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特許異議申立

2024-701117

排ガス処理触媒とその製造方法およびこれを用いた排ガス処理方法、並びに触媒の設計方法

審判番号
2024-701117
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-200079
登録番号
7486301
請求日
2024年11月18日
審決日
2025年07月01日
公報発行日
2025年10月31日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社日本触媒
  • 【権利者代理人】IBC一番町弁理士法人
  • 【異議申立人】清水 俊輔
審判長/審判官
  • 審判長 深草 祐一
  • 審判官 三崎 仁
  • 審判官 田口 裕健
分類
P1651.113-YAA(B01J) / P1651.121-YAA(B01J) / P1651.537-YAA(B01J)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7486301号発明「排ガス処理触媒とその製造方法およびこれを用いた排ガス処理方法、並びに触媒の設計方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7486301号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔3-5〕について訂正することを認める。 特許第7486301号の請求項1~3及び5に係る特許を維持する。 特許第7486301号の請求項4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7486301号の請求項1~5に係る特許についての出願は、令和元年11月1日(優先権主張 平成31年3月29日)の出願であって、令和6年5月9日に特許権の設定登録がされ、同年同月17日に特許掲載公報が発行された。そして、本件特許の請求項1~5に係る特許に対して、同年11月18日に特許異議申立人清水俊輔(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。 その後の経緯は、概略以下のとおりである。 令和7年 1月29日付け:取消理由通知書 同年 4月 1日 :特許権者による訂正請求書及び意見書の提出 同年 同月16日付け:通知書 なお、上記通知書で、申立人に、取消理由通知の写し、訂正請求書及びこれに添付された訂正した特許請求の範囲の副本、取消理由通知に対応する特許権者の意見書の副本を送付して、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、申立人からは応答がなかった。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 本件訂正請求書による請求の趣旨は、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔3~5〕について訂正することを求めるものであり、その内容(訂正事項)は、以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示している。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項3に「少なくともバナジウム化合物を担持させて、焼成することで排ガス処理触媒を製造する方法であって、バナジウムの担持量が五酸化バナジウム換算で0.6質量%以上であり、二酸化ケイ素換算でケイ素の含有量が9質量%以下であり、三酸化モリブデン換算で3.0~10.0質量%のモリブデンおよび/または三酸化タングステン換算で0.5~5.0質量%のタングステンを含むことを特徴とする排ガス処理触媒の製造方法」と記載されているのを、 「少なくともバナジウム化合物を担持させて、焼成し、 前記バナジウム化合物を担持させる際に、少なくともバナジウム化合物とシュウ酸と塩基性化合物とが含まれる水性液を用いることで排ガス処理触媒を製造する方法であって、バナジウムの担持量が五酸化バナジウム換算で0.6質量%以上であり、二酸化ケイ素換算でケイ素の含有量が9質量%以下であり、三酸化モリブデン換算で3.0~10.0質量%のモリブデンおよび/または三酸化タングステン換算で0.5~5.0質量%のタングステンを含み、200℃、窒素雰囲気下で測定したバナジウムK端のX線吸収端構造(XANES)スペクトルを規格化することで求められるプレエッジピークの強度が0.45以下であることを特徴とする排ガス処理触媒の製造方法」に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項5も同様に訂正する。)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項4を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項5に「請求項1または2に記載の触媒または請求項3または4に記載の方法で得られた触媒」と記載されているのを、「請求項1または2に記載の触媒または請求項3に記載の方法で得られた触媒」に訂正する。 2 訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、バナジウム化合物を担持させる際に「少なくともバナジウム化合物とシュウ酸と塩基性化合物とが含まれる水性液を用いる」ことを限定し、かつ、製造される排ガス処理触媒を「200℃、窒素雰囲気下で測定したバナジウムK端のX線吸収端構造(XANES)スペクトルを規格化することで求められるプレエッジピークの強度が0.45以下である」ものに限定する訂正であるから、両者とも特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、そして、両者とも実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 さらに、前者については、願書に添付した特許請求の範囲の請求項4等に記載されており、また、後者については、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1等に記載されていることから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものである。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、そして、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、訂正事項2によって請求項が削除されたことにともない、引用する請求項から削除された請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、そして、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。 3 一群の請求項について 訂正前の請求項2及び5は請求項1を直接的又は間接的に引用するものであり、訂正前の請求項4及び5は請求項3を直接的又は間接的に引用するものであり、共通する請求項5を有するものであるところ、本件訂正は、後者の一群の請求項〔3~5〕に対するものであることにおいて、特許法第120条の5第4項に適合するものである。 4 訂正についてのまとめ 上記のとおり、訂正事項1~3に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 よって、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔3~5〕について訂正することを認める。 第3 本件発明及び本件明細書等 1 本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1~3及び5に係る発明(以下順に「本件発明○」といい、まとめて「本件発明」ともいう。なお、請求項4は訂正により削除されている。)は、訂正特許請求の範囲の各請求項に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 チタンとケイ素を含み、さらにタングステンまたはモリブデンのなかから選ばれる少なくとも1つの元素を含む担体上に、バナジウムを担持してなる排ガス処理用触媒であって、五酸化バナジウム換算でバナジウムの含有量が0.6質量%以上であり、二酸化ケイ素換算でケイ素の含有量が9質量%以下であり、三酸化モリブデン換算でモリブデン含有量が3.0~10.0質量%および/または三酸化タングステン換算でタングステン含有量が0.5~5.0質量%であり、かつ200℃、窒素雰囲気下で測定したバナジウムK端のX線吸収端構造(XANES)スペクトルを規格化することで求められるプレエッジピークの強度が0.45以下であることを特徴とする排ガス処理触媒。 【請求項2】 比表面積が50~200m2/gの範囲にあり、かつ全細孔容積が0.20~0.70mL/gの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の排ガス処理触媒。 【請求項3】 チタンおよびケイ素を含む複合酸化物に、タングステンまたはモリブデンのなかから選ばれる少なくとも1つの元素を含む化合物を添加し、乾燥、焼成して得られた担体に、少なくともバナジウム化合物を担持させて、焼成し、 前記バナジウム化合物を担持させる際に、少なくともバナジウム化合物とシュウ酸と塩基性化合物とが含まれる水性液を用いることで排ガス処理触媒を製造する方法であって、バナジウムの担持量が五酸化バナジウム換算で0.6質量%以上であり、二酸化ケイ素換算でケイ素の含有量が9質量%以下であり、三酸化モリブデン換算で3.0~10.0質量%のモリブデンおよび/または三酸化タングステン換算で0.5~5.0質量%のタングステンを含み、200℃、窒素雰囲気下で測定したバナジウムK端のX線吸収端構造(XANES)スペクトルを規格化することで求められるプレエッジピークの強度が0.45以下であることを特徴とする排ガス処理触媒の製造方法。」 