特許異議申立
2021-700345
窒化ホウ素凝集粒子、窒化ホウ素凝集粒子の製造方法、該窒化ホウ素凝集粒子含有樹脂組成物、成形体、及びシート
- 審判番号
- 2021-700345
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-039094
- 登録番号
- 6773153
- 請求日
- 2021年04月15日
- 審決日
- 2024年03月26日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】三菱ケミカル株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人秀和特許事務所
- 【異議申立人】椎名 一男
- 【異議申立人】株式会社 レクレアル
- 【異議申立人代理人】松浦 孝
- 審判長/審判官
- 審判長 宮澤 尚之
- 審判官 後藤 政博
- 審判官 増山 淳子
- 分類
- P1651.113-YAA(C01B) / P1651.121-YAA(C01B) / P1651.536-YAA(C01B) / P1651.537-YAA(C01B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6773153号発明「窒化ホウ素凝集粒子、窒化ホウ素凝集粒子の製造方法、該窒化ホウ素凝集粒子含有樹脂組成物、成形体、及びシート」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6773153号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正することを認める。
特許第6773153号の請求項1~8に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6773153号の請求項1~8に係る特許(以下、「本件特許」ということがある。)についての出願は、2015年(平成27年)2月5日(優先権主張 平成26年2月5日(2件)、平成26年10月8日、平成26年12月22日、平成27年1月14日(2件)、いずれも日本国)を国際出願日とする特願2015-561028号の一部を、平成31年3月5日に特願2019-39094号として新たな特許出願としたものであって、令和2年10月5日にその特許権の設定登録がされ、令和2年10月21日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許に対して2件の特許異議の申立てがあり、次のとおりに手続が行われた。
令和 3年 4月15日 特許異議申立人椎名一男(以下、「異議申立
人1」という。)による請求項1~8に係る
特許に対する特許異議の申立て
令和 3年 4月16日 特許異議申立人株式会社レクレアル(以下、
「異議申立人2」という。)による請求項1
~8に係る特許に対する特許異議の申立て
令和 3年 9月28日付け 取消理由通知
令和 3年12月 6日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和 4年 1月 7日 異議申立人1、2による意見書(以下、それ
ぞれ、「意見書1-1」、「意見書2-1」
という。)の提出
令和 4年10月25日付け 取消理由通知(決定の予告)
令和 4年12月27日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和 5年 2月 9日 異議申立人1による意見書(以下、「意見書
1-2」という。)の提出
なお、令和4年12月27日付けの訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)に対して、各異議申立人に意見書を提出する機会を与えたところ、異議申立人2による応答はなかった。また、本件訂正請求がされたので、令和3年12月6日にされた訂正の請求(以下、当該訂正の請求による訂正を「先の訂正」ということがある。)は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである(下線部は、訂正箇所を示す)。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「BN一次粒子の(100)面と(004)面のピーク面積強度比((100)/(004))が0.25以上であり、」
と記載されているのを、
「BN一次粒子の(100)面と(004)面のピーク面積強度比((100)/(004))が0.40以上1.2以下であり、」
に訂正する。
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に、
「BN一次粒子の(002)面ピークから求めたBN一次粒子の平均結晶子径が375Å以上であり、」
と記載されているのを、
「BN一次粒子の(002)面ピークから求めたBN一次粒子の平均結晶子径が375Å以上415Å以下であり、」
に訂正する。
(3) 一群の請求項について
訂正前の請求項2~8は、訂正前の請求項1を引用する請求項であり、請求項1~8は一群の請求項であるところ、訂正事項1、2による訂正は、その一群の請求項に対して請求されたものである。
2 訂正の適否について
(1) 訂正事項1について
訂正事項1は、請求項1に記載の「BN一次粒子の(100)面と(004)面のピーク面積強度比((100)/(004))が0.25以上であり、」と記載されているのを、「BN一次粒子の(100)面と(004)面のピーク面積強度比((100)/(004))が0.40以上1.2以下であり、」と訂正して、BN一次粒子の(100)面と(004)面のピーク面積強度比((100)/(004))の範囲をさらに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1は、本件明細書の【0037】の「BN凝集粒子を10mmφの粉末錠剤成形機で0.85ton/cm2以上2.54ton/cm2以下の成形圧力で成形して得られたペレット状の試料中のBN凝集粒子を構成するh-BN一次粒子の(100)面と(004)面のピーク面積強度比(100)/(004))は、通常0.25以上 ・・・ 更に好ましくは0.40以上であり、通常2.0以下 ・・・ 更に好ましくは1.2以下である。」という記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
(2) 訂正事項2について
訂正事項2は「BN一次粒子の(002)面ピークから求めたBN一次粒子の平均結晶子径が375Å以上であり、」と記載されているのを、「BN一次粒子の(002)面ピークから求めたBN一次粒子の平均結晶子径が375Å以上415Å以下であり、」と訂正して、BN一次粒子の平均結晶子径の上限を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項2は、本件明細書の【0165】の表2において、実施例4のBN一次粒子の平均結晶子径が「415Å」であることが記載されていることに基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
(3) 独立特許要件について
本件特許の請求項1~8の全ての請求項に係る特許について特許異議の申立てがされたので、訂正後の請求項1~8に係る発明について、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第7項の規定は適用されない。
3 訂正の適否についての結論
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正することを認める。
第3 本件特許について
1 本件発明
前記第2のとおり、本件訂正請求は適法にされたものであるから、本件特許の請求項1~8に係る発明(以下、各請求項に係る発明を、項番号に合わせて「本件発明1」などといい、まとめて「本件発明」ということがある。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~8に記載された次の事項により特定されるとおりのものである(下線部は、訂正箇所を示す)。
