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特許異議申立

2024-700694

タイヤ

審判番号
2024-700694
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-238295
登録番号
7419814
請求日
2024年07月23日
審決日
2025年03月14日
公報発行日
2025年06月27日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】住友ゴム工業株式会社
  • 【権利者代理人】住友 慎太郎
  • 【権利者代理人】浦 重剛
  • 【権利者代理人】苗村 潤
  • 【権利者代理人】石原 幸信
  • 【権利者代理人】市田 哲
  • 【異議申立人】西山 智裕
審判長/審判官
  • 審判長 柴田 昌弘
  • 審判官 加藤 友也
  • 審判官 植前 充司
分類
P1652.113-YAA(B60C) / P1652.121-YAA(B60C)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7419814号発明「タイヤ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7419814号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項16について訂正することを認める。 特許第7419814号の請求項1に係る特許を維持する。 特許第7419814号の請求項16に係る特許に対する特許異議申立を却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7419814号(以下、「本件特許」という。)の請求項1及び16についての出願は、令和1年12月27日の出願であって、令和6年1月15日にその特許権の設定登録(請求項の数16)がされ、同年同月23日に特許掲載公報が発行されたものである。 その後、その特許に対し、令和6年7月23日に特許異議申立人 西山 智裕 (以下、「特許異議申立人」という。)より特許異議の申立て(対象となる請求項:請求項1及び16)がされ、同年10月28日付けで取消理由が通知され、同年12月17日に特許権者 住友ゴム工業株式会社(以下、「特許権者」という。)より訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされるとともに意見書の提出がされたものである。 なお、本件訂正請求は、後の第2に示すとおり、訂正内容が一部の請求項の削除のみであるから、特許法第120条の5第5項ただし書における特別の事情にあたるため、特許異議申立人に意見書を提出する機会は与えないものとする。 第2 訂正の適否についての判断 1 請求の趣旨 本件訂正請求の趣旨は、「特許第7419814号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項16について訂正することを求める。」というものである。 2 訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。 (訂正事項) 特許請求の範囲の請求項16を削除する。 3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項に係る請求項16の訂正は、請求項16を削除するというものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項に係る請求項16の訂正が、願書に添付した明細書、又は特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。 