特許異議申立
2023-701073
歯科用重合硬化性組成物及び歯科用重合硬化性組成物調製用キット
- 審判番号
- 2023-701073
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-018399
- 登録番号
- 7255795
- 請求日
- 2023年10月06日
- 審決日
- 2024年06月26日
- 公報発行日
- 2024年09月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社トクヤマデンタル
- 【異議申立人】中丸 剛
- 審判長/審判官
- 審判長 原田 隆興
- 審判官 田中 耕一郎
- 審判官 吉田 佳代子
- 分類
- P1651.121-YAA(A61K) / P1651.537-YAA(A61K) / P1651.536-YAA(A61K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第7項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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特許第7255795号発明「歯科用重合硬化性組成物及び歯科用重合硬化性組成物調製用キット」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7255795号の明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕、〔4~8〕について訂正することを認める。
特許第7255795号の請求項4~8に係る特許を維持する。
特許第7255795号の請求項1~3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7255795号(以下「本件特許」という。)に係る発明についての出願は、平成31年2月5日の出願であって、令和5年4月3日にその特許権の設定登録がされ、同年同月11日に特許掲載公報が発行されたものである。
これに対して、中丸 剛(以下「申立人」という。)から、令和5年10月6日付け特許異議申立書(以下「申立書」という。)によって、本件特許の全ての請求項1~8に係る発明の特許を取り消すべき旨の特許異議の申立てがされた。以降の主な手続の経緯は次のとおりである。
令和6年1月26日付け 取消理由通知書
同年3月12日 訂正請求書及び意見書の提出
なお、申立人に対し、令和6年3月21日付け通知書により、上記訂正の請求があった旨を通知し、意見を述べる機会を与えたが、申立人から意見書は提出されなかった。
第2 訂正請求について
1 令和6年3月12日付けの訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~8について訂正することを求めるものである。
本件訂正における訂正事項は、以下のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に
「 請求項1乃至3の何れか一に記載の歯科用重合硬化性組成物を調製するための歯科用重合硬化性組成物調製用キットであって、
それぞれ独立して保管される第一の組成物と第二の組成物との組合せを含んでなり、
前記第一の組成物は、前記(A)、前記(B1)及び前記(C1) を含有して、前記(C2)を実質的に含まず、
前記第二の組成物は、前記(A)、前記(B2)及び前記(C2) を含有して、前記(B1)及び前記(C1)を実質的に含まない、
ことを特徴とする前記歯科用重合硬化性組成物調製用キット。」
と記載されているのを、
「 重合性単量体(A):100質量部、無機充填材(B):100質量部以上、500質量部以下及び重合開始剤(C)を含有してなる歯科用重合硬化性組成物において、前記無機充填材(B)が、重量平均分子量が2000以上、2000万以下であるイオン性高分子界面活性剤及び疎水化処理剤で処理された、平均粒子径が0.05μm以上、1μm以下である無機粒子(B1)、及び疎水化処理剤で処理され、イオン性の界面活性剤で処理されていない平均粒子径0.05μ m以上、1μm以下の無機粒子(B2)を、これら(B1)及び(B2)の合計で10質量%以上90質量%以下含み、前記重合開始剤(C)が、第三級アミン(C1)及び有機過酸化物(C2)を主要成分とする化学重合開始剤を含有してなる、歯科用重合硬化性組成物を調製するための歯科用重合硬化性組成物調製用キットであって、
それぞれ独立して保管される第一の組成物と第二の組成物との組合せを含んでなり、
前記第一の組成物は、前記(A)、前記(B1)及び前記(C1)を含有して、前記(C2)を実質的に含まず、
前記第二の組成物は、前記(A)、前記(B2)及び前記(C2)を含有して、前記(B1)及び前記(C1)を実質的に含まない、
ことを特徴とする前記歯科用重合硬化性組成物調製用キット。」
に訂正する(請求項4を直接又は間接的に引用する請求項5~8も同様に訂正する。)。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に
「 請求項2に記載の歯科用重合硬化性組成物を調製するための請求項4に記載の歯科用重合硬化性組成物調製用キットであって、前記第一の組成物及び前記第二の組成物は、共に前記(B3´)を更に含んでなる、ことを特徴とする、前記歯科用重合硬化性組成物調製用キット。」
と記載されているのを、
「 前記無機充填材(B)が、前記無機粒子(B1)及び無機粒子(B2)以外の無機粒子として、平均粒子径が1μm以上50μm以下の不定形無機粒子(B3´)を更に含んでなり、当該(B)における前記(B1)及び(B2)以外の残部の90質量%以上が前記(B3´)である、前記歯科用重合硬化性組成物を調製するための請求項4に記載の歯科用重合硬化性組成物調製用キットであって、前記第一の組成物及び前記第二の組成物は、共に前記(B3´)を更に含んでなる、ことを特徴とする、前記歯科用重合硬化性組成物調製用キット。」
に訂正する(請求項5を直接又は間接的に引用する請求項7及び8も同様に訂正する。)。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に
「 請求項3に記載の歯科用重合硬化性組成物を調製するための請求項4に記載の歯科用重合硬化性組成物調製用キットであって、前記第一の組成物、前記第二の組成物の少なくとも一方は、光重合開始剤(C3)を更に含んでなる、ことを特徴とする前記歯科用重合硬化性組成物調製用キット。」と記載されているのを、
「 前記重合開始剤(C)が、光重合開始剤(C3)を含有してなる、前記歯科用重合硬化性組成物を調製するための請求項4に記載の歯科用重合硬化性組成物調製用キットであって、前記第一の組成物、前記第二の組成物の少なくとも一方は、光重合開始剤(C3)を更に含んでなる、ことを特徴とする前記歯科用重合硬化性組成物調製用キット。」
に訂正する。
(7)訂正事項7
出願に添付した明細書の段落【0021】(特許公報の段落【0021】)に記載した
「 すなわち、第一の本発明は、重合性単量体(A):100質量部、無機充填材(B):100質量部以上、500質量部以下及び重合開始剤(C)を含有してなる歯科用重合硬化性組成物において、前記無機充填材(B)が、重量平均分子量が2000以上、2000万以下であるイオン性高分子界面活性剤及び疎水化処理剤で処理された、平均粒子径が0.05μm以上、1μm以下である無機粒子(B1)、及び疎水化処理剤で処理され、イオン性の界面活性剤で処理されていない平均粒子径0.05以上、1μm以下の無機粒子(B2)を、これら(B1)及び(B2)の合計で10質量%以上90質量%以下含み、前記重合開始剤(C)が、第三級アミン(C1)及び有機過酸化物(C2)を主要成分とする化学重合開始剤を含有してなる、ことを特徴とする前記歯科用重合硬化性組成物である。」を削除する。
(8)訂正事項8
出願に添付した明細書の段落【0022】(特許公報の段落【0022】)に記載した
「 上記本発明の歯科用重合硬化性組成物においては、前記無機充填材(B)が、平均粒子径1μm以上1000μm以下である不定形無機粒子(B3)、特に、平均粒子径が1μm以上50μm以下の不定形無機粒子(B3´)を更に含んでなり、当該(B)における前記(B1)及び(B2)以外の残部の90%以上が前記(B3´)であることが好ましい。更にまた、前記重合開始剤(C)が、光重合開始剤(C3)を含有してなることが好ましい。」を削除する。
(9)訂正事項9
出願に添付した明細書の段落【0023】(特許公報の段落【0023】)に記載した
「 第二の本発明は、それぞれ独立して保管される第一の組成物と第二の組成物との組合せを含んでなり、当該第一の組成物と第二の組成物を混合することによって前記本発明の歯科用重合硬化性組成物を調製することができる、歯科用重合硬化性組成物調製用キットであって、前記第一の組成物は、前記(A)、前記(B1)及び前記(C1)を含有して、前記(C2)を実質的に含まず、前記第二の組成物は、前記(A)、前記(B2)及び前記(C2)を含有して、前記(B1)及び前記(C1)を実質的に含まない、ことを特徴とする前記歯科用重合硬化性組成物調製用キットである。」を
「 すなわち、第一の本発明は、重合性単量体(A):100質量部、無機充填材(B):100質量部以上、500質量部以下及び重合開始剤(C)を含有してなる歯科用重合硬化性組成物において、前記無機充填材(B)が、重量平均分子量が2000以上、2000万以下であるイオン性高分子界面活性剤及び疎水化処理剤で処理された、平均粒子径が0.05μm以上、1μm以下である無機粒子(B1)、及び疎水化処理剤で処理され、イオン性の界面活性剤で処理されていない平均粒子径0.05μm以上、1μm以下の無機粒子(B2)を、これら(B1)及び(B2)の合計で10質量%以上90質量%以下含み、前記重合開始剤(C)が、第三級アミン(C1)及び有機過酸化物(C2)を主要成分とする化学重合開始剤を含有してなる、歯科用重合硬化性組成物(以下、「本発明の歯科用重合硬化性組成物」ともう。)を調製するための歯科用重合硬化性組成物調製用キットであって、それぞれ独立して保管される第一の組成物と第二の組成物との組合せを含んでなり、前記第一の組成物は、前記(A)、前記(B1)及び前記(C1)を含有して、前記(C2)を実質的に含まず、前記第二の組成物は、前記(A)、前記(B2)及び前記(C2)を含有して、前記(B1)及び前記(C1)を実質的に含まない、ことを特徴とする前記歯科用重合硬化性組成物調製用キットである。」
に訂正する。
(10)訂正事項10
出願に添付した明細書の段落【0025】(特許公報の段落【0025】)に記載した
「 第三の本発明は、歯科用支台築造材料として使用される歯科用重合硬化性組成物を調製するための、前記第二の本発明の歯科用重合硬化性組成物調製用キットからなることを特徴とする、歯科用支台築造材料用キットである。」を
「 第二の本発明は、歯科用支台築造材料として使用される歯科用重合硬化性組成物を調製するための、前記無機充填材(B)が、前記無機粒子(B1)及び無機粒子(B2)以外の無機粒子として、平均粒子径が1μm以上50μm以下の不定形無機粒子(B3´)を更に含んでなり、当該(B)における前記(B1)及び(B2)以外の残部の90質量%以上が前記(B3´)である、本発明の歯科用重合硬化性組成物を調製するための、前記第一の本発明の歯科用重合硬化性組成物調製用キットからなることを特徴とする、歯科用支台築造材料用キットである。」
に訂正する。
(11)一群の請求項について
訂正事項1~6による訂正は、訂正前の請求項1~8についてされたものであって、訂正事項4及び5に連動して、請求項5~8も訂正されるから、訂正前の請求項1~8に対応する 訂正後の請求項〔1~3〕、〔4~8〕は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
(12)別の訂正単位とする求め
本件訂正後の請求項4と、訂正後の請求項4を直接又は間接的に引用する訂正後の請求項5~8について、特許権者は、当該請求項の訂正が認められる場合には、本件訂正前の一群の請求項とは別の訂正単位として扱われることを求めている。
2 訂正の適否の判断
(1)訂正事項1~3について
ア 訂正の目的について
訂正事項1~3は、それぞれ、訂正前の請求項1~3の記載を削除するものである。
したがって、訂正事項1~3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1~3は、訂正前の請求項1~3の記載を削除するものであるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1~3は、訂正前の請求項1~3の記載を削除するものであるから、訂正前の請求項1~3の記載について、訂正前の請求項1~3に記載された発明のカテゴリーを変更するものではなく、かつ、訂正前の請求項1~3に記載された発明の対象や目的を変更するものとはならない。
したがって、訂正事項1~3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(2)訂正事項4について
ア 訂正の目的について
訂正事項4に係る訂正前の請求項4は、4つの引用関係(訂正前の請求項1を引用するもの、訂正前の請求項1及び2を引用するもの、訂正前の請求項1及び3を引用するもの、並びに訂正前の請求項1、請求項2及び請求項3を引用するもの)が含まれていたのに対し、訂正事項4は、訂正前の請求項4において、訂正前の請求項1を組み込んで訂正前の請求項1を引用するもののみに限定するものである。したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
また、訂正事項4は、訂正事項1~3によって請求項1~3が削除されたことによって請求項1~3を引用できなくなったことに伴い、請求項間の引用関係を解消する訂正である。したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
