特許異議申立
2023-700897
洗浄剤組成物、基板の洗浄方法及び支持体又は基板の洗浄方法
- 審判番号
- 2023-700897
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-520824
- 登録番号
- 7237435
- 請求日
- 2023年08月31日
- 審決日
- 2025年02月19日
- 公報発行日
- 2025年06月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】信越化学工業株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
- 【異議申立人】東條 直人
- 【異議申立人】椎名 一男
- 審判長/審判官
- 審判長 小宮 慎司
- 審判官 恩田 春香
- 審判官 松永 稔
- 分類
- P1651.113-YAA(H01L) / P1651.121-YAA(H01L) / P1651.161-YAA(H01L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条の2、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第7項、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7237435号発明「洗浄剤組成物、基板の洗浄方法及び支持体又は基板の洗浄方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7237435号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。
特許第7237435号の請求項2~6に係る特許を維持する。
特許第7237435号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7237435号の請求項1~6に係る特許についての出願は、2020年(令和2年)5月20日(優先権主張 令和1年5月22日)を国際出願日とする出願であって、令和5年3月3日にその特許権の設定登録がされ、令和5年3月13日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和 5年 8月31日 : 特許異議申立人東條直人(以下「申立人東條」という。)による請求項1~6に係る特許に対する特許異議の申立て
令和 5年 9月11日 : 特許異議申立人椎名一男(以下「申立人椎名」という。)による請求項1~6に係る特許に対する特許異議の申立て
令和 5年12月11日付け: 取消理由通知書
令和 6年 2月13日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和 6年 3月21日 : 申立人椎名による意見書の提出
令和 6年 5月29日付け: 取消理由通知書(決定の予告)
令和 6年 7月30日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書(以下、この訂正請求書による訂正請求を「本件訂正請求」という。また、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)の提出
令和 6年 8月21日付け: 手続補正指令書(方式)
令和 6年 9月24日 : 特許権者による手続補正書(方式)の提出
当審は、特許法第120条の5第5項の規定に基づき、期間を指定して、申立人東條及び申立人椎名に意見書を提出する機会を与えたが、その指定期間内に、申立人東條及び申立人椎名から意見書は提出されなかった。
なお、令和6年2月13日にされた訂正の請求は、本件訂正請求がされたため、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の適否についての判断
特許権者は、特許請求の範囲の請求項1~6を、以下の事項により特定されるとおりに訂正することを請求する(下線は訂正箇所を示すため当審が付した。)。
1 訂正の内容
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項2に、
「前記有機溶媒が、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルスルホキシド、酢酸ブチル及びシクロペンタノンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項1に記載の洗浄剤組成物。」と記載されているのを、「基板上に存在する充填剤を含まずかつシリコーン化合物を含有する仮接着材を除去するために用いられる洗浄剤組成物であって、前記洗浄剤組成物は、(A)有機溶媒:75~99質量部と、(B)水:0~5質量部と、(C)アンモニウム塩:1~20質量部とを含有し(但し、(A)+(B)+(C)=100質量部である。)、前記有機溶媒は、水酸基を有する有機溶媒を含有せず、前記有機溶媒100質量部中に、ヘテロ原子を有する有機溶媒を50質量部以上含有し、前記アンモニウム塩が、フッ化物イオンを含有するアンモニウム塩を含み、前記ヘテロ原子を有する有機溶媒が、ジメチルスルホキシド及びシクロペンタノンからなる群から選ばれることを特徴とする、洗浄剤組成物。」に訂正する(請求項2の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3~6も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「前記アンモニウム塩が、テトラアルキルアンモニウム塩を含むことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の洗浄剤組成物。」と記載されているのを、「前記アンモニウム塩が、テトラアルキルアンモニウム塩を含むことを特徴とする、請求項2に記載の洗浄剤組成物。」に訂正する(請求項3の記載を直接的又は間接的に引用する請求項4~6も同様に訂正する)。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「前記有機溶媒の含有量は75質量部以上99質量部未満であり、前記水の含有量は0質量部を超え5質量部以下であり、前記アンモニウム塩の含有量は1~20質量部であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の洗浄剤組成物。」