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特許異議申立

2023-700995

二重ロープ構造体

審判番号
2023-700995
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-552698
登録番号
7249468
請求日
2023年09月20日
審決日
2025年10月07日
公報発行日
2026年01月30日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社クラレ
  • 【権利者代理人】杉本 修司
  • 【権利者代理人】堤 健郎
  • 【権利者代理人】中尾 真二
  • 【異議申立人】東レ 株式会社
  • 【異議申立人】中山 清
  • 【異議申立人】帝人 株式会社
  • 【異議申立人代理人】弁理士法人太陽国際特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 神山 茂樹
  • 審判官 岩谷 一臣
  • 審判官 葛原 怜士郎
分類
P1651.113-YAA(D07B) / P1651.121-YAA(D07B) / P1651.537-YAA(D07B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7249468号発明「二重ロープ構造体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7249468号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~14〕について訂正することを認める。 特許第7249468号の請求項1~14に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7249468号(以下「本件特許」という。)の請求項1~11に係る特許についての出願は、令和3年12月16日(優先権主張 令和2年12月25日)を国際出願日とするものであって、令和5年3月22日に特許権の設定登録(特許掲載公報 令和5年3月30日発行)がなされたものである。 その特許についての特許異議の申立ての主な経緯は、次のとおりである。 令和5年 9月14日:特許異議申立人中山清(以下「申立人2」という。)による全請求項に対する申立て 同年 9月20日:特許異議申立人東レ株式会社(以下「申立人1」という。)による全請求項に対する申立て 同年 9月29日:特許異議申立人帝人株式会社(以下「申立人3」という。)による全請求項に対する申立て 令和6年 2月 5日付け:取消理由通知 同年 3月29日:特許権者から訂正の請求及び意見書の提出 同年 6月 3日:申立人1より意見書の提出 同年 6月 5日:申立人2より意見書の提出 同年 6月10日:申立人3より意見書の提出 同年10月15日付け:取消理由通知(決定の予告) 同年12月19日:特許権者から訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)及び意見書の提出 令和7年 1月 9日:申立人3より上申書の提出 同年 2月19日:申立人1より意見書の提出 同年 2月20日:申立人2より意見書の提出 同年 2月21日:申立人3より意見書の提出 同年 3月28日:申立人3より同年2月21日提出の意見書に対する手続補正書の提出 なお、令和6年3月29日の訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 第2 本件訂正請求について 1 訂正の内容 本件訂正請求は、「特許第7249468号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~14について訂正することを求める。」ものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。なお、下線は、当審が訂正箇所に付したものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「二重ロープ構造体」と記載されているのを「二重ロープ構造体であるロープ」に、「前記内層は、ヤーン強度20cN/dtex以上であり、ヤーン弾性率400cN/dtex以上である高強度・高弾性率繊維で構成され、」と記載されているのを「前記内層は、ヤーン強度20cN/dtex以上であり、ヤーン弾性率400cN/dtex以上である高強度・高弾性率繊維で形成されるヤーンで構成され、前記ヤーンは複数の高強度・高弾性率繊維の単糸で構成され、撚り数が150~0.1T/mであり、」に、「ヤーン長/ロープ長として1.005以上1.200以下であり、」と記載されているのを「ヤーン長/ロープ長として1.005以上1.081以下であり、」に、「内層および外層が編組体である、」と記載されているのを「内層および外層が編組体であり、前記内層が丸打ちの編組体である、」に訂正する。(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3~11も同様に訂正する。) (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に「二重ロープ構造体」と記載されているのを「二重ロープ構造体であるロープ」に、「前記内層は、ヤーン強度20cN/dtex以上であり、ヤーン弾性率400cN/dtex以上である高強度・高弾性率繊維で構成され、」と記載されているのを「前記内層は、ヤーン強度20cN/dtex以上であり、ヤーン弾性率400cN/dtex以上である高強度・高弾性率繊維で形成されるヤーンで構成され、前記ヤーンは複数の高強度・高弾性率繊維の単糸で構成され、撚り数が150~0.1T/mであり、」に、「ヤーン長/ロープ長として1.005以上1.200以下であり、」と記載されているのを「ヤーン長/ロープ長として1.005以上1.081以下であり、」に、「外層が非高強度・非高弾性率繊維で実質的に構成される、」と記載されているのを「外層が非高強度・非高弾性率繊維で実質的に構成され、二重ロープ構造体における内層の比率が50重量%以上である、」に訂正する。(請求項2の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3~11も同様に訂正する。) (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に「二重ロープ構造体」と記載されているのを「二重ロープ構造体であるロープ」に、「内層を構成するストランドの、ロープ長手方向に対する交差角が40°以下である、」と記載されているのを「前記内層が複数のストランドで構成され、各ストランドは複数の前記ヤーンで構成され、内層を構成するストランドの、ロープ長手方向に対する交差角が40°以下である、」に訂正する。(請求項3の記載を直接的又は間接的に引用する請求項4~11も同様に訂正する。) (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に「二重ロープ構造体」と記載されているのを「二重ロープ構造体であるロープ」に、「内層のヤーンの撚り数が150~0.1T/mである、」と記載されているのを「内層のヤーンの撚り数が60~0.1T/mである、」に訂正する。(請求項4の記載を直接的又は間接的に引用する請求項5~11も同様に訂正する。) (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5に「二重ロープ構造体」と記載されているのを「二重ロープ構造体であるロープ」に、「高強度・高弾性率繊維のヤーン伸度が3~6%である、」と記載されているのを「高強度・高弾性率繊維で形成されるヤーンのヤーン伸度が3~6%である、」に訂正する。(請求項5の記載を直接的又は間接的に引用する請求項6~11も同様に訂正する。) (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項6に「請求項1~5のいずれか一項に記載の」と記載されているのを「請求項3~5のいずれか一項に記載の」に、「二重ロープ構造体」と記載されているのを「二重ロープ構造体であるロープ」に訂正する。(請求項6の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7~11も同様に訂正する。) (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項7に「二重ロープ構造体」と記載されているのを「二重ロープ構造体であるロープ」に、「内層を構成するストランドのヤーン強力×内層中の総ストランド数に対する、二重ロープ構造体の引張強力の比率が、40%以上である、」と記載されているのを「前記内層が複数のストランドで構成され、各ストランドは複数の前記ヤーンで構成され、内層を構成するストランドの強力×内層中の総ストランド数に対する、二重ロープ構造体の引張強力の比率が、40%以上である、」に訂正する。(請求項7の記載を直接的又は間接的に引用する請求項8~11も同様に訂正する。) (8)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項8に「二重ロープ構造体」と記載されているのを「二重ロープ構造体であるロープ」に訂正する。(請求項8の記載を直接的又は間接的に引用する請求項9~11も同様に訂正する。) (9)訂正事項9 特許請求の範囲の請求項9に「二重ロープ構造体」と記載されているのを「二重ロープ構造体であるロープ」に訂正する。(請求項9の記載を直接的又は間接的に引用する請求項10、11も同様に訂正する。) (10)訂正事項10 特許請求の範囲の請求項10に「請求項1~9のいずれか一項に記載の」と記載されているのを「請求項2~9のいずれか一項に記載の」に、「二重ロープ構造体」と記載されているのを「二重ロープ構造体であるロープ」に訂正する。(請求項10の記載を直接的に引用する請求項11も同様に訂正する。) (11)訂正事項11 特許請求の範囲の請求項11に、二重ロープ構造体」と記載されているのを「二重ロープ構造体であるロープ」に、「二重ロープ構造体における内層の比率が40重量%以上である、」と記載されているのを「二重ロープ構造体における内層の比率が60重量%以上である、」に訂正する。 (12)訂正事項12 特許請求の範囲の請求項6に「請求項1~5のいずれか一項に記載の二重ロープ構造体であって、高強度・高弾性率繊維が、液晶ポリエステル繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、アラミド繊維、およびポリ(パラフェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維からなる群から選択される少なくとも一種から選択される、二重ロープ構造体。」と記載されているうち、請求項1を引用するものについて独立形式に改め請求項12とした上で、「二重ロープ構造体」と記載されているのを「二重ロープ構造体であるロープ」に、「前記内層は、ヤーン強度20cN/dtex以上であり、ヤーン弾性率400cN/dtex以上である高強度・高弾性率繊維で構成され、」と記載されているのを「前記内層は、ヤーン強度20cN/dtex以上であり、ヤーン弾性率400cN/dtex以上である高強度・高弾性率繊維で形成されるヤーンで構成され、前記ヤーンは複数の高強度・高弾性率繊維の単糸で構成され、撚り数が150~0.1T/mであり、」に、「高強度・高弾性率繊維が、液晶ポリエステル繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、アラミド繊維、およびポリ(パラフェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維からなる群から選択される少なくとも一種から選択される、」と記載されているのを「高強度・高弾性率繊維が、液晶ポリエステル繊維、アラミド繊維、およびポリ(パラフェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維からなる群から選択される少なくとも一種から選択される、」に、「内層および外層が編組体である、」を「内層および外層が編組体であり、前記内層が12打ちまたは16打ちの丸打ちの編組体である、」に訂正する。 (13)訂正事項13 特許請求の範囲の請求項6に「請求項1~5のいずれか一項に記載の二重ロープ構造体であって、高強度・高弾性率繊維が、液晶ポリエステル繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、アラミド繊維、およびポリ(パラフェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維からなる群から選択される少なくとも一種から選択される、二重ロープ構造体。」と記載されているうち、請求項2を引用するものについて独立形式に改め請求項13とした上で、「二重ロープ構造体」と記載されているのを「二重ロープ構造体であるロープ」に、「前記内層は、ヤーン強度20cN/dtex以上であり、ヤーン弾性率400cN/dtex以上である高強度・高弾性率繊維で構成され、」と記載されているのを「前記内層は、ヤーン強度20cN/dtex以上であり、ヤーン弾性率400cN/dtex以上である高強度・高弾性率繊維で形成されるヤーンで構成され、前記ヤーンは複数の高強度・高弾性率繊維の単糸で構成され、撚り数が150~0.1T/mであり、」に、「ヤーン長/ロープ長として1.005以上1.200以下であり、」と記載されているのを「ヤーン長/ロープ長として1.005以上1.081以下であり、」に、「高強度・高弾性率繊維が、液晶ポリエステル繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、アラミド繊維、およびポリ(パラフェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維からなる群から選択される少なくとも一種から選択される、」と記載されているのを「高強度・高弾性率繊維が、液晶ポリエステル繊維、アラミド繊維、およびポリ(パラフェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維からなる群から選択される少なくとも一種から選択される、」に訂正する。 (14)訂正事項14 特許請求の範囲の請求項11に「請求項1~10のいずれか一項に記載の二重ロープ構造体であって、二重ロープ構造体における内層の比率が40重量%以上である、二重ロープ構造体。」と記載されているうち、請求項1を引用するものについて独立形式に改め請求項14とした上で、「二重ロープ構造体」と記載されているのを「二重ロープ構造体であるロープ」に、「前記内層は、ヤーン強度20cN/dtex以上であり、ヤーン弾性率400cN/dtex以上である高強度・高弾性率繊維で構成され、」と記載されているのを「前記内層は、ヤーン強度20cN/dtex以上であり、ヤーン弾性率400cN/dtex以上である高強度・高弾性率繊維で形成されるヤーンで構成され、前記ヤーンは複数の高強度・高弾性率繊維の単糸で構成され、撚り数が150~0.1T/mであり、」に、「内層および外層が編組体である、」と記載されているのを「内層および外層が編組体であり、前記内層が丸打ちの編組体であり、」と、「二重ロープ構造体における内層の比率が40重量%以上である、」と記載されているのを「二重ロープ構造体における内層の比率が50重量%以上である、」に訂正する。 (15)一群の請求項 本件訂正前の請求項3~11は、訂正の対象となった請求項1又は2を引用するものであり、組み合わさって一群の請求項を形成している。そうすると、本件訂正の請求は、一群の請求項1~11に対する訂正を請求したものである。 また、本件特許権者は、引用関係を解消する訂正を求めた請求項12、13、14について、引用元の請求項が属する請求単位と別の訂正単位として扱われることを求めていない。そのため、訂正前の請求項1~11に対応する訂正後の請求項〔1~14〕は、一群の請求項である。 2 訂正の適否 (1)訂正事項1について ア 訂正事項1のうち、「二重ロープ構造体であるロープ」とする訂正は、二重ロープ構造体をそのままロープとして用いることに限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 この訂正は、願書に添付した明細書の【0004】の「ロープには、単層構造のロープ構造体に加えて、二重構造のロープ構造体が存在する。」との記載に基づくものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 イ 同「高強度・高弾性率繊維で形成されるヤーンで構成され、前記ヤーンは複数の高強度・高弾性率繊維の単糸で構成され、撚り数が150~0.1T/mであり、」とする訂正は、ヤーンという用語の意味を明確にするとともに、その撚り数について特定するものであるから、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 この訂正は、願書に添付した明細書の【0018】の「高強度・高弾性率繊維から形成されたヤーン」との記載、同じく【0014】の「各ヤーンは複数の単糸で構成されている」との記載、【0031】の「各ヤーンの撚り数は、150~0.1T/mであってもよく、」との記載に基づくものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 ウ 同「ヤーン長/ロープ長として1.005以上1.081以下であり、」とする訂正は、ヤーン長/ロープ長の数値範囲を限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 この訂正は、願書に添付した明細書の【表5】の実施例1のヤーン長/ロープ長が「1.081」であることに基づくものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 エ 同「前記内層が丸打ちの編組体である、」とする訂正は、内層の編組体を限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 この訂正は、願書に添付した明細書の【0026】の「本発明の二重ロープ構造体の内層は、・・・編組体であってもよい。・・・編組体は、丸打ちまたは角打ちのいずれであってもよいが、耐摩耗性に優れる観点から、丸打ちであるのが好ましい。」との記載に基づくものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (2)訂正事項2について ア 訂正事項2のうち、「二重ロープ構造体における内層の比率が50重量%以上である、」とする訂正は、二重ロープ構造体における内層の比率を特定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 この訂正は、願書に添付した明細書の【0034】の「二重ロープ構造体における内層の比率は、高強度・高弾性率繊維の強度を利用する観点から、例えば、40重量%以上90重量%以下であってもよく、好ましくは50重量%以上80重量%以下であってもよく、」との記載に基づくものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 イ その他、訂正事項2のうち、「二重ロープ構造体であるロープ」とする訂正、「高強度・高弾性率繊維で形成されるヤーンで構成され、前記ヤーンは複数の高強度・高弾性率繊維の単糸で構成され、撚り数が150~0.1T/mであり、」とする訂正、「ヤーン長/ロープ長として1.005以上1.081以下であり、」とする訂正についての判断は、上記(1)で述べた訂正事項1についての判断と同様である。 (3)訂正事項3について ア 訂正事項3のうち、「前記内層が複数のストランドで構成され、各ストランドは複数の前記ヤーンで構成され、」とする訂正は、ヤーンとストランドの意味ないし関係を明確にするものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 この訂正は、願書に添付した明細書の【0014】の「内層1および外層2は、いずれも複数のストランドを編組した構造を有し、各ストランドは複数のヤーンで構成され、各ヤーンは複数の単糸で構成されている。」との記載に基づくものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 イ その他、訂正事項3のうち、「二重ロープ構造体であるロープ」とする訂正についての判断は、上記(1)で述べた訂正事項1についての判断と同様である。 (4)訂正事項4について ア 訂正事項4のうち、「内層のヤーンの撚り数が60~0.1T/mである、」とする訂正は、内層のヤーンの撚り数の数値範囲を限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 この訂正は、願書に添付した明細書の【0031】の「各ヤーンの撚り数は、・・・特に好ましくは60~6T/mであってもよい。」との記載に基づくものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 イ その他、訂正事項4のうち、「二重ロープ構造体であるロープ」とする訂正についての判断は、上記(1)で述べた訂正事項1についての判断と同様である。 (5)訂正事項5について ア 訂正事項5のうち、「高強度・高弾性率繊維で形成されるヤーンのヤーン伸度が3~6%である、」とする訂正は、ヤーンないしヤーン伸度という用語の意味を明確にするものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 この訂正は、願書に添付した明細書の【0018】の「高強度・高弾性率繊維から形成されたヤーン」との記載に基づくものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 イ その他、訂正事項5のうち、「二重ロープ構造体であるロープ」とする訂正についての判断は、上記(1)で述べた訂正事項1についての判断と同様である。 (6)訂正事項6について ア 訂正事項6のうち、「請求項3~5のいずれか一項に記載の」とする訂正は、引用する請求項を減少させる訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、この訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 イ その他、訂正事項6のうち、「二重ロープ構造体であるロープ」とする訂正についての判断は、上記(1)で述べた訂正事項1についての判断と同様である。 (7)訂正事項7について ア 訂正事項7のうち、「内層を構成するストランドの強力」とする訂正は、訂正前の「内層を構成するストランドのヤーン強力」という意味が不明であった記載を本来の意味であるストランドの強力と訂正するものであるから、この訂正は、誤記の訂正を目的とするものである。 ここで、願書に最初に添付した明細書には、「二重ロープ構造体の強力利用率は、内層を構成するストランドのヤーン強力×内層中の総ストランド数で算出された最大強力に対する二重ロープ構造体の引張強力を算出し、パーセント表示した。」(【0068】)と記載されているところ、二重ロープ構造体の強力利用率は、二重ロープ構造体全体の強力を複数のストランドからなる内層の強力で除すことにより得られるものであると理解される。そして、複数のストランドからなる内層の強力は、内層中の総ストランド数と、個々のストランドの強力を掛けたもののはずであることは当然である。そうすると、当該訂正は、願書に最初に添付した明細書の記載に照らせば、誤記の訂正を目的とするものと理解することが整合的である。 また、当該訂正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 イ その他、「二重ロープ構造体であるロープ」とする訂正についての判断は、上記(1)で述べた訂正事項1についての判断と同様であり、また、「前記内層が複数のストランドで構成され、各ストランドは複数の前記ヤーンで構成され、」とする訂正についての判断は、上記(3)で述べた訂正事項3についての判断と同様である。 (8)訂正事項8~11について ア 訂正事項8~11の「二重ロープ構造体であるロープ」とする訂正についての判断は、上記(1)で述べた訂正事項1についての判断と同様である。 イ 訂正事項10のうち、「請求項2~9のいずれか一項に記載の」とする訂正は、引用する請求項を減少させる訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内のものであり、さらに実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 ウ 訂正事項11のうち、「二重ロープ構造体における内層の比率が60重量%以上である、」とする訂正は、内層の比率の数値範囲を限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 この訂正は、願書に添付した明細書の【0034】の「二重ロープ構造体における内層の比率は、・・・さらに好ましくは60重量%以上75重量%以下であってもよい。」との記載に基づくものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (9)訂正事項12について ア 訂正事項12のうち、請求項6が請求項1~5を引用する記載であったものを請求項1を引用するものについて独立形式に改める訂正は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすることを目的とするものである。 この訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 イ 同「高強度・高弾性率繊維が、液晶ポリエステル繊維、アラミド繊維、およびポリ(パラフェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維からなる群から選択される少なくとも一種から選択され、」とする訂正は、高強度・高弾性率繊維の選択肢から「超高分子量ポリエチレン繊維」を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 この訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 ウ 同「前記内層が12打ちまたは16打ちの丸打ちの編組体である、」とする訂正は、内層の編組体を限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 この訂正は、願書に添付した明細書の【0026】の「本発明の二重ロープ構造体の内層は、・・・12打ち、16打ちの編組体がより好ましい。また、編組体は、丸打ちまたは角打ちのいずれであってもよいが、耐摩耗性に優れる観点から、丸打ちであるのが好ましい。」との記載に基づくものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 エ 同、「二重ロープ構造体であるロープ」とする訂正、「高強度・高弾性率繊維で形成されるヤーンで構成され、前記ヤーンは複数の高強度・高弾性率繊維の単糸で構成され、」とする訂正、「撚り数が150~0.1T/mであり、」とする訂正についての判断は、上記(1)で述べた訂正事項1についての判断と同様である。 (10)訂正事項13について ア 訂正事項13のうち、請求項6が請求項1~5を引用する記載であったものを請求項2を引用するものについて独立形式に改める訂正は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすることを目的とするものである。 この訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 イ 同「二重ロープ構造体であるロープ」とする訂正、「高強度・高弾性率繊維で形成されるヤーンで構成され、前記ヤーンは複数の高強度・高弾性率繊維の単糸で構成され、」とする訂正、「撚り数が150~0.1T/mであり、」とする訂正、「ヤーン長/ロープ長として1.005以上1.081以下であり、」とする訂正についての判断は、上記(1)で述べた訂正事項1についての判断と同様である。 ウ 訂正事項13のうち、「高強度・高弾性率繊維が、液晶ポリエステル繊維、アラミド繊維、およびポリ(パラフェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維からなる群から選択される少なくとも一種から選択される、」とする訂正についての判断は、上記(9)で述べた訂正事項12についての判断と同様である。 (11)訂正事項14について ア 訂正事項14のうち、請求項11が請求項1~10を引用する記載であったものを請求項1を引用するものについて独立形式に改める訂正は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすることを目的とするものである。 この訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 イ 同「二重ロープ構造体であるロープ」とする訂正、「高強度・高弾性率繊維で形成されるヤーンで構成され、前記ヤーンは複数の高強度・高弾性率繊維の単糸で構成され、」とする訂正、「撚り数が150~0.1T/mであり、」とする訂正、「前記内層が丸打ちの編組体である、」とする訂正についての判断は、上記(1)で述べた訂正事項1についての判断と同様である。 ウ 同「二重ロープ構造体における内層の比率が50重量%以上である、」とする訂正についての判断は、上記(2)で述べた訂正事項2についての判断と同様である。 3 訂正についてのまとめ 以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 よって、本件訂正後の請求項〔1~14〕について訂正を認める。 第3 本件特許発明 本件特許の請求項1~14に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、それぞれ、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~14に記載された、次のとおりのものである。 「【請求項1】 内層と外層とで構成される二重ロープ構造体であるロープであって、 前記内層は、ヤーン強度20cN/dtex以上であり、ヤーン弾性率400cN/dtex以上である高強度・高弾性率繊維で形成されるヤーンで構成され、前記ヤーンは複数の高強度・高弾性率繊維の単糸で構成され、撚り数が150~0.1T/mであり、 前記二重ロープ構造体を所定の長さで切断した切断部のロープ長に対する、前記切断部の内層を構成するヤーンのヤーン長の平均値の比が、ヤーン長/ロープ長として1.005以上1.081以下であり、内層および外層が編組体であり、前記内層が丸打ちの編組体である、二重ロープ構造体であるロープ。 