「【請求項1】
窒化ホウ素一次粒子(以下「BN一次粒子」と称する。)が凝集してなる窒化ホウ素凝集粒子(以下「BN凝集粒子」と称す。)であって、10mmφの粉末錠剤成形機で2.54ton/cm2の成型圧力で成型して得られたペレット状の試料を粉末X線回折測定して得られる、BN一次粒子の(100)面と(004)面のピーク面積強度比((100)/(004))が0.40以上1.2以下であり、かつ該BN凝集粒子を0.2mm深さのガラス試料板に表面が平滑になるように充填し、粉末X線回折測定して得られる、BN一次粒子の(002)面ピークから求めたBN一次粒子の平均結晶子径が375Å以上415Å以下であり、さらに、前記BN一次粒子が、h-BNを主成分として含むことを特徴とするBN凝集粒子。
【請求項2】
BN凝集粒子の平均粒子径D50が26μm以上である、請求項1に記載のBN凝集粒子。
【請求項3】
BN凝集粒子の比表面積が8m2/g以下である、請求項1又は2に記載のBN凝集粒子。
【請求項4】
BN凝集粒子が球状である請求項1ないし3のいずれか1項に記載のBN凝集粒子。
【請求項5】
BN凝集粒子がカードハウス構造を有する請求項1ないし4のいずれか1項に記載のBN凝集粒子。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載のBN凝集粒子と他のフィラーの混合物であるBN凝集粒子組成物。
【請求項7】
樹脂と、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のBN凝集粒子を含むBN凝集粒子含有樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載のBN凝集粒子を含む成形体。」
2 本件明細書の発明の詳細な説明の記載
本件特許の願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」という。)の発明の詳細な説明(以下、単に「発明の詳細な説明」ということがある。)には、次の事項が記載されている。
「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は窒化ホウ素凝集粒子(以下「BN凝集粒子」と称す。)、該粒子の製造方法に係り、詳しくは、窒化ホウ素一次粒子(以下「BN一次粒子」と称す。)が凝集してなるBN凝集粒子及びその製造方法に関する。
本発明はまた、このBN凝集粒子を含有するBN凝集粒子含有樹脂組成物と、このBN凝集粒子含有樹脂組成物を成形してなる成形体に関する。
本発明はまた、特定のBN一次粒子を特定の状態で含む、シートに関する
。
【背景技術】
【0002】
窒化ホウ素(以下「BN」と称す。)は、絶縁性のセラミックであり、ダイヤモンド構造を持つc-BN、黒鉛構造をもつh-BN、乱層構造を持つα-BN、β-BNなど様々な結晶型が知られている。
これらの中で、h-BNは、黒鉛と同じ層状構造を有し、合成が比較的容
易でかつ熱伝導性、固体潤滑性、化学的安定性、耐熱性に優れるという特徴を備えていることから、電気・電子材料分野で多く利用されている。
【0003】
近年、特に電気・電子分野では集積回路の高密度化に伴う発熱が大きな問題となっており、いかに熱を放熱するかが緊急の課題となっている。h-BNは、絶縁性であるにもかかわらず、高い熱伝導性を有するという特徴を活かして、このような放熱部材用熱伝導性フィラーとして注目を集めている。
【0004】
しかしながら、h-BNは板状の粒子形状であり、その板面方向(ab面内あるいは(002)面内)には高い熱伝導性を示すものの(通常、熱伝導率として400W/mK程度)、板厚方向(C軸方向)には低い熱伝導性(通常、熱伝導率として2~3W/mK程度)しか示さないため、これを樹脂に配合してBN粒子含有樹脂組成物とし、例えば、板状の成形体を成形した場合、板状のh-BNが成形時にBN粒子含有樹脂組成物の流動方向である成形体の板面方向に配向することとなり、得られる成形体は、板面方向には熱伝導率に優れるものの、厚み方向には低熱伝導率しか示さないという問題があった。
【0005】
そこで、このようなh-BNの熱伝導性の異方性を改良するために、成形
体を成形した場合でも上記のような配向が少ない、鱗片状以外の形状を有す
る、h-BNが凝集した凝集粒子が検討されてきた。 ・・・
・・・
【0007】
このような従来のBN凝集粒子の用途として、パワー半導体デバイスなどで必要とされる放熱シートに用いることが知られているが、BN凝集粒子間の接触抵抗を低減するためには、一定の圧力下での成形が必要なため、その圧力によってBN凝集粒子が崩壊し、一次粒子が成形面方向に配向してしまい、結果として成形面に垂直方向な熱伝導は低く、実用化レベルに到達していないのが現状である。つまり、一定圧力下でも放熱シート垂直方向に高い熱伝導性を付与可能なBN凝集粒子が望まれており、さらにBN凝集粒子自体が高い熱伝導性を有する凝集粒子の開発が望まれている。
・・・
【0010】
このような従来のBN凝集粒子の用途として、パワー半導体デバイスなどで必要とされる放熱シートに用いることが広く知られており、BN凝集粒子を含有する組成物または該組成物を用いて得られる成形体が適用される。上記用途の点から、上記組成物または成形体は高い熱伝導度を有し、かつ高い耐電圧性能を有することが望まれる。これらの性能を達成するためには、BN凝集粒子間の空隙や接触抵抗を低減することが必要となる。しかしながら、BN凝集粒子間の接触抵抗を低減するためには、一定の圧力下での成形が必要なため、その圧力によってBN凝集粒子が崩壊し、一次粒子が成形面方向に配向してしまい、結果として成形面に垂直方向の熱伝導は低く、実用化レベルに到達していないのが現状である。つまり、一定圧力下でも放熱シート垂直方向に高い熱伝導性を付与可能なBN凝集粒子が望まれており、さらにBN凝集粒子自体が高い熱伝導性を有する凝集粒子の開発が望まれている。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者らの検討によると、従来のBN凝集粒子では、BN凝集粒子を構成する一次粒子間の界面および一次粒子の結晶性の低さが、BN凝集粒子の熱伝導を低下させる原因の一つであるということがわかってきた。即ち、これらの原因は一次粒子界面および一次粒子中の結晶粒界に於いて熱伝導の担い手であるフォノンが散乱されるからであると考えた。
【0013】
また、樹脂に従来のBN凝集粒子を充填した場合にも、BN凝集粒子を大きくすることによる凝集粒子間の接触抵抗はある程度低減可能であるが、BN凝集粒子を構成するBN一次粒子の配向がBN凝集粒子同士の接触抵抗を増加させ、熱伝導性を低下させる原因となることがわかってきた。即ち、成形体としての熱伝導性を向上させるためには、BN凝集粒子を構成するBN一次粒子の配向を制御し、BN凝集粒子同士の接触抵抗を低減させるとともに、BN凝集粒子を構成するBN一次粒子の結晶性を高め、さらにBN凝集粒子を構成するBN一次粒子中の粒界を低減することが有効であると考えた。
【0014】
本発明は、上記従来の問題点を解決し、BN凝集粒子を構成するBN一次粒子が高熱伝導性でありながら、BN凝集粒子同士の接触抵抗も低減したBN凝集粒子を製造し、各種成形体への適用性に優れたBN凝集粒子及びその製造方法を提供することを課題とする。本発明はまた、このBN凝集粒子と樹脂とを含有するBN凝集粒子含有樹脂組成物と、このBN凝集粒子含有樹脂組成物を成形してなる成形体を提供することを課題とする。
・・・
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、BN凝集粒子を作製する際の原料スラリー粘度を特定の範囲にすることによって、BN凝集粒子を構成するBN一次粒子中の平均結晶子径が大きくなることを見出した。平均結晶子径が大きくなることで一次粒子中の結晶子間の粒界が減少し、結果としてBN凝集粒子の熱伝導性を高めることに成功した。さらに驚くべきことに、このようにして作製されたBN凝集粒子は、BN凝集粒子を構成するBN一次粒子の特定の結晶面が配向するため、該BN凝集粒子を用いて成形体とした際に、従来のBN凝集粒子と比較して熱伝導性の高い成形体を作製可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。」
