特許異議申立
2022-701253
ASCの前にSCR触媒を備えるシステム内でDOCとして作用するASCを有する、DOCを伴わない排気システム
- 審判番号
- 2022-701253
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-206887
- 登録番号
- 7086162
- 請求日
- 2022年12月16日
- 審決日
- 2023年11月21日
- 公報発行日
- 2024年02月22日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
- 【権利者代理人】園田・小林弁理士法人
- 【異議申立人】加藤 純子
- 審判長/審判官
- 審判長 三崎 仁
- 審判官 後藤 政博
- 審判官 増山 淳子
- 分類
- P1651.113-YAA(B01J) / P1651.121-YAA(B01J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7086162号発明「ASCの前にSCR触媒を備えるシステム内でDOCとして作用するASCを有する、DOCを伴わない排気システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7086162号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-44〕について訂正することを認める。
特許第7086162号の請求項1ないし44に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7086162号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~44に係る特許についての出願は、2016年(平成28年)6月17日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2015年6月18日、米国)を国際出願日として出願した特願2017-565202号の一部を、令和2年12月14日に新たな特許出願(特願2020-206887号)としたものであって、令和4年6月9日にその特許権の設定登録がされ、令和4年6月17日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許の請求項1~44に係る特許について、特許異議申立人 加藤 純子(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものであり、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 4年12月16日 特許異議の申立て
令和 5年 5月22日付け 取消理由通知
令和 5年 8月22日 特許権者による訂正の請求及び意見
書の提出
なお、令和5年8月22日の訂正の請求に対して、異議申立人に期間を指定して意見書を提出する機会を設けたが、指定期間内に意見書は提出されなかった。
第2 訂正の適否について
1 訂正の内容
令和5年8月22日にされた訂正の請求の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~44について訂正することを求めるものであり、その訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである(下線部は、訂正箇所を示す)。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「入口端及び出口を含む基材と、第1のSCR触媒を含む第1のゾーンと、アンモニアスリップ触媒(ASC)を含む第2のゾーンとを含む触媒物品であって、ASCが第2のSCR触媒と酸化触媒とを含み、ASCが酸化触媒を含む最下層と第2のSCR触媒を含む最上層とを有する二重層であり、第1のゾーンは基材の入口側に配置され、第2のゾーンは基材の出口側に配置され、かつ第1のSCR触媒は、異なる活性成分を含むことにより 、異なる担持量の活性成分を含むことにより、又はその両方により第2のSCR触媒と異なる、触媒物品。」
と記載されているのを、
「入口端及び出口を含む基材と、第1のSCR触媒を含む第1のゾーンと、アンモニアスリップ触媒(ASC)を含む第2のゾーンとを含む触媒物品であって、ASCが第2のSCR触媒と酸化触媒とを含み、ASCが酸化触媒を含む最下層と第2のSCR触媒を含む最上層とを有する二重層であり、第1のゾーンは基材の入口側に配置され、第2のゾーンは基材の出口側に配置され、かつ第1のSCR触媒は、異なる活性成分を含むことにより 、異なる担持量の活性成分を含むことにより、又はその両方により第2のSCR触媒と異なり、最上層がパラジウムをさらに含む、触媒物品。」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~44も同様に訂正する。)。
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項5に、
「最上層がパラジウムをさらに含み、好ましくは、第2のSCR触媒が銅ゼオライトであり、かつ、最上層が第2のSCR触媒と担体上のパラジウムとのブレンドを含む、請求項1に記載の触媒物品。」
と記載されているのを、
「第2のSCR触媒が銅ゼオライトであり、かつ、最上層が第2のSCR触媒と担体上のパラジウムとのブレンドを含む、請求項1に記載の触媒物品。」
に訂正する(請求項5の記載を直接又は間接的に引用する請求項6~38、40~44も同様に訂正する。)。
(3) 一群の請求項について
訂正前の請求項2~44は、請求項1を直接的又は間接的に引用するものであるから、請求項1~44は一群の請求項であり、本件訂正の請求は、この一群の請求項を訂正の単位としてされたものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 訂正事項1について
ア 訂正事項1は、請求項1に係る「触媒物品」の発明において、アンモニアスリップ触媒(ASC)が酸化触媒を含む最下層と第2のSCR触媒を含む最上層とを有する二重層であることを特定しているところ、当該最上層がパラジウムをさらに含むことを特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 訂正事項1は、訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項5の「最上層がパラジウムをさらに含み」という特定事項、及び本件明細書の【0071】の「二重層アンモニアスリップ触媒は好ましくは、白金を含最下層と、銅ゼオライト、好ましくは銅チャバザイトを含む最上層とを含み、この場合パラジウムも最下層若しくは最上層又は最上層と最下層の双方に存在する。最上層は、パラジウムをさらに含むことができる。パラジウムは、最上層に存在する場合、好ましくは銅ゼオライトとのブレンド中に存在し、ここでパラジウムは、ブレンドを形成している銅ゼオライトと混合して担体上にある。」という記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 訂正事項1は、アンモニアスリップ触媒(ASC)の最上層にパラジウムをさらに含むことを限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2) 訂正事項2について
