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特許異議申立

2024-700059

歯科用ミルブランクアセンブリ

審判番号
2024-700059
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-202892
登録番号
7315316
請求日
2024年01月25日
審決日
2026年06月11日
公報発行日
2026年09月25日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】クラレノリタケデンタル株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人青藍国際特許事務所
  • 【権利者代理人】鎌田 耕一
  • 【権利者代理人】田村 康晃
  • 【異議申立人】中丸 剛
審判長/審判官
  • 審判長 井上 哲男
  • 審判官 安井 寿儀
  • 審判官 北川 大地
分類
P1651.121-YAA(A61C) / P1651.536-YAA(A61C) / P1651.537-YAA(A61C)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第4項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7315316号発明「歯科用ミルブランクアセンブリ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7315316号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正することを認める。 特許第7315316号の請求項1~10に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7315316号(以下「本件特許」という。)の請求項1~10に係る特許についての出願は、平成30年10月29日の出願であって、令和 5年 7月18日にその特許権の設定登録がされ、同年 7月26日に特許掲載公報が発行された。 その後、令和 6年 1月25日に特許異議申立人 中丸 剛(以下「異議申立人」という。)により、請求項1~10に係る特許に対する特許異議の申立てがされた。 特許異議の申立て以降の手続きの経緯は、以下のとおりである。 令和 6年 3月 6日提出 手続補正書(特許異議申立書、証拠説明 書) 同年 3月21日付け 取消理由通知書 同年 5月27日提出 訂正請求書及び意見書(特許権者) 同年 6月12日付け 手続補正指令書(方式) 同年 7月10日提出 手続補正書(同年 5月27日提出の訂正 請求書の補正) 同年11月 7日付け 訂正請求があった旨の通知(特許法第12 0条の5第5項) 同年12月10日提出 意見書(異議申立人) 令和 7年 2月26日付け 訂正拒絶理由通知書 同年 3月31日提出 手続補正書(令和 6年 5月27日提出 の訂正請求書の補正)及び意見書(特許権 者) 同年 7月15日付け 取消理由通知書(決定の予告) 同年 9月16日提出 訂正請求書及び意見書(特許権者) 同年12月10日付け 取消理由通知書(決定の予告) 令和 8年 2月10日提出 訂正請求書及び意見書(特許権者) 同年 2月26日付け 訂正請求があった旨の通知(特許法第12 0条の5第5項) なお、令和 6年 5月27日提出及び令和 7年9月16日提出の訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。 また、令和 8年 2月26日付けの訂正請求があった旨の通知に対して、異議申立人から応答はなかった。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 令和 8年 2月10日提出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の請求は、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正することを求めるものであり、その内容は以下のとおりである(下線部は訂正箇所を示す。)。 なお、本件訂正は、一群の請求項である請求項〔1~10〕について請求されたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。また、明細書に係る訂正は、一群の請求項〔1~10〕に関係する訂正であるので、同条第9項で準用する同法第126条第4項に適合する。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「ミルブランク部(A)と支持部(B)を含み、該ミルブランク部(A)と該支持部(B)の圧縮せん断接着強さが1000N以上2000N以下であり、」とあるのを、 「ミルブランク部(A)と台座部を備える支持部(B)を含み、精密万能試験機(株式会社島津製作所製、オートグラフAG-I 100kN)を用いて、ミルブランク部(A)を固定し、支持部(B)の該台座部の側面において、ミルブランク部(A)と支持部(B)とが接する面から1mm離れた位置に治具が当たるように配置して、試験速度1.0mm/分の条件によって測定された該ミルブランク部(A)と該支持部(B)の圧縮せん断接着強さ試験によって測定された試験力が1159N以上1820N以下であり、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~10も同様に訂正する。)。 (2)訂正事項2 明細書の段落【0008】に、「本発明は、ミルブランク部と支持部との圧縮せん断接着強さを向上させ、」とあるのを、「本発明は、ミルブランク部と支持部との圧縮せん断接着強さ試験によって測定された試験力を向上させ、」に訂正する。 (3)訂正事項3 明細書の段落【0009】に、「耐衝撃性及び圧縮せん断接着強さに優れる歯科用ミルブランクアセンブリを提供する。」とあるのを、「耐衝撃性及び圧縮せん断接着強さ試験によって測定された試験力に優れる歯科用ミルブランクアセンブリを提供する。」に訂正する。 (4)訂正事項4 明細書の段落【0010】に、「[1]ミルブランク部(A)と支持部(B)を含み、該ミルブランク部(A)と該支持部(B)の圧縮せん断接着強さが1000N以上である、歯科用ミルブランクアセンブリ;」とあるのを、「[1]ミルブランク部(A)と支持部(B)を含み、該ミルブランク部(A)と該支持部(B)の圧縮せん断接着強さ試験によって測定された試験力が1000N以上である、歯科用ミルブランクアセンブリ;」に訂正する。 (5)訂正事項5 明細書の段落【0011】に、「本発明は、耐衝撃性及び圧縮せん断接着強さに優れ、」とあるのを、「本発明は、耐衝撃性及び圧縮せん断接着強さ試験によって測定された試験力に優れ、」に訂正する。 (6)訂正事項6 明細書の段落【0013】に、「本発明の歯科用ミルブランクアセンブリは、ミルブランク部(A)と支持部(B)を含み、該ミルブランク部(A)と該支持部(B)の圧縮せん断接着強さ(JIS K 6852-1994)が1000N以上であることが重要である。該圧縮せん断接着強さが上記の範囲であることにより、CAD/CAM加工機を用いた切削加工中において、ミルブランク部(A)と支持部(B)とが外れるリスクを低減することができる。該圧縮せん断接着強さは1200N以上であることが好ましく、1400N以上であることがより好ましく、1500N以上であることがさらに好ましい。該圧縮せん断接着強さの上限は特に制限されるものではないが、例えば2000N以下とすることができる。なお、該圧縮せん断接着強さの測定方法の詳細は後述の実施例に記載する。」とあるのを、「本発明の歯科用ミルブランクアセンブリは、ミルブランク部(A)と支持部(B)を含み、該ミルブランク部(A)と該支持部(B)の該圧縮せん断接着強さ試験によって測定された試験力が1000N以上であることが重要である。該圧縮せん断接着強さ試験によって測定された試験力が上記の範囲であることにより、CAD/CAM加工機を用いた切削加工中において、ミルブランク部(A)と支持部(B)とが外れるリスクを低減することができる。該圧縮せん断接着強さ試験によって測定された試験力は1200N以上であることが好ましく、1400N以上であることがより好ましく、1500N以上であることがさらに好ましい。該圧縮せん断接着強さ試験によって測定された試験力の上限は特に制限されるものではないが、例えば2000N以下とすることができる。なお、該圧縮せん断接着強さ試験による試験力の測定方法の詳細は後述の実施例に記載する。」に訂正する。 (7)訂正事項7 明細書の段落【0014】に、「高い圧縮せん断接着強さを発現することができる。」とあるのを、「高い圧縮せん断接着強さ試験によって測定された試験力を発現することができる。」に訂正する。 (8)訂正事項8 明細書の段落【0015】に、「圧縮せん断接着強さは高くなることから好ましい。」とあるのを、「圧縮せん断接着強さ試験によって測定された試験力は高くなることから好ましい。」に訂正する。 (9)訂正事項9 明細書の段落【0076】に、「せん断接着試験」とあるのを、「圧縮せん断接着強さ試験」に訂正し(2か所)、「圧縮せん断接着強さを測定した。」とあるのを、「圧縮せん断接着強さ試験によって試験力を測定した。」に訂正する。 (10)訂正事項10 明細書の段落【0101】に、「圧縮せん断接着強さに優れる」とあるのを、「圧縮せん断接着強さ試験によって測定された試験力に優れる」に訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的 訂正事項1のうち、「台座部を備える支持部(B)」と訂正した点については、訂正前の請求項1における「支持部(B)」が「台座部を備える」ものであることに減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 また、訂正事項1のうち、「精密万能試験機(株式会社島津製作所製、オートグラフAG-I 100kN)を用いて、ミルブランク部(A)を固定し、支持部(B)の該台座部の側面において、ミルブランク部(A)と支持部(B)とが接する面から1mm離れた位置に治具が当たるように配置して、試験速度1.0mm/分の条件によって測定された該ミルブランク部(A)と該支持部(B)の圧縮せん断接着強さ試験によって測定された試験力が1159N以上1820N以下であり、」と訂正した点については、訂正前の「圧縮せん断接着強さ」が、どのようなものを意図し、どのような条件・方法で測定されたものであるのかが明確でなかったところ、「圧縮せん断接着強さ試験によって測定された試験力」であることを特定するとともに、その測定条件を特定し、該測定条件において測定された試験力を具体的数値として特定して明確にするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。加えて、「1159N以上1820N以下であ」ると訂正した点は、訂正前の「1000N以上2000N以下であ」ることを減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項1のうち、「台座部を備える支持部(B)」と訂正した点については、本件明細書の段落【0018】及び【0085】~【0088】の記載に基づくものであり、訂正事項1のうち、「圧縮せん断接着強さ試験によって測定された試験力」と訂正した点及びその具体的数値の訂正については、本件明細書の段落【0100】の【表2】の記載に基づき、その測定条件についての訂正は、本件明細書の段落【0076】の記載に基づくものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。 したがって、訂正事項1は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正及び明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。 (2)訂正事項2~5、7、8及び10について ア 訂正の目的 訂正事項2~5、7、8及び10は、訂正前の「圧縮せん断接着強さ」がどのようなものを意図しているのかが明確でなかったところ、「圧縮せん断接着強さ試験によって測定された試験力」と特定して明確にするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項2~5、7、8及び10は、本件明細書の段落【0100】の【表2】の記載に基づくものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。 したがって、訂正事項2~5、7、8及び10は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項2~5、7、8及び10は、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。 (3)訂正事項6について ア 訂正の目的 訂正事項6のうち、訂正前の「圧縮せん断接着強さ(JIS K 6852-1994)」を「該圧縮せん断接着強さ試験によって測定された試験力」と訂正した点については、訂正事項1による訂正後の本件特許発明における圧縮せん断接着強さ試験によって測定された試験力が、本件明細書の段落【0076】に記載される条件・方法で測定されたものであることを明確にするためにするものであって、段落【0076】に記載される測定条件・方法とは無関係の「(JIS K 6825-1994)」を削除する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 また、本件特許発明における圧縮せん断接着強さ試験によって測定された試験力が、本件明細書の段落【0076】に記載される条件・方法で測定されたものであることは、本件特許の出願当初の明細書等の記載からみて明らかであるので、「(JIS K 6825-1994)」を削除する訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に規定する「誤記の訂正」を目的とするものである。 さらに、訂正事項6のうち、訂正前の「圧縮せん断接着強さ」を「圧縮せん断接着強さ試験によって測定された試験力」と訂正した点は、上記(1)及び(2)のとおり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項6は、上記(1)イ及び(2)イのとおりであるから、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。 したがって、訂正事項6は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項6は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。 (4)訂正事項9について ア 訂正の目的 訂正事項9は、訂正前の「せん断接着試験」がどのような試験であるのかが明確でなかったところ、「圧縮せん断接着強さ試験」を行い、「圧縮せん断接着強さ試験によって試験力」を測定することを明確にするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項9は、本件明細書の段落【0076】及び【0100】の【表2】の記載に基づくものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。 したがって、訂正事項9は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項9は、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。 4 独立特許要件について 請求項1~10について特許異議の申立てがされているので、請求項1~10に係る訂正に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。 5 小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法第120条の5第9項において準用する同法第126条第4~6項の規定に適合する。 したがって、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記のとおり本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~10に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明10」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 ミルブランク部(A)と台座部を備える支持部(B)を含み、精密万能試験機(株式会社島津製作所製、オートグラフAG-I 100kN)を用いて、ミルブランク部(A)を固定し、支持部(B)の該台座部の側面において、ミルブランク部(A)と支持部(B)とが接する面から1mm離れた位置に治具が当たるように配置して、試験速度1.0mm/分の条件によって測定された該ミルブランク部(A)と該支持部(B)の圧縮せん断接着強さ試験によって測定された試験力が1159N以上1820N以下であり、 ミルブランク部(A)における支持部(B)と接する面の算術表面粗さRaが0.5以上であり、 支持部(B)におけるミルブランク部(A)と接する面の算術表面粗さRaが0.5以上であり、 ミルブランク部(A)における支持部(B)と接する面、及び支持部(B)におけるミルブランク部(A)と接する面の両方において、前記算術表面粗さRaを満たす凹凸形状が形成されてなり、 ミルブランク部(A)における支持部(B)と接する面、及び支持部(B)におけるミルブランク部(A)と接する面の少なくとも一方における前記凹凸形状が、Z方向に平行な直線状でなく(両方の凹凸形状がZ方向に平行な直線状である場合を除く)、 ミルブランク部(A)における支持部(B)と接する面における凹凸形状が、ランダム形状、直線状、螺旋状、又は同心円状であり、支持部(B)におけるミルブランク部(A)と接する面における凹凸形状が、ランダム形状、直線状、螺旋状、又は同心円状であり、 支持部(B)における凹凸形状がZ方向に平行な直線状である場合、 (i)ミルブランク部(A)における支持部(B)と接する面における前記凹凸形状が、Z方向に垂直な直線状の凹凸形状である、又は (ii) ミルブランク部(A)における支持部(B)と接する面における前記凹凸形状が、ランダム形状、螺旋状、又は同心円状であり、かつ、当該ミルブランク部(A)における支持部(B)と接する面における算術表面粗さRaが1.5以上である、 (但し、Z方向とは、該ミルブランク部(A)の切削加工面に垂直な方向を指し、該切削加工面はミルブランク部(A)と支持部(B)の接する面に対して垂直な面であり、該ミルブランク部(A)の上側面又は下側面を指す。) 歯科用ミルブランクアセンブリ。 【請求項2】 ミルブランク部(A)における支持部(B)と接する面の算術表面粗さRaが1.5以上である、請求項1に記載の歯科用ミルブランクアセンブリ。 【請求項3】 支持部(B)におけるミルブランク部(A)と接する面の算術表面粗さRaが1.0以上である、請求項1又は2に記載の歯科用ミルブランクアセンブリ。 【請求項4】 支持部(B)におけるミルブランク部(A)と接する面の算術表面粗さRaが2.0以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の歯科用ミルブランクアセンブリ。 【請求項5】 ミルブランク部(A)における支持部(B)と接する面、及び支持部(B)におけるミルブランク部(A)と接する面の少なくとも一方における前記凹凸形状が、Z方向に垂直な直線状の凹凸形状である、請求項1~4のいずれか一項に記載の歯科用ミルブランクアセンブリ。 【請求項6】 ミルブランク部(A)における支持部(B)と接する面における前記凹凸形状が、Z方向に平行な直線状でない、請求項1~5のいずれか一項に記載の歯科用ミルブランクアセンブリ。 