4 訂正についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項16について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2のとおり、訂正後の請求項16について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1及び16に係る発明は、令和6年12月17日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1及び16に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 トレッド部を含むタイヤであって、 前記トレッド部には、クラウン陸部、ミドル陸部、ショルダー陸部、前記クラウン陸部と前記ミドル陸部との間を延びるクラウン周方向溝、及び、前記ミドル陸部と前記ショルダー陸部との間を延びるショルダー周方向溝が設けられており、 前記クラウン陸部には、セミオープン型のクラウンサイプが複数形成され、各クラウンサイプは、両側のサイプエッジ部がそれぞれ面取り部で形成されており、 前記ミドル陸部には、前記クラウン周方向溝に連通するセミオープン型の第1ミドルサイプと、前記ショルダー周方向溝に連通するセミオープン型の第2ミドルサイプとがそれぞれ複数形成され、各第1ミドルサイプは、両側のサイプエッジ部がそれぞれ面取り部で形成されており、 前記ショルダー陸部には、フルオープン型のショルダーサイプが複数形成されており、 前記ショルダーサイプは、前記ショルダー周方向溝を介して、前記第2ミドルサイプと滑らかに連続するように配置されたものを含む、 タイヤ。」 「【請求項16】 (削除)」 第4 特許異議申立理由の要旨 特許異議申立人が申し立てた請求項1及び16に係る特許に対する特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。 1 申立理由1-1(甲第1号証を主たる証拠とする新規性) 本件特許の請求項16に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 2 申立理由1-2(甲第2号証を主たる証拠とする新規性) 本件特許の請求項16に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 3 申立理由2(甲第2号証を主たる証拠とする進歩性) 本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 4 証拠方法 ・甲第1号証:特開2018-111451号公報 ・甲第2号証:特開2019-94006号公報 ・甲第3号証:特開2019-209873号公報 なお、証拠の表記については、おおむね特許異議申立書における記載にしたがった。 第5 令和6年10月28日付け取消理由通知で特許権者に通知した取消理由の要旨 本件特許の請求項16に係る特許に対して、当審が令和6年10月28日付け取消理由通知で特許権者に通知した取消理由の要旨は次のとおりである。なお、以下の取消理由は、申立理由1-1及び申立理由1-2を包含する。 1 取消理由1-1(甲第1号証を主たる証拠とする新規性) 本件特許の請求項16に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 2 取消理由1-2(甲第2号証を主たる証拠とする新規性) 本件特許の請求項16に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 3 取消理由2-1(甲第1号証を主たる証拠とする進歩性) 本件特許の請求項16に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 4 取消理由2-2(甲第2号証を主たる証拠とする進歩性) 本件特許の請求項16に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 第6 当審の判断 1 令和6年10月28日付け取消理由通知で特許権者に通知した取消理由についての判断 上記第2のとおり、本件訂正請求により、本件特許の請求項16に係る発明は削除されたため、取消理由の対象は存在しない。 2 令和6年10月28日付け取消理由通知において採用しなかった異議申立理由についての判断 令和6年10月28日付け取消理由通知で採用しなかった異議申立理由は、申立理由2であるので、以下、検討する。 (1) 甲第2号証の記載事項等 ア 甲第2号証の記載事項 甲第2号証には、「タイヤ」に関し、次の記載がある。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、クラウンサイプを有するタイヤに関する。