特許拒絶査定不服審判
2024-008046
制御可能な薬物送達システム及び使用方法
- 審判番号
- 2024-008046
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-129187
- 請求日
- 2024年05月15日
- 審決日
- 2026年03月03日
- 公報発行日
- 2026年08月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】アムジエン・インコーポレーテツド
- 【請求人代理人】弁理士法人川口國際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 栗山 卓也
- 審判官 土田 嘉一
- 審判官 佐々木 佳祐
- 分類
- P18 .121-WZ (A61M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-129187「制御可能な薬物送達システム及び使用方法」拒絶査定不服審判事件〔令和4年11月15日出願公開、特開2022-172150〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)6月3日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2014年6月3日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2016-570991号の一部を、令和2年12月23日に新たな特許出願とした特願2020-213220号の一部を、令和4年8月15日に新たな特許出願としたものであって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
令和 4年 9月 1日 :手続補正書及び上申書の提出
令和 5年 8月 7日付け:拒絶理由通知書
令和 5年12月20日 :意見書の提出
令和 6年 1月 9日付け:拒絶査定
令和 6年 5月15日 :審判請求書及び手続補正書の提出
令和 6年 9月 9日 :上申書の提出
令和 7年 7月24日付け:拒絶理由通知書
令和 7年 9月30日 :意見書及び手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1~17に係る発明は、令和7年9月30日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~17に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】
薬物送達装置であって、
貯蔵部と、
前記貯蔵部と流体連通して接続された、または接続されるように構成された近位端と、患者に挿入するように構成された遠位端とを有する送達部材と、
開口部を有するハウジングであって、前記送達部材の遠位端が動作状態で前記開口部を通って延びるように構成されたハウジングと、
前記ハウジングを前記患者の皮膚に取り外し可能に結合するための接着剤と、
前記接着剤の少なくとも一部を覆う取り外し可能なカバーと、
を備え、
前記薬物送達装置は、前記接着剤が露出されたかどうかを判定するように、
薬物の送達が完了したかどうか、またはいつ完了したかを判定するように、
薬物の送達が完了したと判定されると、送達された前記薬物に関する情報を外部コンピューティングデバイスに無線で送信するように、
構成またはプログラムされており、前記情報は、送達された前記薬物の量を含む、薬物送達装置。」
第3 拒絶の理由
令和7年7月24日付けで通知した拒絶理由は、次の理由を含む。
理由2(進歩性)本願発明は、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献3に記載された発明及び周知技術に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献3 米国特許出願公開第2004/0015131号明細書
引用文献4 国際公開第2014/011740号(周知技術を示す文献)
第4 引用文献の記載事項及び引用発明
1 引用文献3の記載事項
引用文献3には、次の事項が記載されている。
なお、「・・・」は省略を示す。また、和訳は当審で作成し、下線は当審で付した。(以下同様)
「[0052] The fluid delivery device 10 of FIGS. 2 through 4 can be used for the delivery of fluids to a person or animal. The types of liquids that can be delivered by the fluid delivery device 10 include, but are not limited to, insulin, antibiotics, nutritional fluids, total parenteral nutrition or TPN, analgesics, morphine, hormones or hormonal drugs, gene therapy drugs, anticoagulants, analgesics, cardiovascular medications, AZT or chemotherapeutics. ・・・
[0053] The flow path 12 of the fluid delivery device 10 generally includes a reservoir 30 for receiving and holding the fluid to be delivered by the device 10, an exit port assembly 70 connected to the reservoir, and a fill port connected to the reservoir. The fluid delivery device 10 also includes a dispenser 40 for causing fluid from the reservoir 30 to flow to the exit port assembly 70.」
(和訳)[0052]図2から図4の流体送達装置10は、人又は動物に流体を送達するために使用される。流体送達装置10によって送達される液体の種類には、インスリン、抗生物質、栄養液、全静脈栄養(TPN)、鎮痛剤、モルヒネ、ホルモン又はホルモン薬、遺伝子治療薬、抗凝固薬、鎮痛剤、心血管薬、AZT又は化学療法薬が含まれるが、これに限定されない。・・・
[0053]流体送達装置10の流路12は、一般的に、装置10によって送達される流体を受け取り保持するためのリザーバ30、リザーバに接続された出口ポートアセンブリ70、及びリザーバに接続された充填ポートを含む。流体送達装置10は、リザーバ30からの流体に出口ポートアセンブリ70への流れを引き起こすためのディスペンサー40も含む。