ア 訂正事項2は、訂正前の請求項5において、「触媒物品」のアンモニアスリップ触媒(ASC)について「最上層がパラジウムをさらに含み、好ましくは、第2のSCR触媒が銅ゼオライトであり、かつ、最上層が第2のSCR触媒と担体上のパラジウムとのブレンドを含む」と特定されていたところ、「最上層がパラジウムをさらに含み」という特定事項を本件訂正により請求項1で限定したことにより、当該特定事項を削除し、さらに「好ましくは、・・・」と任意選択的に記載した触媒の特定事項について、「好ましくは、」の記載を削除して、アンモニアスリップ触媒(ASC)の最上層に含まれる触媒を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 訂正事項2は、訂正前の請求項5の特定事項において、上記アのとおり、訂正前の請求項5の「最上層がパラジウムをさらに含み、好ましくは、」の特定事項を削除して、アンモニアスリップ触媒(ASC)の最上層に含まれる触媒成分を限定するものであるから、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 訂正事項2は、請求項1で特定されたアンモニアスリップ触媒(ASC)の最上層に含まれる触媒の構成をさらに限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3) 独立特許要件について
特許異議の申立ては、請求項1~44についてされているので、訂正事項1、2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、本件訂正後の請求項1~44について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記「第2」のとおり、本件訂正は適法にされたと認められるので、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~44に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明44」といい、これらをまとめて「本件発明」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~44に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(なお、下線部は、訂正箇所を示す)。
「【請求項1】
入口端及び出口を含む基材と、第1のSCR触媒を含む第1のゾーンと、アンモニアスリップ触媒(ASC)を含む第2のゾーンとを含む触媒物品であって、ASCが第2のSCR触媒と酸化触媒とを含み、ASCが酸化触媒を含む最下層と第2のSCR触媒を含む最上層とを有する二重層であり、第1のゾーンは基材の入口側に配置され、第2のゾーンは基材の出口側に配置され、かつ第1のSCR触媒は、異なる活性成分を含むことにより、異なる担持量の活性成分を含むことにより、又はその両方により第2のSCR触媒と異なり、最上層がパラジウムをさらに含む、触媒物品。
【請求項2】
第1のゾーン及び第2のゾーンが同じ基材上に配置され、かつ、第1のゾーンが基材の入口側に配置され、第2のゾーンが基材の出口側に配置されている、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項3】
第2の基材をさらに含み、第1のゾーンが第1の基材上に配置され、第2のゾーンは第2の基材上に配置され、かつ、第1の基材が第2の基材の上流に配置されている、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項4】
第1の片部と第2の片部とを含み、第1のゾーンが第1の片部に配置され、第2のゾーンは第2の片部に配置され、かつ、第1の片部が第2の片部の上流に配置されている、請求項3に記載の触媒物品。
【請求項5】
第2のSCR触媒が銅ゼオライトであり、かつ、最上層が第2のSCR媒と担体上のパラジウムとのブレンドを含む、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項6】
酸化触媒が、担体上、好ましくは低アンモニア貯蔵を有する担体上に白金を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項7】
低アンモニア貯蔵を有する担体が珪酸質担体である、請求項6に記載の触媒物品。
【請求項8】
珪酸質担体が、(a)少なくとも100、(b)少なくとも200、(c)少なくとも250、(d)少なくとも300、(e)少なくとも400、(f)少なくとも500、(g)少なくとも750、及び(h)少なくとも1000のうちの少なくとも1つのシリカ対アルミナ比を有するシリカ又はゼオライトを含む、請求項7に記載の触媒物品。
【請求項9】
珪酸質担体が、BEA、CDO、CON、FAU、MEL、MFI又はMWWを含む、請求項7又は8に記載の触媒物品。
【請求項10】
担体上、好ましくは低アンモニア貯蔵を有する担体上、の白金の量に対する第2のSCR触媒の量の比率が、これらの成分の重量に基づいて、(a)0:1~300:1、(b)3:1~300:1、(c)7:1~100:1、及び(d)10:1~50:1(比の各端点を含む)のうちの少なくとも1つの範囲内にある、請求項6から9のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項11】
白金が、白金の担体の重量+白金の重量+ブレンド中の第1のSCR触媒の重量の(a)0.01-0.3%、(b)0.03-0.2%、(c)0.05-0.17%、及び(d)0.07-0.15%のうちの少なくとも1つとして存在する、請求項6から10のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項12】
酸化触媒が白金族金属を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項13】
酸化触媒が白金若しくはパラジウム又はこれらの混合物を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項14】
Ptが約0.1g/ft3から約20g/ft3の量でASCゾーンに存在する、請求項13に記載の触媒物品。
【請求項15】
Pdが約0.1g/ft3から約20g/ft3の量でASCゾーンに存在する、請求項13又は請求項14に記載の触媒物品。
【請求項16】
PtとPdが約1:0.01から約1:10の重量比で存在する、請求項13から15のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項17】
第1のSCR触媒が卑金属、卑金属の酸化物、モレキュラーシーブ、金属交換モレキュラーシーブ又はこれらの混合物である、請求項1から16のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項18】
卑金属が、バナジウム(V)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、クロム(Cr)、セリウム(Ce)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)及びジルコニウム(Zr)、並びにこれらの混合物からなる群より選択される、請求項17に記載の触媒物品。
【請求項19】
