特許異議申立
2023-701296
歯科用硬化性組成物及びその製造方法
- 審判番号
- 2023-701296
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-562455
- 登録番号
- 7288462
- 請求日
- 2023年12月07日
- 審決日
- 2024年09月11日
- 公報発行日
- 2024年12月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】クラレノリタケデンタル株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人青藍国際特許事務所
- 【権利者代理人】鎌田 耕一
- 【権利者代理人】田村 康晃
- 【異議申立人】中丸 剛
- 審判長/審判官
- 審判長 前田 佳与子
- 審判官 原田 隆興
- 審判官 岩下 直人
- 分類
- P1651.113-YAA(A61K) / P1651.121-YAA(A61K) / P1651.536-YAA(A61K) / P1651.537-YAA(A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7288462号発明「歯科用硬化性組成物及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7288462号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。
特許第7288462号の請求項1~9に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7288462号(以下「本件特許」という。)に係る特許出願(特願2020-562455号)は、2019(平成元)年12月26日(優先権主張:2018年12月27日、日本国(JP))を国際出願日とする出願であって、令和5年5月30日に設定の登録(請求項の数:9)がなされ、同年6月7日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、令和5年12月7日に、本件請求項1~9に係る特許に対し、特許異議申立人 中丸 剛(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがなされ、当審は令和6年3月22日付けで取消理由を通知し、特許権者は同年5月27日に訂正請求書及び意見書を提出し、当審は申立人に同年6月5日付けで訂正請求があった旨の通知をしたが、申立人は意見書を提出しなかった。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和6年5月27日に提出された訂正請求書による訂正を「本件訂正」という。
本件訂正は、一群の請求項〔1~9〕についてするものであり、その訂正の内容は、以下のとおりである。なお、下線は、訂正箇所を示す。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、
「無機充填材(A)、重合性単量体(B)及び加熱重合開始剤(C)を含み、
前記重合性単量体(B)が、粘度が300mPa・s/25℃以上1500000mPa・s/25℃以下である重合性単量体(B-1)を含み、さらに必要に応じて粘度が1mPa・s/25℃以上300mPa・s/25℃未満である重合性単量体(B-2)を含み、
前記重合性単量体(B-1)と、前記重合性単量体(B-2)との質量比が、90:10~100:0であり、
前記加熱重合開始剤(C)の10時間半減期温度(τ)が90~170℃である、歯科用硬化性組成物。」と記載されているのを、
「無機充填材(A)、重合性単量体(B)及び加熱重合開始剤(C)を含み、
前記重合性単量体(B)が、粘度が1000mPa・s/25℃以上100000mPa・s/25℃以下である重合性単量体(B-1)を含み、さらに必要に応じて粘度が1mPa・s/25℃以上300mPa・s/25℃未満である重合性単量体(B-2)を含み、
前記重合性単量体(B-1)と、前記重合性単量体(B-2)との質量比が、90:10~100:0であり、
前記無機充填材(A)の含有量が、前記重合性単量体(B)100質量部に対して、100~600質量部であり、
前記加熱重合開始剤(C)の10時間半減期温度(τ)が90~170℃であり、
10時間半減期温度(τ)が90℃より低い加熱重合開始剤を含まない、歯科用硬化性組成物。」に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2において、
「前記重合性単量体(B)100質量部に対して、前記無機充填材(A)が100~600質量部であり、前記加熱重合開始剤(C)が0.1~5質量部である、請求項1に記載の歯科用硬化性組成物。」と記載されているのを、
「前記重合性単量体(B)100質量部に対して、前記無機充填材(A)の含有量が150~550質量部であり、前記加熱重合開始剤(C)が0.1~5質量部である、請求項1に記載の歯科用硬化性組成物。」に訂正する。
(3)一群の請求項について
訂正前の請求項1~9について、請求項2~9は、請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~9に対応する訂正後の請求項1~9は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
2 訂正の適否について
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、重合性単量体(B-1)に係る粘度を減縮し、無機充填材(A)の配合割合を規定し、歯科用硬化性組成物として、10時間半減期温度(τ)が90℃より低い加熱重合開始剤を含まないものに減縮するものである。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の限縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アから明らかなように、訂正事項1は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではない。また、訂正事項1に係る訂正は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1は、本件明細書の段落【0041】の「本発明における加熱重合開始剤(C)は、10時間半減期温度(τ)が90~170℃であることが重要である。・・・10時間半減期温度(τ)が90℃より低い場合、高粘度な重合性単量体(B)を用いた場合に十分な重合率が得られず機械的強度が低下する恐れがある。一方、170℃より高い場合、熱による劣化によって硬化物の機械的強度の低下及び黄変が生じる恐れがある。」との記載に基づいて、歯科用硬化性組成物において10時間半減期温度(τ)が90℃より低い加熱重合開始剤を含まないように減縮するものである。
また、本件明細書の段落【0020】の「本発明における無機充填材(A)の含有量としては、重合性単量体(B)100質量部に対して、100~600質量部が好ましく、・・・。」との記載に基づいて、無機充填材(A)の配合割合を規定するものである。
さらに、訂正事項1は、本件明細書の段落【0034】の「本発明で用いられる重合性単量体(B)において、粘度が300mPa・s/25℃以上1500000mPa・s/25℃以下である重合性単量体(B-1)(以下、単に重合性単量体(B-1)と称することがある)と、粘度が1mPa・s/25℃以上300mPa・s/25℃未満である重合性単量体(B-2)(以下、単に重合性単量体(B-2)と称することがある)との質量比が、90:10~100:0である。・・・重合性単量体(B-1)の粘度の好ましい範囲としては、300~1000000mPa・s/25℃が好ましく、300~500000mPa・s/25℃がより好ましく、300~100000mPa・s/25℃がさらに好ましく、1000~100000mPa・s/25℃が特に好ましい」との記載に基づいて、重合性単量体(B-1)の粘度の上限値及び下限値を減縮するものである。
エ したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、請求項1の訂正に伴って、無機充填材(A)の配合割合を、さらに減縮するものである。
よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の限縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2は、請求項1に係る訂正事項1に伴って、無機充填材(A)の配合割合をさらに減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2は、本件明細書の段落【0020】の「本発明における無機充填材(A)の含有量としては、重合性単量体(B)100質量部に対して、100~600質量部が好ましく、150~550質量部がより好ましく、・・・。」との記載に基づくものである。
エ したがって、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
3 独立特許要件(特許出願の際に独立して特許を受けることができること)について
本件においては、訂正前の全ての請求項1~9について特許異議申立てがされているので、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
4 まとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められるので、本件請求項1~9に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1~9に記載の事項によって特定される以下のとおりのものであり、「本件発明1~9」、まとめて、「本件発明」ともいう。
「【請求項1】
無機充填材(A)、重合性単量体(B)及び加熱重合開始剤(C)を含み、
前記重合性単量体(B)が、粘度が1000mPa・s/25℃以上100000mPa・s/25℃以下である重合性単量体(B-1)を含み、さらに必要に応じて粘度が1mPa・s/25℃以上300mPa・s/25℃未満である重合性単量体(B-2)を含み、
前記重合性単量体(B-1)と、前記重合性単量体(B-2)との質量比が、90:10~100:0であり、
前記無機充填材(A)の含有量が、前記重合性単量体(B)100質量部に対して、100~600質量部であり、
前記加熱重合開始剤(C)の10時間半減期温度(τ)が90~170℃であり、
10時間半減期温度(τ)が90℃より低い加熱重合開始剤を含まない、歯科用硬化性組成物。
【請求項2】
前記重合性単量体(B)100質量部に対して、前記無機充填材(A)の含有量が150~550質量部であり、前記加熱重合開始剤(C)が0.1~5質量部である、請求項1に記載の歯科用硬化性組成物。
【請求項3】
前記無機充填材(A)の平均一次粒子径が0.01~5μmである、請求項1又は2に記載の歯科用硬化性組成物。
【請求項4】
前記重合性単量体(B-1)及び前記重合性単量体(B-2)が、それぞれ独立して、(メタ)アクリレート系重合性単量体及び(メタ)アクリルアミド系重合性単量体からなる群から選ばれる1種以上の重合性単量体である、請求項1~3のいずれか一項に記載の歯科用硬化性組成物。
【請求項5】
前記加熱重合開始剤(C)が、t-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、及び1,1,3,3-テトラメチルブチルヒドロペルオキシドからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1~4のいずれか一項に記載の歯科用硬化性組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の歯科用硬化性組成物からなる、歯科用コンポジットレジン。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の歯科用硬化性組成物の硬化物からなる、歯科用ミルブランク。
【請求項8】
以下の工程(1)~(3)を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の歯科用硬化性組成物の製造方法。
(1)重合性単量体(B)と加熱重合開始剤(C)を含む重合性単量体(B)含有組成物と、無機充填材(A)とを混練してペースト状組成物を作製する工程;
(2)工程(1)で得たペースト状組成物を、真空度5~200Torrにて3~30分間保持する工程;
(3)工程(2)の後に、ペースト状組成物を圧力0.5~5MPaにて3~30分間かけて押出す工程。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか一項に記載の歯科用硬化性組成物を、圧力1MPa以上で加圧して所望の形状に加工した後、(10時間半減期温度(τ)-20)℃~(10時間半減期温度(τ)+30)℃の温度で重合硬化させる工程を含む、歯科用ミルブランクの製造方法。
第4 申立人が提出した証拠方法
申立人が提出した「甲第1号証」等を「甲1」等のように表記する。
甲1:特開2023-67089号公報
甲2:特開2016-210710号公報
甲3:米国特許出願公開第2018/0243056号明細書
甲4:特開2017-39665号公報
甲5:特開2015-67543号公報
甲6:特開2015-97854号公報
甲7:国際公開第2015/045698号公報
甲8:特開2018-90533号公報
甲9:「シリカ系外添剤:ミクロの魔法使い」と題する論文(日本画像学会誌,2008年,第47巻,第6号,p.527-531)
甲10:特開2016-30753号公報
第5 取消理由の概要
以下の取消理由で対象とした本件発明1~9は、本件訂正前の本件請求項1~9に係る発明である。
1(サポート要件)本件発明1~9に係る特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
2(実施可能要件)本件発明1~9に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
3(新規性)本件発明1~7は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲2又は甲3に記載された発明であるから、本件発明に係る特許は、特許法第29条第1項第3項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
4(進歩性)本件発明1~9は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲2~4、8、10に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
第6 引用文献の記載事項及び引用発明
なお、以下において、引用箇所等に付した下線は、特に言及がない限り、いずれも当審合議体によるものである。
1 甲2:特開2016-210710号公報
(1)【0001】
本発明は、歯科治療における義歯床等に用いられる歯科用補綴物で、CAD/CAMシステムによる切削加工して使用されるブロックに関する。
(2)【0008】
そこで本発明は、クラックがなく、切削時の切削性に優れつつも、口腔内で使用した時の耐衝撃性、耐摩耗性、さらに審美性に優れる切削加工用のブロックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)と、単官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(b-1)及び多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(b-2)を含む重合性単量体(b)と、重合開始剤(c)を含有し、該(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)の含有量が該重合性単量体(b)100重量部に対して1~50重量部であり、かつ、該(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)が該重合性単量体(b)に溶解している組成物を硬化して得られる、切削加工用ブロックを提供する。
(3)【0029】
重合性単量体(b)
重合性単量体(b)としては、(メタ)アクリロイル基を1個有する単官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(b-1)(以下、「単官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(b-1)」と称する)及び(メタ)アクリロイル基を複数有する多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(b-2)(以下、「多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(b-2)」と称する)が含まれる。
(4)【0053】
重合開始剤(c)