と記載されているのを、「前記有機溶媒の含有量は75質量部以上99質量部未満であり、前記水の含有量は0質量部を超え5質量部以下であり、前記アンモニウム塩の含有量は1~20質量部であることを特徴とする、請求項2又は3に記載の洗浄剤組成物。」に訂正する(請求項4の記載を引用する請求項5、6も同様に訂正する)。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「支持体と、該支持体上に形成された仮接着層と、該仮接着層に回路面を有する表面が対向するように積層された基板とを備える基板積層体から、前記支持体を剥離し、前記基板上に残存している前記仮接着層を、請求項1~4のいずれか1項に記載の洗浄剤組成物により洗浄して除去する工程を含むことを特徴とする、基板の洗浄方法。」と記載されているのを、「支持体と、該支持体上に形成された仮接着層と、該仮接着層に回路面を有する表面が対向するように積層された基板とを備える基板積層体から、前記支持体を剥離し、前記基板上に残存している前記仮接着層を、請求項2~4のいずれか1項に記載の洗浄剤組成物により洗浄して除去する工程を含むことを特徴とする、基板の洗浄方法。」に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に「支持体又は基板上に仮接着層を形成し、該仮接着層の一部を、請求項1~4のいずれか1項に記載の洗浄剤組成物により洗浄して除去する工程を含むことを特徴とする、支持体又は基板の洗浄方法。」と記載されているのを、「支持体又は基板上に仮接着層を形成し、該仮接着層の一部を、請求項2~4のいずれか1項に記載の洗浄剤組成物により洗浄して除去する工程を含むことを特徴とする、支持体又は基板の洗浄方法。」に訂正する。
なお、本件訂正は、一群の請求項1~6について請求されている。
2 訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無、独立特許要件
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項2が訂正前の請求項1を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正に該当する。
また、訂正事項1のうち、請求項1の「シリコーン化合物を含有する仮接着材」との記載を、「充填剤を含まずかつシリコーン化合物を含有する仮接着材」とすることは、仮接着材について更に限定するものであり、訂正事項1のうち、有機溶媒について、「プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルスルホキシド、酢酸ブチル及びシクロペンタノンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む」との記載を、「ジメチルスルホキシド及びシクロペンタノンからなる群から選ばれる」とすることは、有機溶媒の範囲について更に限定するものであるから、これらの訂正は特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1は、訂正前の請求項2が訂正前の請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であるとともに、特許請求の範囲の減縮しようとする訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1のうち、請求項間の引用関係を解消し、請求項1を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めることは、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「願書に添付した明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正である。
訂正事項1のうち、仮接着材について、「充填剤を含まず」と更に限定することは、願書に添付した明細書の段落【0031】、【0038】~【0039】、【0073】、【0089】~【0091】に基づくものである。
訂正事項1のうち、有機溶媒について、「ジメチルスルホキシド及びシクロペンタノンからなる群から選ばれる」とすることは、願書に添付した明細書の段落【0020】に記載されている。
よって、訂正事項1は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件においては、訂正前の全ての請求項について特許異議の申立てがされているので、訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項1の記載を削除するものである。
よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2は、訂正前の請求項1の記載を削除するのみであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
ウ 願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2は、訂正前の請求項1の記載を削除するものであるから、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件においては、訂正前の全ての請求項について特許異議の申立てがされているので、訂正事項2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(3)訂正事項3
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、訂正前の請求項3が、請求項1又は2の記載を引用する記載であるところ、訂正事項2で請求項1が削除されて請求項1を引用できなくなったことに伴い、請求項間の引用関係を解消する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」又は同第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正に該当する。また、訂正事項3は、引用する請求項の数を減少させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1項に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当する。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項3は、引用する請求項の数を減少させるものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
