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特許異議申立

2023-700501

排気ガス浄化用途のための低ウォッシュコート充填量単層触媒

審判番号
2023-700501
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-513565
登録番号
7177143
請求日
2023年05月16日
審決日
2025年02月18日
公報発行日
2025年06月27日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
  • 【権利者代理人】山尾 憲人
  • 【権利者代理人】式見 真行
  • 【権利者代理人】齋藤 明子
  • 【異議申立人】野本 玲司
審判長/審判官
  • 審判長 三崎 仁
  • 審判官 金 公彦
  • 審判官 後藤 政博
分類
P1651.113-YAA(B01J) / P1651.121-YAA(B01J) / P1651.536-YAA(B01J) / P1651.537-YAA(B01J) / P1651.851-YAA(B01J) / P1651.853-YAA(B01J)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第3項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の8第1項
データ出所
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特許第7177143号発明「排気ガス浄化用途のための低ウォッシュコート充填量単層触媒」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7177143号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~26〕について訂正することを認める。 特許第7177143号の請求項1~7、11~18、20~23、25、26に係る特許を維持する。 特許第7177143号の請求項8~10、19、24に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本件特許第7177143号(以下、「本件特許」という。)に係る出願は、2018年(平成30年)9月20日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2017年9月27日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、令和4年11月14日にその請求項1~26に係る発明について特許権の設定登録がされ、同年同月22日に特許掲載公報が発行され、その後、全請求項に係る特許に対して、令和5年5月16日に特許異議申立人 野本 玲司(以下、「申立人」という。)により甲第1号証~甲第3号証を証拠方法として特許異議の申立てがされ、同年8月22日付けで当審より取消理由が通知され、その指定期間内である同年11月17日に、特許権者より意見書の提出及び訂正の請求がされ、同年12月22日に申立人より甲第4号証を添付して意見書が提出され、令和6年1月30日付けで当審より取消理由(決定の予告)が通知され、その指定期間内である同年5月1日に、特許権者より意見書の提出及び訂正の請求がされ、同年6月14日に申立人より甲第5号証~甲第7号証を添付して意見書が提出され、同年8月8日付けで当審より取消理由(決定の予告)が通知され、その指定期間内である同年11月12日に、特許権者より意見書の提出及び訂正の請求がされ、同年12月24日に申立人より甲第8号証~甲第10号証を添付して意見書が提出されたものである。 なお、令和6年11月12日に訂正の請求がされたので、令和5年11月17日及び令和6年5月1日にされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容及び一群の請求項 令和6年11月12日にされた訂正の請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は、請求の趣旨を「特許第7177143号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~26について訂正することを求める。」とするものであって、その訂正の内容は、次のとおりである(当審注:下線は訂正箇所であり、当審が付与した。)。 (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「前記単一触媒層が、2.4g/in3未満の総ウォッシュコート充填量」 と記載されているのを、 「前記単一触媒層が、1.2g/in3以下の総ウォッシュコート充填量」 に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~7、11~18、20~23、25、26も同様に訂正する。)。 (2) 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に 「総ウォッシュコート充填量を有する、触媒物品。」 と記載されているのを、 「総ウォッシュコート充填量を有し、 前記単一触媒層以外のいずれの追加の層も含まない、触媒物品。」 に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~7、11~18、20~23、25、26も同様に訂正する。)。 (3) 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項2に 「前記単一触媒層の前記総ウォッシュコート充填量が、2.0g/in3以下である、」 と記載されているのを、 「前記単一触媒層の前記総ウォッシュコート充填量が、1.0g/in3以下である、」 に訂正する(請求項2の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3~7、11~18、20~23、25、26も同様に訂正する。)。 (4) 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項6に 「前記単一触媒層中の前記OSC材料充填量が、1.2g/in3未満である、」 と記載されているのを、 「前記単一触媒層中の前記OSC材料充填量が、1.0g/in3以下である、」 に訂正する(請求項6の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7、11~18、20~23、25、26も同様に訂正する。)。 (5) 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項7に 「前記単一触媒層中の前記OSC材料充填量が、1.0g/in3以下である、」 と記載されているのを、 「前記単一触媒層中の前記OSC材料充填量が、0.9g/in3以下である、」 に訂正する(請求項7の記載を直接的又は間接的に引用する請求項11~18、20~23、25、26も同様に訂正する。)。 (6) 訂正事項6 特許請求の範囲の請求項14に 「前記単一触媒層が、第2のPGM成分を更に含む、」 と記載されているのを、 「前記単一触媒層が、第2のPGM成分を更に含み、 前記第2のPGM成分は、前記第1のPGM成分とは異なる、」 に訂正する(請求項14の記載を直接的又は間接的に引用する請求項15~17、20~23、25、26も同様に訂正する。)。 (7) 訂正事項7 特許請求の範囲の請求項1に 「前記単一触媒層が、第1の白金族金属(PGM)成分と、酸素吸蔵成分(OSC)材料と、無機酸化物と、を含み、」 と記載されているのを、 「前記単一触媒層が、第1の白金族金属(PGM)成分と、酸素吸蔵成分(OSC)材料と、無機酸化物と、を含み、 前記OSC材料が、セリア-ジルコニア混合酸化物であり、 前記セリア-ジルコニア混合酸化物において、ジルコニアとセリアとのモル比が、75:25より高く、」 に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~7、11~18、20~23、25、26も同様に訂正する。)。 (8) 訂正事項8 特許請求の範囲の請求項8を削除する。 (9) 訂正事項9 特許請求の範囲の請求項9を削除する。 (10) 訂正事項10 特許請求の範囲の請求項10を削除する。 (11) 訂正事項11 特許請求の範囲の請求項11に 「請求項1~10のいずれか一項に記載の」 と記載されているのを、 「請求項1~7のいずれか一項に記載の」 に訂正する(請求項11の記載を直接的又は間接的に引用する請求項12~18、20~23、25、26も同様に訂正する。)。 (12) 訂正事項12 特許請求の範囲の請求項13に 「請求項1~12のいずれか一項に記載の」 と記載されているのを、 「請求項1~7、11~12のいずれか一項に記載の」 に訂正する(請求項13の記載を直接的又は間接的に引用する請求項14~18、20~23、25、26も同様に訂正する。)。 (13) 訂正事項13 特許請求の範囲の請求項14に 「請求項1~13のいずれか一項に記載の」 と記載されているのを、 「請求項1~7、11~13のいずれか一項に記載の」 に訂正する(請求項14の記載を直接的又は間接的に引用する請求項15~18、20~23、25、26も同様に訂正する。)。 (14) 訂正事項14 特許請求の範囲の請求項18に 「請求項1~13のいずれか一項に記載の」 と記載されているのを、 「請求項1~7、11~13のいずれか一項に記載の」 に訂正する(請求項18の記載を直接的又は間接的に引用する請求項20~23、25、26も同様に訂正する。)。 (15) 訂正事項15 特許請求の範囲の請求項19を削除する。 (16) 訂正事項16 特許請求の範囲の請求項20に 「請求項1~19のいずれか一項に記載の」 と記載されているのを、 「請求項1~7、11~18のいずれか一項に記載の」 に訂正する(請求項20の記載を直接的又は間接的に引用する請求項21~23、25、26も同様に訂正する。)。 (17) 訂正事項17 特許請求の範囲の請求項24を削除する。 (18) 訂正事項18 特許請求の範囲の請求項25に 「前記排気ガスを請求項1~19のいずれか一項に記載の触媒物品と接触させること、」 と記載されているのを、 「前記排気ガスを請求項1~7、11~18のいずれか一項に記載の触媒物品と接触させること、」 に訂正する(請求項25の記載を直接的に引用する請求項26も同様に訂正する。)。 (19) 訂正事項19 特許請求の範囲の請求項26に 「前記排気ガスを請求項20~24のいずれか一項に記載の排出処理システムと接触させること、」 と記載されているのを、 「前記排気ガスを請求項20~23のいずれか一項に記載の排出処理システムと接触させること、」に訂正する。 (20) 一群の請求項について 本件訂正前の請求項1の記載を請求項2~26が引用する関係にあるから、本件訂正前の請求項1~26は一群の請求項であり、訂正事項1~19に係る特許請求の範囲の訂正は、特許法第120条の5第3項及び第4項の規定に従い、前記請求項1~26を訂正の単位として請求されたものである。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、独立特許要件について (1) 訂正事項1 訂正事項1は、本件訂正前の請求項1における「単一触媒層」の「総ウォッシュコート充填量」を、本件特許明細書の段落【0019】の 「【0019】 単一触媒層の総ウォッシュコート充填量は、2.0g/in3以下、好ましくは1.8g/in3又は1.6g/in3以下、より好ましくは1.4g/in3又は1.2g/in3以下、最も好ましくは1.0g/in3以下であってもよい。」 との記載に基づいて「1.2g/in3以下」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (2) 訂正事項2 訂正事項2は、本件訂正前の請求項1における「触媒物品」に堆積される「層」を、本件特許明細書の段落【0049】の 「【0049】 本発明の触媒物品は、単一触媒層以外のいずれの追加の層も含まないことが好ましい。」 との記載に基づいて、「前記単一触媒層以外のいずれの追加の層も含まない」ものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (3) 訂正事項3 訂正事項3は、本件訂正前の請求項2における「単一触媒層」の「総ウォッシュコート充填量」を、本件特許明細書の前記段落【0019】の記載に基づいて「1.0g/in3以下」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (4) 訂正事項4 訂正事項4は、本件訂正前の請求項6における「単一触媒層中」の「OSC材料充填量」を、本件特許明細書の段落【0020】の 「【0020】 単一触媒層中のOSC材料充填量は、1.2g/in3未満であってもよい。いくつかの実施形態では、単一触媒層中のOSC材料充填量は、1.0g/in3以下、0.9g/in3以下、0.8g/in3以下、0.7g/in3以下、又は0.6g/in3以下である。」 との記載に基づいて「1.0g/in3以下」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (5) 訂正事項5 訂正事項5は、本件訂正前の請求項7における「単一触媒層中」の「OSC材料充填量」を、本件特許明細書の前記段落【0020】の記載に基づいて「0.9g/in3以下」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (6) 訂正事項6 訂正事項6は、本件訂正前の請求項14における「第2のPGM成分」を、「第1のPGM成分とは異なる」ものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項6は、前記請求項14における「第2のPGM成分」と、前記請求項14が引用する請求項3における「第1のPGM成分」とを区別することができず、前記請求項14の発明特定事項が不明確であったのを、「第2のPGM成分」を「第1のPGM成分とは異なる」ものとして、前記発明特定事項を明確にするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明も目的とするものである。 ここで、本件特許明細書には、「前記第2のPGM成分は、前記第1のPGM成分とは異なる」ことは直接的に記載されていないが、本件特許明細書の段落【0024】、【0025】には、 「【0024】 単一触媒層は、第2のPGM成分を更に含んでもよい。 【0025】 第2のPGMは、好ましくは、パラジウム、白金、ロジウム、及びこれらの混合物からなる群から選択される。特に好ましくは、第1のPGM成分がロジウムである場合、第2のPGM成分はパラジウムである。」 との記載がある。 そして、「第1のPGM成分がロジウムである」場合、「第2のPGM成分」を「パラジウム」とすることは、「第2のPGM成分」を「第1のPGM成分とは異なる」ものとすることを開示しているといえるから、本件特許明細書には、「前記第2のPGM成分は、前記第1のPGM成分とは異なる」ことが開示されているといえるので、訂正事項6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものといえ、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (7) 訂正事項7 訂正事項7は、本件訂正前の請求項1における「単一触媒層」の「酸素吸蔵成分(OSC)材料」を、本件特許明細書の段落【0013】の 「【0013】 OSC材料は、好ましくは、酸化セリウム、セリア-ジルコニア混合酸化物、及びアルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物からなる群から選択される。好ましくは、OSC材料は、セリア-ジルコニア混合酸化物である。セリア-ジルコニア混合酸化物は、ジルコニアとセリアとのモル比が、少なくとも50:50、好ましくは60:40より高く、より好ましくは75:25より高くてもよい。」 との記載に基づいて「セリア-ジルコニア混合酸化物」に限定し、更に、「前記セリア-ジルコニア混合酸化物」における「ジルコニアとセリアとのモル比」を「75:25より高」いものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (8) 訂正事項8~10、15、17 訂正事項8~10、15及び17は、それぞれ請求項8~10、19及び24を削除するものであるから、いずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (9) 訂正事項11~14、16、18、19 訂正事項11~14、16、18及び19は、それぞれ、訂正事項8~10、15及び17による請求項8~10、19及び24の削除に伴い、請求項11、13、14、18、20、25及び26における選択的引用請求項の一部を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (10)独立特許要件について 本件特許異議の申立ては本件訂正前の全ての請求項についてされているので、訂正事項1~19に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 3 小括 したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~26〕について訂正することを認める。 