本発明に用いられる重合開始剤(c)は、一般工業界で使用されている重合開始剤から選択して使用でき、中でも歯科用途に用いられている重合開始剤が好ましく用いられる。特に、化学重合開始剤(c-1)及び光重合開始剤(c-2)を、単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用できる。
(5)【0066】
無機フィラー(d)
本発明の切削加工用ブロックには、切削性を向上させるために、無機フィラー(d)が配合されることが好ましい。
(6)【0088】
上記の成分が混合されることで、切削加工用ブロック用の重合性組成物が調製される。通常は、前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)を重合性単量体(b)に溶解させた後に、この溶解液に他の成分を常温で混合して重合性組成物を調製する。使用する(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)と重合性単量体(b)の種類により、重合性単量体(b)に対する(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)の溶解性が変わるが、一般的に、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)を重合性単量体(b)に溶解するためには、室温にて混合物を長時間撹拌する必要がある。そこで、該混合物を、重合性単量体(b)が揮発しない程度(例えば約40℃)に加温することで、この溶解するための撹拌時間を短縮することができる。本発明においては、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)が重合性単量体(b)に溶解している重合性組成物を硬化することにより、得られる切削加工用ブロックにおいて良好な切削性が発現する。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)が重合性単量体(b)に溶解しているとは、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)と重合性単量体(b)の混合物を常温でナイロンメッシュ(110個/2.54cm2、繊維径70μm)を通過させた場合に、該ナイロンメッシュ上に通過せずに残った不溶分(ゲル分)の重量が、該混合物の重量に対して1重量%未満であることを意味する。
【0089】
このようにして調製された重合性組成物がブロック状に成形され、さらに光照射又は加熱されることで硬化することにより、切削加工用ブロックが得られる。該重合性組成物の成形にあたっては、例えば、金属やガラス、樹脂製の成形型と蓋が準備される。成形型はキャビティを備える。キャビティは、例えば、角柱状、円柱状、角板状、円盤状に形成される。成形型のキャビティに組成物が充填された後、このキャビティ内が減圧されて組成物から気泡が除去される。次に、この成形型に蓋がされてキャビティが閉塞された状態で組成物が加圧下又は常圧下で、光照射又は加熱されることで重合する。これにより、角柱状、円柱状、角板状、円盤状のキャビティからブロックが得られる。光照射の場合、成形時の光源は適宜選択することができるが、可視光線、紫外線等が挙げられる。加熱する場合、成形時の加熱温度は適宜調整することができるが、例えば、50~150℃の範囲である。圧力は成形時に適宜調整することができるが、例えば、常圧~200MPaの範囲である。成形時の光量、温度及び圧力は、必要に応じて経時的に変動させてもよい。また、成形型の代わりに、角柱状、円柱状、角板状、円盤状に刳り抜いた樹脂やゴム製のパッキン、又は樹脂やゴム製のチューブを角型、円状に変形させて、金属やガラス、樹脂製のプレートで挟み込んだ後、組成物をパッキン又はチューブ内に充填し、前記の成形型を用いた場合と同様に処置して、ブロックが得られる。
(7)【実施例】
【0096】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0097】
次に、実施例又は比較例に係る重合性組成物に用いた各成分を略号及び略称とともに以下に説明する。
【0098】
[(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)]
PMMA:非架橋ポリメチルメタクリレート粉、根上工業社製「ハイパールM4003」、Mw1000000、ガラス転移温度105℃
PMMA-PEMA:非架橋ポリメチルメタクリレート-ポリエチルメタクリレート共重合体粉、根上工業社製「ハイパールM4501」、Mw1000000、ガラス転移温度84℃
PEMA:非架橋ポリエチルメタクリレート重合体粉、根上工業社製「ハイパールM5001」、Mw300000、ガラス転移温度65℃
【0099】
[単官能(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(b-1)]
MMA:メチルメタクリレート ホモポリマーのガラス転移温度105℃
TBM:t-ブチルメタクリレート ホモポリマーのガラス転移温度107℃
IBM:イソボルニルメタクリレート ホモポリマーのガラス転移温度180℃
【0100】
[多官能(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(b-2)]
UDMA:2,2,4-トリメチルヘキサメチレンビス(2-カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレート
U4TH:N,N’-(2,2,4-トリメチルヘキサメチレン)ビス[2-(アミノカルボキシ)プロパン-1,3-ジオール]テトラメタクリレート
TCDDM:トリシクロデカンジイソシアネートと2-ヒドロキシエチルメタクリレートの反応物
HD:1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート
【0101】
[化学重合開始剤(c-1)]
THP:1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド
CHP:クメンハイドロパーオキサイド
【0102】
[無機フィラー(d)]
(d)-1:ジメチルジクロロシラン表面処理コロイドシリカ粉(日本アエロジル社製「R972」) 平均粒子径 0.016μm
(d)-2:コロイドシリカ粉(日本アエロジル社製「アエロジル380」)平均粒子径 0.008μm
【0103】
[重合促進剤(e)]
DMETU:4,4-ジメチル-2-イミダゾリジンチオン
PTU:1-(2-ピリジル)-2-チオ尿素
【0104】
[重合禁止剤]
BHT:3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン
【0105】
[実施例1~11及び比較例1~4]
表1及び表2に示す各成分を常温(20℃±15℃、JIS(日本工業規格) Z 8703-1983)下で混合して、実施例1~11及び比較例1~4に係る各切削加工用ブロック用の組成物を調製した。実施例1~11及び2~3については、後述の(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)の溶解性の評価方法に記載された方法で、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)を重合性単量体(b)に溶解させたのち(比較例3は不溶)、得られた混合物を残りの成分と常温下で混合して、組成物を調製した。次に、実施例1~7及び比較例1~4の各組成物について、太さ3.3cmのシリコンチューブを直径8cmの円形に丸め、縦横25cm、厚さ0.5cmのガラス板で挟み、締め付け金具で固定、増し締めして、ガラス板のクリアランスを3.0cmに調節した後、予めシリコンチューブに切り欠きを設けておき、そこから組成物を流し込み、30℃の水中で12時間、120℃のオーブンで2時間加熱して、実施例1~7、比較例1~4に係る直径8cm、厚さ3.0cm、容積150cm3の円盤状ブロックを作製した。実施例8及び10では、シリコンチューブを直径10cmの円形にした以外、実施例1~7と同様に処理した。実施例9及び11では、シリコンチューブを直径12cmの円形にした以外、実施例1~7と同様に処理した。
(8)【0115】
【表2】
[図:0001417634000001.jpg]
(9)上記(1)~(8)特に、(8)の比較例4の記載からみて、甲2には、以下の甲2発明が記載されていると認められる。
「多官能(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(b-2):UDMA(2,2,4-トリメチルヘキサメチレンビス(2-カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレート)100重量部、
化学重合開始剤(c-1):THP(1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド)0.1重量部、
無機フィラー(d):アエロジルR972(ジメチルジクロロシラン表面処理コロイドシリカ粉、 平均粒子径 0.016μm)50重量部
重合促進剤(e):DMETU(4,4-ジメチル-2-イミダゾリジンチオン)0.1重量部
重合禁止剤:BHT(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン)0.01重量部
を含む歯科用切削加工用ブロック用の重合性組成物。」
2 甲3:米国特許出願公開第2018/0243056号明細書
原文は英文のため、当審による翻訳文で示す。
(1)[0002]今般、有意に改良された強度、耐摩耗性、及び美的特性を有する複合体ミルブロックは、本明細書で提供される組成物を用いて製造することができることが見出された。加えて、複合体ミルブロックはより製造容易な工程により製造することができる。
[0003]したがって、一実施形態では、以下の成分を含む歯科用組成物が提供される:
[0004]エチレン性不飽和基を含む重合可能な樹脂;
[0005]樹脂に溶解した熱活性化開始剤;及び、
[0006]前記組成物の重量に基づいて、重量で60%より多い量で無機充填剤;
[0007]ここで、開始剤はフリーラジカルを提供するために、約100℃~約150℃の温度で活性化される;及び
[0008]ここで、充填剤は、充填剤1グラム当たり少なくとも65平方メートルの表面積を有する。
[0009]別の実施形態において、以下の成分を含む熱硬化組成物を含む歯科用ミルブロックが提供される:
[0010]メタクリロイル基を含む重合可能な樹脂のフリーラジカル開始付加重合生成物である、重合した樹脂;
[0011]重合した樹脂中に分散された無機フィラー;
[0012]ここで、無機充填剤は、充填剤1グラム当たり少なくとも65平方メートルの表面積を有し、組成物の重量に基づいて重量で60%よりも多い重合化した樹脂中に存在する;及び、
[0013]ここで、組成物は、重合性樹脂に溶解して開始剤を活性化する熱硬化開始剤は、約100~約150℃の温度で活性化される、他の実施形態では、エチレン性不飽和基を含む重合可能な樹脂は、メタクリロイル基を含む。
[0014]別の実施形態では、歯科用ミルブロックを製造する方法を提供し、該方法は以下を含む:
[0015]以下を含む組成物を提供する:
[0016]メタクリロイル基を含む重合可能な樹脂;
[0017]樹脂に溶解した熱活性化開始剤;及び、
[0018]前記組成物の重量に基づいて、60%重量より多い量で樹脂と混合される無機充填剤;
[0019]ここで、開始剤はフリーラジカルを提供するために、約100℃~約150℃の温度で活性化される;
[0020]充填剤は、充填剤1グラム当たり少なくとも65平方メートルの表面積を有することを特徴とする。
[0021]前記組成物が、所望のミルブロック構成に成形することを特徴とする;及び、
[0022]約100~約150℃の温度で組成物を熱硬化させる。
[0023]別の実施形態では、本明細書に記載の実施形態のいずれか1つに記載の複数のミルブロックを含むキットが提供される。
(2)[0035]上述したように、今回提供される組成物は、熱硬化されたときに有意に改良された強度、耐摩耗性、及び美的特性を有する複合体ミルブロックをもたらす。本明細書に記載される組成物は、フリーラジカル的に重合可能な樹脂中に特定の充填剤を特定の熱活性化開始剤を組み合わせたものである。開始剤は、通常の取り扱い手順の際に、早すぎる硬化が起こらない十分に高い温度で活性化される。同時に、熱開始は、モノマーなどの他の成分の分解を避けるために十分に低い温度で行われるが、脱色や最終硬化ミルブロック内の物理的性質の低下および損失を引き起こすことがある。
(3)[0053]熱活性化開始剤は、約100℃未満の温度で、かなりの量のフリーラジカル開始種が産生されないものが選択される。「相当量」は、重合及び/又は架橋組成物の性質(例えば、粘度、成形性、硬度等)に顕著な変化が起きる程度まで引き起こすのに十分な量を意味する。加えて、開始剤の活性化に必要なフリーラジカル開始種のかなりの分量を産生する温度は、150℃を超えない。特定の実施形態では、開始剤は、120~140℃の温度範囲内で活性化されるか、又は、幾つかの実施形態では、130~135℃である。特定の実施形態では、開始剤は、これらの温度範囲内でフリーラジカル開始種の相当量を発生することができる有機過酸化物である。特定の実施形態では、開始剤は、ジクミルペルオキシド、t-ブチルペルオキシド、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。特定の実施形態では、開始剤はジクミルペルオキシドである。他の実施形態では、開始剤は、2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン;2,5,-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチル-3-ヘキシン;ビス(1-(tert-ブチルペルオキシ)-1-メチルエチ)ベンゼン;tert-ブチルペルアセテート、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、クメンヒドロペルオキシド、2,4-ペンタンジオンペルオキシド、過酢酸、及びこれらの組み合わせから選択される。
(4)実施例
[0079]以下の実施例において言及され、そして本発明の詳細な説明の全体に渡って、製品の商品名は、すべて大文字で記載されている。
[0080]特に明記しない限り、試薬および溶媒は、Sigma-Aldrich Corp., St Louis,MOから得た。
[0081]本明細書で使用される。
[0082]「bisGMA」は、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]プロパンを示す。
[0083]「TEGDMA」は、トリエチレングリコールジメタクリレート、Sartomer Co., Inc,Exton,PA)から入手)を示す。
[0084]「UDMA」は、ジウレタンジメタクリレート、ローム・アメリカ社(Rohm America LLC,Piscataway,NJ)から商品名「ROHAMERE6661-0」で入手)を示す。
[0085]「BisEMA-6」は、エトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート、Sartomer Co., Inc,Exton,PA)から入手)を示す。
[0086]「BHT」は、ブチル化ヒドロキシトルエンを示す。
[0087]「BZT」は、Ciba, Inc., Tarrytown, N.Yから得られる2-(2-ヒドロキシ-5-メタクリロキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールを示す。
[0088]「CPQ」は、カンファーキノンを示す。
[0089]「DFIHFP」は、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、Johnson Matthey、Alpha Aesar、WardH ill,NJから入手)を示す。
[0090]「ENMAP」は、・・・に記載されている既知の方法を用いて合成されたエチル-(N-メチル-N-フェニル)アミノ プロピオナートを示す。
[0091]「イルガキュア(IRGACURE)819」は、Ciba, Inc., Tarrytown, N.Yから得られるビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィン オキシドを示す。
[0092]「PEG 600 DM」は、Sartomer Co., Inc.,Exton,PAから入手可能な、平均分子量~600のポリエチレングリコールジメタクリレートを示す。
[0093]「ST Nanozirconia」は、米国特許出願公開第2005/0256223号に記載のように調製したシラン処理されたジルコニア-ナノ粒子を示す。
[0094]「ST 20nm Slica」は、米国特許第6,899,948号に記載のように調製した20ナノメートルの平均粒子直径を有するシラン処理されたシリカ粒子を示す。
[0095]「ST Silica/Ziconia Clusters」は、米国特許第6,730,156号に記載のように調製したシラン処理したシリカ-ジルコニアナノクラスタ充填材を示す。
ペーストを調製した。
実施例1は、熱硬化性ペースト
