特許異議申立
2022-701281
光硬化性歯科用組成物
- 審判番号
- 2022-701281
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-517469
- 登録番号
- 7092873
- 請求日
- 2022年12月21日
- 審決日
- 2023年10月04日
- 公報発行日
- 2024年01月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】デンツプライ デトレイ ゲー.エム.ベー.ハー.
- 【権利者代理人】弁理士法人 津国
- 【異議申立人】中丸 剛
- 審判長/審判官
- 審判長 前田 佳与子
- 審判官 田中 耕一郎
- 審判官 原田 隆興
- 分類
- P1651.121-YAA(A61K) / P1651.113-YAA(A61K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第126条第6項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第7項、特許法第29条第1項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7092873号発明「光硬化性歯科用組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7092873号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~12〕、〔13~17〕について訂正することを認める。
特許第7092873号の請求項3~12、15~17に係る特許を維持する。
特許第7092873号の請求項1、2、13及び14に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7092873号(以下「本件特許」という。)に係る発明についての出願は、2018年(平成30年)10月9日(パリ条約による優先権主張 2017年10月13日(EP)欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、令和4年6月20日にその特許権の設定登録がされたものである。
これに対して、中丸 剛(以下「特許異議申立人」という。)から、令和4年12月21日付け特許異議申立書によって、本件特許の全ての請求項1~17に係る発明の特許を取り消すべき旨の特許異議の申立てがされた。以降の主な手続の経緯は次のとおりである。
令和5年4月5日付け 取消理由通知書
同年6月9日付け 訂正請求書及び意見書の提出
なお、特許異議申立人に対し、令和5年6月16日付け通知書により、上記訂正の請求があった旨を通知し、意見を述べる機会を与えたが、特許異議申立人から意見書は提出されなかった。
第2 訂正請求について
1.令和5年6月9日付けの訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~17について訂正することを求めるものである。
本件訂正における訂正事項は、以下のとおりである。
なお、下線は訂正内容を明確にするために、当審合議体が付したものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項3に「共開始剤化合物は、式(I)において、xが3であり、Rが芳香族又は脂肪族有機部分を表わし、式(II)において、R1及びR2が、それぞれ独立して、1~6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖アルコキシ基により置換されていてもよいフェニル基を表わすスルホナート化合物である、請求項1記載の光硬化型歯科用組成物。」と記載されているのを、「(a)1種以上のラジカル重合性化合物である(メタ)アクリラート又は(メタ)アクリルアミドモノマーと、
(b)
(i)300~800nmの範囲に光吸収極大を有する光開始剤化合物であって、1,2-ジケトンである光開始剤化合物、
及び
(ii)共開始剤化合物を含有する重合開始剤系とを含み、
ここで、該共開始剤化合物は、下記式(I):
(R-SOx-)yMy+ (I)
[式中、
Rは、芳香族又は脂肪族有機部分を表わし My+は、歯科用組成物に適したカチオンであって、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は下記式(II):
R1-I+-R2 (II)
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、1~6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖アルコキシ基により置換されていてもよいフェニル基を表わす]
で示されるヨードニウムイオンであり、
xは、3であり、
yは、1~4の整数である。]
で示されるスルホナート化合物である、
光硬化型歯科用組成物。」に訂正する(請求項3の記載を直接的又は間接的に引用する請求項4乃至12も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項15に「共開始剤化合物は、式(I)において、xが3であり、Rが芳香族又は脂肪族有機部分を表わし、式(II)において、R1及びR2が、それぞれ独立して、1~6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖アルコキシ基により置換されていてもよいフェニル基を表わすスルホナート化合物である、請求項13記載の使用。」と記載されているのを、「光硬化型歯科用組成物における、
(i)300~800nmの範囲に光吸収極大を有する光開始剤化合物であって、1,2-ジケトンである光開始剤化合物と、
(ii)共開始剤化合物とを含有し、
ここで、該共開始剤化合物は、下記式(I):
(R-SOx-)yMy+ (I)
[式中、
Rは、芳香族又は脂肪族有機部分を表わし、
My+は、歯科用組成物に適したカチオンであって、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は下記式(II):
R1-I+-R2 (II)
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、1~6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖アルコキシ基により置換されていてもよいフェニル基を表わす]
で示されるヨードニウムイオンであり、
xは、3であり、
yは、1~4の整数である。]
で示されるスルホナート化合物である、
重合開始剤系の使用。」に訂正する(請求項15の記載を直接的又は間接的に引用する請求項16及び17も同様に訂正する)。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項13を削除する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項14を削除する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1~3のいずれか一項記載の光硬化型歯科用組成物。」と記載されているのを、「請求項3記載の光硬化型歯科用組成物。」に訂正する。
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1~4のいずれか一項記載の光硬化型歯科用組成物。」と記載されているのを、「請求項3又は4記載の光硬化型歯科用組成物。」に訂正する。
特許請求の範囲の請求項6に「請求項1~5のいずれか一項記載の光硬化型歯科用組成物。」と記載されているのを、「請求項3~5のいずれか一項記載の光硬化型歯科用組成物。」に訂正する。
特許請求の範囲の請求項7に「請求項1~6のいずれか一項記載の光硬化型歯科用組成物。」と記載されているのを、「請求項3~6のいずれか一項記載の光硬化型歯科用組成物。」に訂正する。
特許請求の範囲の請求項8に「請求項1~7のいずれか一項記載の光硬化型歯科用組成物。」と記載されているのを、「請求項3~7のいずれか一項記載の光硬化型歯科用組成物。」に訂正する。
特許請求の範囲の請求項9に「請求項1~8のいずれか一項記載の光硬化型歯科用組成物。」と記載されているのを、「請求項3~8のいずれか一項記載の光硬化型歯科用組成物。」に訂正する。
特許請求の範囲の請求項10に「請求項1~9のいずれか一項記載の光硬化型歯科用組成物。」と記載されているのを、「請求項3~9のいずれか一項記載の光硬化型歯科用組成物。」に訂正する。
特許請求の範囲の請求項11に「請求項1~10のいずれか一項記載の光硬化型歯科用組成物。」と記載されているのを、「請求項3~10のいずれか一項記載の光硬化型歯科用組成物。」に訂正する。
特許請求の範囲の請求項12に「請求項1~11のいずれか一項記載の光硬化型歯科用組成物。」と記載されているのを、「請求項3~11のいずれか一項記載の光硬化型歯科用組成物。」に訂正する。
特許請求の範囲の請求項16に「請求項13~15のいずれか一項記載の光硬化型歯科用組成物。」と記載されているのを、「請求項15記載の光硬化型歯科用組成物。」に訂正する。
特許請求の範囲の請求項17に「請求項13~16のいずれか一項記載の光硬化型歯科用組成物。」と記載されているのを、「請求項15又は16記載の光硬化型歯科用組成物。」に訂正する。
(8)一群の請求項について
訂正前の請求項1~12について、請求項2~12はそれぞれ先行する請求項を引用しているものであって、訂正事項2によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~12に対応する訂正後の請求項1~12は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
訂正前の請求項13~17について、請求項14~17はそれぞれ先行する請求項を引用しているものであって、訂正事項5によって記載が訂正される請求項13に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項13~17に対応する訂正後の請求項13~17は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
(9)別の訂正単位とする求め
本件訂正後の請求項3と、訂正後の請求項3の記載を引用する訂正後の請求項4乃至12について、特許権者は、当該訂正が認められたならば、本件訂正前の一群の請求項とは別の訂正単位として扱われることを求めている。
また、本件訂正後の請求項15と、訂正後の請求項15の記載を引用する訂正後の請求項16及び17について、特許権者は、当該訂正が認められたならば、本件訂正前の一群の請求項とは別の訂正単位として扱われることを求めている。
2.訂正の適否の判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項3が訂正前の請求項1を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1は、前記のとおり、訂正前の請求項3が訂正前の請求項1を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1は、訂正前の請求項3が訂正前の請求項1を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であり、当該訂正により訂正前の請求項3に記載された発明のカテゴリーを変更するものではなく、かつ、訂正前の請求項3に記載された発明の対象や目的を変更するものとはならない。
したがって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
また、訂正後の請求項4乃至12についても、訂正前の請求項3が訂正前の請求項1を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であり、当該訂正により訂正前の請求項4乃至12に記載された発明のカテゴリーを変更するものではなく、かつ、訂正前の請求項4乃至12に記載された発明の対象や目的を変更するものとはならない。
したがって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(2)訂正事項4について
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、訂正前の請求項15が訂正前の請求項13を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項13を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項4は、前記のとおり、訂正前の請求項15が訂正前の請求項13を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項13を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項4は、訂正前の請求項15が訂正前の請求項13を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項13を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であり、当該訂正により訂正前の請求項15に記載された発明のカテゴリーを変更するものではなく、かつ、訂正前の請求項15に記載された発明の対象や目的を変更するものとはならない。
したがって、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
また、訂正後の請求項16及び17についても、訂正前の請求項15が訂正前の請求項13を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項13を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であり、当該訂正により訂正前の請求項16及び17に記載された発明のカテゴリーを変更するものではなく、かつ、訂正前の請求項16及び17に記載された発明の対象や目的を変更するものとはならない。
したがって、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(3)訂正事項2、3、5、6について
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項1の記載を削除するものである。
訂正事項3は、訂正前の請求項2の記載を削除するものである。
訂正事項5は、訂正前の請求項13の記載を削除するものである。
訂正事項6は、訂正前の請求項14の記載を削除するものである。
したがって、訂正事項2、3、5、6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2、3、5、6は、訂正前の請求項1、2、13、14の記載を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2、3、5、6は、訂正前の請求項1、2、13、14の記載を削除するのみであるから、訂正前の請求項1、2、13、14の記載について、訂正前の請求項1、2、13、14に記載された発明のカテゴリーを変更するものでもなく、かつ、訂正前の請求項1、2、13、14に記載された発明の対象や目的を変更するものとはならない。
したがって、訂正事項2、3、5、6は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(4)訂正事項7について
ア 訂正の目的について
訂正前の請求項4~12が請求項1~3を含む請求項の記載を引用する記載であるところ、訂正事項1で請求項1の発明特定事項の一部が請求項3で特定され、訂正事項2及び3で請求項1及び2が削除されたことに伴い、請求項間の引用関係を整合させるために訂正前の請求項4~12が引用していた請求項の数を減少させる訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する限定的減縮を目的とするものである。
また、訂正前の請求項16、17が請求項13~15を含む請求項の記載を引用する記載であるところ、訂正事項4で請求項13の発明特定事項の一部が請求項15で特定され、訂正事項5及び6で請求項13及び14が削除されたことに伴い、請求項間の引用関係を整合させるために訂正前の請求項16、17が引用していた請求項の数を減少させる訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する限定的減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正前の請求項4~12が請求項1~3を含む請求項の記載を引用する記載であるところ、訂正事項1で請求項1の発明特定事項の一部が請求項3で特定され、訂正事項2及び3で請求項1及び2が削除されたことに伴い、請求項間の引用関係を整合させるために訂正前の請求項4~12が引用していた請求項の数を減少させる訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
また、訂正前の請求項16、17が請求項13~15を含む請求項の記載を引用する記載であるところ、訂正事項4で請求項13の発明特定事項の一部が請求項15で特定され、訂正事項5及び6で請求項13及び14が削除されたことに伴い、請求項間の引用関係を整合させるために訂正前の請求項16、17が引用していた請求項の数を減少させる訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正前の請求項4~12が請求項1~3を含む請求項の記載を引用する記載であるところ、訂正事項1で請求項1の発明特定事項の一部が請求項3で特定され、訂正事項2及び3で請求項1及び2が削除されたことに伴い、請求項間の引用関係を整合させるために訂正前の請求項4~12が引用していた請求項の数を減少させる訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
また、訂正前の請求項16、17が請求項13~15を含む請求項の記載を引用する記載であるところ、訂正事項4で請求項13の発明特定事項の一部が請求項15で特定され、訂正事項5及び6で請求項13及び14が削除されたことに伴い、請求項間の引用関係を整合させるために訂正前の請求項16、17が引用していた請求項の数を減少させる訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(5)特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件特許異議事件においては、請求項1~17すべてが特許異議申立ての対象とされているので、訂正前の請求項1~17に係る訂正事項1~7に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
3.小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~12〕、〔13~17〕について訂正することを認める。
第3 本件訂正発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められたので、本件特許の請求項1~17に係る発明(以下、順に、「訂正発明1」~「訂正発明17」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~17に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(a)1種以上のラジカル重合性化合物である(メタ)アクリラート又は(メタ)アクリルアミドモノマーと、
(b)
(i)300~800nmの範囲に光吸収極大を有する光開始剤化合物であって、1,2-ジケトンである光開始剤化合物、
及び
(ii)共開始剤化合物を含有する重合開始剤系とを含み、
ここで、該共開始剤化合物は、下記式(I):
(R-SOx-)yMy+ (I)
[式中、
Rは、芳香族又は脂肪族有機部分を表わし My+は、歯科用組成物に適したカチオンであって、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は下記式(II):
R1-I+-R2 (II)
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、1~6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖アルコキシ基により置換されていてもよいフェニル基を表わす]
で示されるヨードニウムイオンであり、
xは、3であり、
yは、1~4の整数である。]
で示されるスルホナート化合物である、
光硬化型歯科用組成物。
【請求項4】
光開始剤化合物が、カンファーキノン、ベンジル、2,3-ブタンジオン、2,3-ペンタンジオン、2,3-ヘキサンジオン、3,4-ヘキサンジオン、2,3-ヘプタンジオン、3,4-ヘプタンジオン、2,3-オクタンジオン、4,5-オクタンジオンフリル、ビアセチル、1,2-シクロヘキサンジオン、1,2-ナフタキノン及びアセナフタキノンからなる群より選択される1,2-ジケトンである、請求項3記載の光硬化型歯科用組成物。
【請求項5】
光開始剤化合物が、カンファーキノン又はtert-ブチル(tert-ブチルジメチルシリル)-グリオキシラート(DKSi)である、請求項3又は4記載の光硬化型歯科用組成物。
【請求項6】
(メタ)アクリラート又は(メタ)アクリルアミドモノマーが、
アクリル酸、メタクリル酸、
メチルアクリラート、メチルメタクリラート、
エチルアクリラート、エチルメタクリラート、
プロピルアクリラート、プロピルメタクリラート、
イソプロピルアクリラート、イソプロピルメタクリラート、
2-ヒドロキシエチルアクリラート、2-ヒドロキシエチルメタクリラート(HEMA)、
ヒドロキシプロピルアクリラート、ヒドロキシプロピルメタクリラート、
テトラヒドロフルフリルアクリラート、テトラヒドロフルフリルメタクリラート、
グリシジルアクリラート、グリシジルメタクリラート、
ビス-フェノールAのジグリシジルメタクリラート(「ビス-GMA」)、
グリセロールモノ-及びジ-アクリラート、グリセロールモノ-及びジ-メタクリラート、
エチレングリコールジアクリラート、エチレングリコールジメタクリラート、
ポリエチレングリコールジアクリラート(ここで、繰り返しエチレンオキシド単位の数は2~30である)、ポリエチレングリコールジメタクリラート(ここで、繰り返しエチレンオキシド単位の数は2~30である)、
トリエチレングリコールジメタクリラート「TEGDMA」)、
ネオペンチルグリコールジアクリラート、ネオペンチルグリコールジメタクリラート、
トリメチロールプロパントリアクリラート、トリメチロールプロパントリメタクリラート、
ペンタエリスリトール及びジペンタエリスリトールのモノ-、ジ-、トリ-及びテトラ-アクリラート及びメタクリラート、
1,3-ブタンジオールジアクリラート、1,3-ブタンジオールジメタクリラート、
1,4-ブタンジオールジアクリラート、1,4-ブタンジオールジメタクリラート、
1,6-ヘキサンジオールジアクリラート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリラート、
ジ-2-メタクリロイルオキシエチルヘキサメチレンジカルバマート、
ジ-2-メタクリロイルオキシエチルトリメチルヘキサメチレンジカルバマート、
ジ-2-メタクリロイルオキシエチルジメチルベンゼンジカルバマート、
メチレン-ビス-2-メタクリルオキシエチル-4-シクロヘキシルカルバマート、
ジ-2-メタクリルオキシエチル-ジメチルシクロヘキサンジカルバマート、
メチレン-ビス-2-メタクリルオキシエチル-4-シクロヘキシルカルバマート、
ジ-1-メチル-2-メタクリルオキシエチル-ジメチルベンゼンジカルバマート、
ジ-1-メチル-2-メタクリルオキシエチル-ジメチルシクロヘキサンジカルバマート、
メチレン-ビス-1-メチル-2-メタクリルオキシエチル-4-シクロヘキシルカルバマート、
ジ-1-クロロメチル-2-メタクリルオキシエチル-ヘキサメチレンジカルバマート、
ジ-1-クロロメチル-2-メタクリルオキシエチル-トリメチルヘキサメチレンジカルバマート、
ジ-1-クロロメチル-2-メタクリルオキシエチル-ジメチルベンゼンジカルバマート、
ジ-1-クロロメチル-2-メタクリルオキシエチル-ジメチルシクロヘキサンジカルバマート、
メチレン-ビス-2-メタクリルオキシエチル-4-シクロヘキシルカルバマート、
ジ-1-メチル-2-メタクリルオキシエチル-ヘキサメチレンジカルバマート、
ジ-1-メチル-2-メタクリルオキシエチル-トリメチルヘキサメチレンジカルバマート、
ジ-1-メチル-2-メタクリルオキシエチル-ジメチルベンゼンジカルバマート、
ジ-1-メチル-2-メタクリルオキシエチル-ジメチルシクロヘキサンジカルバマート、
メチレン-ビス-1-メチル-2-メタクリルオキシエチル-4-シクロヘキシルカルバマート、
ジ-1-クロロメチル-2-メタクリルオキシエチル-ヘキサメチレンジカルバマート、
ジ-1-クロロメチル-2-メタクリルオキシエチル-トリメチルヘキサメチレンジカルバマート、
