4は弱い中和物質であり、表2中の残りのABPは強い中和物質である。」(前記(1)ア(オ)の【0138】、下線は当審が付した。)と記載され、3C4は非中和ABPであると明記されている。よって、3C4は、「(b)PCSK9とLDLR間の相互作用の中和」の性質は有していないといえるから、3C4を除く21B12、31H4、31A4、及び12H11の四つが「(a)PCSK9タンパク質及びその特定のバリアントへの結合のEC50の相違」及び「(b)PCSK9とLDLR間の相互作用の中和」の両性質を兼ね備えたものと認める。
ここで、これら四つの抗体は、それぞれ別のビンに属する抗体であり、それぞれのビンに属する抗体としてこれら四つの抗体以外の抗体も記載されている(前記(1)イ(ア)の表37.1)。しかし、ビンは、競合ELISAに基づく抗体間の競合関係によるグループ分けであり、同じビンに属する抗体であっても競合が立体障害による場合など、必ずしも同一あるいは近接したエピトープを認識するとはいえないのが本願出願日当時の技術常識である。たとえ、エピトープが近接した抗体同士であっても、野生型PCSK9への結合のEC50とアミノ酸変異を有するPCSK9バリアントへの結合のEC50までもが同様であるかどうかは、実験的に調べてみなくてはわからないことである。したがって、上記四つの抗体のそれぞれと同じビンに属するとしても、上記四つの抗体のように、「(a)PCSK9タンパク質及びその特定のバリアントへの結合のEC50の相違」及び「(b)PCSK9とLDLR間の相互作用の中和」の両性質を兼ね備えているか否かは不明である。
このとおり、実施例39以外の記載や本願出願日当時の技術常識を参酌しても、発明の詳細な説明において具体的に示されている本願発明に属する抗体は、21B12、31H4、31A4、及び12H11の四つのみである。
(ウ)発明の詳細な説明の記載及び本願出願日当時の技術常識に基づき、実施可能要件を満たすといえる本願発明の範囲
本願出願日当時、部位特異的アミノ酸改変など、タンパク質のバリアントの製造方法は知られており、あるモノクローナル抗体について、それが認識するエピトープを変化させないようなごくわずかなアミノ酸配列改変を施した抗体バリアントを生産することはできたと認められるから、本願発明の範囲において、前記(イ)に示す21B12、31H4、31A4、及び12H11の四つの抗体に加えて、これら抗体と極めて近い構造を有し、その結果「(a)PCSK9タンパク質及びその特定のバリアントへの結合のEC50の相違」及び「(b)PCSK9とLDLR間の相互作用の中和」の両性質を兼ね備えた抗体についても、当業者が過度の試行錯誤を要することなく生産できるものであり、実施可能要件を満たす部分と認められる。
(エ)本願発明の範囲で実施可能要件を満たさない部分
しかしながら、本願発明は、例えば次のa~gの点で、明らかに上記(ウ)で認めた部分を大きく超えるものであるから、実施可能要件を満たさない。
a 本願発明の「(a)PCSK9タンパク質及びその特定のバリアントへの結合のEC50の相違」に関する発明特定事項には、発明の詳細な説明の表39.5(前記(1)イ(オ))の「EC50シフトのヒット」で示されていないアミノ酸位置である、「配列番号303の」「181」、「162、164、167、123、129、311、313、337、519、521及び554」「から選択される位置」によって特定される事項が含まれる。
ここで、「配列番号303の」「181」の「位置」は、発明の詳細な説明の実施例29において、31H4とPCSK9が結合する際に、5ないし8オングストローム内に存在するPCSK9残基として示されているものである(前記(1)イ(ウ))が、当該アミノ酸位置の変異とEC50シフトの関係が何ら示されていないから、「配列番号303の」「181」の「位置」を選択した場合の「(a)PCSK9タンパク質及びその特定のバリアントへの結合のEC50の相違」の性質を満たす抗体が、発明の詳細な説明において何ら具体的に記載されていないといえる。
また、「配列番号303の」「162、164、167、123、129、311、313、337、519、521及び554」「から選択される位置」は、発明の詳細な説明の表39.5の「Bmaxシフトのヒット」で示されているが、同一の抗体であってもEC50シフトをもたらすアミノ酸の変異位置とBmaxシフトをもたらすアミノ酸の変異位置が異なることは、当該表39.5の結果から明らかである。すなわち、Bmaxをシフトさせたからといって、必ずしもEC50シフトをシフトさせるとは認められないのだから、「162、164、167、123、129、311、313、337、519、521及び554」「から選択される位置」を選択した場合の「(a)PCSK9タンパク質及びその特定のバリアントへの結合のEC50の相違」の性質を満たす抗体が、存在するのかどうかさえ、明らかでない。
