特許異議申立
2025-700363
防舷材用ゴム組成物とそれを用いた防舷材
- 審判番号
- 2025-700363
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-128417
- 登録番号
- 7557696
- 請求日
- 2025年03月31日
- 審決日
- 2025年06月13日
- 公報発行日
- 2025年07月25日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】住友ゴム工業株式会社
- 【権利者代理人】二口 治
- 【異議申立人】株式会社 ユビランド・インターナショナル
- 審判長/審判官
- 審判長 藤原 浩子
- 審判官 加藤 幹
- 審判官 近野 光知
- 分類
- P1651.121-Y (C08L) / P1651.537-Y (C08L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7557696号発明「防舷材用ゴム組成物とそれを用いた防舷材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7557696号の請求項1~5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7557696号(以下「本件特許」という。)に係る出願は、令和2年7月29日に出願され、令和6年9月19日にその特許権の設定登録(請求項の数5)がされ、同年同月30日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、令和7年3月31日に、本件特許の請求項1~5に係る特許に対して、特許異議申立人 株式会社ユビランド・インターナショナル(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~5に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明5」といい、本件特許の願書に添付された明細書を「本件明細書」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
【請求項1】
ゴム、
(A) 窒素吸着比表面積SAが70m2/g以上のカーボンブラック、および
(B) 窒素吸着比表面積SAが70m2/g未満のカーボンブラック
を含み、
ゴムは、天然ゴムを60~100質量部及びスチレンブタジエンゴム(SBR)を0~40質量部と、オイルとを含むものであり、
前記ゴムの総量100質量部あたりの、
(A)のカーボンブラックの割合は25~60質量部、
(B)のカーボンブラックの割合は5~40質量部、
かつ前記(A)(B)のカーボンブラックの合計の割合は65質量部以上、80質量部以下である、
防舷材用ゴム組成物。
【請求項2】
前記(B)のカーボンブラックの窒素吸着比表面積SAは、10m2/g以上、50m2/g以下である請求項1に記載の防舷材用ゴム組成物。
【請求項3】
前記(A)(B)のカーボンブラックの質量比(B)/(A)は、1未満である請求項1に記載の防舷材用ゴム組成物。
【請求項4】
船舶等の接舷によって弾性変形する支承脚部を含み、少なくとも前記支承脚部は、前記請求項1ないし3のいずれか1項に記載の防舷材用ゴム組成物の架橋物からなる防舷材。
【請求項5】
前記支承脚部を含む全体が、前記防舷材用ゴム組成物によってアーチ型に形成された請求項4に記載の防舷材。
第3 特許異議申立書に記載された申立理由の概要及び証拠方法
1 特許異議申立書に記載された申立理由の概要
(1)申立理由1(甲第1号証を主引用例とする進歩性)
本件発明1~3は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明及び甲第1~第4号証に記載された事項に基いて、本件発明4及び5は、甲第1号証に記載された発明及び甲第1~第5号証に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)申立理由2(サポート要件)
本件発明1~5についての特許は、以下の理由により、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(理由)本件発明1~5が解決しようとする課題は「船舶等の接舷によって支承脚部が座屈変形しやすい防舷材を、よりコスト安価に製造できる防舷材用ゴム組成物と、それを用いた防舷材を提供すること」であるが、本件発明1~5は防舷材の構成、形状、寸法を特定していない。そして、特定のゴム組成物が座屈変形のしやすいものであっても形状、幅等の寸法が異なれば座屈変形しない場合があることは十分に想定されるところ、本件明細書の発明の詳細な説明に具体的に記載されている防舷材は数十センチ程度の小さなものに限られるから、本件発明1~5は座屈変形する防舷材だけではなく座屈変形しない防舷材を含む可能性が高い。したがって、本件発明1~5は発明の詳細な説明に記載したものではない。
2 特許異議申立書に添付して提出された証拠方法
甲第1号証:特開2000-309914号公報
甲第2号証:特開2016-98357号公報
甲第3号証:国際公開第2018/235587号