ジ-1-クロロメチル-2-メタクリルオキシエチル-ジメチルベンゼンジカルバマート、
ジ-1-クロロメチル-2-メタクリルオキシエチル-ジメチルシクロヘキサンジカルバマート、
メチレン-ビス-1-クロロメチル-2-メタクリルオキシエチル-4-シクロヘキシルカルバマート、
2,2’-ビス(4-メタクリルオキシフェニル)プロパン、2,2’ビス(4-アクリルオキシフェニル)プロパン、
2,2’-ビス[4(2-ヒドロキシ-3-メタクリルオキシ-フェニル)]プロパン、2,2’-ビス[4(2-ヒドロキシ-3-アクリルオキシ-フェニル)プロパン、
2,2’-ビス(4-メタクリルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-アクリルオキシエトキシフェニル)プロパン、
2,2’-ビス(4-メタクリルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-アクリルオキシプロポキシフェニル)プロパン、
2,2’-ビス(4-メタクリルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-アクリルオキシジエトキシフェニル)プロパン、
2,2’-ビス[3(4-フェノキシ)-2-ヒドロキシプロパン-1-メタクリラート]プロパン、2,2’-ビス[3(4-フェノキシ)-2-ヒドロキシプロパン-1-アクリラート]プロパン、
N,N’-ジエチル-1,3-ビスアクリルアミド-プロパン(BADEP)、1,3-ビスアクリルアミド-プロパン(BAP)、1,3-ビスアクリルアミド-2-エチル-プロパン(BAPEN)、N,N’-(2E)-2-ブテン-1,4-ジイルビス[N-2-プロペン-1-イル-2-プロペンアミド](BAABE)、N,N-ジ(シクロプロピルアクリルアミド)プロパン(BCPBAP)及びN,N’-(2-ヒドロキシ-1,3-プロパンジイル)ビス[N-2-プロペン-1-イル-2-プロペンアミド](DAAHP)
からなる群より選択される、請求項3~5のいずれか一項記載の光硬化型歯科用組成物。
【請求項7】
(メタ)アクリラートモノマーが、
アクリル酸、2-ヒドロキシエチルメタクリラート(HEMA)、
ビス-フェノールAのジグリシジルメタクリラート(「ビス-GMA」)、及び
トリエチレングリコールジメタクリラート「TEGDMA」)、
からなる群より選択される、請求項3~6のいずれか一項1記載の光硬化型歯科用組成物。
【請求項8】
歯科用組成物が、1種以上のラジカル重合性化合物に基づいて、0.05~5mol%共開始剤化合物を含む、請求項3~7のいずれか一項記載の光硬化型歯科用組成物。
【請求項9】
歯科用組成物が、1種以上のラジカル重合性化合物に基づいて、0.05~5mol%光開始剤化合物を含む、請求項3~8のいずれか一項記載の光硬化型歯科用組成物。
【請求項10】
共開始剤化合物が、2つ以上のパートの歯科用組成物の固体パート又は1つ以上のパートの歯科用組成物のpH6~8を有する流体パートに収容されている、請求項3~9のいずれか一項記載の光硬化型歯科用組成物。
【請求項11】
光硬化型歯科用組成物が、歯科用複合材、歯科用ガラスアイオノマーセメント、歯科用セメント及び歯科用印象材料からなる群より選択される、請求項3~10のいずれか一項記載の光硬化型歯科用組成物。
【請求項12】
さらに、更なる共開始剤として、追加の電子供与体(iii)を含む、請求項3~11のいずれか一項記載の光硬化型歯科用組成物。
【請求項13】
(削除)
【請求項14】
(削除)
【請求項15】
光硬化型歯科用組成物における、
(i)300~800nmの範囲に光吸収極大を有する光開始剤化合物であって、1,2-ジケトンである光開始剤化合物と、
(ii)共開始剤化合物とを含有し、
ここで、該共開始剤化合物は、下記式(I):
(R-SOx-)yMy+ (I)
[式中、
Rは、芳香族又は脂肪族有機部分を表わし、
My+は、歯科用組成物に適したカチオンであって、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は下記式(II):
R1-I+-R2 (II)
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、1~6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖アルコキシ基により置換されていてもよいフェニル基を表わす]
で示されるヨードニウムイオンであり、
xは、3であり、
yは、1~4の整数である。]
で示されるスルホナート化合物である、
重合開始剤系の使用。
【請求項16】
光開始剤化合物が、カンファーキノン、ベンジル、2,3-ブタンジオン、2,3-ペンタンジオン、2,3-ヘキサンジオン、3,4-ヘキサンジオン、2,3-ヘプタンジオン、3,4-ヘプタンジオン、2,3-オクタンジオン、4,5-オクタンジオンフリル、ビアセチル、1,2-シクロヘキサンジオン、1,2-ナフタキノン及びアセナフタキノンからなる群より選択される1,2-ジケトンである、請求項15記載の使用。
【請求項17】
光硬化型歯科用組成物が、歯科用複合材、歯科用ガラスアイオノマーセメント、歯科用セメント及び歯科用印象材料からなる群より選択される、請求項15又は16記載の使用。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1.取消理由通知の概要
本件訂正前の請求項1~17に係る特許に対して、当審が令和5年4月5日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
なお、以下では、特許異議申立人が提出した甲第●号証を、甲●のように連続番号を付して記載する(●は証拠番号)。
取消理由1
本件訂正前の下記の請求項に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、下記の甲1ないし甲8に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
甲1に対して、請求項1、4~7、11~13、16、17
甲2に対して、請求項1、4~7、11~13、16、17
甲3に対して、請求項1、4~7、11~13、16、17
甲4に対して、請求項1、4~7、11~13、16、17
甲5に対して、請求項1、4~7、11、13、16、17
甲6に対して、請求項1、4~7、11、13、16、17
甲7に対して、請求項1、4~7、11~13、16、17
甲8に対して、請求項1、4~7、11~13、16、17
取消理由2
本件訂正前の下記の請求項に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、下記の甲1ないし甲8に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
甲1を主引例として、請求項1、2、4~14、16、17
甲2を主引例として、請求項1、2、4~14、16、17
甲3を主引例として、請求項1、2、4~14、16、17
甲4を主引例として、請求項1、2、4~14、16、17
甲5を主引例として、請求項1、2、4~14、16、17
甲6を主引例として、請求項1、2、4~14、16、17
甲7を主引例として、請求項1、2、4~14、16、17
甲8を主引例として、請求項1、2、4~14、16、17
<甲号証等一覧>
甲1:特開2017-105715号公報
甲2:特開平9-255515号公報
甲3:特開2012-72072号公報
甲4:特表平9-509392号公報
甲5:特開平3-045602号公報
甲6:特表2004-529946号公報
甲7:国際公開第2009/084586号
甲8:特開2008-019246号公報
2.甲号証の記載等
(1)甲1の記載及び甲1に記載された発明
ア 甲1には、次のとおりの記載がある。
1a
「【請求項1】
(メタ)アクリルアミド化合物(a)、非対称型アクリルアミド・メタクリル酸エステル化合物(b)、酸性基含有(メタ)アクリル系重合性単量体(c)、疎水性の架橋性重合性単量体(d)、化学重合開始剤(e)、及びフィラー(f)を含有し、
前記(メタ)アクリルアミド化合物(a)が下記一般式(1)で表される化合物及び下記一般式(2)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、前記非対称型アクリルアミド・メタクリル酸エステル化合物(b)が下記一般式(3)で表される化合物である、分包型の歯科用セメント。
【化1】
[図:0001405807000001.jpg]
[式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、lは1~6の整数を表し、Xは置換基を有していてもよいC1~C8の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を表し、複数のR1、Xは互いに同じであっても異なっていてもよい。]
【化2】
[図:0001405807000002.jpg]
[式中、mは2又は3を表し、R1及びXはそれぞれ前記と同一の意味を表し、複数のR1、Xは、互いに同じであっても異なっていてもよい。]
【化3】
[図:0001405807000003.jpg]
[式中、Zは置換基を有していてもよいC1~C8の直鎖又は分岐鎖の脂肪族基又は芳香族基であって、前記脂肪族基は、-O-、-S-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-NR2-、-CO-NR2-、-NR2-CO-、-CO-O-NR2-、-O-CONR2-及び-NR2-CO-NR2-からなる群より選ばれる少なくとも1個の結合基によって中断されていてもよい。R2は、水素原子又は置換基を有していてもよいC1~C8の直鎖又は分岐鎖の脂肪族基を表す。]
【請求項2】
重合性単量体成分の全量100重量部中において、前記(メタ)アクリルアミド化合物(a)を0.1~20重量部、前記非対称型アクリルアミド・メタクリル酸エステル化合物(b)を2~50重量部、前記酸性基含有(メタ)アクリル系重合性単量体(c)を1~50重量部、前記疎水性の架橋性重合性単量体(d)を30~95重量部含有する請求項1に記載の分包型の歯科用セメント。
【請求項3】
さらに親水性の単官能性重合性単量体(g)を含有する請求項1又は2に記載の分包型の歯科用セメント。
【請求項4】
重合性単量体成分の全量100重量部中において、前記親水性の単官能性重合性単量体(g)を1~30重量部含有する請求項3に記載の分包型の歯科用セメント。」(特許請求の範囲)
1b
「 【0001】
本発明は、歯科治療において、クラウン、インレー、ブリッジ等の歯科用補綴物と歯質との合着等に用いられる分包型の歯科用セメントに関する。」(【0001】)
1c
「【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を解決した本発明は、(メタ)アクリルアミド化合物(a)、非対称型アクリルアミド・メタクリル酸エステル化合物(b)、酸性基含有(メタ)アクリル系重合性単量体(c)、疎水性の架橋性重合性単量体(d)、化学重合開始剤(e)、及びフィラー(f)を含有し、前記(メタ)アクリルアミド化合物(a)が下記一般式(1)で表される化合物及び下記一般式(2)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、前記非対称型アクリルアミド・メタクリル酸エステル化合物(b)が下記一般式(3)で表される化合物である、分包型の歯科用セメントである。
【化4】
[図:0001405807000004.jpg]
[式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、lは1~6の整数を表し、Xは置換基を有していてもよいC1~C8の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を表し、複数のR1、Xは互いに同じであっても異なっていてもよい。]
【化5】
[図:0001405807000005.jpg]
[式中、mは2又は3を表し、R1及びXはそれぞれ前記と同一の意味を表し、複数のR1、Xは、互いに同じであっても異なっていてもよい。]
【化6】
[図:0001405807000006.jpg]
[式中、Zは置換基を有していてもよいC1~C8の直鎖又は分岐鎖の脂肪族基又は芳香族基であって、前記脂肪族基は、-O-、-S-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-NR2-、-CO-NR2-、-NR2-CO-、-CO-O-NR2-、-O-CONR2-及び-NR2-CO-NR2-からなる群より選ばれる少なくとも1個の結合基によって中断されていてもよい。R2は、水素原子又は置換基を有していてもよいC1~C8の直鎖又は分岐鎖の脂肪族基を表す。]」(【0016】)
1d
「 【0022】
本発明の(メタ)アクリルアミド化合物(a)及び非対称型アクリルアミド・メタクリル酸エステル化合物(b)を用いた歯科用セメントがリン酸エッチング処理を実施した象牙質に対しても、高い接着力を示す理由は定かではないが、以下の様に推定される。すなわち、本発明の(メタ)アクリルアミド化合物(a)は、アミドプロトンを2つ有することから非常に高い親水性を有し、象牙質の収縮したコラーゲン層へ浸透しやすく、且つ分子内に複数の重合性基を有するため歯科用セメントの他の成分と一緒になって非常に高い硬化性を示す。また、非対称型アクリルアミド・メタクリル酸エステル化合物(b)もまた、アミドプロトンを1つ有することから(メタ)アクリルアミド化合物(a)ほどのレベルではないものの高い親水性を有し、且つ分子内の2つの重合性基であるアクリルアミド基とメタクリル酸エステル基双方の硬化速度が比較的類似しており、バランスがとれていることから十分な硬化性を発現し、象牙質に浸透したセメント成分が強固な層を形成する。さらに、非対称型アクリルアミド・メタクリル酸エステル化合物(b)は、アクリルアミド基とメタクリル酸エステル基双方を有することから、(メタ)アクリルアミド基のみを有する(メタ)アクリルアミド化合物(a)と、歯科用セメントに含まれる、他の(メタ)アクリル酸エステル基のみを有するモノマー(例えば、疎水性の架橋性重合性単量体(d))との橋渡しの役割を担い、歯科用セメント組成物系内の重合硬化反応をより効率よく進行させることに寄与しているものと考えられる。そのため、(メタ)アクリルアミド化合物(a)と非対称型アクリルアミド・メタクリル酸エステル化合物(b)の両モノマーは、リン酸エッチング処理が実施されて収縮した象牙質のコラーゲンに対し、高い親水性により浸透し、脆弱化してしまった象牙質に対し、高い硬化性により強固な層を形成するためと考えられる。」(【0022】)
1e
「 【0086】
本発明の歯科用セメントは、前記化学重合開始剤(e)を含むものであるが、光照射によっても重合が開始するデュアルキュア型の組成物とするために、上述の化学重合開始剤(e)とは別の成分として、本発明の歯科用セメントにさらに従来公知の光重合開始剤を配合してもよい。光重合開始剤としては、(ビス)アシルホスフィンオキサイド類、水溶性アシルホスフィンオキサイド類、チオキサントン類又はチオキサントン類の第4級アンモニウム塩、ケタール類、α-ジケトン類、クマリン類、アントラキノン類、ベンゾインアルキルエーテル化合物類、α-アミノケトン系化合物等の、歯科用セメントに用いられ得る光重合開始剤が挙げられる。これらの中でも、(ビス)アシルホスフィンオキサイド類、及びα-ジケトン類からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく用いられ、その中でも(ビス)アシルホスフィンオキサイド類として2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、α-ジケトン類としてカンファーキノンが特に好ましく用いられる。」(【0086】)
1f
「 【0091】
前記スルフィン酸及びその塩としては、例えば、p-トルエンスルフィン酸、p-トルエンスルフィン酸ナトリウム、p-トルエンスルフィン酸カリウム、p-トルエンスルフィン酸リチウム、p-トルエンスルフィン酸カルシウム、ベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、ベンゼンスルフィン酸カリウム、ベンゼンスルフィン酸リチウム、ベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6-トリメチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6-トリメチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6-トリメチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6-トリメチルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6-トリメチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6-トリエチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6-トリエチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6-トリエチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6-トリエチルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6-トリエチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6 -トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸、2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カルシウム等が挙げられる。」(【0091】)
1g
「【実施例】
【0129】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に制限されるものではない。以下で用いる略記号は次の通りである。以下の実施例及び比較例に用いた化合物は、特に合成方法を記載した場合を除いて、市販品を用いた。
【0130】
〔(メタ)アクリルアミド化合物(a)〕
TAC3:N,N’,N’’-トリアクリロイルジエチレントリアミン(下記式で表される化合物(a1-1))
【化14】
[図:0001405807000007.jpg]
【0131】
TAC4:N,N’,N’’,N’’’-テトラアクリロイルトリエチレンテトラミン(下記式で表される化合物(a1-5))
【化15】
[図:0001405807000008.jpg]
【0132】
TOT-BA:N,N’-(4,7,10-トリオキサトリデカメチレン)-ビスアクリルアミド(下記式で表される化合物(a2-1))
【化16】
[図:0001405807000009.jpg]
【0133】
〔非対称型アクリルアミド・メタクリル酸エステル化合物(b)〕
MAEA:N-メタクリロイルオキシエチルアクリルアミド(下記式で表される非対称型アクリルアミド・メタクリル酸エステル化合物)
【化17】
[図:0001405807000010.jpg]
【0134】
MAPA:N-メタクリロイルオキシプロピルアクリルアミド(下記式で表される非対称型アクリルアミド・メタクリル酸エステル化合物)
【化18】
[図:0001405807000011.jpg]
【0135】
MAEEA:N-(1-エチル-(2-メタクリロイルオキシ)エチル)アクリルアミド(下記式で表される非対称型アクリルアミド・メタクリル酸エステル化合物)
【化19】
[図:0001405807000012.jpg]
【0136】
MAEGA:N-(2-(2-メタクリロイルオキシエトキシ)エチル)アクリルアミド(下記式で表される非対称型アクリルアミド・メタクリル酸エステル化合物)
【化20】
[図:0001405807000013.jpg]
【0137】
〔非対称型(メタ)アクリルアミド化合物〕NEBAE:N-エチル-1,2-ビス(アクリルアミド)エタン(下記式で表される非対称型アクリルアミド化合物)
【化21】
[図:0001405807000014.jpg]
【0138】
NMBAP:N-メチル-1,3-ビス(アクリルアミド)プロパン(下記の一般式で表される非対称型アクリルアミド化合物)
【化22】
[図:0001405807000015.jpg]
【0139】
〔酸性基含有(メタ)アクリル系重合性単量体(c)〕
MDP:10-メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート4-META:4-[2-(メタクリロイルオキシ)エトキシカルボニル]フタル酸無水物
【0140】
〔疎水性の架橋性重合性単量体(d)〕
Bis-GMA:2,2-ビス〔4-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン
D-2.6E:2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン(エトキシ基の平均付加モル数が2.6のもの)
TEGDMA:トリエチレングリコールジメタクリレート
【0141】
〔親水性の単官能性重合性単量体(g)〕
DEAA:N,N-ジエチルアクリルアミド
HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
【0142】
〔光重合開始剤〕
CQ:dl-カンファーキノン
【0143】
〔化学重合開始剤(e)〕
酸化剤(e-1)
THP:1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド
BPO:ベンゾイルパーオキサイド
還元剤(e-2))
PTU:1-(2-ピリジル)-2-チオ尿素
DEPT:N,N―ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン
【0144】
〔重合促進剤(h)〕
DABE:4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸エチル
TPBSS:2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム
【0145】
〔フィラー(f)〕
無機フィラー1:シラン処理バリウムガラス粉
バリウムガラス(エステック社製、商品コード「E-3000」)をボールミルで粉砕し、バリウムガラス粉を得た。得られたバリウムガラス粉の平均粒子径をレーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所製、型式「SALD-2100」)を用いて測定したところ、2.4μmであった。このバリウムガラス粉100重量部に対して常法により3重量部のγ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランで表面処理を行い、シラン処理バリウムガラス粉を得た。
【0146】
無機フィラー2:シラン処理コロイドシリカ粉末
蒸留水100重量部中に0.3重量部の酢酸と3重量部のγ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランを加えて攪拌し、さらにコロイドシリカ粉末(日本アエロジル社製、商品コード「アエロジルOX50」、平均粒子径:40nm)を50重量部加えて1時間攪拌した。凍結乾燥により水を除去した後、80℃で5時間加熱処理を行い、シラン処理コロイドシリカ粉末を得た。
【0147】
〔その他〕
BHT:2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(安定剤(重合禁止剤))」(【0129】~【0147】)
1h
「 【0169】
(実施例1~12)
前記材料を用いて、表1及び表2の組成を有する2ペースト型の歯科用セメントを作製した。以下に具体的に説明する。表1及び表2に記載の各成分の内、フィラー(f)以外の成分を常温で混合し、得られた液状成分とフィラー(f)と混練することにより、Aペースト(第1剤)及びBペースト(第2剤)を調製した。次いで、これらのペーストを、1:1の質量比で混合して、歯科用セメント(組成物)を調製し、下記の手順で、リン酸エッチング処理を実施していない象牙質及びリン酸エッチング処理を実施した象牙質に対する引張り接着強さを測定した。表1及び表2に、この歯科用セメントの配合比(重量部)及び試験結果を示す。
【0170】
[リン酸エッチング処理を実施していない象牙質に対する引張り接着強さの測定]