「[0055] The exit port assembly 70 can include elements to penetrate the skin of the patient, such that the entire volume of the flow path 12 of the fluid delivery device 10 is predetermined. For example, in the exemplary embodiment shown in FIGS. 3a and 3b, a needle-connection tubing terminating in a skin penetrating cannula 72 is provided as an integral part of the exit port assembly 70. The exit port assembly 70 can further be provided with injection means, such as a spring-biased mechanism driven by a shaped memory element, to inject the skin penetrating cannula 72 into a patient when the fluid delivery device 10 is correctly positioned on the patient.」
(和訳)[0055]出口ポートアセンブリ70は、流体送達装置10の流路12の全体積が予め定められるように、患者の皮膚を貫通する要素を含むことができる。例えば、図3a及び図3bに示される実施形態においては、皮膚貫通カニューレ72で終端する針接続チューブが出口ポートアセンブリ70の一体部品として提供される。出口ポートアセンブリ70はさらに、流体送達装置10が患者に正しく配置されたときに皮膚貫通カニューレ72を患者に注射するための、形状記憶要素によって駆動されるバイアスされたばね機構のような、注射手段を備えることができる。
「[0060] Referring also to FIG. 1, the fluid delivery device 10 further includes a wireless receiver 60 connected to the local processor 50 for receiving flow instructions from a separate, remote control device 100 and delivering the flow instructions to the local processor 50. The device 10 also includes a housing 20 containing the exit port assembly 70, the reservoir 30, the dispenser 40, the local processor 50, and the wireless receiver 60.」
(和訳)[0060]図1にも言及すると、流体送達装置10は、別個の遠隔制御装置100からの流量指示を受信し、その流量指示をローカルプロセッサ50に送信するための、ローカルプロセッサ50に接続された無線受信機60をさらに含む。装置10はまた、出口ポートアセンブリ70、リザーバ30、ディスペンサー40、ローカルプロセッサ50、及び無線受信機60を収容するハウジング20を含む。
「[0064] The communication element 60 of the device 10 preferably receives electronic communication from the remote control device 100 using radio frequency or other wireless communication standards and protocols. In a preferred embodiment, the communication element 60 is a two-way communication element, including a receiver and a transmitter, for allowing the fluid delivery device 10 to send information back to the remote control device 100.」
(和訳)[0064]装置10の通信要素60は、好ましくは、ラジオ周波数又は他の無線通信規格及びプロトコルを使用して、遠隔制御装置100から電子通信を受信する。好ましい実施形態において、通信要素60は、流体送達装置10が遠隔制御装置100に情報を送り返すことを可能にするため、受信機と送信機を含む双方向通信要素である。
「[0106] FIGS. 20a and 20b show yet a further exemplary embodiment of a flow restriction system 520 and a fluid delivery device 530 constructed in accordance with the present invention. The system 520 and the fluid delivery device 530 of FIGS. 20a and 20b are similar to the system 200 and the device 10 of FIGS. 2 through 4 such that similar elements have the same reference numeral.
[0107] The fluid delivery device 530 of FIGS. 20 and 20b includes an adhesive layer 22 on a bottom external surface of the housing 20 for securing the device 530 to a patient, and a removable protective layer 26 covering the adhesive layer 22 prior to attachment of the fluid delivery device 530 to a patient. The flow restriction system 520 includes an outlet plug 202 that acts as both a flow restrictor and an air removal filter for the system 520, and is secured to an insertable cannula 72 of the exit port assembly 70 prior to attachment of the fluid delivery device 530 to a patient. The outlet plug 202 is secured to the protective layer 26 of the fluid delivery device 530 so that the plug 202 is also removed from the cannula 72 when the protective layer 26 is removed from the adhesive layer 22 for attachment of the fluid delivery device 530 to a patient. FIG. 20a shows the protective layer 26 and the outlet plug 202 prior to removal from the fluid delivery device 530, while FIG. 20b shows the protective layer 26 and the outlet plug 202 after removal from the fluid delivery device 530.