第3 本件発明について 本件訂正が認められることは前記第2に記載したとおりであるので、本件訂正により訂正された請求項1~7、11~18、20~23、25及び26に係る発明(以下、「本件発明1」などといい、まとめて「本件発明」ということがある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~7、11~18、20~23、25及び26に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 排気ガスを処理するための触媒物品であって、 フロースルーモノリスである基材と、 前記基材上に直接堆積された単一触媒層と、を含み、 前記単一触媒層が、第1の白金族金属(PGM)成分と、酸素吸蔵成分(OSC)材料と、無機酸化物と、を含み、 前記OSC材料が、セリア-ジルコニア混合酸化物であり、 前記セリア-ジルコニア混合酸化物において、ジルコニアとセリアとのモル比が、75:25より高く、 前記単一触媒層が、1.2g/in3以下の総ウォッシュコート充填量を有し、 前記単一触媒層以外のいずれの追加の層も含まない、触媒物品。 【請求項2】 前記単一触媒層の前記総ウォッシュコート充填量が、1.0g/in3以下である、請求項1に記載の触媒物品。 【請求項3】 前記第1のPGM成分が、白金、パラジウム、ロジウム、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の触媒物品。 【請求項4】 前記第1のPGM成分が、ロジウムである、請求項1~3のいずれか一項に記載の触媒物品。 【請求項5】 前記ロジウム充填量が、前記単一触媒層の総重量に基づいて、0.05~2重量%の範囲である、請求項4に記載の触媒物品。 【請求項6】 前記単一触媒層中の前記OSC材料充填量が、1.0g/in3以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の触媒物品。 【請求項7】 前記単一触媒層中の前記OSC材料充填量が、0.9g/in3以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の触媒物品。 【請求項8】 (削除) 【請求項9】 (削除) 【請求項10】 (削除) 【請求項11】 前記無機酸化物が、アルミナ、ランタニド安定化アルミナ、アルカリ土類安定化アルミナ、シリカ、アルミノケイ酸塩、マグネシア/アルミナ複合酸化物、チタニア、ニオビア、酸化タンタル、酸化ネオジム、酸化イットリウム、ランタニド、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の触媒物品。 【請求項12】 前記無機酸化物が、アルミナ、ランタニド安定化アルミナ、又はマグネシア/アルミナ複合酸化物である、請求項11に記載の触媒物品。 【請求項13】 前記OSC材料と前記無機酸化物とが、10:1以下の重量比を有する、請求項1~7、11~12のいずれか一項に記載の触媒物品。 【請求項14】 前記単一触媒層が、第2のPGM成分を更に含み、 前記第2のPGM成分は、前記第1のPGM成分とは異なる、請求項1~7、11~13のいずれか一項に記載の触媒物品。 【請求項15】 前記第2のPGM成分が、白金、パラジウム、ロジウム、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項14に記載の触媒物品。 【請求項16】 前記第1のPGM成分がロジウムであり、前記第2のPGM成分がパラジウムである、請求項15に記載の触媒物品。 【請求項17】 前記ロジウム成分と前記パラジウム成分とが、10:1~1:10の重量比を有する、請求項16に記載の触媒物品。 【請求項18】 前記単一触媒層が、前記ロジウム成分以外のPGM金属を本質的に含まない、請求項1~7、11~13のいずれか一項に記載の触媒物品。 【請求項19】 (削除) 【請求項20】 請求項1~7、11~18のいずれか一項に記載の触媒物品を含む、燃焼排気ガスの流れを処理するための排出処理システム。 【請求項21】 第2触媒物品を更に含む、請求項20に記載の排出処理システム。 【請求項22】 前記第2触媒物品が、TWC触媒を含む、請求項21に記載の排出処理システム。 【請求項23】 前記第2触媒物品が、前記触媒物品の上流にある、請求項21または22に記載の排出処理システム。 【請求項24】 (削除) 【請求項25】 内燃機関からの排気ガスを処理する方法であって、前記排気ガスを請求項1~7、11~18のいずれか一項に記載の触媒物品と接触させること、を含む、方法。 【請求項26】 内燃機関からの排気ガスを処理する方法であって、前記排気ガスを請求項20~23のいずれか一項に記載の排出処理システムと接触させること、を含む、方法。」 第4 特許異議申立理由の概要 1 特許法第29条第1項第3号及び第2項所定の規定違反(新規性、進歩性欠如)について (1) 甲第1号証を主引用例とした場合について 設定登録時の特許請求の範囲の請求項1~26に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるか、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2) 甲第2号証を主引用例とした場合について 設定登録時の特許請求の範囲の請求項1~26に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であるか、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3) 甲第3号証を主引用例とした場合について 設定登録時の特許請求の範囲の請求項1~26に係る発明は、甲第3号証に記載された発明であるか、甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 2 特許法第36条第4項第1号所定の規定違反(委任省令要件違反)について (1) 「フロースルーモノリスである基材」、との発明特定事項について 発明の課題に包含される低背圧を実現するためには、「基材」が所定値以上の排気コンダクタンスを有するために必要な事項の限定、具体的には、軸方向に延在する複数の開口部(セル・チャネル)を画成する壁の厚さ等の限定が不可欠である。 そして、そのような限定をすることなく単に「フロースルーモノリスである基材」の限定をしただけでは、発明の課題に包含される低背圧を実現できないことは明らかであるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、発明の課題を解決する手段について当業者が理解できるように記載されていないので、委任省令要件を満たさない。 (2) 「前記単一触媒層が、第1の白金族金属(PGM)成分と、酸素吸蔵成分(OSC)材料と、無機酸化物と、を含み」、「2.4g/in3未満の総ウォッシュコート充填量を有」する、との発明特定事項について 本件特許明細書の発明の詳細な説明の実施例において処理能力を評価しているのは、「Rh」、「CeZr混合酸化物(Zr/Ce(モル比)=4.4)」、「La安定化アルミナ」及び「ベーマイト結合剤」を成分とし、ウォッシュコート充填量を約1.0g/in3(0.6g/in3の「CeZr混合酸化物」及び0.4g/in3の「La安定化アルミナ」)とし、Rh充填量を3g/ft3とした一例の触媒に限られている。 そして、触媒層の変換率(処理効率・処理能力)は触媒層を構成する各成分の材料や充填量に依存して変化するものであるから、これらの限定をすることなく、単に「ウォッシュコート充填量」の上限値を「2.4g/in3」と特定するのみでは、発明の課題である高変換率を実現できないことは明らかである。 また、前記実施例において触媒層の処理能力を評価しているのは、総ウォッシュコート充填量が「約1.0g/in3」の場合に限られるにもかかわらず、いかなる理由によって「2.4g/in3」という上限値が導き出されたのかは不明というほかなく、更に、総ウォッシュコート充填量の下限値が特定されていない理由も不明であるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、発明の課題を解決する手段について当業者が理解できるように記載されていないので、委任省令要件を満たさない。 3 特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)について 前記2で検討したとおり、高変換率及び低背圧を同時にもたらす触媒コンバータを提供する、という発明の課題は、前記2(1)及び(2)の特定のみでは解決できないから、設定登録時の特許請求の範囲の請求項1~26に係る発明は、発明の課題を解決できると認識できる範囲のものではないので、設定登録時の特許請求の範囲の記載はサポート要件を満たさない。 4 特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反)について (1) 設定登録時の特許請求の範囲の請求項14及び15係る発明について 設定登録時の特許請求の範囲の請求項3に係る発明においては、「第1のPGM成分」として複数種類の白金族金属が選択可能であることが特定される一方、同請求項14に係る発明において「単一触媒層」が「第2のPGM成分」を更に含むことが特定され、同請求項15に係る発明において前記請求項3に係る発明と同一の特定がされている。 ところが、前記請求項3及び14に係る発明の特定では、「第2のPGM成分」を含まず「第1のPGM成分」として複数種類の白金族金属を選択した態様と、「第1のPGM成分」及び「第2のPGM成分」としてそれぞれ異なる単一種類の白金族金属を選択した態様との異同が不明確であるため、前記請求項3に係る発明の発明特定事項と、前記請求項14及び15に係る発明の発明特定事項の異同が不明確であるから、前記請求項14及び15に係る発明は不明確であるので、設定登録時の特許請求の範囲の記載は明確性要件を満たさない。 (2) 設定登録時の特許請求の範囲の請求項24に係る発明について 設定登録時の特許請求の範囲の請求項24に係る発明の「強連結」の意味が不明確であるから、前記請求項24に係る発明は明確でないので、設定登録時の特許請求の範囲の記載は明確性要件を満たさない。 5 証拠方法 甲第1号証:特表2017-522176号公報 甲第2号証:国際公開第2008/093471号 甲第3号証:特開2011-255272号公報 第5 取消理由の概要 1 令和5年8月22日付けの取消理由通知書による取消理由の概要 (1) 特許法第29条第1項第3号及び第2項所定の規定違反(新規性、進歩性欠如)について ア 甲第1号証を主引用例とした場合について 設定登録時の特許請求の範囲の請求項1~8、11~17、19、20、25及び26に係る発明は、甲第1号証に記載された発明である。 イ 甲第2号証を主引用例とした場合について 設定登録時の特許請求の範囲の請求項1~17及び19~26に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であるか、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 ウ 甲第3号証を主引用例とした場合について 設定登録時の特許請求の範囲の請求項1~26に係る発明は、甲第3号証に記載された発明であるか、甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2) 特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反)について ア 設定登録時の特許請求の範囲の請求項14及び15に係る発明について 当業者は、設定登録時の特許請求の範囲の請求項3に係る発明において特定される「第1のPGM成分」と、同請求項14に係る発明において特定される「第2のPGM成分」を区別することができないから、「触媒物品」が前記請求項14に係る発明の発明特定事項を満たすものであるか否かを判断することができないので、前記請求項14に係る発明は明確でない。 更に、同請求項15~17に係る発明について検討しても事情は同じである。 イ 設定登録時の特許請求の範囲の請求項24に係る発明について 設定登録時の特許請求の範囲の請求項24に係る発明の「強連結」がどのような態様の連結をいうのかが明らかでないので、前記請求項24に係る発明は明確でない。 2 令和6年1月30日付けの取消理由通知書による取消理由の概要 (1) 特許法第29条第1項第3号及び第2項所定の規定違反(新規性、進歩性欠如)について 令和5年11月17日の訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1~7、11~26に係る発明は、甲第4号証に記載された発明であるか、甲第4号証に記載された発明に基づいて、又は、甲第4号証に記載された発明及び本件特許の優先日当時の技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2) 特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反)について 令和5年11月17日の訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項24に係る発明の「強連結」がどのような態様の連結をいうのかが明らかでないので、前記請求項24に係る発明は明確でない。 (3) 証拠方法 甲第2号証:国際公開第2008/093471号 甲第4号証:特開2012-110864号公報 ただし、甲第4号証は令和5年12月22日に申立人が提出した意見書に添付して提出されたものである。 3 令和6年8月8日付けの取消理由通知書による取消理由の概要 (1) 特許法第29条第1項第3号及び第2項所定の規定違反(新規性、進歩性欠如)について ア 甲第4号証を主引用例とした場合について 令和6年5月1日の訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1~7、11~18、20~23、25及び26に係る発明は、甲第4号証に記載された発明及び甲第4号証に記載された事項に基づいて、又は、甲第4号証に記載された発明、甲第4号証に記載された事項及び本件特許の優先日当時の技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 イ 甲第5号証を主引用例とした場合について 令和6年5月1日の訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1~18、20~23、25及び26に係る発明は、甲第5号証に記載された発明であるか、甲第5号証に記載された発明及び甲第5号証に記載された事項に基づいて、又は、甲第5号証に記載された発明、甲第5号証に記載された事項及び本件特許の優先日当時の技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2) 証拠方法 甲第2号証:国際公開第2008/093471号 甲第4号証:特開2012-110864号公報 甲第5号証:特開2016-182585号公報 ただし、甲第4号証は令和5年12月22日に申立人が提出した意見書に添付して提出されたものであり、甲第5号証は令和6年6月14日に申立人が提出した意見書に添付して提出されたものである。 なお、令和6年6月14日に申立人が提出した意見書に添付して、更に甲第6号証及び甲第7号証が提出されている。 甲第6号証:国際公開第2013/065421号 甲第7号証:特開2008-110322号公報 第6 取消理由及び特許異議申立理由についての当審の判断 事案に鑑み、前記第4の特許異議申立理由及び前記第5の取消理由についてまとめて判断する。 1 特許法第29条第1項第3号及び第2項所定の規定違反(新規性、進歩性欠如)について (1) 甲各号証の記載事項等 ア 甲第1号証の記載事項及び甲第1号証に記載された発明 (ア) 甲第1号証には、以下のa~bの記載がある。 a 「【0002】 背景 エンジン排気は、しばしば、不完全燃焼化合物、例えば炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)およびNOxを含有する。これらの化合物は、大気汚染制御のためと、様々な政府規制を満たすために除去せねばならない。そのような排気ガスの処理のためには、様々な触媒およびシステムが存在する。例えば、三元触媒(TWC)、直結式触媒、フィルタ(触媒添加されていてよい)が、種々のエンジンおよび燃料構成に関する困難な排出物質の問題に取り組むために利用されている。これらの触媒または組み合わされた触媒系の殆どは、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)およびイリジウム(Ir)の貴金属(「白金族金属」または「PGM」としても知られている)を基礎としている。これらの貴金属触媒は自動車排出物質浄化のために効果的であり、産業界において商品化されているが、これらの貴金属の極めて高い費用は、相変わらずこれらの触媒の広範な利用のための重要な要因である。 ・・・ 【0041】 活性触媒を、モノリス表面へと、スラリー塗布、スプレー塗布および任意の他の方法を使用して塗工することができる。非白金族金属配合物が担持される場合に、予め作製したセリア-アルミナ等の被担持体を、活性非白金族金属または非白金族金属の組み合わせの溶液の含浸のために使用することができる。得られた触媒を、適切なバインダーと混合するか、またはまず最初に焼成して、その後にバインダーと混合するかのいずれかで、モノリスコーティングのために適したスラリーを作製することができる。その一方で、一方の被担持体上に堆積された1種以上の活性非白金族金属を、もう一方の被担持体上に堆積されたその他の非白金族金属と混合することで、モノリスウォッシュコートのためのスラリーを作製することができる。 