甲第4号証:N. C. H. HUMPHREYS, F. I. R. I., Blends of Carbon Blacks: Technical and Economic Aspects, Transactions and Proceedings of The Institution of the Rubber Industry, The Institution of the Rubber Industry, 1955, p. 22-32及びその訳文
甲第5号証:特開2016-199927号公報
以下「甲第1号証」等を「甲1」等という。
第4 当審の判断
1 申立理由1(甲1を主引用例とする進歩性)について
(1)甲号証の記載
ア 甲1の記載
甲1には以下のとおりの記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、船舶等の接岸時または係留時の緩衝材として用いられる防舷材に関する。」
「【0011】
【発明の実施の形態】本発明でいう防舷材は、平坦な頭部とそれに末広がり状でつながる一対の支衝脚部からなり、ゴムの圧縮応力と座屈変形を利用し、圧縮時のエネルギーを吸収するタイプが対象である。支衝脚部は各々独立していてもよいし、底部で連結されていてもよい。」
「【0017】本発明の防舷材におけるゴム製本体は、常法により、天然ゴム(NR)あるいは合成ゴムの中から、単独もしくはブレンドしたものを用いて製造される。合成ゴムとしては、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン・プロピレン三元共重合ゴム(EPDM)等が挙げられる。このゴム組成物は、通常、添加されるようなゴム用配合剤を含有していてもよく、その例としては、充填剤(例、加硫剤、カーボンブラック、シリカ、クレーなど)、軟化剤、老化防止剤、加工助剤などが挙げられる。」
「【0021】本発明の防舷材30は、合成樹脂層16を作製するためのシート32と、ゴム製防舷材本体10を作製するためのゴムシート34とを金型36内に敷きつめた後、プレス加硫機38により加硫し、冷却後脱型することによって得られる。ここで、金型は、前記したように、防舷材頂部から該防舷材高さの1/6以上に相当する距離の表面部に少なくとも屈曲点A,A'を有し、かつ該屈曲点おける頂部面に対し平行方向の断面幅B1と頂部幅Bとの関係においてB1が1.3B以下である屈曲点を有するように設計されたものを用いる。」
「【0023】一方、防舷材本体用のゴムシート34は、前記のゴム材料を素練りし、これに加硫剤、加硫促進剤および必要に応じてカーボンブラック等の他の添加剤を、ゴム製防舷材に適した組成比にて配合し、混練した後、作業上適当な大きさのシートに成形することによって得られる。金型36内にシートを敷きつめる際には、まず、防舷材本体10の受衝面12に該当する箇所に合成樹脂層用のシート32を敷きつめ、次いで、防舷材本体用のゴムシート34を敷きつめる。こうして、防舷材30の原型が金型36内に形成される。この原型をプレス加硫し、冷却、脱型することによって、本発明の防舷材30が得られる。」
「【0030】実施例
天然ゴムとスチレンゴム(SBR)を50:50の重量比からなるゴム製防舷材本体と、その頭部受衝層が超高分子量ポリエチレン(粘度法による分子量;330x104、JIS K 7125による摩擦係数μ;0.2)よりなり、次の形状を有する防舷材(図2a)を作製した。ゴム製本体と受衝層は、金型を用いて、160℃で10時間加硫し、接着させた。」
イ 甲2の記載
甲2には以下のとおりの記載がある。
「【請求項1】
天然ゴムを含むゴム分、可塑剤、充填剤、および前記ゴム分を架橋させるための架橋成分を少なくとも含み、総量中に占める前記充填剤の配合割合が25質量%以上、45質量%以下であるとともに、架橋させたサンプルから日本工業規格JIS K6229:1998に規定された測定方法によって求められるアセトン抽出分が10質量%以下である防舷材用ゴム組成物。
…
【請求項3】
前記充填剤はカーボンブラックである請求項1または2に記載の防舷材用ゴム組成物。
【請求項4】
前記カーボンブラックは、窒素吸着比表面積が50m2/g以上、95m2/g以下で、かつDBP吸油量が90cm3/100g以上、110cm3/100g以下である請求項3に記載の防舷材用ゴム組成物。
【請求項5】
前記ゴム分は前記天然ゴムとスチレンブタジエンゴムの2種である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の防舷材用ゴム組成物。」
「【0001】
本発明は、例えば岸壁等に設置されて船舶の接岸時や係留時に緩衝材として機能する防舷材の形成材料として用いられる防舷材用ゴム組成物に関するものである。
【技術分野】
【0002】
岸壁等に設置されて船舶等の接岸時や係留時に緩衝材として機能する防舷材としては、ゴム等の弾性材料によって全体を一体に形成したものが、構造が簡単でしかも壊れにくいため広く普及している。
このうちゴム製の防舷材は、具体的には例えば天然ゴム等のゴム分にオイルなどの可塑剤、カーボンブラックなどの充填剤、ゴム分を架橋させるための架橋成分、および各種添加剤等を配合したゴム組成物を所定の防舷材の立体形状に成形するとともにゴム分を架橋させて形成するのが一般的である(特許文献1)。」
「【0021】
天然ゴムとSBRを併用する場合、ゴム分の総量100質量部中に占めるSBRの配合割合は10質量部以上、特に30質量部以上であるのが好ましく、50質量部以下であるのが好ましい。…」
