特許異議申立
2022-701168
半導体装置および電力変換装置
- 審判番号
- 2022-701168
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-159171
- 登録番号
- 7075847
- 請求日
- 2022年11月25日
- 審決日
- 2024年04月05日
- 公報発行日
- 2024年07月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社 日立パワーデバイス
- 【権利者代理人】ポレール弁理士法人
- 【異議申立人】安井 健治
- 審判長/審判官
- 審判長 瀧内 健夫
- 審判官 恩田 春香
- 審判官 棚田 一也
- 分類
- P1651.121-YAA(H01L) / P1651.113-YAA(H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第126条第7項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第7項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7075847号発明「半導体装置および電力変換装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7075847号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-9〕について訂正することを認める。
特許第7075847号の請求項1ないし9に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7075847号の請求項1~9に係る特許についての出願は、平成30年8月28日に出願され、令和4年5月18日にその特許権の設定登録がされ、同年5月26日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和 4年11月25日 :特許異議申立人安井健治(以下「申立人」という。)による特許異議の申立て
令和 5年 3月 2日付け :取消理由通知書
令和 5年 4月28日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和 5年 7月 5日 :申立人による意見書の提出
令和 5年10月18日付け :取消理由通知書(決定の予告)
令和 5年12月21日 :特許権者による意見書及び訂正請求書( 以下、この訂正請求書による訂正請求を「本件訂正請求」という。また、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)の提出
令和 6年 2月14日 :申立人による意見書の提出
なお、令和5年4月28日にされた訂正請求は、本件訂正請求がされたため、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
特許権者は、特許請求の範囲の請求項1~9を、以下の事項により特定されるとおりに訂正すること、及び、明細書の記載を訂正することを請求する(下線は訂正箇所を示すため当審が付した。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、「0%以上20%以下である」と記載されているのを、
「0%以上20%以下であり、前記第1無電解Niメッキ層は、前記第1電極において、前記第1表面の反対側に配置され、銅焼結層により導電部材に接合される」に訂正する。
(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2、4~7、9も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に、「前記第1無電解Niメッキ層は、Ni(ニッケル)の結晶化率が70%以上95%以下である」と記載されているのを、
「前記第1無電解Niメッキ層は、メッキ成膜後の熱処理後においてNi(ニッケル)の結晶化率が70%以上95%以下である」に訂正する。
(請求項2の記載を引用する請求項9も同様に訂正する。)
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に、「請求項1に記載の半導体装置であって、
前記第1無電解Niメッキ層は、前記第1電極において、前記第1表面の反対側に配置され、銅焼結層を介して導電部材に接合されることを特徴とする半導体装置。」と記載されているのを、
「半導体素子と、
前記半導体素子の第1表面に形成された第1電極と、を備え、
前記第1電極は、第1無電解Niメッキ層を含む積層構造であり、
前記第1無電解Niメッキ層は、Ni(ニッケル)およびP(リン)を組成として含み、
前記第1無電解Niメッキ層のP(リン)濃度は2.5wt%以上6wt%以下であり、
前記第1無電解Niメッキ層のX線回折プロファイルにNi(111)およびNi(200)の回折ピークを有し、かつ、メッキ成膜後の400℃以下(350℃を除く)の熱処理後において前記第1無電解Niメッキ層中のNi3Pの結晶化率は前記熱処理の熱負荷によるクラック発生の無い0%以上20%以下であり、
前記第1無電解Niメッキ層は、前記第1電極において、前記第1表面の反対側に配置され、銅焼結層により導電部材に接合されることを特徴とする半導体装置。」に訂正する。
(請求項3の記載を引用する請求項9も同様に訂正する。)
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に、「前記第2無電解Niメッキ層のP(リン)濃度は2.5wt%以上6wt%以下であり、かつ、前記第2無電解Niメッキ層中のNi3Pの結晶化率が0%以上20%以下である」と記載されているのを、
「前記第2無電解Niメッキ層のP(リン)濃度は2.5wt%以上6wt%以下であり、
前記第2無電解Niメッキ層のX線回折プロファイルにNi(111)およびNi(200)の回折ピークを有し、かつ、メッキ成膜後の熱処理後において前記第2無電解Niメッキ層中のNi3Pの結晶化率が0%以上20%以下である」に訂正する。
(請求項4の記載を直接又は間接的に引用する請求項5~7、9も同様に訂正する。)
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に、「前記第2無電解Niメッキ層は、Ni(ニッケル)の結晶化率が70%以上95%以下である」と記載されているのを、
「前記第2無電解Niメッキ層は、メッキ成膜後の熱処理後においてNi(ニッケル)の結晶化率が70%以上95%以下である」に訂正する。
(請求項5の記載を引用する請求項9も同様に訂正する。)
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に、「銅焼結層を介して導電部材に接合される」と記載されているのを、
「銅焼結層により導電部材に接合される」に訂正する。
(請求項6の記載を引用する請求項9も同様に訂正する。)
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項8に、「請求項4に記載の半導体装置であって、
前記第2電極は、ボンディングワイヤが接合されるボンディングパッドであることを特徴とする半導体装置。」と記載されているのを、
「半導体素子と、
前記半導体素子の第1表面に形成された第1電極と、を備え、
前記第1電極は、第1無電解Niメッキ層を含む積層構造であり、
前記第1無電解Niメッキ層は、Ni(ニッケル)およびP(リン)を組成として含み、
前記第1無電解Niメッキ層のP(リン)濃度は2.5wt%以上6wt%以下であり、
前記第1無電解Niメッキ層のX線回折プロファイルにNi(111)およびNi(200)の回折ピークを有し、かつ、メッキ成膜後の熱処理後において前記第1無電解Niメッキ層中のNi3Pの結晶化率は0%以上20%以下であり、
前記半導体素子の前記第1表面とは反対側の第2表面に形成された第2電極をさらに備え、
前記第2電極は、第2無電解Niメッキ層を含む積層構造であり、
前記第2無電解Niメッキ層は、Ni(ニッケル)およびP(リン)を組成として含み、
前記第2無電解Niメッキ層のP(リン)濃度は2.5wt%以上6wt%以下であり、
前記第2無電解Niメッキ層のX線回折プロファイルにNi(111)およびNi(200)の回折ピークを有し、かつ、メッキ成膜後の熱処理後において前記第2無電解Niメッキ層中のNi3Pの結晶化率が0%以上20%以下であり、
前記第2無電解Niメッキ層は、前記第2電極において、前記第2表面の反対側に配置され、
前記第2電極は、前記第2無電解Niメッキ層にアルミのボンディングワイヤが接合されるボンディングパッドであることを特徴とする半導体装置。」に訂正する。
(請求項8の記載を引用する請求項9も同様に訂正する。)
(8)訂正事項8
願書に添付した明細書の段落【0012】に、
「【特許文献1】特許第5006081号公報
【特許文献2】特開2015-56532号公報
【特許文献3】特許第5669780号公報」と記載されているのを、
「【特許文献1】特許第5006081号公報
【特許文献2】特開2015-56532号公報
【特許文献3】特許第5669780号公報
【非特許文献】
【非特許文献1】Norihiko Hasegawa et.al.“Effect on film properties by phosphorus and sulfur content in electroless NiーP plating films”,p.78-81,[online],2018 International Conference on Electronis Pacaging and IMAPS All Asia Conference(ICEP-IAAC 2018 Proceedings),2018年6月7日,(米),IEEE,[令和5年2月6日検索],インターネット,
<URL: https://ieeexplore.ieee.org/document/8374674>,<URL: https://ieeexplore.ieee.org/stamp/stamp.jsp?tp=&arnumber=8374674>」に訂正する。
(9)訂正事項9
願書に添付した明細書の段落【0016】に、
「0%以上20%以下である」と記載されているのを、
「0%以上20%以下であり、前記第1無電解Niメッキ層は、前記第1電極において、前記第1表面の反対側に配置され、銅焼結層により導電部材に接合される」に訂正する。
なお、本件訂正は、一群の請求項1~9について請求されている。
2 訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無、独立特許要件
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明の「第1無電解Niメッキ層」について、「前記第1無電解Niメッキ層は、前記第1電極において、前記第1表面の反対側に配置され、銅焼結層により導電部材に接合される」との構成を追加して限定することで、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アから明らかなように、訂正前の請求項1の発明特定事項を概念的により下位の内容とする訂正は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1は、願書に添付した明細書の段落【0025】、【0027】及び願書に添付した図面の図1等に基づくものである。
よって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件においては、訂正前の全ての請求項について特許異議の申立てがされているので、訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項2に係る発明の「第1無電解Niメッキ層」について、「Ni(ニッケル)の結晶化率が70%以上95%以下である」を「メッキ成膜後の熱処理後においてNi(ニッケル)の結晶化率が70%以上95%以下である」と限定することで、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アから明らかなように、訂正前の請求項2の発明特定事項を概念的により下位の内容とする訂正は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2は、願書に添付した明細書の段落【0058】~【0063】及び願書に添付した図面の図10~15等に基づくものである。
よって、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件においては、訂正前の全ての請求項について特許異議の申立てがされているので、訂正事項2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(3)訂正事項3
ア 訂正の目的について
(ア)訂正事項3のうち、請求項3の「請求項1に記載の半導体装置であって」との記載を、
「半導体素子と、
前記半導体素子の第1表面に形成された第1電極と、を備え、
前記第1電極は、第1無電解Niメッキ層を含む積層構造であり、
前記第1無電解Niメッキ層は、Ni(ニッケル)およびP(リン)を組成として含み、
前記第1無電解Niメッキ層のP(リン)濃度は2.5wt%以上6wt%以下であり、
前記第1無電解Niメッキ層のX線回折プロファイルにNi(111)およびNi(200)の回折ピークを有し、かつ、メッキ成膜後の400℃以下(350℃を除く)の熱処理後において前記第1無電解Niメッキ層中のNi3Pの結晶化率は前記熱処理の熱負荷によるクラック発生の無い0%以上20%以下であり」とする訂正(以下「訂正事項3-1」という。)は、訂正前の請求項1に係る発明の「メッキ成膜後の熱処理後」における「前記第1Niメッキ層中のNi3Pの結晶化率」について、「メッキ成膜後の熱処理後において前記第1無電解Niメッキ層中のNi3Pの結晶化率は0%以上20%以下であり」を「メッキ成膜後の400℃以下(350℃を除く)の熱処理後において前記第1無電解Niメッキ層中のNi3Pの結晶化率は前記熱処理の熱負荷によるクラック発生の無い0%以上20%以下であり」と限定することで、特許請求の範囲を減縮しようとするとともに、訂正前の請求項3は請求項1の記載を引用するものであるところ、請求項3の記載を請求項1の記載を引用しないものとするものである。
したがって、訂正事項3-1は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとするとともに、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
