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特許異議申立

2022-701145

リチウムイオン二次電池

審判番号
2022-701145
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-211220
登録番号
7072551
請求日
2022年11月18日
審決日
2023年08月28日
公報発行日
2023年11月24日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社半導体エネルギー研究所
  • 【権利者代理人】蟹田 昌之
  • 【異議申立人】齊藤 恵美子
審判長/審判官
  • 審判長 篠原 功一
  • 審判官 畑中 博幸
  • 審判官 山本 章裕
分類
P1651.113-YAA(H01M) / P1651.121-YAA(H01M) / P1651.537-YAA(H01M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第4項
データ出所
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特許第7072551号発明「リチウムイオン二次電池」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7072551号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。 特許第7072551号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7072551号の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、平成27年3月12日(優先権主張 平成26年3月24日、日本)を国際出願日とする特願2016-509598号の一部を令和元年11月22日に新たな特許出願としたものであって、令和4年5月12日にその特許権の設定登録がなされ、同年5月20日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許の請求項1ないし5に対して特許異議の申立てがなされたものであり、以後の本件に係る手続の概要は以下のとおりである。 令和4年11月18日 :特許異議申立人 齋藤 恵美子による請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立て 令和5年 2月13日付け:取消理由通知 令和5年 4月14日 :特許権者による訂正請求書・意見書の提出 そして、令和5年4月20日付けの通知書で、特許異議申立人に対して期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、申立人からは応答がなかったものである。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和5年4月14日の訂正請求の趣旨は、特許7072551号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項1ないし5について訂正することを求めるものであり、その訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、 「正極と、負極と、電解液と、 前記正極と前記負極との間のセパレータと、 前記セパレータと前記負極との間のスペーサと、を有し、 前記負極は、負極集電体を有し、負極活物質層を有さず、 前記負極集電体は、前記スペーサと接する領域を有し、 前記電解液は、フッ素を有し、 前記負極集電体は、充電時にリチウムを有する析出物が表面に析出することができる機能を有するリチウムイオン二次電池。」 と記載されているのを、 「正極と、負極と、電解液と、 前記正極と前記負極との間のセパレータと、 前記セパレータと前記負極との間のスペーサと、を有し(ただし、前記スペーサが導電体と絶縁体又は半導体を有する負極活物質保持体である場合、及び前記スペーサが格子層である場合を除く。)、 前記負極は、負極集電体を有し、負極活物質層を有さず、 前記負極集電体は、前記スペーサと接する領域を有し、 前記電解液は、フッ素を有し、 前記負極集電体は、充電時にリチウムを有する析出物が表面に析出することができる機能を有するリチウムイオン二次電池。」 に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項5も同様に訂正する。) (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に、 「正極と、負極と、電解液と、 前記正極と前記負極との間のセパレータと、 前記セパレータと前記負極との間のスペーサと、を有し、 前記負極は、負極集電体を有し、負極活物質層を有さず、 前記負極集電体は、前記スペーサと接する領域と、前記電解液又は前記セパレータの少なくとも一方と接する領域とを有し、 前記電解液は、フッ素を有し、 前記負極集電体は、充電時にリチウムを有する析出物が表面に析出することができる機能を有するリチウムイオン二次電池。」 と記載されているのを、 「正極と、負極と、電解液と、 前記正極と前記負極との間のセパレータと、 前記セパレータと前記負極との間のスペーサと、を有し(ただし、前記スペーサが導電体と絶縁体又は半導体を有する負極活物質保持体である場合、及び前記スペーサが格子層である場合を除く。)、 前記負極は、負極集電体を有し、負極活物質層を有さず、 前記負極集電体は、前記スペーサと接する領域と、前記電解液又は前記セパレータの少なくとも一方と接する領域とを有し、 前記電解液は、フッ素を有し、 前記負極集電体は、充電時にリチウムを有する析出物が表面に析出することができる機能を有するリチウムイオン二次電池。」 に訂正する。(請求項2の記載を引用する請求項5も同様に訂正する。) (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に、 「正極と、負極と、電解液と、 前記正極と前記負極との間のセパレータと、 前記セパレータと前記負極との間のシート状のスペーサと、を有し、 前記シート状のスペーサは、前記セパレータよりも空隙率が高く、 前記負極は、負極集電体を有し、負極活物質層を有さず、 前記負極集電体は、前記スペーサと接する領域を有し、 前記電解液は、フッ素を有し、 前記セパレータと前記負極集電体との間の領域においてリチウムを有する析出物が析出することができる機能を有するリチウムイオン二次電池。」 と記載されているのを、 「正極と、負極と、電解液と、 前記正極と前記負極との間のセパレータと、 前記セパレータと前記負極との間のシート状のスペーサと、を有し、 前記シート状のスペーサは、前記セパレータよりも空隙率が高く、 前記負極は、負極集電体を有し、負極活物質層を有さず、 前記負極集電体は、前記スペーサと接する領域を有し、 前記電解液は、フッ素を有する無機塩と、フッ素を含有するエチレンカーボネートと、を有し、 前記セパレータと前記負極集電体との間の領域においてリチウムを有する析出物が析出することができる機能を有するリチウムイオン二次電池。」 に訂正する。(請求項3の記載を引用する請求項5も同様に訂正する。) (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に、 「正極と、負極と、電解液と、 前記正極と前記負極との間のセパレータと、 前記セパレータと前記負極との間のスペーサと、を有し、 前記負極は、負極集電体を有し、負極活物質層を有さず、 前記負極集電体は、前記スペーサと接する領域を有し、 前記電解液は、フッ素を有し、 前記正極、前記負極、前記セパレータ、及び前記スペーサは可撓性を有し、 前記セパレータと前記負極集電体との間の領域においてリチウムを有する析出物が析出することができる機能を有するリチウムイオン二次電池。」 と記載されているのを、 「正極と、負極と、電解液と、 前記正極と前記負極との間のセパレータと、 前記セパレータと前記負極との間のスペーサと、を有し、 前記負極は、負極集電体を有し、負極活物質層を有さず、 前記負極集電体は、前記スペーサと接する領域を有し、 前記電解液は、フッ素を有する無機塩と、フッ素を含有するエチレンカーボネートと、を有し、 前記正極、前記負極、前記セパレータ、及び前記スペーサは可撓性を有し、 前記セパレータと前記負極集電体との間の領域においてリチウムを有する析出物が析出することができる機能を有するリチウムイオン二次電池。」 に訂正する。(請求項4の記載を引用する請求項5も同様に訂正する。) 2 訂正要件についての判断 (1)一群の請求項について 訂正前の請求項1、5は、請求項5が訂正請求の対象である請求項1を引用しているから、請求項1、5は、一群の請求項であり、訂正前の請求項2、5は、請求項5が訂正の対象である請求項2を引用しているものであるから、請求項2、5は、一群の請求項であり、訂正前の請求項3、5は、請求項5が訂正の対象である請求項3を引用しているものであるから、請求項3、5は、一群の請求項であり、訂正前の請求項4、5は、請求項5が訂正の対象である請求項4を引用しているものであるから、請求項4、5は、一群の請求項である。 そして、これら一群の請求項は、共通する請求項5を有するから、請求項1ないし5は一群の請求項であり、それに対応する訂正後の請求項1ないし5は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 ア 訂正事項1について (ア)訂正の目的 訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載の「スペーサ」について、「(ただし、前記スペーサが導電体と絶縁体又は半導体を有する負極活物質保持体である場合、及び前記スペーサが格子層である場合を除く。)」との限定を付加するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 (イ)新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否 訂正事項1における「スペーサと、を有し」から、「スペーサと、を有し(ただし、前記スペーサが導電体と絶縁体又は半導体を有する負極活物質保持体である場合、及び前記スペーサが格子層である場合を除く。)、」とする訂正は、取消理由通知で引用した引用文献1(特開平8-171901号公報(甲第1号証))に記載された「導電体と絶縁体又は半導体を有する負極活物質保持体」、引用文献2(特開2001-052683号公報(甲第5号証))に記載された「格子層」を除く訂正である。 よって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 イ 訂正事項2について (ア)訂正の目的 訂正事項2は、訂正前の請求項2に記載の「スペーサ」について、「(ただし、前記スペーサが導電体と絶縁体又は半導体を有する負極活物質保持体である場合、及び前記スペーサが格子層である場合を除く。)」との限定を付加するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 (イ)新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否 訂正事項2における「スペーサと、を有し」から、「スペーサと、を有し(ただし、前記スペーサが導電体と絶縁体又は半導体を有する負極活物質保持体である場合、及び前記スペーサが格子層である場合を除く。)、」とする訂正は、取消理由通知で引用した引用文献1(特開平8-171901号公報(甲第1号証))に記載された「導電体と絶縁体又は半導体を有する負極活物質保持体」、引用文献2(特開2001-052683号公報(甲第5号証))に記載された「格子層」を除く訂正である。を除く訂正である。 よって、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 ウ 訂正事項3について (ア)訂正の目的 訂正事項3は、訂正前の請求項3に記載の「フッ素」を有する「電解液」について、「前記電解液は、フッ素を有する無機塩と、フッ素を含有するエチレンカーボネートと、を有し、」と更に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 (イ)新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否 本件特許明細書の段落【0017】に「フッ素は、前記電解液中の有機化合物又は無機塩に含まれており、・・・。また、有機化合物はフルオロエチレンカーボネートであるリチウムイオン二次電池としてもよい。」、同段落【0020】に「さらに、電解液に添加剤としてフッ素を有する有機化合物、例えばフルオロエチレンカーボネートを加える」、同段落【0084】に「また、上記の溶媒に溶解させる電解質としては、フッ素を有する無機塩、・・・で用いることができる。」、同段落【0088】に「電解液に添加される添加剤は、フッ素を含有するエチレンカーボネート、・・・が一例として挙げられる。」とそれぞれ記載されている。 よって、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 エ 訂正事項4について (ア)訂正の目的 訂正事項4は、訂正前の請求項4に記載の「フッ素」を有する「電解液」について、「前記電解液は、フッ素を有する無機塩と、フッ素を含有するエチレンカーボネートと、を有し、」と更に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 (イ)新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否 本件特許明細書の段落【0017】に「フッ素は、前記電解液中の有機化合物又は無機塩に含まれており、・・・。また、有機化合物はフルオロエチレンカーボネートであるリチウムイオン二次電池としてもよい。」、同段落【0020】に「さらに、電解液に添加剤としてフッ素を有する有機化合物、例えばフルオロエチレンカーボネートを加える」、同段落【0084】に「また、上記の溶媒に溶解させる電解質としては、フッ素を有する無機塩、・・・で用いることができる。」、同段落【0088】に「電解液に添加される添加剤は、フッ素を含有するエチレンカーボネート、・・・が一例として挙げられる。」とそれぞれ記載されている。 よって、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (3)独立特許要件について 訂正事項1ないし4は、上記アないしエに示したとおり、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするところ、本件においては、訂正前の請求項1ないし5について特許異議の申立てがされているから、対応する訂正後の請求項1ないし5に係る発明について、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 3 小括 以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1ないし5に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明5」という。)は、その訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された次の事項により特定されるものである。なお、下線は、訂正箇所を示す。 「 【請求項1】 正極と、負極と、電解液と、 前記正極と前記負極との間のセパレータと、 前記セパレータと前記負極との間のスペーサと、を有し(ただし、前記スペーサが導電体と絶縁体又は半導体を有する負極活物質保持体である場合、及び前記スペーサが格子層である場合を除く)、 前記負極は、負極集電体を有し、負極活物質層を有さず、 前記負極集電体は、前記スペーサと接する領域を有し、 前記電解液は、フッ素を有し、 前記負極集電体は、充電時にリチウムを有する析出物が表面に析出することができる機能を有するリチウムイオン二次電池。 【請求項2】 正極と、負極と、電解液と、 前記正極と前記負極との間のセパレータと、 前記セパレータと前記負極との間のスペーサと、を有し(ただし、前記スペーサが導電体と絶縁体又は半導体を有する負極活物質保持体である場合、及び前記スペーサが格子層である場合を除く。)、 前記負極は、負極集電体を有し、負極活物質層を有さず、 前記負極集電体は、前記スペーサと接する領域と、前記電解液又は前記セパレータの少なくとも一方と接する領域とを有し、 前記電解液は、フッ素を有し、 前記負極集電体は、充電時にリチウムを有する析出物が表面に析出することができる機能を有するリチウムイオン二次電池。 【請求項3】 正極と、負極と、電解液と、 前記正極と前記負極との間のセパレータと、 前記セパレータと前記負極との間のシート状のスペーサと、を有し、 前記シート状のスペーサは、前記セパレータよりも空隙率が高く、 前記負極は、負極集電体を有し、負極活物質層を有さず、 前記負極集電体は、前記スペーサと接する領域を有し、 前記電解液は、フッ素を有する無機塩と、フッ素を含有するエチレンカーボネートと、を有し、 前記セパレータと前記負極集電体との間の領域においてリチウムを有する析出物が析出することができる機能を有するリチウムイオン二次電池。 【請求項4】 正極と、負極と、電解液と、 前記正極と前記負極との間のセパレータと、 前記セパレータと前記負極との間のスペーサと、を有し、 前記負極は、負極集電体を有し、負極活物質層を有さず、 前記負極集電体は、前記スペーサと接する領域を有し、 前記電解液は、フッ素を有する無機塩と、フッ素を含有するエチレンカーボネートと、を有し、 前記正極、前記負極、前記セパレータ、及び前記スペーサは可撓性を有し、 前記セパレータと前記負極集電体との間の領域においてリチウムを有する析出物が析出することができる機能を有するリチウムイオン二次電池。 【請求項5】 請求項1乃至請求項4のいずれか一において、 前記正極は、正極集電体と、正極活物質層と、を有し、 前記正極活物質層は、前記セパレータと接する領域を有し、 前記セパレータは、前記スペーサと接する領域を有するリチウムイオン二次電池。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 令和5年2月13日付けの取消理由通知に記載した取消理由の概要は、次のとおりである。 理由1 下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 理由2 下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 記 引用文献1:特開平8-171901号公報(甲第1号証) 引用文献2:特開2001-052683号公報(甲第5号証) ●理由1(新規性)について ・請求項 1、2、4、5 ・引用文献 1 ●理由1(新規性)及び理由2(進歩性)について ・請求項 3、5 ・引用文献 1 ・請求項 1ないし5 ・引用文献 2 2 引用文献等の記載事項、引用発明 (1)引用文献1 ア 取消理由において引用した引用文献1には、図面とともに、次の事項が記載されている。なお、下線は当審が付与した。 「【請求項1】 少なくとも導電体と、電池反応に関与するイオンは透過するが充電時の負極に析出する負極活物質は透過しにくい絶縁体又は半導体とを有する負極活物質保持体を有する二次電池用負極において、前記負極活物質保持体は空隙率10%以上の空隙を有することを特徴とする二次電池用負極。」 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、二次電池用負極及び該負極を有する二次電池及び電極の作製方法に関し、さらに詳しくは、リチウムや亜鉛などの金属のデンドライトの発生を抑制することが可能な二次電池用負極及び該電極を有する二次電池及び電極の作製方法に関する。」 「【0012】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、エネルギー密度が高く、かつ、サイクル寿命が長い二次電池、特に、負極活性物質としてリチウム又は亜鉛を使用する二次電池及びその負極を提供することを目的とする。」 「【0018】 【発明の実施の形態】本発明は、上記した問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、二次電池用負極が集合体上に10%以上の空隙率を有する空隙を持った負極活物質保持体を有することで上記問題点を解決し得、上記目的を達成することを見出した。 【0019】負極活物質保持体は、少なくとも集電体上に、あるいは集電体に電気的に接して設けられ、少なくとも導電体と電池反応に関与するイオンを透過する(好ましくは、更に充電時に負極に析出するリチウムや亜鉛のような負極活物質を透過しないか、透過しにくい)絶縁体又は半導体を有する。」 「【0027】以下本発明を図1と図2を参照しつつ説明する。図1は、本発明の二次電池の負極の好適な一例を説明するための模式断面図である。図中1は負極、100は集合体、101は導電体、102は絶縁体又は半導体、103は空隙である。 