特許拒絶査定不服審判
2023-001323
対物レンズ系、観察装置、露光装置、及びデバイス製造方法
- 審判番号
- 2023-001323
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-225826外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年01月26日
- 審決日
- 2024年04月15日
- 公報発行日
- 2024年07月26日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .113-Z (G02B) / P18 .561-Z (G02B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-225826「対物レンズ系、観察装置、露光装置、及びデバイス製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 6月 4日出願公開、特開2020- 86406〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)11月30日を出願日とする出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。
令和 4年 7月20日付け:拒絶理由通知書
令和 4年 9月 8日 :意見書・手続補正書の提出
令和 4年10月24日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和 5年 1月26日 :審判請求書・手続補正書(以下、この手続補正書でされた補正を「本件補正」という。)の提出
第2 令和5年1月26日にされた手続補正(本件補正)についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年1月26日にされた手続補正を却下する。
[理由]
1 本件補正の適否
本件補正は、以下のとおり、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本願当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえないことから、特許法第17条の2第3項の規定に違反しているものである。
(1)本件補正の内容
ア 本件補正は、本件補正前の請求項1の
「物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、
負の屈折力を有する第1部分レンズ群と、正の屈折力を有する第2部分レンズ群とを備え、全体として正の屈折力を有し少なくとも一つの正レンズを含む第2レンズ群と、
負の屈折力を有する第3レンズ群とから構成され、
以下の条件を満たす対物レンズ系。
30 < ν2p < 50
-0.004 < Δθ2p(gF) < -0.0015
-0.003 < Δθ2p(Ct) < 0.003
ただし、
ν2p:前記第2レンズ群に含まれる少なくとも一つの正レンズの硝材のアッベ数
Δθ2p(gF):前記硝材のgF異常分散性を示す値
Δθ2p(Ct):前記硝材のCt異常分散性を示す値」
の記載(当審注:条件式中の「Δθ2p(ct)」は「Δθ2p(Ct)」の明らかな誤記であるため、誤記を訂正して認定した。)を、
「物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、
負の屈折力を有する第1部分レンズ群と、正の屈折力を有する第2部分レンズ群とを備え、全体として正の屈折力を有し少なくとも一つの正レンズを含む第2レンズ群と、
負の屈折力を有する第3レンズ群とから構成され、
以下の条件を満たす対物レンズ系。
30 < ν2p < 50
-0.004 < Δθ2p(gF) < -0.0015
-0.003 < Δθ2p(Ct) < 0.003
ただし、
ν2p:前記第2レンズ群に含まれる少なくとも一つの正レンズの硝材のアッベ数
Δθ2p(gF):前記硝材のgF異常分散性を示す値
Δθ2p(Ct):前記硝材のCt異常分散性を示す値
であり、前記硝材のg線に対する屈折率をng、前記硝材のF線に対する屈折率をnF、前記硝材のC線に対する屈折率をnC、前記硝材のt線に対する屈折率をntとするとき、
Δθ2p(gF)=(ng-nF)/(nF-nC)
Δθ2p(Ct)=(nC-nt)/(nF-nC)
である。」(当審注:下線は補正箇所である。また、上記した本件補正前の請求項1の記載と同様に、条件式中の「Δθ2p(ct)」は「Δθ2p(Ct)」の明らかな誤記であるため、誤記を訂正して認定した。)