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0004】 しかしながら、近年では、車両の高性能化に伴って、耐摩耗性能の向上のみならず、さらなる操縦安定性の向上も要求されている。発明者らは、種々の実験の結果、クラウン陸部に配されたクラウンサイプを改善することにより、クラウン陸部の耐摩耗性を維持しながら操縦安定性を向上できるという知見を得た。 【0005】 本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、クラウン陸部の偏摩耗を抑制しつつ、優れた操縦安定性を発揮しうるタイヤを提供することを主たる目的としている。」 「【発明を実施するための形態】 【0019】 以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。 図1は、本発明の一実施形態を示すタイヤ1のトレッド部2の展開図である。本実施形態のタイヤ1は、例えば、乗用車用や重荷重用の空気入りタイヤ、及び、タイヤの内部に加圧された空気が充填されない非空気式タイヤ等の様々なタイヤに用いることができる。本実施形態のタイヤ1は、例えば、乗用車用の空気入りタイヤとして好適に使用される。 【0020】 図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、車両への装着の向きが指定されており、かつ、タイヤ赤道に関して非対称のパターンが形成されたトレッド部2を有する。トレッド部2は、例えば、タイヤ1の車両装着時に車両外側に位置する第1トレッド端Te1と、車両装着時に車両内側に位置する第2トレッド端Te2とを有する。車両への装着の向きは、例えば、サイドウォール部(図示省略)に、文字又は記号で表示される。 【0021】 各トレッド端Te1、Te2は、空気入りタイヤの場合、正規状態のタイヤ1に正規荷重が負荷されキャンバー角0°で平面に接地したときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置である。正規状態とは、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、前記正規状態で測定された値である。 【0022】 「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。 【0023】 「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。 【0024】 「正規荷重」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。 【0025】 本実施形態のトレッド部2には、例えば、タイヤ周方向に連続して延びる主溝が設けられている。主溝は、例えば、第1トレッド端Te1とタイヤ赤道Cとの間、又は、第2トレッド端Te2とタイヤ赤道Cとの間に設けられたショルダー主溝3と、ショルダー主溝3に隣接するクラウン主溝4とを含む。 【0026】 本実施形態のショルダー主溝3は、第1トレッド端Te1とタイヤ赤道Cとの間に設けられた外側ショルダー主溝3Aと、第2トレッド端Te2とタイヤ赤道Cとの間に設けられた内側ショルダー主溝3Bとを含む。 【0027】 ショルダー主溝3は、例えば、タイヤ赤道Cから溝中心線までの距離L1aがトレッド幅TWの0.20~0.30倍であるのが望ましい。トレッド幅TWは、前記正規状態での第1トレッド端Te1から第2トレッド端Te2までのタイヤ軸方向の距離である。 【0028】 クラウン主溝4は、外側クラウン主溝4A及び内側クラウン主溝4Bを含む。外側クラウン主溝4Aは、タイヤ赤道Cと外側ショルダー主溝3Aとの間に設けられている。内側クラウン主溝4Bは、タイヤ赤道Cと内側ショルダー主溝3Bとの間に設けられている。 【0029】 クラウン主溝4は、例えば、タイヤ赤道Cから溝中心線までの距離L1bがトレッド幅TWの0.05~0.15倍であるのが望ましい。 【0030】 外側クラウン主溝4Aの溝幅W1a及び内側クラウン主溝4Bの溝幅W1bは、例えば、外側ショルダー主溝3Aの溝幅W1c及び内側ショルダー主溝3Bの溝幅W1dよりも大きいのが望ましい。