(イ)訂正事項3のうち、請求項3の「銅焼結層を介して導電部材に接合される」との記載を「銅焼結層により導電部材に接合される」とする訂正は、「介して」の意味が前記第1無電解Niメッキ層と導電部材との間に銅焼結層以外の何らかの別部材を挟む場合を含む余地があるので、この余地を排除しようとするものであるから、特許請求の範囲の減縮しようとするものである。
(ウ)よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、及び同法同条同項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アから明らかなように、訂正前の請求項3の発明特定事項を概念的により下位の内容とする訂正は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3は、願書に添付した明細書の段落【0024】~【0027】、【0058】~【0063】及び願書に添付した図面の図10~17等に基づくものである。
よって、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件においては、訂正前の全ての請求項について特許異議の申立てがされているので、訂正事項3に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(4)訂正事項4
ア 訂正の目的について
(ア)訂正事項4のうち、請求項4の「前記第2無電解Niメッキ層のP(リン)濃度は2.5wt%以上6wt%以下であり」との記載を、
「前記第2無電解Niメッキ層のP(リン)濃度は2.5wt%以上6wt%以下であり、
前記第2無電解Niメッキ層のX線回折プロファイルにNi(111)およびNi(200)の回折ピークを有し、」とする訂正は、訂正前の請求項4に係る発明の「第2無電解Niメッキ層」について、「前記第2無電解Niメッキ層のX線回折プロファイルにNi(111)およびNi(200)の回折ピークを有し」と限定することで、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
(イ)訂正事項4のうち、請求項4の「前記第2無電解Niメッキ層中のNi3Pの結晶化率が0%以上20%以下である」との記載を「メッキ成膜後の熱処理後において前記第2無電解Niメッキ層中のNi3Pの結晶化率が0%以上20%以下である」とする訂正は、訂正前の請求項4に係る発明の「第2無電解Niメッキ層」について、「メッキ成膜後の熱処理後において前記第2無電解Niメッキ層中のNi3Pの結晶化率が0%以上20%以下である」と限定することで、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
(ウ)よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アから明らかなように、訂正前の請求項4の発明特定事項を概念的により下位の内容とする訂正は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項4は、願書に添付した明細書の段落【0058】~【0063】及び願書に添付した図面の図10~15等に基づくものである。
よって、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件においては、訂正前の全ての請求項について特許異議の申立てがされているので、訂正事項4に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(5)訂正事項5
ア 訂正の目的について
訂正事項5は、訂正前の請求項5に係る発明の「第2無電解Niメッキ層」について、「Ni(ニッケル)の結晶化率が70%以上95%以下である」を「メッキ成膜後の熱処理後においてNi(ニッケル)の結晶化率が70%以上95%以下である」と限定することで、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
よって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アから明らかなように、訂正前の請求項5の発明特定事項を概念的により下位の内容とする訂正は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
よって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項5は、願書に添付した明細書の段落【0058】~【0063】及び願書に添付した図面の図10~15等に基づくものである。
よって、訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件においては、訂正前の全ての請求項について特許異議の申立てがされているので、訂正事項5に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(6)訂正事項6
ア 訂正の目的について
訂正事項6は、請求項6の「銅焼結層を介して導電部材に接合される」との記載を「銅焼結層により導電部材に接合される」と訂正することにより、「介して」の意味が第1無電解Niメッキ層と導電部材との間に銅焼結層以外の何らかの別部材を挟む場合を含む余地があるので、この余地を排除しようとするものであるから、特許請求の範囲の減縮しようとするものである。
よって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アから明らかなように、訂正前の請求項6の発明特定事項を概念的により下位の内容とする訂正は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
よって、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項6は、願書に添付した明細書の段落【0071】及び願書に添付した図面の図17等に基づくものである。
よって、訂正事項6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件においては、訂正前の全ての請求項について特許異議の申立てがされているので、訂正事項6に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(7)訂正事項7
ア 訂正の目的について
(ア)訂正事項7のうち、請求項8の「請求項4に記載の半導体装置であって」との記載を、
「半導体素子と、
前記半導体素子の第1表面に形成された第1電極と、を備え、
前記第1電極は、第1無電解Niメッキ層を含む積層構造であり、
前記第1無電解Niメッキ層は、Ni(ニッケル)およびP(リン)を組成として含み、
前記第1無電解Niメッキ層のP(リン)濃度は2.5wt%以上6wt%以下であり、
前記第1無電解Niメッキ層のX線回折プロファイルにNi(111)およびNi(200)の回折ピークを有し、かつ、メッキ成膜後の熱処理後において前記第1無電解Niメッキ層中のNi3Pの結晶化率は0%以上20%以下であり、
前記半導体素子の前記第1表面とは反対側の第2表面に形成された第2電極をさらに備え、
前記第2電極は、第2無電解Niメッキ層を含む積層構造であり、
前記第2無電解Niメッキ層は、Ni(ニッケル)およびP(リン)を組成として含み、
前記第2無電解Niメッキ層のP(リン)濃度は2.5wt%以上6wt%以下であり、
前記第2無電解Niメッキ層のX線回折プロファイルにNi(111)およびNi(200)の回折ピークを有し、かつ、メッキ成膜後の熱処理後において前記第2無電解Niメッキ層中のNi3Pの結晶化率が0%以上20%以下であり、
前記第2無電解Niメッキ層は、前記第2電極において、前記第2表面の反対側に配置され」とする訂正(以下「訂正事項7-1」という。)は、訂正前の請求項4に係る発明の「第2無電解Niメッキ層」について、「前記第2無電解Niメッキ層のX線回折プロファイルにNi(111)およびNi(200)の回折ピークを有し」と限定し、さらに、請求項4の「前記第2無電解Niメッキ層中のNi3Pの結晶化率が0%以上20%以下である」との記載を「メッキ成膜後の熱処理後において前記第2無電解Niメッキ層中のNi3Pの結晶化率が0%以上20%以下である」とすることで、訂正前の請求項4に係る発明の「第2無電解Niメッキ層」について、「メッキ成膜後の熱処理後において前記第2無電解Niメッキ層中のNi3Pの結晶化率が0%以上20%以下である」と限定し、さらに、訂正前の請求項4に係る発明の「第2無電解Niメッキ層」について、「前記第2無電解Niメッキ層は、前記第2電極において、前記第2表面の反対側に配置され」との構成を追加して限定することで、特許請求の範囲を減縮しようとするとともに、訂正前の請求項8は請求項4の記載を引用し、訂正前の請求項4は請求項1の記載を引用するものであるところ、請求項8の記載を請求項1及び4の記載を引用しないものとするものである。
したがって、訂正事項7-1は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとするとともに、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
(イ)訂正事項7のうち、請求項8の「前記第2電極は、ボンディングワイヤが接合されるボンディングパッドである」との記載を「前記第2電極は、前記第2無電解Niメッキ層にアルミのボンディングワイヤが接合されるボンディングパッドである」とする訂正は、訂正前の請求項8に係る発明の「第2電極」について、「ボンディングワイヤが接合されるボンディングパッドである」を「前記第2無電解Niメッキ層にアルミのボンディングワイヤが接合されるボンディングパッドである」と限定することで、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
(ウ)よって、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、及び同法同条同項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アから明らかなように、訂正前の請求項8の発明特定事項を概念的により下位の内容とする訂正は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
よって、訂正事項7は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項7は、願書に添付した明細書の段落【0025】~【0027】、【0058】~【0063】、【0068】、【0070】、【0071】及び願書に添付した図面の図10~16等に基づくものである。
よって、訂正事項7は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件においては、訂正前の全ての請求項について特許異議の申立てがされているので、訂正事項7に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(8)訂正事項8
ア 訂正の目的について
訂正事項8は、願書に添付した明細書の先行技術文献の欄に、特許異議申立書で提出された甲第1号証の文献名を追加するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アのとおり、訂正事項8は、願書に添付した明細書の先行技術文献の欄に、特許異議申立書で提出された甲第1号証の文献名を追加するものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記のとおり、訂正事項8は、願書に添付した明細書の先行技術文献の欄に、特許異議申立書で提出された甲第1号証の文献名を追加するものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項8は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(9)訂正事項9
ア 訂正の目的について
訂正事項9は、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明における課題を解決するための手段の欄の記載を訂正後の請求項1の記載に合わせて訂正するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アから明らかなように、訂正事項9は、訂正事項1に対応して明細書の記載内容を明瞭にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
よって、訂正事項9は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記(1)ウで説明したとおり、訂正後の請求項1の記載は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の記載に基づくものであるから、訂正事項9も願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の記載に基づくものである。
よって、訂正事項9は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
3 小括
上記のとおり、訂正事項1~訂正事項9に係る本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、明細書、特許請求の範囲を、令和5年12月21日に提出された訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲(以下、単に「訂正特許請求の範囲」という。)のとおり、本件訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。
第3 本件訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1~9に係る発明(以下、順にそれぞれ「本件発明1」~「本件発明9」という。また、訂正後の請求項1~9に係る発明をまとめて「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~9に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
半導体素子と、
前記半導体素子の第1表面に形成された第1電極と、を備え、
前記第1電極は、第1無電解Niメッキ層を含む積層構造であり、