【0028】図1に示される本発明の負極は集電体100上の正極と電解液を介して対向する側に、導電体101及び絶縁体又は半導体102を有する層を有している。また、絶縁体又は半導体102中には(あるいは上記層中には)、空隙103が形成されている。 ・・・(中略)・・・。 【0030】図2に示されるように、負極1と正極2は電解液3に接して配されており、負極1と正極2とが直接接して短絡しないように、負極1と正極2との間にセパレータ4が設けられている。以下、各部について説明する。 【0031】(負極)本発明における負極としては、前述したように、例えば、少なくとも導電体、絶縁体又は半導体、空隙、集電体のような基体から構成されているものが挙げられる。 【0032】まず、負極の作製方法の一例について説明する。括弧付きの数字は、作製手順を示す。 (1)導電体、空隙を形成するための溶出可能な物質(空隙形成物質)、絶縁体又は半導体の原料の3種類を所望の空隙率になるように混合して、塗布材を作製する。 (2)必要に応じて、塗布材の中へ溶媒を添加する。 (3)塗布材を基体としての集電体の表面上に付与する。 (4)集電体の付与された部分を、乾燥又は重合反応等させる。 (5)集電体を成形する。 (6)集電体から溶出可能な物質を溶出して、空隙を形成する。」 「【0036】負極活物質の負極への導入方法としては、例えば、二次電池の充電により電気化学的に正極から負極へ導入する方法、負極形成時に導電体と負極活物性質とを混合して導入する方法などが使用できる。リチウム二次電池の場合は、リチウムが水と反応し易いので、作製の容易さ、製造時の構成部品の製造及び取り扱いの容易さという点で前者の方法を用いることは好ましい。 【0037】次に、負極の空隙について説明する。本発明において、導電体を分散させた絶縁体中に設けられた空隙は、負極中で、充電時に発生する負極活物質の析出空間を確保する。この析出空間の確保によって、充放電サイクルによる負極の膨張・収縮に伴う負極の疲労を防ぐことができる。また、空隙には、電解液が浸透しやすくなりイオンの拡散を促進させる効果もある。その結果、電池のインピーダンスを低下させることも可能になる。」 「【0044】次に、負極の空隙の大きさとその分布について説明する。本発明の負極において、導電体表面を被覆している絶縁体又は半導体は、電池反応に寄与するイオンは透過するが析出した負極活物質は透過しにくい分子構造とされ、若しくは非常に小さい隙間又は細孔を有していてよい。」 「【0052】特に、上記(3)の役割は重要である。その役割を果たすために、絶縁体又は半導体は、電池反応に関与するイオンより大きな間隙のある分子構造若しくは細孔を有し、電池反応に関与するイオンは透過するが充電時の負極に析出する負極活物質は透過しにくい特性を備えていることが必要である。」 「【0109】(正極)本発明における正極は、集電体、正極活物質、導電体、結着剤などから構成されたものが使用できる。例えば、正極は、正極活物質、導電体、及び結着剤などを混合したものを、集電体の表面上に成形して作製することができる。」 「【0121】一般的には、溶媒に電解質を溶かした電解液を、多孔性のセパレータに保液させて使用する。・・・(中略)・・・。 【0123】負極活物質がリチウムであるリチウム電池では、以下に示す電解質とその溶媒が、好適に用いられる。 【0124】電解質としては、例えば、H2SO4,HCl,HNO3などの酸、リチウムイオン(Li+)とルイス酸イオン(BF4-,PF6-,ClO4-,CF3SO3-,BPh4-(Ph:フェニル基))からなる塩、およびこれらの混合塩が挙げられる。また、ナトリウムイオン、カリウムイオン、テトラアルキルアンモニウムイオンなどの陽イオンとルイス酸イオンからなる塩も使用できる。上記塩は、減圧下で加熱したりして、十分な脱水と脱酸素を行っておくことが望ましい。」 「【0131】(電池の形状と構造)本発明における電池の形状としては、例えば、偏平型、円筒型、直方形型、シート型などがある。また、電池の構造としては、例えば、単層式、多層式、スパイラル式などがある。その中でも、スパイラル式円筒型の電池は、負極と正極の間にセパレータをはさんで卷くことによって電極面積を大きくすることができ、充放電時に大電流を流すことができるという特長を有する。また、直方体型の電池は、二次電池を収納する機器の収納スペースを有効利用することができるという特長を有する。 ・・・(中略)・・・。 【0133】図3と図4において、300は負極集電体、301は負極活物質、302は負極、303は正極活物質、304は正極集電体、305負極端子(負極キャップ)、306は正極缶、307はセパレータ、308は正極、310は絶縁パッキング、311は絶縁板である。図3においては、正極缶306が正極集電体を兼ねている。」 「【0143】(実施例1)本例では、図3に示した断面構造のリチウム二次電池を作製した。負極の導電体部としてアルミニウム粉を、集電電極としてはアルミニウム箔を、絶縁体としてはエーテル結合を有した粉体フッ素樹脂塗料(日本油脂社製、商品名:スーパーコナック)を、空隙を作るための溶出物質としては電解質の四フッ化ホウ酸リチウム塩を用いた。 【0144】以下では、図3を参照して、電池の各構造物の作製手順と、電池の組立について説明する。 【0145】(1)負極302の作製手順 ・・・(中略)・・・アルミニウム箔に、ペーストを塗布した後、乾燥した。さらに、その後、170℃で減圧乾燥して負極302を形成した。 【0146】ここで用いたペーストは、アルミニウム粉と粉体フッ素樹脂塗料と、空隙率50%の空隙ができる計算量の四フッ化ホウ酸リチウム塩とを混合した後、溶媒のキシレンを添加して調製したものである。」 [図:0001403662000001.jpg] [図:0001403662000002.jpg] イ 引用文献1の上記記載事項により、次のことがいえる。 (ア)段落【0001】、【0012】によれば、引用文献1にはリチウム二次電池が記載されている。 また、段落【0030】によれば、リチウム二次電池は、負極1と正極2が電解液3に接して配され、段落【0131】及び図4によれば、リチウム二次電池は、負極と正極の間にセパレータをはさんで卷いたスパイラル式円筒型電池である。 (イ)段落【0028】及び図1によれば、負極1は、集電体100上の正極と電解液を介して対向する側に、導電体101及び絶縁体102を有する層を有し、段落【0032】及び図1によれば、負極は、導電体、空隙を形成するための溶出可能な物質(空隙形成物質)、絶縁体の原料の3種類を所望の空隙率になるように混合した塗布材を集電体の表面上に付与し、乾燥又は重合反応させ、集電体から溶出可能な物質を溶出して空隙を形成することにより作製される。 さらに、段落【0037】によれば、該空隙により、負極中で充電時に発生する負極活物質の析出空間を確保し、電解液が浸透しやすくなりイオンの拡散を促進させる。 (ウ)段落【0036】によれば、二次電池の充電により負極活物質が電気化学的に正極から負極へ導入される。 (エ)段落【0121】、【0123】、【0124】によれば、電解液には電解質としてLi+とBF4―又はPF6―からなる塩が含まれることが記載されている。 (オ)段落【0109】によれば、正極は正極集電体と正極活物質から構成されることが記載されている。 また、段落【0133】及び図4によれば、正極活物質はセパレータに接していることが見て取れる。 ウ よって、上記(ア)ないし(オ)から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。 「負極と正極が電解液に接して配され、負極と正極の間にセパレータをはさんで卷いたスパイラル式円筒型電池であるリチウム二次電池であって、 負極は、集電体上の正極と電解液を介して対向する側に、導電体及び絶縁体を有する層を有し、該負極は、導電体、空隙を形成するための溶出可能な物質(空隙形成物質)、絶縁体の原料の3種類を所望の空隙率になるように混合した塗布材を集電体の表面上に付与し、乾燥又は重合反応させ、集電体から溶出可能な物質を溶出して空隙を形成することにより作製され、 空隙により、負極中で充電時に発生する負極活物質の析出空間を確保し、電解液が浸透しやすくなりイオンの拡散を促進させ、 二次電池の充電により負極活物質が電気化学的に正極から負極へ導入され、 電解液には電解質としてLi+とBF4―又はPF6―からなる塩が含まれ、 正極は正極集電体と正極活物質から構成され、 正極活物質はセパレータに接しているリチウム二次電池。」 エ また、引用文献1に記載された事項により、次のこともいえる。 (カ)段落【0143】ないし【0146】によれば、実施例1のリチウム二次電池において、空隙の空隙率が50%であることが記載されている。 よって、上記(カ)、及び、上記ウで述べた点から、引用文献1に記載された実施例1に着目すると、次の発明(以下、「引用発明1a」という。)も記載されている。 「負極と正極が電解液に接して配され、負極と正極の間にセパレータをはさんで卷いたスパイラル式円筒型電池であるリチウム二次電池であって、 負極は、集電体上の正極と電解液を介して対向する側に、導電体及び絶縁体を有する層を有し、該負極は、導電体、空隙を形成するための溶出可能な物質(空隙形成物質)、絶縁体の原料の3種類を所望の空隙率になるように混合した塗布材を集電体の表面上に付与し、乾燥又は重合反応させ、集電体から溶出可能な物質を溶出して空隙を形成することにより作製され、 空隙により、負極中で充電時に発生する負極活物質の析出空間を確保し、電解液が浸透しやすくなりイオンの拡散を促進させ、 二次電池の充電により負極活物質が電気化学的に正極から負極へ導入され、 電解液には電解質としてLi+とBF4―又はPF6―からなる塩が含まれ、 正極は正極集電体と正極活物質から構成され、 正極活物質はセパレータに接しており、 空隙の空隙率が50%であるリチウム二次電池。」 (2)引用文献2 ア 取消理由において引用した引用文献2には、図面とともに、次の事項が記載されている。なお、下線は当審が付与した。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、電極および当該電極から成る電池に関し、詳しくは、樹枝状結晶の生成を抑制し、クーロン効率を向上させた、集電体表面と関連した空隙格子層を有する電極から成る電池に関する。本発明はさらに、上記電池の製造方法および充放電方法にも関する。本発明は、特にリチウムを起電力物質としたリチウムイオン電池およびその製造方法ならびに充放電方法に関する。」 「【0021】図3に初期充電前の本発明に係わる電池の模式図を示す。初期電荷印加前の本発明に係わる電池30は、通常、第1電極32、第2電極34、電解質36及び不活性フレームワーク又は格子層38を有する。電極32及び34のいずれか一方は、金属集電体または基板を含む。集電体としては、前述の銅の他、多数の他の遷移金属、アルカリ金属、アルカリ性金属、遷移金属酸化物又は他の金属種が使用できる。好ましくは、アルミニウム、ニッケル、ステンレス、銅等の金属または合金であり、特に好ましくは前述の銅である。 【0022】電解質36としては、市販又は従来使用される溶剤および塩または(液体、ポリマー、ゲル及びプラスチック系等の)電解質系が使用可能であり、代表的には、プロピレンカーボネート(PC)又はエチレンカーボネート(EC)等の従来の溶剤にLiAsF6等の従来塩を溶解した電解質が使用される。 【0023】格子層38は、第1電極32の集電体表面40と関連させるが、同様に、第2電極34と、また両電極32及び34のそれぞれと関連させることもできる。格子層38は、起電力物質であるリチウムと安定に存在するものであれば特に制限はなく、好ましくはリソグラフィックプロセス又はレーザー研削プロセスと適合性を有するものである。代表的にはポリマーフィルムを挙げることができる。 【0024】格子層の材料は、絶縁性を有するものが好ましく、その結果、リチウムの析出・溶解をより良好に行うことができる。 【0025】図4に格子層38の空隙を示す、本発明に係わる電池の部分断面図を、図5に本発明の格子層の上面図を示す。格子層38は、多数の開孔42および空隙44を有する。以下で詳述するように、開孔42および空隙44は、フォトリソグラフィック及び/又はレーザー研削技術により形成されるため、非常に寸法精度が高い。このような高寸法精度の開孔および空隙によって、リチウムの析出に対して非常に均一な表面を得ることができる。開孔42および関連空隙44は、円形断面を有するものを例示したが、その幾何学形状に特に限定はなく、この他、三角形状、方形状、五角形状、六角形状及び任意形状等の他の幾何形状も同様に使用可能である。 【0026】図6にリチウムに占有される前後の格子層を示す、本発明に係わる電池の部分断面図を示す。金属集電体32の表面40に格子層38を関連させた後、集電体表面付近に樹枝状結晶を実質的に生じることなく、電池30を複数回充電および放電させることができる。このような安定性が得られる理由は、例えば充電時、リチウム46が、電極32の表面40及び空隙44の壁部48の両方、即ち空隙内に均一に析出されるためである。実質的に均一な析出によって、電極32近辺での樹枝状結晶の生成を減少させることができる。更に、格子層38の高さは、リチウム46が、格子層上に突出しない高さに規制され、樹枝状結晶の生成が更に抑制される。 【0027】格子層38の空隙にリチウムが析出・溶解することによって充電及び放電が行われる。従って、集電体全面に対する空隙部分の占める面積(リチウムが析出しうる集電体の面積)は、大きいほど電池容量が大きくなるので好ましく、通常30%以上、好ましくは50%以上、さらに好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上である。ただし、あまりに空隙部分が大きいと、格子層の格子部分の強度が不足したり加工そのものが困難となるので、通常99.99%以下、好ましくは99.9%以下とする。」 「【0031】先ず、電極32及び34を、製造する。例えば、電極32は、集電体を有するアノードとして、電極34は、カソードとして形成することができる。別の電池形態では、電池が充電または放電のいずれの状態にあるかに応じて、アノード及びカソードは、互いに交換可能である。電池32及び34は、従来技術により形成し得る。 【0032】次いで、感光性ポリマーフィルム(格子層38を形成する)を、電極32の表面40と関連させる。感光性ポリマーフィルムは、例えば、スプレー法、ロール塗法、浸せき法または塗布法によって、電極32の表面40に関連させることができる。また、感光性ポリマーフィルムは、第2電極34と関連させてもよい。全タイプのフィルムには要求されないが、電極32の表面40に従来の接着促進剤を塗布してもよい。 ・・・(中略)・・・。 【0034】次いで、感光性ポリマーフィルムに所望の露出パターンを有するテンプレートを関連させる。 【0035】次いで、従来のフォトエネルギー源で上記フィルムを露光して、フィルムの露光域を現像する。 【0036】次いで、テンプレートを除き、フィルムの未露光部分を現像液等によって除去して格子層38を得る。」 「【0041】リチウムイオン電池は、通常、正極及び負極に対応する第1及び第2電極とそれらの間に介装された電解質層とからなる。第1電極及び第2電極は、集電体上に活物質を結着させて形成することができる。・・・(中略)・・・。 【0046】活物質:第1電極又は第2電極に使用する活物質は、製造する電池の種類や特性に応じて適宜選択すればよい。本発明においては、前述のように、第1電極及び第2電極の少なくとも一方は、集電体上に格子層を設けてなり、格子層に設けられた空隙においてリチウムの析出、溶解を行う。この格子層を設けた電極は、正極に用いても負極に用いてもよいが、負極として用いるのが好ましい。 【0047】格子層を設けた電極を第1電極として用いた場合、第2電極に使用する活物質としては、電池として機能しうる材料であれば、無機化合物でも有機化合物でも使用できる。」 「【0060】電解質として使用される電解液は、通常支持電解質を非水系溶剤に溶解してなる。 【0061】支持電解質としては、電解質として正極および負極に対して安定であり、かつリチウムイオンが正極活物質あるいは負極活物質と電気化学反応をするための移動をおこない得る非水物質であればいずれのものでも使用することができる。具体的には、前記LiAsF6の外、LiBF4、LiPF6、LiSbF6、LiClO4、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl、LiHF2、LiSCN、LiSO3CF2等のリチウム塩が挙げられる。これらのうちでは特にLiPF6、LiClO4が好適である。」 [図:0001403662000003.jpg] [図:0001403662000004.jpg] [図:0001403662000005.jpg] イ 引用文献2の上記記載事項により、次のことがいえる。 (ア)段落【0001】によれば、引用文献2には、リチウムイオン電池が記載されている。 (イ)段落【0021】によれば、リチウムイオン電池は、第1電極32、第2電極34、電解質36及び格子層38を有する。 (ウ)段落【0023】、【0032】ないし【0036】によれば、格子層38は、第1電極32の集電体表面40と関連し、また、格子層38は、感光性ポリマーフィルム(格子層38を形成する)を、スプレー法、ロール塗法、浸せき法または塗布法によって、電極32の表面40に関連させ、次いで、感光性ポリマーフィルムに所望の露出パターンを有するテンプレートを関連させ、次いで、従来のフォトエネルギー源で上記フィルムを露光して、フィルムの露光域を現像し、次いで、テンプレートを除き、フィルムの未露光部分を現像液等によって除去して得られる。また、図3によれば、格子層38は、第1電極32の第2電極34と対向する表面40上に配置されていることが見て取れ、また、図4、図5によれば、格子層38はシート形状に形成されることが見て取れる。 してみると、格子層38は、第1電極32の集電体の第2電極34と対向する表面40上にシート形状に形成されるといえる。 そして、段落【0024】によれば、格子層の材料は絶縁性を有し、段落【0025】によれば、格子層は多数の空隙44を有する。 さらに、段落【0027】によれば、集電体全面に対する空隙部分の占める面積(リチウムが析出しうる集電体の面積)は90%以上である。 (エ)段落【0041】、【0046】、【0047】によれば、集電体上に格子層38が設けられた第1電極32は負極として、第2電極34は集電体上に正極活物質を有する正極としてそれぞれ用いられる。 (オ)段落【0060】、【0061】によれば、電解質として電解液が使用され、電解液にはLiAsF6、LiBF4、LiPF6等のリチウム塩が含まれる。 (カ)段落【0021】、【0023】、【0026】によれば、リチウムイオン電池は、充電時、第1電極32の集電体表面40及び空隙44の壁部にリチウム46を均一に析出させ、第1電極32の集電体近辺での樹枝状結晶の生成を減少させる。 ウ よって、上記(ア)ないし(カ)から、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。 「第1電極、第2電極、電解質及び格子層を有するリチウムイオン電池であって、 格子層は、第1電極の集電体の第2電極と対向する表面上にシート形状に形成され、絶縁性の材料からなり、多数の空隙を有し、集電体全面に対する空隙部分の占める面積(リチウムが析出しうる集電体の面積)は90%以上であり、 集電体上に格子層が設けられた第1電極は負極として、第2電極は集電体上に正極活物質を有する正極としてそれぞれ用いられ、 電解質として電解液が使用され、電解液にはLiAsF6、LiBF4、LiPF6等のリチウム塩が含まれ、 充電時、第1電極の集電体表面及び空隙の壁部にリチウムを均一に析出させ、第1電極の集電体近辺での樹枝状結晶の生成を減少させる、リチウムイオン電池。」 3 取消理由に対する当審の判断 (1)理由1(新規性)について ア 引用文献1を引用例とする場合 (ア)本件発明1について a 本件発明1と引用発明1との対比 (a)引用発明1の「正極」、「負極」、「電解液」は、本件発明1の「正極」、「負極」、「電解液」にそれぞれ相当する。 (b)引用発明1の「負極と正極との間」にはさまれた「セパレータ」は、本件発明1の「前記正極と前記負極との間のセパレータ」に相当する。 (c)引用発明1においては、「セパレータ」は「負極と正極との間」にはさまれ、「負極」は「集電体上の正極と電解液を介して対向する側に、導電体及び絶縁体を有する層」を有するから、「導電体及び絶縁体を有する層」はセパレータと負極集電体との間の空間を確保する部材といえる。 してみると、引用発明1のセパレータと負極集電体との間に空間を確保する部材である「導電体及び絶縁体を有する層」は、本件発明1の「セパレータと前記負極との間のスペーサ」に対応するものである。 ただし、スペーサに関し、本件発明1は「(ただし、前記スペーサが導電体と絶縁体又は半導体を有する負極活物質保持体である場合、及び前記スペーサが格子層である場合を除く。)」ことが特定されているのに対し、引用発明1はその旨特定されていない点で相違する。 (d)引用発明1の「負極」は「集電体」を有しているから、引用発明1と本件発明1とは「前記負極は、負極集電体を有し」ている点で共通する。 