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特許異議申立

2022-701108

コンクリートの防食方法

審判番号
2022-701108
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-163510
登録番号
7066236
請求日
2022年11月14日
審決日
2023年09月04日
公報発行日
2023年12月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】大泰化工株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人WisePlus
  • 【異議申立人】椎名 一男
審判長/審判官
  • 審判長 日比野 隆治
  • 審判官 宮澤 尚之
  • 審判官 増山 淳子
分類
P1651.113-YAA(C04B) / P1651.121-YAA(C04B) / P1651.537-YAA(C04B) / P1651.851-YAA(C04B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7066236号発明「コンクリートの防食方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7066236号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕、〔11~15〕、〔16~19〕について訂正することを認める。 特許第7066236号の請求項1~19に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7066236号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~19に係る特許についての出願は、令和3年10月4日に出願され、令和4年5月2日にその特許権の設定登録がされ、同年同月13日に特許掲載公報が発行された。 その後、その請求項1~19に係る特許に対して、令和4年11月14日に特許異議申立人椎名一男(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、令和5年1月31日付けで取消理由が通知され、同年3月28日に特許権者により意見書の提出及び訂正の請求がされ、同年6月7日に申立人により意見書(以下、「申立人意見書」という。)の提出がされた。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 令和5年3月28日にされた訂正の請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項〔1~10〕、〔11~15〕、〔16~19〕を訂正の単位として訂正することを求めるものであり、その内容(訂正事項)は、次のとおりである。なお、訂正箇所に下線を付した。 (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「(B)短繊維補強材」と記載されているのを、「(B)平均繊維長が50~1000μmの短繊維補強材」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~10も同様に訂正する。)。 (2) 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項11に「(B)短繊維補強材」と記載されているのを、「(B)平均繊維長が50~1000μmの短繊維補強材」に訂正する(請求項11の記載を直接的又は間接的に引用する請求項12~15も同様に訂正する。)。 (3) 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項16に「(B)短繊維補強材」と記載されているのを、「(B)平均繊維長が50~1000μmの短繊維補強材」に訂正する(請求項16の記載を直接的又は間接的に引用する請求項17~19も同様に訂正する。)。 2 訂正要件(訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について)の判断 訂正事項1~3は、それぞれ、本件特許の願書に添付された明細書(以下、「本件特許明細書」という場合もある。)の【0063】の記載に基づき、訂正前の請求項1、11、16に記載された「短繊維補強材」の平均繊維長を限定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕、〔11~15〕、〔16~19〕について訂正することを認める。 第3 本件特許請求の範囲の記載(本件発明) 前記第2のとおり、本件訂正請求は適法にされたものであるから、本件特許請求の範囲の記載は、次のとおりである(以下、各請求項に係る発明を、項番号に合わせて「本件発明1」などといい、纏めて「本件発明」という。)。 「【請求項1】 コンクリート表面を粗面化処理する工程、 粗面化された表面にプライマー組成物を塗布する工程、 素地調整材を塗布する工程、 (A)ビニルエステル系樹脂、(B)平均繊維長が50~1000μmの短繊維補強材、および、(C)揺変剤を含有するコンクリート防食用樹脂組成物を塗布する工程、ならびに、 トップコート用樹脂組成物を塗布する工程 を含むコンクリートの防食方法。 【請求項2】 コンクリート防食用樹脂組成物がガラスフレークを含まない請求項1に記載のコンクリート防食用樹脂組成物を使用したコンクリートの防食方法。 【請求項3】 繊維補強布を使用せず、含浸脱泡工程を含まない請求項1に記載のコンクリート防食用樹脂組成物を使用したコンクリートの防食方法。 【請求項4】 防食方法を施したコンクリートを、10%硫酸水溶液および水酸化カルシウム飽和水溶液に45日間浸漬した後、塗膜にふくれ、割れ、軟化および溶出がない請求項1~3のいずれか1項に記載のコンクリートの防食方法。 【請求項5】 防食方法を施したコンクリートを、10%硫酸水溶液に120日間浸漬した後、電子線マイクロアナライザーで測定した塗膜への硫黄侵入深さが塗膜の厚さの10%以内かつ200μm以下であり、硬化塗膜の透水量が0.2g以下である請求項1~4のいずれか1項に記載のコンクリートの防食方法。 【請求項6】 防食方法を施したコンクリートを、10%硫酸水溶液および水酸化カルシウム飽和水溶液に60日間浸漬した後、塗膜にふくれ、割れ、軟化および溶出がない請求項4または5に記載のコンクリートの防食方法。 【請求項7】 防食方法を施したコンクリートを、10%硫酸水溶液に120日間浸漬した後、電子線マイクロアナライザーで測定した塗膜への硫黄侵入深さが塗膜の厚さの5%以内かつ100μm以下であり、硬化塗膜の透水量が0.15g以下である請求項4~6のいずれか1項に記載のコンクリートの防食方法。 【請求項8】 素地調整材が、(D)粒度が30~1000μmである骨材を含む請求項1~7のいずれか1項に記載のコンクリートの防食方法。 【請求項9】 短繊維補強材(B)が、ガラスファイバー、カーボンファイバーまたはセルロースナノファイバーである請求項1~8のいずれか1項に記載のコンクリートの防食方法。 【請求項10】 短繊維補強材(B)が、ガラスミルドファイバーまたはガラスカットファイバーである請求項9に記載のコンクリートの防食方法。 【請求項11】 (A)ビニルエステル系樹脂、(B)平均繊維長が50~1000μmの短繊維補強材、(C)揺変剤を含有するコンクリート防食用樹脂組成物からなる塗膜とコンクリートの間に、プライマー層および素地調整材層を有するコンクリート防食塗膜。 【請求項12】 コンクリート防食用樹脂組成物がガラスフレークを含まない請求項11に記載のコンクリート防食塗膜。 【請求項13】 素地調整材層が、(D)粒度が30~1000μmである骨材を含む請求項11または12に記載のコンクリート防食塗膜。 【請求項14】 短繊維補強材(B)が、ガラスファイバー、カーボンファイバーまたはセルロースナノファイバーである請求項11~13のいずれか1項に記載のコンクリート防食塗膜。 【請求項15】 短繊維補強材(B)が、ガラスミルドファイバーまたはガラスカットファイバーである請求項11~14のいずれか1項に記載のコンクリート防食塗膜。 【請求項16】 (A)ビニルエステル系樹脂、 (B)平均繊維長が50~1000μmの短繊維補強材、及び (C)揺変剤 を含む、コンクリート防食用樹脂組成物。 【請求項17】 ガラスフレークを含まない請求項16に記載のコンクリート防食用樹脂組成物。 【請求項18】 短繊維補強材(B)が、ガラスファイバー、カーボンファイバーまたはセルロースナノファイバーである請求項16または17に記載のコンクリート防食用樹脂組成物。 【請求項19】 短繊維補強材(B)が、ガラスミルドファイバーまたはガラスカットファイバーである請求項18に記載のコンクリート防食用組成物。」 第4 特許異議の申立てについて 1 取消理由の概要 当審が特許権者に通知した、令和5年1月31日付けの取消理由の概要は、次のとおりである。 ここで引用した刊行物は、次のものである。 