そして、抗体の抗原への結合性は、抗体の抗原結合領域の立体構造により決定付けられるものであるところ、本願出願日当時、その結合特異性や結合力価を所望のものに変更するように抗原結合領域の立体構造を自由に設計することができるとはいえないのが技術常識(以下、「技術常識A」という。)であったことに鑑みると、「配列番号303の」「181」の「位置」、又は「配列番号303の」「162、164、167、123、129、311、313、337、519、521及び554」「から選択される位置」で特定される本願発明のモノクローナル抗体を当業者が生産できるとは認められない。
したがって、本願発明には、発明の詳細な説明に、本願発明の「(a)PCSK9タンパク質及びその特定のバリアントへの結合のEC50の相違」の性質を満たすことが理解できるように記載されている抗体以外の抗体が含まれているから、発明の詳細な説明に当業者が実施できる程度に記載された範囲を超えている。
b 本願発明の「(a)PCSK9タンパク質及びその特定のバリアントへの結合のEC50の相違」に関する発明特定事項では、点変異を有するアミノ酸位置が特定されているが、どのアミノ酸に変異させるかは具体的に特定されていない。例えば発明の詳細な説明の表39.5の「EC50シフトのヒット」で示されているアミノ酸変異である「R207E」と対応して、本願発明では「配列番号303の」「207」の「位置」と特定される事項が含まれるものの、「R207E」に限らず「R207」を任意のアミノ酸に変異させる場合も含んでいる。そして、任意のアミノ酸に変異させた場合の「(a)PCSK9タンパク質及びその特定のバリアントへの結合のEC50の相違」の性質を満たすモノクローナル抗体は、発明の詳細な説明において何ら具体的に記載されていない。
そして、抗体の抗原バリアントへの結合性は、抗原の変異位置が同じであっても、変異に用いられるアミノ酸の種類によって大きく異なり得ることが本願出願日当時の技術常識であったこと、及び上記技術常識Aにも鑑みると、PCSK9バリアントが任意のアミノ酸に変異させる場合を含む本願発明のモノクローナル抗体を当業者が生産できるとは認められない。
したがって、本願発明には、発明の詳細な説明に、本願発明の「(a)PCSK9タンパク質及びその特定のバリアントへの結合のEC50の相違」の性質を満たすことが理解できるように記載されている抗体以外の抗体が含まれているから、発明の詳細な説明に当業者が実施できる程度に記載された範囲を超えている。
c 3C4は、前記(イ)に示すとおり発明の詳細な説明において非中和抗体と明記されているものであって、本願発明の「(b)PCSK9とLDLR間の相互作用の中和」に関する発明特定事項を満たすものではないにも関わらず、「(a)PCSK9タンパク質及びその特定のバリアントへの結合のEC50の相違」に関する発明特定事項には、発明の詳細な説明の表39.5(前記(1)イ(オ))の「EC50シフトのヒット」の「3C4」部分で示される「配列番号303の」「582」「から選択される位置」によって特定される事項が含まれる。(b)の発明特定事項を満たさない抗体についてのEC50シフトの実験で同定されたアミノ酸位置が、「(a)PCSK9タンパク質及びその特定のバリアントへの結合のEC50の相違」に関する発明特定事項のアミノ酸位置に含まれている。そして、上記技術常識Aにも鑑みると、「配列番号303の」「582」「から選択される位置」で特定される本願発明のモノクローナル抗体を当業者が生産できるとは認められない。
したがって、本願発明には、発明の詳細な説明に、本願発明の「(a)PCSK9タンパク質及びその特定のバリアントへの結合のEC50の相違」及び「(b)PCSK9とLDLR間の相互作用の中和」の両性質を満たすことが理解できるように記載されている抗体以外の抗体が含まれているから、発明の詳細な説明に当業者が実施できる程度に記載された範囲を超えている。
