特許異議申立
2024-700441
耐火繊維一体型モジュールの取り付け方法
- 審判番号
- 2024-700441
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-510841
- 登録番号
- 7378584
- 請求日
- 2024年05月10日
- 審決日
- 2025年02月17日
- 公報発行日
- 2025年04月25日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】山▲東▼▲魯▼▲陽▼▲節▼能材料股▲フン▼有限公司
- 【権利者代理人】村山 靖彦
- 【権利者代理人】実広 信哉
- 【権利者代理人】阿部 達彦
- 【異議申立人】安井 健治
- 審判長/審判官
- 審判長 粟野 正明
- 審判官 井上 猛
- 審判官 相澤 啓祐
- 分類
- P1651.121-Y (F27D) / P1651.536-Y (F27D) / P1651.537-Y (F27D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条、特許法第29条、特許法第113条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7378584号発明「耐火繊維一体型モジュールの取り付け方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7378584号の請求項1~8に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7378584号(請求項の数8。以下、「本件特許」という。)は、2021年(令和3年)11月9日(パリ条約による優先権主張外国庁受理:2020年11月10日(CN)中国)を国際出願日とする特許出願(特願2022-510841号)に係るものであって、令和5年11月2日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は、令和5年11月13日である。)。
その後、令和6年5月10日に、本件特許の請求項1~8に係る特許に対して、特許異議申立人である安井健治(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。
本件特許異議の申立てにおける手続の経緯は、以下のとおりである。
令和6年 5月10日提出 特許異議申立書
9月17日付け 取消理由通知書
12月18日提出 意見書
第2 本件発明
本件特許の請求項1~8に係る発明は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、それぞれ「本件発明1」等という。また、本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)。
【請求項1】
耐火繊維一体型モジュールの取り付け方法であって、
施工前処理を行うことであって、前処理が完了した後に炉壁にアンカーを溶接することと、
前記炉壁に沿って耐火繊維ブランケットとナノプレートとを含む敷き層を敷設することと、
耐火繊維プレキャスト層を形成するように、前記アンカーによって耐火繊維一体型モジュールを敷き層の熱面に固定し、さらに補償ストリップを用いて前記耐火繊維一体型モジュールの間に予備された隙間を充填することと、
前記耐火繊維プレキャスト層を検査し、幅が所定の幅より大きいスリットを補修することと、
を含むことを特徴とする取り付け方法。
【請求項2】
施工前処理を行うことは、
炉内に足場を組み立てることであって、前記足場と炉壁との距離を第1の設定値以下にさせることと、
前記足場の組み立てが完了した後に、アンカーを溶接するために、前記炉壁に対して錆落としを行い、前記炉壁の溶接スラグ、浮遊塵、錆及び油汚れを除去することと、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の取り付け方法。
【請求項3】
前処理が完了した後に炉壁にアンカーを溶接することの後に、さらに、
前記アンカーの溶接品質を検出することを含むことを特徴とする請求項1に記載の取り付け方法。
【請求項4】
前記炉壁に沿って耐火繊維ブランケットとナノプレートとを含む敷き層を敷設することは、
溶接継ぎ目に漏れがあるか否かを確認するために、前記炉壁に水をかける試験を行い、漏れている場合に溶接を補強することと、
前記耐火繊維ブランケットを一端から他端へ引き締め、引き締められた前記耐火繊維ブランケットを前記アンカーに通し、係止片で固定し、固定された前記耐火繊維ブランケットを平らにすることと、
前記炉壁の内側壁を覆う第1の敷き層が形成されるまで、前記耐火繊維ブランケットを一端から他端へ引き締めることを繰り返すことと、
前記ナノプレートを一端から他端へ敷き、前記ナノプレートを前記アンカーに通し、係止片で固定し、固定された前記ナノプレートを平らにすることと、
前記第1の敷き層を覆う第2の敷き層が形成されるまで、前記ナノプレートを一端から他端へ敷くことを繰り返すことと、
前記第2の敷き層を覆う第3の敷き層が形成されるまで、前記耐火繊維ブランケットを一端から他端へ引き締め、引き締められた前記耐火繊維ブランケットを前記アンカーに通し、係止片で固定し、固定された前記耐火繊維ブランケットを平らにすることと、
前記敷き層は少なくとも二層の前記耐火繊維ブランケットと少なくとも一層のナノプレートを含み、二層の前記耐火繊維ブランケットの継ぎ目を千鳥状にし、継ぎ目の間隔を第2の設定値より大きくすることと、
含むことを特徴とする請求項1に記載の取り付け方法。
【請求項5】
前記耐火繊維プレキャスト層を検査し、幅が所定の幅より大きいスリットを補修することは、
前記耐火繊維プレキャスト層を検査し、前記耐火繊維プレキャスト層にスリットがある場合、前記スリットが所定の幅より大きいか否かを判断することと、