引用文献1 特開2019-65199号公報(甲第1号証) 引用文献2 特開2019-38972号公報(甲第3号証) 引用文献3 日本下水道事業団編、“下水道コンクリート構造物の腐食抑 制技術及び防食技術マニュアル”、平成19年7月、財団法 人下水道業務管理センター、66頁~84頁、付7頁~付1 9頁(甲第11号証) 引用文献4 特開2002-60282号公報 引用文献5 特開平10-231453号公報 引用文献6 特開2001-316164号公報 (1) 取消理由1(明確性要件違反) 本件特許の請求項10,15及び19に係る特許は、特許請求の範囲の記載が後記4(1)ア(ア)の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (2) 取消理由2(引用文献1を主たる証拠とした進歩性欠如) 設定登録時の請求項1~19に係る発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献1及び2に記載された事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (3) 取消理由3(引用文献2を主たる証拠とした進歩性欠如) 設定登録時の請求項1~19に係る発明は、引用文献2に記載された発明、引用文献2に記載された事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 2 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由の概要 申立人が主張する特許異議申立理由のうち、取消理由において採用しなかった特許異議申立理由は、概略、以下のとおりである。 ここで、申立人が提出した証拠方法は、次のものである。 甲第1号証 特開2019-65199号公報(引用文献1) 甲第2号証 特開2009-120854号公報 甲第3号証 特開2019-38972号公報(引用文献2) 甲第4号証 特開2006-274145号公報 甲第5号証 特開平6-26180号公報 甲第6号証 滝山榮一郎、“ポリエステル樹脂ハンドブック”、初版、昭 和63年6月30日、日刊工業新聞社、466頁~467頁 甲第7号証 特開2006-274723号公報 甲第8号証 特開2019-123801号公報 甲第9号証 特開平11-279488号公報 甲第10号証 特開2003-119421号公報 甲第11号証 日本下水道事業団編、“下水道コンクリート構造物の腐食 抑制技術及び防食技術マニュアル”、平成19年7月、財 団法人下水道業務管理センター、66頁~84頁、付7頁 ~付19頁(引用文献3) (1) 申立理由1(甲第1号証を主たる証拠とした新規性欠如) 設定登録時の請求項1~7、11、12、16~19に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、その特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 (2) 申立理由2(甲第2号証を主たる証拠とした新規性・進歩性欠如) 設定登録時の請求項1~7、11、12、16~19に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、請求項1~19に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものである。 (3) 申立理由3(甲第3号証を主たる証拠とした新規性欠如) 設定登録時の請求項1~7、11、12、16~19に係る発明は、甲第3号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、その特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 (4) 申立理由4(明確性要件違反、実施可能要件違反) 本件特許の請求項4~7、10、15及び19に係る特許は、発明の詳細な説明及び特許請求の範囲の記載が後記4(1)ア(ア)及びイ(ア)の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号及び第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (5) 申立理由5(サポート要件違反) 本件特許の請求項9、14及び18に係る特許は、特許請求の範囲の記載が後記4(5)ア(ア)の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 3 刊行物の記載事項 (1) 引用文献1(甲第1号証)の記載事項 引用文献1(甲第1号証)には、「繊維強化樹脂組成物及び繊維強化樹脂組成物用の材料」(発明の名称)に関して、次の事項が記載されている。なお、下線は当審が付した(以下、同様である。)。 ア 「【請求項1】 下地表面に塗布して用いる繊維強化樹脂組成物であって、 液状のラジカル硬化型樹脂にチョップドストランドが拡散して含まれてスラリー状であり、 前記ラジカル硬化型樹脂と前記チョップドストランドとの質量比は、当該ラジカル硬化型樹脂を100とすると当該チョップドストランドが20以上45以下であり、 前記チョップドストランドの平均繊維長さが5mm以上13mm以下である、繊維強化樹脂組成物。」 イ 「【0002】 構造物の防水又は防食用として繊維強化樹脂組成物が様々な箇所に用いられている。繊維強化樹脂組成物による防水構造は、FRP(Fiber Reinforced Plastics)防水とも呼ばれ、このFRP防水は、例えば浴室、住宅の屋上、バルコニー、屋上駐車場、プール、工場床等をはじめ、上水又は下水用のコンクリート槽等の土木用途にも広く用いられている。・・・」 ウ 「【0007】 ・・・ そこで、本発明では、繊維強化層の強度品質を確保すると同時に、効率のよい施工が可能となり、かつ、補強のための繊維の飛散を可及的に低下させるとともに、樹脂の臭気拡散も低減させることを可能とする繊維強化樹脂組成物を提供する。また、このような繊維強化樹脂組成物用の材料を提供することを目的とする。」 エ 「【0009】 この繊維強化樹脂組成物(以下、「組成物」ともいう。)によれば、この組成物が硬化して得られる層は、所望の強度品質を確保することができると共に、施工性が向上する。すなわち、質量比で、ラジカル硬化型樹脂を100とするとチョップドストランドが20以上であり、チョップドストランドの平均繊維長さが5mm以上であることから、所望の強度を有することができる。そして、質量比で、ラジカル硬化型樹脂を100とするとチョップドストランドが45以下であり、チョップドストランドの平均繊維長さが13mm以下であるため、施工場所において、例えばコテ及びローラー等を用いた手作業により、この組成物を下地表面に対して塗布が可能となり、効率よく施工することが可能である。・・・」 オ 「【0021】 <本発明の実施形態の詳細> 以下、本発明の実施形態の一例を説明する。 〔繊維強化樹脂組成物30及び被覆層構造体1について〕 図1は、繊維強化樹脂組成物30による繊維強化層33を備えている被覆層構造体1の実施の一形態を示す説明図である。本実施形態の被覆層構造体1は、下地10、及び下地10の上に形成された複数(図例では4つ)の被覆層を含む。具体的には、被覆層として、下層側から順に、プライマー層20、繊維強化樹脂組成物30による繊維強化層33、中塗り層40、トップコート層(保護仕上げ層)50が含まれる。プライマー20は、FRP防水及びFRP防食に一般的に用いられるものが使用され、例えば、一液性湿気硬化型ウレタンプライマー又はビニルエステルプライマーが用いられる。 【0022】 下地10は、一般的な土木構造体又は建築構造体の一部として用いられている下地であり、例えば、コンクリート、モルタル、不燃板、合板、珪酸カルシウム板、鉄、アルミ、その他の金属等である。また、コンクリート等の前記下地(第1の下地)10の上に、各種被覆層により施工された既設被覆層が存在していてもよく、(図1において破線で示すように)この既設被覆層を第2の下地11として、この第2の下地11の上に繊維強化樹脂組成物30による繊維強化層33等が設けられた複合工法による被覆層構造体であってもよい。前記既設被覆層としては、例えば、エポキシ樹脂塗膜、ウレタン樹脂塗膜、FRP系塗膜、ポリマーセメント系樹脂塗膜、改質アスファルトシートなどがある。さらに、前記各層の施工が完了し、防水層又は防食層として用いられている後、改修工事において、施工が完了している前記防水層又は防食層の表面層(既設の被覆層)を第2の下地11として、その上に、繊維強化樹脂組成物30による繊維強化層33等を設けてもよい。」 カ 「【0023】 本実施形態の繊維強化樹脂組成物30(以下、「組成物30」とも言う。)は、液状であるラジカル硬化型樹脂31(以下、「樹脂31」とも言う。)と、チョップドストランド32(以下、「CS32」とも言う。)とを混合攪拌して得たコンパウンドであり、この組成物30を、下地10(又は第2の下地11)に塗布し、硬化させる。 ・・・ 【0025】 〔樹脂31について〕 樹脂31は、ハンドレイ成形、防水層施工、又は防食層施工に使用される積層樹脂であればその種類を問わず、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ビニルウレタン樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリルシラップ、又はこれらによる光硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂等が挙げられる。また、樹脂31は水溶性タイプであってもよい。特に、樹脂31を、重合性モノマー架橋型熱硬化性樹脂である不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂とするのが好適である。さらには、樹脂31は、日本建築学会「FRP防水工事施工指針・同解説のJASS8M-101-2007防水用ポリエステル」の品質基準を満たすのが好ましい。 ・・・ 【0027】 また、施工性を向上させることを目的として、樹脂31に、チキソ剤、増粘剤、顔料及び充填剤を添加してもよい。これらのうちの少なくとも一つを樹脂31に添加することによって、その樹脂の粘度と揺変度(チキソ・インデックス)とを高め、例えば、施工箇所のうちの立ち上がり部の施工性を向上させてもよい。このような添加剤は、樹脂31の製造時に予め配合するか、実際の施工場所で配合してもよい。なお、これらの添加剤類を、単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。」 キ 「【0029】 〔CS32について〕 本実施形態の組成物30に用いられるCS32は、ロービングが短く切断されて得た短繊維である。