特許拒絶査定不服審判
2024-001771
エンド端末、中継装置、および通信システム
- 審判番号
- 2024-001771
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-118407
- 請求日
- 2024年02月01日
- 審決日
- 2024年09月10日
- 公報発行日
- 2024年11月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】NECプラットフォームズ株式会社
- 【請求人代理人】机 昌彦
- 【請求人代理人】北嶋 啓至
- 【請求人】日本電気株式会社
- 【請求人代理人】机 昌彦
- 【請求人代理人】北嶋 啓至
- 審判長/審判官
- 審判長 土居 仁士
- 審判官 丸山 高政
- 審判官 上田 翔太
- 分類
- P18 .121-Z (H04L) / P18 .575-Z (H04L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第6項、特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-118407「エンド端末、中継装置、および通信システム」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年10月19日出願公開、特開2022-160511〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成28年3月11日の出願である特願2016-48780号の一部を令和3年3月5日に新たな特許出願とした特願2021-34990号の一部を令和4年7月26日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。
令和 4年 7月26日 上申書
令和 5年 6月13日付け 拒絶理由通知書
8月18日 意見書・手続補正書
11月10日付け 拒絶査定
令和 6年 2月 1日 審判請求書・手続補正書
5月 2日 前置報告書
以下では、令和5年11月10日付け拒絶査定を「原査定」といい、令和6年2月1日の手続補正書による補正を「本件補正」という。
第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は、以下の(1)に示す特許請求の範囲の請求項1の記載を、以下の(2)に示す特許請求の範囲の請求項1の記載に補正することを含む。
(1)本件補正前の請求項1の記載
本件補正前の令和5年8月18日の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
データを送受信する送受信部と、
前記データが正規の通信であることを判断するための条件を記憶する記憶部と、
前記条件に基づき、内部ネットワークにおいて前記送受信部が送信または受信する前記データを判断し、前記判断の結果、前記データが前記条件を満たさない場合に、前記データを廃棄する判断部と、
前記送受信部と前記記憶部と前記判断部とを格納する筐体と、
を備えるエンド端末。」
(2)本件補正後の請求項1の記載
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、以下のとおりである。なお、下線は補正箇所を示す。
「【請求項1】
データを送受信する送受信部と、
前記データが正規の通信であることを判断するための条件を記憶する記憶部と、
前記条件に基づき、ファイアウォール装置により不適切なデータがインターネットから侵入することが防止された内部ネットワークにおいて前記送受信部が送信または受信する前記データを判断し、前記判断の結果、前記データが前記条件を満たさない場合に、前記データを廃棄する判断部と、
前記送受信部と前記記憶部と前記判断部とを格納する筐体と、
を備えるエンド端末。」
2 補正の目的
本件補正は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「内部ネットワーク」について「ファイアウォール装置により不適切なデータがインターネットから侵入することが防止された」との限定を付加するものであって、本件補正前の請求項1に係る発明と本件補正後の請求項1に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮(いわゆる限定的減縮)を目的とするものに該当する。
3 補正の適否
本件補正の目的が限定的減縮に該当するので、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、前記1(2)に記載したとおりのものである。
なお、後の参照の便宜のため、請求項1を以下のA~Eに分説し、「発明特定事項A」のようにして参照する。
【請求項1】
A データを送受信する送受信部と、
B 前記データが正規の通信であることを判断するための条件を記憶する記憶部と、
C1 前記条件に基づき、ファイアウォール装置により不適切なデータがインターネットから侵入することが防止された内部ネットワークにおいて前記送受信部が送信または受信する前記データを判断し、
C2 前記判断の結果、前記データが前記条件を満たさない場合に、前記データを廃棄する
C 判断部と、
D 前記送受信部と前記記憶部と前記判断部とを格納する筐体と、
E を備えるエンド端末。