「【請求項5】 請求項1または2に記載の触媒または請求項3に記載の方法で得られた触媒を用いた排ガスの処理方法。」 2 本件明細書 明細書には訂正がなかったことから、本件特許明細書を以下「本件明細書」といい、その内容を抜粋すると、以下のとおりである。なお、下線は当審で付与した。 (本ア)「【発明が解決しようとする課題】 【0007】 近年の排ガス処理の高効率化の要求に対応して、処理性能が一段と優れた触媒開発が望まれている。本発明は、このような事情のもとになされたものであり、従来の触媒に比べて効率的に窒素酸化物を処理できる触媒、その製造方法、およびその触媒を用いた排ガス処理方法、さらに排ガス処理触媒の設計方法を提供することを目的とするものである。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、バナジウムK端のX線吸収端構造(XANES)スペクトルを規格化することで求められるプレエッジピークの強度が0.45以下である触媒は、排ガス中の窒素酸化物を効率的に処理できることを見出し、本件発明を完成した。」 (本イ)「【0056】 本発明の排ガス処理触媒のバナジウムK端のXANESスペクトルを規格化することで求められるプレエッジピークは、バナジウムの周りに配位している原子の対称性を反映するもので、その値が低いほど、対称性が上がり、より4価に近い構造のバナジウム原子が多くなる。その結果、バナジウム原子の電子遷移に制約がかかり、排ガス処理性能、特にNOx除去性能に関わる酸化還元サイクルが向上すると考えられる。 【0057】 <プレエッジピークの強度に関わる要因> 酸化バナジウムの粒子径が小さくなると、表面積/体積比が大きくなる。粒子の中心付近のバナジウム原子に対して、粒子の表面近傍に存在するバナジウム原子は、その中心方向と表面方向とで配列が変わるため対称性の低いバナジウム原子になりやすい。その結果、プレエッジピークの強度が高くなる傾向となる。同じ調製方法であれば、バナジウムの量が少ないほうが粒子径は小さくなりやすいので、一定量以上のバナジウム量にすることが好ましい。 【0058】 酸化バナジウムを含む粒子は担体と接触しているので、担体、特にその表面近傍の影響を受けやすい。したがって、担体のバルク組成の変更や調製方法の変更だけでなく、担体の表面修飾の観点から、添加物や調製方法の影響を検討することが好ましい。本件発明者らは、六価の元素であるタングステンやモリブデンが担体の表面近傍に偏在し、しかも、それらがバナジウムと複合酸化物を形成しにくいように焼成して得られた担体にバナジウムを担持させる方がより好ましいことを見出し、本件第1および第2の発明を完成させている。 【0059】 尚、バナジウム含有量が多くなると酸化バナジウムを含む粒子が大きくなり、その結果担体表面との距離が離れたバナジウム原子が多くなるため、担体の表面修飾の効果が低減する傾向にある。したがって、バナジウムの最適量は、担体の比表面積、担体の表面修飾方法、バナジウムの担持方法等の影響を総合的に加味して決定することが好ましい。 【0060】 つまり、活性種であるバナジウムの状態を制御するために、バナジウムそのものだけでなく、バナジウムが接触しうる担体表面のミクロ構造に関わる要因とプレエッジピークの強度とを対比しながら触媒の設計を行うことで、より効率的な触媒開発が行えるようになる。」 (本ウ)「【0067】 <プレエッジピークの強度の測定方法> 触媒を、窒素雰囲気下、200℃でV-K端のXANES測定を行い、吸収端の変曲点を光電子エネルギー原点(E0)とし、吸収端より低エネルギー側の吸収係数(μpre)をVictreenの式(Aλ3-Bλ4+C;λは入射X線の波長、A、B、Cは任意の定数)で最小二乗近似して求め、吸収端より高エネルギー側の吸収係数(μpost)をCubic Spline法にて決定した。続いて、その和(μpre+μpost)をバックグラウンドとして測定結果から除去し、最後にホワイトラインのピークトップの吸収係数が1.0となるよう規格化することで、プレエッジピークの強度を算出する。」 (本エ)「【実施例】 【0068】 ・・・ 【0088】 【表1】 [図:0001427974000001.jpg] 」 第4 取消理由通知に記載した取消理由の概要 令和7年1月29日付け取消理由通知に記載した取消理由は、取消理由1(サポート要件)及び取消理由2(進歩性)であり、概略は以下のとおりである。 1 取消理由1(サポート要件) 本件特許は、その特許請求の範囲の下記の請求項に係る記載が、特許法第36条第6項第1号に規定にする要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 ・請求項3~5 (1)プレエッジピーク強度について 本件発明は、上記(本ア)で摘記した本件明細書の記載によれば、その課題を「効率的に窒素酸化物を処理できる触媒、その製造方法、およびその触媒を用いた排ガス処理方法、さらに排ガス処理触媒の設計方法を提供することを目的とするもの」であり、そして、その課題を解決するためには、「200℃、窒素雰囲気下で測定したバナジウムK端のX線吸収端構造(XANES)スペクトルを規格化することで求められるプレエッジピークの強度が0.45以下である」こと(以下「解決手段」という。)が極めて肝要なことといえる。 しかしながら、請求項3の製造方法で得られた触媒が必然的に上記解決手段を満たすものになるとはいえないことから、上記解決手段を発明特定事項としていない請求項3に係る発明は、本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものとはいえず、発明の詳細な説明に記載したものではない。また、請求項4及び5に係る発明についても、事情は同じことから、同様に発明の詳細な説明に記載したものではない。 (2)バナジウム化合物の担持について バナジウム化合物の担持について、本件明細書の実施例1~6(摘記は略す)において、少なくともバナジウム化合物とシュウ酸と塩基性化合物とが含まれる水性液を用いる態様のみが記載されており、そして、(本イ)の【0058】の記載等を踏まえると、バナジウム化合物を担持させる際に「少なくともバナジウム化合物とシュウ酸と塩基性化合物とが含まれる水性液を用いる」ことも、上記「解決手段」を実現するうえで必要な工程であったといえる。 そうすると、「少なくともバナジウム化合物とシュウ酸と塩基性化合物とが含まれる水性液を用いる」ことが工程として発明特定事項とされていない請求項3に係る発明、及びそれを引用する請求項5に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。 2 取消理由2(進歩性) 本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 ・請求項3~5 請求項3~5に係る発明は、甲第6号証に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 < 甲号証一覧 > (甲第○号証は、以下単に甲○という。) 甲1:特開2001-321667号公報 甲2:特開2004-81995号公報 甲6:特開昭62-42744号公報 甲7:特表2001-514069号公報 甲8:特開平10-235191号公報 甲9:特開2005-144300号公報 甲14:特開2012-206058号公報 甲15:甲8と同じ公報である。 甲16:特開2008-264604号公報 甲17:特開2015-181971号公報 甲18:特開2004-290753号公報 甲19:特開2005-342711号公報 なお、上記取消理由2において、甲1、2、7~9及び14~19は、周知技術を示すために提示されたものである。 第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由は、概略、以下のとおりである。 1 申立理由1(甲1を主引用例とする) (1)申立理由1-1(進歩性) ・請求項1、2及び5 本件特許の請求項1及び5に係る発明は、甲1に記載された発明、並びに甲2、3、4及び12に記載された事項に基いて、請求項2に係る発明は、甲1に記載された発明、及び甲2、3、4、12及び5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、2及び5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (2)申立理由1-2(新規性・進歩性) ・請求項3、4及び5 本件特許の請求項3、4及び5に係る発明は、甲10及び甲11を踏まえると、甲6に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は、甲6に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項3、4及び5に係る特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものである。 (3)申立理由1における甲号証一覧 甲1:特開2001-321667号公報 甲2:特開2004-81995号公報 甲3:田部浩三、他編「金属酸化物と複合酸化物 調製・物性・構造・触媒作用・無機材質との関連」、講談社、1978年4月20日発行、pp.336-339 甲4:特開昭59-59249号広報 甲5:特開2001-276617号公報 甲10:特開2001-62292号公報 甲11:甲3と同じ刊行物である。 甲12:Yasuo Izumi,et.al.「0.6-3.0wt% of Vanadium on/in Titania Monitored by X-ray Absorption Fine Structure Combined with Fluorescence Spectrometry」、Chemistry Letters、2002年11月5日発行(甲13より)、pp.1154-1155 2 申立理由2(サポート要件) 本件特許は、その特許請求の範囲の下記の請求項に係る記載が、以下の(1)~(5)の点で、特許法第36条第6項第1号に規定にする要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (1)Ti-Si複合酸化物について ・請求項1、2及び5 「請求項1は、担体を構成するチタンとケイ素が複合酸化物となっていることが要件とされていない点において、当業者が課題の解決を認識できないものであるから、サポート要件に違反する。