ウシ下顎前歯の唇面を流水下にて#80シリコン・カーバイド紙(日本研紙社製)で研磨して、象牙質の平坦面を露出させたサンプルを得た。得られたサンプルを流水下にて#1000のシリコン・カーバイド紙(日本研紙社製)でさらに研磨した。研磨終了後、表面の水をエアブローすることで乾燥した。乾燥後の平滑面に、直径3mmの丸穴を有する厚さ約150μmの粘着テープを貼着し、接着面積を規定した。前記Aペースト及びBペーストを混合したセメント組成物を、ステンレス製円柱棒(直径7mm、長さ2.5cm)の一方の端面(円形断面)に築盛し、前記丸穴の中心と前記ステンレス製円柱棒の中心とが一致するように、前記セメント組成物を築盛した端面を前記丸穴に載置して押しつけ、歯面に対して垂直にステンレス製円柱棒を植立した。植立後、ステンレス製円柱棒の周囲に出た余剰のセメント組成物をインスツルメントで除去し、当該サンプルを30分間室温で静置した後、蒸留水に浸漬した。接着試験供試サンプルは5個作製し、蒸留水に浸漬したすべてのサンプルを、37℃に保持した恒温器内に24時間静置した後、万能試験機(島津製作所社製)にてクロスヘッドスピードを2mm/分に設定して引張接着試験を行った。前記5個の試験片についての接着強さの平均値をその試料の象牙質に対する引張り接着強さとした。
【0171】
[リン酸エッチング処理を実施した象牙質に対する引張り接着強さの測定]
ウシ下顎前歯の唇面を流水下にて#80シリコン・カーバイド紙(日本研紙社製)で研磨して、象牙質の平坦面を露出させたサンプルを得た。得られたサンプルを流水下にて#1000のシリコン・カーバイド紙(日本研紙社製)でさらに研磨した。研磨終了後、市販の歯科用エッチング材(クラレノリタケデンタル社製、商品名「Kエッチャントシリンジ」)を象牙質に塗布し、10秒間放置した後、水洗・乾燥した。乾燥後の平滑面に、直径3mmの丸穴を有する厚さ約150μmの粘着テープを貼着し、接着面積を規定した。その後、前記したリン酸エッチング処理を実施していない象牙質に対する引張り接着強さの測定と同様にして、リン酸エッチング処理した象牙質に対する引張り接着強さを測定した。
【0172】
【表1】
[図:0001405807000016.jpg]
【0173】
【表2】
[図:0001405807000017.jpg]
【0174】
【表3】
[図:0001405807000018.jpg]
【0175】
表1及び表2に示すように、本発明に係る歯科用セメント(実施例1~12)は、リン酸エッチングを実施していない象牙質に対して6.2MPa以上の接着力を発現し、リン酸エッチング処理後の象牙質に対しても6.1MPa以上の接着力を発現した。
【0176】
(比較例1~13)
表2及び表3に記載の各成分の内、フィラー(f)以外の成分を常温で混合し、得られた液状成分とフィラー(f)と混練することにより、Aペースト及びBペーストを調製した。次いで、これらのペーストを、1:1の質量比で混合して、歯科用セメント(組成物)を調製し、前記手順で、前記したリン酸エッチング処理を実施していない象牙質及びリン酸エッチング処理を実施した象牙質に対する引張り接着強さを測定した。表2及び表3に、この歯科用セメントの配合比(重量部)及び試験結果を示す。
【0177】
表2及び表3に示すように、(メタ)アクリルアミド化合物(a)を含まない歯科用セメント(比較例1、5及び12~13)では、リン酸エッチング処理後の象牙質に対して接着性が低かった。また、本発明における非対称型アクリルアミド・メタクリル酸エステル化合物(b)を含まない歯科用セメント(比較例2及び6~11)ではリン酸エッチング処理を実施していない象牙質及びリン酸エッチング処理を実施した象牙質に対する引張り接着強さがともに低かった。また、非対称型(メタ)アクリルアミド化合物を配合した歯科用セメント(比較例3及び4)ではリン酸エッチング処理を実施した象牙質に対して接着性が低かった。」(【0169】~【0177】)
イ 甲1に記載された発明
甲1には、摘記1a~1h、特に1hの【0172】【表1】に記載された実施例6から以下の発明が記載されていると認める。
「以下の組成からなるAペースト:
(メタ)アクリルアミド化合物(a)であるTAC4(N,N’,N’’,N’’’-テトラアクリロイルトリエチレンテトラミン) 5重量部
非対称型アクリルアミド-メタクリル酸エステル系重合性単量体(b)であるMAEA(N-メタクリロイルオキシエチルアクリルアミド) 25重量部
酸性基含有(メタ)アクリル系重合性単量体(c)であるMDP(10-メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート) 10重量部
疎水性の架橋性重合性単量体(d)であるBis-GMA(2,2-ビス〔4-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン) 20重量部
疎水性の架橋性重合性単量体(d)であるD-2.6E(2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン(エトキシ基の平均付加モル数が2.6のもの)) 15重量部
疎水性の架橋性重合性単量体(d)であるTEGDMA(トリエチレングリコールジメタクリレート) 25重量部
光重合開始剤であるCQ(dl-カンファーキノン) 0.3重量部
化学重合開始剤(酸化剤)(e-1)であるBPO(ベンゾイルパーオキサイド) 3重量部
重合禁止剤であるBHT(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール) 0.1重量部
フィラー 185部
及び、以下の組成からなるBペースト:
疎水性の架橋性重合性単量体(d)であるD-2.6E(2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン(エトキシ基の平均付加モル数が2.6のもの)) 85重量部
疎水性の架橋性重合性単量体(d)であるTEGDMA(トリエチレングリコールジメタクリレート) 15重量部
化学重合開始剤(還元剤)(e-2)であるDEPT(N,N―ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン) 0.4重量部
重合促進剤(h)であるDABE(4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸エチル) 0.4重量部
重合促進剤(h)であるTPBSS(2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム) 0.5重量部
重合禁止剤であるBHT(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール) 0.1重量部
フィラー 185部
を含む、歯科用セメント組成物。」(以下「甲1発明1」という。)
「歯科用セメント組成物における、
以下の組成からなるAペースト:
(メタ)アクリルアミド化合物(a)であるTAC4(N,N’,N’’,N’’’-テトラアクリロイルトリエチレンテトラミン) 5重量部
非対称型アクリルアミド-メタクリル酸エステル系重合性単量体(b)であるMAEA(N-メタクリロイルオキシエチルアクリルアミド) 25重量部
酸性基含有(メタ)アクリル系重合性単量体(c)であるMDP(10-メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート) 10重量部
疎水性の架橋性重合性単量体(d)であるBis-GMA(2,2-ビス〔4-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン) 20重量部
疎水性の架橋性重合性単量体(d)であるD-2.6E(2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン(エトキシ基の平均付加モル数が2.6のもの)) 15重量部
疎水性の架橋性重合性単量体(d)であるTEGDMA(トリエチレングリコールジメタクリレート) 25重量部
光重合開始剤であるCQ(dl-カンファーキノン) 0.3重量部
化学重合開始剤(酸化剤)(e-1)であるBPO(ベンゾイルパーオキサイド) 3重量部
重合禁止剤であるBHT(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール) 0.1重量部
フィラー 185部
及び、以下の組成からなるBペースト:
疎水性の架橋性重合性単量体(d)であるD-2.6E(2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン(エトキシ基の平均付加モル数が2.6のもの)) 85重量部
疎水性の架橋性重合性単量体(d)であるTEGDMA(トリエチレングリコールジメタクリレート) 15重量部
化学重合開始剤(還元剤)(e-2)であるDEPT(N,N―ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン) 0.4重量部
重合促進剤(h)であるDABE(4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸エチル) 0.4重量部
重合促進剤(h)であるTPBSS(2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム) 0.5重量部
重合禁止剤であるBHT(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール) 0.1重量部
フィラー 185部
の使用。」(以下「甲1発明2」という。)
(2)甲2の記載及び甲2に記載された発明
ア 甲2には、次のとおりの記載がある。
2a
「 【請求項1】 α,β-不飽和カルボン酸を主たるモノマー成分とする重合体もしくは共重合体、並びに水の存在下で金属キレートを形成する無機質粉末を必須成分とし、上記重合体もしくは共重合体が、該重合体もしくは共重合体を溶解し得る重合性モノマーに溶解して存在するものであることを特徴とする歯科用セメント組成物。
【請求項2】 上記重合体もしくは共重合体が重合性モノマーに溶解した溶液に、上記無機質粉末が分散されたものである請求項1に記載の組成物。
【請求項3】 上記無機質粉末と、上記重合体もしくは共重合体が重合性モノマーに溶解した溶液を混合して使用するものである請求項1に記載の組成物。
【請求項4】 α,β-不飽和カルボン酸が(メタ)アクリル酸であり、重合性モノマーが、分子中にヒドロキシル基を有するアルキル(メタ)アクリレートである請求項1~3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】 上記重合体もしくは共重合体の重量平均分子量が2,000~50,000である請求項1~4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】 金属キレートを形成する無機質粉末が、多価金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、リン酸塩および珪酸塩類よりなる群から選択される少なくとも1種である請求項1~5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】 珪酸塩類が、多価金属イオン浸出性ガラスである請求項6に記載の組成物。
【請求項8】 多価金属イオン浸出性ガラスが、フルオロアルミノシリケートガラスである請求項7に記載の組成物。
【請求項9】 他の成分として、前記重合性モノマーに対する重合開始剤を含むものである請求項1~8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】 他の成分として、(メタ)アクリル酸のリン酸エステルを含むものである請求項1~9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】 他の成分として、前記重合性モノマーと共重合する(メタ)アクリレートおよび/もしくはカルバメートを含むものである請求項1~10のいずれかに記載の組成物。」(特許請求の範囲)
2b
「 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は歯科用セメント組成物に関し、詳細には、通常の水系歯科用セメント組成物と違って実質的に非水系であり、歯質に対する初期接着性、合着性、充填性に優れ、且つ硬化後においては優れた強度特性や耐水性を示す歯科用セメント組成物に関するものである。」(【0001】)
2c
「 【0004】
これらに対しグラスアイオノマーセメントは、生体親和性、歯質に対する接着性、口腔内での耐久性等に優れると共に、硬化体が半透明で審美性にも優れているなど、多くの特徴を有しているため、インレー、クラウン等の合着、う蝕窩洞内の充填、裏装、小窩洞溝への予防填塞など、幅広く活用されている。」(【0004】)
2d
「 【0043】
実施例2
上記シラン処理ガラス粉末100gに、ジメチルアミノ安息香酸エチル0.2gおよびp-トルエンスルフィン酸ナトリウム(重合促進剤)1.0gを加えて混合し、セメント粉末とした。一方、平均分子量が30,000のポリアクリル酸20gを2-ヒドロキシエチルメタクリレート80gに溶解した溶液40gに、テトラメタクリロキシエチルピロリン酸20g、トリエチレングリコールジメタクリレート30g、ジメタクリロキシトリメチルヘキサンジカルバメート10gおよびカンファーキノン0.4gを均一に溶解してセメント液とした。このセメント液1.0gを上記セメント粉末4.0gに加えて30秒間練和した。この練和物を用いて各試験片に応じた寸法に成形した後、可視光線重合器(三金工業社製の「サンキュアライト」)を用いて硬化させ、硬化物の圧縮強度、崩壊率およびフッ素放出量を測定した。」(【0043】)
イ 甲2に記載された発明
甲2には、摘記2a~2d、特に2dの【0043】の実施例2から以下の発明が記載されていると認める。
「シラン処理ガラス粉末100g、
ジメチルアミノ安息香酸エチル0.2g、及び、
p-トルエンスルフィン酸ナトリウム(重合促進剤)1.0g
を含むセメント粉末と、
平均分子量が30,000のポリアクリル酸20gを2-ヒドロキシエチルメタクリレート80gに溶解した溶液40g、
トリエチレングリコールジメタクリレート30g、
ジメタクリロキシトリメチルヘキサンジカルバメート10g、及び、
カンファーキノン0.4g
を含むセメント液との練和物である、光硬化型歯科用セメント組成物。」(以下「甲2発明1」という。)
「光硬化型歯科用セメント組成物における、
シラン処理ガラス粉末100g、
ジメチルアミノ安息香酸エチル0.2g、及び、
p-トルエンスルフィン酸ナトリウム(重合促進剤)1.0g
を含むセメント粉末と、
平均分子量が30,000のポリアクリル酸20gを2-ヒドロキシエチルメタクリレート80gに溶解した溶液40g、
トリエチレングリコールジメタクリレート30g、
ジメタクリロキシトリメチルヘキサンジカルバメート10g、及び、
カンファーキノン0.4g
を含むセメント液との練和物の使用。」(以下「甲2発明2」という。)
(3)甲3の記載及び甲3に記載された発明
ア 甲3には、次のとおりの記載がある。
3a
「【請求項1】
α-β不飽和カルボン酸の重合体或いは共重合体、又はアクリルアミド,アクリロニトリル,メタクリル酸エステル,アクリル酸塩類,塩化ビニル,塩化アリル,酢酸ビニルからなる群より選ばれる1種又は2種以上とα-β不飽和カルボン酸との共重合体であってα-β不飽和カルボン酸の分子数が全体の分子数の50%以上を占める共重合体(A)と、
フルオロアルミノシリケートガラス粉末(B)と、
水(C)とを含む歯科用グラスアイオノマーセメント組成物であって、
1分子中に硫黄原子を含有し、カルボキシル基及びアミノ基を有し且つ重合性基を含まない化合物(D)を含むことを特徴とする歯科用グラスアイオノマーセメント組成物。
【請求項2】
1分子中に硫黄原子を含有し、カルボキシル基及びアミノ基を有し且つ重合性基を含まない化合物(D)が、分子中で硫黄原子が酸素原子と隣り合わない構造を有する化合物である請求項1に記載の歯科用グラスアイオノマーセメント組成物。
【請求項3】
1分子中に硫黄原子を含有し、カルボキシル基及びアミノ基を有し且つ重合性基を含まない化合物(D)が、組成物中に0.01~10重量%含まれている請求項1又は2に記載の歯科用グラスアイオノマーセメント組成物。
【請求項4】
1分子中に硫黄原子を含有し、カルボキシル基及びアミノ基を有し且つ重合性基を含まない化合物(D)が、チオール(-SH)構造,スルフィド(-S-)構造,ジスルフィド(-S-S-)構造の中から選ばれる1種又は2種以上を有する化合物である請求項1~3の何れか1項に記載の歯科用グラスアイオノマーセメント組成物。
【請求項5】
α-β不飽和カルボン酸の重合体或いは共重合体、又はアクリルアミド,アクリロニトリル,メタクリル酸エステル,アクリル酸塩類,塩化ビニル,塩化アリル,酢酸ビニルからなる群より選ばれる1種又は2種以上とα-β不飽和カルボン酸との共重合体であってα-β不飽和カルボン酸の分子数が全体の分子数の50%以上を占める共重合体(A)と、水(C)とを含む第一成分と、
フルオロアルミノシリケートガラス粉末(B)と、1分子中に硫黄原子を含有し、カルボキシル基及びアミノ基を有し且つ重合性基を含まない化合物(D)とを含む第二成分とから成る請求項1~4の何れか1項に記載の歯科用グラスアイオノマーセメント組成物。
【請求項6】
更に、(メタ)アクリレート化合物(E)と、常温重合型重合開始剤(F)とを含む請求項1~5の何れか1項に記載の歯科用グラスアイオノマーセメント組成物。」(特許請求の範囲)
3b
「【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製の補綴物に対し優れた接着力を示す歯科用グラスアイオノマーセメント組成物に関する。」(【0001】)
3c
「 【0025】
常温重合型重合開始剤(F)としては、芳香族スルフィン酸,そのアルカリ塩,芳香族スルホニル化合物のような-SO2-基を少なくとも1個含有する有機芳香族化合物などの化学重合触媒が使用できる。具体的には、p-トルエンスルフィン酸ナトリウム,p-トルエンスルフィン酸リチウム,ベンゼンスルフィン酸,ベンゼンスルフィン酸ナトリウム,p-トルエンスルホニルクロライド,p-トルエンスルホニルフルオライド,0-トルエンスルホニルイソシアネート,p-アセトアミドベンゼンスルフィン酸ナトリウムなどが挙げられ、より好ましくはp-トルエンスルフィン酸ナトリウム,ベンゼンスルフィン酸ナトリウム等が挙げられる。なお、これらの-SO2-基を少なくとも1個含有する有機芳香族化合物は含水塩であっても差し支えない。これらは単独又は2種以上を混合して使用することができる。また金属製の補綴物の辺縁部の(メタ)アクリレート化合物(E)を先ず重合させたい場合などには、常温重合型重合開始剤(F)に加えて、カンファーキノン(CQ)や2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(TPO)のような光重合開始剤を更に使用してもよい。」(【0025】)
3d
「【実施例】
【0028】
先ずフルオロアルミノシリケートガラス粉末(B)として、ガラス粉末I,II及びIIIを、表1の割合で原料を十分混合し、各溶融温度で5時間保持した後に冷却させ、ボールミルを用いて10時間粉砕し、200メッシュ(ASTM)の篩を通過させてそれぞれ作製した。そしてこれらのガラス粉末I,II及びIIIを表2及び表3に示す割合で使用した。
【0029】
【表1】
[図:0001405807000019.jpg]
【0030】
そして表2に示す実験では、液成分(第1成分)と粉末成分(第2成分)とから成る歯科用グラスアイオノマーセメント組成物について、表3に示す実験では、共にペーストである第1成分と第2成分とから成る歯科用グラスアイオノマーセメント組成物について、「1分子中に硫黄原子を含有し、カルボキシル基及びアミノ基を有し且つ重合性基を含まない化合物(D)」を含む実施例と、これを含まない比較例とで金属に対する接着力の強さを比較した。
【0031】
金属に対する接着強さの評価は、ISO/11405:2003: 5.2.4を参照して行った。即ち、歯科鋳造用金銀パラジウム合金(株式会社ジーシー製 キャストウェルM.C.金12%)を鋳造後、歯科汎用アクリルレジン(株式会社ジーシー製 ユニファスト II)に包埋し、被着面を#120耐水研磨紙にて平滑化してからサンドブラスト処理を施し、直径3mmの穴の開いたプラスチックテープ(厚さ0.1mm)で接着面積を規定した。表2に示す実験では、液成分(第1成分)1gと粉末成分(第2成分)2gとを混ぜて練和し、表3に示す実験では、ペースト状の第1成分と第2成分とを1gずつ混ぜて練和してそれぞれ歯科用グラスアイオノマーセメント組成物を作製し、これを直径10mmのステンレスロッドに塗布して被着面に圧接し、練和開始から10分後に湿度100%、37℃の恒温器に1時間入れたものを試験体とした。その後、試験体を37℃の蒸留水中に浸漬して保管し、練和開始から24時間後にクロスヘッドスピード1mm/min.で引張試験を行った。各実施例及び比較例について試験体は5個作成し、引張試験を行った結果の平均値を表2及び3に示す。
【0032】
表2に示す実験では、「1分子中に硫黄原子を含有し、カルボキシル基及びアミノ基を有し且つ重合性基を含まない化合物(D)」を含まない比較例1~3の金属被着体に対する接着力が3.6~4.3MPaであったのに対して、化合物(D)を含む実施例1~5では接着力が6.5~12.0MPaであり、接着力が大きく向上することが確認できた。
【0033】
【表2】
[図:0001405807000020.jpg]
【0034】
また、表3に示す実験においても、「1分子中に硫黄原子を含有し、カルボキシル基及びアミノ基を有し且つ重合性基を含まない化合物(D)」を含まない比較例4~6では金属被着体に対する接着力が2.1~4.4MPaであったのに対して、化合物(D)を含む実施例6~9では接着力が7.2~11.2MPaであり、接着力が高くなることが確認できた。
【0035】
【表3】
[図:0001405807000021.jpg]
」(【0028】~【0035】)
イ 甲3に記載された発明
甲3には、摘記3a~3d、特に3dの【0033】【表2】の実施例4から以下の発明が記載されていると認める。
「ポリアクリル酸 0.245重量部
水 0.33重量部
HEMA(2-ヒドロキシエチルメタクリレート) 0.32重量部
TEGDMA(トリエチレングリコールジメタクリレート) 0.05重量部
UDMA(ジ2メタクリロキシエチル2,2,4トリメチルヘキサメチレンジカルバメート) 0.05重量部
CQ(カンファーキノン) 0.002重量部
TPO(2,4,6トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド)0.002重量部
IA(6-tBut-2,4-キシレノール) 0.001重量部
を含む 液成分と、
ガラス粉末II 1.98重量部
L-システイン 0.01重量部
p-トルエンスルフィン酸ナトリウム 0.01重量部
を含む粉末成分を混ぜた練和物である、
歯科用グラスアイオノマーセメント組成物。」(以下「甲3発明1」という。)
「歯科用グラスアイオノマーセメント組成物における、
ポリアクリル酸 0.245重量部
水 0.33重量部
HEMA(2-ヒドロキシエチルメタクリレート) 0.32重量部
TEGDMA(トリエチレングリコールジメタクリレート) 0.05重量部
UDMA(ジ2メタクリロキシエチル2,2,4トリメチルヘキサメチレンジカルバメート) 0.05重量部
CQ(カンファーキノン) 0.002重量部
TPO(2,4,6トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド)0.002重量部
IA(6-tBut-2,4-キシレノール) 0.001重量部
を含む 液成分と、
ガラス粉末II 1.98重量部
L-システイン 0.01重量部
p-トルエンスルフィン酸ナトリウム 0.01重量部
を含む粉末成分を混ぜた練和物の使用。」(以下「甲3発明2」という。)
(4)甲4の記載及び甲4に記載された発明
ア 甲4には、次のとおりの記載がある。
4a
「1.多成分光硬化性イオノマーセメント系であって、
(a)反応性充填剤および水の存在下で硬化反応を起こすことができるために十分なペンダントのイオン性基、および、生じる混合物が電磁線エネルギーへの暴露により硬化することができるために十分なペンダントの重合性基を有する光硬化性イオノマーを含む水性ペースト、および、
(b)反応性充填剤を含む有機ペースト、
を含む系。」(特許請求の範囲)
4b
「発明の分野
本発明は、ガラスイオノマーセメント系に関する。より詳細には、本発明はペースト:ペーストの形態で提供されるガラスイオノマーセメント系に関する。
発明の背景
ガラスイオノマーセメントは、一般に、イオンポリマー成分および反応性ガラス成分を含む材料であって、ここで、水性環境においてこれらの2種の成分を混合することにより、セメント硬化反応が開始する。これらの材料は、歯科医療業および医療業において多くの用途で使用され、ここで、セメントは、例えば、歯若しくは骨構造体上で使用される。従来から、これらの材料は2成分系で提供され、一方の成分は粉末の形態で提供される。通常、イオンポリマーは水性液体中で提供され、そして反応性ガラスは粉末として提供される。粉末および液体を素早く混合し、そして従来のガラスイオノマー系の完全な反応を容易に行うことができる系を設計することに多大な努力が費やされてきた。」(6頁3~15行)
4c
「 「イオノマーセメント系」という用語は、明細書中で使用されるときに、未混合であるかまたは混合されているが未硬化である、光重合性イオノマー、反応性充填剤および他の所望成分、例えば、水の組み合わせを指す。