さらに、訂正事項4は、訂正前の請求項1における「0.05以上、1μm以下」という無機粒子(B2)の平均粒子径の単位「μm」が付されていないという誤記について、「0.05μm以上、1μm以下」として単位「μm」を付す訂正を含むものである。したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に規定する「誤記の訂正」を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記アに示したように、訂正事項4は、訂正前の請求項4を、訂正前の請求項1を引用するもののみに限定し、他の請求項の記載を引用しないものとするとともに誤記を訂正するものであるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アに示したように、訂正事項4は、訂正前の請求項4を、訂正前の請求項1を引用するもののみに限定し、他の請求項の記載を引用しないものとするとともに誤記を訂正するものであるから、当該訂正により訂正前の請求項4に記載された発明のカテゴリーを変更するものではなく、かつ、訂正前の請求項4に記載された発明の対象や目的を変更するものとはならない。
したがって、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(3)訂正事項5について
ア 訂正の目的について
訂正事項5は、訂正事項1、2によって請求項1、2が削除されたことによって、訂正前の請求項4、5において請求項1を引用する請求項2を引用できなくなったことに伴い、請求項間の引用関係を解消して、訂正事項4により訂正前の請求項1を組み込んだ請求項4を引用するとともに、訂正前の請求項2を請求項5に組み込む訂正である。したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記アに示したように、訂正事項5は、訂正前の請求項5における引用関係を解消して、訂正事項4により訂正前の請求項1を組み込んだ請求項4を引用するとともに、訂正前の請求項2を請求項5に組み込むものであるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アに示したように、訂正事項5は、訂正前の請求項5における引用関係を解消して、訂正事項4により訂正前の請求項1を組み込んだ請求項4を引用するとともに、訂正前の請求項2を請求項5に組み込むものであるから、当該訂正により訂正前の請求項5に記載された発明のカテゴリーを変更するものではなく、かつ、訂正前の請求項5に記載された発明の対象や目的を変更するものとはならない。
したがって、訂正事項5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(4)訂正事項6について
ア 訂正の目的について
訂正事項6に係る訂正前の請求項6は、2つの引用関係(訂正前の請求項1を引用する請求項3を引用する請求項4を引用するもの、訂正前の請求項2を引用する請求項3を引用する請求項4を引用するもの)が含まれていたのに対し、訂正事項6は、訂正前の請求項6を、訂正前の請求項1を引用する請求項3を引用する請求項4を引用するもののみに限定し、請求項4以外の記載を引用しないものとするものである。したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
また、訂正事項6は、訂正事項1~3によって請求項1~3が削除されたことによって、訂正前の請求項6において請求項1又は2を引用する請求項3を引用できなくなったことに伴い、請求項間の引用関係を解消して、訂正事項4により訂正前の請求項1を組み込んだ請求項4を引用するとともに、訂正前の請求項3を請求項6に組み込む訂正である。したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記アに示したように、訂正事項6は、訂正前の請求項6における引用関係を解消して、訂正事項4により訂正前の請求項1を組み込んだ請求項4を引用するとともに、訂正前の請求項3を請求項6に組み込むものであるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アに示したように、訂正事項6は、訂正前の請求項6における引用関係を解消して、訂正事項4により訂正前の請求項1を組み込んだ請求項4を引用するとともに、訂正前の請求項3を請求項6に組み込むものであるから、当該訂正により訂正前の請求項6に記載された発明のカテゴリーを変更するものではなく、かつ、訂正前の請求項6に記載された発明の対象や目的を変更するものとはならない。
したがって、訂正事項6は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(5)訂正事項7について
訂正事項7は、訂正事項1による訂正により請求項1を削除したことに伴い、訂正前の請求項1に関する記載である願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の【0021】を削除し、明細書の記載を特許請求の範囲の記載と整合させるための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
(6)訂正事項8について
訂正事項8は、訂正事項2、3による訂正により請求項2、3を削除したことに伴い、訂正前の請求項2、3に関する記載である本件明細書の【0022】を削除し、明細書の記載を特許請求の範囲の記載と整合させるための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項8は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
(7)訂正事項9について
ア 訂正の目的について
訂正事項9は、訂正事項4による訂正により請求項4の記載を訂正したことに伴い、明細書の記載を特許請求の範囲の記載と整合させるための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記アに示したように、訂正事項9は、訂正事項4による訂正により請求項4の記載を訂正したことに伴い、明細書の記載を特許請求の範囲の記載と整合させるための訂正であるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アに示したように、訂正事項9は、訂正事項4による訂正により請求項4の記載を訂正したことに伴い、明細書の記載を特許請求の範囲の記載と整合させるための訂正であるから、当該訂正により訂正前の請求項1~8に記載された発明のカテゴリーを変更するものではなく、かつ、訂正前の請求項1~8に記載された発明の対象や目的を変更するものとはならない。
したがって、訂正事項9は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(8)訂正事項10について
ア 訂正の目的について
訂正事項10は、訂正事項6により請求項6の記載を訂正し、また、訂正事項7により明細書の記載を訂正したことに伴い、明細書の記載を特許請求の範囲の記載と整合させるための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記アに示したように、訂正事項10は、訂正事項6により請求項6の記載を訂正し、また、訂正事項7により明細書の記載を訂正したことに伴い、明細書の記載を特許請求の範囲の記載と整合させるための訂正であるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アに示したように、訂正事項10は、訂正事項6により請求項6の記載を訂正し、また、訂正事項7により明細書の記載を訂正したことに伴い、明細書の記載を特許請求の範囲の記載と整合させるための訂正であるから、当該訂正により訂正前の請求項1~8に記載された発明のカテゴリーを変更するものではなく、かつ、訂正前の請求項1~8に記載された発明の対象や目的を変更するものとはならない。
したがって、訂正事項10は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(9)明細書の訂正と関係する請求項について
訂正事項7~10による明細書についての訂正は、当該訂正に係る一群の請求項1~8の全てについて本件訂正は請求されているので、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第4項の規定に適合する。
(10)特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件特許異議事件においては、訂正前の請求項1~8の全てに対して特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項1~8に係る訂正事項1~10に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
3 小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号ないし第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合する。
よって、明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕、〔4~8〕について訂正することを認める。
第3 訂正発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められたので、本件特許の請求項1~8に係る発明(以下、順に、「訂正発明1」~「訂正発明8」といい、合わせて「訂正発明」ということがある。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】 (削除)
【請求項2】 (削除)
【請求項3】 (削除)
【請求項4】
重合性単量体(A):100質量部、無機充填材(B):100質量部以上、500質量部以下及び重合開始剤(C)を含有してなる歯科用重合硬化性組成物において、前記無機充填材(B)が、重量平均分子量が2000以上、2000万以下であるイオン性高分子界面活性剤及び疎水化処理剤で処理された、平均粒子径が0.05μm以上、1μm以下である無機粒子(B1)、及び疎水化処理剤で処理され、イオン性の界面活性剤で処理されていない平均粒子径0.05μm以上、1μm以下の無機粒子(B2)を、これら(B1)及び(B2)の合計で10質量%以上90質量%以下含み、前記重合開始剤(C)が、第三級アミン(C1)及び有機過酸化物(C2)を主要成分とする化学重合開始剤を含有してなる、歯科用重合硬化性組成物を調製するための歯科用重合硬化性組成物調製用キットであって、
それぞれ独立して保管される第一の組成物と第二の組成物との組合せを含んでなり、
前記第一の組成物は、前記(A)、前記(B1)及び前記(C1)を含有して、前記(C2)を実質的に含まず、
前記第二の組成物は、前記(A)、前記(B2)及び前記(C2)を含有して、前記(B1)及び前記(C1)を実質的に含まない、
ことを特徴とする前記歯科用重合硬化性組成物調製用キット。
【請求項5】
前記無機充填材(B)が、前記無機粒子(B1)及び無機粒子(B2)以外の無機粒子として、平均粒子径が1μm以上50μm以下の不定形無機粒子(B3´)を更に含んでなり、当該(B)における前記(B1)及び(B2)以外の残部の90質量%以上が前記(B3´)である、前記歯科用重合硬化性組成物を調製するための請求項4に記載の歯科用重合硬化性組成物調製用キットであって、前記第一の組成物及び前記第二の組成物は、共に前記(B3´)を更に含んでなる、ことを特徴とする、前記歯科用重合硬化性組成物調製用キット。
【請求項6】
前記重合開始剤(C)が、光重合開始剤(C3)を含有してなる、前記歯科用重合硬化性組成物を調製するための請求項4に記載の歯科用重合硬化性組成物調製用キットであって、前記第一の組成物、前記第二の組成物の少なくとも一方は、光重合開始剤(C3)を更に含んでなる、ことを特徴とする前記歯科用重合硬化性組成物調製用キット。
【請求項7】
歯科用支台築造材料として使用される歯科用重合硬化性組成物を調製するための、請求項5に記載の歯科用重合硬化性組成物調製用キットからなることを特徴とする、歯科用支台築造材料用キット。
【請求項8】
第一シリンジと、当該第一シリンジと並列に配置された第二シリンジ内に、前記第一の組成物及び前記第二の組成物が夫々充填されて保管されてなることを特徴とする、請求項7に記載の歯科用支台築造材料用キット。」
第4 申立書に記載した申立ての理由の概要
申立書に記載した申立ての理由の概要及び証拠方法は、次のとおりである。
以下では、本件特許の本件訂正前の請求項1~8に係る発明を、順に、「本件特許発明1」~「本件特許発明8」といい、合わせて「本件特許発明」ということがある。また、本件特許の明細書を「本件特許明細書」という。
1 申立理由1(サポート要件)
本件特許の請求項1~8に係る特許は、下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
(1)本件特許の出願時の技術常識を考慮しても、本件特許明細書の本文及び実施例の記載からは、第三級アミン(C1)及び有機過酸化物(C2)が同一組成中に共存する態様においても、長期間保存した場合においてもゲル化や硬化開始時間の短縮が起こり難い良好な保存安定性を有する歯科用重合硬化性組成物を提供するという課題が解決できることを理解できない。したがって、第三級アミン(C1)及び有機過酸化物(C2)を分包することを特定しない本件特許発明1~3は、サポート要件を満たさない(申立書34~37頁の(6-6-1))。
(2)本件特許の出願時の技術常識を考慮しても、本件特許明細書の本文及び実施例の記載からは、イオン性の界面活性剤で処理した無機粒子(B1)及び有機過酸化物(C2)が同一組成中に配合する態様においても、長期間保存した場合においてもゲル化や硬化開始時間の短縮が起こり難い良好な保存安定性を有する歯科用重合硬化性組成物を提供するという課題が解決できることを理解できない。したがって、イオン性の界面活性剤で処理した無機粒子(B1)及び有機過酸化物(C2)を分包することを特定しない本件特許発明1~3は、サポート要件を満たさない(申立書37~39頁の(6-6-2))。
(3)本件特許の出願時の技術常識を考慮しても、本件特許明細書の本文及び実施例の記載からは、イオン性の界面活性剤で処理した無機粒子(B1)を含有する第一の組成物が有機過酸化物(C2)を微量含む場合、及び、有機過酸化物(C2)を含有する第二の組成物がイオン性の界面活性剤で処理した無機粒子(B1)を微量含む場合について、長期間保存した場合においてもゲル化や硬化開始時間の短縮が起こり難い良好な保存安定性を有する歯科用重合硬化性組成物を提供するという課題が解決できることを理解できない。したがって、「微量含むこと」が許容される「実質的に含まない」との記載を有する本件特許発明4~8は、サポート要件を満たさない(申立書39~41頁の(6-6-3))。