d 本願発明の「(a)PCSK9タンパク質への結合のEC50に関する発明特定事項」には、「配列番号303の207、・・・、521及び554を含む」「群から選択される位置」(下線は当審が付した。)によって特定される事項が含まれる。「配列番号303の207、・・・、521及び554を含む」「群」とは、配列番号303の全ての位置からなる群の場合もあるから、当該特定には、配列番号303の任意のアミノ酸位置によって特定される事項が含まれており、これら任意のアミノ酸位置には、EC50シフトに限らず、Bmaxシフト、抗PCSK9抗体と近接するPCSK9残基に関する実験データや情報が発明の詳細な説明に何ら開示されていないアミノ酸位置が多数含まれる。しかしながら、PCSK9に関して任意の位置でアミノ酸を変異させた場合の「(a)PCSK9タンパク質及びその特定のバリアントへの結合のEC50の相違」の性質を満たすモノクローナル抗体は、発明の詳細な説明において何ら具体的に記載されていない。そして、上記技術常識Aにも鑑みると、「配列番号303の207、・・・、521及び554を含む」「群から選択される位置」で特定される本願発明のモノクローナル抗体を当業者が生産できるとは認められない。
したがって、本願発明には、発明の詳細な説明に、本願発明の「(a)PCSK9タンパク質及びその特定のバリアントへの結合のEC50の相違」の性質を満たすことが理解できるように記載されている抗体以外の抗体が含まれているから、発明の詳細な説明に当業者が実施できる程度に記載された範囲を超えている。
e ある抗原に対するモノクローナル抗体について、当該抗原の結合部位が一部重なる、すなわちエピトープが一部重なる別のモノクローナル抗体との間で、抗原結合領域の構造が類似しており同様の結合性を示すとは限らないことが本願出願日当時の技術常識であったから、例えば発明の詳細な説明の表39.5に示される「R207」又は「D208」における変異によってEC50シフトが引き起こされる21B12以外の抗体について、当該抗体が21B12と抗原結合領域の構造が類似し、同様の結合性を示すとは限らない。すなわち、「(a)PCSK9タンパク質及びその特定のバリアントへの結合のEC50の相違」に関する発明特定事項において、同一のアミノ酸位置を選択する場合であっても、当該アミノ酸位置でEC50シフトが生じることが実証された抗体以外の抗体まで含むように本願発明は特定されている。そして、上記技術常識Aにも鑑みると、このように特定される本願発明のモノクローナル抗体を当業者が生産できるとは認められない。
したがって、本願発明には、発明の詳細な説明に、本願発明の「(a)PCSK9タンパク質及びその特定のバリアントへの結合のEC50の相違」の性質を満たすことが理解できるように記載されている抗体以外の抗体が含まれているから、発明の詳細な説明に当業者が実施できる程度に記載された範囲を超えている。
f タンパク質における点変異は、当該点変異の位置における立体構造を変化させるだけでなく、それ以外の部分の立体構造をも変化させる場合があることが本願出願日当時の技術常識であったから、例えば「第一の様式で配列番号303のPCSK9タンパク質に結合する単離されたモノクローナル抗体であって、第二の様式でPCSK9のバリアントに結合し」、「前記PCSK9バリアントは、配列番号303の207」の「位置に1つの点変異を有し、前記第一の様式が第一のEC50を含み、前記第二の様式は第二のEC50を含み、並びに第一の様式に対する値は第二の様式に対する値と異なる」(下線は当審が付した。)抗PCSK9抗体は、必ずしも配列番号303の207のアミノ酸に結合する抗体のみならず、207のアミノ酸が変異することによって構造的に影響を受けるアミノ酸に結合する抗体を含み得る。すなわち、「(a)PCSK9タンパク質及びその特定のバリアントへの結合のEC50の相違」に関する発明特定事項で特定されるアミノ酸位置には必ずしも結合しない抗体まで含むように本願発明は特定されていることとなる。
したがって、本願発明には、発明の詳細な説明に、本願発明の「(a)PCSK9タンパク質及びその特定のバリアントへの結合のEC50の相違」の性質を満たすことが理解できるように記載されている抗体以外の抗体が含まれているから、発明の詳細な説明に当業者が実施できる程度に記載された範囲を超えている。
g ある抗PCSK9抗体が(a)及び(b)の両性質を兼ね備えているか否かを調べる方法が記載されているだけでは、(a)及び(b)の両性質を兼ね備えた抗体の生産方法が記載されているとは認めることができないことは、前記(ア)で述べたとおりであるが、発明の詳細な説明は、当業者が抗PCSK9抗体をスクリーニングすることで過度の負担なく本願発明の抗体を得ることができる程度に記載されていないことについて、念のため指摘する。