「【0023】
またカーボンブラックとしては、ゴム組成物の総量に対する配合割合とゴム分に対する補強効果との兼ね合いを考慮して、同量ないしは少量の配合で防舷材の緩衝性能や硬度をより一層効率よく向上するために、粒径が比較的小さく、かつストラクチャが比較的発達したグレードのものを用いるのが好ましい。
特に窒素吸着比表面積が50m2/g以上、95m2/g以下で、かつDBP吸油量(A法)が90cm3/100g以上、110cm3/100g以下であるカーボンブラックが好適に使用される。
【0024】
上記特性を満足するカーボンブラックとしては、例えば東海カーボン(株)製のシースト3〔HAF、窒素吸着比表面積79m2/g、DBP吸油量:101cm3/100g〕、シーストN〔LI-HAF、窒素吸着比表面積74m2/g、DBP吸油量:101cm3/100g〕等が挙げられる。…」
「【0047】
…
〈実施例4〉
充填剤としてのカーボンブラックの量を50質量部としたこと以外は実施例3と同様にしてシート状の防舷材用ゴム組成物を調製した。
【0048】
調製した防舷材用ゴム組成物の総量中に占める、充填剤としてのカーボンブラックの配合割合は29.4質量%、可塑剤としてのオイルの配合割合は5.9質量%であった。
〈実施例5〉
充填剤としてのカーボンブラックの量を80質量部、可塑剤としてのオイルの量を15質量部としたこと以外は実施例3と同様にしてシート状の防舷材用ゴム組成物を調製した。
【0049】
調製した防舷材用ゴム組成物の総量中に占める、充填剤としてのカーボンブラックの配合割合は39.0質量%、可塑剤としてのオイルの配合割合は7.3質量%であった。…」
「【0050】
…
〈実施例7〉
充填剤として、東海カーボン(株)製のシーストV〔GPF、窒素吸着比表面積27m2/g、DBP吸油量:87cm3/100g〕60質量部を配合したこと以外は実施例2と同様にしてシート状の防舷材用ゴム組成物を調製した。
【0051】
調製した防舷材用ゴム組成物の総量中に占める、充填剤としてのカーボンブラックの配合割合は32.4質量%、可塑剤としての液状イソプレンゴムの配合割合は8.1質量%であった。…」
「【0056】
…
〈比較例3〉
充填剤として、東海カーボン(株)製のシースト3〔HAF、窒素吸着比表面積79m2/g、DBP吸油量:101cm3/100g〕70質量部と、同社製のシーストV〔GPF、窒素吸着比表面積27m2/g、DBP吸油量:87cm3/100g〕40質量部とを配合し、可塑剤としてのオイルの量を17質量部としたこと以外は実施例3と同様にしてシート状の防舷材用ゴム組成物を調製した。
【0057】
調製した防舷材用ゴム組成物の総量中に占める、充填剤としてのカーボンブラックの配合割合は46.4質量%、可塑剤としてのオイルの配合割合は7.2質量%であった。…」
「【0062】
【表2】
[図:0001424628000001.jpg]
【0063】
【表3】
[図:0001424628000002.jpg]
【0064】
【表4】
[図:0001424628000003.jpg]
」
ウ 甲3の記載
甲3には以下のとおりの記載がある。
「[0001] 本発明は、防振ゴム用ゴム組成物に関する。さらに詳しくは、自動車のプロペラシャフトを防振支持するセンターベアリングサポートの加硫成形材料などとして有効に用いられる防振ゴム用ゴム組成物に関する。」
「[0007] 本発明に係るゴム組成物は、EPDMに、(A)平均粒子径60~100nm、ヨウ素吸着量14~23g/kg、DBP吸油量100ml/100g以上のカーボンブラックA、(B)平均粒子径40~50nm、ヨウ素吸着量35~49g/kg、DBP吸油量100~160ml/100gのカーボンブラックBといった2種類のカーボンブラックを用い、さらにこれらと(C)エチレン-α-オレフィン共重合体とを配合して用いることによって、得られる防振用ゴムは一定硬度当りの動倍率(静動比)が低く、強度特性、耐疲労性および耐熱性にすぐれるといったすぐれた効果を奏する。」
「[0010] (A)成分のカーボンブラックAとしては、平均粒子径60~100nm、ヨウ素吸着量14~23g/kg、DBP吸油量100ml/100g以上のもの、好ましくは100~160ml/100gのもの、例えばSRF-HS-HFカーボンブラックが、EPDM 100重量部に対して32~60重量部、好ましくは35~55重量部の割合で用いられる。かかるカーボンブラックAは、低動倍率化のカーボンとして用いており、これより少ない配合量で用いられると、目的の動倍率に対する効果が不十分となってしまい、一方これより多い配合量で用いられると、アグロメレート(カーボンブラックの二次凝集体)による破壊が著しく、耐久性が悪化するようになる。
[0011] (B)成分のカーボンブラックBとしては、平均粒子径40~50nm、ヨウ素吸着量35~49g/kg、DBP吸油量100~160ml/100gのもの、例えばFEFカーボンブラックが、EPDM 100重量部に対して10~30重量部、好ましくは15~25重量部の割合で用いられる。かかるカーボンブラックBは、補強性付与とカーボンブラックAの分散性を改善するために用いられており、これより少ない配合量で用いられると、分散性の改善効果が不十分であり、耐久性が悪化するようになる。一方、これより多い配合量で用いられると、アグロメレート(カーボンブラックの二次凝集体)による破壊が著しく、やはり耐久性が悪化するようになる。」