前記第1無電解Niメッキ層は、Ni(ニッケル)およびP(リン)を組成として含み、
前記第1無電解Niメッキ層のP(リン)濃度は2.5wt%以上6wt%以下であり、
前記第1無電解Niメッキ層のX線回折プロファイルにNi(111)およびNi(200)の回折ピークを有し、かつ、メッキ成膜後の熱処理後において前記第1無電解Niメッキ層中のNi3Pの結晶化率は0%以上20%以下であり、
前記第1無電解Niメッキ層は、前記第1電極において、前記第1表面の反対側に配置され、銅焼結層により導電部材に接合されることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置であって、
前記第1無電解Niメッキ層は、メッキ成膜後の熱処理後においてNi(ニッケル)の結晶化率が70%以上95%以下であることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
半導体素子と、
前記半導体素子の第1表面に形成された第1電極と、を備え、
前記第1電極は、第1無電解Niメッキ層を含む積層構造であり、
前記第1無電解Niメッキ層は、Ni(ニッケル)およびP(リン)を組成として含み、
前記第1無電解Niメッキ層のP(リン)濃度は2.5wt%以上6wt%以下であり、
前記第1無電解Niメッキ層のX線回折プロファイルにNi(111)およびNi(200)の回折ピークを有し、かつ、メッキ成膜後の400℃以下(350℃を除く)の熱処理後において前記第1無電解Niメッキ層中のNi3Pの結晶化率は前記熱処理の熱負荷によるクラック発生の無い0%以上20%以下であり、
前記第1無電解Niメッキ層は、前記第1電極において、前記第1表面の反対側に配置され、銅焼結層により導電部材に接合されることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1に記載の半導体装置であって、
前記半導体素子の前記第1表面とは反対側の第2表面に形成された第2電極をさらに備え、
前記第2電極は、第2無電解Niメッキ層を含む積層構造であり、
前記第2無電解Niメッキ層は、Ni(ニッケル)およびP(リン)を組成として含み、
前記第2無電解Niメッキ層のP(リン)濃度は2.5wt%以上6wt%以下であり、
前記第2無電解Niメッキ層のX線回折プロファイルにNi(111)およびNi(200)の回折ピークを有し、かつ、メッキ成膜後の熱処理後において前記第2無電解Niメッキ層中のNi3Pの結晶化率が0%以上20%以下であることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項4に記載の半導体装置であって、
前記第2無電解Niメッキ層は、メッキ成膜後の熱処理後においてNi(ニッケル)の結晶化率が70%以上95%以下であることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項4に記載の半導体装置であって、
前記第2無電解Niメッキ層は、前記第2電極において、前記第2表面の反対側に配置され、銅焼結層により導電部材に接合されることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項4に記載の半導体装置であって、
前記第1電極の積層構造と前記第2電極の積層構造は、前記半導体素子を挟んで対称に配置された積層構造であり、
前記第1電極の積層構造を構成する膜の膜厚は、対称となる前記第2電極の積層構造を構成する膜の膜厚と略同一であることを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
半導体素子と、
前記半導体素子の第1表面に形成された第1電極と、を備え、
前記第1電極は、第1無電解Niメッキ層を含む積層構造であり、
前記第1無電解Niメッキ層は、Ni(ニッケル)およびP(リン)を組成として含み、
前記第1無電解Niメッキ層のP(リン)濃度は2.5wt%以上6wt%以下であり、
前記第1無電解Niメッキ層のX線回折プロファイルにNi(111)およびNi(200)の回折ピークを有し、かつ、メッキ成膜後の熱処理後において前記第1無電解Niメッキ層中のNi3Pの結晶化率は0%以上20%以下であり、
前記半導体素子の前記第1表面とは反対側の第2表面に形成された第2電極をさらに備え、
前記第2電極は、第2無電解Niメッキ層を含む積層構造であり、
前記第2無電解Niメッキ層は、Ni(ニッケル)およびP(リン)を組成として含み、
前記第2無電解Niメッキ層のP(リン)濃度は2.5wt%以上6wt%以下であり、
前記第2無電解Niメッキ層のX線回折プロファイルにNi(111)およびNi(200)の回折ピークを有し、かつ、メッキ成膜後の熱処理後において前記第2無電解Niメッキ層中のNi3Pの結晶化率が0%以上20%以下であり、
前記第2無電解Niメッキ層は、前記第2電極において、前記第2表面の反対側に配置され、
前記第2電極は、前記第2無電解Niメッキ層にアルミのボンディングワイヤが接合されるボンディングパッドであることを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
一対の直流端子と、
交流出力の相数と同数の交流端子と、
前記一対の直流端子間に接続され、スイッチング素子および逆極性のダイオードの並列回路が2個直列に接続された、交流出力の相数と同数のスイッチングレッグと、
前記スイッチング素子を制御するゲート回路と、を有する電力変換装置であって、
前記スイッチング素子は、請求項1から8のいずれか1項に記載の半導体装置であることを特徴とする電力変換装置。」
第4 令和5年10月18日付け取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由について
1 取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由の概要
当審が令和5年10月18日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
理由1(進歩性) 令和5年4月28日付け訂正請求により訂正された請求項1、2に係る発明(以下、それぞれ「訂正発明1」、「訂正発明2」という。また、令和5年4月28日付け訂正請求により訂正された請求項3~9に係る発明を順に「訂正発明3」~「訂正発明9」という。)は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、その発明の技術の分野に属する通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、また、訂正発明1~7に係る発明は、甲第1、2号証に記載された発明に基づいて、訂正発明8及び9は、甲第1~3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきものである。
<引用文献等一覧>
1.甲第1号証:Norihiko Hasegawa et.al.“Effect on film properties by phosphorus and sulfur content in electroless Ni-P plating films”,p.78-81,[online],
2018 International Conference on Electronis Pacaging and IMAPS All Asia Conference(ICEP-IAAC 2018 Proceedings),2018年6月7日,(米),IEEE,[令和5年2月6日検索],インターネット,
<URL: https://ieeexplore.ieee.org/document/8374674>,<URL:https://ieeexplore.ieee.org/stamp/stamp.jsp?tp=&arnumber=8374674>(前者のウェブサイトの「PDF」ボタンのリンク先が、後者のウェブサイトで、申立人提出の甲第1号証にページ番号が付加されたもの)
2.甲第2号証:特開2016-157882号公報(申立人提出の甲第2号証)
3.甲第3号証:特開2010-205991号公報(申立人提出の甲第3号証)
第5 当審の判断
1 甲号証の記載と甲号証に記載された発明又は技術的事項
(1)甲第1号証の記載、甲1発明
ア 甲第1号証には、以下の事項が記載されている。(ページは上記<引用文献一覧>「1.」の後者のウェブサイトによる。翻訳文は合議体による。)
(ア)78ページ、Abstract
「Abstract-In this paper, we have investigated the effect of phosphorus and sulfur content in the electroless Ni-P plating deposits on the film properties. Our results demonstrate that the Ni-P plating films with low phosphorus and no sulfur indicates high solder wettability and high tolerance to embrittlement after heat treatment.」
(「要約-無電解 Ni-Pめっき皮膜について皮膜中のリン含有率および硫黄含有率が皮膜特性に与える影響について検討した。その結果皮膜中のリン含有率が低く、硫黄を含有しない皮膜では、優れたはんだ濡れ性に加えて熱処理時においても脆化しにくい特性が得られた。」)
(イ)78ページ、I. INTRODUCTION AND MOTIVATION
「I. INTRODUCTION AND MOTIVATION
If we change phosphorus content of electroless Ni-P plating films, various film properties can be obtained from the films. For example, excellent film properties such as corrosion-, chemical-, mechanical-, wear-resistance as well as outstanding performances in magnetism, hardness and electrical resistance can be provided from the films by altering phosphorus content in the films. Therefore, electroless Ni-P plating is widespread to be one of the important and indispensable technologies in surface treatments and widely used for cars, industrial machine, electronic devices and semiconductors [1].
Recently, electroless Ni-P films are used to the components for power devices such as the electrodes of semiconductors, lead frames, heat sinks. Therefore, the Ni-P films are required high solder wettability and the tolerance to the ruptures and the embrittlement under a high temperature.
This study is carried on for electroless Ni-P plating to secure high solder wettability and high tolerance to ruptures and embrittlement under a high temperature. The results demonstrate the effect on film properties by phosphorus and sulfur content.」
(「I.序章と動機
無電解 Ni-Pめっき皮膜は、リン含有率を変えると、様々な皮膜特性が皮膜から得られる。例えば、耐腐食性、耐薬品性、機械的抵抗、耐摩耗性などの優れた膜特性は、磁気、硬度、および電気抵抗における優れた性能と同様に、膜のリン含有量を変更することによって膜から得られる。したがって、無電解 Ni-P めっきは、表面処理における重要かつ不可欠な技術の1つとして広く普及しており、自動車、産業機械、電子機器、半導体に広く用いられている[1]。
近年、無電解Ni-Pめっき皮膜は、半導体の電極、リードフレーム、アルミヒートシンクなどパワーデバイス関連部品に使用されている。したがって、Ni-P皮膜は、高いはんだ濡れ性と、高温下での破断や脆化に対する耐性が求められている。
本研究は、無電解Ni-Pめっきについては、高いはんだ濡れ性と、高温下での破断や脆化に対する高い耐性を確保することを目的に進められている。この結果は、リンと硫黄の含有量が膜特性に及ぼす影響を示している。」)
(ウ)78ページ、 A. Composition of the Ni-P plating solutions and theNi-P plating films
「II. EXPERIMENTAL AND EVALUATION METHOD
A. Composition of the Ni-P plating solutions and the Ni-P plating films
The plating bathes, basically composed of sodium hypophosphite as a reducing agent: carboxylic acids, oxycarboxylic acids and amino acids as complexing agents, have been used for the Ni-P plating. We have altered the concentration of each component in the solution to obtain Ni-P films which have differ of phosphorus and sulfur content in the films. All of the plating has been conducted with the solutions of 90 ℃.
