特許異議申立
2022-701163
照明装置
- 審判番号
- 2022-701163
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-080170
- 登録番号
- 7078916
- 請求日
- 2022年11月25日
- 審決日
- 2024年03月28日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】東芝ライテック株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人酒井国際特許事務所
- 【権利者代理人】熊谷 昌俊
- 【権利者代理人】河野 仁志
- 【異議申立人】角田 朗
- 審判長/審判官
- 審判長 筑波 茂樹
- 審判官 一ノ瀬 覚
- 審判官 中村 則夫
- 分類
- P1651.16 -YAA(F21S) / P1651.121-YAA(F21S) / P1651.851-YAA(F21S) / P1651.853-YAA(F21S)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条の2、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7078916号発明「照明装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7078916号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1について訂正することを認める。
特許第7078916号の請求項1に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許7078916号(以下「本件特許」という。)の請求項1に係る特許についての出願は、平成29年9月26日に出願された特願2017-184448号の一部を、令和3年5月11日に新たな特許出願としたものであって、令和4年5月24日にその特許権の設定登録がされ、同年6月1日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許に対して特許異議申立人角田朗(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、その手続の主な経緯は、次のとおりである。
令和4年11月25日 特許異議の申立て
令和5年 3月 2日付け 取消理由通知書
同年 4月24日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 6月 5日 申立人による意見書の提出
同年 9月26日付け 取消理由通知書(決定の予告)
同年11月28日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和6年 1月31日 申立人による意見書の提出
なお、特許法第120条の5第7項の規定により、令和5年4月24日の訂正請求書による訂正は、取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の許否
1 訂正の内容
令和5年11月28日の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1及び明細書について、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1及び訂正明細書に記載されたとおりに訂正するものである(下線は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「長尺状の第1発光部材と;
前記第1発光部材の短手方向に並べて配置され、非常用光源及び前記非常用光源を覆う透光性のレンズ部材を有する第2発光部材と;
前記第1発光部材と前記第2発光部材との間に配置され、前記第1発光部材の長手方向に沿った長さが、前記第2発光部材よりも長く、かつ前記第2発光部材の前記レンズ部材よりも前記第2発光部材の照射方向に突出した不燃性の隔壁と;
を備えたことを特徴とする照明装置。」
とあるのを、
「器具本体に保持されるLEDバーからなる長尺状の第1発光部材と;
前記第1発光部材の短手方向に並べて配置され、非常用光源及び前記非常用光源を覆う透光性のレンズ部材を有する第2発光部材と;
前記第1発光部材と前記第2発光部材との間に配置され、前記第1発光部材の長手方向に沿った長さが、前記第2発光部材よりも長く、かつ前記第1発光部材および前記第2発光部材の前記レンズ部材よりも前記第2発光部材の照射方向に突出した不燃性の隔壁と;
を備えたことを特徴とする照明装置。」
に訂正する。
(2)訂正事項2
明細書の段落【0009】に