エ 甲4の記載
甲4には以下のとおりの記載がある。
「By using blends of carbon blacks it is often possible to obtain material cost and processing advantages over the employment of a single black.」(22頁10~12行)
(当審訳:カーボンブラックのブレンドを使用すると、単一のブラックを使用する場合に比べて、材料コストと処理上の利点が得られることがよくある。)
「Under economic conditions prevailing at the present time, decreased carbon black and, consequently, increased base rubber content usually results in increased cost. A further increase in cost is involved because the yield of carbon black per unit of raw material generally decreases with increasing reinforcement value, necessitating higher selling prices for the better blacks. It is thus obvious that gains in technical efficiency are accompanied by higher material costs if simple changes from one type of black to another are to constitute the sloe approach to the problem of increasing tyre performance. Fortunately there is reason to believe that by blending blacks it will be possible to bring about technical advances without increasing carbon materials.」(23頁17~27行)
(当審訳:現在の経済状況下では、カーボンブラックの使用量を減らし、結果としてベースゴムの含有量を増やすと、通常はコスト増加につながる。さらにコストが上昇するのは、原料1単位あたりのカーボンブラック収率は一般的に強化効果の増加に伴って低下するため、より高品質なカーボンブラックにはより高い販売価格が必要となるためである。したがって、タイヤ性能向上という課題への単純なアプローチとして、ある種類のカーボンブラックから別の種類のカーボンブラックへの変更のみを採用する場合、技術効率の向上には材料コストの上昇が伴うことは明らかである。幸いなことに、カーボンブラックの混合によって、カーボン材料を増やすことなく技術進歩を実現できると考えられる理由がある。)
「When two carbon blacks are employed in the same mixing it is generally advisable to add the more highly reinforcing one first, since this makes for better dispersion and so ensures that the maximum technical properties are imparted to the vulcanizate.」(29頁6~9行)
(当審訳:2種類のカーボンブラックを同じ混合物に使用する場合、より強化効果の高いカーボンブラックを先に添加することが一般的に推奨される。これにより、分散性が向上し、加硫物に最大限の技術的特性が付与されるようになる。)
(2)引用発明の認定
甲1の段落0017の記載からみて、甲1には、
「天然ゴム(NR)あるいは合成ゴムの中から単独又はブレンドしたもの、及び、充填剤(加硫剤、カーボンブラック、シリカ、クレー等)、軟化剤、老化防止剤、加工助剤などのゴム用配合物を含有した、防舷材用ゴム組成物。」
の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
(3)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明との対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明における「天然ゴム(NR)あるいは合成ゴムの中から単独又はブレンドしたもの」は、本件発明1における「ゴム」に相当する。
(b)甲1発明における「充填剤(加硫剤、カーボンブラック、シリカ、クレー等)、軟化剤、老化防止剤、加工助剤などのゴム用配合物」は、本件発明1における「カーボンブラック」と、「ゴム用配合物」という限りで一致する。
したがって、本件発明1と甲1発明とは、
「ゴム、
ゴム用配合物
を含む、
防舷材用ゴム組成物。」
という点で一致し、
