特許拒絶査定不服審判
2025-004540
パケット損失の動的管理
- 審判番号
- 2025-004540
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2023-019073
- 請求日
- 2025年03月25日
- 審決日
- 2026年02月17日
- 公報発行日
- 2026年07月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】パロ アルト ネットワークス,インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】弁理士法人ITOH
- 審判長/審判官
- 審判長 丸山 高政
- 審判官 寺谷 大亮
- 審判官 衣鳩 文彦
- 分類
- P18 .55 -Z (H04L) / P18 .575-Z (H04L) / P18 .537-Z (H04L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項、特許法第36条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2023- 19073「パケット損失の動的管理」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年 4月12日出願公開、特開2023- 53152〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)5月22日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2017年5月22日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願である特願2020-515824号の一部を令和5年2月10日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和5年 2月14日 :翻訳文提出書
同年 3月 9日 :手続補正書
令和6年 5月14日付け:拒絶理由通知書
同年 8月 9日 :意見書、手続補正書
同年11月18日付け:拒絶査定
令和7年 3月25日 :審判請求書、手続補正書
以下では、令和6年11月18日付け拒絶査定を「原査定」といい、令和7年3月25日の手続補正書による補正を「本件補正」という。
第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
(1)本件補正後の請求項1
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線は、補正箇所を示す。)。
「【請求項1】
宛先計算ノードへパケットを送信する際のパケット損失量を判定すること、
前記パケット損失量に基づいて、パケットのシーケンスとして前記宛先計算ノードに送信される複数パケットについて複製パターンを決定することであって、
前記複製パターンは、(i)変数N、(ii)変数X、及び(iii)前記変数Nによって決定される、複製間における非ゼロである間隔、を含む、
決定すること、
前記複製パターンに従って前記複数パケット内でN番目のパケット毎に複製することであって、
前記N番目のパケットのX個の複製を生成すること、及び、前記間隔に従って前記複数パケット内で前記X個の複製を離間させること、を含む、
複製すること、
前記N番目のパケットのX個の複製を含む前記複数パケットを、前記宛先計算ノードに送信すること、
前記宛先計算ノードから第1の確認応答を受信すること、及び、
前記第1の確認応答が前記N番目のパケットのシーケンス番号を含んでいるとの判定に従って、
前記N番目のパケットの前記複製に先行して最初に送信された前記複数パケット内の第1の1個以上のパケットの各々に対して第2の確認応答が未だ受信されていないとの判定に従って、前記第1の1個以上のパケットを前記宛先計算ノードに再送信すること、
を含み、
前記変数Nおよび前記変数Xは、1以上の自然数である、
コンピュータ実行方法。」
(2)本件補正前の請求項1
本件補正前の、令和6年8月9日の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】
宛先計算ノードへパケットを送信する際のパケット損失量を判定すること、
前記パケット損失量に基づいて、パケットのシーケンスとして前記宛先計算ノードに送信される複数パケットについて複製パターンを決定することであって、
前記複製パターンは、(i)変数N、(ii)変数X、及び(iii)前記変数Nによって決定される、複製間における非ゼロである間隔、を含む、
決定すること、
前記複製パターンに従って前記複数パケット内でN番目のパケット毎に複製することであって、
前記N番目のパケットのX個の複製を生成すること、及び、前記間隔に従って前記複数パケット内で前記X個の複製を離間させること、を含む、
複製すること、
前記N番目のパケットのX個の複製を含む前記複数パケットを、前記宛先計算ノードに送信すること、
