特許異議申立
2023-700652
排ガス浄化用触媒
- 審判番号
- 2023-700652
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-061779
- 登録番号
- 7195995
- 請求日
- 2023年06月20日
- 審決日
- 2024年02月15日
- 公報発行日
- 2024年05月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社キャタラー
- 【権利者代理人】安部 誠
- 【権利者代理人】天野 浩治
- 【異議申立人】加藤 純子
- 審判長/審判官
- 審判長 三崎 仁
- 審判官 金 公彦
- 審判官 後藤 政博
- 分類
- P1651.113-YAA(B01J) / P1651.121-YAA(B01J) / P1651.851-YAA(B01J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第3項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7195995号発明「排ガス浄化用触媒」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7195995号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正することを認める。
特許第7195995号の請求項1~4、6~8に係る特許を維持する。
特許第7195995号の請求項5に係る特許についての本件特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7195995号の請求項1~8に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成31年3月27日を出願日とするものであって、令和4年12月16日にその請求項1~8に係る発明について特許権の設定登録がされ、同年同月26日に特許掲載公報が発行され、その後、請求項1~8に係る特許に対して、令和5年6月20日に特許異議申立人 加藤 純子(以下、「申立人」という。)により甲第1号証~甲12号証を証拠方法として特許異議の申立てがされ、同年9月22日付けで当審より取消理由が通知され、その指定期間内の同年11月13日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求がされ、同年12月4日に特許権者より手続補正書が提出され、令和6年1月10日に申立人より参考資料1~3を添付して意見書(以下、「申立人意見書」という。)が提出されたものである。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容及び一群の請求項
令和5年12月4日に提出された手続補正書により補正された、同年11月13日にされた訂正の請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は、請求の趣旨を「特許第7195995号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~8について訂正することを求める。」とするものであって、その訂正の内容は、次のとおりである(当審注:下線は訂正箇所であり、当審が付与した。)。
なお、令和5年11月13日に提出された訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲には、特許請求の範囲の請求項6~8において選択的引用請求項を削除する訂正をすることが記載されていたが、前記訂正請求書の「請求の理由」には、同訂正に係る記載がなかったところ、同年12月4日に提出された手続補正書による前記訂正請求書の補正は、前記「請求の理由」について、同訂正に係る記載を訂正事項3~5として追記するものであるから、特許法第120条の5第9項において引用する同法第131条の2第1項ただし書の規定により、認容されるものである。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「前記排ガスの流れ方向に沿った前記ロジウム層の長さは、前記基材の排ガスの全長を100%としたときに、80%以上の長さである、
排ガス浄化用触媒。」
と記載されていたのを、
「前記排ガスの流れ方向に沿った前記ロジウム層の長さは、前記基材の排ガスの全長を100%としたときに、80%以上の長さであり、
前記基材の前記第1端部から前記第2端部に向かう長さ方向に沿って前記パラジウム層が備えられている部分の前記基材について、単位体積あたりに含まれる前記パラジウムのモル量Aと、前記長さ方向に沿って前記プラチナ層が備えられている部分の前記基材について、単位体積あたりに含まれる前記プラチナのモル量Bとの比A/Bは、1.2以上2.8以下である、
排ガス浄化用触媒。」
に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~4、6~8も同様に訂正する。)。
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項6に
「請求項1~5のいずれか1項に記載の排ガス浄化用触媒。」
と記載されていたのを、
「請求項1~4のいずれか1項に記載の排ガス浄化用触媒。」
に訂正する(請求項6の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7及び8も同様に訂正する。)。
(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項7に
「請求項1~6のいずれか1項に記載の排ガス浄化用触媒。」
と記載されていたのを、
「請求項1~4、6のいずれか1項に記載の排ガス浄化用触媒。」
に訂正する(請求項7の記載を引用する請求項8も同様に訂正する。)。
(5) 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項8に
「請求項1~7のいずれか1項に記載の排ガス浄化用触媒。」
と記載されていたのを、
「請求項1~4、6、7のいずれか1項に記載の排ガス浄化用触媒。」
に訂正する。
(6) 一群の請求項について
本件訂正前の請求項1の記載を請求項2~8が引用する関係にあるから、本件訂正前の請求項1~8は一群の請求項であり、訂正事項1~5に係る特許請求の範囲の訂正は、特許法第120条の5第3項及び第4項の規定に従い、一群の請求項1~8を訂正の単位として請求されたものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、独立特許要件について
(1) 訂正事項1について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1における「パラジウムを含むパラジウム層」及び「プラチナを含むプラチナ層」について、本件訂正前の請求項5、本件特許明細書の段落【0012】、【0034】(下記第6の2(1)イ(ア))の記載に基づいて、「前記パラジウム層が備えられている部分の前記基材について、単位体積あたりに含まれる前記パラジウムのモル量Aと、前記長さ方向に沿って前記プラチナ層が備えられている部分の前記基材について、単位体積あたりに含まれる前記プラチナのモル量Bとの比A/B」を「1.2以上2.8以下」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2) 訂正事項2について
訂正事項2は、本件訂正前の請求項5を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3) 訂正事項3~5について
訂正事項3~5は、それぞれ、訂正事項2による請求項5の削除に伴い、請求項6~8における選択的引用請求項の一部を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4) 独立特許要件について
本件特許異議の申立ては本件訂正前の全ての請求項についてされているので、訂正事項1~5に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
3 小括
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
本件訂正が認められることは前記第2に記載したとおりであるので、本件訂正により訂正された請求項1~4、6~8に係る発明(以下、項番号に合わせて「本件発明1」などといい、これらをまとめて「本件発明」ということがある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~4、6~8に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
内燃機関の排気経路に配置され、該内燃機関から排出される メタンを含む排ガスを浄化する排ガス浄化用触媒であって、
排ガスが流通するセルを区画する基材と、
前記基材の表面に設けられた触媒層と、
を備え、
前記触媒層は、
前記セルの排ガスが流入される側の端部である第1端部から排ガスが流出される側の端部である第2端部に向けて延設され、パラジウムを含むパラジウム層と、
前記第2端部から前記第1端部に向けて延設され、プラチナを含むプラチナ層と、
前記パラジウム層と前記プラチナ層の両方に積層され、ロジウムを含むロジウム層と、
を含み、
前記パラジウム層、前記プラチナ層、および前記ロジウム層に含まれる金属触媒は、それぞれ80質量%以上がPd、Pt、およびRhであり、
前記排ガスの流れ方向に沿った前記ロジウム層の長さは、前記基材の排ガスの全長を100%としたときに、80%以上の長さであり、
前記基材の前記第1端部から前記第2端部に向かう長さ方向に沿って前記パラジウム層が備えられている部分の前記基材について、単位体積あたりに含まれる前記パラジウムのモル量Aと、前記長さ方向に沿って前記プラチナ層が備えられている部分の前記基材について、単位体積あたりに含まれる前記プラチナのモル量Bとの比A/Bは、1.2以上2.8以下である、
排ガス浄化用触媒。
【請求項2】
前記パラジウム層は、前記基材の前記第1端部から前記第2端部までを100%としたとき、80%以下の領域に備えられている、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項3】
前記ロジウム層は、前記基材の前記第1端部から前記第2端部までを100%としたとき、前記第1端部から 80%以上100%以下の領域に備えられている、請求項1または2に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項4】