(相違点1)防舷材用ゴム組成物が、本件発明1は「(A)窒素吸着比表面積SAが70m2/g以上のカーボンブラック」と「(B)窒素吸着比表面積SAが70m2/g未満のカーボンブラック」とを「ゴムの総量100質量部あたりの、(A)のカーボンブラックの割合は25~60質量部、(B)のカーボンブラックの割合は5~40質量部、かつ前記(A)(B)のカーボンブラックの合計の割合は65質量部以上、80質量部以下」となるように含むのに対し、甲1発明はそのようなものではない点
(相違点2)防舷材用ゴム組成物が、本件発明1は「オイル」を含むのに対し、甲1発明はオイルを含むか不明である点
(相違点3)ゴムが、本件発明1は「天然ゴムを60~100質量部及びスチレンブタジエンゴム(SBR)0~40質量部」含むのに対し、甲1発明はその組成が不明である点
で相違する。
イ 相違点1についての検討
甲1には、カーボンブラックはゴム製防舷材本体や樹脂層の充填材あるいは添加剤として例示されるにとどまり(段落0017、0022、0023及び0025)、ゴム製防舷材本体に比表面積が異なる2種のカーボンブラックを配合することは記載されておらず、ましてや、ゴムの総量100質量部あたりの、窒素吸着比表面積SAが70m2/g以上のカーボンブラックの割合を25~60質量部、窒素吸着比表面積SAが70m2/g未満のカーボンブラックを5~40質量部、かつ両カーボンブラックの合計の割合を65~80質量部とすることは記載も示唆もされていない。
甲2には、防舷材用ゴム組成物に配合するカーボンブラックについて、同量ないしは少量の配合で防舷材の緩衝性能や硬度をより一層効率よく向上するために、粒径が比較的小さく、かつストラクチャが比較的発達したグレードのものを用いるのが好ましいこと、特に窒素吸着比表面積が50m2/g以上、95m2/g以下のものが好適に使用されることが記載されているものの(請求項1、請求項3及び段落0023)、窒素吸着比表面積が異なる複数種類のカーボンブラックを用いることが好ましいことは記載されていない。また、甲2には、比較例3として、ゴム分100質量部に対し、シースト3〔窒素吸着比表面積79m2/g〕70質量部と、シーストV〔窒素吸着比表面積27m2/g〕40質量部とを配合した防舷材用ゴム組成物が記載されている(段落0056及び0064)ものの、実施例の効果を確認するための比較対象に過ぎない比較例3に含まれている2種類のカーボンブラックを甲1発明に適用する動機付けはない。
甲3及び甲4には、防振ゴム又はタイヤ用ゴム組成物に複数種類のカーボンブラックを配合することは記載されているものの、防振ゴム又はタイヤ用ゴム組成物と防舷材用ゴム組成物とは求められる性能や課題が共通するとは直ちには解せないし、窒素吸着比表面積SAが70m2/g以上のカーボンブラックと窒素吸着比表面積SAが70m2/g未満のカーボンブラックとを含む防舷材用ゴム組成物は記載されておらず、これを動機付ける記載もない。
したがって、甲1発明において相違点1に係る構成を備えるようにすることは甲1~甲4の記載に基づいて当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
ウ 本件発明1についてのまとめ
以上のとおり、相違点2及び3について検討するまでもなく、本件発明1が甲1発明及び甲1~甲4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件発明2~5について
本件発明2及び3は、本件発明1を引用し、相違点1に係る構成を備えるものである。したがって、前記(3)と同様に、本件発明2及び3が甲1発明及び甲1~甲4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件発明4及び5は、本件発明1を引用し、相違点1に係る構成を備えるものである。
そして、甲5には、ゴム製防舷材が記載されているのものの、カーボンブラックについては記載も示唆もない。
したがって、甲5の記載を検討しても、前記(3)と同様に、本件発明4及び5が甲1発明及び甲1~甲5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)申立人の主張について
申立人は、甲1発明の防舷材用ゴム組成物に甲2発明のゴム組成物を適用することは当業者が容易に想到し得るとした上で、本件発明1は、甲1発明乃至甲4発明を「実験的に数値範囲を最適化又は好適化」するものであると主張するとともに(特許異議申立書17頁26行~19頁28行)、甲3の記載を根拠として、窒素吸着比表面積が大きいカーボンブラックが補強性付与にプラスに働き、窒素吸着比表面積が小さいカーボンブラックを併用することで分散性・低動倍率化等のゴム組成物の特性を調整することは、通常行なわれているから、本件発明1は、甲1開示の発明に、甲2乃至甲4開示の発明を組み合わせることで、当業者が容易に発明をすることができたものであると主張する(特許異議申立書19頁29行~20頁15行)。
しかし、「ゴムに、所定の窒素吸着比表面積SAを有するカーボンブラック(A)(B)を配合することで、相対的にゴムの割合を少なくして製造コストを低減しながら、支承脚部を座屈変形しやすく」(本件明細書段落0076)するという方針は甲1~甲5のいずれにも記載されていない。そして、そのような方針がないまま「実験的に数値範囲を最適化又は好適化」をする当業者が、防舷材用ゴム組成物が「(A)窒素吸着比表面積SAが70m2/g以上のカーボンブラック」と「(B)窒素吸着比表面積SAが70m2/g未満のカーボンブラック」とを「ゴムの総量100質量部あたりの、(A)のカーボンブラックの割合は25~60質量部、(B)のカーボンブラックの割合は5~40質量部、かつ前記(A)(B)のカーボンブラックの合計の割合は65質量部以上、80質量部以下」となるように含む、という相違点1に係る構成を容易に想到するとはいえない。