「【発明の効果】
【0024】
本発明のBN凝集粒子は、粉末X線回折測定により得られる、BN凝集粒子を構成するBN一次粒子の(100)面と(004)面のピーク強度比((100)/(004))が3以上であるため、BN凝集粒子を構成するBN一次粒子の特定の結晶面が配向し、かつBN凝集粒子の粉末X線回折測定における前記BN一次粒子の(002)面ピークから求めた前記BN一次粒子の平均結晶子径が375Å以上であるため、BN凝集粒子を構成するBN一次粒子中の結晶粒界で生じるフォノン散乱を減らすことができ、その結果として、高い熱伝導性を示す。さらに、特定の圧力範囲で成形した場合でもBN一次粒子の(100)面と(004)面のピーク面積強度比((100)/(004))が0.25以上であるため、本発明のBN凝集粒子を含有する樹脂組成物を成形して得られる成形体は、成形後でもBN凝集粒子を構成するBN一次粒子の特定の結晶面の配向が保たれる。従って、成形面に垂直方向(成形体厚み方向)に高い熱伝導性を示し、好ましくはパワー半導体デバイスなどで必要とされる放熱シートに非常に有用なものである。」
「【0027】
[BN凝集粒子]
本発明のBN凝集粒子は、BN一次粒子が凝集して形成されたものであり、本願発明の効果を損なわない範囲で、上記BN一次粒子以外の成分を含有してもよい。BN一次粒子以外の成分としては、後記の[BN凝集粒子の製造方法]で述べる、スラリーに添加してもよいバインダー、界面活性剤、溶媒に由来する成分を挙げることができる。」
「【0032】
・BN凝集粒子を構成するBN一次粒子の結晶構造
BN一次粒子の結晶構造は、特に限定されないが、合成の容易さと熱伝導性の点で六方晶系のh-BNを主成分として含むものが好ましい。また、バインダーとしてBN以外の無機成分が含まれる場合、熱処理の過程でそれらが結晶化するが、BNが主成分として含まれていればよい。なお、上記BN一次粒子の結晶構造は、粉末X線回折測定により確認することができる。
【0033】
・BN一次粒子の平均結晶子径
BN凝集粒子を粉末X線回折測定して得られるBN一次粒子の(002)面ピークから求めたBN一次粒子の平均結晶子径は、特に制限はされないが、平均結晶子径は大きいことが熱伝導率の点から好ましい。例えば、通常300Å以上、好ましくは320Å以上、より好ましくは375Å以上であり、更に好ましくは380Å以上、より更に好ましくは390Å以上、特に好ましくは400Å以上であり、通常5000Å以下、好ましくは2000Å以下、更に好ましくは1000Å以下である。上記平均結晶子径が大きすぎると、BN一次粒子が成長しすぎるため、BN凝集粒子内の間隙が多くなり、成形体とする際の成形性が悪化するとともに、間隙が多くなることにより熱伝導性が向上しなくなる傾向がある。上記平均結晶子径が小さすぎると、BN一次粒子内の粒界が増えるため、フォノン散乱が結晶粒界で発生し、低熱伝導になる傾向がある。
【0034】
尚、粉末X線回折測定は、0.2mm深さのガラス試料板に表面が平滑になるようにBN凝集粒子を充填し、測定される。
なお、ここで、「平均結晶子径」とは、粉末X線回折測定によって得られるBN一次粒子の(002)面ピークから、後述の実施例において記載の通り、Scherrer式にて求められる結晶子径である。」
「【0036】
・BN一次粒子のピーク面積強度比
BN凝集粒子を10mmφの粉末錠剤成形機で0.85ton/cm2の成形圧力で成形して得られたペレット状の試料を粉末X線回折測定して得られる、BN一次粒子の(100)面と(004)面のピーク面積強度比((100)/(004))が0.25以上であるとしても表現ができる。このピーク面積強度比((100)/(004))は、好ましくは0.3以上、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.7以上、更に好ましくは0.81以上、特に好ましくは0.85以上、とりわけ好ましくは0.91以上である。また、上限は特に制限はないが、通常10.0以下、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.0以下であり、更に好ましくは2.0以下であり、特に好ましくは1.6以下である。
【0037】
また、別の表現としては、BN凝集粒子を10mmφの粉末錠剤成形機で0.85ton/cm2以上2.54ton/cm2以下の成形圧力で成形して得られたペレット状の試料中のBN凝集粒子を構成するBN一次粒子の(100)面と(004)面のピーク面積強度比((100)/(004))は、通常0.25以上、好ましくは0.30以上、より好ましくは0.35以上、更に好ましくは0.40以上であり、通常2.0以下、好ましくは1.5以下、更に好ましくは1.2以下である。大きすぎると、成形体とした際にBN凝集粒子間の接触抵抗が大きくなる傾向があり、小さすぎると、BN凝集粒子が崩壊し、厚み方向の熱伝導性が向上しない傾向がある。
【0038】
通常、放熱シートなどにおいて最適なプレス圧力条件は、放熱シートの種類によって異なる。樹脂マトリックス中に分散したBN凝集粒子は、用途に応じた圧力条件にさらされるが、通常、BN粒子は圧力方向に対して直行する方向にab面が配向する傾向にある。BN凝集粒子を用いた場合でも成形圧力に対して粒子変形が生じ、結果としてab面が圧力方向に直行する方向に配向する傾向にある。
例えば、樹脂製の高放熱基板は、樹脂製基板内部の空隙低減や分散させたBN凝集粒子同士の完全な接触のために、0.85ton/cm2以上2.54ton/cm2以下のような比較的高い圧力で成形されると考えられる。このため、上記圧力範囲でもBN一次粒子の配向変化が少ないBN凝集粒子が熱伝導性向上には必要である。
【0039】
本発明では、本明細書で規定する物性を満たすBN凝集粒子、好ましくはBN凝集粒子を構成するBN一次粒子がカードハウス構造、すなわち、BN一次粒子同士が一次粒子平面部と端面部で接触することによる相互補強構造を有することから、広い成形圧力範囲でBN凝集粒子の変形を抑制することが可能である。用途に応じて最適な圧力範囲は異なるが、成形体の厚み方向に高熱伝導化するためには、0.85ton/cm2以上2.54ton/cm2の範囲において、少なくとも一定以上の一次粒子配向が保持される状態が達成することが好ましい。
【0040】
一定以上の一次粒子配向とは、例えば一次粒子の(100)面と(004)面のピーク面積強度比((100)/(004))によって表現されるが、これは(004)面、すなわち、圧力方向に対して直行する方向にab面が配向する割合がどれだけ少ないかを表現するものである。従って、上述のピーク面積強度比が大きいほど、成形圧力によるBN凝集粒子の変形が少ない。高熱伝導性を達成するには、少なくともピーク面積強度比は0.25以上であることが必要と考えている。ピーク面積強度比の下限、上限については前述のとおりである。
尚、0.85ton/cm2以上2.54ton/cm2の範囲におけるピーク面積強度比は、上記圧力範囲において一点でも所定の数値を満たせば問題なく、本発明の圧力範囲全てにおいて達成する必要はない。また、好ましくは、0.85ton/cm2、1.69ton/cm2、2.54ton/cm2の3点にて所定の数値を満たすことである。
【0041】
なお、上記ピーク面積強度比は、錠剤成形機(10mmφ)に約0.2gの粉末を充填し、手動油圧式ポンプ(理研精機社製P-1B-041)を用いて、種々のプレス圧で錠剤成形した試料を測定に供する(例えば、0.85ton/cm2、1.69ton/cm2、2.54ton/cm2等)。測定は、オランダPANalytical社製X‘PertPro MPD粉末X線回折装置を用いて行うことで、該当するピーク面積の強度比を計算することができる。
