特許拒絶査定不服審判
2024-017952
エンコーダ、デコーダ、および対応する方法
- 審判番号
- 2024-017952
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-559888
- 請求日
- 2024年11月08日
- 審決日
- 2026年01月05日
- 公報発行日
- 2026年06月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ホアウェイ・テクノロジーズ・カンパニー・リミテッド
- 【請求人代理人】実広 信哉
- 【請求人代理人】野村 進
- 審判長/審判官
- 審判長 畑中 高行
- 審判官 宮下 誠
- 審判官 坂東 大五郎
- 分類
- P18 .161-WZ (H04N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条の2特許法41条1項特許法41条3項特許法184条の15第2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条の2、特許法第41条第1項、特許法第184条の15第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-559888「エンコーダ、デコーダ、および対応する方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年10月15日国際公開、WO2020/210511、令和 4年 5月20日国内公表、特表2022-526023〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2020年(令和2年)4月9日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2019年4月10日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和3年12月 7日 :手続補正書の提出
令和5年 2月17日付け:拒絶理由通知書
令和5年 8月28日 :意見書、手続補正書の提出
令和5年11月30日付け:拒絶理由通知書
令和6年 3月 4日 :意見書、手続補正書の提出
令和6年 6月26日付け:拒絶査定
令和6年11月 8日 :審判請求書の提出
令和7年 8月19日付け:拒絶理由通知書(当審)
令和7年11月25日 :意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
令和7年11月25日にされた手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。なお、記号A~Hは、分説するために当審で付したものであり、記号A~Hに対応する発明特定事項を、以下、構成A~構成Hという。
(本願発明)
A デコーダにおいて実装される方法であって、
B 前記デコーダの受信器によって、コーディングされたスライスを含むビットストリームを受信するステップと、
C 前記デコーダのプロセッサによって、前記コーディングされたスライス内のエントリポイントの数(NumEntryPoints)を導出するステップと、
D 前記プロセッサによって、0から前記NumEntryPointsまでの範囲のサブセットインデックス値を有する前記コーディングされたスライスデータのサブセットについてのオフセットを決定するステップと、
E 前記プロセッサによって、前記コーディングされたスライスデータの前記サブセットについての前記オフセットに基づいて前記コーディングされたスライスに復号プロセスを適用するステップとを含み、
F 前記ビットストリームは、スライスヘッダを含み、前記スライスヘッダは、前記コーディングされたスライス内のエントリポイントのオフセットの数に対応する値を含まず、
G 前記NumEntryPointsは、前記コーディングされたスライスが波面並列処理(WPP)によってコーディングされるときに導出され、
H 前記NumEntryPointsは、前記コーディングされたスライス内の行の数に基づいて導出される、
A 方法。
第3 当審の拒絶の理由
令和7年8月19日付けで当審が通知した拒絶理由のうちの理由1は、概略、次のとおりのものである。
<本願の優先権について>
本願は、米国特許仮出願第62/832128(出願日:2019年4月10日)(以下、「優先基礎出願」という。)に基づく優先権を主張している。
しかしながら、本願の請求項1の「前記NumEntryPointsは、前記コーディングされたスライス内の特定可能な位置であるアドレスに基づいて導出される」という事項は、上記優先基礎出願の明細書等には記載されていない。
また、以上の点は、請求項7の対応する記載についても同様である。
