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特許拒絶査定不服審判

2024-010989

薬物送達デバイスのプラットフォーム式組み立てプロセス

審判番号
2024-010989
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2021-520190
請求日
2024年07月03日
審決日
2026年03月03日
公報発行日
2026年08月28日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】アムジエン・インコーポレーテツド
  • 【請求人代理人】弁理士法人川口國際特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 栗山 卓也
  • 審判官 太田 良隆
  • 審判官 石川 薫
分類
P18 .121-WZ (A61M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

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特願2021-520190「薬物送達デバイスのプラットフォーム式組み立てプロセス」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 4月23日国際公開、WO2020/081480、令和 4年 1月13日国内公表、特表2022-504805〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2019年(令和 元年)10月15日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2018年10月15日 米国(US))を国際出願日とする出願であって、その後の手続の概略は、以下のとおりである。 令和 5年 8月14日付け:拒絶理由通知書 令和 5年11月21日 :意見書、手続補正書の提出 令和 6年 2月28日付け:拒絶査定 令和 6年 7月 3日 :審判請求書、手続補正書の提出 令和 6年11月 7日 :上申書の提出 令和 7年 9月25日付け:拒絶理由通知書 令和 7年12月18日 :意見書、手続補正書の提出(以下、この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。) 第2 本願発明 本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。 「プラットフォーム式薬物送達デバイスを組み立てる方法であって、 前記薬物送達デバイスのベース構成要素の組を提供することと、 薬物粘度又は薬物量の少なくとも1つに基づき、後部サブアセンブリの群から前記薬物送達デバイスの後部サブアセンブリを特定することであって、前記後部サブアセンブリの群内の各後部サブアセンブリは、複数のトルクばねから選択されたトルクばね形態の異なる駆動機構を含み、前記複数のトルクばねのそれぞれのトルクばねは、異なる特性を有する、当該特定することと、 前記特定された後部サブアセンブリを選択することと、 薬物粘度又は薬物量の少なくとも1つに基づき、前部サブアセンブリの群から前記薬物送達デバイスの前部サブアセンブリを特定することと、 前記特定された前部サブアセンブリを選択することと、 前記ベース構成要素の組、前記後部サブアセンブリ及び前記前部サブアセンブリを使用して前記薬物送達デバイスを組み立てることと を含む方法。」 第3 拒絶の理由の概要 令和 7年 9月25日付けで当審が通知した拒絶理由は、概略、次の理由を含むものである。 本願発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 1.特開2013-236675号公報 第4 引用文献の記載及び引用発明 1 引用文献1の記載 引用文献1には、以下の事項が記載されている。 (1) 「【0005】 注射針の有無にかかわらず、注射液をその注射対象に注射する場合、その注射対象者や注射目的に応じて、注射液の種類や量、また、注射液を目的とする部位に送り届けるために該注射液に対してかけるべき荷重の大きさ等、注射に関する条件が変動する。そのため、目的とする条件での注射を実現するために、注射器の構成を当該条件に応じたものとする必要があり、ユーザの利便性が必ずしも良いものとは限らない。」 (2) 「【0012】 ここで、本発明に係る注射器を使って生体に注射目的物質を供給するときには、当該生体の大きさ、年齢、性別などの個体差があり、発現させる効果の違いによって使用される注射目的物質の種類も異なる。また注射対象領域によっても表皮、皮内、皮下、筋肉層などの生体組織における各層の厚さも異なり、それぞれの深さに注射目的物質を到達させるためには、当該注射目的物質に加えるべき荷重も調整する必要がある。そこで、当該注射器においては、注射目的物質を収容する保持部と、そこに収容されている注射目的物質に対して射出エネルギーを付与する駆動部と、注射目的物質の射出が行われるための流路を有するノズル部とが、それぞれ独立して構成されるとともに、それぞれがハウジングに対して独立して装填される。 【0013】 すなわち、注射目的物質を収容する上記保持部においては、その注射目的物質の種類や量を複数準備しておき、また上記駆動部においては、注射目的物質に射出エネルギーを供給するためのエネルギー源として複数の形態を準備しておき、注射目的に応じてそれらを組み合わせて注射器のハウジングに組み込んで使用される。