【0042】
・BN凝集粒子の平均粒子径(D50)
BN凝集粒子の平均粒子径(D50)は、通常5μm以上であり、好ましくは10μm以上、より好ましくは25μm以上、更に好ましくは26μm以上であり、特に好ましくは30μm以上、最も好ましくは40μm以上であり、45μm以上であっても好ましく、50μm以上であっても好ましい。また、通常200μm以下、好ましくは150μm以下、更に好ましくは100μm以下である。大きすぎると成形体とした際に表面の平滑性が悪くなる、BN凝集粒子間の間隙が多くなる等により、熱伝導性が向上しない傾向があり、小さすぎると成形体とした際にBN凝集粒子間の接触抵抗が大きくなる、BN凝集粒子自体の熱伝導性が低くなる等の傾向がある。
【0043】
なお、D50は測定に供した粉体の体積を100%として累積曲線を描かせた際に丁度累積体積が50%となる時の粒子径を意味し、その測定方法は、湿式測定法としては、分散安定剤としてヘキサメタリン酸ナトリウムを含有する純水媒体中にBN凝集粒子を分散させた試料に対して、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置などを用いて測定することができ、乾式測定法としては、Malvern社製「Morphologi」を用いて測定することができる。」
「【0050】
[BN凝集粒子の製造方法]
本発明のBN凝集粒子は、好ましくは、粘度が200~5000mPa・sである原料BN粉末を含むスラリー(以下「BNスラリー」と称す場合がある。)を用いて粒子を造粒し、造粒粒子を加熱処理することによって、該造粒粒子の大きさを保持したままBN凝集粒子を構成するBN一次粒子の結晶子を成長させて、製造することができる。BNスラリーの粘度は、好ましくは300mPa・s以上、より好ましくは500mPa・s以上、更に好ましくは700mPa・s以上、特に好ましくは1000mPa・s以上であり、好ましくは4000mPa・s以下、より好ましくは3000mPa・s以下である。
【0051】
上記BNスラリーの粘度は、生成するBN凝集粒子の体積基準の平均粒子径D50および、BN凝集粒子を構成するBN一次粒子の平均結晶子径に大きく影響し、該粘度を200mPa・s以上とすることにより、BN一次粒子の平均結晶子径及びBN凝集粒子の体積基準の平均粒子径D50を大きくすることができる。
一方BNスラリーの粘度を5000mPa・s以下とすることにより、造粒を容易にすることができる。BNスラリーの粘度の調製方法は、後述する。
【0052】
なお、本発明におけるBNスラリーの粘度とは、FUNGILAB社の回転粘度計「VISCO BASIC Plus R」を用い、ブレード回転数100rpmにて測定した粘度のことである。
さらに、本発明のBN凝集粒子をフィラーとしてBN凝集粒子含有樹脂組成物を作製する場合、同一の充填量においても、他のBN粒子と比較して得られる成形体の熱伝導率が劇的に改善できる。これは、本発明のBN凝集粒子では、BN凝集粒子を構成するBN一次粒子の平均結晶粒子径の増大により、BN一次粒子中の結晶粒界が減少すること、BN凝集粒子を構成するBN一次粒子の特定面が配向していることによると推察され、好ましくは、凝集粒子の体積基準の平均粒子径D50が大きいことにより、BN凝集粒子間の接触抵抗が低減することも影響すると考えられる。
【0053】
本発明のBN凝集粒子はBN凝集粒子自体の熱伝導性が高いだけでなく、樹脂と複合化して作製した成形体の熱伝導性も高くなる。
すなわち、本願発明によれば、当業者では通常制御することを想定していなかったスラリー粘度を特定の範囲に制御することにより、BN凝集粒子を構成するBN一次粒子の平均結晶子径を大きくすることが可能である製造方法を見出したものである。
【0054】
更に、本発明によれば、上記スラリー粘度を特定の範囲に制御することにより、本発明で規定するBN凝集粒子を製造する方法を見出したものである。
なお、上記ピーク強度比および結晶子径は、BNスラリーから製造する造粒粒子を加熱処理する際の焼成温度、原料BN粉末中に存在する酸素濃度によっても制御できる。具体的には、後程述べる通り、BNスラリーから製造する造粒粒子を加熱処理する際の焼成温度範囲を1800℃以上2300℃以下とすることでピーク強度比を3以上とすることができ、原料BN粉末中に存在する酸素濃度が1.0重量%以上の原料を用いることで、結晶子径を所望の範囲に制御できる。即ち、適切な焼成温度範囲と適切な酸素濃度の原料BN粉末を用いることで上記ピーク強度比と上記平均結晶子径を同時に制御できる。
【0055】
これによりBN凝集粒子をBN凝集粒子含有樹脂組成物とした際のBN凝集粒子間の接触抵抗の低減並びにBN凝集粒子を構成するBN一次粒子中の結晶粒界が減少し、該BN凝集粒子を構成するBN一次粒子の特定の結晶面が配向した、熱伝導性の高いBN凝集粒子を作製できる。
本発明によって得られるBN凝集粒子は、高熱伝導性を維持しながら様々な大きさに設計することが可能なため、成形体として幅広い用途に適用可能である。
【0056】
{スラリーの調製}
<原料BN粉末>
・原料BN粉末の種類
本発明で用いる原料BN粉末としては、市販のh-BN、市販のαおよびβ-BN、ホウ素化合物とアンモニアの還元窒化法により作製されたBN、ホウ素化合物とメラミンなどの含窒素化合物から合成されたBNなど何れも制限なく使用できるが、特にh-BNが本発明の効果をより発揮する点で好ましく用いられる。
【0057】
・原料BN粉末の結晶性
本発明で用いる原料BN粉末の形態としては、粉末X線回折測定により得られるピークの半値幅が広く、結晶性が低い粉末状のBN粒子が好適である。結晶性の目安として、粉末X線回折測定から得られる(002)面のピーク半値幅が、2θの角度で、通常0.4°以上、好ましくは0.45°以上、より好ましくは0.5°以上である。また、通常2.0°以下、好ましくは1.5°以下、更に好ましくは1°以下である。上記上限より大きいと、結晶子が十分大きくならず、大きくするためには長時間を要するため、生産性が悪くなる傾向がある。上記下限未満だと、結晶性が高すぎて、十分な結晶成長が見込めず、また、スラリー作製時の分散安定性が悪くなる傾向がある。なお、粉末X線回折測定方法は後述の実施例の項に記載する。
【0058】
・原料BN粉末中の酸素原子濃度
BN結晶成長の観点からは、原料BN粉末中に酸素原子がある程度存在することが好ましく、本発明では、原料BN粉末中の全酸素濃度は、通常1質量%以上、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは4質量%以上である。また、通常、10質量%以下、更に好ましくは9質量%以下である。上記上限より大きいと、熱処理後も酸素が残存しやすくなるため、熱伝導性の改善効果が小さくなる傾向がある。上記下限未満だと、結晶性が高すぎて、結晶成長が見込めず、粉末X線回折測定から確認できるピーク強度比が所望の範囲から外れる傾向がある。
【0059】
本発明においては、原料BN粉末中に存在する酸素濃度が1.0重量%以上の原料を用いることでも、BN凝集粒子を構成するBN一次粒子の平均結晶子径を所望の範囲に制御できる。
なお、原料BN粉末の全酸素濃度を上記範囲に調製する方法としては、例えばBN合成時の合成温度を1500℃以下の低温で行う方法、500℃~900℃の低温の酸化雰囲気中で原料BN粉末を熱処理する方法などが挙げられる。
なお、原料BN粉末の全酸素濃度は、不活性ガス融解-赤外線吸収法により、株式会社堀場製作所製の酸素・窒素分析計を用いて測定することができる。
【0060】
・原料BN粉末の全細孔容積および比表面積
原料BN粉末の全細孔容積は通常1.0cm3/g以下であるが、好ましくは0.3cm3/g以上1.0cm3/g以下、より好ましくは0.5cm3/g以上1.0cm3/g以下である。全細孔容積が1.0cm3/g以下であることにより、原料BN粉末が密になっているために、球形度の高い造粒が可能となる。
【0061】
原料BN粉末の比表面積は通常50m2/g以上であるが、60m2/