CS32に用いられるガラスの種類としては公知慣用のものとすることができ、例えば、Eガラス、Cガラス、Rガラス、ARガラス、又は、低ホウ素含有率ガラス等とすることができる。CS32の仕様として、繊維径が9マイクロメートル以上、25マイクロメートル以下であり、線密度が1000~5000g/km(TEX)で集束したものなどを用いることができる。集束剤(サイジング剤)としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂と、シランカップリング剤とを併用することが好ましい。」 ク 「【0033】 〔組成物30及び被覆層構造体1について〕 本実施形態の組成物30は、液状である樹脂31と、CS32とを、混合攪拌することにより得られたコンパウンドである。・・・ 【0035】 このようなスラリー状である組成物30を、刷毛塗り、ローラー塗り、コテ塗り等によって下地10に塗布する塗装工程と、FRPハンドレイアップ法で用いられるスチールローラーやスパイラルローラー等を用いて、下地10に塗布した組成物30に対して脱泡する工程とを行ない、組成物30を硬化させることで、防水層又は防食層(の一部)として機能する繊維強化層33が得られる。以上より、下地10の上に組成物30による防水層又は防食層が形成され、下地10と、この下地10の上に形成された組成物30による繊維強化層33と、を含む被覆層構造体1が得られる。」 ケ 「【0042】 ・・・ (実施例4) 実施例4の組成物30は、ラジカル硬化型樹脂Cとして汎用の防食用ビニルエステル樹脂に、6mmのCS-aを撹拌混合したスラリー状のものであり、樹脂CとCS-aとの配合比を、質量比で100:35としたものである。 (実施例5) 実施例5の組成物30は、ラジカル硬化型樹脂Cとして汎用の防食用ビニルエステル樹脂に、6mmのCS-aを撹拌混合したスラリー状のものであり、樹脂CとCS-aとの配合比を、質量比で100:40としたものである。 ・・・」 (2) 引用文献2(甲第3号証)の記載事項 引用文献2(甲第3号証)には、「防食ライニング材及びコンクリート構造物の防食方法」(発明の名称)に関して、次の事項が記載されている。 ア 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 (メタ)アクリレート系エポキシ樹脂100質量部、重合性不飽和単量体1~200質量部、硬化促進剤0.1~10質量部、及び反応性界面活性剤1~50質量部を含有する混合液に、水10~200質量部を滴下して転相乳化させることにより得られる水系ビニルエステル樹脂と、 繊維とを含有する、防食ライニング材。 ・・・ 【請求項6】 前記繊維の繊維長が3~10mmである、請求項1~5のいずれか一項に記載の防食ライニング材。 【請求項7】 請求項1~6のいずれか一項に記載の防食ライニング材をコンクリート構造物に塗布し、乾燥させる工程1を1~3回繰り返し行うことにより、厚さ0.35~1.05mmの塗膜を形成させた後、 上塗り材として、(メタ)アクリレート系エポキシ樹脂100質量部、重合性不飽和単量体1~200質量部、硬化促進剤0.1~10質量部、及び反応性界面活性剤1~50質量部を含有する混合液に、水10~200質量部を滴下して転相乳化させることにより得られる水系ビニルエステル樹脂を、工程1で形成させた塗膜上に塗布し、乾燥させる工程2を1~3回繰り返し行うことにより、厚さ0.35~1.05mmの塗膜を形成させる、コンクリート構造物の防食工法。 ・・・ 【請求項10】 前記工程1に先立ち、 (メタ)アクリレート系エポキシ樹脂100質量部、重合性不飽和単量体1~200質量部、硬化促進剤0.1~10質量部、及び反応性界面活性剤1~50質量部を含有する混合液に、水10~200質量部を滴下して転相乳化させることにより得られる水系ビニルエステル樹脂と、無機粉体とを含有する素地調整材を、コンクリート構造物に塗布し、乾燥させて塗膜を形成する工程を含む、請求項7~9のいずれか一項に記載のコンクリート構造物の防食工法。」 イ 「【0009】 ・・・ 前記繊維は、有機繊維及び無機繊維から選択される一種以上であることが好ましい。 前記繊維の繊維長は3~10mmであることが好ましい。」 ウ 「【0027】 [繊維] 本発明の防食ライニング材は、上記した水系ビニルエステル樹脂を主剤とし、この主剤に繊維を添加することで、塗膜の強度や耐衝撃性を向上させる効果を発揮する。 繊維は、有機繊維及び無機繊維から選択される一種以上であることが好ましい。無機繊維としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、バサルト繊維、及び岩石繊維等が挙げられ、有機繊維としては、例えば、アラミド繊維、PBO繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリアリレート繊維、ビニロン繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン繊維及びナイロン繊維等が挙げられる。さらに、これらの繊維のうち繊維長が3~10mmであるものがより好ましい。」 (3) 甲第2号証の記載事項 甲第2号証には、「常温硬化性樹脂組成物」(発明の名称)に関して、次の事項が記載されている。 ア 「【請求項1】 ラジカル硬化性樹脂並びに第一級アミン及び/又は第二級アミンを含有する常温硬化性樹脂組成物であって、 該ラジカル硬化性樹脂は、重合体と重合性単量体とを含み、 該第一級アミン及び/又は第二級アミンは、モノアミンであることを特徴とする常温硬化性樹脂組成物。」 イ 「【発明が解決しようとする課題】 【0009】 本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、ホルムアルデヒド発散量が充分に低減されることにより、化学物質の発散に対する衛生上の支障を生じるおそれが充分に抑制されて、建築分野等における建築材料の仕上げ材等として、特に防水ライニング用材料に好適であるラジカル硬化性樹脂を含有する常温硬化性樹脂組成物、及び、それを含む防水材を提供することを目的とするものである。」 ウ 「【0012】 本発明の常温硬化性樹脂組成物(以下、「樹脂組成物」ともいう。)において、ラジカル硬化性樹脂としては、重合体と重合性単量体とを含むものである。 上記ラジカル硬化性樹脂において、重合体としては、例えば、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、ウレタン(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレート系重合体等の1種又は2種以上のものから構成されるものであることが好ましい。中でも、例えば、防水ライニング用材料に用いる場合には、形成される防水層が充分な基本性能を有することから、不飽和ポリエステルを含んでなることが好ましい。 上記要件を満たす重合体の含有量としては、ラジカル硬化性樹脂に含まれる重合体の全量を100質量%として、50~100質量%であることが好ましい。より好ましくは、70~100質量%であり、更に好ましくは、90~100質量%である。」 エ 「【0055】 上記樹脂組成物においては更に、必要に応じて、充填剤、揺変剤、繊維強化材、重合禁止剤、消泡剤、増粘剤、無機骨材、不活性粉体、紫外線吸収剤、低収縮剤、老化防止剤、可塑剤、難燃剤、安定剤、顔料やトナー等の着色剤等の添加剤を含んでいてもよい。 上記添加剤において、充填剤としては、例えば、水酸化アルミニウム(ATH)、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、クレー、タルク、ガラスパウダー、ミルドファイバー、クリストバライト、マイカ、シリカ、川砂、珪藻土、雲母粉末、石膏、ガラス粉末等の無機充填剤;有機充填剤等の1種又は2種以上が挙げられる。充填剤の使用量としては、ラジカル硬化性樹脂100重量部に対して、20重量部以上、300重量部以下であることが好ましい。また、上記樹脂組成物としては、これらの充填剤を用いることにより、注型(人大)、塗床材に好適に利用することができる。この場合、ATHやシリカを用いることがより好ましく、使用量としては、120重量部以上、200重量部以下であることが好適である。 【0056】 上記揺変剤としては、例えば、ヒュームドシリカ等が挙げられる。揺変剤の使用量としては、ラジカル硬化性樹脂100重量部に対して、0.1重量部以上、5重量部以下であることが好ましい。なお、揺変剤を用いることにより、樹脂組成物を、防水ライニングや塗料、ゲルコート等の技術に好適に利用することができる。 【0057】 上記繊維強化材としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、セラミックからなる繊維等の無機繊維;アラミド、ポリエステル、ビニロン、フェノール、テフロン(登録商標)等の有機繊維;天然繊維等が挙げられる。中でも、ガラス繊維が好ましい。繊維強化材の使用量としては、ラジカル硬化性樹脂100重量部に対して、5重量部以上、70重量部以下であることが好ましい。なお、繊維強化材を用いることにより、樹脂組成物を、繊維強化プラスチック(FRP)材料や防水ライニング等の技術に好適に利用することができる。 なお、この場合、本発明の樹脂組成物を施工した後にクロス(織物)状、マット状、不織布状等のガラス繊維を積層することにより樹脂組成物を繊維強化材に含浸することが防水ライニング用材料等の調製や施工性の点で好ましい。中でも、マット状のガラス繊維を用いることが好ましい。また、樹脂組成物を施工した後にチョップ状のガラス繊維を散布して積層することにより樹脂組成物を繊維強化材に含浸することもできる。」 オ 「【0061】 本発明の樹脂組成物により被膜(塗膜)を形成する方法としては、例えば、本発明の樹脂組成物を基材に塗布した後硬化させることにより被膜を成形する方法;マット状の繊維強化材を用いる場合には、本発明の樹脂組成物をハンドレイアップ等により繊維強化材を含浸させて被覆材とし、硬化させることにより被膜を形成する方法等が挙げられる。 