(2)引用文献の記載内容
原査定で引用された特開2006-345268号公報(以下「引用文献」という。)の記載内容は、以下のア及びイのとおりである。
ア 引用文献の記載
引用文献には、以下の記載がある。なお、下線は強調のために当審で付した。
(ア)「【0025】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1におけるパケット処理装置の構成を示す図である。パケット処理装置100は、ネットワークからのパケットを受信するパケット受信部110、ネットワークへパケットを送信するパケット送信部120、通過設定テーブル(後述)に登録されている送信元からのパケットを通過させるパケットフィルタ回路部200、防御対象300を備える。ここで、パケット処理装置100は、ネット家電や携帯端末等のネットワークに接続される端末装置を表している。
【0026】
パケットフィルタ回路部200は、更に、通過させたいパケットのヘッダ情報のうち少なくとも送信元情報を含むものをエントリとして登録する通過設定テーブル220、通過設定テーブル220を参照して、パケットを通過させるか否かを判断する通過判定部210、通過不可と判断されたパケットがSYNパケットである場合、該SYNパケットに対するSYNACKパケットを代理応答するSYNACK代理応答部230、通過不可と判断されたパケットがACKパケットである場合、該ACKパケットのヘッダ情報を前記通過設定テーブルのエントリに追加する通過設定エントリ追加部250、通過設定エントリ追加部250がエントリを追加する際、前記ACKパケットの送信元に対してコネクション切断を通知するコネクション切断部240を有する。
【0027】
パケット処理装置100のパケット受信部110がパケットを受信すると、パケットフィルタ回路部200の通過判定部210は、パケットを通過させるか否かを判断する。防御対象300は、ネットワーク機能を含め、パケット処理装置100の主たる機能を実行する機能ブロックでパケット処理部となる。CPUやメモリ、OS、各種プロトコルスタック、アプリケーションソフトウェア等から成る。
【0028】
通過判定部210は、パケットのヘッダ情報から少なくとも送信元情報を含むヘッダ情報を抽出し、通過設定テーブル220のエントリと一致比較を行い、エントリに一致する場合、通過指示信号を通過判定部210に通知する。
【0029】
一方、一致するエントリがない場合、次の2種類の処理が行われる。まず、受信パケットがSYNパケットである場合、通過判定部210はSYNACK代理応答部230へヘッダ情報を通知し、SYNACK代理応答部230が当該SYNパケットに対応するSYNACKパケットを生成してネットワークに対して送信する。次に、受信パケットがACKパケットである場合、通過判定部210はヘッダ情報を通過設定エントリ追加部250に通知させ、通過設定エントリ追加部250がヘッダ情報から少なくとも送信元情報を含むヘッダ情報を抽出し、通過設定テーブル220に新しくエントリを追加すると同時に、コネクション切断部240にヘッダ情報を通知して、当該ACKパケットの送信元に対してRSTパケットを生成して送信する。
【0030】
通過設定テーブル220に設定するヘッダ情報には送信元IPアドレス、送信元ポート番号、TCPシーケンス番号の少なくとも1つを含み、単独または複数の組合わせによってエントリを構成することが可能である。
【0031】
ネットワークへのパケットの送信はパケット送信部120を介して行う。尚、パケット送信部120は、防御装置300からの送信パケットを多重化して送信する仕組みとしてもよい。
【0032】
図2は、本発明の実施の形態1におけるパケット処理装置の処理手順を示すフローチャートである。はじめに、パケット受信部110がパケットを受信すると(ステップS101)、パケットフィルタ回路部200の通過判定部210は、通過設定テーブル220の検索を行って(ステップS102)、通過設定テーブル220に一致するエントリがあるか否かを解析する(ステップS103)。一致するエントリがある場合は受信パケットを通過させる(ステップS104)。一方、通過設定テーブル220に一致するエントリがない場合は次の処理手順で受信パケットの廃棄を行う。
【0033】
通過判定部210は、受信したパケットがTCPのSYNパケットであるか否かを解析し(ステップS105)、SYNパケットである場合、通過判定部210はSYNACK代理応答部230へヘッダ情報を通知し、SYNACK代理応答部230は、受信したSYNパケットに対応するSYNACKパケットを生成してネットワークへ送信する(ステップS106)。
【0034】
一方、受信したパケットがTCPのSYNパケットでない場合、通過判定部210は更に、受信したパケットがTCPのACKパケットであるか否かを解析する(ステップS107)。ACKパケットである場合、通過判定部210は受信したACKパケットの送信元情報を通過設定テーブル220に登録する(ステップS108)。尚、ここでは送信元情報を送信元IPアドレスのみとした例について説明している。通過判定部210は、同時に、コネクション切断部240にヘッダ情報を通知し、コネクション切断部240は、受信したACKパケットの送信元に対してRSTパケットを送信しコネクションを切断する(ステップS109)。
【0035】
