特許異議申立
2022-701290
食肉様加工食品及び食肉様加工食品の製造方法
- 審判番号
- 2022-701290
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-140649
- 登録番号
- 7091403
- 請求日
- 2022年12月22日
- 審決日
- 2023年05月22日
- 公報発行日
- 2023年06月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】伊藤ハム株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人有古特許事務所
- 【異議申立人】加藤 純子
- 審判長/審判官
- 審判長 加藤 友也
- 審判官 平塚 政宏
- 審判官 中村 和正
- 分類
- P1651.537-Y (A23L) / P1651.536-Y (A23L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7091403号発明「食肉様加工食品及び食肉様加工食品の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7091403号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。
理由
理 由
1 手続の経緯
特許第7091403号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし6に係る特許についての出願(特願2020-140649)は、2020年(令和2年)8月24日の出願であって、令和4年6月17日にその特許権の設定の登録がされ、同年同月27日に特許掲載公報が発行され、その後、同年12月22日に特許異議申立人 加藤 純子(以下「申立人」という。)により、請求項1ないし6に係る特許に対し、特許異議の申立てがされたものである。
2 本件発明
本件特許の請求項1ないし6に係る発明は、各々、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、各々「本件発明1」ないし「本件発明6」といい、まとめて「本件発明」という。)。
「【請求項1】
組織加工大豆たん白と、飽和脂肪酸含量7~15重量%の植物油脂を含む食肉様加工食品であって、食肉様加工食品100gあたり飽和脂肪酸を0.5~1.5g、かつ、コレステロールを1~6mg含有し、
さらに、粉末状大豆たん白を含み、
粉末状大豆たん白1重量部に対して、植物油脂が2~3重量部となるように含まれ、
ハンバーグ、ミートボール、メンチカツ、ナゲット、から揚げ、カツ、又は、ハムカツであり、且つ、調理後の食肉様加工食品であることを特徴とする食肉様加工食品。
【請求項2】
組織加工大豆たん白と植物油脂の重量比が、3:4~11:2である、請求項1に記載の食肉様加工食品。
【請求項3】
粉末状大豆たん白1重量部に対して、組織加工大豆たん白が1.5~8重量部となるように含まれている、請求項1又は2に記載の食肉様加工食品。
【請求項4】
(i)たん白、水、植物油脂を含むサスペンションを調製する工程、 (ii)組織加工大豆たん白を2~5倍重量の水を含む戻し液と混合し、戻したん白を調製する戻し工程、 (iii)前記サスペンションと前記戻したん白とを、重量比5:11~16:9で混合する工程、及び (iv)(iii)の混合物を成形する工程、を含み、食肉様加工食品100gあたりの飽和脂肪酸が0.5~1.5g、かつ、コレステロールが1~6mgであり、
食肉様加工食品が、さらに、粉末状大豆たん白を含み、
粉末状大豆たん白1重量部に対して、植物油脂が2~3重量部となるように食肉様加工食品に含まれ、
食肉様加工食品が、ハンバーグ、ミートボール、メンチカツ、ナゲット、から揚げ、カツ、又は、ハムカツであり、且つ、調理後の食肉様加工食品である、食肉様加工食品の製造方法。
【請求項5】
前記サスペンションは、たん白、水、植物油脂を、それぞれ10~15重量%、50~8重量%、1~15重量%の割合で含むサスペンションである、請求項4に記載の食肉様加工食品の製造方法。
【請求項6】
前記たん白が粉末状大豆たん白である、請求項4又は5に記載の製造方法。」
3 申立ての理由の概要
申立人は,甲第1ないし2号証を提示し、次の理由により、本件特許の請求項1ないし6に係る特許は取り消されるべきである旨主張している。
(1)申立理由1(明確性)
本件発明1ないし6に係る特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明確でなく、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、本件発明1ないし6に係る特許は、同法第113条第4号に該当する。
