特許拒絶査定不服審判
2023-001964
受信を処理するためのデバイスおよび方法
- 審判番号
- 2023-001964
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-136774外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年02月06日
- 審決日
- 2024年02月27日
- 公報発行日
- 2024年08月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】宏碁股▲分▼有限公司
- 【請求人代理人】伊東 忠重
- 【請求人代理人】伊東 忠彦
- 【請求人代理人】宮崎 修
- 分類
- P18 .161-Z (H04L) / P18 .57 -Z (H04L) / P18 .575-Z (H04L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条の2
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項、特許法第29条の2、特許法第159条第1項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-136774「受信を処理するためのデバイスおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 3月 1日出願公開、特開2021- 35056〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和2年8月13日(パリ条約による優先権主張2019年8月13日、米国(US) 2020年8月10日、米国(US))の出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。
令和 3年10月 6日付け 拒絶理由通知書
12月27日 意見書・手続補正書
令和 4年 5月11日付け 拒絶理由通知書
6月28日 意見書・手続補正書
10月20日付け 拒絶査定
令和 5年 2月 6日 審判請求書・手続補正書
以下、令和4年10月20日付け拒絶査定を「原査定」といい、令和5年2月6日の手続補正書による補正を「本件補正」という。
第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
(1)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の令和4年6月28日の手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載は次のとおりである。
「 【請求項1】
複数のTRPと通信するために、複数の受信(Rx)フィルタを使用して受信を処理するための通信デバイスであって、
少なくとも1つの記憶デバイスと、
前記少なくとも1つの記憶デバイスに結合された少なくとも1つの処理回路と、を含み、前記少なくとも1つの記憶デバイスは命令を記憶し、前記少なくとも1つの処理回路は、
制御リソースセット(CORESET)から下りリンク(DL)制御情報(DCI)を受信することと、
前記DCIに従って物理DL共有チャネル(PDSCH)を受信することであって、前記DCIは、送信設定インジケータ(TCI)フィールドを含み、前記TCIフィールドは、第1のTCI状態と第2のTCI状態に対応するTCIコードポイントを示す、受信することと、の命令を実行するように構成されている、
前記DCIに従って前記PDSCHを受信する命令は、
前記PDSCHの少なくとも1つのDM-RSポートが、複数のTCI状態に関連付けられた少なくとも1つのQCLパラメータに関して、少なくとも1つのRSとQCL(quasi co-located)にあることを決定することであって、前記複数のTCI状態は、少なくとも2つの異なるTCI状態を示す複数のTCIコードポイントのうちの最も小さいTCIコードポイントに対応する、決定することをさらに含み、
前記DCIを受信するための第1の時刻と、前記PDSCHを受信するための第2の時刻との間のオフセットが、閾値未満であり、
前記閾値は、少なくとも1つの直交周波数分割多重(OFDM)シンボルを含む、通信デバイス。
【請求項2】
前記第1のTCI状態は、少なくとも1つのアンテナポートの第1の符号分割多重化(CDM)グループに対応し、前記第2のTCI状態は、第2のCDMグループに対応する、請求項1に記載の通信デバイス。
【請求項3】
前記第1のCDMグループは、復調基準信号(DM-RS)ポートの第1のグループを含み、前記第2のCDMグループは、DM-RSポートの第2のグループを含む、請求項2に記載の通信デバイス。
【請求項4】
前記CORESETは、上位層シグナリングに従って設定される、請求項1~3のいずれか一項に記載の通信デバイス。
【請求項5】
前記第1のTCI状態は、少なくとも1つの第1のQCL情報を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の通信デバイス。
【請求項6】
前記少なくとも1つの第1のQCL情報は、RSおよびQCLタイプのうちの少なくとも1つを含む、請求項5に記載の通信デバイス。
【請求項7】
前記QCLタイプは、時間、周波数、および空間受信(Rx)パラメータのうちの少なくとも1つを含む、請求項6に記載の通信デバイス。
【請求項8】
前記第2のTCI状態は、少なくとも1つの第2のQCL情報を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の通信デバイス。」
(2)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正後の特許請求の範囲の記載は、以下のとおりである。なお、下線は補正箇所を示す。
「 【請求項1】
複数のTRPと通信するために、複数の受信(Rx)フィルタを使用して受信を処理するための通信デバイスであって、
少なくとも1つの記憶デバイスと、
前記少なくとも1つの記憶デバイスに結合された少なくとも1つの処理回路と、を含み、前記少なくとも1つの記憶デバイスは命令を記憶し、前記少なくとも1つの処理回路は、
制御リソースセット(CORESET)から下りリンク(DL)制御情報(DCI)を受信することと、
前記DCIに従って物理DL共有チャネル(PDSCH)を受信することであって、前記DCIは、送信設定インジケータ(TCI)フィールドを含み、前記TCIフィールドは、第1のTCI状態と第2のTCI状態に対応するTCIコードポイントを示す、受信することと、の命令を実行するように構成されている、
前記DCIに従って前記PDSCHを受信する命令は、
前記PDSCHの少なくとも1つのDM-RSポートが、複数のTCI状態に関連付けられた少なくとも1つのQCLパラメータに関して、少なくとも1つのRSとQCL(quasi co-located)にあることを決定することであって、前記複数のTCI状態は、少なくとも2つの異なるTCI状態を示す複数のTCIコードポイントのうちの最も小さいTCIコードポイントに対応する、決定することをさらに含み、