【請求項7】 ミルブランク部(A)における支持部(B)と接する面における前記凹凸形状が、Z方向に垂直な直線状である、請求項1~6のいずれか一項に記載の歯科用ミルブランクアセンブリ。 【請求項8】 支持部(B)におけるミルブランク部(A)と接する面における前記凹凸形状が、Z方向に平行な直線状でない、請求項1~7のいずれか一項に記載の歯科用ミルブランクアセンブリ。 【請求項9】 支持部(B)におけるミルブランク部(A)と接する面における前記凹凸形状が、Z方向に垂直な直線状である、請求項1~8のいずれか一項に記載の歯科用ミルブランクアセンブリ。 【請求項10】 ミルブランク部(A)における支持部(B)と接する面、及び支持部(B)におけるミルブランク部(A)と接する面の両方における前記凹凸形状が、Z方向に垂直な直線状の凹凸形状である、請求項1~9のいずれか一項に記載の歯科用ミルブランクアセンブリ。」 第4 取消理由の概要 訂正前の請求項1~10に係る特許に対して、当審が令和 7年12月10日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)は、概略次の理由である。 理由1(サポート要件) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 記 本件特許に係る発明は、本件特許の明細書の段落【0008】に記載のとおり、「ミルブランク部と支持部との圧縮せん断接着強さを向上させ、それに付随して耐衝撃性も向上させ、CAD/CAM加工機を用いて切削加工中において、ミルブランク部と支持部とが外れるリスクの少ない歯科用ミルブランクアセンブリを提供する」ことを課題とするものである。 そして、本件特許の請求項1には、「精密万能試験機(株式会社島津製作所製、オートグラフAG-I 100kN)を用いて、ミルブランク部(A)を固定し、支持部(B)の該台座部の側面において、ミルブランク部(A)と支持部(B)とが接する面から1mm離れた位置に治具が当たるように配置して、試験速度1.0mm/分の条件によって測定された該ミルブランク部(A)と該支持部(B)の圧縮せん断接着強さが1000N以上2000N以下であ」ることが特定されている。 しかし、本件特許の明細書の段落【0100】には、請求項1で特定される上記測定方法によって行われた試験の結果として、実施例1~11において、単位がNで示される数値は、1159N~1820Nという結果が示されるのみであり、請求項1で特定される「1000N」や「2000N」は開示されておらず、1000Nや2000Nの場合において、上記課題を解決できるかどうか明らかでない。 してみると、1000N以上1159N未満及び1820Nより大きく2000N以下である場合に本件特許に係る発明の上記課題を解決できると当業者は認識し得ない。 よって、本件発明1及び請求項1を引用する本件発明2~10は、発明の詳細な説明に記載されたものでない。 理由2(明確性) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 記 本件特許の請求項1には、「該ミルブランク部(A)と該支持部(B)の圧縮せん断接着強さが1000N以上2000N以下であり」と記載されており、「圧縮せん断接着強さ」の単位が「N」(ニュートン)で表されている。 しかしながら、「圧縮せん断接着強さ」は、単位面積あたりの値(N/mm2)として評価されることが一般的であることを踏まえると、請求項1で特定される「圧縮せん断接着強さ」が、どのようなものを意図しているのかが明確でない。 よって、本件発明1及び請求項1を引用する本件発明2~10は明確でない。 第5 当審の判断 1 理由1(サポート要件)について 本件訂正の訂正事項1により、本件特許の請求項1は、「精密万能試験機(株式会社島津製作所製、オートグラフAG-I 100kN)を用いて、ミルブランク部(A)を固定し、支持部(B)の該台座部の側面において、ミルブランク部(A)と支持部(B)とが接する面から1mm離れた位置に治具が当たるように配置して、試験速度1.0mm/分の条件によって測定された該ミルブランク部(A)と該支持部(B)の圧縮せん断接着強さ試験によって測定された試験力が1159N以上1820N以下であ」ることが特定されたので、上記理由1は解消した。 2 理由2(明確性)について 本件訂正の訂正事項1により、本件特許の請求項1は、「精密万能試験機(株式会社島津製作所製、オートグラフAG-I 100kN)を用いて、ミルブランク部(A)を固定し、支持部(B)の該台座部の側面において、ミルブランク部(A)と支持部(B)とが接する面から1mm離れた位置に治具が当たるように配置して、試験速度1.0mm/分の条件によって測定された該ミルブランク部(A)と該支持部(B)の圧縮せん断接着強さ試験によって測定された試験力が1159N以上1820N以下であ」ることが特定されたので、上記理由2は解消した。 3 小括 したがって、本件訂正により、令和 7年12月10日付けの取消理由は解消された。 第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 1 特許法第36条第6項第1号について 異議申立人は、特許異議申立書において、以下の点について、本件発明は発明の詳細な説明に記載したものではない旨を主張している。 (1)ミルブランク部(A)の材料について ア 申立理由の概要 本件発明1では、ミルブランク部(A)の材料については何ら特定されていないため、歯科用に用いられるあらゆる材料である場合を包含するが、本件明細書には、ミルブランク部(A)が、重合性単量体及び加熱重合開始剤(F-1)を含む重合性単量体含有組成物(M-1)を含浸させた無機粒子(D-1)の成形体の重合硬化物から製造された場合しか示されておらず、本件発明における課題の解決が確認できた範囲は、当該重合硬化物から製造された場合にとどまる。 そのため、本件特許の出願時の技術常識に照らせば、当業者においてミルブランク部(A)が、重合性単量体及び加熱重合開始剤(F-1)を含む重合性単量体含有組成物(M-1)を含浸させた無機粒子(D-1)の成形体の重合硬化物から製造された場合以外の場合について、本件発明における課題が解決されたものと認識し得ることはできない。 イ 当審の判断 本件特許は、「ミルブランク部と支持部との圧縮せん断接着強さ試験によって測定された試験力を向上させ、それに付随して耐衝撃性も向上させ、CAD/CAM加工機を用いて切削加工中において、ミルブランク部と支持部とが外れるリスクの少ない歯科用ミルブランクアセンブリを提供することを目的とする」(本件訂正後の明細書段落【0008】)ことを課題とし、ミルブランク部(A)と支持部(B)の圧縮せん断接着強さ試験によって測定された試験力が1159N以上1820N以下であって、ミルブランク部(A)及び支持部(B)における互いに接する面の「算術表面粗さRa」がそれぞれ0.5以上であり、該算術表面粗さRaを満たす「凹凸形状」を所定の形状とすることで上記課題を解決するものであり、前記条件が同じであっても材料が異なる場合に上記課題を解決しないとの技術常識はないから、異議申立人の主張は採用することができない。 (2)支持部(B)の材料について ア 申立理由の概要 本件発明1では、支持部(B)の材料については何ら特定されていないため、歯科用に用いられるあらゆる材料である場合を包含するが、本件明細書には、アルミニウム製の場合しか示されておらず、本件発明における課題の解決が確認できた範囲は、支持部(B)がアルミニウム製の場合にとどまる。 そのため、本件特許の出願時の技術常識に照らせば、当業者において支持部(B)が、アルミニウム製の場合以外の場合について、本件発明における課題が解決されたものと認識し得ることはできない。 イ 当審の判断 上記(1)イと同様の理由により、異議申立人の主張は採用することができない。 (3)支持部(B)の台座部の存在について ア 申立理由の概要 本件明細書には、支持部(B)が台座部を備える場合しか示されておらず、本件発明における課題の解決が確認できた範囲は、支持部(B)が台座部を備える場合にとどまる。また、本件明細書には、支持部(B)が台座部を備えない場合の耐衝撃性の確認方法及び圧縮せん断接着強さの測定方法についての記載はない。 そのため、当業者といえども、支持部(B)が台座部を備えない場合について、本件発明における課題の解決の確認をできたものとはいえない。 イ 当審の判断 本件訂正の訂正事項1により、本件発明1は、支持部(B)が「台座部を備える」ものであることが特定されたので、当該理由は解消した。 (4)ミルブランク部(A)の形状について ア 申立理由の概要 本件発明1では、凹凸形状はZ方向を用いて特定され、Z方向は切削加工面を用いて特定され、切削加工面はミルブランク部(A)の上側面又は下側面であることが特定されている。 しかしながら、例えば例えばミルブランク部(A)が正五角柱形状等の場合には、ミルブランク部(A)は互いに対向する上側面及び下側面を有するものとはいえず、そのため上側面及び下側面を有するものとはいえない。また、ミルブランク部(A)が円柱形状の場合には、互いに対向する上側面及び下側面を有するものとはいえない。そして、これらの場合に、いかなる面を上側面及び下側面とするかについての記載はない。 そのため、いかに当業者といえども、例えばミルブランク部(A)が正五角柱形状又は円柱状の場合について、切削加工面、Z方向及び凹凸形状を特定することはできず、この場合について、耐衝撃性の確認及び圧縮せん断接着強さの測定、即ち、本件特許発明における課題の解決の確認をできたものとはいえない。 また、本件明細書には、ミルブランク部(A)が四角柱状である場合しか示されておらず、本件発明における課題の解決が確認できた範囲は、ミルブランク部(A)が四角柱状の場合にとどまる。 そのため、本件特許の出願時の技術常識に照らせば、当業者においてミルブランク部(A)が四角柱状である場合以外の場合について、本件発明における課題が解決されたものと認識し得ることはできない。 イ 当審の判断 本件特許は、「ミルブランク部と支持部との圧縮せん断接着強さ試験によって測定された試験力を向上させ、それに付随して耐衝撃性も向上させ、CAD/CAM加工機を用いて切削加工中において、ミルブランク部と支持部とが外れるリスクの少ない歯科用ミルブランクアセンブリを提供することを目的とする」(本件訂正後の明細書段落【0008】)ことを課題とし、ミルブランク部(A)と支持部(B)の圧縮せん断接着強さ試験によって測定された試験力が1159N以上1820N以下であって、ミルブランク部(A)及び支持部(B)における互いに接する面の「算術表面粗さRa」がそれぞれ0.5以上であり、該算術表面粗さRaを満たす「凹凸形状」を所定の形状とすることで上記課題を解決するものであり、前記条件が同じであってもミルブランク部(A)や支持部(B)の形状が異なる場合に上記課題を解決しないとの技術常識はないから、異議申立人の主張は採用することができない。 (5)支持部(B)(及び台座部)の形状について ア 申立理由の概要 本件明細書には、支持部(B)が、図2(a)に示す円柱状である場合しか示されておらず、本件特許発明における課題の解決が確認できた範囲は、支持部(B)(及び台座部)が円柱状の場合にとどまる。また本件明細書には、支持部(B)(及び台座部)が円柱状でない場合の耐衝撃性の確認方法及び圧縮せん断接着強さの測定方法についての記載はない。 そのためいかに当業者といえども、支持部(B)(及び台座部)が円柱状でない場合について、耐衝撃性の確認及び圧縮せん断接着強さの測定、即ち、本件特許発明における課題の解決の確認をできたものとはいえない。 イ 当審の判断 上記(4)イと同様の理由により、異議申立人の主張は採用することができない。 (6)ミルブランク部(A)の表面粗さについて ア 申立理由の概要 本件明細書には、ミルブランク部(A)の表面粗さが1.01以上である場合しか示されておらず、本件発明における課題の解決が確認できた範囲は、ミルブランク部(A)の表面粗さが1.01以上の場合にとどまる。 そのため、本件特許の出願時の技術常識に照らしても、当業者においてミルブランク部(A)の表面粗さが1.01末満の場合について本件発明の効果が奏されるものと認識し得ることはできない。 イ 当審の判断 特許権者が令和 6年 5月27日に提出した意見書の「(4)理由1について」の「イ (1)について」(第6~8ページ)の主張を踏まえれば、ミルブランク部(A)の表面粗さが1.01未満の場合であっても本件発明の課題を解決できると理解できるから、異議申立人の主張は採用することができない。 (7)凹凸形状の組み合わせについて ア 申立理由の概要 本件明細書には、凹凸形状の組み合わせが、ランダムと螺旋、ランダムとZ方向に垂直な直線、ランダムとZ方向に平行な直線、Z方向に垂直な直線と螺旋、Z方向に垂直な直線とZ方向に垂直な直線、Z方向に垂直な直線とZ方向に平行な直線、及び、Z方向に平行な直線と螺旋である場合しか示されておらず、本件発明における課題の解決が確認できた範囲は、凹凸形状の組み合わせが、これらの場合にとどまる。 すなわち、本件発明1は凹凸形状の組み合わせが、上記の場合であることの特定がない点において、本件明細書の発明の詳細な説明において本件課題が解決されると当業者が認識できる範囲を超えて、特許を請求するものであり、本件明細書の発明の詳細な説明に記載された内容は、本件発明の範囲まで拡張ないし一般化できるものではない。 