に補正する事項(以下「本件補正事項」という。)を含むものである。
イ 前記アによれば、本件補正事項は、「第2レンズ群に含まれる少なくとも一つの正レンズの硝材」(以下「本件硝材」という。)について、
本件硝材のg線に対する屈折率をng、F線に対する屈折率をnF、C線に対する屈折率をnC、t線に対する屈折率をntとするとき、
本件硝材のgF異常分散性を示す値Δθ2p(gF)が(ng-nF)/(nF-nC)(以下、この数式を「補正後Δθg,F数式」という。)であり、
本件硝材のCt異常分散性を示す値Δθ2p(Ct)が(nC-nt)/(nF-nC)(以下、この数式を「補正後ΔθC,t数式」という。)であることを明らかにする技術的事項に係るものである。
(2)本願当初明細書等の記載
ア 本願当初明細書等には、本件補正事項について次の記載がある。
(ア)「【0049】
ここで異常分散性について説明する。
二次スペクトルの色消しの効果を有効にするには、輝線x及び輝線yについて、その部分分散比θx,yとアッベ数νdとの間の関係をある関係にすることが要求される。ここで部分分散比θx,yは、式(18)によって示される。
【0050】
【数1】 θx,y=(nx-ny)/(nF-nC) …(18)
【0051】
各硝材の部分分散比θx,yとアッベ数νdとの関係は、アッベ数νdを横軸とし部分分散比θx,yを縦軸とする座標平面上における点として図示することができる。当該座標平面を、θx,y-νd図という。
【0052】
θx,y-νd図中、多数の硝材は直線に沿って分布する。θx,y-νd図において、当該直線から離れた位置にある点に対応する硝材は異常分散性のあることを示す。
本明細書においては、θx,y-νd図において、当該硝材に対応する点の横軸の座標の値における、基準線と当該硝材に対応する点との縦軸の座標の値(部分分散比θx,y)の差が、異常分散性を示す値Δθx,yとして定義される。なお、当該硝材の部分分散比θx,yが基準線よりも上側にある場合にΔθx,yは正の値をとり、基準線よりも下側にある場合にΔθx,yは負の値をとる。
また、本明細書における基準線とは、511605-NSL7及び620363-PBM2(ともに株式会社オハラ社製の硝材名)を基準材として選び、θx,y-νd図において、511605-NSL7に対応する点と620363-PBM2に対応する点とを結ぶ直線として定義される。
【0053】
下記の表に511605-NSL7及び620363-PBM2の部分分散比θx,yと、アッベ数νdとを示す。
θC,t θC,A’ θg,d θg,F θi,g νd
NSL7 0.8305 0.3492 1.2391 0.5436 1.2185 60.49
PBM2 0.7168 0.3198 1.2894 0.5828 1.4214 36.26
」
(イ)本願当初明細書等には、本件硝材についての異常分散性を示す値Δθ2p(gF)及びΔθ2p(Ct)の具体的な値は記載されていない。
イ 前記アによれば、本願当初明細書等には、硝材の異常分散性を示す値に関連して、次の技術的事項が記載されていると認められる。なお、本願の明細書及び図面の記載は、【0004】、【0046】及び【0062】を除き、本願当初明細書等の記載から変更されておらず、以下で認定した技術的事項は、本件補正後の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件補正後明細書等」という。)においても維持されている。
(ア)硝材の異常分散性を示す値Δθx,yは、θx,y-νd図において、当該硝材に対応する点の横軸の座標の値における、基準線と当該硝材に対応する点との縦軸の座標の値(部分分散比θx,y)の差として定義される(【0052】)。ここで、x及びyは、輝線を示している(【0049】)。
Δθx,yは、当該硝材の部分分散比θx,yが基準線よりも上側にある場合に正の値をとり、基準線よりも下側にある場合に負の値をとる(【0052】)。
(イ)前記(ア)におけるθx,y-νd図は、アッベ数νdを横軸とし部分分散比θx,yを縦軸とする座標平面である(【0051】)。
(ウ)前記(ア)における硝材の部分分散比θx,yは、
θx,y=(nx-ny)/(nF-nC)
として示される(【0049】・【0050】)。
(エ)前記(ア)における基準線は、θx,y-νd図において、基準材として選ばれた511605-NSL7及び620363-PBM2に対応する点同士を結ぶ直線として定義される(【0052】)。