前記DCIを受信するための第1の時刻と、前記PDSCHを受信するための第2の時刻との間のオフセットが、閾値未満であり、
前記閾値は、少なくとも1つの直交周波数分割多重(OFDM)シンボルを含み、
前記第1のTCI状態は、少なくとも1つのアンテナポートの第1の符号分割多重化(CDM)グループに対応し、前記第2のTCI状態は、第2のCDMグループに対応する、通信デバイス。
【請求項2】
前記第1のCDMグループは、復調基準信号(DM-RS)ポートの第1のグループを含み、前記第2のCDMグループは、DM-RSポートの第2のグループを含む、請求項1に記載の通信デバイス。
【請求項3】
前記CORESETは、上位層シグナリングに従って設定される、請求項1または2に記載の通信デバイス。
【請求項4】
前記第1のTCI状態は、少なくとも1つの第1のQCL情報を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の通信デバイス。
【請求項5】
前記少なくとも1つの第1のQCL情報は、RSおよびQCLタイプのうちの少なくとも1つを含む、請求項4に記載の通信デバイス。
【請求項6】
前記QCLタイプは、時間、周波数、および空間受信(Rx)パラメータのうちの少なくとも1つを含む、請求項5に記載の通信デバイス。
【請求項7】
前記第2のTCI状態は、少なくとも1つの第2のQCL情報を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の通信デバイス。」
2 補正の適否
(1)本件補正の補正事項について
本件補正は、本件補正前及び本件補正後の特許請求の範囲の各請求項の記載より、次の補正事項からなると認められる。
補正事項1:本件補正前の請求項1に、本件補正前の請求項2で特定されていた事項を追加する補正
補正事項2:本件補正前の請求項2を削除する補正
補正事項3:本件補正前の請求項3~6において、本件補正前の請求項2を削除したことに伴い、請求項番を繰り上げるとともに、引用する請求項を整合させる補正
補正事項4:本件補正前の請求項8において、本件補正前の請求項2を削除したことに伴い、請求項番を繰り上げるとともに、引用する請求項を「請求項1~6」とする補正
(2)本件補正の目的について
ア 補正事項1
補正事項1は、本件補正前の請求項1の発明特定事項である「第1のTCI状態」及び「第2のTCI状態」について、「前記第1のTCI状態は、少なくとも1つのアンテナポートの第1の符号分割多重化(CDM)グループに対応し、前記第2のTCI状態は、第2のCDMグループに対応する」との限定を付加するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ 補正事項2
補正事項2は、本件補正前の請求項2を削除する補正であり、請求項の削除を目的とするものに該当する。
ウ 補正事項3
補正事項3は、補正事項2により請求項2を削除することに伴い、請求項番を繰り上げるとともに、引用する請求項を整合させる補正であり、明りようでない記載の釈明を目的とするものである。
エ 補正事項4
本件補正前の請求項8は、「請求項1~5」を引用するものであるから、補正事項4による本件補正後の請求項7は、本件補正前の請求項6、7(本件補正後の請求項5、6)を、新たに引用するものである。
そうすると、本件補正による特許請求の範囲は、本件補正後の請求項5、6に係る発明からみると、本件補正後の請求項5、6に係る発明において本件補正後の請求項7に記載された事項で特定される、本件補正前には存在しなかった発明を新たに増やすものであり、特許請求の範囲を減縮したものとはいえない。
また、当該補正は、請求項の削除、誤記の訂正、明りようでない記載の釈明に当たらないことは明らかである。
したがって、補正事項4は、特許法第17条の2第5項第1号~第4号に掲げる事項を目的とするものとはいえない。
(3)小括
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反している補正事項を含むものであり、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
3 独立特許要件についての予備的検討
本件補正において、請求項1に係る補正事項1は、前記2(2)アのとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
本件補正は、前記2において検討したとおり、特許法第17条の2第5項の規定に違反しているものであるが、仮に、補正事項4が特許法第17条の2第5項の規定に違反するものでないとして、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、予備的に検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、前記1(2)の請求項1で記載したとおりであり、以下再掲する。なお、当審において請求項1をA~Jに分説し、それぞれを「特定事項A」~「特定事項J」として参照する。
「【請求項1】
A 複数のTRPと通信するために、複数の受信(Rx)フィルタを使用して受信を処理するための通信デバイスであって、
B 少なくとも1つの記憶デバイスと、
C 前記少なくとも1つの記憶デバイスに結合された少なくとも1つの処理回路と、を含み、
D 前記少なくとも1つの記憶デバイスは命令を記憶し、
E 前記少なくとも1つの処理回路は、
E1 制御リソースセット(CORESET)から下りリンク(DL)制御情報(DCI)を受信することと、
E2 前記DCIに従って物理DL共有チャネル(PDSCH)を受信することであって、前記DCIは、送信設定インジケータ(TCI)フィールドを含み、前記TCIフィールドは、第1のTCI状態と第2のTCI状態に対応するTCIコードポイントを示す、受信することと、の命令を実行するように構成されている、
F 前記DCIに従って前記PDSCHを受信する命令は、
F1 前記PDSCHの少なくとも1つのDM-RSポートが、複数のTCI状態に関連付けられた少なくとも1つのQCLパラメータに関して、少なくとも1つのRSとQCL(quasi co-located)にあることを決定することであって、前記複数のTCI状態は、少なくとも2つの異なるTCI状態を示す複数のTCIコードポイントのうちの最も小さいTCIコードポイントに対応する、決定することをさらに含み、
G 前記DCIを受信するための第1の時刻と、前記PDSCHを受信するための第2の時刻との間のオフセットが、閾値未満であり、
H 前記閾値は、少なくとも1つの直交周波数分割多重(OFDM)シンボルを含み、
I 前記第1のTCI状態は、少なくとも1つのアンテナポートの第1の符号分割多重化(CDM)グループに対応し、前記第2のTCI状態は、第2のCDMグループに対応する、