請求項2及び5も、同様の理由により、サポート要件に違反する。」(77頁下から3行~78頁1行) (2)各元素の含有量の数値範囲について ・請求項1~5 「本件発明1及び本件発明3は、多数のパラメータを含む数値限定発明であるにもかかわらず、実施例が乏しく、かつ、偏在しているため、数値範囲の組合せの大部分には実施例がないのである。」(81頁14行~16行) 「したがって、本件特許1及び本件特許3は、サポート要件に違反する。本件特許2、本件特許4及び本件特許5も、同様の理由により、サポート要件に違反する。」(83頁7~9行) (3)プレエッジピークの強度について ・請求項1、2及び5 「本件明細書の記載によれば、実施例1ないし4においては、プレエッジピーク強度が0.40ないし0.42の範囲にあるところ、実施例5及び6は、プレエッジピーク強度が0.44及び0.45である。しかし、上記のとおり、実施例5及び6では十分な脱硝性能が得られないから、プレエッジピークが0.42(実施例1ないし4の上限)を超えた構成を採用しても、本件課題を解決することができると認識することはできない。したがって、本件特許1は、プレエッジピークが0.42を超えている場合を数値範囲に含む点において、当業者が課題の解決を認識できないものであるから、サポート要件に違反する。本件特許2及び本件特許5も、同様の理由により、サポート要件に違反する。」(84頁22行~85頁1行) (4)バナジウムの含有量について ・請求項1~5 「バナジウムの含有量は、実施例1ないし4において、五酸化バナジウム換算質量%で7.0及び7.5質量%のみが開示されているところ、上記(b)に記載したとおり、実施例5(バナジウム3.0質量%)及び実施例6(バナジウム1.0質量%)では、低い脱硝率しか達成されていない。したがって、本件特許1及び本件特許3は、バナジウムの含有量(担持量)が「五酸化バナジウム換算質量%で…0.6質量%以上」としている点において、当業者が課題の解決を認識できないものであるから、サポート要件に違反する。本件特許2、本件特許4及び本件特許5も、同様の理由により、サポート要件に違反する。」(85頁5~14行) (5)担体について ・請求項1、2及び5 「請求項1には、本件明細書に記載されていない発明、すなわち「少なくともチタンを含む組成物を焼成して得られたチタン系酸化物(二酸化チタン又はチタンと他の金属との複合酸化物)に、少なくともタングステンまたはモリブデンを含む水溶液を添加して乾燥・焼成して得られた担体」との要件を満たさない担体にバナジウムを担持させた排ガス処理触媒を含むこととなるから、本件特許1は、サポート要件に違反する。本件特許2及び本件特許5も、同様の理由により、サポート要件に違反する。」(88頁下から4行~89頁3行) 3 申立理由3(明確性) 本件特許は、その特許請求の範囲の下記の請求項に係る記載が、以下の点で、特許法第36条第6項第2号に規定にする要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 ・請求項1、2及び5 「請求項3は、「担体」を「チタンおよびケイ素を含む複合酸化物に、タングステンまたはモリブデンのなかから選ばれる少なくとも1つの元素を含む化合物を添加し、乾燥、焼成して得られた担体」と特定しているので、これに該当するものが「担体」に該当すると理解できる。しかしながら、請求項1においては、請求項3における「担体」のような特定がなされておらず、単に「チタンとケイ素を含み、タングステンまたはモリブデンのなかから選ばれる少なくとも1つの元素を含む担体」と規定されているにすぎないため、「担体」の外延が画されておらず、何が「担体」であり、何が「担体」でないのかを理解することができない。」(86頁4~12行) 「本件発明1における「担体」は、「担体」の外延が画されておらず、何が「担体」であり、何が「担体」でないのかを理解することができないから、本件特許1は、明確性要件に違反する。本件特許2及び本件特許5も、同様の理由により、明確性要件に違反する。」(88頁12~15行) 第6 甲号証の記載 1 甲1(主引用例)について (1)記載事項 甲1には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審において付与した(以下同様)。 (甲1ア)「【0004】 【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明の課題は、窒素酸化物の除去性能に一層優れ、しかも二酸化硫黄の三酸化硫黄への酸化性能が極めて抑制された脱硝触媒、及び、排ガス中のダイオキシン類等の有機ハロゲン化合物を効率良く除去するのに好適な触媒として優れた排ガス処理用触媒、それを用いた排ガスの処理方法、および該触媒の製造方法を提供することにある。 【0005】 【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、本発明の排ガス処理用触媒は、バナジウム酸化物と、予め調製されたチタンとモリブデンからなる二元系均密混合酸化物、および/または、予め調製されたチタン、ケイ素およびモリブデンからなる三元系均密混合酸化物とを含有する。本発明の排ガス処理用触媒の製造方法は、触媒成分として、チタンの酸化物、モリブデン酸化物およびバナジウム酸化物を含有する排ガス処理用触媒の製造方法であって、チタン化合物を含む水溶液またはスラリーと、モリブデン化合物と必要に応じてケイ素化合物とを混合した後、水を除去する工程を含むことを特徴とする。」 (甲1イ) 【実施例】・・・。 <実施例1> [チタン-モリブデン均密混合酸化物の調製]まず、チタン-モリブデン均密混合酸化物を次のように調製した。工業用アンモニア水(25wt%NH3含有)121Kgと水86リットルの混合溶液に、モリブデン酸粉末2.25Kgを加え、よく攪拌し、モリブデン酸を完全に溶解させ、均一溶液を調製した。この溶液に硫酸チタニル硫酸溶液(テイカ社製、TiO2として70g/リットル、H2SO4として287g/リットル含有)257リットルを、攪拌しながら徐々に滴下し、沈殿を生成させた。この共沈スラリーを約20時間静置したのち、水で十分洗浄した後、濾過し、100℃で1時間乾燥させた。さらに、空気雰囲気下、550℃で4時間焼成し、更にハンマーミルを用いて粉砕し、分級機で分級し平均粒子径10μmの粉体を得た。このようにして調製したチタン-モリブデン均密混合酸化物の組成は、TiO2:MoO3=90:10(酸化物換算重量比)であった。 【0018】[バナジウム酸化物の添加]次に、8リットルの水にメタバナジン酸アンモニウム1.29Kgと蓚酸1.67Kgさらにモノエタノールアミン0.4Kgを混合し、溶解させ、均一溶液を調製した。先に調製したチタン-モリブデン均密混合酸化物粉体19Kgをニーダーに投入後、成形助剤とともにバナジウム含有溶液を加え、よく攪拌した。さらに適量の水を加えつつブレンダーでよく混合した後、連続ニーダーで十分混錬りし、外形80mm角、目開き4mm、肉厚1mm、長さ500mmのハニカム状に押出し成形した。得られた成形物を60℃で1時間乾燥後、空気雰囲気下、450℃で5時間焼成して目的の触媒(1)を得た。この時の組成は、重量比で、チタン-モリブデン均密混合酸化物:V2O5=95:5(酸化物換算重量比で、TiO2:MoO3:V2O5=85.5:9.5:5)であった。 ・・・ 【0021】<実施例3> [チタン-ケイ素均密混合酸化物の調製]チタン-ケイ素均密混合酸化物を次のように調製した。シリカゾル(スノーテックス-30、日産化学社製、SiO2換算30wt%含有)10Kgと工業用アンモニア水(25wt%NH3含有)104Kgと水73リットルを混合し、均一溶液を調製した。この溶液に硫酸チタニル硫酸溶液(テイカ社製、TiO2として70g/リットル、H2SO4として287g/リットル含有)242.8リットルを、攪拌しながら徐々に滴下し、沈殿を生成させた。この共沈スラリーを約20時間静置したのち、水で十分洗浄した後、濾過し、100℃で1時間乾燥させた。さらに、空気雰囲気下、550℃で4時間焼成し、更にハンマーミルを用いて粉砕し、分級機で分級し平均粒子径10μmの粉体を得た。このようにして調製したチタン-ケイ素均密混合酸化物の組成は、TiO2:SiO2=85:15(酸化物換算重量比)であった。チタン-ケイ素均密混合酸化物のX線回折では、TiO2のブロードな回折ピークが見られただけで、SiO2の明らかな固有のピークは認められなかった。 【0022】 [バナジウム酸化物の添加]実施例1のバナジウム酸化物の添加工程において、チタン-モリブデン均密混合酸化物19Kgの代わりに、実施例1で用いたチタン-モリブデン均密混合酸化物9.5kgと上記で調製したチタン-ケイ素均密混合酸化物9.5Kgを混合して用いた以外は、実施例1と同様の調製方法でバナジウム酸化物を添加し、触媒(3)を調製した。この時の組成は、重量比で、チタン-モリブデン均密混合酸化物:チタン-ケイ素均密混合酸化物:V2O5=47.5:47.5:5(酸化物換算重量比で、TiO2:SiO2:MoO3:V2O5=83.1:7.1:4.8:5)であった。」 (2)甲1発明 ア (甲1イ)の実施例1において、バナジウム酸化物の添加について「チタン-モリブデン均密混合酸化物粉体19Kgをニーダーに投入後、成形助剤とともにバナジウム含有溶液を加え、よく攪拌した。さらに適量の水を加えつつブレンダーでよく混合した後、連続ニーダーで十分混錬りし、外形80mm角、目開き4mm、肉厚1mm、長さ500mmのハニカム状に押出し成形した。得られた成形物を60℃で1時間乾燥後、空気雰囲気下、450℃で5時間焼成して目的の触媒(1)を得た。」