そして、輝線(x、y)が(g、F)及び(C、t)のとき、511605-NSL7及び620363-PBM2の部分分散比θx,yとアッベ数νdは、次のとおりである(【0053】)。
θC,t θg,F νd
NSL7 0.8305 0.5436 60.49
PBM2 0.7168 0.5828 36.26
(3)判断
ア 本件補正事項は、前記(1)イのとおり、本件硝材のgF異常分散性を示す値Δθ2p(gF)とCt異常分散性を示す値Δθ2p(Ct)が、それぞれ、補正後Δθg,F数式及び補正後ΔθC,t数式として表されることを明らかにするものであるところ、これらの補正後Δθg,F数式及び補正後θΔC,t数式は、前記(2)イ(ウ)(なお、当該箇所は、本願当初明細書等の記載に係るものであるが、同イの冒頭に説示したとおり、本件補正後明細書等の記載においても維持されている。)によれば、それぞれ、本件硝材の部分分散比θg,F及びθC,t(以下、それぞれ、「gF部分分散比」及び「Ct部分分散比」という。)を示す数式と等しくなっている。
このように、本件補正事項によって、本件硝材のgF異常分散性を示す値及びCt異常分散性を示す値が、それぞれ、本件硝材のgF部分分散比及びCt部分分散比と等しいという技術的事項が明らかにされたことになる。
イ しかしながら、本願当初明細書等では、(本件硝材に限らず)硝材のgF異常分散性を示す値及びCt異常分散性を示す値は、当該硝材のgF部分分散比及びCt部分分散比とは異なるものとして記載されていたのであり、このことは、前記(2)イ(ア)のとおり、硝材のgF異常分散性を示す値が、θg,F-νd図において、硝材に対応する点の横軸の座標の値(つまり、当該硝材のνdの値)における、基準線上の部分分散比θg,Fの値と当該硝材のgF部分分散比の値との差として定義されており、Ct異常分散性についても同様であることからみて明らかである。加えて、本願当初明細書等には、前記(2)ア(イ)のとおり、本件硝材についてのgF異常分散性を示す値及びCt異常分散性を示す値の具体的な値は記載されていないことから、硝材のgF異常分散性を示す値及びCt異常分散性を示す値と、当該硝材のgF部分分散比及びCt部分分散比との関係を具体的な値をもって推し量ることもできない。
そして、硝材のgF異常分散性を示す値及びCt異常分散性を示す値が、それぞれ、当該硝材のgF部分分散比及びCt部分分散比と等しいとする技術常識が存在するともいえない。
ウ このように、本件補正事項によって、本件硝材のgF異常分散性を示す値及びCt異常分散性を示す値が、それぞれ、本件硝材のgF部分分散比及びCt部分分散比と等しいという技術的事項が明らかにされた一方、本願当初明細書等には、そのようなことは記載されておらず、むしろ、両者が異なるものとして記載されており、しかも、両者が等しいとする技術常識があるともいえないことから、本件補正事項に係る技術的事項が、本願当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないとはいえない。
エ これに対し、請求人は、本件補正事項に係る技術的事項が本願当初明細書等の【0049】及び【0050】等に記載されている旨主張するが、そのようなことが記載されていないことは、前述したとおりである。
オ したがって、本件補正は、本願当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項の規定に違反しているものである。
2 小括
以上のとおりであるから、本件補正は、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明の認定
本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和4年9月8日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~13に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2の[理由]1(1)アにおいて本件補正前の請求項1として記載された事項により特定されるとおりのものであり、これを再掲すると次のとおりである。
「物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、
負の屈折力を有する第1部分レンズ群と、正の屈折力を有する第2部分レンズ群とを備え、全体として正の屈折力を有し少なくとも一つの正レンズを含む第2レンズ群と、
負の屈折力を有する第3レンズ群とから構成され、
以下の条件を満たす対物レンズ系。