少なくとも1種の卑金属促進剤をさらに含む、請求項17又は請求項18に記載の触媒製品。
【請求項20】
モレキュラーシーブ又は金属交換モレキュラーシーブが小細孔、中細孔、大細孔又はこれらの混合物である、請求項17から19のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項21】
第1のSCR触媒が、アルミノシリケートモレキュラーシーブ、金属置換アルミノシリケートモレキュラーシーブ、アルミノホスフェート(AlPO)モレキュラーシーブ、金属置換アルミノホスフェート(MeAlPO)モレキュラーシーブ、シリコアルミノホスフェート(SAPO)モレキュラーシーブ及び金属置換シリコアルミノホスフェート(MeSAPSO)モレキュラーシーブ、並びにこれらの混合物からなる群より選択される小細孔モレキュラーシーブを含む、請求項17から20のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項22】
第1のSCR触媒が、ACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、APD、ATT、CDO、CHA、DDR、DFT、EAB、EDI、EPI、ERI、GIS、GOO、IHW、ITE、ITW、LEV、KFI、MER、MON、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTH、SAT、SAV、SIV、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、YUG及びZON、並びにこれらの混合物及び/又は連晶からなる骨格型の群より選択される小細孔モレキュラーシーブを含む、請求項17から21のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項23】
第1のSCR触媒が、CHA、LEV、AEI、AFX、ERI、SFW、KFI、DDR、及びITEからなる骨格型の群より選択される小細孔モレキュラーシーブを含む、請求項17から22のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項24】
第1のSCR触媒が、AEL、AFO、AHT、BOF、BOZ、CGF、CGS、CHI、DAC、EUO、FER、HEU、IMF、ITH、ITR、JRY、JSR、JST、LAU、LOV、MEL、MFI、MFS、MRE、MTT、MVY、MWW、NAB、NAT、NES、OBW、PAR、PCR、PON、PUN、RRO、RSN、SFF、SFG、STF、STI、STT、STW、SVR、SZR、TER、TON、TUN、UOS、VSV、WEI及びWEN、並びにこれらの混合物及び/又は連晶からなる骨格型の群より選択される中細孔モレキュラーシーブを含む、請求項17から21のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項25】
第1のSCR触媒が、AFI、AFR、AFS、AFY、ASV、ATO、ATS、BEA、BEC、BOG、BPH、BSV、CAN、CON、CZP、DFO、EMT、EON、EZT、FAU、GME、GON、IFR、ISV、ITG、IWR、IWS、IWV、IWW、JSR、LTF、LTL、MAZ、MEI、MOR、MOZ、MSE、MTW、NPO、OFF、OKO、OSI、RON、RWY、SAF、SAO、SBE、SBS、SBT、SEW、SFE、SFO、SFS、SFV、SOF、SOS、STO、SSF、SSY、USI、UWY及びVET、並びにこれらの混合物及び/又は連晶からなる骨格型の群より選択される大細孔モレキュラーシーブを含む、請求項17から21のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項26】
第2のSCR触媒がCu-SCR触媒、Fe-SCR触媒、卑金属、卑金属の酸化物若しくは混合酸化物又はバナジウム触媒である、請求項1から25のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項27】
Cu-SCR触媒が銅及びモレキュラーシーブを含み、Fe-SCR触媒が鉄及びモレキュラーシーブを含む、請求項26に記載の触媒物品。
【請求項28】
モレキュラーシーブがアルミノシリケート、アルミノホスフェート(AlPO)、シリコアルミノホスフェート(SAPO)又はこれらの混合物である、請求項27に記載の触媒物品。
【請求項29】
モレキュラーシーブが、ACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、APD、ATT、CDO、CHA、DDR、DFT、EAB、EDI、EPI、ERI、GIS、GOO、IHW、ITE、ITW、LEV、KFI、MER、MON、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTH、SAT、SAV、SIV、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、YUG及びZON、並びにこれらの混合物及び/又は連晶からなる骨格型の群より選択される、請求項27又は28に記載の触媒物品。
【請求項30】
モレキュラーシーブが、AEI、AFX、CHA、DDR、ERI、ITE、KFI、LEV及びSFWからなる骨格型の群より選択される、請求項27から29のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項31】
基材がコーディエライト、高多孔性コーディエライト、金属基材、押出SCR、ウォールフロー型フィルター、フィルター又はSCRFである、請求項1から30のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項32】
第1のSCR触媒が第1のコーティングとして存在し、低アンモニア貯蔵を有する担体上の白金が第2のコーティングに存在し、NH3を含むガスが第2のコーティングを通過する前に第1のコーティングを通過する比較構成を含む触媒と比較して、約250℃から約350℃の温度でのアンモニアからのN2収率の改善をもたらす、請求項1から31のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項33】
第1のSCR触媒が第1のコーティングとして存在し、担持された白金が第2のコーティングに存在し、NH3を含むガスが第2のコーティングを通過する前に第1のコーティングを通過する比較構成を含む触媒と比較して、(a)約350℃から約450℃の温度でのアンモニアからのN2収率の改善、及び(b)約350℃から約450℃の温度でのNOx生成の低減のうちの少なくとも1つをもたらす、請求項1から32のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項34】
第1のSCR触媒が第1のコーティングとして存在し、担持された白金が第2のコーティングに存在し、NH3を含むガスが第2のコーティングを通過する前に第1のコーティングを通過する比較構成を含む触媒と比較して、NH3からのN2Oの生成を低減させる、請求項1から33のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項35】
発熱を生じる、請求項1から34のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項36】
