特許異議申立
2022-701220
コード・ゴム組成物複合体、タイヤ及びコード・ゴム組成物複合体の製造方法
- 審判番号
- 2022-701220
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-069805
- 登録番号
- 7087586
- 請求日
- 2022年12月08日
- 審決日
- 2023年08月01日
- 公報発行日
- 2023年11月24日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】住友ゴム工業株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人有古特許事務所
- 【異議申立人】中山 清
- 審判長/審判官
- 審判長 藤原 直欣
- 審判官 中野 裕之
- 審判官 藤井 眞吾
- 分類
- P1651.121-YAA(D06M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7087586号発明「コード・ゴム組成物複合体、タイヤ及びコード・ゴム組成物複合体の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7087586号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、後の請求項〔1~4〕、〔5~7〕について訂正することを認める。
特許第7087586号の請求項1~7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7087586号(以下「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての出願は、平成30年3月30日に出願され、令和4年6月13日にその特許権の設定登録がされ、令和4年6月21日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議申立ての経緯は、次のとおりである。
令和4年12月 8日 :特許異議申立人中山清(以下「申立人」という。)による本件特許に対する特許異議の申立て
令和5年 3月 3日付け:取消理由通知書
令和5年 4月26日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和5年 6月16日 :申立人による意見書の提出
第2 本件訂正
1 本件訂正の内容
訂正請求書による訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。また、訂正自体を、「本件訂正」という。)の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、以下のとおりである。
(1)訂正事項1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1における「前記接着剤組成物による処理は、(1)第一処理剤として、(a)エポキシ化合物としてソルビトールポリグリシジルエーテルと、(b)ブロックドイソシアネートとを含む接着剤組成物で前記有機繊維からなるコードを処理した後、(2)第一処理剤で処理した前記有機繊維からなるコードをレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)を含む第二処理剤で処理することである」との記載を、
「前記接着剤組成物による処理は、(1)第一処理剤として、(a)エポキシ化合物としてソルビトールポリグリシジルエーテルと、(b)ブロックドイソシアネートとを含む接着剤組成物で前記有機繊維からなるコードを処理した後、(2)第一処理剤で処理した前記有機繊維からなるコードをレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)を含む第二処理剤で処理することであり、前記接着剤組成物における(b)ブロックドイソシアネートの含有量が(a)エポキシ化合物100質量部に対して200質量部以上400質量部以下であり、前記第一処理剤は、ゴムラテックスを含有しない」と訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2~4も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項5における「前記接着剤組成物による処理は、(1)第一処理剤として、(a)エポキシ化合物としてソルビトールポリグリシジルエーテルと、(b)ブロックドイソシアネートとを含む接着剤組成物で前記有機繊維からなるコードを処理した後、(2)第一処理剤で処理した前記有機繊維からなるコードをレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)を含む第二処理剤で処理することである」との記載を、
「前記接着剤組成物による処理は、(1)第一処理剤として、(a)エポキシ化合物としてソルビトールポリグリシジルエーテルと、(b)ブロックドイソシアネートとを含む接着剤組成物で前記有機繊維からなるコードを処理した後、(2)第一処理剤で処理した前記有機繊維からなるコードをレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)を含む第二処理剤で処理することであり、前記接着剤組成物における(b)ブロックドイソシアネートの含有量が(a)エポキシ化合物100質量部に対して200質量部以上400質量部以下であり、前記第一処理剤は、ゴムラテックスを含有しない」と訂正する。
(請求項5の記載を引用する請求項6、7も同様に訂正する。)