上記基材としては、例えば、ガラス、スレート、コンクリート、モルタル、セラミック、石材等の無機質基材;アルミニウム、鉄、亜鉛、錫、銅、チタン、ステンレス、ブリキ、トタン等からなる金属板、表面に亜鉛、銅、クロム等をメッキした金属、表面をクロム酸、リン酸等で処理した金属等の金属基材;ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)、FRP(織維強化プラスチック)、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリオレフィン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ナイロン樹脂、等のプラスチック基材;合成皮革;ヒノキ、スギ、マツ、合板等の木材;繊維、紙等の有機素材等が挙げられる。また、これらの基材は、本発明の樹脂組成物が塗装される前に、通常用いられるプライマーや、下塗り、中塗り、メタリックベース等の上塗り等塗装用塗料が塗装されていてもよい。」 (4) 甲第6号証の記載事項 甲第6号証には、「複合材料」(第10章表題)に関して、次の事項が記載されている。 「10.5.8 ミルドファイバー(ガラスパウダー) フィラーとして特異な性質を示すものに,ガラス繊維を粉末化したもので,アスペクト比(長さ/直径)をもつフィラーがあり,樹脂の補強効果がある.・・・ 以前はミルドファイバーと呼ばれていたが,メーカーの呼称があり商品名で呼ばれることが多くなった. ・・・ 一長一短といえるが,収縮率を減少させ,クラックを防止するためにはすこぶる有効である.」(466頁5行~467頁2行) (5) 甲第8号証の記載事項 甲第8号証には、「防食性に優れた水性塗料組成物」(発明の名称)に関して、次の事項が記載されている。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、防食性に優れた水性塗料組成物及び防食塗装方法に関する。」 イ 「【背景技術】 【0002】 鋼材は、海洋構造物、港湾施設、船舶、建築、土木構造物、自動車など多方面に広く用いられているが、自然環境に曝されると腐食するという問題がある。腐食を防止あるいは抑制する方法として、防食塗装が行われている。」 ウ 「【発明が解決しようとする課題】 【0015】 本発明の目的は、錆が残存した基材上に塗布しても良好な防食性の塗膜を形成することが可能な水性塗料組成物及び防食塗装方法を提供することにある。」 エ 「【0069】 (メタ)アクリロイル基含有モノマー以外の他の重合性不飽和モノマーも共重合成分とすることができる。かかる他の重合性不飽和モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロニトリル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル化合物;スチレン、α-メチルスチレン等のビニル芳香族化合物;アリルアルコールなどの水酸基含有重合性不飽和モノマー;等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。」 オ 「【0101】 上記繊維状無機化合物(F)はその材質、製法、産地等には特に制限はなく、その具体例としては例えば、ガラス繊維、炭化珪素、窒化珪素、ウオラストナイト、セピオライト、クリソタイル、アモサイト、トレモライト、ゼオライト、カルシウムメタシリケート、ゾノライト、チタン酸カリウム、ロックウール、アルミニウムシリケート、カーボンファイバー、アラミドファイバー、ホウ酸アルミニウム、針状炭酸カルシウム、針状塩基性硫酸マグネシウム、ガラスフレーク、針状酸化亜鉛、アラゴナイト型軽質炭酸カルシウム、紡錘型軽質炭酸カルシウム、サチンホワイト等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。」 カ 「【0104】 また、繊維状無機化合物(F)の平均繊維長としては5~300μm、特に10~200μmの範囲内がよい。本明細書において平均繊維長は、アスペクト比の測定において得られた長軸径の平均値とする。」 (6) 技術常識を示す刊行物の記載事項 ア 参考資料1(JIS R 3410:2006)の記載事項 「4106 ミルドファイバ ストランドを極く短い長さに粉砕又は切断してつくったガラス繊維製品。」 イ 参考資料2(南条尚志、FRP構成素材入門 第2章 構成素材と種類 -ガラス繊維-、日本複合材料学会誌、2007年、第33巻、第4号、141頁~149頁)の記載事項 「(5) ミルドファイバー ガラス繊維を10~100μm程度の粉末状にしたもので,用途に応じた表面処理剤が付けられている.アスペクト比(繊維径と繊維長さの比)をもっているため補強効果も期待でき,注型樹脂の補強等に使用される.」(145頁左欄15行~19行) ウ 参考資料3(特開2011-256251号公報)の記載事項 「【0035】 上記異方性形状を有するガラスフィラーとしては市販品を使用することができ、例えば、鱗片状ガラスとして日本板硝子(株)製のガラスフレーク(登録商標)(製品番号:REF-600、REF-160、REF-015等)等が好適に使用できる。また、ガラスカットファイバーとして日東紡績(株)製のミルドファイバー(製品番号:PFE-001、PFE-301等)等も好適に使用できる。」 4 当審の判断 事案に鑑み、取消理由及び申立理由を纏めて検討する。 (1) 取消理由1(明確性要件違反)及び申立理由4(明確性要件違反、実施可能要件違反)について ア 本件発明10、15及び19について (ア) 具体的な指摘事項 取消理由1は、要するに、設定登録時の請求項10、15及び19に記載された「ガラスカットファイバー」は、本件特許明細書にその定義が記載されていないし、また、その定義が技術常識であるとの証拠もないから、当該請求項に係る発明は明確でない、というものである。 また、標記発明に対する申立理由4は、要するに、設定登録時の請求項10、15及び19に記載された「ガラスミルドファイバー」と「ガラスカットファイバー」との相違が不明であるから、当該請求項に係る発明が明確でないし、発明の詳細な説明の記載は、当業者が当該発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものではない、というものである。 (イ) 標記発明に対する明確性要件、実施可能要件についての検討 「ガラスミルドファイバー」は、JIS規格(参考資料1)で「ストランドを極く短い長さに粉砕又は切断してつくったガラス繊維製品」(前記3(6)ア)と定義されており、参考資料2の「ミルドファイバー ガラス繊維を10~100μm程度の粉末状にしたもの」との記載(前記3(6)イ)を参酌すれば、数十~数百μmのごく短い長さに粉砕又は切断して作ったガラス繊維製品を示しているといえる。 他方、「ガラスカットファイバー」については、甲第6号証の「以前はミルドファイバーと呼ばれていたが,メーカーの呼称があり商品名で呼ばれることが多くなった」との記載(前記3(4))や、参考資料3の「ガラスカットファイバーとして日東紡績(株)製のミルドファイバー(製品番号:PFE-001、PFE-301等)等も好適に使用できる」との記載(前記3(6)ウ)を踏まえると、「ガラスミルドファイバー」とほぼ同義の用語であるといえる。 そして、「ガラスミルドファイバー」と「ガラスカットファイバー」との異同が明確でないとしても、いずれも数十~数百μmのごく短い長さのガラス繊維製品を示していることを当業者であれば理解できるから、本件発明10、15及び19の「ガラスミルドファイバーまたはガラスカットファイバー」との特定事項が、第三者に不測の不利益を生じさせるほどに不明確であるとはいえない。 加えて、本件特許明細書の発明の詳細な説明の実施例(【0079】~【0119】)には、短繊維補強材として「ガラスミルドファイバー」を使用した具体例が記載されているから、当業者の過度な試行錯誤を要することなく、本件発明10、15及び19を実施できることは明らかである。 したがって、本件発明10、15及び19は明確であるし、また、発明の詳細な説明の記載は、当業者が当該発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものである。 イ 本件発明4~7について (ア) 具体的な指摘事項 標記発明に対する申立理由4は、要するに、(i)設定登録時の請求項4~7に記載された性能は、請求項1~3に係る発明の防食方法であれば当然に有している性能を示したものなのか、あるいは、当該性能が得られるように構成することで、請求項1~3に係る発明の防食方法をさらに減縮したものなのかが不明であるから、当該請求項4~7に係る発明は明確でなく、また、(ii)後者の場合には、請求項4~7に記載された性能を達成するための具体的な技術手段が不明であるため、発明の詳細な説明の記載は、当業者が当該請求項に係る発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものではない、というものである。 (イ) 標記発明に対する明確性要件、実施可能要件についての検討 本件発明4~7は、前記第3に示したとおりの発明であって、異なる評価方法による性能が示されていることからして、当該性能が得られるように構成することで、本件発明1~3に係る発明の防食方法をさらに減縮していることは明らかである。 また、本件特許明細書の発明の詳細な説明の実施例(【0079】~【0119】)には、コンクリート防食方法の具体例が記載され、硫黄侵入深さ、透水性、耐アルカリ性等の評価結果も記載されているから、これらの記載を参酌すれば、当業者の過度な試行錯誤を要することなく、本件発明4~7を実施できることは明らかである。 したがって、本件発明4~7は明確であるし、また、発明の詳細な説明の記載は、当業者が当該発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものである。 