審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許異議申立

2024-700857

アクリル繊維用処理剤及びその用途

審判番号
2024-700857
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2023-573102
登録番号
7448735
請求日
2024年09月09日
審決日
2026年01月08日
公報発行日
2026年04月24日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】松本油脂製薬株式会社
  • 【異議申立人】芝崎 公昭
審判長/審判官
  • 審判長 八木 誠
  • 審判官 長清 吉範
  • 審判官 金丸 治之
分類
P1651.121-YAA(D06M) / P1651.113-YAA(D06M) / P1651.537-YAA(D06M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条第1項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7448735号発明「アクリル繊維用処理剤及びその用途」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7448735号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正することを認める。 特許第7448735号の請求項1~10に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7448735号(以下「本件特許」という。)の請求項1~10に係る特許についての出願は、令和5年7月28日(優先権主張 令和4年9月13日)を国際出願日とするものであって、令和6年3月4日にその特許権の設定登録(特許掲載公報 令和6年3月12日発行)がされ、その後、その請求項1~10に係る特許について、令和6年9月9日に特許異議申立人芝崎公昭(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、令和7年5月27日付けで取消理由が通知され、令和7年6月27日に特許権者から意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)がされ、令和7年9月18日に、この本件訂正請求について、申立人から意見書が提出されたものである。 第2 本件訂正請求について 1 訂正の内容 本件訂正請求は、「特許第7448735号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~10について訂正することを求める。」ものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、次の訂正事項を含むものである。なお、下線は、当審が訂正箇所に付したものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「前記親水性溶媒(D)が下記一般式(3)で表される化合物及び非プロトン性含窒素有機化合物から選ばれる少なくとも1種を含む、アクリル繊維用処理剤。」と記載されるのを、「前記親水性溶媒(D)が下記一般式(3)で表される化合物及び非プロトン性含窒素有機化合物から選ばれる少なくとも1種を含み、炭素繊維製造用アクリル繊維に用いられる、アクリル繊維用処理剤。」に訂正する。(請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2~4、6及び8~10も同様に訂正する) (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項5に「前記アミノ変性シリコーン(A)のアミノ基に対する、前記ブレンステッド酸化合物(C)のモル比が、0.01~5.0である、請求項3に記載のアクリル繊維用処理剤。」と記載されるのを、「アミノ変性シリコーン(A)と、硫黄原子と窒素原子とを含む5員環構造を有する化合物(B)及び前記化合物(B)の誘導体から選ばれる少なくとも1種と、親水性溶媒(D)とを含有する、アクリル繊維用処理剤であって、 前記親水性溶媒(D)が下記一般式(3)で表される化合物及び非プロトン性含窒素有機化合物から選ばれる少なくとも1種を含み、 ブレンステッド酸化合物(C)をさらに含有し、 前記アミノ変性シリコーン(A)のアミノ基に対する、前記ブレンステッド酸化合物(C)のモル比が、0.01~5.0である、アクリル繊維用処理剤。 【化3】 [図:0001434120000001.jpg] (式(3)中、AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、nは1~3の整数である。)」に訂正する。(請求項5を直接的又は間接的に引用する請求項9及び10も同様に訂正する) (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項7に「処理剤の不揮発分に占める前記アミノ変性シリコーン(A)の重量割合が20~90重量%である、請求項1に記載のアクリル繊維用処理剤。」