と記載されていることから、同実施例3における「実施例1のバナジウム酸化物の添加工程において、チタン-モリブデン均密混合酸化物19Kgの代わりに、実施例1で用いたチタン-モリブデン均密混合酸化物9.5kgと上記で調製したチタン-ケイ素均密混合酸化物9.5Kgを混合して用いた以外は、実施例1と同様の調製方法でバナジウム酸化物を添加」することは、具体的なハニカム形状の大きさに関する数値を除けば「チタン-モリブデン均密混合酸化物9.5kgと上記で調製したチタン-ケイ素均密混合酸化物9.5Kgを混合したものを、ニーダーに投入後、成形助剤とともにバナジウム含有溶液を加え、よく攪拌し、さらに適量の水を加えつつブレンダーでよく混合した後、連続ニーダーで十分混錬りし、ハニカム状に押出し成形し、得られた成形物を60℃で1時間乾燥後、空気雰囲気下、450℃で5時間焼成して目的の触媒を得た」ということである。 イ 実施例3で得られた「触媒(3)」とは、(甲1ア)によれば「排ガス処理用触媒」のことである。 ウ そうすると、(甲1イ)の実施例3に着目し、上記ア及びイを踏まえて、甲1に記載された発明を認定すると、以下のとおりである。 「チタン-モリブデン均密混合酸化物9.5kgとチタン-ケイ素均密混合酸化物9.5Kgを混合したものをニーダーに投入後、成形助剤とともにバナジウム含有溶液を加え、よく攪拌し、さらに適量の水を加えつつブレンダーでよく混合した後、連続ニーダーで十分混錬りし、ハニカム状に押出し成形し、得られた成形物を60℃で1時間乾燥後、空気雰囲気下、450℃で5時間焼成して得られた排ガス処理用触媒であって、 組成は、重量比で、チタン-モリブデン均密混合酸化物:チタン-ケイ素均密混合酸化物:V2O5=47.5:47.5:5(酸化物換算重量比で、TiO2:SiO2:MoO3:V2O5=83.1:7.1:4.8:5)である、排ガス処理用触媒。」(以下「甲1発明」という。) 2 甲6(主引用例)について (1)記載事項 甲6には、以下の事項が記載されている。 (甲6ア)「本発明による触媒は窒素酸化物全含有する任意のガス処理に用いることができるが、特に、ボイラ排ガス、即ち、100~1000ppmのイオウ酸化物、主として二酸化イオウ、1~10容量%の酸素、5~20容量%の炭酸ガス、5~20容量%の水蒸気が含有されている排ガス中の窒素酸化物を除去するのに好適に用いることができる。」(296頁右上欄5~12行) (甲6イ)「実施例3 硫酸法による酸化チタンの製造工程より得られる硫酸チタン溶液を酸化チタンとして1kg取り出し、これに微粒子ケイ酸ファインシール(徳山曹達(株)製)200gを添加し、十分に攪拌混合した後、アンモニア水を添加して硫酸チタンを中和加水分解し、微粒子ケイ酸と共沈させた。この沈殿物を濾過、水洗し、100℃で12時間乾燥した後、500℃の温度で3時間焼成した。この焼成品をサンプルミルにより粉砕し、粒度を調整して、以下の窒素酸化物除去用触媒の担体に用いた。 上記の粉末担体1kgにパラタングステン酸アンモニウム110gを含有する10%メチルアミン溶液250mlを添加し、混練した後、押出機により格子状成形物に押出成形し、常温から100℃に加熱して乾燥し、次いで、500℃で3時間焼成し、酸化タングステンを担持させた窒素酸化物除去用触媒を得た。」(297頁左上欄11行~右上欄9行) 「実施例6 実施例3で得た酸化タングステン担持触媒1kgに、メタバナジン酸アンモニウム10gとシュウ酸25gを水に溶解した水溶液を含浸させた後、100℃で12時間乾燥し、更に500℃で3時間焼成して、酸化タングステンと酸化バナジウムとを担持させた窒素酸化物除去用触媒を得た。」(同頁右下欄6~13行) (甲6ウ)「微粒子ケイ酸の添加量は、酸化チタンに基づいて5~50重量%であり、5重量%よりも少ないときは、焼成品における微粒子ケイ酸の添加による窒素酸化物除去用触媒担体性能の改善の効果が小さく、一方、50重量%を越えるときは、相対的に酸化チタンの含有量が少なくなって、窒素酸化物除去用触媒担体として用いるとき、酸化チタンに基づく該触媒担体の性能が低下するので好ましくない。」(294頁左下欄16行~右下欄5行) (2)甲6発明 ア (甲6イ)に記載されている窒素酸化物除去用触媒は、(甲6ア)を参照すると、排ガス処理触媒である。 イ (甲6イ)に記載されている各種化合物の添加量から実施例6に係る窒素酸化物除去用触媒におけるTiO2、SiO2、WO3、V2O5の質量比を計算すると、TiO2が75.3質量%、SiO2が15.1質量%、WO3が8.83質量%、V2O5が0.77質量%であることが導出される(特許異議申立書の53頁19行~55頁2行参照)。すなわち、窒素酸化物除去用触媒は、TiO2換算でTiの含有量が75.3質量%、SiO2換算でSiの含有量が15.1質量%、WO3換算でWの含有量が8.83質量%、V2O5換算でVの含有量が質量0.77%からなることが導出される。 ウ 上記ア及びイを踏まえ、(甲6イ)に記載されている触媒の製造方法を認定すると、以下のとおりである。 「硫酸チタン溶液を酸化チタンとして取り出し、これに微粒子ケイ酸を添加し、十分に攪拌混合した後、アンモニア水を添加して硫酸チタンを中和加水分解し、微粒子ケイ酸と共沈させ、この沈殿物を濾過、水洗し、乾燥した後、焼成し、この焼成品をサンプルミルにより粉砕し、粒度を調整し、 この粉末にパラタングステン酸アンモニウムを含有するメチルアミン溶液を添加し、混練した後、押出機により格子状成形物に押出成形し、乾燥し、次いで、焼成し、酸化タングステン担持触媒を得て、 前記酸化タングステン担持触媒に、メタバナジン酸アンモニウムとシュウ酸を水に溶解した水溶液を含浸させた後、乾燥し、更に焼成して、酸化タングステンと酸化バナジウムとを担持させた、排ガス処理触媒である窒素酸化物除去用触媒の製造方法であって、 上記窒素酸化物除去用触媒は、TiO2換算でTiの含有量が75.3質量%、SiO2換算でSiの含有量が15.1質量%、WO3換算でWの含有量が8.83質量%、V2O5換算でVの含有量が質量0.77%からなる、上記製造方法。」(以下「甲6発明」という。) 3 プレエッジピーク強度の容易論に使用する副引用例 (1)甲2について 甲2には、以下の事項が記載されている。 (甲2ア)「【0008】 脱硝反応は酸化還元反応であるため、バナジウムを活性種とする触媒の活性は、活性点の酸化還元(V5+⇔V4+)が活発であるほど高活性・高耐久性であると予想される。従来の技術で調製された触媒ではバナジウム種はV5+(V2O5)として存在しており、V5+は安定であるために酸化還元の効率が低く、十分な触媒活性が得られない。この考えに基づき、触媒上に予めV4+を生成させることを試みたところ、バナジウムの酸化還元の効率が向上し、脱硝性能および耐久性が著しく高まることを見出した。この時、V4+が生成されると同時に、触媒全体のバナジウムの電子状態が均等化され、全体のバナジウム価数がV4+の生成量に応じて低下する。つまり、触媒上のバナジウムイオンの価数が4.9未満ということは、全バナジウム種中に占めるV4+の割合が10%より多いことと等価である。本発明においては、例えば後述の調製方法を用いることによってV4+をあらかじめ触媒上に存在させることができ、酸化還元の効率を高めることによって脱硝性能および耐久性に優れた排ガス処理用触媒を提供できる。 【0009】 バナジウム価数の評価方法については特に限定しないが、広く用いられている方法としてX線光電子分光法(XPS)が挙げられ、他の方法に比べ精度、信頼性ともに高い。実際には、以下の手順で測定・解析した。」 (甲2イ)「【0015】 (C)担体物質の粉末をV2O5、VO2、V2O3等のバナジウム酸化物粉体と直接混練する。」 (甲2ウ)「【0040】 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の実施例1に係る触媒におけるバナジウムのXPSのチャートを示すものである。実測チャート(波形)を5価のバナジウム(左側)と4価のバナジウム(右側)の波形成分に分けて図示したものである。 図1のピークの波形成分は、右側のピークである4価のバナジウムのピークが、左側のピークである5価のピークより高いことが判る。」 (甲2エ)図1として以下の図面が記載されている。 【図1】 「 [図:0001427974000002.jpg] 」 (2)甲3について 甲3には、以下の事項が記載されている。 「4.3 V205の複合化による性質の変化の V205は一般にいくらかの酸素空孔と,それに対応する量のV4+を有し,n型の半導性を示す.V4+の存在はESRによって確かめられているが,その量は少なく,還元性のCOふんい気下で調製した試料でも全Vイオンの約0.4%である.V205中の電気伝導はおもにV4+ドナーに基因する電子伝導であって,MoO3,WO3の少量の添加によって伝導度は増大する.これはV205にMoO3,WO3などを少量添加するとMo6+あるいはW6+がV5+格子点に同型置換し,固溶体を生成し,原子価制御によってV4+が増加するためである.このV4+の生成はドナーレベルの生成を意味し,酸素などに対する吸着点を与えるので重要である.」(337頁下から4行~338頁5行) (3)甲4について 「本発明は,バナジウムの原子価が5価のバナジウム化合物に水の存在下で還元性物質を加えてバナジウムの原子価を5価より小さい原子価に還元したバナジウム化合物の溶液,硫酸または硫酸のアンモニウム塩,硫酸バリウム,および水酸化チタンを混合した後,焼成することを特徴とするチタン化合物,硫酸バリウムおよび水に不溶性の硫酸バナジルからなる窒素酸化物還元浄化用触媒の製法に関するものである。 本発明で得られる触媒は,特公昭56-32020号に記載された触媒と比較して、NH3/NO(モル比)を1以下にし、比較的低温で使用した場合のNOx除去活性が高く,また脱硝後の排ガス中に残留するアンモニアも少ないという特長があり,特公昭56-30067号に記載された触媒と比較して,NH3/NOを1より小さくして使用した場合のNOx除去活性の低下を防止でき,またSO2の酸化活性が低いという特長がある。」(300頁右上欄7行~左下欄4行) (4)甲12について 甲12は、「0.6-3.0wt% of Vanadium on/in Titania Monitored by X-ray Absorption Fine Structure Combined with Fluorescence Spectrometry」(訳:蛍光分光分析と組み合わせたX線吸収微細構造でモニターしたチタニア上の(中の)0.6-3.0wt%のバナジウム)というタイトルの論文であり、以下の事項が記載されている。なお、原文はその記載箇所のみを示し、訳のみを記載することとする(訳は申立人が提示したものを参照した。)