【0042】 該触媒被担持体は、酸素吸蔵成分であって、その価電子状態が排気条件下で切り替えられうる酸素吸蔵成分を更に含有してよい。幾つかの実施形態においては、該被担持体は、セリアである。該酸素吸蔵成分は、該酸素吸蔵成分の還元性を向上するとともに、該酸素吸蔵成分を、高温水熱劣化条件下での表面積損失および構造完全性の損失に対して安定化するための元素/成分を更に含有してよい。これらの促進元素には、Pr、Al、La、Zr、Sm等およびそれらの組み合わせが含まれる。これらの元素の含有量は、0質量%、0.5質量%または1質量%~45質量%、50質量%、55質量%または60質量%の範囲にある。」 b 「【0088】 実施例18 Pd+Rh触媒の製造 触媒材料を含む複合物を、単層を使用して製造した。該層中に存在する成分は、高表面積のγ-アルミナ、アルミナバインダー、セリア、酸化パラジウムおよび酸化ロジウムであり、それらの濃度は、該触媒層の焼成後の質量に対してそれぞれ約35質量%、1.5質量%、62質量%、1質量%および0.5質量%であった。該層の総負荷量は、1.44g/in3であった。硝酸パラジウム溶液および硝酸ロジウム溶液の形のパラジウムとロジウムを、遊星型ミキサーによって、安定化されたアルミナおよびセリア上へと含浸させることで、初期湿分を実現しつつ湿潤粉末が形成された。アルミナバインダーを、コロイド溶液として導入した。約40%の固体含有量の水性スラリーを、前記成分の全てと水とを合して、90%の粒度が15ミクロン未満の粒径となるまで粉砕することによって形成させた。該スラリーを、セラミック担体または金属担体上に堆積法を使用してコーティングした。コーティング後に、担体と層とを110℃の温度で1時間~2時間にわたり乾燥させ、次いで500℃の温度で約4時間にわたり焼成した。 ・・・ 【0114】 中間層の三元性能改善に対する効果 実施例18~25の触媒を、セラミック製または金属製のフロースルー型ハニカム基材上に配置することで、三元触媒を形成した。それらの三元触媒を車両の排ガス流中に置き、その触媒活性(NOxの低下、COおよびHCの酸化)の、標準触媒(実施例1)に対する触媒活性を、ECE試験サイクルによって比較した。第2表は、それらの結果を概説している。改善率(%)は、標準触媒を上回っている。 【0115】 【表7】 [図:0001423424000001.jpg] 」 (イ) 前記(ア)bの実施例18に注目すると、甲第1号証には、「三元触媒」が記載されており、前記「三元触媒」は、触媒材料を含む複合物を、単層を使用して製造したものであり、該層中に存在する成分は、高表面積のγ-アルミナ、アルミナバインダー、セリア、酸化パラジウム及び酸化ロジウムであり、それらの濃度は、該触媒層の焼成後の質量に対してそれぞれ約35質量%、1.5質量%、62質量%、1質量%及び0.5質量%であり、該層の総負荷量は、1.44g/in3であったものである。 そして、前記「三元触媒」は、硝酸パラジウム溶液及び硝酸ロジウム溶液の形のパラジウムとロジウムを、遊星型ミキサーによって、安定化されたアルミナ及びセリア上へと含浸させることで、初期湿分を実現しつつ湿潤粉末を形成し、アルミナバインダーを、コロイド溶液として導入し、約40%の固体含有量の水性スラリーを、前記成分の全てと水とを合して、90%の粒度が15ミクロン未満の粒径となるまで粉砕することによって形成させ、該スラリーを、セラミック担体又は金属担体上に堆積法を使用してコーティングし、コーティング後に、担体と層とを110℃の温度で1時間~2時間にわたり乾燥させ、次いで500℃の温度で約4時間にわたり焼成してPd+Rh触媒を製造し(段落【0088】)、前記Pd+Rh触媒を、セラミック製または金属製のフロースルー型ハニカム基材上に配置することで、「三元触媒」を形成したものである(段落【0114】)。 (ウ) 前記(イ)によれば、甲第1号証には、以下の発明が記載されているといえる(以下、「甲1発明」という。)。 「三元触媒であって、 前記三元触媒は、触媒材料を含む複合物を、単層を使用して製造したものであり、該層中に存在する成分は、高表面積のγ-アルミナ、アルミナバインダー、セリア、酸化パラジウム及び酸化ロジウムであり、それらの濃度は、該触媒層の焼成後の質量に対してそれぞれ約35質量%、1.5質量%、62質量%、1質量%及び0.5質量%であり、該層の総負荷量は、1.44g/in3であり、 前記三元触媒は、硝酸パラジウム溶液及び硝酸ロジウム溶液の形のパラジウムとロジウムを、遊星型ミキサーによって、安定化されたアルミナ及びセリア上へと含浸させることで、初期湿分を実現しつつ湿潤粉末を形成し、アルミナバインダーを、コロイド溶液として導入し、約40%の固体含有量の水性スラリーを、前記成分の全てと水とを合して、90%の粒度が15ミクロン未満の粒径となるまで粉砕することによって形成させ、該スラリーを、セラミック担体又は金属担体上に堆積法を使用してコーティングし、コーティング後に、担体と層とを110℃の温度で1時間~2時間にわたり乾燥させ、次いで500℃の温度で約4時間にわたり焼成してPd+Rh触媒を製造し、 前記Pd+Rh触媒を、セラミック製又は金属製のフロースルー型ハニカム基材上に配置することで、三元触媒を形成したものである、三元触媒。」 イ 甲第2号証の記載事項及び甲第2号証に記載された発明 (ア) 甲第2号証には、以下のa及びbの記載がある。 a 「[0003] ・・・ そこで、排気ガス浄化触媒の組成中に酸素吸蔵放出材(Oxygen Storage Component:以下、OSC材ということがある。)を配合し、低酸素濃度時には排気ガス中に酸素を供給し、有害成分の浄化能力を高める事が行われている。 ・・・ [0012] 本発明の目的は、上記の問題点に鑑み、自動車の内燃機関から排出される排気ガスを触媒に接触させ、炭化水素濃度が変動する場合でも窒素酸化物に対して優れた浄化能力を発揮する自動車用排気ガス浄化装置に用いられる触媒系、それを用いた排気ガス浄化装置、及び排気ガス浄化方法を提供することにある。 [0013] 本発明者等は、排気ガス中の窒素酸化物(NOx)浄化触媒について上記目的を達成するために鋭意研究した結果、結晶構造中にパイロクロア相を含み比表面積が小さいセリア-ジルコニア系複合酸化物の微粉末を含有させた触媒がNOxを効率的に分解するという優れた特性を有することを見出し、これを排気ガス流路の前段である上流側と後段である下流側に配置された排気ガス浄化装置の下流側触媒として用いると、排気ガス中のCO、HCをNOxと同時に浄化できることを確認して、本発明を完成するに至った。 ・・・ [0041] なお、貴金属成分としては、ロジウムを必須成分として、白金、パラジウムのうち少なくとも一つと組み合わせる事が好ましい。これにより、TWC用途でNOxの浄化性能を向上させることができる。その場合、貴金属の担持量はトータル貴金属量に対して5~50wt%、望ましくは10~30wt%をロジウムとして、残りの貴金属成分をPd、Ptの少なくとも一種とする事が好ましい。・・・ ・・・ [0064] ・・・ 本発明の排気ガス浄化装置の望ましい実施形態は、上流側触媒、下流側触媒ともTWCであり、上流側のTWCには、融点以下の温度下で生産されたセリウム-ジルコニウム系複合酸化物が使用されるものであるが、このセリウム-ジルコニウム系複合酸化物はOSCとして知られている。この場合、以下のような要因により上流側TWCの排気ガス浄化性能は、下流側TWCの排気ガス浄化性能よりも、HC、COの還元性能に勝る場合がある。 [0065] すなわち、上流側TWCで使われるOSCは、比較的低温で製造されるセリウム-ジルコニウム系複合酸化物(A’)で、下流側で使われる高温熔融品であるセリウム-ジルコニウム系複合酸化物(A)に比べて高い比表面積値を有することが多い。そして、それに由来したOSCとしての活性面積も大きいことから、特に酸化活性の高い触媒になりやすいためと考えられる。」 b 「実施例 [0068] 以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴を一層明確にする。なお、本発明は、これら実施例の態様に限定されるものではない。なお、触媒の各成分は次に示す方法によって調製した。 [0069] [セリウム-ジルコニウム系複合酸化物(A)] Zrの原料として高純度酸化ジルコニウム(純度99.9%)を、Ceの原料として高純度酸化セリウム(純度99.9%)を用い、図2に示す製造工程の手順に従って本発明のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物粉末を製造した。 まず、粉末10kgを調製するために高純度酸化ジルコニウム(4.2kg)と高純度酸化セリウム(5.8kg)を分取・混合し、アーク式電気炉を用い、二次電圧85V、平均負荷電力99.5kW、通電時間2時間、総電力量182kWhを印加して、2250℃以上で熔融を行った。 なお、初期の通電を促すためにコークス500gを使用した。熔融終了後、電気炉に炭素蓋をして、大気中で24時間徐冷しインゴットを得た。得られたインゴットをジョークラッシャーおよびロールクラッシャーで3mm以下まで粉砕した後、篩で1mm以下の粉末を捕集し、本セリウム-ジルコニウム系複合酸化物を得た。 次に、熔融工程での亜酸化物や過冷却による結晶内の歪みを除去するために電気炉を用いて大気中、800℃で3時間焼成し、遊星ミルで10分間粉砕し、平均粒径が1.3μmを持った粉末を得た。なお、平均粒径の測定は、レーザー回折散乱装置(COULTER Co., LTD, LS230)で分析した。これにより、XRDによって結晶構造中にパイロクロア相を単一に含むことが確認された(図3)。また、比表面積が1.3m2/gであった。以下、これを「Ce-Zr(A)」という事がある。 ・・・ [0071] [貴金属成分を担持したγ-アルミナ] 市販のランタン添加γ-アルミナ(比表面積:220m2/g、Al2O3/La2O3(重量比)=98.4/1.6)に、亜硝酸ジアンミン白金(II)の20重量%水溶液、また、硝酸ロジウムの8重量%水溶液を含浸処理し、次いで水分を乾燥・除去して、粉体の白金担持触媒成分を得た。以下これをLa-γアルミナという事がある。パラジウムは、ジニトロジアンミンパラジウムの28重量%水溶液を含浸処理した。なお、その他の成分であるジルコニアは、99.9%の市販品、セリアは、純度が99.9%の市販品を用いた。 [0072] (実施例1) 上記の触媒材料が、下記一体構造担体の単位体積あたり所定の被覆量になるように成分量を調整し、適量の水系媒体と共に、ボールミルで5時間混合して触媒スラリーを調製した。調製したスラリーは、ウォッシュコート法により一体構造型担体に被覆した。被覆は一層目のコート層の上から二層目のコート層を被覆して2層コート構造とした。これを乾燥し、500℃で1時間焼成して一体構造型触媒を得た。各層に含まれる単位体積あたりの触媒成分の被覆量を表2に示す。なお、表中の数値は「g/L」を表す。 <一体構造担体> ・一体構造型触媒の種類:フロースルー型担体 ・一体構造型触媒の容量:645cc(高さ:95mm×直径:93mm) ・一体構造型触媒の材質:コージェライト ・一体構造型触媒のセル密度:600cel/inch2 ・一体構造型触媒のセル壁の厚み:4mil [0073] (実施例2) 上記の触媒材料が、下記一体構造担体の単位体積あたり所定の被覆量になるように成分量を調整し、適量の水系媒体と共に、ボールミルで5時間混合して触媒スラリーを調製した。調製したスラリーは、ウォッシュコート法により一体構造型担体に被覆した。被覆を単層コートとした以外は、実施例1と同様にして一体構造型触媒を得た。単位体積あたりの触媒成分の被覆量を表2に示す。 [0074] 実施例1の高温溶融型のセリウム-ジルコニウム系複合酸化物(A)を含んでいる触媒を2つ用い、TWCとして装置を構成したが、NOx浄化率は目標値に達しなかった。そこで、これを下流側触媒(表2)とし、その上流側に従来のTWC触媒(表1)を配置した。実施例2の触媒でも同様に、これを下流側触媒(表2)とし、その上流側に従来のTWC触媒(表1)を配置した。この一体構造型触媒を配置した図1の排気ガス浄化用触媒装置について、TWCとしての浄化性能を測定した。測定条件は下記の条件に従った。 「測定条件」 ・評価エンジン:NA2.4L ガソリンエンジン ・測定モード:FTP(Federal Test Procedure)モード、排気ガスの浄化能力を評価する際に用いられる米国環境保護庁が定めた走行テストモードである。 ・排気ガスの測定機器:HORIBA社製 MEXA7000 ・触媒の配置:床下 ・・・ [0077][表1] [図:0001423424000002.jpg] [0078][表2] [図:0001423424000003.jpg] 」 (イ) 前記(ア)bの実施例2(段落[0073])に注目すると、甲第2号証には、「一体構造型触媒」が記載されており、前記(ア)b(段落[0069]、[0071])の記載によれば、前記「一体構造型触媒」におけるセリウム-ジルコニウム系複合酸化物(A)、すなわちCe-Zr(A)は、Zrの原料として高純度酸化ジルコニウム(純度99.9%)を、Ceの原料として高純度酸化セリウム(純度99.9%)を用いて製造したものであり、まず、粉末10kgを調製するために高純度酸化ジルコニウム(4.2kg)と高純度酸化セリウム(5.8kg)を分取・混合し、アーク式電気炉を用い、二次電圧85V、平均負荷電力99.5kW、通電時間2時間、総電力量182kWhを印加して、2250℃以上で熔融を行い、熔融終了後、電気炉に炭素蓋をして、大気中で24時間徐冷しインゴットを得て、得られたインゴットをジョークラッシャーおよびロールクラッシャーで3mm以下まで粉砕した後、篩で1mm以下の粉末を捕集し、本セリウム-ジルコニウム系複合酸化物を得た後、熔融工程での亜酸化物や過冷却による結晶内の歪みを除去するために電気炉を用いて大気中、800℃で3時間焼成し、遊星ミルで10分間粉砕し、平均粒径が1.3μmを持った粉末を得たものであり、これにより、XRDによって結晶構造中にパイロクロア相を単一に含むことが確認されたものである。 一方、前記「一体構造型触媒」における貴金属成分を担持したγ-アルミナは、市販のランタン添加γ-アルミナ(比表面積:220m2/g、Al2O3/La2O3(重量比)=98.4/1.6)に、亜硝酸ジアンミン白金(II)の20重量%水溶液、また、硝酸ロジウムの8重量%水溶液を含浸処理し、次いで水分を乾燥・除去して、粉体の白金担持触媒成分、すなわちLa-γアルミナを得たものである。 そして、前記(ア)b(段落[0072]、[0073])の記載によれば、前記「一体構造型触媒」は、前記の触媒材料が、下記一体構造担体の単位体積あたり所定の被覆量になるように成分量を調整し、適量の水系媒体と共に、ボールミルで5時間混合して触媒スラリーを調製し、調製したスラリーを、ウォッシュコート法により下記一体構造型担体に被覆したものであり、このとき被覆を単層コートとし、これを乾燥し、500℃で1時間焼成して一体構造型触媒を得たものであり、 <一体構造担体> ・一体構造型触媒の種類:フロースルー型担体 ・一体構造型触媒の容量:645cc(高さ:95mm×直径:93mm) ・一体構造型触媒の材質:コージェライト ・一体構造型触媒のセル密度:600cel/inch2 ・一体構造型触媒のセル壁の厚み:4mil 前記(ア)bの[表2](段落[0078])によれば、前記「一体構造型触媒」の単位体積あたりの触媒成分の被覆量は、Pt:1.2g/L、Rh:0.4g/L、La-γアルミナ:39g/L、Ce-Zr(A):77g/Lであったものである。 (ウ) 前記(イ)によれば、甲第2号証には、以下の発明が記載されているといえる(以下、「甲2発明」という。)。 「一体構造型触媒であって、 セリウム-ジルコニウム系複合酸化物(A)、すなわちCe-Zr(A)を、Zrの原料として高純度酸化ジルコニウム(純度99.9%)を、Ceの原料として高純度酸化セリウム(純度99.9%)を用いて製造したものであり、 まず、粉末10kgを調製するために高純度酸化ジルコニウム(4.2kg)と高純度酸化セリウム(5.8kg)を分取・混合し、アーク式電気炉を用い、二次電圧85V、平均負荷電力99.5kW、通電時間2時間、総電力量182kWhを印加して、2250℃以上で熔融を行い、熔融終了後、電気炉に炭素蓋をして、大気中で24時間徐冷しインゴットを得て、得られたインゴットをジョークラッシャーおよびロールクラッシャーで3mm以下まで粉砕した後、篩で1mm以下の粉末を捕集し、本セリウム-ジルコニウム系複合酸化物を得た後、熔融工程での亜酸化物や過冷却による結晶内の歪みを除去するために電気炉を用いて大気中、800℃で3時間焼成し、遊星ミルで10分間粉砕し、平均粒径が1.3μmを持った粉末を得たものであり、これにより、XRDによって結晶構造中にパイロクロア相を単一に含むことが確認されたものであり、 貴金属成分を担持したγ-アルミナを、市販のランタン添加γ-アルミナ(比表面積:220m2/g、Al2O3/La2O3(重量比)=98.4/1.6)に、亜硝酸ジアンミン白金(II)の20重量%水溶液、また、硝酸ロジウムの8重量%水溶液を含浸処理し、次いで水分を乾燥・除去して、粉体の白金担持触媒成分、すなわちLa-γアルミナを得た後、 前記の触媒材料が、下記一体構造担体の単位体積あたり所定の被覆量になるように成分量を調整し、適量の水系媒体と共に、ボールミルで5時間混合して触媒スラリーを調製し、調製したスラリーを、ウォッシュコート法により下記一体構造型担体に被覆したものであり、このとき被覆を単層コートとし、これを乾燥し、500℃で1時間焼成して一体構造型触媒を得たものであり、 <一体構造担体> ・一体構造型触媒の種類:フロースルー型担体 ・一体構造型触媒の容量:645cc(高さ:95mm×直径:93mm) ・一体構造型触媒の材質:コージェライト ・一体構造型触媒のセル密度:600cel/inch2 ・一体構造型触媒のセル壁の厚み:4mil 前記一体構造型触媒の単位体積あたりの触媒成分の被覆量は、Pt:1.2g/L、Rh:0.4g/L、La-γアルミナ:39g/L、Ce-Zr(A):77g/Lである、一体構造型触媒。」 