請求項1から35のいずれか一項に記載の触媒物品と、排気ガス中にNH3を生成するか又は排気ガスにNH3を導入するための第1の手段とを備える排気システムであって、排気ガス中にNH3を生成するか又は排気ガスにNH3を導入するための第1の手段が触媒物品の前に配置されている、排気システム。
【請求項37】
CSF又はSCRFをさらに備え、CSF又はSCRFが触媒物品の下流に配置され、前記システムがSCRFを備える場合、排気ガス中にNH3を生成するか又は排気ガスにNH3を導入するための第2の手段が触媒物品とSCRFとの間に配置されている、請求項36に記載の排気システム。
【請求項38】
CSFがCSFの前方に高PGM担持量を含む、請求項37に記載の排気システム。
【請求項39】
請求項1に記載の触媒物品と、排気ガス中にNH3を生成するか又は排気ガスにNH3を導入するための手段とを備える排気システムを含むエンジン。
【請求項40】
炭化水素を含む排気ガスを請求項1から35のいずれか一項に記載の触媒物品と接触させることを含む、排気ガス中の炭化水素排出物を制御する方法。
【請求項41】
炭化水素を含む排気ガスを請求項1から35のいずれか一項に記載の触媒物品と接触させることを含む、排気ガス中の炭化水素排出物を処理する触媒において発熱を生じさせる方法。
【請求項42】
NOx又はNH3を含む排気ガスを請求項1から35のいずれか一項に記載の触媒物品と接触させることを含む、排気ガス中のNOx排出物を制御する方法。
【請求項43】
NOx又はNH3を含む排気ガスを請求項1から35のいずれか一項に記載の触媒物品と接触させることを含む、排気ガス中のN2O排出物を制御する方法。
【請求項44】
請求項1から35のいずれか一項に記載の触媒物品が、DOCを含む排気システムの一部ではない、請求項43に記載の方法。」
第4 特許異議申立理由の概要
異議申立人は、次のとおり、証拠方法として甲第1号証~甲第6号証(以下、例えば、甲第1号証を「甲1」のように表記する。)を提出し、本件特許は、申立理由1、2により取り消すべきものである旨主張している。
1 申立理由1(新規性欠如)
本件特許の訂正前の請求項1、3、4、6、7、10~36、39~43に係る発明は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、訂正前の請求項1、3、4、6、7、10~36、39~43に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
2 申立理由2(進歩性欠如)
本件特許の訂正前の請求項1~44に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲2~6に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、訂正前の請求項1~44に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
3 証拠方法
甲1:特許第5769708号公報
甲2:特表2016-511684号公報
甲3:特表2015-530921号公報
甲4:特表2016-518244号公報
甲5:特許第6377588号公報
甲6:特表2013-511379号公報
第5 取消理由の概要
1 取消理由1(新規性欠如)
本件特許の訂正前の請求項1、3、4、6~37、39~44に係る発明は、本件特許出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、訂正前の請求項1、3、4、6~37、39~44に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
2 取消理由2(進歩性欠如)
本件特許の訂正前の請求項1~4、6~44に係る発明は、本件特許出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項1~4、6~44に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
3 引用文献
異議申立人が証拠方法として提示している甲1~6のうち、甲1~5の公開日は、いずれも本件特許の出願の優先日後であるものの、それらとファミリー関係にある(開示されている技術内容が同じ)甲1~4の国際公開及び甲5の原出願の公表公報は、いずれも本件特許の出願の優先日前に公開されたものであることから、職権探知主義のもと、証拠として甲1~5とファミリー関係にある各々の国際公開又は公表公報等を、引用文献として使用した。
なお、甲1については、摘記にあたって国際公開第2012/002052号とフォーマットのみが異なる再公表公報を使用した。
引用文献1:再公表特許WO2012/002052号公報(甲1のファミ リー文献)
引用文献2:国際公開第2014/120645号(甲2のファミリー文献 )
引用文献3:国際公開第2014/027207号(甲3のファミリー文献 )
引用文献4:国際公開第2014/160292号(甲4のファミリー文献
)
引用文献5:特表2012-507662号公報(甲5のファミリー文献)
引用文献6:特表2013-511379号公報(甲6)
第6 当審の判断
上記取消理由について検討する。
1 引用文献1~6の記載事項及び引用文献1に記載された発明
(1) 引用文献1の記載事項
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
希薄燃焼機関の排気ガス流路に、アンモニアまたは尿素から選ばれる還元剤の噴霧手段と、選択還元型触媒(SROC)2個を直列に配置し、排気ガス中の一酸化窒素(NO)を酸化するとともに、排気ガス中に噴霧される前記還元剤で窒素酸化物を還元し、余剰のアンモニアを酸化する排気ガス浄化触媒装置であって、
選択還元型触媒(SROC)は、一体構造型担体(C)の表面に下層触媒層(A)と上層触媒層(B)を有しており、下層触媒層(A)が下記成分(i)(ii)及び(iii)を含み、一方、上層触媒層(B)が、下記成分(i)を実質的に含まず、下記成分(iii)を含み、
前段の選択還元型触媒(SROC1)下層触媒層(A1)の成分(i)が、白金成分を金属換算で90wt%以上含有し、後段の選択還元型触媒(SROC2)下層触媒層(A2)の成分(i)が、パラジウム成分を金属換算で40wt%以上含有することを特徴とする排気ガス浄化触媒装置。
(i) 貴金属成分:白金成分又はパラジウム成分から選ばれる一種以上
(ii) アルミナ、チタニア、シリカ、ジルコニア、酸化タングステン、遷移金属酸化物、希土類酸化物、またはこれらの複合酸化物から選ばれる一種以上
(iii) ゼオライト
・・・・・
【請求項8】
下層触媒層(A)が一体構造型担体(C)に被覆され、更にその直上に上層触媒層(B)が前記排気ガス流に直接接触する最表面層となるように被覆されていることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の排気ガス浄化触媒装置。
・・・・・
【請求項11】
選択還元型触媒(SROC1)の上流、かつ前記噴霧手段の下流に、さらに実質的に酸化機能層を有さない選択還元触媒(SCR)を配置したことを特徴とする請求項10に記載の排気ガス浄化触媒装置。」
「【0001】