イ 当審の判断 本件発明は、ミルブランク部(A)と支持部(B)の圧縮せん断接着強さ試験によって測定された試験力が所定範囲内において、ミルブランク部(A)と支持部(B)とが接する面の「算術表面粗さRa」を特定し、該算術表面粗さRaを満たす凹凸形状を組み合わせることで課題を解決するものであり、特許権者が令和 6年 5月27日に提出した意見書の「(4)理由1について」の「オ (4)について」(第10~11ページ)の主張を踏まえれば、異議申立人が列記した上記凹凸形状の組み合わせ以外の場合であっても本件発明の課題を解決できると理解できるから、異議申立人の主張は採用することができない。 (8)接着剤の塗布面積について ア 申立理由の概要 本件明細書には、支持部(B)のミルブランク部(A)と接する部分に接着剤を塗布しているものの、接着剤の塗布面積についての記載はない。また本件明細書には、支持部の寸法についての記載はない。 そのため、本件明細書の各実施例における耐衝撃性の確認及び圧縮せん断接着強さの測定は、それぞれ「JIS K 7111-1:2012」及び「JIS K 6852-1994」に準じたものとはいえない。さらに、当該JIS規格に準じた試験結果と同等に評価できる確認結果及び試験結果を得るための、耐衝撃性の確認方法及び圧縮せん断接着強さの測定方法は、本件特許の出願時の技術常識に照らしても、当業者において認識し得たものではない。 すなわち、本件発明1は、接着剤の塗布面積の特定がない点において、本件明細書の発明の詳細な説明において本件課題が解決されると当業者が認識できる範囲を超えて、特許を請求するものであり、本件明細書の発明の詳細な説明に記載された内容は、本件発明の範囲まで拡張ないし一般化できるものではない。 イ 当審の判断 本件訂正の訂正事項1により、本件発明1は、「精密万能試験機(株式会社島津製作所製、オートグラフAG-I 100kN)を用いて、ミルブランク部(A)を固定し、支持部(B)の該台座部の側面において、ミルブランク部(A)と支持部(B)とが接する面から1mm離れた位置に治具が当たるように配置して、試験速度1.0mm/分の条件によって測定された該ミルブランク部(A)と該支持部(B)の圧縮せん断接着強さ試験によって測定された試験力が1159N以上1820N以下であ」ることが特定されるとともに、訂正事項6により、本件明細書の段落【0076】において、「(JIS K 6825-1994)」との記載が削除され、接着剤の塗布面積や支持部の寸法とは関係なく、ミルブランクにかかる試験力で評価するものとなったので、異議申立人の主張は採用することができない。 (9)接着剤の種類について ア 申立理由の概要 本件発明1では、接着剤の種類については何ら特定されていない。 本件明細書には、シアノアクリレート系瞬間接着剤を用いて接着した場合しか示されておらず、本件発明における課題の解決が確認できた範囲は、シアノアクリレート系瞬間接着剤を用いて接着した場合にとどまる。 本件特許の出願時の技術常識に照らせば、当業者においてシアノアクリレート系瞬間接着剤を用いて接着した場合以外の場合について、本件発明における課題が解決されたものと認識し得ることはできない。 イ 当審の判断 本件特許は、「ミルブランク部と支持部との圧縮せん断接着強さ試験によって測定された試験力を向上させ、それに付随して耐衝撃性も向上させ、CAD/CAM加工機を用いて切削加工中において、ミルブランク部と支持部とが外れるリスクの少ない歯科用ミルブランクアセンブリを提供することを目的とする」(本件訂正後の明細書段落【0008】)ことを課題とし、ミルブランク部(A)と支持部(B)の圧縮せん断接着強さ試験によって測定された試験力が1159N以上1820N以下であって、ミルブランク部(A)及び支持部(B)における互いに接する面の「算術表面粗さRa」がそれぞれ0.5以上であり、該算術表面粗さRaを満たす「凹凸形状」を所定の形状とすることで上記課題を解決するものであり、前記条件が同じであっても接着剤の種類が異なる場合に上記課題を解決しないとの技術常識はないから、異議申立人の主張は採用することができない。 (10)圧縮せん断接着強さが1500N未満について ア 申立理由の概要 本件特許権者と同一出願人の特開2018-76272号公報(甲第1号証)に係る出願において、本件特許の権利者は、ミルブランク部と支持部とが外れるリスクを少なくするとの課題の解決において、せん断接着強さが1500N以上であることが必要となるとの認識を示している。 一方、本件発明は、「該ミルブランク部(A)と該支持部(B)の圧縮せん断接着強さ」が「1000N以上2000N以下」であることを要件とするものであるが、本件明細書には、せん断接着強さが1000N以上1500N末満の場合において、ミルブランク部と支持部とが外れるリスクを少なくすることができたことの技術的な説明はない。 すなわち、甲第1号証において示す、ミルブランク部と支持部とが外れるリスクを少なくするとの課題の解決において、せん断接着強さが1000N以上1500N末満の場合について、本件発明における課題が解決されたものと認識し得ることはできない。 イ 当審の判断 甲第1号証に係る出願は、本件特許とは別の出願であって、本件特許と同様の課題を解決するものであっても、その解決手段は異なるものであり、上記(1)イのとおり、異議申立人の主張を採用することができない。 2 特許法第36条第4項第1号について 異議申立人は、特許異議申立書において、上記1(1)~(10)と同様の点について、本件明細書は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない旨を主張している。 しかしながら、上記1(1)~(10)の各「イ 当審の判断」のとおり、本件特許の発明の詳細な説明には、当業者が発明を実施できる程度の記載があるといえるから、いずれも異議申立人の主張を採用することができない。 3 特許法第36条第6項第2号について 異議申立人は、特許異議申立書において、以下の点について、本件発明1~10は、発明を特定できる程度に明確ではない旨を主張している。 (1)上側面又は下側面、及び切削加工面について ア 申立理由の概要 本件発明1では、凹凸形状はZ方向を用いて特定され、Z方向は切削加工面を用いて特定され、切削加工面はミルブランク部(A)の上側面又は下側面であることが特定されている。 (ア)しかしながら、例えばミルブランク部(A)が正五角柱形状等の場合には、ミルブランク部(A)は互いに対向する上側面及び下側面を有するものとはいえず、そのため上側面及び下側面を有するものとはいえない。 またミルブランク部(A)が円柱形状の場合には、ミルブランク部(A)は互いに対向する上側面及び下側面を有するものとはいえず、そのため上側面及び下側面を有するものとはいえない。 