具体的には、外側クラウン主溝4Aの溝幅W1a及び内側クラウン主溝4Bの溝幅W1bは、外側ショルダー主溝3Aの溝幅W1bの1.25~1.35倍であるのが望ましい。これにより、優れたウェット性能が得られる。 【0031】 内側ショルダー主溝3Bの溝幅W1dは、例えば、外側ショルダー主溝3Aの溝幅W1cよりも大きいのが望ましい。具体的には、内側ショルダー主溝3Bの溝幅W1dは、外側ショルダー主溝3Aの溝幅W1cの1.20~1.28倍であるのが望ましい。 【0032】 ドライ路面での操縦安定性とウェット性能とをバランス良く高めるために、外側クラウン主溝4Aの溝幅W1a、内側クラウン主溝4Bの溝幅W1b、外側ショルダー主溝3Aの溝幅W1c及び内側ショルダー主溝3Bの溝幅W1dは、例えば、トレッド幅TWの2.5%~5.0%であるのが望ましい。なお、本明細書で溝の寸法が示される場合、面取りを含まない寸法が示されている。 【0033】 図2には、図1のA-A線断面図が示されている。図2に示されるように、外側クラウン主溝4Aの溝深さD1a、内側クラウン主溝4Bの溝深さD1b、外側ショルダー主溝3Aの溝深さD1c及び内側ショルダー主溝3Bの溝深さD1dは、例えば、6.0~12.0mmであるのが望ましい。 【0034】 図1に示されるように、本実施形態のトレッド部2は、上述の主溝により、外側ショルダー陸部7Aと、内側ショルダー陸部7Bと、外側クラウン陸部8Aと、内側クラウン陸部8Bと、中央クラウン陸部8Cとに区分されている。外側ショルダー陸部7Aは、第1トレッド端Te1と外側ショルダー主溝3Aとの間に区分されている。内側ショルダー陸部7Bは、第2トレッド端Te2と内側ショルダー主溝3Bとの間に区分されている。外側クラウン陸部8Aは、外側ショルダー主溝3Aと外側クラウン主溝4Aとの間に区分されている。内側クラウン陸部8Bは、内側ショルダー主溝3Bと内側クラウン主溝4Bとの間に区分されている。中央クラウン陸部8Cは、外側クラウン主溝4Aと内側クラウン主溝4Bとの間に区分されている。 【0035】 図3は、外側クラウン陸部8A及び中央クラウン陸部8Cの拡大図が示されている。図3に示されるように、外側クラウン陸部8Aには、第1外側クラウンサイプ26及び第2外側クラウンサイプ27が設けられている。本明細書において、「サイプ」は、幅が1.5mm未満の切れ込みである。 【0036】 第1外側クラウンサイプ26は、外側クラウン陸部8Aを完全に横切っている。第2外側クラウンサイプ27は、外側クラウン主溝4Aから外側ショルダー主溝3Aに向かって延び、かつ、外側クラウン陸部8A内で終端している。第1外側クラウンサイプ26及び第2外側クラウンサイプは、外側クラウン陸部8Aの接地時の歪みを緩和し、その偏摩耗を抑制する。また、第2外側クラウンサイプ27は、第1外側クラウンサイプ26とともに、外側クラウン陸部8Aの外側クラウン主溝4Aの側の剛性をより緩和する。このため、外側クラウン陸部8Aは、例えば、接地圧が十分に高まっていない旋回初期の状態においても、路面に追従し易くなり、ひいては優れた初期応答性が得られる。 【0037】 一方、第2外側クラウンサイプ27が外側クラウン陸部8A内で終端しているため、外側クラウン陸部8Aは、外側ショルダー主溝3Aの側において高い剛性を有する。従って、外側クラウン陸部8Aは、例えば、タイヤに十分な接地荷重が作用した旋回中期において、大きなコーナリングフォースを発揮させ、ひいては操縦安定性を高めることができる。 【0038】 中央クラウン陸部8Cには、第1中央クラウンサイプ45と第2中央クラウンサイプ46とが設けられている。第1中央クラウンサイプ45は、中央クラウン陸部8Cを完全に横切っている。第2中央クラウンサイプ46は、内側クラウン主溝4Bから外側クラウン主溝4Aに向かって延び、かつ、中央クラウン陸部8C内で終端している。このような中央クラウン陸部8Cは、上述した外側クラウン陸部8Aと同様の作用を発揮し、操縦安定性を高めることができる。 ・・・(中略)・・・ 【0061】 図7(b)には、図3の第2中央クラウンサイプ46と直行するL-L線断面図が示されている。図7(b)に示されるように、第2中央クラウンサイプ46は、例えば、タイヤ半径方向外側に向かって幅が広がる開口部49を有しているのが望ましい。