前記スリットが前記所定の幅より大きい場合、二つ折りにされた耐火繊維ブランケットを前記スリットに詰め込むことと、
含むことを特徴とする請求項1に記載の取り付け方法。
【請求項6】
前記第2の設定値は、50mmより大きいことを特徴とする請求項4に記載の取り付け方法。
【請求項7】
前記アンカーによって、耐火繊維一体型モジュールを敷き層の熱面に固定することは、
前記耐火繊維一体型モジュールの案内管を前記アンカーに合わせて外嵌し、ナットを前記アンカーに螺合することで前記耐火繊維一体型モジュールを固定すること、
を含むことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の取り付け方法。
【請求項8】
前記補償ストリップは、耐火繊維カーペットを二つ折りにし、所定の寸法に圧縮したものであることを特徴とする請求項7に記載の取り付け方法。
第3 特許異議の申立ての理由及び取消理由の概要
1 特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由
本件特許の請求項1~8に係る特許は、下記(1)~(5)のとおり、特許法113条2号及び4号に該当する(証拠方法は下記(6)を参照。以下、甲第1号証等を単に「甲1」等という。)。
(1)申立理由1-1(進歩性)
本件発明1~3、5、7、8は、甲1に記載された発明並びに甲1~8及び11~13に記載された事項に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~3、5、7、8に係る特許は、同法113条2号に該当する。
(2)申立理由1-2(進歩性)
本件発明1~3、5、7、8は、甲6に記載された発明並びに甲1~8及び11~13に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~3、5、7、8に係る特許は、同法113条2号に該当する。
(3)申立理由2(明確性要件)
本件発明1~8については、特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号に適合するものではないから、本件特許の請求項1~8に係る特許は、同法113条4号に該当する。
(4)申立理由3(実施可能要件)
本件発明1~8については、発明の詳細な説明の記載が特許法36条4項1号に適合するものではないから、本件特許の請求項1~8に係る特許は、同法113条4号に該当する。
(5)申立理由4(サポート要件)
本件発明1~8については、特許請求の範囲の記載が特許法36条6項1号に適合するものではないから、本件特許の請求項1~8に係る特許は、同法113条4号に該当する。
(6)証拠方法
・甲1 中国特許出願公開第102425949号明細書
・甲2 中国実用新案第210921435号明細書
・甲3 中国特許出願公開第105276992号明細書
・甲4 中国実用新案第2685793号明細書
・甲5 中国特許出願公開第110260659号明細書
・甲6 「省エネルギー実践シリーズ 新版 セラミックファイバと断熱施工」、第1版第1刷、財団法人 省エネルギーセンター、2007年6月15日、63~85、107~143頁
・甲7 「Z-BLOK 施工要領書」、新日鐵化学株式会社、遅くとも2012年、1~25頁
・甲8 日鉄ケミカル&マテリアル株式会社、「会社沿革」、[online]、[令和6年5月7日検索]、インターネット
<https://www.nscm.nipponsteel.com/company/history.html>
・甲9 本件特許に係る出願(特願2022-510841号)における令和5年6月8日提出の意見書
・甲10 百度百科事典、「納米板」、[online]、2023年6月19日、[令和6年5月7日検索]、インターネット
<https://baike.baidu.com/item/%E7%BA%B3%E7%B1%B3%E6%9D%B F/974539?fr=aladdin>
・甲11 本件特許に係る出願(特願2022-510841号)に対応する欧州出願(欧州特許出願番号第21865358.2号)における2023年4月25日提出の意見書
・甲12 魯阻甘能材料股伶有限公司、「貝克R○納米板」、[online]、[令和6年5月7日検索]、インターネット(当審注:「R○」は○内にRの記号を意味する。)
<https://www.luyang.com/product/68.html>
・甲13 新日本サーマルセラミックス株式会社、「沿革」、[online]、[令和6年5月7日検索]、インターネット
<https://www.thermalceramics.co.jp/company/history.html>
2 取消理由通知書に記載した取消理由
(1)取消理由1(明確性要件)
上記1の申立理由2(明確性要件)と同旨
(2)取消理由2(実施可能要件)
上記1の申立理由3(実施可能要件)(うち、ナノプレートに関するもの)と同旨
(3)取消理由3(サポート要件)
上記1の申立理由4(サポート要件)(うち、ナノプレートに関するもの)と同旨
第4 当審の判断
以下に述べるように、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~8に係る特許を取り消すことはできない。
1 取消理由1(明確性要件)、申立理由2(明確性要件)