g以上が好ましく、70m2/g以上がより好ましい。通常、1000m2/g以下であるが、500m2/g以下が好ましく、300m2/g以下がより好ましい。原料BN粉末の比表面積が50m2/g以上であることにより、造粒による球形化の際に用いるBNスラリー中の分散粒子径を小さくすることができるため好ましい。また、1000m2/g以下とすることによりスラリー粘度の増加を抑制することができるため好ましい。
なお、原料BN粉末の全細孔容積は、窒素吸着法および水銀圧入法で測定することができ、比表面積は、BET1点法(吸着ガス:窒素)で測定することができる。原料BN粉末の全細孔容積及び比表面積の具体的測定方法は、後述の実施例の項に記載する。
【0062】
<媒体>
BNスラリーの調製に用いる媒体としては特に制限はなく、水及び/又は各種の有機溶媒を用いることができるが、噴霧乾燥の容易さ、装置の簡素化などの観点から、水を用いることが好ましく、純水がより好ましい。
【0063】
BNスラリーの調製に用いる媒体の使用量は、BNスラリーの粘度が200~5000mPa・sとなる量を加えることが好ましい。
具体的にはBNスラリーの調製に用いる媒体の使用量は、通常10質量%以上、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上であり、通常、70質量%以下、好ましくは65質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。媒体の使用量が上記上限より大きいと、スラリー粘度が低くなりすぎるため、沈降などによるBNスラリーの均一性が損なわれ、得られるBN凝集粒子を構成するBN一次粒子の結晶子径が所望の範囲から外れる傾向がある。下限未満であるとスラリー粘度が高すぎるため、造粒が困難になる傾向がある。すなわち、上記媒体の使用量が上記範囲外であると、BN凝集粒子の大きさとBN凝集粒子を構成するBN一次粒子の結晶性とBN一次粒子中の結晶粒界の低減を同時に満足することが困難になる。
【0064】
<界面活性剤>
BNスラリーには、スラリーの粘度を調節すると共に、スラリー中の原料BN粉末の分散安定性(凝集抑制)の観点から、種々の界面活性剤を添加するのが好ましい。
界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、非イオン性界面活性剤等を用いることができ、これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0065】
一般に、界面活性剤はスラリーの粘度を変化させることが可能である。従って、BNスラリーに界面活性剤を添加する場合、その量は、BNスラリーの粘度が200~5000mPa・sとなるような量に調整する。例えば、原料BNとして、粉末X線回折測定により得られる(002)面ピークの半値幅2θが0.67°、酸素濃度が7.5質量%であるBNを用いて固形分50質量%のスラリーを調整する場合、通常、陰イオン性界面活性剤の有効成分として、スラリー全量に対し、通常0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上添加し、通常10質量%以下、好ましくは7質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下添加する。上記上限より大きいと、スラリー粘度が下がりすぎるとともに、生成したBN凝集粒子中に界面活性剤由来の炭素成分が残りやすくなる傾向がある。上記下限未満だと、スラリー粘度が高くなりすぎ、造粒自体が困難になる傾向がある。
【0066】
<バインダー>
BNスラリーは、原料BN粉末を効果的に粒子状に造粒するために、バインダーを含んでもよい。バインダーは、BN一次粒子を強固に結びつけ、造粒粒子を安定化するために作用する。
BNスラリーに用いるバインダーとしては、BN粒子同士の接着性を高めることができるものであればよいが、本発明においては、造粒粒子は粒子化後に加熱処理されるため、この加熱処理工程における高温条件に対する耐熱
性を有するものが好ましい。
【0067】
このようなバインダーとしては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化イットリウム、酸化カルシウム、酸化珪素、酸化ホウ素、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化チタンなどの金属の酸化物などが好ましく用いられる。これらの中でも、酸化物としての熱伝導性と耐熱性、BN粒子同士を結合する結合力などの観点から、酸化アルミニウム、酸化イットリウムが好適である。なお、バインダーはアルミナゾルのような液状バインダーを用いてもよく、加熱処理中に反応して、他の無機成分に変換されるものであってもよい。これらのバインダーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0068】
バインダーの使用量(液状バインダーの場合は、固形分としての使用量)は、BNスラリー中の原料BN粉末に対して、通常0質量%以上30質量%以下であり、好ましくは0質量%以上20質量%以下、より好ましくは0質量%以上15質量%以下である。上記上限を超えると造粒粒子中の原料BN粉末の含有量が少なくなり、結晶成長に影響するばかりか熱伝導性のフィラーとして用いた場合に熱伝導性改善効果が小さくなる。
【0069】
<スラリー調製方法>
スラリー調製方法は、原料BN粉末及び媒体、更に必要により、バインダー、界面活性剤が均一に分散し、所望の粘度範囲に調製されていれば特に限定されないが、原料BN粉末及び媒体、更に必要により、バインダー、界面活性剤を用いる場合、好ましくは以下のように調製する。
【0070】
原料BN粉末を樹脂製のボトルに所定量計量し、次いで、バインダーを所定量添加する。さらに、界面活性剤を所定量添加した後、ジルコニア性のセラミックボールを加えて、ポットミル回転台で所望の粘度になるまで0.5~5h程度撹拌する。
添加の順番は特に制限はないが、大量の原料BN粉末をスラリー化する場合、だまなどの凝集物ができやすくなるため、水に界面活性剤とバインダーを加えた水溶液を作製した後、所定量の原料BN粉末を少量ずつ添加し、ここにジルコニア性のセラミックボールを加えて、ポットミル回転台で分散、スラリー化しても良い。
【0071】
また、分散に際しては、ポットミルのほかに、ビーズミル、プラネタリーミキサーなどの分散装置を使用しても良い。スラリー化に際して、スラリーの温度は、10℃以上60℃以下で行う。下限よりも低いと、スラリー粘度が上昇し、所望の粘度範囲から外れる傾向にあり、上限よりも高いと原料BN粉末が水溶液中でアンモニアに分解しやすくなる。通常、10℃以上60℃以下であるが、好ましくは15℃以上50℃以下、より好ましくは15℃以上40℃以下、更に好ましくは15℃以上35℃以下である。
【0072】
{造粒}
BNスラリーから造粒粒子を得るには、スプレードライ法、転動法、流動層法、そして撹拌法などの一般的な造粒方法を用いることができ、この中でもスプレードライ法が好ましい。
スプレードライ法では、原料となるスラリーの濃度、装置に導入する単位時間当たりの送液量と送液したスラリーを噴霧する際の圧空圧力及び圧空量により、所望の大きさの造粒粒子を製造することが可能であって、球状の造粒粒子を得ることも可能である。使用するスプレードライ装置に制限はないが、より大きな球状の造粒粒子とするためには、回転式ディスクによるものが最適である。このような装置としては、大川原化工機社製スプレードライヤーFシリーズ、藤崎電機社製スプレードライヤー「MDL-050M」などが挙げられる。
【0073】
造粒により得られた造粒粒子の平均粒子径は、本発明のBN凝集粒子の体積基準の平均粒子径の範囲を好ましくは5μm以上200μm以下とする場合には、体積基準の平均粒子径D50で通常3μm以上、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、更に好ましくは15μm以上、より更に好ましくは20μm以上、特に好ましくは25μm以上、より特に好ましくは25μm以上、26μm以上であっても好ましく、30μm以上であっても好ましく、35μm以上であっても好ましい。また、150μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましい。ここで、造粒粒子の体積基準の平均粒子径D50は、例えば、湿式では堀場製作所製「LA920」、乾式ではMalvern社製「Morphorogi」などで測定することができる。