ウ 願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3は、引用する請求項の数を減少させるものであるから、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件においては、訂正前の全ての請求項について特許異議の申立てがされているので、訂正事項3に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(4)訂正事項4
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、訂正前の請求項4が、請求項1~3の記載を引用する記載であるところ、訂正事項2で請求項1が削除されて請求項1を引用できなくなったことに伴い、請求項間の引用関係を解消する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」又は同第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正に該当する。また、訂正事項4は、引用する請求項の数を減少させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1項に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当する。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項4は、引用する請求項の数を減少させるものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
ウ 願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項4は、引用する請求項の数を減少させるものであるから、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件においては、訂正前の全ての請求項について特許異議の申立てがされているので、訂正事項4に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(5)訂正事項5
ア 訂正の目的について
訂正事項5は、訂正前の請求項5が、請求項1~4の記載を引用する記載であるところ、訂正事項2で請求項1が削除されて請求項1を引用できなくなったことに伴い、請求項間の引用関係を解消する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」又は同第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正に該当する。また、訂正事項5は、引用する請求項の数を減少させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1項に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当する。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項5は、引用する請求項の数を減少させるものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
ウ 願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項5は、引用する請求項の数を減少させるものであるから、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件においては、訂正前の全ての請求項について特許異議の申立てがされているので、訂正事項5に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(6)訂正事項6
ア 訂正の目的について
訂正事項6は、訂正前の請求項6が、請求項1~4の記載を引用する記載であるところ、訂正事項2で請求項1が削除されて請求項1を引用できなくなったことに伴い、請求項間の引用関係を解消する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」又は同第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正に該当する。また、訂正事項6は、引用する請求項の数を減少させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1項に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当する。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項6は、引用する請求項の数を減少させるものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
ウ 願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項6は、訂正前の請求項1の記載を削除するものであるから、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件においては、訂正前の全ての請求項について特許異議の申立てがされているので、訂正事項6に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
3 小括
上記のとおり、訂正事項1~訂正事項6に係る本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、本件訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。