Phosphorus content in each film has been analyzed using the energy dispersive X-ray micro analyzer (EMAX ENERGY EX-350 made by HORIBA, Ltd.).Sulfur content has been analyzed using the carbon and sulfur analyzer in inorganic materials by infrared absorption method after combustion (CS- 844 made by LECO JAPAN CORPORATION).The plating has been conducted onto stainless steel, then the films have been peeled to be shredded finely. In addition, the film containing 0.0185±0.0008 wt.% of sulfur has been used as the standard sample and granular-tungsten and -tin has been utilized to combustion improver.」
(「II.実験と評価手法
A.Ni-Pめっき溶液の組成とNi-Pめっき皮膜
Ni-Pめっきには、次亜リン酸ナトリウムを還元剤とし、カルボン酸、オキシカルボン酸、アミノ酸を錯化剤とするめっき浴が使用された。溶液中の各成分の濃度を変更して、膜中のリンと硫黄の含有量が異なるNi-P膜を得た。めっきはすべて90℃の溶液で行われた。
各フィルムのリン含有量は、エネルギー分散型X線マイクロアナライザー(堀場製作所製EMAX ENERGY EX-350)を使用して分析された。硫黄含有量は、燃焼後の赤外線吸収法による無機材料中の炭素・硫黄分析装置(レコジャパン株式会社製 CS-844)を用いて分析された。ステンレス鋼にメッキが施され、次に、フィルムが剥がされて細かく裁断された。また、0.0185±0.0008 wt.%の硫黄を含むフィルムが標準試料として使用され、粒状のタングステンとスズが助燃剤として利用された。」)
(エ)78ページ、D. Evaluation Procedure of the film embrittlement
「D. Evaluation Procedure of the film embrittlement
We have fabricated Ni-P plating films of approximately 100 μm thickness onto the rolled copper foils of 50 mm length, 25 mm width, 0.3 mm thickness. We have evaluated the films as deposited and the films after the heat treatment at 350 ℃ for 25 h. We have evaluated the film embrittlement due to observe the indentations and the crack occurrences with the micro Vickers hardness tester (HM-220C made by Mitutoyo Corporation), using 14.7 N as the maximum load.」
(「D.皮膜脆性の評価手順
皮膜の脆性評価には、50 mm長、25 mm幅、0.3 mm厚の圧延銅板に100 μm程度めっき処理したものを用いた。めっき直後および 350℃で 25時間加熱処理を行った皮膜について評価を行った。熱処理前後の皮膜についてマイクロビッカース硬さ試験機(ミツトヨ製HM-220C)を使用し、最大14.7Nの荷重を掛けた時の圧痕周辺に発生するクラックの状態により皮膜の脆性を評価した。」)
(オ)79ページ、E. Evaluation method of the structure analysis of the
films
「E. Evaluation method of the structure analysis of the films
We have fabricated Ni-P plating films of approximately 10 μm thickness onto the rolled copper foils of 50 mm length, 25 mm width, 0.3 mm thickness in order to observe the film structures. We have analyzed the film structures with the X-ray diffraction instrument (UltimaIII, made by Rigaku Corporation) about the films as deposited and the films after the heat treatment at 350℃ for 25 h.」
(「E.皮膜の構造解析の評価手法
皮膜の構造解析には、50 mm長、25 mm幅、0.3 mm 厚の圧延銅板に10 μm程度めっき処理したもの用いた。めっき直後および 350 ℃で25 時間の加熱処理を行った皮膜について、X線回折装置(リガク製UltimaIII) を使用して皮膜の構造を解析した。」)
(カ)79ページ、A. Composition of the Ni-P plating films
「III. RESULTS AND DISCUSSION
A. Composition of the Ni-P plating films
We have been altered the concentration of each component in the solution. Phosphorus and sulfur content in the prepared films are described in Table 1. In the Sample A, the phosphorus content was 12.6 wt.%, and the sulfur was below the detection limit. In the Sample B, the phosphorus content was 3.8 wt.%, the sulfur was below the detection limit, the Sample C had a phosphorus content of 1.8 wt.%, and a sulfur content of 0.22 wt.%.
[図:0001412270000001.jpg]
」
(「III.結果と検討
A.Ni-Pめっき皮膜の組成
各種浴組成、添加剤濃度を変化させ、作成した皮膜の皮膜組成を表1に示す。試料Aはリン含有率が12.6wt%であり、硫黄は検出限界以下であった。試料Bはリン含有率が3.8wt%で硫黄は検出限界以下、試料Cはリン含有率が1.8wt%で、0.22wt%の硫黄含有率を示した。
[図:0001412270000002.jpg]
」)
(キ)79~80ページ、C. Evaluation of the films embrittlement
「C. Evaluation of the films embrittlement
Fig. 2 demonstrates the indentation figures with the micro Vickers hardness tester after the heat treatment at 350 ℃ for 25 h.
Compared Sample A (Phosphorus content: high) with Sample B (Phosphorus content: low), Sample A had have several cracks; however, Sample B had have hardly cracks after the heat treatment. We have conducted an additional experiments in Fig. 3 to clarify the differences of the filmstructures.」
「 Fig.3 indicates X-ray diffraction pattern about sample A and B with different phosphorus contents for as deposited and after heat treatment at 350 ℃ for 25 h. Sample A (phosphorus content : high) has broad diffraction lines around 2θ=45° and it indicates amorphous structure. The diffraction line for sample B having phosphorus content as low as 3.8 wt.% is relatively sharp and Ni(111) (200) (220) diffraction line can be confirmed. With respect to Sample A (phosphorus content: high), many peaks were detected with crystallization when heat treatment at 350℃ for 25 h was performed. As a result of identifying the peak obtained after the h eat treatment, it was found that the diffraction line was Ni and Ni3P.
It is known that the electroless Ni-P plating film is in an amorphous state in which phosphorus is supersaturatedly solidsolved and the equilibrium phase is Ni+Ni3P [3].
In the Sample B (phosphorus content : low), significant change is not observed in the X-ray diffraction instrument (XRD) pattern before and after the heat treatment. The Ni3P phase is considered that the higher the phosphorus content is, the higher the generation amount is. Because in the Sample B (phosphorus content : low), the Ni3P phase formed is small, or the Ni3P phase did not grow until it affect diffraction, it can be considered that the diffraction line of Ni3P could not be confirmed even after the heat treatment.
In electroless Ni-P plating films, it is known that the film hardness increases by heat treatment, it is considered that the rise of the film hardness by the heat treatment is due to the formation of the intermetallic compound phase Ni3P in the film [3].