したがって、申立人の主張は前記(3)及び(4)の判断を左右しない。
(6)申立理由1についてのまとめ
以上のとおり、本件発明1~5は甲1発明及び甲1~甲5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件発明1~5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。
3 取消理由2(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであり、明細書のサポート要件の存在は、特許出願人又は特許権者が証明責任を負うと解するのが相当である(知財高判平17.11.11平成17(行ケ)10042号参照。)。
(2)本件発明1~5が解決しようとする課題
段落0007をはじめとする本件明細書の発明の詳細な説明の記載からみて、本件発明1~5が解決しようとする課題は「船舶等の接舷によって支承脚部が座屈変形しやすい防舷材を、よりコスト安価に製造できる防舷材用ゴム組成物と、それを用いた防舷材を提供すること」であると認められる。
(3)発明の詳細な説明の記載
本件明細書の発明の詳細な説明の記載には、以下のとおりの記載がある。
「【0004】
ソリッドタイプの防舷材では、上記のように支承脚部が、船舶等の接舷時に座屈変形して、船舶等の接舷時に防舷材に生じる反力の過剰な上昇が抑制されることにより、船舶等や岸壁、あるいは防舷材自体の破損が抑制される。
支承脚部を、船舶等の接舷時に座屈変形しやすくするためには、特許文献1の実施例、比較例における圧縮率-反力特性を示す各図から推測されるように、ゴムに対する、補強材としてのカーボンブラックの量を少なくすればよい。
【0005】
ところが、ソリッドタイプの防舷材は巨大なゴムの塊であって、使用するゴムの量が多いため、ゴムの配合単価は安価であることが求められ、防舷材の製造コストの点では、一般に安価な補強材であるカーボンブラックの量を多くすることが望まれる。
しかしカーボンブラックの量を多くすれば、上記各図の結果から明らかなように、支承脚部が座屈変形しにくくなって、反力が上昇する傾向がある。」
「【0014】
発明者の検討によると、支承脚部の座屈変形に主に関わっているのは、ゴムに対する補強性の強い、窒素吸着比表面積SAの大きいカーボンブラックである。
とくに、窒素吸着比表面積SAが70m2/g以上であるカーボンブラック(A)を、ゴムの総量100質量部あたり60質量部を超えて多量に配合すると、その強い補強性によって、支承脚部が座屈変形しにくくなってしまう。
【0015】
これに対し、かかるカーボンブラック(A)の割合を、ゴムの総量100質量部あたり60質量部以下に制限すると、当該カーボンブラック(A)による補強性を抑制して、防舷材の支承脚部を座屈変形しやすくすることができる。
一方、窒素吸着比表面積SAが70m2/g未満であるカーボンブラック(B)は、ゴムに対する補強性が比較的弱い傾向がある。
【0016】
そのため、カーボンブラック(A)を上述した割合で配合し、さらにカーボンブラック(B)を加えても、支承脚部を座屈変形しやすい状態に維持することができる。
そして両カーボンブラック(A)(B)の合計の割合を、ゴムの総量100質量部あたり65質量部以上とすることで相対的にゴムの割合を少なくして、防舷材用ゴム組成物、ひいては防舷材の製造コストを低減することができる。
【0017】
ただし、カーボンブラック(A)(B)の合計の割合が、ゴムの総量100質量部あたり80質量部を超える場合には、たとえカーボンブラック(A)の割合を上述した範囲に制限したとしても、架橋物が硬くなって、支承脚部が座屈変形しにくくなる場合がある。
したがって本発明では、ゴムの総量100質量部あたりの、カーボンブラック(A)の割合は60質量部以下で、かつカーボンブラック(A)(B)の合計の割合は65質量部以上、80質量部以下に限定される。」
「【実施例】
【0053】
以下に、本発明を、実施例、比較例に基づいてさらに説明するが、本発明の構成は、必ずしもこれらの例に限定されるものではない。
〈実施例1〉
(防舷材用ゴム組成物の調製)
ゴムとしては、天然ゴム(TSR20品)70質量部と、非油展タイプのSBR〔前出のJSR(株)製のJSR1502、結合スチレン量:23.5%〕30質量部とを併用した。
【0054】
両ゴムの総量100質量部を、下記表1に示す各成分とともに、3Lニーダーを用いて混練した。
【0055】
【表1】
[図:0001424628000004.jpg]
【0056】
表1中の各成分は下記のとおり。また表中の質量部は、ゴムの総量100質量部あたりの質量部である。
カーボンブラック(A):HAF、前出の東海カーボン(株)製のシースト3、窒素吸着比表面積SA:79m2/g。
カーボンブラック(B):FEF、前出の東海カーボン(株)製のシーストSO、窒素吸着比表面積SA:42m2/g。
【0057】
架橋助剤I:酸化亜鉛2種、三井金属鉱業(株)製
架橋助剤IIス:テアリン酸、日油(株)製の商品名つばき