「本願の開示する照明装置の一つの態様において、長尺状の第1発光部材と、第1発光部材の短手方向に並べて配置され、非常用光源及び非常用光源を覆う透光性のレンズ部材を有する第2発光部材と、第1発光部材と第2発光部材との間に配置され、第1発光部材の長手方向に沿った長さが、第2発光部材よりも長く、かつ第2発光部材の前記レンズ部材よりも第2発光部材の照射方向に突出した不燃性の隔壁とを備える。」
とあるのを、
「本願の開示する照明装置の一つの態様において、器具本体に保持されるLEDバーからなる長尺状の第1発光部材と、第1発光部材の短手方向に並べて配置され、非常用光源及び非常用光源を覆う透光性のレンズ部材を有する第2発光部材と、第1発光部材と第2発光部材との間に配置され、第1発光部材の長手方向に沿った長さが、第2発光部材よりも長く、かつ前記第1発光部材および第2発光部材の前記レンズ部材よりも第2発光部材の照射方向に突出した不燃性の隔壁とを備える。」
に訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載されていた「長尺状の第1発光部材」について、どのような発光部材であるのか特定がなかったのを、「器具本体に保持されるLEDバーからなる」との限定を付与し、また、「不燃性の隔壁」について、第2発光部材の照射方向における、第1発光部材との位置関係の特定がなかったのを、「第1発光部材」よりも「第2発光部材の照射方向に突出した」との限定を付与するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、「長尺状の第1発光部材」については、本件明細書の段落【0019】に「本実施形態の照明装置100の照明器具1は、図1に示すように、長尺状の常用点灯用光源としての直管形のLEDバー3と、LEDバー3を保持する筐体4とを備える。」と記載され、「不燃性の隔壁」については、第1発光部材よりも第2発光部材の照射方向に突出していることが、図4に示されていることから、訂正事項1は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2
訂正事項2は、訂正事項1による訂正に伴い、明細書の段落【0009】の記載を整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
3 小括
したがって、本件訂正の訂正事項1、2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲の記載のとおり、訂正後の請求項1について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
以上のとおり、本件訂正が認められたから、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、上記第2の1(1)の訂正後のとおりのものである。
第4 取消理由(決定の予告)の概要
当審が令和5年9月26日付け取消理由通知書(決定の予告)で特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(拡大先願)本件特許の下記の請求項に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「先願明細書等」という。)に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、当該請求項に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
記
・請求項1に対して
特願2017-83301号(特開2018-181743号)
(申立人が提出した甲第1号証。以下、申立人が提出した証拠は甲〇というように略記する。)
第5 先願明細書等
1 認定事項
先願明細書等の【図1】、【図4】より、常用光源ユニット20のLEDカバー24は、常用光源ユニット20と非常用光源ユニット30の間に位置する化粧カバー38の側壁よりも、非常用LEDモジュール32の照射方向に突出し、かつ、当該化粧カバー38の側壁は、レンズ341を形成したレンズカバー34よりも、非常用LEDモジュール32の照射方向に突出していることが看取できる。
2 先願発明
上記1と先願明細書等の記載より、先願明細書等には以下の発明(以下「先願発明」という。)が記載されているものと認める。なお、()内に主な参照箇所を示す。
「長尺で矩形板状に形成された常用光源基板23、常用光源基板23に実装された常用LEDモジュール22、常用LEDモジュール22を覆うように取り付けられるLEDカバー24を含む常用光源ユニット20と(【0015】)、
箱形形状である収納ボックス31と、不燃性の鋼板で収納ボックス31の上面側を除く面を覆う略箱形状である化粧カバー38と(【0018】、【0023】)、