前記宛先計算ノードから第1の確認応答を受信すること、及び、
前記第1の確認応答が前記N番目のパケットのシーケンス番号を含んでいるとの判定に従って、
前記N番目のパケットの前記複製に先行して送信された前記複数パケット内の第1の1個以上のパケットの各々に対して第2の確認応答が未だ受信されていないとの判定に従って、前記第1の1個以上のパケットを前記宛先計算ノードに再送信すること、
を含み、
前記変数Nおよび前記変数Xは、1以上の自然数である、
コンピュータ実行方法。」
2 補正の適否
(1)補正の目的について
本件補正による請求項1についての補正は、本件補正前の請求項1の「前記N番目のパケットの前記複製に先行して送信された前記複数パケット」との記載を、「前記N番目のパケットの前記複製に先行して最初に送信された前記複数パケット」との記載に補正するものである。
本件補正前の「前記N番目のパケットの前記複製に先行して送信された前記複数パケット」との記載は明瞭であり、例えば、本願の図2の225における2つ目の*5の応答に対するものとしてパケット1~10が該当することに疑いはないから、本件補正による請求項1についての補正は、特許法17条の2第5項4号に掲げる「明りようでない記載の釈明」を目的とするものとは解されない。
そして、「最初に」との文言を付加する本件補正は、同項3号に掲げる「誤記の訂正」を目的とするものとは解されない。
加えて、この補正が同項1号に掲げる「請求項の削除」を目的とするものではないことは明らかである。
そこで、本件補正による請求項1についての補正が、同項2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであるかについて、以下、検討する。
請求項1の「前記複数パケット」について、本件補正前は「前記複製に先行して送信された」ものであると特定されていたところ、本件補正後は「前記複製に先行して最初に送信された」ものであると、より具体的に特定(限定)しているといえることから、請求項1についての前記補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと解される。
また、請求人は、請求項1についての前記補正について、特許法17条の2第5項各号に掲げるいずれを目的とするものか審判請求書には明示していないが、同書の「・請求項1について、上記のとおり「前記N番目のパケットの前記複製に先行して最初に送信された前記複数パケット」に補正され、例えば、図2の225においては、2つ目の*5の応答に対するものはパケット1-5のみであり、パケット6-10が含まれ得る場合は無くなりました。」との主張(【記載不備の指摘事項に対する対処】(2)「a)」)を踏まえると、請求項1についての前記補正は、特許請求の範囲の減縮を意図したものと解される。
そして、本件補正前後の請求項1に記載される発明において、産業上の利用分野又は解決しようとする課題が同一でないとする理由はないから、本件補正による請求項1についての補正の目的は、特許法17条の2第5項2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」に該当する。
(2)独立特許要件について
前記(1)のとおり、本件補正の請求項1についての補正は、特許請求の範囲の減縮に該当するから、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
ア 本件補正発明
本件補正発明は、前記1(1)に記載された事項により特定されるとおりのものである。後の便宜のために、本件補正発明を次のとおり符号A’~I’を付して分説し、発明特定事項A’等のように参照する。
A’ 宛先計算ノードへパケットを送信する際のパケット損失量を判定すること、
B’ 前記パケット損失量に基づいて、パケットのシーケンスとして前記宛先計算ノードに送信される複数パケットについて複製パターンを決定することであって、
B1’ 前記複製パターンは、(i)変数N、(ii)変数X、及び(iii)前記変数Nによって決定される、複製間における非ゼロである間隔、を含む、
B2’ 決定すること、
C’ 前記複製パターンに従って前記複数パケット内でN番目のパケット毎に複製することであって、
C1’ 前記N番目のパケットのX個の複製を生成すること、及び、前記間隔に従って前記複数パケット内で前記X個の複製を離間させること、を含む、
C2’ 複製すること、
D’ 前記N番目のパケットのX個の複製を含む前記複数パケットを、前記宛先計算ノードに送信すること、
E’ 前記宛先計算ノードから第1の確認応答を受信すること、及び、
F’ 前記第1の確認応答が前記N番目のパケットのシーケンス番号を含んでいるとの判定に従って、
F1’ 前記N番目のパケットの前記複製に先行して最初に送信された前記複数パケット内の第1の1個以上のパケットの各々に対して第2の確認応答が未だ受信されていないとの判定に従って、前記第1の1個以上のパケットを前記宛先計算ノードに再送信すること、
G’ を含み、
H’ 前記変数Nおよび前記変数Xは、1以上の自然数である、