前記(ア)に示す発明の詳細な説明の開示内容、及び所望の結合活性や中和活性を有するモノクローナル抗体を作製するためには、一般的にこれら活性を網羅的に調べるスクリーニングを行う必要があることに鑑みると、抗PCSK9抗体の生産に関するこれら広範囲の抗体を生産するためには、マウスに対してPCSK9を抗原として免疫化する工程、前記工程で得られる抗PCSK9抗体群から、PCSK9とLDLR間の相互作用を中和するものを選択する工程、本願発明で特定されるアミノ酸位置においてPCSK9を他の任意のアミノ酸に変異させた種々のPCSK9バリアントを準備した上で、これらバリアントに対する結合がPCSK9野生型に対する結合と比較してEC50の点で変化する抗体を選択する工程を含む手順を繰り返し実施する必要があるが、これは、当業者にとって過度の負担を要することである。
特に上記の「本願発明で特定されるアミノ酸位置においてPCSK9を他の任意のアミノ酸に変異させた種々のPCSK9バリアントを準備した上で、これらバリアントに対する結合がPCSK9野生型に対する結合と比較してEC50の点で変化する抗体を選択する工程」においては、当該「種々のPCSK9バリアント」として、本願発明で特定されるアミノ酸位置において、野生型以外の様々なアミノ酸に変異させた、数多のバリアント、すなわち、天然アミノ酸に置換すると仮定したとしても、24箇所(「207、208、185・・・519、521及び554」の数)の各位置での変異アミノ酸の19個(タンパク質を構成する天然アミノ酸の数から野生型を除いた数)を掛け合わせた456個ものバリアントを調製する必要があり、スクリーニング対象となる膨大な抗体群の一つ一つについて、これらバリアントと野生型に対するEC50を算出して比較する必要がある。
しかも、上記dに記載するように、本願発明は、「配列番号303の207、・・・、521及び554を含む」「群から選択される位置」(下線は当審が付した。)という場合も含み、「配列番号303の207、・・・、521及び554を含む」「群」とは、配列番号303の全てのアミノ酸位置を意味すると解されるから、本願発明は、配列番号303の任意のアミノ酸位置に点変異を有するバリアントにより「(a)PCSK9タンパク質及びその特定のバリアントへの結合のEC50の相違」を特定した場合も含んでいる。この場合は「種々のPCSK9バリアント」の変異箇所は上記24箇所ではなく、配列番号303に示される680のアミノ酸(残基)からなるアミノ酸配列の全ての箇所において変異するバリアントを含むのだから、680箇所の全ての位置での変異を有する(天然アミノ酸に限ったとしても)12,920個ものバリアントを調製し、スクリーニング対象となる膨大な抗体群の一つ一つについて、これらバリアントと野生型に対するEC50を算出して比較する必要がある。これは、当業者といえども、過度な負担を強いられる作業である。
また、発明の詳細な説明において、PCSK9とLDLR間の相互作用を中和するものを選択して得られた3C4が、実際には中和活性を有しない抗PCSK9抗体であったと記載されている(前記(1)ア(オ)の【0138】)ことからしても、スクリーニング対象となる膨大な抗体群から、PCSK9とLDLR間の相互作用を中和するものを網羅的に選択したとしても、当該アッセイの精度やその後の培養工程でのハイブリドーマ株の性質の変化から、選択された抗体が中和活性を有さなくなることもあるから、網羅的なアッセイによって絞られた各抗体について、再度個別に中和活性を有することを確認する負担も必要となる。
(オ)小括
以上のとおり、本願発明は、「(a)PCSK9タンパク質及びその特定のバリアントへの結合のEC50の相違」及び「(b)PCSK9とLDLR間の相互作用の中和」の両性質を兼ね備えた「モノクローナル抗体」という本願発明の全体について、発明の詳細な説明において、本願出願日当時の技術常識にも基づき、当業者が過度の試行錯誤を要することなく、その全体について生産することができるように記載されているとは認められず、実施可能要件を満たさない。
(3)請求人の主張
請求人は、令和7日6月3日提出の意見書において、以下の点から、本願発明は実施可能要件、及びサポート要件を満たすものであることを主張している。
・発明の詳細な説明におけるEC50又はBmaxの変化に係る開示について、EC50は、野生型抗原と変異型抗原に対する抗体の結合曲線間の比較を可能にする結合曲線の中点の測定値であり、Bmaxは、曲線フィッティングと生のデータポイントからの最大シグナルの測定値であり、部位指定変異導入によるエピトープマッピングについて記載する参考文献1(METHODS: Companion to Methods in Enzymology 9, 508-515 (1996))には、野生型抗原と変異型抗原に対する結合曲線の変化を比較して抗体の結合に影響を与える変異を調べるという同様のアプローチが示されている。
当該主張について検討する。