(1)取消理由通知書では、請求項1の「ナノプレート」が具体的にどのようなものであるのかについては、請求項1において何ら特定されておらず、また、本件明細書においても何ら説明されていないところ、本件特許に係る出願(特願2022-510841号)における令和5年6月8日提出の意見書(甲9)において特許権者が主張するように、「天井業界用の板材であり、ベース板材の表面をサイズが0.1~100nmであるナノ材料を用いて処理したものであり、耐擦傷性及び耐食性を向上させたもの」を意味するのか、あるいは、本件特許に係る出願(特願2022-510841号)に対応する欧州出願(欧州特許出願番号第21865358.2号)における2023年4月25日提出の意見書(甲11)において特許権者が主張するように、「ナノスケールの構造材料(セラミック繊維など)でできた、ナノスケールの孔を持つシートであり、熱伝導率が極めて低く、柔軟性に優れており、高い断熱性が要求される場面で使用できるもの」を意味するのか、いずれであるのか不明であるから、本件発明1~8は明確であるとはいえない旨、指摘した。
(2)これに対して、特許権者は、令和6年12月18日提出の意見書において、請求項1の「ナノプレート」は、「ナノスケールの構造材料(セラミック繊維など)でできた、ナノスケールの孔を持つシートであり、熱伝導率が極めて低く、柔軟性に優れており、高い断熱性が要求される場面で使用できるもの」を意味すると主張した。
(3)上記(2)の主張を考慮すれば、請求項1の「ナノプレート」の意味は明確であり、本件発明1~8は明確であるといえるから、取消理由1(明確性要件)は解消した。
(4)したがって、取消理由1(明確性要件)、申立理由2(明確性要件)によっては、本件特許の請求項1~8に係る特許を取り消すことはできない。
2 取消理由2(実施可能要件)、申立理由3(実施可能要件)(うち、ナノプレートに関するもの)、取消理由3(サポート要件)、申立理由4(サポート要件)(うち、ナノプレートに関するもの)
(1)取消理由通知書では、下記ア、イのとおり指摘した。
ア 上記1(1)で述べたとおり、本件明細書には、請求項1における「ナノプレート」が具体的にどのようなものであるのかについては何ら説明されておらす、また、特許権者の主張を考慮しても理解できるとはいえないから、本件発明1~8について、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。
イ 上記アと同様の理由により、本件発明1~8は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。
(2)これに対して、特許権者は、令和6年12月18日提出の意見書において、本件発明1~8については、上記1(2)の主張を考慮することにより、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであり、また、本件発明1~8は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものであると主張した。
(3)上記(2)の主張を考慮すれば、請求項1の「ナノプレート」の意味は明確であり、本件発明1~8について、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであり、また、本件発明1~8は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものであるといえるから、取消理由2(実施可能要件)、取消理由3(サポート要件)は解消した。
(4)したがって、取消理由2(実施可能要件)、申立理由3(実施可能要件)(うち、ナノプレートに関するもの)、取消理由3(サポート要件)、申立理由4(サポート要件)(うち、ナノプレートに関するもの)によっては、本件特許の請求項1~8に係る特許を取り消すことはできない。
3 申立理由3(実施可能要件)(うち、敷き層の敷設順序に関するもの)、申立理由4(サポート要件)(うち、敷き層の敷設順序に関するもの)
(1)ア 申立人は、本件明細書には、炉壁に対し、第1の敷き層として柔軟性の高い耐火繊維ブランケットを敷き、次に第2の敷き層としてナノプレートを敷設することにより、本件発明の課題の一つである、耐火繊維一体型モジュールの施工不良による脱落(【0006】)が解決されることが記載されている(【0025】、【0028】)ところ、請求項1~3、5、7、8には、耐火繊維ブランケットとナノプレートとを敷設する順序については規定されていないため、本件発明1~3、5、7、8は、上記順序に敷設する以外の方法を包含するものであるが、本件明細書には、上記順序に敷設する以外の方法で上記課題の一つを解決できるか、当業者が把握できるように記載されていないから、本件発明1~3、5、7、8について、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえず、また、本件発明1~3、5、7、8は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものとはいえないと主張する。
イ しかしながら、本件明細書には、「炉壁に沿って敷き層を敷設して、炉壁の内側を平らにし、耐火繊維一体型モジュールが平らな平面に取り付けられることを保証することで、耐火繊維一体型モジュールが脱落するリスクを低減させる。」(【0017】)ことが記載されており、当該記載を含む本件明細書の記載(【0008】、【0017】、【0028】)によれば、炉壁に沿って耐火繊維ブランケットとナノプレートとを含む敷き層を敷設することで、炉壁の内側を平らにすることができ、それにより、耐火繊維一体型モジュールを平らな平面に取り付けることができるため、耐火繊維一体型モジュールの施工不良による脱落のリスクを低減できることが理解できる。
すなわち、本件明細書には、上記アの順序に敷設する以外の方法でも上記アの課題の一つを解決できることが、当業者が把握できるように記載されているといえる。また、実際に、上記アの順序に敷設する以外の方法によっては上記アの課題の一つを解決できないことを示す具体的な根拠は見当たらない。
よって、申立人の主張は、前提を欠くものであり、採用できない。