【請求項2】 内層と外層とで構成される二重ロープ構造体であるロープであって、 前記内層は、ヤーン強度20cN/dtex以上であり、ヤーン弾性率400cN/dtex以上である高強度・高弾性率繊維で形成されるヤーンで構成され、前記ヤーンは複数の高強度・高弾性率繊維の単糸で構成され、撚り数が150~0.1T/mであり、 前記二重ロープ構造体を所定の長さで切断した切断部のロープ長に対する、前記切断部の内層を構成するヤーンのヤーン長の平均値の比が、ヤーン長/ロープ長として1.005以上1.081以下であり、外層が非高強度・非高弾性率繊維で実質的に構成され、二重ロープ構造体における内層の比率が50重量%以上である、二重ロープ構造体であるロープ。 【請求項3】 請求項1または2の二重ロープ構造体であるロープであって、前記内層が複数のストランドで構成され、各ストランドは複数の前記ヤーンで構成され、内層を構成するストランドの、ロープ長手方向に対する交差角が40°以下である、二重ロープ構造体であるロープ。 【請求項4】 請求項3に記載の二重ロープ構造体であるロープであって、内層のヤーンの撚り数が60~0.1T/mである、二重ロープ構造体であるロープ。 【請求項5】 請求項1~4のいずれか一項に記載の二重ロープ構造体であるロープであって、高強度・高弾性率繊維で形成されるヤーンのヤーン伸度が3~6%である、二重ロープ構造体であるロープ。 【請求項6】 請求項3~5のいずれか一項に記載の二重ロープ構造体であるロープであって、高強度・高弾性率繊維が、液晶ポリエステル繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、アラミド繊維、およびポリ(パラフェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維からなる群から選択される少なくとも一種から選択される、二重ロープ構造体であるロープ。 【請求項7】 請求項1~6のいずれか一項に記載の二重ロープ構造体であるロープであって、前記内層が複数のストランドで構成され、各ストランドは複数の前記ヤーンで構成され、内層を構成するストランドの強力×内層中の総ストランド数に対する、二重ロープ構造体の引張強力の比率が、40%以上である、二重ロープ構造体であるロープ。 【請求項8】 請求項1~7のいずれか一項に記載の二重ロープ構造体であるロープであって、二重ロープ構造体を曲げRを7.5mmとし、屈曲角度240°において30万回屈曲を繰り返す屈曲試験に供した場合の屈曲試験前後の強力保持率が45%以上である、二重ロープ構造体であるロープ。 【請求項9】 請求項1~8のいずれか一項に記載の二重ロープ構造体であるロープであって、80℃での強力保持率が45%以上である、二重ロープ構造体であるロープ。 【請求項10】 請求項2~9のいずれか一項に記載の二重ロープ構造体であるロープであって、内層および外層が編組体である、二重ロープ構造体であるロープ。 【請求項11】 請求項1~10のいずれか一項に記載の二重ロープ構造体であるロープであって、二重ロープ構造体における内層の比率が60重量%以上である、二重ロープ構造体であるロープ。 【請求項12】 内層と外層とで構成される二重ロープ構造体であるロープであって、 前記内層は、ヤーン強度20cN/dtex以上であり、ヤーン弾性率400cN/dtex以上である高強度・高弾性率繊維で形成されるヤーンで構成され、前記ヤーンは複数の高強度・高弾性率繊維の単糸で構成され、撚り数が150~0.1T/mであり、 前記二重ロープ構造体を所定の長さで切断した切断部のロープ長に対する、前記切断部の内層を構成するヤーンのヤーン長の平均値の比が、ヤーン長/ロープ長として1.005以上1.200以下であり、高強度・高弾性率繊維が、液晶ポリエステル繊維、アラミド繊維、およびポリ(パラフェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維からなる群から選択される少なくとも一種から選択され、内層および外層が編組体であり、前記内層が12打ちまたは16打ちの丸打ちの編組体である、二重ロープ構造体であるロープ。 【請求項13】 内層と外層とで構成される二重ロープ構造体であるロープであって、 前記内層は、ヤーン強度20cN/dtex以上であり、ヤーン弾性率400cN/dtex以上である高強度・高弾性率繊維で形成されるヤーンで構成され、前記ヤーンは複数の高強度・高弾性率繊維の単糸で構成され、撚り数が150~0.1T/mであり、 前記二重ロープ構造体を所定の長さで切断した切断部のロープ長に対する、前記切断部の内層を構成するヤーンのヤーン長の平均値の比が、ヤーン長/ロープ長として1.005以上1.081以下であり、外層が非高強度・ 非高弾性率繊維で実質的に構成され、高強度・高弾性率繊維が、液晶ポリエステル繊維、アラミド繊維、およびポリ(パラフェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維からなる群から選択される少なくとも一種から選択される、二重ロープ構造体であるロープ。 【請求項14】 内層と外層とで構成される二重ロープ構造体であるロープであって、 前記内層は、ヤーン強度20cN/dtex以上であり、ヤーン弾性率400cN/dtex以上である高強度・高弾性率繊維で形成されるヤーンで構成され、前記ヤーンは複数の高強度・高弾性率繊維の単糸で構成され、撚り数が150~0.1T/mであり、 前記二重ロープ構造体を所定の長さで切断した切断部のロープ長に対する、前記切断部の内層を構成するヤーンのヤーン長の平均値の比が、ヤーン長/ロープ長として1.005以上1.200以下であり、内層および外層が編組体であり、前記内層が丸打ちの編組体であり、二重ロープ構造体における内層の比率が50重量%以上である、二重ロープ構造体であるロープ。」 第4 取消理由通知(決定の予告)について 令和6年10月15日付けの取消理由通知(決定の予告)の取消理由は、概ね次のとおりである。 本件特許の請求項1~13に係る発明は、本件特許出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいてその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 <刊行物> ・特開平3-124888号公報(申立人2が提示した甲1号証。以下、「2甲1」という。) ・頼光周平、「ポリアリレート繊維(その特性と用途)」、SEN’I GAKKAISHI(繊維と工業)、Vol.66、No.3(2010)、p.86~90(申立人2が提示した甲5号証。以下、「2甲5」という。) ・特開2019-183361号公報(当審において引用するもの。以下、「引用例3」という。) ・実願平1-113781号(実開平3-53597号)のマイクロフィルム(申立人2が提示した甲3号証。以下、「2甲3」という。) 第5 当審における判断 1 刊行物の記載事項等 (1)2甲1について ア 2甲1には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与したものであり、「・・・」は記載の省略を意味する。 ・「(産業上の利用分野) 本発明はロープに関し、さらに詳しくは、高強力であり、耐久性、取扱い性、端末加工性に優れた水産用・陸上用等のロープおよびひも類(以下これらをロープと称する)に関する。」(第1ページ左欄、本文第14行~18行) ・「実施例1 強度=25g/d、伸度=3.8%、ヤーンデニール=1500デニール、単繊維デニール=5デニールのポリアクリレート(当審注:ポリアリレートの誤記と認める。)マルチフイラメント糸を19本引揃え、打込み数=8、リード=160mmで編組して、直径=81mmφの芯繊維束を得た。この時リード/直径=20倍であった。さらに5番手のポリエステル紡績糸を13本引揃え、打込み数=16で編組して芯繊維束を被覆し、ストランドを得た。さらに該ストランドを3本撚合せて、リード=66mm、直径=18mmφのロープを得た。この時のリード/直径=3.7倍であつた。・・・」(第3ページ左下欄第12行~右上欄第3行) ・「比較例2 実施例1と同様のヤーンデニール=1500デニールのポリアリレートマルチフイラメント糸を72本引揃え、通常のダブルブレードロープの製造方法により打込み数=8、リード=200mmで編組して直径=14mmφの芯繊維束を得た。この時リード/直径=14.3倍であつた。さらに5番手のポリエステル紡績糸を21本引揃え、打込み数=16で編組して、芯繊維束を被覆し、ロープを得た。・・・」(第3ページ右下欄第15行~第4ページ左上欄第4行) ・「 [図:0001431089000001.jpg] 」(第4ページ、第1表) イ 上記アの記載とともに、比較例2に記載のロープに着目すると、2甲1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。 「強度=25g/d、伸度=3.8%、ヤーンデニール=1500デニールのポリアリレートマルチフィラメント糸を72本引揃えたものを、打込み数8、リード200mmで編組して直径14mm、リード/直径が14.3の芯繊維束を得て、さらに5番手のポリエステル紡績糸を21本引揃え、打込み数16で編組して、上記芯繊維束を被覆した水産用・陸上用等のロープ。」 (2)ポリアリレート繊維に関する技術水準 ア 本件特許出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である2甲5には、次の事項が記載されている。 ・「 [図:0001431089000002.jpg] 」(第1ページ左欄) ・「 [図:0001431089000003.jpg] 」(同) ・「 [図:0001431089000004.jpg] 」(同) ・「 [図:0001431089000005.jpg] 」(第8ページ右欄) イ 上述アの記載からみて、以下の点は本件特許出願の優先日前における技術水準として知られていたものであると認める。 ・パラ系アラミド繊維を代表とする有機高強度繊維は、1970年第以降企業化されているところ、ポリアリアレート繊維「ベクトラン」(登録商標)は、溶融紡糸による有機高強度繊維として市販されている代表的なものであったこと。 ・当該「ベクトラン」の引張弾性率は、少なくとも400cN/dtex以上であったこと。 ・ポリアリアレート繊維「ベクトラン」は、耐熱性の特性を持つこと。 (3)ヤーンの撚り数に関する周知技術 ア 引用例3には、以下の記載がある。 ・「【背景技術】 【0002】 産業用のロープとして、高強度、高耐久、軽量といった様々な物性や特性を有する有機高分子線状体(アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、液晶ポリエステル繊維、ポリアリレート繊維、PBO繊維等)が多く用いられている。」 ・「【0007】 本発明は、軽量高強度で作業性に優れ、かつ長期の使用においても寸法変化や、強力低下が少なく、ストランド間摩耗による内部繊維破断を抑制した耐久性に優れるロープを提供することを目的とする。」 ・「【0043】 以下にロープの製造方法の一例を示す、図8の第1工程で、繊維を1本ないし2~16本、好ましくは2~4本程度纏めて下撚りを行い、これらを2~16本、好ましくは2~8本程度纏めて上撚りを行って、線状体束(ヤーン)を作成する。なお、ロープ設計によっては、線状体束(ヤーン)にさらに上撚りを施してより太くしても良い。なお、フィルムを用いた線状体も前述した繊維と同様に線状体束を作成すればよい。なお、撚り条件は、ロープの用途特性に合わせて設定さればよいが、高強力で低伸度のロープ設計を行う場合は、低めの撚り条件であることが好ましく、上撚条件は5~100回/mが好ましく、さらに好ましくは10~50回/mである。」 イ 上述アの記載からみて、産業用の高強度ロープとして、ヤーンの撚り数を5~100回/mとすることは周知技術である。 (4)高張力ロープの製造に関する技術水準 ア 2甲3には、以下の記載がある。 ・「2.実用新案登録請求の範囲 (1) 中芯とその中芯を被覆する外層との二層構造からなる高張力ロープにおいて、前記中芯を芳香族ポリアミド繊維とすると共に、前記外層はポリアミド繊維としたことを特徴とする高張力ロープ。」(第1ページ本文第3行~第7行) ・「〔産業上の利用分野〕 本考案は高張力で、かつ耐摩耗性、耐光性にすぐれたケーブルけん引用高張力ロープに関する。」(第1ページ本文第14行~第16行) ・「 [図:0001431089000006.jpg] 」(第5ページ) イ 以上の記載に鑑みれば、高張力ロープの製造に関し、以下の点は技術水準として知られていたものであると認める。 ・高張力ロープに関し、「引きそろえタイプ」とは、「無撚で引きそろえるか、或いはできるだけ緩く撚られたロープ」であること。 ・「引きそろえタイプ」は、高張力、低伸度という長所を有すること。 2 本件発明1について (1)対比 本件発明1と引用発明1とを対比すると、以下のとおりである。 ア 引用発明1の「ロープ」は、「芯繊維束」と、これを「ポリエステル紡績糸」で「編組」したものにより「芯繊維束を被覆した」「ロープ」である。そうすると、その構造からみて、引用発明1の「芯繊維束」はひとまず本件発明1の「内層」に相当するとともに、同「芯繊維束を被覆した」ものは本件発明1の「外層」に、同「芯繊維束を被覆した」「ロープ」は本件発明1の「二重ロープ構造体であるロープ」に相当する。 イ 引用発明1における「ポリアリレートマルチフィラメント糸」は、本件発明1の「ヤーン」に相当するとともに、同「芯繊維束」は「ポリアリレートマルチフィラメント糸」を編組したものであるから、本件発明1における「内層は、ヤーン強度20cN/dtex以上であり、ヤーン弾性率400cN/dtex以上である高強度・高弾性率繊維で形成されるヤーンで構成され」のうち、「内層は」「ヤーンで構成され」の点に限り相当する。 ウ 引用発明1の「芯繊維束」及び「芯繊維束を被覆」するものは、上述ア、イのとおりともに「編組」したものであるから、これは、本件発明1の「内層および外層が編組体である」ことに相当する。 そうすると、本件発明1と引用発明1とは、以下の点で一致する。 「内層と外層とで構成される二重ロープ構造体であるロープであって、 前記内層は、ヤーンで構成され、内層および外層が編組体である、二重ロープ構造体であるロープ。」 一方、本件発明1と引用発明1とは、次の点で相違する。 <相違点1-1> 内層に関し、本件発明1では、「ヤーン強度20cN/dtex以上であり、ヤーン弾性率400cN/dtex以上である高強度・高弾性率繊維で形成されるヤーンで構成され」ているのに対し、引用発明1の「芯繊維束」は、「ポリアリレートマルチフィラメント糸」を編組したものであるが、当該「ポリアリレートマルチフィラメント糸」の強度及び弾性率が不明である点。 <相違点1-2> 本件発明1では、「ヤーンは複数の高強度・高弾性率繊維の単糸で構成され、撚り数が150~0.1T/mであ」るのに対し、引用発明1の「ポリアリレートマルチフィラメント糸」がそのような構造とされているか不明である点。 <相違点1-3> 本件発明1では、「前記二重ロープ構造体を所定の長さで切断した切断部のロープ長に対する、前記切断部の内層を構成するヤーンのヤーン長の平均値の比が、ヤーン長/ロープ長として1.005以上1.081以下であ」るのに対し、引用発明1の「ポリアリレートマルチフィラメント糸」がロープ長との関係でそのような長さとされているか不明である点。 <相違点1-4> 本件発明1では、「前記内層が丸打ちの編組体である」のに対し、引用発明1「芯繊維束」は編組されたものではあるが、丸打か否か不明である点。 (2)判断 事案に鑑み、上記相違点1-3より検討する。 ア 引用発明1における「芯繊維束」は、「ポリアリレートマルチフィラメント糸を72本引揃えたものを」「打込み数8、リード200mmで編組して」得たものである。また、「引揃えた」とは、上述1(4)のとおり、「無撚で引きそろえるか、あるいはできるだけゆるく撚られた」ものである。 そして、引用発明1の「芯繊維束」が「ポリアリレートマルチフィラメント糸を72本引揃えた」ストランド8本を単純に「撚った」もので構成されていると仮定すると、ストランド中で引揃えられているヤーンは、幾何学的にみて、ロープ長(リード長)をL、直径をd、ヤーン長をYとすると、以下の等式が成立する。 式:Y2=L2+(πd)2 この場合、引用発明1におけるリード長200mm、直径14mmを代入して整理すると、ヤーン長は約204.8mmとなり、ヤーン長/ロープ長は、204.8mm/200mmであるから、おおよそ「1.024」と算出される。 イ しかし、引用発明1の「芯繊維束」は、ストランドを「撚った」ものではなく、打込み数8、リード200mmで「編組し」たものであるから、ストランドとストランドが編組によって交差することになり、その経路は、撚ったものとは異なることになる。すなわち、上記等式は成り立たず、引用発明1の「芯繊維束」のヤーン長/ロープ長は、上記等式より算出できない。 そうすると、引用発明1の「芯繊維束」のヤーン長/ロープ長が「1.005以上1.081以下」である蓋然性が高いとはいえず、不明であるというほかない。 ウ そして、2甲1には、ロープ長に対するヤーン長の比に着目する記載はなく、引用発明1の「芯繊維束」のヤーン長/ロープ長を、「1.005以上1.081以下」に調整する動機付けはない。 また、提出された他の証拠のいずれにも、「ヤーン長/ロープ長として1.005以上1.081以下」との事項について、記載も示唆もされていない。 エ この点、申立人3は、令和7年2月21日の意見書において、編組した場合、ヤーン長としてはむしろ短くなる可能性がある旨主張するとともに、実際、上記計算式で算出したヤーン長/ロープ長1.024に対し、本件特許明細書の実施例に基づいて補正を行ったものは1.015になる、すなわちヤーン長が短くなると主張している。 しかし、当該意見書の表(第10ページ)によれば、ヤーン長Yの値は、比較例1では計算値15.8に対し実測値17.8、比較例2では計算値34.5に対し実測値36.8となり、計算式の方が短い。 また、編組によりヤーンがロープを1周する経路は、単純な螺旋ではなく、上下に波打ちながら螺旋状に進むことになるから、当然、その長さは長くなるものと理解される。 そうすると、当該主張は前提において是認できず、本件特許明細書の実施例に基づいて補正を行った1.015という値を直ちに採用することもできない。 (3)小括 以上より、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 本件発明2~11、13について 本件発明2~11、13は、いずれも、「前記二重ロープ構造体を所定の長さで切断した切断部のロープ長に対する、前記切断部の内層を構成するヤーンのヤーン長の平均値の比が、ヤーン長/ロープ長として1.005以上1.081以下であ」るとの発明特定事項を備えるものである。 そうすると、本件発明2~11、13と引用発明1を対比すると、本件発明1と同様に、上記相違点1-3で少なくとも相違する。 そして、上記2(2)でも述べたように、当該相違点1-3に係る構成は、引用発明1に基づいて、当業者が容易に想到し得たものではない。 以上より、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2~11、13は、引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 4 本件発明12、14について 本件発明12、14は、いずれも、「前記二重ロープ構造体を所定の長さで切断した切断部のロープ長に対する、前記切断部の内層を構成するヤーンのヤーン長の平均値の比が、ヤーン長/ロープ長として1.005以上1.200以下であ」るとの発明特定事項を備えるものである。 本件発明12、14と引用発明1を対比すると、本件発明12、14と引用発明1は、次の相違点1-5で少なくとも相違する。 <相違点1-5> 本件発明12、14では、「前記二重ロープ構造体を所定の長さで切断した切断部のロープ長に対する、前記切断部の内層を構成するヤーンのヤーン長の平均値の比が、ヤーン長/ロープ長として1.005以上1.200以下であ」るのに対し、引用発明1の「ポリアリレートマルチフィラメント糸」がロープ長との関係でそのような長さとされているか不明である点。 上記相違点1-5について検討するに、上記2(2)で述べた相違点1-3と同様、引用発明1の「芯繊維束」におけるヤーン長/ロープ長を算出することはできない。そうすると、引用発明1の「芯繊維束」のヤーン長/ロープ長が当該相違点1-5に係る本件発明12、14の範囲にあるか不明であるというほかないし、他にこれを記載ないし示唆する証拠もない。 