【0074】
{加熱処理}
上記のBN造粒粒子は、更に非酸化性ガス雰囲気下に加熱処理することでBN凝集粒子を製造することができる。
ここで、非酸化性ガス雰囲気とは、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、アンモニアガス、水素ガス、メタンガス、プロパンガス、一酸化炭素ガスなどの雰囲気のことである。ここで用いる雰囲気ガスの種類により凝集BN粒子の結晶化速度が異なるものとなり、結晶化を短時間で行うためには特に窒素ガス、もしくは窒素ガスと他のガスを併用した混合ガスが好適に用いられる。
加熱処理温度は通常1800℃以上、2300℃以下であるが、好ましくは1900℃以上であり、また好ましくは2200℃以下である。加熱処理温度が低すぎると、BNの平均結晶子の成長が不十分となり、BN凝集粒子
および成形体の熱伝導率が小さくなる場合がある。加熱処理温度が高すぎると、BNの分解などが生じてしまうおそれがある。
【0075】
上記加熱処理温度を1800℃以上2300℃以下とすることにより、BN一次粒子の(100)面と(004)面のピーク強度比((100)/(004))を所望の値とすることができる。
加熱処理時間は、通常3時間以上、好ましくは4時間以上、より好ましくは5時間以上、また通常20時間以下、好ましくは15時間以下である。加熱処理時間が上記下限未満の場合、結晶成長が不十分となり、上記上限を超えるとBNが一部分解するおそれがある。
・・・
【0077】
通常、加熱処理する造粒粒子は、焼成時の組成の不均一性を低減するために、円形の黒鉛製蓋つきルツボに入れて加熱焼成される。この際、組成の不均一性の低減に加えて、焼成によるBN凝集粒子同士の焼結を抑制する目的で、黒鉛製の仕切りを入れても良い。仕切りによる分割数は、焼結が抑制できれば特に制限はないが、通常2分割以上16分割以下である。上記上限より分割数が多いと焼結は抑制できるものの、BN一次粒子の結晶が十分に成長しなくなる傾向にあり、上記下限より分割数が少ないと、焼結が進む場合がある。
【0078】
{分級}
上記加熱処理後のBN凝集粒子は、粒子径分布を小さくし、BN凝集粒子含有樹脂組成物に配合したときの粘度上昇を抑制するために、好ましくは分級処理する。この分級は、通常、造粒粒子の加熱処理後に行われるが、加熱処理前の造粒粒子について行い、その後加熱処理に供してもよい。
【0079】
分級は湿式、乾式のいずれでも良いが、BNの分解を抑制するという観点からは、乾式の分級が好ましい。特に、バインダーが水溶性を有する場合には、特に乾式分級が好ましく用いられる。
乾式の分級には、篩による分級のほか、遠心力と流体抗力の差によって分級する風力分級などがあるが、旋回気流式分級機、強制渦遠心式分級機、半自由渦遠心式分級機などの分級機を用いて行うこともできる。これらの中で、サブミクロンからシングルミクロン領域の小さな微粒子を分級するには旋回気流式分級機を、それ以上の比較的大きな粒子を分級するには半自由渦遠心式分級機など、分級する粒子の粒子径に応じて適宜使い分ければよい。」
「【実施例】
・・・
【0127】
{測定条件}
本発明における特性は以下に記載の方法にて測定した。
・粘度:
FUNGILAB社の回転粘度計「VISCO BASIC Plus R」を用い、ブレード回転数100rpmにて測定した。
・・・
【0129】
・BN一次粒子の平均結晶子径:
粉末X線回折測定によって得られたBN一次粒子の(002)面由来のピークから、Scherrer式を用いて平均結晶子径を求めた。粉末X線回折測定は、PANalytical社製X線回折装置「X‘Pert Pro MPD」を用いた。Scherrer式とは次の式である。
D=(K・λ)/(β・cosθ)
ここで、D:結晶子径、K:Scherrer定数、λ:X線(CuKα1)波長、β:ピーク半値幅、θ:CuKα1由来のブラッグ角、である。またβは、次の補正式を用いて求めた。
β=(βo2-βi2)0.5
ここで、βiは、標準Siにより求めておいた装置由来の半価幅であり、βoは、h-BNの(002)面由来のピーク半値幅である。各定数の値は、以下を用いた。
K=0.9、λ=1.54059Å
・・・
【0131】
BN凝集粒子のピーク面積強度比
錠剤成形機(10mmφ)に約0.2gのBN凝集粒子を充填し、手動油圧式ポンプ(理研精機社製P-1B-041)を用いて、0.85ton/cm2のプレス圧で錠剤成形した。得られた試料について、粉末X線回折測定と同様の装置を用いて、BN一次粒子の(100)面および(004)面のピーク面積強度比((100)/(004))を求めた。結果を表1に示した。
【0132】
・成形体の厚み方向熱伝導率
成形体の厚み方向の熱拡散率を株式会社アイフェイズ製の熱拡散率測定装置「ai-Phase Mobile 1u」を用いて測定し、以下により求めた。
成形体の厚み方向熱伝導率=成形体の厚み方向の熱拡散率×成形体の比重×成形体の比熱
【0133】
BN凝集粒子、BN凝集粒子含有樹脂組成物および成形体の製造
(実施例1)
<BNスラリーからのBN凝集粒子の作製>
[BNスラリー(スラリーA)の調製]
(原料)
原料h-BN粉末(粉末X線回折測定により得られる(002)面ピークの半値幅が2θ=0.67°、酸素濃度が7.5質量%):10000g バインダー(多木化学(株)製「タキセラムM160L」、固形分濃度21質量%):11496g 界面活性剤(花王(株)製界面活性剤「アンモニウムラウリルサルフェート」:固形分濃度14質量%):250g
(スラリーの調製)
原料h-BN粉末を樹脂製のボトルに所定量計量し、次いでバインダーを所定量添加した。さらに、界面活性剤を所定量添加した後、ジルコニア性のセラミックボールを添加して、ポットミル回転台で1時間撹拌した。
スラリーの粘度は、810mPa・sであった。
【0134】
[造粒]
BNスラリーからの造粒は、大河原化工機株式会社製FOC-20を用いて、ディスク回転数20000~23000rpm、乾燥温度80℃で実施し、球状のBN凝集粒子を得た。
【0135】
[BN凝集粒子(BN-A凝集粒子)の作製]
上記BN造粒粒子を、室温で真空引きをした後、窒素ガスを導入して復圧し、そのまま窒素ガスを導入しながら2000℃まで83℃/時で昇温し、2000℃到達後、そのまま窒素ガスを導入しながら5時間保持した。その後、室温まで冷却し、カードハウス構造を有する球状のBN-A凝集粒子を得た。
【0136】
[分級]
更に、上記加熱処理後のBN-A凝集粒子を、乳鉢および乳棒を用いて軽粉砕した後、目開き90μmの篩を用いて分級した。分級後、BN-A凝集粒子を構成するBN一次粒子の平均結晶子径、該BN一次粒子の(100)面と(004)面のピーク強度比((100)/(004))、BN-A凝集粒子のD50を測定した。測定結果は表1に示す。
【0137】
<成形体シートの製造>
上記で得られたBN-A凝集粒子をフィラーとして用い、フィラーと樹脂組成物とからなるBN凝集粒子含有樹脂組成物を調製した。
[樹脂組成物]
三菱化学(株)製エポキシ樹脂である「157S70」、「828US」、「4275」および四国化成工業(株)製の硬化剤である「C11Z-CN」を、「157S70」:「828US」:「4275」:「C11Z-CN」=1:0.25:0.25:0.11(質量比)の割合で混合して樹脂組成物を得た。
【0138】
[BN凝集粒子含有樹脂組成物の調製]
BN-A(BN凝集粒子)と上記樹脂組成物をBN-A凝集粒子の充填量(樹脂組成物とBN-A凝集粒子の合計に対するBN-凝集粒子の含有割合)が80質量%になるように配合した。