よって、本願の請求項1~17に対して、特許法第29条の2を適用する際の判断の基準となる日は、本願の出願日(国際出願日)である2020年4月9日とする。
理由1.(拡大先願)この出願の請求項1~4、6~10、12~17に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に国際公開がされた日本語特許出願の、特許法第41条第1項の規定による優先権の主張の基礎とされ、同法第184条の15第2項の規定により読み替えて適用される同法第41条第3項の規定により、出願公開されたものとみなされる下記の特許出願(引用文献等1)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。
引用文献等1:特願2019-57031号(PCT/JP2020/004869(国際公開第2020/162609号))
第4 本願の優先権について
令和7年11月25日提出の手続補正書により、請求項1から、「前記NumEntryPointsは、前記コーディングされたスライス内の特定可能な位置であるアドレスに基づいて導出される」という事項は削除された。
そして、本願発明は、上記優先基礎出願の明細書等に記載されているから、本願発明に対して、特許法第29条の2を適用する際の判断の基準となる日は、上記優先基礎出願の出願日(優先日)である2019年4月10日とする。
第5 引用文献等の記載
1 先願に対する国際公開の明細書等の記載
先願(引用文献等1)である特願2019-57031号は、本願の優先日より前である平成31年(2019年)3月25日に出願されたものである。
また、PCT/JP2020/004869は、当該先願である特願2019-57031号を優先権主張の基礎とする日本語特許出願であり、当該日本語特許出願は、2020年8月13日に、国際公開第2020/162609号として国際公開されている。
そして、当該国際公開の明細書等には、以下の記載がある。なお、下線は強調のために当審で付したものである。
「[0022] 動画像復号装置31は、ネットワーク21が伝送した符号化ストリームTeのそれぞれを復号し、復号した1または複数の復号画像Tdを生成する。」
「[0034] 図4は、符号化ストリームTeにおけるデータの階層構造を示す図である。符号化ストリームTeは、例示的に、シーケンス、およびシーケンスを構成する複数のピクチャを含む。図4(a)~(f)は、それぞれ、シーケンスSEQを既定する符号化ビデオシーケンス、ピクチャPICTを規定する符号化ピクチャ、タイルグループを規定する符号化タイルグループ、タイルを規定するセグメント(例えば符号化タイル、CTU行、スライス)、セグメントに含まれる符号化ツリーユニット、符号化ツリーユニットに含まれる符号化ユニットを示す図である。」
「[0038] (符号化ピクチャ)
符号化ピクチャでは、処理対象のピクチャPICTを復号するために動画像復号装置31が参照するデータの集合が規定されている。ピクチャPICTは、図4(b)に示すように、タイルグループ0~タイルグループNTG-1を含む(NTGはピクチャPICTに含まれるタイルの総数)。」
「[0047] (符号化タイルグループ)
符号化タイルグループでは、処理対象のタイルグループを復号するために動画像復号装置31が参照するデータの集合が規定されている。タイルグループは、図4(c)に示すように、タイルグループヘッダ、および、タイルグループデータを含んでいる。さらに、タイルグループデータの後にバイトアライン用のトレイリングデータ(rbsp_tile_group_trailing_bits)を含んでもよい。」
「[0118] (ウェーブフロント並列処理)
ウェーブフロント並列処理(WPP:Wavefront Pararrel Processing)は、CTU行をセグメントとして用いることにより、符号化効率の低下を抑えながら多数のセグメントの並列符号化又は並列復号を実現できる。」
「[0128] タイルグループに含まれる、複数のタイル又は複数のCTU行を、並列で符号化又は復号するために、タイル又はCTU行の先頭アドレス(エントリポイント)は、タイルグループヘッダで符号化又は復号する。」
「[0224] (矩形タイルグループ)
図27は、矩形タイルグループを含むタイルグループを説明する図である。タイルグループは、ピクチャを複数のタイルに分割した後に、複数のタイルをグループ化して伝送する技術である。タイルをグループ化して伝送し、グループを単位としてヘッダを伝送することにより、ヘッダのオーバーヘッドを減らすことができる。また、タイルグループ単位で抽出した場合においても、タイルグループ内でタイルに分割できるため、並列処理が可能である。タイルグループには、矩形タイルグループの場合と、矩形タイルグループではない場合があり、後述のシンタックス要素rect_tile_group_flagを用いて1,0で識別する。」