前記プラチナ層は、前記基材の前記第1端部から前記第2端部までを100%としたとき、前記第2端部から30%以上80%以下の領域に備えられている、請求項1~3のいずれか1項に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項5】(削除)
【請求項6】
前記ロジウム層は、前記パラジウム層と前記プラチナ層との上面の一部または全部を覆うように備えられている、請求項1~4のいずれか1項に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項7】
天然ガスを燃料とする内燃機関から排出される排ガスを浄化するために用いられる、請求項1~4、6のいずれか1項に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項8】
前記排ガスの流れ方向に沿った前記ロジウム層の長さは、前記基材の全長を100%としたときに、100%の長さである、請求項1~4、6、7のいずれか1項に記載の排ガス浄化用触媒。」
第4 特許異議申立理由の概要
1 申立理由1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1、2及び6に係る発明は、甲第1号証の実施例5に記載された発明であるから、前記請求項1、2及び6に係る発明の特許は、特許法第29条第1項所定の規定に違反してされたものである。
2 申立理由2
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1、3~5、7及び8に係る発明は、甲第1号証の実施例5に記載された発明、甲第1~3号証に記載された事項及び本件特許の出願日当時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、前記請求項1、3~5、7及び8に係る発明の特許は、特許法第29条第2項所定の規定に違反してされたものである。
3 申立理由3
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1~3、6及び8に係る発明は、甲第1号証の比較例1に記載された発明であるから、前記請求項1~3、6及び8に係る発明の特許は、特許法第29条第1項所定の規定に違反してされたものである。
4 申立理由4
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1、4、5及び7に係る発明は、甲第1号証の比較例1に記載された発明、甲第1~3号証に記載された事項及び本件特許の出願日当時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、前記請求項1、4、5及び7に係る発明の特許は、特許法第29条第2項所定の規定に違反してされたものである。
5 申立理由5
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1~8に係る発明は、甲第12号証の実施例2に記載された発明に基づいて、又は、甲第12号証の実施例2に記載された発明、甲第1号証に記載された事項及び本件特許の出願日当時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、前記請求項1~8に係る発明の特許は、特許法第29条第2項所定の規定に違反してされたものである。
6 証拠方法
甲第1号証:特開2010-5590号公報
甲第2号証:特開昭62-68542号公報
甲第3号証:特開昭63-84635号公報
甲第4号証:特開2003-251200号公報
甲第5号証:特開2004-838号公報
甲第6号証:特開2008-175118号公報
甲第7号証:特開2002-166172号公報
甲第8号証:特開2011-235264号公報
甲第9号証:特開2018-159380号公報
甲第10号証:特表2001-503497号公報
甲第11号証:Pyong-Wan Park et al., Evaluation of 3-Way Catalytic Converters for the Reduction of CH4 in the Exhaust Stream of a CNG Fueled Vehicle, SAE TECHNICAL PAPER SERIES 931990, Seventh International Pacific Conference and Exposition on Automotive Engineering Phoenix, Arizona, 1993年11月15日~19日
甲第12号証:特開2017-104823号公報
参考資料1:特開平5-293376号公報
参考資料2:特開2016-185495号公報
参考資料3:特開2016-185497号公報
なお、参考資料1~3は申立人意見書に添付して提出されたものである。
第5 取消理由の概要
1 取消理由1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1、2、4、6及び7に係る発明は、甲第1号証の実施例5に記載された発明であるか、甲第1号証の実施例5に記載された発明及び甲第4、7、10及び11号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、前記請求項1、2、4、6及び7に係る発明の特許は、特許法第29条第1項、又は第2項所定の規定に違反してされたものである。
2 取消理由2
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1~4、6~8に係る発明は、甲第1号証の比較例1に記載された発明であるか、甲第1号証の比較例1に記載された発明及び甲第4、7、10及び11号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、前記請求項1~4、6~8に係る発明の特許は、特許法第29条第1項、又は第2項所定の規定に違反してされたものである。
第6 取消理由及び特許異議申立理由について
事案に鑑み、前記第5の取消理由及び前記第4の特許異議の申立て理由についてまとめて検討する。
1 甲各号証の記載事項
(1) 甲第1号証の記載事項及び甲第1号証に記載された発明
ア 甲第1号証には以下の(ア)~(エ)の記載がある(当審注:下線は当審が付与した。また、「・・・」は記載の省略を表す。以下、同様である。)。
(ア) 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスが流通するガス流路を有する基材と、該基材の表面に形成された下触媒層と、該下触媒層の表面に形成された上触媒層と、を有する排ガス浄化用触媒において、
前記上触媒層は、Rhを担持してなり、前記下触媒層は、Pd又は/及びPtを担持してなり、
前記上触媒層の前記ガス流路に沿ったガス流れ方向の長さは、前記下触媒層の前記ガス流れ方向の長さよりも短いことを特徴とする排ガス浄化用触媒。」
(イ) 「【0001】
本発明は、三元触媒として有用な排ガス浄化用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の排ガス中のHC、CO及びNOxを浄化する触媒として、三元触媒が広く用いられている。・・・
・・・
【0023】
基材のガス流れ方向の長さに対する、Pd担持層のガス流れ方向の長さの比率は20~45%であることが好ましい。該比率が20%未満の場合には、高熱時の耐久性が比較的低いPtを担持したPt担持層が、高温の上流側に近接し、Ptが熱劣化するおそれがあり、45%を越える場合には、上流側のPd濃度が低くなるため、暖機性能が低下するおそれがある。
【0024】
下触媒層のPd担持層のPd担持量は、0.25~5.0g/L(リットル)であることが好ましい。0.25g/L未満の場合には、HC及びCOの酸化活性が低下するおそれがあり、5.0g/Lを超える場合には、効果が飽和するとともにコストの増加を招く。
【0025】
下触媒層のPt担持層のPt担持量は、0.25~5.0g/Lであることが好ましい。0.25g/L未満の場合には、HC及びCOの酸化活性が低下するおそれがあり、5.0g/Lを超える場合には、効果が飽和するとともにコストの増加を招く。
・・・
【0039】
本発明について、実施例及び比較例を用いて具体的に説明する。
【0040】
(実施例1)
本例の排ガス浄化用触媒は、図1に示すように、排ガスが流通するガス流路10を有するハニカム基材1と、ハニカム基材1の表面に形成された下触媒層2と、下触媒層2の表面に形成された上触媒層3とを有している。
【0041】
図2に示すように、ハニカム基材1は、長さ(L1)105mmの円筒体であり、コーディエライト製である。図3,図4に示すように、ハニカム基材1には、長手方向に延びる多数の六角形断面のセル11が隔壁12で区画されている。各セル11を構成する隔壁12の表面には、下触媒層2及び上触媒層3が形成されており、その表面の空間部にガス流路10が形成されている。
【0042】
図1に示すように、下触媒層2は、Pdを担持してなるPd担持層21と、Ptを担持してなるPt担持層22とから構成されている。Pd担持層21は、ガス流路10を流れるガスの流れ方向の基材1の上流側端部1aから20mmまでの部分に配置されている。Pt担持層22は、Pd担持層21の下流側端部21bから、基材1の下流側端部1bまでの85mmの部分に配置されている。したがって、図3に示すように、基材1の上流側では、下触媒層2のPd担持層21のみの単層が配設され、図4に示すように、基材1の下流側では、下触媒層2のPt担持層22と上触媒層3の2層が配設されている。
【0043】
上触媒層3は、Rhを担持している。上触媒層3のガス流れ方向の長さL3は、85mmであり、基材1の下流側端部1bから上流側に向けて85mmまでの部分に配置されている。したがって、下触媒層2の上流側端部2aから20mmまでの部分は、ガス流路10に露出している。
【0044】
下触媒層2の厚みは15μmであり、上触媒層3の厚みは12μmである。
【0045】
次に、本例の排ガス浄化用触媒の製造方法について説明する。まず、Pt担持層形成用の担体としてのCeO2-ZrO2-Y2O3-La2O3複合酸化物粉末(CeO2:30質量%、ZrO2:60質量%、Y2O3:5質量%、La2O3:5質量%)を用意し、貴金属触媒溶液としてのジニトロジアミンPt溶液を含浸した後、蒸発乾固してPtを1.4質量%担持したPt/担体粉末を調製した。
【0046】
このPt/担体粉末60質量部と、Al2O3-La2O3複合酸化物(Al2O3:96質量%、La2O3:4質量%)25重量部と、BaSO4を15重量部バインダとしてのアルミナゾル(Al2O3:10質量%)3重量部(アルミナの絶対量)と、蒸留水とを混合してPt担持層用スラリーを調製した。これにコージェライト製のハニカム基材1(直径103mm、全長105mm)の下流側端部1bから上流側へ85mmの部分までを浸漬し、引き上げて余分なスラリーを吹き払った後、乾燥、焼成してPt担持層22を形成した。Pt担持層22は、ハニカム基材1の1L当たり103g形成され、Ptはハニカム基材1の1L当たり0.45g担持されている。