よって当業者といえども、本件明細書の発明の詳細な説明からは、ミルブランク部(A)が正五角柱形状又は円柱状の場合にいかなる面を上側面及び下側面とするかを明確に把握することができず、したがって本件発明1は明確ではない。 (イ)(本件明細書の段落【0016】の記載によれば、)本件発明1の切削加工面は、任意に変更することができるものであり、そのため、切削加工面を用いて特定されるZ方向及びZ方向を用いて特定される凹凸形状は、一意に定めることができるものではない。 よって当業者といえども、本件明細書の発明の詳細な説明からは、切削加工面、Z方向及び凹凸形状を明確に把握することができず、したがって本件発明1は明確ではない。 イ 当審の判断 本件特許における「切削加工面」とは、「ミルブランク部(A)と支持部(B)の接する面に対して垂直な面」であり、「該ミルブランク部(A)の切削加工を受ける面」を指している(本件明細書の段落【0016】)。 そして、請求項1は、ミルブランク部(A)の形状にかかわらず、該ミルブランク部(A)が切削加工を受ける切削加工面が、ミルブランク部(A)の「上側面」又は「下側面」を指すことを特定しており、「上側面」及び「下側面」は一義的に決まるものである。 また、請求項1には、「Z方向」とは、切削加工面に対して垂直な方向であることが特定されており、回転させることによって切削加工面は上面になったり下面になったりするとしても、Z方向とは、切削加工面に対して垂直な方向、つまり切削加工をする際に力のかかる方向ということで明確に把握することができ、Z方向を用いて特定される凹凸形状も明確である。 したがって、請求項1の記載は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確とはいえない。 (2)表面粗さの単位について ア 申立理由の概要 算術表面粗さRaは、数値とともに単位の特定も必要であることが技術常識であるところ、本件発明1では、数値のみが特定されており単位の特定はない。 よって当業者が本件明細書の発明の詳細な説明を参照したとしても、算術表面粗さRaの単位を明確に把握することができず、したがって本件発明1は明確ではない。 イ 当審の判断 算術表面粗さRaを表す単位は「μm」であることが技術常識であるから、当業者であれば請求項1で特定される算術表面粗さRaの単位が「μm」であると認識し得る。 (3)せん断接着強さが1000N以上1500N未満の場合について ア 申立理由の概要 上記1(9)アのとおり、せん断接着強さが1000N以上1500N未満の場合について、本件発明における課題が解決されたものと認識し得ることはできない。 よって当業者といえども、せん断接着強さが1000N以上1500N未満の場合に本件発明における課題が解決されるか否かを明確に把握することができず、本件発明1は明確ではない。 イ 当審の判断 本件訂正後の請求項1は、「精密万能試験機(株式会社島津製作所製、オートグラフAG-I 100kN)を用いて、ミルブランク部(A)を固定し、支持部(B)の該台座部の側面において、ミルブランク部(A)と支持部(B)とが接する面から1mm離れた位置に治具が当たるように配置して、試験速度1.0mm/分の条件によって測定された該ミルブランク部(A)と該支持部(B)の圧縮せん断接着強さ試験によって測定された試験力が1159N以上1820N以下であ」ると記載されており、該記載は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確とはいえない。 4 特許法第29条第2項について 異議申立人は、特許異議申立書において、本件発明1~10は、本件特許の出願日前に頒布された甲第1号証(特開2018-76272号公報、以下「甲1」という。)に記載された発明並びに甲第6号証(特開2017-117638号公報、以下「甲6」という。)及び甲第7号証(特開2015-168711号公報、以下「甲7」という。)が示す周知技術に基いて、本件特許の出願日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない旨を主張している。 4-1 甲1の記載事項及び引用発明 (1)甲1の記載事項 甲1には、以下の点が記載されている。 ア 段落【0012】の記載から、引用文献1には、歯科用ミルブランク部(X)と支持部(Y)とが接着性組成物(Z)で接着された歯科用ミルブランクアセンブリが記載されている。 イ 段落【0099】及び【0101】等には、「台座部(支持部)」と記載されている。 ウ 段落【0105】には、ミルブランクアセンブリのせん断接着試験について、「(株式会社島津製作所、オートグラフAG-I 100kN)を用いて、試験速度1.0mm/分の条件によって行った。」ことが記載されており、該試験の結果として、段落【0106】の【表1】には、実施例1~11並びに比較例1及び2において、せん断接着強さが1461N~2206Nであったことが記載されている。 (2)引用発明 上記(1)の事項を踏まえると、甲1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「歯科用ミルブランク部(X)と台座部(支持部)(Y)とが接着性組成物(Z)で接着され、(株式会社島津製作所、オートグラフAG-I 100kN)を用いて、試験速度1.0mm/分の条件によってせん断接着試験を行い、せん断接着強さが1461N~2206Nであった、 歯科用ミルブランクアセンブリ。」 4-2 本件発明1について (1)対比 本件発明1と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「歯科用ミルブランク部(X)」及び「台座部(支持部)(Y)」は、本件発明1の「ミルブランク部(A)」及び「台座部を備える支持部(B)」にそれぞれ相当するので、引用発明の「歯科用ミルブランク部(X)と台座部(支持部)(Y)とが接着性組成物(Z)で接着され」る「歯科用ミルブランクアセンブリ」は、本件発明1の「ミルブランク部(A)と台座部を備える支持部(B)を含」む「歯科用ミルブランクアセンブリ」に相当する。 イ 引用発明の「(株式会社島津製作所、オートグラフAG-I 100kN)」は、その名称からみて、本件発明1の「精密万能試験機(株式会社島津製作所製、オートグラフAG-I 100kN)」に相当する。