I’ コンピュータ実行方法。
イ 明確性要件について
(ア)本件補正発明の発明特定事項F1’の「前記N番目のパケットの前記複製に先行して最初に送信された前記複数パケット」との事項(以下「本件補正事項」という。)について検討する。
(イ)本件補正事項の「前記複数パケット」は、発明特定事項B’の「パケットのシーケンスとして」「宛先計算ノードに送信される複数パケット」のことであり、本件補正事項の「前記N番目のパケット」は、発明特定事項C’の「前記複製パターンに従って前記複数パケット内でN番目のパケット毎に複製する」における「N番目のパケット」、すなわち複製の対象になるパケット(以下「複製対象パケット」という。)のことであり、また、本件補正事項の「前記複製」は、発明特定事項C1’及びD’の「前記N番目のパケットの」「複製」のことであると解される。前記「複製」が複製という行為ではなくパケットの複製物であることは請求項1全体の文意から明らかであるが、以下では、「複製」が行為ではないことを強調するために「複製」のことを「複製物」と称する場合がある。
そのため、本件補正事項は、複製対象パケットの複製物に先行して最初に送信された、パケットのシーケンスとして宛先計算ノードに送信される複数パケット、ということを特定しようとするものと解される。
(ウ)しかしながら、本件補正事項の「前記複製に先行して最初に送信された」「複数パケット」(複製物に先行して最初に送信された複数パケット)が何を意味するのか、換言すると、どのような「複数パケット」が、「前記複製に先行して」「最初に送信された」ものに該当するのかが明確でない。
すなわち、一般に「最初」とは、何らかの順序における一番はじめを意味すると解されるところ、本件補正事項の「最初に送信」の「最初」とは、「前記複製に先行して」「送信」(複製物に先行して送信)されるうちの、「パケットのシーケンス」(発明特定事項B’)での送信の順序における一番はじめのことなのか、それとも、「送信」(発明特定事項D’)と「再送信」(発明特定事項F1’)という送信の順序における一番はじめのこと(つまり「再送信」ではないこと)なのか、あるいは、これら以外の送信の順序における一番はじめのことなのかが、請求項の記載からは明らかでない。そして、発明の詳細な説明には、本件補正事項にある「複製に先行して最初に送信された」との記載は存在せず、発明の詳細な説明の記載を参酌したとしても、本件補正事項の「前記複製に先行して最初に送信された」の意味するところは不明瞭である。
(エ)請求人は、本件補正事項に関して、前記(1)のとおり、「・請求項1について、上記のとおり「前記N番目のパケットの前記複製に先行して最初に送信された前記複数パケット」に補正され、例えば、図2の225においては、2つ目の*5の応答に対するものはパケット1-5のみであり、パケット6-10が含まれ得る場合は無くなりました。」(審判請求書【記載不備の指摘事項に対する対処】(2)「a)」)と主張している。
上記主張は、図2の225の2つ目の*5の例において、パケット1~5を含み、パケット6~10を排除していることから、本件補正事項の「最初に」を、「パケットのシーケンス」での送信の順序における一番はじめのことを指すものとしていると解される。
しかしながら、「最初に」を上述のように解釈したとしても、「前記複数パケット」について、図2の225の2つ目の*5の例において、「最初に」送信されるパケットは「パケット1」のみであり、その他のパケットは「最初に」送信されるものではないので、「最初に送信された」「複数パケット」という表現は、整合的に解釈できない。仮に「最初に送信された」「複数パケット」という表現が、パケット1(最初に送信されるパケット)を含む複数パケットであることを意味すると解釈するにしても、パケット1以外に「複数パケット」に含まれるのは、2つ目の「*5」に先行して送信されるパケット2~10のうち任意のものであることを特定しているに過ぎず、本件補正事項がパケット1~5のみを含むことを限定していると解釈することはできない。この解釈は、発明の詳細な説明を参酌しても左右されない。
したがって、請求人の主張に基づく解釈は採用できない。
(オ)以上によれば、本件補正発明の「前記N番目のパケットの前記複製に先行して最初に送信された前記複数パケット」との事項は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。
よって、本件補正発明は、明確でない。
ウ サポート要件について
本件補正発明の「前記N番目のパケットの前記複製に先行して最初に送信された前記複数パケット」という事項について、前記イ(ウ)及び(エ)で述べたとおり、発明の詳細な説明には記載も示唆もない。
よって、本件補正発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
エ 独立特許要件についてのまとめ
したがって、補正後の本願特許請求の範囲の請求項1の記載は、特許法36条6項1号及び2号に規定する要件を満たさないため、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、本件補正は、同法126条7項の規定に違反する。