30 < ν2p < 50
-0.004 < Δθ2p(gF) < -0.0015
-0.003 < Δθ2p(Ct) < 0.003
ただし、
ν2p:前記第2レンズ群に含まれる少なくとも一つの正レンズの硝材のアッベ数
Δθ2p(gF):前記硝材のgF異常分散性を示す値
Δθ2p(Ct):前記硝材のCt異常分散性を示す値」
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、出願前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、というものを含むものである。
3 引用文献等の記載事項及び引用発明の認定
(1)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2014-35458号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある。(下線は当審が付した。)
ア 「【発明を実施するための形態】」
「【0031】
以下、実施の形態を説明する。
図1~図6に撮像光学系の実施の形態を6例示す。これらの図は、順次、後述する実施例1~6に対応する。
混同の恐れはないと思われるので、繁雑を避けるため、これらの図において符号を共通化する。
【0032】
図1~図6において、上図は「無限遠合焦時」のレンズ群の配置を示し、下図は「撮影近距離物体に合焦させたとき」のレンズ群の配置を示す。」
「【0034】
図1~図6の下図に示すように、符号1Gは第1レンズ群、符号Sは開口絞り、符号2Gは第2レンズ群を示す。
【0035】
第2レンズ群2Gは「正のパワー」を持つが、第1レンズ群1Gは、正・負何れのパワーも採りうる。
【0036】
符号2FGは第2レンズ群2Gの物体側の第2Fレンズ群、符号2RGは第2レンズ群2Gの像側の第2Rレンズ群を示す。
【0037】
さらに、符号2FaGは第2Faレンズ群、符号2FbGは第2Fbレンズ群を示す。
【0038】
第2Faレンズ群2FaGと第2Fbレンズ群2FbGは、第2レンズ群2Gの物体側の第2Fレンズ群2FGを構成し、物体側から上記順序に配列される。
【0039】
第2Faレンズ群2FaGと第2Fbレンズ群2FbGにより構成される第2Fレンズ群2FGは「正のパワー」をもつ。
第2Fbレンズ群2FbGは正のパワーを持つが、第2Faレンズ群2FaGは、正・負のパワーを採りうる。
上記各図において、符号Fは「2枚の透明平行平板」を示す。」
「【0090】
性能のさらなる向上のためには、開口絞りに近いレンズ要素を、以下のようにするのが良い。
【0091】
即ち、第1レンズ群の最も像面側は「正レンズと負レンズとの接合レンズ」、第2Fレンズ群の最も物体側は「正レンズと負レンズとの接合レンズ」とするのが良い。
【0092】
なお、これら接合レンズを構成する正・負のレンズは、その配置順序は任意である。正レンズが物体側でも、負レンズが物体側でもよい。
【0093】
このように、「正・負の接合レンズ」を、開口絞りを挟んで配置することにより、屈折力配置の対称性をある程度保ちながら、軸上色収差の効果的な補正が可能となる。
また、絞りに近いレンズ要素は「球面収差の補正を大きく行うレンズ要素」であり、製造誤差による像性能劣化を生じやすい。
このようなレンズ要素を上記の如く接合レンズとすることにより、製造誤差をある程度抑え、像性能劣化を抑制することが可能となる。」
「【0108】
以上に説明したような「カメラ装置を撮影機部として有する携帯情報端末装置」には、実施例1~6の撮像光学系を撮影レンズ1として使用できる。」
イ 「【実施例】」
「【0111】
実施例における記号の意味は以下の通りである。
【0112】
f:全系の焦点距離
Fno:Fナンバ
ω:半画角
Y':最大像高
R:曲率半径
D:面間隔
BF:バックフォーカス
Nd:d線における屈折率
νd:アッベ数
K:非球面の円錐定数
A4:4次の非球面係数
A6:6次の非球面係数
A8:8次の非球面係数
A10:10次の非球面係数 。」
「【0145】
「実施例6」
実施例6のデータを以下に挙げる。
【0146】
f=18.30、 Fno=2.88、 ω=38.45
面番号 R D Nd νd 硝種
1 95.94400 0.80 1.49710 81.56 M-FCD1(HOYA)
2* 9.61000 0.88
3 19.03000 2.10 1.91082 35.25 TAFD35(HOYA)
4 -34.60400 0.21
5 -23.53100 0.80 1.78472 25.68 S-TIH11(OHARA)