[0096]表1に示した量のエチレン性不飽和化合物の重合性樹脂(100.05 g)に、ジクミルペルオキシド1.27gを、溶解するまで室温で攪拌しながら添加した。
[図:0001417634000002.jpg]
[0097]ペーストは、表2に示される上記樹脂及び充填材を混合し、均一なペーストが形成されるまで混合することによって製造した。
[図:0001417634000003.jpg]
(5)上記(1)~(4)特に、(4)の実施例1の記載からみて、甲3には、以下の甲3発明が記載されていると認められる。
「重合性樹脂4.4018g、
重合性樹脂は、以下の組成からなる重合性樹脂組成物100.05gに1.27gの割合のジクミルペルオキシドを加えて作製した:
90/10のBisGMA(2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン)/TEGDMA(トリエチレングリコールジメタクリレート)の混合物12.027重量%、
BisGMAを14.189重量%、
UDMA(ジウレタンジメタクリレート)35重量%、
BisEMA-6(エトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート)35重量%
PEG 600 DM(平均分子量~600のポリエチレングリコールジメタクリレート)3.784重量%を含む重合性樹脂組成物
ST Nanozirconia(シラン処理されたジルコニア-ナノ粒子)0.8194g、
ST 20nm Silica(20ナノメートルの平均粒子直径を有するシラン処理されたシリカ粒子)1.5231g、
ST Silica/Ziconia Clusters(シラン処理したシリカ-ジルコニアナノクラスタ充填材)13.26g
を含む歯科用熱硬化性ペースト。」
3 甲4:特開2017-39665号公報
(1)【技術分野】
【0001】
本発明は、切削加工によって歯科用補綴物を作製するための歯科切削加工用レジン系ミルブランクの製造方法に関する。
(2)【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、製造時のクラック等の不良を抑制し、歯科切削加工用レジン系材料として必要な強度を有するミルブランク(硬化体)を効率よく製造する事が可能な歯科切削加工用ミルブランクの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記課題を解決するため、種々の熱重合開始剤とそれらを用いた場合の重合条件について検討を行った。その結果、特定の熱重合開始剤と重合条件において本発明の効果が得られる事を見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、重合性単量体、および熱重合開始剤を含有した硬化性組成物を加熱重合する事によって得られる歯科切削加工用レジン系ミルブランクの製造方法であって、該硬化性組成物を該熱重合開始剤の10時間半減期温度の-10℃~+20℃の温度で10時間以上加熱することによって重合硬化する事を特徴とする歯科切削加工用レジン系ミルブランクの製造方法である。
【0011】
他の本発明の実施形態は、前記の熱重合開始剤の10時間半減期温度が60~100℃である事を特徴とする。また、前記のミルブランクの体積が10cm3~200cm3である事を特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の製造方法によって、製造時のクラック等の不良を抑制した歯科切削加工用レジン系材料を効率よく製造する事が可能となる。
(3)【0015】
(重合性単量体)
本発明の硬化性組成物の一成分である重合性単量体は、特に制限なく公知の重合性単量体を用いる事ができるが、本発明の熱重合開始剤が容易の溶解する事が好ましく、重合性単量体の融点が熱重合開始剤の10時間半減期温度より少なくとも20℃低い事が好ましい。また、加熱重合による硬化の際に重合性単量体の揮発を起こさないため、重合性単量体の沸点が熱重合開始剤の10時間半減期温度の少なくとも20℃以上高い事が好ましい。上記重合性単量体としては、特に限定されず、ラジカル重合性単量体やエポキシ化合物、オキセタン化合物などのカチオン重合性単量体などが挙げられる。ラジカル重合性単量体としては、重合性の良さなどから、(メタ)アクリレート系の単量体が好適に用いられる。当該(メタ)アクリレート系の重合性単量体を具体的に例示すると、次に示すものが挙げられる。
・・・
【0019】
(A4)四官能ラジカル重合性単量体
ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ジトリメチロールプロパーンテトラ(メタ)アクリレートなどのテトラ(メタ)アクリレート化合物、ヘキサメチルジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルシクロヘキサンのようなジイソシナネートの間に脂肪族を有するジイソシアネート化合物などを好適に用いることができる。なお、上記のラジカル重合性単量体は、すべて単独で、もしくは組み合わせて使用することができる。
【0020】
また、歯科切削加工用レジン系ミルブランクの強度をより大きくできる点から、重合性単量体100質量部中の50質量部以上が(A2)、(A3)、(A4)に例示した二つ以上の重合性官能基を有する重合性単量体であることが好ましく、80質量部以上であるとより好ましい。
(4)【0022】
(熱重合開始剤)
本発明の歯科切削加工用レジン系材料を重合硬化するためには、熱重合開始剤を使用する。熱重合開始剤は、熱エネルギーによって重合開始種を発生する化合物の事であり、通常、温度が高いほど重合開始種の生成速度が増加することから、熱重合開始剤の反応性の高さを表す指標として、10時間半減期温度が用いられる。10時間半減期温度とは、熱重合開始剤の濃度が10時間で初期の半分に減ずるような温度の事である。本発明に用いる熱重合開始剤の10時間半減期温度に特に制限はないが、60~100℃が好ましく、60~95℃がより好ましく、70℃~90℃がさらに好ましい。10時間半減期温度が60℃以下の場合、安定性が低いため取り扱いが容易ではなく、重合硬化の制御が難しくなる傾向にある。一方、10時間半減期温度が100℃以上の場合、本発明の歯科切削加工用レジン系材料ミルブランクの製造時に高温にさらされることにより変色が起こりやすくなる。
【0023】
熱重合開始剤としては、対応する重合性単量体の重合機構に合致するものを、任意に使用する事が可能である。メタクリレート系などのラジカル重合性単量体の熱重合開始剤の具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、p-クロロベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、トリブチルボラン、トリブチルボラン部分酸化物、テトラフェニルホウ酸ナトリウム、テトラキス(p-フロルオロフェニル)ホウ酸ナトリウム、テトラフェニルホウ酸トリエタノールアミン塩等のホウ素化合物、5-ブチルバルビツール酸、1-ベンジル-5-フェニルバルビツール酸等のバルビツール酸類、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、p-トルエンスルフィン酸ナトリウム等のスルフィン酸塩類等が挙げられる。重合性が高いことから、過酸化物を用いる事が好ましい。好ましい10時間半減期温度をもつ熱重合開始剤を具体的に例示すると、ベンゾイルパーオキサイド(10時間半減期温度74℃)、ジラウロイルパーオキサイド(10時間半減期温度62℃)、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(10時間半減期温度65℃)、ジサクシニック酸パーオキサイド10時間半減期温度66℃)、tert-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(10時間半減期温度70℃)、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(10時間半減期温度72℃)、1,1-ジ(tert-ブチルパーオキシ)-2-メチルシクロヘキサン(10時間半減期温度83℃)、1,1-(ジtert-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン(10時間半減期温度87℃)、1,1-ジ(tert-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(10時間半減期温度87℃)、1,1-ジ(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(10時間半減期温度91℃)、tert-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカルボネート(10時間半減期温度95℃)、tert-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルヘキサノエート(10時間半減期温度97℃)、tert-ブチルパーオキシラウレート(10時間半減期温度98℃)、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカルボネート(10時間半減期温度99℃)、tert-ヘキシルパーオキシベンゾエート(10時間半減期温度99℃)、tert-ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート(10時間半減期温度99℃)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン(10時間半減期温度100℃)、アゾビスイソブチロニトリル(10時間半減期温度65℃)が挙げられる。
【0024】
本発明の製造方法においては、熱重合開始剤の10時間半減期温度の設定が重要であり、詳細については後述する。
【0025】
これら熱重合開始剤は、単独で用いても、2種以上を混合して使用してもよい。熱重合開始剤の配合量は、重合性単量体100質量部に対して0.1~2質量部であることが好ましく、0.2~0.8質量部であることがより好ましい。熱重合開始剤の量が少ない場合、本発明の効果が得られにくい場合がある。また、熱重合開始剤が多すぎる場合、急激な重合硬化の進行によってクラックが発生しやすくなる虞がある。
(5)【0033】
本発明の歯科切削加工用レジン系ミルブランクの製造方法においては、重合性単量体および熱重合開始剤を含んでなる硬化性組成物を調製するステップ、該硬化性組成物を該熱重合開始剤の10時間半減期温度の-10℃~+20℃の温度で10時間以上加熱することによって重合硬化するステップ、を少なくとも含んでなる。
(6)【実施例】
【0044】
以下に本発明に関する実施例と比較例を示すが、本発明は該実施例に限定されるものではない。
【0045】
(原料)
1.熱重合開始剤(10時間半減期温度℃)
BPO:ベンゾイルパーオキサイド(74℃)
tHPO:tert-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカルボネート(95℃)
AIBN:アゾビスイソブチロニトリル(65℃)
2.重合性単量体
UDMA:1,6-ビス(メタクリルエチルオキシカルボニルアミノ)-2,2-4-トリメチルヘキサン
3G:トリエチレングリコールジメタクリレート
3.充填材
F1:シリカ-ジルコニア(球状 平均粒径0.40μm)
F2:シリカ-ジルコニア(球状 平均粒径0.15μm)
F3:シリカ-ジルコニア(球状 平均粒径0.07μm)
【0046】
(評価方法および評価基準)
後述する実施例、比較例のサンプルについてのクラックおよび曲げ強さ評価は、以下の通りである。
1.クラック評価
後述の方法で硬化させたミルブランクの外部を目視で観察し、クラックの有無を観察した。次に、X線検査装置(松定プレシジョン社製)による観察を行い、内部でのクラックの有無を観察した。○(いずれにもクラックが認められない)、×(いずれかにクラックが認められる)、の2段階で評価した。
2.曲げ強さ評価
後述の方法で硬化させたミルブランクを低速のダイヤモンドカッター(Buehler社製)で切り出し、#1500の耐水研磨紙を用いて、2mm×2mm×25mmの角柱状に整えることで試験片を得た。前期試験片をオートグラフ(島津製作所製)に装着し、支点間距離20mm、クロスヘッドスピード1mm/minの条件で3点曲げ試験を行った。
【0047】
曲げ強さσは以下に示す式により算出した。なお、前記試験片は実施例および比較例ごとに5本作製し、その平均値をミルブランクの曲げ強さとした。これらミルブランクの曲げ強さを後掲表1に示す。
σ=3PS/2WB2
P:破断時の試験力、S:支点間距離(20mm)、W:幅(2mm)、B:厚さ(2mm)
【0048】
(実施例1)
総量150gとなるように、重合性単量体UDMAを80質量部、3Gを20質量部混合した。次に、熱重合開始剤BPOを0.3質量部添加し、撹拌後、溶液1を得た。そして、総量500gとなるように溶液1を25質量部、F2を75質量部、プラネタリーミキサー(井上製作所)に投入、混練し、硬化性組成物を得た。
【0049】
得られた硬化性組成物をデシケーターに入れ、30分間減圧し、硬化性組成物中の気泡を除去した。そして、前記硬化性組成物を直径10×厚さ2(cm)のSUS製金型に充填した後、80℃に設定したインキュベーター(ヤマト)に15時間静置した。その後、金型より取り出し、ミルブランクを得た。
【0050】
(実施例2~9、比較例1~3)
表1に記載した組成の硬化性組成物を用いて、表1に記載した各条件での加熱を行うこと以外は、実施例1と同等の方法で作製した。
【0051】
【表1】
[図:0001417634000004.jpg]
(7)上記(1)~(6)、特に、(2)【0010】の「硬化性組成物を加熱重合する事によって得られる歯科切削加工用レジン系ミルブランクの製造方法」との記載や、(6)の実施例8の記載からみて、甲4には、以下の甲4発明が記載されていると認められる。
「熱重合開始剤:tHPO(tert-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカルボネート(10時間半減期温度℃95℃))1.0質量部、
重合性単量体:UDMA(1,6-ビス(メタクリルエチルオキシカルボニルアミノ)-2,2-4-トリメチルヘキサン)/3G(トリエチレングリコールジメタクリレート)を22/8質量部、
充填材:F1(シリカ-ジルコニア(球状 平均粒径0.40μm))49質量部、F3(シリカ-ジルコニア(球状 平均粒径0.07μm))21質量部
を含む歯科用硬化性組成物。」
4 甲8:特開2018-90533号公報
(1)【0001】
本発明は、歯科用硬化性組成物及び歯科用ミルブランク並びにその製造方法に関する。さらに詳しくは、例えば、歯科用CAD/CAMシステムでの切削加工による、インレー、オンレー、アンレー、ベニア、クラウン、ブリッジ、支台歯、歯科用ポスト、義歯、義歯床、インプラント部材(フィクスチャー、アバットメント)等の歯科用補綴物の作製に好適に用いられる歯科用ミルブランクを製造するのに好適に用いられる歯科用硬化性組成物に関する。
(2)【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来技術が抱える上記の課題を解決すべくなされたものであって、その目的は、重合時のクラック発生のリスクが低く、機械的強度及び審美性に優れる歯科用補綴物を提供することができる、歯科用硬化性組成物を提供することにある。また、本発明は、水中での保存安定性に優れる歯科用補綴物を提供することができる、歯科用硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の発明に関する。
[1]重合性単量体(A)、加熱重合開始剤(B)及び無機充填材(C)を含有し、
前記加熱重合開始剤(B)が、10時間半減期温度(τ1)が50~75℃である単官能性重合開始剤(b-1)及び10時間半減期温度(τ2)が80~120℃である多官能性重合開始剤(b-2)を含有する、歯科用硬化性組成物;
[2]重合性単量体(A)100重量部に対して、加熱重合開始剤(B)が0.1~5重量部である、前記[1]の歯科用硬化性組成物;
[3]加熱重合開始剤(B)中、単官能性重合開始剤(b-1)の配合量が20~70重量%であり、多官能性重合開始剤(b-2)の配合量が30~80重量%である、前記[1]又は[2]の歯科用硬化性組成物;
[4]重合性単量体(A)100重量部に対して、無機充填材(C)を100~400重量部含有する、前記[1]~[3]のいずれかの歯科用硬化性組成物;
[5]前記[1]~[4]のいずれかの歯科用硬化性組成物の硬化物からなる歯科用ミルブランク;
[6]前記[1]~[4]のいずれかの歯科用硬化性組成物を加熱重合する工程を有する、歯科用ミルブランクの製造方法;
[7]加熱重合する工程が、第一重合と第二重合を含み、前記第一重合の温度が(τ1)-25℃~(τ1)-15℃であり、前記第二重合の温度が(τ2)-10℃~(τ2)+30℃である、前記[6]の歯科用ミルブランクの製造方法;