「[0241] <タイルグループでWPP有効フラグを伝送する構成>
図30は、本実施形態の一形態のタイルグループとウェーブフロントプロセッシング(CTU行セグメント)の関係を示す図である。ここでは、CTUのスキャン順は、タイルスキャン順であり、タイル単位でCTUのラスタスキャンを行う。この図では、ピクチャ中に4×3のタイルがある場合において、左側の2×3のタイルをTileGroup0、右上の2×1のタイルをTileGroup1、1×1のタイルをTileGroup2、1×1のタイルをTileGroup3、1×2のタイルをTileGroup4として構成する例を示す。1×1のタイルから構成されるTileGroup2は、ウェーブフロントプロセッシング(WPP)がオンのタイルグループである。つまり、TileGroup2は、タイル(タイルグループ)中をさらにCTU行からなるセグメントに分割して符号化される。なお、ピクチャ内のタイルインデックスはラスタスキャン順に付与される。
[0242] 図31は、本実施形態の一形態のタイルグループとウェーブフロントプロセッシングのヘッダのシンタックス構成を示す図である。図29で説明したシンタックス要素と同じ部分は説明を省略する。本実施形態では、タイルグループ中のタイル数が1個の場合に、entropy_coding_sync_enabled_flagを符号化データに含めて伝送する。」
「[0250] ヘッダ符号化部1110又はヘッダ復号部3020は、WPPがオンの場合(entropy_coding_sync_enabled_flag==1)、NumEntryPoint(=タイルグループに含まれるCTU行の数TileGroupHeightInCtbsY-1)個のエントリポイントを符号化又は復号する。また、WPPがオフの場合(entropy_coding_sync_enabled_flag==0)、NumEntryPoint(=タイルグループ中のタイルの数NumTilesInCurrTileGroup-1)個のエントリポイントを符号化又は復号する。エントリポイントの数は以下の式で導出してもよい。」
「
[図:0001435762000001.jpg]
」
2 先願明細書等の記載
上記1で摘記した、先願に対する国際公開の明細書等の[0022]、[0034]、[0038]、[0047]、 [0118]、 [0128]、[0224]、[0241]、[0242]、[0250]、[図31]に記載された事項は、先願である特願2019-57031号の明細書等(以下、「先願明細書等」という。)の段落0017、0029、0033、0042、0113、0123、0216、0233、0234、0242、図31にも記載されている事項である。
3 先願発明
上記1及び2より、先願明細書等と先願に対する国際公開の明細書等に共通して記載されている発明として、動画像復号装置による、以下の動画像復号方法の発明(以下、「先願発明」という。)を認定する。なお、各構成の末尾の()内に、先願に対する国際公開の明細書等における記載箇所を示した。また、1a~1jは説明のために当審で付したものであり、以下、構成1a~構成1jという。
(先願発明)
1a 動画像復号方法であって、
1b 動画像復号装置31は、ネットワーク21が伝送した符号化ストリームTeのそれぞれを復号し([0022])、
1c 符号化ストリームTeは、シーケンス、およびシーケンスを構成する複数のピクチャを含み、ピクチャPICTは、タイルグループ0~タイルグループNTG-1を含み、タイルグループは、タイルグループヘッダを含んでおり([0034]、[0038]、[0047])、
1d ウェーブフロント並列処理(WPP:Wavefront Pararrel Processing)は、CTU行をセグメントとして用いることにより、符号化効率の低下を抑えながら多数のセグメントの並列符号化又は並列復号を実現でき([0118])、
1e タイルグループに含まれる、複数のCTU行を、並列で復号するために、CTU行の先頭アドレス(エントリポイント)は、タイルグループヘッダで復号し([0128])、
1f タイルグループは、ピクチャを複数のタイルに分割した後に、複数のタイルをグループ化して伝送する技術であり([0224])、
1g 1×1のタイルから構成されるウェーブフロントプロセッシング(WPP)がオンのタイルグループは、タイル(タイルグループ)中をさらにCTU行からなるセグメントに分割して符号化され([0241])、
1h タイルグループ中のタイル数が1個の場合に、entropy_coding_sync_enabled_flagを符号化データに含めて伝送し([0242])、
1i ヘッダ復号部3020は、WPPがオンの場合NumEntryPoint(=タイルグループに含まれるCTU行の数TileGroupHeightInCtbsY-1)個のエントリポイントを復号し([0250])、