(2)したがって、申立理由3(実施可能要件)(うち、敷き層の敷設順序に関するもの)、申立理由4(サポート要件)(うち、敷き層の敷設順序に関するもの)によっては、本件特許の請求項1~3、5、7、8に係る特許を取り消すことはできない。
4 申立理由1-1(進歩性)
(1)甲1に記載された発明
ア 甲1には、以下の記載がある。なお、訳文は当審で作成した。
[図:0001421356000001.jpg]
(本発明は繊維モジュールの取り付け技術分野に関し、特に加熱炉ライナーの大面積に耐火繊維モジュールを使用する取り付け方法に関する。)
[図:0001421356000002.jpg]
(本発明が提供する大面積耐火繊維モジュールの取り付け方法は、主に金属ガイド筒10、繊維モジュール取り付けレンチ11、モジュール取り付けガイドプレート13、押圧板14、U字型ピン15で構成される繊維モジュール取り付け装置を用いて大面積耐火繊維モジュールを取り付ける方法であり、図1~図15に示すとおり、該方法は以下のとおりである:
第一ステップは、施工準備である。:金属ガイド筒10、繊維モジュール取り付けレンチ11、モジュール取り付けガイドプレート13、押圧板14、U字型ピン15を含む必要な補助ツールを準備し、ハウジング1の鋼板に錆、塗料及び油汚れがある場合に処理する必要がある。)
[図:0001421356000003.jpg]
(第二ステップは、マーキングを測定することである。:工事図面において決定された開始点に基づいて対応する寸法のマーキングを測定し、且つ異なる点からアンカーボルト2の位置を照合し、マーキングが正確であることを確保する。)
[図:0001421356000004.jpg]
(第三ステップは、アンカーボルト2を溶接することである。:アンカーボルト2はハウジング1の鋼板に対して垂直になるようにし、溶接前にまずプラスチックスリーブ6でアンカーボルト2のねじ込み部分を封止し、アンカーボルト2の材質はステンレス鋼であり、アーク溶接機を選択して手動低電流溶接を行い、電気溶接棒はステンレス鋼溶接棒を選択する;この方法は柔軟性が高く、検査しやすく、溶接過程においてスポット溶接速度が速く、スラグの挟み込み、気孔、溶接不良現象が発生せず、一定数のアンカーボルト2を溶接した後にハンマーで叩き、溶接効果をサンプリングし、同時に溶接スラグを除去する。)
[図:0001421356000005.jpg]
(第四ステップは、敷物3を敷設することである。:まず敷物3をカッターで必要な大きさに切断する;側部敷物3の敷設はハウジング1の底端から上端まで敷設すべきであり、敷設時にまずハウジング1の側面鋼板に一層の耐火セメント又は粘土を塗布して敷物3の敷設が平坦であることを保証する;ハウジング1の頂部の敷物3はハウジング1の頂部の中心線両側からハウジング1の中央に敷設すべきであり、敷設時に敷物3をアンカーボルト2に貫通させ、編組ベルト7で網状に結束し、重力作用で垂れ下がることを防止し、且つ各隣接する両側の敷物3の継ぎ目8がずれて緊密に押圧すべきであることに注意する。)
[図:0001421356000006.jpg]
(第五ステップは、繊維モジュール4を取り付けることである。:ステップ1、まず金属ガイド筒10を繊維モジュール4に内蔵されたPVCガイド筒9内に挿入する;ステップ2、次に対応する繊維モジュール4を持ち上げ、金属ガイド筒10がアンカーボルト3と位置合わせされて挿入されていることを確認しながら、繊維モジュール4を所定の位置に押し込む;ステップ3、アンカーボルト2の適合するナット12を繊維モジュール取り付けレンチ11に入れ、繊維モジュール取り付けレンチ11を繊維モジュール4に内蔵されたPVCガイド筒9に挿入してナット12を強く締め付け、且つ懐中電灯でナット12とアンカーボルト2との嵌合状況を検査する;ステップ4、完全に締め付けられたことを確認した後、PVCガイド筒9を取り出し、繊維モジュール4を押し出して中間隙間を閉じ、このようにして1つの繊維モジュール4の取り付けを完了する。
繊維モジュール4は一列一列に取り付けられ、ハウジング1の頂部の取り付けは両端から中央まで施工すべきであり、最後の繊維モジュール4はモジュール取り付けガイドプレート13を利用してそれを送り込んで固定し、各列の繊維モジュール4の取り付けが完了した後に包装テープを切断して取り外し、同時に合板を引き出し、各繊維モジュール4の間は自身の予圧力で互いに押圧して緊密にし、最後に平滑な押圧板14で繊維モジュール4を叩くことでそれを平らにする。)
[図:0001421356000007.jpg]
(第六ステップは、補償ブランケット5を充填することである。:単列繊維モジュール4をハウジング1の側面鋼板に垂直に敷設する場合、上層繊維モジュール4を敷設する前にまず補償ブランケット5を下層繊維モジュール4に敷設し、次に繊維モジュール4を敷設し且つ圧着し、一列が一定の長さに敷設されると、この列の繊維モジュール4の上部に補償ブランケット5を敷設し且つ圧着することができ、このように施工してフロー型作業を形成する;ハウジング1の頂部に補償ブランケット5が充填され、仰向けに敷設されているため、圧着しにくく、重力作用により落下しやすく、補償ブランケット5を敷設する時にU字型ピン15でそれを繊維モジュール4に貫通して固定することができ、間隔は600mm程度である。)
[図:0001421356000008.jpg]
(第七ステップは、検査調整である。:ハウジング1全体の平面に繊維モジュール4を取り付けた後、取り付け品質を検査し、隙間を充填し、さらに平滑な押圧板14で叩く必要があり、繊維モジュール4全体のライニングの平坦度が設計要件に達するようにする。)
[図:0001421356000009.jpg]
(応用効果:大面積耐火繊維モジュールを取り付けて本発明の方法を採用した後、オーブンおよび生産過程においてモジュールとモジュールとの間に明らかな隙間が現れず、分離、脱落、火炎現象の発生がなく、省エネ環境保護の効果に達し、同時に加熱炉の耐用年数を延長し、本発明の方法を説明する効果が著しい。)