RSTパケットの送信後、及びステップS107の解析においてACKパケットでないと判定された場合、ステップS106でSYNACKパケットを送信した後に、通過判定部210は受信パケットを廃棄する(ステップS110)。以上の受信パケットの通過または廃棄を行った後、パケット処理が終了する(ステップS111)。」
(イ)「【0060】
尚、以上説明したパケットフィルタ回路及びパケットフィルタ方法は、ネットワークインターフェースを備えたネット家電や携帯端末など、オープンなネットワークに接続する端末装置やルータやファイアウォールなどの中継装置において有用である。また、従来よりもメモリ量を削減できるため、半導体チップに内蔵することにより、半導体チップ製造におけるコスト低減にも有用である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、代理応答したSYNACKパケットに対してACK応答を返送する送信元ホストからのパケットのみ通過させることにより、SYNパケットだけを送りつける攻撃元ホストからのパケットを廃棄することができるため、正常アクセスのパケットのみを通過させ、不正アクセス等に関わる不要な処理を省くことができる効果を有し、通過設定テーブルに登録されているヘッダ情報を元にパケットを通過させるパケットフィルタ回路及びパケットフィルタ方法等に有用である。」
(ウ)図1
[図:0001416313000001.jpg]
(エ)図2
[図:0001416313000002.jpg]
イ 引用発明の認定
前記アの記載によれば、引用文献には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、後の参照の便宜のため、引用発明をa~gに分説し、「構成a」のようにして参照する。
a ネットワークからのパケットを受信するパケット受信部110、ネットワークへパケットを送信するパケット送信部120、通過設定テーブルに登録されている送信元からのパケットを通過させるパケットフィルタ回路部200、防御対象300を備えるパケット処理装置100であって、(【0025】)
b パケット処理装置100は、ネット家電や携帯端末等のネットワークに接続される端末装置を表しており、(【0025】)
c ネット家電や携帯端末などは、オープンなネットワークに接続する端末装置であり、(【0060】)
d 通過判定部210は、パケットのヘッダ情報から少なくとも送信元情報を含むヘッダ情報を抽出し、通過設定テーブル220のエントリと一致比較を行い、エントリに一致する場合、通過指示信号を通過判定部210に通知し、(【0028】)
e パケット受信部110がパケットを受信すると、パケットフィルタ回路部200の通過判定部210は、通過設定テーブル220の検索を行って、通過設定テーブル220に一致するエントリがあるか否かを解析し、一致するエントリがある場合は受信パケットを通過させ、通過設定テーブル220に一致するエントリがない場合は受信パケットの廃棄を行い、(【0032】)
f 正常アクセスのパケットのみを通過させ、不正アクセス等に関わる不要な処理を省くことができる(【0061】)
g パケット処理装置100。
(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア 発明特定事項Aについて
発明特定事項Aは、「データを送受信する送受信部と、」というものである。
引用発明の「パケット」(構成a)は、本件補正発明の「データ」に相当する。
引用発明の「パケット送信部120」及び「パケット受信部110」(構成a)は、本件補正発明の「データを送受信する送受信部」に相当する。
よって、本件補正発明と引用発明とは、「データを送受信する送受信部」を備える点で一致する。
イ 発明特定事項Bについて
発明特定事項Bは、「前記データが正規の通信であることを判断するための条件を記憶する記憶部と、」というものである。
引用発明は、「通過設定テーブル220に一致するエントリがあるか否かを解析し、一致するエントリがある場合は受信パケットを通過させ、通過設定テーブル220に一致するエントリがない場合は受信パケットの廃棄を行」う(構成e)から、引用発明の「通過設定テーブル220」は、通過させるパケットを判断する条件を「エントリ」として記憶していると解される。
そして、引用発明は「正常アクセスのパケットのみを通過させ」る(構成f)のだから、引用発明の「通過設定テーブル220」は、通過させるべき正常アクセスのパケットを判断する条件を「エントリ」として記憶していると解される。
そうすると、引用発明の「通過設定テーブル220」及び「エントリ」は、それぞれ、本件補正発明の「記憶部」及び「前記データが正規の通信であることを判断するための条件」に相当し、本件補正発明と引用発明とは、「前記データが正規の通信であることを判断するための条件を記憶する記憶部」を備える点で一致する。
ウ 発明特定事項C1について
発明特定事項C1は、「前記条件に基づき、ファイアウォール装置により不適切なデータがインターネットから侵入することが防止された内部ネットワークにおいて前記送受信部が送信または受信する前記データを判断し、」というものである。
引用発明において「パケット受信部110」が「受信する」「パケット」すなわち「受信パケット」(構成e)は、本件補正発明の「送受信部」が「受信する前記データ」に相当する。