[0108] The fluid delivery device 530 also includes a switch mechanism 532 for providing an indication when the outlet plug 202 is removed from the distal end of the cannula 72. The switch mechanism 532 can be connected, for example, to the processor (not shown) of the fluid delivery device 530 to provide an indication that the outlet plug 202 has been removed, or can be connected to an alarm, such as an LED, for providing an indication to a user that the outlet plug 202 has been removed. The switch mechanism 532 can also be used to turn on the fluid delivery device 530 (e.g., connect the power source to the processor) upon removal of the outlet plug 202.」
(和訳)[0106]図20a及び図20bは、本発明に従って構築された流量制限システム520及び流体送達装置530のさらなる実施形態を示す。図20a及び図20bのシステム520及び流体送達装置530は、図2から図4のシステム200及び装置10と類似しており、類似の要素には同じ参照番号が付けられている。
[0107]図20及び図20bの流体送達装置530は、装置530を患者に固定するための、ハウジング20の底面外部表面の接着層22と、流体送達装置530を患者に取り付ける前に接着層22を覆っている取り外し可能な保護層26を含む。流量制限システム520は、流量制限器及びシステム520の空気除去フィルターの両方として機能する出口プラグ202を含み、出口プラグ202は、流体送達装置530を患者に取り付ける前に、出口ポートアセンブリ70の挿入可能カニューレ72に固定される。出口プラグ202は、流体送達装置530の保護層26に固定されており、これにより、患者に流体送達装置530を取り付けるための接着層22から保護層26が取り外されるときに、プラグ202もカニューレ72から取り外される。図20aは、流体送達装置530から取り外される前の保護層26及び出口プラグ202を示し、図20bは、流体送達装置530から取り外された後の保護層26及び出口プラグ202を示す。
[0108]流体送達装置530はまた、カニューレ72の遠位端から出口プラグ202が取り外されたときに表示を提供するためのスイッチ機構532を含む。スイッチ機構532は、例えば、出口プラグ202が取り外されたことの表示を提供する流体送達装置530のプロセッサ(図示せず)に接続されるか、出口プラグ202が取り外されたことの表示をユーザに提供するための、例えばLEDのようなアラームに接続されることができる。スイッチ機構532は、出口プラグ202の取り外しの際に流体送達装置530をオンにする(例えば、電源をプロセッサに接続する)ためにも使用できる。
図1「
[図:0001437738000001.jpg]
」
図2「
[図:0001437738000002.jpg]
」
図20A及び20B「
[図:0001437738000003.jpg]
」
図20Bの図示内容から、ハウジング20の底面には、皮膚貫通カニューレ72の周囲に凹部が形成されていることが看取できる。
そして、技術常識を踏まえると、皮膚貫通カニューレ72は、患者に刺入される際、ハウジング20の底面に形成された凹部から患者の皮膚に向けて突出する。
2 引用発明
上記1を総合すると、引用文献3には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「流体送達装置530であって、
流路12が、
リザーバ30と、
リザーバ30に接続され、皮膚貫通カニューレ72で終端する針接続チューブが一体部品として提供される出口ポートアセンブリ70と、
を含み、
底面に凹部が形成され、皮膚貫通カニューレ72が患者に刺入される際、底面に形成された凹部から、皮膚貫通カニューレ72が患者の皮膚に向けて突出するハウジング20と、
流体送達装置530を患者に固定するための、ハウジング20の底面外部表面の接着層22と、
流体送達装置530を患者に取り付ける前に接着層22を覆っている取り外し可能な保護層26と、
保護層26に固定されており、接着層22から保護層26が取り外されるときに、皮膚貫通カニューレ72から取り外される出口プラグ202と、
皮膚貫通カニューレ72の遠位端から出口プラグ202が取り外されたときに表示を提供するためのスイッチ機構532と、
通信要素60と、
を含み、
スイッチ機構532は、出口プラグ202が取り外されたことの表示を提供するプロセッサに接続されるか、出口プラグ202が取り外されたことの表示をユーザに提供するためのアラームに接続され、
通信要素60は、遠隔制御装置100に情報を送り返すことを可能にする、受信機と送信機を含む双方向通信要素である、流体送達装置530。」
3 引用文献4の記載事項
引用文献4には、次の事項が記載されている。なお、和訳はファミリー出願である特表2015-527912号公報に基づき当審で作成した。
「[0055] The patient or user can review the data collected by the needle 12 using a Smartphone A running a software application that functions as a dedicated user interface. ・・・The user interface software may alert the user when the injection is complete by presenting an indication on the Smartphone A screen. In certain embodiments, it should also be appreciated that, for patient adherence monitoring purposes, the prescription and medication intake schedule may be stored in the Smartphone A.