ただし、負極に関し、本件発明1は「負極活物質を有さ」ないのに対し、引用発明1はその旨特定されていない点で相違する。 (e)引用発明1において、「負極」は「集電体上の正極と電解液を介して対向する側に、導電体及び絶縁体を有する層」を有するから、「負極」の「集電体」は「導電体及び絶縁体を有する層」と接しているといえる。 よって、引用発明1の「負極」が「集電体上の正極と電解液を介して対向する側に、導電体及び絶縁体を有する層」を有することは、本件発明1の「前記負極集電体は、前記スペーサと接する領域を有」することに相当する。 (f)引用発明1の「電解液には電解質としてLi+とBF4―又はPF6―からなる塩が含まれる」ことは、本件発明1の「前記電解液は、フッ素を有」することに相当する。 (g)本件発明1は「負極集電体は、充電時にリチウムを有する析出物が表面に析出することができる機能を有する」のに対し、引用発明1はその旨特定されていない点で相違する。 (h)引用発明1の「リチウム二次電池」は、本件発明1の「リチウムイオン二次電池」に相当する。 b 上記(a)ないし(h)によれば、本件発明1と引用発明1とは、 「正極と、負極と、電解液と、 前記正極と前記負極との間のセパレータと、 前記セパレータと前記負極との間のスペーサと、を有し、 前記負極は、負極集電体を有し、 前記負極集電体は、前記スペーサと接する領域を有し、 前記電解液は、フッ素を有するリチウムイオン二次電池。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1) スペーサに関し、本件発明1は「(ただし、前記スペーサが導電体と絶縁体又は半導体を有する負極活物質保持体である場合、及び前記スペーサが格子層である場合を除く。)」ことが特定されているのに対し、引用発明1はその旨特定されていない点 (相違点2) 負極に関し、本件発明1は「負極活物質を有さ」ないのに対し、引用発明1はその旨特定されていない点。 (相違点3) 本件発明1は「負極集電体は、充電時にリチウムを有する析出物が表面に析出することができる機能を有する」のに対し、引用発明1はその旨特定されていない点。 c 相違点についての判断 相違点1について判断する。 引用文献1の段落【0018】、【0019】、【0028】、【0044】及び【0052】によれば、引用発明1の「導電体及び絶縁体を有する層」は、本件発明1から除かれた上記「導電体と絶縁体又は半導体を有する負極活物質保持体」に相当するから、上記相違点1は実質的な相違である。 d 小括 したがって、相違点1は実質的な相違であるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、引用文献1に記載された発明ではない。 (イ)本件発明2について a 本件発明2と引用発明1との対比 上記「(ア)a」で検討した点を踏まえ、本件発明2と引用発明1を対比する。 引用発明1の「負極」は「導電体、空隙を形成するための溶出可能な物質(空隙形成物質)、絶縁体の原料の3種類を所望の空隙率になるように混合した塗布材を集電体の表面上に付与し、乾燥又は重合反応させ、集電体から溶出可能な物質を溶出して空隙を形成することにより作製される」ことからすれば、「集電体上」の「導電体及び絶縁体を有する層」には「空隙」が形成されているといえる。 そして、該「空隙により」「電解液が浸透しやすくな」るのであるから、引用発明1においても、「負極」の「集電体」は、「導電体及び絶縁体を有する層」と「電解液」に接しているといえる。 してみると、引用発明1において、「負極」の「集電体」が「導電体及び絶縁体を有する層」と「電解液」に接していることは、本件発明2の「負極集電体は、前記スペーサと接する領域と、前記電解液と接する領域とを有」することに相当する。 b よって、上記「(ア)a」で検討した点も踏まえれば、本件発明2と引用発明1とは、 「正極と、負極と、電解液と、 前記正極と前記負極との間のセパレータと、 前記セパレータと前記負極との間のスペーサと、を有し、 前記負極は、負極集電体を有し、 前記負極集電体は、前記スペーサと接する領域と、前記電解液と接する領域とを有し、 前記電解液は、フッ素を有する、リチウムイオン二次電池。」である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点4) スペーサに関し、本件発明2は「(ただし、前記スペーサが導電体と絶縁体又は半導体を有する負極活物質保持体である場合、及び前記スペーサが格子層である場合を除く。)」ことが特定されているのに対し、引用発明1はその旨特定されていない点 (相違点5) 負極に関し、本件発明2は「負極活物質を有さ」ないのに対し、引用発明1はその旨特定されていない点。 (相違点6) 本件発明2は「負極集電体は、充電時にリチウムを有する析出物が表面に析出することができる機能を有する」のに対し、引用発明1はその旨特定されていない点。 c 相違点についての判断 相違点4は、上記相違点1と同じであり、上記相違点1に対する判断と同様な理由により実質的な相違である。 d 小括 したがって、相違点4は実質的な相違であるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、引用文献1に記載された発明ではない。 (ウ)本件発明3について a 本件発明3と引用発明1aとの対比 上記「(ア)a」で検討した点を踏まえ、本件発明3と引用発明1aを対比する。 (a)引用発明1aの「負極」は「導電体、空隙を形成するための溶出可能な物質(空隙形成物質)、絶縁体の原料の3種類を所望の空隙率になるように混合した塗布材を集電体の表面上に付与し、乾燥又は重合反応させ、集電体から溶出可能な物質を溶出して空隙を形成することにより作製される」ことからすれば、「集電体上」の「導電体及び絶縁体を有する層」は「シート形状」に形成されていることは明らかである。 そして、引用発明1aにおいては、「セパレータ」は「負極と正極との間」にはさまれ、「負極」は「集電体上の正極と電解液を介して対向する側に、導電体及び絶縁体を有する層」を有するから、「導電体及び絶縁体を有する層」はセパレータと負極集電体との間の空間を確保する部材といえる。 してみると、引用発明1aにおける、シート形状に形成され、セパレータと負極集電体との間に空間を確保する部材である「導電体及び絶縁体を有する層」は、本件発明3の「セパレータと前記負極との間のシート状のスペーサ」に相当する。 (b)本件発明3は「前記シート状のスペーサは、前記セパレータよりも空隙率が高」いのに対し、引用発明1aはその旨特定されていない点で相違する。 (c)引用発明1aの「電解液」に含まれる「電解質としてLi+とBF4―又はPF6―からなる塩」は、本件発明3の「フッ素を有する無機塩」に相当する。 してみると、引用発明1aの「電解液には電解質としてLi+とBF4―又はPF6―からなる塩が含まれる」ことは、本件発明3の「前記電解液は、フッ素を有する無機塩を有すること」に対応する。 ただし、電解液に関し、本件発明3は「フッ素を含有するエチレンカーボネート」を有するのに対し、引用発明1aはその旨特定されていない点で相違する。 (d)引用発明1aでは、「負極は、集電体上の正極と電解液を介して対向する側に、導電体及び絶縁体を有する層を有し、該負極は、導電体、空隙を形成するための溶出可能な物質(空隙形成物質)、絶縁体の原料の3種類を所望の空隙率になるように混合した塗布材を集電体の表面上に付与し、乾燥又は重合反応させ、集電体から溶出可能な物質を溶出して空隙を形成することにより作製され」ることから、「導電体及び絶縁体を有する層」は「空隙」を有することは明らかである。 そして、引用発明1aでは、「空隙により、負極中で充電時に発生する負極活物質の析出空間空間を確保し」ていることから、「導電体及び絶縁体を有する層」は「負極中で充電時に発生する負極活物質の析出空間を確保し」ているといえ、また、(a)で述べたように、「導電体及び絶縁体を有する層」は「セパレータ」と「負極集電体」との間に位置する。 してみると、「セパレータ」と「負極集電体」との間に位置する「導電体及び絶縁体を有する層」が「負極中で充電時に発生する負極活物質の析出空間を確保し」ていることは、本件発明3の「前記セパレータと前記負極集電体との間の領域においてリチウムを有する析出物が析出することができる機能」に相当する構成を備えているといえる。 b 上記(a)ないし(d)及び上記「(ア)a」で検討した点も踏まえれば、本件発明3と引用発明1aとは、 「正極と、負極と、電解液と、 前記正極と前記負極との間のセパレータと、 前記セパレータと前記負極との間のシート状のスペーサと、を有し、 前記負極は、負極集電体を有し、 前記負極集電体は、前記スペーサと接する領域を有し、 前記電解液は、フッ素を有する無機塩を有し、 前記セパレータと前記負極集電体との間の領域においてリチウムを有する析出物が析出することができる機能を有するリチウムイオン二次電池。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点7) 本件発明3は「前記シート状のスペーサは、前記セパレータよりも空隙率が高」いのに対し、引用発明1aはその旨特定されていない点。 (相違点8) 負極に関し、本件発明3は「負極活物質を有さ」ないのに対し、引用発明1aはその旨特定されていない点。 (相違点9) 電解液に関し、本件発明3は「フッ素を含有するエチレンカーボネート」を有するのに対し、引用発明1aはその旨特定されていない点。 c 相違点についての判断 事案に鑑み、相違点9について判断する。 引用文献1の段落【0125】には、電解質の溶媒として「エチレンカーボネート」が使用できることが記載されているものの、「電解液」に「フッ素を含有するエチレンカーボネート」を有することは何等記載されていない。 よって、上記相違点9は実質的な相違である。 d 小括 したがって、相違点9は実質的な相違であるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明3は、引用文献1に記載された発明ではない。 (エ)本件発明4について a 本件発明4と引用発明1との対比 上記「(ア)a」で検討した点を踏まえ、本件発明4と引用発明1を対比する。 (a)引用発明1の「電解液」に含まれる「電解質としてLi+とBF4―又はPF6―からなる塩」は、本件発明4の「フッ素を有する無機塩」に相当する。 してみると、引用発明1の「電解液には電解質としてLi+とBF4―又はPF6―からなる塩が含まれる」ことは、本件発明4の「前記電解液は、フッ素を有する無機塩を有すること」に対応する。 ただし、電解液に関し、本件発明4は「フッ素を含有するエチレンカーボネート」を有するのに対し、引用発明1はその旨特定されていない点で相違する。 (b)本件発明4は、「前記正極、前記負極、前記セパレータ、及び前記スペーサは可撓性を有」するのに対し、引用発明1はその旨特定されていない点で相違する。 (c)引用発明1では、「負極は、集電体上の正極と電解液を介して対向する側に、導電体及び絶縁体を有する層を有し、該負極は、導電体、空隙を形成するための溶出可能な物質(空隙形成物質)、絶縁体の原料の3種類を所望の空隙率になるように混合した塗布材を集電体の表面上に付与し、乾燥又は重合反応させ、集電体から溶出可能な物質を溶出して空隙を形成することにより作製され」ることから、「導電体及び絶縁体を有する層」は「空隙」を有することは明らかである。 そして、引用発明1では、「空隙により、負極中で充電時に発生する負極活物質の析出空間空間を確保し」ていることから、「導電体及び絶縁体を有する層」は「負極中で充電時に発生する負極活物質の析出空間を確保し」ているといえ、また、(a)で述べたように、「導電体及び絶縁体を有する層」は「セパレータ」と「負極集電体」との間に位置する。 してみると、「セパレータ」と「負極集電体」との間に位置する「導電体及び絶縁体を有する層」が「負極中で充電時に発生する負極活物質の析出空間を確保し」ていることは、本件発明4の「前記セパレータと前記負極集電体との間の領域においてリチウムを有する析出物が析出することができる機能」に相当する構成を備えているといえる。 b よって、上記(a)ないし(c)及び上記「(ア)a」で検討した点も踏まえれば、本件発明4と引用発明1とは、 「正極と、負極と、電解液と、 前記正極と前記負極との間のセパレータと、 前記セパレータと前記負極との間のスペーサと、を有し、 前記負極は、負極集電体を有し、 前記負極集電体は、前記スペーサと接する領域を有し、 前記電解液は、フッ素を有する無機塩を有し、 前記セパレータと前記負極集電体との間の領域においてリチウムを有する析出物が析出することができる機能を有するリチウムイオン二次電池。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点10) 負極に関し、本件発明4は「負極活物質を有さ」ないのに対し、引用発明1はその旨特定されていない点。 (相違点11) 電解液に関し、本件発明4は「フッ素を含有するエチレンカーボネート」を有するのに対し、引用発明1はその旨特定されていない点。 (相違点12) 本件発明4は、「前記正極、前記負極、前記セパレータ、及び前記スペーサは可撓性を有」するのに対し、引用発明1はその旨特定されていない点。 c 相違点についての判断 事案に鑑み、相違点11について判断する。 相違点11は、上記相違点9と同じであり、上記相違点9に対する判断と同様な理由により実質的な相違である。 d 小括 したがって、相違点11は実質的な相違であるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明4は、引用文献1に記載された発明ではない。 (オ)本件発明5について 請求項5は請求項1ないし4をそれぞれ引用するものであり、本件発明5は、引用する本件発明1ないし4の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明1ないし4についての判断と同様の理由により、本件発明5は、引用文献1に記載された発明ではない。 (カ)まとめ 以上から、請求項1ないし請求項5に係る発明は、引用文献1に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、請求項1ないし請求項5に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものでない。 イ 引用文献2を引用例とする場合 (ア)本件発明1について a 本件発明1と引用発明2との対比 (a)引用発明2の「負極」として用いられる「第1電極」、「正極」として用いられる「第2電極」、「電解質」として使用される「電解液」は、本件発明1の「正極」、「負極」、「電解液」にそれぞれ相当する。 (b)本件発明1は「正極と前記負極との間のセパレータ」を有するのに対し、引用発明2はその旨特定されてない点で相違する。 (c)引用発明2においては、「充電時、第1電極の集電体表面及び空隙の壁部にリチウムを均一に析出させ、第1電極の集電体近辺での樹枝状結晶の生成を減少させる」から、「空隙」を有する「格子層」は、リチウムを析出するスペースを確保するものといえ、また、「樹枝状結晶の生成を減少させる」ことにより負極と正極間の短絡も防止できることは明らかである。 ここで、本件発明1の「スペーサ」に関し、本件特許明細書の段落【0071】に「セパレータと負極集電体との間に、スペーサを有していると、セパレータと負極集電体との間にリチウムが析出することができる領域を確保することができる。・・・・。また・・・・、セパレータ中に析出したリチウムが正負極間を短絡させる事故をスペーサを用いることで防ぐことができる。」と記載されていることから、本件発明1の「スペーサ」は、「リチウムが析出することができる領域を確保」し、「正負極間を短絡させる事故」を「防ぐ」ものといえる。 してみると、引用発明2の「格子層」は、本件発明1の「スペーサ」に対応する。 ただし、スペーサに関し、本件発明1は「前記セパレータと前記負極との間」に位置し、「(ただし、前記スペーサが導電体と絶縁体又は半導体を有する負極活物質保持体である場合、及び前記スペーサが格子層である場合を除く。)」と特定されているのに対し、引用発明2はその旨特定されていない点で相違する。 (d)引用発明2では「集電体上に格子層が設けられた第1電極は負極として」用いられるから、「負極」は「集電体」を有するといえ、引用発明2と本件発明1とは「前記負極は、負極集電体を有し」ている点で共通する。 ただし、負極に関し、本件発明1は「負極活物質を有さ」ないのに対し、引用発明2はその旨特定されていない点で相違する。 (e)引用発明2において「格子層は、第1電極の集電体の第2電極と対向する表面上にシート形状に形成され」るから、「負極」として用いられる「第1電極の集電体」は「格子層」と接しているといえる。 よって、引用発明2の「格子層は、第1電極の集電体の第2電極と対向する表面上にシート形状に形成され」ることは、本件発明1の「前記負極集電体は、前記スペーサと接する領域を有」することに相当するといえる。 (f)引用発明2の「電解液にはLiAsF6、LiBF4、LiPF6等のリチウム塩が含まれ」ることは、本件発明1の「前記電解液は、フッ素を有」することに相当する。 (g)引用発明2の「充電時、第1電極の集電体表面及び空隙の壁部にリチウムを均一に析出させ」ることは、本件発明1の「負極集電体は、充電時にリチウムを有する析出物が表面に析出することができる機能を有する」ことに相当する。 (h)引用発明2の「充電」可能な「リチウムイオン電池」は、本件発明1の「リチウムイオン二次電池」に相当する。 b よって、上記(a)ないし(h)によれば、本件発明1と引用発明2とは、 「正極と、負極と、電解液と、 スペーサと、を有し、 前記負極は、負極集電体を有し、 前記負極集電体は、前記スペーサと接する領域を有し、 前記電解液は、フッ素を有し、 前記負極集電体は、充電時にリチウムを有する析出物が表面に析出することができる機能を有するリチウムイオン二次電池。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点13) 本件発明1は「正極と前記負極との間のセパレータ」を有するのに対し、引用発明2はその旨特定されてない点。 (相違点14) スペーサに関し、本件発明1は「前記セパレータと前記負極との間」に位置し、「(ただし、前記スペーサが導電体と絶縁体又は半導体を有する負極活物質保持体である場合、及び前記スペーサが格子層である場合を除く。)」と特定されているのに対し、引用発明2はその旨特定されていない点。 (相違点15) 負極に関し、本件発明1は「負極活物質を有さ」ないのに対し、引用発明2はその旨特定されていない点。 c 相違点についての判断 事案に鑑み、相違点14について判断する。 引用発明2の「格子層」は、本件発明1から除かれた上記「格子層」に相当するから、上記相違点14は実質的な相違である。 d 小括 したがって、相違点14は実質的な相違であるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、引用文献2に記載された発明ではない。 (イ)本件発明2について a 本件発明2と引用発明2との対比 上記「(ア)a」で検討した点を踏まえ、本件発明2と引用発明2を対比する。 引用発明2では、「第1電極の集電体の第2電極と対向する表面上にシート形状に形成され」た「格子層」は「多数の空隙を有し」ており、「充電時、第1電極の集電体表面及び空隙の壁部にリチウム」が「均一に析出」するのであるから、引用発明2の「負極」として用いられる「第1電極の集電体」は、「格子層」と「電解液」に接しているといえる。 してみると、引用発明2において、「負極」として用いられる「第1電極の集電体」が「格子層」と「電解液」に接していることは、本件発明2の「負極集電体は、前記スペーサと接する領域と、前記電解液と接する領域とを有」することに相当する。 b よって、上記「(ア)a」で検討した点も踏まえれば、本件発明2と引用発明2とは、 「正極と、負極と、電解液と、 スペーサと、を有し、 前記負極は、負極集電体を有し、 前記負極集電体は、前記スペーサと接する領域と、前記電解液と接する領域とを有し、 前記電解液は、フッ素を有し、 前記負極集電体は、充電時にリチウムを有する析出物が表面に析出することができる機能を有するリチウムイオン二次電池。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点16) 本件発明2は「正極と前記負極との間のセパレータ」を有するのに対し、引用発明2はその旨特定されてない点。 (相違点17) スペーサに関し、本件発明2は「前記セパレータと前記負極との間」に位置し、「(ただし、前記スペーサが導電体と絶縁体又は半導体を有する負極活物質保持体である場合、及び前記スペーサが格子層である場合を除く。)」と特定されているのに対し、引用発明2はその旨特定されていない点。 (相違点18) 負極に関し、本件発明2は「負極活物質を有さ」ないのに対し、引用発明2はその旨特定されていない点。 c 相違点についての判断 事案に鑑み、相違点17について判断する。 相違点17は相違点14と同じであり、相違点14に対する判断と同様な理由により相違点17は実質的な相違である。 d 小括 したがって、相違点17は実質的な相違であるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、引用文献2に記載された発明ではない。 (ウ)本件発明3について a 本件発明3と引用発明2との対比 上記「(ア)a」で検討した点を踏まえ、本件発明3と引用発明2を対比する。 (a)引用発明2の「格子層」は「シート形状に形成され」る。そして、上記「(ア)a(c)」で検討した点を踏まえれば、引用発明2の「シート形状に形成」される「格子層」は、本件発明3の「シート状のスペーサ」に対応する。 ただし、シート状のスペーサに関し、本件発明3は「前記セパレータと前記負極との間」に位置するのに対し、引用発明2はその旨特定されていない点で相違する。 (b)本件発明3は「前記シート状のスペーサは、前記セパレータよりも空隙率が高」いのに対し、引用発明2はその旨特定されていない点で相違する。 (c)引用発明2の「電解液」に含まれる「LiAsF6、LiBF4、LiPF6等のリチウム塩」は、本件発明3の「フッ素を有する無機塩」に相当する。 してみると、引用発明2の「電解液にはLiAsF6、LiBF4、LiPF6等のリチウム塩が含まれ」ることは、本件発明3の「前記電解液は、フッ素を有する無機塩を有すること」に対応する。 ただし、電解液に関し、本件発明3は「フッ素を含有するエチレンカーボネート」を有するのに対し、引用発明2はその旨特定されていない点で相違する。 (d)引用発明2の「充電時、第1電極の集電体表面及び空隙の壁部にリチウムを均一に析出させ」ることは、本件発明3の「リチウムを有する析出物が析出することができる機能を有する」ことに対応する。 ただし、リチウムを有する析出物が析出することができる機能に関し、本件発明3は「セパレータと前記負極集電体との間の領域」において当該機能を有するのに対し、引用発明2はその旨特定されていない点で相違する。 b よって、上記(a)ないし(d)及び上記「(ア)a」で検討した点も踏まえれば、本件発明3と引用発明2とは、 「正極と、負極と、電解液と、 シート状のスペーサと、を有し、 前記負極は、負極集電体を有し、 前記負極集電体は、前記スペーサと接する領域を有し、 前記電解液は、フッ素を有する無機塩を有し、 リチウムを有する析出物が析出することができる機能を有するリチウムイオン二次電池。」 である点で一致し、以下の点で一応相違する。 (相違点19) 本件発明3は「正極と前記負極との間のセパレータ」を有するのに対し、引用発明2はその旨特定されてない点。 (相違点20) シート状のスペーサに関し、本件発明3は「前記セパレータと前記負極との間」に位置し、「前記セパレータよりも空隙率が高」いのに対し、引用発明2はその旨特定されていない点。 (相違点21) 負極に関し、本件発明3は「負極活物質を有さ」ないのに対し、引用発明2はその旨特定されていない点。 (相違点22) 電解液に関し、本件発明3は「フッ素を含有するエチレンカーボネート」を有するのに対し、引用発明2はその旨特定されていない点。 (相違点23) 本件発明3は「セパレータと前記負極集電体との間の領域」においてリチウムを有する析出物が析出することができる機能を有するのに対し、引用発明2はその旨特定されていない点。 c 相違点についての判断 事案に鑑み、相違点22について判断する。 引用文献2の段落【0019】、【0022】、【0063】には、電解質の溶媒として「エチレンカーボネート」を使用することが記載されているものの、「電解液」に「フッ素を含有するエチレンカーボネート」を有することは何等記載されていない。 よって、上記相違点22は実質的な相違である。 d 小括 したがって、相違点22は実質的な相違であるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明3は、引用文献2に記載された発明ではない。 (エ)本件発明4について a 本件発明4と引用発明2との対比 上記「(ア)a」で検討した点を踏まえ、本件発明4と引用発明2を対比する。 (a)引用発明2の「電解液」に含まれる「LiAsF6、LiBF4、LiPF6等のリチウム塩」は、本件発明4の「フッ素を有する無機塩」に相当する。 してみると、引用発明2の「電解液にはLiAsF6、LiBF4、LiPF6等のリチウム塩が含まれ」ることは、本件発明4の「前記電解液は、フッ素を有する無機塩を有すること」に対応する。 ただし、電解液に関し、本件発明4は「フッ素を含有するエチレンカーボネート」を有するのに対し、引用発明2はその旨特定されていない点で相違する。 (b)本件発明4は「前記正極、前記負極、前記セパレータ、及び前記スペーサは可撓性を有」するのに対し、引用発明2はその旨特定されていない点で相違する。 (c)引用発明2の「充電時、第1電極の集電体表面及び空隙の壁部にリチウムを均一に析出させ」ることは、本件発明4の「リチウムを有する析出物が析出することができる機能を有する」ことに対応する。 ただし、リチウムを有する析出物が析出することができる機能に関し、本件発明4は「セパレータと前記負極集電体との間の領域」において当該機能を有するのに対し、引用発明2はその旨特定されていない点で相違する。 b よって、上記(a)ないし(c)および上記「(ア)a」で検討した点も踏まえれば、本件発明4と引用発明2とは、 「正極と、負極と、電解液と、 スペーサと、を有し、 前記負極は、負極集電体を有し、 前記負極集電体は、前記スペーサと接する領域を有し、 前記電解液は、フッ素を有する無機塩を有し、 リチウムを有する析出物が析出することができる機能を有するリチウムイオン二次電池。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点24) 本件発明4は「正極と前記負極との間のセパレータ」を有するのに対し、引用発明2はその旨特定されてない点。 (相違点25) スペーサに関し、本件発明4は「前記セパレータと前記負極との間」に位置するのに対し、引用発明2はその旨特定されていない点。 (相違点26) 負極に関し、本件発明4は「負極活物質を有さ」ないのに対し、引用発明2はその旨特定されていない点。 (相違点27) 電解液に関し、本件発明4は「フッ素を含有するエチレンカーボネート」を有するのに対し、引用発明2はその旨特定されていない点。 (相違点28) 本件発明4は「前記正極、前記負極、前記セパレータ、及び前記スペーサは可撓性を有」するのに対し、引用発明2はその旨特定されていない点。 (相違点29) 本件発明4は「セパレータと前記負極集電体との間の領域」においてリチウムを有する析出物が析出することができる機能を有するのに対し、引用発明2はその旨特定されていない点。 c 相違点についての判断 事案に鑑み、相違点27について判断する。 相違点27は上記相違点22と同じであり、相違点22に対する判断と同様に、相違点27は実質的な相違である。 d 小括 したがって、相違点27は実質的な相違であるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明4は、引用文献2に記載された発明ではない。 (オ)本件発明5について 請求項5は請求項1ないし4をそれぞれ引用するものであり、本件発明5は、引用する本件発明1ないし4の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明1ないし4についての判断と同様の理由により、本件発明5は、引用文献2に記載された発明ではない。 (カ)まとめ 以上から、請求項1ないし請求項5に係る発明は、引用文献2に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、請求項1ないし請求項5に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものでない。 (2)理由2(進歩性)について ア 引用文献1を主引用例とする場合 (ア)本件発明3について a 本件発明3と引用発明1aとの対比 上記「(1)ア(ウ)b」で検討したように、本件発明3と引用発明1aとの一致点、相違点は以下のとおりである。 (一致点) 「正極と、負極と、電解液と、 前記正極と前記負極との間のセパレータと、 前記セパレータと前記負極との間のシート状のスペーサと、を有し、 前記負極は、負極集電体を有し、 前記負極集電体は、前記スペーサと接する領域を有し、 前記電解液は、フッ素を有する無機塩を有し、 前記セパレータと前記負極集電体との間の領域においてリチウムを有する析出物が析出することができる機能を有するリチウムイオン二次電池。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点7) 本件発明3は「前記シート状のスペーサは、前記セパレータよりも空隙率が高」いのに対し、引用発明1aはその旨特定されていない点。 (相違点8) 負極に関し、本件発明3は「負極活物質を有さ」ないのに対し、引用発明1aはその旨特定されていない点。 (相違点9) 電解液に関し、本件発明3は「フッ素を含有するエチレンカーボネート」を有するのに対し、引用発明1aはその旨特定されていない点。 b 相違点に対する判断 事案に鑑み、相違点9から検討する。 上記「(1)ア(ウ)c」で検討したように、引用文献1の段落【0125】には、電解質の溶媒として「エチレンカーボネート」が使用できることが記載されているものの、「電解液」に「フッ素を含有するエチレンカーボネート」を有することは何等記載されていない。 そして、リチウムイオン二次電池の「電解液」に「フッ素を含有するエチレンカーボネート」を含ませる記載や示唆を有する証拠は見当たらず、また、引用発明1aの「電解液」に「フッ素を含有するエチレンカーボネート」を含ませる理由も見当たらない。 よって、相違点9に係る構成は、引用発明1aに基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。 c 小括 以上から、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明3は、引用発明1aに基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 (イ)本件発明5について 請求項5は請求項3を引用するものであり、本件発明5は、本件発明3の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明3についての判断と同様な理由により、本件発明5は、引用発明1aに基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 (ウ)まとめ 以上から、請求項3、5に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、請求項3、5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 イ 引用文献2を主引用例とする場合 (ア)本件発明1について a 本件発明1と引用発明2との対比 上記「(1)イ(ア)b」で検討したように、本件発明1と引用発明2との一致点、相違点は以下のとおりである。 (一致点) 「正極と、負極と、電解液と、 スペーサと、を有し、 前記負極は、負極集電体を有し、 前記負極集電体は、前記スペーサと接する領域を有し、 前記電解液は、フッ素を有し、 前記負極集電体は、充電時にリチウムを有する析出物が表面に析出することができる機能を有するリチウムイオン二次電池。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点13) 本件発明1は「正極と前記負極との間のセパレータ」を有するのに対し、引用発明2はその旨特定されてない点。 (相違点14) スペーサに関し、本件発明1は「前記セパレータと前記負極との間」に位置し、「(ただし、前記スペーサが導電体と絶縁体又は半導体を有する負極活物質保持体である場合、及び前記スペーサが格子層である場合を除く。)」と特定されているのに対し、引用発明2はその旨特定されていない点。 (相違点15) 負極に関し、本件発明1は「負極活物質を有さ」ないのに対し、引用発明2はその旨特定されていない点。 b 相違点に対する判断 事案に鑑み、相違点14から検討する。 引用文献2の段落【0004】、【0005】によれば、電極界面での樹枝状結晶の生成およびそれに伴う劣化を実質的に起こさずに、電池の電気化学的性能を最大限に高める電極および当該電極を使用した電池を提供するという課題を解決するために、集電体の表面に空隙を有する格子層を設け、樹枝状結晶の生成を抑制し、クーロン効率を向上させるものであるから、該「格子層」は課題を解決するための必要不可欠な構成である。 してみると、引用発明2において必要不可欠な構成である「格子層」を含まないものとすることは、当業者に動機付けられないことである。 よって、相違点14に係る構成は、引用発明2に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。 c 小括 以上から、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明2に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 (イ)本件発明2について a 本件発明2と引用発明2との対比 上記「(1)イ(イ)b」で検討したように、本件発明2と引用発明2との一致点、相違点は以下のとおりである。 (一致点) 「正極と、負極と、電解液と、 スペーサと、を有し、 前記負極は、負極集電体を有し、 前記負極集電体は、前記スペーサと接する領域と、前記電解液と接する領域とを有し、 前記電解液は、フッ素を有し、 前記負極集電体は、充電時にリチウムを有する析出物が表面に析出することができる機能を有するリチウムイオン二次電池。」 (相違点16) 本件発明2は「正極と前記負極との間のセパレータ」を有するのに対し、引用発明2はその旨特定されてない点。 (相違点17) スペーサに関し、本件発明2は「前記セパレータと前記負極との間」に位置し、「(ただし、前記スペーサが導電体と絶縁体又は半導体を有する負極活物質保持体である場合、及び前記スペーサが格子層である場合を除く。)」と特定されているのに対し、引用発明2はその旨特定されていない点。 (相違点18) 負極に関し、本件発明2は「負極活物質を有さ」ないのに対し、引用発明2はその旨特定されていない点。 b 相違点に対する判断 事案に鑑み、相違点17から検討する。 相違点17は上記相違点14と同じであり、相違点14に対する判断と同様な理由により、相違点17に係る構成は、引用発明2に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。 c 小括 以上から、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、引用発明2に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 (ウ)本件発明3について a 本件発明3と引用発明2との対比 上記「(1)イ(ウ)b」で検討したように、本件発明3と引用発明2との一致点、相違点は以下のとおりである。 (一致点) 「正極と、負極と、電解液と、 シート状のスペーサと、を有し、 前記負極は、負極集電体を有し、 前記負極集電体は、前記スペーサと接する領域を有し、 前記電解液は、フッ素を有する無機塩を有し、 リチウムを有する析出物が析出することができる機能を有するリチウムイオン二次電池。」 (相違点19) 本件発明3は「正極と前記負極との間のセパレータ」を有するのに対し、引用発明2はその旨特定されてない点。 (相違点20) シート状のスペーサに関し、本件発明3は「前記セパレータと前記負極との間」に位置し、「前記セパレータよりも空隙率が高」いのに対し、引用発明2はその旨特定されていない点。 (相違点21) 負極に関し、本件発明3は「負極活物質を有さ」ないのに対し、引用発明2はその旨特定されていない点。 (相違点22) 電解液に関し、本件発明3は「フッ素を含有するエチレンカーボネート」を有するのに対し、引用発明2はその旨特定されていない点。 (相違点23) 本件発明3は「セパレータと前記負極集電体との間の領域」においてリチウムを有する析出物が析出することができる機能を有するのに対し、引用発明2はその旨特定されていない点。 b 相違点に対する判断 事案に鑑み、相違点22から検討する。 上記「(1)イ(ウ)c」で検討したように、引用文献2の段落【0019】、【0022】、【0063】には、電解質の溶媒として「エチレンカーボネート」を使用することが記載されているものの、「電解液」に「フッ素を含有するエチレンカーボネート」を使用することは何等記載されていない。 そして、リチウムイオン二次電池の「電解液」に「フッ素を含有するエチレンカーボネート」を含ませる記載や示唆を有する証拠は見当たらず、また、引用発明2の「電解液」に「フッ素を含有するエチレンカーボネート」を含ませる理由も見当たらない。 よって、相違点22に係る構成は、引用発明2に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。 c 小括 以上から、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明3は、引用発明2に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 (エ)本件発明4について a 本件発明4と引用発明2との対比 上記「(1)イ(エ)b」で検討したように、本件発明4と引用発明2との一致点、相違点は以下のとおりである。 (一致点) 「正極と、負極と、電解液と、 シート状のスペーサと、を有し、 前記負極は、負極集電体を有し、 前記負極集電体は、前記スペーサと接する領域を有し、 前記電解液は、フッ素を有する無機塩を有し、 リチウムを有する析出物が析出することができる機能を有するリチウムイオン二次電池。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点24) 本件発明4は「正極と前記負極との間のセパレータ」を有するのに対し、引用発明2はその旨特定されてない点。 (相違点25) スペーサに関し、本件発明4は「前記セパレータと前記負極との間」に位置するのに対し、引用発明2はその旨特定されていない点。 (相違点26) 負極に関し、本件発明4は「負極活物質を有さ」ないのに対し、引用発明2はその旨特定されていない点。 (相違点27) 電解液に関し、本件発明4は「フッ素を含有するエチレンカーボネート」を有するのに対し、引用発明2はその旨特定されていない点。 (相違点28) 本件発明4は「前記正極、前記負極、前記セパレータ、及び前記スペーサは可撓性を有」するのに対し、引用発明2はその旨特定されていない点。 (相違点29) 本件発明4は「セパレータと前記負極集電体との間の領域」においてリチウムを有する析出物が析出することができる機能を有するのに対し、引用発明2はその旨特定されていない点。 b 相違点に対する判断 事案に鑑み、相違点27から検討する。 相違点27は上記相違点22と同じであり、相違点22に対する判断と同様な理由により、相違点27に係る構成は、引用発明2に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。 c 小括 以上から、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明4は、引用発明2に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 (オ)本件発明5について 請求項5は請求項1ないし4をそれぞれ引用するものであり、本件発明5は、引用する本件発明1ないし4の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明1ないし4についての判断と同様な理由により、本件発明5は、引用発明2に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 (カ)まとめ 以上から、請求項1ないし請求項5に係る発明は、引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものではないから、請求項1ないし請求項5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでない。 第5 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由について 1 訂正前の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議申立理由の概要 (1)申立理由1(明確性) 請求項1ないし5に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備なため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対しされたものである。 (2)申立理由2(進歩性) 請求項1ないし5に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第2号証に記載された発明及び甲第3ないし甲第6号証に記載された技術に基いて、または、甲第6号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 2 提出された証拠 異議申立人が提出した証拠は次のとおりである。 