[8]前記第一重合の時間が1~30時間であり、前記第二重合の時間が2~50時間である、前記[7]の歯科用ミルブランクの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の歯科用硬化性組成物は、重合時のクラック発生のリスクが低く、機械的強度及び審美性に優れる歯科用ミルブランクを提供することができる。また、本発明は、水中での保存安定性に優れる歯科用補綴物を提供することができる、歯科用硬化性組成物を提供することができる。より詳細には、水中で長期間保存した後においても、機械的強度及び審美性に優れる歯科用補綴物を提供することができる。
(3)【0013】
重合性単量体(A)
本発明で用いられる重合性単量体(A)は、歯科用コンポジットレジン等に使用される公知の重合性単量体が何ら制限無く用いられるが、一般には、ラジカル重合性単量体が好適に用いられる。ラジカル重合性単量体の具体例としては、α-シアノアクリル酸、(メタ)アクリル酸、α-ハロゲン化アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン酸、マレイン酸、イタコン酸等のエステル類、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド誘導体、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、モノ-N-ビニル誘導体、スチレン誘導体等が挙げられる。これらの中では、(メタ)アクリル酸エステル及び(メタ)アクリルアミド誘導体が好ましく、(メタ)アクリル酸エステルがより好ましい。なお、本発明において「(メタ)アクリル」との表記は、メタクリルとアクリルの両者を包含する意味で用いられる。
・・・
【0019】
前記重合性単量体(A)は、いずれも、それぞれ1種単独で又は2種以上を併用することができる。また、本発明で用いられる重合性単量体(A)は液体状であることが好ましいが、常温で液体状である必要は必ずしも無く、重合性単量体(A)を無機充填材(C)に接触させる工程の環境下で液体であればなんら差し支えない。さらに、固体状の重合性単量体(A)であっても、液体状の、その他の重合性単量体と混合溶解させて使用することができる。
(4)【0020】
加熱重合開始剤(B)
本発明で使用される加熱重合開始剤(B)は、一般工業界で使用されている加熱重合開始剤から選択して使用でき、中でも歯科用途に用いられている重合開始剤が好ましく用いられる。
【0021】
前記加熱重合開始剤(B)は、10時間半減期温度が50~75℃の単官能性重合開始剤(b-1)及び10時間半減期温度が80~120℃である多官能性重合開始剤(b-2)を含有する。
【0022】
ここで、10時間半減期温度とは、加熱重合開始剤の半減期が10時間となる温度のことを表し、半減期とは、加熱重合開始剤の濃度が初期値の半分に減少するまでの時間を表す。
【0023】
10時間半減期温度が50~75℃の単官能性重合開始剤(b-1)
単官能性重合開始剤として用いられる加熱重合開始剤の例としては、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)、ジクミルパーオキサイド、ジ(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジサクシニックアシッドパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ヘキシルパーオキサイドパレレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート等が挙げられる。
【0024】
10時間半減期温度が80~120℃の多官能性重合開始剤(b-2)
多官能性重合開始剤として用いられる加熱重合開始剤の例としては、n-ブチル-4,4-ジ(t-ブチルパーオキシ)バレレート、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(4,4-ジーt-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン等が挙げられる。
【0025】
本発明の歯科用硬化性組成物は、例えば、重合性単量体(A)と加熱重合開始剤(B)とを混合し、重合性単量体含有組成物を得た後、前記重合性単量体含有組成物に、無機充填材(C)を混合して得ることができる。また、本発明の歯科用硬化性組成物は、重合性単量体(A)、加熱重合開始剤(B)及び無機充填材(C)を混合して得ることができる。
【0026】
歯科用硬化性組成物に配合される加熱重合開始剤(B)の配合量は、重合性単量体(A)100重量部に対して、0.1~5重量部が好ましく、0.3~3重量部がより好ましく、0.5~2重量部がさらに好ましい。加熱重合開始剤(B)の配合量が少なすぎると、未重合モノマーが残り強度低下を招く恐れがあり、多すぎると重合硬化物の変色のリスクがある。
(5)【実施例】
【0083】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【0084】
重合性単量体(A)
UDMA:2,2,4-トリメチルヘキサメチレンビス(2-カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレート
TEGDMA:トリエチレングリコールジメタクリレート
Bis-GMA:ビスフェノールAジグリシジルメタクリレート(2,2-ビス[4-〔3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ〕フェニル]プロパン)
【0085】
加熱重合開始剤(B)
単官能性重合開始剤(b-1)
BPO:ベンゾイルパーオキサイド(τ1=73.6℃、日油社製)
AIBN:2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)(τ1=65℃、シグマアルドリッチ社製)
パーブチルZ:t-ブチルパーオキシベンゾエート(τ1=104.3℃、日油社製)
ジクミルパーオキサイド:(τ1=115℃、シグマアルドリッチ社製)
多官能性重合開始剤(b-2)
パーヘキサV:n-ブチル-4,4-ジ(t-ブチルパーオキシ)バレレート(τ2=104.5℃、日油社製)
パーヘキサC:1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(τ2=90.7℃、日油社製)
パーヘキサHC:1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン(τ2=87.1℃、日油社製)
パーテトラA:2,2-ビス(4,4-ジーt-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン(τ2=94.7℃、日油社製)
【0086】
無機充填材(C)
OX 50:微粒子シリカ(平均一次粒子径0.04μm、BET比表面積50m2/g、日本アエロジル社製)
Si-YbF3:フッ化イッテルビウム球状充填材(平均一次粒子径0.10μm、シリカコーティング、Sukgyung社製)
UF2.0:バリウムガラス(平均一次粒子径2.0μm、ショット社製)
NF180:バリウムガラス(平均一次粒子径0.180μm、ショット社製)
【0087】
〔重合性単量体含有組成物の製造例1〕
UDMA70重量部及びTEGDMA30重量部に、加熱重合開始剤(B)としてBPO0.5重量部及びパーヘキサV0.5重量部を溶解させて、重合性単量体含有組成物(m-1)を調製した。
・・・
【0099】
〔無機粒子の製造例1〕
100重量部のOX 50をエタノール500重量部に分散し、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン7重量部と水5重量部を加えて室温で2時間攪拌した。溶媒を減圧留去し、さらに90℃で3時間乾燥することによって表面処理して、無機粒子(c-1)を得た。
・・・
【0102】
[実施例1]
前記製造例で得た表面処理された無機粒子(c-1)4.5gを、14.5mm×18mmの長方形の穴を持つプレス用金型の下パンチ棒の上に敷いた。タッピングにより無機粒子(c-1)の粉末をならし、上パンチ棒を上にセットし、テーブルプレス機を用いて一軸プレス(プレス圧38.3MPa、時間は2分間)を行った。上パンチ棒と下パンチ棒を金型から外して、該粉末が凝集したプレス成形体を取り出した。該プレス成形体の大きさは、14.5mm×18mm×15mmの直方体であった。該プレス成形体を、重合性単量体組成物(m-1)に浸漬した。室温で24時間暗所に静置した後、浸漬した状態のまま減圧して脱気した(10ヘクトパスカル、10分間)。減圧を解除して、重合性単量体が含浸された成形体を取り出し半透明の重合性単量体含浸成形体を得た。この半透明の重合性単量体含浸成形体を目視で確認すると、内部に気泡の存在は認められなかった。次いで、重合性単量体が含浸された該成形体を熱風乾燥機を用いて55℃で4時間加熱した後、110℃で7時間加熱処理を行ってミルブランクを得た。
・・・
【0110】
[試験例1]
各実施例及び比較例で得られたミルブランクのクラックの発生を以下の方法により評価した。製造したミルブランク表面のクラックの有無を拡大顕微鏡(倍率×10)を用いて評価した。また、超音波探傷を用いて、内部のクラックの有無を評価した。下記表1、2中の「重合時のクラック発生」の数値は、10個作製したミルブランクのうち、クラックが発生したミルブランクの数を表す。
【0111】
[試験例2]
各実施例及び比較例で得られたミルブランクの曲げ強さを以下の方法により測定した。すなわち、製造したミルブランクから、ダイヤモンドカッターを用いて、試験片(1.2mm×4mm×14mm)を作製し、#1000研磨紙で研磨した。該試験片について、万能試験機(インストロン社製)を用いて、クロスヘッドスピードを1mm/minに設定して、支点間距離12mmで3点曲げ試験法により曲げ強さを測定した。その後、該試験片は、37℃の水中に1ヶ月間浸漬し、万能試験機(インストロン社製)を用いて、水中に浸漬する前と同様に、3点曲げ試験法により曲げ強さを測定した。37℃の水中に1ヶ月間浸漬した後の曲げ強さは200MPa以上であれば好適とされる。
【0112】
[試験例3]
各実施例及び比較例で得られたミルブランクの色調安定性を以下の方法により測定した。製造したミルブランクから、ダイヤモンドカッターを用いて、試験片(10mm×10mm×1mm)を作製した。該試験片の綺麗な平滑面を#1000研磨紙、#2000研磨紙、#3000研磨紙、ラッピングフィルムの順に乾燥条件下で研磨した。その試験片を37℃で水中保管し、所定日保管したところで取り出し、測色装置(分光測色計CM-3610d、コニカミノルタ社製、光源D65/2)を用いて色調測定を行った。色調安定性(ΔE*)は以下の式に従って求めた。ΔE*<1.0が好適である。
ΔE*=[(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2]1/2
(式中、ΔL*、Δa*、Δb*はL*a*b*表色系(JIS Z 8781-4:2013)における水中に保管する前後の明度指数L*、色座標a*、b*の差を表す。)
【0113】
各試験の測定結果を下記表1、2に示す。
【0114】
【表1】
[図:0001417634000005.jpg]
(6)上記(1)~(5)、特に(5)の実施例1の記載からみて、甲8には、以下の甲8発明が記載されていると認められる。
「重合性単量体(A):UDMA(2,2,4-トリメチルヘキサメチレンビス(2-カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレート)70重量部、TEGDMA(トリエチレングリコールジメタクリレート)30重量部、
加熱重合開始剤(B):BPO(ベンゾイルパーオキサイド(10時間半減期温度73.6℃))0.5重量部、パーヘキサV(n-ブチル-4,4-ジ(t-ブチルパーオキシ)バレレート(10時間半減期温度104.5℃))0.5重量部
を含む重合性単量体組成物(m-1)に浸漬された、
無機粒子(c-1):表面処理された無機充填材(C):OX 50(微粒子シリカ(平均一次粒子径0.04μm))150重量部が凝集したプレス成形体
を含む歯科用重合性単量体組成物。」
5 甲10:特開2016-30753号公報
(1)【技術分野】
【0001】
歯科分野における充填または補綴修復、仮封、仮着、補綴物の作製、接着・合着、小窩裂溝封鎖に用いられる歯科用の複合材料に関する。
具体的には、コンポジットレジン(前装冠用や保存修復用などを含む)、仮封・仮着材、レジンセメント、接着材、フィッシャーシーラントなどに用いられるシラン処理フィラーと重合性単量体とを混合して製造するペースト状の複合材料に関する。
(2)【課題を解決するための手段】
【0006】
・・・
本発明は、フィラー、重合性単量体、重合開始剤を含む複合材料において、
重合性単量体と重合開始剤を混合し混合重合性単量体を作製する混合重合性単量体作製工程、
フィラーにシラン処理をして、シラン処理フィラーを作製するシラン処理工程、
シラン処理フィラーを保存容器にて保存するシラン処理フィラー保存工程、
混合重合性単量体とシラン処理フィラーを混合し複合材料を製造する複合材料製造工程、複合材料を少量保存容器に充填する複合材料充填工程、
充填された少量保存容器で保存する少量保存容器保存工程を有して得られる複合材料であって、
複合材料製造工程に、微粒子フィラー混練工程及び微粒子フィラー混練後脱泡工程、シラン処理フィラー混練工程およびシラン処理フィラー混練後脱泡工程を行う工程を順次経ることを特徴とする複合材料である。
・・・
本発明は、フィラー、重合性単量体、重合開始剤を含む複合材料において、
重合性単量体と重合開始剤を混合し混合重合性単量体を作製する混合重合性単量体作製工程、
フィラーにシラン処理をして、シラン処理フィラーを作製するシラン処理工程、
シラン処理フィラーを保存容器にて保存するシラン処理フィラー保存工程、
混合重合性単量体とシラン処理フィラーを混合し複合材料を製造する複合材料製造工程、複合材料を少量保存容器に充填する複合材料充填工程、
充填された少量保存容器で保存する少量保存容器保存工程を有し、
混合重合性単量体作製工程、複合材料製造工程、複合材料充填工程、少量保存容器保存工程を順次経て得られる複合材料であって、
複合材料製造工程に、微粒子フィラー混練工程及び微粒子フィラー混練後脱泡工程、シラン処理フィラー混練工程およびシラン処理フィラー混練後脱泡工程を行う工程を順次経ることを特徴とする複合材料である。
混合重合性単量体作製工程の後に、混合重合性単量体を保存容器内で保存する混合重合性単量体保存工程を有することが好ましい。
(3)【0041】
複合材料製造工程には混練工程および脱泡工程を有し、その手順は以下の通りとなる。
複合材料製造工程では混練容器中に、混合重合性単量体を投入した後に、シラン処理フィラーを投入し、混練、脱泡を行う。混練作業を行う工程が混練工程であり、脱泡作業を行う工程が脱泡工程である。
シラン処理フィラーの投入前に混合重合性単量体を投入することが重要であり、混練時間を短縮しペーストのバラツキの発生を防止することができる。
複合材料を製造する場合は微粒子フィラーを用いることが好ましいが、その場合は混合重合性単量体を投入した後に、微粒子フィラーを投入し、微粒子フィラー混練工程、微粒子フィラー混練後脱泡工程を行い、その後に、更にシラン処理フィラーを投入し、シラン処理フィラー混練工程、シラン処理フィラー混練後脱泡工程を行う。
・・・
【0043】
シラン処理フィラー混練工程にて、シラン処理フィラーは混合重合性単量体もしくは混合重合性単量体と超微粒子フィラーとの混練物と均一なペースト状になるまで混練する。脱泡工程は複合材料内の空気を抜く必要があり、混合しながら脱泡することが好ましい。
複合材料の中から気泡を抜く為にはシラン処理フィラー混練後脱泡工程が必要となる。脱泡工程は混練容器中の真空度を5~200Torrに下げることにより脱泡される工程である。本脱泡工程中は複合材料の内部の気泡が膨張し、複合材料が発泡する。この気泡を破壊させる為に混練と同時に行うことが一般的である。気泡を崩壊させる為の混練スピードは気泡の破壊に合わせて行うことが好ましく、減圧スピードと共に調整を行いながら、混練条件を決定するか、減圧度合いを調整しながら混練することが好ましい。
【0044】
前記、混練の時間や温度は任意であるが、微粒子フィラーの投入後、混練温度は5~60℃にて混練時間は5~30分間の条件下で微粒子フィラー混練工程を実施し、その後に真空度は5~200Torrにて、混練時間は5~30分の条件下で微粒子フィラー混練後脱泡工程を実施する。その後、シラン処理フィラーの投入後、混練温度は5~60℃にて、混練時間は5~40分間の条件下でシラン処理フィラー混練工程を実施し、その後に真空度は5~200Torrにて混練時間は5~30分のシラン処理フィラー混練後脱泡工程を実施することが好ましい。
本発明に用いる重合開始剤が化学重合開始剤である場合は、低温での混練が好まれ、混練工程では混練温度は5~10℃であり且つ混練時間は5~30分で、脱泡工程においても5~10℃であり且つ混練時間は5~30分で真空度は60~200Torrに減圧し実施することが好ましい。
これらの混練時間や温度はニーダーやプラネタリーミキサーの種類によっても異なる。
・・・
【0047】
複合材料充填工程とは、複合材料保存容器に保存された複合材料を少量保存容器に充填する工程のことである。