[0056]・・・An electrical connection may be established between the injection device and Smartphone A using any commercially available data connection assembly such as a Universal Serial Bus (USB) port or a Firewire port. ・・・Alternatively, the connection between the injection device 10 and Smartphone A may be a wireless connection.」
(和訳)[0055]患者すなわちユーザは、専用のユーザーインターフェイスとして機能するソフトウェアアプリケーションを実行しているスマートフォンAを使用して、針12によって収集されたデータを確認できる。・・・ユーザーインターフェイスソフトウェアは、スマートフォンAの画面上に指標を提示することによって、注射がいつ完了したかをユーザに警告することができる。特定の実施形態では、処方及び医薬品摂取スケジュールを患者の順守のモニタの目的のためにスマートフォンAにストアすることができることも理解できよう。
[0056]・・・ユニバーサルシリアルバス(USB)ポート又はファイヤワイヤポートなどの任意の市販のデータ接続アセンブリを用いて、注射装置とスマートフォンAの間に電気的接続を確立することができる。・・・あるいは、注射装置10とスマートフォンAの間の接続は無線接続であってもよい。
「[0063] In an alternative embodiment, the system of the present invention may be used to improve adherence and monitoring of medication distribution and administration such as, for example, for chronic disease management. Specifically, a system according to the present invention can be used to record and transmit data concerning the usage of the device, including whether or not the pharmaceutical agent was successfully injected into the body of a patient. ・・・
[0064] In some cases, merely recording that the pharmaceutical agent was expelled from the device may not be sufficient to satisfy concerned parties. Instead, proof that the agent was injected to the patient's body may be required. In that case, in one embodiment of the present invention, an electrical signal with a predefined waveform is sent from the electronic chip through the injection needle into the body of the patient. As a result of the conductivity of the body, this predefined signal can be identified and processed by a receiver placed on another area of the patient's body. If the waveform of the signal measured by the receiver is substantially similar to the reference injection signal waveform, it is assumed that the injection was completed. Upon indication of a completed injection, data related to the injection time, location, as well as other data, is transmitted to interested parties using the data transmission capabilities of the injection device itself or the attached electronic device.