「可使時間」という用語は、明細書中で使用されるときに、硬化反応を開始する時刻、即ち、イオノマーおよび反応性充填剤が水の存在下において混合された時から、もはや、事実上、物理的な加工、例えば、意図された歯科医療または医療目的のためにそれを引き延ばしまたは再成形したりするような加工を系に対して更に行えない点にまで硬化反応が進行した時刻までの時間を指す。
「硬化時間」という用語は、明細書中で使用されるときに、修復において硬化反応を開始する時刻から、修復表面上に次の歯科医療手順を行うことができるほど十分に硬化が進行した時刻までの時間を指す。このような硬化は通常の硬化反応の進行時か、および/または光硬化性系を硬化させることのいずれかで起こることができる。」(9頁下から5行~10頁9行)
4d
「 光開始剤は適切な波長および強度の光に暴露されたときに、エチレン系不飽和部分のラジカル架橋を促進することができるべきである。それは、また、好ましくは、貯蔵し、そして通常の歯科医療条件で使用することができるように、十分に貯蔵安定であり且つ所望されない着色を起こさない。可視光光開始剤は好ましい。光開始剤は、好ましくは水溶性または水混和性である。極性基を含む光開始剤は、通常、十分な水溶解度および水混和度を有する。光開始剤はしばしば単独で使用されるが、通常、それは、適切なドナー化合物または適切な促進剤(例えば、アミン、過酸化物、燐化合物、ケトンおよびα- ジケトン化合物)との組み合わせで使用される。
好ましい可視光誘導開始剤は、樟脳キノリン(それは通常、アミンのような適切な水素ドナーと組み合わされる)、ジアリールヨードニウム単純若しくは金属錯塩、樟脳で置換したハロメチル-s- トリアジンおよびハロメチルオキサジアゾールを含む。特に好ましい可視光誘導光開始剤は、α- ジケトン、例えば、樟脳キノリン、ジアリールヨードニウム塩、例えば、ジフェニルヨードニウムクロリド、ブロミド、ヨージドまたはヘキサフルオロホスフェートの組み合わせで、更なる水素ドナー(例えば、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、アミンおよびアミンアルコール)の含むか、または含まないものを含む。
好ましい紫外線光誘導重合開始剤は、ベンジルおよびベンゾイン、並びに、アシロインおよびアシロインエーテルのようなケトンを含む。好ましい市販の紫外線光誘導重合開始剤は2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(IRGACURE 651)およびベンゾインメチルエーテル(2-メトキシ-2-フェニルアセトフェノン)を含み、両方ともCiba-Geigy Corp.のものである。
光開始剤は、所望の速度の光重合を提供するために十分な量で存在すべきである。この量は、部分的に、光源、電磁線エネルギーに暴露される層の厚さ、および光開始剤の消失係数による。通常、光開始剤成分は、組成物の合計重量の約0.01~約5 重量% 、より好ましくは0.1 ~約5 重量% の合計重量で存在するであろう。」(18頁5行~19頁3行)
4e
「 カチオン機構で重合する光硬化性イオノマーでは、適切な開始剤は、カチオンを発生することができる塩、例えば、ジアリールヨードニウム、トリアリールスルホニウムおよびアリールジアゾニウム塩を含む。」(21頁14~16行)
4f
「 有機ペーストは、所望の粘度のペーストを形成するために十分な量の有機液体と反応性充填剤とを混合することにより調製される。所望により、無反応性充填剤も有機ペースト中に含まれてよい。好ましくは、前記有機液体は光硬化性イオノマーと重合性であるモノマーから選ばれる。このような有機液体の好ましい例は、水混和性または水溶性アクリレートおよびメタクリレートを含み、例えば、2-ヒドロキシエチル(メト)アクリレート、ヒドロキシメチル(メト)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メト)アクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、グリセロールモノ-若しくはジ(メト)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メト)アクリレート、エチレングリコールジ(メト)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メト)アクリレート、ウレタン(メト)アクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド若しくはメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドおよびメタクリルアミド、並びに、ペンタエリトリトール(メト)アクリレートである。水不溶性または僅かに水溶性である液体の例は、ビスフェノールAグリシジルメタクリレート(ビス-GMA)、トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)を含む。」(23頁3~18行)
4g
「例5
2種のペーストI組成物であるペーストIhおよびペーストIiを下記の表XIIに示す材料を混合することにより調製した。
[図:0001405807000022.jpg]
8種のペーストII組成物である、ペーストIId~kを下記の表XIIIに示す材料を混合することにより調製した。
[図:0001405807000023.jpg]
各ペーストI組成物を、それぞれ、約10~20秒間、各々ペーストIIとともに1:1の比で手動で混練した。各ペーストIペーストII試料を、その後、4mm内径のガラス管に詰め、シリコーンゴムプラグでキャップをし、そして約0.28MPaで軸方向に圧縮した。混合の開始から約1.5分後、2つの向かい合った可視光硬化ランプ( “VISILUX 2”硬化ランプ、3M)からの光に試料を80秒間暴露し、そして軸方向の圧力を取り除いた。
各試料を、周囲圧力、90%+の相対湿度および37℃で1時間放置した。試料をダイアモンドノコギリで切断し、圧縮強さ(CS)測定用の8mm長さの円筒プラグおよび直径方向引張強さ(DTS)測定用の2mm長さの円筒プラグを形成させた。これらのプラグを約37℃で約24時間、蒸留水中で貯蔵した。CSおよびDTS値をISO仕様書7488により各セメントの5試料に関して決定した。
各ペーストI:ペーストII組成物を、フッ化物開放測定を行うために20mm直径および1mm厚さのディスクに成形した。各ディスクの両面をポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム、0.5mm 厚さ、3M)で被覆し、PET フィルム上に直接的に置いた“VISILUX 2”硬化ランプからの光に60~80秒間暴露して光硬化した。
フッ化物選択性電極である、Orionモデル96-09-00(Orion Research Inc., Cambridge, MA)を使用して、リン酸塩緩衝液中で試料から開放されたフッ化物イオンの量を定量した。電極を、フッ化物活性標準#940907および#040908、100 ppmおよび10ppmのフッ化物標準流体(両方ともOrion Research Inc.)をそれぞれ使用して検量した。
各ディスクを、25℃でpH6.8~7.0のリン酸塩緩衝液のジャー中に入れた。リン酸塩緩衝液を、0.7gのKH2PO4、0.71gのNa2HPO4、および1リットルの脱イオン水中に混合することにより調製し、0.01M溶液を提供した。0、5、16および30日目のディスクを含む緩衝液中にフッ化物プローブを入れ、ppm Fを記録した。硬化したディスク1g当たりのFのμgを、その後、計算し、そしてこれらの値を水中での貯蔵時間の関数として報告した。各セメントの3つの試料のフッ化物開放値を測定し、そして平均を報告した。
ペーストI:ペーストII組成物、CS、DTSおよび各ペーストI:ペーストII組成物の0、5、16および30日目の累積的なフッ化物開放値を、従来の粉末: 液体系(Vitrebond(商標)光硬化ガラスイオノマーライナー/ベース、3M)と比較して表XIV に示す。粉末:液体混合比は1.4:1 であった。
[図:0001405807000024.jpg]
表XIVのデータは、本発明のペースト:ペースト配合物が優れた強度特性を示すことを示す。これらのペースト:ペースト配合物は、優れたフッ化物開放特性をも示す。
・・・
例8
ペーストIIを下記の表XIXに示す材料を混合することにより調製した。
[図:0001405807000025.jpg]
ペーストIImを下記の表XXに示す材料を混合することにより調製した。
[図:0001405807000026.jpg]
ガラスイオノマー粉末を、下記の表XXIに示す材料を混合することにより調製した。
[図:0001405807000027.jpg]
ガラスイオノマー液体を下記の表XXIIに示す材料を混合することにより調製した。
[図:0001405807000028.jpg]
ペーストIIを、ペーストIImと1:1の比で約10~20秒間にわたって手動で混練した。粉末を液体と2.5:1の比で約1分間にわたって手動で混練した。ペーストII:ペーストIImおよび粉末:液体系の配合物およびその混合比は、同様の組成であるペースト:ペーストおよび粉末:液体系を最終的に提供するように調製された。
例5に記載のように、ペースト:ペーストおよび粉末:液体組成物の試料を調製し、そしてCSおよびDTSを測定した。
ペースト:ペーストおよび粉末:液体の組成物の試料を、視覚乳白度の測定のために調製した。2.54ミリメートル厚さx6ミリメートル直径のセメントのディスクを、60ミリメートルの距離で、各面を60秒間、“VISILUX 2”歯科医療用硬化光からディスクを照射することにより硬化させた。ディスク厚さ全体を通した光の透過率を、可視光フィルターを具備したMacBeth透過デンシトメーターモデルTD-903を使用して測定したデンシトメーターの読み値を、ディスクの視覚乳白度の値として記録した。
ペースト:ペーストおよび粉末:液体の組成物のCS、DTSおよび視覚乳白度の値を下記の表XXIII に示す。
[図:0001405807000029.jpg]
表XXIIIのデータは、ペースト:ペーストガラスイオノマーの特性が、組成的に同様の粉末:液体系の特性と比較して、驚くほど優れていることを示す。ペースト:ペースト系の圧縮強さおよび直径方向引張強さの両方は、粉末:液体系のものより有意に大きく、視覚乳白度は粉末:液体系よりも有意に低い。
例9
0.42部のHEMA、1.53部の水、1.19部のGDMAおよび0.022部のBHTの混合物に、下記の表XXIVに示す材料をそれぞれ加えることにより9種の液体配合物を調製した。
[図:0001405807000030.jpg]
調製例5の充填剤10部をそれぞれ各液体配合物に加え、9種のペーストI配合物を提供した。
各ペーストI組成物を不透明なポリエチレンシリンジに手で装填し、脱気し、そして45℃で4日間老化させた。4日目に、シリンジを炉から取り出し、そして各々の老化したペーストの試料およびそれに対応する老化していないペーストの試料を横並びで白色混合パッド上にシリンジで取り出した。いずれのペーストも可視色変化または重合を示さなかった。
下記表XXVに示す材料を混合してペーストIIを形成した。
[図:0001405807000031.jpg]
ペーストII組成物を不透明なポリエチレンシリンジ中に手で装填し、脱気し、そして45℃で7日間老化した。7日目に、シリンジを炉から取り出し、そして老化したペーストの試料およびそれに対応する老化していないペーストの試料を横並びで白色混合パッド上にシリンジで取り出した。老化したペーストは可視色変化または重合を示さなかった。
例10
下記の表XXVIに示す材料を混合してペーストIを形成した。
[図:0001405807000032.jpg]
下記表XXVIIに示す材料を混合してペーストIIを形成した。
[図:0001405807000033.jpg]
ペーストIおよびペーストIIをそれぞれ不透明なシリンジに手で装填し、そして脱気した。ペーストIを等量のペーストIIと混合し、2枚のディスクを調製し、そして例1に記載の通りに1枚のディスクの色座標を測定した。
第二のディスクを蒸留水の容器に即座に入れ、そして45℃で7日間老化した。7日目に、ディスクを水から取り出し、紙タオルで拭き取り乾燥し、そして例1に記載の通りに色座標を測定した。
ペーストI:ペーストII組成物の1日目および7日目のL’、a’およびb’反射色座標およびΔE*値を表XXVIIIに示す。
[図:0001405807000034.jpg]
表XXVIIIIのデータは、ペーストI:ペーストII組成物が老化時に優れた色安定性を示すことを示す。
例11
下記の表XXIXに示す材料を混合してペーストI を形成した。
[図:0001405807000035.jpg]
下記の表XXX に示す材料を混合してペーストIIを形成した。
[図:0001405807000036.jpg]
ペーストI をペーストIIと1:1の混合比で約10~20秒間手で混練した。例5に記載のように、試料を調製し、そしてCSおよびDTSを測定した。例8に記載のように、試料を調製し、そして視覚乳白度を測定した。
ペーストI:ペーストII組成物のCS、DTSおよび視覚乳白度の値を下記の表XXXIに示す。
[図:0001405807000037.jpg]
表XXXIのデータは、ペーストI:ペーストII組成物の優れたCSおよびDTS 値、並びに低い可視乳白度の値を示す。」(36~48頁)
イ 甲4に記載された発明
甲4には、摘記4a~4g、特に4gの例11から以下の発明が記載されていると認める。
「エチレン系不飽和酸性コポリマー 7.15部
HEMA 1.50部
水 5.52部
l-酒石酸 0.75部
BHT 0.008部
GDMA 4.26部
クメンヒドロペルオキシド 0.008部
充填剤 35.75部
を含むペーストIと
ガラス 44.0部
熱分解法シリカ 0.2部
ベンゼンスルフィン酸ナトリウム 1.0部
GDMA 10.75部
CPQ 0.08部
EDMAB 0.10部
BHT 0.005部
チオ硫酸ナトリウム 0.533部
を含むペーストII
とを混練した、
光硬化型歯科用ガラスイオノマーセメント組成物。」(以下「甲4発明1」という。)
「光硬化型歯科用ガラスイオノマーセメント組成物における、
エチレン系不飽和酸性コポリマー 7.15部
HEMA 1.50部
水 5.52部
l-酒石酸 0.75部
BHT 0.008部
GDMA 4.26部
クメンヒドロペルオキシド 0.008部
充填剤 35.75部
を含むペーストIと
ガラス 44.0部
熱分解法シリカ 0.2部
ベンゼンスルフィン酸ナトリウム 1.0部
GDMA 10.75部
CPQ 0.08部
EDMAB 0.10部
BHT 0.005部
チオ硫酸ナトリウム 0.533部
を含むペーストII
との混練物の使用。」(以下「甲4発明2」という。)
(5)甲5の記載及び甲5に記載された発明
ア 甲5には、次のとおりの記載がある。
5a
「
[図:0001405807000038.jpg]
」(特許請求の範囲)
5b
「
[図:0001405807000039.jpg]
」(6頁左上欄5~10行)
5c
「
[図:0001405807000040.jpg]
」(9頁左上欄、実施例8)
5d
「
[図:0001405807000041.jpg]
」(9頁右上欄1~最終行)
イ 甲5に記載された発明
甲5には、摘記5a~5d、特に5dの実施例9の組成物Cから以下の発明が記載されていると認める。
「2,2-ビス[4-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキンプロポキシ)フェニル]プロパン 40重量部
1,6-ビスメタクリルアミドヘキサン 30重量部
2-ヒドロキシエチルメタクリレート 30重量部
2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム塩 1重量部
カンファーキノン 1重量部
を含む、光硬化型歯科用組成物。」(以下「甲5発明1」という。)
「光硬化型歯科用組成物における、
2,2-ビス[4-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキンプロポキシ)フェニル]プロパン 40重量部
1,6-ビスメタクリルアミドヘキサン 30重量部
2-ヒドロキシエチルメタクリレート 30重量部
2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム塩 1重量部
カンファーキノン 1重量部
の使用。」(以下「甲5発明2」という。)
(6)甲6の記載及び甲6に記載された発明
ア 甲6には、次のとおりの記載がある。
6a
「【請求項1】
自己接着性歯科材料であって、
(A)1種類以上の単官能性または多官能性エチレン性不飽和化合物であって、更に少なくとも1つの酸性官能基を有し、かつ前記化合物の少なくとも1種類がP-OH基を含有するものを、5~75重量%と、
(B)酸性官能基を有しない、1種類以上の単官能性または多官能性エチレン性不飽和化合物群を、2~50重量%と、
(C)イオン交換、中和、酸形成および/またはキレート形成反応で成分(A)と反応できる少なくとも1種類の充填剤を含む充填剤を22.8~85重量%と、
(D)1種類以上の開始剤、および、必要に応じて活性剤を、0.1~8重量%と、
(E)追加の添加剤および/または改質剤を、0.1~20重量%と、を含み、成分(A)と成分(B)との重量比(%)が、21:79~90:10の範囲である自己接着性歯科材料。」(特許請求の範囲)
6b
「 【0001】
本発明は、歯の硬質組織に対する高レベルの接着力、使用の簡便性、および良好な機械的特性を特徴とする自己接着性歯科材料に関する。本発明の組成物は、歯科分野で充填材、セメント、支台築造材料、フィッシャー・シーラントとして、および歯科工学材料として使用することができる。」(【0001】)
6c
「【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的の1つは、記載される先端技術水準の欠点を持たず、且つ、特に簡単な塗布、例えば、コンディショナー、ボンディング材、プライマー、またはエッチング剤の使用などの前処理なしでも、歯の硬質組織に対する高レベルの接着力、および良好な機械的特性を特徴とする歯科材料を提供することと理解できる。」(【0010】)
6d
「 【0026】
好適なモノマーの例は、モノ-、ジ-、または、より多価の多官能性アルコールのアクリル酸およびメタクリル酸エステルである。例として、以下のものを挙げることができる:メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリセリル1,3-ジメタクリレート(GDMA)、グリセリル1,2-ジメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、エチレングルコールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、1,12-ドデカンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリトリチルテトラメタクリレート、およびジペンタエリトリチルヘキサメタクリレート。
【0027】
同様に、ビスフェノールAジメタクリレート、およびそれから誘導されるエトキシル化および/またはプロポキシル化ジメタクリレートも使用できるという利点がある。また、ビスフェノールAおよびグリシジルメタクリレートをベースにした米国特許第3,066,112Aに記載のモノマー、またはイソシアネートとの付加反応により形成されるその誘導体も好適である。
【0028】
また、DE2816823Cに明記されるビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンのジアクリルエステルおよびジメタクリルエステル、並びに1~3つのエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシド単位で伸長されたビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンの化合物のジアクリルエステルおよびジメタクリルエステルが、非常に好適である。
【0029】
更に、7,7,9-トリメチル-4,13-ジオキソ-5,12-ジアザヘキサデカン
-1,16-ジオキシジメタクリレート(UDMA、プレックス(Plex)6661)などのウレタンメタクリレートを成分(B)の構成要素とすることができる。前述の化合物、およびその誘導体の分子量は、70~5000の範囲とすることが好ましく、より好ましくは90~2500の範囲、更に好ましくは100~1000g/molの範囲である。」(【0026】~【0029】)
6e
「 【0037】
成分(D)の開始剤は、モノマーのフリーラジカル重合をもたらす開始剤系を意味し、例えば、光開始剤および/またはレドックス開始系と呼ばれるもの、および/または熱開始剤である。
【0038】
好適な光開始剤は、例えば、・・・三級アミンなどの活性剤と組み合わせたカンファーキノンなどの、脂肪族および芳香族1,2-ジケトン化合物が特に好ましい。」(【0037】、【0038】)
6f
「 【0054】
実施例4:粉体を3部と液体を1部含む、2K[2成分]系(粉体/液体)の二段硬化型固定用セメント
粉体:
(C)メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン0.3重量%でシラン化された、ストロンチウムアルミニウムフルオロシリケートガラスを88.6重量%
(C)水酸化カルシウムを1.6重量%
(D)トルエンスルフィン酸ナトリウムを0.8重量%
(A)1,3-ジメチル-5-フェニルバルビツール酸を1.2重量%
(B)ペルオキソ二硫酸ナトリウムを2.4重量%
(E)メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン3重量%でシラン化された、発熱性シリカ(アエロジル(Aerosil)OX 50)を5.4重量%
液体:
(A)1,3-グリセリルジメタクリレートホスフェートを49.5重量%
(B)プロポキシル化ビスフェノールAジメタクリレートを20重量%
(B)トリエチレングリコールジメタクリレートを30重量%
(D)カンファーキノンを0.2重量%
(D)酢酸銅(II)を0.1重量%
(E)2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールを0.2重量%」(【0054】)
6g
「 【0057】
行った測定の説明接着力の決定: 接着力試験は牛の歯を使用して行った。各試験で、抜歯後凍結した5本のウシの歯を解凍し、洗浄して残存する歯肉を除去し、ダイヤモンドソーで挽くことにより歯根を分離する。残存する歯髄を歯髄用の針を用いて除去し、次いで歯を水道水ですすぐ。水冷されたダイヤモンド研磨ディスク上で歯を振動研磨することにより、平面の象牙質が得られる。次いで、十分に湿った状態にある研磨済みの表面が上向となるように、歯をシリコーン中に埋め込み、その後、湿った状態で微細な炭化ケイ素サンドペーパーを用いて後処理する。次いで、各歯に、直径6mmの丸い切り抜き(試験領域)を有する小さいワックスプレートを貼り付ける。この試験領域は、製造業者の指示に従って混合される材料で平面的に充填され、エリパー(Elipar)II(600-800mW/cm2)で10~40秒間、製造業者の指示に従って硬化される。自己硬化性材料を、36℃および100%の相対湿度で1時間硬化させる。硬化後、小さいワックスプレートは除去され、歯の表面に対して直角に、突出する充填物にねじを取り付け、36℃および100%の相対湿度で1日間保管した後、ツビック(Zwick)UPM1455で1mm/分の取外し速度で、取外し試験における接着力を測定する。
【0058】
曲げ強度は、EN ISO4049:2000(3点曲げ試験)に従って決定された。吸水性は、EN ISO4049:2000に従って、標準試験試料で決定された。
【0059】
曲げ強度および接着力測定の結果、並びにまた、吸水性の結果を、表1および2にまとめる(lc=光硬化、dc=暗硬化)。
【0060】
【表1】
[図:0001405807000042.jpg]
【0061】
本発明の実施例の配合物1~3は、前処理無しでも、他の全ての材料よりウシの象牙質に対する接着力がはるかに高い。グラスアイオノマーセメントおよび樹脂改質されたグラスアイオノマーセメントの比較では、更に、曲げ強度が大きく増大している。吸水性は、コンポマーおよびコンポジットの範囲内にあり、グラスアイオノマーセメントおよび樹脂改質されたグラスアイオノマーセメントの場合よりはるかに低い。
【0062】
【表2】
[図:0001405807000043.jpg]
【0063】
本発明の実施例の配合物4は、前処理無しでも、ウシの象牙質に対する接着力が非常に高い。吸水性は、コンポジットの範囲内にあり、コンポマー、グラスアイオノマーセメントおよび樹脂改質されたグラスアイオノマーセメントの場合よりずっと低い。」(【0057】~【0063】)
イ 甲6に記載された発明
甲6には、摘記6a~6g、特に6gの実施例4から以下の発明が記載されていると認める。
「粉体3部:
(C)メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン0.3重量%でシラン化された、ストロンチウムアルミニウムフルオロシリケートガラスを88.6重量%
(C)水酸化カルシウムを1.6重量%
(D)トルエンスルフィン酸ナトリウムを0.8重量%
(A)1,3-ジメチル-5-フェニルバルビツール酸を1.2重量%
(B)ペルオキソ二硫酸ナトリウムを2.4重量%
(E)メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン3重量%でシラン化された、発熱性シリカ(アエロジル(Aerosil)OX50)を5.4重量%
及び、
液体1部:
(A)1,3-グリセリルジメタクリレートホスフェートを49.5重量%
(B)プロポキシル化ビスフェノールAジメタクリレートを20重量%
(B)トリエチレングリコールジメタクリレートを30重量%
(D)カンファーキノンを0.2重量%
(D)酢酸銅(II)を0.1重量%
(E)2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールを0.2重量%
を含む、光硬化型歯科用セメント組成物。」(以下「甲6発明1」という。)
「光硬化型歯科用セメント組成物における、
粉体3部:
(C)メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン0.3重量%でシラン化された、ストロンチウムアルミニウムフルオロシリケートガラスを88.6重量%
(C)水酸化カルシウムを1.6重量%
(D)トルエンスルフィン酸ナトリウムを0.8重量%
(A)1,3-ジメチル-5-フェニルバルビツール酸を1.2重量%
(B)ペルオキソ二硫酸ナトリウムを2.4重量%
(E)メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン3重量%でシラン化された、発熱性シリカ(アエロジル(Aerosil)OX50)を5.4重量%
及び、
液体1部:
(A)1,3-グリセリルジメタクリレートホスフェートを49.5重量%
(B)プロポキシル化ビスフェノールAジメタクリレートを20重量%
(B)トリエチレングリコールジメタクリレートを30重量%
(D)カンファーキノンを0.2重量%
(D)酢酸銅(II)を0.1重量%
(E)2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールを0.2重量%
の使用。」(以下「甲6発明2」という。)
(7)甲7の記載及び甲7に記載された発明
ア 甲7には、次のとおりの記載がある。
7a
「[1] 第1剤と第2剤からなり、前記第1剤及び第2剤のいずれもが重合性単量体(a)及びフィラー(b)を含有し、かつ前記第1剤及び/又は前記第2剤が光重合開始剤(c)をさらに含有してなり、さらに前記第1剤及び第2剤のいずれか一方が化学重合開始剤(d)として酸化剤(f)及び還元剤(g)からなるレドックス重合開始剤の酸化剤(f)を、他方が還元剤(g)をそれぞれ含有してなる歯科用セメントであって、
前記光重合開始剤(c)がα-ジケトン類を含有し、前記光重合開始剤(c)の総含有量が前記重合性単量体(a)の総量100重量部に対して0.010~0.100重量部、前記化学重合開始剤(d)の総含有量が前記重合性単量体(a)の総量100重量部に対して0.001~20重量部であり、光硬化させた直後の硬化物の圧縮弾性率が100~400MPa、24時間後の該圧縮弾性率が500MPa以上である、歯科用セメント。」(特許請求の範囲)
7b
「[0001] 本発明は、歯科用セメントに関する。より詳しくは、歯質と歯冠用修復物を接着する際にマージン部からはみ出す余剰セメントを、光照射器で仮照射して半硬化状態で除去する際の除去性に優れた歯科用セメントに関する。」([0001])
7c
「[0091] 重合促進剤(e)の配合量は特に限定されないが、得られる組成物の硬化性等の観点からは、重合性単量体(a)の総量100重量部に対して0.001~20重量部含有することが好ましい。重合促進剤(e)の配合量が0.001重量部以上であると、硬化物の機械的強度及び接着強度が良好となり、より好適には0.01重量部以上であり、さらに好適には0.1重量部以上である。一方、重合促進剤(e)の配合量が20重量部以下であると、接着力が低下せずに、組成物の色調を悪化させず、硬化物の変色を防止することができ、より好適には15重量部以下であり、さらに好適には10重量部以下であり、さらに好適には5重量部以下である。」([0091])
7d
「[0104] 以下、本発明を実施例、及び比較例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例等によりなんら限定されるものではない。なお、以下で用いる略記号は次のとおりである。
[0105][重合性単量体(a)]
D-2.6E:2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン
NPG:ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート
Bis-GMA:2,2-ビス〔4-(3-メタクリロイルオキシ)-2-ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパン
MDP:10-メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート
[0106][フィラー(b)]
無機フィラー1及び2は、以下の製造方法に従って得られる。
[0107]無機フィラー1:シラン処理バリウムガラス粉
バリウムガラス(エステック社製、商品コード「Raysorb E-3000」)をボールミルで粉砕し、バリウムガラス粉を得た。得られたバリウムガラス粉の平均粒子径をレーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所製、型式「SALD-2100」)を用いて測定したところ、2.4μmであった。このバリウムガラス粉100重量部に対して通法により3重量部の3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランで表面処理を行い、シラン処理バリウムガラス粉を得た。
[01085]無機フィラー2:シラン処理コロイドシリカ粉末
蒸留水100重量部中に0.3重量部の酢酸と3重量部の3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランを加えて攪拌し、さらにコロイドシリカ粉末(日本アエロジル社製、商品コード「アエロジルOX50」)を50重量部加えて1時間攪拌した。凍結乾燥により水を除去した後、80℃で5時間加熱処理を行い、シラン処理コロイドシリカ粉末を得た。
[0109][光重合開始剤(c)]
CQ:dl-カンファーキノン
TMDPO:2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド
[0110][化学重合開始剤(d):酸化剤(f)]
BPO:ベンゾイルパーオキサイド
[0111][化学重合開始剤(d):還元剤(g)]
DEPT:N,N-ジ(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン
[0112][重合促進剤(e)]
DBB:N,N-ジメチルアミノ安息香酸n-ブトキシエチルエステル
TPBSS:2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム
[0113][重合禁止剤]
BHT:2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール
[0114]実施例1~12及び比較例1~3(デュアルキュア型のレジンセメントの調製)
表1又は2に示す原料を常温下で混合してAペースト及びBペーストを調製し、以下の試験例1~3の方法に従って特性を調べた。結果を表1及び2に示す。
[0115]試験例1(光照射直後の圧縮弾性率)
各実施例及び比較例について、等量採取したAペーストとBペーストを歯科用練和棒で10秒間混合した後、直ちに直径4mm、高さ4mmの孔を有するステンレス製の型に充填した。型の上下の面を離型フィルム(ポリエステル)で圧接し、前記離型フィルムを介して、混合開始から1分後に上面から歯科用セメントに照射器「JETライト3000」(J.Morita USA製)を用いて20秒間光照射を行った。続いてステンレス製の型の上下を逆さにして反対側の面にも20秒間光照射を行った後、型から取り出して歯科用セメントの硬化体を1個得た。さらに、同様にして3個の硬化体を調製し、合計4個の歯科用セメント硬化体を得た。
[0116]得られた歯科用セメントの硬化体1個について、歯科用セメントの混合開始から3分後に圧縮試験機(オートグラフ、島津製作所製)を用いてクロスヘッドスピード1mm/minにて圧縮し、試験力50Nから100N間で最小二乗法により硬化体の圧縮弾性率を測定した。残る3個の硬化体についても、同様にして、歯科用セメントの混合開始から3分後に圧縮弾性率を測定し、4個の圧縮弾性率の平均値をもって光照射直後の圧縮弾性率の値とした。
[0117]試験例2(24時間後の圧縮弾性率)
試験例1と同様にして歯科用セメントの硬化体を調製し、得られた硬化体を37℃の水中に24時間浸漬後、試験例1と同様にして圧縮弾性率を測定した。同様にして、残る3個の硬化体についても圧縮弾性率を測定し、4個の圧縮弾性率の平均値をもって24時間後の圧縮弾性率の値とした。
[0118]試験例3(余剰セメントの除去性)
ウシ下顎前歯の唇面を流水下にてシリコン・カーバイド紙で研磨して象牙質の平坦面を露出させた。露出した平坦面を流水下にて#1000のシリコン・カーバイド紙でさらに研磨し、その後、表面の水をエアブローすることで乾燥した。乾燥後の平滑面に、各実施例及び比較例について、等量採取したAペーストとBペーストを10秒間混合することにより得られた、各実施例及び比較例の歯科用セメント0.5gを塗布し、その上から5mm×5mmのステンレス板を圧接した。圧接によりはみ出した余剰セメントに対して、試験例1と同様の歯科用照射器「JETライト3000」を用いて、ステンレス板の四面の各方向から5秒ずつ光照射を行った。その後、短針を用いて余剰レジンを除去し、以下の評価基準に従って、余剰セメントの除去性を評価した。
[0119](余剰セメントの除去性の評価基準)
A:容易に一塊で余剰セメントを除去することが可能
B:余剰セメントは硬く歯質と接着しているが、一塊で除去することが可能
C:余剰セメントは脆いが、余剰セメントのみの除去は可能
D:余剰セメントが脆く、圧接部からの過剰除去あり
E:余剰セメントの強度が高く、歯質と強固に接着しているため除去が困難
[0120][表1]
[図:0001405807000044.jpg]
[0121][表2]
[図:0001405807000045.jpg]
[0122] 以上より、実施例のレジンセメントは比較例のレジンセメントに比べて、機械的強度、及び余剰セメントの除去性を両立していることが分かる。なかでも、化学重合開始剤(d)の含有量が実施例1と同じであるが光重合開始剤(c)の含有量が重合性単量体(a)の総量100重量部に対して0.025重量部である実施例9や、光重合開始剤(c)の含有量が実施例1と同じであるが化学重合開始剤(d)の含有量が重合性単量体(a)の総量100重量部に対して3.2重量部である実施例8は、若干余剰セメントの除去性は劣るものの、適度な機械的強度と余剰セメントの除去性を維持している。また、光重合開始剤の総重量と化学重合開始剤の総重量の比が特定の範囲にあり、かつ光重合開始剤の総配合量が特定の範囲にある実施例1~5および実施例10では、余剰セメントの除去性と適度な機械的強度をさらに高次元で両立しており、光重合開始剤(c)と化学重合開始剤(d)の各含有量が特定の範囲であることが重要であることが示唆される。また、実施例2~5より、重合促進剤(e)として、2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム(TPBSS)、又は亜硫酸ナトリウムを用いることにより、24時間後の圧縮弾性率を高くすることが可能であることが分かる。」([0104]~[0122])
イ 甲7に記載された発明
甲7には、摘記7a~7d、特に7dの実施例2から以下の発明が記載されていると認める。
「D-2.6E(2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン)20重量部
NPG(ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート)10重量部
Bis-GMA(2,2-ビス〔4-(3-メタクリロイルオキシ)-2-ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパン)10重量部
MDP(10-メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート)10重量部
無機フィラー1 70重量部
無機フィラー2 22.5重量部
CQ(dl-カンファーキノン)0.05重量部
BPO(ベンゾイルパーオキサイド)1.0重量部
BHT(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール)0.05重量部
を含むAペーストと、
D-2.6E(2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン)30重量部
NPG(ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート)20重量部
無機フィラー1 70重量部
無機フィラー2 22.5重量部
DEPT(N,N-ジ(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン)0.2重量部
DBB(N,N-ジメチルアミノ安息香酸n-ブトキシエチルエステル)0.15重量部
TPBSS(2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム)0.25重量部
BHT(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール)0.05重量部
を含むBペーストとの混合物を含む、光硬化型歯科用セメント組成物。」(以下「甲7発明1」という。)
「光硬化型歯科用セメント組成物における、
D-2.6E(2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン)20重量部
NPG(ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート)10重量部
Bis-GMA(2,2-ビス〔4-(3-メタクリロイルオキシ)-2-ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパン)10重量部
MDP(10-メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート)10重量部
無機フィラー1 70重量部
無機フィラー2 22.5重量部
CQ(dl-カンファーキノン)0.05重量部
BPO(ベンゾイルパーオキサイド)1.0重量部
BHT(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール)0.05重量部
を含むAペーストと、
D-2.6E(2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン)30重量部
NPG(ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート)20重量部
無機フィラー1 70重量部
無機フィラー2 22.5重量部
DEPT(N,N-ジ(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン)0.2重量部
DBB(N,N-ジメチルアミノ安息香酸n-ブトキシエチルエステル)0.15重量部
TPBSS(2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム)0.25重量部
BHT(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール)0.05重量部
を含むBペーストとの混合物の使用。」(以下「甲7発明2」という。)
(8)甲8の記載及び甲8に記載された発明
ア 甲8には、次のとおりの記載がある。
8a
「【請求項1】
酸基を持つ(メタ)アクリレートモノマー:5~50重量%と、水酸基及び/又はアミノ基が2個以下であって酸基を持たない分子量160以上の(メタ)アクリレートモノマー:30~85重量%と、後記する粉剤中の重合触媒用の重合開始剤としてのアミン化合物:0.01~5重量%とを含む液剤と、
フルオロアルミノシリケートガラス粉末,歯科用リン酸亜鉛セメント粉末又は歯科用カルボキシレートセメント粉末に使用されている金属酸化物粉末:90~99.8重量%と、重合触媒としての-SO2-基を少なくとも1個含有する有機芳香族化合物及び過酸化物:合計が0.01~5重量%とを含む粉剤と、
から構成されることを特徴とする歯科用セメント。」(特許請求の範囲)
8b
「 【0001】
本発明は歯牙修復等に用いる歯科用セメントに関するものである。」(【0001】)
8c
「 【0019】
このアミン化合物は液剤中に0.01~5重量%含有されていることが必要であり、0.01重量%未満では粉剤中の重合触媒の重合開始剤としての能力が不十分であり、5重量部%を超えると効果が向上しないにも拘らず硬化体が変色する虞がある。」(【0019】)
8d
「【実施例】
【0029】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
・・・
【0035】『粉剤と液剤の調製』 各実施例及び比較例に用いた粉剤と液剤との配合を表3に示す。粉剤の調製として、フルオロアルミノシリケートガラス粉末又は金属酸化物粉末と、重合触媒との混合は乳鉢にて20分間行った。液剤は、酸基を持つ(メタ)アクリレートモノマーと水とを室温で4時間混合した後、フィラーとしての二酸化珪素を除く表3に記載の各成分を均一になるまで混合し、最後にフィラーとしての二酸化珪素を加え1時間混合した。
【0036】
【表3】
[図:0001405807000046.jpg]
【0037】
表3中の略語はそれぞれ以下の通りである。
酸基を持つ(メタ)アクリレートモノマー
MDP:10-メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート
PM2:ビスメタクリロキシエチルホスフェート
PM21:2-ヒドロキシエチルメタクリレートの6-ヘキサノリド付加重合物と無水リン酸との反応生成物
ホスマーM:アシッドホスホキシエチルメタクリレート
4META:4-メタクリロキシエチルトリメリット酸無水物
【0038】
水酸基及び/又はアミノ基が2個以下であって酸基を持たない分子量160以上の(メタ)アクリレートモノマー
TEGDMA:トリエチレングリコールジメタクリレート
GDMA:2-ヒドロキシ-1,3-ジメタクリロキシプロパン
UDMA:ジ-2-メタクリロキシエチル-2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジカルバメート
【0039】
アミン化合物
P amine:N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン
【0040】
その他の添加物
SiO2:二酸化珪素
BHT:2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール
CQ:カンファーキノン
【0041】
金属酸化物粉末
ガラス粉末I:フルオロアルミノシリケートガラス粉末I
ガラス粉末II:フルオロアルミノシリケートガラス粉末II
ガラス粉末III:フルオロアルミノシリケートガラス粉末III
金属酸化物粉末I:酸化亜鉛を主成分とする金属酸化物粉末I
金属酸化物粉末II:酸化亜鉛を主成分とする金属酸化物粉末II
【0042】
-SO2-基を少なくとも1個含有する有機芳香族化合物
BSA:ベンゼンスルフィン酸
pTSNa:p-トルエンスルフィン酸ナトリウム・四水和物
【0043】
過酸化物
KPS:ペルオキソ二硫酸カリウム
NaPS:ペルオキソ二硫酸ナトリウム
【0044】
『接着力試験』
牛前歯表面を注水下で耐水研磨紙#600によって研磨し、エナメル質及び象牙質表面を露出させて被着面を得た。直径3mmの孔を開けた樹脂製マスキングテープにて接着面積を規定した。その後、練和した歯科用セメント組成物を被着面に盛り、その上から予め耐水研磨紙#120で表面研磨し、サンドブラスト処理してあるステンレス製の円柱ロッドを手圧にて圧接した。また光重合触媒を含む歯科用セメント組成物の場合は、同様の処理を施したアクリル製の円柱ロッドを用い、圧接後、歯科用可視光線照射器(製品名:ジーシー コービー,ジーシー社製)にて、前後左右方向から20秒ずつ光照射を行った。試験体は37℃、相対湿度100%の恒温槽に1時間放置後、37℃水中に23時間浸漬した。その後、万能試験機(製品名:オートグラフ,島津製作所社製)にてクロスヘッドスピード1.0mm/min.にて引張り接着強さを測定した。」(【0029】~【0044】)
イ 甲8に記載された発明
甲8には、摘記8a~8d、特に8dの実施例2から以下の発明(以下「甲8発明」という。)が記載されていると認める。
「MDP(10-メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート)10g
4META(4-メタクリロキシエチルトリメリット酸無水物)12g
TEGDMA(トリエチレングリコールジメタクリレート)25g
GDMA(2-ヒドロキシ-1,3-ジメタクリロキシプロパン)37g
UDMA(ジ-2-メタクリロキシエチル-2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジカルバメート)5g
P amine(N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン)0.26g
SiO2(二酸化珪素)6.7g
BHT(2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール)0.02g
CQ(カンファーキノン)0.02g
を含む液剤と、
ガラス粉末I(フルオロアルミノシリケートガラス粉末I)99g
pTSNa(p-トルエンスルフィン酸ナトリウム・四水和物)0.5g
NaPS(ペルオキソ二硫酸ナトリウム)0.5g
を含む粉剤との練和物を含む、光硬化型歯科用セメント組成物。」(以下「甲8発明1」という。)
「光硬化型歯科用セメント組成物における、
MDP(10-メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート)10g
4META(4-メタクリロキシエチルトリメリット酸無水物)12g
TEGDMA(トリエチレングリコールジメタクリレート)25g
GDMA(2-ヒドロキシ-1,3-ジメタクリロキシプロパン)37g
UDMA(ジ-2-メタクリロキシエチル-2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジカルバメート)5g
P amine(N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン)0.26g
SiO2(二酸化珪素)6.7g
BHT(2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール)0.02g
CQ(カンファーキノン)0.02g
を含む液剤と、
ガラス粉末I(フルオロアルミノシリケートガラス粉末I)99g
pTSNa(p-トルエンスルフィン酸ナトリウム・四水和物)0.5g
NaPS(ペルオキソ二硫酸ナトリウム)0.5g
を含む粉剤との練和物の使用。」(以下「甲8発明2」という。)
3.甲1を主引例とする取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)についての判断
(1)訂正発明3について
ア 対比
訂正発明3と甲1発明1とを対比する。
甲1発明1の「(メタ)アクリルアミド化合物(a)であるTAC4(N,N’,N’’,N’’’-テトラアクリロイルトリエチレンテトラミン)」、「非対称型アクリルアミド-メタクリル酸エステル系重合性単量体(b)であるMAEA(N-メタクリロイルオキシエチルアクリルアミド)」、「酸性基含有(メタ)アクリル系重合性単量体(c)であるMDP(10-メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート)」、「疎水性の架橋性重合性単量体(d)であるBis-GMA(2,2-ビス〔4-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン)」、「疎水性の架橋性重合性単量体(d)であるD-2.6E(2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン(エトキシ基の平均付加モル数が2.6のもの))」及び「疎水性の架橋性重合性単量体(d)であるTEGDMA(トリエチレングリコールジメタクリレート)」は、訂正発明3の「(a)1種以上のラジカル重合性化合物である(メタ)アクリラート又は(メタ)アクリルアミドモノマー」に相当する。