It is considered that the formation of Ni3P which is an intermetallic compound increases film hardness and causes embrittlement of the film. From XRD results it is clear that more Ni3P is produced in Sample A with higher phosphorus content compared with Sample B. It was considered that the reason why the Sample A became embrittled after the heat treatment was that Ni3P of a large amount was formed in the film.
[図:0001412270000003.jpg]
On the other hand, in the Sample C having a sulfur content as high as 0.22 wt.%, cracks have occurred after the heat treatment despite the low phosphorus content of 1.8 wt.%. Next, in order to investigate the influence of the sulfur content in the film on embrittlement, the sulfur concentration in the fracture surface part of the film was evaluated by an Auger electron spectroscopy (AES).」
(「C.皮膜の脆化の評価
図2に350℃、25時間での熱処理前後における皮膜のビッカース硬度測定による圧痕を示す。
試料A(リン含有量:高)と試料B(リン含有量:低)を比較すると、試料Aにいくつかの亀裂があった。しかしながら、試料Bは熱処理後にクラックがほとんど発生しなかった。膜構造の違いを明らかにするため、図3の追加の実験を行った。」
「図3は、堆積時と350℃で25時間の熱処理後のリン含有量が異なる試料AとBのX 線回折パターンを示している。試料A(リン含有量:高)は、2θ=45゜付近に広い回折線があり、アモルファス構造を示していることが分かる。リン含有量が3.8wt%と低い試料Bの回折線は比較的鋭く、Ni(l11) (200) (220)回折線が確認できる。試料A(リン含有量:高)については、350℃で25時間の熱処理を行ったところ、結晶化したピークが多く検出された。熱処理後に得られたピークを特定した結果、回折線はNiとNi3Pであることがわかった。
無電解Ni-Pめっき膜は、リンが過飽和に固溶し、平衡相がNi+Ni3Pであるアモルファス状態であることが知られている[3]。
試料B(リン含有量:低)では、熱処理前後のX線回折装置 (XRD) パターンに大きな変化は見られない。Ni3P相は、リン含有量が多いほど発生量が多いと考えられる。試料B(リン含有量:低)では、形成されるNi3P相が小さいか、回折に影響を与えるまでNi3P相が成長しなかったため、熱処理後もNi3Pの回折線が確認できなかったと考えられる。
無電解Ni-Pめっき膜では、熱処理により膜硬度が上昇することが知られており、熱処理による膜硬度の上昇は、膜中の金属間化合物の相Ni3Pの形成によるものと考えられる[3]。
金属間化合物であるNi3Pの生成は、ニッケル皮膜の硬度を高め、皮膜の脆化を引き起こすと考えられる。XRD の結果から、試料Bに比べてリン含有量の多い試料Aではより多くのNi3Pが生成されることが明らかである。試料Aが熱処理後に脆化したのは、膜中に多量のNi3Pが生成したためと考えられる。
[図:0001412270000004.jpg]
一方、硫黄含有量が0.22wt%と高い試料Cでは、リン含有量がl.8wt%と低いにもかかわらず、熱処理後にクラックが発生している。次に、膜中の硫黄含有量が脆化に及ぼす影響を調べるために、膜の破断面部分の硫黄濃度をオージェ電子分光法(AES)で評価した。」)
イ 上記アから、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「無電解ニッケルめっき皮膜であって、
半導体の電極などのパワーデバイス用部品に使用することができ、
試料Bの皮膜は、無電解Ni-Pめっき皮膜で、リン含有率が3.8wt%であり、
X線回折パターンにおいて、試料Bの皮膜について、2θ=45°付近の回折線は相対的に鋭く、Ni(111)(200)(220)回折線を有し、
試料Bの当該皮膜では、350℃で25時間の熱処理後にNi3Pの回折線は確認できなかった、無電解ニッケルめっき皮膜。」
(2)甲第2号証の記載、甲2発明
ア 甲第2号証には、以下の事項が記載されている。(下線は当審において付した。)
a 「【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、半導体装置の製造方法および電力変換装置に関する。」
b 「【0004】
パワー半導体チップのNi電極は、Al金属の表面上に、例えば、無電解メッキ法によりNi層を成長させるNi電極形成方法がある。
特許文献2には、半田を介して導体部材が接合された構成の半導体装置が記載されている。特許文献2に記載の半導体装置は、半導体基板の表面上にAl電極が形成され、Al電極は、第1のAl金属層と、第2のAl金属層とに分かれている。そして、第1のAl金属層と第2のAl金属層との間に異種材質層が配置され、Al表面の結晶方位が主に(111)面のとき、その上に形成するNiメッキ層は最も均質あるいは高密度になるとしている。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者らが検討したところ、特許文献2のAl表面の結晶方位が主に(111)面となる安定した成膜は困難であることが判明した。Al表面の結晶方位が主に(111)面となる安定した成膜が得られないので、Niメッキ層の厚さや密度が不均質になり、ピンホール状のNi膜欠損が発生する課題があった。
また、半導体チップのNi電極にピンホール状のNi膜欠損があると、銅焼結層からなる接合層を用いて、電気的に接続端子に接続した場合、接合層からパワー半導体チップに銅が拡散し、素子リーク電流の増大、素子耐圧の劣化、素子の特性が変動してしまう課題があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、成膜された電極膜の膜欠損を低減できる半導体装置、半導体装置の製造方法および電力変換装置を提供することを目的とする。」
c 「【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の断面図である。
本実施形態の半導体装置は、パワー半導体チップのフリーホイールダイオードに適用した場合の断面構造を示す。なお、n型Si基板を用いたダイオードをもとに説明するが、これに限定されるものではない。p型Si基板を用いた場合においても同様に、取り扱うことができる。また、縦方向に電流を流すIGBTの電極構造においても、同様に取り扱うことができる。
【0012】
図1に示すように、半導体装置100は、n型Siからなる半導体基板108を備える。半導体基板108は、表面から順にp型半導体層108a、n-ドリフト層108b、高濃度のn型不純物領域からなるn+型半導体層108cを備え、半導体層からなる半導体素子150を形成している。半導体基板108は、第1の半導体チップの電極構造体151が形成される第1表面108dと、アノード電極109が形成される第2表面108eと、を有する。
【0013】
半導体装置100は、半導体素子150が形成された半導体基板108のn+型半導体層108cの第1表面108dに、この半導体素子150と電気的に接続され、AlもしくはAl合金からなる第1のAl金属層105、Cu拡散防止層107、AlもしくはAl合金からなる第2のAl金属層106、およびNi層104(金属層)がこの順に形成されている第1の半導体チップの電極構造体151と、Ni層104の表面104aに配置され、銅焼結層103を介して第1の半導体チップの電極構造体151と接合された導電部材102と、を備える。
特に、第2のAl金属層106の表面106aのAl結晶粒の結晶面方位が主に(110)面となっている。
なお、第1の半導体チップは、半導体基板108と、第1の半導体チップの電極構造体151と、を含んで構成されている。
【0014】
第1のAl金属層105、Cu拡散防止層107、第2のAl金属層106、およびNi層104は、この順に形成されて、半導体基板108の裏面側のカソード電極112を構成する。カソード電極112は、銅焼結層103を用いてセラミックス絶縁基板101上の導電部材102に接合されている。Ni層104は、例えば無電解Niメッキ層である。Ni層104は、接続電極を形成する金属層であり、NiのほかCuまたはCu合金でもよい。
半導体基板108の第2表面108e側のアノード電極109は、AlもしくはAl合金からなる電極構造を有し、一部は、半導体基板108のp型半導体層108aと接しており、他の一部は、絶縁酸化膜110と接している。また、絶縁酸化膜110上には、パッシベーション膜111が形成されている。パッシベーション膜111は、例えばポリイミドで構成されている。
・・・
【0025】
以上説明したように、本実施形態に係る半導体装置100は、半導体素子150が形成された半導体基板108のn+型半導体層108cの表面に、この半導体素子150と電気的に接続され、AlもしくはAl合金からなる第1のAl金属層105、Cu拡散防止層107、AlもしくはAl合金からなる第2のAl金属層106、およびNi層104)がこの順に形成されている第1の半導体チップの電極構造体151と、Ni層104の表面に配置され、銅焼結層103を介して第1の半導体チップの電極構造体151と接合された導電部材102と、を備え、第2のAl金属層106の表面106aでのAl結晶粒の結晶面方位が主に(110)面となっている。
【0026】
上述したように、第2のAl金属層106が主に(110)面において、AlSiの平均結晶粒の大きさが、0.5μm以上となる条件でスパッタリングを行う。これにより、無電解メッキ時のジンケート処理によるAlSi電極の局所的な削れが抑制され、均一なNi膜の成長が促進され、Ni電極膜のピンホール欠損が低減できる。したがって、Al電極の表面上に、無電界メッキ法により成膜されたNi電極膜の膜欠損が低減できる。
また、従来技術ではAl表面の結晶方位が主に(111)面となる安定した成膜は困難である。これに対して、本実施形態では、第2のAl金属層106の表面106aでのAl結晶粒の結晶面方位が主に(110)面となっている。結晶面方位が主に(110)面を用いることができるので、安定した成膜を容易に作製することができる。」
d 「【0028】
(第2の実施形態)
図5は、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置200の断面図である。図1と同一構成部分には同一符号を付して重複箇所の説明を省略する。本実施形態の半導体装置200は、パワー半導体チップのフリーホイールダイオードに適用した場合の例である。本実施形態の半導体装置200は、縦方向に電流を流すIGBTの電極構造においても、同様に取り扱うことができる。
【0029】
図5に示すように、半導体装置200は、半導体素子150が形成された半導体基板108の第2表面108eに、AlもしくはAl合金からなる第1のAl金属層105、Cu拡散防止層107、AlもしくはAl合金からなる第2のAl金属層106、およびNi層104がこの順に形成されている第2の半導体チップの電極構造体152と、第2の半導体チップの電極構造体152のNi層104の表面104aに配置され、銅焼結層103を介して第2の半導体チップの電極構造体152と接合された導電部材102と、をさらに備え、第2のAl金属層106の表面106aでのAl結晶粒の結晶面方位が主に(110)面となっている。
なお、第2の半導体チップは、半導体基板108と、第2の半導体チップの電極構造体152と、を含んで構成されている。
半導体基板108の第2表面108e上の第1のAl金属層105、Cu拡散防止層107、第2のAl金属層106、およびNi層104は、この順に形成されて、半導体基板108の表面側のカソード電極113を構成する。Ni層104は、銅焼結層103を用いて導電部材102に接合されている。
【0030】
このように、本実施形態の半導体装置200は、第1の半導体チップの電極構造体151と第2の半導体チップの電極構造体152が、半導体基板108の両面に形成され、導電部材102は銅焼結層103を介して第1の半導体チップの電極構造体151および第2の半導体チップの電極構造体152に接合されている。