甲第1号証:特開平8-171901号公報 甲第2号証:特開平10-12279号公報 甲第3号証:特開平5-109435号公報 甲第4号証:特開平7-302613号公報 甲第5号証:特開2001-52683号公報 甲第6号証:米国特許出願公開第2011/0104571号明細書 3 甲各号証の記載事項 (1)甲第1号証、甲第5号証 甲第1号証及び甲第5号証は取消理由通知において引用した引用文献であって、甲第1号証及び甲第5号証に記載された事項は上記「第4 2」の「(1)」及び「(2)」で、述べたとおりである。 また、甲第1号証には、上記「第4 2」の「(1)」で述べたのと同様に、以下の次の各発明(以下、「甲1発明1」、「甲1発明2」という。)が記載され、また、甲第5号証には、上記「第4 2」の「(2)」で述べたのと同様に、以下の発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されている。 甲1発明1 「負極と正極が電解液に接して配され、負極と正極の間にセパレータをはさんで卷いたスパイラル式円筒型電池であるリチウム二次電池であって、 負極は、集電体上の正極と電解液を介して対向する側に、導電体及び絶縁体を有する層を有し、該負極は、導電体、空隙を形成するための溶出可能な物質(空隙形成物質)、絶縁体の原料の3種類を所望の空隙率になるように混合した塗布材を集電体の表面上に付与し、乾燥又は重合反応させ、集電体から溶出可能な物質を溶出して空隙を形成することにより作製され、 空隙により、負極中で充電時に発生する負極活物質の析出空間を確保し、電解液が浸透しやすくなりイオンの拡散を促進させ、 二次電池の充電により負極活物質が電気化学的に正極から負極へ導入され、 電解液には電解質としてLi+とBF4―又はPF6―からなる塩が含まれ、 正極は正極集電体と正極活物質から構成され、 正極活物質はセパレータに接しているリチウム二次電池。」 甲1発明2 「負極と正極が電解液に接して配され、負極と正極の間にセパレータをはさんで卷いたスパイラル式円筒型電池であるリチウム二次電池であって、 負極は、集電体上の正極と電解液を介して対向する側に、導電体及び絶縁体を有する層を有し、該負極は、導電体、空隙を形成するための溶出可能な物質(空隙形成物質)、絶縁体の原料の3種類を所望の空隙率になるように混合した塗布材を集電体の表面上に付与し、乾燥又は重合反応させ、集電体から溶出可能な物質を溶出して空隙を形成することにより作製され、 空隙により、負極中で充電時に発生する負極活物質の析出空間を確保し、電解液が浸透しやすくなりイオンの拡散を促進させ、 二次電池の充電により負極活物質が電気化学的に正極から負極へ導入され、 電解液には電解質としてLi+とBF4―又はPF6―からなる塩が含まれ、 正極は正極集電体と正極活物質から構成され、 正極活物質はセパレータに接しており、 空隙の空隙率が50%であるリチウム二次電池。」 甲5発明 「第1電極、第2電極、電解質及び格子層を有するリチウムイオン電池であって、 格子層は、第1電極の集電体の第2電極と対向する表面上にシート形状に形成され、絶縁性の材料からなり、多数の空隙を有し、集電体全面に対する空隙部分の占める面積(リチウムが析出しうる集電体の面積)は90%以上であり、 集電体上に格子層が設けられた第1電極は負極として、第2電極は集電体上に正極活物質を有する正極としてそれぞれ用いられ、 電解質として電解液が使用され、電解液にはLiAsF6、LiBF4、LiPF6等のリチウム塩が含まれ、 充電時、第1電極の集電体表面及び空隙の壁部にリチウムを均一に析出させ、第1電極の集電体近辺での樹枝状結晶の生成を減少させる、リチウムイオン電池。」 (2)甲第2号証 ア 甲第2号証には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、リチウムまたはリチウム合金を負極活物質とする負極と、充放電可能な物質からなる正極とがセパレータを介して対向配置された構造を有する金属リチウム2次電池に関する。 【0002】 【従来の技術およびその問題点】近年、携帯電話や携帯ビデオカメラ、ノートパソコン等の携帯用電気機器の普及に伴い、電源となる電池の大容量化、高エネルギ密度化のニーズが急速に高まっている。そのような中で鉛やニッカドに代る新しい2次電池として、金属リチウム2次電池が注目を集めている。これは、約3Vという高い起電力と、活物質にかさ密度の小さい金属リチウムを採用することにより、同容量の鉛電池やニッカド電池に比べ3~4倍の高い重量エネルギ密度を持つため、先述した高エネルギ密度化のニーズに最適である。 【0003】しかしながら、この電池は充放電を繰り返していくうちに微小な内部短絡を起こすことによって容量が減少し、その結果サイクル寿命が短いという問題がある。特に、携帯用電機機器のニーズに応えるべく電極を長尺巻取り構造にして大容量化を図ると、この現象はいっそう顕著になり、最悪数サイクルで短絡に至ってしまう。このような問題が解決されてないため、金属リチウムの大容量電池はいまだ実用に至っていないというのが現状である。 【0004】内部短絡の原因は、一般にデンドライトとよばれる針状の析出リチウムが、充電にともない負極表面から成長してセパレータを貫通し、正極に達することによるものと考えられている。しかし、どのようにしてリチウムが針状に析出するのか等、詳細なメカニズムについて材料や構造の両面から様々な研究が行われているものの、いまだ決定的な解決方法は出されていない。」 「【0009】 【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために採用した請求項1記載の手段によれば、負極表面上に析出したリチウムが負極または正極とセパレータとの間に形成された緩衝空隙に収納されるため、セパレータの損傷やリチウムの異常析出を防いで内部短絡を抑制し、電池の長寿命化を図ることができる。」 「【0014】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。 〔実施例1〕図1は本実施例に係る金属リチウム2次電池の巻取り電極の斜視図であり、図2はその巻取り電極の幅方向における断面図である。 【0015】図1および図2において、1はアルミニウムの箔から成る集電体の両面にリチウムマンガン酸化物等の正極活物質を塗布または蒸着等により結着した正極、2はポリエチレンまたはポリプロピレンから成るセパレータ、3は銅の箔から成る集電体の両面に金属リチウムまたはその合金を圧着した負極、4はセパレータ2と負極3の間に緩衝空隙4aを付与するために挿入された絶縁材料からなるスペーサ(絶縁構造部材)、5は正極1から電流を取り出す正極リード、6は負極3から電流を取り出す負極リードである。また、図2において、7は負極3の表面に析出した金属リチウムを表す。 【0016】この金属リチウム2次電池の巻取り電極は、セパレータ2、正極1、セパレータ2、スペーサ4、負極3、スペーサ4の各部材を順に積層して構成された1組の電極構成単位を長尺にして巻取った、いわゆるスパイラルまたは巻取り電極構造のものである。スペーサ4はセパレータ2および負極3の軸方向の両端に位置し、セパレータ2および負極3の長手方向に沿って帯状に配置されている。このため、正極1、セパレータ2、負極3、セパレータ2の4つの部材を1単位として巻取った場合においてもセパレータ2と負極3との間にほぼ一定の距離の緩衝空隙4aが形成される。」 「【0027】〔実施例3〕図6は本実施例に係る金属リチウム2次電池の巻取り電極の斜視図であり、図7はその巻取り電極の幅方向における断面図である。本実施例の金属リチウム2次電池の巻取り電極は、セパレータ2、正極1、セパレータ2、絶縁構造部材8、負極3、絶縁構造部材8の各部材を順に積層して構成された1組の電極構成単位を長尺にして巻取った構造のものである。すなわち、セパレータ2と負極3との間に不織布のような多孔質の絶縁構造部材8を挿入する構成である。」 [図:0001403662000006.jpg] [図:0001403662000007.jpg] イ 甲第2号証の上記記載事項により、次のことがいえる。 (ア)段落【0001】によれば、引用文献1には、リチウムまたはリチウム合金を負極活物質とする負極と、充放電可能な物質からなる正極とがセパレータを介して対向配置された構造を有する金属リチウム2次電池が記載されている。 (イ)段落【0015】によれば、金属リチウム2次電池は、セパレータ2と負極3の間に緩衝空隙4aを付与するために挿入された絶縁材料からなるスペーサを有し、段落【0016】によれば、スペーサ4はセパレータ2および負極3の軸方向の両端に位置し、セパレータ2および負極3の長手方向に沿って帯状に配置されている。 (ウ)段落【0016】によれば、金属リチウム2次電池では、正極1、セパレータ2、スペーサ4、負極3の順に積層して巻取った巻取り電極構造が形成される。 (エ)段落【0015】によれば、金属リチウム2次電池の負極3は、銅の箔から成る集電体の両面に金属リチウムまたはその合金を圧着されたものである。 (オ)段落【0004】及び【0015】によれば、充電時に負極3の表面に金属リチウムが析出されるといえる。 ウ よって、上記(ア)ないし(オ)から、甲第2号証には、次の発明(以下、「甲2発明1」という。)が記載されている。 「リチウムまたはリチウム合金を負極活物質とする負極と、充放電可能な物質からなる正極とがセパレータを介して対向配置された構造を有する金属リチウム2次電池であって、 セパレータと負極の間に緩衝空隙を付与するために挿入された絶縁材料からなるスペーサを有し、スペーサはセパレータおよび負極の軸方向の両端に位置し、セパレータおよび負極の長手方向に沿って帯状に配置され、 正極、セパレータ、スペーサ、負極の順に積層して巻取った巻取り電極構造が形成され、 負極は、銅の箔から成る集電体の両面に金属リチウムまたはその合金を圧着されたものであり、 充電時に負極の表面に金属リチウムが析出される金属リチウム2次電池。」 エ また、甲第2号証に記載された事項により、次のこともいえる。 (カ)段落【0027】によれば、実施例3のリチウム二次電池では、セパレータ2と負極3との間に不織布のような多孔質の絶縁構造部材8が挿入され、正極1、セパレータ2、絶縁構造部材8、負極3を順に積層し巻取った構造が形成されるといえる。 よって、上記(カ)、及び、上記ウで述べた点から、甲第2号証に記載された実施例3に着目すると、次の発明(以下、「甲2発明2」という。)も記載されている。 「リチウムまたはリチウム合金を負極活物質とする負極と、充放電可能な物質からなる正極とがセパレータを介して対向配置された構造を有する金属リチウム2次電池であって、 セパレータと負極との間に不織布のような多孔質の絶縁構造部材が挿入され、 正極、セパレータ、絶縁構造部材、負極を順に積層し巻取った構造が形成され、 負極は、銅の箔から成る集電体の両面に金属リチウムまたはその合金を圧着されたものであり、 充電時に負極の表面に金属リチウムが析出される金属リチウム2次電池。」 (3)甲第3号証 ア 甲第3号証には、次の事項が記載されている(下線は、当審が付与した。)。 「【請求項1】金属リチウムを活物質とする負極と、正極とがセパレータを間に介在して、渦巻状に卷回された極板群と非水電解液とが容器内に封入された非水電解液二次電池であって、上記セパレータの幅を正極や負極の幅よりも大きくし、セパレータの幅が広くなったために正極や負極に対向しえなくなったセパレータの周辺部分に電解液に不溶性で、かつ電気絶縁性の物質を少なくとも正極または負極のうちで電極厚みの厚い方の厚みの2分の1以上の厚みに塗布したことを特徴とする円筒型非水電解液二次電池。」 「【0013】 【実施例】次に、本発明を好適な実施例を用いて詳細に説明する。 【0014】下記の試験においては、以下に示すような構成の円筒型のリチウム二次電池を作製し、試験に用いた。 ・・・(中略)・・・。 【0017】電解液:1.5M濃度の六フッ化ひ酸リチウム(LiAsF6)のエチレンカーボネート(EC)/2メチルテトラヒドロフラン(2MeTHF)(体積比1/1)溶液。」 イ 上記アから、甲第3号証には、次の技術(以下、「甲第3号証に記載された技術」という。)が記載されている。 「金属リチウムを活物質とする負極と、正極とがセパレータを間に介在して、渦巻状に卷回された極板群と非水電解液とが容器内に封入された非水電解液二次電池であって、電解液に六フッ化ひ酸リチウム(LiAsF6)を含ませたこと。」 (4)甲第4号証 ア 甲第4号証には、次の事項が記載されている(下線は、当審が付与した。)。 「【請求項1】 リチウム金属およびその合金、または充放電においてリチウムイオンを吸収および放出する負極と、リチウムイオンを吸収および放出する正極と、リチウムイオン導電性を有する電解質から構成される二次電池において、フッ化水素を20ppm~400ppm含有した電解質の使用を特徴とするリチウム系二次電池。」 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、リチウム系二次電池の改良に関するもので、フッ化水素を添加剤として使用することにより、リチウム系二次電池の長寿命化と高安全性を提供するものである。 【0002】 【従来の技術】近年、各種の電子機器の小型化およびポータブル化に伴ない、小型軽量で高いエネルギー密度を有する二次電池の開発が望まれている。また、二酸化炭素などの化学物質による大気汚染の増加による環境破壊が問題となり、電気自動車や余剰のエネルギーを蓄積し有効にエネルギーを使用するために高効率、高出力、高エネルギー密度、軽量を特徴とする二次電池の開発が切望されている。特に、リチウム系負極を使用した二次電池は、そのエネルギー密度が従来の電池に比較して数倍あるいはそれ以上に高く、実用化が待たれている。 ・・・(中略)・・・。 【0004】電解質としては、非プロトン性有機溶媒にLiClO4、LiPF6、LiBF4、 LiAsF6、LiCF3SO3などの金属塩を溶解したものが使用される。非プロトン性有機溶媒としてはプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、1,2?ジメトキシエタン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等が、混合あるいは単独で用いられる。これらの非水電解液は正極と負極を分離するためのセパレーター(多孔質膜)に含浸して使用されたり高粘性を有する高分子樹脂に添加し、高粘性状態にして用いたり、あるいはゲル化して流動性をなくした状態で使用される。また、イオン導電性固体高分子電解質が用いられている。」 イ 上記アから、甲第4号証には、次の技術(以下、「甲第4号証に記載された技術」という。)が記載されている。 「リチウム系二次電池において、電解質として、非プロトン性有機溶媒にLiPF6、LiBF4、 LiAsF6、LiCF3SO3などの金属塩を溶解したものを使用すること。」 (5)甲第6号証 ア 甲第6号証には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。 「[0051]Most significantly, lithium metal (including pure lithium, alloys of lithium with other metal elements, or lithium-containing compounds) still provides the highest anode specific capacity as compared to essentially all anode active materials (except pure silicon, but silicon has pulverization issues discussed above). Lithium metal would be an ideal anode material in a lithium metal or lithium-air secondary battery if dendrite related issues could be addressed.」 (当審仮訳: [0051]最も重要なことに、リチウム金属(純粋なリチウム、他の金属元素とリチウムの合金、又はリチウム含有化合物を含む)は、実質的にすべてのアノード活性材料(純粋なシリコンを除く、シリコンには上記の粉砕の問題がある)と比較して、最も高い負極比容量を提供する。リチウム金属は、デンドライト関連の問題に対処できれば、リチウム金属またはリチウム空気二次電池の理想的なアノード材料になる。) 「[0067]Another preferred embodiment of the present invention is a lithium secondary battery comprising a positive electrode (cathode), a negative electrode (anode), and a non-aqueous electrolyte (or combined electrolyte and a separator) disposed between the negative electrode and the positive electrode. The anode comprises a nano-structured composition composed of interconnected conductive nano-filaments having pores and stabilized lithium-based particles residing in these pores.」 (当審仮訳: [0067]本発明の別の好ましい実施形態は、正極(カソード)と、負極(アノード)、及び負極と正極との間に配置される非水性電解質(または電解質およびセパレータ)を含むリチウム二次電池である。アノードは、細孔を有する相互接続された導電性ナノフィラメントおよびこれらの細孔内に存在する安定化リチウム系粒子からなるナノ構造組成物を含む。) 「[0075]The presently invented nano-structured material technology has several major advantages, summarized as follows: [0076](1) The stabilized lithium particles can be mixed with the nano-filaments to form a 3-D integrated structure in a real battery manufacturing environment since the stabilized lithium particles are relatively stable with respect to air and air-born moisture for a reasonable period of time.」 (当審仮訳: [0075]本発明のナノ構造材料の技術は、いくつかの主要な利点をまとめると次のとおりである。 [0076](1)安定化されたリチウム粒子は、適当な時間の間、空気及び空気中の湿分に対して比較的安定しているので、実際の電池製造環境において3-D集積構造を形成するために、ナノフィラメントと混合することができる。) 「[0086]FIG. 3 Schematic of a lithium metal cell according to a preferred embodiment of the present invention. Stabilized lithium particles 112 are dispersed in the pores of an integrated 3-D structure 110 of conductive nano-filaments prior to the first discharge cycle. Upon discharging, lithium ions move to the cathode side, but the 3-D structure stays to bridge the anode current collector to the electrolyte-separator layer. Upon re-charging, lithium ions return to the anode side, naturally depositing a thin layer of lithium onto the surface of conductive filaments.」 (当審仮訳: [0086]図3は、本発明の好ましい実施形態によるリチウム金属セルの概念図。安定化リチウム粒子112は、最初の放電サイクルの前に、導電性ナノフィラメントの集積3-D構造体110の細孔内に分散されている。放電時に、リチウムイオンはカソード側に移動するが、3-D構造は、アノード集電体を電解質セパレータ層にブリッジするために留まっている。再充電時に、リチウムイオンはアノード側に戻り、導電性フィラメントの表面にリチウムの薄層を自然に堆積させる。) 