本実施形態では、第2中央クラウンサイプ46のタイヤ周方向の一方側のサイプ壁50が傾斜することにより、開口部49が形成されている。第2中央クラウンサイプ46は、例えば、両側のサイプ壁50が傾斜しても良い。また、第2中央クラウンサイプ46は、例えば、上述の細溝部の溝底に設けられるものでも良い。 【0062】 図3に示されるように、本実施形態では、第2外側クラウンサイプ27の傾斜したサイプ壁31が、タイヤ周方向の一方側(図3では下側)に配され、第2中央クラウンサイプ46の傾斜したサイプ壁50が、タイヤ周方向の他方側(図3では上側)に配されているのが望ましい。 【0063】 図7(c)には、図3の第2中央クラウンサイプ46に沿ったM-M線断面図が示されている。図7(c)に示されるように、第2中央クラウンサイプ46は、終端側の第1サイプ部46aと、内側クラウン主溝4B側の第2サイプ部46bとを含むのが望ましい。第2サイプ部46bは、例えば、第1サイプ部46aよりも小さい深さを有している。第2サイプ部46bの深さd16は、例えば、第1サイプ部46aの深さd15の0.30~0.40倍であるのが望ましい。このような第2中央クラウンサイプ46は、内側クラウン主溝4Bの側が過度に開くのを抑制し、耐偏摩耗性及び操縦安定性を高めることができる。 【0064】 図8には、本実施形態の内側クラウン陸部8Bの拡大図が示されている。図8に示されるように、内側クラウン陸部8Bには、1.5mm以上の幅を有する複数のクラウンラグ溝34と、1.5mm未満の幅を有する複数の内側クラウンサイプ35とが設けられている。 【0065】 クラウンラグ溝34は、内側ショルダー主溝3Bからクラウン主溝4の側に延びかつ内側クラウン陸部8B内に内端を有する。クラウンラグ溝34は、例えば、内側ショルダー主溝3Bと協働し、内側クラウン陸部8B付近の排水性を高める。 【0066】 内側クラウンサイプ35は、例えば、第1内側クラウンサイプ36、第2内側クラウンサイプ37及び第3内側クラウンサイプ38を含んでいる。第1内側クラウンサイプ36は、クラウンラグ溝34のそれぞれの内端から内側クラウン主溝4Bまで延びている。第2内側クラウンサイプ37は、内側ショルダー主溝3Bからクラウン主溝4の側に延びて内側クラウン陸部8B内に内端を有している。第3内側クラウンサイプ38は、内側クラウン主溝4Bから内側ショルダー主溝3Bの側に延びて内側クラウン陸部8B内に外端を有している。これらのサイプは、それぞれのエッジによってウェット路面上で摩擦力を提供する。また、内側クラウン陸部8Bには相対的に大きな接地圧が作用するため、これらの溝及びサイプの作用によって、ウェット性能が顕著に高められる。 【0067】 第1内側クラウンサイプ36、第2内側クラウンサイプ37及び第3内側クラウンサイプ38は、幅が1.5mm未満であるため、接地時にポンピングノイズを殆ど発生させることがない。さらに、第1内側クラウンサイプ36、第2内側クラウンサイプ37及び第3内側クラウンサイプ38は、内側クラウン陸部8Bの剛性を適度に緩和するため陸部が接地するときの打撃音を小さくできる。従って、優れたノイズ性能が得られる。 ・・・(中略)・・・ 【0077】 図8に示されるように、第2内側クラウンサイプ37及び第3内側クラウンサイプ38は、それぞれ、内側クラウン陸部8Bのタイヤ軸方向の中心位置を跨ることなく途切れている。本実施形態の第2内側クラウンサイプ37及び第3内側クラウンサイプ38は、例えば、第1内側クラウンサイプ36よりも小さいタイヤ軸方向の長さを有している。第2内側クラウンサイプ37のタイヤ軸方向の長さL13、及び、第3内側クラウンサイプ38のタイヤ軸方向の長さL16は、それぞれ、第1内側クラウンサイプ36のタイヤ軸方向の長さL15の0.60~0.75倍であるのが望ましい。 【0078】 第2内側クラウンサイプ37及び第3内側クラウンサイプ38は、例えば、タイヤ軸方向に対して第1内側クラウンサイプ36と同じ向きに傾斜しているのが望ましい。第2内側クラウンサイプ37のタイヤ軸方向に対する角度θ1は、例えば、0~20°であるのが望ましい。第3内側クラウンサイプ38のタイヤ軸方向に対する角度θ2は、上記角度θ1よりも大きいのが望ましく、例えば、20~40°である。このような第2内側クラウンサイプ37及び第3内側クラウンサイプ38は、それぞれのエッジが路面と接触するときの打音をホワイトノイズ化させるのに役立つ。 