ウ 甲第3号証の記載事項及び甲第3号証に記載された発明 (ア) 甲第3号証には、以下のa~cの記載がある。 a 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 担体上に次のA粒子成分及びB粒子成分を含有する触媒層を備えている排気ガス浄化用触媒であって、 上記A粒子成分が、CeZr系複合酸化物に触媒金属が固溶している触媒金属ドープCeZr系複合酸化物粉末よりなり、 上記B粒子成分が、活性アルミナ粉末、活性アルミナ粒子にZr系酸化物が担持されたZr系酸化物担持アルミナ粉末、並びに触媒金属が固溶していないCeZr系複合酸化物粉末のうちから選ばれる少なくとも一種よりなり、 上記A粒子成分は、100nm以上300nm以下の粒径範囲にピークを有する粒度分布をもち、且つCeO2とZrO2との合計量に占めるCeO2量の割合が30質量%以上75質量%以下であり、 上記B粒子成分の少なくとも一部は上記A粒子成分よりも粒径が大きく、上記触媒層において該A粒子成分とB粒子成分とが混在していることを特徴とする排気ガス浄化用触媒。」 b 「【0002】 エンジン排気ガス中のHC(炭化水素)、CO(一酸化炭素)及びNOx(窒素酸化物)を浄化する排気ガス浄化用触媒(三元触媒)には、一般にPt、Pd、Rh等の触媒金属に加えて、活性アルミナ、Ce含有酸化物等が含まれている。活性アルミナは、耐熱性が高く、且つ比表面積が大であるため、触媒金属のサポート材として従来より利用されており、高温の排気ガスに晒されても、触媒金属を比較的高分散に担持した状態を保つことができる。また、Ce含有酸化物は、排気ガスの酸素濃度の変動に応じて酸素を吸蔵・放出することから、A/Fウインドウ(触媒がHC、CO及びNOxを同時に浄化することができる空燃比の範囲)を拡げる酸素吸蔵放出材として利用されている。 【0003】 上記Ce含有酸化物に関しては、Ce及びZrを含有するCeZr系複合酸化物が知られている。このCeZr系複合酸化物は、セリアに比べて耐熱性が高く、また、Zrの固溶によって結晶が歪み、酸素欠陥が増えるため、セリアに比べても遜色ない酸素吸蔵放出能を発揮する。さらに、CeZr系複合酸化物にNd、Y、La等の希土類金属を固溶したものも知られている。」 c 「【0033】 [実施例1] この実施例は、A粒子成分がRhドープCeZr系複合酸化物粉末であり、B粒子成分がZr系酸化物担持アルミナ粉末とされたケースである。 【0034】 -RhドープCeZr系複合酸化物粉末の調製- 硝酸セリウム6水和物とオキシ硝酸ジルコニル溶液と硝酸ネオジム6水和物と硝酸ロジウム溶液とをイオン交換水に溶かす。この硝酸塩溶液に28質量%アンモニア水の8倍希釈液を混合して中和させることにより、共沈物を得る。この共沈物を遠心分離法で水洗した後、空気中において150℃の温度で一昼夜乾燥させ、粉砕した後、空気中において500℃の温度に2時間保持する焼成を行なう。これにより、A粒子成分の上記粒径範囲よりも大きな粒径範囲にピークを有する粒度分布をもつ従来型RhドープCeZr系複合酸化物粉末が得られる。その粒度分布については後述する。以下では、「RhドープCeZr系複合酸化物粉末」を適宜「Rhドープ材」という。 【0035】 そうして、上記A粒子成分(ピーク粒径が小さいRhドープ材)は、上記従来型Rhドープ材を湿式粉砕することによって得る。すなわち、従来型Rhドープ材にイオン交換水を添加してスラリー(固形分25質量%)とし、このスラリーをボールミルに投入して、0.5mmのジルコニアビーズによって粉砕する(約3時間)。これにより、粒径が小さくなったA粒子成分が分散したRhドープCeZrNdゾルを得ることができる。 ・・・ 【0038】 -触媒の調製- A粒子成分のゾルとして、上記調製法により、RhドープCeZr系複合酸化物のCeO2/(CeO2+ZrO2)質量比が異なる6種類(当該質量比が25%、30%、40%、50%、60%及び75%の6種類)を調製した。いずれも、Rhを除く組成は、(CeO2+ZrO2):Nd2O3=90:10(質量比)であり、Rh含有率は0.6質量%である。B粒子成分としては、個数平均粒径33μmのZr系酸化物担持アルミナ粉末(ZrLa/Al2O3)を採用した。 【0039】 ZrLa/Al2O3は、ZrとLaとを含有するZrLa複合酸化物が活性アルミナ粒子の表面に担持されてなるものであり、次のようにして調製した。すなわち、硝酸ジルコニウム及び硝酸ランタンの混合溶液に活性アルミナ粉末を分散させ、これにアンモニア水を加えて沈殿を生成した。得られた沈殿物を濾過、洗浄し、200℃で2時間保持する乾燥、並びに500℃に2時間保持する焼成を行なうことにより、ZrLa/Al2O3を得た。その組成は、ZrO2:La2O3:Al2O3=38:2:60(質量比)である。 【0040】 上記6種類のA粒子成分のゾル各々と上記B粒子成分(ZrLa/Al2O3)と硝酸ジルコニルバインダとをイオン交換水と共に混合してスラリー化した。これを担体にコーティングし、乾燥及び焼成を行なうことにより、実施例1に係る6種類の排気ガス浄化用触媒(Aゾル/(ZrLa/Al2O3))を得た。この触媒の触媒層では、触媒成分であるA粒子成分がバインダとしても機能している。 【0041】 各成分の担体1L当たりの担持量は、A粒子成分が6.7g/L、B粒子成分が70g/Lであり、バインダが8g/Lであり、当該触媒層内のRh含有量は0.04g/L(=A粒子成分内にドープされた量)である。担体としては、セル壁厚さ3.5mil(8.89×10-2mm)、1平方インチ(645.16mm2)当たりのセル数600のコージェライト製ハニカム担体(容量1L)を用いた。この担体に関しては、後述の他の実施例及び比較例も同じである。 ・・・ 【0051】 <排気ガス浄化性能> 実施例1~4及び比較例1~4の各触媒にベンチエージング処理を施した。これは、各触媒をエンジン排気系に取り付け、(1)A/F=14の排気ガスを1分間流す→(2)A/F=13.5の排気ガスを1分間流す→(3)A/F=14.7の排気ガスを2分間流す、というサイクルが合計50時間繰り返されるように、かつ触媒入口ガス温度が900℃となるように、エンジンを運転するというものである。 【0052】 しかる後、各触媒から担体容量約25mL(直径25.4mm,長さ50mm)のコアサンプルを切り出し、これをモデルガス流通反応装置に取り付け、HCの浄化に関するライトオフ温度T50(℃)を測定した。T50(℃)は、触媒に流入するモデルガス温度を常温から漸次上昇させていき、浄化率が50%に達したときの触媒入口のガス温度である。モデルガスは、A/F=14.7±0.9とした。すなわち、A/F=14.7のメインストリームガスを定常的に流しつつ、所定量の変動用ガスを1Hzでパルス状に添加することにより、A/Fを±0.9の振幅で強制的に振動させた。空間速度SVは60000h―1、昇温速度は30℃/分である。A/F=14.7、A/F=13.8及びA/F=15.6のときのガス組成を表1に示し、ライトオフ温度T50の測定結果を図2に示す。 ・・・ 【0054】 図2によれば、実施例1~4は、CeO2/(CeO2+ZrO2)質量比が50%であるとき、同じ質量比の比較例1~4よりもライトオフ温度が低くなっている。 ・・・ 【0055】 CeO2/(CeO2+ZrO2)質量比の違いが触媒性能に及ぼす影響をみると、CeO2/(CeO2+ZrO2)質量比が50%であるときにライトオフ温度が最も低くなっており、当該質量比が30%以上75%以下であるとき、特に40質量%以上60質量%以下であるときに良好な排気ガス浄化性能が得られることがわかる。」 (イ) 前記(ア)aの記載によれば、甲第3号証には、「排気ガス浄化用触媒」が記載されており、前記「排気ガス浄化用触媒」は、担体上に次のA粒子成分及びB粒子成分を含有する触媒層を備えている「排気ガス浄化用触媒」であって、前記A粒子成分が、CeZr系複合酸化物に触媒金属が固溶している触媒金属ドープCeZr系複合酸化物粉末よりなり、前記B粒子成分が、活性アルミナ粉末、活性アルミナ粒子にZr系酸化物が担持されたZr系酸化物担持アルミナ粉末、並びに触媒金属が固溶していないCeZr系複合酸化物粉末のうちから選ばれる少なくとも一種よりなり、前記A粒子成分は、100nm以上300nm以下の粒径範囲にピークを有する粒度分布をもち、且つCeO2とZrO2との合計量に占めるCeO2量の割合が30質量%以上75質量%以下であり、前記B粒子成分の少なくとも一部は上記A粒子成分よりも粒径が大きく、上記触媒層において該A粒子成分とB粒子成分とが混在しているものである。 そして、前記(ア)cの実施例1に注目すると、前記「排気ガス浄化用触媒」は、A粒子成分がRhドープCeZr系複合酸化物粉末であり、B粒子成分がZr系酸化物担持アルミナ粉末とされたものであり(段落【0033】)、RhドープCeZr系複合酸化物粉末は、硝酸セリウム6水和物とオキシ硝酸ジルコニル溶液と硝酸ネオジム6水和物と硝酸ロジウム溶液とをイオン交換水に溶かし、この硝酸塩溶液に28質量%アンモニア水の8倍希釈液を混合して中和させることにより、共沈物を得て、この共沈物を遠心分離法で水洗した後、空気中において150℃の温度で一昼夜乾燥させ、粉砕した後、空気中において500℃の温度に2時間保持する焼成を行ない、これにより、A粒子成分の前記粒径範囲よりも大きな粒径範囲にピークを有する粒度分布をもつ従来型RhドープCeZr系複合酸化物粉末、すなわちRhドープ材が得られるものであり(段落【0034】)、前記A粒子成分(ピーク粒径が小さいRhドープ材)は、前記従来型Rhドープ材を湿式粉砕することによって得られるものであり、すなわち、従来型Rhドープ材にイオン交換水を添加してスラリー(固形分25質量%)とし、このスラリーをボールミルに投入して、0.5mmのジルコニアビーズによって粉砕する(約3時間)ことにより、粒径が小さくなったA粒子成分が分散したRhドープCeZrNdゾルを得ることができるものである(段落【0035】)。 また、触媒は、A粒子成分のゾルとして、前記調製法により、RhドープCeZr系複合酸化物のCeO2/(CeO2+ZrO2)質量比が異なる6種類(当該質量比が25%、30%、40%、50%、60%及び75%の6種類)を調製したものであり、いずれも、Rhを除く組成は、(CeO2+ZrO2):Nd2O3=90:10(質量比)であり、Rh含有率は0.6質量%であり、B粒子成分としては、個数平均粒径33μmのZr系酸化物担持アルミナ粉末(ZrLa/Al2O3)を採用したものである(段落【0038】)。 そして、ZrLa/Al2O3は、ZrとLaとを含有するZrLa複合酸化物が活性アルミナ粒子の表面に担持されてなるものであり、次のようにして調製したものである。 すなわち、硝酸ジルコニウム及び硝酸ランタンの混合溶液に活性アルミナ粉末を分散させ、これにアンモニア水を加えて沈殿を生成し、得られた沈殿物を濾過、洗浄し、200℃で2時間保持する乾燥、並びに500℃に2時間保持する焼成を行なうことにより、ZrLa/Al2O3を得たものであり、その組成は、ZrO2:La2O3:Al2O3=38:2:60(質量比)であったものである(段落【0039】)。 そして、前記6種類のA粒子成分のゾル各々と前記B粒子成分(ZrLa/Al2O3)と硝酸ジルコニルバインダとをイオン交換水と共に混合してスラリー化し、これを担体にコーティングし、乾燥及び焼成を行なうことにより、6種類の排気ガス浄化用触媒(Aゾル/(ZrLa/Al2O3))を得たものであり、各成分の担体1L当たりの担持量は、A粒子成分が6.7g/L、B粒子成分が70g/Lであり、バインダが8g/Lであり、当該触媒層内のRh含有量は0.04g/L(=A粒子成分内にドープされた量)であり、担体としては、セル壁厚さ3.5mil(8.89×10-2mm)、1平方インチ(645.16mm2)当たりのセル数600のコージェライト製ハニカム担体(容量1L)を用いたものである(段落【0040】、【0041】)。 (ウ) 前記(イ)によれば、甲第3号証には、以下の発明が記載されているといえる(以下、「甲3発明」という。)。 「担体上に次のA粒子成分及びB粒子成分を含有する触媒層を備えている排気ガス浄化用触媒であって、 前記A粒子成分が、CeZr系複合酸化物に触媒金属が固溶している触媒金属ドープCeZr系複合酸化物粉末よりなり、 前記B粒子成分が、活性アルミナ粉末、活性アルミナ粒子にZr系酸化物が担持されたZr系酸化物担持アルミナ粉末、並びに触媒金属が固溶していないCeZr系複合酸化物粉末のうちから選ばれる少なくとも一種よりなり、 前記A粒子成分は、100nm以上300nm以下の粒径範囲にピークを有する粒度分布をもち、且つCeO2とZrO2との合計量に占めるCeO2量の割合が30質量%以上75質量%以下であり、 前記B粒子成分の少なくとも一部は上記A粒子成分よりも粒径が大きく、上記触媒層において該A粒子成分とB粒子成分とが混在しているものであり、 前記排気ガス浄化用触媒は、A粒子成分がRhドープCeZr系複合酸化物粉末であり、B粒子成分がZr系酸化物担持アルミナ粉末とされたものであり、 RhドープCeZr系複合酸化物粉末は、硝酸セリウム6水和物とオキシ硝酸ジルコニル溶液と硝酸ネオジム6水和物と硝酸ロジウム溶液とをイオン交換水に溶かし、この硝酸塩溶液に28質量%アンモニア水の8倍希釈液を混合して中和させることにより、共沈物を得て、この共沈物を遠心分離法で水洗した後、空気中において150℃の温度で一昼夜乾燥させ、粉砕した後、空気中において500℃の温度に2時間保持する焼成を行ない、これにより、A粒子成分の上記粒径範囲よりも大きな粒径範囲にピークを有する粒度分布をもつ従来型RhドープCeZr系複合酸化物粉末、すなわちRhドープ材が得られるものであり、 前記A粒子成分(ピーク粒径が小さいRhドープ材)は、前記従来型Rhドープ材を湿式粉砕することによって得られるものであり、すなわち、従来型Rhドープ材にイオン交換水を添加してスラリー(固形分25質量%)とし、このスラリーをボールミルに投入して、0.5mmのジルコニアビーズによって粉砕する(約3時間)ことにより、粒径が小さくなったA粒子成分が分散したRhドープCeZrNdゾルを得ることができるものであり、 触媒は、A粒子成分のゾルとして、前記調製法により、RhドープCeZr系複合酸化物のCeO2/(CeO2+ZrO2)質量比が異なる6種類(当該質量比が25%、30%、40%、50%、60%及び75%の6種類)を調製したものであり、いずれも、Rhを除く組成は、(CeO2+ZrO2):Nd2O3=90:10(質量比)であり、Rh含有率は0.6質量%であり、 B粒子成分としては、個数平均粒径33μmのZr系酸化物担持アルミナ粉末(ZrLa/Al2O3)を採用したものであり、 ZrLa/Al2O3は、ZrとLaとを含有するZrLa複合酸化物が活性アルミナ粒子の表面に担持されてなるものであり、次のようにして調製したものであり、 すなわち、硝酸ジルコニウム及び硝酸ランタンの混合溶液に活性アルミナ粉末を分散させ、これにアンモニア水を加えて沈殿を生成し、得られた沈殿物を濾過、洗浄し、200℃で2時間保持する乾燥、並びに500℃に2時間保持する焼成を行なうことにより、ZrLa/Al2O3を得たものであり、その組成は、ZrO2:La2O3:Al2O3=38:2:60(質量比)であったものであり、 そして、上記6種類のA粒子成分のゾル各々と前記B粒子成分(ZrLa/Al2O3)と硝酸ジルコニルバインダとをイオン交換水と共に混合してスラリー化し、これを担体にコーティングし、乾燥及び焼成を行なうことにより、6種類の排気ガス浄化用触媒(Aゾル/(ZrLa/Al2O3))を得たものであり、 各成分の担体1L当たりの担持量は、A粒子成分が6.7g/L、B粒子成分が70g/Lであり、バインダが8g/Lであり、当該触媒層内のRh含有量は0.04g/L(=A粒子成分内にドープされた量)であり、 担体としては、セル壁厚さ3.5mil(8.89×10-2mm)、1平方インチ(645.16mm2)当たりのセル数600のコージェライト製ハニカム担体(容量1L)を用いたものである、排気ガス浄化用触媒。」 エ 甲第4号証の記載事項及び甲第4号証に記載された発明 (ア) 甲第4号証には、以下のa~bの記載がある。 a 「【0013】 本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、低コストで比表面積の大きい酸化物担体を提供すること、並びに、酸化物イオン電導率の高い、アルカリ土類金属を含むペロブスカイト含有複合酸化物を主成分として含む、実用性のある触媒用の酸化物担体を提供することを目的とする。これにより、排ガス中の一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)及び未燃炭化水素(HC)を低温から浄化する触媒及び構造体を提供する。 ・・・ 【0020】 (第1の実施形態) 本願第1の発明に係る排ガス浄化触媒用酸化物担体は、アルカリ土類金属を含む複合酸化物であって、緻密質の中心核と、その表面を覆う多孔質の表層と、を有する。 ・・・ 【0023】 中心核12を構成するアルカリ土類金属を含む複合酸化物は、ペロブスカイト含有複合酸化物である。中心核12を構成するアルカリ土類金属を含むペロブスカイト含有複合酸化物は、以下の組成式(1)で示されることが好ましい。 組成式(1): M{Co1-x(Fe1-sTis)x}yOz 【0024】 組成式(1)において、MはCa、SrおよびBaからなる群から選択される1種以上のアルカリ土類金属である。x、y、sはそれぞれ、0≦x≦1、0.6≦y≦2、0≦s≦0.3である。