と記載されるのを、「アミノ変性シリコーン(A)と、硫黄原子と窒素原子とを含む5員環構造を有する化合物(B)及び前記化合物(B)の誘導体から選ばれる少なくとも1種と、親水性溶媒(D)とを含有する、アクリル繊維用処理剤であって、 前記親水性溶媒(D)が下記一般式(3)で表される化合物及び非プロトン性含窒素有機化合物から選ばれる少なくとも1種を含み、 処理剤の不揮発分に占める前記アミノ変性シリコーン(A)の重量割合が20~90重量%である、アクリル繊維用処理剤。 【化3】 [図:0001434120000002.jpg] (式(3)中、AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、nは1~3の整数である。)」に訂正する。(請求項7を直接的又は間接的に引用する請求項9及び10も同様に訂正する) (4)一群の請求項について 本件訂正前の請求項1~10は、請求項2~10が、本件訂正前の請求項1の記載を引用する関係にあるから、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであり、本件訂正請求は、一群の請求項〔1~10〕について請求されたものである。 2 訂正の適否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、訂正前の請求項1には、「アクリル繊維用処理剤」の用途が特定されていなかったものを、「炭素繊維製造用アクリル繊維に用いられる」ことに限定する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 この訂正は、本件明細書の段落【0067】の記載に基づくものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものである。 また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、訂正前の請求項5の記載が、訂正前の請求項1を引用する請求項3を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるための訂正であるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当する。 この訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、訂正前の請求項7の記載が、訂正前の請求項1を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるための訂正であるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当する。 この訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 3 本件訂正請求についてのまとめ したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、本件訂正後の請求項〔1~10〕について訂正を認める。 第3 本件特許発明 上記のとおり、本件訂正請求が認められるから、本件特許の請求項1~10に係る発明(以下「本件発明1」等といい、総称して「本件発明」ともいう。)は、それぞれ、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~10に記載された、次のとおりのものである。 「【請求項1】 アミノ変性シリコーン(A)と、硫黄原子と窒素原子とを含む5員環構造を有する化合物(B)及び前記化合物(B)の誘導体から選ばれる少なくとも1種と、親水性溶媒(D)とを含有する、アクリル繊維用処理剤であって、 前記親水性溶媒(D)が下記一般式(3)で表される化合物及び非プロトン性含窒素有機化合物から選ばれる少なくとも1種を含み、炭素繊維製造用アクリル繊維に用いられる、アクリル繊維用処理剤。 【化3】 [図:0001434120000003.jpg] (式(3)中、AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、nは1~3の整数である。) 【請求項2】 前記化合物(B)が、下記一般式(1)で表される化合物及び下記一般式(2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載のアクリル繊維用処理剤。 【化1】 [図:0001434120000004.jpg] (式(1)中、R1は、炭素数1~12のアルキル基、アラルキル基又は水素原子であり、X及びYは独立して水素原子又はハロゲン原子である。) 【化2】 [図:0001434120000005.jpg] (式(2)中、R2は、炭素数1~8のアルキル基又は水素原子である。) 【請求項3】 ブレンステッド酸化合物(C)をさらに含有する、請求項1に記載のアクリル繊維用処理剤。 【請求項4】 前記ブレンステッド酸化合物(C)が、カルボン酸化合物、無機酸、スルホン酸化合物、リン酸エステル化合物、硫酸エステル化合物及びホスホン酸化合物から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項3に記載のアクリル繊維用処理剤。 【請求項5】 アミノ変性シリコーン(A)と、硫黄原子と窒素原子とを含む5員環構造を有する化合物(B)及び前記化合物(B)の誘導体から選ばれる少なくとも1種と、親水性溶媒(D)とを含有する、アクリル繊維用処理剤であって、 前記親水性溶媒(D)が下記一般式(3)で表される化合物及び非プロトン性含窒素有機化合物から選ばれる少なくとも1種を含み、 ブレンステッド酸化合物(C)をさらに含有し、 前記アミノ変性シリコーン(A)のアミノ基に対する、前記ブレンステッド酸化合物(C)のモル比が、0.01~5.0である、アクリル繊維用処理剤。 