1j タイルグループとウェーブフロントプロセッシングのヘッダのシンタックス構成は以下を含む、
for( i = 0; i < NumEntryPoint; i++ )
entry_point_offset_minus1[ i ]([0242]、[図31])、
1a 方法。
そして、上記2のとおり、上記1で摘記した事項は、先願明細書等に記載されているのであるから、特許法第184条の15第2項の規定により読み替えて適用される同法第41条第3項の規定により、上記先願発明については、上記日本語特許出願について国際公開がされた時に、出願公開がされたものとみなして同法第29条の2の規定を適用する。
第6 対比
以下、本願発明と先願発明を対比する。
1 構成Aについて
先願発明の構成1bの「動画像復号装置」は、構成Aの「デコーダ」に相当する。
そして、先願発明は、「動画像復号方法」(構成1a)であって、「動画像復号装置31は、ネットワーク21が伝送した符号化ストリームTeのそれぞれを復号」(構成1b)するものであるから、構成1aの「動画像復号方法」は、「動画像復号装置」に実装されているといえる。
よって、本願発明と先願発明は、「デコーダにおいて実装される方法」である点で一致する。
2 構成Bについて
まず、本願発明における「スライス」の技術的意味について検討する。
本願の発明の詳細な説明の段落0071には、「したがって、スライス501は、VVC規格において、単一のNALユニットに排他的に含まれるピクチャの整数個の完全なタイルまたはタイル内の整数個の連続する完全なCTUの行521~525として定義される。」と記載されている。
また、同段落0080には、「スライスヘッダ615は、文脈によってはタイルグループヘッダとも称されうることに留意されたい。」と記載されている。
以上の記載によれば、本願発明において、「スライス」とは、「整数個の完全なタイルまたはタイル内の整数個の連続する完全なCTUの行」として定義されるものであり、「タイルグループ」とも称されうるものといえる。
次に、先願発明の「タイルグループ」について検討する。
先願発明の構成1fによれば、「タイルグループ」は、「ピクチャを複数のタイルに分割した後に、複数のタイルをグループ化して伝送する技術」であり、構成1hによれば、「タイルグループ中のタイル数が1個の場合」もあるから、先願発明における「タイルグループ」とは、1個または複数、すなわち、整数個の完全なタイルからなるものであるといえる。
また、構成1gによれば、「1×1のタイルから構成されるウェーブフロントプロセッシング(WPP)がオンのタイルグループは、タイル(タイルグループ)中をさらにCTU行からなるセグメントに分割して符号化」されるから、先願発明における「タイルグループ」は、「1×1のタイル」から構成される場合、CTU行からなるセグメントに分割されるものといえる。そして、このように、「タイルグループ」の「1×1のタイル」をCTU行からなるセグメントに分割した場合、「タイルグループ」は、整数個の連続する完全なCTUの行からなるものといえる。
そうすると、先願発明においても、「タイルグループ」とは、整数個の完全なタイルまたは整数個の連続する完全なCTUの行からなるものといえ、これは、本願発明の「スライス」の定義である「整数個の完全なタイルまたはタイル内の整数個の連続する完全なCTUの行」と一致するから、先願発明における「タイルグループ」は、本願発明の構成Bの「スライス」に相当する。
そして、先願発明では、「動画像復号装置31は、ネットワーク21が伝送した符号化ストリームTeのそれぞれを復号」し(構成1b)、「符号化ストリームTeは、シーケンス、およびシーケンスを構成する複数のピクチャを含み、ピクチャPICTは、タイルグループ0~タイルグループNTG-1」を含む(構成1c)のであるから、動画像復号装置は、タイルグループを含む符号化ストリームを受信しているといえる。
ここで、受信が受信器により行われることは、当業者にとって明らかである。
また、先願発明における「タイルグループ」を含む「符号化ストリーム」は、構成Bの「コーディングされたスライスを含むビットストリーム」に相当する。
よって、本願発明と先願発明は、「前記デコーダの受信器によって、コーディングされたスライスを含むビットストリームを受信するステップ」を含む点で一致する。
3 構成Cについて
構成1iによれば、先願発明では、「ヘッダ復号部3020は、WPPがオンの場合NumEntryPoint(=タイルグループに含まれるCTU行の数TileGroupHeightInCtbsY-1)個のエントリポイントを復号」するのであるから、先願発明は、NumEntryPointを導出しているといえる。