少量保存容器とは最終ユーザの手元に亘る容器のことであり、一般的にシリンジ容器と呼ばれている。シリンジ容器は1~200ccの容器である。低粘度の複合材料に用いるシリンジ容器の場合はシリンダ状の注射器型で押し棒を押すことで先端のノズルから、複合材料を排出する。高粘度の複合材料に用いるシリンジ容器は低粘度と同じ様にシリンダ状の注射器型であるが押し棒は螺合により押し出すようになっている。また、少量のものはコンピュールと呼ばれ、1回の操作で窩洞充填するための容器などを指す。いずれの容器もシリンダ状でピストンで複合材料を押して排出する容器である。シリンダ状容器は、複合材料の排出口が細くなっている場合が本発明の効果を顕著に表れる。
複合材料は少量保存容器にて保存され、好ましい保存単位は1~50ccで行うことが好ましく、より好ましくは2~5ccである。
複合材料保存容器は樹脂性が好ましく、ポリエチレン製であることが好ましい。更に、不透明であることが好ましく、遮光性に優れていることが好ましい。遮光率99.99%以上であることが好ましいまた、密閉容器であることが好ましい。
ペーストの粘度により、シリンダの押棒は押圧することで複合材料が押し出される仕組みでもよいが、螺合により複合材料を押し出す仕組みのものでもよい。近年、電動式、卓上式のものも見られ、これらのシリンジ状の容器であってもよい。
複合材料保存容器から少量保存容器への充填方法は既存の方法で行ってもよい。
通常は充填機を用いて充填することができ、既存の充填機で充填することができる。
6 甲5:特開2015-67543号公報
(1)【0001】
本発明は、歯科切削加工用複合レジン材料、該複合レジン材料の作製方法及び該複合レジン材料を形成するための成形用組成物に関する。
(2)【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、気泡がなく、曲げ強さ、硬さ等の機械的強度及び研磨後の光沢性に優れた歯科切削加工用レジン材料及びその作製方法、並びに該歯科切削加工用レジン材料を形成するための成形用組成物を提供することを目的とする。
(3)【発明の効果】
【0013】
本発明の歯科切削加工用レジン材料は、気泡がなく、曲げ強さ、硬さ等の機械的強度及び研磨後の光沢性に優れる。
(4)【0016】
1.歯科切削加工用レジン材料を形成するための成形用組成物
本発明の歯科切削加工用レジン材料(以下、「複合レジン材料」ということもある。)は、(A)SiO2、Al2O3及びZrO2を含有する複合金属酸化物からなる平均粒子径が1~6μmの無機フィラー(以下、「A成分」ということもある。)を70~82重量%、(B)(メタ)アクリレート系重合性モノマー(以下、「B成分」ということもある。)、並びに(C)平均粒子径0.1μm以下の超微粒子SiO2フィラー(以下、「C成分」ということもある。)を1~10重量%含有する歯科切削加工用複合レジン材料を形成するための成形用組成物を、重合硬化することで形成される。
(5)【0020】
該複合レジン材料中に含まれる該無機フィラーの含有量は、70~82重量%程度が好ましく、70~80重量%程度がより好ましく、72~78重量%が特に好ましい。
(6)【0024】
さらに、該無機フィラーは、上記焼結一次粒子の平均粒子径が特定の範囲内に制御されているという特徴も有している。その平均粒子径は0.1~0.9μmの範囲内にあることが重要である。該一次粒子の平均粒子径が0.1未満になると後述の加熱処理工程(焼結工程)により一次粒子間の結合が過度に進行して高密度の焼結二次粒子が形成されてしまい、表面の凹凸が小さくなり、二次粒子の効果(強度、研磨性など)が得られない。また一次粒子に平均粒子径が0.9μmを超えると5μm以上の大きな一次粒子が含まれる確率が多くなり、その大きな粒子を含む複合レジン硬化物では、その研磨面は十分な滑沢性が得られない。
(7)【0048】
B成分:(メタ)アクリレート系重合性モノマー
本発明の複合レジン材料を形成するための成形用組成物は、(メタ)アクリレート系重合性モノマー(以下、「重合性モノマー」、「モノマー」ということもある)を配合する必要がある。該(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味している。
(8)【0052】
該(メタ)アクリレート系重合性モノマーは、多官能性の(メタ)アクリレートが好ましく、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、ウレタンジメタクリレート(UDMA)及び2,2-ビス(4-(2-ヒドロキシ-3-メタクリロキシ)フェニル)プロパンがより好ましく、TEGDMA、UDMAが特に好ましい。
(9)【0054】
該複合レジン材料中に含まれる重合性モノマーの含有量は、17~27重量%程度が好ましく、18~26重量%程度がより好ましく、20~24重量%程度が特に好ましい。
(10)【0060】
2. 歯科切削加工用レジン材料
本発明の歯科切削加工用レジン材料は、(A)SiO2、Al2O3及びZrO2を含有する複合金属酸化物からなる平均粒子径が1~6μmの無機フィラーを70~82重量%、(B)(メタ)アクリレート系重合性モノマー、並びに(C)平均粒子径0.1μm以下の超微粒子SiO2フィラーを1~10重量%含有する歯科切削加工用複合レジン材料を形成するための成形用組成物を、重合硬化することで形成される。
(11)【0065】
該重合開始剤としては、過酸化物又はアゾ化合物等、公知の熱重合開始剤を使用することができる。具体的には、ベンゾイルパーオキサイド(BPO)、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’―アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、4,4’-アゾビス-4-シアノバレリック酸、1,1’-アゾビス-1-シクロヘキサンカーボニトリル、ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチラート、2,2’-アゾビス-(2-アミノプロパン)ジヒドロクロライド等が挙げられる。
(12)【0097】
実施例1
(1)複合レジン材料を形成するための成形用組成物の製造
ベンゾイルパーオキサイド(BPO)1重量%を溶解したUDMA/TEGDMA=99/1(重量%)の混合(メタ)アクリレート系重合性モノマー(27重量%)に平均粒子径15nmの超微粒子SiO2フィラー(MEK-ST、日産化学工業社製、メチルエチルケトン分散シリカゾル)(SiO2として3重量%)を添加し、エバポレーターより脱溶媒後、平均粒子径33μmのカップリング処理された無機フィラー(70重量%)と、をそれぞれ添加した。次いで、遮光減圧下において、混錬・脱泡した後、複合レジン材料を形成するための成形用組成物を得た。
(2)複合レジン材料の作製
上記成形用組成物を15×15×30mmの金型内に充填した後、温度100℃、圧力230MPaの加熱加圧条件下で120秒間重合硬化させて、複合レジン材料の成形体(ブロック後)を作製した。
(13)上記(1)~(12)、特に(12)の実施例1の記載からみて、甲5には、以下の甲5発明が記載されていると認められる。
「熱重合開始剤としての1重量%のベンゾイルパーオキサイド(BPO)、
[図:0001417634000006.jpg]
(メタ)アクリレート系重合性モノマーとしての27重量%のUDMA(ウレタンジメタクリレート)/TEGDMA(トリエチレングリコールジメタクリレート)=99/1(重量%)混合物(99:1の割合)、
[図:0001417634000007.jpg]
3重量%の平均粒子径15nmの超微粒子SiO2フィラー、
70重量%の平均粒子径3.3μmの無機フィラー、を含む歯科切削加工用複合レジン材料。」
7 甲6:特開2015-97854号公報
(1)【0001】
本発明は、インレー、クラウン等の歯科用補綴物をCAD/CAM装置による切削加工で作製する際に用いる歯科用レジンブロックの製造方法に関する。
(2)【0010】
請求項1に記載の発明は、形状を切り出す前のブロック状の材料である歯科用レジンブロックを製造する方法であって、金属以外の材料により形成された内外の圧力が等しくなる手段を具備する型に、ブロック状の歯科用レジンブロックとなる硬化前の材料を注入する工程と、ブロック状の歯科用レジンブロックとなる硬化前の材料が注入された型ごと全体的に所定の圧力とすることが可能な容器に入れ、型及び該型に注入された前記硬化前の材料を1.0MPa以上で加圧する工程と、型及び該型に注入された硬化前の材料を60°C以上で加熱する工程と、を含む、ブロック状歯科用レジンブロックの製造方法である。
ここで、「ブロック状」であるとは、歯科補綴物としての具体的な形状を切り出す前の材料として形成されたものを意味する。
(3)【0013】
本発明に係るブロック状歯科用レジンブロックの製造方法によれば、気泡及び割れを抑制することができ、歯科補綴物の形状を切削加工により製造する時にチッピングが発生しない等、品質の高いブロック状の歯科用レジンブロックを提供することができる。
(4)【0018】
また、これら化合物は重合させてブロック状として使用されるため重合触媒を使用する。本発明では加圧加熱して成型することから、重合触媒としては加熱重合触媒が好ましい。加熱重合開始剤(触媒)としては、有機過酸化物やアゾ化合物等が用いられ、具体的には、ベンゾイルパーオキサイド、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、4,4’-アゾビス-4-シアノバレリック酸、1,1’-アゾビス-1-シクロヘキサンカーボニトリル、ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチラート、2,2’-アゾビス-(2-アミノプロパン)ジヒドロクロライド等が挙げられ、これらは単独若しくは混合して利用できる。
【0019】
また歯科用レジン材料には充填材が配合されることが好ましい。充填材としては平均粒径が0.01μm以上2μm以下の無機質充填剤が好ましい。平均粒径が0.01μm以上0.04μm以下の無機質充填剤としてはコロイダルシリカが一般的であり、例えば日本アエロジル株式会社のアエロジルOX-50(平均粒径0.04μm)、アエロジルR-972(平均粒径0.016μm)等が使用できる。平均粒径が0.1μm以上2μm以下の無機質充填剤としては粉砕されたガラス粉末が一般的であり、その組成は特に限定されるものではないが、石英ガラス、アルミノシリケートガラス、X線造影性を有するガラスであるカルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属原子を含むガラス、亜鉛ガラス、鉛ガラス等が好適である。ガラス粉末は表面をシラン処理して使用することが望ましく、通常、表面処理剤としてγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の有機ケイ素化合物を用いて通常の方法によりシラン化して用いられる。平均粒径が0.01μm以上0.04μm以下の無機質充填剤の含有量は、0.1質量%未満の場合には十分な増粘効果が得られ難く、一方2質量%を超えた場合には歯科用レジン材料作製時のレジンペーストが硬くなりレジン重合体に気泡が混入し易くなり適当でない。平均粒径が0.1μm以上2μm以下の無機質充填剤の含有量は、1質量%未満の場合には十分な耐摩耗強度が得られ難く、一方80質量%を超えた場合には歯科用レジン材料作製時のレジンペーストが硬くなりレジン重合体に気泡が混入し易くなり適当でない。
(5)【0032】
以下に示す実施例では、実施例1から4、及びこれと比較すべき比較例1から3による歯科用レジンブロックを作製して、その品質を検証した。以下に説明する。
【0033】
<歯科用レジン材料>
ここではペースト1から4の4種類のペースト状(未硬化)の歯科用レジン材料を準備した。各ペーストはシリンジに充填され、型に注入できるようにした。
また、各ペーストについてちょう度を測定した。ちょう度(mm)測定は次のように行った。すなわち、セロファンの上にシリンジからペーストを1.0mL押し出し、静かにセロファンを被せた後、総重量750gとしたカバーガラスと錘を静かに乗せ、60秒間静置した。60秒経過後にただちにカバーガラスと錘を外し、広がったペーストの長辺と短辺の長さを測定し、平均値をちょう度(mm)とした。
表1にペーストの組成及びちょう度を表した。表1中のMPTSは、γ-メタクリロキシプロリルトリエトキシシランを意味する。
【0034】
【表1】
[図:0001417634000008.jpg]
【0035】
表1中のモノマー1からモノマー4は次の表2の通りである。なお、表2用いた略称はそれぞれ次の化学物質を意味する。
UDMA:ウレタンジメタクリレート
TEGDMA:トリエチレングリコールジメタクリレート
BPO:ベンゾイルパーオキサイド
Bis-MEPP:2,2-ビス(4-メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン
HDMP:2-ヒドロキシ-1,3-ジメタクリロキシプロパン
【0036】
【表2】
[図:0001417634000009.jpg]
(6)【0040】
<実施例4>
実施例4では、実施例1と同じ型を用い、この型にペースト4を静かに注入して内部を隙間なく満たした。ペースト4が満たされた型をオートクレーブ(株式会社協真エンジニアリング製)内に固定し、濃度99.9%の窒素を0.3MPaで3回置換して酸素濃度を1.0%未満とした。
その後窒素で4.0MPaまで昇圧し、昇圧完了と同時に炉内を120°Cに昇温させ1時間重合硬化させた。1時間経過後、圧力を大気圧まで降下させ、炉内が60°C以下に冷めてから型を取り出し、重合した歯科用レジンブロックを当該型から抜き取った。
(7)上記(1)~(6)、特に(6)の実施例4の記載からみて、甲6には、以下の甲6発明が記載されていると認められる。
「モノマー4である加熱重合開始剤としての1.5質量部のBPO(ベンゾイルパーオキサイド)、60質量部のUDMA(ウレタンジメタクリレート)及び40質量部のBis-MEPP(2,2-ビス(4-メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン)とを含む混合物34.2質量%と、
充填材としてのMPTS(γ-メタクリロキシプロリルトリエトキシシラン)12質量%処理バリウムガラス(平均粒子径0.7μm)65.8重量%、
を含む歯科用レジン材料。」
8 甲7:国際公開第2015/045698号公報
(1)[0001] 本発明は、インレー、クラウン等の歯科用補綴物をCAD/CAM装置による切削加工で作製する際に用いる歯科用レジンブロックの製造方法に関する。
(2)[0010] 請求項1に記載の発明は、歯科用レジンブロックとなる硬化前の材料を、金属以外の材料により形成された型に注入する工程と、型及び該型に注入された硬化前の材料を1.0MPa以上で加圧する工程と、型及び該型に注入された材料を60℃以上で加熱する工程と、を含む、歯科用レジンブロックの製造方法である。
[0011] 本発明に係る歯科用レジンブロックの製造方法によれば、気泡及び割れを抑制することができ、製造時にチッピングが発生しない等、品質の高い歯科用レジンブロックを提供することができる。
(3)[0016] また、これら化合物は重合させてブロック状として使用されるため重合触媒を使用する。本発明では加圧加熱して成型することから、重合触媒としては加熱重合触媒が好ましい。加熱重合開始剤(触媒)としては、有機過酸化物やアゾ化合物等が用いられ、具体的には、ベンゾイルパーオキサイド、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、4,4'-アゾビス-4-シアノバレリック酸、1,1'-アゾビス-1-シクロヘキサンカーボニトリル、ジメチル-2,2'-アゾビスイソブチラート、2,2'-アゾビス-(2-アミノプロパン)ジヒドロクロライド等が挙げられ、これらは単独若しくは混合して利用できる。
[0017] また歯科用レジン材料には充填材が配合されることが好ましい。充填材としては平均粒径が0.01μm以上2μm以下の無機質充填剤が好ましい。平均粒径が0.01μm以上0.04μm以下の無機質充填剤としてはコロイダルシリカが一般的であり、例えば日本アエロジル株式会社のアエロジルOX-50(平均粒径0.04μm)、アエロジルR-972(平均粒径0.016μm)等が使用できる。平均粒径が0.1μm以上2μm以下の無機質充填剤としては粉砕されたガラス粉末が一般的であり、その組成は特に限定されるものではないが、石英ガラス、アルミノシリケートガラス、X線造影性を有するガラスであるカルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属原子を含むガラス、亜鉛ガラス、鉛ガラス等が好適である。ガラス粉末は表面をシラン処理して使用することが望ましく、通常、表面処理剤としてγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の有機ケイ素化合物を用いて通常の方法によりシラン化して用いられる。平均粒径が0.01μm以上0.04μm以下の無機質充填剤の含有量は、0.1質量%未満の場合には十分な増粘効果が得られ難く、一方2質量%を超えた場合には歯科用レジン材料作製時のレジンペーストが硬くなりレジン重合体に気泡が混入し易くなり適当でない。平均粒径が0.1μm以上2μm以下の無機質充填剤の含有量は、1質量%未満の場合には十分な耐摩耗強度が得られ難く、一方80質量%を超えた場合には歯科用レジン材料作製時のレジンペーストが硬くなりレジン重合体に気泡が混入し易くなり適当でない。