[図:0001421356000010.jpg]
[図:0001421356000011.jpg]
[図:0001421356000012.jpg]
[図:0001421356000013.jpg]
[図:0001421356000014.jpg]
[図:0001421356000015.jpg]
[図:0001421356000016.jpg]
[図:0001421356000017.jpg]
イ 甲1の上記アの記載によれば、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「大面積耐火繊維モジュールの取り付け方法であって、
施工準備を行う第一ステップであって、金属ガイド筒10、繊維モジュール取り付けレンチ11、モジュール取り付けガイドプレート13、押圧板14、U字型ピン15を含む必要な補助ツールを準備し、ハウジング1の鋼板に錆、塗料及び油汚れがある場合に処理する、第一ステップと、
アンカーボルト2の位置を示すマーキングを測定する第二ステップと、
ハウジング1の鋼板に対して垂直になるようにアンカーボルト2を溶接する第三ステップと、
敷物3をアンカーボルト2に貫通させて敷設する第四ステップと、
繊維モジュール4を取り付ける第五ステップであって、
ステップ1として、まず金属ガイド筒10を繊維モジュール4に内蔵されたPVCガイド筒9内に挿入し、
ステップ2として、次に対応する繊維モジュール4を持ち上げ、金属ガイド筒10がアンカーボルト3と位置合わせされて挿入されていることを確認しながら、繊維モジュール4を所定の位置に押し込み、
ステップ3として、アンカーボルト2の適合するナット12を繊維モジュール取り付けレンチ11に入れ、繊維モジュール取り付けレンチ11を繊維モジュール4に内蔵されたPVCガイド筒9に挿入してナット12を強く締め付け、且つ懐中電灯でナット12とアンカーボルト2との嵌合状況を検査し、
ステップ4として、完全に締め付けられたことを確認した後、PVCガイド筒9を取り出し、繊維モジュール4を押し出して中間隙間を閉じ、このようにして1つの繊維モジュール4の取り付けを完了し、
繊維モジュール4は一列一列に取り付けられる、第五ステップと、
補償ブランケット5を充填する第六ステップであって、単列繊維モジュール4をハウジング1の側面鋼板に垂直に敷設する場合、上層繊維モジュール4を敷設する前にまず補償ブランケット5を下層繊維モジュール4に敷設し、次に繊維モジュール4を敷設し且つ圧着し、一列が一定の長さに敷設されると、この列の繊維モジュール4の上部に補償ブランケット5を敷設し且つ圧着する、第六ステップと、
検査調整を行う第七ステップであって、ハウジング1全体の平面に繊維モジュール4を取り付けた後、取り付け品質を検査し、隙間を充填し、さらに平滑な押圧板14で叩いて、繊維モジュール4全体のライニングの平坦度が設計要件に達するようにする、第七ステップと、
を含む、大面積耐火繊維モジュールの取り付け方法。」(以下、「甲1発明」という。)
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明における「ハウジング1の鋼板」、「アンカーボルト2」、「補償ブランケット5」は、それぞれ、本件発明1における「炉壁」、「アンカー」、「補償ストリップ」に相当する。
(イ)甲1発明における「敷物3」は、甲1の図6、8によれば、層状であるから、本件発明1における「敷き層」に相当する。
(ウ)甲1発明において、「金属ガイド筒10、繊維モジュール取り付けレンチ11、モジュール取り付けガイドプレート13、押圧板14、U字型ピン15を含む必要な補助ツールを準備し、ハウジング1の鋼板に錆、塗料及び油汚れがある場合に処理する」という「施工準備を行う」ことは、本件明細書の記載(【0024】)を踏まえると、本件発明1において、「施工前処理を行う」ことに相当する。
(エ)甲1発明において、「施工準備を行」った後、「ハウジング1の鋼板に対して垂直になるようにアンカーボルト2を溶接する」ことは、上記(ア)、(ウ)を踏まえると、本件発明1において、「(施工)前処理が完了した後に炉壁にアンカーを溶接する」ことに相当する。
(オ)甲1発明は、「敷物3をアンカーボルト2に貫通させて敷設する」ものであるが、甲1の図5、6によれば、敷物3はハウジング1の鋼板に沿って敷設されるといえる。
そうすると、甲1発明において、「敷物3をアンカーボルト2に貫通させて敷設する」ことと、本件発明1において、「前記炉壁に沿って耐火繊維ブランケットとナノプレートとを含む敷き層を敷設する」こととは、上記(ア)、(イ)を踏まえると、「前記炉壁に沿って敷き層を敷設する」限りで共通する。
(カ)甲1の図5~13も考慮すると、甲1発明は、「繊維モジュール4を取り付ける第五ステップ」において、「アンカーボルト2」を用いて「繊維モジュール4」を「敷物3」の上に「固定」していることは明らかである。
一方、本件発明1における「熱面」は、「火炉内側に向かう面」(本件明細書【0026】)を意味するものである。
そうすると、甲1発明における「耐火繊維モジュール」である「繊維モジュール4」は、本件発明1における「耐火繊維一体型モジュール」に相当する。そして、甲1発明において、「アンカーボルト2」を用いて「繊維モジュール4」を「敷物3」の上に「固定」していることは、上記(ア)、(イ)を踏まえると、本件発明1において、「前記アンカーによって耐火繊維一体型モジュールを敷き層の熱面に固定し」ていることに相当する。
(キ)甲1の図14、15も考慮すると、甲1発明は、「繊維モジュール4を取り付ける第五ステップ」において、「繊維モジュール4は一列一列に取り付けられ」た後、「補償ブランケット5を充填する第六ステップ」において、「補償ブランケット5」を用いて「下層繊維モジュール4」と「上層繊維モジュール4」との間を「充填」していることは明らかである。