(2)申立理由2(サポート要件)
本件発明1ないし6に係る特許請求の範囲の記載は、発明の詳細な説明に記載したものではなく、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件発明1ないし6に係る特許は、同法第113条第4号に該当する。
(3)申立理由3(実施可能要件)
本件発明1ないし6に係る発明の詳細な説明の記載は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではなく、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件発明1ないし6に係る特許は、同法第113条第4号に該当する。
(4)証拠方法
甲第1号証:日本食品標準成分表2015版(七訂)、第2章 日本食品標準成分表、「14 油脂類」の表の一部、平成27年12月25日 文部科学省 科学技術・学術審議会 資源調査分科会(以下「甲1」という。)
甲第2号証:日本食品標準成分表2015版(七訂)、第2章 日本食品標準成分表、「11 肉類」の表の一部、平成27年12月25日 文部科学省 科学技術・学術審議会 資源調査分科会(以下「甲2」という。)
4 当審の判断
当審は、次のとおり、申立人が提示した特許異議の申立ての理由及び証拠方法によっては、本件特許の請求項1ないし6に係る特許を取り消すことはできないと判断する。
(1)申立理由1(明確性)について
特許を受ける発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術的常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきであるので、以下、検討する。
ア(ア)本件発明1に係る特許請求の範囲の記載は、上記2の【請求項1】のとおりであって、食肉様加工食品について次の特定事項がある。
a 飽和脂肪酸含量7~15重量%の植物油脂を含むこと。
b 食肉様加工食品100gあたり飽和脂肪酸を0.5~1.5g、かつ、コレステロールを1~6mg含有すること。
c 粉末状大豆たん白を含み、粉末状大豆たん白1重量部に対して、植物油脂が2~3重量部となるように含まれること。
d 調理後の食肉様加工食品であること。
(イ)ここで、上記(ア)dによれば、食肉様加工食品は調理後のものであることよりみて、上記(ア)b、cにおける各構成成分の量・割合は、未調理の中間段階のものではなく、調理後の最終製品中のものを意味することが明らかである。請求項1を直接又は間接的に引用して特定する本件発明2及び3も同様である。
(ウ)また、本件特許の明細書段落【0012】の「本発明において、油脂は、植物由来であり、飽和脂肪酸を7~15重量%含むことが望ましい。飽和脂肪酸が7重量%未満の場合は食肉様加工食品の風味、呈味性に乏しく、また15重量%を超えると食した時に口どけが悪くなる。」の記載を考慮すれば、上記(ア)cの「植物油脂」が、上記(ア)aの「飽和脂肪酸含量7~15重量%の植物油脂」を引用しなくとも、飽和脂肪酸含量7~15重量%の植物油脂であることは明らかである。請求項1を直接又は間接的に引用して特定する本件発明2及び3も同様である。
イ(ア)本件発明4に係る特許請求の範囲の記載は、上記2の【請求項4】のとおりであって、食肉様加工食品の製造方法について次の特定事項がある。
e 食肉様加工食品100gあたりの飽和脂肪酸が0.5~1.5g、かつ、コレステロールが1~6mgであること。
f 粉末状大豆たん白1重量部に対して、植物油脂が2~3重量部となるように食肉様加工食品に含まれること。
g 調理後の食肉様加工食品であること。
(イ)ここで、上記(ア)gによれば、食肉様加工食品は調理後のものであることよりみて、上記(ア)eにおける各構成成分の量・割合は、未調理の中間段階のものではなく、調理後の最終製品中のものを意味することが明らかである。請求項4を直接又は間接的に引用して特定する本件発明5及び6も同様である。
ウ(ア)申立人は、本件発明4の構成要件と、本件発明1の構成要件との間には矛盾が生じており、本件発明1の構成要件が調理後の最終段階の構成成分の量・割合を規定しているのか、未調理の中間段階の原料に添加された各構成成分の量・割合を規定しているのか、当業者が技術的な意味を理解することができず、また、調理における加熱等によって、植物油脂やたん白等の構成成分は化学変化を生じ、量・割合は調理の前後において大きく変動することは当該技術分野の技術常識であることから、未調理段階の構成成分の量・割合であるか、調理後の構成成分の量・割合であるかを明確に規定しなければ、当業者は本件発明1を一義的に把握することは到底できない旨主張するが(特許異議申立書第6ないし7頁)、上記ア(イ)の検討結果に照らし、採用できない。