J 通信デバイス。」
(2)先願
ア 先願の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、PCT/JP2019/031526、特願2021-537551号(国際公開第2021/024494号、国際出願日 2019年8月8日)(以下「先願」という。)の明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「先願明細書等」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は強調のために当審で付したものである。
「[0008] そこで、本開示は、マルチパネル/TRPを用いる場合であってもDL通信を好適に実施できる端末及び無線通信方法を提供することを目的の一つとする。
課題を解決するための手段
[0009] 本開示の一態様に係る端末は、1つの下りリンク制御情報に基づいて複数の下りリンク共有チャネル(Physical Downlink Shared Channel(PDSCH))を受信する受信部と、前記複数のPDSCHに適用するデフォルト送信設定指示状態(Transmission Configuration Indication state(TCI状態))が前記下りリンク制御情報のTCIフィールドのコードポイントに対応するTCI状態に該当すると判断する制御部と、を有することを特徴とする。」
「[0012](TCI、空間関係、QCL)
NRでは、UEが、送信設定指示状態(Transmission Configuration Indication state(TCI状態))に基づいて、信号及びチャネルの少なくとも一方(信号/チャネルと表記されてもよい。本開示において、「A/B」は同様に、「A及びBの少なくとも一方」で読み替えられてもよい)の受信処理(例えば、受信、デマッピング、復調、復号の少なくとも1つ)、送信処理(例えば、送信、マッピング、プリコーディング、変調、符号化の少なくとも1つ)を制御することが検討されている。
[0013] TCI状態は下りリンクの信号/チャネルに適用されるものを表してもよい。上りリンクの信号/チャネルに適用されるTCI状態に相当するものは、空間関係(spatial relation)と表現されてもよい。
[0014] TCI状態とは、信号/チャネルの疑似コロケーション(Quasi-Co-Location(QCL))に関する情報であり、空間受信パラメータ、空間関係情報(Spatial Relation Information(SRI))などと呼ばれてもよい。TCI状態は、チャネルごと又は信号ごとにUEに設定されてもよい。」
「[0017] QCLは、複数のタイプ(QCLタイプ)が規定されてもよい。例えば、同一であると仮定できるパラメータ(又はパラメータセット)が異なる4つのQCLタイプA-Dが設けられてもよく、以下に当該パラメータ(QCLパラメータと呼ばれてもよい)について示す:
・QCLタイプA:ドップラーシフト、ドップラースプレッド、平均遅延及び遅延スプレッド、
・QCLタイプB:ドップラーシフト及びドップラースプレッド、
・QCLタイプC:ドップラーシフト及び平均遅延、
・QCLタイプD:空間受信パラメータ。
[0018] タイプAからCは、時間及び周波数の少なくとも一方の同期処理に関連するQCL情報に該当してもよく、タイプDは、ビーム制御に関するQCL情報に該当してもよい。
[0019] 所定の制御リソースセット(Control Resource Set(CORESET))、チャネル又は参照信号が、別のCORESET、チャネル又は参照信号と特定のQCL(例えば、QCLタイプD)の関係にあるとUEが想定することは、QCL想定(QCL assumption)と呼ばれてもよい。
[0020] UEは、信号/チャネルのTCI状態又はQCL想定に基づいて、当該信号/チャネルの送信ビーム(Txビーム)及び受信ビーム(Rxビーム)の少なくとも1つを決定してもよい。
[0021] TCI状態は、例えば、対象となるチャネル(又は当該チャネル用の参照信号(Reference Signal(RS)))と、別の信号(例えば、別の下り参照信号(Downlink Reference Signal(DL-RS)))とのQCLに関する情報であってもよい。TCI状態は、上位レイヤシグナリング、物理レイヤシグナリング又はこれらの組み合わせによって設定(指示)されてもよい。」
「[0036] PDSCHのスケジューリングに用いられる下り制御情報(DCI:Downlink Control Information)は、当該PDSCH用のTCI状態を示す所定のフィールド(例えば、TCIフィールド、TCI状態フィールドなどと呼ばれてもよい)を含んでもよい。当該DCIは、1つのセルのPDSCHのスケジューリングに用いられてもよく、例えば、DL DCI、DLアサインメント、DCIフォーマット1_0、DCIフォーマット1_1などと呼ばれてもよい。」
「[0044] DL DCIの受信と当該DCIに対応するPDSCHの受信との間の時間オフセットは、スケジューリングオフセットと呼ばれてもよい。
[0045] また、上記閾値は、「Threshold」、「Threshold for offset between a DCI indicating a TCI state and a PDSCH scheduled by the DCI」、「Threshold-Sched-Offset」、「timeDurationForQCL」、スケジュールオフセット閾値、スケジューリングオフセット閾値、QCL用時間長、などと呼ばれてもよい。
[0046] スケジューリングオフセット閾値は、UE能力に基づいてもよく、例えばPDCCHの復号及びビーム切り替えにかかる遅延に基づいてもよい。当該スケジューリングオフセット閾値の情報は、基地局から上位レイヤシグナリングを用いて設定されてもよいし、UEから基地局に送信されてもよい。
[0047] スケジューリングオフセットがスケジューリングオフセット閾値より大きい場合、UEは、PDSCHのDMRSポートが、DCIによって指示されるTCI状態によって与えられるQCLタイプパラメータに関するRSと、QCLであると想定してもよい。
[0048] また、スケジューリングオフセットがスケジューリングオフセット閾値未満である場合、UEは、サービングセルのアクティブBWP(Bandwidth Part)内で1つ以上の制御リソースセット(CORESET:Control Resource Set)が当該UEに設定される最新(直近、latest)のスロットにおける最小のCORESET-IDに対応するPDCCH QCL指示のために用いられるQCLパラメータに関するTCI状態におけるRSと、当該サービングセルのPDSCHのDMRSポートがQCLである(the DM-RS ports of PDSCH of a serving cell are quasi co-located with the RS(s) in the TCI state with respect to the QCL parameter(s) used for PDCCH quasi co-location indication of the lowest CORESET-ID in the latest slot in which one or more CORESETs within the active BWP of the serving cell are configured for the UE)と想定してもよい。」