以上より、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明12、14は、引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 5 まとめ 本件発明1~14は、引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定に違反するものではない。 第6 取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立理由について 1 採用しなかった申立理由 申立人1~3は、次の証拠方法に基づき、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由のほか、以下の各理由を申し立てている。 (1)証拠方法 申立人1が提出した甲1号証を「1甲1」のようにいい、申立人2及び申立人3が提出した証拠についても同様にいう。 1甲1:特表2013-530314号公報 1甲2:内外製綱株式会社、“ファイナルCライン"の製品カタログ、2012年12月21日以前 1甲3:ナロック株式会社従業員作成の実験成績証明書、2023年8月21日 1甲4:国際公開第2019/069817号 1甲5:特開2012-7255号公報 1甲6:特開平11-293574号公報 1甲7:「Handbook of tensile properties of textile and technical fibres」、WOODHEAD PUBLISHING LIMITED、2009年 1甲8:東京製綱繊維ロープ株式會社、“エースライン(登録商標)D”の製品カタログ、2006年1月 1甲9:東京製綱繊維ロープ株式會社、“エースライン(登録商標)V”の製品カタログ、2007年5月 2甲1:特開平3-124888号公報 2甲2:登録実用新案公報第3199266号公報 2甲3:実願平1-113781号(実開平3-53597号)のマイクロフィルム 2甲4:再公表特許第2011/145224号 2甲5:頼光周平、「ポリアリレート繊維(その特性と用途)」、SEN’I GAKKAISHI(繊維と工業)、Vol.66、No.3(2010)、P.86~90 3甲1:帝人株式会社従業員による実験成績証明書、2023年8月9日 3甲2:東京製綱繊維ロープ株式會社、“エースライン(登録商標)T”の製品カタログ、2007年5月 3甲3:3甲2が掲載されているウェブページの保存日時を示す資料 3甲4:3甲2の表紙が掲載されている商品紹介ウェブページの保存日時を示す資料 3甲5:国際公開第2011/145224号 3甲6:登録実用新案第3199266号公報 3甲7:Atsushi Horigome、外1名、「Basic study for drive mechanism with synthetic fiber rope-investigation of strength reduction by bending and terminal fixation method」、T2R2東京工業大学リサーチリポジトリ、2016年2月 3甲8:特開平11-293574号公報 3甲9:特開平3-124888号公報 (2)申立理由 ア 1甲1に基づく理由 本件発明1~8、10、11に対する新規性 本件発明9に対する進歩性 イ 1甲2に基づく理由 本件発明1、3~7、9~11に対する新規性 ウ 1甲4に基づく理由 本件発明1、2、6、10、11に対する進歩性 エ 1甲6に基づく理由 本件発明2、3、6、11に対する進歩性 オ 1甲8に基づく理由 本件発明1、3、5、6、10に対する進歩性 カ 1甲9に基づく理由 本件発明1、3、5、6、10に対する進歩性 キ 2甲2に基づく理由 本件発明1~3、5、6、10に対する新規性 本件発明1~6、8~10に対する進歩性 ク 2甲4に基づく理由 本件発明1~3、5、6、10に対する新規性 本件発明1~6、10に対する進歩性 ケ 3甲2に基づく理由 本件発明1~7、9~11に対する新規性 本件発明1~11に対する進歩性 コ 3甲5に基づく理由 本件発明1~3、5~7、9、10に対する新規性 本件発明1~11に対する進歩性 サ サポート要件 3甲7によると、プーリ径Dとロープ径dの比D/dが低下するにつれ、強度低下が大きくなるものである。しかし、本件実施例のロープ径は、1.7mm~3.4mmでしか実験されていない。試験結果は、ロープ径に左右されるところ、本件の請求項8においてはロープ径の限定がなく、本件特許発明の課題が解決できるとは認められない。 2 申立理由についての判断 (1)各証拠に記載の発明等 ア 1甲1に記載された発明 1甲1には、特に、請求項1、請求項11、【0057】~【0060】、【0064】の記載、【表4】のサンプル30に着目すると、次の発明(以下「1甲1発明」という。)が記載されているといえる。なお、カッコ内の段落は、理解促進のために特に参照すべき箇所を示したものである。 「芯部(10)および鞘部(20)を含み、前記芯部(10)が複数の芯フィラメント(12)を含み、前記鞘部(20)が複数の鞘フィラメント(22)を含むマルチフィラメント糸構造(4a)であって、 - 前記鞘部(20)が、前記マルチフィラメント糸構造(4a)の断面(30)の4面積%~75面積%の間であり、 - 前記鞘部(20)が前記芯部(10)上に編組されており、 - 前記鞘部(20)の編組角度(α)が少なくとも30°であり、そして - 前記マルチフィラメント糸構造の幅が0.2mm~5mmの間であり、(【請求項1】) 「1*220 HPPE Dyneema Purity(登録商標) SGX」の芯フィラメントを16本用いて芯部(10)とし、(【0057】、【0058】【表2】の「芯A」) 「1*280PES」の鞘フィラメントを16本用いて鞘部(20)とし、(【0060】、【0063】【表4】の鞘の材料「IV」) 芯繊度が3880dtexであり、(【0058】【表2】の「芯A」) 全体の繊度が9100dtexである、(【0064】【表4】のサンプル30) マルチフィラメント糸構造(4a)。」 イ 1甲2に記載され公然実施された発明 (ア)1甲2の記載事項 1甲2は、製品カタログであるところ、「ファイナルCラインの構造」の欄には、「型式C-DB」のロープについて、内層にケブラーブレードを編組したもの、外層にエステルブレードを編組したものからなるロープであることが記載されている。 (イ)1甲2が公知となった時期について 1甲2の製品カタログには、発行日の記載は無いが、発行者名として「内外製綱株式会社」との記載がある。一方、1甲3に添付された資料(27ページ)によると、内外製綱株式会社は、2012年12月21日に「ナロック株式会社」と社名変更を行ったものと認められる。 そうすると、当該製品カタログは、それより前に発行されたものと理解され、そこに掲載されている製品は、少なくとも本件特許の優先日前に販売、流通されたことが推認できる。 (ウ)1甲3の記載について 申立人1は、1甲2の製品カタログに掲載されている「ファイナルCライン C-DB 12ミリ」について、内層ヤーンの性能、ヤーン長/ロープ長の比・構造について各種試験を行ったものと主張している。 しかし、上記のとおり当該製品カタログに掲載されている製品は、2012年12月頃には販売、流通されていたものと認められるところ、1甲3における試験は、2022年5月18日に入手したものに対して行われている。そのため、製品の販売、流通から相応に長期間経過しており、当該入手した製品が当時と同じものとは異なる可能性を否定できない。また、これらが同じものであるという証拠もない。 また、1甲2の「ファイナルCラインの規格」欄には、「型式C-DB」、直径12mmの製品について、引張強さを「70.6kN」と記載しているところ、1甲3記載されている試験結果では、「76.5kN」(19ページ)とされており、誤差とは言い難い違いが認められ、この点からもこれらが同一の製品であると整合的に理解することができない。 (エ)公然実施された発明 上記(ア)~(ウ)より、本件特許の優先日前に、1甲2に記載され、公然実施された発明(以下「1甲2発明」という。)は、次のとおりのものである。 「内層にケブラーブレードを編組したもの、外層にエステルブレードを編組したものからなるロープ」 ウ 1甲4に記載された発明 1甲4には、特に請求項1の記載に着目すると、次の発明(以下「1甲4発明」という。)が記載されているといえる。 「芯部と鞘部を含む、組紐であって、 芯部は、繊度が300~4000dtexで引張強度が12cN/dtex以上の高強力繊維(a)を含み、 鞘部は、繊度が60~1000dtexで引張強度が12cN/dtex未満の着色された合成繊維(b)を含み、鞘部は組紐状構造を有する、組紐。」 エ 1甲5に記載の事項 1甲5には、特に【0028】の記載からみて、次の事項(以下「1甲5記載事項」という。)が記載されているといえる。 「一般に、ロープリードが長くなるほど、各ストランドの向きがロープ長手方向に向かって傾斜して、ロープ長手方向に平行な直線に近くなっていくことで、ロープ長手方向の引っ張りに対する強度が向上する一方、耐久性が低下すること。」 オ 1甲6に記載の発明 1甲6には、特に請求項1、【0022】~【0024】【表2】、【図1】、「試料番号11」のものに着目すると、次の発明(以下「1甲6発明」という。)が記載されているといえる。 「破断強度20g/d以上、弾性係数500g/d以上の高強度低伸度繊維を使用し、芯ストランドとこれを囲む側ストランドを有する撚り構造のロープであって、(【請求項1】) 芯ストランド及び側ストランドをポリアリレート、繊度96000dで構成し、(【0024】【表2】の「試料番号11」) 外層としてポリエステルブレードを繊度8000dのポリエステル繊維を16打ちで編組し、芯ストランド及び側ストランドを被覆した、(【0022】、【図1】) 高強力繊維ロープ。」 カ 1甲8に記載の発明 1甲8には、第1ページ第1行~第5行(ただし、タイトル除く)、第7ページ「エースラインD 008B-B」の項目における図面及び「〇1(審決注:〇の中に1。以下同様。)構造」の記載からみて、次の発明(以下「1甲8発明」という。)が記載されているといえる。 「超高分子量ポリエチレンからつくられた繊維「ダイニーマ(登録商標)」と、他の繊維・樹脂と組み合わせて作った高強度・高弾性ロープであって、内層がダイニーマSK60、外層がポリエステル繊維であるロープ。」 キ 1甲9に記載の発明 1甲9には、第3ページの記載からみて、次の発明(以下「1甲9発明」という。)が記載されているといえる。 「内層がベクトラン繊維、外層がポリエステル繊維からなるロープ。」 