[0065] By collecting this data regarding the injection, the duration and frequency of the injection can be compared to the prescribed dose to evaluate the patient's overall adherence level.」
(和訳)[0063]代替実施形態では、本発明のシステムは、例えば慢性疾患管理のため等の医薬品配布及び投与の順守及びモニタリングの改善のために使用されることができる。具体的には、本発明によるシステムは、装置の使用に関するデータであって、医薬品が患者の体内に正常に注入されたか否かを含むデータを記録及び送信するために使用されることができる。・・・
[0064]いくつかのケースでは、医薬品が装置から放出されたことを記録するだけでは関係者を満足させるのに十分でない場合がある。代わりに、薬剤が患者の体に注入されたことの証明が必要とされることがある。その場合、本発明の一実施形態では、事前定義された波形の電気信号が、電子チップから注射針を介して患者の体内に送信される。体の導電率の結果として、この事前定義された信号を、患者の身体の別の領域に配置された受信機によって識別および処理することができる。受信機によって測定した信号の波形が基準注射信号波形と実質的に同様である場合、注射が完了したことが推定される。注射完了の指標のとたんに、注射時間、場所に関連するデータ、並びに他のデータが、注射装置自体又は取り付けられた電子機器のデータ伝送機能を使用して、関係者に送信される。
[0065]注射に関する、このデータを集めることにより、注射期間及び頻度を処方量と比較して、患者の全体的な順守度を評価することができる。
4 引用文献5の記載事項
特表2012-519027号公報(以下「引用文献5」という。)には、次の事項が記載されている。
「【0013】
第1の型式の拡張モジュール
図1は、薬物送達ペン224と、拡張医療通信モジュール202と、例えば血糖メータ300、携帯電話400、パーソナルコンピュータ500(モバイルコンピュータを含む)又はネットワークサーバ600のような、拡張モジュールとの直接的な又は本明細書に記載した代表的なデータ管理ユニット装置の組み合わせによる通信のためのデータ管理ユニットDMUと、を含む、糖尿病管理システムを図示する。拡張モジュール202は、薬品送達装置224の活動をモニタリングするように構成され得る。拡張通信モジュール202及び薬品送達装置224の両方を単一ユニットとしてともに係合するように構成してもよい。」
「【0065】
既に述べたように、拡張通信モジュール(102、202)を使用して、インスリン投与量を測定し、その情報を、血糖メータ又は、携帯電話、モバイルコンピュータなどの好適なデータ通信ユニットであり得るデータ管理ユニットに転送することができる。拡張通信モジュールからデータ管理ユニットに転送される情報を使用して、薬物送達ペン124又は224を使いこなすのを助けることができる。薬物送達ペン124又は224の不正確な使用の主な潜在的原因は、投薬をし損ねること及び投薬の重複である。本明細書で具現化される拡張通信モジュールは、ユーザに投与履歴を通知することによってこれらのエラーの原因をなくすのを助けることができる。完全な投与履歴(投与量、及び投薬が行われた日時を含む)は、このオプションをデータ管理ユニットのメニューから選択することによって、ユーザに利用可能にできる。」
図1「
[図:0001437738000004.jpg]
」
第5 対比・判断
1 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「流体送達装置530」は、その機能及び構造からみて、本願発明の「薬物送達装置」に相当する。
(2)引用発明の「リザーバ30」は、その機能及び構造からみて、本願発明の「貯蔵部」に相当する。
(3)引用発明の「リザーバ30に接続され」る「出口ポートアセンブリ70」は、その近位端がリザーバ30に接続されることが明らかである。
また、引用発明の「皮膚貫通カニューレ72」は、その機能及び構造からみて、本願発明の「患者に挿入するように構成された遠位端」に相当する。
そうすると、引用発明の「リザーバ30に接続され、皮膚貫通カニューレ72で終端する針接続チューブが一体部品として提供される出口ポートアセンブリ70」は、本願発明の「前記貯蔵部と流体連通して接続された、または接続されるように構成された近位端と、患者に挿入するように構成された遠位端とを有する送達部材」に相当する。
(4)引用発明の皮膚貫通カニューレ72が「患者に刺入される際」の状態は、動作状態といえるから、引用発明の「底面に凹部が形成され、皮膚貫通カニューレ72が患者に刺入される際、底面に形成された凹部から、皮膚貫通カニューレ72が患者の皮膚に向けて突出するハウジング20」は、「開口部を有するハウジングであって、前記送達部材の遠位端が動作状態で前記開口部を通って延びるように構成されたハウジング」に相当する。