甲1発明1の「光重合開始剤であるCQ(dl-カンファーキノン)」は、訂正発明3の「(b)(i)300~800nmの範囲に光吸収極大を有する光開始剤化合物であって、1,2-ジケトンである光開始剤化合物」に相当する。
甲1発明1の「重合促進剤(h)であるTPBSS(2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム)」は、訂正発明3の
「下記式(I):
(R-SOx-)yMy+ (I)
[式中、
Rは、芳香族又は脂肪族有機部分を表わし My+は、歯科用組成物に適したカチオンであって、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は下記式(II):
R1-I+-R2 (II)
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、1~6個の炭素原子を有する1つ以上の直鎖もしくは分岐鎖アルコキシ基により置換されていてもよいフェニル基を表わす]
で示されるヨードニウムイオンであり、
xは、3であり、
yは、1~4の整数である。]
で示されるスルホナート化合物」と、共開始剤化合物である点で一致する。
したがって、甲1発明1の「光重合開始剤であるCQ(dl-カンファーキノン) 0.3重量部、化学重合開始剤(酸化剤)(e-1)であるBPO(ベンゾイルパーオキサイド) 3重量部、化学重合開始剤(還元剤)(e-2)であるDEPT(N,N―ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン) 0.4重量部、重合促進剤(h)であるDABE(4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸エチル) 0.4重量部、重合促進剤(h)であるTPBSS(2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム) 0.5重量部、重合禁止剤であるBHT(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール) 0.2重量部」は、訂正発明3の「光開始剤化合物と共開始剤化合物を含有する重合開始剤系」に相当する。
甲1発明1の「歯科用セメント組成物」と訂正発明3の「光硬化型歯科用組成物」とは、「歯科用組成物」である点で一致する。
そうすると、訂正発明3と甲1発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「(a)1種以上のラジカル重合性化合物である(メタ)アクリラート又は(メタ)アクリルアミドモノマーと、
(b)
(i)300~800nmの範囲に光吸収極大を有する光開始剤化合物であって、1,2-ジケトンである光開始剤化合物、
及び
(ii)共開始剤化合物を含有する重合開始剤系とを含む、歯科用組成物。」
<相違点>
相違点1-1 歯科用組成物について、訂正発明3は「光硬化型歯科用組成物」
であるのに対し、甲1発明1は「歯科用セメント組成物」である点。
相違点1-A 共開始剤化合物について、訂正発明3は「下記式(I):
(R-SOx-)yMy+ (I)
[式中、
Rは、芳香族又は脂肪族有機部分を表わし My+は、歯科用組成物に適したカチオンであって、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は下記式(II):
R1-I+-R2 (II)
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、1~6個の炭素原子を有する1つ以上の直鎖もしくは分岐鎖アルコキシ基により置換されていてもよいフェニル基を表わす]
で示されるヨードニウムイオンであり、
xは、3であり、
yは、1~4の整数である。]
で示されるスルホナート化合物」であるのに対し、甲1発明1は「重合促進剤(h)であるTPBSS(2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム)」である点。
イ 判断
事案に鑑み、まず、相違点1-Aから検討する。
甲1発明1の「TPBSS(2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム)」は、訂正発明3の式(I)におけるxが2であるスルフィナート化合物であるから、訂正発明3の「スルホナート化合物」とは化学構造からみて異なる化合物であることは明らかである。
そうすると、相違点1-Aは実質的な相違点である。
したがって、相違点1-1について検討するまでもなく、 訂正発明3は甲第1号証に記載された発明ではない。
また、甲1~8には、(メタ)アクリラート又は(メタ)アクリルアミドモノマーと、1,2-ジケトンである光開始剤化合物及び共開始剤化合物を含有する重合開始系とを含む光硬化型歯科用組成物における共開始剤化合物として、スルフィナート化合物に代えて、本願所定の「スルホナート化合物」を用いる態様について記載も示唆もない。
そうすると、甲1発明1において、甲1に記載された硬化型歯科用組成物に用いられる共開始剤化合物であるスルフィナート化合物とは構造が異なり例示もされていないスルホナート化合物を採用して、相違点1-Aの発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
よって、訂正発明3は、相違点1-1について検討するまでもなく、甲第1号証に記載された発明ではなく、甲1発明1及び甲1~8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(2)訂正発明15について
ア 対比
訂正発明15と甲1発明2とを対比する。
甲1発明2の「光重合開始剤であるCQ(dl-カンファーキノン)」は、訂正発明15の「(i)300~800nmの範囲に光吸収極大を有する光開始剤化合物であって、1,2-ジケトンである光開始剤化合物」に相当する。
甲1発明2の「重合促進剤(h)であるTPBSS(2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム)」は、訂正発明15の
「下記式(I):
(R-SOx-)yMy+ (I)
[式中、
Rは、芳香族又は脂肪族有機部分を表わし My+は、歯科用組成物に適したカチオンであって、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は下記式(II):
R1-I+-R2 (II)
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、1~6個の炭素原子を有する1つ以上の直鎖もしくは分岐鎖アルコキシ基により置換されていてもよいフェニル基を表わす]
で示されるヨードニウムイオンであり、
xは、3であり、
yは、1~4の整数である。]
で示されるスルホナート化合物」と、共開始剤化合物である点で一致する。
したがって、甲1発明2の「光重合開始剤であるCQ(dl-カンファーキノン) 0.3重量部、化学重合開始剤(酸化剤)(e-1)であるBPO(ベンゾイルパーオキサイド) 3重量部、化学重合開始剤(還元剤)(e-2)であるDEPT(N,N―ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン) 0.4重量部、重合促進剤(h)であるDABE(4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸エチル) 0.4重量部、重合促進剤(h)であるTPBSS(2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム) 0.5重量部、重合禁止剤であるBHT(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール) 0.2重量部」は、訂正発明15の「光開始剤化合物と共開始剤化合物を含有する重合開始剤系」に相当する。
甲1発明2の「歯科用セメント組成物」と訂正発明15の「光硬化型歯科用組成物」とは、「歯科用組成物」である点で一致する。
そうすると、訂正発明15と甲1発明2との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「歯科用組成物における、
(i)300~800nmの範囲に光吸収極大を有する光開始剤化合物であって、1,2-ジケトンである光開始剤化合物と、
(ii)共開始剤化合物とを含有する、重合開始剤系の使用。」
<相違点>
相違点1-2 歯科用組成物について、訂正発明15は「光硬化型歯科用組成物」であるのに対し、甲1発明2は「歯科用セメント組成物」である点。
相違点1-B 共開始剤化合物について、訂正発明15は「下記式(I):
(R-SOx-)yMy+ (I)
[式中、
Rは、芳香族又は脂肪族有機部分を表わし、
My+は、歯科用組成物に適したカチオンであって、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は下記式(II):
R1-I+-R2 (II)
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、1~6個の炭素原子を有する1つ以上の直鎖もしくは分岐鎖アルコキシ基により置換されていてもよいフェニル基を表わす]
で示されるヨードニウムイオンであり、
xは、3であり、
yは、1~4の整数である。]
で示されるスルホナート化合物」であるのに対し、甲1発明2は「重合促進剤(h)であるTPBSS(2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム)」である点。
イ 判断
事案に鑑み、まず、相違点1-Bから検討する。
相違点1-Bは、相違点1-Aと実質的に同じである。
そうすると、上記(1)において説示したように、相違点1-Bは実質的な相違点であるから、訂正発明15は、相違点1-2について検討するまでもなく、甲第1号証に記載された発明ではなく、甲1発明2及び甲1~8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)訂正発明4~12、16、17について
訂正発明4~12又は訂正発明16、17は、訂正発明3又は訂正発明15をさらに限定したものであるから、上記(1)及び(2)で検討したのと同様の理由により、甲1発明1又は甲1発明2に基づいて新規性及び進歩性を否定することはできない。
4.甲2を主引例とする取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)についての判断
(1)訂正発明3について
ア 対比
訂正発明3と甲2発明1とを対比する。
甲2発明1の「トリエチレングリコールジメタクリレート」は、訂正発明3の「(a)1種以上のラジカル重合性化合物である(メタ)アクリラート又は(メタ)アクリルアミドモノマー」に相当する。
甲2発明1の「カンファーキノン」は、訂正発明3の「(b)(i)300~800nmの範囲に光吸収極大を有する光開始剤化合物であって、1,2-ジケトンである光開始剤化合物」に相当する。
甲2発明1の「p-トルエンスルフィン酸ナトリウム(重合促進剤)」は、本件発明1の「下記式(I):
(R-SOx-)yMy+ (I)
[式中、
Rは、芳香族又は脂肪族有機部分を表わし My+は、歯科用組成物に適したカチオンであって、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は下記式(II):
R1-I+-R2 (II)
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、1~6個の炭素原子を有する1つ以上の直鎖もしくは分岐鎖アルコキシ基により置換されていてもよいフェニル基を表わす]
で示されるヨードニウムイオンであり、
xは、3であり、
yは、1~4の整数である。]
で示されるスルホナート化合物」と、共開始剤化合物である点で一致する。
そうすると、甲2発明1の「カンファーキノン」と「p-トルエンスルフィン酸ナトリウム(重合促進剤)」とを含む練和物である「光硬化型歯科用セメント組成物」は、訂正発明3の「光開始剤化合物と共開始剤化合物を含有する重合開始剤系」を含む「光硬化型歯科用組成物」に相当するから、訂正発明3と甲2発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「(a)1種以上のラジカル重合性化合物である(メタ)アクリラート又は(メタ)アクリルアミドモノマーと、
(b)
(i)300~800nmの範囲に光吸収極大を有する光開始剤化合物であって、1,2-ジケトンである光開始剤化合物、
及び
(ii)共開始剤化合物を含有する重合開始剤系とを含む、光硬化型歯科用組成物。」
<相違点>
相違点2-A 共開始剤化合物について、訂正発明3は「下記式(I):
(R-SOx-)yMy+ (I)
[式中、
Rは、芳香族又は脂肪族有機部分を表わし My+は、歯科用組成物に適したカチオンであって、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は下記式(II):
R1-I+-R2 (II)
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、1~6個の炭素原子を有する1つ以上の直鎖もしくは分岐鎖アルコキシ基により置換されていてもよいフェニル基を表わす]
で示されるヨードニウムイオンであり、
xは、3であり、
yは、1~4の整数である。]
で示されるスルホナート化合物」であるのに対し、甲2発明1は「p-トルエンスルフィン酸ナトリウム(重合促進剤)」である点。
イ 相違点2-Aについての判断
甲2発明1の「p-トルエンスルフィン酸ナトリウム(重合促進剤)」は、訂正発明3の式(I)におけるxが2であるスルフィナート化合物であるから、訂正発明3の「スルホナート化合物」とは化学構造からみて異なる化合物であることは明らかである。
そうすると、相違点2-Aは実質的な相違点であるから、訂正発明3は甲第2号証に記載された発明ではない。
また、甲1~8には、(メタ)アクリラート又は(メタ)アクリルアミドモノマーと、1,2-ジケトンである光開始剤化合物及び共開始剤化合物を含有する重合開始系とを含む光硬化型歯科用組成物における共開始剤化合物として、スルフィナート化合物に代えて、本願所定の「スルホナート化合物」を用いる態様について記載も示唆もない。
そうすると、甲2発明1において、甲2に記載された光硬化型歯科用セメント組成物に用いられる共開始剤化合物であるスルフィナート化合物とは構造が異なり例示もされていないスルホナート化合物を採用して、相違点2-Aの発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
よって、訂正発明3は、甲第2号証に記載された発明ではなく、甲2発明1及び甲1~8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(2)訂正発明15について
ア 対比
訂正発明15と甲2発明2とを対比する。
甲2発明2の「カンファーキノン」は、訂正発明15の「(b)(i)300~800nmの範囲に光吸収極大を有する光開始剤化合物であって、1,2-ジケトンである光開始剤化合物」に相当する。
甲2発明2の「p-トルエンスルフィン酸ナトリウム(重合促進剤)」は、訂正発明15の
「下記式(I):
(R-SOx-)yMy+ (I)
[式中、
Rは、芳香族又は脂肪族有機部分を表わし My+は、歯科用組成物に適したカチオンであって、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は下記式(II):
R1-I+-R2 (II)
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、1~6個の炭素原子を有する1つ以上の直鎖もしくは分岐鎖アルコキシ基により置換されていてもよいフェニル基を表わす]
で示されるヨードニウムイオンであり、
xは、3であり、
yは、1~4の整数である。]
で示されるスルホナート化合物」と、共開始剤化合物である点で一致する。
そうすると、甲2発明2の光硬化型歯科用セメント組成物における「カンファーキノン」を含むセメント粉末と「p-トルエンスルフィン酸ナトリウム(重合促進剤)」を含むセメント液との練和物の使用は、訂正発明15の光硬化型歯科用組成物における「光開始剤化合物」と「共開始剤化合物」とを含有する重合開始剤系の使用に相当するから、訂正発明15と甲2発明2との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「光硬化型歯科用組成物における、
(i)300~800nmの範囲に光吸収極大を有する光開始剤化合物であって、1,2-ジケトンである光開始剤化合物と、
(ii)共開始剤化合物とを含有する、重合開始剤系の使用。」
<相違点>
相違点2-B 共開始剤化合物について、訂正発明15は「下記式(I):
(R-SOx-)yMy+ (I)
[式中、
Rは、芳香族又は脂肪族有機部分を表わし、
My+は、歯科用組成物に適したカチオンであって、アルカリ金属、アルカリ
土類金属、又は下記式(II):
R1-I+-R2 (II)
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、1~6個の炭素原子を有する1つ以上の直鎖もしくは分岐鎖アルコキシ基により置換されていてもよいフェニル基を表わす]
で示されるヨードニウムイオンであり、
xは、3であり、
yは、1~4の整数である。]
で示されるスルホナート化合物」であるのに対し、甲2発明2は「p-トルエンスルフィン酸ナトリウム(重合促進剤)」である点。
イ 相違点2-Bについての判断
相違点2-Bは、相違点2-Aと実質的に同じである。
そうすると、上記(1)において説示したように、相違点2-Bは実質的な相違点であるから、訂正発明15は、甲第2号証に記載された発明ではなく、甲2発明2及び甲1~8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)訂正発明4~12、16、17について
訂正発明4~12又は訂正発明16、17は、訂正発明3又は訂正発明15をさらに限定したものであるから、上記(1)及び(2)で検討したのと同様の理由により、甲2発明1又は甲2発明2に基づいて新規性及び進歩性を否定することはできない。
5.甲3を主引例とする取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)についての判断
(1)訂正発明3について
ア 対比
訂正発明3と甲3発明1とを対比する。
甲3発明1の「HEMA(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)」、「TEGDMA(トリエチレングリコールジメタクリレート)」及び「UDMA(ジ2メタクリロキシエチル2,2,4トリメチルヘキサメチレンジカルバメート)」は、訂正発明3の「(a)1種以上のラジカル重合性化合物である(メタ)アクリラート又は(メタ)アクリルアミドモノマー」に相当する。
甲3発明1の「CQ(カンファーキノン)」は、訂正発明3の「(b)(i)300~800nmの範囲に光吸収極大を有する光開始剤化合物であって、1,2-ジケトンである光開始剤化合物」に相当する。
甲3発明1の「p-トルエンスルフィン酸ナトリウム」は、訂正発明3の
「下記式(I):
(R-SOx-)yMy+ (I)
[式中、
Rは、芳香族又は脂肪族有機部分を表わし My+は、歯科用組成物に適したカチオンであって、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は下記式(II):
R1-I+-R2 (II)
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、1~6個の炭素原子を有する1つ以上の直鎖もしくは分岐鎖アルコキシ基により置換されていてもよいフェニル基を表わす]
で示されるヨードニウムイオンであり、
xは、3であり、
yは、1~4の整数である。]
で示されるスルホナート化合物」と、共開始剤化合物である点で一致する。
甲3発明1の「歯科用グラスアイオノマーセメント組成物」と訂正発明3の「光硬化型歯科用組成物」とは、「歯科用組成物」である点で一致する。
そうすると、甲3発明1の「カンファーキノン」と「p-トルエンスルフィン酸ナトリウム」とを含む練和物である「歯科用グラスアイオノマーセメント組成物」と、訂正発明3の「光硬化型歯科用組成物」とは、「光開始剤化合物と共開始剤化合物を含有する重合開始剤系」を含む「歯科用組成物」である点で一致する。
そうすると、訂正発明3と甲3発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「(a)1種以上のラジカル重合性化合物である(メタ)アクリラート又は(メタ)アクリルアミドモノマーと、
(b)
(i)300~800nmの範囲に光吸収極大を有する光開始剤化合物であって、1,2-ジケトンである光開始剤化合物、
及び
(ii)共開始剤化合物を含有する重合開始剤系とを含む、歯科用組成物。」
<相違点>
相違点3-1 歯科用組成物について、本件発明1は「光硬化型歯科用組成物」であるのに対し、甲3発明1は「歯科用グラスアイオノマーセメント組成物」である点。
相違点3-A 共開始剤化合物について、訂正発明3は「下記式(I):
(R-SOx-)yMy+ (I)
[式中、
Rは、芳香族又は脂肪族有機部分を表わし My+は、歯科用組成物に適したカチオンであって、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は下記式(II):
R1-I+-R2 (II)
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、1~6個の炭素原子を有する1つ以上の直鎖もしくは分岐鎖アルコキシ基により置換されていてもよいフェニル基を表わす]
で示されるヨードニウムイオンであり、
xは、3であり、
yは、1~4の整数である。]
で示されるスルホナート化合物」であるのに対し、甲3発明1は「p-トルエンスルフィン酸ナトリウム」である点。
イ 判断
事案に鑑み、まず、相違点3-Aから検討する。
甲3発明1の「p-トルエンスルフィン酸ナトリウム」は、訂正発明3の式(I)におけるxが2であるスルフィナート化合物であるから、訂正発明3の「スルホナート化合物」とは化学構造からみて異なる化合物であることは明らかである。
そうすると、相違点3-Aは実質的な相違点である。
したがって、相違点3-1について検討するまでもなく、 訂正発明3は甲第3号証に記載された発明ではない。
また、甲1~8には、(メタ)アクリラート又は(メタ)アクリルアミドモノマーと、1,2-ジケトンである光開始剤化合物及び共開始剤化合物を含有する重合開始系とを含む光硬化型歯科用組成物における共開始剤化合物として、スルフィナート化合物に代えて、本願所定の「スルホナート化合物」を用いる態様について記載も示唆もない。
そうすると、甲3発明1において、甲3に記載された歯科用グラスアイオノマーセメント組成物に用いられる共開始剤化合物であるスルフィナート化合物とは構造が異なり例示もされていないスルホナート化合物を採用して、相違点3-Aの発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
よって、訂正発明3は、相違点3-1について検討するまでもなく、甲第3号証に記載された発明ではなく、甲3発明1及び甲1~8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(2)訂正発明15について
ア 対比
訂正発明15と甲3発明2とを対比する。
甲3発明2の「CQ(カンファーキノン)」は、訂正発明15の「(i)300~800nmの範囲に光吸収極大を有する光開始剤化合物であって、1,2-ジケトンである光開始剤化合物」に相当する。
甲3発明2の「p-トルエンスルフィン酸ナトリウム」は、訂正発明15の「下記式(I):
(R-SOx-)yMy+ (I)
[式中、
Rは、芳香族又は脂肪族有機部分を表わし My+は、歯科用組成物に適したカチオンであって、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は下記式(II):
R1-I+-R2 (II)
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、1~6個の炭素原子を有する1つ以上の直鎖もしくは分岐鎖アルコキシ基により置換されていてもよいフェニル基を表わす]
で示されるヨードニウムイオンであり、
xは、3であり、
yは、1~4の整数である。]
で示されるスルホナート化合物」と、共開始剤化合物である点で一致する。
甲3発明2の「歯科用グラスアイオノマーセメント組成物」と訂正発明15の「光硬化型歯科用組成物」とは、「歯科用組成物」である点で一致する。
そうすると、甲3発明2の「CQ(カンファーキノン)」と「p-トルエンスルフィン酸ナトリウム」とを含む練和物である「歯科用グラスアイオノマーセメント組成物」と、訂正発明15の「光硬化型歯科用組成物」とは、「光開始剤化合物と共開始剤化合物を含有する重合開始剤系」を含む「歯科用組成物」である点で一致する。