ク 2甲2に記載の発明 2甲2には、特に【0015】~【0019】、【図1】、【図2】の記載に着目すると、次の発明(以下「2甲2発明」という。)が記載されているといえる。 「心材と、心材の外側を囲繞する外層ロープからなる繊維ロープであって、 心材は、超高分子量ポリエステルのマルチフィラメント1600Dのヤーンからストランドを得て、これを12打ちして得たものであり、ピッチは径の15倍であり、 外層ロープは、超高分子量ポリエステルのマルチフィラメント糸1600D4本にポリエステルのマルチフィラメント糸1500D3本を撚り合せて得た第1撚糸3本を撚り合わせて得たヤーンを撚り合わせてストランドを得、これを16打ちして得たものである、繊維ロープ。」 ケ 2甲4、3甲5に記載の発明 2甲4は、国際公開公報である3甲5の再公表特許公報であり、その記載内容は同じである。 そして、2甲4には、特に請求項1、請求項3及び請求項4の記載、【図2】の図示内容に着目すると、次の発明(以下、まとめて「2甲4発明」という。)が記載されているといえる。 「高強度合成繊維心(2)、および上記高強度合成繊維心(2)の外側周囲に撚合わされた、複数本のスチールワイヤを撚り合わせてなる複数本の側ストランド(6,6a,6b)を備え、 上記高強度合成繊維心(2)が、上記高強度合成繊維ロープ(3)の外側周囲を覆う、複数本の繊維フィラメント(41)からなる繊維束(40)を複数本編組みした編組スリーブ(4)を含み、 上記高強度合成繊維心(2)は、 複数本の高強度合成繊維フィラメント(31)からなる高強度合成繊維束(30)を複数本編組みした高強度合成繊維ロープ(3)を含み、 上記高強度合成繊維束(30)の編組みピッチをL、上記高強度合成繊維ロープ(3)の直径をdとしたときにL/dの値が6.7以上13以下である、 ハイブリッドロープ(1,1A,1B)。」 コ 3甲2に記載され公然実施された発明 (ア)3甲2に記載の事項 3甲2は製品カタログであるところ、表紙とともに「エースラインT008B-B」の「構造」欄をみると、形式「008B-B」のロープは、内層を外層が囲む構造であり、内層がテクノーラ繊維(アラミド繊維)の編組体、外層がポリエステル繊維の編組体からなることが記載(第3ページ)されている。また、同欄の「〇2規格」の表には、「エースラインT008B-B」の7mm径の質量として、「41.1g/m」であることが記載されている。 (イ)3甲2が公知となった時期について 3甲2の最終頁には、「07.05.1.5T-SA」と記載されており、発行日が「2007年5月1日」であると推測されるところ、3甲3及び3甲4のウェブページの保存日時から、3甲2の発行日が、少なくとも本件特許の優先日前であることが理解され、そこに掲載されている製品は、少なくとも本件特許の優先日前に販売、流通されたことが推認できる。 (ウ)3甲1の記載について 申立人3は、3甲2の製品カタログに掲載されている2016年2月に製造された「エースラインT008B-B」について、直径7mmのものを用い、その各種構造等について測定したものと主張している。 そこで、3甲2のカタログに掲示されたロープと、3甲1で測定したロープの同一性について検討するに、測定に用いたロープ3甲1の質量の実測値は、30cmにカットしたものが、11.120g(外層4.718g、内層6.402g)であったとしている(「〇7外層及び内層の質量の測定」欄)。そうすると、これを1mに換算すると約37.1gとなるところ、上記(ア)のとおり、3甲2の記載では当該値は41.1g/mとされており、3甲1の質量の実測値の1mの換算値は、規格値と相違する。 もっとも、このような測定には誤差が生じ得るものであるから、この点について確認するに、申立人3が提出した3甲12(東京製綱繊維ロープ株式会社の「合成繊維ロープ」に係る総合カタログ)の第19ページ、「2.品質」欄には、ロープの線密度及び質量として、その許容差は三つ打ちのものは±5%、八つ打ちのものは±7%とすることが記載されており、この程度の誤差は製品として生じ得るものであることが理解できる。 しかし、当該記載は、同ページの「1.適用範囲、種類、材料、ロープの構成」に記載されるとおり、ビニロンロープ、ポリエステル混紡、ナイロンロープ、ポリエチレンロープなどのものであり、3甲2に記載されている内層をテクノーラ繊維(アラミド繊維)というこれらのロープに比べると変形し難い繊維において直ちに妥当するとは言い難い。 また、そもそも、3甲2に記載のロープの質量41.1g/mに比して、実測値が約37.1g/mであるから、その誤差は約9.7%におよび、当該許容される誤差を上回るものである。 これらのことからすると、3甲1において測定に用いたロープが3甲2に記載された製品と同一であると理解することは困難である。 (エ)公然実施された発明 上記(ア)~(ウ)より、本件特許の優先日前に公然実施された発明(以下「3甲2発明」という。)は、次のとおりのものである。 「内層を外層が囲む構造のロープであって、内層がテクノーラ繊維(アラミド繊維)の編組体、外層がポリエステル繊維の編組体からなるロープ。」 (2)1甲1に基づく理由 ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と1甲1発明を対比すると、両発明は、少なくとも次の点で相違する。 <相違点2-1> 本件発明1では、「前記二重ロープ構造体を所定の長さで切断した切断部のロープ長に対する、前記切断部の内層を構成するヤーンのヤーン長の平均値の比が、ヤーン長/ロープ長として1.005以上1.081以下であ」るのに対し、1甲1発明の「芯部(10)」における「芯フィラメント(12)」がロープ長との関係でそのような長さとされているか不明である点。 (イ)判断 1甲1発明の「Dyneema Purity(登録商標) SGX」は、繊度220dtexであり、それが16本であるから芯の繊度の合計値は3520dtexである。一方、1甲1の表2には芯Aの繊度の測定値として3880dtexと記載されている。 すなわち、直線では3520dtexであったものが、編組により3880dtexになったことを意味する。そうすると、長さの比(ヤーン長/ロープ長)は、本1.102(=3880/3520)となり、本件発明1において特定される数値範囲外のものである。 そして、当該相違点2-1は実質的なものである。 (ウ)小括 以上のとおりであるから、本件発明1は、1甲1発明ではない。 イ 本件発明2~8、10、11、13について 本件発明2~8、10、11、13は、いずれも、「前記二重ロープ構造体を所定の長さで切断した切断部のロープ長に対する、前記切断部の内層を構成するヤーンのヤーン長の平均値の比が、ヤーン長/ロープ長として1.005以上1.081以下であ」るとの発明特定事項を備えるものである。 そうすると、本件発明2~8、10、11、13と1甲1発明とを対すると、上記ア(ア)と同じ相違点2-1を少なくとも有するものである。 そして、当該相違点2-1に対する判断は、上記ア(イ)のとおりである。 してみれば、本件発明2~8、10、11、13は、1甲1発明ではない。 ウ 本件発明12について (ア)対比 本件発明12と1甲1発明を対比すると、本件発明12と1甲1発明は、少なくとも次の点で相違する。 <相違点2-2> 本件発明12では、内層における「高強度・高弾性率繊維が、液晶ポリエステル繊維、アラミド繊維、およびポリ(パラフェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維からなる群から選択される少なくとも一種から選択され」るのに対し、1甲1発明の「芯部(10)」における「芯フィラメント(12)」は「1*220 HPPE Dyneema Purity(登録商標) SGX」である点。 (イ)判断 1甲1発明における「1*220 HPPE Dyneema Purity(登録商標) SGX」は、超高分子量ポリエチレン繊維であり(本件明細書の【0035】)、相違点2-2は実質的なものである。 (ウ)小括 以上のとおりであるから、本件発明12は、1甲1発明ではない。 エ 本件発明14について (ア)対比 本件発明14と1甲1発明を対比すると、両発明は、少なくとも次の点で相違する。 <相違点2-3> 本件発明14では、「二重ロープ構造体における内層の比率が50重量%以上である」のに対し、1甲1発明の「芯部(10)」とロープ全体との比率が明確でない点。 (イ)判断 1甲1発明は、芯繊度が3880dtex、全体の繊度が9100dtexであるから、その比率は、約42.6%(=3880/9100)となるため、当該相違点2-3における50重量%以上を満たしていない。そして、相違点2-3は実質的なものである。 (ウ)小括 以上のとおりであるから、本件発明14は、1甲1発明ではない。 オ 本件発明9について 本件発明9と1甲1発明を対比すると、両発明は、少なくとも上記ア(ア)に記載した相違点2-1と同様の相違点を有する。 そして、本件発明9には、ヤーン長/ロープ長として1.005以上1.081以下とすることは記載も示唆もされていない。また、そもそも、これらの比に着目してロープの強度を調整する点について、記載も示唆もされていない。 さらに、他の証拠についても同様である。 そうすると、1甲1発明において、当該相違点2-1に係る本件発明9の発明特定事項を得ることは、当業者にとって容易に想到し得たものではない。 (3)1甲2に基づく理由 ア 本件発明1、3~7、9~11、13について 本件発明1、3~7、9~11、13と1甲2発明とを対比すると、これらの発明は、少なくとも、上記(2)ア(ア)に記載した相違点2-1と同様の相違点を有する。そして、当該相違点は実質的なものであるから、本件発明1、3~7、9~11、13は、1甲2発明ではない。 イ 本件発明12、14について 本件発明12、14と1甲2発明とを対比すると、これらの発明は、少なくとも次の点で相異する。そして、当該相違点3は実質的なものであるから、本件発明12、14は、1甲2発明ではない。 <相違点3> 本件発明12、14では、「前記二重ロープ構造体を所定の長さで切断した切断部のロープ長に対する、前記切断部の内層を構成するヤーンのヤーン長の平均値の比が、ヤーン長/ロープ長として1.005以上1.200以下であ」るのに対し、1甲2発明のロープは、ヤーン長/ロープ長の値が不明である点。 (4)1甲4に基づく理由 ア 本件発明1、2、6、10、11、13について 本件発明1、2、6、10、11、13と1甲4発明を対比すると、これらの発明は、上記(2)ア(ア)で記載した相違点2-1と同様の相違点を有する。 