(4)本件特許の出願時の技術常識を考慮しても、本件特許明細書の本文及び実施例の記載からは、平均粒子径が1μm以上50μm以下の不定形無機粒子(B3´)を含まない態様、及び、無機充填材(B)における(B1)及び(B2)以外の残部の90%以上が(B3´)でない場合について、長期間保存した場合においてもゲル化や硬化開始時間の短縮が起こり難い良好な保存安定性を有する歯科用重合硬化性組成物を提供するという課題が解決できることを理解できない。したがって、第一の組成物及び第二の組成物の両方において、無機充填材(B)が平均粒子径1μm以上50μm以下の不定形無機粒子(B3´)を含み、無機充填材(B)における(B1)及び(B2)以外の残部の90%以上が(B3´)であることの特定がない本件特許発明1及びこれを引用する本件特許発明3、4、6は、サポート要件を満たさない(申立書41~42頁の(6-7))。
2 申立理由2(実施可能要件)
本件特許の請求項1~8に係る特許は、下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
(1)本件特許の出願時の技術常識を考慮しても、本件特許明細書の発明の詳細な説明(以下「発明の詳細な説明」という。)には、第三級アミン(C1)及び有機過酸化物(C2)を分包しない場合について、長期間保存した場合においてもゲル化や硬化開始時間の短縮が起こり難い良好な保存安定性を有する歯科用重合硬化性組成物を実施できることが記載されているとはいえない。したがって、第三級アミン(C1)及び有機過酸化物(C2)を分包しない場合について本件特許発明1~3は、実施可能要件を満たさない(申立書47~48頁の(7-1-1))。
(2)本件特許の出願時の技術常識を考慮しても、発明の詳細な説明には、イオン性の界面活性剤で処理した無機粒子(B1)及び有機過酸化物(C2)が同一組成中に配合する場合について、長期間保存した場合においてもゲル化や硬化開始時間の短縮が起こり難い良好な保存安定性を有する歯科用重合硬化性組成物を実施できることが記載されているとはいえない。したがって、イオン性の界面活性剤で処理した無機粒子(B1)及び有機過酸化物(C2)を同一組成中に配合する場合について本件特許発明1~3は、実施可能要件を満たさない(申立書48頁の(7-1-2))。
(3)本件特許の出願時の技術常識を考慮しても、発明の詳細な説明には、イオン性の界面活性剤で処理した無機粒子(B1)を含有する第一の組成物が有機過酸化物(C2)を微量含む場合、及び、有機過酸化物(C2)を含有する第二の組成物がイオン性の界面活性剤で処理した無機粒子(B1)を微量含む場合について、長期間保存した場合においてもゲル化や硬化開始時間の短縮が起こり難い良好な保存安定性を有する歯科用重合硬化性組成物を実施できることが記載されているとはいえない。したがって、申立理由1(サポート要件)の(3)と同様に、イオン性の界面活性剤で処理した無機粒子(B1)を含有する第一の組成物が有機過酸化物(C2)を微量含む場合、及び、有機過酸化物(C2)を含有する第二の組成物がイオン性の界面活性剤で処理した無機粒子(B1)を微量含む場合について、本件特許発明4~8は、実施可能要件を満たさない(申立書48~49頁の(7-1-3))。
(4)本件特許の出願時の技術常識を考慮しても、発明の詳細な説明には、本件特許明細書の本文及び実施例の記載からは、平均粒子径が1μm以上50μm以下の不定形無機粒子(B3´)を含まない場合、及び、無機充填材(B)における(B1)及び(B2)以外の残部の90%以上が(B3´)でない場合について、長期間保存した場合においてもゲル化や硬化開始時間の短縮が起こり難い良好な保存安定性を有する歯科用重合硬化性組成物を実施できることが記載されているとはいえない。したがって、平均粒子径が1μm以上50μm以下の不定形無機粒子(B3´)を含まない場合、及び、無機充填材(B)における(B1)及び(B2)以外の残部の90%以上が(B3´)でない場合について、本件特許発明1及びこれを引用する本件特許発明3、4、6は、実施可能要件を満たさない(申立書49~50頁の(7-2))。
3 申立理由3(進歩性)
本件特許の下記の請求項に係る特許は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、下記の甲号証に記載された発明に基いて、本件特許の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
・請求項1~8について
甲第1号証(主引用発明)に基づく進歩性欠如
甲第2号証(主引用発明)に基づく進歩性欠如
甲第3号証(主引用発明)に基づく進歩性欠如
なお、以下では、申立人が提出した甲第●号証を、甲●のように連続番号を付して記載する(●は証拠番号)。
<甲号証一覧>
甲1:特開2014-177443号公報
甲2:特開2005-170813号公報
甲3:特許第6393393号公報
甲4:特開2001-139844号公報
甲5:特開2016-132659号公報
第5 取消理由の概要及び当審の判断
令和6年1月26日付けで特許権者に通知した取消理由(以下「取消理由」という。)の概要は、次のとおりである。
なお、下記取消理由1(サポート要件)は申立理由1(サポート要件)(1)及び(2)と、下記取消理由2(実施可能要件)は申立理由2(実施可能要件)(1)及び(2)と、下記取消理由3(進歩性)は申立理由3(進歩性)のうち請求項1~3についての甲第1号証(主引用発明)に基づく進歩性欠如の理由と、おおむね同旨である。
1 取消理由1(サポート要件)の概要
本件特許発明1~3は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
当業者は、重合性単量体(A)、イオン性高分子界面活性剤及び疎水化処理剤で処理された無機粒子(B1)、及び、第三級アミン(C1)を所定の配合量で含むペースト(PA)と、重合性単量体(A)、疎水化処理剤で処理され、イオン性の界面活性剤で処理されていない無機粒子(B2)、及び、有機過酸化物(C2)を所定の配合量で含むペースト(PB)という2つのペーストに分け、使用時に両者を混合することによって、本件特許発明の課題を解決できると認識できる。
しかし、本件特許発明1~3は、重合性単量体(A)、イオン性高分子界面活性剤及び疎水化処理剤で処理された無機粒子(B1)、及び、第三級アミン(C1)を所定の配合量で含むペースト(PA)と、重合性単量体(A)、疎水化処理剤で処理され、イオン性の界面活性剤で処理されていない無機粒子(B2)、及び、有機過酸化物(C2)を所定の配合量で含むペースト(PB)という2つのペーストに分けることが特定されていない。
そうすると、本件特許発明1~3は、化学重合開始剤である有機過酸化物(C2)と第三級アミン(C1)とが共存する態様や、イオン性高分子界面活性剤及び疎水化処理剤で処理された無機粒子(B1)と有機過酸化物(C2)とが共存する態様を包含するものであって、このような態様においては、当業者は、本件特許発明の課題を解決できることを認識できるとはいえないし、このことが本願出願時の技術常識であるともいえない。
したがって、当業者は、発明の詳細な説明の記載から、本件特許発明1~3により本件特許発明の課題を解決できることを認識できるとはいえない。
2 取消理由2(実施可能要件)の概要
本件特許発明1~3は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
取消理由1(サポート要件)で説示したように、本件特許発明1~3は、化学重合開始剤である有機過酸化物(C2)と第三級アミン(C1)とが共存する態様や、イオン性高分子界面活性剤及び疎水化処理剤で処理された無機粒子(B1)と有機過酸化物(C2)とが共存する態様を包含するものであるから、当業者は、本件特許発明1~3の組成物が歯科用重合硬化性組成物として使用できる程度の保存安定性を有することを、当業者が理解できるとはいえないし、このことが本願出願時の技術常識であるともいえない。
したがって、発明の詳細な説明の記載から、本件特許発明1~3が歯科用重合硬化性組成物として使用できることを、当業者が理解できない。
3 取消理由3(進歩性)の概要
本件特許発明1~3は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、甲1ないし甲5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
4 取消理由についての判断
本件訂正により、取消理由1~3の対象である請求項1~3は削除された。
したがって、取消理由1~3は解消した。
第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議の申立ての理由及び当審の判断について
取消理由通知において採用しなかった特許異議の申立ての理由は、次のとおりである。
・ 申立理由1(サポート要件)(3)及び(4)
・ 申立理由2(実施可能要件)(3)及び(4)
・ 申立理由3(進歩性)のうち、請求項4~8についての甲1(主引用発明)に基づく進歩性欠如
・ 申立理由3(進歩性)のうち、請求項1~8についての甲2(主引用発明)に基づく進歩性欠如
・ 申立理由3(進歩性)のうち、請求項1~8についての甲3(主引用発明)に基づく進歩性欠如
上記第1に述べたとおり、令和6年3月21日付けでした訂正の請求があった旨の通知に対し、申立人から意見書は提出されなかった。
ここで、上記第2のとおり、本件訂正が認められ、請求項1~3は削除されたので、訂正発明1~3についての申立理由が存在しないことは明らかである。
そこで、以下においては、訂正発明4~8について本件訂正前の請求項1~8についてした申立理由を主張するものとして、順に検討する。
1 申立理由1(サポート要件)(3)及び(4)について
(1)申立理由1(サポート要件)について
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
ア 発明の詳細な説明の記載
発明の詳細な説明には、以下の事項が記載されている。なお、下線は、当審合議体による。
(ア)背景技術
「【背景技術】
【0002】
歯科用コンポジットレジンは、天然歯牙色と同等の色調を付与でき、また、歯牙修復作業における取扱いが容易なことから、歯牙を修復するための材料として普及している。当該歯科用コンポジットレジンは、重合性単量体、無機充填材及び重合開始剤を主成分とし、その用途に応じて成分の最適化が図られている。
【0003】
たとえば、重合開始剤についてみてみると、審美性の要求される浅い窩洞の修復の修復に際しては、操作性が高く短時間で硬化するため患者への負担が軽いといった理由から光重合開始剤を含む歯科用コンポジットレジンが用いられている。光重合開始剤としては、環境光程度の弱い光に対しては活性を示さず、光照射器等による高強度の光照射に対しては高活性を示してコンポジットレジンを急速に硬化させることができるという理由から、α-ジケトン化合物、還元剤(脂肪族第3級アミン化合物など)及び光酸発生剤(トリハロメチル基により置換されたs-トリアジン化合物など)の組み合わせからなるものが知られている(特許文献1参照)。
【0004】
一方、光が届き難い深い窩洞を修復する場合には、化学重合開始剤が主に配合されている。化学重合開始剤は、通常、2成分以上の重合開始剤成分(たとえば、有機過酸化物と第三級アミン)で構成され、使用時においてこれら成分の全てを接触させて重合開始種を生成させるものであり、室温下でも硬化する化学重合開始剤を用いることで、光が届かない深部まで硬化させることが可能となる。なお、化学重合開始剤を用いる歯科用コンポジットレジンにおいては、使用前にラジカル重合性単量体が重合してしまうことを避けるために全ての化学重合開始剤成分が(たとえば、有機過酸化物と第三級アミンとが)一緒にならないように2つのペーストに分けて分包し、使用時に両者を混合するのが一般的である。
【0005】
更に、抜髄後の歯根部に支台築造を行う場合等では、光硬化型と化学硬化型との両方の性質を兼ね備えた、所謂デュアルキュア型コンポジットレジンが使用されることもある(特許文献2、3及び4参照)。ここで、支台築造とは、抜髄後の歯根部等の深い窩洞にコンポジットレジンを充填・硬化(場合によってはこのときポストの固定が行われる)させた後に、更に(通常、同一組成の)歯科用コンポジットレジンを支台形状に築盛して歯冠補綴物用の支台を築造することを意味し、通常は築盛されたペーストを硬化後に研削器具を用いた形態修正により最終的な支台形態が築造される。そして、この支台築造にデュアルキュア型コンポジットレジンを用いた場合には、化学重合開始剤の機能によって深い窩洞中では良好な硬化性が発揮され、光重合開始剤の機能を活用して支台築造を効率的に操作性良く行うことが可能となる。
【0006】
上記デュアルキュア型歯科用コンポジットレジンでは、化学重合開始剤を使用することから、化学重合開始剤成分を分けて2つの分包形態で提供されるが、光重合開始剤もこれに合わせて分包され、通常は、有機過酸化物(化学重合開始剤の一部)並びにα-ジケトン化合物及び必要に応じて光酸発生剤(光重合開始剤の一部)を含む第一のペーストと、第三級アミン(化学重合開始剤の残部)及び還元剤(光重合開始剤の残部。ただし前記第三級アミンが還元剤を兼ねることもある)を含む第二のペーストと、に分けて提供されている(特許文献2、3及び4参照)。」
(イ)発明が解決しようとする課題
「【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献4では、前記配合の無機充填材を使用することにより、硬化体の機械的強度、吐出性及び賦形性のバランスのとれた分包型の歯科用重合性支台築造材料となるとされているが、浅い窩洞を修復したときの審美修復性は不明である。また、特殊なシランカップリング剤を使用するばかりでなく、少なくとも3種の無機粒子を準備し、配合組成を調整する必要がある。・・・
【0018】