【0031】
本実施形態によれば、第1の実施形態の効果に加えて、半導体基板108の両面に同様な電極構成体を設け、ウエハ表裏対象性のよい電極膜を形成しているので、電極膜の応力によるウエハ反りを低減でき、製造性を向上させることができる。
本実施形態の半導体装置200をパワー半導体モジュールに適用した場合、半導体基板108の両面に同様な電極構成体を設け、ウエハ表裏対象性のよい電極膜を形成しているので、高温環境で顕著になる各部材の熱膨張差に起因する熱応力を小さくすることができる。理想的には銅焼結層103の熱膨張係数を導電部材102のそれに一致させることで、銅焼結層103に生じる熱応力が最小になり、長期信頼性が向上する。」
e 「【図1】
[図:0001412270000005.jpg]
」
f 「【図5】
[図:0001412270000006.jpg]
」
イ 上記アから、甲第2号証には、以下の技術的事項が記載されている。
(ア)甲第2号証に記載の技術的事項は、半導体チップのNi電極の膜欠損を低減できる半導体装置を提供することを目的とすること(段落【0006】、【0007】)。
(イ)図5に示される、第2の実施形態に係る半導体装置200は、半導体素子150が形成された半導体基板108の第1表面108dに、第1のAl金属層105、Cu拡散防止層107、第2のAl金属層106、およびNi層104(金属層)がこの順に形成されている第1の半導体チップの電極構造体151を備える半導体装置200であること(段落【0012】、【0013】、【0028】)。
(ウ)図5に示される、第2の実施形態に係る半導体装置200のNi層104は、無電解Niメッキ層であること(段落【0014】、【0028】)。
(エ)図5に示される、第2の実施形態に係る半導体装置200は、Ni層104の表面104aに配置され、銅焼結層103により第1の半導体チップの電極構造体151と接合された導電部材102を備えること(段落【0013】、【0028】~【0030】)。
(オ)図5に示される、第2の実施形態に係る半導体装置200は、半導体素子150が形成された半導体基板108の第2表面108eに、第1のAl金属層105、Cu拡散防止層107、第2のAl金属層106、およびNi層104がこの順に形成されている第2の半導体チップの電極構造体152を備え、半導体基板108の両面に同様な電極構成体を設け、ウエハ表裏対象性のよい電極膜を形成している半導体装置200であること(段落【0012】、【0029】)、【0031】)。
ウ 上記イから、甲第2号証には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「半導体素子150が形成された半導体基板108の第1表面108dに、第1のAl金属層105、Cu拡散防止層107、第2のAl金属層106、およびNi層104(金属層)がこの順に形成されている第1の半導体チップの電極構造体151を備え、
Ni層104は、無電解Niメッキ層であり、
Ni層104の表面104aに配置され、銅焼結層103により第1の半導体チップの電極構造体151と接合された導電部材102を備え、
半導体素子150が形成された半導体基板108の第2表面108eに、第1のAl金属層105、Cu拡散防止層107、第2のAl金属層106、およびNi層104がこの順に形成されている第2の半導体チップの電極構造体152を備え、
半導体基板108の両面に同様な電極構成体を設け、ウエハ表裏対象性のよい電極膜を形成している半導体装置200。」
(3)甲第3号証の記載、甲第3号証に記載の技術的事項
ア 甲第3号証には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付した。)
a 「【0049】
上記において製造された半導体チップ16がブロック14にはんだ13によりはんだ付けされる。この際、半導体チップ16のめっき膜11がブロック14にはんだ13を介在して接合される。そして、基板部材10の他方表面1b側にはリード12がはんだ13を介在して接合される。またボンディングワイヤ15が基板部材10の他方表面1b側にボンディングされる。このようにして、図11に示す半導体装置が完成する。
・・・
【0051】
次に図11を参照して、半導体装置の構成を説明する。図6に示す半導体ウェハがダイシングされて基板部材10が形成されている。基板1の他方表面1b側の基板部材10上にはめっき膜11が形成されている。当該めっき膜11にボンディングワイヤ15がボンディングされており、またはんだ13を介してリード12が取り付けられている。基板1の一方表面1a側の基板部材10上にはめっき膜11が形成されている。当該めっき膜11にはんだ13を介してブロック14が取り付けられている。P2部を拡大した図が図13である。」
b 「
[図:0001412270000007.jpg]
」
イ 上記アから、甲第3号証には、以下の技術的事項が記載されている。
「基板の一方表面1a側及び他方表面1b側それぞれの基板部材10上にメッキ膜11が形成された半導体チップ16において、
基板他方表面1b側の基板部材10上に形成された当該めっき膜11にボンディングワイヤ15がボンディングされていること。」
2 甲1発明を引用発明とする対比・判断
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「半導体」、「電極」、「パワーデバイス」、「無電解Ni-Pめっき皮膜」である「試料Bの皮膜」、「Ni」、「リン」、「リン含有率」、「X線回折パターン」は、それぞれ本件発明1の「半導体素子」、「第1電極」、「半導体装置」、「第1無電解Niメッキ層」、「Ni(ニッケル)」、「P(リン)」、「P(リン)濃度」、「X線回折プロファイル」に相当し、甲1発明の「回折線」は、本件発明1の「回折ピーク」に対応する。
(イ)甲1発明は、「無電解ニッケルめっき皮膜であって、半導体の電極などのパワーデバイス用部品に使用することができ」るものであるところ、パワーデバイスにおいて、電極を、半導体の表面に形成することは、普通に行われているから、本件発明1と甲1発明とは、「半導体素子と、前記半導体素子の第1表面に形成された第1電極と、を備え、前記第1電極は、第1無電解Niメッキ層を含む」点で一致する。
(ウ)甲1発明の「試料Bの皮膜は、無電解Ni-Pめっき皮膜で、リン含有率が3.8wt%であり」は、本件発明1の「前記第1無電解Niメッキ層は、Ni(ニッケル)およびP(リン)を組成として含み、前記第1無電解Niメッキ層のP(リン)濃度は2.5wt%以上6wt%以下であり」に含まれる。
(エ)甲1発明の「X線回折パターンにおいて、試料Bの皮膜について」、「Ni(111)(200)(220)回折線を有し」は、本件発明1の「前記第1無電解Niメッキ層のX線回折プロファイルにNi(111)およびNi(200)の回折ピークを有し」に含まれる。
(オ)以上のことから、本件発明1と甲1発明との一致点と相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「半導体素子と、
前記半導体素子の第1表面に形成された第1電極と、を備え、
前記第1電極は、第1無電解Niメッキ層を含み、
前記第1無電解Niメッキ層は、Ni(ニッケル)およびP(リン)を組成として含み、
前記第1無電解Niメッキ層のP(リン)濃度は2.5wt%以上6wt%以下であり、
前記第1無電解Niメッキ層のX線回折プロファイルにNi(111)およびNi(200)の回折ピークを有する半導体装置。」
<相違点1A>
「第1電極」について、本件発明1では、「積層構造」であるのに対し、甲1発明では、「電極」について、そのような特定はなされていない点。
<相違点1B>
本件発明1は、「メッキ成膜後の熱処理後において前記第1無電解Niメッキ層中のNi3Pの結晶化率は0%以上20%以下であ」るのに対し、甲1発明は、「試料Bの皮膜は、無電解Ni-Pめっき皮膜で、リン含有率が3.8wt%であり」、「試料Bの当該皮膜では、350℃で25時間の熱処理後にNi3Pの回折線は確認できなかった」ものであるが、「試料Bの当該皮膜」(第1無電解Niメッキ層)について、「Ni3Pの結晶化率」の数値範囲は不明である点。
<相違点1C>
本件発明1は、「前記第1無電解Niメッキ層は、前記第1電極において、前記第1表面の反対側に配置され、銅焼結層により導電部材に接合される」ものであるのに対し、甲1発明では、「無電解ニッケルめっき皮膜」について、そのような特定はなされていない点。
イ 判断
(ア)相違点1A、1Cについて
上記相違点1A、1Cについて、まとめて検討する。
本件発明1では、「前記第1電極は、第1無電解Niメッキ層を含む積層構造であり」、「前記第1無電解Niメッキ層は、前記第1電極において、前記第1表面の反対側に配置され、銅焼結層により導電部材に接合される」と特定されている、すなわち、「前記第1電極」において、「前記第1表面の反対側」(下面側)に配置された「前記第1無電解Niメッキ層」は、「銅焼結層により導電部材に接合される」という構成を有している。一方、甲第1号証には、電極の最表面(最下層)に無電解Niメッキ層を配置し、さらにその無電解Niメッキ層が銅焼結層により導電部材に接合されることについては、何ら記載されておらず、それを示唆するような開示もない。
(イ)まとめ
したがって、甲1発明において、相違点1A、1Cに係る本件発明1の構成を採用することは当業者が容易に想到することができたものではない。
よって、相違点1Bについて判断するまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明3について
ア 対比
本件発明3と甲1発明とを対比する。
上記(1)アでの検討を踏まえれば、本件発明3と甲1発明との一致点と相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「半導体素子と、
前記半導体素子の第1表面に形成された第1電極と、を備え、
前記第1電極は、第1無電解Niメッキ層を含み、
前記第1無電解Niメッキ層は、Ni(ニッケル)およびP(リン)を組成として含み、
前記第1無電解Niメッキ層のP(リン)濃度は2.5wt%以上6wt%以下であり、
前記第1無電解Niメッキ層のX線回折プロファイルにNi(111)およびNi(200)の回折ピークを有する半導体装置。」
<相違点1D>
「第1電極」について、本件発明3では、「積層構造」であるのに対し、甲1発明では、「電極」について、そのような特定はなされていない点。
<相違点1E>
本件発明3は、「メッキ成膜後の400℃以下(350℃を除く)熱処理後において前記第1無電解Niメッキ層中のNi3Pの結晶化率は前記熱処理の熱負荷によるクラック発生の無い0%以上20%以下であ」るのに対し、甲1発明は、「試料Bの皮膜は、無電解Ni-Pめっき皮膜で、リン含有率が3.8wt%であり」、「試料Bの当該皮膜では、350℃で25時間の熱処理後にNi3Pの回折線は確認できなかった」ものであるが、「試料Bの当該皮膜」(第1無電解Niメッキ層)について、「Ni3Pの結晶化率」の数値範囲は不明である点。
<相違点1F>
本件発明3は、「前記第1無電解Niメッキ層は、前記第1電極において、前記第1表面の反対側に配置され、銅焼結層により導電部材に接合される」ものであるのに対し、甲1発明では、「無電解ニッケルめっき皮膜」について、そのような特定はなされていない点。
イ 判断
上記(1)アのとおり、上記<相違点1A>は、「「第1電極」について、本件発明1では、「積層構造」であるのに対し、甲1発明では、「電極」について、そのような特定はなされていない点。」であるから、相違点1Dは、上記相違点1Aと同じ相違点である。
また、上記(1)アのとおり、上記<相違点1C>は、「本件発明1は、「前記第1無電解Niメッキ層は、前記第1電極において、前記第1表面の反対側に配置され、銅焼結層により導電部材に接合される」ものであるのに対し、甲1発明では、「無電解ニッケルめっき皮膜」について、そのような特定はなされていない点。」であるから、相違点1Fは、上記相違点1Cと同じ相違点である。
したがって、上記(1)イで示した理由と同様の理由により、本件発明3は、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明8について
ア 対比
本件発明8と甲1発明とを対比する。
上記(1)アでの検討を踏まえるとともに、甲1発明は、「無電解ニッケルめっき皮膜であって、半導体の電極などのパワーデバイス用部品に使用することができ」るものであるから、甲1発明の「電極」は、本件発明8の「第1電極」及び「第2電極」の両者に相当する。