「[0094]This invention is related to anode materials for high-capacity lithium metal or lithium-air secondary batteries, which are preferably secondary batteries based on a non-aqueous electrolyte, a polymer gel electrolyte, a soft matter phase electrolyte, a solid-state electrolyte, or a composite electrolyte. The shape of a lithium secondary battery can be cylindrical, square, button-like, etc. The present invention is not limited to any battery shape or configuration. [0095]As an example, a cylindrical battery configuration is schematically shown in FIG. 1. A cylindrical case 10 made of stainless steel has, at the bottom thereof, an insulating body 12. An assembly 14 of electrodes is housed in the cylindrical case 10 such that a strip-like laminate body, comprising a positive electrode 16, a separator 18, and a negative electrode 20 stacked in this order, is spirally wound with a separator being disposed at the outermost side of the electrode assembly 14. The cylindrical case 10 is filled with an electrolyte. A sheet of insulating paper 22 having an opening at the center is disposed over the electrode assembly 14 placed in the cylindrical case 10. An insulating seal plate 24 is mounted at the upper opening of the cylindrical case 10 and hermetically fixed to the cylindrical case 10 by caulking the upper opening portion of the case 10 inwardly. A positive electrode terminal 26 is fitted in the central opening of the insulating seal plate 24. One end of a positive electrode lead 28 is connected to the positive electrode 16 and the other end thereof is connected to the positive electrode terminal 26. The negative electrode 20 is connected via a negative lead (not shown) to the cylindrical case 10 functioning as a negative terminal.」 (当審仮訳: [0094]本発明は、非水性電解質、高分子ゲル電解質、ソフトマター相電解質、固体電解質、または複合電解質に基づく二次電池である、高容量リチウム金属又はリチウム-空気二次電池用の負極材料に関する。リチウム二次電池の形状は、円筒形、角形、ボタン形等とすることができる。本発明は、任意の電池形状又は構成に限定されるものではない。 [0095]一例として、円筒型電池構成を図1に概略的に示される。ステンレス鋼製の円筒状ケース10は、底部にて絶縁体12を有する。電極組立体14は、正極16、セパレータ18及び負極20がこの順に積層された帯状の積層体が、電極組立体14の最も外側に配置されるセパレータと共に螺旋状に巻かれるように円筒状ケース10に収容されている。円筒状ケース10は、電解質が充填されている。中央にて開口を有する絶縁紙22のシートは、円筒状ケース10内に収容された電極組立体14の上に配置されている。絶縁シール板24は、円筒状ケース10の上面開口に装着され、前ケース10の上方の開口を内側にかしめることにより、円筒状ケース10に気密に固定されている。絶縁シール板24の中央開口部には正極端子26が嵌合されている。正極リード28の一端は正極16に接続され、他端は前記正極端子26に接続されている。負極20は、負極リード(図示せず)を介して、負極として機能する円筒ケース10に接続されている。」 「[0097]The stabilized lithium particles, being relatively stable or non-reactive with air or air-born moisture, are consistent with current lithium ion, lithium-air, or lithium metal battery production procedures. In other words, these stabilized particles can be mixed with the nano-filaments to form a 3-D integrated structure in a real battery manufacturing environment. One can choose to form the 3-D structure (e.g. a web or mat) first and then adding the stabilized lithium particles into the pores of this 3-D structure. Alternatively, one can mix the nano-filaments and stabilized lithium particles together to obtain a mixture, and then form the mixture into the integrated structure. These stabilized particles may comprise lithium or lithium alloy particles that are surface-coated with carbon dioxide, fluorine, fluorine-containing compound, wax, lithium oxide, lithium nitride, lithium chloride, lithium bromide, sodium chloride, potassium chloride, petroleum pitch, coal tar pitch, polymer, organic substance, or inorganic material. [0098]The resulting nano-structure, when incorporated as an anode in a lithium metal battery or lithium metal-air battery, surprisingly shows very stable cycling behavior, having no non-uniform deposition of lithium or formation of dendrites. Dendrites have been commonly found in conventional lithium metal and lithium metal-air secondary batteries.」(当審仮訳: [0097] 安定化されたリチウム粒子は、空気または空気由来の水分に対して比較的安定または非反応性であり、現在のリチウムイオン、リチウム空気、またはリチウム金属電池の製造手順と一致している。換言すれば、これらの安定化された粒子は、実際の電池製造環境において3-D集積構造を形成するためにナノフィラメントと混合することができる。最初に3-D構造(例えば、ウェブまたはマット)を形成し、次に安定化されたリチウム粒子をこの3-D構造の細孔に加えることを選択することができる。あるいは、ナノフィラメントおよび安定化リチウム粒子を混合して混合物を得、次に混合物を一体構造に形成することができる。これらの安定化された粒子は、二酸化炭素、フッ素、フッ素化合物、ワックス、酸化リチウム、窒化リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、石油ピッチ、コールタールピッチ、ポリマー、有機物質または無機物質で表面被覆されたリチウムまたはリチウム合金の粒子を含んでいてもよい。 [0098] 得られたナノ構造は、リチウム金属電池またはリチウム金属空気電池にアノードとして組み込まれた場合、驚くべきことに、リチウムの不均一な堆積またはデンドライトの形成を有さない、非常に安定したサイクリング挙動を示す。デンドライトは、従来のリチウム-金属-及びリチウム-金属空気二次電池において一般的に見出されてきた。 「[0099]As schematically illustrated in FIG. 2, a conventional lithium metal cell may be comprised of an anode current collector 100, an anode 102 comprising a lithium metal foil or coating, an electrolyte phase 104 (optionally but preferably supported by a separator, hereinafter referred to as the electrolyte-separator layer), a cathode 106, and a cathode collector 108.」 (当審仮訳: [0099]図2に概略的に示すように、従来のリチウム金属電池は、アノード集電体100と、リチウム金属箔または被覆を備えたアノード102と、電解質相104(場合によりセパレータに支持されていることが好ましいが、以下、電解質・セパレータ層という。)、カソード106、およびカソード集電体108から構成されてもよい。) [0100]As schematically shown in FIG. 3, the nano-structured anode is composed of a 3-D porous structure 110 of highly conductive nano-filaments having spaces or pores between filaments to accommodate multiple stabilized lithium particles 112. During the first discharge cycle, lithium ions are released from the stabilized lithium particles and transported through electrolyte (and a separator, if existing) to reach the cathode. The geometry, stiffness, and strength of the nano-filaments (e.g., CNF, CNT, metal nano wire, and NGP), preferably bonded by a binder, enables the integrated 3-D structure to maintain its shape and dimension during this discharge and subsequent re-charge/discharge cycles. [0101]More significantly, during the first re-charge operation, lithium ions move from the cathode back to the anode and deposit onto the surface of nano-filaments to form a uniform lithium metal coating. 」 (当審仮訳: [0100]図3に概略的に示すように、ナノ構造化されたアノードは、複数の安定化リチウム粒子112を収容するためにフィラメント間に空間または細孔を有する高導電性ナノフィラメントの3-D多孔質構造体110で構成されている。第一の放電サイクル中、リチウムイオンは、安定化リチウム粒子から放出され、電解質(および、存在するならばセパレータ)を通って輸送されカソードに到達する。好ましくはバインダーによって結合されたナノフィラメントの形状、剛性、および強度により、統合された 3-D構造がこの放電およびその後の再充電/放電サイクル中にその形状と寸法を維持することができる。 [0101]より重要なことには、第1の再充電中、リチウムイオンは、カソードからアノードへ戻り、均一なリチウム金属コーティングを形成するためにナノフィラメントの表面上に付着する。」 「[0110]Those skilled in the art of battery design and fabrication realize that practical battery cells comprise, in addition to cathode and anode active materials, other non-electroactive materials, such as a container, current collectors, electrode separators, polymeric binders, conductive additives and other additives in the electrodes, and an electrolyte. The electrolyte is typically an aqueous or non-aqueous liquid, gel, or solid material containing dissolved salts or ionic compounds with good ionic conductance but poor electronic conductivity.」 (当審仮訳: 「[0110]電池の設計および製造の当業者にとっては実用的電池セルは、正極及び負極活物質に加えて、他の非電気活性材料は、電極、集電体、電極、セパレータ、高分子バインダー、導電性添加物及び他の添加剤、及び電解質を含むことを理解する。電解質は、典型的には、良好なイオン伝導度を有するが電子伝導率が悪い、溶解した塩またはイオン性化合物を含有する水性または非水性の液体、ゲル、または固体材料である。」 「[0114]The conductive filaments of the instant application, such as CNTs, CNFs, and NGPs, have a diameter or thickness less than 500 nm (mostly 100 nm). ・・・(中略)・・・. This is a particularly important issue for the cathode since the cathode active material typically has a relatively low specific Li storage capacity as compared to the anode active material (lithium metal in the present case).」 (当審仮訳: [0114]CNT、CNF、NGPのような本出願の導電性フィラメント、は、500nm未満(ほぼ100nm)の直径または厚みを有する。・・・(中略)・・・。正極活物質は、典型的には、負極活物質(この場合は、リチウム金属)に比べて相対的に低い特定のLi貯蔵能力を有するので、これは陰極にとって特に重要な問題である。) 「[0120]Preferably, multiple conductive filaments are processed to form an aggregate or web, characterized in that these filamentsare intersected, overlapped, or somehow bonded to one another to form a network of electron-conducting paths. Although not a necessary condition, a binder material may be used to bond the filaments together to produce an integral web.」 (当審仮訳: [0120]好ましくは、複数の導電性フィラメントは、集合体またはウェブを形成するように処理され、これらのフィラメントは、電子伝導路のネットワークを形成するために、互いに交差しているか、重なり合っているか、あるいは何らかの方法で接着されていることを特徴とする。必要条件ではないが、バインダー材料は一体型ウェブを製造するためにフィラメント同士を接着するよう使用することができる。) 「[0122] ・・・(中略)・・・. The filament should also be chemically and thermo-mechanically compatible with the intended active material (i.e., lithium at the anode) to ensure a good contact between the filament and the coating upon repeated charging/discharging and heating/cooling cycles. (当審仮訳: [0122]・・・(中略)・・・。 フィラメントはまた、充電/放電および加熱/冷却サイクルを繰り返す際にフィラメントとコーティングとの間の良好な接触を確保するために、意図された活物質(すなわち、アノードにおけるリチウム)と化学的および熱機械的に適合し得るべきである。) 「[0147]The electrolytic salts to be incorporated into a non-aqueous electrolyte may be selected from a lithium salt such as lithium perchlorate (LiClO4), lithium hexafluorophosphate (LiPF6), lithium borofluoride (LiBF4), lithium hexafluoroarsenide (LiAsF6), lithium trifluoro-metasulfonate (LiCF3SO3) and bis-trifluoromethyl sulfonylimide lithium [LiN(CF3SO2)2]. Among them, LiPF6, LiBF4 and LiN(CF3SO2)2are preferred.」 (当審仮訳: [0147]非水電解質に含有させる電解質塩としては、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、ホウフッ化リチウム(LiBF4)、リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、ビストリフルオロメチルビス-トリフルオロメチル スルホニルイミド リチウム[LiN(CF3SO2)2]等のリチウム塩から選択することができる。これらの中でも、LiPF6、LiBF4及びLiN(CF3SO2)2が好ましい。) 