「[0054](マルチTRP)
NRでは、1つ又は複数の送受信ポイント(Transmission/Reception Point(TRP))(マルチTRP)が、1つ又は複数のパネル(マルチパネル)を用いて、UEに対してDL送信を行うことが検討されている。また、UEが、1つ又は複数のTRPに対してUL送信を行うことが検討されている。」
「[0068] 図3は、マルチパネル/TRPが用いられる場合のPDSCHのDMRSポートのQCL想定の課題を示す図である。本例は、図2Bに示したシングルPDCCHの例に対応する。
[0069] UEは、パネル1(又はTRP1又はDMRSポートグループ1)から送信されるDCI1及びPDSCH1を受信する。また、UEは、パネル2(又はTRP2又はDMRSポートグループ2)から送信されるPDSCH2を受信する。
[0070] DCI1は、PDSCH1及びPDSCH2の受信をスケジュールする。当該DCI1の受信からPDSCH1までのスケジューリングオフセット1は、スケジューリングオフセット閾値より小さい。また、当該DCI1の受信からPDSCH2までのスケジューリングオフセット2は、スケジューリングオフセット閾値より小さい。
[0071] 図3の例において、PDSCH1及びPDSCH2のQCLをどのように想定するかについては、これまで検討が進んでいない。したがって、現状のNR仕様に従う場合には、マルチパネル/TRPを用いる場合の空間ダイバーシチ利得、高ランク送信などが好適に実現できず、通信スループットの増大が抑制されるおそれがある。
[0072] そこで、本発明者らは、マルチパネル/TRPを用いる場合に対応できるQCL想定を着想した。
[0073] 以下、本開示に係る実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。各実施形態に係る無線通信方法は、それぞれ単独で適用されてもよいし、組み合わせて適用されてもよい。
[0074] なお、本開示において、パネル、Uplink(UL)送信エンティティ、TRP、空間関係、制御リソースセット(COntrol REsource SET(CORESET))、PDSCH、コードワード、基地局、所定のアンテナポート(例えば、復調用参照信号(DeModulation Reference Signal(DMRS))ポート)、所定のアンテナポートグループ(例えば、DMRSポートグループ)、所定のグループ(例えば、符号分割多重(Code Division Multiplexing(CDM))グループ、所定の参照信号グループ、CORESETグループ)などは、互いに読み替えられてもよい。また、パネルIdentifier(ID)とパネルは互いに読み替えられてもよい。TRP IDとTRPは互いに読み替えられてもよい。」
「[0076](無線通信方法)
以下の実施形態では、DL DCIの受信と当該DCIに対応するPDSCHの受信との間の時間オフセット(スケジューリングオフセット)がスケジューリングオフセット閾値より小さい場合に、当該PDSCH(又は当該PDSCHのDMRS)に適用されるTCI状態又はQCL(QCL想定)を説明する。スケジューリングオフセットがスケジューリングオフセット閾値より小さい場合にPDSCH(PDSCHのDMRS)に適用されるとUEが想定するTCI状態又はQCL(QCL想定)は、デフォルトTCI状態と呼ばれてもよい。デフォルトTCI状態は、デフォルトQCL、デフォルトQCL想定などと互いに読み換えられてもよい。以下、このTCI状態又はQCL(QCL想定)をデフォルトTCI状態と表記するが、呼称はこれに限られない。」
「[0078] UEは、シングルPDCCHを用いてスケジュールされるマルチPDSCHの一方又は両方のデフォルトTCI状態を、以下の少なくとも1つに基づいて判断してもよい:
(1)Rel.15 NRと同じルール(最新のスロットにおける最小のCORESET-IDに関連するCORESETのQCL想定)、
(2)上記シングルPDCCHのQCL想定、
(3)上記シングルPDCCHのTCIフィールドによって指定されるTCIコードポイントに対応するTCI状態のうち、対応するパネルについてのTCI状態IDのTCI状態(言い換えると、TCIフィールドが示す対応するパネルのTCI状態)、
(4)上記シングルPDCCHのTCIフィールドによって指定され得る特定のTCIコードポイントに対応するTCI状態、
(5)上記シングルPDCCHのTCIフィールドによって指定され得るコードポイントに対応する全てのTCI状態のうち、対応するパネルについての特定のTCI状態IDのTCI状態。
[0079] なお、本開示において、「特定の」、「最小の」、「最大の」、「小さい方からM番目の」(Mは整数)、及び「大きい方からM番目の」は、互いに読み替えられてもよい。「TCIコードポイント」は、「TCIフィールドのコードポイント」、「TCIフィールドの値」などと互いに読み換えられてもよい。」
「[0083] 上記(4)の場合、「特定のTCIコードポイント」は、例えば、任意の数のTCI状態を示すTCIコードポイントのうち(つまり、全TCIコードポイントのうち)最小のTCIコードポイントであってもよいし(4-1)、2つのTCI状態を示すTCIコードポイントのうち最小のTCIコードポイントであってもよい(4-2)。」
「[0087] 以下では、複数のTRPのPDSCHが1つのPDCCHによってスケジュールされる(つまり、マルチPDSCHがシングルPDCCHを用いてスケジュールされる)場合において、UEが、同じソースQCL又は同じルールに基づいて当該マルチPDSCHの各デフォルトTCI状態を想定するケース(ケース1とも呼ぶ)と、異なるソースQCL又は異なるルールに基づいて当該マルチPDSCHの各デフォルトTCI状態を想定するケース(ケース2とも呼ぶ)と、をそれぞれ説明する。」
「[0096] なお、DCI1は、パネル1の最小のCORESET-IDのCORESETで送信されてもよいし、別のCORESETで送信されてもよい(以下の図面でも同様に、CORESETとDCIが記載される場合であっても、当該DCIは当該CORESETに含まれてもよいし、含まれなくてもよい)。」
「[0098][マルチPDSCHの両方に上記(4-2)を適用]
UEは、マルチPDSCHのデフォルトTCI状態は、対応するTCI状態が2つのTCIコードポイントのうち最小のTCIコードポイントであると想定してもよい。