抗体のエピトープマッピングにおいて、野生型抗原と変異型抗原に対する抗体の結合性の変化を分析する手法が用いられていることは、提示された参考文献1も参酌した上で把握できる一方、当該手法によって抗体の結合性の変化を生じるアミノ酸の変異位置が同定された後、当該抗体と抗原結合領域の構造及び結合性が類似した抗体以外の抗体であって、同定された位置の任意のアミノ酸変異によって結合性の変化を生じる抗体を当業者が過度の試行錯誤なく生産できることの根拠は何ら示されていない。
また、抗体の抗原に対する結合性が、野生型と一アミノ酸変異を有するバリアントとの間で変化するような変異箇所が同定されたとしても、前記(2)イ(エ)fで述べるとおり、タンパク質における点変異は、当該点変異の位置における立体構造を変化させるだけでなく、それ以外の部分の立体構造をも変化させる場合があることが本願出願日当時の技術常識であり、変異箇所以外に結合する抗体も当該変異に基づく立体構造の変化によって結合性が変化することに鑑みると、結合性が変化するアミノ酸位置の同定によって、抗体の抗原結合箇所に関する示唆が与えられるとしても、その同定には至らないといえる。そして、発明の詳細な説明の表39.5をみると、同一の抗体であっても、EC50シフトをもたらすアミノ酸の変異位置とBmaxシフトをもたらすアミノ酸の変異位置が異なることを把握できるから、これらの測定のみをもって、抗体の抗原結合箇所、すなわちエピトープの同定に至らないことは明らかである。
そうすると、前記(2)イ(エ)で述べるとおり、発明の詳細な説明に具体的に開示された抗体以外の極めて広範囲の抗体を包含する本願発明について、当審の判断を覆す事情は見当たらず、請求人の上記主張は採用できない。
2 理由2(サポート要件)について
(1)本願明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明には、前記1(1)に示すとおりの事項が記載されている。
(2)判断
ア 本願発明
本願発明は、前記1(2)アに示すとおり、「(a)PCSK9タンパク質及びその特定のバリアントへの結合のEC50の相違」及び「(b)PCSK9とLDLR間の相互作用の中和」という、2つの性質によって特定されているものである。
イ 本願発明が解決しようとする課題
本願発明の「前記単離されたモノクローナル抗体はPCSK9とLDLR間の相互作用を中和し」という発明特定事項について、発明の詳細な説明には、「幾つかの態様において、本発明は、PCSK9に結合し、LDLRに対するPCSK9の低密度リポタンパク質受容体(LDLR)低下効果を低減させる中和抗体を含む。」(前記1(1)ア(イ)の【0038】)、「幾つかの実施形態において、本明細書中に提供されている抗原結合タンパク質は、PCSK9とLDLR間の相互作用を妨害し、遮断し、低下させ、又は調節することができる。このような抗原結合タンパク質は、「中和」と表される。・・・上記中和物質は何れも、対象中に存在している遊離のLDLRのより大きな量をもたらすことができ、これにより、LDLに結合しているより多くのLDLRがもたらされる(これにより、対象中のLDLの量を低下させる。)。続いて、これは、対象中に存在する血清コレステロールの量の低下をもたらす。」(前記1(1)ア(カ)の【0155】)、「ある種の実施形態において、PCSK9に対する中和的抗原結合タンパク質は、少なくとも1つのPCSK9活性(例えば、LDLRへの結合)を調節するために使用される。このような方法は、上昇した血清コレステロールレベルと関連する、又は上昇したコレステロールレベルが関連する疾患を治療し、及び/又は予防し、及び/又は疾患のリスクを低減することができる。」(前記1(1)ア(ケ)の【0270】)等と記載されている。
以上より、本願発明が解決しようとする課題(以下、単に「本願発明の課題」ともいう。)は、PCSK9とLDLRの結合を遮断し、LDLRに対するPCSK9の低密度リポタンパク質受容体(LDLR)低下効果を低減させる中和抗体であって、上昇した血清コレステロールレベルと関連する、又は上昇したコレステロールレベルが関連する疾患を治療し、及び/又は予防し、及び/又は疾患のリスクを低減することができる、PCSK9に結合するモノクローナル抗体を提供すること、と認められる。
ウ サポート要件の判断
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が本願出願日当時の技術常識等に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