非常用光源基板33、非常用光源基板33に複数個実装された非常用LEDモジュール32、非常用LEDモジュール32を個々に覆うようにレンズ341を形成したレンズカバー34、及び非常用制御基板36を含み、それらを収納ボックス31に収納した非常用光源ユニット30とを備え(【0016】~【0022】)、
常用光源ユニット20は照明装置本体10に着脱可能であり(【0012】)、
非常用光源ユニット30は、常用光源ユニット20の長手に対し並列に配置され(【0008】)、
常用光源ユニット20のLEDカバー24は、常用光源ユニット20と非常用光源ユニット30の間に位置する化粧カバー38の側壁よりも、非常用LEDモジュール32の照射方向に突出し、かつ、当該化粧カバー38の側壁は、レンズ341を形成したレンズカバー34よりも、非常用LEDモジュール32の照射方向に突出している(上記1の認定事項)、照明器具100。」
第6 当審の判断
1 対比
本件発明と先願発明とを対比する。
・後者の「照明装置本体10」は、前者の「器具本体」に相当する。
・後者の「常用光源ユニット20」は、前者の「第1発光部材」に相当する。
・後者の「非常用光源基板33」と「非常用光源基板33に複数個実装された非常用LEDモジュール32」は、前者の「非常用光源」に相当する。
・後者の「レンズ341を形成したレンズカバー34」は、前者の「レンズ部材」に相当する。
・後者の「非常用光源ユニット30」の「収納ボックス31」に収納される、「非常用光源基板33」、「非常用LEDモジュール32」、「レンズ341を形成したレンズカバー34」、「非常用制御基板36」を含むものは、発光に係る部材といえるから、前者の「第2発光部材」に相当する。
・後者の「照明器具100」は、前者の「照明装置」に相当する。
以上の相当関係を踏まえると、以下のことがいえる。
・後者の「常用光源ユニット20」は「長尺で矩形板状に形成された常用光源基板23」を含むものであるから、「長尺状」であり、また、「バー」の形状をなすことは明らかである。
そうすると、「長尺で矩形板状に形成された常用光源基板23、常用光源基板23に実装された常用LEDモジュール22、常用LEDモジュール22を覆うように取り付けられるLEDカバー24を含む常用光源ユニット20と」を備え、「常用光源ユニット20は照明装置本体10に着脱可能であ」ることは、前者の「器具本体に保持されるLEDバーからなる長尺状の第1発光部材と;」を備えたことに相当する。
・後者の「レンズ341を形成したレンズカバー34」は、透光性を有することは明らかである。
そうすると、後者の「非常用光源基板33、非常用光源基板33に複数個実装された非常用LEDモジュール32、非常用LEDモジュール32を個々に覆うようにレンズ341を形成したレンズカバー34、及び非常用制御基板36を含み、それらを収納ボックス31に収納した非常用光源ユニット30とを備え、非常用光源ユニット30は、常用光源ユニット20の長手に対し並列に配置され」ることは、前者の「前記第1発光部材の短手方向に並べて配置され、非常用光源及び前記非常用光源を覆う透光性のレンズ部材を有する第2発光部材と;」を備えたことに相当する。
・後者の「常用光源ユニット20と非常用光源ユニット30の間に位置する化粧カバー38の側壁」の、「常用光源基板23」の長手方向に沿った長さは、「非常用光源ユニット30」の「収納ボックス31」に収納される、「非常用光源基板33」、「非常用LEDモジュール32」、「レンズ341を形成したレンズカバー34」、「非常用制御基板36」を含むものよりも長いことは明らかである。
そして、後者の当該側壁は、「常用光源ユニット20」と、「非常用光源ユニット30」の「収納ボックス31」に収納される、「非常用光源基板33」、「非常用LEDモジュール32」、「レンズ341を形成したレンズカバー34」、「非常用制御基板36」を含むものとの間に配置されるものであるので、両者の隔壁といえるものである。
そうすると、後者の「不燃性の鋼板で収納ボックス31の上面側を除く面を覆う略箱形状である化粧カバー38とを備え、」「常用光源ユニット20のLEDカバー24は、常用光源ユニット20と非常用光源ユニット30の間に位置する化粧カバー38の側壁よりも、非常用LEDモジュール32の照射方向に突出し、かつ、当該化粧カバー38の側壁は、レンズ341を形成したレンズカバー34よりも、非常用LEDモジュール32の照射方向に突出している」ことと、前者の「前記第1発光部材と前記第2発光部材との間に配置され、前記第1発光部材の長手方向に沿った長さが、前記第2発光部材よりも長く、かつ前記第1発光部材および前記第2発光部材の前記レンズ部材よりも前記第2発光部材の照射方向に突出した不燃性の隔壁と;」を備えたこととは、「前記第1発光部材と前記第2発光部材との間に配置され、前記第1発光部材の長手方向に沿った長さが、前記第2発光部材よりも長く、かつ前記第2発光部材の前記レンズ部材よりも前記第2発光部材の照射方向に突出した不燃性の隔壁と;」を備えたことで共通する。