[0099] 図5A及び5Bは、マルチPDSCHのデフォルトTCI状態に2つのTCI状態を示す最小のTCIコードポイントを適用する場合の一例を示す図である。図5Aの例は、図3の例と同様である。
[0100] 図5Bは、図5Aの例で想定するDCI1のTCIフィールドの、TCIコードポイント及びTCI状態の対応関係の一例を示す。2つのTCI状態を示す最小のTCIコードポイントは“001”であり、これに対応する2つのTCI状態は、TCI状態ID=T0及びT1である。
[0101] この場合、UEは、図5AのPDSCH1及び2のデフォルトTCI状態がTCIコードポイント“001”で指示されたと想定してもよい。つまり、UEは、PDSCH1にTCI状態ID=T0を適用し、PDSCH2にTCI状態ID=T1を適用してもよい。
[0102] 上記(4-2)は、UEがDCIの復号に十分な時間がある(例えば、当該DCIのTCIフィールドがシングルTRPを示すかマルチTRPを示すか識別できる)場合に好適であると期待される。」
「[0185](ユーザ端末)
図12は、一実施形態に係るユーザ端末の構成の一例を示す図である。ユーザ端末20は、制御部210、送受信部220及び送受信アンテナ230を備えている。なお、制御部210、送受信部220及び送受信アンテナ230は、それぞれ1つ以上が備えられてもよい。
[0186] なお、本例では、本実施の形態における特徴部分の機能ブロックを主に示しており、ユーザ端末20は、無線通信に必要な他の機能ブロックも有すると想定されてもよい。以下で説明する各部の処理の一部は、省略されてもよい。
[0187] 制御部210は、ユーザ端末20全体の制御を実施する。制御部210は、本開示に係る技術分野での共通認識に基づいて説明されるコントローラ、制御回路などから構成することができる。
[0188] 制御部210は、信号の生成、マッピングなどを制御してもよい。制御部210は、送受信部220及び送受信アンテナ230を用いた送受信、測定などを制御してもよい。制御部210は、信号として送信するデータ、制御情報、系列などを生成し、送受信部220に転送してもよい。
[0189] 送受信部220は、ベースバンド部221、RF部222、測定部223を含んでもよい。ベースバンド部221は、送信処理部2211、受信処理部2212を含んでもよい。送受信部220は、本開示に係る技術分野での共通認識に基づいて説明されるトランスミッター/レシーバー、RF回路、ベースバンド回路、フィルタ、位相シフタ、測定回路、送受信回路などから構成することができる。」
「[0198] 一方、送受信部220(RF部222)は、送受信アンテナ230によって受信された無線周波数帯の信号に対して、増幅、フィルタ処理、ベースバンド信号への復調などを行ってもよい。
[0199] 送受信部220(受信処理部2212)は、取得されたベースバンド信号に対して、アナログ-デジタル変換、FFT処理、IDFT処理(必要に応じて)、フィルタ処理、デマッピング、復調、復号(誤り訂正復号を含んでもよい)、MACレイヤ処理、RLCレイヤの処理及びPDCPレイヤの処理などの受信処理を適用し、ユーザデータなどを取得してもよい。」
「[0202] なお、送受信部220は、1つの下りリンク制御情報(シングルPDCCH)に基づいて複数の下りリンク共有チャネル(Physical Downlink Shared Channel(PDSCH))(マルチPDSCH)を受信してもよい。
[0203] 制御部210は、前記複数のPDSCHに適用するデフォルト送信設定指示状態(Transmission Configuration Indication state(TCI状態))が前記下りリンク制御情報のTCIフィールドの1つ又は複数のコードポイントに対応するTCI状態の少なくとも1つに該当すると判断してもよい。
[0204] 制御部210は、前記デフォルトTCI状態が、最小の前記コードポイントに対応するTCI状態に該当すると判断してもよい。
[0205] 制御部210は、あるパネルに関する前記デフォルトTCI状態が、前記コードポイントに対応する全てのTCI状態のうち、当該パネルについての最小のTCI状態識別子のTCI状態に該当すると判断してもよい。
[0206] 制御部210は、あるパネルに関する前記デフォルトTCI状態と別のパネルに関する前記デフォルトTCI状態と、を同じルールに基づいて判断してもよい。
[0207] 制御部210は、あるパネルに関する前記デフォルトTCI状態と別のパネルに関する前記デフォルトTCI状態と、を異なるルールに基づいて判断してもよい。」
「[0210] 例えば、本開示の一実施形態における基地局、ユーザ端末などは、本開示の無線通信方法の処理を行うコンピュータとして機能してもよい。図13は、一実施形態に係る基地局及びユーザ端末のハードウェア構成の一例を示す図である。上述の基地局10及びユーザ端末20は、物理的には、プロセッサ1001、メモリ1002、ストレージ1003、通信装置1004、入力装置1005、出力装置1006、バス1007などを含むコンピュータ装置として構成されてもよい。」
「[0215] また、プロセッサ1001は、プログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュール、データなどを、ストレージ1003及び通信装置1004の少なくとも一方からメモリ1002に読み出し、これらに従って各種の処理を実行する。プログラムとしては、上述の実施形態において説明した動作の少なくとも一部をコンピュータに実行させるプログラムが用いられる。例えば、制御部110(210)は、メモリ1002に格納され、プロセッサ1001において動作する制御プログラムによって実現されてもよく、他の機能ブロックについても同様に実現されてもよい。
[0216] メモリ1002は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、Read Only Memory(ROM)、Erasable Programmable ROM(EPROM)、Electrically EPROM(EEPROM)、Random Access Memory(RAM)、その他の適切な記憶媒体の少なくとも1つによって構成されてもよい。メモリ1002は、レジスタ、キャッシュ、メインメモリ(主記憶装置)などと呼ばれてもよい。メモリ1002は、本開示の一実施形態に係る無線通信方法を実施するために実行可能なプログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュールなどを保存することができる。」
「[図2]
[図:0001412793000001.jpg]
」
「[図5]
[図:0001412793000002.jpg]
」
イ 先願発明
したがって、先願明細書等には、次の発明(以下「先願発明」という。)が記載されていると認める。なお、以下のように先願発明を、「a」~「q」により分説し、それぞれ「構成a」~「構成q」により以下参照する。
「a 制御部210、送受信部220及び送受信アンテナ230を備えたユーザ端末であって、([0185])