【化3】 [図:0001434120000006.jpg] (式(3)中、AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、nは1~3の整数である。) 【請求項6】 前記ブレンステッド酸化合物(C)100重量部に対する、前記化合物(B)及び前記化合物(B)の誘導体の合計の重量が0.01~50重量部である、請求項3に記載のアクリル繊維用処理剤。 【請求項7】 アミノ変性シリコーン(A)と、硫黄原子と窒素原子とを含む5員環構造を有する化合物(B)及び前記化合物(B)の誘導体から選ばれる少なくとも1種と、親水性溶媒(D)とを含有する、アクリル繊維用処理剤であって、 前記親水性溶媒(D)が下記一般式(3)で表される化合物及び非プロトン性含窒素有機化合物から選ばれる少なくとも1種を含み、 処理剤の不揮発分に占める前記アミノ変性シリコーン(A)の重量割合が20~90重量%である、アクリル繊維用処理剤。 【化3】 [図:0001434120000007.jpg] (式(3)中、AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、nは1~3の整数である。) 【請求項8】 非イオン性界面活性剤(E)をさらに含有する、請求項1に記載のアクリル繊維用処理剤。 【請求項9】 炭素繊維製造用アクリル繊維の原料アクリル繊維に、請求項1~8のいずれかに記載のアクリル繊維用処理剤を付着させてなる、炭素繊維製造用アクリル繊維。 【請求項10】 請求項9に記載の炭素繊維製造用アクリル繊維を、200~300℃の酸化性雰囲気中で耐炎化繊維に転換する耐炎化処理工程と、前記耐炎化繊維をさらに300~2000℃の不活性雰囲気中で炭化させる炭素化処理工程とを含む、炭素繊維の製造方法。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由の要旨 (進歩性)本件特許の請求項1~4、6及び8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4、6及び8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 <引用刊行物> 甲4:特開2002-327375号公報(申立人が提出した甲第4号証) 2 取消理由についての判断 (1)甲4に記載された発明 ア 甲4には、特に実施例3(【0065】~【0077】、【表1】)に着目すると、次の「甲4発明1」が記載されているといえる。 「(A)成分として、a-3 アミノ変性シリコーン(商品名:東レ・ダウ・コーニング・シリコーン(株)製 SF8417)5質量%と、 (C)成分として、c-1:ケーソンCG-ICP(ローム・アンド・ハース社製)、(5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン:1.15質量%、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン:0.35質量%、硝酸マグネシウム:23質量%、水:75.5質量%の混合物)75ppmと、 共通成分として、イソトリデシルアルコールエチレンオキシド付加物1質量%と、エチレングリコール4質量%と、ヒドロキシルエタンジホスホン酸50ppmと、 を含有し、衣類等の繊維製品、特に化学繊維製品に用いられる柔軟剤組成物。」 イ また、甲4には、特に実施例14(【0065】~【0077】、【表1】)に着目すると、次の「甲4発明2」が記載されているといえる。 「(A)成分として、a-3 アミノ変性シリコーン(商品名:東レ・ダウ・コーニング・シリコーン(株)製 SF8417)3質量%と、 (C)成分として、c-2:プロキセルBDN(アビシア社製)、(1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンの33質量%品)50ppmと、 共通成分として、イソトリデシルアルコールエチレンオキシド付加物1質量%と、エチレングリコール4質量%と、ヒドロキシルエタンジホスホン酸50ppmと、 を含有し、衣類等の繊維製品、特に化学繊維製品に用いられる柔軟剤組成物。」 (2)本件発明1と甲4発明1との対比・判断 ア 本件発明1と甲4発明1を対比する。 甲4発明1の「アミノ変性シリコーン(商品名:東レ・ダウ・コーニング・シリコーン(株)製 SF8417)」は、本件発明1の「アミノ変性シリコーン(A)」に相当する。 甲4発明1の「5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン」及び「2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン」は、その化学式から、硫黄原子と窒素原子とを含む5員環構造を有する化合物であるといえるから、本件発明1の「硫黄原子と窒素原子とを含む5員環構造を有する化合物(B)及び前記化合物(B)の誘導体から選ばれる少なくとも1種」に相当する。 甲4発明1の「エチレングリコール」は、親水性溶媒であり、その化学式から、請求項1の一般式(3)で示される化合物のうち、式(3)中、AOは炭素数2のオキシアルキレン基であり、nは1であるものといえるから、本件発明1の「下記一般式(3)で表される化合物及び非プロトン性含窒素有機化合物から選ばれる少なくとも1種を含」み、 「【化3】 [図:0001434120000008.jpg] 」「(式(3)中、AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、nは1~3の整数である。)」