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、「接着剤組成物」について「(b)ブロックドイソシアネートの含有量が(a)エポキシ化合物100質量部に対して200質量部以上400質量部以下であ」るとの構成を付加し、「第一処理剤」が「ゴムラテックスを含有しない」構成を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、明細書の発明の詳細な説明には、「接着剤組成物」について「本開示の接着剤組成物におけるブロックドイソシアネートの含有量は、エポキシ化合物100質量部に対して、50質量部以上500質量部以下が好ましく、200質量部以上400質量部以下がより好ましい。」(【0054】)と記載されている。また、「第一処理剤がゴムラテックスを含有しない」とする除く事項を特定することにより、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するとはいえない。したがって、当該訂正事項は、新規事項の追加に該当しない。
そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しない。
(2)訂正事項2について
訂正事項1に関する(1)と同様である。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕、〔5~7〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1~7に係る発明(以下「本件発明1」等という。まとめて「本件発明」ともいう。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~7に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
有機繊維からなるコードに6.8×10-2N/tex以下の張力をかけながら接着剤組成物による処理を施すこと、及び前記接着剤組成物による処理を施したコードをゴム組成物で被覆することを有する方法により得られ、
前記接着剤組成物による処理を施したコードは、2%伸長時の弾性率が6000MPa以上であり、
前記接着剤組成物による処理は、
(1)第一処理剤として、(a)エポキシ化合物としてソルビトールポリグリシジルエーテルと、(b)ブロックドイソシアネートとを含む接着剤組成物で前記有機繊維からなるコードを処理した後、
(2)第一処理剤で処理した前記有機繊維からなるコードをレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)を含む第二処理剤で処理することであり、前記接着剤組成物における(b)ブロックドイソシアネートの含有量が(a)エポキシ化合物100質量部に対して200質量部以上400質量部以下であり、前記第一処理剤は、ゴムラテックスを含有しない、有機繊維からなるコードとゴム組成物とが一体となったコード・ゴム組成物複合体。
【請求項2】
前記接着剤組成物は、重量平均分子量が600以上のエポキシ化合物を含むものである、請求項1に記載のコード・ゴム組成物複合体。
【請求項3】
前記有機繊維がポリエステル繊維である、請求項1または2に記載のコード・ゴム組成物複合体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のコード・ゴム組成物複合体を、ジョイントレスバンドとして用いたタイヤ。
【請求項5】
有機繊維からなるコードに6.8×10-2N/tex以下の張力をかけながら接着剤組成物による処理を施すこと、及び
前記接着剤組成物による処理を施したコードをゴム組成物で被覆することを有し、
前記接着剤組成物による処理を施したコードは、2%伸長時の弾性率が6000MPa以上であり、
前記接着剤組成物による処理は、
(1)第一処理剤として、(a)エポキシ化合物としてソルビトールポリグリシジルエーテルと、(b)ブロックドイソシアネートとを含む接着剤組成物で前記有機繊維からなるコードを処理した後、
(2)第一処理剤で処理した前記有機繊維からなるコードをレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)を含む第二処理剤で処理することであり、前記接着剤組成物における(b)ブロックドイソシアネートの含有量が(a)エポキシ化合物100質量部に対して200質量部以上400質量部以下であり、前記第一処理剤は、ゴムラテックスを含有しない、有機繊維からなるコードとゴム組成物とが一体となったコード・ゴム組成物複合体の製造方法。
【請求項6】
前記エポキシ化合物は、重量平均分子量が600以上である、請求項5に記載のコード・ゴム組成物複合体の製造方法。
【請求項7】
前記有機繊維がポリエステル繊維である、請求項5に記載のコード・ゴム組成物複合体の製造方法。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1~7に係る特許に対して、当審が特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(進歩性)請求項1~7に係る発明は、引用文献1(甲第1号証)に記載された発明及び引用文献3(甲第3号証)に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到することができたものである。よって、請求項1~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
引用文献等一覧
引用文献1:特開2013-76186号公報(甲第1号証)
引用文献2:特開2011-111004号公報(甲第3号証)
2 引用文献の記載