【0047】
次に、Pd担持層形成用の担体として、CeO2-ZrO2-La2O3-Pr6O11複合酸化物粉末(CeO2:60質量%、ZrO2:40質量%、La2O3:3質量%、Pr6O11:7質量%)を用意し、貴金属触媒溶液としての硝酸Pd水溶液を含浸した後、蒸発乾固して、Pdを担持したPd/担体粉末を調製した。
【0048】
このPd/担体粉末9質量部と、Al2O3-La2O3複合酸化物(Al2O3:96質量%、La2O3:4質量%)3重量部と、BaSO4を3重量部、バインダとしてのアルミナゾル(Al2O3:10質量%)2重量部(アルミナの絶対量)と、蒸留水とを混合してPd担持層用スラリーを調製した。このPd担持層用スラリーに、上記のPt担持層22を形成したハニカム基材1の上流側端部1aから下流側へ20mmの部分までを漬浸し、引き上げて余分なスラリーを吹き払った後、乾燥、焼成してPd担持層21を形成した。Pd担持層21は、ハニカム基材1の1L当たり17g形成され、Pdはハニカム基材1の1L当たり0.9g担持されている。
【0049】
次に、上触媒層形成用の担体として、CeO2-ZrO2-Y2O3-Nd2O3複合酸化物粉末(CeO2:20質量%、ZrO2:60質量%、Y2O3:8質量%、Nd2O3:12質量%)を用意し、貴金属触媒溶液としての硝酸Rh水溶液を含浸した後、蒸発乾固してRhを担持したRh/担体粉末を調製した。
【0050】
このRh/担体粉末50質量部と、Al2O3-La2O3複合酸化物(Al2O3:96質量%、La2O3:4質量%)25重量部と、バインダとしてのアルミナゾル(Al2O3:10質量%)3重量部(アルミナの絶対量)と、蒸留水とを混合して上触媒層用スラリーを調製した。この上触媒層用スラリーに、上記のハニカム基材1表面のPd担持層21及びPt担持層22の表面の、ハニカム基材1の下流側端部1bから上流側へ85mmの部分までを漬浸し、引き上げて余分なスラリーを吹き払った後、乾燥、焼成して、Rhを担持してなる上触媒層3を形成した。上触媒層3は、ハニカム基材1の1L当たり78g形成され、Rhはハニカム基材1の1L当たり0.13g担持されている。
・・・
【0054】
(実施例5)
本例においては、上触媒層3が、下触媒層2の下流側端部2bから上流側に向けて95mmの長さまでの部分に形成されている点が、実施例1と相違する。その他は、実施例1と同様である。
【0055】
(比較例1)
本比較例においては、図6に示すように、上触媒層3が、下触媒層2の下流側端部2bから上流側に向けて105mmの長さの部分に形成されている。即ち、上触媒層3は、下触媒層2の全体を被覆している。
・・・
【0058】
図7より、上触媒層の長さを長くするほど、触媒のHC排出量が増加し、一方でNOx排出量が減少した。このことから、上触媒層の長さを長くするほど、上触媒層に担持されているRhのNOx還元浄化活性が高くなることがわかる。これは、上触媒層の長さが長いほど、排ガスの上触媒層に対する空間速度(SV)が小さくなるため、排ガスの上触媒層へのガス拡散性が高くなるからであると考えられる。また、上触媒層の長さが長いほど、下触媒層が上触媒層に被覆される長さが長くなり、下触媒層へのガス拡散性が低く、下触媒層に担持されているPt及びPdのHC酸化浄化活性が低くなることがわかる。
【0059】
逆に、上触媒層の長さが短いほど、下触媒層に担持されているPt及びPdのHC酸化浄化活性が低くなった。これは、上触媒層の長さが短いほど、下触媒層の露出量が増えて、排ガス中のHCの燃焼活性が高いPtへのガス拡散性が大きくなるためであると考えられる。
【0060】
また、上触媒層の長さが80mm、即ち下触媒層の長さに対する上触媒層の長さが76%で、HC排出量及びNOx排出量の双方が低くなった。このことから、上触媒層の長さが、50~90%であり、望ましくは60~85%の場合に、HC及びNOxの浄化活性をバランスよく発揮させることができることがわかる。」
(ウ) 「【図1】
[図:0001410217000001.jpg]
」
(エ) 「【図6】
[図:0001410217000002.jpg]
」
イ 前記ア(ア)の記載によれば、甲第1号証には「排ガス浄化用触媒」が記載されており、前記ア(イ)(段落【0001】~【0002】)の記載によれば、前記「排ガス浄化用触媒」は、自動車の排ガス中のHC、CO及びNOxを浄化する触媒である三元触媒として有用なものである
そして、前記ア(イ)(段落【0040】~【0050】、【0054】)、(ウ)に記載された実施例5に注目すると、前記「排ガス浄化用触媒」は、排ガスが流通するガス流路10を有するハニカム基材1と、ハニカム基材1の表面に形成された下触媒層2と、下触媒層2の表面に形成された上触媒層3とを有しているものであり、ハニカム基材1は、長さ(L1)105mmの円筒体であり、コーディエライト製であり、ハニカム基材1には、長手方向に延びる多数の六角形断面のセル11が隔壁12で区画されており、各セル11を構成する隔壁12の表面には、下触媒層2及び上触媒層3が形成されており、その表面の空間部にガス流路10が形成されているものである。
また、下触媒層2は、Pdを担持してなるPd担持層21と、Ptを担持してなるPt担持層22とから構成されており、Pd担持層21は、ガス流路10を流れるガスの流れ方向の基材1の上流側端部1aから20mmまでの部分に配置されており、Pt担持層22は、Pd担持層21の下流側端部21bから、基材1の下流側端部1bまでの85mmの部分に配置されており、上触媒層3は、Rhを担持しており、下触媒層2の下流側端部2bから上流側に向けて95mmの長さまでの部分に形成されており、下触媒層2の厚みは15μmであり、上触媒層3の厚みは12μmである。
更に、前記「排ガス浄化用触媒」の製造方法は、まず、Pt担持層形成用の担体としてのCeO2-ZrO2-Y2O3-La2O3複合酸化物粉末(CeO2:30質量%、ZrO2:60質量%、Y2O3:5質量%、La2O3:5質量%)を用意し、貴金属触媒溶液としてのジニトロジアミンPt溶液を含浸した後、蒸発乾固してPtを1.4質量%担持したPt/担体粉末を調製し、このPt/担体粉末60質量部と、Al2O3-La2O3複合酸化物(Al2O3:96質量%、La2O3:4質量%)25重量部と、BaSO4を15重量部バインダとしてのアルミナゾル(Al2O3:10質量%)3重量部(アルミナの絶対量)と、蒸留水とを混合してPt担持層用スラリーを調製し、これにコージェライト製のハニカム基材1(直径103mm、全長105mm)の下流側端部1bから上流側へ85mmの部分までを浸漬し、引き上げて余分なスラリーを吹き払った後、乾燥、焼成してPt担持層22を形成したものであり、Pt担持層22は、ハニカム基材1の1L当たり103g形成され、Ptはハニカム基材1の1L当たり0.45g担持されているものである。
次に、Pd担持層形成用の担体として、CeO2-ZrO2-La2O3-Pr6O11複合酸化物粉末(CeO2:60質量%、ZrO2:40質量%、La2O3:3質量%、Pr6O11:7質量%)を用意し、貴金属触媒溶液としての硝酸Pd水溶液を含浸した後、蒸発乾固して、Pdを担持したPd/担体粉末を調製し、このPd/担体粉末9質量部と、Al2O3-La2O3複合酸化物(Al2O3:96質量%、La2O3:4質量%)3重量部と、BaSO4を3重量部、バインダとしてのアルミナゾル(Al2O3:10質量%)2重量部(アルミナの絶対量)と、蒸留水とを混合してPd担持層用スラリーを調製し、このPd担持層用スラリーに、上記のPt担持層22を形成したハニカム基材1の上流側端部1aから下流側へ20mmの部分までを漬浸し、引き上げて余分なスラリーを吹き払った後、乾燥、焼成してPd担持層21を形成したものであり、Pd担持層21は、ハニカム基材1の1L当たり17g形成され、Pdはハニカム基材1の1L当たり0.9g担持されているものである。
更に、上触媒層形成用の担体として、CeO2-ZrO2-Y2O3-Nd2O3複合酸化物粉末(CeO2:20質量%、ZrO2:60質量%、Y2O3:8質量%、Nd2O3:12質量%)を用意し、貴金属触媒溶液としての硝酸Rh水溶液を含浸した後、蒸発乾固してRhを担持したRh/担体粉末を調製し、このRh/担体粉末50質量部と、Al2O3-La2O3複合酸化物(Al2O3:96質量%、La2O3:4質量%)25重量部と、バインダとしてのアルミナゾル(Al2O3:10質量%)3重量部(アルミナの絶対量)と、蒸留水とを混合して上触媒層用スラリーを調製し、この上触媒層用スラリーに、上記のハニカム基材1表面のPd担持層21及びPt担持層22の表面の、ハニカム基材1の下流側端部1bから上流側へ95mmの部分までを漬浸し、引き上げて余分なスラリーを吹き払った後、乾燥、焼成して、Rhを担持してなる上触媒層3を形成したものであり、上触媒層3は、ハニカム基材1の1L当たり78g形成され、Rhはハニカム基材1の1L当たり0.13g担持されているものである。
ウ 前記イによれば、甲第1号証には、以下の発明が記載されているといえる(以下、「甲1発明1」という。)。
「自動車の排ガス中のHC、CO及びNOxを浄化する触媒である三元触媒として有用な排ガス浄化用触媒であって、
前記排ガス浄化用触媒は、排ガスが流通するガス流路を有するハニカム基材と、ハニカム基材の表面に形成された下触媒層と、下触媒層の表面に形成された上触媒層とを有しているものであり、
ハニカム基材は、長さ105mmの円筒体であり、コーディエライト製であり、ハニカム基材には、長手方向に延びる多数の六角形断面のセルが隔壁で区画されており、各セルを構成する隔壁の表面には、下触媒層及び上触媒層が形成されており、その表面の空間部にガス流路が形成されており、
下触媒層は、Pdを担持してなるPd担持層と、Ptを担持してなるPt担持層とから構成されており、Pd担持層は、ガス流路を流れるガスの流れ方向の基材の上流側端部から20mmまでの部分に配置されており、Pt担持層は、Pd担持層の下流側端部から、基材の下流側端部までの85mmの部分に配置されており、上触媒層は、Rhを担持しており、下触媒層の下流側端部から上流側に向けて95mmの長さまでの部分に形成されているものであり、下触媒層の厚みは15μmであり、上触媒層の厚みは12μmであり、
前記排ガス浄化用触媒の製造方法は、まず、Pt担持層形成用の担体としてのCeO2-ZrO2-Y2O3-La2O3複合酸化物粉末(CeO2:30質量%、ZrO2:60質量%、Y2O3:5質量%、La2O3:5質量%)を用意し、貴金属触媒溶液としてのジニトロジアミンPt溶液を含浸した後、蒸発乾固してPtを1.4質量%担持したPt/担体粉末を調製し、このPt/担体粉末60質量部と、Al2O3-La2O3複合酸化物(Al2O3:96質量%、La2O3:4質量%)25重量部と、BaSO4を15重量部バインダとしてのアルミナゾル(Al2O3:10質量%)3重量部(アルミナの絶対量)と、蒸留水とを混合してPt担持層用スラリーを調製し、これにコージェライト製のハニカム基材(直径103mm、全長105mm)の下流側端部から上流側へ85mmの部分までを浸漬し、引き上げて余分なスラリーを吹き払った後、乾燥、焼成してPt担持層を形成したものであり、Pt担持層は、ハニカム基材の1L当たり103g形成され、Ptはハニカム基材1の1L当たり0.45g担持されているものであり、