6 7.84000 1.74 1.91082 35.25 TAFD35(HOYA)
7 43.16500 1.05
8 (絞り) 2.544
9 26.51100 3.03 1.88300 40.76 S-LAH58(OHARA)
10 -9.86700 0.80 1.59270 35.31 S-FTM16(OHARA)
11 -134.93700 可変間隔A
12 -26.84200 1.87 1.80139 45.45 M-TAF31(HOYA)
13* -12.17600 可変間隔B
14* -13.74500 1.00 1.82115 24.06 M-FDS910(HOYA)
15 -82.00900 4.175
16 ∞ 0.70 1.53770 66.60 各種フィルタ
17 ∞ 0.10
18 ∞ 0.70 1.50000 64.00 各種フィルタ
19 ∞ BF 。
【0147】
「非球面」
非球面のデータを以下に挙げる。
【0148】
「第2面」
K=0.0, A4= 8.09954E-05, A6= 4.35075E-06, A8= -1.29371E-07,
A10= 2.75854E-09
「第13面」
K=-9.46901, A4= -4.18120E-04, A6= 8.64773E-06, A8= -1.17782E-07,
A10= 8.20914E-10
「第14面」
K= 0.0, A4= 3.01081E-06, A6= -2.11694E-06, A8= -1.31311E-09 。
【0149】
「可変量」
可変量のデータを以下に示す。
無限遠合焦時 近距離合焦時(撮影倍率:1/20)
A 4.06340 3.29953
B 1.31520 2.07907 。
【0150】
「条件のパラメータの値」
各条件のパラメータの値は、以下の通りである。
【0151】
(1) 1.148
(2) 0.695
(3) 0.904
(4) 1.563
(5) 0.057
(6) 1.214
(7) 0.643 。」
「【図6】
[図:0001411839000001.jpg]
」
(2)引用文献1の記載に基づいて当業者が把握できる技術的事項
前記(1)によれば、当業者は、実施例6に係る撮像光学系として使用される撮影レンズ1(【0108】・【0145】~【0151】)について、次の技術的事項を把握できると認められる。
ア 実施例6に係る撮像光学系は、
物体側から順に、
面番号1と2の面から構成されるレンズ(以下「レンズL1」という。)、
面番号3と4の面から構成されるレンズ(以下「レンズL2」という。)、
面番号5と6の面から構成されるレンズ(以下「レンズL3」という。)、
面番号6と7の面から構成されるレンズ(以下「レンズL4」という。)、
面番号9と10の面から構成されるレンズ(以下「レンズL5」という。)、
面番号10と11の面から構成されるレンズ(以下「レンズL6」という。)、
面番号12と13の面から構成されるレンズ(以下「レンズL7」という。)、
面番号14と15の面から構成されるレンズ(以下「レンズL8」という。)、
の合計8枚のレンズから構成されている(【0146】・図6)。
イ レンズL4の硝種は「TAFD35(HOYA)」である(【0146】)ところ、当該「TAFD35(HOYA)」の光学特性は、次のとおりであることが出願時における技術常識であると認められる(HOYAグループオプティクス事業部のウェブページ(https://www.hoya-opticalworld.com/index.html)における「データダウンロード」の項を参照。)。
屈折率(d線) nd=1.91082
屈折率(g線) ng=1.94412
屈折率(F線) nF=1.92907
屈折率(C線) nC=1.90323
屈折率(t線) nt=1.88481
ng-nF=0.015044
nF-nC=0.025839
nC-nt=0.018424
アッベ数(d線)νd=35.25
なお、当該ウェブサイト中の当該項における「データ変更履歴」(https://www.hoya-opticalworld.com/japanese/datadownload/data_up.html)の内容からみて、上記の光学特性に特段の変更があったものとは認められない。
(3)引用発明の認定
前記(1)及び(2)によれば、引用文献1には、実施例6に係る撮像光学系として使用される撮影レンズ1(【0149】記載の「無限遠合焦時」のもの)について、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(当審注:引用発明の認定に用いた段落番号等を参考までに括弧内に付してある。)。