この点、前記1(2)イに記載したとおり、発明の詳細な説明は、本願発明をその全体について当業者が実施できる程度に記載されていない。このことは、言い換えれば、本願発明には、発明の詳細な説明に課題が解決できると当業者が認識できるように記載されていない部分が多く含まれる、ということである。
そうすると、前記1(2)アに示す「(a)PCSK9タンパク質及びその特定のバリアントへの結合のEC50の相違」及び「(b)PCSK9とLDLR間の相互作用の中和」という二つの性質で特定される本願発明の全体については、発明の詳細な説明の記載、及び本願出願日当時の技術常識によっても、PCSK9とLDLRの結合を遮断し、LDLRに対するPCSK9の低密度リポタンパク質受容体(LDLR)低下効果を低減させる中和活性を示し、上記課題を解決できると当業者が認識できるとはいえない。
よって、本願発明は、サポート要件を満たさない。
請求人の主張を採用できないことは、前記1(3)に示したとおりである。
3 理由1(明確性)について
(1)明確性要件の判断
特許法第36条第6項第2号は、特許請求の範囲の記載に関し、特許を受けようとする発明が明確でなければならない旨規定する。そして、特許を受けようとする発明が明確か否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の本願出願日当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断すべきである。
本願発明の「単離されたモノクローナル抗体」は、前記1(2)アに示すとおり、「(a)PCSK9タンパク質及びその特定のバリアントへの結合のEC50の相違」及び「(b)PCSK9とLDLR間の相互作用の中和」という二つの性質のみによって特定されているものであって、構造に関する発明特定事項は含んでいない。
そして、前記1(2)イ(ア)に記載したとおり、発明の詳細な説明には、本願発明の抗体を生産する方法自体は記載されておらず、ある抗PCSK9抗体が「(a)PCSK9タンパク質及びその特定のバリアントへの結合のEC50の相違」及び「(b)PCSK9とLDLR間の相互作用の中和」の性質を兼ね備えているか否かを調べる方法が記載されるにとどまり、実施例においては、当該方法により、本願発明に属することが見いだされた抗体として、21B12、31H4、31A4及び12H11という四つが記載されているのみである。このような発明の詳細な説明の記載が、本願発明の範囲と比較して大きく不足したものであることは前記1(2)、2(2)で述べたとおりであり、このことは、言い換えれば、発明の詳細な説明の記載を参酌しても、本願発明の外縁(本願発明の範囲がどこまで広がっているか)が著しく不明確であるということになる。
このように発明の外縁(発明の範囲がどこまで広がっているか)が著しく不明確であることは、第三者に不測の不利益を及ぼすことに他ならない。
したがって、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の本願出願日当時における技術常識を基礎としても、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるというよりほかない。
(2)請求人の主張
請求人は、令和7日6月3日提出の意見書において、以下の点から、本願発明は明確であることを主張している。
・アルギニン/グルタミン酸スキャニング(実施例39)に基づく、野生型PCSK9と比較して結合性が変化するPCSK9バリアントの点変異箇所を示す結果(表39.5)は、これら変異箇所が各抗体とPCSK9の相互作用部位であることを示している。
しかしながら、前記1(2)イ(エ)fに記載する事項に基づき、EC50シフトを引き起こすアミノ酸変異位置が必ずしもPCSK9に対する抗体の相互作用部位とはいえないし、仮に当該アミノ酸変異位置が相互作用部位であるといえるとしても、発明の詳細な説明において特定の抗体の分析で明らかになった性質を反映する本願発明は、やはり当業者にとって、どのように生産するか不明な部分、又はどのような構造、抗原に対する結合性を有する抗体を含むか不明な部分を広く包含することに何ら変わりがないから、請求人の上記主張は採用できない。
第5 むすび
以上のとおり、本願は、請求項1に係る発明について、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、また、特許請求の範囲の記載が同条第6項第1号及び第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、その余について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-003462