そして、引用発明の「せん断接着試験を行」うことは、歯科用ミルブランク部(X)と台座部(支持部)(Y)のせん断接着強さ試験を行うことであるので、引用発明の「(株式会社島津製作所、オートグラフAG-I 100kN)を用いて、試験速度1.0mm/分の条件によってせん断接着試験を行い、せん断接着強さが1461N~2206Nであった」ことと、本件発明1の「精密万能試験機(株式会社島津製作所製、オートグラフAG-I 100kN)を用いて、ミルブランク部(A)を固定し、支持部(B)の該台座部の側面において、ミルブランク部(A)と支持部(B)とが接する面から1mm離れた位置に治具が当たるように配置して、試験速度1.0mm/分の条件によって測定された該ミルブランク部(A)と該支持部(B)の圧縮せん断接着強さ試験によって測定された試験力が1159N以上1820N以下であ」ることとは、精密万能試験機(株式会社島津製作所製、オートグラフAG-I 100kN)を用いて、試験速度1.0mm/分の条件によって該ミルブランク部(A)と該支持部(B)のせん断接着強さ試験によって測定された所定の物性値を有することの限りで一致する。 ウ してみると、本件発明1と引用発明とは、以下の一致点及び相違点を有する。 <一致点> 「ミルブランク部(A)と台座部を備える支持部(B)を含み、精密万能試験機(株式会社島津製作所製、オートグラフAG-I 100kN)を用いて、試験速度1.0mm/分の条件によって該ミルブランク部(A)と該支持部(B)のせん断接着強さ試験によって測定された所定の物性値を有する、 歯科用ミルブランクアセンブリ。」 <相違点1> 精密万能試験機(株式会社島津製作所製、オートグラフAG-I 100kN)を用いたせん断接着強さ試験に関し、本件発明1は、「ミルブランク部(A)を固定し、支持部(B)の該台座部の側面において、ミルブランク部(A)と支持部(B)とが接する面から1mm離れた位置に治具が当たるように配置して」、「圧縮」せん断接着強さ試験を行っているのに対し、引用発明は、そのような特定がされていない点。 <相違点2> 測定された所定の物性値に関し、本件発明1は、「圧縮」せん断接着強さ試験の「試験力が1159N以上1820N以下」であるのに対し、引用発明1は、せん断接着強さが1461N~2206Nである点。 <相違点3> 本件発明1は、「ミルブランク部(A)における支持部(B)と接する面の算術表面粗さRaが0.5以上であり、 支持部(B)におけるミルブランク部(A)と接する面の算術表面粗さRaが0.5以上であ」るのに対し、引用発明は、そのような特定がされていない点。 <相違点4> 本件発明1は、「ミルブランク部(A)における支持部(B)と接する面、及び支持部(B)におけるミルブランク部(A)と接する面の両方において、前記算術表面粗さRaを満たす凹凸形状が形成されてなり、 ミルブランク部(A)における支持部(B)と接する面、及び支持部(B)におけるミルブランク部(A)と接する面の少なくとも一方における前記凹凸形状が、Z方向に平行な直線状でなく(両方の凹凸形状がZ方向に平行な直線状である場合を除く)、 ミルブランク部(A)における支持部(B)と接する面における凹凸形状が、ランダム形状、直線状、螺旋状、又は同心円状であり、支持部(B)におけるミルブランク部(A)と接する面における凹凸形状が、ランダム形状、直線状、螺旋状、又は同心円状であり、 支持部(B)における凹凸形状がZ方向に平行な直線状である場合、 (i)ミルブランク部(A)における支持部(B)と接する面における前記凹凸形状が、Z方向に垂直な直線状の凹凸形状である、又は (ii) ミルブランク部(A)における支持部(B)と接する面における前記凹凸形状が、ランダム形状、螺旋状、又は同心円状であり、かつ、当該ミルブランク部(A)における支持部(B)と接する面における算術表面粗さRaが1.5以上である、 (但し、Z方向とは、該ミルブランク部(A)の切削加工面に垂直な方向を指し、該切削加工面はミルブランク部(A)と支持部(B)の接する面に対して垂直な面であり、該ミルブランク部(A)の上側面又は下側面を指す。)」であるのに対し、引用発明は、そのような特定がされていない点。 (2)判断 上記各相違点について以下検討する。 事案に鑑み、まず相違点3について検討する。 甲6には、燃料電池用セパレータの技術において、セパレータ表面の算術平均粗さRaが大きいと、界面剥離面積が大きくなり、剪断強度が低下することを踏まえ、該算術表面粗さRaを0.2μm以下にすることが記載されている(段落【0023】、【0024】、図5及び6を参照。)。 また、甲7には、粘着シートの技術において、被着体に対する密着性に優れる粘着シートを得るために、粘着剤層の算術平均粗さRaを、好ましくは500nm以下、より好ましくは400nm以下、さらに好ましくは300nm以下にすることが記載されている(段落【0082】を参照。)。 してみると、甲6及び甲7の記載事項からは、接着面の算術平均粗さRaを500nm(すなわち、0.5μm)程度以下とする技術が導き出されるのであって、該技術に基き、引用発明における歯科用ミルブランク部(X)と台座部(支持部)(Y)とが接着するそれぞれの面の算術表面粗さRaを0.5(μm)以上に設定し、上記相違点3に係る本件発明1の事項とすることが、当業者にとって容易になし得ることであるとはいえない。 加えて、それぞれの接着面の算術表面粗さRaを0.5(μm)以上とすることは、異議申立人が提出した甲第3~5号証に記載も示唆もされていないし、技術常識であるともいえない。 次に、念のため相違点4についても検討する。 甲1における歯科用ミルブランクアセンブリは、ミルブランク部(X)と支持部(Y)とが接する面に特定の接着剤を用いることで、「ミルブランク部と支持部のそれぞれに加工する必要がなく、簡便に製造することができるミルブランクアセンブリを提供することを目的とする」(段落【0009】)ものであるので、ミルブランク部(X)と支持部(Y)の互いに接する面を凹凸形状にすることは、甲1に記載されていないし、そのように加工する動機付けも存在せず、ミルブランク部(X)と支持部(Y)の互いに接する面を凹凸形状にすることは、上記目的に反する。 したがって、引用発明の「ミルブランク部(X)」と「台座部(支持部)(Y)」に、上記相違点4に係る凹凸形状を形成することが、当業者が容易になし得ることであるとはいえない。 よって、相違点1及び2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 4-3 本件発明2~10について 本件発明2~10は、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、本件発明1と同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 第7 むすび 以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1~10に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700059

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