である「親水性溶媒(D)」に相当する。 柔軟剤とは一般的に繊維に付与され、滑らかさなどの作用を施すものであるから、繊維用処理剤の一種であるといえ、甲4発明1の「衣類等の繊維製品、特に化学繊維製品に用いられる柔軟剤組成物」は、本件発明1の「炭素繊維製造用アクリル繊維に用いられる、アクリル繊維用処理剤」と、「繊維用処理剤」という限りにおいて一致する。 イ そうすると、本件発明1と甲4発明1の一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「アミノ変性シリコーン(A)と、硫黄原子と窒素原子とを含む5員環構造を有する化合物(B)及び前記化合物(B)の誘導体から選ばれる少なくとも1種と、親水性溶媒(D)とを含有する、繊維用処理剤であって、 前記親水性溶媒(D)が下記一般式(3)で表される化合物及び非プロトン性含窒素有機化合物から選ばれる少なくとも1種を含む、繊維用処理剤。 【化3】 [図:0001434120000009.jpg] (式(3)中、AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、nは1~3の整数である。)」 <相違点4-1> 繊維用処理剤に関し、本件発明1が「炭素繊維製造用アクリル繊維に用いられる、アクリル用繊維用処理剤」であるのに対し、甲4発明1は「衣類等の繊維製品、特に化学繊維製品に用いられる柔軟剤組成物」である点。 ウ 上記相違点4-1について検討する。 本件発明1の「硫黄原子と窒素原子とを含む5員環構造を有する化合物(B)及び前記化合物(B)の誘導体から選ばれる少なくとも1種」が、「5員環構造内にヘテロ原子間の結合を有するとヘテロ原子間の結合が熱により開裂し、開裂によって生じたラジカルがアミノ変性シリコーン(A)の架橋反応をより促進する」(本件明細書の段落【0018】)ものであるところ、甲4発明1の「(C)成分として、c-1:ケーソンCG-ICP(ローム・アンド・ハース社製)、(5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン:1.15質量%、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン:0.35質量%、硝酸マグネシウム:23質量%、水:75.5質量%の混合物)75ppm」は、「抗微生物性の有機防腐・抗菌剤」(甲4の【0029】)として添加されるもので、熱により開裂することは想定されておらず、有機防腐・抗菌剤として添加される甲4発明1の「柔軟剤組成物」を、加熱による耐炎化工程が想定される「炭素繊維製造用アクリル繊維に用いられる、アクリル用繊維用処理剤」とする動機付けはない。 この点、申立人は、意見書(4~5ページ)において、甲9(特開2015-30942号公報)及び甲10(特開2019-23378号公報)からみて、炭素繊維製造用アクリル繊維に用いられるアクリル繊維処理剤において、工程通過性を向上させるために柔軟剤を適用することは周知技術であり、炭素繊維製造用アクリル繊維に甲4発明1の柔軟剤を適用することに、阻害要因、困難性は認められない旨主張する。 しかし、甲9(【0035】)及び甲10(【0042】)に示唆されるのは、炭素繊維製造用のアクリル繊維に用いられるシリコーン化合物を含む油剤に対し、シリコーン化合物以外の成分として柔軟剤を含むことができ、その柔軟剤としてエステル化合物やウレタン化合物を用いることができることであり、甲9及び甲10の上記示唆は、アミノ変性シリコーンを含む甲4発明1の柔軟剤組成物を、炭素繊維製造用のアクリル繊維の柔軟剤として用いることの動機付けにはならず、申立人の上記主張は採用できない。 よって、本件発明1の相違点4-1に係る構成は、甲4発明1に基いて当業者が容易に想到し得たものではない。 エ 以上より、本件発明1は、甲4発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明1と甲4発明2との対比・判断 ア 本件発明1と甲4発明2を対比すると、甲4発明2の「1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン」は、その化学式から、硫黄原子と窒素原子とを含む5員環構造を有する化合物であり、本件発明1の「硫黄原子と窒素原子とを含む5員環構造を有する化合物(B)及び前記化合物(B)の誘導体から選ばれる少なくとも1種」に相当する。 その他の事項の相当関係は、上記(2)アのとおりである。 そうすると、本件発明1と甲4発明2の一致点及び相違点は、上記(2)イと同様である。 イ この相違点について判断するに、甲4発明2の「c-2:プロキセルBDN(アビシア社製)、(1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンの33質量%品)50ppm」についても、「抗微生物性の有機防腐・抗菌剤」(甲4の【0029】~【0032】)として添加されるものであり、上記(2)ウと同様に、本件発明1は、甲4発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件発明2~4、6、8について 本件発明2~4、6、8は、本件発明1の発明特定事項をすべて備えるものであるところ、上記(2)及び(3)で述べたように、本件発明1は、甲4発明1あるいは甲4発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明2~4、6、8も、甲4発明1あるいは甲4発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない (5)まとめ 以上より、取消理由通知に記載した取消理由には、理由がない。 