(イ)申立人はまた、本件発明4の構成要件では、「調理後の食肉様加工食品である」と一律に規定され、本件発明4のその他の構成要件との間に矛盾が生じており、本件発明4の構成要件が未調理の中間段階の原料に添加された各構成成分の量・割合を規定しているのか、調理後の最終段階の構成成分の量・割合を規定しているのか、当業者が技術的な意味を理解することができず、また、調理における加熱等によって、植物油脂やタンパク質等の構成成分は化学変化を生じ、量・割合は調理の前後において大きく変動しうることは当該技術分野の当然の技術常識であることから、未調理段階の構成成分の量・割合であるか、調理後の構成成分の量・割合であるかを明確に規定しなければ、当業者は本件発明4を一義的に把握することは到底できない旨主張するが(特許異議申立書第7ないし8頁)、上記イ(イ)の検討結果に照らし、採用できない。
(ウ)申立人は更に、本件発明1において、「飽和脂肪酸含量7~15重量%の植物油脂」に後続する「植物油脂」には「前記」なる要件が記載されていないことから、同一の植物油脂を意味しているのか、異なる植物油脂を示しているのか、当業者は技術的な意味を理解することができず、また、甲1にも示されるとおり、当該技術分野においては、植物油脂には様々な種類が存在し、飽和脂肪酸含量が7~15重量%の範囲にあるものも、そうでないものも存在することが技術常識であるから、植物油脂が、「飽和脂肪酸含量7~15重量%の植物油脂」であるかを当業者が一義的に特定することは困難である旨主張するが(特許異議申立書第8頁)、上記ア(ウ)の検討結果に照らし、採用できない。
エ 以上のとおり、申立理由1によっては、本件特許の請求項1ないし6に係る特許を取り消すことはできない。
(2)申立理由2(サポート要件)について
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明との記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであるので、以下、検討する。
ア(ア)本件発明1ないし6に係る特許請求の範囲の記載は、上記2の【請求項1】ないし【請求項6】のとおりである。
(イ)これに対し、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、食肉様加工食品の背景技術として、食肉加工品のような風味、食感を出すために油脂が添加されるが、油脂を添加することによって、コレステロール含量が増加してしまい、健康に配慮した植物由来成分を主原料とする食肉様加工食品の特徴が損なわれてしまうこと(段落【0003】)、本件発明は、こうした油脂の添加量を低減したとしても、食肉加工食品と変わらない風味や食感を実現した植物由来成分を主原料とする食肉様加工食品、及び、そのような食肉様加工食品を製造する方法を提供することを目的とすること(段落【0005】【発明が解決しようとする課題】)、本件発明の食肉様加工食品は、組織加工大豆たん白と、飽和脂肪酸含量7~15重量%の植物油脂を含む食肉様加工食品であって、食肉様加工食品100gあたり飽和脂肪酸を0.5~1.5g、かつ、コレステロールを1~6mg含有すること(段落【0008】)、油脂は、植物由来であり、飽和脂肪酸を7~15重量%含むことが望ましく、動物性油脂は使用しないこと(段落【0012】)、粉末状たん白1重量部に対して、油脂2~3重量部とすることが望ましいこと(段落【0015】)、実施例として煮込みハンバーグ、ミートボール、メンチカツ、ナゲット及びから揚げを製造したこと(段落【0040】ないし【0048】)が記載されている。
(ウ)よって、本件発明1ないし6に係る特許請求の範囲の記載は、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえるから、サポート要件に適合する。
イ(ア)申立人は、本件特許の明細書の実施例は、「未調理の食肉様加工食品」における粉末状大豆たん白と、植物油脂との割合が「粉末状大豆たん白1重量部に対して植物油脂が2~3重量部」である場合の作用効果について記載するに留まり、「調理後の食肉様加工食品」における粉末状大豆たん白と、植物油脂との割合が「粉末状大豆たん白1重量部に対して植物油脂が2~3重量部」である場合の作用効果を何ら裏付けるものではない旨主張する(特許異議申立書第9~12頁)。