しかしながら、本発明者等が上記歯科用重合硬化性組成物の使用形態における保存安定性について更に検討を行ったところ、界面活性剤として特に効果が高いイオン性の界面活性剤を用いて処理を行った(B1)を用い、更に、重合開始剤として分包して保管するような有機過酸化物と第三級アミンとの組合せを含む化学重合開始剤を用いる場合に、保存安定性が低下することがあるという新たな課題があることが判明した。すなわち、前記歯科用重合硬化性組成物を、第三級アミン(C1)を含む第一の組成物と、有機過酸化物(C2)を含む第二の組成物に分包して保管する場合において、前記(B1)を上記第二の組成物に配合した場合には、長期に亘って保管した場合に組成物のゲル化(ゲル化とは、保存中に重合性単量体が重合し、硬化することを言う)が生じまでの期間、または、硬化開始時間(分包された組成物の混合から硬化発熱が始まるまでの時間)が設定した時間よりも短くなるまでの期間が想定した期間よりも短くなる現象が生じることが明らかとなった。硬化開始時間の短縮をより詳しく説明すれば、化学重合開始剤を用い、2分包されて保管され、使用時に各包剤(分包された組成物)を混合して所定の組成物を調製する場合には、原理的には混合直後から重合が開始され、重合の進行に伴って組成物粘度が上昇し、その速度が速い場合には、取り扱いが困難となるため、取り扱いが容易な時間(操作余裕時間、又は硬化開始時間)を確保するために、予め所定量の重合禁止剤を配合して重合性をコントロールすることが一般に行われる。このような目的で硬化開始時間の調整のために重合禁止剤を添加した場合に、長期保管後に重合禁止剤の消費に伴い硬化開始時間が短くなる(硬化開始時間が短くなる)。この硬化開始時間が設定した時間よりも短くなるまでの期間が想定よりも短くなることがあることが明らかとなった。
【0019】
そこで本発明は、重合性単量体(A)、前記(B1)を含む無機充填材(B)及び第三級アミン(C1)及び有機過酸化物(C2)を主要成分とする化学重合開始剤を含む重合開始剤(C)を含んで分包して保管する歯科用重合硬化性組成物であって、長期間保管した場合であっても、上記したようなゲル化及び/又は硬化開始時間の短縮が起こり難い、良好な保存安定性を有する歯科用重合硬化性組成物を提供することを課題とする。」
(ウ)発明の効果
「【発明の効果】
【0027】
本発明の歯科用重合硬化性組成物は、機械的・物理的強度が高い硬化体を与えることができるだけでなく、審美性の高い修復を行うことも可能である。さらに、無機充填材の含有量が高いにもかかわらず、深い窩洞に対しても隅々まで容易に行き渡り、且つシリンジから容易に吐出するようなペースト流動性を有し、更にペーストを盛り上げて大まかな支台形状を整えるときなどにおける形状保持性が良好である。さらに、有機過酸化物と第三級アミンとの組み合わせを含む化学重合開始剤を用いているにもかかわらず、2つの組成物に分包して保管する際の保存安定性も良好であり、ダブルシリンジを用いた混錬によって容易に均一ペースト(組成物)とすることができる。」
(エ)実施例(無機粒子の製造)
「【実施例】
【0082】
以下、本発明を具体的に説明するために、実施例および比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらにより何等制限されるものではない。
【0083】
1.無機粒子(B1)及びその製造方法について
製造実施例1(無機粒子(B1)であるB1-01の製造)
原料(被処理無機粒子、界面活性剤及び疎水化処理剤)として以下に示すものを使用し、下記操作手順に従って無機粒子(B1)であるB1-01の製造を行った。
〔原料〕
被処理無機粒子:平均(1次)粒子径が0.2μmで、比表面積が15m2/gである球状シリカジルコニア粉体
イオン性の界面活性剤:重量平均分子量2000のポリアクリル酸ナトリウム(ポリサイエンス社製、以下、「SA1」と略記することもある。)
疎水化処理剤としてのγ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(「MPS」と略記することもある。)
〔操作手順〕
前記被処理無機粒子:100g及びSA1:0.5gをイオン交換水:200mlと混合し、循環型粉砕機SCミルを用いて分散させて第一分散液を調製した。次いで、MPS:4.8gをpH4.0に調整した酢酸水溶液:80mlと混合・撹拌して1時間30分かけて加水分解を行い、MPSの部分加水分解物を含む第二分散液を調製した。その後、前記第一分散液と第二分散液とを混合し、1時間撹拌機にて撹拌した後、得られた混合液を手動で軽く撹拌しながら、高速で回転するディスク上に供給して噴霧乾燥を行った。
なお、噴霧乾燥は、回転するディスクを備え、遠心力で噴霧化する噴霧乾燥機(スプレードライヤー「TSR-2W」、商品名;坂本技研(株)製)を用いて行った。ディスクの回転速度は10000rpm、乾燥雰囲気空気の温度は200℃で行った。噴霧乾燥により得られた白色固体を、真空下80℃で18時間乾燥し、無機粒子B1であるB1-01を得た。参考までに当該製造実施例における原料及び各原料の使用量を表1に示す。
【0084】
製造例2~14及び製造比較例1~2
原料及び各原料の使用量を表1に示すように変更した以外は製造実施例1と同様にして、無機粒子(B1)に該当する表面処理無機粒子B1-02乃至B1-14、B1の条件を満足しない比較例(Comparative Example)の無機粒子に該当するCB1-01乃至CB1-02を得た。
なお、表中の界面活性剤、種類の欄の略号であるSA2及びSA3は、夫々以下のイオン性の界面活性剤を意味する。
・SA2:重量平均分子量6000のポリアクリル酸ナトリウム(ポリサイエンス社製)
・SA3:重量平均分子量500万のポリアクリル酸ナトリウム(東亜合成社製「アロンビス‐SX」)
【0085】
【表1】
[図:0001414193000001.jpg]
【0086】
2.無機粒子(B2)及びその製造方法について
製造実施例15(無機粒子(B2)であるB2-01の製造)
原料(被処理無機粒子及び疎水化処理剤)として以下に示すものを使用し、下記操作手順に従って無機粒子(B2)であるB2-01の製造を行った。
〔原料〕
被処理無機粒子:平均(1次)粒子が0.1μmで、比表面積が40m2/gである球状シリカジルコニア粉体
疎水化処理剤としてのγ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(「MPS」と略記することもある。)
〔操作手順〕
前記被処理無機粒子:100gをイオン交換水:200mlと混合し、循環型粉砕機SCミルを用いて分散させて第一分散液を調製した。次いで、MPS:12.8gをpH4.0に調整した酢酸水溶液:80mlと混合・撹拌して1時間30分かけて加水分解を行い、MPSの部分加水分解物を含む第二分散液を調製した。その後、前記第一分散液と第二分散液とを混合し、1時間撹拌機にて撹拌した後、得られた混合液を手動で軽く撹拌しながら、高速で回転するディスク上に供給して噴霧乾燥を行った。
なお、噴霧乾燥は、回転するディスクを備え、遠心力で噴霧化する噴霧乾燥機(スプレードライヤー「TSR-2W」、商品名;坂本技研(株)製)を用いて行った。ディスクの回転速度は10000rpm、乾燥雰囲気空気の温度は200℃で行った。噴霧乾燥により得られた白色固体を、真空下80℃で18時間乾燥し、無機粒子B2であるB2-01を得た。参考までに当該製造実施例における原料及び各原料の使用量を表2に示す。
製造例16~19及び製造比較例3
原料及び各原料の使用量を表1に示すように変更した以外は製造実施例15と同様にして、無機粒子(B2)に該当する表面処理無機粒子B2-02乃至B2-05、B2の条件を満足しない比較例(Comparative Example)の無機粒子に該当するCB2-01を得た。
【0087】
【表2】
[図:0001414193000002.jpg]
」
(オ)実施例(歯科用重合硬化性組成物及び当該組成物調製用キット)
「【0088】
3.歯科用重合硬化性組成物及び当該組成物調製用キットについて
後述の実施例及び比較例で使用した各種原料化合物の略号及びその名称等を「・略号:名称等」の形式で以下に示す。
〔重合性単量体(A)〕
・3G:トリエチレングリコールジメタクリレート
・GMA:2,2-ビス[(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)フェニル]プロパン
・D2.6E:下記式で示される化合物(但し、式中における(11+12)の平均が2.6の混合物である。)
【0089】
【化1】
[図:0001414193000003.jpg]
【0090】
〔無機粒子(B3)〕
・不定形シリカ-ジルコニア、平均粒径;5μm、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(MPS)で処理したもの
〔チキソ性調整用微粒子:B4〕
・微粉末シリカ、平均粒径;0.015μm、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(MPS)で処理したもの
〔重合開始剤(C)〕
第三級アミン(C1)
・DMPT:N,N-ジメチル-p-トルイジン
・DEPT:N,N-ジヒドロキシエチル-p-トルイジン
・DMBE:4-ジメチルアミノ安息香酸エチル
有機過酸化物(C2)
・BPO:過酸化ベンゾイル
光重合開始剤
・CQ:カンファーキノン
・TCT:2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-s-トリアジン
〔その他成分〕
・HQME:ハイドロキノンモノメチルエーテル・・・」
(カ)実施例(実施例1~22)
「【0090】
・・・
実施例1
GMA:10質量部、3G:40質量部及びD2.6E:50質量部の混合物から成る重合性単量体(A)100質量部にHQMEを0.15質量部、重合開始剤(C)の第三級アミン(C1)としてDEPT:2重量部を配合し、更に無機粒子としてB1-02:30質量部及びB3:180質量部と、を、乳鉢を用いて均一になるまで攪拌混合してペースト状の第一の組成物:PA-1を調整した。また、これとは別に、重合単量体組成物を調整する際において、重合開始剤(C)の有機過酸化物(C2)としてBPO:3質量部配合し、更に無機粒子としてB2-02:30質量部及びB3:180質量部を配合するように変更した他は第一の組成物と同様にして第二の組成物:PB-1を調整した。その後、これらPA-1及びPB―1を夫々ダブルシリンジの各(異なる1つの)シリンジに充填し、吐出力及びフロー性、硬化開始時間の評価を行った。結果を表4示す。
【0091】
(1)吐出力(シリンジからペーストを吐出させる際に必要な力)の評価
ダブルシリンジ(ミックスパック社製 SDL X05-01-78)にペーストPA -1及びPA-2を充填し、プランジャー(ミックスパック社 PLH X05-01-46)をセットし、ダブルシリンジ先端にミキシングチップ(ミックスパック社製 ML 2.5-08-D)及び先端ノズル(ミックスパック社製 IOR 209-20)を装着する。これを試験機(島津製作所製、商品名「オートグラフAG5000D」)にセットして、プランジャーをクロスヘッドスピード5mm/分の試験条件で押し、ノズルからペーストが吐出されるときに必要となる力(吐出力)を測定した。シリンジ5本について評価し、その平均値を吐出力とした。
【0092】
(2)フロー性(ペーストの形状保持性)
スライドガラス上にノズルを介してペースト0.1g±0.01gを円筒または円錐状に盛り上げて、それを37℃±1のインキュベーターに2分間静置し、その際のペーストの広がり(直径)を測定した。試験は2度行い、その平均を求め、フロー性とした。数値が小さいほどフロー性は低くペーストの形状保持性は良好となる。
【0093】
また、その保存安定性評価として、45℃で7日間保管し、フロー性を測定した。この時、7.0mmを超えない範囲を良好とした。
【0094】
(3)硬化開始時間(練和開始から硬化発熱が始まるまでの時間)
K型熱電対が装着されたモールドへノズルを介してペーストを充填し、練和開始から硬化発熱が開始するまでの時間(硬化開始時間)を測定した。試験は5回行い、その平均を求め、硬化開始時間とした。
【0095】
また、その保存安定性評価として、45℃で7日間保管し、硬化開始時間を測定した。この時、2.5分を下回らない範囲を良好とした。
【0096】
【表3】
[図:0001414193000004.jpg]
【0097】
・重合性単量体(A)として、GMA:10質量部、3G:40質量部及びD-2.6E:50質量部の混合物:100質量部を用いた。
※ ・実施例21については、無機粒子としてB4(3質量部)をPB-21に添加した。
・実施例22については、光重合開始剤としてCQ(0.2質量部)及びTCT(0.2質量部)をPB-22に添加した。
【0098】
【表4】
[図:0001414193000005.jpg]
【0099】
実施例2~22
配合する無機充填材(B)として配合する無機粒子の種類及び量を表3に示すように変えた他は実施例1と同様にして歯科用重合硬化性組成物キットのペーストを調製し、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表4に示す。」
(キ)実施例(比較例1~6)
「【0100】
比較例1
本比較例は、イオン性の界面活性剤を無機粒子の表面処理に使用するのではなく、第一の組成物および第二の組成物に直接配合した例である。すなわち、実施例1における第一の重合性単量体組成物および第二の重合性単量体組成物にSA2:2質量部を添加した組成物に、表2に示す無機充填材を表4に示す量で(具体的には、イオン性の界面活性剤処理を行っていないB2-02:120質量部及びB3:180質量部)配合する他は実施例1と同様にして第一の組成物:PA‐23及び第二の組成物:PB‐23を調製し、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表6に示す。
【0101】
比較例2
本比較例は、第一の組成物に配合されている無機粒子B1に代えて、疎水化剤による処理は行っているがイオン性の界面活性剤による処理を行っていない無機粒子(B2-02)を配合した例である。すなわち、実施例1における第一の組成物及び第二の組成物にB2-02:120質量部及びB3:180質量部配合する他は実施例1と同様にして第一の組成物:PA‐24及び第二の組成物:PB-24調製し、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表6に示す。
【0102】
比較例3及び6
本比較例は、第二の組成物に配合されている無機粒子B2に代えて、イオン性の界面活性剤と疎水化処理剤で処理された無機粒子(B1-02)を配合した例である。すなわち、実施例1における第二組成物にB1-02:120質量部及びB3:180質量部を配合する他は、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表6に示す。
【0103】
比較例4