第5 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由について 1 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由 申立人は、特許異議申立書に添付して甲第1号証~甲第8号証(以下「甲1」~「甲8」という。)を提出し、取消理由通知に記載した取消理由の他に、次の理由を申立てている。 (1)申立理由 ア 申立理由1(甲1を引用例とする新規性) 本件発明1~2、8~10は甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、当該発明に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 イ 申立理由2(甲1を主引用例とする進歩性) 本件発明1~6、8~10は、甲1、甲2、甲7及び甲8に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 ウ 申立理由3(甲3を引用例とする新規性) 本件発明1~4、7、8は甲3に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、当該発明に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 エ 申立理由4(甲3を主引用例とする進歩性) 本件発明1~4、7、8は、甲3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 オ 申立理由5(甲4を引用例とする新規性) 本件発明1~4、6、8は甲4に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、当該発明に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 カ 申立理由6(甲5を主引用例とする進歩性) 本件発明1、2、7~10は、甲5、甲7及び甲8に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 キ 申立理由7(甲6を主引用例とする進歩性) 本件発明1~5、7~10は、甲6、甲7及び甲8に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 ク 申立理由8(サポート要件) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 本件発明は、「アクリル繊維用処理剤」と記載し、アクリル繊維に適用される処理剤であれば全て含む構成となっているが、処理剤が付与された炭素繊維製造用のアクリル繊維以外のアクリル繊維は、本件発明の課題を解決できないものである。 (2)証拠方法 甲1:特許第5585579号公報 甲2:特開2022-14692号公報 甲3:特開2018-203891号公報 甲4:(上記「第4」の甲4と同じ) 甲5:特開2011-99167号公報 甲6:国際公開第2018/163739号 甲7:特開2002-3307号公報 甲8:特開平8-217607号公報 2 申立理由の判断 (1)甲1、甲3、甲5及び甲6に記載された発明 ア 甲1に記載された発明 甲1には、「炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤組成物」(【0001】)について、特に実施例1の油剤組成物に着目すると、次の「甲1発明」が記載されているといえる。 「芳香族エステル化合物として、ポリオキシエチレンビスフェノールAジラウレート(花王株式会社製、商品名:エキセパール BP-DL)と、トリイソデシルトリメリテート(花王株式会社製、商品名:トリメックス T-10)と、 アミノ変性シリコーン(Gelest,Inc.製、商品名:AMS-132)と、 界面活性剤として、PO/EOブロック共重合型ポリエーテル(BASFジャパン株式会社製、商品名:Pluronic PE6800)と、PO/EOブロック共重合型ポリエーテル(株式会社ADEKA製、商品名:アデカプルロニック L-44)と、ノナエチレングリコールドデシルエーテル(日光ケミカルズ株式会社、商品名:NIKKOL BL-9EX)を含有する、炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤組成物。」 イ 甲3に記載された発明 甲3には、「洗剤、繊維製品処理剤、ヘアケア製品や化粧品等」(【0002】)に使用されるアミノ変性シリコーン組成物について、特に実施例1の組成物に着目すると、次の「甲3発明」が記載されているといえる。 「側鎖変性タイプのアミノ変性シリコーンの水不溶性オイル(信越化学工業(株) 商品名:KF-864)と、 1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン(クラリアントジャパン株式会社。