(5)引用発明の「流体送達装置530を患者に固定するための、ハウジング20の底面外部表面の接着層22」及び「流体送達装置530を患者に取り付ける前に接着層22を覆っている取り外し可能な保護層26」は、その機能及び構造からみて、本願発明の「前記ハウジングを前記患者の皮膚に取り外し可能に結合するための接着剤」及び「前記接着剤の少なくとも一部を覆う取り外し可能なカバー」にそれぞれ相当する。
(6)引用発明の流体送達装置530の流路12が、リザーバ30と出口ポートアセンブリ70と「を含」むこと、及び、流体送達装置530が、ハウジング20と、接着層22と、保護層26と「を含」むことは、本願発明の薬物送達装置が、貯蔵部と、送達部材と、ハウジングと、接着剤と、取り外し可能なカバーと「を備え」ることに相当する。
(7)引用発明の「出口プラグ202」は、「保護層26に固定されており、接着層22から保護層26が取り外されるときに、皮膚貫通カニューレ72から取り外される」から、保護層26が取り外されることによって出口プラグ202が皮膚貫通カニューレ72から取り外されると、接着層22が露出することは明らかである。
そうすると、引用発明の「皮膚貫通カニューレ72の遠位端から出口プラグ202が取り外されたときに表示を提供するためのスイッチ機構532」「を含み、」「スイッチ機構532は、出口プラグ202が取り外されたことの表示を提供するプロセッサに接続されるか、出口プラグ202が取り外されたことの表示をユーザに提供するためのアラームに接続される」ことは、本願発明の「前記薬物送達装置は、前記接着剤が露出されたかどうかを判定するように、」「構成またはプログラムされて」いることに相当する。
(8)引用発明の「通信要素60」「を含み、」「通信要素60は、遠隔制御装置100に情報を送り返すことを可能にする、受信機と送信機を含む双方向通信要素である」ことと、本願発明の「薬物の送達が完了したと判定されると、送達された前記薬物に関する情報を外部コンピューティングデバイスに無線で送信するように、構成またはプログラムされており、前記情報は、送達された前記薬物の量を含む」こととは、情報を外部コンピューティングデバイスに無線で送信するように、構成またはプログラムされていることの限りで一致する。
したがって、本願発明と引用発明とは、
「薬物送達装置であって、
貯蔵部と、
前記貯蔵部と流体連通して接続された、または接続されるように構成された近位端と、患者に挿入するように構成された遠位端とを有する送達部材と、
開口部を有するハウジングであって、前記送達部材の遠位端が動作状態で前記開口部を通って延びるように構成されたハウジングと、
前記ハウジングを前記患者の皮膚に取り外し可能に結合するための接着剤と、
前記接着剤の少なくとも一部を覆う取り外し可能なカバーと、
を備え、
前記薬物送達装置は、前記接着剤が露出されたかどうかを判定するように、
情報を外部コンピューティングデバイスに無線で送信するように、
構成またはプログラムされている、薬物送達装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点>
本願発明は、「薬物の送達が完了したかどうか、またはいつ完了したかを判定する」のに対して、引用発明は、そのような特定がなく、また、情報を外部コンピューティングデバイスに無線で送信するように構成またはプログラムされていることについて、本願発明は、「薬物の送達が完了したと判定されると、送達された前記薬物に関する情報」を送信するように構成またはプログラムされ、「前記情報は、送達された前記薬物の量を含む」のに対して、引用発明は、通信要素60を含み、通信要素60が遠隔制御装置100に情報を送り返すことを可能にする、受信機と送信機を含む双方向通信要素である点。
2 判断
上記相違点について検討する。
薬物送達装置の技術分野において、薬物の送達結果を管理するために、薬物の送達が完了したかどうか、またはいつ完了したかを判定し、薬物の送達が完了したと判定されると、送達された薬物に関する情報を外部コンピューティングデバイスに無線で送信すること、及び、外部コンピューティングデバイスに送信する情報に送達された薬物の量の情報を含むことは、引用文献4及び引用文献5にそれぞれ記載されているように、周知技術である。
そして、薬物の送達結果を管理することは、引用発明においても内在する課題である。
そうすると、引用発明において、薬物の送達結果を管理するために、上記周知技術を適用して、上記相違点に係る本願発明の事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、本願発明の効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものにすぎない。
よって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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