特許拒絶査定不服審判
2017-006427
セリンプロテアーゼ変異体を含む組成物及び方法
- 審判番号
- 2017-006427
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-142243
- 請求日
- 2017年05月02日
- 審決日
- 2018年05月29日
- 公報発行日
- 2018年07月27日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
- 【請求人代理人】永井 浩之
- 【請求人代理人】中村 行孝
- 【請求人代理人】佐藤 泰和
- 【請求人代理人】朝倉 悟
- 【請求人代理人】出口 智也
- 【請求人代理人】小島 一真
- 審判長/審判官
- 審判長 大宅 郁治
- 審判官 田村 明照
- 審判官 長井 啓子
- 分類
- P18 .537-WY (C12N) / P18 .536-WY (C12N) / P18 .121-WY (C12N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条4項1号特許法36条6項1号特許法36条6項2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-142243「セリンプロテアーゼ変異体を含む組成物及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年12月21日出願公開、特開2015-228867、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
この出願は、2012(平成24年)年5月4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2011年5月5日 米国)を国際出願日とする特願2014-508193号の一部を平成27年7月16日に新たな特許出願としたものであって、以降の手続の経緯は以下のとおりのものである。
平成28年 6月 2日付け 拒絶理由通知書
平成28年11月 7日 意見書・手続補正書
平成28年12月19日付け 拒絶査定
平成29年 5月 2日 審判請求書
第2 本願発明
本願請求項1~11に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」~「本願発明11」という。)は、平成28年11月7日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
助剤と、単離されたサブチリシン変異体と、を含むクリーニング及び/又は処理組成物であって、前記サブチリシン変異体が、バチルス・レンタスのサブチリシンGG36プロテアーゼに対して少なくとも90%のアミノ酸同一性を有するバチルス・レンタスのサブチリシンGG36プロテアーゼの変異体であり、かつ次から選択される位置にアミノ酸置換の組み合わせを含むアミノ酸配列を含み:T022A-S103A-V104I-N116L-G159D-S188D-A232V-Q245R-N248D-E271F,T022A-S101G-V104I-N116L-G159D-S188D-A232V-Q245R-N248D-E271F,T022A-S101G-S103A-N116L-G159D-S188D-A232V-Q245R-N248D-E271F,T022A-S101G-S103A-V104I-N116L-S188D-A232V-Q245R-N248D-E271F,T022A-S101G-S103A-V104I-N116L-G159D-A232V-Q245R-N248D-E271F,T022A-S101G-S103A-V104I-N116L-G159D-S188D-Q245R-N248D-E271F,T022A-S101G-S103A-V104I-N116L-G159D-S188D-A232V-N248D-E271F,T022A-S101G-S103A-V104I-N116L-G159D-S188D-A232V-Q245R-E271F,またはT022A-S101G-S103A-V104I-N116L-G159D-S188D-A232V-Q245R-N248D-E271F、サブチリシン変異体のアミノ酸位置が配列番号1に示すバチルス・アミロリケファシエンスのサブチリシンBPN’のアミノ酸配列の、対応するアミノ酸位置に割り振られた番号に従って番号付けされ、前記サブチリシン変異体の置換が、配列番号2に示すバチルス・レンタスのサブチリシンGG36プロテアーゼに従って存在する、クリーニング及び/又は処理組成物。」
なお、本願発明2~11は、本願発明1を直接または間接的に引用する発明である。
ここで、本願発明1には、「配列番号2に示すバチルス・レンタスのサブチリシンGG36プロテアーゼ」の「変異体」を構成する10~11個のアミノ酸の置換が特定された9つの組合せが発明特定事項として記載されており、この9つの組合せにおいては、「T022A」「N116L」「E271F」のアミノ酸の置換は9つの組合せのいずれにも含まれている。
第3 原査定の概要
1 記載要件不備
請求項1には、「アミノ酸位置が配列番号1に示すバチルス・アミロリケファシエンスのサブチリシンBPN’のアミノ酸配列の、対応するアミノ酸位置に割り振られた番号に従って番号付けされ、」と記載されている。そして、本願配列番号1のバチルス・アミロリケファシエンス由来サブチリシンBPN’の103位アミノ酸はGlnであり、104位はTyrであり、116位はAlaであり、159位はSerであり、248位はSerであり、271位はGlnであると認められる。
一方で、本願請求項1にはS103A、V104I、N116L、G159D、N248D、E271F等と記載されており、請求項1の記載には矛盾が生じていることから、この出願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