本発明は、選択還元型触媒を用いた排気ガス浄化装置及び排気ガス浄化方法に関し、より詳しくは、ディーゼルエンジン等の希薄燃焼機関から排出される排気ガスに含まれる窒素酸化物をアンモニアと選択還元触媒によって浄化する技術において、低温でも窒素酸化物を効果的に浄化できるとともにアンモニアの漏出を抑制できる選択還元型触媒を用いた排気ガス浄化装置及び排気ガス浄化方法に関するものである。」
「【0025】
1.選択還元型触媒(SROC)
本発明の排気ガス浄化触媒装置において、使用される選択還元型触媒は、酸化機能層を有する選択還元触媒(以下、選択還元酸化触媒、またはSROC(Selective Reduction Oxidation Catalyst)ということがある)であって、還元剤としてアンモニアまたは尿素を使用して、希薄燃焼機関から排出される排気ガス中の窒素酸化物を浄化する機能を有する。
この選択還元型触媒(SROC)は、一体構造型担体(C)の表面に排気ガス中の一酸化窒素(NO)の酸化機能を有する下層触媒層(A)と、アンモニアの吸着機能を有する上層触媒層(B)を有しており、排気ガス流れ中に前段の選択還元型触媒(SROC1)、後段の選択還元型触媒(SROC2)として直列に配置される。
すなわち、選択還元型触媒(SROC)は、一体構造型担体(C)の表面に下層触媒層(A)と上層触媒層(B)を有しており、下層触媒層(A)が下記成分(i)(ii)及び(iii)を含み、一方、上層触媒層(B)が、下記成分(i)を実質的に含まず、下記成分(iii)を含み、前段の選択還元型触媒(SROC1)の成分(i)が、白金成分を金属換算で90wt%以上含有し、後段の選択還元型触媒(SROC2)の成分(i)が、パラジウム成分を金属換算で40wt%以上含有する。
(i) 貴金属成分:白金成分又はパラジウム成分から選ばれる一種以上
(ii) アルミナ、チタニア、シリカ、ジルコニア、酸化タングステン、遷移金属酸化物、希土類酸化物、またはこれらの複合酸化物から選ばれる一種以上
(iii) ゼオライト
【0026】
(A)下層触媒層
本発明において、選択還元型触媒(SROC)の下層触媒層(A)は、貴金属成分の成分(i):白金成分又はパラジウム成分から選ばれる一種以上を必須成分とし、ロジウムを含むことができる。白金、パラジウムは酸化活性が高く、優れたNH3浄化性能を発揮する。
・・・・・
【0029】
下層触媒層(A)の触媒成分であるPt、Pdは、優れた酸化性能を発揮する活性種として知られ、このような活性種は触媒中で比表面積を高く維持することで活性面が増え、高い活性を発揮することができる。
・・・・・ 」
「【0034】
また、この下層を形成する触媒には、アンモニアによって優れた脱硝性能を発揮する種々のゼオライト成分(iii)が使用される。ゼオライト成分の種類は、特に制限されずβ型、MFI型、CHA型など適宜選択できるが、三次元細孔構造を有するβ型、MFI型のゼオライトが好ましい。
・・・・・ 」
「【0045】
(B)上層触媒層
本発明に使用される選択還元型触媒(SROC)の上層触媒層(B)は、ゼオライト成分(iii)を必須とし、貴金属成分を含まずに構成される。」
「【0049】
(C)一体構造型担体
本発明で選択還元型触媒(SROC)に使用される一体構造型担体としては、特に制限されるわけではないが、ハニカム構造型担体の他にも、細い繊維状物を編んだシート状構造体、比較的太い繊維状物からなるフェルト様の不燃性構造体が使用できる。中でもハニカム構造型担体が好ましく、このようなハニカム構造型担体の表面に触媒成分を被覆したものを、以下、ハニカム構造型触媒ということがある。
【0050】
ハニカム構造型担体は、特に限定されるものではなく、公知のハニカム構造型担体の中から選択可能である。このようなものには、フロースルー型担体や、DPF、CSFに用いられるウォールフロー型担体があるが、選択還元触媒(SCR)の後段にスリップNH3の浄化のみを目的として使用するのであればフロースルー型担体が好ましい。
・・・・・ 」
「【0053】
2 選択還元型触媒(SROC)による反応メカニズム
図4は、本発明の排気ガス浄化触媒装置で使用される選択還元型触媒(SROC)の構成を示し、想定される基本的な反応機構を簡単に模式化したものである。
本発明では、ハニカム担体などの一体構造型担体に酸化機能を有する下層触媒層(A)が形成され、この酸化機能層の上に還元機能を有する上層触媒層(B)が形成されている。図4では、触媒層は上層と下層の二層のみで構成されているが、このように上層、下層の間に第三の層を有さない構成は、ガス拡散性に有利であり、NH3、NO2など反応に必要な成分を層間で供給、排出するのに効果的である。しかし、本発明ではこの模式図の構成に限定されず、層間、構造担体と下層の間、上層の表面等に、剥離対策、硫黄被毒対策、脱硝促進対策、他の排気ガス成分の浄化等を目的として別途被覆層を設けても良い。ただし、別途設けられる層は本発明の効果を阻害してはならない。なお、図4には図を簡略化するために助触媒やバインダーを図示していないが、これらを適宜使用できることはいうまでも無い。
【0054】
本発明において、選択還元型触媒(SROC)がNH3浄化(酸化)性能とNOxの浄化性能を発揮する理由は定かでないが、図4では、主に以下の3つの反応経路によって脱硝反応が促進されるものとしてモデル化している。図の矢印(1)のように、選択還元型触媒(SROC)に排気ガス中のNO、NO2が流入し、NH3が供給される。
【0055】
反応経路の概略は、第一に、「上層のSCR成分(ゼオライト)に、NO、NO2などのNOx成分と共に還元剤であるNH3が供給され、NOxがN2とH2O(図示せず)として排出される反応経路」、第二に、「上層を通過して下層に届いたNOが貴金属成分(PtまたはPd)によってNO2に酸化され、このNO2が上層に移行してSCR成分と接触し、上層のSCR成分上に吸着保持されたNH3と反応し、N2とH2Oとして排出される反応経路(図4中、点線で示された「SCR経路:A」)」、そして、第三に、「下層に届いたNOが貴金属によってNO2に酸化され、このNO2が下層のSCR成分に供給され、下層のSCR成分に吸着保持されたNH3と反応し、N2とH2O(図示なし)として排出される反応経路(図4中、実線で示す「SCR経路:B」)」となる。
【0056】
図4の貴金属成分を介した反応経路では、NOとNH3との反応性よりも、NO2とNH3との反応性の方が優れ、貴金属成分を介してNOをNO2に酸化したうえで、上層下層の各SCR成分(ゼオライト)に供給することにより脱硝反応が促進される。
本発明では、貴金属成分とSCR成分の位置関係も構成上重要なポイントである。本発明の触媒において、貴金属成分は上層には含まれず下層のみに含まれている。それは、白金やパラジウム等の貴金属成分は、還元成分の酸化反応を促進する機能に優れるため、貴金属成分が選択還元酸化触媒の上層に有ると、SCR成分におけるNH3とNOxの反応よりも、NH3と排気ガス中の酸素との反応が優先して進行し、NH3に由来した新たなNOxが発生し、還元されずそのまま排出されてしまうためである。本発明における貴金属成分は下層にのみ含まれることで、仮にNH3に由来した新たなNOxが下層で発生し、この新たなNOxが下層で還元しきれない場合であっても、この新たなNOxは上層を通過することで浄化されるので還元されずそのまま排出されることは無い。」
「【0065】
3.選択還元触媒(SCR)