第3 本件訂正後の本件発明
本件訂正後の請求項1~6に係る発明(以下、それぞれ順に「本件発明1」~「本件発明6」という。)は、下記のとおりのものである。
「【請求項1】(削除)
【請求項2】
基板上に存在する充填剤を含まずかつシリコーン化合物を含有する仮接着材を除去するために用いられる洗浄剤組成物であって、
前記洗浄剤組成物は、
(A)有機溶媒:75~99質量部と、
(B)水:0~5質量部と、
(C)アンモニウム塩:1~20質量部と
を含有し(但し、(A)+(B)+(C)=100質量部である。)、
前記有機溶媒は、水酸基を有する有機溶媒を含有せず、前記有機溶媒100質量部中に、ヘテロ原子を有する有機溶媒を50質量部以上含有し、
前記アンモニウム塩が、フッ化物イオンを含有するアンモニウム塩を含み、
前記ヘテロ原子を有する有機溶媒が、ジメチルスルホキシド及びシクロペンタノンからなる群から選ばれることを特徴とする、洗浄剤組成物。
【請求項3】
前記アンモニウム塩が、テトラアルキルアンモニウム塩を含むことを特徴とする、請求項2に記載の洗浄剤組成物。
【請求項4】
前記有機溶媒の含有量は75質量部以上99質量部未満であり、前記水の含有量は0質量部を超え5質量部以下であり、前記アンモニウム塩の含有量は1~20質量部であることを特徴とする、請求項2又は3に記載の洗浄剤組成物。
【請求項5】
支持体と、該支持体上に形成された仮接着層と、該仮接着層に回路面を有する表面が対向するように積層された基板とを備える基板積層体から、前記支持体を剥離し、前記基板上に残存している前記仮接着層を、請求項2~4のいずれか1項に記載の洗浄剤組成物により洗浄して除去する工程を含むことを特徴とする、基板の洗浄方法。
【請求項6】
支持体又は基板上に仮接着層を形成し、該仮接着層の一部を、請求項2~4のいずれか1項に記載の洗浄剤組成物により洗浄して除去する工程を含むことを特徴とする、支持体又は基板の洗浄方法。」
第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1、3~6に係る特許に対して、当審が令和6年5月29日付けで特許権者に通知した取消理由(以下「取消理由(決定の予告)」という。)の要旨は、次のとおりである。
取消理由1(進歩性)請求項1、3~6に係る発明は、本件特許出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記1、2の引用例に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、3~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきである。
記(引用文献等については引用文献等一覧参照)
<引用文献等一覧>
1.引用例1:特開2015-7217号公報(本件特許公報の段落【0006】に記載された【特許文献1】)
2.引用例2:特開2004-969号公報(申立人椎名提出の甲第1号証)
第5 当審の判断
1 引用例の記載等について
(1)引用例1の記載、引用発明
ア 引用例1には、以下の事項が記載されている。(下線は、合議体が付加した。以下、同じ。)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板表面の洗浄に用いられる洗浄剤組成物であって、
(A)第四級アンモニウム塩:0.1~2.0質量%
(B)水:0.1~4.0質量%
(C)有機溶媒:94.0~99.8質量%
を含有してなるものであることを特徴とする基板の洗浄剤組成物。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の洗浄組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種基板の微細化や高集積化が進んでおり、例えば半導体実装においては、3次元実装することにより、より一層の高密度、大容量化を実現している。3次元半導体実装技術とは、1つの半導体チップを薄型化し、さらにこれをシリコン貫通電極(TSV;through silicon via)によって結線しながら多層積層していく半導体作製技術である。
【0003】
これを実現するためには、半導体回路を形成した基板を裏面研削によって薄型化し、さらに裏面にTSVを含む電極等を形成する電極形成工程が必要である。
【0004】
薄型化する際に、半導体回路を形成した基板をシリコン、ガラス等の支持基板に接着剤を介して接合することによって裏面研削工程、裏面電極形成工程等の加工に耐えうるシステムが提案されているが、該工程後に支持基板を簡便に剥離することが必要であり、支持基板剥離後、半導体回路を形成した基板表面に残存した接着剤を除去した後、最後に薄膜半導体基板表面の洗浄を行なう必要がある。
【0005】
加工工程においては150℃以上の高温になることがあり、接着剤も耐熱性が求められる為シリコーン系接着剤が用いられるが、基板表面洗浄時に、接着剤を溶解する有機溶剤のみの洗浄では基板表面の水接触角が100度以上となり、充分に接着剤を除去することが困難であり、後の製造工程において封止材の接着不良等の不具合が発生することが予想された。
【0006】
その為、基板表面を腐食することなく残存した接着剤を短時間で充分に除去できる洗浄剤組成物が望まれているが、シリコーン成分に汚染された基板表面を短時間で充分に洗浄できる洗浄剤組成物は見出されていなかった(特許文献1)。」
イ 上記アから、引用例1には、以下の技術的事項が記載されているといえる。
半導体回路を形成した基板を支持基板にシリコーン系接着剤を介して接合し、加工工程後に、支持基板を剥離し、その後、半導体回路を形成した基板表面に残存したシリコーン系接着剤を除去した後、基板表面の洗浄を行なうこと(【0004】)。
ウ 上記ア、イによれば、引用例1には、以下の発明(以下「引用発明1(1)」という。)が、記載されている。
「半導体回路を形成した基板を支持基板にシリコーン系接着剤を介して接合し、加工工程後に、支持基板を剥離し、その後、半導体回路を形成した基板表面に残存したシリコーン系接着剤を除去した後に、基板表面の洗浄に用いられる洗浄剤組成物であって、
(A)第四級アンモニウム塩:0.1~2.0質量%
(B)水:0.1~4.0質量%