商品名:Nipacide BIT 20)と、 非イオン性界面活性剤(ポリオキシアルキレンアルキルエーテル)と 2-フェノキシエタノール(関東化学)を含有する、洗剤、繊維製品処理剤、ヘアケア製品や化粧品等に使用されるアミノ変性シリコーン組成物。」 ウ 甲5に記載された発明 甲5には、「炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤組成物」(【0001】)について、特に実施例1の油剤組成物に着目すると、次の「甲5発明」が記載されているといえる。 「アミノ変性ポリジメチルシロキサン(信越化学工業株式会社製、商品名:X-22-161B)と、 ポリオキシエチレンラウリルエーテル(花王株式会社製、商品名:エマルゲン105)と、 抗菌剤として1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン(シグマアルドリッチ社製)を含有する、炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤組成物。」 エ 甲6に記載された発明 甲6には、「炭素繊維製造用アクリル繊維」([0001])に使用する処理剤について、特に実施例1の処理剤に着目すると、次の「甲6発明」が記載されているといえる。 「アミノ変性シリコーンと 酢酸と、 2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールのエチレンオキサイド20モル付加物と、 ポリオキシエチレンアルキルエーテルを含有する、炭素繊維製造用アクリル繊維に使用される処理剤。」 (2)申立理由1及び2(甲1を主引用例とする新規性、進歩性)について ア 対比 本件発明1と甲1発明を対比すると、本件発明1と甲1発明とは、少なくとも次の相違点1-1及び相違点1-2で相違する。 <相違点1-1> 本件発明1が「硫黄原子と窒素原子とを含む5員環構造を有する化合物(B)及び前記化合物(B)の誘導体から選ばれる少なくとも1種」を含むのに対し、甲1発明はそのように特定されていない点。 <相違点1-2> 本件発明1が「一般式(3)で表される化合物及び非プロトン性含窒素有機化合物から選ばれる少なくとも1種」の「親水性溶媒(D)」を含むのに対し、甲1発明はそのように特定されていない点。 イ 判断 上記相違点1-1について検討する。 甲1には、油剤組成物を水または溶剤に分散し油剤組成物分散液とした際に、油剤組成物が抗菌剤を含有すると、油剤組成物分散液の劣化を防止することができ好ましい旨記載され、その抗菌剤として甲1(【0099】)に例示される多数の物質の中に、「硫黄原子と窒素原子とを含む5員環構造を有する化合物(B)及び前記化合物(B)の誘導体から選ばれる少なくとも1種」である「1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン」等も挙げられている。 しかし、本件発明1が「硫黄原子と窒素原子とを含む5員環構造を有する化合物(B)及び前記化合物(B)の誘導体から選ばれる少なくとも1種」を含むのは、「5員環構造内にヘテロ原子間の結合を有するとヘテロ原子間の結合が熱により開裂し、開裂によって生じたラジカルがアミノ変性シリコーン(A)の架橋反応をより促進するため」(本件明細書の段落【0018】)であるところ、甲1において抗菌剤として例示される多数の物質の中から、「硫黄原子と窒素原子とを含む5員環構造を有する化合物(B)及び前記化合物(B)の誘導体から選ばれる少なくとも1種」に該当するものを、敢えて選択する動機付けはない。そして、これは提出された他の証拠を参照したとしても同様である。 よって、相違点1-1は実質的なものであり、本件発明1の相違点1-1に係る構成は、甲1発明に基いて当業者が容易に想到し得たものではない。 ウ 小括 そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲1発明ではなく、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 また、上記相違点1-1に係る構成を備える本件発明2~6、8~10も同様である。 (3)申立理由3及び4(甲3を主引用例とする新規性、進歩性)について ア 対比 本件発明1と甲3発明を対比すると、本件発明1と甲3発明とは、少なくとも次の相違点3-1で相違する。 <相違点3-1> 本件発明1が「一般式(3)で表される化合物及び非プロトン性含窒素有機化合物から選ばれる少なくとも1種」の「親水性溶媒(D)」を含むのに対し、甲3発明は「2-フェノキシエタノール(関東化学)」である点。 <相違点3-2> 本件発明1が「炭素繊維製造用アクリル繊維に用いられる、アクリル用繊維用処理剤」であるのに対し、甲3発明は「洗剤、繊維製品処理剤、ヘアケア製品や化粧品等に使用されるアミノ変性シリコーン組成物」である点。 イ 判断 上記相違点3-1について検討する。 甲3発明の「2-フェノキシエタノール(関東化学)」は、水溶性有機溶剤として、「アミノ変性シリコーン組成物の貯蔵安定性や外観を向上するために配合する」(甲3の【0028】)ものである。甲3(【0028】)には、水溶性有機溶剤として多数の物質が例示されており、この多数の物質の中から、甲3発明の「2-フェノキシエタノール(関東化学)」に換えて、「一般式(3)で表される化合物及び非プロトン性含窒素有機化合物から選ばれる少なくとも1種」の「親水性溶媒(D)」に該当するものを、敢えて選択する動機付けはない。 