そうすると、甲1発明において、「繊維モジュール4は一列一列に取り付けられ」た後、「補償ブランケット5」を用いて「下層繊維モジュール4」と「上層繊維モジュール4」との間を「充填」していることは、上記(ア)、(イ)、(カ)を踏まえると、本件発明1において、「補償ストリップを用いて前記耐火繊維一体型モジュールの間に予備された隙間を充填」していることに相当する。
(ク)甲1発明は、「ハウジング1全体の平面に繊維モジュール4を取り付け」るものであるが、甲1の図14、15によれば、繊維モジュール4からなる層が形成されるといえる。
そうすると、甲1発明において、「ハウジング1全体の平面に繊維モジュール4を取り付けた」ことは、上記(ア)、(イ)、(カ)、(キ)を踏まえると、本件発明1において、「耐火繊維プレキャスト層を形成する」ことに相当する。
(ケ)甲1発明の「検査調整を行う第七ステップ」において、「ハウジング1全体の平面に繊維モジュール4を取り付けた後、取り付け品質を検査し、隙間を充填」することは、「取り付け品質を検査し」た上で、「隙間を充填」するものである以上、当該「隙間」は「充填」しなければならないほどに幅が大きいことは明らかであるから、上記(ク)を踏まえると、本件発明1において、「前記耐火繊維プレキャスト層を検査し、幅が所定の幅より大きいスリットを補修する」ことに相当する。
(コ)以上によれば、本件発明1と甲1発明とは、
「耐火繊維一体型モジュールの取り付け方法であって、
施工前処理を行うことであって、前処理が完了した後に炉壁にアンカーを溶接することと、
前記炉壁に沿って敷き層を敷設することと、
耐火繊維プレキャスト層を形成するように、前記アンカーによって耐火繊維一体型モジュールを敷き層の熱面に固定し、さらに補償ストリップを用いて前記耐火繊維一体型モジュールの間に予備された隙間を充填することと、
前記耐火繊維プレキャスト層を検査し、幅が所定の幅より大きいスリットを補修することと、
を含む取り付け方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点1-1
耐火繊維一体型モジュールを固定するための敷き層が、本件発明1では、「耐火繊維ブランケットとナノプレートとを含む」ものであるのに対して、甲1発明では、「耐火繊維ブランケットとナノプレートとを含む」ものであるかどうか不明である点。
イ 相違点1-1の検討
(ア)甲1には、甲1発明の敷物3が具体的にどのようなものであるのかについては、何ら記載されていない。また、甲1発明の敷物3が「耐火繊維ブランケットとナノプレートとを含む」ものであることが技術常識であるともいえない。
以上のとおり、甲1には、繊維モジュール4を固定するための敷物3として、「耐火繊維ブランケットとナノプレートとを含む」ものが記載されているとはいえない。
そうすると、甲1の記載に基づいて、甲1発明において、繊維モジュール4を固定するための敷物3を「耐火繊維ブランケットとナノプレートとを含む」ものとすることが動機付けられるとはいえない。
(イ)甲2には、保温効果を向上させる構造を有する蓄熱式焼却炉について記載されている([0001])ところ、その保温構造を構成する保温層として、サーマルブランケット15、ナノプレート16及びセラミック繊維モジュール17によって順次接続された保温層5が記載されている(請求項1、図1、3)。
しかしながら、上記保温層5は、蓄熱式焼却炉における単なる保温層にすぎず(上記セラミック繊維モジュール17が具体的にどのようなものであるのかも不明である。)、耐火繊維一体型モジュールを固定するための敷き層であるとはいえない。
以上のとおり、甲2には、耐火繊維一体型モジュールを固定するための敷き層として、「耐火繊維ブランケットとナノプレートとを含む」ものが記載されているとはいえない。
また、甲1発明は、加熱炉を前提とするもの([0001]、[0059])と解されるから、蓄熱式焼却炉を前提とする甲2の上記記載とは、技術分野が異なるものである。
そうすると、いずれにしろ、甲2の記載に基づいて、甲1発明において、繊維モジュール4を固定するための敷物3を「耐火繊維ブランケットとナノプレートとを含む」ものとすることが動機付けられるとはいえない。
(ウ)甲6は、「セラミックファイバと断熱施工」と題する文献である。
a 甲6には、炉壁に対するセラミックファイバライニングには、ペーパーライニング、スタックライニング、ブロックライニングなどの各種の施工法があることが記載され(63~64、76頁)、その一つであるペーパーライニングによってセラミックファイバを炉壁に施工することについて記載されている(129~133頁)ところ、そのペーパーライニングにおけるセラミックファイバの取り付けについて、ケーシング(炉壁)側からスラグウール又は断熱ボード、セラミックファイバなどを順に積層することが記載されている(131頁、図6.1)。
しかしながら、上記のスラグウール又は断熱ボード、セラミックファイバなどを順に積層したものは、ペーパーライニングによる炉壁構造そのものであり、耐火繊維一体型モジュールを固定するための敷き層であるとはいえない。また、上記断熱ボードが「ナノプレート」かどうかも不明である。
b 甲6には、ブロックライニングの例として、ケーシング(炉壁)とブロックとの間にセラミックファイバのブランケット層を設けたものが記載されている(141頁、図6.9)。上記セラミックファイバのブランケット層は、耐火繊維一体型モジュール(ブロック)を固定するための「耐火繊維ブランケット」を含む敷き層と解する余地はあるものの、「ナノプレート」を含むものではない。
c 甲6には、セラミックファイバライニングにおいて、ブランケットが存在することが記載されているが(118~121頁、表5.7(a)~(d))、その詳細は不明であり、少なくとも、上記ブランケットが「耐火繊維ブランケットとナノプレートとを含む」ものかどうかは不明である。