(C)有機溶媒:94.0~99.8質量%
を含有し、
基板表面を腐食することなく残存したシリコーン系接着剤を短時間で充分に除去できる、基板の洗浄剤組成物。」
エ また、上記ア、イによれば、引用例1には、以下の発明(以下「引用発明1(2)」という。)が、記載されている。
「半導体回路を形成した基板を支持基板にシリコーン系接着剤を介して接合し、加工工程後に、支持基板を剥離し、その後、半導体回路を形成した基板表面に残存したシリコーン系接着剤を除去した後、
(A)第四級アンモニウム塩:0.1~2.0質量%
(B)水:0.1~4.0質量%
(C)有機溶媒:94.0~99.8質量%
を含有し、基板表面を腐食することなく残存したシリコーン系接着剤を短時間で充分に除去できる基板の洗浄剤組成物により、基板表面の洗浄を行なう、基板の洗浄方法。」
(2)引用例2の記載、引用例2に記載された技術的事項
ア 引用例2には、以下の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、マイクロエレクトロニクス製造において製品の再加工、回収,欠陥修理を行うために、電子コンポーネントの表面から、硬化シリコンポリマ付着物を除去する方法に関する。本発明は、特に、回収された半導体組立体部品の再利用および再使用のために、セラミックス,金属,硬化エポキシ樹脂,ポリイミドの表面から、硬化Sylgard(Dow Corning Corp.の登録商標)および関連するエラストメリックシリコーンを除去する新規かつ極めて有効な方法に関する。
【0002】
本発明は、電子モジュール組立体において一般的に用いられる、硬化エラストメリックシリコーン接着材、特にSylgardおよび関連するシリコーンポリマを除去する新規な方法を開示する。シリコーンポリマは、マイクロエレクトロニクス製造プロセスにおいて、シール材および接着材として、広く用いられている。例えば、ノンハーメチック・セラミックモジュール組立体における1つの主要な応用は、機械的ダメージ,湿度侵入,環境腐食に対する半導体デバイスの保護を与えるために、セラミックチップキャリアに保護金属キャップをSylgardシールバンドで取り付けることを含んでいる。
・・・
【0005】
Sylgard製剤は、プライマレス有機シロキサンをベースとする2成分系であり、パートAとして、ビニル基を有する(CH2=CH-)シロキサン、代表的には、ビニル終端ポリ(ジメチルシロキサン)と、パートBとして、ジヒドロ-ジメチルシロキサンとを、硬化触媒と、シリカおよび石英のような無機充てん剤と共に含んでいる。接着材組成物は、2種の成分を特定の比で混合することによって準備され、混合物は、コンポーネント接着部分に設ける前に、捕促した気泡を除去するために、脱気される。
・・・
【0007】
化学式(I)は、反応成分としてのSylgardと、硬化反応とを表している。前駆物質間の橋かけ反応が、熱加速され、特殊な応力吸収特性を有するフレキシブル/エラストメリック・マトリックスの硬化疎水性ポリマを生成する。エラストメリック・シリコーンのこれらの特性は、湿気侵入からの保護、および熱サイクルと他の信頼性応力試験を受けるときに、高応力状態下で異なる熱膨張係数(TCE)を有する種々の材料間の接着材接合の保持を与えるのに特に有用である。
【0008】
【化1】
[図:0001423433000001.jpg]
【0009】
熱伝導および電気伝導性のシリコーンは、アルミナ,シリカ,窒化アルミニウムのような伝導充てん剤と、必要なときには電気伝導のための金属粉末またはカーボンブラックとを混合することにより得られる。代表的には、接着材は、Al2O3およびSiO2/石英が充てんされた、ポリジメチルシロキサン/ジメチルビニル終端グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン成分およびジメチルメチルハイドロジェンシロキサン成分と、硬化触媒とを含んでいる。チップをリードフレームに接着するためのメチルシリコーン樹脂およびフルオロシリコーン樹脂のような電気伝導アルキルシリコーンは、金属粉末、または金属被覆された無機あるいは有機ポリマ粒子を含むことができる。
【0010】
電子組立製品においてSylgardのような橋かけエラストメリックシリコーンを用いる際の主な問題は、硬化したポリマ材料を除去し、モジュール組立体の再加工,欠陥コンポーネントの修理,組立体部品の再利用およびリサイクルのために、残留物のない表面を得ることの困難性であった。硬化したシリコーンを除去する種々の既知の方法の中で、被覆の大部分を機械的にかき落とし、加圧スプレーを用いて媒質噴射および水洗浄を行うことは、労働強化につながり、表面損傷および不完全除去のさらなる問題を生じる。不完全な除去は、有機溶剤による追加の洗浄作業を必ず必要とし、洗浄作業ではまた、シリコーンのない表面が得られない。さらに他の問題は、上記方法は、平坦な面の残留物のみの除去に限られることである。」
「【0040】
本発明は、一般的に、マイクロエレクトロニク組立てプロセスにおいて、再加工についての効果的およびより実行可能なオプションを与えるために、電子モジュールのセラミックおよび金属表面から、Sylgard接着材および関連する硬化シリコーンポリマ付着物を除去する改善された方法に関する。これらのプロセスは、診断試験,製品欠陥の修理,高価な保護キャップおよび高密度セラミック電子モジュールの回収を含み、これにより製品コストの低減および廃棄物の最小化を与える。これらのプロセスは、また、製品の信頼できる機能的性能を保証する。本発明は、特に、シングルチップ・モジュール(SCM)およびマルチチップ・モジュール(MCM)を含むセラミック電子モジュールから、および機械的損傷,湿気侵入,環境への暴露による腐食に対する保護のために、基板に金属キャップを取り付けるために用いられるノンハーメチック電子パッケージのシールバンド領域から、硬化Sylgard残留物を除去することに関する。」
「【0058】
図9は、気密封止されていないはんだ接合13で取り付けられたシングルチップ12を有するセラミックチップキャリアまたは基板11を有する典型的なシングルチップ・モジュール(SCM)10を示す。熱放散または冷却のために、チップ12の裏面に、サーマル・コンパウンド15が設けられる。金属キャップ16は、サーマル・コンパウンド15に接触し、デバイス保護のために用いられ、周辺部のシリコーンポリマ接着材シールバンド17によって、基板11に接合される。