よって、相違点3-1は実質的なものであり、本件発明1の相違点3-1に係る構成は、甲3発明に基いて当業者が容易に想到し得たものではない。 ウ 小括 そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲3発明ではなく、甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 また、上記相違点3-1に係る構成を備える本件発明2~4、7、8も同様である。 (4)申立理由5(甲4を引用例とする新規性)について 上記「第4 2(2)、(3)」で述べたように、本件発明1と、甲4発明1あるいは甲4発明2は、相違点4-1で実質的に相違するから、本件発明1は、甲4発明1あるいは甲4発明2ではない。 また、本件発明2~4、6、8も同様である。 (5)申立理由6(甲5を主引用例とする進歩性)について ア 対比 本件発明1と甲5発明を対比すると、本件発明1と甲5発明とは、少なくとも次の相違点5-1で相違する。 <相違点5-1> 本件発明1が「一般式(3)で表される化合物及び非プロトン性含窒素有機化合物から選ばれる少なくとも1種」の「親水性溶媒(D)」を含むのに対し、甲5発明はそのように特定されていない点。 イ 判断 上記相違点5-1について検討する。 本件発明1の「親水性溶媒(D)」は、「アミノ変性シリコーン(A)と、化合物(B)及び化合物(B)の誘導体との相溶性を向上させる点や炭素繊維強度を向上する点」(本件明細書の段落【0040】)を意図して含有されるものである。 一方、甲5発明に抗菌剤として含有される「1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン(シグマアルドリッチ社製)」は、甲7(【0014】~【0015】)及び甲8(【0007】)に、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン等のイソチアゾリン系化合物が、溶媒としてエチレングリコール等の水溶性グリコール系溶媒とともに用いられることが記載されているが、アミノ変性シリコーンとの相溶性については記載されていないから、甲7及び甲8の上記記載が、アミノ変性シリコーンと1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン等のイソチアゾリン系化合物を含む甲5発明の組成物に、エチレングリコール等の溶媒を付加する動機付けを示すものではない。 よって、本件発明1の相違点5-1に係る構成は、甲5発明、甲7及び甲8に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に想到し得たものではない。 ウ 小括 そうすると、本件発明1は、甲5発明、甲7及び甲8に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 上記相違点5-1に係る構成を備える本件発明2、7~10も同様である。 (6)申立理由7(甲6を主引用例とする進歩性)について ア 対比 本件発明1と甲6発明を対比すると、本件発明1と甲6発明とは、少なくとも次の相違点6-1及び相違点6-2で相違する。 <相違点6-1> 本件発明1が「硫黄原子と窒素原子とを含む5員環構造を有する化合物(B)及び前記化合物(B)の誘導体から選ばれる少なくとも1種」を含むのに対し、甲6発明はそのように特定されていない点。 <相違点6-2> 本件発明1が「一般式(3)で表される化合物及び非プロトン性含窒素有機化合物から選ばれる少なくとも1種」の「親水性溶媒(D)」を含むのに対し、甲6発明はそのように特定されていない点。 イ 判断 上記相違点6-1について検討する。 本件発明1が「硫黄原子と窒素原子とを含む5員環構造を有する化合物(B)及び前記化合物(B)の誘導体から選ばれる少なくとも1種」を含むのは、「5員環構造内にヘテロ原子間の結合を有するとヘテロ原子間の結合が熱により開裂し、開裂によって生じたラジカルがアミノ変性シリコーン(A)の架橋反応をより促進するため」(本件明細書の段落【0018】)であるところ、甲6には、そのような化合物について記載はない。 甲7及び甲8に、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン等のイソチアゾリン系化合物が、溶媒としてエチレングリコール等の水溶性グリコール系溶媒とともに用いられることが記載されているが、甲6発明に、そのような化合物を敢えて含むようにする動機付けがなく、本件発明1の相違点6-1に係る構成は、甲6発明、甲7及び甲8に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に想到し得たものではない。 ウ 小括 そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、甲6発明、甲7及び甲8に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 上記相違点6-1に係る構成を備える本件発明2~4、7~10も同様である。 (7)申立理由8(サポート要件)について 特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。以下検討する。 ア 発明の課題 本件特許の【0006】の記載から、本件特許に係る発明が解決しようとする課題は「炭素繊維製造用アクリル繊維の耐炎化工程における炭素繊維製造用アクリル繊維の集束性を向上できるアクリル繊維用処理剤、該処理剤を用いた炭素繊維製造用アクリル繊維及び該処理剤を用いた炭素繊維の製造方法」を提供することである。 