そうすると、訂正発明15と甲3発明2との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「歯科用組成物における、
(i)300~800nmの範囲に光吸収極大を有する光開始剤化合物であって、1,2-ジケトンである光開始剤化合物と、
(ii)共開始剤化合物とを含有する、重合開始剤系の使用。」
<相違点>
相違点3-2 歯科用組成物について、訂正発明15は「光硬化型歯科用組成物」であるのに対し、甲3発明1は「歯科用グラスアイオノマーセメント組成物」である点。
相違点3-B 共開始剤化合物について、訂正発明15は「下記式(I):
(R-SOx-)yMy+ (I)
[式中、
Rは、芳香族又は脂肪族有機部分を表わし、
My+は、歯科用組成物に適したカチオンであって、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は下記式(II):
R1-I+-R2 (II)
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、1~6個の炭素原子を有する1つ以上の直鎖もしくは分岐鎖アルコキシ基により置換されていてもよいフェニル基を表わす]
で示されるヨードニウムイオンであり、
xは、3であり、
yは、1~4の整数である。]
で示されるスルホナート化合物」であるのに対し、甲3発明2は「p-トルエンスルフィン酸ナトリウム」である点。
イ 判断
事案に鑑み、まず、相違点3-Bから検討する。
相違点3-Bは、相違点3-Aと実質的に同じである。
そうすると、上記(1)において説示したように、相違点3-Bは実質的な相違点であるから、訂正発明15は、相違点3-2について検討するまでもなく、甲第3号証に記載された発明ではなく、甲3発明2及び甲1~8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)訂正発明4~12、16、17について
訂正発明4~12又は訂正発明16、17は、訂正発明3又は訂正発明15をさらに限定したものであるから、上記(1)及び(2)で検討したのと同様の理由により、甲3発明1又は甲3発明2に基づいて新規性及び進歩性を否定することはできない。
6.甲4を主引例とする取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)についての判断
(1)訂正発明3について
ア 対比
訂正発明3と甲4発明1とを対比する。
甲4発明1のHEMA及びGDMAは、それぞれ、ヒドロキシエチルメタクリレート、グリセロールジメタクリレートを意味するものであるから、訂正発明3の「(a)1種以上のラジカル重合性化合物である(メタ)アクリラート又は(メタ)アクリルアミドモノマー」に相当する。
甲4発明1の「CPQ」は、カンファーキノンを意味するものであるから、訂正発明3の「(b)(i)300~800nmの範囲に光吸収極大を有する光開始剤化合物であって、1,2-ジケトンである光開始剤化合物」に相当する。
甲4発明1の「ベンゼンスルフィン酸ナトリウム」は、訂正発明3の
「下記式(I):
(R-SOx-)yMy+ (I)
[式中、
Rは、芳香族又は脂肪族有機部分を表わし My+は、歯科用組成物に適したカチオンであって、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は下記式(II):
R1-I+-R2 (II)
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、1~6個の炭素原子を有する1つ以上の直鎖もしくは分岐鎖アルコキシ基により置換されていてもよいフェニル基を表わす]
で示されるヨードニウムイオンであり、
xは、3であり、
yは、1~4の整数である。]
で示されるスルホナート化合物」と、共開始剤化合物である点で一致する。
甲4発明1の「光硬化型歯科用ガラスイオノマーセメント組成物」は、訂正発明3の「光硬化型歯科用組成物」に相当する。
そうすると、甲4発明1の「CPQ」と「ベンゼンスルフィン酸ナトリウム」とを含むペーストIIの混練物である「光硬化型歯科用ガラスイオノマーセメント組成物」と、訂正発明3の「光硬化型歯科用組成物」とは、「光開始剤化合物と共開始剤化合物を含有する重合開始剤系」を含む「歯科用組成物」である点で一致する。
そうすると、訂正発明3と甲4発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「(a)1種以上のラジカル重合性化合物である(メタ)アクリラート又は(メタ)アクリルアミドモノマーと、
(b)
(i)300~800nmの範囲に光吸収極大を有する光開始剤化合物であって、1,2-ジケトンである光開始剤化合物、
及び
(ii)共開始剤化合物を含有する重合開始剤系とを含む、光硬化型歯科用組成物。」
<相違点>
相違点4-A 共開始剤化合物について、訂正発明3は「下記式(I):
(R-SOx-)yMy+ (I)
[式中、
Rは、芳香族又は脂肪族有機部分を表わし My+は、歯科用組成物に適したカチオンであって、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は下記式(II):
R1-I+-R2 (II)
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、1~6個の炭素原子を有する1つ以上の直鎖もしくは分岐鎖アルコキシ基により置換されていてもよいフェニル基を表わす]
で示されるヨードニウムイオンであり、
xは、3であり、
yは、1~4の整数である。]
で示されるスルホナート化合物」であるのに対し、甲4発明1は「ベンゼンスルフィン酸ナトリウム」である点。
イ 相違点4-Aについての判断
甲4発明1の「ベンゼンスルフィン酸ナトリウム」は、訂正発明3の式(I)におけるxが2であるスルフィナート化合物であるから、訂正発明3の「スルホナート化合物」とは化学構造からみて異なる化合物であることは明らかである。
そうすると、相違点4-Aは実質的な相違点であるから、訂正発明3は甲第4号証に記載された発明ではない。
また、甲1~8には、(メタ)アクリラート又は(メタ)アクリルアミドモノマーと、1,2-ジケトンである光開始剤化合物及び共開始剤化合物を含有する重合開始系とを含む光硬化型歯科用組成物における共開始剤化合物として、スルフィナート化合物に代えて、本願所定の「スルホナート化合物」を用いる態様について記載も示唆もない。
そうすると、甲4発明1において、甲4に記載された光硬化型歯科用ガラスイオノマーセメント組成物に用いられる共開始剤化合物であるスルフィナート化合物とは構造が異なり例示もされていないスルホナート化合物を採用して、相違点4-Aの発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
よって、訂正発明3は、甲第4号証に記載された発明ではなく、甲4発明1及び甲1~8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(2)訂正発明15について
ア 対比
訂正発明15と甲4発明2とを対比する。
甲4発明2の「CPQ」は、カンファーキノンを意味するものであるから、訂正発明15の「(i)300~800nmの範囲に光吸収極大を有する光開始剤化合物であって、1,2-ジケトンである光開始剤化合物」に相当する。
甲4発明2の「ベンゼンスルフィン酸ナトリウム」は、訂正発明15の
「下記式(I):
(R-SOx-)yMy+ (I)
[式中、
Rは、芳香族又は脂肪族有機部分を表わし My+は、歯科用組成物に適したカチオンであって、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は下記式(II):
R1-I+-R2 (II)
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、1~6個の炭素原子を有する1つ以上の直鎖もしくは分岐鎖アルコキシ基により置換されていてもよいフェニル基を表わす]
で示されるヨードニウムイオンであり、
xは、3であり、
yは、1~4の整数である。]
で示されるスルホナート化合物」と、共開始剤化合物である点で一致する。
甲4発明2の「光硬化型歯科用ガラスイオノマーセメント組成物」は、訂正発明15の「光硬化型歯科用組成物」に相当する。
そうすると、甲4発明2の「光硬化型歯科用ガラスイオノマーセメント組成物」における「CPQ」と「ベンゼンスルフィン酸ナトリウム」とを含むペーストIIの混練物の使用は、訂正発明15の光硬化型歯科用組成物における「光開始剤化合物」と「共開始剤化合物」とを含有する重合開始剤系の使用に相当するから、訂正発明3と甲4発明2との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「光硬化型歯科用組成物における、
(i)300~800nmの範囲に光吸収極大を有する光開始剤化合物であって、1,2-ジケトンである光開始剤化合物と、
(ii)共開始剤化合物とを含有する、重合開始剤系の使用。」
<相違点>
相違点4-B 共開始剤化合物について、訂正発明15は「下記式(I):
(R-SOx-)yMy+ (I)
[式中、
Rは、芳香族又は脂肪族有機部分を表わし、
My+は、歯科用組成物に適したカチオンであって、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は下記式(II):
R1-I+-R2 (II)
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、1~6個の炭素原子を有する1つ以上の直鎖もしくは分岐鎖アルコキシ基により置換されていてもよいフェニル基を表わす]
で示されるヨードニウムイオンであり、
xは、3であり、
yは、1~4の整数である。]
で示されるスルホナート化合物」であるのに対し、甲4発明2は「ベンゼンスルフィン酸ナトリウム」である点。
イ 相違点4-Bについての判断
相違点4-Bは、相違点4-Aと実質的に同じである。
そうすると、上記(1)において説示したように、相違点4-Bは実質的な相違点であるから、訂正発明15は、甲第4号証に記載された発明ではなく、甲4発明2及び甲1~8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)訂正発明4~12、16、17について
訂正発明4~12又は訂正発明16、17は、訂正発明3又は訂正発明15をさらに限定したものであるから、上記(1)及び(2)で検討したのと同様の理由により、甲4発明1又は甲4発明2に基づいて新規性及び進歩性を否定することはできない。
7.甲5を主引例とする取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)についての判断
(1)訂正発明3について
ア 対比
訂正発明3と甲5発明1とを対比する。
甲5発明1の「2,2-ビス[4-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキンプロポキシ)フェニル]プロパン」、「1,6-ビスメタクリルアミドヘキサン」、「2-ヒドロキシエチルメタクリレート」は、訂正発明3の「(a)1種以上のラジカル重合性化合物である(メタ)アクリラート又は(メタ)アクリルアミドモノマー」に相当する。
甲5発明1の「カンファーキノン」は、訂正発明3の「(b)(i)300~800nmの範囲に光吸収極大を有する光開始剤化合物であって、1,2-ジケトンである光開始剤化合物」に相当する。
甲5発明1の「2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム塩」は、訂正発明3の
「下記式(I):
(R-SOx-)yMy+ (I)
[式中、
Rは、芳香族又は脂肪族有機部分を表わし My+は、歯科用組成物に適したカチオンであって、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は下記式(II):
R1-I+-R2 (II)
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、1~6個の炭素原子を有する1つ以上の直鎖もしくは分岐鎖アルコキシ基により置換されていてもよいフェニル基を表わす]
で示されるヨードニウムイオンであり、
xは、3であり、
yは、1~4の整数である。]
で示されるスルホナート化合物」と、共開始剤化合物である点で一致する。
そうすると、甲5発明1の「カンファーキノン」と「2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム塩」とを含む「光硬化型歯科用組成物」と、訂正発明3の「光開始剤化合物と共開始剤化合物を含有する重合開始剤系」を含む「光硬化型歯科用組成物」とは、「光開始剤化合物と共開始剤化合物を含有する重合開始剤系」を含む「歯科用組成物」である点で一致する。
そうすると、訂正発明3と甲5発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「(a)1種以上のラジカル重合性化合物である(メタ)アクリラート又は(メタ)アクリルアミドモノマーと、
(b)
(i)300~800nmの範囲に光吸収極大を有する光開始剤化合物であって、1,2-ジケトンである光開始剤化合物、
及び
(ii)共開始剤化合物を含有する重合開始剤系とを含む、光硬化型歯科用組成物。」
<相違点>
相違点5-A 共開始剤化合物について、訂正発明3は「下記式(I):
(R-SOx-)yMy+ (I)
[式中、
Rは、芳香族又は脂肪族有機部分を表わし My+は、歯科用組成物に適したカチオンであって、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は下記式(II):
R1-I+-R2 (II)
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、1~6個の炭素原子を有する1つ以上の直鎖もしくは分岐鎖アルコキシ基により置換されていてもよいフェニル基を表わす]
で示されるヨードニウムイオンであり、
xは、3であり、
yは、1~4の整数である。]
で示されるスルホナート化合物」であるのに対し、甲5発明1は「2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム塩」である点。
イ 相違点5-Aについての判断
甲5発明1の「2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム塩」は、訂正発明3の式(I)におけるxが2であるスルフィナート化合物であるから、訂正発明3の「スルホナート化合物」とは化学構造からみて異なる化合物であることは明らかである。
そうすると、相違点5-Aは実質的な相違点であるから、訂正発明3は甲第5号証に記載された発明ではない。
また、甲1~8には、(メタ)アクリラート又は(メタ)アクリルアミドモノマーと、1,2-ジケトンである光開始剤化合物及び共開始剤化合物を含有する重合開始系とを含む光硬化型歯科用組成物における共開始剤化合物として、スルフィナート化合物に代えて、本願所定の「スルホナート化合物」を用いる態様について記載も示唆もない。
そうすると、甲5発明1において、甲5に記載された光硬化型歯科用組成物に用いられる共開始剤化合物であるスルフィナート化合物とは構造が異なり例示もされていないスルホナート化合物を採用して、相違点5-Aの発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
よって、訂正発明3は、甲第5号証に記載された発明ではなく、甲5発明1及び甲1~8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(2)訂正発明15について
ア 対比
訂正発明15と甲5発明2とを対比する。
甲5発明2の「カンファーキノン」は、訂正発明15の「(i)300~800nmの範囲に光吸収極大を有する光開始剤化合物であって、1,2-ジケトンである光開始剤化合物」に相当する。
甲5発明2の「2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム塩」は、訂正発明15の
「下記式(I):
(R-SOx-)yMy+ (I)
[式中、
Rは、芳香族又は脂肪族有機部分を表わし My+は、歯科用組成物に適したカチオンであって、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は下記式(II):
R1-I+-R2 (II)
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、1~6個の炭素原子を有する1つ以上の直鎖もしくは分岐鎖アルコキシ基により置換されていてもよいフェニル基を表わす]
で示されるヨードニウムイオンであり、
xは、3であり、
yは、1~4の整数である。]
で示されるスルホナート化合物」と、共開始剤化合物である点で一致する。
そうすると、甲5発明2の光硬化型歯科用組成物における「カンファーキノン」と「2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム塩」の使用は、訂正発明15の光硬化型歯科用組成物における「光開始剤化合物」と「共開始剤化合物」とを含有する重合開始剤系の使用に相当するから、訂正発明3と甲5発明2との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「光硬化型歯科用組成物における、
(i)300~800nmの範囲に光吸収極大を有する光開始剤化合物であって、1,2-ジケトンである光開始剤化合物と、
(ii)共開始剤化合物とを含有する、重合開始剤系の使用。」
<相違点>
相違点5-B 共開始剤化合物について、訂正発明15は「下記式(I):
(R-SOx-)yMy+ (I)
[式中、
Rは、芳香族又は脂肪族有機部分を表わし、
My+は、歯科用組成物に適したカチオンであって、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は下記式(II):
R1-I+-R2 (II)
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、1~6個の炭素原子を有する1つ以上の直鎖もしくは分岐鎖アルコキシ基により置換されていてもよいフェニル基を表わす]
で示されるヨードニウムイオンであり、
xは、3であり、
yは、1~4の整数である。]
で示されるスルホナート化合物」であるのに対し、甲5発明2は「2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム塩」である点。
イ 相違点5-Bについての判断
相違点5-Bは、相違点5-Aと実質的に同じである。
そうすると、上記(1)において説示したように、相違点5-Bは実質的な相違点であるから、訂正発明15は、甲第5号証に記載された発明ではなく、甲5発明2及び甲1~8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)訂正発明4~12、16、17について
訂正発明4~12又は訂正発明16、17は、訂正発明3又は訂正発明15をさらに限定したものであるから、上記(1)及び(2)で検討したのと同様の理由により、甲5発明1又は甲5発明2に基づいて新規性及び進歩性を否定することはできない。
8.甲6を主引例とする取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)についての判断
(1)訂正発明3について
ア 対比
訂正発明3と甲6発明1とを対比する。
甲6発明1の「(A)1,3-グリセリルジメタクリレートホスフェート」、「(B)プロポキシル化ビスフェノールAジメタクリレート」、「(B)トリエチレングリコールジメタクリレート」は、訂正発明3の「(a)1種以上のラジカル重合性化合物である(メタ)アクリラート又は(メタ)アクリルアミドモノマー」に相当する。
甲6発明1の「(D)カンファーキノン」は、訂正発明3の「(b)(i)300~800nmの範囲に光吸収極大を有する光開始剤化合物であって、1,2-ジケトンである光開始剤化合物」に相当する。
甲6発明1の「(D)トルエンスルフィン酸ナトリウム」は、訂正発明3の
「下記式(I):
(R-SOx-)yMy+ (I)
[式中、
Rは、芳香族又は脂肪族有機部分を表わし My+は、歯科用組成物に適したカチオンであって、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は下記式(II):
R1-I+-R2 (II)
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、1~6個の炭素原子を有する1つ以上の直鎖もしくは分岐鎖アルコキシ基により置換されていてもよいフェニル基を表わす]
で示されるヨードニウムイオンであり、
xは、3であり、
yは、1~4の整数である。]
で示されるスルホナート化合物」と、共開始剤化合物である点で一致する。
そうすると、甲6発明1の「(D)トルエンスルフィン酸ナトリウム」を含む粉体と「(D)カンファーキノン」を含む液体とを含む光硬化型歯科用セメント組成物と、訂正発明3の「光開始剤化合物と共開始剤化合物を含有する重合開始剤系」を含む「光硬化型歯科用組成物」とは、「光開始剤化合物と共開始剤化合物を含有する重合開始剤系」を含む「歯科用組成物」である点で一致する。
そうすると、訂正発明3と甲6発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「(a)1種以上のラジカル重合性化合物である(メタ)アクリラート又は(メタ)アクリルアミドモノマーと、
(b)
(i)300~800nmの範囲に光吸収極大を有する光開始剤化合物であって、1,2-ジケトンである光開始剤化合物、
及び
(ii)共開始剤化合物を含有する重合開始剤系とを含む、光硬化型歯科用組成物。」
<相違点>
相違点6-A 共開始剤化合物について、訂正発明3は「下記式(I):
(R-SOx-)yMy+ (I)
[式中、
Rは、芳香族又は脂肪族有機部分を表わし My+は、歯科用組成物に適したカチオンであって、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は下記式(II):
R1-I+-R2 (II)
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、1~6個の炭素原子を有する1つ以上の直鎖もしくは分岐鎖アルコキシ基により置換されていてもよいフェニル基を表わす]
で示されるヨードニウムイオンであり、
xは、3であり、
yは、1~4の整数である。]
で示されるスルホナート化合物」であるのに対し、甲6発明1は「(D)トルエンスルフィン酸ナトリウム」である点。
イ 相違点6-Aについての判断
甲6発明1の「(D)トルエンスルフィン酸ナトリウム」は、訂正発明3の式(I)におけるxが2であるスルフィナート化合物であるから、訂正発明3の「スルホナート化合物」とは化学構造からみて異なる化合物であることは明らかである。
そうすると、相違点6-Aは実質的な相違点であるから、訂正発明3は甲第6号証に記載された発明ではない。
また、甲1~8には、(メタ)アクリラート又は(メタ)アクリルアミドモノマーと、1,2-ジケトンである光開始剤化合物及び共開始剤化合物を含有する重合開始系とを含む光硬化型歯科用組成物における共開始剤化合物として、スルフィナート化合物に代えて、本願所定の「スルホナート化合物」を用いる態様について記載も示唆もない。
そうすると、甲6発明1において、甲6に記載された光硬化型歯科用組成物に用いられる共開始剤化合物であるスルフィナート化合物とは構造が異なり例示もされていないスルホナート化合物を採用して、相違点6-Aの発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
よって、訂正発明3は、甲第6号証に記載された発明ではなく、甲6発明1及び甲1~8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(2)訂正発明15について
ア 対比
訂正発明15と甲6発明2とを対比する。
甲6発明2の「(D)カンファーキノン」は、訂正発明15の「(i)300~800nmの範囲に光吸収極大を有する光開始剤化合物であって、1,2-ジケトンである光開始剤化合物」に相当する。
甲6発明2の「(D)トルエンスルフィン酸ナトリウム」は、訂正発明15の
「下記式(I):
(R-SOx-)yMy+ (I)
[式中、
Rは、芳香族又は脂肪族有機部分を表わし My+は、歯科用組成物に適したカチオンであって、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は下記式(II):
R1-I+-R2 (II)
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、1~6個の炭素原子を有する1つ以上の直鎖もしくは分岐鎖アルコキシ基により置換されていてもよいフェニル基を表わす]
で示されるヨードニウムイオンであり、
xは、3であり、
yは、1~4の整数である。]