ウ 取消理由1及び申立理由4についての結論 以上のとおりであるから、取消理由1及び申立理由4には理由がない。 (2) 取消理由2(引用文献1を主たる証拠とした進歩性欠如)及び申立理由1(甲第1号証を主たる証拠とした新規性欠如)について ア 引用文献1(甲第1号証)に記載された発明 引用文献1には、前記3(1)アによれば、「下地表面に塗布して用いる繊維強化樹脂組成物であって、液状のラジカル硬化型樹脂にチョップドストランドが拡散して含まれてスラリー状であり」、「前記チョップドストランドの平均繊維長さが5mm以上13mm以下である、繊維強化樹脂組成物」が記載されている(【請求項1】)。 また、引用文献1には、前記3(1)オによれば、「下地10、及び下地10の上に形成された複数の被覆層を含む」「被覆層構造体」であって、「被覆層」が「下層側から順に、プライマー層20、繊維強化樹脂組成物30による繊維強化層33、中塗り層40、トップコート層(保護仕上げ層)50」を含み、「下地」が「一般的な土木構造体又は建築構造体の一部として用いられている下地」であること(【0022】)、及び、「被覆層」が「防水層又は防食層」として用いられること(【0021】、【0022】)が記載されている。 さらに、引用文献1には、前記3(1)カ、キ、ケによれば、「液状のラジカル硬化型樹脂」は、「不飽和ポリエステル樹脂」又は「ビニルエステル樹脂」が好適で、実施例として「防食用ビニルエステル樹脂」を用いること(【0023】、【0025】、【0042】)、「チョップドストランド」は、短く切断されて得られたガラス短繊維であること(【0029】)も記載されている。 これらの記載を「防食用ビニルエステル樹脂」を用いた「繊維強化樹脂組成物」、該組成物を使用した「防食層」及び「防食方法」に注目して整理すると、引用文献1には、次の「防食方法」に係る発明(以下、「引用1発明1」という。)、「防食層」に係る発明(以下、「引用1発明2」という。)、及び、「繊維強化樹脂組成物」に係る発明(以下、「引用1発明3」という。)が記載されていると認められる。 〔引用1発明1〕 「一般的な土木構造体又は建築構造体の一部として用いられている下地の上にプライマー層、防食用ビニルエステル樹脂に平均繊維長さが5mm以上13mm以下のガラス短繊維が拡散して含まれてスラリー状である繊維強化樹脂組成物による繊維強化層、中塗り層、トップコート層を順に形成する、防食方法。」 〔引用1発明2〕 「一般的な土木構造体又は建築構造体の一部として用いられている下地の上に順に形成された、プライマー層、防食用ビニルエステル樹脂に平均繊維長さが5mm以上13mm以下のガラス短繊維が拡散して含まれてスラリー状である繊維強化樹脂組成物による繊維強化層、中塗り層、トップコート層を含む、防食層。」 〔引用1発明3〕 「一般的な土木構造体又は建築構造体の一部として用いられている下地の表面に塗布して用いる繊維強化樹脂組成物であって、防食用ビニルエステル樹脂に、平均繊維長さが5mm以上13mm以下のガラス短繊維が拡散して含まれてスラリー状である、繊維強化樹脂組成物。」 イ 本件発明1について (ア) 本件発明1と引用1発明1との対比 引用1発明1の「防食用ビニルエステル樹脂」、「ガラス短繊維」は、それぞれ、本件発明1の「(A)ビニルエステル系樹脂」、「(B)短繊維補強材」に相当する。 また、引用1発明1の「繊維強化樹脂組成物」は、「防食用ビニルエステル樹脂」を含有していることから、本件発明1の「防食用樹脂組成物」に相当する。 さらに、引用1発明1の「プライマー層」、「スラリー状である繊維強化樹脂組成物による繊維強化層」、「トップコート層を順に形成する」ことは、当該「繊維強化層」が「繊維強化樹脂組成物」の塗布、硬化により形成されていること(前記3(1)ク【0035】参照)を踏まえると、本件発明1の「プライマー組成物を塗布する工程」、「防食用樹脂組成物を塗布する工程」、及び「トップコート用樹脂組成物を塗布する工程」に相当する。 したがって、本件発明1と引用1発明1とは、 「プライマー組成物を塗布する工程、 (A)ビニルエステル系樹脂、(B)短繊維補強材を含有する防食用樹脂組成物を塗布する工程、ならびに、 トップコート用樹脂組成物を塗布する工程 を含む防食方法」 の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 〔相違点1〕 本件発明1は、「コンクリート」を処理対象としているのに対して、引用1発明1は、「一般的な土木構造体又は建築構造体の一部として用いられている下地」を処理対象としている点。 〔相違点2〕 本件発明1は、「コンクリート表面を粗面化処理する工程」及び「素地調整材を塗布する工程」を含んでいるのに対して、引用1発明1では、そのような工程を有していない点。 〔相違点3〕 本件発明1の「短繊維補強材」は「平均繊維長が50~1000μm」であるのに対して、引用1発明1の「ガラス短繊維」は「平均繊維長さが5mm以上13mm以下」である点。 〔相違点4〕 本件発明1の「防食用樹脂組成物」は、「揺変剤」を含有しているのに対して、引用1発明1の「繊維強化樹脂組成物」は、その点が明らかでない点。 (イ) 相違点の検討 事案に鑑み、相違点3について検討する。 相違点3では、本件発明1の短繊維補強材と引用1発明1のガラス短繊維の平均繊維長の数値範囲が明らかに異なるから、当該相違点3は実質的なものである。 次に、引用1発明1において、相違点3に係る本件発明1の構成とすることの容易想到性について検討する。 引用文献1には、前記3(1)ウ、エによれば、繊維強化層の強度品質を確保するために、ガラス短繊維であるチョップドストランドの平均繊維長を5mm以上とすることが記載されている。 そうしてみると、引用文献1において、ガラス短繊維の平均繊維長を5mm未満とすることには、阻害事由が存するから、引用1発明1において、ガラス短繊維の平均繊維長を「50~1000μm」とすること(相違点3に係る本件発明1の構成とすること)は、取消理由通知で引用した引用文献及び申立人の提出した甲号証の記載あるいは周知技術に関わらず、当業者にとって容易想到の事項といえない。 (ウ) 申立人の主張について 申立人は、(i)本件特許明細書には、平均繊維長を特定することに伴う有利な効果が無いこと、(ii)平均繊維長さを適宜変更することは設計事項であること、(iii)引用文献1の【0009】(前記3(1)エ参照)には、強度と施工効率とがトレードオフの関係にあることが記載され、平均繊維長を短くする示唆があること、及び、(iv)甲第8号証には、繊維強化樹脂組成物において、平均繊維長10~200μmの短繊維を使用することが記載されていること(前記3(5)ア、エ~カ参照)を論拠にして、引用1発明1のガラス短繊維の平均繊維長を「50~1000μm」とすることは設計事項である旨を主張している(申立人意見書第7頁「3-3」項参照)。 しかしながら、前記(イ)で検討したとおり、引用文献1に記載された課題からすれば、ガラス短繊維の平均繊維長を5mm未満とすることには、阻害事由が存するから、申立人の上記主張は採用できない。 (エ) 小括 以上のとおりであるから、その他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、引用文献1に記載された発明であるといえないし、また、引用文献1に記載された発明、引用文献1、2に記載された事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明することができたものともいえない。 ウ 本件発明2~10について 本件発明2~10は、本件発明1の全ての特定事項を含むものであるから、前記イで検討したのと同様の理由により、本件発明2~10は、引用文献1に記載された発明であるといえないし、また、引用文献1に記載された発明、引用文献1、2に記載された事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明することができたものともいえない。 エ 本件発明11について (ア) 本件発明11と引用1発明2との対比 引用1発明2の「防食用ビニルエステル樹脂」、「ガラス短繊維」、「繊維強化樹脂組成物による繊維強化層」は、それぞれ、本件発明11の「(A)ビニルエステル系樹脂」、「(B)短繊維補強材」、「防食用樹脂組成物からなる塗膜」に相当する。 また、引用1発明2の「防食層」は、本件発明11の「防食被膜」に相当する。 したがって、本件発明11と引用1発明2とは、 「(A)ビニルエステル系樹脂、(B)短繊維補強材を含有する防食用樹脂組成物からなる塗膜と、プライマー層を有する防食塗膜」 の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 〔相違点5〕 本件発明11の「短繊維補強材」は「平均繊維長が50~1000μm」であるのに対して、引用1発明2の「ガラス短繊維」は「平均繊維長さが5mm以上13mm以下」である点。 〔相違点6〕 本件発明11の「防食用樹脂組成物」は、「揺変剤」を含有しているのに対して、引用1発明2の「繊維強化樹脂組成物」は、その点が明らかでない点。 〔相違点7〕 本件発明11の「防食用樹脂組成物」は、「コンクリート」を使用対象としているのに対して、引用1発明2の「繊維強化樹脂組成物」は、その点が明らかでない点。 〔相違点8〕 本件発明11の「防食被膜」は、「コンクリート」に設けられ、「防食用樹脂組成物からなる塗膜とコンクリートの間に、プライマー層および素地調整材層を有する」のに対して、引用1発明2の「防食層」は、「一般的な土木構造体又は建築構造体の一部として用いられている下地」に設けられ、当該「下地」と「繊維強化樹脂組成物による繊維強化層」との間に「プライマー層」を有するものの、「素地調整材層」を有することが明らかでない点。 (イ) 相違点の検討 相違点5は、前記イ(イ)で検討した相違点3と同じであるから、前記イ(イ)での検討と同様に、相違点5は実質的なものであって、引用1発明2において、ガラス短繊維の平均繊維長を「50~1000μm」とすること(相違点5に係る本件発明11の構成とすること)は、当業者にとって容易想到の事項といえない。 (ウ) 小括 以上のとおりであるから、その他の相違点を検討するまでもなく、本件発明11は、引用文献1に記載された発明であるといえないし、また、引用文献1に記載された発明、引用文献1、2に記載された事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明することができたものともいえない。 オ 本件発明12~15について 本件発明12~15は、本件発明11の全ての特定事項を含むものであるから、前記エで検討したのと同様の理由により、本件発明12~15は、引用文献1に記載された発明であるといえないし、また、引用文献1に記載された発明、引用文献1、2に記載された事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明することができたものともいえない。 カ 本件発明16について (ア) 本件発明16と引用1発明3との対比 引用1発明3の「防食用ビニルエステル樹脂」、「ガラス短繊維」、「繊維強化樹脂組成物」は、それぞれ、本件発明16の「(A)ビニルエステル系樹脂」、「(B)短繊維補強材」、「防食用樹脂組成物」に相当する。 したがって、本件発明16と引用1発明3とは、 「(A)ビニルエステル系樹脂、及び、 (B)短繊維補強材 を含む、防食用樹脂組成物」 の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 〔相違点9〕 本件発明16の「短繊維補強材」は「平均繊維長が50~1000μm」であるのに対して、引用1発明3の「ガラス短繊維」は「平均繊維長さが5mm以上13mm以下」である点。 〔相違点10〕 本件発明16は、「揺変剤」を含有しているのに対して、引用1発明3は、その点が明らかでない点。 〔相違点11〕 本件発明16は、「コンクリート」を使用対象としているのに対して、引用1発明3は、「一般的な土木構造体又は建築構造体の一部として用いられている下地」を使用対象としている点。 (イ) 相違点の検討 相違点9は、前記イ(イ)で検討した相違点3と同じであるから、前記イ(イ)での検討と同様に、相違点9は実質的なものであって、引用1発明3において、ガラス短繊維の平均繊維長を「50~1000μm」とすること(相違点9に係る本件発明16の構成とすること)は、当業者にとって容易想到の事項といえない。 (ウ) 小括 以上のとおりであるから、その他の相違点を検討するまでもなく、本件発明16は、引用文献1に記載された発明であるといえないし、また、引用文献1に記載された発明、引用文献1、2に記載された事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明することができたものともいえない。 キ 本件発明17~19について 本件発明17~19は、本件発明16の全ての特定事項を含むものであるから、前記カで検討したのと同様の理由により、本件発明17~19は、引用文献1に記載された発明であるといえないし、また、引用文献1に記載された発明、引用文献1、2に記載された事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明することができたものともいえない。 ク 取消理由2及び申立理由1についての結論 以上のとおりであるから、取消理由2及び申立理由1には理由がない。 (3) 取消理由3(引用文献2を主たる証拠とした進歩性欠如)及び申立理由3(甲第3号証を主たる証拠とした新規性欠如)について ア 引用文献2(甲第3号証)に記載された発明 引用文献2には、前記3(2)アによれば、「防食ライニング材」に関して、「水系ビニルエステル樹脂と、繊維とを含有する」こと(【請求項1】)、「前記繊維の繊維長が3~10mmである」こと(【請求項6】)、及び、「防食ライニング材をコンクリート構造物に塗布」すること(【請求項7】)、さらに、「コンクリート構造物の防食工法」に関して、「防食ライニング材をコンクリート構造物に塗布し、乾燥させる工程1」により「塗膜を形成させた後」、「水系ビニルエステル樹脂を、工程1で形成させた塗膜上に塗布し、乾燥させる工程2」により「塗膜を形成させる」こと(【請求項7】、及び、「前記工程1に先立ち」、「水系ビニルエステル樹脂と、無機粉体とを含有する素地調整材を、コンクリート構造物に塗布し、乾燥させて塗膜を形成する工程」を行うこと(【請求項10】)が記載されている。 これらの記載を「防食ライニング材」、「コンクリート構造物の防食工法」及び該「防食工法」により得られた「塗膜」に注目して整理すると、引用文献2には、次の「コンクリート構造物の防食工法」に係る発明(以下、「引用2発明1」という。)、「防食工法」により得られた「塗膜」に係る発明(以下、「引用2発明2」という。)、及び、「防食ライニング材」に係る発明(以下、「引用2発明3」という。)が記載されていると認められる。 〔引用2発明1〕 「水系ビニルエステル樹脂と、無機粉体とを含有する素地調整材を、コンクリート構造物に塗布し、乾燥させて塗膜を形成し、前記塗膜上に、水系ビニルエステル樹脂と繊維長が3~10mmである繊維とを含有する防食ライニング材を塗布し、乾燥させる工程1により塗膜を形成させた後、前記工程1で形成させた塗膜上に、水系ビニルエステル樹脂を塗布し、乾燥させる工程2により塗膜を形成させる、コンクリート構造物の防食工法。」 〔引用2発明2〕 「コンクリート構造物上に順に形成された、素地調整材を塗布し乾燥させた塗膜、水系ビニルエステル樹脂と繊維長が3~10mmである繊維とを含有する防食ライニング材を塗布し乾燥させる塗膜、水系ビニルエステル樹脂を塗布し乾燥させた塗膜からなる、防食工法により得られた塗膜。」 〔引用2発明3〕 「水系ビニルエステル樹脂と、繊維長が3~10mmである繊維とを含有する、コンクリート構造物に塗布する防食ライニング材。」 イ 本件発明1について (ア) 本件発明1と引用2発明1との対比 引用2発明1の「防食ライニング材」は、コンクリート構造物に塗布していることから、本件発明1の「コンクリート防食用樹脂組成物」に相当する。 引用2発明1の「コンクリート構造物」、「水系ビニルエステル樹脂」、「繊維長が3~10mmである繊維」、「防食ライニング材」、「コンクリート構造物の防食工法」は、それぞれ、本件発明1の「コンクリート表面」、「(A)ビニルエステル系樹脂」、「(B)短繊維補強材」、「コンクリートの防食方法」に相当する。 さらに、引用2発明1の「水系ビニルエステル樹脂と、無機粉体とを含有する素地調整材を」「塗布し、乾燥させて塗膜を形成」すること、「防食ライニング材を塗布し、乾燥させる工程1により塗膜を形成」すること、「水系ビニルエステル樹脂を塗布し、乾燥させる工程2により塗膜を形成」することは、それぞれ、本件発明1の「素地調整材を塗布する工程」、「コンクリート防食用樹脂組成物を塗布する工程」、「トップコート用樹脂組成物を塗布する工程」に相当する。 したがって、本件発明1と引用2発明1とは、 「コンクリート表面に、 素地調整材を塗布する工程、 (A)ビニルエステル系樹脂、(B)短繊維補強材を含有するコンクリート防食用樹脂組成物を塗布する工程、ならびに、 トップコート用樹脂組成物を塗布する工程 を含むコンクリートの防食方法」 の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 〔相違点12〕 本件発明1は、「コンクリート表面を粗面化処理する工程」及び「粗面化された表面にプライマリー組成物を塗布する工程」を含んでいるのに対して、引用2発明1では、そのような工程を有していない点。 〔相違点13〕 本件発明1の「短繊維補強材」は、「平均繊維長が50~1000μm」であるのに対して、引用2発明1の「繊維」は、「繊維長が3~10mm」である点。 〔相違点14〕 本件発明1の「コンクリート防食用樹脂組成物」は、「揺変剤」を含有しているのに対して、引用2発明1の「防食ライニング材」は、その点が明らかでない点。 (イ) 相違点の検討 事案に鑑み、相違点13について検討する。 相違点13では、本件発明1の短繊維補強材の平均繊維長と引用2発明1の繊維の繊維長さの数値範囲は明らかに異なっているから、当該相違点13は実質的なものである。 次に、引用2発明1において、相違点13に係る本件発明1の構成とすることの容易想到性について検討する。 引用文献2には、前記3(2)イ、ウによれば、当該繊維の繊維長の好ましい範囲が3~10mmであることが示されているのみであり、当該繊維の繊維長を短くすることは示唆されていない。また、コンクリート防食用樹脂組成物に使用する短繊維補強材の平均繊維長を50~1000μmとすることは、取消理由通知で引用した引用文献及び申立人が提出した甲号証のいずれにも記載されていないし、また、このことが周知技術であることを示す証拠もない。 したがって、引用2発明1において、防食ライニング材に含有する繊維の繊維長を「平均繊維長が50~1000μm」とすること(相違点13に係る本件発明1の構成とすること)は、当業者にとって容易想到の事項といえない。 (ウ) 申立人の主張について 申立人は、(i)本件特許明細書には、平均繊維長を特定することに伴う有利な効果が無いこと、(ii)平均繊維長さを適宜変更することは設計事項であること、及び、(iii)甲第8号証には、繊維強化樹脂組成物において、平均繊維長10~200μmの短繊維を使用することが記載されていること(前記3(5)ア、エ~カ参照)を論拠にして、引用2発明1の繊維の繊維長を「平均繊維長が50~1000μm」とすることは設計事項である旨を主張している(申立人意見書第11頁「3-4」項参照)。 しかしながら、甲第8号証の記載は、鋼材の防食塗装に使用される水性塗料組成物に対するもの(前記3(5)イ、ウ参照)であって、コンクリート防食用樹脂組成物に使用される短繊維強化材の繊維長を示すものでないし、また、その他の証拠をみても、前記(イ)で検討したとおり、コンクリート防食用樹脂組成物に使用する短繊維補強材の平均繊維長を50~1000μmとすることが、公知技術又は周知技術ということはできないため、引用2発明1において、防食ライニング材に含有する繊維の平均繊維長を50~1000μmとすることが設計事項であるといえない。 