そして、引用発明は、受信パケットのヘッダ情報から、「少なくとも送信元情報を含むヘッダ情報を抽出し、通過設定テーブル220のエントリと一致比較を行い、エントリに一致する場合、通過指示信号を通過判定部210に通知」しており(構成d)、これは、「通過設定テーブル220の検索を行って、通過設定テーブル220に一致するエントリがあるか否かを」判断すること(構成e)に他ならない。
また、前記イで触れたように、引用発明の「エントリ」が本件補正発明の「前記条件」に相当する。
したがって、本件補正発明と引用発明とは、「前記条件に基づき、前記送受信部が受信する前記データを判断」する点で一致し、ひいては、「前記条件に基づき、前記送受信部が送信または受信する前記データを判断」する点で一致する。
他方、引用発明の「パケット受信部110」は「ネットワークからのパケットを受信する」ものであり(構成a)、「パケット処理装置100は、ネット家電や携帯端末等のネットワークに接続される端末装置」であり(構成b)、「ネット家電や携帯端末などは、オープンなネットワークに接続する端末装置であ」る(構成c)が、引用発明の「パケット処理装置100」の「パケット受信部110」が「オープンなネットワーク」とどのように接続しているのかは明らかではない。よって、引用発明は、本件補正発明のような「内部ネットワーク」を備えるか否かが明らかではない。
したがって、本件補正発明の「データ」の「受信」は、「ファイアウォール装置により不適切なデータがインターネットから侵入することが防止された内部ネットワークにおいて」行われるのに対し、引用発明の「受信パケット」の「受信」は、そのような内部ネットワークにおいて行われるか不明である点で相違する。
エ 発明特定事項C2について
発明特定事項C2は、「前記判断の結果、前記データが前記条件を満たさない場合に、前記データを廃棄する」というものである。
引用発明は、前記ウで触れた「通過設定テーブル220の検索を行って、通過設定テーブル220に一致するエントリがあるか否か」の判断を受けて、「通過設定テーブル220に一致するエントリがない場合は受信パケットの廃棄を行」う(構成e)ものである。
よって、本件補正発明と引用発明とは、「前記判断の結果、前記データが前記条件を満たさない場合に、前記データを廃棄する」点で一致する。
オ 発明特定事項Cについて
発明特定事項Cは、発明特定事項C1及びC2を実行する「判断部」を特定するものである。
引用発明の「通過判定部210」は、前記ウ及びエに示した動作を行うのであるから、本件補正発明の「判断部」に相当する。
カ 発明特定事項Dについて
発明特定事項Dは、「前記送受信部と前記記憶部と前記判断部とを格納する筐体と、」というものである。
引用文献には筐体についての記載がなく、引用発明が筐体を備えるか否かは不明である。
よって、本件補正発明は「前記送受信部と前記記憶部と前記判断部とを格納する筐体」を備えるのに対し、引用発明は「パケット受信部110」、「パケット送信部120」、「通過設定テーブル220」及び「通過判定部210」を格納する筐体を備えるか否かが不明である点で相違する。
キ 発明特定事項Eについて
発明特定事項Eは、発明特定事項A~Dを備える「エンド端末」を特定するものである。
引用発明の「パケット処理装置100」は、「ネット家電や携帯端末等のネットワークに接続される端末装置」である(構成b)から、エンドポイントの端末という意味で、エンド端末といえる。
そして、引用発明の「パケット処理装置100」が「パケット受信部110」、「パケット送信部120」、「通過設定テーブル220」及び「通過判定部210」を備えることは前述のとおりである。
よって、本件補正発明と引用発明とは、送受信部、記憶部及び判断部を備える「エンド端末」である点で一致する。
ク 一致点及び相違点
前記ア~キによれば、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。
〈一致点〉
「データを送受信する送受信部と、
前記データが正規の通信であることを判断するための条件を記憶する記憶部と、
前記条件に基づき、前記送受信部が送信または受信する前記データを判断し、前記判断の結果、前記データが前記条件を満たさない場合に、前記データを廃棄する判断部と、
を備えるエンド端末。」である点。
〈相違点1〉
本件補正発明の「データ」の「受信」は、「ファイアウォール装置により不適切なデータがインターネットから侵入することが防止された内部ネットワークにおいて」行われるのに対し、引用発明の「受信パケット」の「受信」は、そのような内部ネットワークにおいて行われるか不明である点。
〈相違点2〉
本件補正発明は「前記送受信部と前記記憶部と前記判断部とを格納する筐体」を備えるのに対し、引用発明は「パケット受信部110」、「パケット送信部120」、「通過設定テーブル220」及び「通過判定部210」を格納する筐体を備えるか否かが不明である点。
(4)相違点1についての判断
相違点1について判断の判断は、以下のとおりである。
ア 本件補正発明は「エンド端末」についての発明である。
他方「ファイアウォール」は、「組織内のコンピューターやネットワークを、外部からの不正なアクセスから守るためのシステム」であり(広辞苑)、技術常識によれば、ファイアウォールを通過してもデータのフォーマットは変化しない。
そうすると、本件補正発明の「エンド端末」がデータを受信し、当該データが「条件」を満たさない場合に当該データを破棄するという動作は、当該データがファイアウォールを経由したものであるか否かにより左右されない。