3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するものであり、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1~18に係る発明は、令和6年8月9日の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~18に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2の[理由]1(2)に記載した請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
後の便宜のために、本願発明を次のとおり符号A~Iを付して分説し、発明特定事項A等のように参照する。
A 宛先計算ノードへパケットを送信する際のパケット損失量を判定すること、
B 前記パケット損失量に基づいて、パケットのシーケンスとして前記宛先計算ノードに送信される複数パケットについて複製パターンを決定することであって、
B1 前記複製パターンは、(i)変数N、(ii)変数X、及び(iii)前記変数Nによって決定される、複製間における非ゼロである間隔、を含む、
B2 決定すること、
C 前記複製パターンに従って前記複数パケット内でN番目のパケット毎に複製することであって、
C1 前記N番目のパケットのX個の複製を生成すること、及び、前記間隔に従って前記複数パケット内で前記X個の複製を離間させること、を含む、
C2 複製すること、
D 前記N番目のパケットのX個の複製を含む前記複数パケットを、前記宛先計算ノードに送信すること、
E 前記宛先計算ノードから第1の確認応答を受信すること、及び、
F 前記第1の確認応答が前記N番目のパケットのシーケンス番号を含んでいるとの判定に従って、
F1 前記N番目のパケットの前記複製に先行して送信された前記複数パケット内の第1の1個以上のパケットの各々に対して第2の確認応答が未だ受信されていないとの判定に従って、前記第1の1個以上のパケットを前記宛先計算ノードに再送信すること、
G を含み、
H 前記変数Nおよび前記変数Xは、1以上の自然数である、
I コンピュータ実行方法。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の「備考」「●理由1(特許法第17条の2第3項)について」の欄の記載によれば、原査定の拒絶の理由は、概略次のとおりのものと認められる。
(理由1)令和6年8月9日の手続補正書でした補正は、次の点で外国語書面の翻訳文(又は誤訳訂正書による補正後の明細書、特許請求の範囲若しくは図面)(以下、単に「翻訳文」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
補正後の請求項1の「前記複製に先行して送信された前記複数パケット内の第1の1個以上のパケットの各々に対して第2の確認応答が未だ受信されていないとの判定に従って、前記第1の1個以上のパケットを前記宛先計算ノードに再送信する」の特定に関して、「複製」を基準として「先行して送信された」、いまだ受信されていないパケットを判定して再送するものであるが、段落37、40~44の開示に照らせば、再送対象は、「複製対象パケットに先行するパケット」であって、対応していない。他の請求項についても同様である。
3 判断
本願発明の「前記N番目のパケットの前記複製に先行して送信された前記複数パケット内の第1の1個以上のパケットの各々に対して第2の確認応答が未だ受信されていないとの判定に従って、前記第1の1個以上のパケットを前記宛先計算ノードに再送信する」(発明特定事項F1)との事項(以下「補正事項」という。)に係る補正が、翻訳文に記載した事項の範囲内においてしたものか検討する。
(1)補正事項の解釈
補正事項の「再送信」は、「前記第1の確認応答が前記N番目のパケットのシーケンス番号を含んでいるとの判定に従って」(発明特定事項F)行われるものである。また、補正事項によれば、「再送信」されるのは、「前記N番目のパケットの前記複製に先行して送信された前記複数パケット内」、すなわち「第1の確認応答」にその「シーケンス番号」が含まれている「N番目のパケット」の「複製」(複製物)「に先行して送信された」「複数パケット」のうち、「第2の確認応答が未だ受信されていない」と「各々」について「判定」された「第1の1個以上のパケット」であると解される。つまり、補正事項では、「再送信」の候補とするのは、「第1の確認応答」にその「シーケンス番号」が含まれる「N番目のパケット」の「複製」(複製物)「に先行して送信された」「複数パケット」であると解釈される。
(2)翻訳文の記載事項
翻訳文には、次の記載がある。
ア 「【請求項1】
パケットのシーケンスとして宛先計算ノードに送信する複数パケットのうち1個のパケットを複製すること、
前記パケットの複製を含む前記複数パケットを前記宛先計算ノードに送信すること、