zは、電荷中性条件を満たすように決まる値である。 ・・・ 【0027】 組成式(1)において、yが大きいほど、酸化物の高温での酸素吸放出能に優れ、小さいほど低温での酸素吸放出能に優れる傾向がある。そこで、yは0.6~2.0の範囲で用途によって適宜選択される。yが0.6より小さいと酸素吸放出能が小さくなり、優れた排ガス浄化能が得られない。一方、yが2.0を越えると低温での酸素吸放出能の低下が顕著になるので、それによって優れた排ガス浄化能が得られない。 ・・・ 【0053】 (第3の実施形態) 本願第3の発明は、前記触媒を含む触媒層をハニカム担体に形成する排ガス浄化用構造体に係る。 【0054】 前記排ガス浄化触媒を、バインダーとしてのアルミナ粉末とともに水に分散してスラリー状態とする。ここで、水中での排ガス浄化触媒の凝集を防ぐための分散剤や、泡立ちを防ぐための消包剤が添加されてもよい。 ・・・ 【0056】 得られたスラリーを、ハニカム担体にコートして、例えば、600℃で1時間焼き付けることで、密着性の高い強固な触媒層をハニカム担体内壁に形成できる。コートの方法の例には、ハニカム内部へスラリーを供給し;しかる後に、余分なスラリーを吹き飛ばしながら均一にコートする方法がある。スラリーの供給は、ハニカム担体の一方の端部からスラリーを滴下、あるいはハニカム担体をスラリー中に浸漬、あるいはハニカム担体をスラリー中に浸漬しながら他方の端部を減圧するなどして行う。ただし、コートの方法は、これに限定するものではなく、均一に所定量のコートができる方法であれば、いかなる方法も適用することができる。 【0057】 ハニカム担体は、メタル製でもセラミックス製でもよい。メタル製のハニカム担体としては、ステンレスハニカム等を例示することができ、セラミックス製のハニカム担体としては、コージエライトハニカムおよび炭化珪素ハニカム等を例示することができるが、本発明では特に限定するものではない。」 b 「【実施例】 【0060】 浄化性能評価1(実施例1~10、比較例1~3) (実施例1) 原料として、炭酸ストロンチウムおよび酸化鉄を、SrFe2Ozの組成となるように秤量および混合し、1000℃で5時間焼成した。得られた酸化物粉末は、X線回折測定によって、ペロブスカイト構造を含む、複数の結晶相からなっていることを確認した。得られた酸化物粉末の平均粒子径は、1.9μmであった。また、得られた酸化物粉末の比表面積(多孔質の表層形成前の比表面積)を、窒素吸着法により測定したところ、1.7m2/gであった。比表面積は、日本ベル製ベルソープミニを用いて、77Kにて窒素吸着量の測定結果から算出した。 【0061】 得られた酸化物粉末40gを水400ccの中に入れて混合後、エバポレータにより、80℃に加温しながら真空引きを行い、2時間程度かけて水分を蒸発させた。水分がなくなった後、乾燥器にて更に180℃で30分間乾燥させた。しかる後、容器内壁に固着した混合物をアルミナの容器に移し替え、空気中600℃で1時間焼成した。これにより、緻密質の中心核の表面に、多孔質の表層が形成された酸化物担体を得た。得られた酸化物担体の比表面積(表層形成後の比表面積)を、窒素吸着法により測定したところ、20.9m2/gであった。 【0062】 次に、得られた酸化物担体20gを水に分散させた。その後、硝酸パラジウム溶液をパラジウムの重量で0.4g(酸化物担体に対して質量比で2%)となるように秤量し、上記酸化物担体が分散された水の中に混合した。これを、エバポレータを用いて水分を蒸発させ、水分がなくなった後、乾燥器にて更に180℃で30分間乾燥させた。しかる後、容器内壁に固着した混合物を、アルミナの容器に移し替え、600℃で1時間焼成した。これにより、パラジウムを担持した触媒粉末を得た。 ・・・ 【0073】 実施例1~10および比較例1~3で得られた触媒粉末の浄化性能を、浄化性能として目安となるT50で整理した結果を表2に示す。 【表2】 [図:0001423424000004.jpg] ・・・ 【0078】 浄化性能評価2(実施例23~32、比較例4~6) 上記実施例1~10および比較例1~3で焼成した触媒粉末を使い、ハニカム状のメタル担体へコートし、浄化性能を評価した。 【0079】 (実施例23~32) 蒸留水20gに対して、実施例1~10で得られた上記触媒粉末とアルミナ粉末を各20gずつ分散させたスラリーを調製した。このスラリーを、直径が25mm、高さが60mm、セル密度300セル/1インチ(25.4mm)四方のハニカム状メタル担体に滴下した。余分なスラリーをエアーブローにより吹き飛ばしてから、180℃で30分間乾燥した。この操作を4~6回繰り返し、触媒層のコート量を50g/Lとし、最終的な貴金属の総重量を0.5g/Lとした。上記のようにしてスラリーをコートした後、大気中600℃で1時間熱処理することによって、メタルハニカムに触媒層を形成して、排ガス浄化用構造体を得た。 【0080】 得られた排ガス浄化用構造体は、ハニカムを挿入できる比較的大きなステンレス製配管で構成された流通型反応装置を使って評価した。すなわち、排ガス浄化用構造体を、流通型反応装置のステンレス製配管内に充填し、排ガス浄化反応部とした。次いで、外部ヒーターにて加熱した導入ガスを排ガス浄化反応部に供給することで、排ガス浄化反応部を加熱した。導入ガスの加熱温度を100℃から450℃まで昇温させて、出口側(触媒部分通過後)の排出ガスの組成を分析した。そして、CO、HCおよびNO濃度の変化率(浄化率)を求めることにより、浄化特性を評価した。空間速度(SV)は50000h-1とした。」 (イ) 前記(ア)bの記載によれば、甲第4号証には「排ガス浄化用構造体」が記載されており、このうち実施例23に注目すれば、前記「排ガス浄化用構造体」は、実施例1で得られた触媒粉末を用いるものであり、前記触媒粉末は、原料として、炭酸ストロンチウム及び酸化鉄を、SrFe2Ozの組成となるように秤量及び混合し、1000℃で5時間焼成して酸化物粉末を得て、得られた酸化物粉末40gを水400ccの中に入れて混合後、エバポレータにより、80℃に加温しながら真空引きを行い、2時間程度かけて水分を蒸発させ、水分がなくなった後、乾燥器にて更に180℃で30分間乾燥させ、しかる後、容器内壁に固着した混合物をアルミナの容器に移し替え、空気中600℃で1時間焼成し、これにより、緻密質の中心核の表面に、多孔質の表層が形成された酸化物担体を得たものである(段落【0060】、【0061】)。 次に、得られた酸化物担体20gを水に分散させ、その後、硝酸パラジウム溶液をパラジウムの重量で0.4g(酸化物担体に対して質量比で2%)となるように秤量し、前記酸化物担体が分散された水の中に混合し、これを、エバポレータを用いて水分を蒸発させ、水分がなくなった後、乾燥器にて更に180℃で30分間乾燥させ、しかる後、容器内壁に固着した混合物を、アルミナの容器に移し替え、600℃で1時間焼成し、これにより、パラジウムを担持した触媒粉末を得たものである(段落【0062】)。 そして、蒸留水20gに対して、得られた前記触媒粉末とアルミナ粉末を各20gずつ分散させたスラリーを調製し、このスラリーを、直径が25mm、高さが60mm、セル密度300セル/1インチ(25.4mm)四方のハニカム状メタル担体に滴下し、余分なスラリーをエアーブローにより吹き飛ばしてから、180℃で30分間乾燥し、この操作を4~6回繰り返し、触媒層のコート量を50g/Lとし、最終的な貴金属の総重量を0.5g/Lとしてスラリーをコートした後、大気中600℃で1時間熱処理することによって、メタルハニカムに触媒層を形成して、前記「排ガス浄化用構造体」が得られるものである(段落【0079】)。 (ウ) 前記(イ)によれば、甲第4号証には、以下の発明が記載されているといえる(以下、「甲4発明」という。)。 「排ガス浄化用構造体であって、 前記排ガス浄化用構造体は、原料として、炭酸ストロンチウム及び酸化鉄を、SrFe2Ozの組成となるように秤量及び混合し、1000℃で5時間焼成して酸化物粉末を得て、得られた酸化物粉末40gを水400ccの中に入れて混合後、エバポレータにより、80℃に加温しながら真空引きを行い、2時間程度かけて水分を蒸発させ、水分がなくなった後、乾燥器にて更に180℃で30分間乾燥させ、しかる後、容器内壁に固着した混合物をアルミナの容器に移し替え、空気中600℃で1時間焼成し、これにより、緻密質の中心核の表面に、多孔質の表層が形成された酸化物担体を得たものであり、 次に、得られた酸化物担体20gを水に分散させ、その後、硝酸パラジウム溶液をパラジウムの重量で0.4g(酸化物担体に対して質量比で2%)となるように秤量し、前記酸化物担体が分散された水の中に混合し、これを、エバポレータを用いて水分を蒸発させ、水分がなくなった後、乾燥器にて更に180℃で30分間乾燥させ、しかる後、容器内壁に固着した混合物を、アルミナの容器に移し替え、600℃で1時間焼成し、これにより、パラジウムを担持した触媒粉末を得た後、 蒸留水20gに対して、得られた前記触媒粉末とアルミナ粉末を各20gずつ分散させたスラリーを調製し、このスラリーを、直径が25mm、高さが60mm、セル密度300セル/1インチ(25.4mm)四方のハニカム状メタル担体に滴下し、余分なスラリーをエアーブローにより吹き飛ばしてから、180℃で30分間乾燥し、この操作を4~6回繰り返し、触媒層のコート量を50g/Lとし、最終的な貴金属の総重量を0.5g/Lとしてスラリーをコートした後、大気中600℃で1時間熱処理することによって、メタルハニカムに触媒層を形成して得られる、排ガス浄化用構造体。」 オ 甲第5号証の記載事項及び甲第5号証に記載された発明 (ア) 甲第5号証には、以下のa~cの記載がある。 a 「【0009】 本発明者らは上述したような問題を検討した結果、所定の形状を有する有機繊維を造孔材として用いることで、ガス連通性に優れた高アスペクト比細孔を有する、ガス拡散性に優れた触媒コートを形成できることを見出した。そして、その触媒コートを排ガス流れ方向の下流側の領域の触媒コートとして採用することにより、触媒の高Ga条件下での浄化性能を高められることを見出した。本発明の要旨は以下のとおりである。 ・・・ 【0013】 [排ガス浄化用触媒] 本発明の排ガス浄化用触媒は、基材と、該基材上に形成された触媒コート層を有し、該触媒コート層は、触媒の排ガス流れ方向上流側の端部から基材の全長の40~60%までの範囲を占める排ガス上流側の領域と、触媒コート層の残りの範囲である下流側の領域とで異なる組成を有する触媒粒子を含有する。そして、下流側の領域の触媒コート層は、コート層の平均厚さが25~160μmの範囲内であり、水中重量法により測定した空隙率が50~80容量%の範囲内であり、かつ空隙全体の0.5~50容量%が、5以上のアスペクト比を有する高アスペクト比細孔からなり、該高アスペクト比細孔は、排ガスの流れ方向に垂直な触媒コート層断面の断面画像における細孔の円相当径が2~50μmの範囲内であり、かつ平均アスペクト比が10~50の範囲内であることを特徴とする。 ・・・ 【0017】 各触媒コート層は、主触媒として機能する貴金属および金属酸化物等から構成される触媒粒子を含む。触媒粒子を構成する金属酸化物としては、具体的には、酸化アルミニウム(Al2O3、アルミナ)、酸化セリウム(CeO2、セリア)、酸化ジルコニウム(ZrO2、ジルコニア)、酸化珪素(SiO2、シリカ)、酸化イットリウム(Y2O3、イットリア)および酸化ネオジム(Nd2O3)、ならびにこれらからなる複合酸化物が挙げられる。金属酸化物は二種以上を組み合わせて用いてもよい。 【0018】 触媒粒子を構成する貴金属としては、具体的には、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、金(Au)、銀(Ag)、イリジウム(Ir)およびルテニウム(Ru)が挙げられる。これらの中でも、触媒性能の観点から、Pt、Rh、Pd、Ir及びRuからなる群から選択される少なくとも一種が好ましく、Pt、Rh及びPdからなる群から選択される少なくとも一種が特に好ましい。貴金属は、触媒コート層一層あたり一種用いることが好ましい。 【0019】 貴金属は、上述したような金属酸化物に担持されていることが好ましい。貴金属の担持量は、特に制限されず、目的とする設計等に応じて適宜必要量を担持させればよい。貴金属の含有量としては、金属換算で、触媒粒子100質量部に対して0.01~10質量部であることが好ましく、0.01~5質量部であることがより好ましい。貴金属の担持量は、少なすぎると触媒活性が不十分となる傾向にあり、他方、多すぎても触媒活性が飽和するとともにコストが上昇する傾向にあるが、上記範囲ではそのような問題は生じない。」 b 「【0056】 [試験1:空隙を有する触媒コート層を一層有する触媒の調製および評価] 1.触媒の調製 (1)実施例1 先ず、イオン交換水500gに、Al2O3粉末(サソール社製:比表面積100m2/g、平均粒子径30μm)150gとCeO2-ZrO2固溶体の粉末(第一稀元素化学工業社製:CeO2含有量20質量%、ZrO2含有量25質量%、比表面積100m2/g、平均粒子径10nm)300gとを添加し混合して得られた溶液に対し、ビーズミル(アズワン社製、商品名「アルミナボール」、使用ビーズ:直径5000μmアルミナ製マイクロビーズ)を用い、処理時間:25分間、攪拌速度400rpmの条件で撹拌処理を施し、CeO2-ZrO2固溶体とAl2O3粉末との混合物(複合金属酸化物)からなる金属酸化物粒子を含む分散液を準備した。なお、レーザ回折式粒度分布測定装置(堀場製作所社製、商品名「LA-920」)を用いてレーザ回折法により金属酸化物粒子の粒径を測定したところ、面積基準の累積粒度分布における累積50%径の値が3.2μmであった。 【0057】 次に、得られた分散液に、貴金属原料として白金(Pt)を金属換算で4g含むジニトロジアンミン白金溶液0.05L及び繊維状有機物として有機繊維(PET繊維、平均直径:3μm×長さ:42μm、平均アスペクト比:14)を金属酸化物粒子100質量部に対して1.0質量部をそれぞれ添加して撹拌速度400rpmの条件で30分間混合し、触媒スラリーを調製した。 【0058】 次いで、得られた触媒スラリーを、基材としての六角セルコージェライトモノリスハニカム基材(デンソー社製、商品名「D60H/3-9R-08EK」、直径:103mm、長さ:105mm、容積:875ml、セル密度:600cell/inch2)にウォッシュコート(塗布)し、大気中、100℃の温度条件で0.5時間乾燥した後、更に、このような触媒スラリーのウォッシュコート、乾燥及び仮焼を基材に対する被覆量が基材1Lあたり100g(100g/L)となるまで繰り返し行うことにより、前記基材に触媒スラリー層を形成せしめた。 【0059】 その後、大気中、500℃の温度条件で2時間焼成せしめて、ハニカム形状のコージェライトモノリス基材からなる基材表面に触媒粒子からなる触媒コート層が形成された排ガス浄化用触媒(触媒試料)を得た。 ・・・ 【0062】 (2)実施例2~42 ビーズミルによる処理時間を表1~表2に示した時間とし金属酸化物粒子の粒径が体積基準の累積粒度分布における累積50%径の値で表1~表2の値となるようにビーズミルにて撹拌処理を行い、繊維状有機物として表1~表2に示した原料種、平均繊維径、平均アスペクト比及び混合量の繊維状有機物を用いた以外は、実施例1と同様にして触媒スラリーを得た。次に、得られた触媒スラリーを、実施例1と同様にしてコージェライトモノリスハニカム基材に塗布(コート)し、焼成せしめて、排ガス浄化用触媒(触媒試料)を得た。 【0063】 なお、実施例31~39で用いた繊維状有機物は、イソプロパノールにチタンイソプロポキシド(Ti(OPri)4)とポリエチレングリコール(PEG)とポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)粒子(平均直径3μm)とを添加し、蒸留水中に放射することにより、所定形状の有機繊維を調製したものを用いた。 【0064】 酸化物粒子準備工程における撹拌処理の処理時間[分]及び得られた金属酸化物粒子の粒径(体積基準の累積50%径の値)[μm]、触媒スラリー調製工程で用いた繊維状有機物の原料種、平均繊維径[μm]、平均アスペクト比及び混合量[質量部]、触媒コート層の被覆量[g/L]を表1~表2に示す。 【0065】 【表2】 [図:0001423424000005.jpg] 」 c 「【0091】 (8)触媒性能評価試験 実施例1~42及び比較例1~133で得られた触媒試料について、以下のようにして、それぞれNOx浄化率測定試験を行い、各触媒の触媒性能を評価した。 【0092】 (NOx浄化率測定試験) 実施例1~42及び比較例1~133で得られた触媒試料について、以下のようにしてそれぞれ過渡時の過渡変動雰囲気におけるNOx浄化率を測定した。 【0093】 すなわち、先ず、直列4気筒2.4Lエンジンを用いて、14.1、15.1を目標にA/Fフィードバック制御を行い、A/F切り替え時の平均NOx排出量からNOx浄化率を算出した。その際の吸入空気量を40(g/sec)、触媒への流入ガス温度を750℃となるようにエンジン運転条件、配管のセットアップを調整した。」 (イ) 前記(ア)bの記載によれば、甲第5号証には「排ガス浄化用触媒」が記載されており、このうち実施例40に注目すれば、前記「排ガス浄化用触媒」は、先ず、イオン交換水500gに、Al2O3粉末(サソール社製:比表面積100m2/g、平均粒子径30μm)150gとCeO2-ZrO2固溶体の粉末(第一稀元素化学工業社製:CeO2含有量20質量%、ZrO2含有量25質量%、比表面積100m2/g、平均粒子径10nm)300gとを添加し混合して得られた溶液に対し、ビーズミル(アズワン社製、商品名「アルミナボール」、使用ビーズ:直径5000μmアルミナ製マイクロビーズ)を用い、処理時間:16分間、攪拌速度400rpmの条件で撹拌処理を施し、CeO2-ZrO2固溶体とAl2O3粉末との混合物(複合金属酸化物)からなる金属酸化物粒子を含む分散液を準備し、このとき、レーザ回折式粒度分布測定装置(堀場製作所社製、商品名「LA-920」)を用いてレーザ回折法により金属酸化物粒子の粒径を測定したところ、面積基準の累積粒度分布における累積50%径の値が4.6μmであったものである(段落【0056】、【0062】、【0065】、【表2】)。 