【0079】 図9(b)には、図8の第2内側クラウンサイプ37と直交するI-I線断面図が示されている。図9(b)に示されるように、第2内側クラウンサイプ37は、例えば、タイヤ半径方向外側に向かって幅が広がる開口部41を有しているのが望ましい。本実施形態では、第2内側クラウンサイプ37のタイヤ周方向の一方側のサイプ壁42が傾斜することにより、開口部41が形成されている。本実施形態の開口部41は、例えば、第2中央クラウンサイプ46の開口部49の傾斜したサイプ壁50(図3に示す)とタイヤ周方向の同じ側のサイプ壁42が傾斜して形成されている。第2内側クラウンサイプ37は、例えば、両側のサイプ壁42が傾斜しても良い。また、第2内側クラウンサイプ37は、例えば、上述の細溝部の溝底に設けられるものでも良い。第3内側クラウンサイプ38は、例えば、上述した第2内側クラウンサイプ37と同様の断面形状を有する。 【0080】 図9(c)には、図6の第2内側クラウンサイプ37及び第3内側クラウンサイプ38のJ-J線断面図が示されている。図9(c)に示されるように、第2内側クラウンサイプ37は、一定の深さでのび、内端付近で深さが漸減している。第3内側クラウンサイプ38は、第2内側クラウンサイプ37側の第1サイプ部38aと、クラウン主溝4側の第2サイプ部38bとを含んでいる。第1サイプ部38aは、例えば、第2内側クラウンサイプ37の深さd15と同じ深さd10を有している。第2サイプ部38bは、例えば、第1サイプ部38aよりも小さい深さd11を有している。第2サイプ部38bの深さd11は、例えば、第1サイプ部38aの深さd10の0.45~0.55倍であるのが望ましい。このような第2内側クラウンサイプ37及び第3内側クラウンサイプ38は、上述の第1内側クラウンサイプ36と相俟って、ウェット性能とノイズ性能とをバランス良く高めることができる。 【0081】 図1に示されるように、より望ましい態様では、第3内側クラウンサイプ38が、内側クラウン主溝4Bを介して、第1中央クラウンサイプ45と滑らかに連続するように配置されている。これにより、サイプの周囲の陸部分がさらに路面に追従し易くなり、初期応答性が高められる。 【0082】 図2に示されるように、内側クラウン陸部8Bの内側クラウン主溝4Bの側の内側エッジ43a及び内側ショルダー主溝3Bの側の外側エッジ43bは、いずれも面取りされているのが望ましい。外側クラウン陸部8Aの外側クラウン主溝4Aの側の内側エッジ43a及び外側ショルダー主溝3Aの側の外側エッジ43bは、いずれも面取りされているのが望ましい。同様に、中央クラウン陸部8Cの各エッジ43cは、いずれも面取りされているのが望ましい。このような各陸部は、エッジが路面と接触するときの打音を緩和することができる。 【0083】 内側クラウン陸部8B及び外側クラウン陸部8Aは、それぞれ、トレッド接地面の曲率半径R1が560mm以下であるのが望ましい。具体的には、曲率半径R1が400~500mmであるのが望ましい。これにより、内側クラウン陸部8B及び外側クラウン陸部8Aに作用する接地圧が高められる一方、外側ショルダー陸部7A及び内側ショルダー陸部7Bに作用する接地圧が緩和され、各ショルダー陸部7A、7Bが転動するときの音を軽減することができる。 【0084】 図10には、ショルダー陸部7の一例を示す図として、外側ショルダー陸部7Aの拡大図が示されている。図10に示されるように、ショルダー陸部7Aには、タイヤ軸方向に延びるショルダーサイプ10が設けられている。また、本明細書では、外側ショルダー陸部7Aに設けられているショルダーサイプを外側ショルダーサイプと呼ぶ場合がある。ショルダーサイプ10は、ショルダー陸部7Aの接地時の歪みを緩和し、その偏摩耗を抑制する。 【0085】 本実施形態のショルダーサイプ10は、ショルダー主溝3Aから第1トレッド端Te1までのびている。但し、このような態様に限定されるものではなく、ショルダーサイプ10は、一端又は両端がショルダー陸部7A内で途切れても良い。 【0086】 ショルダーサイプ10は、細サイプ部11と、細サイプ部11よりも幅が大きい太サイプ部12とを含む。なお、ショルダーサイプ10の細サイプ部11及び太サイプ部12には、上述した外側クラウンサイプ21の細サイプ部22及び太サイプ部23の寸法を適用することができる。」 