前記宛先計算ノードから前記パケットの第1の確認応答を受信すること、
前記第1の確認応答が複製対象パケット宛であると判定すること、
前記第1の確認応答が複製対象パケット宛であるとの判定に応答して、前記パケットに先行して送信された前記複数パケットのうち1個以上のパケットの各々に対して第2の確認応答が未だ受信されていないと判定すること、及び
前記第2の確認応答が未だ受信されていないとの判定に応答して、前記1個以上のパケットを前記宛先計算ノードに再送信すること
を含むコンピュータ実行方法。
【請求項2】
前記パケットが、前記複数パケットのサブセットのうち、複製され且つ複製と共に前記宛先計算ノードに送信される1以上のパケットの1個である、請求項1に記載のコンピュータ実行方法。」
イ 「【背景技術】
【0002】
発明の背景
[0002] 伝送制御プロトコル(TCP)等のネットワークプロトコルは再送信タイマーを利用して、受信器が確認応答していないデータが確実に再送信されるようにする。例えば、このようなタイマーは、既定値又は送信器と受信器との間で測定された往復時間に基づく値に設定されてよい。パケットの確認応答を受信する前にタイマーが時間切れになったならばパケットは再送信され、タイマーの設定時間を延長することができる。例えば無線ネットワーク接続によるパケット損失量が増大及び変化するのに伴い、損失パケットを再送信するための再送信タイマーの設定時間切れを待つことによりデータの配信が遅くなる可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
概要
[0003] パケットのシーケンスのうち送信するパケットの複製コピーの個数を動的に決定することによりパケット損失を管理する装置及び方法に対するニーズがある。このようなシステム及び方法は任意選択的に、パケット損失を管理する従来方式のシステムを補完又は代替する。
【0004】
[0004] いくつかの実施形態によれば、一方法は、パケットのシーケンスとして宛先計算ノードに送信する複数パケットのうち1個のパケットを複製することを含んでいる。方法は又、当該パケットの複製を含む複数パケットを宛先計算ノードに送信することを含んでいる。方法は又、宛先計算ノードから当該パケットの第1の確認応答を受信することを含んでいる。方法は又、第1の確認応答が複製対象パケット宛であると判定することを含んでいる。方法は又、第1の確認応答が複製対象パケット宛であるとの判定に応答して、当該パケットに先行して送信された複数パケットのうち1個以上のパケットの各々に対して第2の確認応答が未だ受信されていないと判定することを含んでいる。方法は又、第2の確認応答が未だ受信されていないとの判定に応答して、当該1個以上のパケットを宛先計算ノードに再送信することを含んでいる。」
ウ 「 【0026】
発明の詳細な説明
[0028] 本明細書は、パケットのシーケンスのうち、送信するパケットの複製コピーの個数を動的に決定し、且つ複製対象パケットの確認応答を利用して複製非対象パケットの損失を検出することにより、パケット損失を管理する実施形態を記述する。例えば、実施形態は、パケットのシーケンスとして宛先計算ノードに送信する複数パケットのうち1個のパケットの1個以上の複製を生成する。当該パケットの1個以上の複製を含む複数パケットが宛先計算ノードに送信される。当該パケットの複数のコピーを送信する場合、宛先計算ノードが当該パケットを受信及び確認応答する確率が増大する。宛先計算ノードから当該パケットの第1の確認応答を受信した場合、実施形態は、第1の確認応答が複製対象パケット宛であると判定する。確認応答が複製対象パケット宛であるとの判定に応答して、実施形態は、シーケンス内の当該パケットの原本に先行して送信された複数パケットのうち1個以上のパケットの確認応答が未受信であるかを判定する。当該パケットに先行して送信された1個以上のパケットのいずれかの確認応答が未受信との判定に応答して、実施形態は、対応する1個以上のパケットを宛先計算ノードに再送信する。一実施形態において、判定されたパケット損失量に基づいて、複製するパケットの個数及び/又は生成された複製コピーの個数が設定される。その結果、実施形態は、送信する複製パケットの量を動的に調整しつつ、再送信タイマーの設定時間切れに先行してパケットの損失を検出して対応する。」
エ 「 【0036】
[0038] 図3は、パケット損失を管理する例示的な方法300を示すフロー図である。ブロック305において、パケット損失モジュール135は、一連のパケットの組内でN番目のパケット毎に1個以上の複製を生成する。例えば、図2を参照しながら記述するように、N番目のパケット毎にX個の複製を生成することができる。パケット損失モジュールは、X及びNの既定値を用いてもよく、又はブロック350に関して後述するように、推定されたパケット損失値に基づいてX及びNの値を設定してのよい。
【0037】