(4)[0030] 以下に示す実施例では、実施例1から4、及びこれと比較すべき比較例1から3による歯科用レジンブロックを作製して、その品質を検証した。以下に説明する。
[0031] <歯科用レジン材料>
ここではペースト1から4の4種類のペースト状(未硬化)の歯科用レジン材料を準備した。各ペーストはシリンジに充填され、型に注入できるようにした。
また、各ペーストについてちょう度を測定した。ちょう度(mm)測定は次のように行った。すなわち、セロファンの上にシリンジからペーストを1.0mL押し出し、静かにセロファンを被せた後、総重量750gとしたカバーガラスと錘を静かに乗せ、60秒間静置した。60秒経過後にただちにカバーガラスと錘を外し、広がったペーストの長辺と短辺の長さを測定し、平均値をちょう度(mm)とした。
表1にペーストの組成及びちょう度を表した。表1中のMPTSは、γ-メタクリロキシプロリルトリエトキシシランを意味する。
[0032][表1]
[図:0001417634000010.jpg]
[0033] 表1中のモノマー1からモノマー4は次の表2の通りである。なお、表2用いた略称はそれぞれ次の化学物質を意味する。
UDMA:ウレタンジメタクリレート
TEGDMA:トリエチレングリコールジメタクリレート
BPO:ベンゾイルパーオキサイド
Bis-MEPP:2,2-ビス(4-メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン
HDMP:2-ヒドロキシ-1,3-ジメタクリロキシプロパン
[0034]
[表2]
[図:0001417634000011.jpg]
(5)[0038] <実施例4>
実施例4では、実施例1と同じ型を用い、この型にペースト4を静かに注入して内部を隙間なく満たした。ペースト4が満たされた型をオートクレーブ(株式会社協真エンジニアリング製)内に固定し、濃度99.9%の窒素を0.3MPaで3回置換して酸素濃度を1.0%未満とした。
その後窒素で4.0MPaまで昇圧し、昇圧完了と同時に炉内を120℃に昇温させ1時間重合硬化させた。1時間経過後、圧力を大気圧まで降下させ、炉内が60℃以下に冷めてから型を取り出し、重合した歯科用レジンブロックを当該型から抜き取った。
(6)上記(1)~(5)からみて、特に(5)の実施例4の記載からみて、甲7には、以下の甲7発明が記載されていると認められる。
「モノマー4である加熱重合開始剤としての1.5質量部のBPO(ベンゾイルパーオキサイド)、60質量部のUDMA(ウレタンジメタクリレート)及び40質量部のBis-MEPP(2,2-ビス(4-メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン)とを含む混合物34.2質量%と、
充填材としてのMPTS(γ-メタクリロキシプロリルトリエトキシシラン)12質量%処理バリウムガラス(平均粒子径0.7μm)65.8重量%、
を含む歯科用レジン材料。」
第7 特許権者が意見書で示した追加実施例・比較例
特許権者が令和6年5月27日に提出した意見書で示した追加実施例・比較例は、おおむね以下のとおりである。
1 追加実施例12、13
(1)追加実施例12、13に用いた材料は、以下のとおりである。
・エポライト3002メタクリル酸付加物(共栄社化学株式会社製);粘度60,000mPa・s/25℃(カタログ上限値;参考資料1(発行:共栄社化学株式会社、発行年月:2018年11月)の28頁参照)
・エポライト3002アクリル酸付加物(共栄社化学株式会社製);粘度80,000mPa・s/25℃(カタログ上限値;参考資料1(発行:共栄社化学株式会社、発行年月:2018年11月)の28頁参照)
<共栄社化学株式会社発行のカタログより引用>
[図:0001417634000012.jpg]
前記した材料と、本件明細書の【0056】~【0057】に記載の各成分とを用いて、以下の製造例11、12によって、重合性単量体含有組成物(M11、M12)を調製した。
〔重合性単量体含有組成物の製造例11〕
95質量部のエポライト3002メタクリル酸付加物及び5質量部のTEGDMAに、加熱重合開始剤としてTHPを0.5質量部溶解させて、重合性単量体含有組成物(M11)を調製した。
〔重合性単量体含有組成物の製造例12〕
95質量部のエポライト3002アクリル酸付加物及び5質量部のTEGDMAに、加熱重合開始剤としてTHPを0.5質量部溶解させて、重合性単量体含有組成物(M12)を調製した。
(2)得られた重合性単量体含有組成物(M11、M12)と、本件明細書の【0058】、【0064】、【0065】に記載の無機充填材(A1)とを用いた以外は、本件明細書の実施例1(【0078】)と同様の方法で、硬化物としての歯科用ミルブランクを得た。
得られた歯科用ミルブランクについて本件明細書の試験例1及び2により評価を実施した。結果を下記表Aに示す。
<表A>
[図:0001417634000013.jpg]
上記実施例12及び13において、曲げ強さ及び滑沢耐久性は、本件明細書の実施例と同様に課題を解決できることを確認した。
2 追加比較例3
(1)甲4の追試実験となるように、重合性単量体の質量比について、UDMA/3Gの質量比を73:27とし、重合性単量体含有組成物(M13)を調製した。追加比較例3では、甲4に開示されたtHPOを使用し、重合性単量体の質量比について、UDMA/3Gの質量比を甲4と同様に73:27とした。
下記表Bは、本件明細書の表2の一部抜粋(M1、M3、M6のみを抜粋)と、重合性単量体含有組成物(M13)を記載した。
<表B>
[図:0001417634000014.jpg]
(2)得られた重合性単量体含有組成物(M13)と、本件明細書の【0058】、【0064】【0065】に記載の無機充填材(A1)とを用いた以外は、本件明細書の実施例1(【0078】)と同様の方法で、硬化物としての歯科用ミルブランクを得た。
得られた歯科用ミルブランクについて本件明細書の試験例1及び2により評価を実施した。結果を下記表Cに示す。
表Cは、本件明細書の表2の一部抜粋(実施例1、3、6のみを抜粋)と、追加比較例3を記載したものである。
<表C>
[図:0001417634000015.jpg]
上記のように、追加比較例3では、滑沢耐久性が66%であり、本件明細書の実施例は、24%以上優れた滑沢耐久性を有している。
また、曲げ強さは、追加比較例3では、219MPaであり、本件明細書の実施例は、88MPa以上優れた曲げ強さを有し、40%以上も高くなっている。
第8 本件明細書の記載
1 技術分野、背景技術
【0001】
本発明は、歯科医療の分野において、天然歯の一部分又は全体を代替し得る歯科材料、特に歯科用コンポジットレジンとして好適に使用される歯科用硬化性組成物、その歯科用硬化性組成物又はその硬化物からなる歯科用コンポジットレジン及び歯科用ミルブランク、並びに、それらの製造方法に関する。
【0002】
重合性単量体、無機充填材及び重合開始剤から構成される歯科用硬化性組成物は、歯の欠損部や虫歯を修復するための材料として多用される歯科材料となっている。このような歯科用硬化性組成物においては、天然歯と置換可能な十分な機械的強度、硬度、口腔内での噛み合わせに対する耐磨耗性等の機械的特性に加え、天然歯と同等の光沢を得るための研磨性や口腔内で歯ブラシ等により表面の摩耗が生じてもツヤを維持できる滑沢耐久性等の審美性が要求される。また近年では、インレー、クラウン等の歯科用補綴物を、コンピューターによって設計し、ミリング装置により切削加工して作製するCAD/CAMシステムが普及しているおり、本システムに用いられる被切削材料であるミルブランクの素材として、歯科用硬化性組成物から製造される歯科用ミルブランクの検討が行なわれている。該歯科用硬化性組成物から製造される歯科用ミルブランクは、対合歯を傷つけない適度な硬度を有し、耐衝撃性に優れることから歯科用補綴物に加工されて臨床で使われ始めている。
【0003】
例えば、機械的強度及び研磨性を実現するために、無機充填材をプレス成形した後、成形体に重合性単量体を浸漬して加熱重合する、歯科用ミルブランクの製造方法が記載されている(特許文献1)。この製造方法により、ナノ粒子を高密度に充填することが可能となり、機械的強度及び研磨性に優れた歯科用ミルブランクを得ることができる。しかしながら本発明者らが検討した結果、機械的強度が十分とは言えず、滑沢耐久性についても改善の余地があった。
【0004】
また、特許文献2には、光重合開始剤としてカンファーキノン及び重合促進剤としてアミンを用いて、UDMA/TEGDMA=99/1(質量%)の重合性単量体混合物に、平均粒子径3.3μmの無機充填材と平均粒子径15nmの超微粒子シリカをそれぞれ添加した歯科用硬化性組成物を光照射によって硬化させた後に、加熱処理によって歯科用ミルブランクを得る方法が記載されている。しかしながら、本発明者らが検討した結果、UDMAのような高粘度の重合性単量体を多く含む歯科用硬化性組成物を光照射により硬化させたところ、高粘度によって重合性単量体の衝突因子が低下し重合率が低くなるために十分な機械的強度得られないという問題があることがわかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2014/021343号
【特許文献2】特開2015-67543号公報
2 発明が解決しようとする課題
【0006】
本発明は、従来技術が抱える上記の課題を解決すべくなされたものであって、機械的強度及び口腔内環境下において長期間に渡って審美性に優れる歯科用硬化性組成物、並びに、その歯科用硬化性組成物又はその硬化物からなる、歯科用コンポジットレジン及び歯科用ミルブランクを提供することを目的とする。
3 課題を解決するための手段
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、無機充填材(A)、重合性単量体(B)及び加熱重合開始剤(C)を含み、重合性単量体(B)を特定の組成とし、かつ特定の加熱重合開始剤(C)を用いることによって、上記課題を一挙に解決できることを見出し、この知見に基づいてさらに研究を進め、本発明を完成するに至った。
4 発明の効果
【0009】
本発明の歯科用硬化性組成物の硬化物は、機械的強度に優れ、かつ口腔内環境下において長期間に渡って滑沢耐久性が高く、審美性にも優れている。
5 重合性単量体(B)、重合性単量体(B-1)
【0033】
〔重合性単量体(B)〕
本発明で用いられる重合性単量体(B)は、特定の質量比を満たす限り、歯科用硬化性組成物(歯科用コンポジットレジン等)に使用される公知の重合性単量体が何ら制限無く用いられるが、一般には、ラジカル重合性単量体が好適に用いられる。・・・
【0034】
本発明で用いられる重合性単量体(B)において、粘度が300mPa・s/25℃以上1500000mPa・s/25℃以下である重合性単量体(B-1)(以下、単に重合性単量体(B-1)と称することがある)と、粘度が1mPa・s/25℃以上300mPa・s/25℃未満である重合性単量体(B-2)(以下、単に重合性単量体(B-2)と称することがある)との質量比が、90:10~100:0である。重合性単量体(B-1)の粘度が1500000mPa・s/25℃を超えると、後述の10時間半減期温度(τ)が90~170℃である加熱重合開始剤(C)を用いた場合でも、重合性単量体(B)の衝突因子が低下してしまい重合率が低下することで、得られる硬化物の機械的強度が低下する恐れがある。重合性単量体(B-1)の粘度の好ましい範囲としては、300~1000000mPa・s/25℃が好ましく、300~500000mPa・s/25℃がより好ましく、300~100000mPa・s/25℃がさらに好ましく、1000~100000mPa・s/25℃が特に好ましい。
6 実施例
【0054】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
・・・
【0056】
[重合性単量体(B-1)]
UDMA:[2,2,4-トリメチルヘキサメチレンビス(2-カルバモイルオキシエチル)]ジメタクリレート(共栄社化学株式会社製);粘度8000mPa・s/25℃
D2.6E:2,2-ビス〔4-メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル〕プロパン(エトキシ基の平均付加モル数2.6);粘度1200mPa・s/25℃
Bis-MEPP:2,2-ビス〔4-メタクリロイルオキシエトキシフェニル〕プロパン(新中村化学工業株式会社製);粘度1000mPa・s/25℃
[重合性単量体(B-2)]
TEGDMA:トリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業株式会社製);粘度9mPa・s/25℃
・・・
【0076】
各重合性単量体含有組成物の製造例を下記表2に示す。
【0077】
【表2】
[図:0001417634000016.jpg]
・・・
【0084】
【表3】
[図:0001417634000017.jpg]
【0085】
実施例1~11において得られた歯科用ミルブランクは高い機械的強度を有していることがわかった。さらに、滑沢耐久性が高いため、ミルブランク表面のツヤを長期間に渡って維持できることから審美にも優れることがわかった。これに対して、比較例1~4で得られた歯科用ミルブランクは機械的強度及び滑沢耐久性が低かった。
【0086】
以上の結果より、本発明の歯科用硬化性組成物の硬化物は、機械的強度及び審美性に優れることがわかった。
7 本件発明の課題について
上記1~3(本件明細書【0001】~【0007】)の記載からみて、本件発明が解決しようとする課題(以下「本件発明の課題」という。)は「機械的強度及び口腔内環境下において長期間に渡って審美性に優れる歯科用硬化性組成物、並びに、その歯科用硬化性組成物又はその硬化物からなる、歯科用コンポジットレジン及び歯科用ミルブランクを提供すること」である。
第9 当審の判断
1 取消理由について
(1)サポート要件(理由1)について
ア 本件発明の課題は、上記第8の7のとおりである。
イ 本件発明について
本件発明1の歯科用硬化性組成物において、本件訂正により、重合性単量体(B-1)の粘度は1000mPa・s/25℃以上100000mPa・s/25℃以下とされている。
また、上記第8の6のとおり、本件明細書の実施例には、歯科用硬化性組成物において、重合性単量体(B-1)の粘度が1000、1200、8000mPa・s/25℃であるものから得られた歯科用ミルブランクが機械的強度及び審美性に優れること、すなわち、本件発明の課題が解決し得ることが確認されている。
さらに、特許権者は、本件明細書の重合性単量体(B-1)として挙げられているBis-GMA(2,2-ビス〔4-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン)(【0035】)に構造が類似している、エポライト3002メタクリル酸付加物(粘度60000mPa・s/25℃、カタログ上限値)又はエポライト3002アクリル酸付加物(粘度80000mPa・s/25℃、カタログ上限値)、及び、TEGDMAを含有する重合性単量体含有組成物(M11、M12)を含有する追加実施例12、13を示し、重合性単量体(B-1)の粘度60000又は80000mPa・s/25℃において、曲げ強さ及び滑沢耐久性は、本件明細書のその他の実施例と同様に課題を解決できることを確認している(第7の1)。
そうすると、重合性単量体(B-1)の粘度1000、1200、8000、60000、80000mPa・s/25℃であるものは、本件発明の課題が解決し得ることが確認されているといえるから、重合性単量体(B-1)の粘度の下限値である1000mPa・s/25℃や上限値である100000mPa・s/25℃についても、本件発明の課題が解決し得ると理解することができる。
したがって、本件発明1は、重合性単量体(B-1)の粘度1000mPa・s/25℃以上100000mPa・s/25℃以下の全ての範囲にわたって、本件発明の課題が解決し得ると認識することができる。本件発明2~9についても同様である。
よって、本件発明は、発明の詳細な説明に記載したものであるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。
(2)実施可能要件(理由2)について
上記(1)のとおり、本件発明の重合性単量体(B-1)の粘度1000mPa・s/25℃以上100000mPa・s/25℃以下の全ての範囲にわたって、曲げ強さ及び滑沢耐久性の効果を奏することがいえる。
よって、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件発明1~9を実施することができる程度に記載したものであるから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしている。
(3)新規性(理由3)、進歩性(理由4)について
ア 甲2発明との対比・判断
(ア)本件発明1について
a 新規性(理由3)について
甲2発明の「歯科用切削加工用ブロック用の重合性組成物」について、「重合性」は本件発明1の「硬化性」に相当し、甲2の【0001】には、「歯科治療における義歯床等に用いられる歯科用補綴物」と記載されていることから、本件発明1の「歯科用硬化性組成物」に相当する。