d 以上のとおり、甲6には、耐火繊維一体型モジュールを固定するための敷き層として、「耐火繊維ブランケットとナノプレートとを含む」ものが記載されているとはいえない。
また、甲1発明は、アンカーボルト2を用いて繊維モジュール4を敷物3の上に固定するものであって、ブロックライニングを前提とするものと解されるから、(ブロックライニングを前提とする甲6の上記bの記載はともかく、)ペーパーライニングを前提とする甲6の上記aの記載とは施工法が異なるものであり、また、その詳細が不明な上記cの記載とは施工法の異同が不明である。
そうすると、いずれにしろ、甲6の記載に基づいて、甲1発明において、繊維モジュール4を固定するための敷物3を「耐火繊維ブランケットとナノプレートとを含む」ものとすることが動機付けられるとはいえない。
(エ)甲11、12には、単に「ナノプレート」について言及があるだけであり、耐火繊維一体型モジュールを固定するための敷き層については、何ら記載されていない。
以上のとおり、甲11、12には、耐火繊維一体型モジュールを固定するための敷き層として、「耐火繊維ブランケットとナノプレートとを含む」ものが記載されているとはいえない。
そうすると、甲11、12の記載に基づいて、甲1発明において、繊維モジュール4を固定するための敷物3を「耐火繊維ブランケットとナノプレートとを含む」ものとすることが動機付けられるとはいえない。
(オ)甲3~5、7、8、13には、耐火繊維一体型モジュールを固定するための敷き層として、「耐火繊維ブランケットとナノプレートとを含む」ものが記載されているとはいえない。
そうすると、甲3~5、7、8、13の記載に基づいて、甲1発明において、繊維モジュール4を固定するための敷物3を「耐火繊維ブランケットとナノプレートとを含む」ものとすることが動機付けられるとはいえない。
(カ)以上によれば、甲1発明において、繊維モジュール4を固定するための敷物3を「耐火繊維ブランケットとナノプレートとを含む」ものとすることは、当業者が容易に想到することができたとはいえない。
ウ 小括
したがって、本件発明1は、甲1に記載された発明並びに甲1~8及び11~13に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件発明2、3、5、7、8について
本件発明2、3、5、7、8は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであるが、上記(2)で述べたとおり、本件発明1が、甲1に記載された発明並びに甲1~8及び11~13に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明2、3、5、7、8についても同様に、甲1に記載された発明並びに甲1~8及び11~13に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)まとめ
以上のとおり、本件発明1~3、5、7、8は、甲1に記載された発明並びに甲1~8及び11~13に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、申立理由1-1(進歩性)によっては、本件特許の請求項1~3、5、7、8に係る特許を取り消すことはできない。
5 申立理由1-2(進歩性)
(1)甲6に記載された発明
ア 甲6には、以下の記載がある。
[図:0001421356000018.jpg]
(以上、76頁)
[図:0001421356000019.jpg]
(以上、77頁)
[図:0001421356000020.jpg]
(以上、78頁)
[図:0001421356000021.jpg]
(以上、79頁)
イ 甲6の上記アの記載によれば、特に、76頁の記載と、B社ブロックライニングのうち支持金具を埋め込んだ内止めタイプのブロックの形態とその取り付け方式(78~79頁、図3.13(b)、表3.5)に着目すると、甲6には、以下の発明が記載されていると認められる。
「セラミックファイバブランケットを短冊状に切断し、積層圧縮しながら縫製した、支持金具を埋め込んだ内止めタイプのブロックをケーシングに取り付ける方法であって、
鉄皮に溶接したスタッドボルトに上記ブロックを押し込み、ナット締めする、方法。」(以下、「甲6発明」という。)
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲6発明とを対比する。
(ア)甲6発明における「ケーシング」及び「鉄皮」、「スタッドボルト」は、それぞれ、本件発明1における「炉壁」、「アンカー」に相当する。
(イ)甲6発明における「鉄皮に溶接したスタッドボルト」は、あらかじめ鉄皮にスタッドボルトを溶接していることは明らかであり、甲6発明は「鉄皮に」「スタッドボルト」を「溶接」することを含むものといえる。
そうすると、甲6発明において、「鉄皮に」「スタッドボルト」を「溶接」することは、上記(ア)を踏まえると、本件発明1において、「炉壁にアンカーを溶接する」ことに相当する。
(ウ)甲6の図3.13(b)のB社ブロックライニングの打ち止めタイプの図も考慮すると、甲6発明は、「スタッドボルト」を用いて「セラミックファイバブランケットを短冊状に切断し、積層圧縮しながら縫製した、支持金具を埋め込んだ内止めタイプのブロック」を「ケーシングに取り付け」ていることは明らかである。
また、上記「ブロック」は炉壁構造を構成するものであるから、上記「ブロック」を構成するセラミックファイバは、技術常識に照らして、少なからず耐火性を有していることも明らかである。