。 (甲12ア)原文:1155頁左欄3行~同頁右欄最終行 訳「図2は、規格化されたV K端XANESスペクトルを示している。V/TiO2の場合(a及びb)、立ち上がりエッジは5480.8~5481.1eVに現れた。2つのブロードなポストエッジピーク特性が、ほぼ同等の強度で5489eV及び5502eVに観測された。2つのピーク位置は、V/TiO2(3.9wt%-V、f; 5489及び5503eV)11及びMn0.90V1.80Mo0.20O6(3)(g;5490及び5504eV)の場合と同様だった。化合物3のVサイトは、2つのより近いO原子(1.661~1.693A(当審注:Aはオングストローム、以下同様。))と三つのより遠いO原子(1.913~2.151A)によって配位されている13。(b)及び(g)では、5486eVに弱いショルダーが現れた。CrVVO4(h)とVV2O5(i)のポストエッジパターンは、(a)と(b)のものとはまったく異なっていた。 V/TiO2の場合、1s-3dプレエッジピークが5468.3-5468.6eVに現れた(a及びb、表1)。プレエッジピークのFWHM値は2.5eVで、V負荷(3-1wt%)及び蛍光分光計のEには依存しなかった。プレエッジピーク幅は、K+Mのコアホール寿命幅(=(当審注:=は二重波線である。)1.01eV)及びビームラインのEに関連し、発光ピーク幅は、K+L3の幅(1.26eV)及びビームライン+蛍光分光計のΔEに関連している。したがって、ビームラインのΔEは2.0eVと推定され(図1)、スリット幅が8.0 mmから2.0 mmに減少するにつれて、蛍光分光計のΔEは2.8eVから0.3eVに減少した(図1)7。 これらのエネルギー分解能値ではTiKβ1,3の寄与は見られず、図2のa~eではTiの寄与がまったくないことが示されている。 (a)と(b)のプレエッジピークは、化合物3(g)とCrVO4(h)の場合と同様のエネルギーに現れた。(a)と(b)のピーク強度は(h)の57~65%であり、V/TiO2のVサイト対称性がTdより高いことを示唆している。 HSA V-TiO2の場合、V Kα1発光ピーク位置(4951.7eV)はVIV/VV状態に対応する。XANESの立ち上がりエッジ位置(5479.8eV、c)は、V/TiO2の場合と比較して低エネルギー側に1.0~1.3eVシフトした。2つのブロードピーク特徴は、ポストエッジ領域で5487eVと5505eVで観測され、V/TiO2の場合(aとb)から±2 eVシフトした。VOSO4・3H2O(j)のポストエッジパターンは(c)と完全に異なった。V2O4(k)のポストエッジパターンは(c)と比較的類似したが、プレエッジピーク位置は1.4eV高いエネルギーにあった。HSA-TiO2のTi Kエッジデータは、TiとVの位相パラメータが類似しているため、エネルギーを+499.8eV(l)シフトしてV Kエッジと比較した。ポストエッジパターンとプレエッジピークは両方とも(c)の場合と同様だった。 HSA V-TiO2(c)の5467.9eVのプレエッジピークのFWHM値(表1)は2.3eVで、V/TiO2の場合(2.5eV、a及びb)よりも小さい値だった。これは、HSA V-TiO2がVIVサイトとVVサイトの混合物ではなく、主にVIVサイトから構成されていることを意味する。V2O4のVIVサイトは、3つの近いO原子(1.76~1.87A)と3つの遠いO原子(2.01~2.05A)によって配位されている。HSA V-TiO2のプレエッジピーク強度は、V2O4の場合に対して91%であり、V2O4の場合よりもわずかに高い対称性を示唆している。波数11A-1まで蛍光分光法と組み合わせたEXAFSにより、HSA V-TiO2の場合の平均V-O距離として1.74Aが得られた。 プレエッジ、立ち上がりエッジ、及び2つのポストエッジピークは、5468.5、5481.1~5481.3、5487~5488、及び5501~5504eVに現れ、プレエッジピークのFWHMは、V/HSA-TiO2 (d)及びV-TiO2(e)で2.4~2.5eVであり、V/TiO2(a及びb)の場合と非常によく似ている。化合物1及び2とドデシルアミンから調製されたHSA V-TiO2の場合のみ、VIVサイトがTiサイトに置換されている可能性がある。他のサンプルではVV種が優勢であり、スペクトルの類似性により、主要なVサイト構造は共通している可能性がある。[V10O28]6-の10個のV原子のうち8個は、より近い1個のO原子(1.61A)とより遠い4個のO原子(1.83~2.05A)に配位しており14、これはV2O5のVサイトの場合と類似している。比較的低い焼成温度(473K)と周囲条件が、モノバナデート、デカバナデート、及びV2O5が観察されなかった理由である可能性がある3-6。」 (甲12イ)図2及び表1は、以下のとおりである。 「 [図:0001427974000003.jpg] 」 「図2. 蛍光分光計を使用してV+TiO2触媒について測定されたV K端のXANESスペクトル(a-c)。3.0(a)及び1.0wt%-VのV/TiO2(b)。HSA V-TiO2 (0.6wt%-V、c)。V/HSA-TiO2 (1.0wt%、d)。V-TiO2 (2.0wt%、e)。V/TiO2 (3.9wt%-V、f、5484eV超)11、 Mn0.90VV1.80Mo0.20O6 (g)、CrVVO4 (h)12、VV2O5 (i)12、VIVOSO43H2O (j)12、VIV2O4 (k)12、及びHSA-TiO2(l)について透過モードで測定された対照V (f-k)及びTi K端 (l)のXANES9。」 表1 プレエッジピークの強度とエネルギー位置 「 [図:0001427974000004.jpg] 」 4 その余の甲号証について 以下の甲号証については、簡単に摘記することとする。 (1)甲5について 「【0014】そして、本発明の触媒では、第一細孔群が占める細孔容積は全細孔容積の20~80%、また第三細孔群が占める細孔容積は全細孔容積の5~70%の範囲にあるのがよい。本発明の触媒の平均粒子径は好ましくは0.001~100μm、より好ましくは0.01~100μmの範囲にあるのがよい。本発明の触媒のBET法による比表面積は好ましくは30~250m2/g、より好ましくは40~200m2/gの範囲にあるのがよい。したがって、本発明の触媒としては、触媒成分としてチタン酸化物とTi-Si複合酸化物とバナジウム酸化物とモリブデン酸化物を含み、水銀圧入法による全細孔容積が0.2~0.6cc/gであり、0.01~0.05μmの範囲に孔径分布のピークを有する細孔群と0.8~4μmの範囲に孔径分布のピークを 有する細孔群とを含む細孔を有し、しかも0.01~0.05μmの範囲に孔径分布のピークを有する細孔群が占める細孔容積が、全細孔容積の20~80%であり、0.8~4μmの範囲に孔径分布のピークを有する細孔群が占める細孔容積が全細孔容積の5~70%である触媒が好適に用いられる。」 (2)甲7について 「【0020】 この触媒7は被覆された板状触媒として形成されており、触媒活性物質として [TiO280重量%、WO35重量%、MoO35重量%、V2O53重量% 、Al2O33.5重量%及びSiO23.5重量%]を含んでいる。その比表面積は120m2/gであり、触媒コンパウンドの気孔径は620ml/g である。」 (3)甲8について 「【0059】このチタン-タングステン酸化物粉体8kgと実施例2-1と同様にして調製したTi-Si複合酸化物12kgとにメタバナジン酸アンモニウム1.4kg 、シュウ酸1.7kgおよびモノエタノールアミン0.4kgを水5リットルに溶解させた溶液を加え、さらにフェノール樹脂(ベルパール(商品名)、カネボウ(株)製)1kgと成形助剤としてのデンプン0.5kgを加えて混合しニーダーで混練りした後、押出成形機で外形80mm角、目開き4.0mm、肉厚1.0mm、長さ500mmのハニカム状に成形した。次いで、80℃乾燥した後、450℃で5時間空気雰囲気下で焼成して触媒(2-B)を得た。 【0060】触媒(2-B)の組成は、V2O5:WO3:TiO2:Ti-Si複合酸化物=5:4:34:57(重量比)であった。触媒(2-B)の細孔径分布を水銀圧入式ポロシメーターにより測定した結果、全細孔容積は0.38cc/gであり、第一および第三細孔群の細孔容積はそれぞれ全細孔容積の52%および43%であった。また、BET表面積は95m2/gであった。触媒(2-B)の細孔径分布を図6に示した。」 (4)甲9について 「【0034】 ・・・ (触媒の分析) 触媒(3)の組成を分析したところ、酸化物換算重量比で、Ti-Si-Mo複合酸化物:バナジウムの酸化物:タングステンの酸化物=90:5:5(また、酸化物換算重量比で、チタンの酸化物:ケイ素の酸化物:モリブデンの酸化物:バナジウムの酸化物:タングステンの酸化物=72:9:9:5:5)であった。」 (5)甲10について 「【0010】上記Ti-Si複合酸化物の調製に用いるチタン源としては、上記の無機および有機のいずれの化合物も使用することができ、またケイ素源としては、コロイド状シリカ、水ガラス、微粒子ケイ素、四塩化ケイ素などの無機ケイ素化合物およびテトラエチルシリケートなどの有機ケイ素化合物から適宜選択して使用することができる。」 (6)甲11、13及び15について 甲11は甲3と同じ文献であり、甲15は甲8と同じ公報であり、甲13は甲12の発行日が示されているものであるから、それらの記載事項は略する。 (7)甲14について 「【0032】 ・・・得られたTi-Si複合酸化物粉体とTi-W混合酸化物(・・・ )を混合し、これにメタバナジン酸アンモニウムとシュウ酸とモノエタノールアミンの混合溶液およびメタタングステン酸アンモニウム水溶液を加え、さらに成形助剤および適当量の水を加え、混練後、押し出し成型機でハニカム状に成形する。」 (8)甲16について 「【0033】 次にメタバナジン酸アンモニウ1.72kg、シュウ酸2.5kgおよびモノエタノールアミン0.71kgを水6Lに混合・溶解させ、均一溶液を調製した。」 (9)甲17について 「【0035】 ・・・ <バナジウム酸化物の添加> 7Lの水にメタバナジン酸アンモニウム1.29kgとシュウ酸1.54kg、さらにモノエタノールアミン0.3kgを混合し、溶解させ、均一溶液を調製した。」 (10)甲18について 「【0013】 本発明の耐熱性脱硝触媒におけるV2O5の原料は、特に制限されないが、V2O5又はNH4VO3(メタバナジン酸アンモニウム)が好適に使用される。これらの原料は、通常、シュウ酸水溶液またはモノメタノールアミン水溶液に溶解して原料液として使用される。」 (11)甲19について 【0014】 本発明で使用する耐熱性脱硝触媒におけるV2O5の原料は、特に制限されないが、V2O5又はNH4VO3(メタバナジン酸アンモニウム)が好適に使用される。これらの原料は、通常、シュウ酸水溶液またはモノメタノールアミン水溶液に溶解して原料液として使用される。」 第7 当審の判断 1 29条関連(申立理由1、取消理由2)について (1)申立理由1(甲1を主引例)について ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲1発明とを対比すると、以下のとおりである。 a 甲1発明において、「チタン-モリブデン均密混合酸化物9.5kgとチタン-ケイ素均密混合酸化物9.5Kgを混合したもの」は、チタン、ケイ素、モリブデンを含む酸化物の固体であるから、本件発明1の「チタンとケイ素を含み、さらにタングステンまたはモリブデンのなかから選ばれる少なくと1つの元素を含む担体」に相当する。 そして、本件発明1の「バナジウム」の「担持」が、本件明細書の0039の<バナジウムの担持方法>に「担体に、少なくともバナジウムを含む水性液を加え混合して得られた前駆体を成形し乾燥、焼成することで行われる。」と記載されていることを踏まえると、甲1発明の「チタン-モリブデン均密混合酸化物9.5kgとチタン-ケイ素均密混合酸化物9.5Kgを混合したもの」に、「バナジウム含有溶液を加え」「混合した後」「成形し、得られた成形物を」「乾燥後」「焼成して得られた排ガス処理用触媒」は、本件発明1の「チタンとケイ素を含み、さらにタングステンまたはモリブデンのなかから選ばれる少なくと1つの元素を含む担体上に、バナジウムを担持してなる排ガス処理用触媒」に相当する。 b 甲1発明の「酸化物換算重量比で、TiO2:SiO2:MoO3:V2O5=83.1:7.1:4.8:5」は、「83.1」、「7.1」、「4.8」、「5」の合計が100であることから、それらは質量%に対応し、「V2O5」は5質量%、「SiO2」は7.1質量%、「MoO3」は4.8質量%であり、それぞれ順に「五酸化バナジウム換算でバナジウムの含有量が0.6質量%以上」、「二酸化ケイ素換算でケイ素の含有量が9質量%以下」、「三酸化モリブデン換算でモリブデン含有量が3.0~10.0質量%および/または三酸化タングステン換算でタングステン含有量が0.5~5.0質量%」を満たしている。 そうすると、甲1発明の「(酸化物換算重量比で、TiO2:SiO2:MoO3:V2O5=83.1:7.1:4.8:5)である、排ガス処理用触媒」は、本件発明1の「五酸化バナジウム換算でバナジウムの含有量が0.6質量%以上であり、二酸化ケイ素換算でケイ素の含有量が9質量%以下であり、三酸化モリブデン換算でモリブデン含有量が3.0~10.0質量%および/または三酸化タングステン換算でタングステン含有量が0.5~5.0質量%であ」る「排ガス処理触媒」に相当する。 c したがって、本件発明1と甲1発明とは、 (一致点) 「チタンとケイ素を含み、さらにタングステンまたはモリブデンのなかから選ばれる少なくと1つの元素を含む担体上に、バナジウムを担持してなる排ガス処理用触媒であって、五酸化バナジウム換算でバナジウムの含有量が0.6質量%以上であり、二酸化ケイ素換算でケイ素の含有量が9質量%以下であり、三酸化モリブデン換算でモリブデン含有量が3.0~10.0質量%および/または三酸化タングステン換算でタングステン含有量が0.5~5.0質量%である排ガス処理触媒。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1) 排ガス処理触媒が、本件発明1では、「200℃、窒素雰囲気下で測定したバナジウムK端のX線吸収端構造(XANES)スペクトルを規格化することで求められるプレエッジピークの強度が0.45以下」であるが、甲1発明では、そのような特定がない点。 (イ)相違点の判断 本件発明1の「200℃、窒素雰囲気下で測定したバナジウムK端のX線吸収端構造(XANES)スペクトルを規格化することで求められるプレエッジピークの強度(以下単に「プレエッジピークの強度」という場合がある。)が0.45以下」であることについては、上記(本ア)の【0008】に「本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、バナジウムK端のX線吸収端構造(XANES)スペクトルを規格化することで求められるプレエッジピークの強度が0.45以下である触媒は、排ガス中の窒素酸化物を効率的に処理できることを見出し、本件発明を完成した。」と記載されており、そして、上記(本エ)の表1を参照すると、プレエッジピークの強度が0.45を超えるものに比べて、0.45以下のものは脱硝率が高くなっていることで十分に裏付けられていることから、これはプレエッジピークの強度の範囲を特定することによって脱硝率が高い触媒を特定することができるという技術的思想を示しているといえる。そして、その考えられる機序が、上記(本イ)の【0056】~【0060】に記載されている。 一方、甲1には、プレエッジピークの強度についての記載はなく、上記技術的思想を示すものではない。 ここで、申立人が提示した甲号証のうち、プレエッジピークの強度について言及があるのは、甲12のみであることから、甲12について検討する。甲12には、上記(甲12ア)で摘記したとおりであり、V+TiO2触媒についてV K端のXANESスペクトルを測定し、それを規格化したプレエッジピーク強度とエネルギー位置との関係は示されているものの、脱硝率についての記載はなく、また、プレエッジピーク強度と脱硝率とを関連付けられることを示唆する記載も一切ない。ましてや、「200℃、窒素雰囲気下で測定したバナジウムK端のX線吸収端構造(XANES)スペクトルを規格化することで求められるプレエッジピークの強度が0.45以下」であることにより脱硝率の高い触媒を特定できるということが、甲12の記載から当業者といえども容易に想起されるものではない。 さらに、その余の甲号証を参照しても、プレエッジピークの強度と脱硝率とを関連付けられることを示したものはなく、ましてや「200℃、窒素雰囲気下で測定したバナジウムK端のX線吸収端構造(XANES)スペクトルを規格化することで求められるプレエッジピークの強度が0.45以下」であることにより脱硝率の高い触媒を特定できるということを示したものはない。 そうすると、上記相違点1は、甲1~甲19の記載を参照しても、当業者が容易になし得たこととはいえない。 (ウ)小括 よって、本件発明1は、甲1発明、及び甲1~19に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (エ)相違点の判断に対する申立人の主張について a 申立人は、申立書30頁16行~39頁10行において、要すれば、以下の主張をしている。 まず、上記甲2、3及び4の記載から、バナジウム酸化物のV4+の割合を増やすと触媒効率が良いことは技術常識であることを述べたうえで、甲12の記載から、バナジウム酸化物のV4+の割合が増えるとXANESスペクトルのプレエッジピーク強度が小さくなることも技術常識であることを述べ、「相違点1は、バナジウム酸化物におけるバナジウムにおけるV4+の割合を増やすことで効率の良い排ガス処埋触媒を得るという技術的思想に基づくものであり、XANESスペクトルのプレエッジピークの強度が一定以下のものに数値限定したにすぎない。」(38頁2~5行)と主張している。 b 申立人の主張に対する当審の判断 (a)上記甲2の記載を参照すると、V4+をあらかじめ触媒上に存在させることができると、酸化還元の効率を高めることによって脱硝性能および耐久性に優れた排ガス処理用触媒が提供できることが記載されていることから、甲1発明の「排ガス処理用触媒」において、脱硝性能を上げるために、「チタン-モリブデン均密混合酸化物9.5kgとチタン-ケイ素均密混合酸化物9.5Kgを混合したもの」に担持させるバナジウムを、V4+として存在させようとすることは当業者において容易に想起し得ることともいえる。なお、甲3及び4には、甲2の記載ほど、V4+をあらかじめ触媒上に存在させることで脱硝性能に優れた排ガス処理用触媒が提供できることが明記はされていない。 しかし、本件発明1で「200℃、窒素雰囲気下で測定したバナジウムK端のX線吸収端構造(XANES)スペクトルを規格化することで求められるプレエッジピークの強度が0.45以下」としたのは、上記(本イ)の【0056】~【0060】に記載されているとおり、担持させるバナジウムを単にV4+として存在させるものではない。仮に、担持させるバナジウムを単にV4+として存在させることを目的としているならば、甲2に「バナジウム価数の評価方法については」「広く用いられている方法としてX線光電子分光法(XPS)が挙げられ、他の方法に比べ精度、信頼性ともに高い」と記載されているとおり、XPSを用いて触媒におけるバナジウムを測定する、すなわち甲2の上記図1に記載されているように、5価のバナジウムと4価のバナジウムのピークの波形成分を比較して、担持させるバナジウムにおけるV4+との割合を特定すればいいことになる。 これに対し、本件発明1では、プレエッジピークの強度の範囲を特定することによって脱硝率が高い触媒を特定することができるという技術的思想のもと、「200℃、窒素雰囲気下で測定したバナジウムK端のX線吸収端構造(XANES)スペクトルを規格化することで求められるプレエッジピークの強度が0.45以下である」ことにより脱硝率の高い触媒を特定できるということを示したものであり、担持させるバナジウムにおけるV4+の割合を特定しようとしたものではない。さらにいえば、(甲2イ)には「担体物質の粉末を」「VO2」「等のバナジウム酸化物粉体と直接混練する。」と記載されているように、V4+の割合を多くするということであるなら、VO2(V4+)を直接混練するということも考えられるが、本件明細書ではそのようなことはしてない。 