で示されるスルホナート化合物」と、共開始剤化合物である点で一致する。
甲6発明2の「光硬化型歯科用セメント組成物」は、訂正発明15の「光硬化型歯科用組成物」に相当する。
そうすると、甲6発明2の「光硬化型歯科用セメント組成物」における「(D)カンファーキノン」と「(D)トルエンスルフィン酸ナトリウム」の使用は、訂正発明15の光硬化型歯科用組成物における「光開始剤化合物」と「共開始剤化合物」とを含有する重合開始剤系の使用に相当するから、訂正発明3と甲6発明2との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「光硬化型歯科用組成物における、
(i)300~800nmの範囲に光吸収極大を有する光開始剤化合物であって、1,2-ジケトンである光開始剤化合物と、
(ii)共開始剤化合物とを含有する、重合開始剤系の使用。」
<相違点>
相違点6-B 共開始剤化合物について、訂正発明15は「下記式(I):
(R-SOx-)yMy+ (I)
[式中、
Rは、芳香族又は脂肪族有機部分を表わし、
My+は、歯科用組成物に適したカチオンであって、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は下記式(II):
R1-I+-R2 (II)
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、1~6個の炭素原子を有する1つ以上の直鎖もしくは分岐鎖アルコキシ基により置換されていてもよいフェニル基を表わす]
で示されるヨードニウムイオンであり、
xは、3であり、
yは、1~4の整数である。]
で示されるスルホナート化合物」であるのに対し、甲6発明2は「(D)トルエンスルフィン酸ナトリウム」である点。
イ 相違点6-Bについての判断
相違点6-Bは、相違点6-Aと実質的に同じである。
そうすると、上記(1)において説示したように、相違点6-Bは実質的な相違点であるから、訂正発明15は、甲第6号証に記載された発明ではなく、甲6発明2及び甲1~8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)訂正発明4~12、16、17について
訂正発明4~12又は訂正発明16、17は、訂正発明3又は訂正発明15をさらに限定したものであるから、上記(1)及び(2)で検討したのと同様の理由により、甲6発明1又は甲6発明2に基づいて新規性及び進歩性を否定することはできない。
9.甲7を主引例とする取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)についての判断
(1)訂正発明3について
ア 対比
訂正発明3と甲7発明1とを対比する。
甲7発明1の「D-2.6E(2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン)」、「NPG(ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート)」、「Bis-GMA(2,2-ビス〔4-(3-メタクリロイルオキシ)-2-ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパン)」、「MDP(10-メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート)」は、訂正発明3の「(a)1種以上のラジカル重合性化合物である(メタ)アクリラート又は(メタ)アクリルアミドモノマー」に相当する。
甲7発明1の「CQ(dl-カンファーキノン)」は、訂正発明3の「(b)(i)300~800nmの範囲に光吸収極大を有する光開始剤化合物であって、1,2-ジケトンである光開始剤化合物」に相当する。
甲7発明1の「TPBSS(2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム)」は、訂正発明3の
「下記式(I):
(R-SOx-)yMy+ (I)
[式中、
Rは、芳香族又は脂肪族有機部分を表わし My+は、歯科用組成物に適したカチオンであって、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は下記式(II):
R1-I+-R2 (II)
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、1~6個の炭素原子を有する1つ以上の直鎖もしくは分岐鎖アルコキシ基により置換されていてもよいフェニル基を表わす]
で示されるヨードニウムイオンであり、
xは、3であり、
yは、1~4の整数である。]
で示されるスルホナート化合物」と、共開始剤化合物である点で一致する。
そうすると、甲7発明1のCQ(dl-カンファーキノン)を含むAペーストと、TPBSS(2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム)とを含むBペーストの混合物を含む光硬化型歯科用セメント組成物と、訂正発明3の「光開始剤化合物と共開始剤化合物を含有する重合開始剤系」を含む「光硬化型歯科用組成物」とは、「光開始剤化合物と共開始剤化合物を含有する重合開始剤系」を含む「歯科用組成物」である点で一致するから、訂正発明3と甲7発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「(a)1種以上のラジカル重合性化合物である(メタ)アクリラート又は(メタ)アクリルアミドモノマーと、
(b)
(i)300~800nmの範囲に光吸収極大を有する光開始剤化合物であって、1,2-ジケトンである光開始剤化合物、
及び
(ii)共開始剤化合物を含有する重合開始剤系とを含む、光硬化型歯科用組成物。」
<相違点>
相違点7-A 共開始剤化合物について、訂正発明3は「下記式(I):
(R-SOx-)yMy+ (I)
[式中、
Rは、芳香族又は脂肪族有機部分を表わし My+は、歯科用組成物に適したカチオンであって、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は下記式(II):
R1-I+-R2 (II)
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、1~6個の炭素原子を有する1つ以上の直鎖もしくは分岐鎖アルコキシ基により置換されていてもよいフェニル基を表わす]
で示されるヨードニウムイオンであり、
xは、3であり、
yは、1~4の整数である。]
で示されるスルホナート化合物」であるのに対し、甲7発明1は「TPBSS(2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム)」である点。
イ 相違点7-Aについての判断
甲7発明1の「TPBSS(2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム)」は、訂正発明3の式(I)におけるxが2であるスルフィナート化合物であるから、訂正発明3の「スルホナート化合物」とは化学構造からみて異なる化合物であることは明らかである。
そうすると、相違点7-Aは実質的な相違点であるから、訂正発明3は甲第7号証に記載された発明ではない。
また、甲1~8には、(メタ)アクリラート又は(メタ)アクリルアミドモノマーと、1,2-ジケトンである光開始剤化合物及び共開始剤化合物を含有する重合開始系とを含む光硬化型歯科用組成物における共開始剤化合物として、スルフィナート化合物に代えて、本願所定の「スルホナート化合物」を用いる態様について記載も示唆もない。
そうすると、甲7発明1において、甲7に記載された光硬化型歯科用セメント組成物に用いられる共開始剤化合物であるスルフィナート化合物とは構造が異なり例示もされていないスルホナート化合物を採用して、相違点7-Aの発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
よって、訂正発明3は、甲第7号証に記載された発明ではなく、甲7発明1及び甲1~8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(2)訂正発明15について
ア 対比
訂正発明15と甲7発明2とを対比する。
甲7発明2の「CQ(dl-カンファーキノン)」は、訂正発明15の「(i)300~800nmの範囲に光吸収極大を有する光開始剤化合物であって、1,2-ジケトンである光開始剤化合物」に相当する。
甲7発明2の「TPBSS(2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム)」は、訂正発明15の
「下記式(I):
(R-SOx-)yMy+ (I)
[式中、
Rは、芳香族又は脂肪族有機部分を表わし My+は、歯科用組成物に適したカチオンであって、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は下記式(II):
R1-I+-R2 (II)
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、1~6個の炭素原子を有する1つ以上の直鎖もしくは分岐鎖アルコキシ基により置換されていてもよいフェニル基を表わす]
で示されるヨードニウムイオンであり、
xは、3であり、
yは、1~4の整数である。]
で示されるスルホナート化合物」と、共開始剤化合物である点で一致する。
甲7発明2の「光硬化型歯科用セメント組成物」は、訂正発明15の「光硬化型歯科用組成物」に相当する。
そうすると、甲7発明2の「光硬化型歯科用セメント組成物」における「CQ(dl-カンファーキノン)」を含むAペーストと「TPBSS(2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム)」を含むBペーストとの混合物の使用は、訂正発明15の光硬化型歯科用組成物における「光開始剤化合物」と「共開始剤化合物」とを含有する重合開始剤系の使用に相当するから、訂正発明15と甲7発明2との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「光硬化型歯科用組成物における、
(i)300~800nmの範囲に光吸収極大を有する光開始剤化合物であって、1,2-ジケトンである光開始剤化合物と、
(ii)共開始剤化合物とを含有する、重合開始剤系の使用。」
<相違点>
相違点7-B 共開始剤化合物について、訂正発明15は「下記式(I):
(R-SOx-)yMy+ (I)
[式中、
Rは、芳香族又は脂肪族有機部分を表わし、
My+は、歯科用組成物に適したカチオンであって、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は下記式(II):
R1-I+-R2 (II)
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、1~6個の炭素原子を有する1つ以上の直鎖もしくは分岐鎖アルコキシ基により置換されていてもよいフェニル基を表わす]
で示されるヨードニウムイオンであり、
xは、3であり、
yは、1~4の整数である。]
で示されるスルホナート化合物」であるのに対し、甲7発明2は「TPBSS(2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム)」である点。
イ 相違点7-Bについての判断
相違点7-Bは、相違点7-Aと実質的に同じである。
そうすると、上記(1)において説示したように、相違点7-Bは実質的な相違点であるから、訂正発明15は、甲第7号証に記載された発明ではなく、甲7発明2及び甲1~8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)訂正発明4~12、16、17について
訂正発明4~12又は訂正発明16、17は、訂正発明3又は訂正発明15をさらに限定したものであるから、上記(1)及び(2)で検討したのと同様の理由により、甲7発明1又は甲7発明2に基づいて新規性及び進歩性を否定することはできない。
10.甲8を主引例とする取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)についての判断
(1)訂正発明3について
ア 対比
訂正発明3と甲8発明1とを対比する。
甲8発明1の「MDP(10-メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート)」、「4META(4-メタクリロキシエチルトリメリット酸無水物)」、「TEGDMA(トリエチレングリコールジメタクリレート)」、「GDMA(2-ヒドロキシ-1,3-ジメタクリロキシプロパン)」、「UDMA(ジ-2-メタクリロキシエチル-2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジカルバメート)」は、訂正発明3の「(a)1種以上のラジカル重合性化合物である(メタ)アクリラート又は(メタ)アクリルアミドモノマー」に相当する。
甲8発明1の「CQ(カンファーキノン)」は、訂正発明3の「(b)(i)300~800nmの範囲に光吸収極大を有する光開始剤化合物であって、1,2-ジケトンである光開始剤化合物」に相当する。
甲8発明1の「pTSNa(p-トルエンスルフィン酸ナトリウム・四水和物)」は、訂正発明3の
「下記式(I):
(R-SOx-)yMy+ (I)
[式中、
Rは、芳香族又は脂肪族有機部分を表わし My+は、歯科用組成物に適したカチオンであって、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は下記式(II):
R1-I+-R2 (II)
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、1~6個の炭素原子を有する1つ以上の直鎖もしくは分岐鎖アルコキシ基により置換されていてもよいフェニル基を表わす]
で示されるヨードニウムイオンであり、
xは、3であり、
yは、1~4の整数である。]
で示されるスルホナート化合物」と、共開始剤化合物である点で一致する。
そうすると、甲8発明1のCQ(カンファーキノン)を含む液剤とpTSNa(p-トルエンスルフィン酸ナトリウム・四水和物)を含む粉剤との練和物を含む光硬化型歯科用セメント組成物は、訂正発明3の「光開始剤化合物と共開始剤化合物を含有する重合開始剤系」を含む「光硬化型歯科用組成物」に相当するから、訂正発明3と甲8発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「(a)1種以上のラジカル重合性化合物である(メタ)アクリラート又は(メタ)アクリルアミドモノマーと、
(b)
(i)300~800nmの範囲に光吸収極大を有する光開始剤化合物であって、1,2-ジケトンである光開始剤化合物、
及び
(ii)共開始剤化合物を含有する重合開始剤系とを含む、光硬化型歯科用組成物。」
<相違点>
相違点8-A 共開始剤化合物について、訂正発明3は「下記式(I):
(R-SOx-)yMy+ (I)
[式中、
Rは、芳香族又は脂肪族有機部分を表わし My+は、歯科用組成物に適したカチオンであって、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は下記式(II):
R1-I+-R2 (II)
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、1~6個の炭素原子を有する1つ以上の直鎖もしくは分岐鎖アルコキシ基により置換されていてもよいフェニル基を表わす]
で示されるヨードニウムイオンであり、
xは、3であり、
yは、1~4の整数である。]
で示されるスルホナート化合物」であるのに対し、甲8発明1は「pTSNa(p-トルエンスルフィン酸ナトリウム・四水和物)」である点。
イ 相違点8-Aについての判断
甲8発明1の「pTSNa(p-トルエンスルフィン酸ナトリウム・四水和物)」は、訂正発明3の式(I)におけるxが2であるスルフィナート化合物であるから、訂正発明3の「スルホナート化合物」とは化学構造からみて異なる化合物であることは明らかである。
そうすると、相違点8-Aは実質的な相違点であるから、訂正発明3は甲第8号証に記載された発明ではない。
また、甲1~8には、(メタ)アクリラート又は(メタ)アクリルアミドモノマーと、1,2-ジケトンである光開始剤化合物及び共開始剤化合物を含有する重合開始系とを含む光硬化型歯科用組成物における共開始剤化合物として、スルフィナート化合物に代えて、本願所定の「スルホナート化合物」を用いる態様について記載も示唆もない。
そうすると、甲8発明1において、甲8に記載された光硬化型歯科用セメント組成物に用いられる共開始剤化合物であるスルフィナート化合物とは構造が異なり例示もされていないスルホナート化合物を採用して、相違点8-Aの発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
よって、訂正発明3は、甲第8号証に記載された発明ではなく、甲8発明1及び甲1~8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(2)訂正発明15について
ア 対比
訂正発明15と甲8発明2とを対比する。
甲8発明2の「CQ(カンファーキノン)」は、訂正発明15の「(i)300~800nmの範囲に光吸収極大を有する光開始剤化合物であって、1,2-ジケトンである光開始剤化合物」に相当する。
甲8発明2の「pTSNa(p-トルエンスルフィン酸ナトリウム・四水和物)」は、訂正発明15の
「下記式(I):
(R-SOx-)yMy+ (I)
[式中、
Rは、芳香族又は脂肪族有機部分を表わし My+は、歯科用組成物に適したカチオンであって、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は下記式(II):
R1-I+-R2 (II)
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、1~6個の炭素原子を有する1つ以上の直鎖もしくは分岐鎖アルコキシ基により置換されていてもよいフェニル基を表わす]
で示されるヨードニウムイオンであり、
xは、3であり、
yは、1~4の整数である。]
で示されるスルホナート化合物」と、共開始剤化合物である点で一致する。
甲8発明2の「光硬化型歯科用セメント組成物」は、訂正発明15の「光硬化型歯科用組成物」に相当する。
そうすると、甲8発明2の「光硬化型歯科用セメント組成物」における「CQ(カンファーキノン)」を含む液剤と「pTSNa(p-トルエンスルフィン酸ナトリウム・四水和物)」を含む粉剤との練和物の使用は、訂正発明15の光硬化型歯科用組成物における「光開始剤化合物」と「共開始剤化合物」とを含有する重合開始剤系の使用に相当するから、訂正発明15と甲8発明2との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「光硬化型歯科用組成物における、
(i)300~800nmの範囲に光吸収極大を有する光開始剤化合物であって、1,2-ジケトンである光開始剤化合物と、
(ii)共開始剤化合物とを含有する、重合開始剤系の使用。」
<相違点>
相違点8-B 共開始剤化合物について、訂正発明15は「下記式(I):
(R-SOx-)yMy+ (I)
[式中、
Rは、芳香族又は脂肪族有機部分を表わし、
My+は、歯科用組成物に適したカチオンであって、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は下記式(II):
R1-I+-R2 (II)
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、1~6個の炭素原子を有する1つ以上の直鎖もしくは分岐鎖アルコキシ基により置換されていてもよいフェニル基を表わす]
で示されるヨードニウムイオンであり、
xは、3であり、
yは、1~4の整数である。]
で示されるスルホナート化合物」であるのに対し、甲8発明2は「pTSNa(p-トルエンスルフィン酸ナトリウム・四水和物)」である点。
イ 相違点8-Bについての判断
相違点8-Bは、相違点8-Aと実質的に同じである。
そうすると、上記(1)において説示したように、相違点8-Bは実質的な相違点であるから、訂正発明15は、甲第8号証に記載された発明ではなく、甲8発明2及び甲1~8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)訂正発明4~12、16、17について
訂正発明4~12又は訂正発明16、17は、訂正発明3又は訂正発明15をさらに限定したものであるから、上記(1)及び(2)で検討したのと同様の理由により、甲8発明1又は甲8発明2に基づいて新規性及び進歩性を否定することはできない。
11.特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、訂正発明3、15に関して、本件明細書においては、式(I)におけるカチオンMy+が、式(II)で示されるヨードニウムイオンの場合に、アルカリ金属の場合及びアルカリ土類金属の場合と比較して格別の効果を奏することの記載もないから、甲1~8発明において共開始剤化合物を訂正発明3、15のものとすることは単なる設計事項に過ぎず、甲1~8発明において当業者が容易に想到できたものである旨主張している(申立書86、87、111、112頁)。
しかしながら、上記3~10の(1)及び(2)で説示したとおり、訂正発明3、15の式(I)で示されるスルホナート化合物は、その効果にかかわらず、甲1~8の記載から容易に想到できるものではないから、特許異議申立人の主張を採用することができない。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議の申立ての理由について
特許異議申立人が特許異議申立書において申し立てた理由の概要、証拠方法は、次のとおりである。
(特許法第29条第1項第3号)
請求項1、4、5、13、16に係る発明は、甲1~甲8に記載された発明であり、請求項6、7に係る発明は、甲1~甲3、甲5~甲8に記載された発明であり、請求項8、9に係る発明は、甲4に記載された発明であり、請求項10に係る発明は、甲2、甲3、甲6及び甲8に記載された発明であり、請求項11、17に係る発明は、甲1、甲3~甲8に記載された発明であり、請求項12に係る発明は、甲1、甲7及び甲8に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、請求項1、4~13、16、17に係る特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第1項第2号に該当し取り消されるべきものである(以下「申立理由1」という。)。
(特許法第29条第2項)
請求項2、3、14、15に係る発明は、甲1~甲8に記載された発明に基いて、請求項6、7に係る発明は、甲4に記載された発明に基いて、請求項8、9に係る発明は、甲1~甲8に記載された発明に基いて、請求項10に係る発明は、甲1及び甲7に記載された発明に基いて又は甲1~甲8に記載された発明に基いて、請求項11、17に係る発明は、甲1~甲8に記載された発明に基いて、請求項12に係る発明は、甲1~甲8に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、請求項2、3、6~12、14、15、17に係る特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第1項第2号に該当し取り消されるべきものである(以下「申立理由2」という。)。
上記第1に述べたとおり、訂正の請求があった旨の令和5年6月16日付け通知書に対し、特許異議申立人から意見書は提出されなかった。そこで、以下においては、訂正発明1~17について本件訂正前の請求項1~17についてした申立理由を主張するものとして検討する。
1.申立理由1及び2について
申立理由1について、取消理由通知において採用しなかった特許異議の申立ての理由は、甲4に対する請求項8、9、甲2、甲3、甲6及び甲8に対する請求項10の新規性欠如である。
申立理由2について、取消理由通知において採用しなかった特許異議の申立ての理由は、甲1~甲8に基づく請求項3、15の進歩性欠如である。
2.当審の判断
上記第4において、訂正発明3~12、15~17は、甲1~甲8に記載された発明ではなく、甲1~甲8に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもないことを説示した。
したがって、取消理由通知において採用しなかった特許異議の申立ての理由についての判断についても、上記第4に示したとおりである。
第6 むすび
本件特許の請求項3~12、15~17に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由1、2及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項3~12、15~17に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件特許の請求項1、2、13及び14に係る発明の特許は、訂正により削除され、特許異議の申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-701281