本比較例は、第一の組成物に配合されている無機粒子B1に代えて、イオン性の界面活性剤による処理は行っているが疎水化処理剤による処理を行っていない無機粒子(CB1-01)を配合した例である。すなわち、実施例1における第一の組成物にCB1-01:120質量部及びB3:180質量部配合する他は実施例1と同様にして第一の組成物:PA‐26及び第二の組成物:PB‐26を調製し、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表6に示す。
【0104】
比較例5
本比較例は、第一の組成物に配合されている無機粒子B1と第二の組成物に配合されている無機粒子B2に代えて、疎水化剤による処理及びイオン性の界面活性剤による処理は行っているが平均粒子径が1μmを越える無機粒子(CB1-02またはB2-01)を配合した例である。すなわち、実施例1における第一の組成物にCB1-02:120質量部及びB3:60質量部配合し、第二の組成物にCB2-01:120質量部及びB3:60質量部配合する他は実施例1と同様にして第一の組成物:PA-27及び第二の組成物:PB-27を調製し、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表6に示す。
【0105】
【表5】
[図:0001414193000006.jpg]
【0106】
[図:0001414193000007.jpg]
【0107】
【表6】
[図:0001414193000008.jpg]
【0108】
第一の組成物に無機粒子B1を用いた本発明の組成物からなる重合硬化性組成物キットは、硬化開始時間及び形態保持性、吐出力が何れも良好な値となっている。これに対し、イオン性の界面活性剤を無機粒子の表面処理剤としてではなく、重合性単量体組成物中に直接配合した場合には、フロー性が高くなってしまい、形態保持性が低くなってしまうことに加えて、硬化開始時間の保存安定性が悪い(比較例1参照)。また、同様な被処理無機粒子を用いた場合でも疎水化処理剤による処理のみを行い、イオン性の界面活性剤による処理を行っていないB2-02を用いた場合には、形態保持性が低い(比較例2参照)。さらに第二の組成物にイオン性の界面活性剤と疎水化処理剤で処理したB1-02を用いた場合には、硬化開始時間の保存安定性が悪い(比較例3及び6)。一方、イオン性の界面活性剤による処理のみを行い疎水化処理剤による処理を行っていないCB1-01を用いた場合には、ペースト製造直後においては形態保持性及び吐出力共に良好であるが、形態保持性についての保存安定性が悪く、形態保持性が低下してしまう(比較例4参照)。さらに、粒子径が大きすぎる被処理無機粒子を用い、疎水化処理剤及びイオン性の界面活性で処理を行ったCB1-02を用いた場合には、形態保持性が低くなってしまう(比較例5参照)。」
イ 発明の詳細な説明の記載事項
上記アからみて、発明の詳細な説明には、以下の事項が記載されていると認められる。
(ア)化学重合開始剤を用いる歯科用コンポジットレジンは、使用前にラジカル重合性単量体が重合してしまうことを避けるため、全ての化学重合開始剤成分、例えば、有機過酸化物(C2)と第三級アミン(C1)とが一緒にならないように、2つのペーストに分けて分包し、使用時に両者を混合するのが一般的である(上記ア(ア))。
(イ)第三級アミン(C1)を含む第一の組成物と、有機過酸化物(C2)を含む第二の組成物に分包して保管する場合において、イオン性の界面活性剤を用いて処理を行った無機粒子(B1)を、有機過酸化物(C2)を含む第二の組成物に配合した場合には、長期に亘って保管した場合に組成物のゲル化(ゲル化とは、保存中に重合性単量体が重合し、硬化することを言う)が生じるまでの期間、または、硬化開始時間(分包された組成物の混合から硬化発熱が始まるまでの時間)が設定した時間よりも短くなるまでの期間が想定した期間よりも短くなる(上記ア(イ))。
(ウ)重合性単量体(A)、イオン性高分子界面活性剤及び疎水化処理剤で処理された無機粒子(B1)、及び、第三級アミン(C1)を所定の配合量で含むペースト(PA)と、重合性単量体(A)、疎水化処理剤で処理され、イオン性の界面活性剤で処理されていない無機粒子(B2)、及び、有機過酸化物(C2)を所定の配合量で含むペースト(PB)とからなる歯科用重合硬化性組成物は、ペースト(PA)とペースト(PB)が、それぞれダブルシリンジの異なるシリンジに充填され、吐出時に混合されて良好に硬化する(上記ア(オ)~(キ))。
(2)訂正発明の課題及びその解決手段
上記(1)ア(イ)によれば、訂正発明が解決すべき課題(以下「訂正発明の課題」という。)は、長期間保管した場合であってもゲル化及び/又は硬化開始時間の短縮が起こり難い、良好な保存安定性を有する歯科用重合硬化性組成物調製用キットを提供することであるといえる。
そして、上記(1)イにおける説示を踏まえれば、発明の詳細な説明には、化学重合開始剤を用いる歯科用コンポジットレジンにおいては、化学重合開始剤である有機過酸化物(C2)と第三級アミン(C1)とが共存したり、イオン性の界面活性剤を用いて処理を行った無機粒子(B1)と有機過酸化物(C2)とが共存したりすると、使用前の保管時においてラジカル重合性単量体が重合し、組成物のゲル化が生じるため、C1とC2との共存やB1とC2との共存を避けるため、重合性単量体(A)、平均粒子径が0.05μm以上、1μm以下である無機粒子(B1)及び第三級アミン(C1)を含有して、有機過酸化物(C2)を実質的に含まない第一の組成物と、重合性単量体(A)、イオン性の界面活性剤で処理されていない平均粒子径0.05μ m以上、1μm以下の無機粒子(B2)及び有機過酸化物(C2)を含有して、第三級アミン(C1)を実質的に含まない第二の組成物のそれぞれを独立して保管し、使用時に両者を組み合わせて混合することによって、上記(2)の訂正発明の課題を解決できることが記載されているといえる。
(3)申立理由1(サポート要件)(3)及び(4)についての当審の判断
ア 申立理由1(サポート要件)(3)について
発明の詳細な説明の【0073】には、「実質的に含まないとは、本発明の効果を阻害しない範囲で、微量含むことは許容するという意であり、基本的には全く含まないことが好ましい。」と記載されている。
そうすると、訂正発明4に記載された「実質的に含まず」とは、訂正発明の効果を阻害しないことを前提に、微量含むことを許容することを意味するものであって、訂正発明の課題を解決できない場合を包含しようとするものではない。
したがって、申立理由1(サポート要件)(3)の理由は採用できない。
イ 申立理由1(サポート要件)(4)について
上記(2)のとおり、訂正発明の課題解決のためには、第一組成物及び第二組成物における、重合性単量体(A)、無機粒子(B1)、無機粒子(B2)、第三級アミン(C1)及び有機過酸化物(C2)の共存や含有量等を考慮する必要はあるが、「平均粒子径が1μm以上50μm以下の不定形無機粒子(B3´)」の含有量は、訂正発明の課題を解決できる範囲の認定とは関係がない。
また、「平均粒子径が1μm以上50μm以下の不定形無機粒子(B3´)」の含有量によっては、訂正発明の課題を解決できない場合があることの具体的な証拠が示されている訳でもない。
したがって、申立理由1(サポート要件)(4)の理由は採用できない。
2 申立理由2(実施可能要件)(3)及び(4)について
(1)申立理由2(実施可能要件)について
発明の詳細な説明の記載が、訂正発明について実施可能要件を満たすというためには、本件特許の出願時の技術常識を参酌し、発明の詳細な説明の記載から、特許請求の範囲に記載された発明が歯科用重合硬化性組成物調製用キットとして使用できることを、当業者が理解できることが必要である。
そして、上記1(2)において説示したように、当業者は、重合性単量体(A)、平均粒子径が0.05μm以上、1μm以下である無機粒子(B1)及び第三級アミン(C1)を含有して、有機過酸化物(C2)を実質的に含まない第一の組成物と、重合性単量体(A)、イオン性の界面活性剤で処理されていない平均粒子径0.05μm以上、1μm以下の無機粒子(B2)及び有機過酸化物(C2)を含有して、第三級アミン(C1)を実質的に含まない第二の組成物のそれぞれを独立して保管し、使用時に両者を組み合わせて混合することによって、長期間保管した場合であってもゲル化及び/又は硬化開始時間の短縮が起こり難い、良好な保存安定性を有する歯科用重合硬化性組成物調製用キットとして使用できることを理解できるといえる。
(2)申立理由2(実施可能要件)(3)及び(4)についての当審の判断
ア 申立理由2(実施可能要件)(3)について
発明の詳細な説明の【0073】には、「実質的に含まないとは、本発明の効果を阻害しない範囲で、微量含むことは許容するという意であり、基本的には全く含まないことが好ましい。」と記載されている。
そうすると、訂正発明4に記載された「実質的に含まず」とは、本発明の効果を阻害しないことを前提に、微量含むことを許容することを意味するものであって、訂正発明の実施ができない場合を包含しようとするものではない。
したがって、申立理由2(実施可能要件)(3)の理由は採用できない。
イ 申立理由2(実施可能要件)(4)について
上記(1)で説示したように、本件明細書等には、訂正発明4の歯科用重合硬化性組成物調製用キットを使用できることが理解できるように記載されている。
一方、本件明細書の記載(上記(1)イ)から、組成物のゲル化が生じないようにするためには、第一組成物及び第二組成物における、重合性単量体(A)、無機粒子(B1)、無機粒子(B2)、第三級アミン(C1)及び有機過酸化物(C2)の共存や含有量等を考慮する必要はあるが、本件明細書等及び本件特許の出願時の技術常識を踏まえても、「平均粒子径が1μm以上50μm以下の不定形無機粒子(B3´)」の含有量によって、訂正発明の実施ができない場合があるとはいえないし、このことを裏付ける具体的な証拠が示されている訳でもない。
したがって、申立理由2(実施可能要件)(4)の理由は採用できない。
3 申立理由3(進歩性)について
(1)甲号証の記載及び甲号証に記載された発明
(1-1)甲1の記載及び甲1に記載された発明
ア 甲1には、次のとおりの記載がある。
1a
「【請求項1】
水中で負のゼータ電位を示す第1の無機1次粒子(A)と、
水中で正のゼータ電位を示す第2の無機1次粒子(B)と、
イオン性界面活性剤と、
を含んでなる無機凝集粒子。」
「【請求項13】
請求項1乃至10の何れかに記載の無機凝集粒子と、
各無機凝集粒子の表面を覆うと共に各無機1次粒子を相互に結合する重合性単量体の重合硬化物と、イオン性界面活性剤とを含む有機樹脂層と、
を含む有機無機複合フィラー。」
「【請求項16】
請求項13に記載の有機無機複合フィラーと、重合性単量体とを含んでなる歯科用硬化性組成物。」
1b
「【0166】
実施例1~10、比較例1~4
(1) 表3に記載する無機1次粒子P~Uの100gを、水150gに懸濁させ、40質量%の懸濁液を得た。懸濁液の調製は、循環型粉砕機(SCミル、三井鉱山製)を用いた。得られた分散液のゼータ電位をゼータサイザーナノ(マルバーン社製)を用いて光散乱電気泳動法で測定した。
【0167】
(2) 得られた各分散液に表4及び化学式1)~4)に示す界面活性剤を任意量添加し、撹拌混合した。無機1次粒子P~Uの各単位面積あたりのイオン性基の量を算出した。この値は、対応する界面活性剤の吸着量に相当する。結果を、表6に示した。その後、変動したゼータ電位の値を測定した。結果を表6に示した。無機1次粒子の表面積1m2当りのイオン性基は、1018~1020個であった。
【0168】
なお、界面活性剤の添加量は、以下の表5の通りであった。
【0169】
(3) 表6に示す第1の無機1次粒子(A)の懸濁液と、第2の無機1次粒子(B)(界面活性剤を含む)とを混合し、得られた混合懸濁液の粘度、粒度分布を測定した。結果を表6に示した。粘度は、B型粘度計BL2(東機産業社製)を用いて、粒度分布は、粒度分布計LS-230(ベックマンコールタール社製)を用いて測定した。
【0170】
(4) 表面処理と、噴霧乾燥 4g(0.016mol)の表面処理剤(シランカップリング剤)と、0.003gの酢酸と、80gの水とを混合し、1時間30分撹拌して均一な水溶液を得た。上記の水溶液を、前述の2種の懸濁液を混合した濃度40質量%のスラリー250g(無機1次粒子100g)に混合し、均一になるまで撹拌した。
【0171】
その後、スラリーを軽く撹拌しながら、ノズル式スプレードライヤーL8-i(大川原化工機社製)に供給し、噴霧乾燥法により造粒を行った。表面処理剤としては、3- メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを用いた。
(噴霧乾燥条件: 噴霧圧0.05MPa、供給スラリー流量3L/h、乾燥雰囲気空気の温度:230℃)。
【0172】
造粒されて得られた無機凝集粒子の粉体を80℃、15時間真空乾燥し、無機凝集粒子82gを得た。
【0173】
得られた無機凝集粒子の平均粒子径、粒径の変動係数の測定を行った。測定には粒度分布計LS-230(ベックマンコールタール社製)を用いた。結果を表7に示した。」
1c
「【0175】
【表3】
[図:0001414193000009.jpg]
」
1d
「【0176】
【表4】
[図:0001414193000010.jpg]
」
1e
「【0179】
【表6】
[図:0001414193000011.jpg]
【0180】
【表7】
[図:0001414193000012.jpg]
」
1f
「【0181】
(6)有機無機複合フィラーの製造
重合性単量体の略号を以下に記載する。
【0182】
3G: トリエチレングリコールジメタクリレート
HD: 1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート
GMA: 2,2-ビス〔(3メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)フェニル〕プロパン
UDMA: 1,6-ビス(メタクリルエチルオキシカルボニルアミノ)2,2-4-トリメチルヘキサン。
【0183】
重合開始剤の略号を以下に記載する。
【0184】
AIBN: アゾビスイソブチロニトリル
CQ: カンファーキノン
DMBE: N、N-ジメチル-p-安息香酸エチル。
【0185】
先ず、GMAを60g、3Gを40g、AIBNを0.3gを混合し、有機無機複合フィラー調製用の単量体組成物を調製した。ナス型フラスコに、上記単量体組成物を1gと、エタノール5gとを入れて混合し、重合性単量体溶液を得た。この単量体溶液に、前述で得られた無機凝集粒子10gを浸漬した。