調製された樹脂組成物/BN-A凝集粒子混合物100質量部と、メチルエチルケトン50質量部をポリプロピレン製の蓋付きカップに入れ、さらに、樹脂組成物成分100質量部に対して6質量部の1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール(硬化剤)を加え、自公転攪拌機(シンキー社製「泡取り錬太郎 AR-250」))を用いて混合して、BN凝集粒子含有樹脂組成物塗布液を調製した。
【0139】
[塗布]
得られたBN凝集粒子含有樹脂組成物塗布液を、ギャップ間隔400μmのバーコーター(テスター産業株式会社製「オートフィルムアプリケーター」)で、厚さ100μm、10cm×20cmの銅基板上に塗布した。その後、50℃で、30分間真空乾燥を行って、銅基板に塗布膜を形成した。
【0140】
[成形体の製造]
得られた塗布膜が形成された銅版を4cm角に切断した。金型に入れて、130℃、500kg/cm2で3分間ホットプレスを行い、さらにオーブン中で160℃、2時間硬化させることにより、熱伝導率評価用の成形体(4cm×4cm)を得た。測定結果は表1に示す。
【0141】
(実施例2)
実施例1において、スラリーAを原料の配合比を以下に変更したBNスラリー(スラリーB)とした以外は、実施例1と同様に行い、カードハウス構造を有する球状のBN凝集粒子(凝集BN-B)及びBN凝集粒子含有樹脂組成物、成形体を作製した。測定結果を表1に示す。
【0142】
[BNスラリー(スラリーB)]
(原料)
原料h-BN粉末:10000g
純水:7500g
バインダー:5750g
界面活性剤:250g
(スラリー調製)
原料h-BN粉末を樹脂製のボトルに所定量計量し、次いで純水、バインダーの順に所定量添加した。さらに、界面活性剤を所定量添加した後、ジル
コニア性のセラミックボールを添加して、ポットミル回転台で1時間撹拌した。スラリーの粘度は、2200mPa・sであった。
【0143】
(実施例3)
実施例1において、スラリーAを原料の配合比を以下に変更したBNスラリー(スラリーC)とした以外は、実施例1と同様に行い、カードハウス構造を有する球状のBN凝集粒子(凝集BN-C)及びBN凝集粒子含有樹脂組成物、成形体を作製した。測定結果を表1に示す。
【0144】
[BNスラリー(スラリーC)]
(原料)
原料h-BN粉末:10000g
バインダー:11496g
界面活性剤:250g
(スラリー調製)
原料h-BN粉末を樹脂製のボトルに所定量計量し、次いでバインダーを所定量添加した。さらに、界面活性剤を所定量添加した後、ジルコニア性のセラミックボールを添加して、ポットミル回転台で1時間撹拌した。スラリーの粘度は、1600mPa・sであった。
【0145】
(比較例1)
実施例2におけるスラリーBを、原料の配合比を変更した以下に示すスラリーDとした以外は、実施例2と同様に行い、BN凝集粒子(BN-D凝集粒子)及びBN凝集粒子含有樹脂組成物、成形体を作製した。スラリーの粘度は155mPa・sであった。測定結果を表1に示す。
【0146】
[BNスラリー(スラリーD)]
スラリーD配合
(原料)
原料h-BN粉末:2400g
純水:2199g
バインダー:1380g
界面活性剤:60g
【0147】
(比較例2)
実施例1と同様にスラリーの調製および造粒を行い、BN凝集粒子作製時の焼成温度を1300℃、保持時間を24hとした以外は実施例1と同様にBN凝集粒子を作製した(凝集BN-E)。このBN凝集粒子を用いて、実施例1と同様の方法でBN凝集粒子含有樹脂組成物の作製、成形体の製造を行った。表1に結果を示す。
【0148】
(比較例3)
実施例1のBN-A凝集粒子に変えてモメンティブ社製PTX60を用いた以外は実施例1と同様にBN凝集粒子含有樹脂組成物及び成形体の製造を行った。表1に結果を示す。
【0149】
(比較例4)
実施例1のBN-A凝集粒子に変えてモメンティブ社製PTX25を用いた以外は実施例1と同様に行った。表1に結果を示す。
【0150】
(比較例5)
実施例1のBN-A凝集粒子に変えて電気化学工業社製SGPSを用いた以外は実施例1と同様にBN凝集粒子含有樹脂組成物及び成形体の製造を行った。表1に結果を示す。
【0151】
(比較例6)
実施例1のBN-A凝集粒子に変えてサンゴバン社製CTS7Mを用いた以外は実施例1と同様にBN凝集粒子含有樹脂組成物及び成形体の製造を行った。表1に結果を示す。
【0152】
(比較例7)
実施例1と同様にスラリーの調製および造粒を行い、BN凝集粒子作製時の焼成温度を1600℃、保持時間を24hとした以外は実施例1と同様にBN凝集粒子を作製した(凝集BN-F)。このBN凝集粒子を用いて、実施例1と同様の方法でBN凝集粒子含有樹脂組成物の作製、成形体の製造を行った。表1に結果を示す。
【0153】
(比較例8)
実施例2において、スラリーBの原料の配合比を以下に変更したBNスラリー(スラリーE)とした以外は、実施例1と同様に行った。
【0154】
[BNスラリー(スラリーE)]
(原料)
原料h-BN粉末:10000g
純水:7750g
バインダー:5750g
【0155】
(スラリー調製)
原料h-BN粉末を樹脂製のボトルに所定量計量し、次いで純水、バインダーの順に所定量添加した。さらに、ジルコニア性のセラミックボールを添
加して、ポットミル回転台で1時間撹拌した。スラリーの粘度は、8000mPa・sであった。
【0156】
【表1】
[図:0001411220000001.jpg]
」
「【0157】
BN凝集粒子成形圧縮成形体におけるBN一次粒子の(100)/(004)面のピーク面積強度比の評価
実施例4
錠剤成形機(10mmφ)に約0.2gの実施例1で作製したBN-A凝集粒子を充填し、手動油圧式ポンプ(理研精機社製P-1B-041)を用いて、表2に記載の種々のプレス圧で錠剤成形した。得られた試料について、粉末X線回折測定と同様の装置を用いて、BN一次粒子の(100)面および(004)面のピーク面積強度比((100)/(004))を求めた。結果を表2に示した。
【0158】
実施例5
錠剤成形機(10mmφ)に約0.2gのBN凝集粒子として実施例2で作製したBN-B凝集粒子を用いた以外は、実施例4と同様にしてBN一次粒子の(100)面および(004)面のピーク面積強度比((100)/(004))を求めた。結果を表2に示した。
【0159】
比較例9
BN凝集粒子としてBN-E凝集粒子を用いた以外は、実施例4と同様にしてBN一次粒子の(100)面と(004)面のピーク面積強度比((100)/(004))を求めた。結果を表2に示した。
【0160】
比較例10
BN凝集粒子としてモメンティブ社製PTX60凝集粒子を用いた以外は、実施例4と同様にしてBN一次粒子の(100)面と(004)面のピーク面積強度比((100)/(004))を求めた。結果を表2に示した。【0161】
比較例11
BN凝集粒子としてモメンティブ社製PTX25を用いた以外は、実施例4と同様にしてBN一次粒子の(100)面と(004)面のピーク面積強度比((100)/(004))を求めた。結果を表2に示した。
【0162】
比較例12
BN凝集粒子として電気化学工業社製SGPSを用いた以外は、実施例4と同様にしてBN一次粒子の(100)面と(004)面のピーク面積強度比((100)/(004))を求めた。結果を表2に示した。
【0163】
比較例13
BN凝集粒子としてサンゴバン社製CTS7Mを用いた以外は、実施例4と同様にしてBN一次粒子の(100)面と(004)面のピーク面積強度比((100)/(004))を求めた。結果を表2に示した。
【0164】
比較例14
BN凝集粒子としてBN-F凝集粒子を用いた以外は、実施例4と同様にしてBN一次粒子の(100)面と(004)面のピーク面積強度比((100)/(004))を求めた。結果を表2に示した。
【0165】
【表2】
[図:0001411220000002.jpg]
【0166】