引用文献1の【請求項1】、【請求項6】、【0001】~【0009】、【0011】、【0025】~【0029】、【0048】、【0058】、【0082】~【0088】の記載、特に実施例1の記載(【0082】~【0088】)から、引用文献1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「ポリエステルマルチフィラメント糸2本を撚糸した未処理コードに0.20cN/dtexの張力をかけながら第1処理剤及び第2処理剤による処理を施すこと、及び
前記第1処理剤及び第2処理剤による処理を施したコードをゴム補強用とする方法により得られ、
前記第1処理剤及び第2処理剤による処理は、
(1)第1処理剤として、(a)脂肪族ポリエポキシド化合物としてソルビトール型エポキシ樹脂と、(b)ブロックドポリイソシアネート化合物としてジフェニルメタンビス4,4-エチレンウレアとを含む組成物で前記未処理コードを処理した後、
(2)第1処理剤で処理した前記未処理コードをレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)を含む第2処理剤で処理することである、タイヤゴム中に埋め込まれるゴム補強用ポリエステル繊維コード。」
3 当審の判断
(1)本件発明1
ア 対比
請求項1に係る発明(以下「本件発明1」という。以下他の請求項も同様とする。)と引用発明とを対比する。
引用発明の「ポリエステルマルチフィラメント糸からなる未処理コード」、「ブロックドポリイソシアネート化合物としてジフェニルメタンビス4,4-エチレンウレア」は、本件発明1の「有機繊維からなるコード」、「ブロックドイソシアネート」に、それぞれ相当する。
引用発明の「第1処理剤として、(a)脂肪族ポリエポキシド化合物としてソルビトール型エポキシ樹脂と、(b)ブロックドポリイソシアネート化合物としてジフェニルメタンビス4,4-エチレンウレアとを含む組成物」は、「第一処理剤として、(a)エポキシ化合物と、(b)ブロックドイソシアネートとを含む組成物」の限りにおいて、本件発明1の「第一処理剤として、(a)エポキシ化合物としてソルビトールポリグリシジルエーテルと、(b)ブロックドイソシアネートとを含む接着剤組成物」に一致する。
また、引用発明の「レゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)」、「第2処理剤」は、本件発明1の「レゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)」、「第二処理剤」にそれぞれ相当する。
そして、引用発明の「第1処理剤及び第2処理剤による処理」は、「処理」である限りにおいて、本件発明1の「接着剤組成物による処理」に一致する。
引用発明における「タイヤゴム中に埋め込まれるゴム補強用ポリエステル繊維コード」は、本件発明1における「有機繊維からなるコード」に相当する。
そうすると、両者は以下の点で一致し、相違する。
<一致点>
「有機繊維からなるコードに張力をかけながら処理を施すこと、及び前記処理を施したコードをゴム組成物で被覆することを有する方法により得られ、
前記処理は、
(1)第一処理剤として、(a)エポキシ化合物と、(b)ブロックドイソシアネートとを含む組成物で前記有機繊維からなるコードを処理した後、
(2)第一処理剤で処理した前記有機繊維からなるコードをレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)を含む第二処理剤で処理することである、有機繊維からなるコード。」
<相違点1>
本件発明1は、当該有機繊維からなるコードと「ゴム組成物」とが一体となった「コード・ゴム組成物複合体」であるのに対して、引用発明は「タイヤゴム中に埋め込まれるゴム補強用ポリエステル繊維コード」である点。
<相違点2>
本件発明1は「6.8×10-2N/tex以下の張力をかけ」るのに対して、引用発明は、「0.20cN/dtexの張力をかけ」る点。
<相違点3>
「処理」について、本件発明1は、「接着剤組成物による処理」であるのに対して、引用発明は「第1処理剤及び第2処理剤による処理」である点。
<相違点4>
本件発明1は、「前記接着剤組成物による処理を施したコードは、2%伸長時の弾性率が6000MPa以上であ」るのに対して、引用発明は弾性率が不明である点。
<相違点5>
「第一処理剤として、(a)エポキシ化合物と、(b)ブロックドイソシアネートとを含む組成物」について、本件発明1は、「第一処理剤として、(a)エポキシ化合物としてソルビトールポリグリシジルエーテルと、(b)ブロックドイソシアネートとを含む接着剤組成物」であり、さらに「前記接着剤組成物における(b)ブロックドイソシアネートの含有量が(a)エポキシ化合物100質量部に対して200質量部以上400質量部以下であ」るのに対して、引用発明は「第1処理剤として、(a)脂肪族ポリエポキシド化合物としてソルビトール型エポキシ樹脂と、(b)ブロックドポリイソシアネート化合物としてジフェニルメタンビス4,4-エチレンウレアとを含む組成物」であり、含有量について特定されていない点。
<相違点6>
「第一処理剤」について、本件発明1は「ゴムラテックスを含有しない」のに対し、引用発明はそうであるか不明である点。
イ 判断
事案に鑑み、まず相違点6について検討する。
引用発明の課題は「・・・高温に曝された場合のポリエステル繊維とゴムとの耐熱接着性、耐熱強力保持性、耐疲労性が改善され、かつ耐疲労性が実用上十分であるゴム補強用ポリエステル繊維コードの製造方法を提供する」(【0008】)ことである。
そのために引用文献1には「・・・さらに接着剤中のゴムラテックス量を増やすことで、接着剤中のゴムラテックスと被接着側のゴム層との共架橋により強固なゴム-ゴム間の結合を形成させ、接着性を更に向上させることが出来ると考えられる。」(【0009】)と記載され、「・・・(C)ガラス転移点が-30~0℃であるビニルピリジン・スチレン・ブタジエンゴムラテックス・・・を含む第1処理剤」(【請求項1】)、「本発明の第1処理剤には、耐熱接着性を向上させる観点から、(C)ガラス転移温度が-30~0℃であるビニルピリジン・スチレン・ブタジエンゴムラテックスを混合する必要がある。」(【0033】)と記載される。