次に、得られた分散液に、貴金属原料として白金(Pt)を金属換算で4g含むジニトロジアンミン白金溶液0.05L及び繊維状有機物として有機繊維(PET繊維、平均直径:2.0μm、平均アスペクト比:40)を金属酸化物粒子100質量部に対して3.0質量部をそれぞれ添加して撹拌速度400rpmの条件で30分間混合し、触媒スラリーを調製し(段落【0057】、【0062】、【0065】、【表2】)、次いで、得られた触媒スラリーを、基材としての六角セルコージェライトモノリスハニカム基材(デンソー社製、商品名「D60H/3-9R-08EK」、直径:103mm、長さ:105mm、容積:875ml、セル密度:600cell/inch2)にウォッシュコート(塗布)し、大気中、100℃の温度条件で0.5時間乾燥した後、更に、このような触媒スラリーのウォッシュコート、乾燥及び仮焼を基材に対する被覆量が基材1Lあたり50g(50g/L)となるまで繰り返し行うことにより、前記基材に触媒スラリー層を形成せしめ(段落【0058】、【0062】、【0065】、【表2】)、その後、大気中、500℃の温度条件で2時間焼成せしめて、ハニカム形状のコージェライトモノリス基材からなる基材表面に触媒粒子からなる触媒コート層が形成された排ガス浄化用触媒(触媒試料)を得たものである(段落【0059】、【0062】、【0065】、【表2】)。 (ウ) 前記(イ)によれば、甲第5号証には、以下の発明が記載されているといえる(以下、「甲5発明」という。)。 「排ガス浄化用触媒であって、 前記排ガス浄化用触媒は、先ず、イオン交換水500gに、Al2O3粉末(サソール社製:比表面積100m2/g、平均粒子径30μm)150gとCeO2-ZrO2固溶体の粉末(第一稀元素化学工業社製:CeO2含有量20質量%、ZrO2含有量25質量%、比表面積100m2/g、平均粒子径10nm)300gとを添加し混合して得られた溶液に対し、ビーズミル(アズワン社製、商品名「アルミナボール」、使用ビーズ:直径5000μmアルミナ製マイクロビーズ)を用い、処理時間:16分間、攪拌速度400rpmの条件で撹拌処理を施し、CeO2-ZrO2固溶体とAl2O3粉末との混合物(複合金属酸化物)からなる金属酸化物粒子を含む分散液を準備し、 このとき、レーザ回折式粒度分布測定装置(堀場製作所社製、商品名「LA-920」)を用いてレーザ回折法により金属酸化物粒子の粒径を測定したところ、面積基準の累積粒度分布における累積50%径の値が4.6μmであり、 次に、得られた分散液に、貴金属原料として白金(Pt)を金属換算で4g含むジニトロジアンミン白金溶液0.05L及び繊維状有機物として有機繊維(PET繊維、平均直径:2.0μm、平均アスペクト比:40)を金属酸化物粒子100質量部に対して3.0質量部をそれぞれ添加して撹拌速度400rpmの条件で30分間混合し、触媒スラリーを調製し、 次いで、得られた触媒スラリーを、基材としての六角セルコージェライトモノリスハニカム基材(デンソー社製、商品名「D60H/3-9R-08EK」、直径:103mm、長さ:105mm、容積:875ml、セル密度:600cell/inch2)にウォッシュコート(塗布)し、大気中、100℃の温度条件で0.5時間乾燥した後、更に、このような触媒スラリーのウォッシュコート、乾燥及び仮焼を基材に対する被覆量が基材1Lあたり50g(50g/L)となるまで繰り返し行うことにより、前記基材に触媒スラリー層を形成せしめ、 その後、大気中、500℃の温度条件で2時間焼成せしめて、ハニカム形状のコージェライトモノリス基材からなる基材表面に触媒粒子からなる触媒コート層が形成されて得られた、排ガス浄化用触媒。」 (2) 対比・判断 甲第1号証~甲第5号証に記載された発明と本件発明1~7、11~18、20~23、25及び26との対比、判断にあたって、成分の含有量等を算出する際に、ロジウム(Rh)の原子量を102.91、酸素(O)の原子量を16.00、パラジウム(Pd)の原子量を106.42、ジルコニウム(Zr)の原子量を91.22、セリウム(Ce)の原子量を140.12、1リットルを61.02in3として検討する。 ア 甲第1号証を主引用例とした場合について (ア) 本件発明1と甲1発明とを対比すると、前記(1)ア(ア)aの記載(段落【0002】)によれば、「三元触媒」は、種々のエンジンおよび燃料構成に関する困難な排出物質の問題に取り組むために利用されるものであるから、甲1発明における「三元触媒」は、本件発明1における「排気ガスを処理するための触媒物品」に相当し、甲1発明における「フロースルー型ハニカム基材」は、本件発明1における「フロースルーモノリスである基材」に相当し、甲1発明における「三元触媒」を、「触媒材料を含む複合物を、単層を使用して製造した」ことは、本件発明1において、「前記基材上に直接堆積された単一触媒層」「を含」み、「前記単一触媒層以外のいずれの追加の層も含まない」ことに相当し、甲1発明における「パラジウム」及び「ロジウム」は、本件発明1における「第1の白金族金属(PGM)成分」に相当する。 また、前記(1)ア(ア)aの記載(段落【0042】)によれば、甲1発明における「セリア」は酸素吸蔵成分であるから、本件発明1における「酸素吸蔵成分(OSC)材料」に相当し、甲1発明における「γ-アルミナ」は本件発明1における「無機酸化物」に相当する。 更に、甲1発明における「触媒層」の「総負荷量」は、本件発明1における「総ウオッシュコート充填量」に相当する。 (イ) 前記(ア)によれば、本件発明1と甲1発明とは、 「排気ガスを処理するための触媒物品であって、 フロースルーモノリスである基材と、 前記基材上に直接堆積された単一触媒層と、を含み、 前記単一触媒層が、第1の白金族金属(PGM)成分と、酸素吸蔵成分(OSC)材料と、無機酸化物と、を含み、 前記単一触媒層が、総ウォッシュコート充填量を有し、 前記単一触媒層以外のいずれの追加の層も含まない、触媒物品。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点1:「触媒物品」の「OSC材料」が、本件発明1は、「セリア-ジルコニア混合酸化物であり、前記セリア-ジルコニア混合酸化物において、ジルコニアとセリアとのモル比が、75:25より高」いのに対して、甲1発明は、「セリア」である点。 ・相違点2:「触媒物品」の「総ウォッシュコート充填量」が、本件発明1は「1.2g/in3以下」であるのに対して、甲1発明は「1.44g/in3」である点。 (ウ) 始めに、前記(イ)の相違点1が実質的な相違点であるか否かから検討すると、「セリア-ジルコニア混合酸化物」と「セリア」は異なる材料であるから、本件発明1と甲1発明とは「OSC材料」が異なっているので、前記相違点1は実質的な相違点である。 したがって、前記(イ)の相違点2について検討するまでもなく、本件発明1が甲1発明であるとはいえない。 次に、前記相違点1の容易想到性について検討すると、前記(1)ア(ア)bの記載(段落【0114】、【0115】)によれば、甲1発明である実施例18は、標準触媒(実施例1)に対するNOx、THC、COについての触媒活性の改善率が0(%)であるという基準となる「参照」実施例にすぎない。 そして、触媒活性の改善率が0(%)となるように構成された甲1発明について、触媒活性の改善率0%を変えてしまっては、もはや基準となる「参照」とはなり得ないことから、甲1発明において、「OSC材料」を、「セリア」に代えて「セリア-ジルコニア混合酸化物であり、前記セリア-ジルコニア混合酸化物において、ジルコニアとセリアとのモル比が、75:25より高」いものとすることは、もとより想定されないので、甲1発明を、前記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得ることではない。 したがって、前記相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 更に、本件発明1の発明特定事項を全て有する本件発明2~7、11~18、20~23、25及び26について検討しても事情は同じである。 (エ) よって、本件発明1~7、11~18、20~23、25及び26は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえないし、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、前記第4の1(1)の特許異議申立理由及び前記第5の1(1)アの取消理由はいずれも理由がない。 イ 甲第2号証を主引用例とした場合について (ア) 本件発明1と甲2発明とを対比すると、前記(1)イ(ア)aの記載(段落[0064])によれば、甲2発明における「一体構造型触媒」は、排ガス浄化装置に用いられるものであるから、本件発明1における「排気ガスを処理するための触媒物品」に相当し、甲2発明における「フロースルー型担体」は、本件発明1における「フロースルーモノリスである基材」に相当し、甲2発明において、「調製したスラリーを、ウォッシュコート法により下記一体構造型担体に被覆し」、「このとき被覆を単層コート」とすることは、本件発明1において、「前記基材上に直接堆積された単一触媒層」「を含」み、「前記単一触媒層以外のいずれの追加の層も含まない」ことに相当し、甲2発明における「Pt」及び「Rh」は、本件発明1における「第1の白金族金属(PGM)成分」に相当する。 また、前記(1)イ(ア)aの記載(段落[0003]、[0064])によれば、甲2発明における「セリウム-ジルコニウム系複合酸化物(A)」はOSC、すなわち酸素吸蔵放出材であるから、本件発明1における「酸素吸蔵成分(OSC)材料」に相当し、甲2発明における「La-γアルミナ」は、本件発明1における「無機酸化物」に相当する。 更に、甲2発明における「セリウム-ジルコニウム系複合酸化物(A)」は、本件発明1において「前記OSC材料が、セリア-ジルコニア混合酸化物であ」ることを満たし、甲2発明における「単位体積あたりの触媒成分の被覆量」は、本件発明1における「総ウオッシュコート充填量」に相当する。 (イ) 前記(ア)によれば、本件発明1と甲2発明とは、 「排気ガスを処理するための触媒物品であって、 フロースルーモノリスである基材と、 前記基材上に直接堆積された単一触媒層と、を含み、 前記単一触媒層が、第1の白金族金属(PGM)成分と、酸素吸蔵成分(OSC)材料と、無機酸化物と、を含み、 前記OSC材料が、セリア-ジルコニア混合酸化物であり、 前記単一触媒層が、総ウォッシュコート充填量を有し、 前記単一触媒層以外のいずれの追加の層も含まない、触媒物品。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点3:「触媒物品」の「セリア-ジルコニア混合酸化物」が、本件発明1は、「ジルコニアとセリアとのモル比が、75:25より高」いのに対して、甲2発明は、「Ce-Zr(A)を、Zrの原料として高純度酸化ジルコニウム(純度99.9%)を、Ceの原料として高純度酸化セリウム(純度99.9%)を用いて製造した」ものであり、「粉末10kgを調製するために高純度酸化ジルコニウム(4.2kg)と高純度酸化セリウム(5.8kg)を分取・混合し」て製造したものである点。 ・相違点4:「触媒物品」の「総ウォッシュコート充填量」が、本件発明1は、「1.2g/in3以下」であるのに対して、甲2発明は、「Pt:1.2g/L、Rh:0.4g/L、La-γアルミナ:39g/L、Ce-Zr(A):77g/L」である点。 (ウ) 始めに、前記(イ)の相違点3が実質的な相違点であるか否かから検討すると、甲2発明は、「Ce-Zr(A)」を、いずれも「純度99.9%」の「高純度酸化ジルコニウム(4.2kg)」と「高純度酸化セリウム(5.8kg)」を用いて製造したものであって、このとき、それぞれのモル数は、「高純度酸化ジルコニウム(4.2kg)」(ZrO2)が、概略4.2×0.999÷(91.22+16.00×2)=0.034mol、「高純度酸化セリウム(5.8kg)」(CeO2)が、概略5.8×0.999÷(140.12+16.00×2)=0.034molであることがわかるから、前記「高純度酸化ジルコニウム」と「高純度酸化セリウム」のモル比は概略1:1であることがわかる。 そうすると、甲2発明は、「ジルコニアとセリアとのモル比が、75:25より高」いものとはいえないから、前記相違点3は実質的な相違点であるので、前記(イ)の相違点4について検討するまでもなく、本件発明1が甲2発明であるとはいえない。 次に、前記相違点3の容易想到性について検討すると、前記(1)イ(ア)a([0012]、[0013])の記載によれば、甲2発明は、自動車の内燃機関から排出される排気ガスを触媒に接触させ、炭化水素濃度が変動する場合でも窒素酸化物に対して優れた浄化能力を発揮する自動車用排気ガス浄化装置に用いられる触媒系、それを用いた排気ガス浄化装置、及び排気ガス浄化方法を提供することを目的として、結晶構造中にパイロクロア相を含み比表面積が小さいセリア-ジルコニア系複合酸化物の微粉末を含有させた触媒がNOxを効率的に分解するという優れた特性を有することを見出し、これを排気ガス流路の前段である上流側と後段である下流側に配置された排気ガス浄化装置の下流側触媒として用いると、排気ガス中のCO、HCをNOxと同時に浄化できることを確認して、発明を完成するに至ったものであり、「Ce-Zr(A)」を、「高純度酸化ジルコニウム」と「高純度酸化セリウム」のモル比を概略1:1として製造することで、「結晶構造中にパイロクロア相を単一に含む」(パイロクロア相は、一般にCe2Zr2O7で表され、CeとZrのモル比が1:1である。)ものとしたものである。 そして、「高純度酸化ジルコニウム」と「高純度酸化セリウム」のモル比を、概略1:1から「75:25より高」くしたときにも、結晶構造中にパイロクロア相が単一に含まれるものとなるか否かは明らかでないから、甲2発明において、あえて、「高純度酸化ジルコニウム」と「高純度酸化セリウム」のモル比を「75:25より高」くすることはしないので、甲2発明において、「ジルコニアとセリアとのモル比が75:25より高」いものとすることは、当業者が容易になし得ることではない。 したがって、甲2発明において、前記相違点3に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得ることではないから、前記相違点4について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 更に、本件発明1の発明特定事項を全て有する本件発明2~7、11~18、20~23、25及び26について検討しても事情は同じである。 (エ) よって、本件発明1~7、11~18、20~23、25及び26は、甲第2号証に記載された発明であるとはいえないし、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、前記第4の1(2)の特許異議申立理由及び前記第5の1(1)イの取消理由はいずれも理由がない。 ウ 甲第3号証を主引用例とした場合について (ア) 本件発明1と甲3発明とを対比すると、甲3発明における「排気ガス浄化用触媒」は、本件発明1における「排気ガスを処理するための触媒物品」に相当し、甲3発明における「担体」は、「セル壁厚さ3.5mil(8.89×10-2mm)、1平方インチ(645.16mm2)当たりのセル数600のコージェライト製ハニカム担体(容量1L)」であって、特段、セルを封止等するものではないから、本件発明1における「フロースルーモノリスである基材」に相当し、甲3発明において、「上記6種類のA粒子成分のゾル各々と上記B粒子成分(ZrLa/Al2O3)と硝酸ジルコニルバインダとをイオン交換水と共に混合してスラリー化し、これを担体にコーティングし、乾燥及び焼成を行なうことにより、6種類の排気ガス浄化用触媒(Aゾル/(ZrLa/Al2O3))を得た」ことは、本件発明1において、「触媒物品」が、「前記基材上に直接堆積された単一触媒層」「を含」み、「前記単一触媒層以外のいずれの追加の層も含まない」ことに相当し、甲3発明における「Rh」は、本件発明1における「第1の白金族金属(PGM)成分」に相当する。 また、前記(1)ウ(ア)bの記載(段落【0002】、【0003】)によれば、甲3発明における「RhドープCeZr系複合酸化物」に含まれる「CeZr系複合酸化物」は、酸素吸蔵放出材といえるから、本件発明1における「酸素吸蔵成分(OSC)材料」に相当し、甲3発明における「Zr系酸化物担持アルミナ粉末(ZrLa/Al2O3)」は、本件発明1における「無機酸化物」に相当する。 更に、甲3発明において、「RhドープCeZr系複合酸化物のCeO2/(CeO2+ZrO2)質量比が異なる6種類(当該質量比が25%、30%、40%、50%、60%及び75%の6種類)を調製した」もののうち、「RhドープCeZr系複合酸化物のCeO2/(CeO2+ZrO2)質量比」「が25%」のものは、「ZrO2」と「CeO2」の質量比が75:25である。 そして、これをモル比で表すと、概略、75÷(91.22+16.00×2):25÷(140.12+16.00×2)=75÷123.22:25÷172.12=0.61:0.15であることがわかるから、本件発明1において「前記セリア-ジルコニア混合酸化物において、ジルコニアとセリアとのモル比が、75:25より高」いことを満たす。 (イ) 前記(ア)によれば、本件発明1と甲3発明とは、 「排気ガスを処理するための触媒物品であって、 フロースルーモノリスである基材と、 前記基材上に直接堆積された単一触媒層と、を含み、 前記単一触媒層が、第1の白金族金属(PGM)成分と、酸素吸蔵成分(OSC)材料と、無機酸化物と、を含み、 前記OSC材料が、セリア-ジルコニア混合酸化物であり、 前記セリア-ジルコニア混合酸化物において、ジルコニアとセリアとのモル比が、75:25より高く、 前記単一触媒層が、総ウォッシュコート充填量を有し、 前記単一触媒層以外のいずれの追加の層も含まない、触媒物品。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点5:「触媒物品」の「総ウォッシュコート充填量」が、本件発明1は、「1.2g/in3以下」であるのに対して、甲3発明は、「各成分の担体1L当たりの担持量」が、「A粒子成分が6.7g/L、B粒子成分が70g/Lであり、バインダが8g/Lである」点。 (ウ) 以下、前記(イ)の相違点5が実質的な相違点であるか否かについて検討すると、甲3発明における「各成分の担体1L当たりの担持量」の合計は、6.7g/L+70g/L+8g/L=84.7g/Lであり、これをg/in3で表すと、概略、84.7÷61.02=1.39g/in3となるから、「総ウォッシュコート充填量」が「1.2g/in3以下」であることを満たさないので、前記相違点5は実質的な相違点である。 したがって、本願発明1が甲3発明であるとはいえない。 次に、前記相違点5の容易想到性について検討すると、前記(1)ウ(ア)cの記載(段落【0033】、【0051】~【0055】)によれば、甲3発明は、A粒子成分がRhドープCeZr系複合酸化物粉末であり、B粒子成分がZr系酸化物担持アルミナ粉末とされたケースにおいて、CeO2/(CeO2+ZrO2)質量比の違いがライトオフ温度のような触媒性能に及ぼす影響を、「総ウォッシュコート充填量」が概略1.39g/in3であることを前提とした条件下で試験して調べたものといえる。 そして、前記試験の前提条件である「総ウォッシュコート充填量」をあえて変更して、「1.2g/in3以下」とすることは、前記試験の前提条件を破却することとなるから、そもそも想定されないので、甲3発明を、前記相違点5に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得ることではない。 したがって、本件発明1は、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 更に、本件発明1の発明特定事項を全て有する本件発明2~7、11~18、20~23、25及び26について検討しても事情は同じである。 (エ) よって、本件発明1~7、11~18、20~23、25及び26は、甲第3号証に記載された発明であるとはいえないし、甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、前記第4の1(3)の特許異議申立理由及び前記第5の1(1)ウの取消理由はいずれも理由がない。 エ 甲第4号証を主引用例とした場合について (ア) 本件発明1と甲4発明とを対比すると、甲4発明における「排ガス浄化用構造体」は、本件発明1における「排気ガスを処理するための触媒物品」に相当し、甲4発明における「ハニカム状メタル担体」は、「触媒層」が「コート」されるものであるから、本件発明1における「基材」に相当し、甲4発明において「ハニカム状メタル担体」に「コート」されて形成された「触媒層」は、本件発明1における「前記基材上に直接堆積された単一触媒層」に相当し、甲4発明における「パラジウム」は、本件発明1における「第1の白金族金属(PGM)成分」に相当し、甲4発明における「アルミナ粉末」は、本件発明1における「無機酸化物」に相当する。 また、甲4発明における「触媒層のコート量」は、本件発明1における「総ウオッシュコート充填量」に相当し、甲4発明において「触媒層のコート量を50g/Lと」することは、1リットルを61.02in3として「50g/L」を「g/in3」で表すと、50÷61.02=0.82g/in3となるから、本件発明1において「前記単一触媒層が、1.2g/in3以下の総ウォッシュコート充填量を有」することを満たす。 更に、甲4発明における「触媒層」は、「得られた前記触媒粉末とアルミナ粉末を各20gずつ分散させたスラリー」を「コート」した層以外の層を含まないから、甲4発明は、「前記単一触媒層以外のいずれの追加の層も含まない」といえる点で、本件発明1と合致するといえる。 (イ) 前記(ア)によれば、本件発明1と甲4発明とは、 「排気ガスを処理するための触媒物品であって、 基材と、 前記基材上に直接堆積された単一触媒層と、を含み、 前記単一触媒層が、第1の白金族金属(PGM)成分と、無機酸化物と、を含み、 前記単一触媒層が、1.2g/in3以下の総ウォッシュコート充填量を有し、 前記単一触媒層以外のいずれの追加の層も含まない、触媒物品。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点6:「触媒物品」の「基材」が、本件発明1は、「フロースルーモノリス」であるのに対して、甲4発明は、「フロースルーモノリス」であるか否かが明らかでなく、「ハニカム状メタル担体」である点。 ・相違点7:「触媒物品」の「単一触媒層」が、本件発明1は、「酸素吸蔵成分(OSC)材料」「を含み、前記OSC材料が、セリア-ジルコニア混合酸化物であり、前記セリア-ジルコニア混合酸化物において、ジルコニアとセリアとのモル比が、75:25より高」いのに対して、甲4発明は、「炭酸ストロンチウム及び酸化鉄を、SrFe2Ozの組成となるように秤量及び混合」して製造された、「緻密質の中心核の表面に、多孔質の表層が形成された酸化物担体」(以下、「酸化物担体」という。)を含む点。 (ウ) 事案に鑑み、始めに、前記(イ)の相違点7が実質的な相違点であるか否かについて検討すると、前記(1)エ(ア)の記載(段落【0023】、【0024】、【0027】)によれば、甲4発明における「酸化物担体」は、以下の組成式(1)で示される中心核を構成するアルカリ土類金属を含むペロブスカイト含有複合酸化物であり、 組成式(1): M{Co1-x(Fe1-sTis)x}yOz 組成式(1)において、MはCa、SrおよびBaからなる群から選択される1種以上のアルカリ土類金属である。x、y、sはそれぞれ、0≦x≦1、0.6≦y≦2、0≦s≦0.3である。zは、電荷中性条件を満たすように決まる値である。 当該ペロブスカイト含有複合酸化物は、組成式(1)において、yが大きいほど、酸化物の高温での酸素吸放出能に優れ、小さいほど低温での酸素吸放出能に優れるものである。 このことからみれば、前記ペロブスカイト含有複合酸化物からなる「酸化物担体」は、酸素吸放出能を有するものといえるから、本件発明1における「酸素吸蔵成分(OSC)材料」に相当するといえる。 ところが、前記組成式(1)で示される中心核を構成するアルカリ土類金属を含むペロブスカイト含有複合酸化物は、「セリア-ジルコニア混合酸化物」であるとはいえないから、前記相違点7は実質的な相違点であるので、前記(イ)の相違点6について検討するまでもなく、本件発明1が甲4発明であるとはいえない。 次に、前記相違点7の容易想到性について検討すると、前記(1)エ(ア)a(段落【0013】)によれば、甲4発明は、低コストで比表面積の大きい酸化物担体を提供すること、並びに、酸化物イオン電導率の高い、アルカリ土類金属を含むペロブスカイト含有複合酸化物を主成分として含む、実用性のある触媒用の酸化物担体を提供することを目的とするものであり、これにより、排ガス中の一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)及び未燃炭化水素(HC)を低温から浄化する触媒及び構造体を提供するものである。 すると、甲4発明は、「酸素吸蔵成分(OSC)材料」を、前記組成式(1)で示される中心核を構成するアルカリ土類金属を含むペロブスカイト含有複合酸化物とすることを前提としたものといえる。 そして、そのような甲4発明において、「酸素吸蔵成分(OSC)材料」を、前記ペロブスカイト含有複合酸化物に代えて「セリア-ジルコニア混合酸化物」とすることは、前記前提を破却することとなるから、そもそも想定されないので、そうすることは当業者が容易になし得ることではない。 したがって、甲4発明を、前記相違点7に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得ることではないから、前記相違点6について検討するまでもなく、本件発明1は、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 更に、本件発明1の発明特定事項を全て有する本件発明2~7、11~18、20~23、25及び26について検討しても事情は同じである。 (エ) よって、本件発明1~7、11~18、20~23、25及び26は、甲第4号証に記載された発明であるとはいえないし、甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、前記第5の2(1)及び同3(1)アの取消理由はいずれも理由がない。 オ 甲第5号証を主引用例とした場合について (ア) 本件発明1と甲5発明とを対比すると、甲5発明における「排ガス浄化用触媒」は、本件発明1における「排気ガスを処理するための触媒物品」に相当し、甲5発明における「基材」は、「六角セルコージェライトモノリスハニカム基材」であるから、本件発明1における「モノリスである基材」に相当し、甲5発明において「基材」に形成された「触媒コート層」は、本件発明1における「前記基材上に直接堆積された単一触媒層」に相当する。 また、甲5発明における「白金(Pt)」は、本件発明1における「第1の白金族金属(PGM)成分」に相当し、甲5発明における「CeO2-ZrO2固溶体」は、技術常識からみて本件発明1における「酸素吸蔵成分(OSC)材料」である「セリア-ジルコニア混合酸化物」に相当し、甲5発明における「Al2O3粉末」は、本件発明1における「無機酸化物」に相当する。 そして、甲5発明における「触媒コート層」の「被覆量」は、本件発明1における「総ウオッシュコート充填量」に相当し、甲5発明において「触媒スラリー層」の「被覆量」を「基材1Lあたり50g(50g/L)」とすることは、前記(1)ア(ア)と同様にして「g/L」を「g/in3」で表すと、0.82g/in3となるから、本件発明1において「前記単一触媒層が、1.2g/in3以下の総ウオッシュコート充填量を有」することを満たす。 更に、甲5発明における「触媒コート層」は、「触媒スラリー」を「ウオッシュコート(塗布)」した層以外の層を含まないから、甲5発明は、「前記単一触媒層以外のいずれの追加の層も含まない」といえる点で、本件発明1と合致するといえる。 (イ) 前記(ア)によれば、本件発明1と甲5発明とは、 「排気ガスを処理するための触媒物品であって、 モノリスである基材と、 前記基材上に直接堆積された単一触媒層と、を含み、 前記単一触媒層が、第1の白金族金属(PGM)成分と、酸素吸蔵成分(OSC)材料と、無機酸化物と、を含み、 前記OSC材料が、セリア-ジルコニア混合酸化物であり、 前記単一触媒層が、1.2g/in3以下の総ウォッシュコート充填量を有し、 前記単一触媒層以外のいずれの追加の層も含まない、触媒物品。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点8:「触媒物品」の「基材」が、本件発明1は「フロースルーモノリスである基材」であるのに対して、甲5発明は「六角セルコージェライトモノリスハニカム基材」である点。 ・相違点9:「セリア-ジルコニア混合酸化物」が、本件発明1は「ジルコニアとセリアとのモル比が、75:25より高」いのに対して、甲5発明は、「CeO2-ZrO2固溶体の粉末(第一稀元素化学工業社製:CeO2含有量20質量%、ZrO2含有量25質量%、比表面積100m2/g、平均粒子径10nm)」から得られたものである点。 (ウ) 事案に鑑み、前記(イ)の相違点9が実質的な相違点であるか否かについて検討すると、甲5発明における「CeO2-ZrO2固溶体の粉末」は、「CeO2含有量」が「20質量%」、「ZrO2含有量」が「25質量%」のものであり、このときの「ジルコニアとセリアとのモル比」は、概略(25÷(91.22+16.00×2)):(20÷(140.12+16.00×2))=0.20:0.12であることがわかるから、「75:25より高」いものとないえない。 してみれば、前記相違点9は実質的な相違点であるから、前記(イ)の相違点8について検討するまでもなく、本件発明1が甲5発明であるとはいえない。 次に、前記相違点9の容易想到性について検討すると、前記(1)オ(ア)a(段落【0009】)によれば、甲5発明は、所定の形状を有する有機繊維を造孔材として用いることで、ガス連通性に優れた高アスペクト比細孔を有する、ガス拡散性に優れた触媒コートを形成できることを見出したものであって、前記(1)オ(ア)b、cの記載によれば、「CeO2-ZrO2固溶体の粉末(第一稀元素化学工業社製:CeO2含有量20質量%、ZrO2含有量25質量%、比表面積100m2/g、平均粒子径10nm)」を含む「排ガス浄化用触媒」を用いることを前提とした条件下で、繊維状有機物の材料や形状、混合量等を様々に変更してNOx浄化率測定試験を行い、その性能を評価したものである。 そして、前記試験の前提条件である「ジルコニアとセリアとのモル比」をあえて変更して、「75:25より高」いものとすることは、前記試験の前提条件を破却することとなるから、そもそも想定されないので、甲5発明を、前記相違点9に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得ることではない。 したがって、甲5発明を、前記相違点9に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得ることではないから、前記相違点8について検討するまでもなく、本件発明1は、甲5発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 更に、本件発明1の発明特定事項を全て有する本件発明2~7、11~18、20~23、25及び26について検討しても事情は同じである。 (エ) よって、本件発明1~7、11~18、20~23、25及び26は、甲第5号証に記載された発明であるとはいえないし、甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、前記第5の3(1)イの取消理由は理由がない。 カ 申立人の主張について (ア) 申立人の主張の概要及び証拠方法 a 申立人の主張の概要 令和6年12月24日に提出された意見書における申立人の主張は、概略、以下のとおりである。 自動車の排ガス浄化用触媒の分野において、ジルコニアとセリアとのモル比が75:25より高いセリア-ジルコニア混合酸化物は、甲第8号証~甲第10号証に記載されており、本願の優先日当時に周知のものであるから、甲5発明において、ジルコニアとセリアのモル比を75:25より高いモル比に変更することは、当業者が容易になし得ることであるので、本件発明1~7、11~18、20~23、25及び26は、甲第5号証に記載された発明及び本件特許の優先日当時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 b 証拠方法 甲第8号証:特開2009-249275号公報 甲第9号証:特開2006-36576号公報 甲第10号証:特開2010-115591号公報 ただし、甲第8~10号証は令和6年12月24日に申立人が提出した意見書に添付して提出されたものである。 (イ) 申立人の主張についての判断 甲5発明において「ジルコニアとセリアとのモル比」をあえて変更して、「75:25より高」いものとすることはそもそも想定されないから、甲5発明を、前記相違点9に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得ることではないことは、前記オ(ウ)に記載したとおりである。 そして、このことは、自動車の排ガス浄化用触媒の分野において、ジルコニアとセリアとのモル比が75:25より高いセリア-ジルコニア混合酸化物が、本願の優先日当時に周知のものであるとしても変わりはないから、申立人の前記(ア)aの主張は採用できない。 (3) 小括 したがって、本件発明1~7、11~18、20~23、25及び26は、甲第1~5号証に記載された発明であるとはいえないし、甲第1~5号証に記載された発明に基づいて、又は、甲第1~5号証に記載された発明及び本件特許の優先日当時の周知技術及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、前記第4の1の特許異議申立理由及び前記第5の1(1)、同2(1)、同3(1)の取消理由はいずれも理由がない。 2 特許法第36条第4項第1号所定の規定違反(委任省令要件違反)について (1) 委任省令要件の判断手法 特許法第36条第4項第1号で委任する経済産業省令(特許法施行規則第24条の2)では、発明がどのような技術的貢献をもたらすものであるかが理解でき、また審査及び調査に役立つように、発明が解決しようとする課題、その解決手段などの、「当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項」を、発明の詳細な説明に記載することが規定されている。 (2) 本件特許明細書の記載事項 本件特許明細書には、以下のア~ウの記載がある。 ア 「【0001】 本発明は、ガソリンエンジンからの排気ガス排出物を処理するのに有用な触媒物品に関する。 