そして、構成1iによれば、当該「NumEntryPoint」は、タイルグループに含まれるCTU行の数から導出されるものであって、エントリポイントの個数を表しているといえるから、先願発明の「NumEntryPoint」は、本願発明の「前記コーディングされたスライス内のエントリポイントの数(NumEntryPoints)」に相当する。
また、当該導出の処理がプロセッサによって行われることは、当業者にとって明らかである。
よって、本願発明と先願発明は、「前記デコーダのプロセッサによって、前記コーディングされたスライス内のエントリポイントの数(NumEntryPoints)を導出するステップ」を含む点で一致する。
4 構成Dについて
先願発明の構成1jのシンタックス構成によれば、先願発明は、0から前記NumEntryPointまでの範囲のiの値を有するentry_point_offset_minus1[ i ]を決定しているといえる。
また、先願発明は、「タイルグループに含まれる、複数のCTU行を、並列で復号するために、CTU行の先頭アドレス(エントリポイント)は、タイルグループヘッダで復号」する(構成1e)ものであるから、entry_point_offset_minus1[ i ]は、タイルグループに含まれるCTU行の先頭アドレス(エントリポイント)についてのオフセットであるといえる。
そして、当該「タイルグループに含まれるCTU行」は、構成Dの「前記コーディングされたスライスデータのサブセット」に相当する。
また、当該「0から前記NumEntryPointまでの範囲のiの値を有するentry_point_offset_minus1[ i ]」は、構成Dの「0から前記NumEntryPointsまでの範囲のサブセットインデックス値を有する前記コーディングされたスライスデータのサブセットについてのオフセット」に相当する。
また、当該決定の処理がプロセッサによって行われることは、当業者にとって明らかである。
よって、本願発明と先願発明は、「前記プロセッサによって、0から前記NumEntryPointsまでの範囲のサブセットインデックス値を有する前記コーディングされたスライスデータのサブセットについてのオフセットを決定するステップ」を含む点で一致する。
5 構成Eについて
構成1eによれば、先願発明は、「タイルグループに含まれる、複数のCTU行を、並列で復号するために、CTU行の先頭アドレス(エントリポイント)は、タイルグループヘッダで復号」するものである。
また、構成1jによれば、先願発明では、タイルグループに含まれるCTU行の先頭アドレス(エントリポイント)は、entry_point_offset_minus1[ i ]というオフセットで表されているといえる。
よって、先願発明は、CTU行の先頭アドレス(エントリポイント)についてのオフセットに基づいてタイルグループの複数のCTU行を復号するといえる。
そして、当該「タイルグループの複数のCTU行を復号する」ことは、構成Eの「前記コーディングされたスライスに復号プロセスを適用する」ことに相当する。
また、復号の処理がプロセッサによって行われることは、当業者にとって明らかである。
よって、本願発明と先願発明は、「前記プロセッサによって、前記コーディングされたスライスデータの前記サブセットについての前記オフセットに基づいて前記コーディングされたスライスに復号プロセスを適用するステップ」を含む点で一致する。
6 構成Fについて
構成1cによれば、先願発明では、「符号化ストリームTeは、シーケンス、およびシーケンスを構成する複数のピクチャを含み、ピクチャPICTは、タイルグループ0~タイルグループNTG-1を含み、タイルグループは、タイルグループヘッダ、を含んでいる」から、符号化ストリームは、タイルグループヘッダを含むといえる。
そして、先願発明の「タイルグループヘッダ」は、構成Fの「スライスヘッダ」に相当する。
また、上記3で述べたとおり、先願発明では、「NumEntryPoint」は、タイルグループに含まれるCTU行の数から導出されるものであって、タイルグループヘッダは、NumEntryPointに対応する値を含むものではない。
よって、本願発明と先願発明は、「前記ビットストリームは、スライスヘッダを含み、前記スライスヘッダは、前記コーディングされたスライス内のエントリポイントのオフセットの数に対応する値を含まない」点で一致する。
7 構成Gについて
構成1iによれば、先願発明は、「ヘッダ復号部3020は、WPPがオンの場合NumEntryPoint(=タイルグループに含まれるCTU行の数TileGroupHeightInCtbsY-1)個のエントリポイントを復号」するのであるから、先願発明においては、WPPがオンの場合、NumEntryPointが導出されているといえる。