次に、Pd担持層形成用の担体として、CeO2-ZrO2-La2O3-Pr6O11複合酸化物粉末(CeO2:60質量%、ZrO2:40質量%、La2O3:3質量%、Pr6O11:7質量%)を用意し、貴金属触媒溶液としての硝酸Pd水溶液を含浸した後、蒸発乾固して、Pdを担持したPd/担体粉末を調製し、このPd/担体粉末9質量部と、Al2O3-La2O3複合酸化物(Al2O3:96質量%、La2O3:4質量%)3重量部と、BaSO4を3重量部、バインダとしてのアルミナゾル(Al2O3:10質量%)2重量部(アルミナの絶対量)と、蒸留水とを混合してPd担持層用スラリーを調製し、このPd担持層用スラリーに、上記のPt担持層を形成したハニカム基材の上流側端部から下流側へ20mmの部分までを漬浸し、引き上げて余分なスラリーを吹き払った後、乾燥、焼成してPd担持層を形成したものであり、Pd担持層は、ハニカム基材の1L当たり17g形成され、Pdはハニカム基材の1L当たり0.9g担持されているものであり、
更に、上触媒層形成用の担体として、CeO2-ZrO2-Y2O3-Nd2O3複合酸化物粉末(CeO2:20質量%、ZrO2:60質量%、Y2O3:8質量%、Nd2O3:12質量%)を用意し、貴金属触媒溶液としての硝酸Rh水溶液を含浸した後、蒸発乾固してRhを担持したRh/担体粉末を調製し、このRh/担体粉末50質量部と、Al2O3-La2O3複合酸化物(Al2O3:96質量%、La2O3:4質量%)25重量部と、バインダとしてのアルミナゾル(Al2O3:10質量%)3重量部(アルミナの絶対量)と、蒸留水とを混合して上触媒層用スラリーを調製し、この上触媒層用スラリーに、上記のハニカム基材表面のPd担持層及びPt担持層の表面の、ハニカム基材の下流側端部から上流側へ95mmの部分までを漬浸し、引き上げて余分なスラリーを吹き払った後、乾燥、焼成して、Rhを担持してなる上触媒層を形成したものであり、上触媒層は、ハニカム基材の1L当たり78g形成され、Rhはハニカム基材の1L当たり0.13g担持されているものである、排ガス浄化用触媒。」
エ 同様に、前記ア(イ)(段落【0040】~【0050】、【0055】)、(エ)に記載された比較例1に注目すると、甲第1号証には、以下の発明が記載されているといえる(以下、「甲1発明2」という。)。
「自動車の排ガス中のHC、CO及びNOxを浄化する触媒である三元触媒として有用な排ガス浄化用触媒であって、
前記排ガス浄化用触媒は、排ガスが流通するガス流路を有するハニカム基材と、ハニカム基材の表面に形成された下触媒層と、下触媒層の表面に形成された上触媒層とを有しているものであり、
ハニカム基材は、長さ105mmの円筒体であり、コーディエライト製であり、ハニカム基材には、長手方向に延びる多数の六角形断面のセルが隔壁で区画されており、各セルを構成する隔壁の表面には、下触媒層及び上触媒層が形成されており、その表面の空間部にガス流路が形成されており、
下触媒層は、Pdを担持してなるPd担持層と、Ptを担持してなるPt担持層とから構成されており、Pd担持層は、ガス流路を流れるガスの流れ方向の基材の上流側端部から20mmまでの部分に配置されており、Pt担持層は、Pd担持層の下流側端部から、基材の下流側端部までの85mmの部分に配置されており、上触媒層は、Rhを担持しており、下触媒層の下流側端部から上流側に向けて105mmの長さの部分に形成され、上触媒層は、下触媒層の全体を被覆しているものであり、下触媒層の厚みは15μmであり、上触媒層の厚みは12μmであり、
前記排ガス浄化用触媒の製造方法は、まず、Pt担持層形成用の担体としてのCeO2-ZrO2-Y2O3-La2O3複合酸化物粉末(CeO2:30質量%、ZrO2:60質量%、Y2O3:5質量%、La2O3:5質量%)を用意し、貴金属触媒溶液としてのジニトロジアミンPt溶液を含浸した後、蒸発乾固してPtを1.4質量%担持したPt/担体粉末を調製し、このPt/担体粉末60質量部と、Al2O3-La2O3複合酸化物(Al2O3:96質量%、La2O3:4質量%)25重量部と、BaSO4を15重量部バインダとしてのアルミナゾル(Al2O3:10質量%)3重量部(アルミナの絶対量)と、蒸留水とを混合してPt担持層用スラリーを調製し、これにコージェライト製のハニカム基材(直径103mm、全長105mm)の下流側端部から上流側へ85mmの部分までを浸漬し、引き上げて余分なスラリーを吹き払った後、乾燥、焼成してPt担持層を形成したものであり、Pt担持層は、ハニカム基材の1L当たり103g形成され、Ptはハニカム基材1の1L当たり0.45g担持されているものであり、
次に、Pd担持層形成用の担体として、CeO2-ZrO2-La2O3-Pr6O11複合酸化物粉末(CeO2:60質量%、ZrO2:40質量%、La2O3:3質量%、Pr6O11:7質量%)を用意し、貴金属触媒溶液としての硝酸Pd水溶液を含浸した後、蒸発乾固して、Pdを担持したPd/担体粉末を調製し、このPd/担体粉末9質量部と、Al2O3-La2O3複合酸化物(Al2O3:96質量%、La2O3:4質量%)3重量部と、BaSO4を3重量部、バインダとしてのアルミナゾル(Al2O3:10質量%)2重量部(アルミナの絶対量)と、蒸留水とを混合してPd担持層用スラリーを調製し、このPd担持層用スラリーに、上記のPt担持層を形成したハニカム基材の上流側端部から下流側へ20mmの部分までを漬浸し、引き上げて余分なスラリーを吹き払った後、乾燥、焼成してPd担持層を形成したものであり、Pd担持層は、ハニカム基材の1L当たり17g形成され、Pdはハニカム基材の1L当たり0.9g担持されているものであり、
更に、上触媒層形成用の担体として、CeO2-ZrO2-Y2O3-Nd2O3複合酸化物粉末(CeO2:20質量%、ZrO2:60質量%、Y2O3:8質量%、Nd2O3:12質量%)を用意し、貴金属触媒溶液としての硝酸Rh水溶液を含浸した後、蒸発乾固してRhを担持したRh/担体粉末を調製し、このRh/担体粉末50質量部と、Al2O3-La2O3複合酸化物(Al2O3:96質量%、La2O3:4質量%)25重量部と、バインダとしてのアルミナゾル(Al2O3:10質量%)3重量部(アルミナの絶対量)と、蒸留水とを混合して上触媒層用スラリーを調製し、この上触媒層用スラリーに、上記のハニカム基材表面のPd担持層及びPt担持層の表面の、ハニカム基材の下流側端部から上流側へ105mmの部分までを漬浸し、引き上げて余分なスラリーを吹き払った後、乾燥、焼成して、Rhを担持してなる上触媒層を形成したものであり、上触媒層は、ハニカム基材の1L当たり78g形成され、Rhはハニカム基材の1L当たり0.13g担持されているものである、排ガス浄化用触媒。」
(2) 甲第12号証の記載事項及び甲第12号証に記載された発明
ア 甲第12号証には以下の(ア)~(エ)の記載がある。
(ア) 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスが流通するセル構造の基材と、基材のセル壁面に形成されている触媒層とからなる触媒コンバーターであって、
前記触媒層は、排ガスの流れ方向の上流側に第1の触媒層を有し、排ガスの流れ方向の下流側に第2の触媒層を有しており、
前記第1の触媒層は、貴金属触媒としてパラジウム、ロジウムの少なくとも一種を有しており、
前記第2の触媒層は、貴金属触媒として白金のみを有しており、
前記第2の触媒層は、前記基材の前記下流側の端部を起点として該基材の全長の5~30%の範囲に形成されている触媒コンバーター。」
(イ) 「【0011】
本発明は上記する問題に鑑みてなされたものであり、COやNOxやHCの浄化とCH4を含むパラフィンの浄化の双方を実現することのできる触媒コンバーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成すべく、本発明による触媒コンバーターは、排ガスが流通するセル構造の基材と、基材のセル壁面に形成されている触媒層とからなる触媒コンバーターであって、前記触媒層は、排ガスの流れ方向の上流側に第1の触媒層を有し、排ガスの流れ方向の下流側に第2の触媒層を有しており、前記第1の触媒層は、貴金属触媒としてパラジウム、ロジウムの少なくとも一種を有しており、前記第2の触媒層は、貴金属触媒として白金のみを有しており、前記第2の触媒層は、前記基材の前記下流側の端部を起点として該基材の全長の5~30%の範囲に形成されているものである。
【0013】
本発明の触媒コンバーターは、排ガスの流れ方向の上流側に第1の触媒層、排ガスの流れ方向の下流側に第2の触媒層を有したゾーンコート触媒を具備するものにおいて、第2の触媒層に担持される貴金属触媒がCH4を含むパラフィンの浄化性能の高い白金のみであることにより、パラフィン浄化性能に優れたコンバータである。
【0014】
より具体的には、触媒コンバーターの上流側ではHC、CO、NOxが主として浄化され、そのために下流側ではパラフィンの割合が増加する。そこで、上流側にある第1の触媒層にてHCやCO、NOxを主として浄化し、下流側にある第2の触媒層にて白金によってCH4を含むパラフィンを浄化するようにしたものである。
【0015】
さらに、貴金属触媒として白金のみを有する第2の触媒層の長さを、基材の下流側の端部を起点として基材の全長の5~30%の範囲に規定したことにより、COやNOxやHCの浄化とCH4を含むパラフィンの浄化の双方を実現できることが本発明者等によって実証されている。
【0016】
なお、下流側の第2の触媒層は一層構造である一方で、上流側の第1の触媒層は上下二層構造であってもよく、たとえば、基材側の下触媒層に貴金属触媒としてパラジウムが担持され、下触媒層に積層された上触媒層に貴金属触媒としてロジウムが担持された構成などであってもよい。」
(ウ) 「【0024】
(触媒コンバーターの実施の形態)
図1は本発明の触媒コンバーターの模式図であり、図2はセルの一部を拡大した図である。また、図3は触媒層の実施の形態を説明した縦断面図である。
【0025】
図1で示す触媒コンバーター10は、多数のセルを有する筒状の基材1と、セルを構成するセル壁2の表面に形成された触媒層3とから大略構成されている。
・・・
【0027】
基材1は、四角形や六角形、八角形等の多数の格子輪郭のセルを具備するハニカム構造体からなり、基材1において排ガスの流れ方向上流側(Fr側)の端部のセル内に流入した排ガスは、基材1の内部を流通し、この流通過程で浄化され、基材1において排ガスの流れ方向下流側(Rr側)の端部から浄化された排ガスが流出するようになっている(X方向)。