「撮影レンズ1であって、(【0108】)
物体側から順に、
面番号1と2の面から構成されるレンズL1、
面番号3と4の面から構成されるレンズL2、
面番号5と6の面から構成されるレンズL3、
面番号6と7の面から構成されるレンズL4、
面番号9と10の面から構成されるレンズL5、
面番号10と11の面から構成されるレンズL6、
面番号12と13の面から構成されるレンズL7、
面番号14と15の面から構成されるレンズL8、
の合計8枚のレンズから構成されており、(前記(2)ア)
データは、
面番号 R D Nd νd 硝種
1 95.94400 0.80 1.49710 81.56 M-FCD1(HOYA)
2* 9.61000 0.88
3 19.03000 2.10 1.91082 35.25 TAFD35(HOYA)
4 -34.60400 0.21
5 -23.53100 0.80 1.78472 25.68 S-TIH11(OHARA)
6 7.84000 1.74 1.91082 35.25 TAFD35(HOYA)
7 43.16500 1.05
8 (絞り) 2.544
9 26.51100 3.03 1.88300 40.76 S-LAH58(OHARA)
10 -9.86700 0.80 1.59270 35.31 S-FTM16(OHARA)
11 -134.93700 4.06340
12 -26.84200 1.87 1.80139 45.45 M-TAF31(HOYA)
13* -12.17600 1.31520
14* -13.74500 1.00 1.82115 24.06 M-FDS910(HOYA)
15 -82.00900 4.175
16 ∞ 0.70 1.53770 66.60 各種フィルタ
17 ∞ 0.10
18 ∞ 0.70 1.50000 64.00 各種フィルタ
19 ∞ BF
であり、(【0146】、【0149】)
ここで、
R:曲率半径
D:面間隔
BF:バックフォーカス
Nd:d線における屈折率
νd:アッベ数
を意味し、(【0112】)
レンズL4に用いられる硝種であるTAFD35(HOYA)は、
g線における屈折率とF線における屈折率との差ng-nFが0.015044であり、
F線における屈折率とC線における屈折率との差nF-nCが0.025839であり、
C線における屈折率とt線における屈折率との差nC-ntが0.018424である、(前記(2)イ)
撮影レンズ1。」
4 本願発明と引用発明との対比
(1)本願発明の「物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第1部分レンズ群と、正の屈折力を有する第2部分レンズ群とを備え、全体として正の屈折力を有し少なくとも一つの正レンズを含む第2レンズ群と、負の屈折力を有する第3レンズ群とから構成され」る「対物レンズ系」との特定事項について
ア 引用発明の「撮影レンズ1」は、本願発明の「対物レンズ系」に相当する。
イ 本願発明と引用発明とは、「物体側から順に」複数のレンズ「から構成され」ている点で共通することが明らかである。
ウ したがって、本願発明と引用発明とは、「物体側から順に」複数のレンズ「から構成され」ている「対物レンズ系」である点で共通する。しかし、複数のレンズが、本願発明は、「正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第1部分レンズ群と、正の屈折力を有する第2部分レンズ群とを備え、全体として正の屈折力を有し少なくとも一つの正レンズを含む第2レンズ群と、負の屈折力を有する第3レンズ群」とから構成されるものである一方、引用発明は、そのようにいえるのかが不明である。
(2)本願発明の「30 < ν2p < 50
-0.004 < Δθ2p(gF) < -0.0015
-0.003 < Δθ2p(ct) < 0.003
ただし、
ν2p:前記第2レンズ群に含まれる少なくとも一つの正レンズの硝材のアッベ数
Δθ2p(gF):前記硝材のgF異常分散性を示す値
Δθ2p(Ct):前記硝材のCt異常分散性を示す値」という「条件を満たす」との特定事項について
ア 引用発明の「レンズL4」は、「面番号6と7の面から構成される」ところ、その曲率半径からみて、正レンズといえることから、当該「レンズL4」は本願発明の「少なくとも一つの正レンズ」に相当する。