a1 制御部210は、送受信部220及び送受信アンテナ230を用いた送受信を制御し、([0188])
a2 送受信部220は、1つの下りリンク制御情報に基づいて複数の下りリンク共有チャネル(PDSCH)を受信するものであり、([0202])
b ユーザ端末20は、プロセッサ1001、メモリ1002、ストレージ1003、通信装置1004、入力装置1005、出力装置1006、バス1007などを含むコンピュータ装置として構成され、([0210])
b1 制御部210は、メモリ1002に格納され、プロセッサ1001において動作する制御プログラムによって実現され、([0215])
b2 メモリ1002は、無線通信方法を実施するために実行可能なプログラムコードを保存するものであり、([0216])
c QCLは、QCLパラメータと呼ばれてもよいパラメータが異なる4つのQCLタイプが設けられ、([0017])
d 参照信号が、別のCORESET、チャネル又は参照信号と特定のQCLの関係にあるとUEが想定することは、QCL想定と呼ばれ、([0019])
e TCI状態は、対象となるチャネル用の参照信号(RS)と、別の下り参照信号(DL-RS)とのQCLに関する情報であってもよく、([0021])
f PDSCHのスケジューリングに用いられる下り制御情報(DCI:Downlink Control Information)は、当該PDSCH用のTCI状態を示すTCIフィールドを含み、([0036])
g TCIコードポイントは、TCIフィールドのコードポイント、TCIフィールドの値と互いに読み換えられ、([0079])
h DL DCIの受信と当該DCIに対応するPDSCHの受信との間の時間オフセットは、スケジューリングオフセットと呼ばれてもよく、([0044])
i スケジューリングオフセットがスケジューリングオフセット閾値未満である場合、PDCCH QCL指示のために用いられるQCLパラメータに関するTCI状態におけるRSと、当該サービングセルのPDSCHのDMRSポートがQCLであると想定してもよく、([0048])
j 閾値は、「timeDurationForQCL」、スケジューリングオフセット閾値と呼ばれてもよく、([0045])
k 無線通信方法において、DL DCIの受信と当該DCIに対応するPDSCHの受信との間の時間オフセットがスケジューリングオフセット閾値より小さい場合に、PDSCHのDMRSに適用されるTCI状態又はQCL(QCL想定)は、デフォルトTCI状態と呼ばれ、([0076])
l 複数のTRPのPDSCHが1つのPDCCHによってスケジュールされる場合において、([0087])
m マルチPDSCHのデフォルトTCI状態は、対応するTCI状態が2つのTCIコードポイントのうち最小のTCIコードポイントであり、([0098])
n これに対応する2つのTCI状態は、TCI状態ID=T0及びT1であり、PDSCH1にTCI状態ID=T0を適用し、PDSCH2にTCI状態ID=T1を適用してもよく、([0100]、[0101])
o DCIはCORESETに含まれてもよく、([0096])
p PDSCH、符号分割多重(Code Division Multiplexing(CDM))グループは、互いに読み替えられてもよい、([0074])
q ユーザ端末([0210])」
(3)技術常識について
原査定で周知技術を示す文献として引用された、「3GPP TS 38.306 V15.5.0(2019-03)、2019年、p.30」には、「timeDurationForQCL」に関して、以下の事項が記載されている。
「timeDurationForQCL
Defines minimum number of OFDM symbols required by the UE to perform PDCCH reception and applying spatial QCL information received in DCI for PDSCH processing as described in TS 38.214 [12] clause 5.1.5, i.e. Threshold-Sched- Offset. UE shall indicate one value of the minimum number of OFDM symbols per each subcarrier spacing of 60kHz and 120kHz.」
(当審訳
timeDurationForQCL
TS 38.214 [12]5.1.5項に記載されているように、UEがPDCCH受信を実行し、DCIで受信した空間QCL情報をPDSCH処理に適用するために必要な最小OFDMシンボル数、すなわちThreshold-Sched-Offsetを定義する。UEは、各サブキャリア・スペーシングごとのOFDMシンボルの最小数の1つの値を示さなければならない。UEは、60kHzおよび120kHzの各サブキャリア間隔ごとに、OFDMシンボルの最小数の1つの値を示さなければならない。)
(4)対比
本件補正発明と先願発明とを対比する。
ア 特定事項A及びJについて
先願発明のユーザ端末は、「複数のTRPのPDSCHが1つのPDCCHによってスケジュールされる場合」(構成l)を想定したものであるから、「複数のTRPと通信する」ものといえる。また、通信するために受信した信号を処理することは、文献を挙げるまでもなく技術常識であるから、先願発明の「ユーザ端末」は本件補正発明の「通信デバイス」に含まれる。
よって、本件補正発明と先願発明とは、「複数のTRPと通信するために、受信を処理するための通信デバイス」である点で一致する。
イ 特定事項B、C及びDについて
先願発明の「プロセッサ1001」、「メモリ1002」(構成b~b2)は、それぞれ本件補正発明の「処理回路」、「記憶デバイス」に相当する。
また、先願発明の「メモリ1002」が保存する「無線通信方法を実施するために実行可能なプログラムコード」(構成b2)は、本件補正発明の「命令」に相当する。
そして、先願発明では、「制御部210は、メモリ1002に格納され、プロセッサ1001において動作する制御プログラムによって実現され」(構成b1)るものであり、プロセッサ1001は、メモリ1002に格納された制御プログラムにより動作するから、プロセッサ1001とメモリ1002とは、結合されているといえる。
よって、本件補正発明と先願発明とは、「少なくとも1つの記憶デバイスと、前記少なくとも1つの記憶デバイスに結合された少なくとも1つの処理回路と、を含み、前記少なくとも1つの記憶デバイスは命令を記憶」する点で一致する。
ウ 特定事項E、E1及びE2について
(ア)先願発明の「DCI」は、「下り制御情報」であり、「Downlink Control Information」(構成f)であるから、本件補正発明の「下りリンク(DL)制御情報(DCI)」に相当する。また、先願発明の「CORESET」(構成d、o)は、本件補正発明の「制御リソースセット(CORESET)」に相当する。