【0186】
上記ナス型フラスコをロータリーエバポレータに取り付け、混合物が均一になるまで30分間撹拌混合を行った。更に、撹拌状態において、減圧度10ヘクトパスカル、加熱条件40℃(温水バスを使用)の条件下で、前記混合物を1時間乾燥させ、流動性の高い粉体を得た。
【0187】
その後、前記乾燥した粉体をロータリーエバポレーターで撹拌しながら、減圧度10ヘクトパスカル、加熱条件100℃(オイルバスを使用)の条件で、1時間加熱することにより、前記粉体中の重合性単量体を重合硬化させ、有機無機複合フィラーを得た。
【0188】
得られた有機無機複合フィラーの粒径を測定した。その後、粒径の変動係数CVを求めた。測定には粒度分布計LS-230(ベックマンコールタール社製)を用いた。これらの結果を表9に記載した。」
1g
「【0190】
(8)硬化性組成物
前記製造した有機無機複合フィラーを用いて、下記表8に記載する配合の硬化性組成物を調製した。調製に際しては、赤色光下で、乳鉢を用いて下記組成の各成分を混練してペースト状にし、脱泡することにより硬化性組成物を得た。
【0191】
【表8】
[図:0001414193000013.jpg]
」
1h
「【0205】
【表9】
[図:0001414193000014.jpg]
」
イ 甲1に記載された発明
上記アの摘記1a~摘記1h、特に摘記1eの実施例3の無機凝集粒子を用いて作成した有機無機複合フィラーを含む摘記1gの硬化性組成物によれば、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「(A)(a)平均粒子径が0.20μmであり、かつ界面活性剤で処理されず、シランカップリング剤である3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理された無機一次粒子Pを60質量部、及び、
(b)平均粒子径0.05μmであり、かつ界面活性剤である分子量60000g/molのポリアクリル酸ナトリウムで処理され、シランカップリング剤である3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理された無機一次粒子Tを40質量部、を含む無機凝集粒子10gと、
(c)重合性単量体であるGMA(2,2-ビス〔(3メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)フェニル〕プロパン)を60g、3G(トリエチレングリコールジメタクリレート)を40g、及び、
(d)重合開始剤であるAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)を0.3g、
を混合し重合性単量体を重合硬化させて得られた、
平均粒子径9.5μmの有機無機複合フィラーを240質量部、
(B)無機一次粒子Pを160質量部、
(C)D2.6E(2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン)を55質量部、3Gを10質量部、UDMA(1,6-ビス(メタクリルエチルオキシカルボニルアミノ)2,2-4-トリメチルヘキサン)を35質量部、からなる重合性単量体100質量部、
(D)CQ(カンファーキノン)を0.2質量部とDMBE(N、N-ジメチル-p-安息香酸エチル)を0.35質量部、からなる重合開始剤0.55質量部を含む、
歯科用硬化性組成物。」
(合議体注:D2.6Eが、「2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン」であることは、国際公開第2014/034788号の[0109]参照)
(1-2)甲2の記載及び甲2に記載された発明
ア 甲2には、次のとおりの記載がある。
2a
「【請求項1】
(A)重合性単量体、(B)無機充填材、及び(C)第三級アミンと有機過酸化物とからなる化学重合開始剤を含む歯科用硬化性組成物であって、
前記(B)無機充填材は(B-1)平均粒径が1μm以上、6μm以下の不定形無機粒子40~90質量%、(B-2)平均粒径が0.05μm以上、1μm以下の球状無機粒子10~60質量%、及び(B-3)粒径が0.05μm未満の無機粒子0~10質量%からなり、
前記歯科用硬化性組成物は、第三級アミンを含むペースト(I)と、有機過酸化物を含むペースト(II)との2つのペーストに分割されて包装されており、かつペースト(I)とペースト(II)とは、その粘度比が1:3~3:1の範囲にあることを特徴とする歯科用硬化性組成物。」
2b
「【0038】
本発明における上記(B-1)不定形無機粒子、(B-2)球状無機粒子、(B-3)無機粒子は、重合性単量体への分散性を改良する目的でその表面を疎水化処理されたものを用いることが好ましい。かかる疎水化処理は特に限定されるものではなく、公知の方法が制限なく採用される。
【0039】
代表的な疎水化処理方法を例示すれば、疎水化剤としてシランカップリング剤、例えばγ-メタクリロイルオキシアルキルトリメトキシシラン、γ-メチルトリメトキシシラン、γ-メタクリロイルオキシアルキルモノメチルジメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、モノメチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン等の有機珪素化合物による処理や、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、ジルコ-アルミネート系カップリング剤を用いる方法、粒子表面に前記重合性単量体をグラフト重合させる方法がある。この様な処理は、(B-1)不定形無機粒子、(B-2)球状無機粒子、(B-3)無機粒子を混合した後に行っても良く、それぞれの無機粒子について予め行っておいても良い。
【0040】
本発明の歯科用硬化性組成物には、(C)第三級アミンと有機過酸化物とからなる化学重合開始剤が配合される。有機過酸化物に対し、重合促進剤として第三級アミンを組み合わせることにより、有機過酸化物単独での分解温度よりも遥かに低温で(ラジカル)重合を開始することは公知であり、本発明においては、このような重合開始剤として作用するものであれば、公知のいかなる第三級アミンと有機過酸化物との組み合わせでも良い。」
2c
「 【0100】
また、実施例および比較例で用いた原料は以下の通りである。
(a)重合性単量体
ビスメタクリロイルエトキシフェニルプロパン(以下、D-2.6Eと略す。)
2,2-ビス[4(2-ヒドロキシ-3-メタクリルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン(以下、Bis-GMAと略す。)
トリエチレングリコールジメタクリレート(以下、3Gと略す。)
1,6-ビス(メタクリルエチルオキシカルボニルアミノ)-2,2-4-トリメチルヘキサン(以下、UDMAと略す。)
2-メタクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェートとビス(2-メタクリロイルオキシエチル)ハイドロジェンホスフェートの混合物(以下、PMと略す。)
11-メタクリロイルオキシ-1,1-ウンデカンジカンボン酸(以下、MAC-10と略す。)
2-ヒドロキシエチルメタクリレート(以下、HEMAと略す。)
(b)平均粒径 1μm以上、6μm以下の不定形無機粒子
不定形シリカ-ジルコニア、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン表面処理物、平均粒径;4.2μm、(以下、b-1と略す。)粒径(99%)<30μm 比表面積2.89m2/g 変動係数 0.84
不定形シリカ-ジルコニア、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン表面処理物、平均粒径;3.0μm、(以下、b-2と略す。)粒径(99%)<30μm 比表面積4.13m2/g 変動係数 0.82
不定形シリカ-ジルコニア、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン表面処理物、平均粒径;5.0μm、(以下、b-3と略す。)粒径(99%)<50μm 比表面積1.86m2/g 変動係数 0.72
不定形シリカ-ジルコニア、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン表面処理物、平均粒径;8.0μm、(以下、b-4と略す。)粒径(99%)<30μm 比表面積1.37m2/g 変動係数0.41
不定形シリカ-ジルコニア、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン表面処理物、平均粒径;0.8μm、(以下、b-5と略す。)粒径(99%)<10μm 比表面積9.1m2/g 変動係数 0.31
(c)平均粒径 0.05μm以上、1μm以下の球状無機粒子
球状シリカ-ジルコニア、平均粒径;0.1μm(以下、c-1と略す)。
球状シリカ-ジルコニア、平均粒径;0.6μm(以下、c-2と略す)。
(d)粒径 0.05μm未満の不定形無機粒子
微粉末シリカ、平均粒径;0.015μm(以下、d-1と略す。)粒径5~50nm
(e)第三級アミン
4-ジメチルアミノ安息香酸エチル(以下、DMBEと略す。)
4-ジメチルアミノアセトフェノン(以下、DMAと略す。)
N,N-ジヒドロキシエチル-p-トルイジン(以下、DEPTと略す。)
N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート(以下、DMEMと略す。)
(f)有機過酸化物
過酸化ベンゾイル(以下、BPOと略す。)
1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド(以下、パーオクタHと略す。)
(g)光重合開始剤
カンファーキノン(以下、CQと略す。)
(h)重合禁止剤
2、6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(以下、BHTと略す。)
ハイドロキノンモノメチルエーテル(以下、HQMEと略す。)
(i)アリールボレート化合物
テトラフェニルホウ素トリエタノールアミン塩(以下、PhBTEOAと略す。)
(j)バナジウム化合物
ビス(マルトラート)オキソバナジウム(IV)(以下、BMOVと略す。)
(k)その他
アセトン
水
実施例1
ペースト(I):無機充填材として〔(b-1)+(c-1)〕を400質量部、無機充填材を100質量%としたとき、(b-1)を70質量%及び、(C-1)を30質量%、重合性単量体としてBis-GMA 60質量部、及び3G 40質量部、第三級アミンとしてDEPT 1.3質量部、DMBE 1質量部、重合禁止剤としてBHT 0.05質量部を用いて前記調製方法に従い調製した。ペースト(I)の粘度は1160ポイズであった。
【0101】
ペースト(II):無機充填材として〔(b-1)+(c-1)〕を400質量部、無機充填材を100質量%としたとき、(b-1)を70質量%及び、(c-1)を30質量%、重合性単量体としてBis-GMA 60質量部、及び3G 40質量部、BPO 1.3質量部、CQ 1質量部、重合禁止剤としてBHT 0.05質量部を用い、前記調製方法に従い調製した。ペースト(II)の粘度は1140ポイズであった。」
2d
「 【0102】
上記ペースト(I)とペースト(II)を等量とり室温で30秒間練和し、硬化させたものについて各物性を測定したところ、その結果は次の通りであった。曲げ強度149MPa、圧縮強度310MPa、熱膨張率21.8×10-6/℃であった。ここでいう無機充填率とは、(無機充填材の質量部)/〔(無機充填材の質量部)+(重合性単量体の質量部)〕である。
【0103】
【表1】
[図:0001414193000015.jpg]
【0104】
【表2】
[図:0001414193000016.jpg]
」
イ 甲2に記載された発明
上記アの摘記2a~摘記2d、特に摘記2dの表1に記載された実施例1によれば、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「ペースト(I)及びペースト(II)からなる歯科用硬化性組成物であって、
ペースト(I)は、Bis-GMA60質量部、3G40質量部、平均粒径4.2μmの、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理した不定形シリカ-ジルコニアである不定形無機粒子(b-1)を70質量%、及び、平均粒径0.1μmの、球状シリカ-ジルコニアである球状無機粒子(c-1)を30質量%で含む無機充填材415質量部、重合開始剤であるDEPT1.3質量部及びDMBE1質量部、重合禁止剤であるBHTを0.05質量部含み、
ペースト(II)は、Bis-GMA60質量部、3G40質量部、平均粒径4.2μmの、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理した不定形シリカ-ジルコニアである不定形無機粒子(b-1)を70質量%、及び、平均粒径0.1μmの、球状シリカ-ジルコニアである球状無機粒子(c-1)を30質量%で含む無機充填材415質量部、重合開始剤である有機過酸化物BPOを1.3重量部、重合開始剤である光重合開始剤CQを1.0質量部含む、歯科用硬化性組成物であって、
重合性単量体100質量部に対する無機充填材((b-1)及び(c-1))が415質量部であり、平均粒径0.1μmの(c-1)は、無機充填材の30質量%である、歯科用硬化性組成物。」
(1-3)甲3の記載及び甲3に記載された発明
ア 甲3には、次のとおりの記載がある。
3a
「【請求項1】
第一のペーストに(A)1種以上の重合性単量体、(B)化学重合開始材としての有機過酸化物、(C)塩基性充填材を含み、
第二のペーストに(A)1種以上の重合性単量体、(C)塩基性充填材、(D)化学重合促進材としての芳香族アミン化合物を含み、
第二のペースト中の(C)塩基性充填材が第二のペーストの組成の総量100重量部に対して30-80重量部であり、
(C)塩基性充填材は、前記(C)塩基性充填材1.0gを蒸留水40gおよびエタノール10gの混合溶液に加え、1時間攪拌させた時の分散液のpHが7.5~9.0であることを特徴とする記載の歯科用2ペースト型重合性組成物。」
3b
「 【0046】