更に、ノズル部についても複数の態様を準備して上記組み合わせに含めることで、注射目的物質の射出の態様(例えば、注射対象領域に対して複数箇所で注射を行う、射出された注射目的物質の流れの直径をどの程度にするか等)も、調整しやすくなる。このように、注射器の各構成部を注射目的に応じて適宜組み合わせることを可能とすることで、本発明に係る注射器では有用性、利便性が向上する。 【0014】 ここで、複数種類の駆動部とは、例えばエネルギー源が火薬やガス発生剤の場合、その量、形状、寸法などが異なるものを複数存在させることであり、加圧ガスをエネルギー源とする場合は、当該ガスの充填量を異ならせることである。さらにエネルギー源がバネである場合、そのばね定数が異なるものを複数存在させることである。また複数の保持部とは、充填される注射目的物質の種類や量などが異なるものが複数存在することを意味する。 【0015】 そして、保持部と駆動部、更にはノズル部を適宜組み合わせてハウジングに対して装填されることで、上記のような注射目的に応じた注射目的物質の多様な射出を容易に実現することができるが、一方で、ハウジングに対する各構成部の装填順序を誤ると注射器が正常に機能しない場合がある。そのような場合には、ユーザが直ちに装填順序の誤りを認識できることが好ましく、それにより注射器の利便性を高めることになる。また、各構成部の装填順序を正しく行うことで、注射器の安定した性能発現につながり、再現性のよい注射が達成できるため好ましいとも言える。」 (3) 「【0030】 図1は、本発明に係る注射器70において、組み立てが概ね完了した状態における、注射器70の概略構成を示す断面図である。また、図2は、注射器70を組み立てるための、その構成部の装填順序を示す図である。注射器70は、図2に示すように、その本体となるハウジング5の内部に、注射器70の構成部である、電源部1、駆動部2、保持部3、ノズル部4が順次装填され、最後に固定リング6によって、これらの構成部がハウジング5に対して固定され、組み立てられることになる。」 (4) 「【0041】 このように、注射器70の構成部を、それぞれ独立して構成することで、ユーザは、注射目的に応じた構成部を選択して、それらを組み合わせて最終的な注射器70を組み立てることができる。例えば、注射液34に掛ける圧力プロファイルを変えて、注射対象物における注射深さを調整できるように、ガス発生剤25の種類や量を異ならせた複数種類の駆動部2を準備することができる。また、注射対象物に射出する注射液34の種類や量を、その注射対象物の状態等に応じて調整できるように(例えば、注射対象物が大人の皮膚構造体である場合と子供の皮膚構造体である場合とでは、投与すべき注射液の量も異なる点を踏まえて、その投与量を調整できるように)、注射液の種類や量を異ならせた複数種類の保持部3を準備することができる。また、注射対象物に応じた好適な注射液34の射出形態を選択できるように、ノズル43の数やそのノズル径等を異ならせた複数種類のノズル部4を準備することができる。そして、ユーザは、自己が行う所定の注射目的を達成するために、一つの駆動部2と、一つの保持部3と、一つのノズル部4とを選択し、図2に示すように各構成部を装填用開口部52を介して、ハウジング5に装填し注射器70が使用できる状態に至らせる。これにより、様々な目的に応じた注射液の射出が容易に実現される。」 (5) 図1~図2「 [図:0001437770000001.jpg] [図:0001437770000002.jpg] 」 2 引用発明 前記1(1)~(4)の特に下線部の記載及び前記1(5)の図面の記載からすれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「注射器70を組み立てる方法であって、 駆動部2においては、注射目的物質に射出エネルギーを供給するためのエネルギー源として複数の形態を準備しておき、エネルギー源がバネである場合、そのばね定数が異なるものを複数存在させ、 保持部3においては、その注射目的物質の種類や量を複数準備しておき、 所定の注射目的を達成するために、駆動部2と、保持部3とを選択し、 駆動部2、保持部3を順次装填し、固定リング6によってハウジング5に対して固定し、組み立てる、方法。」 第5 対比 1 本願発明と引用発明を対比する。 (1) 引用発明は、駆動部2と、保持部3とを選択し、共通のハウジング5及び固定リング6を用いて注射器70を組み立てる方法であるから、当該注射器70はプラットフォーム式であると表現でき、引用発明の「注射器70」は、本願発明の「プラットフォーム式薬物送達デバイス」に相当する。 (2) 引用発明の「駆動部2」は、その機能及び構造からみて、本願発明の「後部サブアセンブリ」に相当する。そして、引用発明の「駆動部2においては、注射目的物質に射出エネルギーを供給するためのエネルギー源として複数の形態を準備しておき」、「駆動部2」「を選択」することは、本願発明の「後部サブアセンブリの群から前記薬物送達デバイスの後部サブアセンブリ」「を選択する」ことに相当する。 (3) 引用発明の「保持部3」は、その機能及び構造からみて、本願発明の「前部サブアセンブリ」に相当する。また、引用発明の「注射目的物質の」「量」は、本願発明の「薬物量」に相当する。そして、引用発明の「保持部3においては、その注射目的物質の種類や量を複数準備しておき」、「所定の注射目的を達成するために、」「保持部3」「を選択」することは、注射目的物質の量に基づき保持部3を選択することを含むから、本願発明の「薬物粘度又は薬物量の少なくとも1つに基づき、前部サブアセンブリの群から前記薬物送達デバイスの前部サブアセンブリ」「を選択する」ことに相当する。 (4) 引用発明の「ハウジング5」及び「固定リング6」は、本願発明の「ベース構成要素の組」に相当する。そして、引用発明の「駆動部2、保持部3を順次装填し、固定リング6によってハウジング5に対して固定し、組み立てる」ことは、本願発明の「前記ベース構成要素の組、前記後部サブアセンブリ及び前記前部サブアセンブリを使用して前記薬物送達デバイスを組み立てること」に相当する。 2 以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 [一致点] プラットフォーム式薬物送達デバイスを組み立てる方法であって、 後部サブアセンブリの群から前記薬物送達デバイスの後部サブアセンブリを選択することと、 薬物粘度又は薬物量の少なくとも1つに基づき、前部サブアセンブリの群から前記薬物送達デバイスの前部サブアセンブリを選択することと、 前記ベース構成要素の組、前記後部サブアセンブリ及び前記前部サブアセンブリを使用して前記薬物送達デバイスを組み立てることと を含む方法。 [相違点1] 本願発明は、「前記薬物送達デバイスのベース構成要素の組を提供する」のに対し、引用発明は、そのように特定されていない点。 [相違点2] 後部サブアセンブリの群から前記薬物送達デバイスの後部サブアセンブリを選択することについて、本願発明は、「薬物粘度又は薬物量の少なくとも1つに基づき、後部サブアセンブリの群から前記薬物送達デバイスの後部サブアセンブリを特定することであって、前記後部サブアセンブリの群内の各後部サブアセンブリは、複数のトルクばねから選択されたトルクばね形態の異なる駆動機構を含み、前記複数のトルクばねのそれぞれのトルクばねは、異なる特性を有する、当該特定することと、前記特定された後部サブアセンブリを選択することと」を含むのに対し、引用発明は、エネルギー源がバネである場合、そのばね定数が異なるものを複数存在させ、所定の注射目的を達成するために、駆動部2を選択する点。 [相違点3] 本願発明は、前部サブアセンブリを「特定」し、「前記特定された前部サブアセンブリを」選択するのに対し、引用発明は、保持部3を選択する点。 第6 判断 1 上記相違点1について、検討する。 引用発明において、駆動部2及び保持部3をハウジング5に対して充填し固定リング6により固定する前に、ハウジング5及び固定リング6を提供する工程があることは、明らかである。 したがって、上記相違点1は実質的な相違点ではない。 2 上記相違点2について、検討する。 引用発明は、「注射液をその注射対象に注射する場合、その注射対象者や注射目的に応じて、注射液の種類や量、また、注射液を目的とする部位に送り届けるために該注射液に対してかけるべき荷重の大きさ等、注射に関する条件が変動する」ことに鑑みたものであり(前記第4の1(1)を参照。)、「駆動部2においては、注射目的物質に射出エネルギーを供給するためのエネルギー源として複数の形態を準備しておき、エネルギー源がバネである場合、そのばね定数が異なるものを複数存在させ」ている。 また、注射器において、トルクばね形態の駆動機構を備えることは、周知技術である(例えば、特表2017-533767号公報(当審が通知した拒絶理由における引用文献3)の段落【0107】、国際公開第2017/064483号の第13ページ第22行~第24行、図6を参照。)。 したがって、引用発明において、上記周知技術に基づいて、駆動部2を、トルクばね形態の駆動機構のものとするとともに、注射対象者や注射目的に応じて注射液の種類や量等の注射に関する条件が変動することに鑑み、注射液の種類に基づく粘度や量に基づき駆動部2を選択するために、駆動部2を特定し、前記特定された駆動部2を選択するようにして、上記相違点2に係る本願発明の事項とすることは、当業者が容易に想到し得た事項である。 3 上記相違点3について、検討する。 引用発明において、保持部3を選択するために、保持部3を特定し、前記特定された保持部3を選択するようにして、上記相違点3に係る本願発明の事項とすることは、当業者が適宜なし得た事項にすぎない。 4 上記相違点1~3を総合的に勘案しても、本願発明の作用効果は、引用発明及び上記周知技術から当業者が予測できる範囲内のものである。 5 請求人は、令和 7年12月18日に提出された意見書において、「引用文献3には、せいぜい、注入対象への注入深さを調整できるように複数の駆動部2を準備することが記載されているだけで、薬物粘度又は薬物量の少なくとも1つに基づいて複数の駆動部2を準備することについては、開示も示唆もされておりません。」と主張するが、前記2のとおり、引用発明において、注射液の種類に基づく粘度や量に基づき駆動部2を選択することは、当業者が容易に想到し得た事項である。なお、上記意見書における「引用文献3」及び「引用文献1」という記載は、それぞれ、当審が通知した拒絶理由における「引用文献1」及び「引用文献3」を指していることが明らかであるから、そのように解した。 6 なお、薬物粘度に基づき後部アセンブリを特定することについて、前記2で指摘した国際公開第2017/064483号(特に第13ページ第22行~第24行、第19ページ第19行~第20行を参照。)には、注射デバイス100が駆動ばね290を有し、駆動ばね290がばね鋼の螺旋状に巻かれたストリップで構成されており、駆動ばね290を薬物粘度に基づき選択することが、記載されており、このことからも、引用発明において、薬物粘度に基づき駆動部2を特定するようにすることは、当業者が容易に想到し得た事項である。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-010989

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