また、構成1dによれば、「ウェーブフロント並列処理(WPP:Wavefront Pararrel Processing)は、CTU行をセグメントとして用いることにより、符号化効率の低下を抑えながら多数のセグメントの並列符号化又は並列復号を実現」でき、構成1gによれば、「1×1のタイルから構成されるウェーブフロントプロセッシング(WPP)がオンのタイルグループは、タイル(タイルグループ)中をさらにCTU行からなるセグメントに分割して符号化」されるから、先願発明において、「WPPがオン」とは、タイルグループが、ウェーブフロント並列処理によって並列符号化又は並列復号されることを意味しているといえる。
よって、本願発明と先願発明は、「前記NumEntryPointsは、前記コーディングされたスライスが波面並列処理(WPP)によってコーディングされるときに導出され」る点で一致する。
8 構成Hについて
構成1iによれば、先願発明は、「ヘッダ復号部3020は、WPPがオンの場合NumEntryPoint(=タイルグループに含まれるCTU行の数TileGroupHeightInCtbsY-1)個のエントリポイントを復号」するのであるから、先願発明においては、「NumEntryPoint」は、「タイルグループに含まれるCTU行の数」である「TileGroupHeightInCtbsY」に基づいて導出されているといえる。
そして、先願発明における「タイルグループ」は本願発明の「スライス」に相当するのであるから、先願発明における「タイルグループに含まれるCTU行の数」である「TileGroupHeightInCtbsY」は、構成Hの「前記コーディングされたスライス内の行の数」に相当する。
よって、本願発明と先願発明は、「前記NumEntryPointsは、前記コーディングされたスライス内の行の数に基づいて導出される」点で一致する。
9 対比のまとめ
以上によれば、本願発明と先願発明は、構成A~Hのすべての点において一致し、相違点はない。
よって、本願発明は先願発明と同一である。
第7 請求人の主張について
請求人は、令和7年11月25日提出の意見書において、以下の主張を行っている。
「新請求項1に係る発明は「前記NumEntryPointsは、前記コーディングされたスライス内の行の数に基づいて導出される」という構成を含んでおります。このような構成は引用文献等1には記載されておりません。
審判官殿は「●理由1(拡大先願)について」の「6 請求項3、4、6について」で『先願発明の構成1eの「タイルグループに含まれるCTU行の数TileGroupHeightInCtbsY」は、本願の請求項3の「行の数」、請求項4の「列のサイズ」、請求項6の「スライスのサイズ」に相当するものである。』と認定されました。
しかし、新請求項1の「前記NumEntryPointsは、前記コーディングされたスライス内の行の数に基づいて導出される」という構成は、少なくとも次の二点において、引用文献等1の記載事項とは異なります。
(1)NumEntryPointsの導出について、本願では行の数(CtuRows)に基づいているのに対し、引用文献等1ではTileGroupHeightInCtbsYに基づいています。
(2)本願ではスライスに関するものであってslice_header()にある関連情報によります。それに対して引用文献等1では、結局のところタイルグループであって、tile_group_header()にある関連情報によります。
したがいまして、新請求項1に係る発明は引用文献等1に記載の発明とは同一ではありません。」
しかしながら、上記第6の8で述べたとおり、本願発明と先願発明は、「前記NumEntryPointsは、前記コーディングされたスライス内の行の数に基づいて導出される」点で一致しているといえる。
この点について、請求人は、新請求項1の「前記NumEntryPointsは、前記コーディングされたスライス内の行の数に基づいて導出される」という構成は、上記(1)及び(2)の点で、引用文献等1の記載事項とは異なる旨を主張している。
上記(1)について検討すると、上記第6の8で述べたとおりであり、先願発明における「タイルグループに含まれるCTU行の数」である「TileGroupHeightInCtbsY」は、構成Hの「前記コーディングされたスライス内の行の数」に相当するものである。
また、上記(2)について検討すると、上記第6の2で述べたとおりであり、先願発明における「タイルグループ」は、本願発明における「スライス」に相当するものである。
よって、請求人の主張は採用することができない。
第8 むすび
以上のとおり、本願発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に国際公開がされた日本語特許出願の、特許法第41条第1項の規定による優先権の主張の基礎とされ、同法第184条の15第2項の規定により読み替えて適用される同法第41条第3項の規定により、出願公開されたものとみなされる特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-017952