イ 引用発明の「レンズL4」の硝種である「TAFD35(HOYA)」は、次のとおり、上記特定事項における3つの条件式を満たしている。ここで、上記の3つの条件式は、次のとおりである(なお、本願発明の条件式に係る添え字の「2p」は、「第2レンズ群に含まれる」「正レンズ」を意味するところ、引用発明の「レンズL4」は前記アのとおり「正レンズ」といえる一方、「第2レンズ群に含まれる」といえるかは別途認定判断することから、ここでは、当該添え字のうち「2」を省いて「p」として表している。)。
条件式(1):30 < νp < 50
条件式(2):-0.004 < Δθp(gF) < -0.0015
条件式(3):-0.003 < Δθp(Ct) < 0.003
(ア)「TAFD35(HOYA)」の条件式(1)該当性について
TAFD35(HOYA)のアッベ数は、「35.25」であるから、本願発明と引用発明とは、条件式(1)、つまり、「30 < νp < 50」を満たす点で共通する。
(イ)「TAFD35(HOYA)」の条件式(2)及び(3)該当性について
a 本願発明の「硝材のgF異常分散性を示す値」(Δθ(gF))及び「硝材のCt異常分散性を示す値」(Δθ(Ct))の意味について検討すると、本件補正前の本願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件補正前明細書等」という。)の【0052】には、前記第2の1(2)イと同一の技術的事項が記載されている。
そうすると、Δθ(gF)は、θg,F-νd図において、当該硝材に対応する点の横軸の座標の値(当該硝材のアッベ数)における、基準線と当該硝材に対応する点との縦軸の座標の値(部分分散比θg,F、つまり、gF部分分散比)の差を意味しており、また、Δθ(Ct)は、上記の「g」及び「F」をそれぞれ「C」及び「t」に置き換えた内容を意味していることになる。
また、基準線は、θg,F-νd図及びθC,t-νd図における511605-NSL7に対応する点と620363-PBM2に対応する点同士を結ぶ直線(以下、それぞれ、「gF基準線」及び「Ct基準線」という。)を意味している。そして、これらの硝材のアッベ数νd、θg,F及びθC,t(前記第2の1(2)イ)によれば、基準線を表す数式は、次のとおりであると認められる。
gF基準線:θg,F=-0.001618νd+0.6415
Ct基準線:θC,t=0.004693νd+0.5466
b これを引用発明の「TAFD35(HOYA)」についてみると、前記3(3)で認定したとおり、「レンズL4に用いられる硝種であるTAFD35(HOYA)」は、「g線における屈折率とF線における屈折率との差ng-nFが0.015044であり、F線における屈折率とC線における屈折率との差nF-nCが0.025839であり、C線における屈折率とt線における屈折率との差nC-ntが0.018424である」。そして、そのアッベ数は、「35.25」である。
そこで、まず、「TAFD35(HOYA)」のgF部分分散比及びCt部分分散比を求めると、
gF部分分散比=0.5822(0.015044÷0.025839)
Ct部分分散比=0.7130(0.018424÷0.025839)
であると認められる。
次に、「TAFD35(HOYA)」のアッベ数35.25におけるgF基準線上のθg,Fの値は、0.5844であり、同じくCt基準線上のθC,tの値は、0.7121であると認められる。
そうすると、「TAFD35(HOYA)」におけるΔθ(gF)及びΔθ(Ct)は、
Δθ(gF)=0.5822-0.5844=-0.0022
Δθ(Ct)=0.7130-0.7121=0.0009
であると認められる。
c 前記bによれば、引用発明の「TAFD35(HOYA)」は、条件式(2)及び(3)を満たしている。
(ウ)したがって、引用発明の「レンズL4」の硝種である「TAFD35(HOYA)」は、条件式(1)~(3)を満たしている。
ウ したがって、本願発明と引用発明とは、「少なくとも一つの正レンズ」が、条件式(1)~(3)を満たしている点で共通するが、当該各条件式を満たす「少なくとも一つの正レンズ」が、本願発明は、「第2レンズ群に含まれる」ものであるのに対し、引用発明は、それに相当する「レンズL4」がそのようにいえるかが不明である。
5 一致点及び相違点の認定
前記4によれば、本願発明と引用発明とは、
「物体側から順に、複数のレンズから構成されており、
以下の条件を満たす対物レンズ系。
30 < νp < 50
-0.004 < Δθp(gF) < -0.0015
-0.003 < Δθp(Ct) < 0.003
ただし、
νp:対物レンズ系に含まれる少なくとも一つの正レンズの硝材のアッベ数