そして、請求項1を引用する請求項2~11についても同様である。
また、配列番号1に存在しないS103やV104等を置換できるとは認められないことから、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1~11に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでなく、この出願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
さらに、発明の詳細な説明の記載、及び、出願時の技術常識を考慮すると、請求項1~11に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化するための根拠を見出せないから、この出願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
2 進歩性欠如(特許法第29条第2項)
引用文献1~3には、バチルス・レンタス由来のサブチリシンGG36プロテアーゼにアミノ酸置換を施して作製した変異体と、当該変異体はタンパク質分解活性、洗浄性、安定性等が改善された旨が記載されている(引用文献1の例、引用文献2の実施例、引用文献3の実施例参照)。
ここで、引用文献1~3の記載に基づいて、バチルス・レンタス由来のサブチリシンGG36にアミノ酸置換を施した変異体を新たに作製すること、タンパク質分解活性等を解析すること等は、当業者が容易に想到し得ることである。
また、本願明細書中の記載を参酌しても、請求項1~11に記載の変異体が、引用文献1~3に記載の変異体と比べて格別顕著な効果を奏するとは認められない。
さらに、配列番号2に示されたアミノ酸配列における116位アミノ酸はGであり、置換前の116位アミノ酸はNであることを前提とした意見書における出願人の主張には矛盾があり採用できない。
引用文献1.特表平09-503818号公報
引用文献2.特表2005-519592号公報
引用文献3.国際公開第2010/056640号
第4 当審の判断
1 記載要件不備について
本願の請求項1において「サブチリシン変異体のアミノ酸位置が配列番号1に示すバチルス・アミロリケファシエンスのサブチリシンBPN’のアミノ酸配列の、対応するアミノ酸位置に割り振られた番号に従って番号付けされ、前記サブチリシン変異体の置換が、配列番号2に示すバチルス・レンタスのサブチリシンGG36プロテアーゼに従って存在する」と記載されているように、本願の請求項1に記載された「サブチリシン変異体」のアミノ酸の置換は、「配列番号1に示すバチルス・アミロリケファシエンスのサブチリシンBPN’のアミノ酸配列の対応するアミノ酸位置に割り振られた番号に従って番号付けされ」た、「配列番号2に示すバチルス・レンタスのサブチリシンGG36プロテアーゼ」のアミノ酸の置換であることは明らかであって、このことは、本願明細書の段落【0004】【0010】【0111】等の記載からも直ちに理解できる。
ここで、段落【0111】に記載された「整列アルゴリズム」であるプログラム「clustalw」による「CLUSTAL 2.0.11 Multiple Sequence Alignments」を用いて、配列番号1と配列番号2を整列させると、配列番号1の37位、57位、160~163位の3ヶ所に配列番号2のギャップが存在、すなわち対応する配列番号2のアミノ酸が欠失している。また、引用文献3の230~237頁の「Table 6-1」のおいては、「BPN' WT Residue」との整列において「G36 WT Residue」の37位、58位、159~162位の3ヶ所にギャップが存在する。
一方、審判請求書に添付された参考資料1においては、配列番号1の36位、55位、161~164位の3ヶ所に配列番号2のギャップが存在する「整列」を行っている。
しかしながら、配列番号1と配列番号2の「整列」に際して1~2アミノ酸の相違があるものの、本願の請求項1で特定されている「配列番号2」において「配列番号1の対応するアミノ酸位置に割り振られた番号」のT022位、S101位、S103位、V104位、N116位、S188位、A232位、Q245位、N248位、E271位の位置決定には何ら影響はない。唯一ギャップの周辺に存在する「配列番号2」の「G159位」についても、周辺に「G」(グリシン)がないことからギャップを「配列番号1」の160位以降に設定したものと当業者であれば直ちに理解できるので、その位置決定に問題は生じない。
してみれば、請求項1の記載、本願明細書の記載および「整列アルゴリズム」に係る技術常識を勘案すれば、請求項1の記載が不明確であるとは言えない。
したがって、この出願が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとも、同条第4項第1号に規定する要件を満たしていないとも、同条第6項第1号に規定する要件を満たしていないとも言えない。
2 進歩性欠如(特許法第29条第2項)について
(1)引用文献、引用発明等
ア 引用文献1(特表平09-503818号公報)
引用文献1には、「ズブチリシン変種」を含んでなる「クリーニング組成物」であって(請求項11)、「B.lentusズブチリシン」のアミノ酸を置換した「酵素変種」が表III(54頁)、表IV(56頁)、表V(60~61頁)、表VI(62~63頁)、表VII(84頁)に記載されているが、上記「第2」に記載した本願発明1の9つの組合せに共通するT022位、N116位、E271位のアミノ酸を置換することは記載されていない。
イ 引用文献2(特表2005-519592号公報)
引用文献2には、「プロテアーゼ変異体を含んだ洗浄組成物」であって(【0009】)、「バチルス・レンタスGG36ズブチリシン」のアミノ酸を置換した「変異体」が記載されているが(22頁、26~28頁の表3~5)、上記「第2」に記載した本願発明1の9つの組合せに共通するT022位、N116位のアミノ酸を置換することは記載されていない。