「[0150]A nano-structured anode, comprising nano-filaments and stabilized lithium particles, was bonded onto a copper foil to be employed as a collector.After being dried, web-copper foil configuration was hot-pressed to obtain a negative electrode or, alternatively, a complete cell was fabricated by laminating an anode current collector (e.g., Cu foil), an anode layer (e.g., a nano-structured web), an electrolyte-separator layer, a cathode layer, and a cathode collector (e.g., stainless steel foil or aluminum foil) all at the same time.」 (当審仮訳: [0150]また、ナノフィラメントおよび安定化リチウム粒子を含む、ナノ構造化されたアノードは、集電体として用いる銅箔上に接着された。乾燥させた後、ウェブ銅箔構成をホットプレスして負極を得た、あるいは代替的には、電池は、アノード集電体(例えば、Cu箔)、アノード層(例えば、ナノ構造化されたウェブ)、電解質分離層、カソード層、および正極集電体(例えばステンレス鋼箔またはアルミニウム箔)を全て同時に積層することによって製造した。) [図:0001403662000008.jpg] [図:0001403662000009.jpg] [図:0001403662000010.jpg] [図:0001403662000011.jpg] [図:0001403662000012.jpg] イ 引用文献6の上記記載事項により、次のことがいえる。 (ア)段落[0094]によれば、引用文献6には、リチウム二次電池が記載されている。 (イ)段落[0095]及びFIG.1によれば、リチウム二次電池は、正極16、セパレータ18及び負極20がこの順に積層された帯状の積層体が螺旋状に巻かれるように円筒状ケース10に収容され、円筒状ケース10には電解質が充填された円筒型電池である。 そして、段落[0110]によれば、電解質は、溶解した塩またはイオン性化合物を含有する水性または非水性の液体である。 (ウ)[0067]、[0076]、[0086]、[0097]及び[0100]及び図3によれば、リチウム二次電池は、細孔を有する相互接続された導電性ナノフィラメント及び細孔内に収容される安定化リチウム粒子からなる3-D多孔質構造体を有する。 そして、段落[0120]、[0150]によれば、3-D多孔質構造体は、バインダー材料を使用して集電体として用いる銅箔上に接着され乾燥させた後、ホットプレスして得られたウェブ構成であるといえる。 さらに、段落[0099]、FIG.2及びFIG.3によれば、該3-D多孔質構造体は、アノード集電体とセパレータとの間に配置されているといえ、段落[0067]によれば、前記アノード集電体とは、負極集電体といえる。 (エ)段落[0147]によれば、非水電解質には、電解質塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)が含まれる。 (オ)段落[0086]によれば、再充電時に、導電性フィラメントの表面にリチウムの薄層が堆積される。 ウ よって、上記(ア)ないし(オ)から、甲第6号証には、次の発明(以下、「甲6発明」という。)が記載されている。 「正極、セパレータ及び負極がこの順に積層された帯状の積層体が螺旋状に巻かれるように円筒状ケースに収容され、円筒状ケースには溶解した塩またはイオン性化合物を含有する水性または非水性の液体である電解質が充填された円筒型電池であるリチウム二次電池であって、 細孔を有する相互接続された導電性ナノフィラメント及び細孔内に収容される安定化リチウム粒子からなる3-D多孔質構造体を有し、 前記3-D多孔質構造体は、バインダー材料を使用して集電体として用いる銅箔上に接着され乾燥させた後、ホットプレスして得られたウェブ構成であり、負極集電体とセパレータとの間に配置され、 前記電解質には、電解質塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)が含まれ、 再充電時に、導電性フィラメントの表面にリチウムの薄層が堆積されるリチウム二次電池。」 4 申立理由に対する当審の判断 (1)申立理由1(明確性)について ア 異議申立人の主張 特許異議申立人は、異議申立書において、本件特許明細書の段落【0006】、【0011】、【0024】の記載を考慮すると、本件特許請求項1における「前記負極は、・・・負極活物質層を有さず」とは、負極は炭素系材料からなる活物質層を有しないと解すべきなのか、負極は炭素系材料からなる活物質層も炭素系材料以外の材料からなる活物質層も有しないと解するべきなのか明確ではなく、本件特許請求項2ないし5にも同様な点が指摘される旨主張する。(異議申立書20頁4ないし14行) イ 当審の判断 しかしながら、本件発明1には、「前記負極は、負極集電体を有し、負極活物質層を有さず、」と記載されており、該「負極活物質層」が炭素系材料からなることは記載されていない。 そして、本件特許明細書の段落【0032】に「・・負極は、負極活物質層を有さない。そのため、負極集電体102が負極を構成する主要な部材である。」、【0069】に「負極に活物質層を設けないリチウムイオン二次電池において、セパレータと負極集電体の間には活物質層が存在しない。そのため、後述の電界液がセパレータと負極集電体の間を満たし、負極集電体の少なくとも一部はセパレータと直接接する場合もある。・・・。なお、負極集電体とセパレータとの間に意図的に距離を設けたい場合、負極集電体とセパレータとの間にスペーサを設けることもできる。」、【0135】「なお、本発明の一態様の二次電池においては集電体上に活物質層を形成しない。そのため、負極集電体上に活物質を設ける工程に必要とされる装置、・・・が不要である。そのため、・・・各工程においてかかる時間を省略することができた。さらに、活物質、導電助剤、バインダー等の部材のコストがかからなかった。さらに、負極集電体上に活物質を設ける工程の歩留まりを考慮する必要がなく、二次電池の製造工程全体を通しての歩留まりを上げることができた。」等の記載からすれば、負極は、炭素系材料等の材料に係わらず負極活物質層自体そのものを有さないものといえる。 してみると、本件発明1における「負極活物質層を有さず」とは、いかなる材料からなる活物質層も有しないと解するのが相当であるということができ、当該記載が第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるということはできない。 よって、異議申立人の主張は採用できない。 ウ まとめ 以上のとおり、本件発明1ないし5は明確であるから、本件の請求項1ないし5に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものではない。 (2)申立理由2(進歩性)について ア 甲第2号証を主引用例とする場合 (ア)本件発明1について a 本件発明1と甲2発明1との対比 (a)甲2発明1の「正極」、「負極」は、本件発明1の「正極」、「負極」にそれぞれ相当する。 (b)本件発明1は「電解液」を有するのに対し、甲2発明1はその旨特定されていない点で相違する。 (c)甲2発明1では、「負極」と「正極とがセパレータを介して対向配置され」ているから、「セパレータ」は「負極」と「正極」との間に配置されているといえる。 よって、甲2発明1の「負極」と「正極とがセパレータを介して対向配置され」ていることは、本件発明1の「前記正極と前記負極との間のセパレータ」に相当する構成を備えているといえる。 (d)甲2発明1の「セパレータと負極の間に緩衝空隙を付与するために挿入された絶縁材料からなるスペーサ」と本件発明1とは、「前記セパレータと前記負極との間のスペーサ」である点で共通する。 ただし、スペーサに関し、本件発明1は「(ただし、前記スペーサが導電体と絶縁体又は半導体を有する負極活物質保持体である場合、及び前記スペーサが格子層である場合を除く。)」と特定されているのに対し、甲2発明1はその旨特定されていない点で相違する。 (e)甲2発明1の「負極」は、「負極活物質」である「リチウムまたはリチウム合金」を「集電体の両面に」「圧着されたものであ」る。 してみると、甲2発明1の「負極」と本件発明1とは、「負極は、負極集電体を有」する点で共通する。 ただし、負極に関し、本件発明1は「負極活物質層を有さ」ないのに対し、甲2発明1はその旨特定されていない点で相違する。 (f)本件発明1は「負極集電体は、前記スペーサと接する領域を有し」ているのに対し、甲2発明1はその旨特定されていない点で相違する。 (g)本件発明1は「前記電解液は、フッ素を有し」ているのに対し、甲2発明1はその旨特定されていない点で相違する。 (h)本件発明1は「前記負極集電体は、充電時にリチウムを有する析出物が表面に析出することができる機能を有する」のに対し、甲2発明1はその旨特定されていない点で相違する。 b 上記(a)ないし(h)によれば、本件発明1と甲2発明1とは、 「正極と、負極と、 前記正極と前記負極との間のセパレータと、 前記セパレータと前記負極との間のスペーサと、を有し、 前記負極は、負極集電体を有するリチウムイオン二次電池。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点30) 本件発明1は「電解液」を有し、「電解液は、フッ素を有」するのに対し、甲2発明1はその旨特定されていない点。 (相違点31) スペーサに関し、本件発明1は「(ただし、前記スペーサが導電体と絶縁体又は半導体を有する負極活物質保持体である場合、及び前記スペーサが格子層である場合を除く。)」と特定されているのに対し、甲2発明1はその旨特定されていない点。 (相違点32) 負極に関し、本件発明1は「負極活物質層を有さ」ないのに対し、甲2発明1はその旨特定されていない点。 (相違点33) 本件発明1は「負極集電体」は、「前記スペーサと接する領域を有し」、「充電時にリチウムを有する析出物が表面に析出することができる機能を有する」のに対し、甲2発明1はその旨特定されていない点。 c 相違点についての判断 事案に鑑み、相違点32について判断する。 (a)上記「3」の「(3)」および「(4)」で検討したように、甲第3号証には「甲第3号証に記載された技術」が、甲第4号証には「甲第4号証に記載された技術」がそれぞれ記載されているものの、甲第3号証および甲第4号証には「負極」が「負極活物質層を有さ」ないよう構成する記載や示唆は見当たらない。 また、上記「3」の「(5)」で検討した点も踏まえれば、甲第6号証には、「リチウム二次電池」において、「細孔を有する相互接続された導電性ナノフィラメント及び細孔内に収容される安定化リチウム粒子からな」り、「負極集電体とセパレータとの間に配置され」る「3-D多孔質構造体を有」する技術(以下、「甲第6号証に記載された技術」という。)が記載されているものの、後述するように、「安定化リチウム粒子」を含む「3-D多孔質構造体」は負極活物質層といえるから、「負極」が「負極活物質層を有さ」ないよう構成されているとはいえない。 してみると、甲2発明1に、甲第3号証に記載された技術、甲第4号証に記載された技術及び甲第6号証に記載された技術を採用したとしても、「負極」が「負極活物質層を有さ」ない構成を導き出すことはできない。 (b)また、上記「第4 2(2)」及び上記「3」の「(1)」で検討した点を踏まええると、甲第5号証には、「リチウムイオン電池」において、「集電体上に格子層が設けられた」「負極」を有し、「充電時、第1電極の集電体表面及び空隙の壁部にリチウムを均一に析出させ、第1電極の集電体近辺での樹枝状結晶の生成を減少させる」技術(以下、「甲第5号証に記載された技術」という。)が記載されている。 一方、甲第2号証の【請求項1】の「リチウムまたはリチウム合金を負極活物質とする負極と、充放電可能な物質からなる正極とがセパレータを介して対向配置された金属リチウム2次電池において」、【0001】の「【発明の属する技術分野】本発明は、リチウムまたはリチウム合金を負極活物質とする負極と、充放電可能な物質からなる正極とがセパレータを介して対向配置された構造を有する金属リチウム2次電池に関する。」、【0002】の「・・・、金属リチウム2次電池が注目を集めている。これは、・・・、活物質にかさ密度の小さい金属リチウムを採用する・・・。」、【0003】の「しかしながら、この電池は充放電を繰り返していくうちに微小な内部短絡を起こすことによって容量が減少し、その結果サイクル寿命が短いという問題がある。」、【0009】の「上記課題を解決するために採用した請求項1記載の手段によれば、・・・、セパレータの損傷やリチウムの異常析出を防いで内部短絡を抑制し、電池の長寿命化を図ることができる。」との各記載によれば、甲2号証に記載された「金属リチウム2次電池」は、「負極」が「リチウムまたはリチウム合金」からなる「負極活物質」を有することを前提とするものであり、また、甲第2号証には「負極」が「負極活物質」を有さないようにする記載も示唆も見当たらないことから、甲2発明1において、「負極」が「集電体の両面に」「圧着された」「負極活物質」、即ち、「負極活物質層」を有さないようにすることは当業者に動機づけられないことである。 してみると、甲2発明1に甲第5号証に記載された技術を採用し「負極」が「負極活物質層」を有さないようにすることは、当業者が容易に想到し得ないことである。 (c)ここで、特許異議申立人は、異議申立書において、甲2発明は、負極が、銅の箔から成る集電体を有し、炭素系材料からなる活物質層を有しないから、「前記負極は、負極集電体を有し、負極活物質層を有さず、」との要件を満たす旨主張する。(43頁下から7ないし6行) しかしながら、上記「(1)イ」で検討したように、本件発明1における「負極活物質層を有さ」ないとは、炭素系材料等の材料に係わらず負極活物質層自体そのものを有さないことであって、甲2発明1の「リチウムまたはリチウム合金を負極活物質とする負極」は、「銅の箔から成る集電体の両面に金属リチウムまたはその合金を圧着されたもの」である。 そして、上記(a)で述べたように、甲2発明1に、甲第3号証に記載された技術、甲第4号証に記載された技術及び甲第6号証に記載された技術を採用したとしても、「負極」が「負極活物質層を有さ」ない構成を導き出すことはできず、また、上記(b)で述べたように、甲2発明1に甲第5号証に記載された技術を採用し「負極」が「負極活物質層」を有さないようにすることは、当業者が容易に想到し得ないことである。 よって、異議申立人の主張は採用できない。 (d)よって、相違点32に係る構成は、甲2発明1、甲第3号証に記載された技術、甲第4号証に記載された技術、甲第5号証に記載された技術及び甲第6号証に記載された技術に基づいて当業者が容易になし得たものといえない。 (e)小括 以上から、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明1、甲第3号証に記載された技術、甲第4号証に記載された技術、甲第5号証に記載された技術及び甲第6号証に記載された技術に基づいて当業者が容易になし得たものといえない。 (イ)本件発明2について a 本件発明2と甲2発明1との対比 上記「(ア)a」で検討した点を踏まえ、本件発明2と甲2発明1を対比する。 (a)本件発明2は、「前記負極集電体は、前記スペーサと接する領域と、前記電解液又は前記セパレータの少なくとも一方と接する領域とを有」するのに対し、甲2発明1はその旨特定されていない点で相違する。 b よって、上記(a)および上記「(ア)a」で検討した点も踏まえれば、本件発明2と甲2発明1とは、以下の点で相違し、その余の点で一致する。 (相違点34) 本件発明2は「電解液」を有し、「電解液は、フッ素を有」するのに対し、甲2発明1はその旨特定されていない点。 (相違点35) スペーサに関し、本件発明2は「(ただし、前記スペーサが導電体と絶縁体又は半導体を有する負極活物質保持体である場合、及び前記スペーサが格子層である場合を除く。)」と特定されているのに対し、甲2発明1はその旨特定されていない点。 (相違点36) 負極に関し、本件発明2は「負極活物質層を有さ」ないのに対し、甲2発明1はその旨特定されていない点。 (相違点37) 本件発明2は「負極集電体」は、「前記スペーサと接する領域と、前記電解液又は前記セパレータの少なくとも一方と接する領域とを有し」、「充電時にリチウムを有する析出物が表面に析出することができる機能を有する」のに対し、甲2発明1はその旨特定されていない点で相違する。 c 相違点についての判断 事案に鑑み、相違点36について判断する。 相違点36は上記相違点32と同じであり、相違点32に対する判断と同様な理由により、相違点36に係る構成は、甲2発明1、甲第3号証に記載された技術、甲第4号証に記載された技術、甲第5号証に記載された技術及び甲第6号証に記載された技術に基づいて当業者が容易になし得たものといえない。 d 小括 以上から、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲2発明1、甲第3号証に記載された技術、甲第4号証に記載された技術、甲第5号証に記載された技術及び甲第6号証に記載された技術に基づいて当業者が容易になし得たものといえない。 (ウ)本件発明3について a 本件発明3と甲2発明2との対比 上記「(ア)a」で検討した点を踏まえ、本件発明3と甲2発明2を対比する。 (a)甲2発明2においては、「セパレータと負極との間に不織布のような多孔質の絶縁構造部材」が挿入されるから、「絶縁構造部材」はセパレータと負極との間の空間を確保する部材といえる。そして、「絶縁構造部材」は「不織布のような」ものであるから、シート形状であることは明らかである。 してみると、甲2発明2の「セパレータと負極との間に不織布のような多孔質の絶縁構造部材が挿入され」ることは、本件発明3の「前記セパレータと前記負極との間のシート状のスペーサ」を有することに相当する。 (b)本件発明3は「前記シート状のスペーサは、前記セパレータよりも空隙率が高」いのに対し、甲2発明2はその旨特定されていない点で相違する。 (c)本件発明3は「電解液は、フッ素を有する無機塩と、フッ素を含有するエチレンカーボネートと、を有」するのに対し、甲2発明2はその旨特定されていない点で相違する。 (d)甲2発明2において、「セパレータ、絶縁構造部材、負極を順に積層」され、「銅の箔から成る集電体の両面に金属リチウムまたはその合金を圧着された」「負極の表面に金属リチウムが析出される」ことからすれば、甲2発明2においても、「セパレータ」と「負極」の「集電体」との間の空間において「金属リチウムが析出される」といえる。 してみれば、甲2発明2において、「セパレータ」と「負極」の「集電体」との間の空間において「金属リチウムが析出される」ことは、本件発明3の「セパレータと前記負極集電体との間の領域においてリチウムを有する析出物が析出することができる機能」に相当する構成を備えているといえる。 b よって、上記(a)ないし(d)および上記「(ア)a」で検討した点も踏まえれば、本件発明3と甲2発明2とは、以下の点で相違し、その余の点で一致する。 (相違点38) 本件発明3は「電解液」を有し、「電解液は、フッ素を有する無機塩と、フッ素を含有するエチレンカーボネートと、を有」するのに対し、甲2発明2はその旨特定されていない点。 (相違点39) 本件発明3は「前記シート状のスペーサは、前記セパレータよりも空隙率が高」いのに対し、甲2発明2はその旨特定されていない点 (相違点40) 負極に関し、本件発明3は「負極活物質層を有さ」ないのに対し、甲2発明2はその旨特定されていない点。 (相違点41) 本件発明3は「負極集電体」は、「前記スペーサと接する領域を有」するのに対し、甲2発明2はその旨特定されていない点。 c 相違点についての判断 事案に鑑み、相違点40について判断する。 相違点40は上記相違点32と同じであり、相違点32に対する判断と同様な理由により、相違点40に係る構成は、甲2発明2、甲第3号証に記載された技術、甲第4号証に記載された技術、甲第5号証に記載された技術及び甲第6号証に記載された技術に基づいて当業者が容易になし得たものといえない。 d 小括 以上から、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明3は、甲2発明2、甲第3号証に記載された技術、甲第4号証に記載された技術、甲第5号証に記載された技術及び甲第6号証に記載された技術に基づいて当業者が容易になし得たものといえない。 (エ)本件発明4について a 本件発明4と甲2発明1との対比 上記「(ア)a」で検討した点を踏まえ、本件発明4と甲2発明1を対比する。 (a)本件発明4は「電解液は、フッ素を有する無機塩と、フッ素を含有するエチレンカーボネートと、を有」するのに対し、甲2発明1はその旨特定されていない点で相違する。 (b)本件発明4は「前記正極、前記負極、前記セパレータ、及び前記スペーサは可撓性を有し、」のに対し、甲2発明1はその旨特定されていない点で相違する。 (c)甲2発明1において、「セパレータ、絶縁構造部材、負極を順に積層」され、「銅の箔から成る集電体の両面に金属リチウムまたはその合金を圧着された」「負極の表面に金属リチウムが析出される」ことからすれば、甲2発明1においても、「セパレータ」と「負極」の「集電体」との間の空間において「金属リチウムが析出される」といえる。 