[0039] ブロック310において、パケット損失モジュール135は、複数されたパケットのシーケンス番号(又はバースト内でパケットを一意に識別する他の識別子、以下「シーケンス番号」)を保存する。これらのシーケンス番号は、宛先125により受信及び確認応答される可能性が高い「マーカーパケット」を示す。これらのマーカーパケットのシーケンス番号は、パケット損失モジュール135が当該番号を宛先125からの確認応答で受信されたシーケンス番号と比較できるように、保存される。
【0038】
[0040] ブロック315において、パケット損失モジュール135は、一連のパケットの組を複製コピーと共に宛先125に送信する。図2を参照しながら記述するように、複製コピーは、対応する原本の後に挿入されていても、シーケンス全体にわたり分散されても、及び/又はパケットの組の終端に挿入されていてもよい。
【0039】
[0041] ブロック320において、パケット損失モジュール135は宛先125から確認応答を受信する。例えば、パケット損失モジュール135は、Internet Engineering Task Force (IETF) RFC 2018 TCP Selective Acknowledgment Optionsに従い確認応答又は選択的確認応答を受信することができる。一実施形態において、受信した確認応答は、宛先125により受信されたパケットのシーケンス番号(又は他の一意な識別子)を含んでいる。
【0040】
[0042] ブロック325において、パケット損失モジュール135は、受信した確認応答が複製対象マーカーパケットのシーケンス番号(又は他の一意な識別子)を含むか否かを判定する。受信した確認応答が複製対象マーカーパケットのシーケンス番号を含んでいない場合、ブロック330において、パケット損失モジュールは任意選択的に、確認応答された複製非対象パケットシーケンス番号のコピーを保存するか、又は成功裏に送信されて再送信する必要がないパケットを確認すべく、確認応答されたパケットを表す値を更新する。
【0041】
[0043] ブロック335において、パケット損失モジュール135は、組内の追加的なパケットがまだ確認応答されるべきかを判定する。全てのパケットが確認応答されている場合、方法300はブロック305に戻ってパケットの別のバーストを送信する。組内の追加的なパケットがまだ確認応答されるべきである場合、方法300はブロック320に戻って追加的な確認応答を待つ。
【0042】
[0044] 受信した確認応答が複製対象マーカーパケットのシーケンス番号を含んでいる場合、ブロック340において、パケット損失モジュール135は、シーケンス内で複製対象パケットに先行する複製非対象パケットに確認応答が欠如しているか否かを判定する。例えば、パケット損失モジュール135は、ブロック330を参照しながら記述するように、確認応答シーケンス番号を保存して、現在確認応答されているパケットより前のどのパケットがデータ構造又は他の表現から欠如しているかを判定してもよい。代替的に、受信した確認応答は、受信した1個以上のパケットの複数の設定を示すことができ、従ってどのパケットが確認応答されていないかが示唆される。
【0043】
[0045] 一実施形態において、パケット損失モジュール135は、シーケンス内で現在の複製対象パケットに先行するN-1個の複製非対象パケットのいずれかの確認応答が欠如しているか否かを判定する。図2に示す例を参照するに、パケット損失モジュール135が一連のパケットの組の10番目のパケットの確認応答を受信して、10番目のパケットが複製されている(例えば、複製210)と判定した場合、パケット損失モジュール135は、6~9番目のパケット(例えばバースト200ではN=5、N-1=4であり、シーケンス内の10番目のパケットに先行する4個のパケットは、6番目、7番目、8番目、及び9番目のパケットである)が確認応答されているか否かを判定する。代替的に、パケット損失モジュール135は、シーケンス内の現在の複製対象パケットに先行するパケットの確認応答が欠如しているか否かを判定する(例えば、バースト200内の10番目のパケットの確認応答について、1~9番目のパケットの確認応答の欠如を評価する)。
【0044】
[0046] 先行パケットの確認応答が欠如している場合、ブロック345において、パケット損失モジュール135は、確認応答が欠如していると判定された先行パケットのコピーを再送信する。その結果、パケット損失モジュール135は、複製対象マーカーパケットの確認応答の受信に応答して、確認応答が欠如しているパケットを、例えば再送信タイマーの設定時間切れを待つことなく再送信することが可能である。」
オ 「【図2】
[図:0001437012000001.jpg]
」
(3)補正事項が翻訳文に記載された範囲内のものかについて