【0059】
図10は、31で示される、典型的なマルチチップ・モジュール(MCM)を示す。このモジュールでは、セラミックチップキャリア基板32が、はんだ接合34によって、複数のチップ33に接続されており、はんだ接合は、エポキシ気密封止材35によって覆われていない。サーマルペーストまたはコンパウンド36は、冷却または熱放散のために、シリコンチップ33の裏面に設けられている。保護キャップ37は、シリコーンポリマ接着材38によって、チップキャリア32に取り付けられて示されている。
【0060】
以下の例は、図11および図12に従うシリコーン接着材除去プロセスを実施する方法を表している。
【0061】
図11は、SCMまたはMCMモジュール組立体から取りはずされた後に、保護金属キャップまたはハット、およびセラミックチップキャリア上の硬化したSylgard付着残留物を除去する第1の例を説明する。疎水非プロトン性溶剤、例えばプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PMA)またはプロピレングリコールメチルエーテルプロピオナート(Methotate)中にテトラブチルフッ化アンモニウム(TBAF)を含む溶液を、ステンレス鋼ビーカ内で1リットルの溶剤に12gのTBAF水和物(TBAF3H2O)を溶解することによって準備し、溶液を、例えば棒磁石を用いて撹拌しながら、約45℃~約60℃、代表的には約50℃~55℃の温度に加熱する。
【0062】
取りはずされた金属キャップおよび/またはセラミックチップキャリア(付着サーマル・コンパウンドはすでに除去されており、シールドバンド領域にSylgard付着物のみを有している)を、絶えず撹拌される溶液に、15分~35分浸漬する。この間、シリコーン残留物は、本質的に溶解し、コンポーネントの表面のいくつかの領域に、Sylgard組成物の無機充てん剤成分の痕跡を残して、ほとんど除去される。次に部品を、工程1において溶液を作るために用いた溶剤と同じ溶剤を好ましくは含む第2の浴に工程2で移す。その溶液は、また、絶えず撹拌されて、約40℃~55℃の温度に予熱される。」
イ 上記アから、引用例2には、次の技術的事項が記載されているといえる。
(ア)「セラミックチップキャリア上の硬化したSylgard付着残留物を除去」の第1の例は、「シングルチップ・モジュール(SCM)またはマルチチップ・モジュール(MCM)モジュール組立体から、金属キャップおよび/またはセラミックチップキャリアを取りはずした後に、保護金属キャップまたはハット、およびセラミックチップキャリア上の硬化したSylgard付着残留物を除去」するものであり、当該例において、「疎水非プロトン性溶剤、例えばプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PMA)またはプロピレングリコールメチルエーテルプロピオナート(Methotate)中にテトラブチルフッ化アンモニウム(TBAF)を含む溶液を、ステンレス鋼ビーカ内で1リットルの溶剤に12gのTBAF水和物(TBAF3H2O)を溶解することによって準備」すること(段落【0060】~【0062】)。
(イ)Sylgard製剤は、プライマレス有機シロキサンをベースとし、無機充てん剤を含む、橋かけエラストメリックシリコーン接着材であること(段落【0002】、【0005】、【0007】、【0008】、【0010】)。
ウ 上記イによれば、引用例2には、以下の技術的事項(以下「引用例2技術的事項(1)」という。)が記載されている。
「セラミックチップキャリア上の無機充てん剤を含むシリコーン接着材を除去するために用いられる洗浄剤組成物であって、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PMA)またはプロピレングリコールメチルエーテルプロピオナート(Methotate)1リットルに12gのTBAF水和物(TBAF3H2O)を溶解することによって用意した、洗浄剤組成物。」
エ また、上記イによれば、引用例2には、以下の技術的事項(以下「引用例2技術的事項(2)」という。)が記載されている。
「セラミックチップキャリア上に保護金属キャップがシリコーン接着材によって接合されてなるシングルチップ・モジュール(SCM)またはマルチチップ・モジュール(MCM)から、金属キャップおよび/またはセラミックチップキャリアを取りはずした後に、セラミックチップキャリア上の無機充てん剤を含むシリコーン接着材を、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PMA)またはプロピレングリコールメチルエーテルプロピオナート(Methotate)1リットルに12gのTBAF水和物(TBAF3H2O)を溶解することによって用意した洗浄剤組成物により洗浄して除去する工程を含む、セラミックチップキャリアの洗浄方法。」
2 本件発明3について
(1)対比
本件発明3と引用発明1(1)とを対比する。
ア 引用発明1(1)の「洗浄剤組成物」は、「半導体回路を形成した基板を支持基板にシリコーン系接着剤を介して接合し、加工工程後に、支持基板を剥離し、その後、半導体回路を形成した基板表面に残存したシリコーン系接着剤を除去した後に、基板表面の洗浄に用いられる洗浄剤組成物」であって、「基板表面を腐食することなく残存したシリコーン系接着剤を短時間で充分に除去できる、基板の洗浄剤組成物」であるところ、引用発明1(1)において、「シリコーン系接着剤」は、「充分に除去できる」ものである(すなわち、最終的に残存するものではない)といえるから、シリコーン系の仮接着剤であるといえる。
したがって、引用発明1(1)の「シリコーン系接着剤」は、本件発明3の「シリコーン化合物を含有する仮接着材」に相当する。
よって、本件発明3と引用発明1(1)とは、「基板上に存在するシリコーン化合物を含有する仮接着材を除去するために用いられる洗浄剤組成物」である点で共通する。
イ 引用発明1(1)の「(C)有機溶媒」、「(B)水」、「(A)第四級アンモニウム塩」は、それぞれ本件発明3の「(A)有機溶媒」、「(B)水」、「(C)アンモニウム塩」に相当する。
<一致点>
「基板上に存在するシリコーン化合物を含有する仮接着材を除去するために用いられる洗浄剤組成物であって、
前記洗浄剤組成物は、
(A)有機溶媒と、