Δθp(gF):前記硝材のgF異常分散性を示す値
Δθp(Ct):前記硝材のCt異常分散性を示す値」
である点で一致し、次の点で一応相違する。
<相違点1>
複数のレンズが、本願発明は、「物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第1部分レンズ群と、正の屈折力を有する第2部分レンズ群とを備え、全体として正の屈折力を有し少なくとも一つの正レンズを含む第2レンズ群と、負の屈折力を有する第3レンズ群とから構成され」るものであるのに対し、引用発明は、そのようにいえるのかが不明である点。
<相違点2>
条件式(1)~(3)を満たす「少なくとも一つの正レンズ」が、本願発明は、「第2レンズ群に含まれる」ものであるのに対し、引用発明は、それに相当する「レンズL4」がそのようにいえるかが不明である点。
6 相違点の判断
(1)相違点1及び2をまとめて検討する。
ア まず、相違点1及び2に係る本願発明の「レンズ群」の意味を検討すると、「レンズ群」とは、一般に、光線の進行する方向に沿って順に存在する一又は複数のレンズを意味すると解される。そして、本件補正前明細書等の記載をみても、その理解で特段差し支えることはないといえる。
イ そこで、引用発明において、相違点1及び2に係る本願発明の構成を満たす「レンズ群」を観念できるかについてみると、引用発明は、「レンズL1」~「レンズL8」の8枚のレンズが物体側から順に存在することから、この存在順は光線の進行する方向に沿った順に等しくなることとなり、そのため、「レンズL1」及び「レンズL2」を第1レンズ群と称し、「レンズL3」~「レンズL6」を第2レンズ群と称し、そのうち、「レンズL3」及び「レンズL4」を第1部分レンズ群と称するとともに「レンズL5」及び「レンズL6」を第2部分レンズ群と称し、さらに、「レンズL7」及び「レンズL8」を第3レンズ群と称してもよいことになる。
そして、引用発明において上記のとおりに各レンズ群を称した場合、各レンズ群の焦点距離は、
第1レンズ群(L1,L2) =32.78
第2レンズ群(L3~L6) =25.21
第1部分レンズ群(L3,L4)=-25.80
第2部分レンズ群(L5,L6)=15.34
第3レンズ群(L7,L8) =-93.72
であると認められる。
この場合、相違点2に係る本願発明の「少なくとも一つの正レンズ」に相当する「レンズL4」は、第2レンズ群に含まれている。
ウ 前記イによれば、引用発明は、相違点1に係る本願発明の構成のように、「物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第1部分レンズ群と、正の屈折力を有する第2部分レンズ群とを備え、全体として正の屈折力を有し少なくとも一つの正レンズを含む第2レンズ群と、負の屈折力を有する第3レンズ群とから構成され」ており、同じく相違点2に係る本願発明の構成のように、条件式(1)~(3)を満たす「少なくとも一つの正レンズ」が「第2レンズ群に含まれる」ことから、相違点1及び2に係る本願発明の構成を満たしている。
したがって、相違点1及び2は実質的なものではない。
(2)ア 請求人は、引用発明が相違点1及び2に係る本願発明の構成を満たしていない旨主張し、その根拠として、引用発明の「レンズL1」~「レンズL8」の8枚のレンズを、これらの相違点に係る本願発明の構成を満たすような「レンズ群」に分けることができない旨主張する。
しかしながら、前記(1)で説示したとおりである。なお、原査定は、「レンズL3」~「レンズL6」が本願発明の「第2レンズ群」に相当する旨を説示したところ、この説示は、前記(1)と同様の内容といえるが、請求人はそれについて検討していない。
イ 請求人は、引用発明の「レンズL4」を構成する「TAFD35(HOYA)」が条件式(2)及び(3)を満たさない旨主張し、その根拠として、当該硝材は、アッベ数が40.14、Δθp(gF)が0.570048749、Δθp(Ct)が0.73288077であることを挙げる。
しかしながら、引用発明を開示する引用文献1の【0146】に明記されているとおり、「TAFD35(HOYA)」のアッベ数は35.25である(なお、請求人は、引用発明に係る「TAFD35(HOYA)」ではなく、それとは別の硝材である「TAFD33(HOYA)」に基づく主張をしているようである。)ことから、請求人の主張は、根拠がないものである。
(3)小括
したがって、本願発明は、引用発明である。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-001323