したがって、本件発明と先願発明との一致点、相違点は次のとおりと認める。
〔一致点1〕
「器具本体に保持されるLEDバーからなる長尺状の第1発光部材と;
前記第1発光部材の短手方向に並べて配置され、非常用光源及び前記非常用光源を覆う透光性のレンズ部材を有する第2発光部材と;
前記第1発光部材と前記第2発光部材との間に配置され、前記第1発光部材の長手方向に沿った長さが、前記第2発光部材よりも長く、かつ前記第2発光部材の前記レンズ部材よりも前記第2発光部材の照射方向に突出した不燃性の隔壁と;
を備えた照明装置。」
〔相違点1〕
不燃性の隔壁について、本件発明が「第1発光部材」「よりも前記第2発光部材の照射方向に突出した」という事項を有するのに対し、先願発明は、「常用光源ユニット20のLEDカバー24は、常用光源ユニット20と非常用光源ユニット30の間に位置する化粧カバー38の側壁よりも、非常用LEDモジュール32の照射方向に突出し」ている、すなわち、「常用光源ユニット20」(第1発光部材)の方が、「化粧カバー38の側壁」(不燃性の隔壁)よりも突出しており、本件発明とは突出の関係が逆になっている点。
2 判断
本件発明は、上記相違点1に係る本件発明の事項により、「非常灯2は、LEDバー3から見て不燃性の部材である隔壁7により隠されるため、LEDバー3からの延焼を抑制することができる」(段落【0039】)という効果を奏するものである。
しかしながら、先願発明は、突出の関係が逆になっているため、「常用光源ユニット20」を「化粧カバー38の側壁」により隠すことはできないから、上記のような効果を奏するものとはいえない。
したがって、上記相違点1に係る本件発明の事項により、本件発明は新たな効果を奏するものであって、課題解決のための具体化手段における微差とはいえず、本件発明と先願発明は実質同一ではない。
3 申立人の主張について
申立人は、令和6年1月31日の意見書2~3ページの「・追加変更点1について」において、参考資料1(特開2014-22187号公報)及び参考資料2(特開2014-96505号公報)を示して、LED(モジュール)と基板とからなる部材を「LEDバー」と称することは、極一般的なことであり、甲1の「常用光源基板23」と「常用LEDモジュール22」を合わせたものが、本件発明の「長尺状の第1発光部材」に相当し、同様に「常用光源基板23」が「バー」に相当するから、本件発明と先願発明との間に相違点はない旨を主張する。
しかしながら、本件発明において、「LEDバー」とは、カバーも含めた常用光源全体を示すものであることは、本件明細書の段落【0006】~【0008】に記載の課題や段落【0019】のLEDバーの記載や各図面の記載からも明らかである。
また、申立人が示す参考資料1、2に記載される「LEDバー」は、画像表示装置のバックライトの導光板に光を照射するためのものであり、本件発明や先願発明のような「非常用光源」を有する照明装置とは、技術分野が異なるものであるから、当該参考資料を根拠に、本件発明の「LEDバー」を解釈することは適当でないし、ほかに、カバーを有する常用光源において、カバー内に配置される光源基板とLEDモジュールとからなるものを「LEDバー」と称することが一般的であるとの証拠も示されていない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
第7 取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立理由
取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立理由は次のとおりである。
(進歩性)本件の請求項1に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
記
甲2:特開2017-92007号公報
甲3:特開2017-50257号公報
2 各証拠の記載事項等
(1)甲2について
ア 認定事項
甲2の段落【0035】、【0037】、図3、4より、傾斜板42bは、LEDバー3の長手方向に沿った長さが、LED非常灯7よりも長く、かつ傾斜板42bの下方端は、LEDバー3の最下部よりも下方に位置し、LED非常灯7のレンズ10の最下部より上方に位置することが認定できる。
イ 甲2発明
上記アと甲2の記載より、甲2には以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているものと認める。なお、()内に主な参照箇所を示す。
「長尺状の常用点灯用光源と、常用電源ユニットと、反射板とを有する常用点灯用の構成部品を備えた常用の第1の照明器具であるLEDバー3と(請求項1、【0017】);