(B)水と、
(C)アンモニウム塩と
を含有する、洗浄剤組成物。」
<相違点1>
「仮接着材」について、本件発明3は、「充填剤を含ま」ないのに対し、引用発明1(1)の「シリコーン系接着剤」は、その点について不明である点。
<相違点2>
本件発明3は、「(A)有機溶媒:75~99質量部と、(B)水:0~5質量部と、(C)アンモニウム塩:1~20質量部とを含有し(但し、(A)+(B)+(C)=100質量部である。)」のに対し、引用発明1(1)は、「(A)第四級アンモニウム塩:0.1~2.0質量%(B)水:0.1~4.0質量%(C)有機溶媒:94.0~99.8質量%を含有」するものである点。
<相違点3>
「有機溶媒」について、本件発明3では、「前記有機溶媒は、水酸基を有する有機溶媒を含有せず、前記有機溶媒100質量部中に、ヘテロ原子を有する有機溶媒を50質量部以上含有し」、「前記ヘテロ原子を有する有機溶媒が、ジメチルスルホキシド及びシクロペンタノンからなる群から選ばれる」のに対し、引用発明1(1)では、「有機溶媒」について、そのような特定はなされていない点。
<相違点4>
「アンモニウム塩」について、本件発明3では、「フッ化物イオンを含有するアンモニウム塩を含」むのに対し、引用発明1(1)では、「第四級アンモニウム塩」について、そのような特定はなされていない点。
(2)判断
ア 相違点3について
事案に鑑み、まず、相違点3について検討する。
上記1(2)ウのとおり、引用例2には、「セラミックチップキャリア上の無機充てん剤を含むシリコーン接着材を除去するために用いられる洗浄剤組成物であって、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PMA)またはプロピレングリコールメチルエーテルプロピオナート(Methotate)1リットルに12gのTBAF水和物(TBAF3H2O)を溶解することによって用意した洗浄剤組成物。」との引用例2技術的事項(1)が記載されており、「プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PMA)またはプロピレングリコールメチルエーテルプロピオナート(Methotate)」が、有機溶媒であることは明らかであるところ、引用例2には、洗浄剤組成物が含有する有機溶媒が、「前記有機溶媒100質量部中に、ヘテロ原子を有する有機溶媒を50質量部以上含有し」、「前記ヘテロ原子を有する有機溶媒が、ジメチルスルホキシド及びシクロペンタノンからなる群から選ばれる」ことは記載も示唆もされていない。
したがって、引用発明1(1)において、引用例2に記載された技術的事項に基づいて、「有機溶媒」として、「ジメチルスルホキシド及びシクロペンタノンからなる群から選ばれる」ものを採用することは、当業者が容易になし得たとはいえない。
よって、引用発明1(1)において、引用例2に記載された技術的事項に基づいて、相違点3に係る本件発明3の構成を採用することは当業者が容易になし得たとはいえない。
イ 本件発明3についてのまとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明3は、引用発明1(1)及び引用例2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
3 本件発明4について
本件発明4は、請求項2又は3の記載を引用するものであるところ、本件訂正前の請求項2に係る特許に対しては、取消理由(決定の予告)は通知されていないので、以下においては、請求項3の記載を引用する本件発明4~6について検討する。
請求項3の記載を引用する本件発明4~6は、本件発明3について、上記2において検討したのと同様の理由により、引用発明1(1)及び引用例2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
4 本件発明5、6について
(1) 本件発明5、6は、請求項2又は3の記載を直接的又は間接的に引用するものであるところ、本件訂正前の請求項2に係る特許に対しては、取消理由(決定の予告)は通知されていないので、以下においては、請求項3の記載を直接的又は間接的に引用する本件発明5、6について検討する。
(2)本件発明5について
本件発明5と引用発明1(2)とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。
<相違点5>
「有機溶媒」について、本件発明5が引用する「請求項2~4のいずれか1項に記載の洗浄剤組成物」では、「前記有機溶媒は、水酸基を有する有機溶媒を含有せず、前記有機溶媒100質量部中に、ヘテロ原子を有する有機溶媒を50質量部以上含有し」、「前記ヘテロ原子を有する有機溶媒が、ジメチルスルホキシド及びシクロペンタノンからなる群から選ばれる」のに対し、引用発明1(2)では、「有機溶媒」について、そのような特定はなされていない点。
相違点5について検討すると、相違点5は上記2(1)の相違点3と同様な相違点であるから、請求項3の記載を直接的又は間接的に引用する本件発明5は、本件発明3について、上記2(2)において検討したのと同様の理由により、引用発明1(2)及び引用例2に記載された技術的事項(引用例2技術的事項(2))に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件発明6について
本件発明6と引用発明1(2)とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。
<相違点6>
「有機溶媒」について、本件発明6が引用する「請求項2~4のいずれか1項に記載の洗浄剤組成物」では、「前記有機溶媒は、水酸基を有する有機溶媒を含有せず、前記有機溶媒100質量部中に、ヘテロ原子を有する有機溶媒を50質量部以上含有し」、「前記ヘテロ原子を有する有機溶媒が、ジメチルスルホキシド及びシクロペンタノンからなる群から選ばれる」のに対し、引用発明1(2)では、「有機溶媒」について、そのような特定はなされていない点。
相違点6について検討すると、相違点6は上記2(1)の相違点3と同様な相違点であるから、請求項3の記載を直接的又は間接的に引用する本件発明6は、本件発明3について、上記2(2)において検討したのと同様の理由により、引用発明1(2)及び引用例2に記載された技術的事項(引用例2技術的事項(2))に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