本発明において選択還元型触媒(SROC)は、還元剤としてアンモニアまたは尿素を使用して、希薄燃焼機関から排出される排気ガス中の一酸化窒素(NO)を酸化するとともに、排気ガス中に噴霧される前記還元剤で窒素酸化物を還元し、余剰のアンモニアを酸化することから、同様に、還元剤としてアンモニア水溶液または尿素水溶液を使用して、排気ガス中の窒素酸化物を浄化するための選択還元触媒(SCR)としても利用できる。
【0066】
ディーゼルエンジン等、希薄燃焼機関からは、高温で希薄燃焼されることでNOxが排出される。このNOxを浄化するため、排気ガスと共に還元剤を選択還元触媒に供給しNOxを浄化するために用いられるのがSCR触媒である。このようなSCRでは、還元剤としてHC、アルデヒド、NH3成分が用いられるが、NH3成分を還元剤としたSCRに使用する場合に優れた効果を発揮する。以下、SCRというときはこのNH3成分を還元剤としたSCRのことを指す。
このようなSCR触媒は、公知のものを使用することが出来るが、本発明に好ましく使用されるSCR触媒を構成する成分は、(SROC1)(SROC2)と同様に、成分(iii)のゼオライトを必須成分とし、任意成分として(SROC1)(SROC2)と同様の成分(ii)、アルミナ、チタニア、シリカ、ジルコニア、酸化タングステン、遷移金属酸化物、希土類酸化物、またはこれらの複合酸化物から選ばれる一種以上の成分を使用できる。このようなSCR触媒は、還元成分を使用してNOxを還元浄化する機能に特化しており、(SROC1)(SROC2)のような酸化機能を有さない点において相違する。そのため、下層(A1)(A2)に含まれる触媒成分のような白金、パラジウム等の貴金属成分は(SROC1)(SROC2)よりもその量を少なくするか、全く含まないことがより望ましい。」
「【0069】
本発明に係る選択還元型触媒を、自動車用に使用する場合、他の作用を発揮する触媒と組み合わせて使用することができる。以下、その配置を前述したものを含めて例示する。
なお、以下の例示では、酸化触媒をDOCと表記し、本発明の選択還元酸化触媒をSROC1、SROC2と表記し、SROC1、SROC2以外の選択還元触媒をSCRと表記し、排気ガス中の煤や可溶性有機成分(SOF)を濾し取るフィルターをDPF(酸化触媒を被覆したCSFを含む)と表記する。また(NH3)は、還元剤としての尿素水溶液、アンモニア水溶液などの噴霧供給位置をあらわしている。また、本発明に使用されるNH3成分は、尿素水溶液、アンモニア水溶液などの噴霧供給による他、SCR、SROC1、SROC2の前段に配置される触媒によって、排気ガス中の成分、または燃料成分を使用して自己生成するものであってもよく、バイオ燃料を使用した際に発生することがあるアルデヒド類を使用しても良い。このように還元成分を自己生成する場合にも、必要に応じて別途還元成分を外部から噴霧供給しても良い。
【0070】
配置例(1):DOC+(NH3)+SROC1+SROC2
配置例(2):DOC+(NH3)+SCR+SROC1+SROC2
・・・・・
【0073】
(配置例(2):「DOC+還元成分供給部位+SCR触媒+SROC1+SROC2」)
この配置は、図2の「DOC+SROC1+SROC2」配置に対して、図3のように、SCR触媒を加えたものである。
すなわち、この排気ガス浄化触媒装置は、排気ガス流路に、一酸化窒素、炭化水素の酸化機能を有する酸化触媒(DOC)と、その後段に前記酸化機能層を有する選択還元型触媒(SROC1、SROC2)を配置し、前記酸化触媒の下流、かつ前記選択還元型触媒の上流側に、尿素水溶液もしくはアンモニア水溶液を供給するための噴霧手段が配置するとともに、選択還元型触媒(SROC1、SROC2)の上流、かつ前記噴霧手段の下流に、さらに実質的に酸化機能層を有さない選択還元触媒(SCR)が配置される。
そして、この排気ガス浄化触媒装置を用いて、希薄燃焼機関から排出される排気ガスを前記酸化触媒(DOC)に通過させ、排気ガス中の一酸化窒素を二酸化窒素に転化した後、尿素水溶液またはアンモニア成分を噴霧供給して、前記選択還元触媒(SCR)を通過させることで、排気ガス中の窒素酸化物を還元し、さらに、前記選択還元型触媒(SROC1、SROC2)を通過させることで、排気ガス中の余剰アンモニアを酸化浄化する排気ガス浄化方法である。
本発明のSROC1+SROC2の配置は、優れたNH3浄化機能を有することから、排気ガス流れに対し、公知のSCR触媒の後段に配置し、SCRからスリップしてくるNH3を効率的に酸化することが可能である。」
「【実施例】
【0078】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴を一層明確にする。なお、本発明は、これら実施例の態様に限定されるものではない。なお、本実施例、並びに比較例に使用するSROCの下層触媒成分と上層触媒成分は、次に示す方法によって調製した。
【0079】
[Pt系SROC:SROC(a)の製造]
=下層(NH3酸化機能を有する触媒層)=
貴金属成分原料としての塩化白金水溶液を、母材としてのチタニア粉末(BET値:100m2/g)に含浸担持させ(金属Pt換算:2.5wt%)、更に水と、鉄元素でイオン交換したβ型ゼオライト(鉄元素換算:濃度2wt% イオン交換量70% SAR=40)と、バインダーとしてのシリカを加えて濃度調整し、ボールミルを用いてミリングして、SROC(a)に使用する下層部用のNH3酸化触媒部のスラリーを得た。このスラリーをウオッシュコート法でハニカムフロースルー型コージェライト担体(セル密度:300cel/inch、壁厚:5mil、長さ:3inch、直径:1inch)に被覆し、150℃で1時間乾燥した後、大気雰囲気下、500℃で2時間焼成した。下層の厚さは20~120μmであった。
【0080】
=上層(SCR層)=
その後、鉄元素でイオン交換したβ型ゼオライト(鉄元素換算:濃度2wt%、イオン交換量70%)(SAR=40)、及び鉄元素とセリウム元素でイオン交換したβ型ゼオライト(鉄元素換算:濃度2wt%、イオン交換量70%)(セリウム元素換算:濃度0.1wt%、イオン交換量5%)(SAR=40)、水とバインダーとしてのシリカを、ボールミルにてミリングしてSROC(a)の上層部用のスラリーを得た。このスラリーを、下層部がコーティングされたハニカムフロースルー型コージェライト担体にウオッシュコート法をもって被覆し、150℃で1時間乾燥した後、大気雰囲気下、500℃で2時間焼成した。
このようにして得られたSROC(a)の触媒組成を表1に記す。なお、表1中の数値は、ハニカムフロースルー型コージェライト担体の単位体積あたりの担持量(g/L)であり、Ptは金属換算のPt成分の重量である。上層の厚さは、40~120μmであった。
【0081】
【表1】
[図:0001406691000001.jpg]
」
「【0090】
上記SROC(a)、SROC(b)、SROC(c)、SROC(d)、SROC(e)、を、φ8×L4mmで切り出し、それらを下記触媒レイアウトのSCRの後方に直列で2個配置することを想定し、以下のように実施例、比較例の排気ガス浄化触媒装置を得た。各触媒装置を表6にあらわす。表中{ }内には各SROCに含まれる貴金属の種類を記す。また、{[( )]}の( )内の数字は{ }内におけるPtとPdの含有量を表す。
【0091】
【表6】
[図:0001406691000002.jpg]
・・・・・
【0092】
<触媒性能評価>(NH3スリップ評価)