光重合開始材としては、α-ジケトン類、モノ-、ビス-またはトリスアシルホスフィンオキシド化合物、モノ-、ジ-アシルゲルマニウム化合物が挙げられる。光重合開始材の配合量は特に限定されないが、光硬化性の観点から、歯科用2ペースト型重合性組成物における重合性単量体の総量100重量部に対して、0.01~5重量部が好ましく、0.10~3重量部がより好ましい。
【0047】
α-ジケトン類としては、ジアセチル、ジベンジル、カンファーキノン、2,3-ペンタジオン、2,3-オクタジオン、9,10-フェナンスレンキノン、4,4’-オキシベンジル、アセナフテンキノン等が挙げられる。この中でも、可視および近紫外領域での光硬化性に優れ、ハロゲンランプ、発光ダイオード(LED)、キセノンランプのいずれの光源を用いても十分な光硬化性を示すことから、カンファーキノンが好ましい。
・・・
【0053】
重合禁止材としては、具体的には、2,6-ジ-ブチルヒドロキシトルエン、ハイドロキノン、ジブチルハイドロキノン、ジブチルハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6 -t-ブチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノールが挙げられる。重合禁止材の配合量は、歯科用2ペースト型重合性組成物における重合性単量体の総量100重量部に対して0.001~1.0重量部が好ましい。
【実施例】
【0054】以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。以下で用いる略記号は次のとおりである。 【0055】(A)重合性単量体Bis-GMA:2,2-ビス〔4-(3-(メタ)アクリロイルオキシ)-2-ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパンUDMA:2,2,4-トリメチルヘキサメチレンビス(2-カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレート2.6E:エトキシ基の平均付加モル数が2.6である2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパンTEGDMA:トリエチレングリコールジメタクリレートNPG:ネオペンチルグリコールジメタクリレート2-HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレートTMPT:トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート10-MDP:10-メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート(酸性基を有する重合性単量体) 【0056】(B)重合開始材BPO:ベンゾイルパーオキサイドCHP:クメンヒドロペルオキシド 【0057】(D)重合促進材DMPT:N,N-ジメチル-p-トルイジンDEPT:N,N-ジ(1-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン 【0058】その他CQ:カンファーキノンAPO:2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドpTNa:p-トルエンスルフィン酸ナトリウムBHT:2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール水:蒸留水」
3c
「 【0059】
(C):充填材
各充填材の製造方法を以下に示す。
【0060】
充填材の原料ガラスGL1~GL9の組成(W/W%)を表に示す。
【0061】
【表1】
[図:0001414193000017.jpg]
【0062】
上述原料ガラスのフィラー表面を以下に示す処理方法によって表面処理を施し、充填材として用いた。
・・・
【0064】
原料ガラスGL2100.0gに対して、水100.0g、エタノール80.0g、リン酸0.020g、シランカップリング材として3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン20.0gを2時間室温で撹拌し得られたシランカップリング処理液を加え、30分間撹拌混合した。その後、140℃にて熱処理を15時間施し、充填材2を得た。
・・・
【0066】
原料ガラスGL4 100.0gに対して、水100.0g、エタノール80.0g、リン酸0.020g、シランカップリング材として3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン20.0gを2時間室温で撹拌し得られたシランカップリング処理液を加え、30分間撹拌混合した。その後、140℃にて熱処理を15時間施し、充填材4を得た。」
3d
「 【0075】
ペーストの製造方法
【0076】
表3に示される第一のペーストまたは第二のペーストごとに、ミックスローターVMRC-5を用いて100rpmの条件で各材料を24時間混合し、各材料が溶解したレジン液を得た。その後、レジン液と充填材を混練容器に投入し、自転公転ミキサーARV-300を用いて1400rpmで20分間混練し、第一のペーストと第二のペーストを得た。得られた第一のペーストと第二のペーストをミックスパック社製5mLダブルシリンジ(第一のペーストと第二のペーストの体積比が1:1)に充填した組成1~27を歯科用2ペースト型重合性組成物として用意した。なお、実施例および比較例においては、本発明における第一のペーストをペーストA、第二のペーストをペーストBとして読み替えることとする。
【0077】
【表3】
[図:0001414193000018.jpg]
[図:0001414193000019.jpg]
[図:0001414193000020.jpg]
【0078】
実施例及び比較例で評価した各特性の試験方法は以下の通りである。なお、各試験はミキシングチップを装着して自動練和の条件で実施した。」
3e
「【0083】
組成1~27において上述の試験結果を実施し、その結果を表4に示した。貯蔵安定性および色調安定性を満足する組成1~14および20~29をそれぞれ実施例1~24として記載した。
【0084】
【表4】
[図:0001414193000021.jpg]
」
イ 甲3に記載された発明
上記アの摘記3a~摘記3e、特に摘記3dの表3に記載された組成6からなる摘記3eの表4に記載された実施例6の歯科用2ペースト型重合性組成物によれば、甲3には、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。
「第一のペースト及び第二のペーストからなる歯科用2ペースト型重合性組成物であって、
第一のペーストは、2.6E60重量部、TEGDMA30重量部、2-HEMA10重量部、重合開始剤であるBPO1.3重量部、光重合促進材であるCQ0.5重量部、重合禁止材であるBHT0.05重量部、
100gの原料ガラスGL2に対してシランカップリング材である3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン20.0gを加えて熱処理して得られた、平均粒径0.5μmの充填材2を175重量部、及び、
100gの原料ガラスGL4に対してシランカップリング材である3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン20.0gを加えて熱処理して得られた、平均粒径4.5μmの充填材4を125重量部含み、
第二のペーストは、2.6E60重量部、TEGDMA30重量部、2-HEMA10重量部、重合促進剤であるDEPT1.1重量部、
100gの原料ガラスGL2に対してシランカップリング材である3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン20.0gを加えて熱処理して得られた、平均粒径0.5μmの充填材2を175重量部、及び、
100gの原料ガラスGL4に対してシランカップリング材である3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン20.0gを加えて熱処理して得られた、平均粒径4.5μmの充填材4を125重量部含み、
重合性単量体100質量部に対する無機充填材(充填材2と充填材4の合計)が300重量部である、歯科用2ペースト型重合性組成物。」
(2)訂正発明と甲号証に記載された発明との対比、判断
(2-1)申立理由3(進歩性)のうち、甲1を主引例とする請求項4~8に対する理由について
ア 訂正発明4について
(ア)対比
訂正発明4と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「(C)D2.6E(2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン)を55質量部、3Gを10質量部、UDMA(1,6-ビス(メタクリルエチルオキシカルボニルアミノ)2,2-4-トリメチルヘキサン)を35質量部、からなる重合性単量体100質量部」は、訂正発明4の「重合性単量体(A):100質量部」に相当する。
甲1発明の「(D)CQ(カンファーキノン)を0.2質量部とDMBE(N、N-ジメチル-p-安息香酸エチル)を0.35質量部、からなる重合開始剤0.55質量部」における「CQ(カンファーキノン)」及び「DMBE(N、N-ジメチル-p-安息香酸エチル)」は、いずれも重合開始剤であるから、訂正発明4の「第三級アミン(C1)及び有機過酸化物(C2)を主要成分とする化学重合開始剤を含有してなる」「重合開始剤(C)」とは、「重合開始剤」である点に限り一致する。
甲1発明の「(B)無機一次粒子P」は、「(a)平均粒子径が0.20μmであり、かつ界面活性剤で処理されず、シランカップリング剤である3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理された」ものであって、シランカップリング剤である3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランは、訂正発明4における「疎水化処理剤」に相当する(本件特許明細書【0044】)ことを踏まえると、訂正発明4の「疎水化処理剤で処理され、イオン性の界面活性剤で処理されていない平均粒子径0.05以上、1μm以下の無機粒子(B2)」に相当する。
甲1発明の「(A)有機無機複合フィラー」を構成する「無機凝集粒子」は、「(b)平均粒子径0.05μmであり、かつ界面活性剤である分子量60000g/molのポリアクリル酸ナトリウムで処理され、シランカップリング剤である3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理された無機一次粒子Tを40質量部」を含むものである。
ここで、甲1発明の(b)無機一次粒子Tは、アニオン性高分子界面活性剤(【0176】【表4】)である「分子量60000g/molのポリアクリル酸ナトリウム」で処理されたものである。
そうすると、甲1発明の「(A)有機無機複合フィラー」を構成する「無機凝集粒子」に含まれる「無機一次粒子T」と、訂正発明4の「重量平均分子量が2000以上、2000万以下であるイオン性高分子界面活性剤及び疎水化処理剤で処理された、平均粒子径が0.05μm以上、1μm以下である無機粒子(B1)」とは、「イオン性高分子界面活性剤及び疎水化処理剤で処理された、平均粒子径が0.05μmの無機粒子」である点で一致する。
甲1発明の「(A)有機無機複合フィラー240質量部」及び「(B)無機一次粒子P160質量部」は、いずれも無機充填材であって、合計で400質量部となるから、訂正発明4の「無機充填材(B):100質量部以上、500質量部以下」に相当する。
甲1発明の「歯科用硬化性組成物」は、訂正発明4の「歯科用重合硬化性組成物」に相当する。
そうすると、訂正発明4と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「重合性単量体(A):100質量部、無機充填材(B):100質量部以上、500質量部以下及び重合開始剤(C)を含有してなる歯科用重合硬化性組成物において、
前記無機充填材(B)が、イオン性高分子界面活性剤及び疎水化処理剤で処理された、平均粒子径が0.05μmの無機粒子、及び疎水化処理剤で処理され、イオン性の界面活性剤で処理されていない平均粒子径0.05以上、1μm以下の無機粒子(B2)を含むことを特徴とする前記歯科用重合硬化性組成物。」
<相違点>
相違点1 イオン性高分子界面活性剤について、訂正発明4は、「重量平均分子量が2000以上、2000万以下」であるのに対し、甲1発明は、「分子量60000g/mol」である点。
相違点2 無機充填材(B)について、訂正発明4は、(B1)及び(B2)の合計で10質量%以上90質量%以下であるのに対し、甲1発明は、有機無機複合フィラー及び無機一次粒子Pの合計で100質量%である点。
相違点3 重合開始剤(C)について、訂正発明4は、第三級アミン(C1)及び有機過酸化物(C2)を主要成分とする化学重合開始剤であるのに対し、甲1発明は、CQ(カンファーキノン)及びDMBE(N、N-ジメチル-p-安息香酸エチル)である点。
相違点4 訂正発明4は、それぞれ独立して保管される、重合性単量体(A)、平均粒子径が0.05μm以上、1μm以下である無機粒子(B1)及び第三級アミン(C1)を含有して、有機過酸化物(C2)を実質的に含まない第一の組成物と、重合性単量体(A)、イオン性の界面活性剤で処理されていない平均粒子径0.05μm以上、1μm以下の無機粒子(B2)及び有機過酸化物(C2)を含有して、(B1)及び第三級アミン(C1)を実質的に含まない第二の組成物との組合せを含んでなる歯科用重合硬化性組成物調製用キットであるのに対し、甲1発明は対応する事項が特定されていない点。
(イ)相違点についての判断
事例に鑑み、相違点4から検討する。
甲1~5には、歯科用重合硬化性組成物を調製するための歯科用重合硬化性組成物調製用キットとするために、重合性単量体(A)、平均粒子径が0.05μm以上、1μm以下である無機粒子(B1)及び第三級アミン(C1)を含有して、有機過酸化物(C2)を実質的に含まない特定の組合せである第一の組成物と、重合性単量体(A)、イオン性の界面活性剤で処理されていない平均粒子径0.05μm以上、1μm以下の無機粒子(B2)及び有機過酸化物(C2)を含有して、(B1)及び第三級アミン(C1)を実質的に含まない特定の組合せである第二の組成物との組合せのそれぞれを独立して保管されるものとする技術的事項について記載も示唆もない。