したがって、申立人の「相違点1は、バナジウム酸化物におけるバナジウムにおけるV4+の割合を増やすことで効率の良い排ガス処埋触媒を得るという技術的思想に基づくもの」との主張は失当である。 (b)さらに、甲12は、(甲12ア)に「図2は、規格化されたV K端XANESスペクトルを示している。V/TiO2の場合(a及びb)、立ち上がりエッジは5480.8~5481.1eVに現れた。・・・CrVVO4(h)とVV2O5(i)のポストエッジパターンは、(a)と(b)のものとはまったく異なっていた。V/TiO2の場合、1s-3dプレエッジピークが5468.3-5468.6eVに現れた(a及びb、表1)。・・・V2O4(k)のポストエッジパターンは(c)と比較的類似したが、プレエッジピーク位置は1.4eV高いエネルギーにあった。・・・プレエッジ、立ち上がりエッジ、及び2つのポストエッジピークは、5468.5、5481.1~5481.3、5487~5488、及び5501~5504eVに現れ、プレエッジピークのFWHMは、V/HSA-TiO2 (d)及びV-TiO2(e)で2.4~2.5eVであり、V/TiO2(a及びb)の場合と非常によく似ている。」と記載されているとおり、規格化されたV K端XANESスペクトルのプレエッジ、立ち上がりエッジ、ポストエッジピークにおけるエネルギー位置を分析したものであり、表1の「VV2O5(i)」及び「V2O4(k)」における強度について何ら技術的な説明は記載されていない。 そうすると、表1の試料「i V2O5」及び「k V2O4」が、順に、強度「0.79」及び「0.35」、エネルギー位置(eV)「5469.5」及び「5469.3」であることが記載されているからといって、「バナジウム酸化物のV4+の割合が増えるとXANESスペクトルのプレエッジピーク強度が小さくなること」が、担体によらず全ての事象において成立する技術常識とはいえない。 したがって、仮に、バナジウム酸化物におけるバナジウムにおけるV4+の割合を増やすことがあろうとしても、「XANESスペクトルのプレエッジピークの強度が一定以下のものに数値限定したにすぎない」との主張も当を得ないことである。 (c)以上のことから、上記申立人の主張は受け入れられるものではないことから、申立人の主張によって、当審の上記(イ)の相違点に対する判断が覆ることはない。 イ 本件発明3について (ア)本件発明3は、上記第3の【請求項3】で記載したとおりであり、本件発明1と共通する事項に下線部を引いて再掲すると、以下のとおりである。 「チタンおよびケイ素を含む複合酸化物に、タングステンまたはモリブデンのなかから選ばれる少なくとも1つの元素を含む化合物を添加し、乾燥、焼成して得られた担体に、少なくともバナジウム化合物を担持させて、焼成し、 前記バナジウム化合物を担持させる際に、少なくともバナジウム化合物とシュウ酸と塩基性化合物とが含まれる水性液を用いることで排ガス処理触媒を製造する方法であって、バナジウムの担持量が五酸化バナジウム換算で0.6質量%以上であり、二酸化ケイ素換算でケイ素の含有量が9質量%以下であり、三酸化モリブデン換算で3.0~10.0質量%のモリブデンおよび/または三酸化タングステン換算で0.5~5.0質量%のタングステンを含み、200℃、窒素雰囲気下で測定したバナジウムK端のX線吸収端構造(XANES)スペクトルを規格化することで求められるプレエッジピークの強度が0.45以下であることを特徴とする排ガス処理触媒の製造方法。」 (イ)甲1発明は「排ガス処理用触媒」の発明であるが、技術的事項を変えないで、そのカテゴリーのみを変えて「排ガス処理用触媒」の製造方法(「甲1発明’」という。)として、上記本件発明と対比すると、本件発明3と甲1発明’とは、少なくとも上記ア(ア)cで記載した相違点1である「200℃、窒素雰囲気下で測定したバナジウムK端のX線吸収端構造(XANES)スペクトルを規格化することで求められるプレエッジピークの強度が0.45以下」である点で相違する。 当該相違点の判断は、上記ア(イ)と同じであるから、本件発明3は、本件発明1と同様に、甲1発明’及び甲1~19に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件発明2及び5について 本件発明2は本件発明1を引用し、本件発明5は本件発明1を直接又は間接的に引用するとともに本件発明3を引用する発明であるから、本件発明1又は3と同様に、本件発明2及び5は、甲1発明(又は甲1発明’)、及び甲1~19に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)取消理由2(甲6を主引例)について ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明3と甲6発明とを対比すると、以下のとおりである。 a 甲6発明の「硫酸チタン溶液を酸化チタンとして取り出し、これに微粒子ケイ酸を添加し、十分に攪拌混合した後、アンモニア水を添加して硫酸チタンを中和加水分解し、微粒子ケイ酸と共沈させ、この沈殿物を濾過、水洗し、乾燥した後、焼成し」たものは、本件発明3の「チタンおよびケイ素を含む複合酸化物」に相当する。 b 甲6発明の「この粉末にパラタングステン酸アンモニウムを含有するメチルアミン溶液を添加し、混練した後、押出機により格子状成形物に押出成形し、乾燥し、次いで、焼成し、酸化タングステン担持触媒」は、「この粉末」が上記aを踏まえると「チタンおよびケイ素を含む複合酸化物」であるから、本件発明3の「チタンおよびケイ素を含む複合酸化物に、タングステンまたはモリブデンのなかから選ばれる少なくとも1つの元素を含む化合物を添加し、乾燥、焼成して得られた担体」に相当する。 c 甲6発明の「前記酸化タングステン担持触媒に、メタバナジン酸アンモニウムとシュウ酸を水に溶解した水溶液を含浸させた後、乾燥し、更に焼成して、酸化タングステンと酸化バナジウムとを担持させた、排ガス処理触媒である窒素酸化物除去用触媒の製造方法」は、本件発明3の「担体に、少なくともバナジウム化合物を担持させて、焼成し、前記バナジウム化合物を担持させる際に、少なくともバナジウム化合物とシュウ酸とが含まれる水性液を用いることで排ガス処理触媒を製造する方法」に相当する。 d 甲6発明の「上記窒素酸化物除去用触媒は、TiO2換算でTiの含有量が75.3質量%、SiO2換算でSiの含有量が15.1質量%、WO3換算でWの含有量が8.83質量%、V2O5換算でVの含有量が質量0.77%からなる」ことは、本件発明3の「バナジウムの担持量が五酸化バナジウム換算で0.6質量%以上」を満たす。 e そうすると、本件発明3と甲6発明とは、 (一致点) 「チタンおよびケイ素を含む複合酸化物に、タングステンまたはモリブデンのなかから選ばれる少なくとも1つの元素を含む化合物を添加し、乾燥、焼成して得られた担体に、少なくともバナジウム化合物を担持させて、焼成し、 前記バナジウム化合物を担持させる際に、少なくともバナジウム化合物とシュウ酸とが含まれる水性液を用いることで排ガス処理触媒を製造する方法であって、バナジウムの担持量が五酸化バナジウム換算で0.6質量%以上である、排ガス処理触媒の製造方法。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点2) 少なくともバナジウム化合物とシュウ酸とが含まれる水性液を用いて、バナジウム化合物を担持させる際に、本件発明3では、当該水溶液に「塩基性化合物」が含まれているのに対し、甲6発明では、「塩基性化合物」が含まれているかどうか不明な点。 (相違点3) 二酸化ケイ素換算でのケイ素の含有量、及び、三酸化タングステン換算でのタングステンの含有量について、本件発明3では、「9質量%以下」及び「0.5~5.0質量%」であるのに対し、甲6発明では、「15.1質量%」及び「8.83質量%」である点。 (相違点4) 排ガス処理触媒が、本件発明1では、「200℃、窒素雰囲気下で測定したバナジウムK端のX線吸収端構造(XANES)スペクトルを規格化することで求められるプレエッジピークの強度が0.45以下」であるが、甲6発明では、そのような特定がない点。 (イ)相違点の判断 事案に鑑み相違点4について判断するに、相違点4は上記相違点1と同じであるから、その判断は上記(1)ア(イ)で述べたとおり、相違点4は、甲1~甲19の記載を参照しても、当業者が容易になし得たこととはいえない。 (ウ)小括 よって、相違点2及び3について検討するまでもなく、本件発明3は、甲6に記載された発明、及び甲1~19に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件発明5について 本件発明5は、本件発明1を直接又は間接的に引用するとともに本件発明3を引用する発明であるから、本件発明3と同様に、本件発明5は、甲6発明、及び甲1~19に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)29条関連についてのまとめ 本件発明3及び5は、甲1発明’ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当せず、そして、本件発明1~3及び5は、甲1発明(又は甲1発明’)に基いて、あるいは、本件発明3及び5は、甲6発明に基づいて、甲1~19に記載された事項を参照しても、当業者が容易に発明をすることができたものではないことから、本件発明1~3及び5係る特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものではなく、申立理由1及び取消理由2によって取り消すことはできない。 2 36条関連(取消理由1、申立理由2及び3)について (1)取消理由1(サポート要件)について 上記第2の1(1)で記載したとおり、訂正によって請求項3に「排ガス処理触媒」が「200℃、窒素雰囲気下で測定したバナジウムK端のX線吸収端構造(XANES)スペクトルを規格化することで求められるプレエッジピークの強度が0.45以下」であること、及び、バナジウム化合物を担持させる際に「少なくともバナジウム化合物とシュウ酸と塩基性化合物とが含まれる水性液を用いる」ことが特定されて本件発明3となったことから、取消理由1の(1)及び(2)とも理由がなくなった。