【背景技術】 【0002】 内燃機関では、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、及び窒素酸化物(「NOx」)などの様々な汚染物質を含有する排気ガスが生成される。排気ガス触媒を含む排出制御システムは、大気に排出されるこれらの汚染物質の量を低減するために広く利用されている。ガソリンエンジン用途に一般的に使用される触媒は、三元触媒(TWC)である。・・・ 【0003】 ほとんどの触媒コンバータでは、TWCは、フロースルーハニカムモノリスなどの高温に耐えることができる高表面積基材上にコーティングされる。これらの基材の大きな表面積は、所望の不均一反応を促進するが、排気背圧、すなわち、エンジンから尾筒への排気ガスの流れの制限の一因となることもある。排気システム内の高い背圧により、エンジンの燃費及び出力が低下することがある。TWC技術、例えば米国特許第6,022,825号、同第9,352,279号、同第9,040,003号、及び米国特許出願公開第2016/0228818号に記載の技術の進展にもかかわらず、高変換率及び低背圧を同時にもたらす、確かなエンジンプラットフォームのための改善された触媒コンバータがなお必要とされている。本発明は、とりわけこれらの必要性を解決するものである。」 イ 「【発明の概要】 【0004】 本開示の一態様は、基材と、基材上に直接堆積された単一触媒層と、を含む、排気ガスを処理するための触媒物品であって、単一触媒層が、第1の白金族金属(PGM)成分と、酸素吸蔵成分(OSC)材料と、無機酸化物と、を含み、単一触媒層が、2.4g/in3未満の総ウォッシュコート充填量(washcoat loading)を有する、触媒物品に関する。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 本発明は、例えばガソリンエンジン及び他のエンジンによって生成された燃焼排気ガスの触媒処理、並びに関連する触媒物品及びシステムに関する。より具体的には、本発明は、低ウォッシュコート充填量の単層触媒に関する。触媒により、車両排気システムにおいてNOx、CO、及びHCを同時に処理することができる。驚くべきことに、本発明者らは、低ウォッシュコート充填量にもかかわらず、本発明の単層触媒が、高レベルのTWC性能を維持しながら高い熱耐久性を示すことを、見出した。加えて、本発明の触媒によりまた、背圧の低下が示され、これによって、燃費及び出力が改善される。既存のより高いウォッシュコート充填量及び/又は多層触媒配合物と比較して、本発明のプロセスによるとまた、複雑性も低減される。」 ウ 「【実施例】 【0064】 触媒1(比較) 触媒1は、二重層構造を有する市販の三元(Pd-Rh)触媒である。下層は、第1のCeZr混合酸化物、La安定化アルミナ、Baプロモーター、及びベーマイト結合剤のウォッシュコート上に担持された、Pdからなる。下層のウォッシュコート充填量は、約1.6g/in3であり、Pd充填量は1g/ft3であった。上層は、第2のCeZr混合酸化物、La安定化アルミナのウォッシュコート上に担持された、Rhからなる。上層のウォッシュコート充填量(washcoat lading)は、約1.4g/in3であり、Rh充填量は2g/ft3であった。触媒1の総触媒充填量は、約3.0g/in3であった。 【0065】 触媒2 触媒2は、本発明による単層配合物である。RhをCeZr混合酸化物と混合した(Zr/Ceのモル比は4.4:1である)。その後、La安定化アルミナを上記混合物に添加した。十分に混合してから、ベーマイト結合剤を添加して、最終ウォッシュコートを形成した。スラリーをモノリシック基材上にコーティングして、100℃で乾燥させ、500℃で30分間焼成した。ウォッシュコート充填量は、約1.0g/in3(0.6g/in 3のCeZr混合酸化物及び0.4g/in3のアルミナ)であり、Rh充填量はで3g/ft3であった。 【0066】 実験結果 同じ基材の種類の上にコーティングされた触媒1及び触媒2を、コールドフロー背圧について300m3/時の流速で評価した。加えて、比較触媒1及び触媒2について、ガソリンエンジンを使用して、標準的なリーン、リッチ、化学量論的サイクリングのTWC劣化条件下で劣化させた。これらを、ガソリンエンジンでのライトオフ温度及び空気/燃料比性能応答(450℃)について性能試験した。 【実施例1】 【0067】 触媒1及び触媒2について、剥き出し基材上の背圧の上昇百分率を表1に示す。このデータによると、触媒2の低ウォッシュコート充填量単層技術は、標準的な2層の、触媒1の高ウォッシュコート充填量の例よりも、背圧への寄与が著しく低いことを、示している。 【0068】 【表1】 [図:0001423424000006.jpg] 【実施例2】 【0069】 触媒1及び触媒2の、HC、CO、及びNOxのT50ライトオフ温度を表2に示す。このデータによると、驚くべきことに、触媒2の低ウォッシュコート充填量単層技術は、標準的な2層の、触媒1の高ウォッシュコート充填量の例と同等の性能をもたらすことを、示している。 【0070】 【表2】 [図:0001423424000007.jpg] 【実施例3】 【0071】 AFR試験のクロスオーバー点におけるHC、CO、及びNOxの変換性能を表3に示す。データによると、驚くべきことに、触媒2の低ウォッシュコート充填量単層技術は、標準的な2層の、触媒1の高ウォッシュコート充填量の例と同等の性能をもたらすことを、示している。 【0072】 【表3】 [図:0001423424000008.jpg] 」 (3) 委任省令要件についての判断 ア 「フロースルーモノリスである基材」、との発明特定事項について (ア) 前記(2)アの記載によれば、本件発明は、ガソリンエンジンからの排気ガス排出物を処理するのに有用な「触媒物品」に関するものであって、内燃機関では、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、及び窒素酸化物(「NOx」)などの様々な汚染物質を含有する排気ガスが生成されるので、排気ガス触媒を含む排出制御システムが、大気に排出されるこれらの汚染物質の量を低減するために広く利用されており、ガソリンエンジン用途に一般的に使用される触媒は、三元触媒(TWC)であり、ほとんどの触媒コンバータでは、TWCは、フロースルーハニカムモノリスなどの高温に耐えることができる高表面積基材上にコーティングされるものである。 ところが、これらの基材の大きな表面積は、所望の不均一反応を促進するが、排気背圧、すなわち、エンジンから尾筒への排気ガスの流れの制限の一因となることもあるのであり、技術の進展にもかかわらず、高変換率及び低背圧を同時にもたらす、確かなエンジンプラットフォームのための改善された触媒コンバータがなお必要とされているのであり、本件発明は、とりわけこれらの必要性を解決するものである。 そして、前記(2)イの記載によれば、設定登録時の発明は、「基材」と、「基材」上に直接堆積された「単一触媒層」と、を含む、排気ガスを処理するための「触媒物品」であって、「単一触媒層」が、「第1の白金族金属(PGM)成分」と、「酸素吸蔵成分(OSC)材料」と、「無機酸化物」と、を含み、「単一触媒層」が、「2.4g/in3未満」の「総ウォッシュコート充填量」を有する「触媒物品」に関するものであって、設定登録時の発明に係る「触媒物品」により、車両排気システムにおいてNOx、CO、及びHCを同時に処理することができ、更に、低ウォッシュコート充填量にもかかわらず、単層触媒が、高レベルのTWC性能を維持しながら高い熱耐久性を示すことに加えて、背圧の低下が示され、これによって、燃費及び出力が改善されるものである。 (イ) 前記(ア)によれば、本件発明は、ガソリンエンジン用途に一般的に使用される三元触媒(TWC)を、同様に一般的に使用されるフロースルーハニカムモノリスなどの高表面積基材上にコーティングした触媒コンバータを前提として、高変換率及び低背圧を同時にもたらす、確かなエンジンプラットフォームのための改善された触媒コンバータがなお必要とされている、という課題(以下、「本件課題」という。)を解決するものであって、設定登録時の、フロースルーモノリスハニカムなどの「基材」と、前記「基材」上に直接堆積された「単一触媒層」と、を含む、排気ガスを処理するための「触媒物品」であり、「単一触媒層」が、「第1の白金族金属(PGM)成分」と、「酸素吸蔵成分(OSC)材料」と、「無機酸化物」と、を含み、「単一触媒層」が、「2.4g/in3未満」の「総ウォッシュコート充填量」を有する「触媒物品」により、低ウォッシュコート充填量にもかかわらず、単層触媒が、従来の「触媒物品」と同等の高レベルのTWC性能を維持しながら高い熱耐久性を示すことに加えて、背圧の低下が示されることで、本件課題を解決するものである。 更に、前記(2)ウの実施例の記載によれば、そのような「触媒物品」により、従来の「触媒物品」と同等の高レベルのTWC性能を維持しながら高い熱耐久性を示すことに加えて、背圧の低下が示されることが裏付けられているといえる。 (ウ) 前記(イ)によれば、本件特許明細書の記載に接した当業者は、従来から一般的に使用される「フロースルーモノリスである基材」における「単一触媒層」の「総ウォッシュコート充填量」を「2.4g/in3未満」という低ウォッシュコート充填量とすることで、従来の「触媒物品」と同等の高レベルのTWC性能を維持しながら、背圧の低下が示されることを理解できる。そして、本件発明は、「単一触媒層」の「総ウォッシュコート充填量」が「1.2g/in3以下」なのであるから、「2.4g/in3未満」という低ウォッシュコート充填量とすることを満たすものである。 してみれば、本件発明において、「フロースルーモノリスである基材」の開口部を画成する壁の厚さ等の特定がされていないとしても、当業者は、「総ウォッシュコート充填量」が「1.2g/in3以下」であり、「2.4g/in3未満」という低ウォッシュコート充填量とすることを満たす本件発明により、高変換率及び低背圧を同時にもたらす、確かなエンジンプラットフォームのための改善された触媒コンバータとでき、本件課題を解決できることを理解することができるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、発明がどのような技術的貢献をもたらすものであるかが理解でき、また審査及び調査に役立つように、発明が解決しようとする課題、その解決手段などの、「当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項」が記載されているといえる。 そして、このことを前記(1)の判断手法に当てはめてみれば、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、委任省令要件に適合する。 イ 「前記単一触媒層が、第1の白金族金属(PGM)成分と、酸素吸蔵成分(OSC)材料と、無機酸化物と、を含み」、「2.4g/in3未満の総ウォッシュコート充填量を有」する、との設定登録時の発明特定事項について (ア) 本件特許明細書の発明の詳細な説明の実施例において、触媒層の処理能力を評価しているのが一例の触媒に限られているとしても、当業者は、前記ア(イ)に記載したのと同様の理由により、フロースルーモノリスハニカムなどの「基材」と、前記「基材」上に直接堆積された「単一触媒層」と、を含む、排気ガスを処理するための「触媒物品」であり、「単一触媒層」が、「第1の白金族金属(PGM)成分」と、「酸素吸蔵成分(OSC)材料」と、「無機酸化物」と、を含み、「単一触媒層」が、「2.4g/in3未満」の「総ウォッシュコート充填量」を有する「触媒物品」により、従来の「触媒物品」と同様の高変換率を実現できることを理解することができる。 そして、本件発明は、前記「触媒物品」の要件を全て満たすものであって、単に「ウォッシュコート充填量」の上限値を特定しただけのものではないから、本件発明により、従来の「触媒物品」と同様の高変換率を実現できることを理解することができる。 また、同様の理由により、触媒層の処理能力を評価しているのが「総ウォッシュコート充填量」を「約1.0g/in3」とした場合に限られているとしても、「2.4g/in3未満」という上限値が導き出される理由が不明であるとはいえないし、本件発明における「1.2g/in3以下」について検討してもこれらの事情は同じである。 更に、本件特許明細書の記載に接した当業者は、「総ウォッシュコート充填量」が、従来の「触媒物品」と同等の高変換率を実現できなくなるほど少ないものは、本件発明には含まれないと理解できるから、本件発明において「総ウォッシュコート充填量」の下限値が特定されていない理由も理解できる。 (イ) 前記(ア)によれば、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、発明がどのような技術的貢献をもたらすものであるかが理解でき、また審査及び調査に役立つように、発明が解決しようとする課題、その解決手段などの、「当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項」が記載されているといえる。 そして、このことを前記(1)の判断手法に当てはめてみれば、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、委任省令要件に適合する。 (4) 小括 したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号所定の規定を満たすから、前記第4の2の特許異議申立理由はいずれも理由がない。 3 特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)について (1) サポート要件の判断手法 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (2) サポート要件についての判断 ア 前記2(3)ア(イ)に記載したのと同様の理由により、本件特許明細書の記載に接した当業者は、本件発明は、従来から一般的に使用される「フロースルーモノリスである基材」における「単一触媒層」を、「第1の白金族金属(PGM)成分」と、「酸素吸蔵成分(OSC)材料」と、「無機酸化物」と、を含む「単一触媒層」として、当該「単一触媒層」の「総ウォッシュコート充填量」を「2.4g/in3未満」を満たす「1.2g/in3以下」という低ウォッシュコート充填量とすることで、従来の「触媒物品」と同等の高レベルのTWC性能を維持しながら高い熱耐久性を示すことに加えて、背圧の低下が示されて、本件課題を解決できることを理解できる。 イ そして、本件発明1は、「フロースルーモノリスである基材」における「単一触媒層」を、「第1の白金族金属(PGM)成分」と、「酸素吸蔵成分(OSC)材料」と、「無機酸化物」と、を含む「単一触媒層」として、当該「単一触媒層」の「総ウォッシュコート充填量」を「1.2g/in3以下」という低ウォッシュコート充填量とすることを満たすから、当業者は、本件発明1の発明特定事項によって、従来の「触媒物品」と同等の高レベルのTWC性能を維持しながら高い熱耐久性を示すことに加えて、背圧の低下が示されることで、本件課題を解決できることを理解できるのであり、このことを前記(1)の判断手法に当てはめてみれば、本件特許請求の範囲の請求項1の記載はサポート要件に適合する。 更に、本件発明1の発明特定事項を全て備える本件発明2~7、11~18、20~23、25、26について検討しても事情は同じであるから、本件特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。 (3) 小括 したがって、本件特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号所定の規定を満たすから、前記第4の3の特許異議申立理由は理由がない。 4 特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反)について (1) 本件発明14及び15について 本件発明14は、「前記第2のPGM成分は、前記第1のPGM成分とは異なる」との発明特定事項を有するから、「第1のPGM成分」と「第2のPGM成分」とを区別することができるし、本件発明3の発明特定事項と本件発明14及び15の発明特定事項の異同も明確であるので、本件特許請求の範囲の記載は明確性要件に適合する。 (2) 小括 したがって、本件特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号所定の規定を満たすから、前記第4の4(1)の特許異議申立理由及び第5の1(2)アの取消理由は理由がない。 なお、本件特許請求の範囲の請求項24は削除されたので、前記請求項24に係る特許についての特許異議の申立ては却下され、また、前記第5の1(2)イ及び同2(2)の取消理由は理由がない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、本件発明1~7、11~18、20~23、25、26に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。 また、他に本件発明1~7、11~18、20~23、25、26に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、本件訂正により請求項8~10、19、24は削除されたから、請求項8~10、19、24に係る特許異議の申立てについては対象となる請求項が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700501

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