そうすると、甲6発明における「セラミックファイバブランケットを短冊状に切断し、積層圧縮しながら縫製した、支持金具を埋め込んだ内止めタイプのブロック」は、本件発明1における「耐火繊維一体型モジュール」に相当する。そして、甲6発明において、「スタッドボルト」を用いて「セラミックファイバブランケットを短冊状に切断し、積層圧縮しながら縫製した、支持金具を埋め込んだ内止めタイプのブロック」を「ケーシングに取り付け」ることと、本件発明1において、「前記アンカーによって耐火繊維一体型モジュールを敷き層の熱面に固定」することとは、上記(ア)を踏まえると、「前記アンカーによって耐火繊維一体型モジュールを固定」する限りで共通する。
(エ)以上によれば、本件発明1と甲6発明とは、
「耐火繊維一体型モジュールの取り付け方法であって、
炉壁にアンカーを溶接することと、
前記アンカーによって耐火繊維一体型モジュールを固定することと、
を含む取り付け方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点6-1
アンカーの溶接について、本件発明1では、まず「施工前処理を行」い、その「(施工)前処理が完了した後に」溶接するのに対して、甲6発明では、まず「施工前処理を行」うかどうか不明であり、その「(施工)前処理が完了した後に」溶接するかどうか不明である点。
・相違点6-2
耐火繊維一体型モジュールの固定について、本件発明1では、まず「前記炉壁に沿って耐火繊維ブランケットとナノプレートとを含む敷き層を敷設」し、その「敷き層の熱面に」固定するのに対して、甲6発明では、まず「前記炉壁に沿って耐火繊維ブランケットとナノプレートとを含む敷き層を敷設」するかどうか不明であり、その「敷き層の熱面に」固定するかどうか不明である点。
・相違点6-3
アンカーによって耐火繊維一体型モジュールを固定することに加えて、本件発明1では、「さらに補償ストリップを用いて前記耐火繊維一体型モジュールの間に予備された隙間を充填する」ことで、「耐火繊維プレキャスト層を形成する」のに対して、甲6発明では、「さらに補償ストリップを用いて前記耐火繊維一体型モジュールの間に予備された隙間を充填する」かどうか不明であり、「耐火繊維プレキャスト層を形成する」かどうか不明である点。
・相違点6-4
本件発明1では、「前記耐火繊維プレキャスト層を検査し、幅が所定の幅より大きいスリットを補修する」のに対して、甲6発明では、「前記耐火繊維プレキャスト層を検査し、幅が所定の幅より大きいスリットを補修する」かどうか不明である点。
イ 相違点6-2の検討
事案に鑑み、相違点6-2について検討する。
(ア)甲6には、上記4(2)イ(ウ)dのとおり、耐火繊維一体型モジュールを固定するための敷き層として、「耐火繊維ブランケットとナノプレートとを含む」ものが記載されているとはいえないから、まず「前記炉壁に沿って耐火繊維ブランケットとナノプレートとを含む敷き層を敷設」し、その「敷き層の熱面に」耐火繊維一体型モジュールを固定することも記載されているとはいえない。
また、甲6発明はブロックライニングを前提とするものであるから、(ブロックライニングを前提とする上記4(2)イ(ウ)bの記載はともかく、)ペーパーライニングを前提とする上記4(2)イ(ウ)aの記載とは施工法が異なるものであり、また、その詳細が不明な上記4(2)イ(ウ)cの記載とは施工法の異同が不明である。
そうすると、いずれにしろ、甲6の記載に基づいて、甲6発明において、まずケーシング「に沿って耐火繊維ブランケットとナノプレートとを含む敷き層を敷設」し、その「敷き層の熱面に」ブロックを取り付けることが動機付けられるとはいえない。
(イ)甲1~5、7、8、11~13には、上記4(2)イ(ア)、(イ)、(エ)、(オ)のとおり、耐火繊維一体型モジュールを固定するための敷き層として、「耐火繊維ブランケットとナノプレートとを含む」ものが記載されているとはいえないから、まず「前記炉壁に沿って耐火繊維ブランケットとナノプレートとを含む敷き層を敷設」し、その「敷き層の熱面に」耐火繊維一体型モジュールを固定することも記載されているとはいえない。
そうすると、甲1~5、7、8、11~13の記載に基づいて、甲6発明において、まずケーシング「に沿って耐火繊維ブランケットとナノプレートとを含む敷き層を敷設」し、その「敷き層の熱面に」ブロックを取り付けることが動機付けられるとはいえない。
(ウ)以上によれば、甲6発明において、まずケーシング「に沿って耐火繊維ブランケットとナノプレートとを含む敷き層を敷設」し、その「敷き層の熱面に」ブロックを取り付けることは、当業者が容易に想到することができたとはいえない。
ウ 小括
したがって、相違点6-1、6-3、6-4について検討するまでもなく、本件発明1は、甲6に記載された発明並びに甲1~8及び11~13に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件発明2、3、5、7、8について
本件発明2、3、5、7、8は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであるが、上記(2)で述べたとおり、本件発明1が、甲6に記載された発明並びに甲1~8及び11~13に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明2、3、5、7、8についても同様に、甲6に記載された発明並びに甲1~8及び11~13に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)まとめ
以上のとおり、本件発明1~3、5、7、8は、甲6に記載された発明並びに甲1~8及び11~13に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、申立理由1-2(進歩性)によっては、本件特許の請求項1~3、5、7、8に係る特許を取り消すことはできない。
第5 むすび
以上のとおり、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-700441