「 [図:0001423513000001.jpg] [図:0001423513000002.jpg] [図:0001423513000003.jpg] [図:0001423513000004.jpg] [図:0001423513000005.jpg] 」 イ 甲第2号証に記載された発明 上記アの記載、特に図1に示されるトレッドパターン、【0038】、【0061】及び【0079】の記載を中心に整理すると、甲第2号証には次の発明が記載されていると認める。 「トレッド部2を含むタイヤ1であって、 トレッド部2には、外側ショルダー陸部7A、内側ショルダー陸部7B、外側クラウン陸部8A、内側クラウン陸部8B、中央クラウン陸部8C、外側クラウン陸部8Aと中央クラウン陸部8Cとの間に延びる外側クラウン主溝4A、内側クラウン陸部8Bと中央クラウン陸部8Cとの間に延びる内側クラウン主溝4B、外側ショルダー陸部7Aと外側クラウン陸部8Aとの間に延びる外側ショルダー主溝3A、及び内側ショルダー陸部7Bと内側クラン陸部8Bとの間に延びる内側ショルダー主溝3Bが設けられており、 中央クラウン陸部8Cには、セミオープン型の中央クラウンサイプ46が複数形成され、 中央クラウンサイプ46は、両側のサイプ壁50がそれぞれ面取り部で形成されており、 内側クラウン陸部8Bには、内側クラウン主溝4Bに連通するセミオープン型の第3内側クラウンサイプ38と、内側ショルダー主溝3Bに連通するセミオープン型の第2内側クラウンサイプとがそれぞれ複数形成され、 各第3内側クラウンサイプ38は、両側のサイプ壁がそれぞれ面取り部で形成されており、 ショルダー陸部7Aには、フルオープン型のショルダーサイプ10が複数形成されており、 トレッド部2は、車両への装着の向きが指定されており、 内側クラウン陸部8B及び内側ショルダー陸部7Bは、それぞれ、車両装着時に車両内側に位置する、 タイヤ。」(以下、「甲2発明」という。) (2) 対比・判断 本件特許発明1と甲2発明とを対比する。 甲2発明の「中央クラウン陸部8C」、「外側クラウン陸部8A」及び「内側クラウン陸部8B」、「外側ショルダー陸部7A」及び「内側ショルダー陸部7B」、「外側クラウン陸部8Aと中央クラウン陸部8Cとの間に延びる外側クラウン主溝4A」及び「内側クラウン陸部8Bと中央クラウン陸部8Cとの間に延びる内側クラウン主溝4B」、「外側ショルダー陸部7Aと外側クラウン陸部8Aとの間に延びる外側ショルダー主溝3A」及び「内側ショルダー陸部7Bと内側クラン陸部8Bとの間に延びる内側ショルダー主溝3B」はそれぞれ、本件特許発明1の「クラウン陸部」、「ミドル陸部」、「ショルダー陸部」、「クラウン周方向溝」、「ショルダー周方向溝」に相当する。 また、甲2発明の「中央クラウンサイプ46」、内側クラウン陸部8Bに設けられた「内側クラウン主溝4Bに連通するセミオープン型の第3内側クラウンサイプ38」及び「内側ショルダー主溝3Bに連通するセミオープン型の第2内側クラウンサイプ」はそれぞれ、本件特許発明1の「クラウンサイプ」、「第1ミドルサイプ」及び「第2ミドルサイプ」に相当する。 さらに、甲2発明の「中央クラウンサイプ46」、内側クラウン陸部8Bに設けられた「内側クラウン主溝4Bに連通するセミオープン型の第3内側クラウンサイプ38」及び「内側ショルダー主溝3Bに連通するセミオープン型の第2内側クラウンサイプ」はいずれも、両側のサイプ壁がそれぞれ面取り部で形成されたものであるから、本件特許発明1の「クラウンサイプ」及び「第1ミドルサイプ」の「両側のサイプエッジ部がそれぞれ面取り部で形成されており」との特定事項を満たす。 してみると、本件特許発明1と甲2発明の間の一致点、相違点は次のとおりである。 (一致点) 「トレッド部を含むタイヤであって、 前記トレッド部には、クラウン陸部、ミドル陸部、ショルダー陸部、前記クラウン陸部と前記ミドル陸部との間を延びるクラウン周方向溝、及び、前記ミドル陸部と前記ショルダー陸部との間を延びるショルダー周方向溝が設けられており、 前記クラウン陸部には、セミオープン型のクラウンサイプが複数形成され、各クラウンサイプは、両側のサイプエッジ部がそれぞれ面取り部で形成されており、 前記ミドル陸部には、前記クラウン周方向溝に連通するセミオープン型の第1ミドルサイプと、前記ショルダー周方向溝に連通するセミオープン型の第2ミドルサイプとがそれぞれ複数形成され、各第1ミドルサイプは、両側のサイプエッジ部がそれぞれ面取り部で形成されている、 タイヤ。」 (相違点) 本件特許発明1は 「前記ショルダー陸部には、フルオープン型のショルダーサイプが複数形成されており、 前記ショルダーサイプは、前記ショルダー周方向溝を介して、前記第2ミドルサイプと滑らかに連続するように配置されたものを含む、」 と特定するのに対し、甲2発明にはそのような特定がない点。 上記相違点について検討する。 全ての証拠の記載を見ても、甲2発明において、タイヤのサイプ配置に関し、「前記ショルダー陸部には、フルオープン型のショルダーサイプが複数形成されており、 前記ショルダーサイプは、前記ショルダー周方向溝を介して、前記第2ミドルサイプと滑らかに連続するように配置されたものを含む、」ものとする、すなわち、上記相違点に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとする動機付けがあるとはいえない。 したがって、本件特許発明1は、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (特許異議申立人の主張について) 特許異議申立人は特許異議申立書において、「明細書の記載から、周方向溝を介して2本のサイプが滑らかに連続するように配置された構成は、周方向溝の両側の陸部剛性を最適化する機能を有すると考えられるところ、4本の周方向溝により5つの陸部が区画されたトレッド部において、当該構成が適用される場所は、大別すると、クラウン周方向溝の両側の陸部か、又はショルダー周方向溝の両側の陸部の2箇所しか存在しない。また、本件特許の明細書には、ショルダー周方向溝の両側の陸部に当該構成を適用した場合の特有の効果、即ちクラウン周方向溝の両側の陸部に当該構成を適用した場合と比較した特有の効果、乃至トレッド部の他の構成との相乗効果が記載されておらず、上記2つの選択肢のいずれに当該構成を適用した場合にも、その効果に特段の差異がないと考えられる。周方向溝を介して2本のサイプが滑らかに連続するように配置された構成は、甲第2号証に開示されるように公知の構成であり(なお、当該構成は甲第3号証にも開示されている)、また本件特許発明1及び甲2発明のタイヤはいずれも、4本の周方向溝により5つの陸部が区画されたトレッド部を有するところ、上記2つしか存在しない選択肢から、甲2発明に開示された、クラウン周方向溝の両側の陸部に代えて、或いはクラウン周方向溝の両側の陸部に加えて、ショルダー周方向溝の陸部に上記公知のサイプの構成を適用して発明特定事項Hとすることは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。」(特許異議申立書第16頁)など主張する。 そこで上記特許異議申立人の主張について検討するに、仮に、甲第2号証において、「周方向溝を介して2本のサイプが滑らかに連続するように配置された構成」が開示されているとしても、特許異議申立人が認めているように、その配置された位置は異なる位置であり、甲第2号証及び他の全ての証拠の記載を見ても、甲2発明において、「周方向溝を介して2本のサイプが滑らかに連続するように配置された構成」となっている2本のサイプを別の周方向溝を挟む2つの陸部に変更する、或いは加える動機付けがあるということはできない。 したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。 (3) 申立理由2についてのまとめ 上記(2)のとおりであるから、申立理由2の理由では、本件特許発明1に係る特許を取り消すことはできない。 第7 結語 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由、及び、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 特許異議申立人による特許異議の申立てについて、請求項16に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700694

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