そうすると、上記技術的事項は、甲1~5に記載も示唆もないから、甲1発明において、相違点4の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
よって、訂正発明4は、相違点1~3について検討するまでもなく、甲1発明及び甲1~5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 訂正発明5~8について
訂正発明5~8は、訂正発明4をさらに限定したものである。
したがって、上記アで説示したのと同様に、訂正発明5~8は、甲1発明及び甲1~5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2-2)申立理由3(進歩性)のうち、訂正発明4~8に対する甲2(主引用発明)に基づく進歩性欠如の理由について
ア 訂正発明4について
(ア)対比
訂正発明4と甲2発明とを対比する。
甲2発明のペースト(I)及びペースト(II)における「Bis-GMA60質量部と3G40質量部」は、訂正発明4の「重合性単量体(A):100質量部」に相当する。
甲2発明のペースト(I)における「重合開始剤であるDEPT1.3質量部及びDMBE1質量部」は、訂正発明4の第一の組成物における「第三級アミン(C1)」を含有して「有機過酸化物(C2)を実質的に含ま」ない「重合開始剤(C)」に相当する。
甲2発明のペースト(II)における「重合開始剤である有機過酸化物BPOを1.3重量部」は、訂正発明4の第二の組成物における「有機過酸化物(C2)」を含有して「第三級アミン(C1)を実質的に含まない」「重合開始剤(C)」に相当する。
また、甲2発明において、第三級アミンと有機過酸化物の合計は3.6質量部であるのに対し、光重合剤CQは1.0質量部であるから、甲2発明の重合開始剤は、第三級アミンと有機過酸化物が主要成分である。
甲2発明のペースト(I)及びペースト(II)における「平均粒径0.1μmの、球状シリカ-ジルコニアである球状無機粒子(c-1)」と、訂正発明4の第一の組成物における「重量平均分子量が2000以上、2000万以下であるイオン性高分子界面活性剤及び疎水化処理剤で処理された、平均粒子径が0.05μm以上、1μm以下である無機粒子(B1)」及び訂正発明4の第二の組成物における「疎水化処理剤で処理され、イオン性の界面活性剤で処理されていない平均粒子径0.05μm以上、1μm以下の無機粒子(B2)」とは、「無機粒子」である点に限り、一致する。
甲2発明の「平均粒径0.1μmの、球状シリカ-ジルコニアである球状無機粒子(c-1)」は、無機充填材の30質量%であるから、訂正発明4の「(B1)及び(B2)の合計で10質量%以上90質量%以下」含む「無機充填材(B)」に相当する。
甲2発明の「重合性単量体100質量部に対する無機充填材((b-1)及び(c-1))が415質量部」は、訂正発明4の「無機充填材(B):100質量部以上、500質量部以下」に相当する。
甲2発明の「歯科用硬化性組成物」は、ペースト(I)及びペースト(II)からなるものであって、両者は、用時に練和して硬化させるものである(摘記2d)から、訂正発明4の「それぞれ独立して保管される第一の組成物と第二の組成物との組合せ」を含む「歯科用重合硬化性組成物調製用キット」に相当する。
そうすると、訂正発明4と甲2発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「重合性単量体(A):100質量部、無機充填材(B):100質量部以上、500質量部以下及び重合開始剤(C)を含有してなる歯科用重合硬化性組成物において、
前記無機充填材(B)が、平均粒子径が0.05μm以上、1μm以下である無機粒子を10質量%以上90質量%以下含み、前記重合開始剤(C)が、第三級アミン(C1)及び有機過酸化物(C2)を主要成分とする化学重合開始剤を含有してなる、歯科用重合硬化性組成物を調製するための歯科用重合硬化性組成物調製用キットであって、
それぞれ独立して保管される第一の組成物と第二の組成物との組合せを含んでなり、
前記第一の組成物は、前記(A)、前記(B)及び前記(C1)を含有して、前記(C2)を実質的に含まず、
前記第二の組成物は、前記(A)、前記(B)及び前記(C2)を含有して、前記(C1)を実質的に含まない、
ことを特徴とする前記歯科用重合硬化性組成物調製用キット。」
<相違点>
相違点5 訂正発明4は、無機充填材(B)が「重量平均分子量が2000以上、2000万以下であるイオン性高分子界面活性剤及び疎水化処理剤で処理された、平均粒子径が0.05μm以上、1μm以下である無機粒子(B1)」及び「疎水化処理剤で処理され、イオン性の界面活性剤で処理されていない平均粒子径0.05μm以上、1μm以下の無機粒子(B2)」を含むものであって、第三級アミン(C1)を含み有機過酸化物(C2)を含まない第一の組成物に(B1)を含み、有機過酸化物(C2)を含み(B1)及び第三級アミン(C1)を含まない第二の組成物に(B2)を含むものであるのに対し、甲2発明は対応する事項が特定されていない点。
(イ)相違点についての判断
甲1~5には、第一の組成物及び第二の組成物からなる歯科用重合硬化性組成物調製用キットにおいて、無機充填材(B)が「重量平均分子量が2000以上、2000万以下であるイオン性高分子界面活性剤及び疎水化処理剤で処理された、平均粒子径が0.05μm以上、1μm以下である無機粒子(B1)」及び「疎水化処理剤で処理され、イオン性の界面活性剤で処理されていない平均粒子径0.05μm以上、1μm以下の無機粒子(B2)」を含むものとすることを示唆する技術的事項も、第三級アミン(C1)を含み有機過酸化物(C2)を含まない特定の組合せである第一の組成物に(B1)を含み、有機過酸化物(C2)を含み(B1)及び第三級アミン(C1)を含まない特定の組合せである第二の組成物に(B2)を含むものとすることを示唆する技術的事項も記載されていない。
そうすると、上記技術的事項は、甲1~5に記載も示唆もないから、甲2発明において、相違点5の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
よって、訂正発明4は、甲2発明及び甲1~5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 訂正発明5~8について
訂正発明5~8は、訂正発明4をさらに限定したものである。
したがって、上記アで説示したのと同様に、訂正発明5~8は、甲2発明及び甲1~5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2-3)申立理由3(進歩性)のうち、訂正発明4~8に対する甲3(主引用発明)に基づく進歩性欠如の理由について
ア 訂正発明4について
(ア)対比
訂正発明4と甲3発明とを対比する。
甲3発明の第一のペースト及び第二のペーストにおける「2.6E60重量部、TEGDMA30重量部、2-HEMA10重量部」は、訂正発明4の「重合性単量体(A):100質量部」に相当する。
甲3発明の第一のペーストにおける「重合開始剤であるBPO1.3重量部、光重合促進材であるCQ0.5重量部」は、訂正発明4の第二の組成物における「有機過酸化物(C2)」して「第三級アミン(C1)を実質的に含まない」「重合開始剤(C)」に相当する。
甲3発明の第二のペーストにおける「重合促進剤であるDEPT1.1重量部」は、訂正発明4の第一の組成物における「第三級アミン(C1)」を含有して「有機過酸化物(C2)を実質的に含ま」ない「重合開始剤(C)」に相当する。
また、甲3発明において、第三級アミンと有機過酸化物の合計は2.6重量部であるのに対し、光重合剤CQは0.5重量部であるから、甲3発明の重合開始剤は、第三級アミンと有機過酸化物が主要成分である。
甲3発明におけるシランカップリング材は、訂正発明4の疎水化処理剤に相当する(本件特許明細書【0044】)。
そうすると、甲3発明の第二のペーストにおける「100gの原料ガラスGL2に対してシランカップリング材である3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン20.0gを加えて熱処理して得られた、平均粒径0.5μmの充填材2」は、訂正発明4の第二の組成物における「疎水化処理剤で処理され、イオン性の界面活性剤で処理されていない平均粒子径0.05μm以上、1μm以下の無機粒子(B2)」に相当する。
また、甲3発明の第一のペーストにおける「100gの原料ガラスGL2に対してシランカップリング材である3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン20.0gを加えて熱処理して得られた、平均粒径0.5μmの充填材2」と、訂正発明4の第一の組成物における「重量平均分子量が2000以上、2000万以下であるイオン性高分子界面活性剤及び疎水化処理剤で処理された、平均粒子径が0.05μm以上、1μm以下である無機粒子(B1)」とは、「疎水化処理剤で処理された、平均粒子径が0.05μm以上、1μm以下である無機粒子」である点に限り、一致する。
甲3発明の第一のペースト及び第二のペーストにおける「100gの原料ガラスGL2に対してシランカップリング材である3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン20.0gを加えて熱処理して得られた、平均粒径0.5μmの充填材2を175重量部」は、充填材2と充填材4を合わせた無機粒子の合計300重量部の58重量%と算出されるから、訂正発明4の「(B1)及び(B2)の合計で10質量%以上90質量%以下」含む「無機充填材(B)」に相当する。
甲3発明の「重合性単量体100質量部に対する無機充填材(充填材2と充填材4の合計)が300重量部」は、訂正発明4の「無機充填材(B):100質量部以上、500質量部以下」に相当する。
甲3発明の「歯科用2ペースト型重合性組成物」は、第一のペースト及び第二のペーストからなるものであって、両者は、用時に練和して硬化させるものである(摘記3d)から、訂正発明4の「それぞれ独立して保管される第一の組成物と第二の組成物との組合せ」を含む「歯科用重合硬化性組成物調製用キット」に相当する。
そうすると、訂正発明4と甲3発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「重合性単量体(A):100質量部、無機充填材(B):100質量部以上、500質量部以下及び重合開始剤(C)を含有してなる歯科用重合硬化性組成物において、
前記無機充填材(B)が、疎水化処理剤で処理され、イオン性の界面活性剤で処理されていない平均粒子径0.05μm以上、1μm以下の無機粒子(B2)を、10質量%以上90質量%以下含み、前記重合開始剤(C)が、第三級アミン(C1)及び有機過酸化物(C2)を主要成分とする化学重合開始剤を含有してなる、歯科用重合硬化性組成物を調製するための歯科用重合硬化性組成物調製用キットであって、
それぞれ独立して保管される第一の組成物と第二の組成物との組合せを含んでなり、
前記第一の組成物は、前記(A)、疎水化処理剤で処理された、平均粒子径が0.05μm以上、1μm以下である無機粒子及び前記(C1)を含有して、前記(C2)を実質的に含まず、
前記第二の組成物は、前記(A)、前記(B2)及び前記(C2)を含有して、前記(C1)を実質的に含まない、
ことを特徴とする前記歯科用重合硬化性組成物調製用キット。」
<相違点>
相違点6 訂正発明4では、無機充填材(B)が「重量平均分子量が2000以上、2000万以下であるイオン性高分子界面活性剤及び疎水化処理剤で処理された、平均粒子径が0.05μm以上、1μm以下である無機粒子(B1)」を含むこと、無機充填材(B)が(B1)及び(B2)の合計で10質量%以上90質量%以下であること、第一の組成物における「疎水化処理剤で処理された、平均粒子径が0.05μm以上、1μm以下である無機粒子」が無機粒子(B1)であること、第二の組成物において無機粒子(B1)を実質的に含まないこと、が特定されているのに対し、甲3発明では対応する事項が特定されていない点。
(イ)相違点についての判断
甲1~5には、第一の組成物及び第二の組成物からなる歯科用重合硬化性組成物調製用キットにおいて、無機充填材(B)を「重量平均分子量が2000以上、2000万以下であるイオン性高分子界面活性剤及び疎水化処理剤で処理された、平均粒子径が0.05μm以上、1μm以下である無機粒子(B1)」を含むものとすること、無機充填材(B)を(B1)及び(B2)の合計で10質量%以上90質量%以下とすること、第一の組成物における「疎水化処理剤で処理された、平均粒子径が0.05μm以上、1μm以下である無機粒子」を無機粒子(B1)とすること、第二の組成物において無機粒子(B1)を実質的に含まないものとすること、について、これらを示唆する技術的事項は記載されていない。
そうすると、上記技術的事項は、甲1~5に記載も示唆もないから、甲3発明において、相違点6の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
よって、訂正発明4は、甲3発明及び甲1~5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 訂正発明5~8について
訂正発明5~8は、訂正発明4をさらに限定したものである。
したがって、上記アで説示したのと同様に、訂正発明5~8は、甲3発明及び甲1~5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)小括
以上のとおりであるから、訂正発明4~8は、甲1発明、甲2発明、甲3発明のいずれか及び甲1~5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第7 むすび
本件特許の請求項4~8に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由1~3及び申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項4~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件特許の請求項1~3に係る発明の特許は、訂正により削除され、特許異議の申立ての対象が存在しないものとなったので、本件特許の請求項1~3に係る発明の特許についての特許異議申立は、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-701073