老化防止剤:N-フェニル-N′-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン、大内新興化学工業(株)製のノクラック(登録商標)6C
ワックス:前出の大内新興化学工業(株)製のサンノック
オイル:前出の出光興産(株)製のダイアナ プロセスオイルNR26
次いで、下記表2に示す架橋成分を加え、オープンロールを用いてさらに混練して防舷材用ゴム組成物を調製した。
【0058】
【表2】
[図:0001424628000005.jpg]
【0059】
表2中の各成分は下記のとおり。また表中の質量部は、ゴムの総量100質量部あたりの質量部である。
架橋剤:鶴見化学工業(株)製の金華印5%油入微粉硫黄
促進剤NS:N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、スルフェンアミド系促進剤、大内新興化学工業(株)製のノクセラー(登録商標)NS
カーボンブラック(A)(B)の合計の割合は65質量部、質量比(B)/(A)は0.3であった。
…
【0069】
〈防舷材のモデルの作製〉
各実施例、比較例で調製した防舷材用ゴム組成物を用いて、図1に示す端面形状を有するラムダ型の防舷材の、ミニチュアサイズのモデル1を作製した。
すなわち、平面状の受衝面2を構成する頭部3と、当該頭部3から前後方向に拡開しながら垂下する一対の支承脚部4と、支承脚部4の下端に連設されて外方へ張り出した取り付け用のフランジ部5とを、防舷材用ゴム組成物によって一体に形成し、架橋させてモデル1を作製した。
【0070】
架橋条件は140℃×120分間とした。
各部の寸法は、頭部3の幅W1が65mm、高さHが100mm、フランジ部5の先端間の幅W2が180mm、全長が200mmであった。
〈圧縮率-反力特性試験〉
上記で作成した防舷材のモデル1を、高さHの52.5%を最大圧縮量として、標準試験温度(23℃)下、高さ方向に15mm/分の速度で、3分間のインターバルを挟んで3回圧縮した。
【0071】
そして2回目と3回目の圧縮時の、圧縮率に応じた反力の平均値を求め、横軸に圧縮率(%)、縦軸に反力(kN)をプロットして圧縮率-反力特性を求めた。
実施例1の結果を図2、比較例1の結果を図3に示す。
図3にみるように、比較例1の防舷材用ゴム組成物からなる防舷材は、圧縮によって座屈変形せず、圧縮率に応じて反力が一方的に高くなることが判った。
【0072】
一方、図2にみるように、実施例1の防舷材用ゴム組成物からなる防舷材は、比較例1と同形状であるにも拘らず、途中の反力値RRを経過後に反力が低下していることから、圧縮によって座屈変形を生じていることが判った。
実施例1と同様に、図2と類似した、座屈変形を含む圧縮率-反力特性を示したものを座屈変形あり「〇」、比較例1と同様に、図3と類似した、座屈変形を含まない圧縮率-反力特性を示したものを座屈変形なし「×」と評価した。
【0073】
結果を表3、表4に示す。
【0074】
【表3】
[図:0001424628000006.jpg]
【0075】
【表4】
[図:0001424628000007.jpg]
」
(4)本件発明1について
本件明細書の発明の詳細な説明には、ソリッドタイプの防舷材では、承脚部が船舶等の接舷時に座屈変形して、船舶等の接舷時に防舷材に生じる反力の過剰な上昇が抑制されることにより、船舶等や岸壁あるいは防舷材自体の破損が抑制されること(段落0004)、支承脚部を座屈変形しやすくするためには、ゴムに対する補強材としてのカーボンブラックの量を少なくすればよいこと(段落0004)、防舷材の製造コストの点では、一般に安価な補強材であるカーボンブラックの量を多くすることが望まれること(段落0005)が記載されている。
また、本件明細書の発明の詳細な説明には、支承脚部の座屈変形に主に関わっているのは、ゴムに対する補強性の強い、窒素吸着比表面積SAの大きいカーボンブラックであり、窒素吸着比表面積SAが70m2/g以上であるカーボンブラック(A)を、ゴムの総量100質量部あたり60質量部を超えて多量に配合すると、その強い補強性によって、支承脚部が座屈変形しにくくなってしまうこと(段落0014)、窒素吸着比表面積SAが70m2/g未満であるカーボンブラック(B)は、ゴムに対する補強性が比較的弱い傾向があり、そのためカーボンブラック(A)をゴムの総量100質量部あたり60質量部以下で配合し、さらにカーボンブラック(B)を加えても、支承脚部を座屈変形しやすい状態に維持することができること(段落0014及び0015)、両カーボンブラック(A)(B)の合計の割合をゴムの総量100質量部あたり65質量部以上とすることで、相対的にゴムの割合を少なくして、防舷材用ゴム組成物ひいては防舷材の製造コストを低減することができるが、カーボンブラック(A)(B)の合計の割合が、ゴムの総量100質量部あたり80質量部を超える場合には、たとえカーボンブラック(A)の割合をゴムの総量100質量部あたり60質量部以下に制限したとしても、架橋物が硬くなって支承脚部が座屈変形しにくくなる場合があること(段落0016及び0017)が記載されている。