したがって、本件補正発明において「データ」を「受信」するのが「ファイアウォール装置により不適切なデータがインターネットから侵入することが防止された内部ネットワークにおいて」であるか否かは、エンド端末及び内部ネットワークからなるシステムを特定するものの、「エンド端末」それ自体を特定する事項ではないから、相違点1は実質的な相違点にはなり得ない。
イ 仮に、相違点1が「エンド端末」を特定するものであるとしても、相違点1に係る構成は、以下に示すように、当業者が引用発明から容易になし得る。
引用発明は「オープンなネットワークに接続する端末装置であ」る(構成c)。
オープンなネットワークに端末装置を接続する際に、ファイアウォールを介して、端末装置を接続する内部ネットワークのセキュリティを担保することは、文献を挙げるまでもない周知技術である。
よって、引用発明の端末装置である「パケット処理装置100」を「オープンなネットワーク」に接続するにあたり、ファイアウォール装置により不適切なデータがオープンネットワーク(例えばインターネット)から侵入することが防止された内部ネットワークを用意し、当該内部ネットワークにおいて「パケット受信部110」がパケットを受信するように構成することは、当業者の通常の創作能力の発揮に過ぎず、容易になし得たことと認められる。
ウ 前記ア及びイのとおりであるから、相違点1は実質的な相違点ではなく、仮に実質的な相違点であったとしても、当業者が容易になし得た程度のものに過ぎない。
(5)相違点2について
引用発明の「パケット処理装置100」は、「ネット家電や携帯端末等のネットワークに接続される端末装置」であり(構成b)、ネット家電や携帯端末等の端末装置は、一般に、筐体に格納されている。
したがって、引用発明の「パケット処理装置100」を格納する筐体を用い、該筐体に「パケット処理装置100」の構成要素である「パケット受信部110」、「パケット送信部120」、「通過設定テーブル220」及び「通過判定部210」を格納するように構成することは、当業者の通常の創作能力の発揮に過ぎず、格別の困難性は認められない。
(6)効果について
本件補正発明が奏する効果は、引用発明に比べて格別のものであるとはいえない。
(7)請求人の主張について
請求人は、引用文献に記載の「ネットワーク」について、引用文献には「ファイアウォール装置により不適切なデータがインターネットから侵入することが防止された」内部ネットワークであることは記載されておらず、この構成により、内部LANに接続されたエンド端末同士の想定していない通信(例えば、ウイルス感染に起因する異常な通信)や、エンド端末の故障等により生じるエンド端末固有の異常な通信の検出を可能にするという、有利な効果を奏するとして、本件補正発明の進歩性を主張する。
しかしながら、「ファイアウォール装置により不適切なデータがインターネットから侵入することが防止された内部ネットワーク」である点については、前記(4)のとおりである。
また、内部LANに接続されたエンド端末同士の想定していない通信や、エンド端末の故障等により生じるエンド端末固有の異常な通信の検出は、ファイアウォール装置の有無によらず、引用発明を内部LANに接続することにより得られる効果に過ぎないから、格別のものではない。
したがって、請求人の主張は採用できない。
(8)小括
以上によれば、本件補正発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。
4 本件補正についてのむすび
前記3によれば、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明
本件補正は上述のとおり却下されたため、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1(1)のとおりである。
第4 原査定の概要
原査定の概要は、以下のとおりである。
(進歩性)この出願の請求項1~10に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の文献1に記載された発明、文献2に示される周知技術及び文献3に示される周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
文献1.特開2006-345268号公報
文献2.米国特許出願公開第2010/0165878号明細書
文献3.特開2009-65294号公報
第5 文献の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された文献1(この審決における引用文献に対応)の記載事項は、前記第2[理由]3(2)に記載したとおりである。
第6 本願発明と引用発明との対比・判断
本願発明は、前記第2[理由]3で検討した本件補正発明の発明特定事項である「内部ネットワーク」に係る「ファイアウォール装置により不適切なデータがインターネットから侵入することが防止された」との限定事項を削除したものである(前記第2[理由]2を参照)。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2[理由]3に示したとおり、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-001771