・・・
【0034】
(本発明の触媒コンバーターの性能を検証する実験とその結果)
本発明者等は、本発明の触媒コンバーターの性能を検証する実験をおこなった。以下、比較例1~6、実施例1、2を以下の方法で製作した。なお、図4はCH4浄化性能を検証する実験で用いた触媒層のモデル図であって、(a)は比較例1のモデル図、・・・(e)は実施例2のモデル図である。
【0035】
<比較例1>
図4(a)で示すように、比較例1は、下触媒層がPtを触媒として有する層で、Pt(0.4)/ Al2O3(25)+CZ(30)(CZ材:CeO2-ZrO2複合酸化物)、上触媒層がRhを触媒として有する層で、Rh(0.15)/CZ(40)+Al2O3(20)である。ここで、括弧内の数値の単位はg/Lである。・・・
・・・
【0041】
<比較例6>
図6(d)で示すように、比較例6は、上流側がPtを触媒として有する層で、Pt(0.2)/Al2O3(12.5)+CZ(30) 、下流側の下触媒層がPdを触媒として有する層で、Pd(0.2)/Al2O3(12.5)、下流側の上触媒層がRhを触媒として有する層で、Rh(0.15)/CZ(40)+Al2O3(20)である。比較例2と同様にスラリー1を基材のFr側から基材長の50%の範囲にコーティングし、乾燥および焼成した。次に、比較例3において調製したスラリー3を基材のRr側から基材長の50%の範囲にコーティングし、乾燥および焼成した。さらに、比較例2と同様にスラリー2を基材のRr側から基材長の50%の範囲にコーティングし、乾燥および焼成した。
【0042】
<実施例2>
図6(e)で示すように、実施例2は、上流側の下触媒層がPdを触媒として有する層で、Pd(0.2)/Al2O3(12.5)、上流側の上触媒層がRhを触媒として有する層で、Rh(0.15)/CZ(40)+Al2O3(20)であり、下流側がPtを触媒として有する層で、Pt(0.2)/Al2O3(12.5)+CZ(30)である。比較例6のFr側とRr側を反転し、使用することで実施例2を得た。」
(エ) 「【図6】
[図:0001410217000003.jpg]
」
イ 前記ア(ア)の記載によれば、甲第12号証には「触媒コンバーター」が記載されており、前記ア(イ)(段落【0011】、【0013】、【0014】、【0016】)の記載によれば、前記「触媒コンバーター」は、COやNOxやHCの浄化とCH4を含むパラフィンの浄化の双方を実現することのできる「触媒コンバーター」を提供することを目的とするものであって、排ガスの流れ方向の上流側に第1の触媒層、排ガスの流れ方向の下流側に第2の触媒層を有したゾーンコート触媒を具備するものにおいて、第2の触媒層に担持される貴金属触媒をCH4を含むパラフィンの浄化性能の高い白金のみとすることにより、パラフィン浄化性能に優れた「触媒コンバーター」とするものであり、「触媒コンバーター」の上流側ではHC、CO、NOxが主として浄化され、そのために下流側ではパラフィンの割合が増加するので、上流側にある第1の触媒層にてHCやCO、NOxを主として浄化し、下流側にある第2の触媒層にて白金によってCH4を含むパラフィンを浄化するようにしたものであり、下流側の第2の触媒層は一層構造である一方で、上流側の第1の触媒層は上下二層構造であってもよく、基材側の下触媒層に貴金属触媒としてパラジウムが担持され、下触媒層に積層された上触媒層に貴金属触媒としてロジウムが担持された構成などであってもよいものである。
そして、前記ア(ウ)(段落【0025】、【0027】、【0035】、【0041】、【0042】)、(エ)(【図6】(e))に記載された実施例2に注目すると、前記「触媒コンバーター」は、多数のセルを有する筒状の基材1と、セルを構成するセル壁2の表面に形成された触媒層3とから大略構成されており、基材1は、四角形や六角形、八角形等の多数の格子輪郭のセルを具備するハニカム構造体からなり、基材1において排ガスの流れ方向上流側の端部のセル内に流入した排ガスは、基材1の内部を流通し、この流通過程で浄化され、基材1において排ガスの流れ方向下流側の端部から浄化された排ガスが流出するようになっているものであり、上流側の第1の触媒層は、基材長の50%の範囲がコーティングされ、下流側の第2の触媒層は、基材長の50%の範囲がコーティングされたものであり、上流側の下触媒層がPdを触媒として有する層で、Pd(0.2)/Al2O3(12.5)、上流側の上触媒層がRhを触媒として有する層で、Rh(0.15)/CZ(40)+Al2O3(20)であり、下流側がPtを触媒として有する層で、Pt(0.2)/Al2O3(12.5)+CZ(30)であり、ここで、括弧内の数値の単位はg/Lであるものである。
ウ 前記イによれば、甲第12号証には、以下の発明が記載されているといえる(以下、「甲12発明」という。)。
「触媒コンバーターであって、
COやNOxやHCの浄化とCH4を含むパラフィンの浄化の双方を実現することのできる触媒コンバーターを提供することを目的とするものであり、排ガスの流れ方向の上流側に第1の触媒層、排ガスの流れ方向の下流側に第2の触媒層を有したゾーンコート触媒を具備するものにおいて、第2の触媒層に担持される貴金属触媒をCH4を含むパラフィンの浄化性能の高い白金のみとすることにより、パラフィン浄化性能に優れた触媒コンバーターとするものであり、
触媒コンバーターの上流側ではHC、CO、NOxが主として浄化され、そのために下流側ではパラフィンの割合が増加するので、上流側にある第1の触媒層にてHCやCO、NOxを主として浄化し、下流側にある第2の触媒層にて白金によってCH4を含むパラフィンを浄化するようにしたものであり、下流側の第2の触媒層は一層構造である一方で、上流側の第1の触媒層は上下二層構造であってもよく、基材側の下触媒層に貴金属触媒としてパラジウムが担持され、下触媒層に積層された上触媒層に貴金属触媒としてロジウムが担持された構成などであってもよいものであり、
触媒コンバーターは、多数のセルを有する筒状の基材と、セルを構成するセル壁の表面に形成された触媒層とから大略構成されており、基材は、四角形や六角形、八角形等の多数の格子輪郭のセルを具備するハニカム構造体からなり、基材において排ガスの流れ方向上流側の端部のセル内に流入した排ガスは、基材の内部を流通し、この流通過程で浄化され、基材において排ガスの流れ方向下流側の端部から浄化された排ガスが流出するようになっているものであり、
上流側の第1の触媒層は、基材長の50%の範囲がコーティングされ、下流側の第2の触媒層は、基材長の50%の範囲がコーティングされたものであり、上流側の下触媒層がPdを触媒として有する層で、Pd(0.2)/Al2O3(12.5)、上流側の上触媒層がRhを触媒として有する層で、Rh(0.15)/CZ(40)+Al2O3(20)であり、下流側がPtを触媒として有する層で、Pt(0.2)/Al2O3(12.5)+CZ(30)であり、ここで、括弧内の数値の単位はg/Lである、触媒コンバーター。」
なお、甲第2~11号証及び参考資料1~3の摘記は省略する。
2 甲1発明1を引用発明とした場合について
(1) 対比・判断
ア 対比
(ア) 本件発明1と甲1発明1とを対比すると、甲1発明1における「自動車の排ガス中のHC、CO及びNOxを浄化する触媒である三元触媒として有用な排ガス浄化用触媒」は、本件発明1における「内燃機関の排気経路に配置され、該内燃機関から排出される」「排ガスを浄化する排ガス浄化用触媒」に相当し、甲1発明1における「排ガスが流通するガス流路を有するハニカム基材」は、本件発明1における「排ガスが流通するセルを区画する基材」に相当し、甲1発明1における「ハニカム基材の表面に形成された下触媒層と、下触媒層の表面に形成された上触媒層」は、本件発明1における「前記基材の表面に設けられた触媒層」に相当する。
また、甲1発明1における、「ガス流路を流れるガスの流れ方向の基材の上流側端部から20mmまでの部分に配置」される「Pdを担持してなるPd担持層」は、本件発明1における、「前記セルの排ガスが流入される側の端部である第1端部から排ガスが流出される側の端部である第2端部に向けて延設され、パラジウムを含むパラジウム層」に相当し、甲1発明1における、「Pd担持層の下流側端部から、基材の下流側端部までの85mmの部分に配置」される「Pt担持層」は、本件発明1における、「前記第2端部から前記第1端部に向けて延設され、プラチナを含むプラチナ層」に相当し、甲1発明1における、「Rhを担持」している「上触媒層」は、本件発明1における、「ロジウムを含むロジウム層」に相当する。
ここで、甲1発明1における「ハニカム基材」が「長さ105mmの円筒体」であることと、「Pd担持層」が「ガス流路を流れるガスの流れ方向の基材の上流側端部から20mmまでの部分に配置」されることと、「Pt担持層」が「Pd担持層の下流側端部から、基材の下流側端部までの85mmの部分に配置」されることからみれば、甲1発明1の「下触媒層の下流側端部から上流側に向けて95mmの長さまでの部分に形成され」る「上触媒層」は、「Pt担持層」を全て覆い、更に「Pd担持層」を10mm覆うものであることが理解できるから、「前記パラジウム層と前記プラチナ層の両方に積層され」るものといえる。
そうすると、甲1発明1における、「Rhを担持しており、下触媒層の下流側端部から上流側に向けて95mmの長さまでの部分に形成」される「上触媒層」は、本件発明1において「前記パラジウム層と前記プラチナ層の両方に積層され、ロジウムを含むロジウム層」に相当する。
また、甲1発明1における「Pd担持層」の製造方法は、「Pd担持層形成用の担体として、CeO2-ZrO2-La2O3-Pr6O11複合酸化物粉末(CeO2:60質量%、ZrO2:40質量%、La2O3:3質量%、Pr6O11:7質量%)を用意し、貴金属触媒溶液としての硝酸Pd水溶液を含浸した後、蒸発乾固して、Pdを担持したPd/担体粉末を調製し、このPd/担体粉末9質量部と、Al2O3-La2O3複合酸化物(Al2O3:96質量%、La2O3:4質量%)3重量部と、BaSO4を3重量部、バインダとしてのアルミナゾル(Al2O3:10質量%)2重量部(アルミナの絶対量)と、蒸留水とを混合してPd担持層用スラリーを調製し、このPd担持層用スラリーに、上記のPt担持層を形成したハニカム基材の上流側端部から下流側へ20mmの部分までを漬浸し、引き上げて余分なスラリーを吹き払った後、乾燥、焼成してPd担持層を形成した」ものであり、前記製造方法からみれば、「Pd担持層」にはPd以外の「金属触媒」は含まれないから、本件発明1において「前記パラジウム層」「に含まれる金属触媒は」、「80%質量以上がPd」であることを満たすといえる。
更に、甲1発明1における「Pt担持層」及び「上触媒層」の「金属触媒」の含有量について検討しても事情は同じであるから、甲1発明1における「Pd担持層」、「Pt担持層」及び「上触媒層」は、本件発明1において「前記パラジウム層、前記プラチナ層、および前記ロジウム層に含まれる金属触媒は、それぞれ80質量%以上がPd、Pt、およびRhであ」ることを満たすといえる。