各実施例、比較例の触媒について、大気雰囲気中で700℃、20時間の耐久(Ageing)を施した後、下記モデルガス条件のもとN2生成量を測定した。なお、本発明の評価に使用したモデルガスの組成は、実際の車両に搭載されるエンジンから排出される排気ガスの流れの中に、下記排気ガス浄化触媒装置を配置し、その後方からスリップするNH3濃度の最高値を参考にして設定したものである。参考にした排気ガスの測定条件を「エンジン排気ガス測定条件」としてあわせて記す。
下記「エンジン排気ガス測定条件」におけるSCR後段からスリップNH3の濃度は、空間速度が概ね100,000h-1の時に最高値を示し、概ね900ppmであったが、本発明の評価にあたっては、本発明の触媒装置の効果をより顕著に表すため、使用したモデルガス中のNH3濃度は概ねその倍の濃度とした。
【0093】
<エンジン排気ガス測定条件>
・使用エンジン:3Lディーゼル
・触媒レイアウト:DOC+CSF+(尿素水溶液の噴霧)+SCR
・走行モード:EUモード
・噴霧尿素濃度(アンモニア換算):NH3/NOx比=1.0
・使用したDOC:
[母材:γ-アルミナ、Pt担持量:1.5g/L、Pd担持量:0.5g/L、ハニカムのタイプ:フロースルー型、ハニカムサイズ:φ14.4cm(5.66inch)×15.2cm(6inch)、ハニカムのセル密度:46.5cell/cm2(300cell/inch)、セルの壁の厚み:0.13mm(5mil)]
・使用したCSF(触媒化したDPF):
[母材:γ-アルミナ、Pt担持量:1g/L、ハニカムのタイプ:ウォールフロー型、ハニカムサイズ:φ14.4cm(5.66インチ)×15.2cm(6インチ)、ハニカムのセル密度:46.5cell/cm2(300cell/inch)、セルの壁の厚み:0.3mm(12mil)]
・使用したSCR触媒:
[Fe-βゼオライト担持量:180g/L]、ハニカムのタイプ:ウォールフロー型、ハニカムサイズ:φ19cm(7.5インチ)×15.2cm(6インチ)ハニカムのセル密度:62cel/cm2(400cell/inch)、セルの壁の厚み:0.15mm(6mil)]
・尿素水溶液濃度:31.8~33.3wt%
・尿素噴霧量:
NOx量の決定は、先ず尿素水溶液を噴霧せずにエンジンを稼動させた状態でエンジンから排出されるNOx量の変化を把握した。その逐次変化するNOx量データに対し、NH3/NOxモル比=1となるように、1秒毎に噴射される尿素水溶液量を設定した。
【0094】
<測定条件>
・モデルガス組成中の成分:
NH3:2000ppm,NO:500ppm, O2:5%,He:balance
・各SROCの触媒サイズ:φ8×4mm の2個使いタンデム(0.2cc ×2個 total 0.4cc)
・ガス流量:300cc/min
・SV(空間速度):45,000h-1
・評価温度の範囲:500℃、400℃、300℃
・・・・・
【0095】
[評価]
本発明の実施例、比較例の評価では、自動車用ディーゼルエンジンにおいて、尿素を還元剤とし、SCR触媒を使用して脱硝を行った後の排気ガスを基準にし、更にNH3濃度を増したモデルガスを使用し、より過酷な条件下で排気ガス浄化触媒装置の評価を行っている。
その結果、本発明の各実施例では、各比較例に比べ低温から高温までSROC通過後のN2強度が高かった。 ・・・・・ 」
「【図1】
[図:0001406691000003.jpg]
」
「【図3】
[図:0001406691000004.jpg]
【図4】
[図:0001406691000005.jpg]
」
(2) 引用文献2~6の記載事項
引用文献2~4は、上流側と下流側とで異なる触媒機能を有する触媒層を同じ基材上に配置することが記載され、引用文献5は、SCR機能を有する触媒として、シリカ/アルミナ分子比(SAR)が10~200のCHA等のアルミノケイ酸塩ゼオライトが記載され、引用文献6は、触媒スートフィルタにおいて、下流側よりも上流側の白金族金属の濃度を高くすることが記載されている。
(3) 引用文献1に記載された発明
(ア)引用文献1には、以下のような事項が記載されているといえる。
a【0001】などによると、希薄燃焼機関から排出される排気ガスに含まれる窒素酸化物をアンモニアと選択還元触媒を用いて浄化する排気ガス浄化装置及びこの装置を用いた排気ガス浄化方法に関する技術について記載されている。
b【0070】、【0073】及び図3に記載の配置例(2)に着目すると、選択還元型触媒(SROC1)が配置され、その上流に選択還元触媒(SCR)が配置された排気ガス浄化装置及びこれを用いた排気ガス浄化方法が記載されている。ここで、選択還元触媒(SCR)を含む配置を「第1の配置」と称し、選択還元型触媒(SROC1)を含む配置を「第2の配置」と称することとすると、第1の配置は上流側であり、第2の配置は下流側である。
c【請求項1】、【0025】などによると、「選択還元型触媒(SROC
1)」は、一体構造型担体(C)の表面に、ゼオライト及び貴金属成分を含む下層触媒層(A1)と、ゼオライトを含む上層触媒層(B1)とを有していることから、選択還元型触媒(SROC1)は、ゼオライト及び貴金属成分を含む下層触媒層(A1)とゼオライトを含む上層触媒層(B1)とを有する二層構造であるといえる。
そして、【請求項1】及び【0045】によると、上層触媒層(B1)は、白金成分又はパラジウム成分から選ばれる1種以上の貴金属成分を含まない。
d【0065】、【0066】によると、選択還元触媒(SCR)はゼオライトを含み、また、【0093】や図3の記載を参照すると、選択還元触媒(SCR)も一体構造型担体の表面に触媒を担持しているといえる。
(イ)以上のことから、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「一体構造型担体と、選択還元触媒(SCR)を含む第1の配置と、選択還元型触媒(SROC1)を含む第2の配置とを含む排気ガス浄化触媒装置であって、
第1の配置は上流側であり、第2の配置は下流側であり、
選択還元型触媒(SROC1)は、ゼオライト及び貴金属成分を含む下層触媒層(A1)とゼオライトを含む上層触媒層(B1)とを有する二層構造であり、上層触媒層(B1)は、白金成分又はパラジウム成分から選ばれる一種以上の貴金属成分を含まず、
選択還元触媒(SCR)はゼオライトを含む、排気ガス浄化触媒装置。」
2 対比・判断
(1) 本件発明1について
(ア)本件発明1と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「一体構造型担体」は、基材であり、排気ガスの入口端及び出口を当然有するから、本件発明1の「入口端及び出口を含む基材」に相当する。
引用発明1の「排気ガス浄化触媒装置」は、本件発明1の「触媒物品」に相当する。
引用発明1の「選択還元触媒(SCR)」、「第1の配置」、「選択還元型触媒(SROC1)」、「第2の配置」は、本件発明1の「第1のSCR触媒」、「第1のゾーン」、「アンモニアスリップ触媒(ASC)」、「第2のゾーン」にそれぞれ相当する。
引用発明1の「選択還元型触媒(SROC1)」における「ゼオライト及び貴金属成分を含む下層触媒層(A1)」、「ゼオライトを含む上層触媒層(B1)」及び「二層構造」は、それぞれ本件発明1の「ASC」における「酸化触媒を含む最下層」、「第2のSCR触媒を含む最上層」及び「二重層」に相当する。