よって、申立人の上記主張は採用できない。 (エ) 小括 以上のとおりであるから、その他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、引用文献2に記載された発明であるといえないし、また、引用文献2に記載された発明、引用文献2に記載された事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明することができたものともいえない。 ウ 本件発明2~10について 本件発明2~10は、本件発明1の全ての特定事項を含むものであるから、前記イで検討したのと同様の理由により、本件発明2~10は、引用文献2に記載された発明であるといえないし、また、引用文献2に記載された発明、引用文献2に記載された事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明することができたものともいえない。 エ 本件発明11について (ア) 本件発明11と引用2発明2との対比 引用2発明2の「コンクリート構造物」、「水系ビニルエステル樹脂」、「繊維長が3~10mmである繊維」、「防食ライニング材を塗布し乾燥させる塗膜」は、それぞれ、本件発明11の「コンクリート」、「(A)ビニルエステル系樹脂」、「(B)短繊維補強材」、「コンクリート防食用樹脂組成物からなる塗膜」に相当する。 また、引用2発明2の「素地調整材を塗布し乾燥させた塗膜」、「防食工法により得られた塗膜」は、それぞれ、本件発明11の「素地調整材層」、「コンクリート防食被膜」に相当する。 したがって、本件発明11と引用2発明2とは、 「(A)ビニルエステル系樹脂、(B)短繊維補強材を含有するコンクリート防食用樹脂組成物からなる塗膜とコンクリートの間に、素地調整材層を有する国リート防食塗膜」 の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 〔相違点15〕 本件発明11の「短繊維補強材」は、「平均繊維長が50~1000μm」であるのに対して、引用2発明2の「繊維」は、「繊維長が3~10mm」である点。 〔相違点16〕 本件発明11の「防食用樹脂組成物」は、「揺変剤」を含有しているのに対して、引用2発明2の「繊維強化樹脂組成物」は、その点が明らかでない点。 〔相違点17〕 本件発明11は、「コンクリート防食用樹脂組成物からなる塗膜とコンクリートの間」に「プライマー層」も有しているのに対して、引用2発明2は、その点が明らかでない点。 (イ) 相違点の検討 相違点15は、前記イ(イ)で検討した相違点13と同じであるから、前記イ(イ)での検討と同様に、相違点15は実質的なものであって、引用2発明2において、防食ライニング材に含有する繊維の繊維長を「平均繊維長が50~1000μm」とすること(相違点15に係る本件発明11の構成とすること)は、当業者にとって容易想到の事項といえない。 (ウ) 小括 以上のとおりであるから、その他の相違点を検討するまでもなく、本件発明11は、引用文献2に記載された発明であるといえないし、また、引用文献2に記載された発明、引用文献2に記載された事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明することができたものともいえない。 オ 本件発明12~15について 本件発明12~15は、本件発明11の全ての特定事項を含むものであるから、前記エで検討したのと同様の理由により、本件発明12~15は、引用文献2に記載された発明であるといえないし、また、引用文献2に記載された発明、引用文献2に記載された事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明することができたものともいえない。 カ 本件発明16について (ア) 本件発明16と引用2発明3との対比 引用2発明3の「水系ビニルエステル樹脂」、「繊維長が3~10mmである繊維」、「コンクリート構造物に塗布する防食ライニング材」は、それぞれ、本件発明16の「(A)ビニルエステル系樹脂」、「(B)短繊維補強材」、「コンクリート防食用樹脂組成物」に相当する。 したがって、本件発明16と引用2発明3とは、 「(A)ビニルエステル系樹脂、及び、 (B)短繊維補強材 を含む、コンクリート防食用樹脂組成物」 の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 〔相違点18〕 本件発明16の「短繊維補強材」は、「平均繊維長が50~1000μm」であるのに対して、引用2発明3の「繊維」は、「繊維長が3~10mm」である点。 〔相違点19〕 本件発明16は、「揺変剤」を含有しているのに対して、引用2発明3は、その点が明らかでない点。 (イ) 相違点の検討 相違点18は、前記イ(イ)で検討した相違点13と同じであるから、前記イ(イ)での検討と同様に、相違点18は実質的なものであって、引用2発明3において、防食ライニング材に含有する繊維の繊維長を「平均繊維長が50~1000μm」とすること(相違点18に係る本件発明16の構成とすること)は、当業者にとって容易想到の事項といえない。 (ウ) 小括 以上のとおりであるから、その他の相違点を検討するまでもなく、本件発明16は、引用文献2に記載された発明であるといえないし、また、引用文献2に記載された発明、引用文献2に記載された事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明することができたものともいえない。 キ 本件発明17~19について 本件発明17~19は、本件発明16の全ての特定事項を含むものであるから、前記カで検討したのと同様の理由により、本件発明17~19は、引用文献2に記載された発明であるといえないし、また、引用文献2に記載された発明、引用文献2に記載された事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明することができたものともいえない。 ク 取消理由3及び申立理由3についての結論 以上のとおりであるから、取消理由3及び申立理由3には理由がない。 (4) 申立理由2(甲第2号証を主たる証拠とした新規性・進歩性欠如)について ア 甲第2号証に記載された発明 甲第2号証には、前記3(3)アによれば、「ラジカル硬化性樹脂並びに第一級アミン及び/又は第二級アミンを含有する常温硬化性樹脂組成物であって、該ラジカル硬化性樹脂は、重合体と重合性単量体とを含み、該第一級アミン及び/又は第二級アミンは、モノアミンであることを特徴とする常温硬化性樹脂組成物」が記載されている(【請求項1】)。 また、甲第2号証には、前記3(3)イ~エによれば、「常温硬化性樹脂組成物」を「建築材料」の「防水ライニング用材料」として使用すること(【0009】)、その場合には、「重合体」として「不飽和ポリエステル」を含むこと(【0012】)、さらに、「常温硬化性樹脂組成物」には、「必要に応じて、充填剤、揺変剤、繊維強化材、重合禁止剤、消泡剤、増粘剤、無機骨材、不活性粉体、紫外線吸収剤、低収縮剤、老化防止剤、可塑剤、難燃剤、安定剤、顔料やトナー等の着色剤等の添加剤」を含むこと(【0055】)が記載されている。 さらに、甲第2号証には、前記3(3)オによれば、「常温硬化性樹脂組成物」を「基材に塗布した後硬化させることにより被膜を成形する方法」、及び、「基材」は、「常温硬化性樹脂組成物」が「塗装される前に、通常用いられるプライマーや、下塗り、中塗り、メタリックベース等の上塗り等塗装用塗料が塗装されていてもよい」ことが記載されている(【0061】)。 これらの記載を「建築材料」の「防水ライニング用」の「常温硬化性樹脂組成物」、該組成物を使用した「防水ライニング用被膜」及び「防水ライニング用被膜を形成する方法」に注目して整理すると、甲第2号証には、次の「防水ライニング用被膜を形成する方法」に係る発明(以下、「甲2発明1」という。)、「防水ライニング用被膜」に係る発明(以下、「甲2発明2」という。)、及び、「防水ライニング用の常温硬化性樹脂組成物」に係る発明(以下、「甲2発明3」という。)が記載されていると認められる。 〔甲2発明1〕 「建築材料の基材に、プライマーや、下塗り、中塗り、メタリックベース等の上塗り等塗装用塗料が塗装し、不飽和ポリエステルを含むラジカル硬化性樹脂、並びに第一級アミン及び/又は第二級モノアミン、必要に応じて、充填剤、揺変剤、繊維強化材、重合禁止剤、消泡剤、増粘剤、無機骨材、不活性粉体、紫外線吸収剤、低収縮剤、老化防止剤、可塑剤、難燃剤、安定剤、顔料やトナー等の着色剤等の添加剤を含有する常温硬化性樹脂組成物を塗布した後硬化させることにより、防水ライニング用被膜を成形する方法。」 〔甲2発明2〕 「建築材料の基材に、プライマーや、下塗り、中塗り、メタリックベース等の上塗り等塗装用塗料が塗装し、不飽和ポリエステルを含むラジカル硬化性樹脂、並びに第一級アミン及び/又は第二級モノアミン、必要に応じて、充填剤、揺変剤、繊維強化材、重合禁止剤、消泡剤、増粘剤、無機骨材、不活性粉体、紫外線吸収剤、低収縮剤、老化防止剤、可塑剤、難燃剤、安定剤、顔料やトナー等の着色剤等の添加剤を含有する常温硬化性樹脂組成物を塗布した後硬化させた、防水ライニング用被膜。」 〔甲2発明3〕 「不飽和ポリエステルを含むラジカル硬化性樹脂、並びに第一級アミン及び/又は第二級モノアミン、必要に応じて、充填剤、揺変剤、繊維強化材、重合禁止剤、消泡剤、増粘剤、無機骨材、不活性粉体、紫外線吸収剤、低収縮剤、老化防止剤、可塑剤、難燃剤、安定剤、顔料やトナー等の着色剤等の添加剤を含有する、建築材料の防水ライニング用常温硬化性樹脂組成物。」 イ 本件発明1について 本件発明1と甲2発明1とを対比すると、本件発明1は、「コンクリートの防食方法」であるのに対して、甲2発明1は、「建築材料の基材に」「防水ライニング用被膜を成形する方法」である点で少なくとも相違している(以下、この相違点を「相違点20」という。)