してみれば、甲2発明1において、「セパレータ」と「負極」の「集電体」との間の空間において「金属リチウムが析出される」ことは、本件発明4の「セパレータと前記負極集電体との間の領域においてリチウムを有する析出物が析出することができる機能」に相当する構成を備えているといえる。 b よって、上記(a)ないし(c)および上記「(ア)a」で検討した点も踏まえれば、本件発明4と甲2発明1とは、以下の点で相違し、その余の点で一致する。 (相違点42) 本件発明4は「電解液」を有し、「電解液は、フッ素を有する無機塩と、フッ素を含有するエチレンカーボネートと、を有」するのに対し、甲2発明2はその旨特定されていない点。 (相違点43) 負極に関し、本件発明4は「負極活物質層を有さ」ないのに対し、甲2発明1はその旨特定されていない点。 (相違点44) 本件発明4は「負極集電体」は、「前記スペーサと接する領域を有」するのに対し、甲2発明1はその旨特定されていない点。 (相違点45) 本件発明4は「前記正極、前記負極、前記セパレータ、及び前記スペーサは可撓性を有し、」のに対し、甲2発明1はその旨特定されていない点。 c 相違点についての判断 事案に鑑み、相違点43について判断する。 相違点43は上記相違点32と同じであり、相違点32に対する判断と同様な理由により、相違点43に係る構成は、甲2発明2、甲第3号証に記載された技術、甲第4号証に記載された技術、甲第5号証に記載された技術及び甲第6号証に記載された技術に基づいて当業者が容易になし得たものといえない。 d 小括 以上から、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明4は、甲2発明2、甲第3号証に記載された技術、甲第4号証に記載された技術、甲第5号証に記載された技術及び甲第6号証に記載された技術に基づいて当業者が容易になし得たものといえない。 (オ)本件発明5について 請求項5は請求項1ないし4をそれぞれ引用するものであり、本件発明5は、引用する本件発明1ないし4の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明1ないし4についての判断と同様な理由により、本件発明5は、甲2発明1又は甲2発明2、甲第3号証に記載された技術、甲第4号証に記載された技術、甲第5号証に記載された技術及び甲第6号証に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 (カ)まとめ 以上から、請求項1ないし5に係る発明は、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された技術、甲第4号証に記載された技術、甲第5号証に記載された技術及び甲第6号証に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、請求項1ないし5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 イ 甲第6号証を主引用例とする場合 (ア)本件発明1について a 本件発明1と甲6発明との対比 (a)甲6発明の「正極」、「負極」、「水性または非水性の液体である電解質」は、本件発明1の「正極」、「負極」、「電解液」にそれぞれ相当する。 (b)甲6発明は「正極、セパレータ及び負極電極がこの順に積層され」ているから、「セパレータ」は「正極」と「負極」との間に位置するといえる。 してみると、甲6発明において「正極、セパレータ及び負極電極がこの順に積層され」ていることは、本件発明1の「前記正極と前記負極との間のセパレータ」に相当する構成を備えているといえる。 (c)甲6発明の「3-D多孔質構造体」は、「バインダー材料を使用して集電体として用いる銅箔上に接着され乾燥させた後、ホットプレスして得られたウェブ構成であり、負極集電体とセパレータとの間に配置され」るものであるから、「負極」と「セパレータ」との間の空間を確保する部材といえる。 してみると、甲6発明の「負極集電体とセパレータとの間に配置され」る「3-D多孔質構造体」は、本件発明1の「前記セパレータと前記負極との間のスペーサ」に対応する。 ただし、スペーサに関し、本件発明1は「(ただし、前記スペーサが導電体と絶縁体又は半導体を有する負極活物質保持体である場合、及び前記スペーサが格子層である場合を除く。)」ことが特定されているのに対し、甲6発明はその旨特定されていない点で相違する。 (d)甲6発明の「負極集電体」は、本件発明1の「負極集電体」に相当する。 してみると、甲6発明の「負極」が「負極集電体」を有することと本件発明1とは、「前記負極は、負極集電体を有」する点で共通する。 ただし、負極に関し、本件発明1は「負極活物質層を有さ」ないのに対し、甲6発明はその旨特定されていない点で相違する。 (e)甲6発明において、「3-D多孔質構造体は、」「集電体」「上に接着され乾燥させた後、ホットプレスして得られ」「負極集電体とセパレータとの間に配置され」るから、「3-D多孔質構造体」は「負極集電体」と接しているといえる。 してみると、甲6発明において「3-D多孔質構造体は、」「集電体」「上に接着され乾燥させた後、ホットプレスして得られ」「負極集電体とセパレータとの間に配置され」ることは、本件発明1の「前記負極集電体は、前記スペーサと接する領域を有」することに相当する。 (f)甲6発明の「水性または非水性の液体である電解質」に「電解質塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)が含まれる」ことは、本件発明1の「前記電解液は、フッ素を有」することに相当する。 (g)本件発明1は「負極集電体は、充電時にリチウムを有する析出物が表面に析出することができる機能を有する」のに対し、甲6発明はその旨特定されていない点で相違する。 (h)甲6発明の「リチウム二次電池」は、本件発明1の「リチウムイオン二次電池」に相当する。 b 上記(a)ないし(h)によれば、本件発明1と甲6発明とは、 「正極と、負極と、電解液と、 前記正極と前記負極との間のセパレータと、 前記セパレータと前記負極との間のスペーサと、を有し、 前記負極は、負極集電体を有し、 前記負極集電体は、前記スペーサと接する領域を有し、 前記電解液は、フッ素を有するリチウムイオン二次電池。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点46) スペーサに関し、本件発明1は「(ただし、前記スペーサが導電体と絶縁体又は半導体を有する負極活物質保持体である場合、及び前記スペーサが格子層である場合を除く。)」ことが特定されているのに対し、甲6発明はその旨特定されていない点。 (相違点47) 負極に関し、本件発明1は「負極活物質層を有さ」ないのに対し、甲6発明はその旨特定されていない点。 (相違点48) 本件発明1は「負極集電体は、充電時にリチウムを有する析出物が表面に析出することができる機能を有する」のに対し、甲6発明はその旨特定されていない点。 c 相違点についての判断 事案に鑑み、相違点47について判断する。 (a)甲第6号証の段落[0114]、[0122]の記載によれば、甲6発明の「安定化リチウム粒子」は負極活物質といえ、「安定化リチウム粒子」を「細孔内に収容」する「3-D多孔質構造体」は、負極活物質層といえる。 そして、同段落[0097]、[0098]によれば、ナノフィラメントと細孔に加えられる安定化されたリチウム粒子を有する3-D構造をリチウム金属電池にアノードとして組み込んだ場合、リチウムの不均一な堆積またはデンドライトの形成を有さない、非常に安定したサイクリング挙動を示すという効果が得られるものであり、また、甲第6号証には、安定化されたリチウム粒子を有する「3-D多孔質構造体」を除く記載や示唆は見当たらないことから、甲6発明において、「3-D多孔質構造体」を有さないよう構成することは当業者に動機づけられないことである。 してみると、相違点47に係る構成は、甲6発明に基づいて当業者が容易になし得たものといえない。 (b)ここで、特許異議申立人は、異議申立書において、「負極は、負極集電体を有し、負極活物質層を有さず、」について、甲6発明は負極がリチウム粒子を有するCNTからの導電性ウェブを有する。しかし、甲6発明において、リチウム粒子を有するCNTからの導電性ウェブに代えて、甲第6号証の記載事項2(段落[0154])に基づき例1で得られたポリアミドの導電性ウェブを用いることは当業者が容易になし得たことである旨主張する。(48頁下から7ないし4行) しかしながら、甲第6号証の段落[0153]、[0154]には、 「[0153]・・・. Example 1 Conductive Web of Filaments from Electro-Spun PAA Fibrils [0154]Poly(amic acid) (PAA) precursors for spinning were prepared by copolymerizing of pyromellitic dianhydride (Aldrich) and 4,4-oxydianiline (Aldrich) in a mixed solvent of tetrahydrofurane/methanol (THF/MeOH, 8/2 by weight). The PAA solution was spun into fiber web using an electrostatic spinning apparatus schematically shown in FIG. 4. ・・・. The thermally cured polyimide (PI) web samples were carbonized at 1,000 C. to obtain Sample c-PI-0 with an average fibril diameter of 67 nm. Such a web can be used to accommodate stabilized lithium particles for the anode and/or as a conductive substrate for a cathode active material.」 (当審仮訳:[0153]・・・ 例1 電気紡糸PAAフィブリルからのフィラメントの導電性ウェブ [0154]テトラヒドロフラン/メタノール(THF/MeOH、質量比8/2)の混合溶媒中で、ピロメリット酸二無水物(Aldrich)及び4,4-オキシジアニリン(Aldrich)を共重合させて、紡糸用のポリアミド(PAA)前駆体を調整した。図4に模式的に示す静電紡糸装置を用いてPAA溶液を繊維ウェブに紡糸した。・・・。熱硬化性ポリイミド(PI)ウェブのサンプルは、1,000℃で炭化し、平均繊維径が67nmであるサンプルc(P1)0を得た。このようなウェブは、負極用の安定化されたリチウム粒子を収容するために、及び/又はカソード活物質用の導電性基材として使用することができる。)(下線は、当審が付与)と記載されており、例1の「ポリアミド(PI)ウェブ」は負極用の安定化されたリチウム粒子を収容するため使用される。 してみると、「負極用の安定化されたリチウム粒子を収容する」「ポリアミド(PI)ウェブ」は、上記(a)で述べた甲6発明の「3-D多孔質構造体」と同様に、「負極活物質層」といえ、仮に、甲6発明に「負極用の安定化されたリチウム粒子を収容する」「ポリアミド(PI)ウェブ」を採用したとしても、「負極」が「負極活物質層を有さ」ない構成を導き出すことはできない。 よって、異議申立人の主張は採用できない。 (c)小括 以上から、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲6発明に基づいて当業者が容易になし得たものといえない。 (イ)本件発明2について a 本件発明2と甲6発明との対比 上記「(ア)a」で検討した点を踏まえ、本件発明2と甲6発明を対比する。 (a)甲6発明において、「3-D多孔質構造体は、」「集電体」「上に接着され乾燥させた後、ホットプレスして得られ」「負極集電体とセパレータとの間に配置され」るから、「3-D多孔質構造体」は「負極集電体」と接しているといえる。 してみると、甲6発明において「3-D多孔質構造体は、」「集電体」「上に接着され乾燥させた後、ホットプレスして得られ」「負極集電体とセパレータとの間に配置され」ることと本件発明1とは、「前記負極集電体は、前記スペーサと接する領域を有」する点で共通する。 ただし、負極集電体に関し、本件発明1は「前記電解液又は前記セパレータの少なくとも一方と接する領域とを有し」ているのに対し、甲6発明はその旨特定されていない点で相違する。 b よって、上記(a)および上記「(ア)a」で検討した点も踏まえれば、本件発明2と甲発明とは、以下の点で相違し、その余の点で一致する。 (相違点49) スペーサに関し、本件発明1は「(ただし、前記スペーサが導電体と絶縁体又は半導体を有する負極活物質保持体である場合、及び前記スペーサが格子層である場合を除く。)」ことが特定されているのに対し、甲6発明はその旨特定されていない点。 (相違点50) 負極に関し、本件発明1は「負極活物質層を有さ」ないのに対し、甲6発明はその旨特定されていない点。 (相違点51) 負極集電体に関し、本件発明1は「前記電解液又は前記セパレータの少なくとも一方と接する領域とを有し」ているのに対し、甲6発明はその旨特定されていない点。 (相違点52) 本件発明1は「負極集電体は、充電時にリチウムを有する析出物が表面に析出することができる機能を有する」のに対し、甲6発明はその旨特定されていない点。 c 相違点についての判断 事案に鑑み、相違点50について判断する。 相違点50は相違点44と同じであるから、相違点44に対する判断と同様な理由により、相違点50に係る構成は、甲6発明に基づいて当業者が容易になし得たものといえない。 d 小括 以上から、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲6発明に基づいて当業者が容易になし得たものといえない。 (ウ)本件発明3について a 本件発明3と甲6発明との対比 上記「(ア)a」で検討した点を踏まえ、本件発明3と甲6発明を対比する。 (a)甲6発明の「3-D多孔質構造体」は、「バインダー材料を使用して集電体として用いる銅箔上に接着され乾燥させた後、ホットプレスして得られたウェブ構成であ」るから、シート形状であるといえる。 また、「集電体」「上に」「得られたウェブ構成であ」る「3-D多孔質構造体」は、「負極集電体とセパレータとの間に配置され」るものであるから、「負極」と「セパレータ」との間の空間を確保する部材といえる。 してみると、甲6発明の「3-D多孔質構造体は、バインダー材料を使用して集電体として用いる銅箔上に接着され乾燥させた後、ホットプレスして得られたウェブ構成であり、負極集電体とセパレータとの間に配置され」ることは、本件発明3の「セパレータと前記負極との間のシート状のスペーサ」に相当する構成を備えているといえる。 (b)本件発明3は「前記シート状のスペーサは、前記セパレータよりも空隙率が高」いのに対し、甲6発明はその旨特定されていない点で相違する。 (c)甲6発明の「電解質」に「電解質塩として」含まれる「六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)」は、本件発明3の「フッ素を有する無機塩」に相当する。 してみると、甲6発明の「電解質には、電解質塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)が含まれる」ことと本件発明3とは、「電解液は、フッ素を有する無機塩を有」する点で共通する。 ただし、電解液に関し、本件発明3は「フッ素を含有するエチレンカーボネートを有」しているのに対し、甲6発明はその旨特定されていない点で相違する。 (d)甲6発明の「3-D多孔質構造体」は「負極集電体とセパレータとの間に配置され」、「3-D多孔質構造体」を構成する「導電性フィラメントの表面にリチウムの薄層が堆積される」ことから、甲6発明においても、「セパレータ」と「負極集電体」との間の空間に「リチウムの薄層が堆積される」といえる。 してみると、甲6発明の「セパレータ」と「負極集電体」との間の空間に「リチウムの薄層が堆積される」ことは、本件発明3の「前記セパレータと前記負極集電体との間の領域においてリチウムを有する析出物が析出することができる機能」に相当する構成を備えているといえる。 b よって、上記(a)ないし(d)および上記「(ア)a」で検討した点も踏まえれば、本件発明3と甲6発明とは、以下の点で相違し、その余の点で一致する。 (相違点53) 本件発明3は「前記シート状のスペーサは、前記セパレータよりも空隙率が高」いのに対し、甲6発明はその旨特定されていない点。 (相違点54) 負極に関し、本件発明3は「負極活物質層を有さ」ないのに対し、甲6発明はその旨特定されていない点。 (相違点55) 電解液に関し、本件発明3は「フッ素を含有するエチレンカーボネートを有」しているのに対し、甲6発明はその旨特定されていない点。 c 相違点についての判断 事案に鑑み、相違点54について判断する。 相違点54は相違点47と同じであるから、相違点47に対する判断と同様な理由により、相違点54に係る構成は、甲6発明に基づいて当業者が容易になし得たものといえない。 d 小括 以上から、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明3は、甲6発明に基づいて当業者が容易になし得たものといえない。 (エ)本件発明4について a 本件発明4と甲6発明との対比 上記「(ア)a」で検討した点を踏まえ、本件発明4と甲6発明を対比する。 (a)甲6発明の「電解質」に「電解質塩として」含まれる「六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)」は、本件発明4の「フッ素を有する無機塩」に相当する。 してみると、甲6発明の「電解質には、電解質塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)が含まれる」ことと本件発明4とは、「電解液は、フッ素を有する無機塩を有」する点で共通する。 ただし、電解液に関し、本件発明4は「フッ素を含有するエチレンカーボネートを有」しているのに対し、甲6発明はその旨特定されていない点で相違する。 (b)本件発明4は「前記正極、前記負極、前記セパレータ、及び前記スペーサは可撓性を有」するのに対し、甲6発明はその旨特定されていない点で相違する。 (c)甲6発明の「3-D多孔質構造体」は「負極集電体とセパレータとの間に配置され」、「3-D多孔質構造体」を構成する「導電性フィラメントの表面にリチウムの薄層が堆積される」ことから、甲6発明においても、「セパレータ」と「負極集電体」との間の空間に「リチウムの薄層が堆積される」といえる。 してみると、甲6発明の「セパレータ」と「負極集電体」との間の空間に「リチウムの薄層が堆積される」ことは、本件発明4の「前記セパレータと前記負極集電体との間の領域においてリチウムを有する析出物が析出することができる機能」に相当する構成を備えているといえる。 b よって、上記(a)ないし(c)および上記「(ア)a」で検討した点も踏まえれば、本件発明4と甲6発明とは、以下の点で相違し、その余の点で一致する。 (相違点56) 負極に関し、本件発明4は「負極活物質層を有さ」ないのに対し、甲6発明はその旨特定されていない点。 (相違点57) 電解液に関し、本件発明4は「フッ素を含有するエチレンカーボネートを有」しているのに対し、甲6発明はその旨特定されていない点 (相違点58) 本件発明4は「前記正極、前記負極、前記セパレータ、及び前記スペーサは可撓性を有」するのに対し、甲6発明はその旨特定されていない点。 c 相違点についての判断 事案に鑑み、相違点56について判断する。 相違点56は相違点47と同じであるから、相違点47に対する判断と同様な理由により、相違点56に係る構成は、甲6発明に基づいて当業者が容易になし得たものといえない。 d 小括 以上から、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明4は、甲6発明に基づいて当業者が容易になし得たものといえない。 (オ)本件発明5について 請求項5は請求項1ないし4をそれぞれ引用するものであり、本件発明5は、引用する本件発明1ないし4の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明1ないし4についての判断と同様な理由により、本件発明5は、甲6発明に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 (カ)まとめ 以上から、請求項1ないし5に係る発明は、甲第6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、請求項1ないし5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件請求項1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-701145

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