ウ 引用文献3(国際公開第2010/056640号)
引用文献3には、「セリンプロテアーゼ変異体を含んだクリーニング組成物」であって(1頁11行)、「GG36Variant(BPN’Numbering)」として1~275位のアミノ酸のあらゆる置換の可能性が羅列列挙されているものの(118~210頁)、具体的な組合せとして記載されているもののとしては(245~318頁のTable7-1~Table11-2)、上記「第2」に記載した本願発明1の9つの組合せに共通するT022位、N116位、E271位のアミノ酸を置換することは記載されていない。
エ 引用発明1~3
引用文献1の「B.lentusズブチリシン」、引用文献2の「バチルス・レンタスGG36ズブチリシン」、引用文献3の「GG36Variant(BPN’Numbering)」の野生型(WT)はいずれも、本願発明1の「配列番号2に示すバチルス・レンタスのサブチリシンGG36プロテアーゼ」に相当するから、引用文献1~3には、「配列番号2に示すバチルス・レンタスのサブチリシンGG36プロテアーゼの特定の位置にアミノ酸置換を有する変異体を含んだクリーニング組成物。」(以下、「引用発明1~3」という。)が記載されている。
(2)対比・判断
ア 本願発明1について
(ア)対比
本願発明1と引用発明1~3を対比すると、本願発明1と引用発明1~3の間には、次の一致点および相違点があるといえる。
(一致点)
「配列番号2に示すバチルス・レンタスのサブチリシンGG36プロテアーゼの特定の位置にアミノ酸置換を有する変異体を含んだクリーニング組成物。」
(相違点)
本願発明1が
「T022A-S103A-V104I-N116L-G159D-S188D-A232V-Q245R-N248D-E271F,T022A-S101G-V104I-N116L-G159D-S188D-A232V-Q245R-N248D-E271F,T022A-S101G-S103A-N116L-G159D-S188D-A232V-Q245R-N248D-E271F,T022A-S101G-S103A-V104I-N116L-S188D-A232V-Q245R-N248D-E271F,T022A-S101G-S103A-V104I-N116L-G159D-A232V-Q245R-N248D-E271F,T022A-S101G-S103A-V104I-N116L-G159D-S188D-Q245R-N248D-E271F,T022A-S101G-S103A-V104I-N116L-G159D-S188D-A232V-N248D-E271F,T022A-S101G-S103A-V104I-N116L-G159D-S188D-A232V-Q245R-E271F,またはT022A-S101G-S103A-V104I-N116L-G159D-S188D-A232V-Q245R-N248D-E271F」の「アミノ酸置換の組み合わせを含む」のに対して、引用発明1~3はそのような構成を備えていない点。
(イ)相違点についての判断
引用文献1~3のいずれにも、上記相違点に係る「10~11個のアミノ酸の置換が特定されるた9つの組合せ」が記載されていない。
特に、これら「9つの組合せ」は、「T022A」「N116L」「E271F」のアミノ酸の置換において共通しているが、上記(1)ア~ウに記載したように、引用文献1には、T022位、N116位、E271位のアミノ酸を置換することが記載されておらず、引用文献2には、T022位、N116位のアミノ酸を置換することが記載されておらず、引用文献3には、T022位、N116位、E271位のアミノ酸を置換する具体的な組合せが記載されていない。
一方、本願明細書の490頁の表11-5および491頁の表11-6においては、これら「9つの組合せ」を含む「変異体のBMIクリーニング性能」(洗剤104、25℃)について、「+++」=「GG36と比較した場合のPI(性能指数)≧3」、すなわち野生型サブチリシンGG36プロテアーゼの3倍以上のBMIクリーニング性能を有することが確認されている。
してみると、野生型サブチリシンGG36プロテアーゼのいずれのアミノ酸を置換すればよいのかという情報が十分に記載されていない引用文献1~3を知得した当業者が上記相違点に係る「10~11個のアミノ酸の置換が特定されるた9つの組合せ」を選択して、「野生型サブチリシンGG36プロテアーゼの3倍以上のBMIクリーニング性能」を得ることは容易になし得ることでないと判断される。
したがって、本願発明1は、引用文献1~3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ 本願発明2~11について
本願発明2~11は、請求項1を直接または間接的に引用するものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1~3に記載された発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
第5 むすび
以上のとおり、この出願が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとも、同条第4項第1号に規定する要件を満たしていないとも、同条第6項第1号に規定する要件を満たしていないともいえず、本願発明1~11が引用文献1~3に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものでもない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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