甲2発明の「無機フィラー(d):アエロジルR972」は、本件発明1の「無機充填材(A)」に相当する。
甲2発明の「多官能(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(b-2):UDMA」は、本件明細書の【0056】に「[重合性単量体(B-1)] UDMA・・・;粘度8000mPa・s/25℃」と記載されていることからみて、本件発明1の「1000mPa・s/25℃以上100000mPa・s/25℃以下である重合性単量体(B-1)」に相当する。
そして、甲2発明の「歯科用切削加工用ブロック用の重合性組成物」が「多官能(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(b-2):UDMA(2,2,4-トリメチルヘキサメチレンビス(2-カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレート)100重量部」を含むことは、本件発明1の「重合性単量体(B)」が「重合性単量体(B-1)を含み、さらに必要に応じて」、「重合性単量体(B-2)を含み、前記重合性単量体(B-1)と、前記重合性単量体(B-2)との質量比が、90:10~100:0」であることに相当する。
甲2発明の「化学重合開始剤(c-1):THP」は、本件明細書の【0057】に「[加熱重合開始剤(C)] THP・・・(τ=152.9℃・・・)」と記載されていることからみて、本件発明1の「加熱重合開始剤(C)」であって、その10時間半減期温度(τ)が90~170℃である」ことに相当する。
一方、甲2発明の「無機フィラー(d):アエロジルR972」の配合量は、UDMA100重量部に対して、50重量部であり、本件発明1の「前記無機充填材(A)の含有量が、前記重合性単量体(B)100質量部に対して、100~600質量部」と相違している。
そうすると、少なくともこの点において、本件発明1と甲2発明とは相違している(以下「相違点1」という。)から、本件発明1は甲2に対して新規性を有する。
b 進歩性(理由4)について
相違点1について検討する。
甲2には、無機フィラー(d)の配合量は、「硬化前の組成物の取り扱い性及び切削加工用ブロックの機械的強度の観点から、成分(a)と成分(b)の総量100重量部に対して、0.1~30重量部以下であることが好ましく、0.5~20重量部以下であることがより好ましく、1.0~15重量部以下であることがさらに好ましい。フィラー(d)の含有量が30重量部以下であると硬化前の組成物の取り扱い性とブロックの耐衝撃性が良好に保たれる。」(【0074】)と記載されている。
そうすると、甲2発明は、そもそも、甲2における比較例を基にする発明であって、甲2の技術思想の対象外である発明であるから、甲2の記載に基づいて、無機フィラー(d)の配合量を適宜に変更することはできないし、仮に、甲2の記載を参酌したとしても、上記のとおり、無機フィラー(d)の配合量は、0.1~30重量部以下であることが好ましいとされているから、重合性単量体(b-2)のUDMA100重量部に対して、100~600質量部の値とする動機づけはない。
したがって、本件発明1は甲2に対して進歩性を有する。
c よって、本件発明1は甲2に記載された発明ではなく、甲2の記載から容易に発明をすることができたものでもない。
(イ)本件発明3~7について
本件発明3~7は、本件発明1を引用するものであるから、本件発明1の判断と同様に、甲2に記載された発明ではなく、甲2の記載から容易に発明をすることができたものでもない。
イ 甲3発明との対比・判断
(ア)本件発明1について
a 新規性(理由3)について
甲3発明の「歯科用熱硬化性ペースト」は、本件発明1の「歯科用硬化性組成物」に相当する。
甲3発明の「ST Nanozirconia」、「ST 20nm Silica」及び「ST Silica/Ziconia Clusters」は、甲3の[0093]~[0095]の記載からみて、本件発明1の「無機充填材(A)」に相当する。
本件発明1の重合性単量体(B-1)の粘度は、訂正により1000mPa・s/25℃以上100000mPa・s/25℃以下となっている。
甲3発明の「UDMA」は、本件明細書の【0056】「[重合性単量体(B-1)] UDMA:[2,2,4-トリメチルヘキサメチレンビス(2-カルバモイルオキシエチル)]ジメタクリレート(・・・);粘度8000mPa・s/25℃」の記載からみて、本件発明1の「重合性単量体(B-1)」に相当する。
BisGMA(2,2-ビス〔4-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン)の粘度は、市販の銘柄によって変動するとしても、少なくとも566060mPa・s/25℃を超える(令和6年5月27日提出の意見書(以下「特許権の意見書」という。)の参考資料2のTable 1 では、1200Pa・s(=1200000mPa・s)、同意見書の参考資料3のTable 2 では、56606Pa・s/25℃(=566060mPa・s/25℃))。
また、BisEMA-6(ビスフェノールAエトキシラートジメタクリレート)(n+m=6)について、BisEMA-4(ビスフェノールAのEO付加物ジメタクリレート)(n+m=4)が約900mPa・s/25℃であり(特許権者の意見書の参考資料2のTable 1 では、0.9Pa・s(=900mPa・s)、BisEMA-10(n+m=10)が約500~700mPa・s/25℃である点から(上記参考資料1の22頁)、BisEMA-6の粘度は約500~900mPa・s/25℃となるものと考えられる。
そうすると、1000mPa・s/25℃以上100000mPa・s/25℃以下の粘度の範囲内に含まれるものは、UDMAのみである。
また、甲3発明の「TEGDMA」及び「PEG 600 DM」は、本件明細書【0056】「[重合性単量体(B-2)] TEGDMA:トリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業株式会社製);粘度9mPa・s/25℃」及び【0036】「〔重合性単量体(B-2)〕 重合性単量体(B-2)としては」、「エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート」「等の脂肪族系二官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体」の記載からみて、本件発明1の「重合性単量体(B-2)」に相当する。
甲3発明の「ジクミルペルオキシド」は、10時間半減期温度が116.4℃である重合開始剤(日油株式会社パンフレット、2007年11月作成、https://www.nof.co.jp/assets/images/business/chemical/chemical-product01/percumyl-d.pdf)であるから、本件発明1の「加熱重合開始剤(C)」に相当する。
一方、甲3発明において、本件発明1に対応する重合性単量体(B-1)に相当する成分と、重合性単量体(B-2)に相当する成分との質量比は、(UDMA):(TEGDMA+PEG 600DM)=35質量%:5質量%(90/10 BisGMA/TEGDMA=12.027質量%であるため、TEGDMAは1.2027質量%であり、PEG 600DMが3.784質量%であるため、TEGDMA及びPEG 600DMで合計4.9867質量%、すなわち、約5質量%)であり、重合性単量体(B-1)と、重合性単量体(B-2)との質量比は、87.5:12.5となる。これに対して、本件発明1では、前記重合性単量体(B-1)と、前記重合性単量体(B-2)との質量比が、90:10~100:0であるため、本件発明1は、重合性単量体(B-1)と重合性単量体(B-2)との質量比の点で、甲3発明と相違する(以下「相違点2」という。)から、少なくともこの点において、本件発明1は甲3に対して新規性を有する。
b 進歩性(理由4)について
相違点2について検討する。
甲3には、本件発明1に対応する重合性単量体(B-1)に相当する成分と、重合性単量体(B-2)に相当する成分との質量比について、何ら記載がない。
特許権者の意見書の実験データにおいて、本件発明1に対応する重合性単量体(B-1)/重合性単量体(B-2)に相当する成分に相当するUDMA/3Gの質量比を、本件発明1の範囲外の73:27とした重合性単量体含有組成物(M13)を含有する追加比較例3は、滑沢耐久性が66%であり、本件明細書の実施例(第8の6)は、24%以上優れた滑沢耐久性を有し、また、曲げ強さは、追加比較例3は、219MPaであり、本件明細書の実施例(第8の6)は、88MPa以上優れた曲げ強さを有し、40%以上も高くなっている(第7の2)。
そうすると、甲3発明において、相違点2に係る本件発明1に対応する重合性単量体(B-1)に相当する成分と重合性単量体(B-2)に相当する成分との質量比とする動機づけはなく、また、当該質量比としたことによる、本件発明1の効果は予測することができないものである。
c よって、本件発明1は甲3に記載された発明ではなく、甲3の記載から容易に発明をすることができたものでもない。
(イ)本件発明2~9について
本件発明2~7は、本件発明1を引用するものであるから、本件発明1の判断と同様に、甲3に記載された発明ではなく、また、本件発明2~9は、本件発明1を引用するものであるから、本件発明1の判断と同様に、甲3の記載から容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 甲4発明との対比・判断
(ア)本件発明1について
進歩性(理由4)について
甲4発明の「歯科用硬化性組成物」は、本件発明1の「歯科用硬化性組成物」に相当する。
甲4発明の「充填材:F1(シリカ-ジルコニア(球状 平均粒径0.40μm))」及び「充填材:F3(シリカ-ジルコニア(球状 平均粒径0.07μm))」は、本件発明1の「無機充填材(A)」に相当する。
甲4発明の「重合性単量体:UDMA」は、本件明細書【0056】の「[重合性単量体(B-1)] UDMA:[2,2,4-トリメチルヘキサメチレンビス(2-カルバモイルオキシエチル)]ジメタクリレート(・・・);粘度8000mPa・s/25℃」の記載からみて、本件発明1の「重合性単量体(B-1)」に相当する。
甲4発明の「重合性単量体:3G(トリエチレングリコールジメタクリレート)」は、本件明細書【0056】「[重合性単量体(B-1)]」「TEGDMA:トリエチレングリコールジメタクリレート(・・・);粘度9mPa・s/25℃」という記載からみて、本件発明1の「重合性単量体(B-2)」に相当する。
甲4発明の「熱重合開始剤:tHPO(tert-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカルボネート(10時間半減期温度℃95℃))」は、本件発明1の「加熱重合開始剤(C)」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲4発明は、本件発明1が、「前記重合性単量体(B-1)と、前記重合性単量体(B-2)との質量比が、90:10~100:0」であるのに対して、甲4発明は、「22:8」(22/8)、すなわち、「73:27」である点において相違する(以下「相違点3」という。)。
相違点3について検討する。
甲4【0019】には、重合性単量体は、すべて単独で、もしくは組み合わせて使用することができることが記載されており、組み合わせて使用する際の質量比は任意に設定することができる。
しかし、甲4には、相違点3に係る本件発明1に対応する重合性単量体(B-1)に相当する成分と重合性単量体(B-2)に相当する成分との質量比とする動機付けはなく、特許権の意見書の実験データにおいて、甲4発明に相当するUDMA/3Gの質量比を73:27とした重合性単量体含有組成物(M13)を含有する追加比較例3では、滑沢耐久性が66%であり、本件明細書の実施例(第8の6)は、24%以上優れた滑沢耐久性を有し、また、曲げ強さは、比較例3は、219MPaであり、本件明細書の実施例(第8の6)は、88MPa以上優れた曲げ強さを有し、40%以上も高くなっている(第7の2)
そうすると、甲4発明において、相違点3に係る本件発明1に対応する重合性単量体(B-1)に相当する成分と重合性単量体(B-2)に相当する成分との質量比としたことによる、本件発明1の効果は予測することができないものである。
よって、本件発明1は甲4の記載から容易に発明をすることができたものではない。
(イ)本件発明2~4、6~9について
本件発明2~4、6~9は、本件発明1を引用するものであるから、本件発明1の判断と同様に、甲4の記載から容易に発明をすることができたものでもない。
エ 甲8発明との対比・判断
(ア)本件発明1について
進歩性(理由4)について
本件発明1の歯科用硬化性組成物において、本件訂正により、「10時間半減期温度(τ)が90℃より低い加熱重合開始剤を含まない」とされている。
甲8発明の「歯科用重合性単量体組成物」は、本件発明1の「歯科用硬化性組成物」に相当する。
甲8発明の「無機粒子(c-1):表面処理された無機充填材(C):OX 50(微粒子シリカ(平均一次粒子径0.04μm))」は、本件発明1の「無機充填材(A)」に相当する。
甲8発明の「重合性単量体(A):UDMA」は、本件明細書【0056】の「[重合性単量体(B-1)] UDMA:[2,2,4-トリメチルヘキサメチレンビス(2-カルバモイルオキシエチル)]ジメタクリレート(・・・);粘度8000mPa・s/25℃」という記載からみて、本件発明1の「重合性単量体(B-1)」に相当する。
甲8発明の「重合性単量体(A):TEGDMA」は、本件明細書【0056】の「[重合性単量体(B-2)] TEGDMA:トリエチレングリコールジメタクリレート(・・・);粘度9mPa・s/25℃」という記載からみて、本件発明1の「重合性単量体(B-2)」に相当する。
甲8発明の「加熱重合開始剤(B):パーヘキサV(10時間半減期温度104.5℃)」は、本件発明1の「加熱重合開始剤(C)」に相当する。
一方、甲8発明の「加熱重合開始剤(B):BPO(ベンゾイルパーオキサイド(10時間半減期温度73.6℃))」は、「10時間半減期温度(τ)が90℃より低い加熱重合開始剤」であり、本件訂正により、本件発明1には含まないものとされているから、少なくともこの点において、本件発明と甲8発明は相違する(以下「相違点4」という。)
相違点4について検討する。
甲8は、10時間半減期温度(τ1)が50~75℃である単官能性重合開始剤(b-1)及び10時間半減期温度(τ2)が80~120℃である多官能性重合開始剤(b-2)という2種類の加熱重合開始剤を使用することが特徴であり、50~75℃である単官能性重合開始剤(b-1)を含まない歯科用硬化性組成物は、甲8の発明の範囲外である比較例3とされており、「比較例3の、多官能性重合開始剤(b-2)のみを使用した場合においても、加熱重合時にクラックの発生が確認された」と記載されている(表2、【0115】、【0116】)。
そうすると、甲8発明において、甲8の特徴に反して必須の構成要件である10時間半減期温度(τ1)が50~75℃である単官能性重合開始剤(b-1):BPO(ベンゾイルパーオキサイド(10時間半減期温度73.6℃))を除外し、他の成分のみを取り出す動機付けは存在しないし、50~75℃である単官能性重合開始剤(b-1)を含まないとしたことによる、本件発明1の効果は予測することができないものである。
よって、本件発明1は甲8の記載から容易に発明をすることができたものではない。
(イ)本件発明2~4、6~9について
本件発明2~4、6~9は、本件発明1を引用するものであるから、本件発明1の判断と同様に、甲8の記載から容易に発明をすることができたものでもない。
2 取消理由で採用しなかった申立理由及び当審の判断
取消理由で採用しなかった申立理由の概要及び当審の判断は、以下のとおりである。
(1)サポート要件(請求項1~9)
ア 無機充填剤(A)の含有量について
申立人は、本件発明の無機充填剤(A)の含有量に関するサポート要件について、概ね以下のとおり主張している。
[図:0001417634000018.jpg]
本件発明1では、無機充填剤(A)の含有量について何らの特定もされておらず、そのため本件発明1の範囲には、無機充填剤の含有量が歯科用硬化性組成物の粘度を上昇させる程度である態様が含まれる。
また本件発明の実施例としては、重合性単量体組成物と無機充填剤の含有量の割合が38~18:62~82質量部である場合しか示されておらず、本件発明の効果が確認できた範囲は、重合性単量体組成物と無機充填剤の含有量の割合が38~18:62~82質量部の場合にとどまる。
すなわち、本件発明1は、重合性単量体組成物と無機充填剤の含有量の割合が38~18:62~82質量部の範囲内であることの特定がない点において、本件明細書の発明の詳細な説明において本件課題が解決されると当業者が認識できる範囲を超えて、特許を請求するものであり、本件明細書の発明の詳細な説明に記載された内容は、本件発明の範囲まで、拡張ないし一般化できるものではない。よって、本件発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
この点について検討する。