そして、甲1発明1における「ハニカム基材」が「長さ105mmの円筒体」であることと、「上触媒層」が「下触媒層の下流側端部から上流側に向けて95mmの長さまでの部分に形成され」ることからみれば、排ガスの流れ方向に沿った前記「上触媒層」の長さは、前記「ハニカム基材」に対して、95mm÷105mm×100=90.5%であることがわかるから、本件発明1において「前記排ガスの流れ方向に沿った前記ロジウム層の長さは、前記基材の排ガスの全長を100%としたときに、80%以上の長さである」ことを満たすといえる。
(イ) 前記(ア)によれば、本件発明1と甲1発明1とは、
「内燃機関の排気経路に配置され、該内燃機関から排出される排ガスを浄化する排ガス浄化用触媒であって、
排ガスが流通するセルを区画する基材と、
前記基材の表面に設けられた触媒層と、
を備え、
前記触媒層は、
前記セルの排ガスが流入される側の端部である第1端部から排ガスが流出される側の端部である第2端部に向けて延設され、パラジウムを含むパラジウム層と、
前記第2端部から前記第1端部に向けて延設され、プラチナを含むプラチナ層と、
前記パラジウム層と前記プラチナ層の両方に積層され、ロジウムを含むロジウム層と、
を含み、
前記パラジウム層、前記プラチナ層、および前記ロジウム層に含まれる金属触媒は、それぞれ80質量%以上がPd、Pt、およびRhであり、
前記排ガスの流れ方向に沿った前記ロジウム層の長さは、前記基材の排ガスの全長を100%としたときに、80%以上の長さである、
排ガス浄化用触媒。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点1:本件発明1においては、「内燃機関から排出される」「排ガス」が「メタンを含む」のに対して、甲1発明1において「内燃機関から排出される」「排ガス」が「メタンを含む」か否かは明らかでない点。
・相違点2:本件発明1は、「前記基材の前記第1端部から前記第2端部に向かう長さ方向に沿って前記パラジウム層が備えられている部分の前記基材について、単位体積あたりに含まれる前記パラジウムのモル量Aと、前記長さ方向に沿って前記プラチナ層が備えられている部分の前記基材について、単位体積あたりに含まれる前記プラチナのモル量Bとの比A/Bは、1.2以上2.8以下である」のに対して、甲1発明1は、「Ptはハニカム基材1の1L当たり0.45g担持されているものであり」、「Pdはハニカム基材の1L当たり0.9g担持されているもの」である点。
イ 判断
(ア) 事案に鑑み、始めに、前記ア(イ)の相違点2が実質的な相違点であるか否かについて検討する。
まず、「前記基材の前記第1端部から前記第2端部に向かう長さ方向に沿って前記パラジウム層が備えられている部分の前記基材について、単位体積あたりに含まれる前記パラジウムのモル量A」及び「前記長さ方向に沿って前記プラチナ層が備えられている部分の前記基材について、単位体積あたりに含まれる前記プラチナのモル量B」(以下、それぞれ単に「モル量A」、「モル量B」という。)の意味についてみると、本件特許明細書には以下の記載がある。
「【0012】
本技術の排ガス浄化用触媒の好適な一態様では、前記基材の前記第1端部から前記第2端部に向かう長さ方向に沿って前記パラジウム層が備えられている部分の前記基材について、単位体積あたりに含まれる前記パラジウムのモル量Aと、前記長さ方向に沿って前記プラチナ層が備えられている部分の前記基材について、単位体積あたりに含まれる前記プラチナのモル量Bとの比A/Bは、1.2以上2.8以下である。このような構成によると、パラジウムおよびプラチナの合計の使用量が同じ場合であっても、メタン浄化性能をより高めることができる。
・・・
【0031】
なお、Pd層21におけるPdの量は特に制限されないが、例えば、第1方向Xに沿ってPd層21が形成されている部分の基材の体積1リットル(L)当たりの量(以下、触媒についての「濃度」という。)として、0.1g/L以上が適切であり、0.5g/L以上が好ましく、例えば1g/L以上、特に2g/L以上であるとよい。・・・
・・・
【0033】
なお、Pt層22におけるPtの量は特に制限されないが、例えば、Pt濃度は、0.1g/L以上が適切であり、0.5g/L以上が好ましく、例えば1g/L以上、特に2g/L以上であるとよい。過剰なPtの含有は、Ptの移動や凝集を招き得るために好ましくない。Ptの濃度は、8g/L以下が適切であり、7g/L以下が好ましく、例えば6g/L以下であるとよい。
【0034】
なお、上記のとおり、Pt層22に対し、Pt層22によりもフロント側に配置されるPd層21の作用は、Pt層22の機能を好適に発揮させる上で重要である。かかる観点から、基材10の単位体積あたりに含まれるPdのモル量Aと、基材10の単位体積あたりに含まれるPtのモル量Bと、の比A/Bは、凡そ1以上であるとよく、1.2以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、例えば1.75以上や2以上であってよい。しかしながら、比A/Bが大きすぎると、単位体積あたりに含まれるPdのモル量AとPtのモル量Bとのバランスが崩れ、PdとPtが好適に協働できないために好ましくない。かかる観点から、比A/Bは、凡そ3以下とすると良く、2.8以下が好ましく、例えば2.5以下や、2.3以下であってよい。」
そして、本件発明1の「前記パラジウム層が備えられている部分の前記基材について」及び「前記長さ方向に沿って前記プラチナ層が備えられている部分の前記基材について」、との発明特定事項、及び、本件特許明細書の前記記載からみれば、本件発明1におけるパラジウムの量は、「第1方向Xに沿ってPd層21が形成されている部分の基材の体積1リットル(L)当たりの量」として記載されていると解されるのであり(段落【0031】)、プラチナの量についても、「Pt層」が「形成されている部分の基材の体積1リットル(L)当たりの量」として記載されていると解されるのであり、更に「モル量A」及び「モル量B」も同様であると解するのが妥当である(段落【0033】~【0034】)。
これに対して、技術常識からみて、甲1発明1において、「Ptはハニカム基材1の1L当たり0.45g担持され」ることと、「Pdはハニカム基材の1L当たり0.9g担持され」ることも、同様に、PtとPdが「形成されている部分の」「基材の体積1リットル(L)当たりの量」のことを意味していると解され、Ptの原子量を195.08、Pdの原子量を106.42として、これらをモル量で表すと、「モル量A」が0.9÷106.42=0.00846モル、「モル量B」が0.45÷195.08=0.00231モルとなるから、「モル量A」と「モル量B」の「比A/B」(以下、単に「比A/B」という。)は0.00846÷0.00231=3.66となり、「比A/Bは、1.2以上2.8以下である」、との前記相違点2に係る発明特定事項と合致しない。
なお、仮に、甲1発明1において、「Ptはハニカム基材1の1L当たり0.45g担持され」ることと、「Pdはハニカム基材の1L当たり0.9g担持され」ることが、「基材」全体の「体積1リットル(L)当たりの量」のことを意味しているとしたとき、「Pd担持層は、ガス流路を流れるガスの流れ方向の基材の上流側端部から20mmまでの部分に配置されており、Pt担持層は、Pd担持層の下流側端部から、基材の下流側端部までの85mmの部分に配置されて」いることからみれば、「比A/B」は、0.00846×(105/20)÷0.00231×(105/85)=3.66×4.25=15.6となるので、前記相違点2に係る発明特定事項と合致しないことに変わりはない。
してみれば、前記相違点2は実質的な相違点であるから、前記ア(イ)の相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は甲1発明1ではない。
更に、本件発明2、4、6及び7について検討しても事情は同じである。
(イ) 次に、前記相違点2の容易想到性について検討すると、前記(ア)の本件特許明細書の段落【0012】の記載によれば、本件発明1は、「比A/B」を「1.2以上2.8以下」とすることで、パラジウム及びプラチナの合計の使用量が同じ場合であっても、メタン浄化性能をより高めることができるものであり、このことは、本件特許明細書の段落【0073】~【0078】に記載された試験例2(摘記は省略する。)によっても裏付けられるものである。
これに対して、甲1発明1は、そもそも、「比A/B」に注目したものではなく、甲1発明1において「比A/B」を「1.2以上2.8以下」とする動機付けは存在しない。
また、甲第1号証のそのほかの記載及び摘記を省略した甲第2~11号証の記載をみても、殊更、「比A/B」に注目して、これを「1.2以上2.8以下」とすることにより、パラジウムおよびプラチナの合計の使用量が同じ場合であっても、メタン浄化性能をより高めることができることは記載も示唆もされていないし、そのような周知技術も存在しないから、甲1発明1において、「比A/B」を「1.2以上2.8以下」とするには至らない。
したがって、甲1発明1において、「前記基材の前記第1端部から前記第2端部に向かう長さ方向に沿って前記パラジウム層が備えられている部分の前記基材について、単位体積あたりに含まれる前記パラジウムのモル量Aと、前記長さ方向に沿って前記プラチナ層が備えられている部分の前記基材について、単位体積あたりに含まれる前記プラチナのモル量Bとの比A/Bは、1.2以上2.8以下である」、との前記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることは、甲第1~3号証に記載された事項及び甲第4~11号証に記載された本件特許の出願日当時の周知技術に基づいて当業者が容易になし得ることではないから、前記相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明1、甲第1~3号証に記載された事項及び甲第4~11号証に記載された本件特許の出願日当時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
更に、本件発明2~4、6~8について検討しても事情は同じである。
(2) 小括
よって、本件発明1~4、6~8は、甲1発明1ではなく、甲1発明1、甲第1~3号証に記載された事項及び甲第4~11号証に記載された本件特許の出願日当時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
そして、甲1発明1は、甲第1号証の実施例5に注目して認定した発明であるから、前記実施例5に記載された発明といえるので、前記第5の1の取消理由1及び前記第4の1、2の特許異議の申立て理由1、2はいずれも理由がない。