そして、先願発明では、「DCIはCORESETに含まれてもよ」(構成o)いものであり、ユーザ端末がCORESETを受信することは技術常識であるから、DCIを受信することも明らかである。
(イ)先願発明の「TCI」は、本件補正発明の「送信設定インジケータ(TCI)」に相当する。また、先願発明の「PDSCH」は「下りリンク共有チャネル」(構成a2)であるから、本件補正発明の「物理DL共有チャネル(PDSCH)」に相当する。
先願発明において、「下り制御情報(DCI:Downlink Control Information)は、当該PDSCH用のTCI状態を示すTCIフィールドを含み」(構成f)、「TCIコードポイントは、TCIフィールドのコードポイント、TCIフィールドの値と互いに読み換えられ」(構成g)るものであるから、DCIが含むTCIフィールドは、TCIコードポイントを示しているといえる。
そして、先願発明は、「マルチPDSCHのデフォルトTCI状態」として、「対応するTCI状態が2つのTCIコードポイントのうち最小のTCIコードポイント」(構成m)を用いることから、このTCIコードポイントは、2つのTCI状態に対応したものを含んでいる。
また、当該2つのTCI状態を、それぞれ「第1のTCI状態」、「第2のTCI状態」と称することは任意である。
さらに、先願発明において、PDSCHはDCIによりスケジューリングされ(構成f)、PDSCH用のTCI状態は、TCIフィールドにより示(構成f)されるから、PDSCHはDCIに従って受信されるものである。
そうすると、先願発明では、DCIに従って物理DL共有チャネル(PDSCH)が受信されるものであり、DCIは送信設定インジケータ(TCI)フィールドを含み、マルチPDSCHのTCIフィールドは第1のTCI状態と第2のTCI状態に対応するTCIコードポイントを示している、といえる。
(ウ)先願発明において、「制御部210」は、「プロセッサ1001において動作する制御プログラムによって実現され」(構成b1)、「制御部210は、送受信部220及び送受信アンテナ230を用いた送受信を制御」(構成a1)するから、「制御プログラム」は、前記(ア)のDCIの受信、(イ)の物理DL共有チャネル(PDSCH)の受信の制御を行っているといえる。
(エ)前記(ア)~(ウ)及び前記イより、本件補正発明と先願発明とは、「前記少なくとも1つの処理回路は、制御リソースセット(CORESET)から下りリンク(DL)制御情報(DCI)を受信することと、前記DCIに従って物理DL共有チャネル(PDSCH)を受信することであって、前記DCIは、送信設定インジケータ(TCI)フィールドを含み、前記TCIフィールドは、第1のTCI状態と第2のTCI状態に対応するTCIコードポイントを示す、受信することと、の命令を実行するように構成されている」点で一致する。
エ 特定事項F及びF1について
先願発明の「DMRS」(構成k)は、本件補正発明の「DM-RS」に相当する。
そして、先願発明では、「無線通信方法において、DL DCIの受信と当該DCIに対応するPDSCHの受信との間の時間オフセットがスケジューリングオフセット閾値より小さい場合に、PDSCHのDMRSに適用されるTCI状態又はQCL(QCL想定)は、デフォルトTCI状態と呼ばれ」(構成k)、「マルチPDSCHのデフォルトTCI状態は、対応するTCI状態が2つのTCIコードポイントのうち最小のTCIコードポイントであ」(構成m)るから、DL DCIの受信と当該DCIに対応するPDSCHの受信との間の時間オフセットがスケジューリングオフセット閾値より小さい場合に、PDSCHのDMRSに、対応するTCI状態が2つのTCIコードポイントのうち最小のTCIコードポイントに対応する2つのTCI状態を適用するものであり、TCIコードポイントに基づいて、PDSCHに適用されるTCI状態を決定しているといえる。
また、先願発明では、「TCI状態は、対象となるチャネル用の参照信号(RS)と、別の下り参照信号(DL-RS)とのQCLに関する情報」(構成e)であり、「QCLは、QCLパラメータと呼ばれてもよいパラメータが異なる4つのQCLタイプが設けられ」(構成c)るから、TCI状態は、少なくとも1つのQCLパラメータと関連付けられるものであり、前記PDSCHのDMRSが、下り参照信号(DL-RS)とQCLにあることを示すものである。
そして、先願発明は、QCLの想定について、QCLパラメータに関するTCI状態におけるRSとPDSCHのDMRSポートがQCLであると想定してもよいもの(構成i)である。
そうすると、前記ウを踏まえれば、本件補正発明と先願発明とは、「前記DCIに従って前記PDSCHを受信する命令は、前記PDSCHの少なくとも1つのDM-RSポートが、複数のTCI状態に関連付けられた少なくとも1つのQCLパラメータに関して、少なくとも1つのRSとQCL(quasi co-located)にあることを決定することであって、前記複数のTCI状態は、少なくとも2つの異なるTCI状態を示す複数のTCIコードポイントのうちの最も小さいTCIコードポイントに対応する、決定することをさらに含」む点で一致する。
オ 特定事項Gについて
先願発明の「DL DCIの受信と当該DCIに対応するPDSCHの受信との間の時間オフセット」(構成k)は、本件補正発明の「前記DCIを受信するための第1の時刻と、前記PDSCHを受信するための第2の時刻との間のオフセット」に相当し、先願発明の「スケジューリングオフセット閾値」(構成k)は、本件補正発明の「閾値」に相当する。
よって、本件補正発明と先願発明とは、「前記DCIを受信するための第1の時刻と、前記PDSCHを受信するための第2の時刻との間のオフセットが、閾値未満であ」る点で一致する。
カ 特定事項Iについて
先願発明の「TCI状態ID=T0」、「TCI状態ID=T1」(構成n)は、それぞれ「第1のTCI状態」、「第2のTCI状態」と称することができる。
そして、先願発明は、PDSCH1にTCI状態ID=T0を適用し、PDSCH2にTCI状態ID=T1を適用する(構成n)ものであるから、第1のTCI状態は、PDSCH1に対応し、第2のTCI状態は、PDSCH2に対応したものである。
さらに、先願発明は、PDSCHについて、符号分割多重(Code Division Multiplexing(CDM))グループと互いに読み替えられてもよい(構成p)とするものであるから、先願発明は、「前記第1のTCI状態は、少なくとも1つのアンテナポートの第1の符号分割多重化(CDM)グループに対応し、前記第2のTCI状態は、第2のCDMグループに対応する、」事項を含むものである。
よって、本件補正発明と先願発明とは、「前記第1のTCI状態は、少なくとも1つのアンテナポートの第1の符号分割多重化(CDM)グループに対応し、前記第2のTCI状態は、第2のCDMグループに対応する」点で一致する。
キ 一致点・相違点
前記ア~カより、本件補正発明と先願発明とは、以下の点で一致し、相違するといえる。