非常用点灯用の非常用光源であるLED非常灯7と、非常用点灯ユニット14と、カバー部材である化粧枠42とを有する非常用点灯用の構成部品を備えた非常用の第2の照明器具2と(請求項1、【0023】、【0024】、【0035】);
前記第1の照明器具であるLEDバー3と前記第2の照明器具2とを前記常用点灯用光源の長手方向と直交する方向に横並び状態で隣接配置する共通の器具本体4と(請求項1、【0021】);
を具備し、
LED非常灯7は、多数のLEDチップを基板に直接実装した構造のチップオンボードであるCOB基板9と、レンズ10を備え(【0023】)、
化粧枠42は、平板状の天板42aと、この天板42aの前端を斜めに屈曲させた傾斜板42bとを有し、天板42aには、LED非常灯7のレンズ10を配置する円孔42a1とを有し(【0037】)、
傾斜板42bは、LEDバー3の長手方向に沿った長さが、LED非常灯7よりも長く、かつ傾斜板42bの下方端は、LEDバー3の最下部よりも下方に位置し、LED非常灯7のレンズ10の最下部より上方に位置する(上記アの認定事項)、
非常灯組み込み形の照明装置100(請求項1、【0015】)。」
(2)甲3について
甲3には次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付加した。
・「【0010】
本実施形態に係る非常用照明器具Xは、図1~図3に示すように第1光源部(常用光源ユニット1)と、2つの第2光源部(非常用光源ユニット2)と、器具本体3と、第2点灯部(非常用電源ユニット4)と、非常用電源(電池ユニット6)とを備える。非常用照明器具Xは、さらに、制御ユニット5と、人検知ユニット7とを備えることが好ましい。」
・「【0025】
非常用光源ユニット2は、非常用LEDモジュール20と、取付台21と、ユニットカバー22とを備える(図2参照)。・・・」
・「【0027】
取付台21は、一対の側壁210と、一対の連結片211と、支持片212と、一対の固定片213と、一対の差込片214とを有する。取付台21は、アルミダイカストによって一体に形成されることが好ましい。一方の側壁210(以下、第1側壁210Aともいう)は、おおよそ正方形状の平板状に形成される。他方の側壁210(以下、第2側壁210Bともいう)は、第1側壁210Aよりも前後方向の幅が狭い長方形状の平板状に形成される。一対の連結片211は、第1側壁210Aと第2側壁210Bとを互いに平行させて連結するように構成される。なお、一対の連結片211の前後方向の幅寸法は、第1側壁210Aの前後方向の幅寸法よりも短い。・・・
【0028】
ユニットカバー22は、板金製であって、天板220、底板221、上前板222、下前板223などを有する(図2参照)。・・・」
・図2は次のとおり。
[図:0001411251000001.jpg]
・図5は次のとおり。
[図:0001411251000002.jpg]
3 対比・判断
(1)対比
本件発明と甲2発明とを対比する。
・後者の「器具本体4」は、前者の「器具本体」に相当する。
・後者の「第1の照明器具であるLEDバー3」は、前者の「第1発光部材」に相当する。
・後者の「LED非常灯7」の「多数のLEDチップを基板に直接実装した構造のチップオンボードであるCOB基板9」は、前者の「非常用光源」に相当する。
・後者の「レンズ10」は、前者の「レンズ部材」に相当する。
・後者の「第2の照明器具2」の「LED非常灯7」は、前者の「第2発光部材」に相当する。
・後者の「照明装置100」は、前者の「照明装置」に相当する。
以上の相当関係を踏まえると、以下のことがいえる。
・後者の「LEDバー3」は「長尺状の常用点灯用光源」を含むものであるから、「長尺状」であることは明らかである。
そうすると、後者の「長尺状の常用点灯用光源と、常用電源ユニットと、反射板とを有する常用点灯用の構成部品を備えた常用の第1の照明器具であるLEDバー3と;前記第1の照明器具であるLEDバー3と前記第2の照明器具2とを前記常用点灯用光源の長手方向と直交する方向に横並び状態で隣接配置する共通の器具本体4と」を具備することは、前者の「器具本体に保持されるLEDバーからなる長尺状の第1発光部材と」を備えたことに相当する。
・後者の「レンズ10」は、透光性を有し、「COB基板9」を覆うものであることは明らかである。
そうすると、後者の「前記第1の照明器具であるLEDバー3と前記第2の照明器具2とを前記常用点灯用光源の長手方向と直交する方向に横並び状態で隣接配置する共通の器具本体4と」を具備し、「LED非常灯7は、多数のLEDチップを基板に直接実装した構造のチップオンボードであるCOB基板9と、レンズ10を備え」ていることは、前者の「前記第1発光部材の短手方向に並べて配置され、非常用光源及び前記非常用光源を覆う透光性のレンズ部材を有する第2発光部材と;」を備えたことに相当する。