そして、引用発明1において「選択還元触媒(SCR)」の「第1の配置は上流側」であることは、「選択還元触媒(SCR)」が「一体構造型担体」の入口側に配置されることであるから、本件発明1の「第1のSCR触媒」を含む「第1のゾーンは基材の入口側に配置され」ることに相当し、引用発明1において「選択還元型触媒(SROC1)」の「第2の配置は下流側」であることは、「選択還元型触媒(SROC1)」が「一体構造型担体」の出口側に配置されることであるから、本件発明1の「アンモニアスリップ触媒(ASC)」を含む「第2のゾーンは基材の出口側に配置され」ることに相当する。
(イ)そうすると、本件発明1と引用発明1とは、
「入口端及び出口を含む基材と、第1のSCR触媒を含む第1のゾーンと、アンモニアスリップ触媒(ASC)を含む第2のゾーンとを含む触媒物品であって、ASCが第2のSCR触媒と酸化触媒とを含み、ASCが酸化触媒を含む最下層と第2のSCR触媒を含む最上層とを有する二重層であり、第1のゾーンは基材の入口側に配置され、第2のゾーンは基材の出口側に配置される、触媒物品。」の点で一致し、以下の点で一応相違する。
(相違点)
相違点1:本件発明1は、「第1のSCR触媒は異なる活性成分を含むことにより、異なる担持量の活性成分を含むことにより、又はその両方により第2のSCR触媒と異なる」ことが特定されているのに対して、引用発明1は、「選択還元触媒(SCR)」と「上層触媒層(B1)」とは、単にゼオライトを含むことが規定されている点。
相違点2:本件発明1は、アンモニアスリップ触媒(ASC)の第2のSCR触媒を含む「最上層がパラジウムをさらに含む」ことが特定されているのに対して、引用発明1は、本件発明1のアンモニアスリップ触媒(ASC)に相当する選択還元型触媒(SROC1)において、「上層触媒層(B1)は白金成分又はパラジウム成分から選ばれる一種以上の貴金属成分は含ま」ない点。
(ウ)事案に鑑み、上記相違点2について検討する。
引用発明1では、「上層触媒層(B1)は、白金成分又はパラジウム成分から選ばれる一種以上の貴金属成分は含ま」ない触媒構造とすることで、「上層のSCR成分(ゼオライト)に、NO、NO2などのNOx成分と共に還元剤であるNH3が供給され、NOxがN2とH2Oとして排出される反応経路」、次に、「上層を通過して下層に届いたNOが貴金属成分(Pt又はPd)によってNO2に酸化され、このNO2が上層に移行してSCR成分と接触し、上層のSCR成分上に吸着保持されたNH3と反応し、N2とH2Oとして排出される反応経路(図4中、点線で示された「SCR経路:A」)」、そして、「下層に届いたNOが貴金属によってNO2に酸化され、このNO2が下層のSCR成分に供給され、下層のSCR成分に吸着保持されたNH3と反応し、N2とH2Oとして排出される反応経路(図4中、実線で示す「SCR経路:B」)」を構成し、図4の貴金属成分を介した反応経路では、NOとNH3との反応性よりも、NO2とNH3との反応性の方が優れ、貴金属成分を介してNOをNO2に酸化した上で、上層下層の各SCR成分(ゼオライト)に供給することにより脱硝反応が促進されるというものである(引用文献1:【0055】、【0056】、図4)。
ここで、白金やパラジウム等の貴金属成分は、還元成分の酸化反応を促進する機能に優れるため、選択還元型触媒(SCOR)において、貴金属成分が選択還元酸化触媒の上層に有ると、SCR成分におけるNH3とNOxの反応よりも、NH3と排気ガス中の酸素との反応が優先して進行し、NH3に由来した新たなNOx成分が発生し、還元されずそのまま排出されてしまうため、貴金属成分は上層には含まれず下層のみに含まれるようにしている(引用文献1:【0056】)。
そうすると、引用発明1は、上層触媒層(B1)において、ゼオライトと共にパラジウムなどの貴金属成分を含むものではないから、上記相違点2は、本件発明1と引用発明1との実質的な相違点である。
そして、上記のとおり、引用発明1には、上層触媒層(B1)にパラジウムを含むようにすることに阻害要因があるといえるから、引用文献1の他の記載や引用文献2~6に記載された技術的事項を参照したとしても、当業者は、引用発明1において、上層触媒層(B1)にパラジウムを含有させるようなことはしない。
したがって、本件発明1は、引用文献1に記載された発明とはいえないし、また、引用文献1に記載された発明及び引用文献2~6に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(2) 本件発明2~44について
本件発明2~44は、本件発明1を引用し、その発明特定事項を全て含むものであるから、引用文献1に記載された発明とはいえないし、また、引用文献1に記載された発明及び引用文献2~6に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
3 特許異議申立書における異議申立人の主張について
上記相違点2の本件発明1における特定事項、すなわち、訂正前の請求項5に係る発明の特定事項である「最上層がパラジウムをさらに含み」に関して、異議申立人は、次のように主張している。
「本件発明5は、要するに、アンモニアスリップ触媒(ASC)の最上層を構成する第2のSCR触媒(甲第1号証に開示された発明の「選択還元型触媒SROC上層」に相当)がパラジウムを含有する場合は、第2のSCR触媒がパラジウムと銅ゼオライトとのブレンドとして担体上に形成されていることを特定したものであると認められる。
この点について、甲第1号証には、選択還元型触媒SROCの上層触媒層がゼオライト成分を必須とするが、貴金属成分を含まずに構成されることが開示されており([0045])、パラジウムを含んでいない点や、銅ゼオライトとのブレンドとする点において、両発明は相違していると言える。
しかしながら、甲第1号証に開示された発明は、選択還元型触媒SROCの上層触媒層(本件特許における「第2のSCR触媒」に相当)において、NO、NO2などのNOx成分と共に還元剤であるNH3を供給して、NOxをN2とH2Oとに還元し、選択還元型触媒SROCの下層触媒層(本件特許の「酸化触媒を含む最下層」に相当)において、上層触媒層を透過して下層触媒層に届いたNOを白金やパラジウム等の貴金属成分によりNO2に酸化させ、生じたNO2を上層触媒層にてN2とH2Oとに還元するものである([0055])。そのため、上層触媒層にはパラジウムを含まなくてよい構成とされているものと考えられる。
してみれば、甲第1号証の[0055]の記載に接した当業者であれば、上層触媒層にパラジウムを含有させておけば、上層触媒層に共有されたNOをパラジウム等の貴金属成分によりNO2に酸化させ、NH3によりN2とH2Oとに還元できることは容易に想到し得る程度のことである。また、その場合に、甲第1号証に開示された発明の下層触媒層を参考にして、ゼオライトに銅などの遷移金属とパラジウム等の貴金属を含有させること([0041])は、当業者の適宜行う設計事項であると言える。」(特許異議申立書44、45ページ)
上記の主張について検討すると、上記「2(1)(ウ)」で「相違点2」について検討したとおり、引用発明1において、選択還元触媒(SROC)の上下層の脱硝反応を阻害しないために、上層触媒層にパラジウム等の貴金属を含まないこととされているから、異議申立人の当該主張は採用できない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された申立理由によっては、本件特許の請求項1~44に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~44に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-701253