(一致点)
「複数のTRPと通信するために、受信を処理するための通信デバイスであって、
少なくとも1つの記憶デバイスと、
前記少なくとも1つの記憶デバイスに結合された少なくとも1つの処理回路と、を含み、前記少なくとも1つの記憶デバイスは命令を記憶し、前記少なくとも1つの処理回路は、
制御リソースセット(CORESET)から下りリンク(DL)制御情報(DCI)を受信することと、
前記DCIに従って物理DL共有チャネル(PDSCH)を受信することであって、前記DCIは、送信設定インジケータ(TCI)フィールドを含み、前記TCIフィールドは、第1のTCI状態と第2のTCI状態に対応するTCIコードポイントを示す、受信することと、の命令を実行するように構成されている、
前記DCIに従って前記PDSCHを受信する命令は、
前記PDSCHの少なくとも1つのDM-RSポートが、複数のTCI状態に関連付けられた少なくとも1つのQCLパラメータに関して、少なくとも1つのRSとQCL(quasi co-located)にあることを決定することであって、前記複数のTCI状態は、少なくとも2つの異なるTCI状態を示す複数のTCIコードポイントのうちの最も小さいTCIコードポイントに対応する、決定することをさらに含み、
前記DCIを受信するための第1の時刻と、前記PDSCHを受信するための第2の時刻との間のオフセットが、閾値未満であり、
前記第1のTCI状態は、少なくとも1つのアンテナポートの第1の符号分割多重化(CDM)グループに対応し、前記第2のTCI状態は、第2のCDMグループに対応する、通信デバイス」
(相違点1)
本件補正発明は「複数のRxフィルタを使用して」受信を処理することを特定しているのに対して、先願発明は当該事項を特定していない点
(相違点2)
本件補正発明は、「前記閾値は、少なくとも1つの直交周波数分割多重(OFDM)シンボルを含」むことを特定しているのに対して、先願発明は当該事項を特定していない点
(5)相違点についての判断
ア 相違点1について
当該規格技術の通信装置において、所望の信号を受信するために不要な信号を取り除くフィルタを備えていることは、文献を挙げるまでもなく技術常識である。先願1においても、ユーザ端末はPDSCH1とPDSCH2を受信するものであり、これらは複数のTRPからの異なる信号であるから、それぞれの信号の受信において不要な信号を取り除くためのフィルタを当然備えているものであり、複数の受信(Rx)フィルタを用いて受信していることは、明らかである。
よって、相違点1は、実質的に相違点ではない。
イ 相違点2について
先願は、3GPPによる5G(NR)規格に関連する発明であり(【0002】、【0003】)、先願発明において、「閾値は、「timeDurationForQCL」、スケジュールオフセット閾値と呼ばれてもよ」(構成j)いものである。
そして、3GPPによる5G(NR)規格では、「timeDurationForQCL」について、「PDCCH受信とDCIで受信した空間QCL情報を適用することを実行するためにUEが必要とするOFDMシンボルの最小数を定義」したもの(前記(3))であるから、「timeDurationForQCL」は、OFDMシンボルの数によって示されるものであり、「少なくとも1つのOFDMシンボルを含む」ものであることは当該技術分野における技術常識といえる。
そうすると、上記相違点2は、周知技術の付加であって、しかも新たな効果を奏するものでない。よって、上記相違点2は、課題解決のための具体化手段における微差であり、両者は実質同一である。
(6)小括
よって、本件補正発明は、先願発明と同一の発明である。
また、本願の発明者が先願の発明者と同一であるとはいえず、本願の出願時点において、その出願人が先願の出願人と同一であるともいえない。
したがって、本願補正発明は特許法第29条の2の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
4 本件補正についてのむすび
前記2のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
仮に、本件補正における補正事項4が特許法第17条の2第5項の規定に違反するものでないとしても、本件補正発明は、前記3のとおり特許法第29条の2の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明
本件補正は上述のとおり却下されたため、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1(1)の請求項1で記載したとおりである。
第4 原査定の概要
原査定の概要は、以下のとおりである。
1.(拡大先願)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願の日前の日本語特許出願であって、その出願後に国際公開がされた下記の日本語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の日本語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記日本語特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない(同法第184条の13参照)。
・請求項 1~8
・引用文献等 1、2
<引用文献等一覧>
1.特願2021-537551号(国際公開第2021/024494号)
(審決注:上記出願に対応する国際出願番号はPCT/JP2019/031526である。以下「先願1」という。)
2.3GPP TS 38.306 V15.5.0(2019-03)、2019年、p.30(周知技術を示す文献)
第5 文献の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された先願1(前記先願と同じ)の記載事項及び先願発明は、前記第2[理由]3(2)に記載したとおりである。
第6 本願発明と先願発明との対比・判断
本願発明は、前記第2[理由]3で検討した本件補正発明から、その発明特定事項である「前記第1のTCI状態は、少なくとも1つのアンテナポートの第1の符号分割多重化(CDM)グループに対応し、前記第2のTCI状態は、第2のCDMグループに対応する、」を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2[理由]3に示したとおり、先願発明と同一の発明であるから、本願発明も先願発明と同一の発明である。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、先願発明と同一の発明であり、本願の発明者が先願の発明者と同一であるとはいえず、また、本願の出願時点において、その出願人が先願の出願人と同一であるともいえないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-001964