そうすると、本件発明8と甲1発明は、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点1G>
本件発明8は、「前記第2電極は、第2無電解Niメッキ層を含む積層構造であり、前記第2無電解Niメッキ層は、Ni(ニッケル)およびP(リン)を組成として含み、前記第2無電解Niメッキ層のP(リン)濃度は2.5wt%以上6wt%以下であり、前記第2無電解Niメッキ層のX線回折プロファイルにNi(111)およびNi(200)の回折ピークを有し、かつ、メッキ成膜後の熱処理後において前記第2無電解Niメッキ層中のNi3Pの結晶化率が0%以上20%以下であり、前記第2無電解Niメッキ層は、前記第2電極において、前記第2表面の反対側に配置され、前記第2電極は、前記第2無電解Niメッキ層にアルミのボンディングワイヤが接合されるボンディングパッドである」のに対し、甲1発明は、「無電解ニッケルめっき皮膜であって、半導体の電極などのパワーデバイス用部品に使用することができ」るものの、「前記半導体素子の前記第1表面とは反対側」(上面側)の「第2表面に形成された第2電極」について、本件発明8では、「前記第2無電解Niメッキ層は、前記第2電極において、前記第2表面の反対側」(上面側)に「配置され」、「前記第2電極は、前記第2無電解Niメッキ層にアルミのボンディングワイヤが接合されるボンディングパッドである」との特定はなされていない点。
イ 判断
甲第1号証には、パワーデバイスの上面側の電極の最表面(最上層)に無電解Niメッキ層を配置し、さらに、上面側の電極は、その無電解Niメッキ層にアルミノボンディングワイヤが接合されるボンディングパッドであることについては、何ら記載されておらず、それを示唆するような開示もない。
したがって、甲1発明において、相違点1Gに係る本件発明8の構成を採用することは当業者が容易に想到することができたものではない。
よって、その他の相違点について判断するまでもなく、本件発明8は、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件発明2、4~7、9について
ア 本件発明2、4~7について
本件発明2、4~7は、本件発明1に対して、さらに発明特定事項を追加したものを含む発明である。
よって、上記(1)イで示した理由と同様の理由により、本件発明2、4~7は、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明9について
本件発明9は、本件発明1、3、8に対して、さらに発明特定事項を追加したものを含む発明である。
よって、上記(1)イ、(2)イ、(3)イで示した理由と同様の理由により、本件発明9は、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)甲1発明を引用発明とする対比・判断についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件発明1~9は、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 甲2発明を引用発明とする対比・判断
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
(ア)甲2発明は、「半導体素子150が形成された半導体基板108の第1表面108dに、第1のAl金属層105、Cu拡散防止層107、第2のAl金属層106、およびNi層104(金属層)がこの順に形成されている第1の半導体チップの電極構造体151を備え」、「Ni層104は、無電解Niメッキ層である」から、「半導体素子150と、半導体素子150の第1表面108dに形成された第1の半導体チップの電極構造体151と、を備え、第1の半導体チップの電極構造体151は、無電解Niメッキ層を含む積層構造である」といえる。
そして、甲2発明の「半導体素子150」、「第1表面108d」、「第1の半導体チップの電極構造体151」、「(第1の半導体チップの電極構造体151が含む)無電解Niメッキ層」である「Ni層104」、「半導体装置200」は、それぞれ本件発明1の「半導体素子」、「第1表面」、「第1電極」、「第1無電解Niメッキ層」、「半導体装置」に相当する。
したがって、本件発明1と甲2発明とは、「半導体素子と、前記半導体素子の第1表面に形成された第1電極と、を備え、前記第1電極は、第1無電解Niメッキ層を含む積層構造である半導体装置」である点で一致する。
(イ)甲2発明は、「半導体素子150が形成された半導体基板108の第1表面108dに、第1のAl金属層105、Cu拡散防止層107、第2のAl金属層106、およびNi層104(金属層)がこの順に形成されている第1の半導体チップの電極構造体151を備え」、「Ni層104の表面104aに配置され、銅焼結層103により第1の半導体チップの電極構造体151と接合された導電部材102を備える」ものであるから、「Ni層104は、第1の半導体チップの電極構造体151において、第1表面108dの反対側に配置され、銅焼結層103により導電部材102に接合される」ものであるといえる。
そして、甲2発明の「(半導体素子150が形成された半導体基板108の)第1表面108d」、「銅焼結層103」、「導電部材102」は、それぞれ本件発明1の「第1表面」、「銅焼結層」、「導電部材」に相当する。
したがって、本件発明1と甲2発明とは、「前記第1無電解Niメッキ層は、前記第1電極において、前記第1表面の反対側に配置され、銅焼結層により導電部材に接合される」点で一致する。
(ウ)そうすると、本件発明1と甲2発明との一致点と相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「半導体素子と、
前記半導体素子の第1表面に形成された第1電極と、を備え、
前記第1電極は、第1無電解Niメッキ層を含む積層構造であり、
前記第1無電解Niメッキ層は、前記第1電極において、前記第1表面の反対側に配置され、銅焼結層により導電部材に接合される半導体装置。」
<相違点2A>
本件発明1は、「前記第1無電解Niメッキ層は、Ni(ニッケル)およびP(リン)を組成として含み、前記第1無電解Niメッキ層のP(リン)濃度は2.5wt%以上6wt%以下であり」、かつ、「メッキ成膜後の熱処理後において前記第1無電解Niメッキ層中のNi3Pの結晶化率は0%以上20%以下であ」るのに対し、甲2発明は、「第1の半導体チップの電極構造体151」が含む「無電解Niメッキ層」について、そのような特定はなされていない点。
<相違点2B>
本件発明1は、「前記第1無電解Niメッキ層のX線回折プロファイルにNi(111)およびNi(200)の回折ピークを有」するものであるのに対し、甲2発明は、「第1の半導体チップの電極構造体151」が含む「無電解Niメッキ層」について、そのような特定はなされていない点。
イ 判断
(ア)相違点2A、2Bについて
上記相違点2A、2Bについて、まとめて検討する。
本件発明1では、「前記第1無電解Niメッキ層は、Ni(ニッケル)およびP(リン)を組成として含み、前記第1無電解Niメッキ層のP(リン)濃度は2.5wt%以上6wt%以下であり、前記第1無電解Niメッキ層のX線回折プロファイルにNi(111)およびNi(200)の回折ピークを有し、かつ、メッキ成膜後の熱処理後において前記第1無電解Niメッキ層中のNi3Pの結晶化率は0%以上20%以下であり」と特定されている。
一方、甲第2号証には、Al金属の表面上に、例えば、無電解メッキ法によりNi層を成長させるNi電極形成方法において、Niメッキ層にピンホール状のNi膜欠損が発生すること、及び、ピンホール状のNi膜欠損があると、接合層から半導体チップに銅が拡散してしまうという課題があった(【0006】を参照。)が、Ni層104の下地の第2のAl金属層106の表面106aでのAl結晶粒の結晶面方位を主に(110)面とすることにより、Ni電極膜(Niメッキ層)のピンホール欠損を低減させる旨(【0025】、【0026】、【0029】、図1、5を参照。)が記載されているから、甲2発明において、上記の課題は解決されている。
そうすると、Niメッキ層についての上記課題が解決されている甲2発明において、さらに、「第1の半導体チップの電極構造体151」が含む「無電解Niメッキ層」である「Ni層104」の組成や結晶構造及び結晶化率などの膜質を変更すべく甲1発明を適用する動機付けは当業者にはない。
(イ)まとめ
したがって、甲2発明において、相違点2A、2Bに係る本件発明1の構成を採用することは、甲第1号証を参照した当業者であっても容易に想到することができない。
よって、本件発明1は、甲2発明及び甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ)申立人の意見について
a 申立人は、令和6年2月14日に提出した意見書(以下「申立人意見書」という。)において、特許権者が令和5年12月21日に提出した意見書(以下「特許権者意見書」という。)における、「5(5)取消理由2について」の主張に対して、以下のような主張をする。
特許権者の「(A)甲1ははんだによる電極と導電部材との接合を前提としているので、甲2のような銅焼結層を介して電極と導電部材とを接合する技術と結びつける動機は無い(特許権者の意見書第6頁の(5)(a))。」(申立人意見書1ページ)との主張に対する、申立人の意見は次のとおりである。
「甲第2号証では、半導体チップのNi電極においてNi膜欠損があると、素子リーク電流の増大、素子耐圧の劣化、素子の特性が変動してしまう課題があったことが、記載されています(段落0006)。一方、甲第1号証には、パワーデバイス関連部品(半導体電極)への無電解ニッケルめっきについて、・・・。そうしてみると、甲第2号証に記載の図5の半導体装置200の第1の電極構造体151のNi層104として、高温動作環境下で脆化し難い(すなわち、膜欠損を生じ難い)甲1の皮膜Bを採用し、それにより甲第2号証における上記問題(素子リーク電流の増大、素子耐圧の劣化、素子の特性の変動)を抑制することは、当業者が容易になし得たことであるといえます。」(申立人意見書2~3ページ)
b しかしながら、甲第2号証における「Ni膜欠損」の課題は、上記(ア)で判断したとおり、甲2発明において解決されており、甲2発明において、さらに、「第1の半導体チップの電極構造体151」が含む「無電解Niメッキ層」である「Ni層104」の組成や結晶構造及び結晶化率などの膜質を変更する動機付けは当業者にはないから、甲2発明において、甲1発明の皮膜を採用することは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
したがって、申立人のかかる主張は採用することはできない。
(2)本件発明3について
ア 対比
本件発明3と甲2発明とを対比する。
上記(1)アでの検討を踏まえれば、本件発明3と甲2発明との一致点と相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「半導体素子と、
前記半導体素子の第1表面に形成された第1電極と、を備え、
前記第1電極は、第1無電解Niメッキ層を含む積層構造であり、
前記第1無電解Niメッキ層は、前記第1電極において、前記第1表面の反対側に配置され、銅焼結層により導電部材に接合される半導体装置。」
<相違点2C>
本件発明3は、「前記第1無電解Niメッキ層は、Ni(ニッケル)およびP(リン)を組成として含み、前記第1無電解Niメッキ層のP(リン)濃度は2.5wt%以上6wt%以下であり」、かつ、「メッキ成膜後の400℃以下(350℃を除く)の熱処理後において前記第1無電解Niメッキ層中のNi3Pの結晶化率は前記熱処理の熱負荷によるクラック発生の無い0%以上20%以下であ」るのに対し、甲2発明は、「第1の半導体チップの電極構造体151」が含む「無電解Niメッキ層」について、そのような特定はなされていない点。
<相違点2D>
本件発明3は、「前記第1無電解Niメッキ層のX線回折プロファイルにNi(111)およびNi(200)の回折ピークを有」するものであるのに対し、甲2発明は、「第1の半導体チップの電極構造体151」が含む「無電解Niメッキ層」について、そのような特定はなされていない点。
イ 判断