ア 翻訳文によれば、翻訳文に記載された発明は、「損失パケットを再送信するための再送信タイマーの設定時間切れを待つことによりデータの配信が遅くなる可能性がある」(【0002】)との問題を解決すべき課題とし、パケットのシーケンスとして宛先計算ノードに送信する複数パケットのうちの所定のパケット(1個のパケット、複数パケットのサブセットのうちの1個のパケット、N番目のパケット毎)を複製し、該パケットの複製(複製物)を含む前記複数のパケットを前記宛先計算ノードに送信し、前記宛先計算ノードから受信した第1の確認応答が複製対象パケット宛であるとの判定に応答して、当該複製対象パケット(原本)に先行して送信された複数パケットのうち、第2の確認応答が未だ受信されていないと判定した1個以上のパケットを宛先計算ノードに再送信する(請求項1、2、【0004】、【0026】、【0036】等)ことを、課題解決手段とするものと解される。そして、該課題解決手段により、翻訳文に記載された発明は、再送信タイマーの設定時間切れに先行してパケットの損失を検出して再送信できるとの作用効果を奏する(【0026】)ことが理解される。
イ 翻訳文に記載された実施形態からは、次の事項が把握できる。
(ア)一連のパケットの組内でN番目のパケット毎(図2の各バースト200、225、230における「5」、「10」、「15」、「20」のパケット)にX個の複製(図2の各バーストにおける「*5」、「*10」、「*15」、「*20」のパケット)を生成する(【0036】)。
(イ)一連のパケットの組を複製(複製物)とともに宛先に送信する(【0038】)。複製(複製物)は、対応する原本(複製対象マーカーパケット。図2)の後に挿入され、シーケンス全体にわたり分散され、及び/又はパケットの組の終端に挿入され得る(【0037】、【0038】、【0040】)。
(ウ)受信した確認応答が複製対象マーカーパケットのシーケンス番号を含んでいる場合、シーケンス内で複製対象パケットに先行する複製非対象パケットに確認応答が欠如しているか判定する(【0042】、【0043】)。例えば、図2において、「10」番目のパケットの確認応答を受信した場合、「10」番目のパケットに先行する「6」~「9」番目のパケット、又は「1」~「9」番目のパケットの確認応答が欠如しているか判定する(【0043】、図2)。
(エ)先行パケットの確認応答が欠如していると判定された先行パケットのコピーを再送信する。
ウ 前記イ(ア)~(エ)は、前記アの課題解決手段と整合するものである。そして、前記アの課題解決手段及び前記イの実施形態のいずれにおいても、再送信の候補とするのは、受信した確認応答にそのシーケンス番号が含まれる複製対象パケット(例えば、図2における「10」のパケット)に先行して送信された複数パケット(例えば、図2における「6」~「9」のパケット、又は「1」~「9」のパケット)である、と理解される。
他方、翻訳文には、再送信の候補とするパケットが、確認応答にそのシーケンス番号が含まれる複製対象パケットの複製(複製物。例えば、図2における「*10」のパケット)に先行して送信された複数パケットであることは記載も示唆もされていない。
よって、補正事項(前記(1))は、翻訳文に記載された範囲内のものとはいえない。
エ 以上のとおり、本願発明の「前記N番目のパケットの前記複製に先行して送信された前記複数パケット内の第1の1個以上のパケットの各々に対して第2の確認応答が未だ受信されていないとの判定に従って、前記第1の1個以上のパケットを前記宛先計算ノードに再送信する」に係る補正は、翻訳文に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものでないとはいえないから、新規事項の追加に該当する。
(4)請求人の主張について
ア 主張の概要
請求人は、令和6年8月9日の意見書及び審判請求書において、それぞれ、概略次の主張をする。
(ア)請求項1は、本願明細書段落[0031]~[0035]、図2、等の記載に基づいて、技術的事項が補正されたから、補正後の請求項1に記載した事項は、外国語書面の翻訳文に記載した事項の範囲内にある。(前記意見書【意見の内容】3.(2))
(イ)請求項1について、「前記N番目のパケットの前記複製に先行して最初に送信された前記複数パケット」に補正され、例えば、図2の225においては、2つ目の*5の応答に対するものはパケット1-5のみであり、パケット6-10が含まれ得る場合は無くなったので、新規事項の指摘事項は解消された。(審判請求書【記載不備の指摘事項に対する対処】(2)「a)」)
イ 主張の検討
前記ア(ア)の主張については、前記(3)で検討したとおりである。また、前記ア(イ)の主張は、却下された本件補正発明に基づくものであるため、その前提を欠くものである。
よって、請求人の主張は採用することができない。
(5)以上のとおりであるから、令和6年8月9日の手続補正書でした、本願発明の「前記N番目のパケットの前記複製に先行して送信された前記複数パケット内の第1の1個以上のパケットの各々に対して第2の確認応答が未だ受信されていないとの判定に従って、前記第1の1個以上のパケットを前記宛先計算ノードに再送信する」に係る補正は、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
第4 むすび
以上のとおり、令和6年8月9日の手続補正書でした補正は、特許法17条の2第3項の要件を満たしていないから、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2025-004540