5 小括
以上のとおり、本件発明3~6は、引用発明1(1)又は引用発明1(2)及び引用例2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第6 取消理由通知書(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
1 申立人東條による申立理由
(1)申立人東條は、証拠として、甲第1号証~甲第8号証を提出すると共に、申立人東條提出の特許異議申立書50~64ページ等において、請求項1、3~6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に規定された発明に該当するか、又は甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、3~6に係る特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定の規定に違反してなされたものであり、特許を受けることができないものである旨を主張し、また、請求項1~6に係る発明は、甲第6号証及び甲第7号証に記載された発明と同一であり、しかも、本件出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、請求項1~6に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものであり、特許を受けることができない旨を主張する。
記
1.甲第1号証:米国特許出願公開第2017/0158888号明細書
2.甲第6号証:国際公開第2020/080060号(特願2018-195431号に基づく優先権を主張する国際出願(PCT/JP2019/037993号)の国際公開:国際公開:2020年4月23日、国際出願日:2019年9月26日、優先日:2018年10月16日)
3.甲第7号証:国際出願(PCT/JP2019/037993号)について、特願2018-195431(出願日:2018年10月16日)に基づくことを証明する優先権証明書
なお、上記第2のとおり、本件訂正前の請求項1は本件訂正により削除され、訂正することを認めるから、以下では、本件発明1については、判断しない。
(2)ア 甲第1号証には、本件発明3が引用する請求項2に記載された「前記ヘテロ原子を有する有機溶媒が、ジメチルスルホキシド及びシクロペンタノンからなる群から選ばれる」との構成について、記載も示唆もされていない。
したがって、本件発明3~6は、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に規定された発明に該当するとはいえず、又は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないから、請求項3~6に係る特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定の規定に違反してなされたものではない。
イ 甲第6号証及び甲第7号証には、本件発明2の「前記ヘテロ原子を有する有機溶媒が、ジメチルスルホキシド及びシクロペンタノンからなる群から選ばれる」との構成について、記載も示唆もされていない。
したがって、本件発明2~6は、甲第6号証及び甲第7号証に記載された発明と同一であり、しかも、本件出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一であるともいえないので、請求項2~6に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものではない。
ウ よって、申立人東條の上記主張は、採用することができない。
2 申立人椎名による申立理由
(1)申立人椎名は、証拠として、下記の甲第1号証及び甲第2号証を提出すると共に、申立人椎名提出の特許異議申立書9~36ページ等において、請求項1~4、6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に規定された発明に該当するものであり、また、請求項1、3~6に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に規定された発明に該当するものであり、また、請求項5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~6に係る特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定の規定に違反してなされたものであり、特許を受けることができないものである旨を主張する。
記
1.甲第1号証:特開2004-969号公報
2.甲第2号証:米国特許出願公開第2018/0265819号明細書
(2)甲第1号証及び甲第2号証には、本件発明2の「前記ヘテロ原子を有する有機溶媒が、ジメチルスルホキシド及びシクロペンタノンからなる群から選ばれる」との構成について、記載も示唆もされていない。
したがって、本件発明2~6は、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に規定された発明に該当するとはいえず、又は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないから、請求項2~6に係る特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定の規定に違反してなされたものではない。
よって、申立人椎名の上記主張は、採用することができない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項2~6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項2~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件訂正前の請求項1は、上記のとおり削除された。これにより、本件特許の請求項1に係る特許についての特許異議の申立ては、その対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700897