そこで、当該相違点について検討するに、1甲4、その他証拠には、ヤーン長/ロープ長を1.005以上1.081以下とすることや、その比でロープの強度を調整することについて記載も示唆もされていない。 ここで、1甲5記載事項には、一般に、ロープリードが長くなるほどロープの引張強度が向上する旨記載されているが、これはあくまでも1本のロープにおけるリードに関する話であり、二重ロープ構造体における内層のヤーン長とロープの長さの関係について記載ないし示唆したものではない。 よって、本件発明1、2、6、10、11、13は、1甲4発明及び1甲5記載事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものではない。 イ 本件発明12、14について 本件発明12、14と1甲4発明とを対比すると、これらの発明は、上記(3)イで記載した相違点3と同様の相違点を有する。 そして、1甲4及び1甲5には、ヤーン長/ロープ長を1.005以上1.200以下とすることや、その比でロープの強度を調整することについて記載も示唆もされていない。また、他の証拠も同様である。 そうすると、本件発明12、14は、1甲4発明及び1甲5記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5)1甲6に基づく理由 ア 本件発明2、3、6、11、13について 本件発明2、3、6、11、13と1甲6に記載された発明とを対比すると、これらの発明は、少なくとも上記(2)ア(ア)で記載した相違点2-1と同様の相違点を有する。 そして、当該相違点が容易想到であるといえないことは、上記(4)アのとおりである。 以上により、本件発明2、3、6、11、13は、1甲6発明及び1甲5記載事項により当業者が容易に想到し得たものではない。 イ 本件発明12、14について 本件発明12、14と1甲6発明とを対比すると、これらの発明は、少なくとも上記(3)イに記載した相違点3と同様の相違点を有する。 そして、当該相違点が容易想到であるといえないことは、上記(4)イのとおりである。 以上により、本件発明12、14は、1甲6発明及び1甲5記載事項により当業者が容易に想到し得たものではない。 (6)1甲8に基づく理由 ア 本件発明1、3、5、6、10、13について 本件発明1、3、5、6、10、13と1甲8に記載された発明とを対比すると、これらの発明は、少なくとも上記(2)ア(ア)で記載した相違点2-1と同様の相違点を有する、 そして、当該相違点が容易想到であるといえないことは、上記(4)アのとおりである。 以上により、本件発明1、3、5、6、10、13は、1甲8発明及び1甲5記載事項により当業者が容易に想到し得たものではない。 イ 本件発明 12、14について 本件発明12、14と1甲8発明とを対比すると、これらの発明は、少なくとも上記(3)イに記載した相違点3と同様の相違点を有する。 そして、当該相違点が容易想到であるといえないことは、上記(4)イのとおりである。 以上により、本件発明12、14は、1甲8発明及び1甲5記載事項により当業者が容易に想到し得たものではない。 (7)1甲9に基づく理由 ア 本件発明1、3、5、6、10、13について 本件発明1、3、5、6、10、13と1甲9に記載された発明とを対比すると、これらの発明は、少なくとも上記(2)ア(ア)で記載した相違点2-1と同様の相違点を有する、 そして、当該相違点が容易想到であるといえないことは、上記(4)アのとおりである。 以上により、本件発明1、3、5、6、10、13は、1甲9発明及び1甲5記載事項により当業者が容易に想到し得たものではない。 イ 本件発明 12、14について 本件発明12、14と1甲9発明とを対比すると、これらの発明は、少なくとも上記(3)イに記載した相違点3と同様の相違点を有する。 そして、当該相違点が容易想到であるといえないことは、上記(4)イのとおりである。 以上により、本件発明12、14は、1甲9発明及び1甲5記載事項により当業者が容易に想到し得たものではない。 (8)2甲2に基づく理由 ア 本件発明1~6、8~10、13について 本件発明1~6、8~10、13と2甲2発明とを対比すると、これらの発明は、少なくとも上記(2)ア(ア)で記載した相違点2-1と同様の実質的な相違点を有する。 そこで、当該相違点について検討するに、2甲2発明において、「ピッチは径の15倍」とされており、当該値は、本件特許明細書に記載の各実施例(【0083】【表5】)における「リード/直径」の最小値・最大値の範囲である10.9~49.8に入っているものである。しかし、「リード/直径」が当該範囲に入るからといって、直ちにヤーン長/ロープ長が1.005以上1.081以下に入る蓋然性が高いとはいうことができないし、2甲2発明においてヤーン長/ロープ長を計算することはできないものである。 そして、2甲2、その他各証拠をみても、ヤーン長/ロープ長を1.005以上1.081以下とすることや、その比でロープの強度を調整することについて記載も示唆もされていない。 そうすると、本件発明1~3、5、6、10、13は、2甲2発明ではなく、また、本件発明1~6、8~10、13は、2甲2発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものでもない。 イ 本件発明12、14について 本件発明12、14と2甲2発明とを対比すると、これらの発明は、少なくとも上記(3)イに記載した相違点3と同様の実質的な相違点を有する。 そして、当該相違点が2甲2発明から容易想到ではないことは、上記アのとおりである。 そうすると、本件発明12、14は、2甲2発明ではなく、また、2甲2発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものでもない。 (9)2甲4(3甲5)に基づく理由 2甲5と3甲5は、同じ文献であるため、その理由についてもまとめて判断する。 ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と2甲4発明を対比すると、両発明は、少なくとも次の点で相違する。 <相違点4> 本件発明1のロープは、「内層と外層とで構成される二重ロープ構造体」であるのに対し、2甲4発明の「ハイブリッドロープ」は、「上記高強度合成繊維心(2)が、上記高強度合成繊維ロープ(3)の外側周囲を覆う、複数本の繊維フィラメント(41)からなる繊維束(40)を複数本編組みした編組スリーブ(4)を含」むものであり、さらに「上記高強度合成繊維心(2)の外側周囲に撚合わされた、複数本のスチールワイヤを撚り合わせてなる複数本の側ストランド(6,6a,6b)」により構成されており、ロープの構成が異なる点。 (イ)判断 上記(ア)のとおり、本件発明1と2甲4発明とは、ロープの基本構造が異なるものである。そして、2甲4発明におけるロープ構造を、本件発明1の「内層と外層とで構成される二重ロープ構造体」に換える動機付けもない。 そうすると、当該相違点4は実質的なものであり、また、当該相違点4に係る本件発明1の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到し得たものではない。 (ウ)小括 以上のとおり、本件発明1は2甲4発明ではなく、また、2甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 イ 本件発明2~14について 本件発明2~14と2甲4発明とを対比すると、これらの発明は、少なくとも上記ア(ア)で記載した実質的な相違点4を有する。 そして、当該相違点4に対する検討は、同(イ)のとおりである。 してみれば、本件発明1~3、5~7、9、10、12~14は2甲4発明ではなく、また、本件発明2~14は、2甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (10)3甲2に基づく理由 ア 本件発明1~11、13について 本件発明1~11、13と3甲2発明とを対比すると、これらの発明は、少なくとも上記(2)ア(ア)で記載した相違点2-1と同様の実質的な相違点を有する。 そこで、当該相違点について検討するに、3甲2、その他証拠には、ヤーン長/ロープ長を1.005以上1.081以下とすることや、その比でロープの強度を調整することについて記載も示唆もされていない。 そうすると、本件発明1~7、9~11、13は、3甲2発明ではなく、また、本件発明1~11、13は、3甲2発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものでもない。 イ 本件発明12、14について 本件発明12、14と3甲2発明とを対比すると、これらの発明は、少なくとも上記(3)イに記載した相違点3と同様の実質的な相違点を有する。 そして、当該相違点が3甲2発明から容易想到ではないことは、上記アのとおりである。 そうすると、本件発明12、14は、3甲2発明ではなく、また、本件3甲2発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものでもない。 (11)サポート要件について 申立人3は、3甲7の記載からみて、ロープの曲げに関しロープ径に左右されるといえるところ、本件発明8はロープ径の限定がなく、ロープ径がいかなる数値であったとしても、本件特許発明の課題が解決できるとは認められない旨主張する。 しかし、本件発明8は、「屈曲角度240°において30万回屈曲を繰り返す屈曲試験に供した場合の屈曲試験前後の強力保持率が45%以上である」ことを特定しているところ、これにより、本件発明8の課題である「強度および耐屈曲性に優れる二重ロープ構造体を提供すること」(本件明細書の【0007】)を、解決し得ると認識できるものである。 よって、申立人3の上記主張は採用できない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議の申立ての理由によっては、請求項1~14に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1~14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700995

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