そこで検討するに、本件特許の明細書の実施例における「粉末状植物性大豆たん白」並びに「キャノーラ油」及び「ごま油」は、いずれも、製造原料の配合量として記載されたものであるが、各原料の配合後、常法に従い、煮込みハンバーグ、ミートボール、メンチカツ、ナゲット及びからあげを製造するに際して、粉末状大豆たん白ないし植物油脂を追加配合することは記載されていない。また、申立人は、調理における加熱処理等によって、植物油脂やたん白等の構成成分は化学変化を生じ、量・割合は調理前後において大きく変動することについて、単に主張するのみで、その具体的根拠も示されていない。
そうすると、本件特許の明細書の実施例は、「調理後の食肉様加工食品」における粉末状大豆たん白と、植物油脂との割合が「粉末状大豆たん白1重量部に対して植物油脂が2~3重量部」である場合の作用効果(畜肉を原料とする場合と変わらない良好な風味、食感であるという評価。)を裏付けするものであるといえるから、申立人の上記主張は採用できない。
(イ)申立人はまた、本件特許の明細書の段落【0006】、【0007】、【0012】及び【0030】の各記載から、「飽和脂肪酸含量7~15重量%の植物油脂」が本件発明の有利な効果を奏するための必須の構成要素である(こと)は明らかであり、また、上記(ア)のとおり、本件特許の明細書の実施例は、「飽和脂肪酸含量7~15重量%の植物油脂」以外の植物油脂を使用して「粉末状大豆たん白1重量部に対して、植物油脂が2~3重量部」とする場合の作用効果を何ら裏付けるものではない旨主張する(特許異議申立書第12ないし14頁)。
しかしながら、本件発明に係る「植物油脂」が「飽和脂肪酸含量7~15重量%の植物油脂」であることは、上記(1)ア(ウ)で検討したとおりであってみれば、「飽和脂肪酸含量7~15重量%の植物油脂」以外の植物油脂についての裏付けは不要であるといえるから、申立人の上記主張は採用できない。
ウ 以上のとおり、申立理由2によっては、本件特許の請求項1ないし6に係る特許を取り消すことはできない。
(3)申立理由3(実施可能要件)について
特許法第36条第4項第1号は、発明の詳細な説明の記載は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでなければならないことを規定するので、以下、検討する。
ア(ア)本件発明1ないし6は、上記2の【請求項1】ないし【請求項6】のとおりである。
(イ)これに対し、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載は、上記(2)ア(イ)のとおりである。
(ウ)よって、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が過度の試行錯誤を要することなく、本件発明1ないし6に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分であるといえるから、実施可能要件に適合する。
イ(ア)申立人は、上記(1)ウと同旨の主張をするが(特許異議申立書第14ないし15頁)、上記(1)イの検討結果に照らし、その実施において過度の試行錯誤を要するとはいえないから、採用できない。
(イ)申立人はまた、上記(2)イ(イ)と同旨の主張をし、また、飽和脂肪酸量及びコレステロール量は、甲2に示すように、調理加熱の前後で大きく変動し、加熱調理後に所望の飽和脂肪酸量及びコレステロール量を含有する加工食品を得るため、加熱調理前にどんな種類の油脂をどれだけ使用するかを決めることは、当業者といえども、通常の試行錯誤を超えた労力を要する旨を主張する(特許異議申立書第15頁)。
そこで検討するに、まず、本件発明に係る「植物油脂」が「飽和脂肪酸含量7~15重量%の植物油脂」であることは上記(2)ア(イ)のとおりであって、「飽和脂肪酸含量7~15重量%の植物油脂」以外の「植物油脂」に関する実施可能性の検討は不要である。また、甲2は各種食肉に関する標準成分であって大豆たん白に関するものではないが、食肉の飽和脂肪酸量及びコレステロール量はいずれも、加熱調理後に概ね増加する傾向が看取できるから、本件発明に係る「食肉様加工食品」についても、当該傾向を見込んで「植物油脂」を配合することにより、当業者は本件発明1ないし6を実施することができる。よって、申立人の上記主張は採用できない。
ウ 以上のとおり、申立理由3によっては、本件特許の請求項1ないし6に係る特許を取り消すことはできない。
5 むすび
以上のとおりであるから、申立人が提示した特許異議の申立ての理由及び証拠方法によっては、本件特許の請求項1ないし6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件の請求項1ないし6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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