。 そこで、当該相違点20について検討すると、本件発明1における「コンクリート防食方法」とは、本件特許明細書の【0002】の記載からして、硫酸や有機酸によるコンクリートの劣化を防止する方法といえる。他方、甲第2号証には、甲2発明1における「防水ライニング用被膜」の「防水」についての具体的な定義はないものの、防水とは、外界から水が入り込まないように加工することを意味することが技術常識であるから、甲2発明1の「建築材料の基材に」「防水ライニング用被膜を成形する方法」は、本件発明1の「コンクリートの防食方法」であるといえず、相違点20は実質的なものである。 また、「建築材料の基材に」「防水ライニング用被膜を成形する方法」を「コンクリートの防食方法」に変更することは、申立人の提出した甲号証及び取消理由通知で引用した引用文献のいずれにも記載されていないし、また、このことが周知技術であることを示す証拠もないから、甲2発明1において、相違点20に係る本件発明1の構成とすることは、当業者にとって容易想到の事項といえない。 したがって、その余の点を検討するまでもなく、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明であるといえないし、また、甲第2号証に記載された発明及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 本件発明2~10について 本件発明2~10は、本件発明1の全ての特定事項を含むものであるから、前記イで検討したのと同様の理由により、本件発明2~10は、甲第2号証に記載された発明であるといえないし、また、甲第2号証に記載された発明及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 エ 本件発明11について 本件発明11と甲2発明2とを対比すると、本件発明11は、「コンクリート防食塗膜」であるのに対して、甲2発明2は、「防水ライニング用被膜」である点で少なくとも相違している(以下、この相違点を「相違点21」という。)。 そこで、当該相違点21について検討すると、前記イで検討したのと同様の理由により、相違点21は実質的なものであって、甲2発明2において、相違点21に係る本件発明11の構成とすることは、当業者にとって容易想到の事項といえない。 したがって、その余の点を検討するまでもなく、本件発明11は、甲第2号証に記載された発明であるといえないし、また、甲第2号証に記載された発明及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 オ 本件発明12~15について 本件発明12~15は、本件発明11の全ての特定事項を含むものであるから、前記エで検討したのと同様の理由により、本件発明12~15は、甲第2号証に記載された発明であるといえないし、また、甲第2号証に記載された発明及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 カ 本件発明16について 本件発明16と甲2発明3とを対比すると、本件発明16は、「コンクリート防食用樹脂組成物」であるのに対して、甲2発明3は、「建築材料の防水ライニング用常温硬化性樹脂組成物」である点で少なくとも相違している(以下、この相違点を「相違点22」という。)。 そこで、当該相違点22について検討すると、前記イで検討したのと同様の理由により、相違点22は実質的なものであって、甲2発明3において、相違点22に係る本件発明16の構成とすることは、当業者にとって容易想到の事項といえない。 したがって、その余の点を検討するまでもなく、本件発明16は、甲第2号証に記載された発明であるといえないし、また、甲第2号証に記載された発明及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 キ 本件発明17~19について 本件発明17~19は、本件発明16の全ての特定事項を含むものであるから、前記カで検討したのと同様の理由により、本件発明17~19は、甲第2号証に記載された発明であるといえないし、また、甲第2号証に記載された発明及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ク 申立理由2についての結論 以上のとおりであるから、申立理由2には理由がない。 (5) 申立理由5(サポート要件違反)について ア 本件発明9、14及び18について (ア) 具体的な指摘事項 申立理由5は、要するに、設定登録時の請求項9、14及び18には、短繊維補強材(B)として、カーボンファイバー及びセルロースナノファイバーが列挙されているところ、これらのファイバーに関する実施例が存在しないから、当該発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない、というものである。 (イ) サポート要件の検討 a 本件発明の課題について 本件発明の課題は、本件特許明細書の【0002】~【0006】、【0009】の記載からして、「エポキシ樹脂を使用したノンクロス工法と同等以上の作業性と、エポキシ樹脂よりも優れた防食性を有するコンクリートの防食方法、コンクリート防食塗膜、および、コンクリート防食用樹脂組成物を提供する」ことといえる。 b 発明の詳細な説明の記載 本件特許明細書の発明の詳細な説明の実施例1には、ビスフェノールA型ビニルエステル(ビニルエステル樹脂)100質量部に対し、ヒュームドシリカ(揺変剤)2.0質量部、8%オクテン酸コバルト溶液(還元剤)0.5質量部、ガラスミルドファイバー(短繊維補強材)20質量部を常温環境下で混合攪拌して調整したコンクリート防食用樹脂組成物が具体的に記載されている(【0080】、【0083】)。また、実施例2には、モルタル板、コンクリートブロック若しくはストレート板の表面を研磨して、下地調整材を塗布し、実施例1のコンクリート防食用樹脂組成物を2回又は3回塗布し、トップコート用樹脂組成物を塗布する、コンクリートの防食方法、及び、その評価結果が具体的に記載されており、実施例2のコンクリートの防食方法は、エポキシ樹脂を用いたノンクロス工法(比較例4)と比較して、耐薬品性が高く、下地追従性に優れているためにクラックが発生し難く、冷熱サイクル数も高いために長期耐久性が優れることが記載されている(【0092】~【0119】)。 したがって、実施例1のコンクリート防食用樹脂組成物、実施例2のコンクリートの防食方法、及び、当該防食方法で得られた防食塗膜は、本件発明の課題を解決できるといえる。 そして、発明の詳細な説明には、「本発明者らは、前述した課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、(A)ビニルエステル系樹脂、(B)短繊維補強材、(C)揺変剤を含有する組成物が、作業性だけでなく防食性にも優れることを見出し」たこと(【0010】)、「短繊維補強材(B)としては、ガラスファイバー、カーボンファイバー、セルロースナノファイバーなどが挙げられる」こと(【0062】)、及び、「短繊維補強材」の「平均繊維長は、50~1000μmが好ましく、150~800μmがより好ましい」こと(【0063】)が記載されている。また、前記(1)ア(イ)で検討したとおり、実施例で使用されているガラスミルドファイバーの繊維長は、数十~数百μmであることは、当該技術分野における技術常識である。 これらの事項を併せ考えれば、短繊維補強材として、平均繊維長が50~1000μmの短繊維補強材を使用した場合にも、その素材に関わらず、実施例1及び2と同様に、本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 c 特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載と対比判断 本件特許の請求項1、11及び16の記載は、前記第3に示したとおりであるから、前記bの検討を踏まえれば、本件発明1、11及び16は、発明の詳細な説明の記載や出願時の技術常識により当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであるといえる。 そして、本件発明9、14及び18は、それぞれ、本件発明1、11及び16を引用するものであるから、短繊維補強材が、カーボンファイバー及びセルロースナノファイバーであっても、本件発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであることは明らかである。 (ウ) 小括 以上のとおりであるから、本件発明9、14及び18は、サポート要件を満足する。 イ 申立人の主張について 申立人は、訂正後の本件発明1~19について、本件特許明細書中に、平均繊維長が50~1000μmの短繊維補強材を使用した実施例が存在しないことを論拠として、サポート要件を具備しない旨を主張している(申立人意見書第1頁「3-1」項参照)。 しかしながら、前記ア(イ)で検討したとおり、発明の詳細な説明には、繊維長が数十~数百μmであるガラスミルドファイバーを用いた実施例が記載されているし、また、本件発明1~19は、サポート要件を満足しているといえるから、申立人の上記主張は採用できない。 ウ 申立理由5についての結論 以上のとおりであるから、申立理由5には理由がない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、請求項1~19に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由、及び、取消理由通知書に記載した取消理由によっては、取り消すことができない。 また、他に請求項1~19に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-701108

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