また、本件発明3を引用する本件発明5についても、同様に、取消理由1の(1)及び(2)とも理由がなくなった。 したがって、本件発明3及び5に係る特許を、取消理由1によって取り消すことはできない。 (2)申立理由2(サポート要件)について ア サポート要件の判断手法 判例等によると、サポート要件の判断手法について、特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が本件特許の出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであるとされている。 イ 課題及びその解決手段 本件発明の解決しようとする課題は、上記第2(2)の(本1)に記載されているとおり、「効率的に窒素酸化物を処理できる触媒、その製造方法、およびその触媒を用いた排ガス処理方法」「を提供すること」(以下「本件発明の課題」という。)にあるといえ、その課題を解決するための手段として(本1)に「本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、バナジウムK端のX線吸収端構造(XANES)スペクトルを規格化することで求められるプレエッジピークの強度が0.45以下である触媒は、排ガス中の窒素酸化物を効率的に処理できることを見出し、本件発明を完成した。」と記載されている。 ウ Ti-Si複合酸化物について 上記イで述べたとおり、本件発明の課題を解決するための手段は「バナジウムK端のX線吸収端構造(XANES)スペクトルを規格化することで求められるプレエッジピークの強度が0.45以下」ということであるから、担体を得るための原料である「タングステンまたはモリブデンのなかから選ばれる少なくとも1つの元素を含む化合物を添加し、乾燥、焼成する」「チタンおよびケイ素を含む」ものが、「複合」酸化物であるかいかんによらず、上記プレエッジピークの強度が0.45以下であれば、本件発明の課題を解決できると認識できるものである。 なお、本件発明1は、製造された排ガス処理触媒の発明であり、本件明細書には、担体を得るための原料である「タングステンまたはモリブデンのなかから選ばれる少なくとも1つの元素を含む化合物を添加し、乾燥、焼成する」「チタンおよびケイ素を含む」ものが、「複合酸化物」であることは記載されているものの、厳密には、製造された排ガス処理触媒においても「チタンとケイ素が複合酸化物」の状態であるのかは明記されていない。さらに、製造された排ガス処理触媒の発明において、原料の状態を特定することは、いわゆるプロダクト・バイ・プロセス(PBP)となり、発明を不明確とするものともなる。 したがって、上記第5の2(1)で記載した申立人の主張を受け入れることはできず、本件発明1、2及び5は、本件発明の課題を解決できると認識できるものであり、発明の詳細な説明に記載したものである。 エ 各元素の含有量の数値範囲について 本件発明1及び本件発明3で特定する各元素の含有量を満たす排ガス用触媒の実施例は、実施例1~6として存在しており、仮に、実施例1~6だけでは申立人の主張するとおり「実施例が乏しく、かつ、偏在しているため、数値範囲の組合せの大部分には実施例がない」ということであるにしろ、本件発明の課題を解決するための手段は「バナジウムK端のX線吸収端構造(XANES)スペクトルを規格化することで求められるプレエッジピークの強度が0.45以下」ということであり、実施例1~6以外の各元素の含有量の範囲では「バナジウムK端のX線吸収端構造(XANES)スペクトルを規格化することで求められるプレエッジピークの強度が0.45以下」とはならないということがいえないのであるから、申立人の「実施例が乏しく、かつ、偏在しているため、数値範囲の組合せの大部分には実施例がない」という主張をもってして、本件発明1及び3が、本件発明の課題を解決できると認識できないとはいえない。 したがって、上記第5の2(2)で記載した申立人の主張を受け入れることはできず、本件発明1~5は、本件発明の課題を解決できると認識できるものであり、発明の詳細な説明に記載したものである。 オ プレエッジピークの強度について 本件明細書の実施例5及び6は、上記(本エ)で摘記した表1によれば、プレエッジピーク強度が0.44及び0.45であり、脱硝率は91%及び90%である。申立人は「実施例5及び6では十分な脱硝性能が得られないから、プレエッジピークが0.42(実施例1ないし4の上限)を超えた構成を採用しても、本件課題を解決することができると認識することはできない」と主張しているが、表1を参照すると、プレエッジピーク強度が0.45を超える比較例1~6については、脱硝率が、順に88%(プレエッジピーク強度:0.46)、86%(プレエッジピーク強度:0.48)、80%(プレエッジピーク強度:0.50)、75%(プレエッジピーク強度:0.52)、61%(プレエッジピーク強度:0.63)、48%(プレエッジピーク強度:0.80)となっていることから、実施例5及び6の91%及び90%が十分な脱硝性能が得られないとまではいえない。そして、上記表1を参照すると、バナジウムK端のX線吸収端構造(XANES)スペクトルを規格化することで求められるプレエッジピークの強度が「0.45以下」ということが、本件発明の課題を解決するための手段となっていることが裏付けられる。 したがって、上記第5の2(3)で記載した申立人の主張を受け入れることはできず、本件発明1、2及び5は、本件発明の課題を解決できると認識できるものであり、発明の詳細な説明に記載したものである。 カ バナジウムの含有量について 申立人の主張は、「実施例5(バナジウム3.0質量%)及び実施例6(バナジウム1.0質量%)は、低い脱硝率しか達成されていない」ことをもってして、それらを含む「五酸化バナジウム換算質量%で…0.6質量%以上」という範囲は、本件発明の課題を解決できないというものであるが、上記オで述べたとおり、実施例5及び6の91%及び90%では十分な脱硝性能が得られないとまではいえないのであるから、上記主張は前提において誤りであるといえる。 そうすると、「バナジウムK端のX線吸収端構造(XANES)スペクトルを規格化することで求められるプレエッジピークの強度が0.45以下」を満たす排ガス処理触媒において、「五酸化バナジウム換算質量%で…0.6質量%以上」と特定されているからといって、本件発明の課題を解決できると認識できないとはいえない。 したがって、上記第5の2(4)で記載した申立人の主張を受け入れることはできず、本件発明1~5は、本件発明の課題を解決できると認識できるものであり、発明の詳細な説明に記載したものである。 キ 担体について 本件発明の課題を解決するための手段である「バナジウムK端のX線吸収端構造(XANES)スペクトルを規格化することで求められるプレエッジピークの強度が0.45以下」ということを満たす排ガス処理触媒の担体の製造工程の1種が、申立人が主張する「少なくともチタンを含む組成物を焼成して得られたチタン系酸化物(二酸化チタン又はチタンと他の金属との複合酸化物)に、少なくともタングステンまたはモリブデンを含む水溶液を添加して乾燥・焼成して得」るという工程であるといえるが、当該工程でなければ上記プレエッジピークの強度が0.45以下にはならないとはいえず、当該工程いかんによらず、上記プレエッジピークの強度が0.45以下であれば、本件発明の課題を解決できると認識できるものである。 なお、本件発明1は、製造された排ガス処理触媒の発明であり、製造された排ガス処理触媒の発明において、当該工程を特定することは、いわゆるプロダクト・バイ・プロセス(PBP)となり、発明を不明確とするものともなる。 したがって、上記第5の2(5)で記載した申立人の主張を受け入れることはできず、本件発明1、2及び5は、本件発明の課題を解決できると認識できるものであり、発明の詳細な説明に記載したものである。 ク まとめ 以上のことから、上記第5の2で記載した申立人の主張はいずれも受け入れることはできず、本件発明1~5は、発明の詳細な説明に記載したものであるから、本件発明1~5に係る特許を、申立理由2によって取り消すことはできない。 (3)申立理由3(明確性)について 本件発明1の「排ガス処理用触媒」における「担体」とは、その「上に」「バナジウムを担持」するものであり、それは「チタンとケイ素を含み、さらにタングステンまたはモリブデンのなかから選ばれる少なくとも1つの元素を含む」ものと明確に特定されており、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。 なお、申立人は「請求項3は、「担体」を「チタンおよびケイ素を含む複合酸化物に、タングステンまたはモリブデンのなかから選ばれる少なくとも1つの元素を含む化合物を添加し、乾燥、焼成して得られた担体」と特定しているので、これに該当するものが「担体」に該当すると理解できる。しかしながら、請求項1においては、請求項3における「担体」のような特定がなされておらず・・・理解することができない。」と主張しているが、上記(2)キで述べたように、本件発明1は、製造された排ガス処理触媒の発明であり、製造された排ガス処理触媒の発明において、当該工程を特定することは、いわゆるプロダクト・バイ・プロセス(PBP)ともなり、明確な発明を逆に不明確なものとすることにもなる。 したがって、上記第5の3で記載した申立人の主張を受け入れることはできず、本件発明1、2及び5は明確なものであるから、本件発明1、2及び5に係る特許を、申立理由3によって取り消すことはできない。 第8 むすび 以上のとおり、本件発明1~3及び5に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によって、取り消すことはできない。さらに、他に本件発明1~3及び5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、請求項4係る特許は、訂正により削除された。これにより、特許異議の申立てについて、請求項4に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-701117

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