上記(1)アのとおり、上記<相違点2A>は、「本件発明1は、「前記第1無電解Niメッキ層は、Ni(ニッケル)およびP(リン)を組成として含み、前記第1無電解Niメッキ層のP(リン)濃度は2.5wt%以上6wt%以下であり」、かつ、「メッキ成膜後の熱処理後において前記第1無電解Niメッキ層中のNi3Pの結晶化率は0%以上20%以下であ」るのに対し、甲2発明は、「第1の半導体チップの電極構造体151」が含む「無電解Niメッキ層」について、そのような特定はなされていない点。」であるから、相違点2Cは、上記相違点2Aと同様な相違点である。
また、相違点2Dは、上記相違点2Bと同じ相違点である。
したがって、上記(1)イで示した理由と同様の理由により、本件発明3は、甲2発明及び甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明8について
ア 対比
本件発明8と甲2発明とを対比する。
(ア)上記(1)ア(ア)での検討を踏まえれば、本件発明8と甲2発明とは、「半導体素子と、
前記半導体素子の第1表面に形成された第1電極と、を備え、
前記第1電極は、第1無電解Niメッキ層を含む積層構造である半導体装置。」の点で一致する。
(イ)甲2発明は、「半導体素子150が形成された半導体基板108の第2表面108eに、第1のAl金属層105、Cu拡散防止層107、第2のAl金属層106、およびNi層104がこの順に形成されている第2の半導体チップの電極構造体152を備え」るから、「半導体素子150の第2表面108eに形成された第2の半導体チップの電極構造体152をさらに備え、第2の半導体チップの電極構造体152は、無電解Niメッキ層を含む積層構造であり、無電解Niメッキ層は、第2の半導体チップの電極構造体152において、第2表面108eの反対側に配置され」るといえる。
そして、甲2発明の「第2表面108e」、「第2の半導体チップの電極構造体152」、「(第2の半導体チップの電極構造体152が含む)無電解Niメッキ層」である「Ni層104」は、それぞれ本件発明8の「前記半導体素子の前記第1表面とは反対側の第2表面」、「第2電極」、「第2無電解Niメッキ層」に相当する。
したがって、本件発明8と甲2発明とは、「前記半導体素子の前記第1表面とは反対側の第2表面に形成された第2電極をさらに備え、前記第2電極は、第2無電解Niメッキ層を含む積層構造であり」、「前記第2無電解Niメッキ層は、前記第2電極において、前記第2表面の反対側に配置され」る点で一致する。
(ウ)そうすると、本件発明8と甲2発明との一致点と相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「半導体素子と、
前記半導体素子の第1表面に形成された第1電極と、を備え、
前記第1電極は、第1無電解Niメッキ層を含む積層構造であり、
前記半導体素子の前記第1表面とは反対側の第2表面に形成された第2電極をさらに備え、
前記第2電極は、第2無電解Niメッキ層を含む積層構造であり、
前記第2無電解Niメッキ層は、前記第2電極において、前記第2表面の反対側に配置される半導体装置。」
<相違点2E>
本件発明8は、「前記第1無電解Niメッキ層は、Ni(ニッケル)およびP(リン)を組成として含み、前記第1無電解Niメッキ層のP(リン)濃度は2.5wt%以上6wt%以下であり」、かつ、「メッキ成膜後の熱処理後において前記第1無電解Niメッキ層中のNi3Pの結晶化率は0%以上20%以下であ」るのに対し、甲2発明は、「第1の半導体チップの電極構造体151」が含む「無電解Niメッキ層」について、そのような特定はなされていない点。
<相違点2F>
本件発明8は、「前記第1無電解Niメッキ層のX線回折プロファイルにNi(111)およびNi(200)の回折ピークを有」するものであるのに対し、甲2発明は、「第1の半導体チップの電極構造体151」が含む「無電解Niメッキ層」について、そのような特定はなされていない点。
<相違点2G>
本件発明8は、「前記第2無電解Niメッキ層は、Ni(ニッケル)およびP(リン)を組成として含み、前記第2無電解Niメッキ層のP(リン)濃度は2.5wt%以上6wt%以下であり」、かつ、「メッキ成膜後の熱処理後において前記第2無電解Niメッキ層中のNi3Pの結晶化率が0%以上20%以下であ」るのに対し、甲2発明は、「第2の半導体チップの電極構造体152」が含む「無電解Niメッキ層」について、そのような特定はなされていない点。
<相違点2H>
本件発明8は、「前記第2無電解Niメッキ層のX線回折プロファイルにNi(111)およびNi(200)の回折ピークを有」するものであるのに対し、甲2発明は、「第2の半導体チップの電極構造体152」が含む「無電解Niメッキ層」について、そのような特定はなされていない点。
<相違点2I>
本件発明8では、「前記第2電極は、前記第2無電解Niメッキ層にアルミのボンディングワイヤが接合されるボンディングパッドである」のに対し、甲2発明では、「第2の半導体チップの電極構造体152」について、そのような特定はなされていない点。
イ 判断
(ア)相違点2E、2Fについて
上記相違点2E、2Fについて、まとめて検討する。
上記(1)アのとおり、上記<相違点2A>は、「本件発明1は、「前記第1無電解Niメッキ層は、Ni(ニッケル)およびP(リン)を組成として含み、前記第1無電解Niメッキ層のP(リン)濃度は2.5wt%以上6wt%以下であり」、かつ、「メッキ成膜後の熱処理後において前記第1無電解Niメッキ層中のNi3Pの結晶化率は0%以上20%以下であ」るのに対し、甲2発明は、「第1の半導体チップの電極構造体151」が含む「無電解Niメッキ層」について、そのような特定はなされていない点。」であるから、相違点2Eは、上記相違点2Aと同様な相違点である。
また、相違点2Fは、上記相違点2Bと同じ相違点である。
したがって、上記(1)イで示した理由と同様の理由により、甲2発明において、相違点2E、2Fに係る本件発明8の構成を採用することは、甲第1号証、甲第3号証を参照した当業者であっても容易に想到することができない。
(イ)まとめ
よって、相違点2G~相違点2Iについて検討するまでもなく、本件発明8は、甲2発明及び甲1発明、又は、甲2発明並びに甲1発明及び甲第3号証に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ)申立人の意見について
a 申立人は、申立人意見書において、特許権者意見書における、「5(5)取消理由2について」の主張に対して、以下のような主張をする。
特許権者の「(B)ワイヤボンディングについて記載されている甲3では、Ni膜状に積層されたAuめっき膜にワイヤボンディングすることが記載されているものの、Ni層に直接ワイヤボンディングすること(訂正後の請求項8)は記載されていない(特許権者の意見書第6頁の(5)(b))。また、ワイヤボンディング時の機械的ダメージに対する硬度の問題から、訂正後の請求項8のようにアルミのボンディングワイヤを従来のNiめっき膜に接合することはできない(特許権者の意見書第6頁の(5)(b))。」(申立人意見書1~2ページ)との主張に対する、申立人の意見は次のとおりである。
「甲3では、電極としてNi膜とAu膜との2層構造を採用していますが、電極最表面をNi膜とすることは公知です。例えば、甲2の図5でも電極構造体152の最表面側はNi層104が配置されています。また、Ni膜に関して、甲1の皮膜Bは訂正後の請求項8のNi膜と区別が付いていないので、甲1の皮膜Bとアルミのボンディングワイヤとを接合することができないのであれば、訂正後の請求項8のNi膜とアルミのボンディングワイヤとの接合形態も実施不可能な形態であることになると考えます。よって、主張(B)は、自らにより、訂正後の請求項8の発明成立性、実施可能要件、及びサポート要件を否定するものであるといえます。
なお、ニッケル膜とアルミのボンディングワイヤとの接合自体は周知技術であり、・・・よって、アルミノボンディングワイヤを採用することには阻害要因はありません。」(申立人意見書3ページ)
b しかしながら、上記主張は、相違点2Iについての意見であるところ、上記(ア)、(イ)で判断したとおり、「相違点2G~相違点2Iについて検討するまでもなく、本件発明8は、甲2発明及び甲1発明、又は、甲2発明並びに甲1発明及び甲第3号証に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。」から、申立人のかかる主張は採用することはできない。
(4)本件発明2、4~7、9について
ア 本件発明2、4~7について
本件発明2、4~7は、本件発明1に対して、さらに発明特定事項を追加したものを含む発明である。
よって、上記(1)イで示した理由と同様の理由により、本件発明2、4~7は、甲2発明及び甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明9について
本件発明9は、本件発明1、3、8に対して、さらに発明特定事項を追加したものを含む発明である。
よって、上記(1)イ、(2)イ、(3)イで示した理由と同様の理由により、本件発明9は、甲2発明及び甲1発明、又は、甲2発明並びに甲1発明及び甲第3号証に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)甲2発明を引用発明とする対比・判断についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件発明1~7は、甲2発明及び甲1発明に基づいて、本件発明8、9は、甲2発明及び甲1発明、又は、甲2発明並びに甲1発明及び甲第3号証に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4 小括
以上のとおりであるから、本件発明1~9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえず、請求項1~9に係る特許を取り消すことはできない。
第6 取消理由通知書(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許法第29条第1項第3号(新規性)について
(1)申立人は、特許異議申立書において、登録時の特許請求の範囲の請求項1、2に係る発明(以下「本件特許発明1、2」という。)に関し、本件特許発明1、2は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許発明1、2に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、特許を受けることができない旨を主張する。
<甲号証一覧>
1.甲第1号証:Norihiko Hasegawa et.al.“Effect on film properties by phosphorus and sulfur content in electroless Ni-P plating films”,p.78-81,[online],
2018 International Conference on Electronis Pacaging and IMAPS All Asia Conference(ICEP-IAAC 2018 Proceedings),2018年6月7日,(米),IEEE,[令和5年2月6日検索],インターネット,
<URL: https://ieeexplore.ieee.org/document/8374674>,<URL:https://ieeexplore.ieee.org/stamp/stamp.jsp?tp=&arnumber=8374674>
(2)しかしながら、上記第5の2(1)ア(オ)で検討したとおり、本件発明1と甲1発明とは、上記相違点1A~1Cを有するものであるところ、甲第1号証には、無電解Ni-Pめっき皮膜である試料Bの皮膜中の「Ni3Pの結晶化率」の数値について記載も示唆もされておらず、また、甲第1号証には、試料Bの皮膜が、「銅焼結層により導電部材に接合される」ものであるとの構成について、記載も示唆もされていないから、相違点1B、1Cは実質的なものである。したがって、本件発明1、2は、甲1発明であるとはいえない。
よって、本件発明1、2に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものとはいえない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知書(決定の予告)及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1~9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-701168