3 甲1発明2を引用発明とした場合について
(1) 対比・判断
ア 対比
(ア) 前記2(1)アと同様にして本件発明1と甲1発明2とを対比すると、甲1発明2における「自動車の排ガス中のHC、CO及びNOxを浄化する触媒である三元触媒として有用な排ガス浄化用触媒」は、本件発明1における「内燃機関の排気経路に配置され、該内燃機関から排出される」「排ガスを浄化する排ガス浄化用触媒」に相当し、甲1発明2における「排ガスが流通するガス流路を有するハニカム基材」は、本件発明1における「排ガスが流通するセルを区画する基材」に相当し、甲1発明2における「ハニカム基材の表面に形成された下触媒層と、下触媒層の表面に形成された上触媒層」は、本件発明1における「前記基材の表面に設けられた触媒層」に相当する。
また、甲1発明2における、「ガス流路を流れるガスの流れ方向の基材の上流側端部から20mmまでの部分に配置」される「Pdを担持してなるPd担持層」は、本件発明1における、「前記セルの排ガスが流入される側の端部である第1端部から排ガスが流出される側の端部である第2端部に向けて延設され、パラジウムを含むパラジウム層」に相当し、甲1発明2における、「Pd担持層の下流側端部から、基材の下流側端部までの85mmの部分に配置」される「Pt担持層」は、本件発明1における、「前記第2端部から前記第1端部に向けて延設され、プラチナを含むプラチナ層」に相当し、甲1発明2における、「Rhを担持」している「上触媒層」は、本件発明1における、「ロジウムを含むロジウム層」に相当する。
ここで、甲1発明2における「ハニカム基材」が「長さ105mmの円筒体」であることと、「Pd担持層」が「ガス流路を流れるガスの流れ方向の基材の上流側端部から20mmまでの部分に配置」されることと、「Pt担持層」が「Pd担持層の下流側端部から、基材の下流側端部までの85mmの部分に配置」されることからみれば、甲1発明2の「下触媒層の下流側端部から上流側に向けて105mmの長さまでの部分に形成され」る「上触媒層」は、「Pt担持層」及び「Pd担持層」を全て覆うものであることが理解できるから、「前記パラジウム層と前記プラチナ層の両方に積層され」るものといえる。
そうすると、甲1発明2における、「Rhを担持しており、下触媒層の下流側端部から上流側に向けて105mmの長さまでの部分に形成」される「上触媒層」は、本件発明1において「前記パラジウム層と前記プラチナ層の両方に積層され、ロジウムを含むロジウム層」に相当する。
また、前記2(1)ア(ア)に記載したのと同様の理由により、甲1発明2における「Pd担持層」、「Pt担持層」及び「上触媒層」は、本件発明1において「前記パラジウム層、前記プラチナ層、および前記ロジウム層に含まれる金属触媒は、それぞれ80質量%以上がPd、Pt、およびRhであ」ることを満たすといえる。
そして、甲1発明2における「ハニカム基材」が「長さ105mmの円筒体」であることと、「上触媒層」が「下触媒層の下流側端部から上流側に向けて105mmの長さまでの部分に形成され」ることからみれば、排ガスの流れ方向に沿った前記「上触媒層」の長さは、前記「ハニカム基材」に対して、105mm÷105mm×100=100.0%であることがわかるから、本件発明1において「前記排ガスの流れ方向に沿った前記ロジウム層の長さは、前記基材の排ガスの全長を100%としたときに、80%以上の長さである」ことを満たすといえる。
(イ) 前記(ア)によれば、本件発明1と甲1発明2とは、
「内燃機関の排気経路に配置され、該内燃機関から排出される排ガスを浄化する排ガス浄化用触媒であって、
排ガスが流通するセルを区画する基材と、
前記基材の表面に設けられた触媒層と、
を備え、
前記触媒層は、
前記セルの排ガスが流入される側の端部である第1端部から排ガスが流出される側の端部である第2端部に向けて延設され、パラジウムを含むパラジウム層と、
前記第2端部から前記第1端部に向けて延設され、プラチナを含むプラチナ層と、
前記パラジウム層と前記プラチナ層の両方に積層され、ロジウムを含むロジウム層と、
を含み、
前記パラジウム層、前記プラチナ層、および前記ロジウム層に含まれる金属触媒は、それぞれ80質量%以上がPd、Pt、およびRhであり、
前記排ガスの流れ方向に沿った前記ロジウム層の長さは、前記基材の排ガスの全長を100%としたときに、80%以上の長さである、
排ガス浄化用触媒。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点1’:本件発明1においては、「内燃機関から排出される」「排ガス」が「メタンを含む」のに対して、甲1発明2において「内燃機関から排出される」「排ガス」が「メタンを含む」か否かは明らかでない点。
・相違点2’:本件発明1は、「前記基材の前記第1端部から前記第2端部に向かう長さ方向に沿って前記パラジウム層が備えられている部分の前記基材について、単位体積あたりに含まれる前記パラジウムのモル量Aと、前記長さ方向に沿って前記プラチナ層が備えられている部分の前記基材について、単位体積あたりに含まれる前記プラチナのモル量Bとの比A/Bは、1.2以上2.8以下である」のに対して、甲1発明2は、「Ptはハニカム基材1の1L当たり0.45g担持されているものであり」、「Pdはハニカム基材の1L当たり0.9g担持されているもの」である点。
イ 判断
(ア) 事案に鑑み、始めに、前記ア(イ)の相違点2’が実質的な相違点であるか否かについて検討すると、前記2(1)イ(ア)に記載したのと同様の理由により、前記相違点2’は実質的な相違点であるから、前記ア(イ)の相違点1’について検討するまでもなく、本件発明1は甲1発明2ではない。
更に、本件発明2~4、6~8について検討しても事情は同じである。
(イ) 次に、前記相違点2’の容易想到性について検討すると、前記2(1)イ(イ)に記載したのと同様の理由により、甲1発明2において、「前記基材の前記第1端部から前記第2端部に向かう長さ方向に沿って前記パラジウム層が備えられている部分の前記基材について、単位体積あたりに含まれる前記パラジウムのモル量Aと、前記長さ方向に沿って前記プラチナ層が備えられている部分の前記基材について、単位体積あたりに含まれる前記プラチナのモル量Bとの比A/Bは、1.2以上2.8以下である」、との前記相違点2’に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得ることではないから、前記相違点1’について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明2、甲第1~3号証に記載された事項及び甲第4~11号証に記載された本件特許の出願日当時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
更に、本件発明2~4、6~8について検討しても事情は同じである。
(2) 小括
よって、本件発明1~4、6~8は、甲1発明2ではなく、甲1発明2、甲第1~3号証に記載された事項及び甲第4~11号証に記載された本件特許の出願日当時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
そして、甲1発明2は、甲第1号証の比較例1に注目して認定した発明であるから、前記比較例1に記載された発明といえるので、前記第5の2の取消理由2及び前記第4の3、4の特許異議の申立て理由3、4はいずれも理由がない。
4 甲12発明を引用発明とした場合について
(1) 対比・判断
ア 対比
(ア) 本件発明1と甲12発明とを対比すると、甲12発明における「触媒コンバーター」は、「COやNOxやHCの浄化とCH4を含むパラフィンの浄化の双方を実現すること」ができるものであるから、本件発明1における「内燃機関の排気経路に配置され、該内燃機関から排出されるメタンを含む排ガスを浄化する排ガス浄化用触媒」に相当し、甲12発明における「四角形や六角形、八角形等の多数の格子輪郭のセルを具備するハニカム構造体」からなる「基材」は、本件発明1における「排ガスが流通するセルを区画する基材」に相当し、甲12発明における「上流側の第1の触媒層」及び「下流側の第2の触媒層」は、本件発明1における「前記基材の表面に設けられた触媒層」に相当する。
また、甲12発明における、「上流側の第1の触媒層」の「貴金属触媒としてパラジウムが担持され」た基材側の「下触媒層」は、本件発明1における、「前記セルの排ガスが流入される側の端部である第1端部から排ガスが流出される側の端部である第2端部に向けて延設され、パラジウムを含むパラジウム層」に相当し、甲12発明における、「貴金属触媒をCH4を含むパラフィンの浄化性能の高い白金のみ」とした「下流側の第2の触媒層」は、本件発明1における、「前記第2端部から前記第1端部に向けて延設され、プラチナを含むプラチナ層」に相当する。
そして、甲12発明における、「下触媒層」に積層された「上触媒層」は、「貴金属触媒としてロジウムが担持された」ものであって、甲12発明においては、「下流側の第2の触媒層は一層構造である一方で、上流側の第1の触媒層は上下二層構造で」あることから、前記「上触媒層」は、本件発明1における「前記パラジウム層」「に積層され、ロジウムを含むロジウム層」に相当する。
また、甲12発明においては、「下触媒層」がPdを触媒として有する層で、Pd(0.2)/Al2O3(12.5)である(ここで、括弧内の数値の単位はg/Lである)ことからみれば、前記「下触媒層」は金属触媒としてPdしか含まないといえるから、「前記パラジウム層」は、「80質量%以上がPd」であるものといえ、「下流側の第2の触媒層」及び「上触媒層」について検討しても事情は同じであるので、甲12発明は、本件発明1の「前記パラジウム層、前記プラチナ層、および前記ロジウム層に含まれる金属触媒は、それぞれ80質量%以上がPd、Pt、およびRhであ」ることを満たすといえる。
更に、甲12発明においては、「下触媒層」がPdを触媒として有する層で、Pd(0.2)/Al2O3(12.5)、「下流側の第2の触媒層」がPtを触媒として有する層で、Pt(0.2)/Al2O3(12.5)+CZ(30)であることから、前記2(1)イ(ア)と同様にして「モル量A」、「モル量B」及び「比A/B」を算出すると、「モル量A」が0.2÷106.42=0.00188、「モル量B」が0.2÷195.08=0.00103となるので、「比A/B」=0.00188÷0.00103=1.83となる。
そして、甲12発明の「上流側の第1の触媒層」が、「基材長の50%の範囲のコーティングされたものであり、下流側の第2の触媒層」が、「基材長の50%の範囲のコーティングされたもの」であることからみれば、「下触媒層」のPd担持量及び「下流側の第2の触媒層」のPt担持量が、「形成されている部分の基材の体積1リットル(L)当たりの量」であっても、「基材」全体の「体積1リットル(L)当たりの量」であっても、前記「比A/B」は変わらない。