イ 発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か 本件発明1は、本件特許の請求項1に記載のとおりのものである。 ここで、本件特許の明細書の【0076】~【0100】には、実施例が示され、本件発明の発明特定事項を有する実施例1~83が、本件特許に係る発明が解決しようとする課題を解決するものとして記載されている。 そうすると、請求項1の記載は、上記発明が解決しようとする課題を解決できると認識できる範囲のものであると判断できる。 申立人は、本件発明は、「アクリル繊維用処理剤」と記載し、アクリル繊維に適用される処理剤であれば全て含む構成となっており、処理剤が付与された炭素繊維製造用のアクリル繊維以外のアクリル繊維は、本件発明の課題を解決できないものであると主張するが、本件特許の明細書の【0006】には、「本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、アミノ変性シリコーン(A)と、硫黄原子と窒素原子とを含む5員環構造を有する化合物(B)及び前記化合物(B)の誘導体から選ばれる少なくとも1種とを含有する、アクリル繊維用処理剤であれば、炭素繊維製造用アクリル繊維の耐炎化工程におけるプレカーサーの集束性を向上できることを見出し、本願発明に到達した。」と記載されるとともに、上記したとおり、本件特許の明細書の【0076】~【0100】には、実施例が示され、本件発明の発明特定事項を有する実施例1~83が、本件特許に係る発明が解決しようとする課題を解決するものとして記載されており、アクリル繊維の用途が特定されているか否かに関わらず、炭素繊維製造用アクリル繊維の耐炎化工程に係る本件特許に係る発明が解決しようとする課題を解決できると認識し得るものである。 よって、当該申立人の主張は採用することはできない。 (8)まとめ 本件の請求項1~10に係る発明は、申立人が提出した本件特許出願前に頒布された刊行物に記載された発明ではないから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではない。 また、本件の請求項1~10に係る発明は、申立人が提出した本件特許出願前に頒布された刊行物に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 さらに、本件特許は、特許請求の範囲の記載に不備はなく、特許法第36条第6項第1号の要件を満たしているから、本件の請求項1~10に係る特許は特許法第36条第6項の規定に違反してされたものではない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由並びに特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~10に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2024-700857

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決22件(松本油脂製薬株式会社、芝崎 公昭)
  • 2026-700198異議申立 / 2026-05-25 / 維持透水性付与剤及びその利用
    同じ当事者: 松本油脂製薬株式会社
  • 2025-700070異議申立 / 2026-03-19 / 訂正認容粒子、及びその用途
    同じ当事者: 松本油脂製薬株式会社
  • 2025-700195異議申立 / 2025-12-17 / 訂正認容樹脂粒子及びその用途
    同じ当事者: 松本油脂製薬株式会社
  • 2024-700834異議申立 / 2025-08-27 / 訂正認容ポリマー粒子及びその用途
    同じ当事者: 松本油脂製薬株式会社
  • 2024-700431異議申立 / 2025-08-22 / 請求成立(取消)ポリマー粒子及びその用途
    同じ当事者: 松本油脂製薬株式会社
同じ論点・分野の審決(審決分類)97件(113・D06M、121・D06M、537・D06M)
  • 2025-701015異議申立 / 2026-03-27 / 訂正認容撥水吸湿性繊維
    共通の審決分類: 113・D06M、121・D06M、537・D06M
  • 2025-700165異議申立 / 2025-07-04 / 訂正認容エアバッグ用基布及びその製造方法
    共通の審決分類: 113・D06M、121・D06M、537・D06M
  • 2023-700380異議申立 / 2024-07-09 / 請求成立(取消)繊維用集束剤組成物及び繊維用集束剤溶液
    共通の審決分類: 113・D06M、121・D06M、537・D06M
  • 2022-701237異議申立 / 2024-03-06 / 訂正認容撥水剤組成物、撥水性繊維製品及び撥水性繊維製品の製造方法
    共通の審決分類: 113・D06M、121・D06M、537・D06M
  • 2022-701081異議申立 / 2023-08-04 / 訂正認容無機繊維製品用バインダー及びその製造方法、無機繊維製品の製造方法、繊維製品用バイ…
    共通の審決分類: 113・D06M、121・D06M、537・D06M

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存