本件発明の課題は、「機械的強度及び口腔内環境下において長期間に渡って審美性に優れる歯科用硬化性組成物、並びに、その歯科用硬化性組成物又はその硬化物からなる、歯科用コンポジットレジン及び歯科用ミルブランクを提供すること」である(第8の7)。
本件明細書には、無機充填剤(A)に関して、歯科用硬化性組成物(特に、歯科用コンポジットレジン)の充填材として用いられている公知の無機粒子を用いることができること(【0012】)、形状に特に制限はないこと(【0015】)、含有量としては、重合性単量体(B)100質量部に対して、100~600質量部が好ましく、150~550質量部がより好ましく、200~500質量部がさらに好ましいこと(【0020】)が記載されている。
また、本件発明の実施例は、重合性単量体組成物と無機充填剤の含有量の割合が38~18:62~82質量部であるが、これは、100:163(=62/38)~456(=82/18)に相当する。
そうすると、本件発明1は「無機充填材(A)の含有量が、前記重合性単量体(B)100質量部に対して、100~600質量部」とされており、本件発明の実施例において、重合性単量体組成物と無機充填剤の含有量の割合として100:163~456において、本件発明の課題を解決することが確認されているから、本件明細書のその他の記載を合わせ見ると、本件発明の課題を解決できると認識することができる。
したがって、申立人の主張を採用することができない。
イ 無機充填剤(A)の粒子径について
申立人は、本件発明の無機充填剤(A)の粒子径に関するサポート要件について、概ね以下のとおり主張している。
[図:0001417634000019.jpg]
本件発明1では、無機充填剤の平均粒子径について何らの特定もされておらず、そのため本件発明1の範囲には、無機充填剤の平均粒子径が歯科用硬化性組成物の粘度を大きく上昇させる程度に小さい態様が含まれる(甲1【0055】)。
また本件発明の実施例においても、無機充填剤の平均粒子径が歯科用硬化性組成物の粘度を大きく上昇させる程度に小さい場合に本件発明の効果が奏されることは示されていない。
そのため、本件特許の出願時の技術常識に照らしても、当業者において無機充填剤の平均粒子径が歯科用硬化性組成物の粘度を大きく上昇させる程度に小さい場合について本件発明の効果が奏されるものと認識し得ることはできない。
すなわち、本件発明1は、無機充填剤の平均粒子径の特定がない点におい て、本件明細書の発明の詳細な説明において本件課題が解決されると当業者が認識できる範囲を超えて、特許を請求するものであり、本件明細書の発明の詳細な説明に記載された内容は、本件発明の範囲まで、拡張ないし一般化できるも のではない。よって、本件発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
この点について検討する。
本件明細書には、「無機充填材(A)の平均一次粒子径は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、0.01~5μmが好ましく、0.02μm以上であることがより好ましく、0.04μm以上であることがさらに好ましく、また、3μm以下であることがより好ましく、2μm以下であることがさらに好ましい。平均一次粒子径が0.01μmよりも小さいと機械的強度が損なわれやすく、また5μmよりも大きいと硬化物の研磨性が損なわれ、歯科材料に求められる審美性が低下するおそれがある。」(【0016】)と記載されている。
また、本件明細書の実施例において、バリウムガラス(平均一次粒子径2.0μm、1.5μm、0.7μm、0.180μm)、微粒子シリカ(平均一次粒子径0.04μm)の無機充填材及び表面処理剤を用いて、製造例1~5のよって得られた無機充填材(A1)~(A5)、超微粒子シリカ(平均一次粒子径15nm、メチルエチルケトン分散シリカゾル)である無機充填材(A7)が用いられ、本件発明の課題を解決することが確認されている。
そうすると、本件発明に無機充填材(A)粒子径の規定がないとしても、本件発明の無機充填材(A)の粒子径は、当然、歯科用硬化性組成物という用途に実用可能なもので、本件発明の効果を奏する範囲内のものを使用すると理解できるから、本件発明の課題を解決できると認識することができる。
したがって、申立人の主張を採用することができない。
(2)実施可能要件(請求項1~9)
ア 無機充填剤(A)の含有量について
申立人は、本件発明の無機充填剤(A)の含有量に関する実施可能要件について、概ね以下のとおり主張している。
[図:0001417634000020.jpg]
上記(1)アのとおり、本件の発明の詳細な説明の記載は、重合性単量体組成物と無機充填剤の含有量の割合が38~18:62~82質量部の範囲外の場合についてその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が本件発明1の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。
この点について検討する。
上記(1)アのとおり、本件発明1は「無機充填材(A)の含有量が、前記重合性単量体(B)100質量部に対して、100~600質量部」とされており、本件発明の実施例において、重合性単量体組成物と無機充填剤の含有量の割合として100:163~456において、実施できることが確認されているから、本件明細書のその他の記載を合わせ見ると、本件発明を実施することができると認識することができる。
したがって、申立人の主張を採用することができない。
イ 無機充填材(A)の粒子径について
申立人は、本件発明の無機充填剤(A)の粒子径に関する実施可能要件について、概ね以下のとおり主張している。
[図:0001417634000021.jpg]
上記(1)イのとおり、本件の発明の詳細な説明の記載は、無機充填剤の平均粒子径が歯科用硬化性組成物の粘度を大きく上昇させる程度に小さい場合についてその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が本件発明1の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。
上記(1)イのとおり、本件発明に無機充填材(A)粒子径の規定がないとしても、本件発明の無機充填材(A)の粒子径は、当然、歯科用硬化性組成物という用途に実用可能なもので、本件発明の効果を奏する範囲内のものを使用すると理解できるから、本件発明を実施することができると認識することができる。
したがって、申立人の主張を採用することができない。
(3)進歩性について
ア 甲2発明との対比・判断
本件発明8、9は、本件発明1を引用するものであるから、本件発明1の判断(上記1(3)ア(ア))と同様に、甲2の記載から容易に発明をすることができたものでもない。
イ 甲4発明との対比・判断
本件発明5は、本件発明1を引用するものであるから、本件発明1の判断(上記1(3)ウ(ア))と同様に、甲4の記載から容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 甲5発明との対比・判断
(ア)本件発明1について
本件発明1の歯科用硬化性組成物において、本件訂正により、「10時間半減期温度(τ)が90℃より低い加熱重合開始剤を含まない」とされている。
甲5発明の「歯科切削加工用複合レジン材料」は、本件発明1の「歯科用硬化性組成物」に相当する。
甲5発明の「超微粒子SiO2フィラー」は、本件発明1の「無機充填材(A)」に相当する。
甲5発明の「UDMA(ウレタンジメタクリレート)」は、本件発明1の「重合性単量体(B-1)」に相当する。
甲5発明の「TEGDMA(トリエチレングリコールジメタクリレート)」は、本件発明1の「重合性単量体(B-2)」に相当する。
甲5発明の「UDMA(ウレタンジメタクリレート)/TEGDMA(トリエチレングリコールジメタクリレート)=99/1(重量%)」は、本件発明1の「前記重合性単量体(B-1)と、前記重合性単量体(B-2)との質量比が、90:10~100:0」に相当する。
一方、甲5発明の「熱重合開始剤としての1重量%のベンゾイルパーオキサイド(BPO)」は、本件明細書【0057】によれば、τ=73.6℃であるから、「10時間半減期温度(τ)が90℃より低い加熱重合開始剤」であり、本件発明1には含まないものとされているから、少なくとも、この点において、本件発明1と甲5発明は相違する(以下「相違点5」という。)
相違点5について検討する。
甲5の【0065】には、熱重合開始剤の具体例として、ベンゾイルパーオキサイドとともにパーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカ-ボネート、2,2’-アゾビスイソプチロニトリル、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、4,4、-アゾビス-4-シアノバレリック酸、1,1’-アゾビス-1-シクロへキサンカ-ボニトリル、ジメチル-2,2’-アゾビスイソプチラート、2,2’-アゾビス-(2-アミノブロバン)ジヒドロクロライド等が記載されている。
しかし、甲5には、甲5発明においてベンゾイルバーオキサイドを、熱重合開始剤の具体例の中から「10時間半減期温度(τ)が90~170℃である」に該当するジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタール及びハイドロパーオキサイドに変更する動機付けとなる記載はなく、また、本件明細書において、甲5発明に相当する、ベンゾイルバーオキサイドを含有するものは、比較例2、3とされ、その効果は本件発明の実施例に比較して低いものとなっており、甲5発明において、相違点5に係る本件発明1の構成とすることによる効果は、甲5及びその他の甲号証の記載から予測しうるものではない。
よって、本件発明1は甲5の記載から容易に発明をすることができたものではない。
(イ)本件発明2~9について
本件発明2~9は、本件発明1を引用するものであるから、本件発明1の判断と同様に、甲5及びその他の甲号証の記載から容易に発明をすることができたものでもない。
エ 甲6発明との対比・判断
(ア)本件発明1について
本件発明1の歯科用硬化性組成物において、本件訂正により、「10時間半減期温度(τ)が90℃より低い加熱重合開始剤を含まない」とされている。
甲6発明の「歯科用レジン材料」は、本件発明1の「歯科用硬化性組成物」に相当する。
甲6発明の「充填材としてのMPTS(γ-メタクリロキシプロリルトリエトキシシラン)12質量%処理バリウムガラス」は、本件発明1の「無機充填材(A)」に相当する。
甲6発明の「UDMA(ウレタンジメタクリレート)」は、本件発明1の「重合性単量体(B-1)」に相当する。
甲6発明の「Bis-MEPP(2,2-ビス(4-メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン)」は、本件発明1の「重合性単量体(B-2)」に相当する。
一方、甲6発明の「60質量部のUDMA(ウレタンジメタクリレート)及び40質量部のBis-MEPP(2,2-ビス(4-メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン)」は、本件発明1の「前記重合性単量体(B-1)と、前記重合性単量体(B-2)との質量比が、90:10~100:0」と相違する。
さらに、甲6発明の「加熱重合開始剤としての」「BPO(ベンゾイルパーオキサイド)」は、本件明細書【0057】によれば、τ=73.6℃であるから、「10時間半減期温度(τ)が90℃より低い加熱重合開始剤」であり、本件発明1には含まないものとされているから、少なくともこの点において、本件発明と甲6発明は相違する(以下「相違点6」という。)
相違点6について検討する。
甲6の【0018】には、熱重合開始剤の具体例として、ベンゾイルパーオキサイドとともに、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカ-ボネート、2,2’-アゾビスイソブチロニトリノレ、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチノレバレロトリル、4,4’-アゾビス-4-シアノバレリック酸、1,1’-アゾビス-1-シクロへキサンカ-ボニトリル、ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチラート、2,2’-アゾビス-(2-アミノブロバン)ジヒドロクロライド等が記載されている
しかし、甲6には、甲6発明においてベンゾイルバーオキサイドを、熱重合開始剤の具体例の中から「10時間半減期温度(τ)が90~170℃である」に該当するジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタール及びハイドロバーオキサイドに変更する動機付けとなる記載はなく、また、本件明細書において、甲6発明に相当する、ベンゾイルパーオキサイドを含有するものは、比較例2、3とされ、その効果は本件発明の実施例に比較して低いものとなっており、甲6発明において、相違点6に係る本件発明1の構成とすることによる効果は、甲6及びその他の甲号証の記載から予測しうるものではない。
よって、本件発明1は甲6の記載から容易に発明をすることができたものではない。
(イ)本件発明2~9について
本件発明2~9は、本件発明1を引用するものであるから、本件発明1の判断と同様に、甲6及びその他の甲号証の記載から容易に発明をすることができたものでもない。
オ 甲7発明との対比・判断
(ア)本件発明1について
本件発明1の歯科用硬化性組成物において、本件訂正により、「10時間半減期温度(τ)が90℃より低い加熱重合開始剤を含まない」とされている。
甲7発明の「歯科用レジン材料」は、本件発明1の「歯科用硬化性組成物」に相当する。
甲7発明の「充填材としてのMPTS(γ-メタクリロキシプロリルトリエトキシシラン)12質量%処理バリウムガラス」は、本件発明1の「無機充填材(A)」に相当する。
甲7発明の「UDMA(ウレタンジメタクリレート)」は、本件発明1の「重合性単量体(B-1)」に相当する。
甲7発明の「Bis-MEPP(2,2-ビス(4-メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン)」は、本件発明1の「重合性単量体(B-2)」に相当する。
一方、甲7発明の「60質量部のUDMA(ウレタンジメタクリレート)及び40質量部のBis-MEPP(2,2-ビス(4-メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン)」は、本件発明1の「前記重合性単量体(B-1)と、前記重合性単量体(B-2)との質量比が、90:10~100:0」と相違する。
甲7発明の「加熱重合開始剤としての」「BPO(ベンゾイルパーオキサイド)」は、本件明細書【0057】によれば、τ=73.6℃であるから、「10時間半減期温度(τ)が90℃より低い加熱重合開始剤」であり、本件発明1には含まないものとされているから、少なくともこの点において、本件発明と甲7発明は相違する(以下「相違点7」という。)
相違点7について検討する。
甲7の[0016]には、熱重合開始剤の具体例として、ベンゾイルパーオキサイドとともにパーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカ-ボネート、2,2’-アゾビスイソプチロニトリル、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、4,4、-アゾビス-4-シアノバレリック酸、1,1’-アゾビス-1-シクロへキサンカ-ボニトリル、ジメチル-2,2’-アゾビスイソプチラート、2,2’-アゾビス-(2-アミノブロバン)ジヒドロクロライド等が記載されている。
しかし、甲7には、甲7発明においてベンゾイルバーオキサイドを、熱重合開始剤の具体例の中から「10時間半減期温度(τ)が90~170℃である」に該当するジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタール及びハイドロパーオキサイドに変更する動機付けとなる記載はなく、また、本件明細書において、甲7発明に相当する、ベンゾイルパーオキサイドを含有するものは、比較例2、3とされ、その効果は本件発明の実施例に比較して低いものとなっており、甲7発明において、相違点7に係る本件発明1の構成とすることによる効果は、甲7及びその他の甲号証の記載から予測しうるものではない。
よって、本件発明1は甲7の記載から容易に発明をすることができたものではない。
(イ)本件発明2~9について
本件発明2~9は、本件発明1を引用するものであるから、本件発明1の判断と同様に、甲7及びその他の甲号証の記載から容易に発明をすることができたものでもない。
カ 甲8発明との対比・判断
本件発明5は、本件発明1を引用するものであるから、本件発明1の判断(上記1(3)エ(ア))と同様に、甲8の記載から容易に発明をすることができたものでもない。
第10 むすび
以上のとおりであるから、当審で通知した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立理由によっては、本件請求項1~9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-701296