そうすると、甲12発明は、本件発明1において「前記基材の前記第1端部から前記第2端部に向かう長さ方向に沿って前記パラジウム層が備えられている部分の前記基材について、単位体積あたりに含まれる前記パラジウムのモル量Aと、前記長さ方向に沿って前記プラチナ層が備えられている部分の前記基材について、単位体積あたりに含まれる前記プラチナのモル量Bとの比A/Bは、1.2以上2.8以下である」ことを満たす。
(イ) 前記(ア)によれば、本件発明1と甲12発明とは、
「内燃機関の排気経路に配置され、該内燃機関から排出されるメタンを含む排ガスを浄化する排ガス浄化用触媒であって、
排ガスが流通するセルを区画する基材と、
前記基材の表面に設けられた触媒層と、
を備え、
前記触媒層は、
前記セルの排ガスが流入される側の端部である第1端部から排ガスが流出される側の端部である第2端部に向けて延設され、パラジウムを含むパラジウム層と、
前記第2端部から前記第1端部に向けて延設され、プラチナを含むプラチナ層と、
前記パラジウム層に積層され、ロジウムを含むロジウム層と、
を含み、
前記パラジウム層、前記プラチナ層、および前記ロジウム層に含まれる金属触媒は、それぞれ80質量%以上がPd、Pt、およびRhであり、
前記基材の前記第1端部から前記第2端部に向かう長さ方向に沿って前記パラジウム層が備えられている部分の前記基材について、単位体積あたりに含まれる前記パラジウムのモル量Aと、前記長さ方向に沿って前記プラチナ層が備えられている部分の前記基材について、単位体積あたりに含まれる前記プラチナのモル量Bとの比A/Bは、1.2以上2.8以下である、
排ガス浄化用触媒。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点3:本件発明1においては、「ロジウム層」が「前記パラジウム層と前記プラチナ層の両方に積層され」るものであるのに対して、甲12発明は、「下流側の第2の触媒層」が「貴金属触媒をCH4を含むパラフィンの浄化性能の高い白金のみ」とした「一層構造」であり、「貴金属触媒としてロジウムが担持された」「上触媒層」が、前記「下流側の第2の触媒層」に積層されるものではない点。
・相違点4:本件発明1は、「前記排ガスの流れ方向に沿った前記ロジウム層の長さは、前記基材の排ガスの全長を100%としたときに、80%以上の長さで」あるのに対して、甲12発明は、「上流側の第1の触媒層は、基材長の50%の範囲のコーティングされたものであり、下流側の第2の触媒層は、基材長の50%の範囲のコーティングされたものであ」る点。
イ 判断
始めに、前記ア(イ)の相違点3の容易想到性について検討すると、甲12発明は、そもそも、「下流側の第2の触媒層」を「貴金属触媒をCH4を含むパラフィンの浄化性能の高い白金のみ」とすることで、「パラフィン浄化性能に優れた触媒コンバーター」とするものであり、そのために、「下流側の第2の触媒層」を「一層構造」としたものといえる。
そして、そのような甲12発明において、「下流側の第2の触媒層」に「貴金属触媒としてロジウムが担持された」「上触媒層」を積層した場合、「下流側の第2の触媒層」が「貴金属触媒をCH4を含むパラフィンの浄化性能の高い白金のみ」とはならなくなるから、「パラフィン浄化性能に優れた触媒コンバーター」とする、という甲12発明の特長を損なうこととなるので、そうすることは、甲第1号証に記載された事項及び本件特許の出願日当時の周知技術にかかわらず、当業者が容易になし得ることではない。
してみれば、甲12発明において、「ロジウム層」を「前記パラジウム層と前記プラチナ層の両方に積層され」るものとして、前記相違点3に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることは、甲第1号証に記載された事項及び本件特許の出願日当時の周知技術に基づいて当業者が容易になし得ることではないから、前記ア(イ)の相違点4について検討するまでもなく、本件発明1は、甲12発明、甲第1号証に記載された事項及び本件特許の出願日当時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
更に、本件発明2~4、6~8について検討しても事情は同じである。
(2) 小括
よって、本件発明1~4、6~8は、甲12発明、甲第1号証に記載された事項及び本件特許の出願日当時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、前記第4の5の特許異議の申立て理由5も理由がない。
5 申立人の主張について
(1) 申立人の主張の概要
ア 甲第1号証に記載された発明を主引用発明とした場合の申立人の主張は、概略、以下のとおりである。
甲第2号証の実施例1に記載の排ガス浄化用三元触媒の「比A/B」は1.89又は2.62と計算され、甲第3号証の実施例3に記載の排気ガス浄化用モノリス触媒の「比A/B」は2.75又は1.83と計算され、甲第12号証の実施例2に記載の触媒コンバーターの「比A/B」は1.83と計算され、参考資料1の実施例10の排ガス浄化用触媒の「比A/B」は2.10と計算され、参考資料2の比較例1及び実施例1の排ガス浄化用触媒の「比A/B」は1.83と計算され、参考資料3の比較例1及び実施例1のの排ガス浄化用触媒の「比A/B」は1.83と計算されることから、「比A/B」として1.2以上2.8以下の値を採用することは本件特許の出願日当時の周知技術である。
そして、甲第1号証の段落【0023】~【0025】(前記1(1)イ)の記載から、甲1発明1又は甲1発明2において、当業者がPd担持層の長さの比率、Pt担持層の長さの比率、Pd担持層のPd担持量及びPt担持層のPt担持量を前記記載の範囲内で変更する動機付けが存在し、その際、前記周知技術を考慮して、「比A/B」として「1.2以上2.8以下」の値を採用することは当業者が容易に想到し得るから、本件発明1~4、6~8は、甲1発明1又は甲1発明2及び本件特許の出願日当時の周知技術に基づいて、又は、甲1発明1又は甲1発明2、甲第10~11号証に記載された事項及び本件特許の出願日当時の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである(特許異議申立書55ページ下から3行~56ページ下から5行、59ページ下から8行~62ページ下から5行、申立人意見書3ページ8行~7ページ下から9行)。
イ 甲第12号証に記載された発明を主引用発明とした場合の申立人の主張は、概略、以下のとおりである。
当業者は、甲第12号証の段落【0014】~【0015】(前記1(2)ア(イ))の記載に基づいて、上流側にあるPd層、Rh層にてHCやCO、NOxを主として浄化し、下流側にあるPt層にてCH4を含むパラフィンを浄化し、Pt層の長さを、基材の下流側の端部を起点として基材の全長の5~30%の範囲に調整することにより、COやNOxやHCの浄化とCH4を含むパラフィンの浄化の双方を実現することができ、この際、Rh層の長さを変更してもよいことを理解し得るから、甲12発明において、Rh層の長さを基材の全長の80%以上とすることは、当業者が適宜なし得る設計的事項であり、その場合、Rh層はPd層とPt層の両方に積層されることとなるから、本件発明1は、甲12発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、甲第1号証の段落【0058】~【0060】(前記1(1)ア(イ))には、ハニカム基材の長さ1に対し上触媒層の長さの比率を50~90%に調製することにより、HC及びNOxの浄化活性をバランスよく発揮させることができることが記載されているから、甲12発明において、Rh層の長さを基材の全長の80%以上とすることは、甲第1号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得ることであり、その場合、Rh層はPd層とPt層の両方に積層されることとなるから、本件発明1は、甲12発明及び甲第1号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである(特許異議申立書84ページ12行~86ページ11行)。
(2) 当審の判断
ア 始めに、前記(1)アの主張について検討すると、申立人が列挙する甲第2号証、甲第3号証、参考資料1~3は、本件発明において特定される「比A/B」を本件特許明細書の記載にのっとって算出したとき、「1.2以上2.8以下」を満足する排ガス浄化用触媒の例が散見されることを示すものにすぎず、そもそも、「比A/B」自体、記載も示唆もされていないし、当然、「比A/B」を「1.2以上2.8以下」とすることにより、パラジウムおよびプラチナの合計の使用量が同じ場合であっても、メタン浄化性能をより高めることができることも、記載も示唆もされていない。
このため、「比A/B」を「1.2以上2.8以下」としてメタン浄化性能を高めることが、本件特許の出願日当時の周知技術であるということはできないし、甲第1号証の段落【0023】~【0025】(前記1(1)イ)の記載から、甲1発明1又は甲1発明2において、当業者がPd担持層の長さの比率、Pt担持層の長さの比率、Pd担持層のPd担持量及びPt担持層のPt担持量を前記記載の範囲内で変更する動機付けが存在するとしても、そこから進んで、「比A/B」を「1.2以上2.8以下」とすることでメタン浄化性能をより高めることは、当業者が容易に想到し得ることではないので、申立人の前記(1)アの主張は採用できない。
イ 次に、前記(1)イの主張について検討すると、前記4(1)イに記載したのと同様の理由により、甲第12号証の段落【0014】~【0015】の記載や、甲第1号証の段落【0023】~【0025】に関わらず、本件発明1~4、6~8は、甲12発明、甲第1号証に記載された事項及び本件特許の出願日当時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないことに変わりはないから、申立人の前記(1)イの主張も採用できない。
(3) 小括
よって、特許異議申立書及び申立人意見書における申立人の主張はいずれも採用できない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、本件特許請求の範囲の請求項1~4、6~8に係る発明の特許は、特許異議申立書に記載された特許異議の申立て理由、及び、取消理由通知書に記載した取消理由によっては、取り消すことができない。
また、他に当該請求項1~4、6~8に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件特許請求の範囲の請求項5は、前記第2のとおり、訂正により削除された。これにより、前記請求項5に係る発明の特許に対する特許異議の申立てについては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。
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2023-700652