そして、本件明細書の発明の詳細な説明には、「天然ゴムを60~100質量部及びスチレンブタジエンゴム(SBR)を0~40質量部と、オイルとを含む」「防舷材用ゴム組成物」の実施例として、窒素吸着比表面積SAが70m2/g以上であるカーボンブラック(A)の配合量がゴムの総量100質量部あたり60質量部を超える比較例1及び2や、カーボンブラック(A)と窒素吸着比表面積SAが70m2/g未満であるカーボンブラック(B)の合計の配合量がゴムの総量100質量部あたり80質量部を超える比較例3は「座屈変形」が×という評価であるのに対し、カーボンブラック(A)の配合量がゴムの総量100質量部あたり25~60質量部、カーボンブラック(B)の配合量がゴムの総量100質量部あたり5~40質量部かつカーボンブラック(A)(B)の合計の配合量がゴムの総量100質量部あたり65~80質量部である実施例1~4は「座屈変形」が○という評価であることが記載されている。
そうすると、本件明細書の発明の詳細な説明の記載には、「天然ゴムを60~100質量部及びスチレンブタジエンゴム(SBR)を0~40質量部と、オイルとを含む」「防舷材用ゴム組成物」において、ゴムに対する補強性の強いカーボンブラック(A)の割合をゴムの総量100質量部あたり60質量部以下に制限することで支承脚部を座屈変形しやすくするとともに、カーボンブラック(A)とゴムに対する補強性が比較的弱いカーボンブラック(B)の合計の割合をゴムの総量100質量部あたり65質量部以上とすることで相対的にゴムの割合を少なくして防舷材用ゴム組成物ひいては防舷材の製造コストを低減し、さらにカーボンブラック(A)とカーボンブラック(B)の合計の割合をゴムの総量100質量部あたり80質量部以下とすることで支承脚部が座屈変形しにくくならないようにすることができることが記載されているといえる。
したがって、本件明細書の発明の詳細な説明の記載により、当業者は、「天然ゴムを60~100質量部及びスチレンブタジエンゴム(SBR)を0~40質量部と、オイルとを含」み、カーボンブラック(A)の配合量がゴムの総量100質量部あたり25~60質量部、カーボンブラック(B)の配合量がゴムの総量100質量部あたり5~40質量部かつカーボンブラック(A)(B)の合計の配合量がゴムの総量100質量部あたり65~80質量部である防舷材用ゴム組成物は、前記(2)で認定した「船舶等の接舷によって支承脚部が座屈変形しやすい防舷材を、よりコスト安価に製造できる防舷材用ゴム組成物を提供すること」という課題を解決することができると認識するといえる。
よって、本件発明1は本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものである。
(5)本件発明2~5について
本件発明2~5は、本件発明1を引用するものであり、本件発明1の構成を全て含むものであるから、前記(4)と同様に、本件発明2~5は本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものである。
(6)申立人の主張について
申立人は「本件特許発明1-5に係る発明は…防舷材の構成、形状、寸法についても特定していない。そして、形状、幅等の寸法が異なれば、特定のゴム組成物が座屈変形のしやすいものであっても、座屈変形しない場合があることは十分に想定される。防舷材に想定される船舶の大きさは、数十万トンから数トンにおよぶことから、寸法も大小がある。一方、明細書の実施例等において上記課題を解決し得ることが具体的に記載されるのは、数十センチ程度の小さな、防舷材の構成、形状、寸法が特定のモデル1(段落0069、0070)の例に限られる。すると、仮に数十センチ程度の小さな防舷材であれば課題を解決できる可能性はあるが、特許請求の範囲に記載された範囲のゴム組成物がどの程度の寸法の防舷材で座屈変形するかしないかが予測できない。また、座屈変形する防舷材だけでなく、座屈変形しない防舷材が特許請求の範囲に含まれる可能性が高い」(特許異議申立書22頁14行~23頁10行)と主張する。
しかし、前記(2)で認定したとおり、本件発明1~5が解決しようとする課題は「船舶等の接舷によって支承脚部が座屈変形しやすい防舷材を、よりコスト安価に製造できる防舷材用ゴム組成物と、それを用いた防舷材を提供すること」であるところ、前記(4)で検討したとおり、本件明細書の発明の詳細な説明の記載には、本件発明1はゴムに対する補強性の強いカーボンブラック(A)とゴムに対する補強性が比較的弱いカーボンブラック(B)の適切な配合によりこの課題を解決できることが説明されているから、本件発明1~5に係る防舷材用ゴム組成物及び防舷材は、防舷材の構成、形状、寸法にかかわらず、当業者が前記課題を解決することができると認識できる範囲のものであるといえる。
また、申立人は、本件発明1~5に係る防舷材用ゴム組成物及び防舷材において、座屈変形しない場合があり前記課題を解決できないものが含まれる可能性を指摘するのみであり、その具体的な証拠を示していない。
(7)申立理由2についてのまとめ
以上のとおり、本件発明1~5は本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものであるといえるから、本件発明1~5に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえない。
第5 むすび
前記第4のとおり、請求項1~5に係る特許は、特許異議申立書に記載された申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2025-700363