してみると、引用発明の課題解決のために、第1処理剤の「(C)ガラス転移点が-30~0℃であるビニルピリジン・スチレン・ブタジエンゴムラテックス」は不可欠なものと解される。
したがって、引用発明において、上記相違点6に係る本件発明1の発明特定事項を採用することは当業者であっても容易に想到し得たものではない。
この点、申立人は、令和5年6月16日に提出された意見書において、主に以下のとおり主張している。
「(イ)上記の通り、引用文献1の従来技術として記載された、上記特許文献1~4記載のポリエステル繊維とゴムとの耐熱接着性が実用上十分でないゴム補強用ポリエステル繊維コードは、引用発明1の従来技術と位置付けられるものであるところ、特許文献4(特開2001-63312号公報;甲第6号証として提出する)の実施例には、ゾルビトールポリグリシジルエーテルを含み、ゴムラテックスを含まない組成の1浴と、レブルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)を含む組成の2浴、から構成されるポリエステル用ディップ液組成(接着剤III)が記載されている(【0042】-【0043】、表2参照)。
つまり、ゾルビトールポリグリシジルエーテルを含み、ゴムラテックスを含まない第1処理液と、レゾルシン、ホルマリン、ゴムラテックスを含む第2処理液とからなる、ポリエステル用ディンプ液が記載されている。
したがって、当業者は、引用文献1さらには特許文献4を参酌することにより、引用発明1からゴムラテックスを除くものとすることに、容易に想到し得る。」
しかしながら、引用文献1には「上記特許文献1~4に記載の方法によれば、・・・未だ実用上十分ではないか、あるいは耐疲労性が十分とはいえないものであった」(【0007】)としたうえで、「・・・本発明の目的は、上述した従来技術では達成できなかった、高温に曝された場合のポリエステル繊維とゴムとの耐熱接着性、耐熱強力保持性、耐疲労性が改善され、かつ耐疲労性が実用上十分であるゴム補強用ポリエステル繊維コードの製造方法を提供する・・・」(【0008】)と記載されている。
してみると、引用文献1に記載される特許文献4(甲第6号証)では解決できない課題を、引用発明は解決することができるものであって、引用発明に特許文献4(甲第6号証)に記載された事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことではない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明2~4
本件発明2~4は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(1)で検討したのと同様に、本件発明2~4は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明5
本件発明1と引用発明とは以下の点で一致し、上記相違点1~6を有する。
<一致点>
「有機繊維からなるコードに張力をかけながら処理を施すこと、及び前記処理を施したコードをゴム組成物で被覆することを有し、
前記処理は、
(1)第一処理剤として、(a)エポキシ化合物と、(b)ブロックドイソシアネートとを含む組成物で前記有機繊維からなるコードを処理した後、
(2)第一処理剤で処理した前記有機繊維からなるコードをレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)を含む第二処理剤で処理することである、有機繊維からなるコードの製造方法。」
そして、上記(1)で検討したのと同様に、引用発明において、上記相違点6に係る本件発明1の発明特定事項を採用することは当業者であっても容易に想到し得たものではない。
したがって、相違点1~5について検討するまでもなく、本件発明5は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件発明6、7
本件発明6、7は、本件発明5の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(3)で検討したのと同様に、本件発明6、7は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第5 取消理由通知で採用しなかった理由について
申立人は、令和4年12月8日に提出された異議申立書において、「本件請求項1、3記載の特許発明は、甲第1号証(又は甲第2号証)及び甲第3号証(又は甲第4号証)の記載に基づいて容易に発明できた程度のものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない」と主張している(第12ページ第22行から第25行)。
しかしながら、甲第2号証(特開2017-150105号公報、以下「甲2」という。他も同じ。)は、「耐疲労性が改善され、かつ繊維とゴムとの接着性が実用上充分である有機繊維コードを提供すること」を課題とし(【0010】)、その課題を解決するための実施例1~6において「第1処理液」に「ゴムラテックス」を含有するものである(【0069】【表1】)。してみると、本件発明1、5と甲2に記載された発明とは、少なくとも上記第4 3(1)アで述べた相違点6を有する。そして、甲2に記載された発明は、「第1処理液」に「ゴムラテックス」を含有する実施例のみで課題を解決するものであり、当該相違点6に係る本件発明1、5の発明特定事項とすることの記載も示唆もされていないといえる。
したがって、本件発明1~7は、甲2に記載された発明及び甲3(又は甲4)に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-701220