・後者の「傾斜板42b」は、「LEDバー3」と「LED非常灯7」との間に配置されるものであるので、両者の隔壁といえるものである。また、前者の「第2発光部材の照射方向」について検討するに、照明の分野において「照射方向」とは光軸方向を示すことが一般的であるところ、本件明細書の段落【0038】にも「非常用光源モジュール21の照射方向とは、非常用光源212の光軸方向である。」と記載されている。
そうすると、後者の「傾斜板42bは、LEDバー3の長手方向に沿った長さが、LED非常灯7よりも長く、かつ傾斜板42bの下方端は、LEDバー3の最下部よりも下方に位置し、LED非常灯7のレンズ10の最下部より上方に位置する」ことと、前者の「前記第1発光部材と前記第2発光部材との間に配置され、前記第1発光部材の長手方向に沿った長さが、前記第2発光部材よりも長く、かつ前記第1発光部材および前記第2発光部材の前記レンズ部材よりも前記第2発光部材の照射方向に突出した不燃性の隔壁と;」を備えたこととは、「前記第1発光部材と前記第2発光部材との間に配置され、前記第1発光部材の長手方向に沿った長さが、前記第2発光部材よりも長く、かつ前記第1発光部材よりも前記第2発光部材の相対的に照射方向側に突出した隔壁と;」を備えたことで共通する。
したがって、本件発明と甲2発明との一致点、相違点は次のとおりと認める。
〔一致点2〕
「器具本体に保持されるLEDバーからなる長尺状の第1発光部材と;
前記第1発光部材の短手方向に並べて配置され、非常用光源及び前記非常用光源を覆う透光性のレンズ部材を有する第2発光部材と;
前記第1発光部材と前記第2発光部材との間に配置され、前記第1発光部材の長手方向に沿った長さが、前記第2発光部材よりも長く、かつ前記第1発光部材よりも前記第2発光部材の相対的に照射方向側に突出した隔壁と;
を備えた照明装置。」
〔相違点2〕
「隔壁」について、本件発明は、「前記第1発光部材および前記第2発光部材の前記レンズ部材よりも前記第2発光部材の照射方向」に突出する「不燃性」の隔壁であるのに対し、甲2発明は、「傾斜板42bの下方端は、LEDバー3の最下部よりも下方に位置し、LED非常灯7のレンズ10の最下部より上方に位置する」もの、すなわち、「傾斜板42b」(隔壁)は、「LED非常灯7」(第2発光部材)の照射方向に突出するのではなく傾斜しており、「傾斜板42b」の下方端よりも「レンズ10」(レンズ部材)の最下部が突出しており、不燃性の特定もない点。
(2)判断
甲3の図2、5から明らかなように、甲3に記載された技術は、「常用光源ユニット1」の長手方向両端に2つの「非常用LEDモジュール20」が位置するものであって、側壁部210Bには、差込片214が設けられ、この差込片214を器具本体3に差し込んで組み立てられるものである(段落【0027】、【0031】)ところ、「前記第1の照明器具であるLEDバー3と前記第2の照明器具2とを前記常用点灯用光源の長手方向と直交する方向に横並び状態で隣接配置する共通の器具本体4」を有する甲2発明とは、照明装置としての前提構成が異なるものである。さらに、甲2発明の「傾斜板42b」は、傾斜させることにより、「LEDバー3からの放射光が非常用の第2の照明器具2によって遮られる量を少なくすることができる。そのため、LEDバー3の配光の遮断を低減することができる。」(段落【0042】)という、「横並び状態で隣接配置する」という前提構成を有するからこその作用機能を有するものであるが、甲3に記載された技術の「側壁部210B」は、そのような作用機能を有するものではない。
したがって、甲2発明の「傾斜板42b」と甲3に記載された技術の「側壁部210B」とは、その構造や作用機能が共通するものでもないから、甲2発明の「傾斜板42b」に甲3に記載された技術の「側壁210B」の構成を適用する動機付けはない。
また、これを措くとしても、甲2発明に甲3に記載された技術を適用すると、甲2発明の「前記第1の照明器具であるLEDバー3と前記第2の照明器具2とを前記常用点灯用光源の長手方向と直交する方向に横並び状態で隣接配置する共通の器具本体4」という事項が損なわれることになるから、結果本件発明の構成とならなくなってしまうことは明らかである。
以上検討したとおり、本件発明は、甲2発明及び甲3に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第8 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由並びに特許異議申立書に記載した特許異議申立理由及び証拠によっては、本件請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-701163