表1から、本発明のBN凝集粒子を用いることにより、成形体として高い熱伝導性を示すことがわかる。平均結晶子径が375Å未満の比較例1、2では、熱伝導性が低く、平均結晶子径が375Åを超えるものの、BN凝集粒子の粉末X線回折測定によるBN一次粒子の(100)面と(004)面のピーク強度比((100)/(004))が3未満である比較例4も高い熱伝導率を達成することができない。従って、BN凝集粒子を構成するBN一次粒子の平均結晶子径が375Å以上であり、かつ粉末X線回折測定によるBN一次粒子の(100)面と(004)面のピーク強度比((100)/(004))が3以上である本発明のBN凝集粒子は、熱伝導性フィラーとして従来にはない性能を発揮し、熱の課題が多い電気電子分野など様々な用途に幅広く適用可能である。
【0167】
さらに、表1の結果と表2から、特定の圧力以上でもBN一次粒子の(100)面と(004)面のピーク面積強度比((100)/(004))が0.25以上であり、BN一次粒子の平均結晶子径が375Åより大きい凝集粒子を用いることで、厚み方向に高い熱伝導性を発現するシートを得ることができる。」
第4 取消理由通知書に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
当審が通知した、令和3年9月28日付けの取消理由、及び令和4年10月25日付けの取消理由(決定の予告)をまとめて整理すると、その概要は、次のとおりである。
(1) 取消理由1(サポート要件違反)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が、下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(サポート要件)を満たしていない特許出願に対してされたものである。
記
設定登録時及び先の訂正後の請求項1に係る窒化ホウ素凝集粒子(以下、「BN凝集粒子」と表記する場合がある。)の発明において、窒化ホウ素一次粒子(以下、「BN一次粒子」という場合がある。)の「10mmφの粉末錠剤成形機で2.54ton/cm2の成型圧力で成型して得られたペレット状の試料を粉末X線回折測定して得られる、BN一次粒子の(100)面と(004)面のピーク面積強度比((100)/(004))」(以下、「BN一次粒子のピーク面積強度比」という場合がある。)及び「BN凝集粒子を0.2mm深さのガラス試料板に表面が平滑になるように充填し、粉末X線回折測定して得られる、BN一次粒子の(002)面ピークから求めたBN一次粒子の平均結晶子径」(以下、「BN一次粒子の平均結晶子径」という場合がある。)が特定されている。
しかし、発明の詳細な説明の実施例で示された「BN一次粒子のピーク面積強度比」及び「BN一次粒子の平均結晶子径」は、ごく一部の数値範囲に限られることから、設定登録時及び先の訂正後の請求項1及びこれを引用する請求項2~8に係る発明は、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえない。
(2) 取消理由2(実施可能要件違反)
本件特許は、発明の詳細な説明の記載が、下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件(実施可能要件)を満たしていない特許出願に対してされたものである。
記
ア 設定登録時及び先の訂正後の請求項1~8に係る発明は、発明の詳細な説明の記載により、当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえないから、発明の詳細な説明は、実施例で示された範囲外
のものについてまで当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。
イ 本件明細書の【0056】~【0061】には、BN凝集粒子を製造するための原料BN粉末について、その結晶性や酸素原子濃度等について説明されており、これらの物性がBN凝集粒子を構成するBN一次粒子の結晶性や平均結晶子径に影響することが記載されている。
しかし、実施例では、【0133】に原料h-BN粉末の(002)面ピークの半値幅及び酸素濃度について記載があるものの、どのように調製されたものであるのか、あるいは、入手可能な既製品であるのかは不明であるから、原料BN粉末を準備するために当業者が過度の試行錯誤が必要である。
2 取消理由についての当審の判断
(1) 取消理由1(サポート要件違反)について
ア サポート要件の判断手法について
特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に係る規定(いわゆる「サポート要件」)に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものと解されるから、この観点によって検討する。
イ 本件発明の課題について
本件発明の課題は、発明の詳細な説明の【0001】~【0016】(特に【0014】、【0016】)の記載によると、高熱伝導性のBN凝集粒子を製造し、各種成形体への適用性に優れたBN凝集粒子を提供すること、及びこのBN凝集粒子と樹脂とを含有するBNを含有するBN凝集粒子含有樹脂組成物と、このBN凝集粒子含有樹脂組成物を成形してなる成形体を提供することを含むものである。
ウ 本件発明1~8について
(ア)「BN一次粒子のピーク面積強度比」について
本件発明1に係るBN凝集粒子は、「BN一次粒子のピーク面積強度比」が「0.40以上1.2以下」の範囲であることが特定されている。
これに対して、発明の詳細な説明に記載された実施例の「BN一次粒子のピーク面積強度比」は、10mmφの粉末錠剤成形機で2.54ton/cm2の成形圧力で成型して得られたペレット状の試料について、0.65(実施例5:BN-B(実施例2))~0.77(実施例4:BN-A(実施例1))であり(表1、2)、上記「0.40以上1.2以下」の範囲に含まれており、実施例4、5(実施例1、2)のBN凝集粒子を使用した成形体は、表1から高熱伝導性であることが把握できる。
そして、「BN一次粒子のピーク面積強度比」について、発明の詳細な説明には、次の記載がある。
「【0036】
・BN一次粒子のピーク面積強度比
・・・
【0037】
また、別の表現としては、BN凝集粒子を10mmφの粉末錠剤成形機で0.85ton/cm2以上2.54ton/cm2以下の成形圧力で成形して得られたペレット状の試料中のBN凝集粒子を構成するBN一次粒子の(100)面と(004)面のピーク面積強度比((100)/(004))は、 ・・・ 更に好ましくは0.40以上であり、 ・・・ 更に好ましくは1.2以下である。大きすぎると、成形体とした際にBN凝集粒子間の接触抵抗が大きくなる傾向があり、小さすぎると、BN凝集粒子が崩壊し、厚み方向の熱伝導性が向上しない傾向がある。
【0038】
通常、放熱シートなどにおいて最適なプレス圧力条件は、放熱シートの種類によって異なる。樹脂マトリックス中に分散したBN凝集粒子は、用途に応じた圧力条件にさらされるが、通常、BN粒子は圧力方向に対して直行する方向にab面が配向する傾向にある。BN凝集粒子を用いた場合でも成形圧力に対して粒子変形が生じ、結果としてab面が圧力方向に直行する方向に配向する傾向にある。
例えば、樹脂製の高放熱基板は、樹脂製基板内部の空隙低減や分散させたBN凝集粒子同士の完全な接触のために、0.85ton/cm2以上2.54ton/cm2以下のような比較的高い圧力で成形されると考えられる。このため、上記圧力範囲でもBN一次粒子の配向変化が少ないBN凝集粒子が熱伝導性向上には必要である。
・・・
【0040】
一定以上の一次粒子配向とは、例えば一次粒子の(100)面と(004)面のピーク面積強度比((100)/(004))によって表現されるが、これは(004)面、すなわち、圧力方向に対して直行する方向にab面が配向する割合がどれだけ少ないかを表現するものである。従って、上述のピーク面積強度比が大きいほど、成形圧力によるBN凝集粒子の変形が少ない。高熱伝導性を達成するには、少なくともピーク面積強度比は0.25以上であることが必要と考えている。ピーク面積強度比の下限、上限については前述のとおりである。 ・・・ 」
以上の記載から、本件発明1における「BN一次粒子のピーク面積強度比」は、圧力方向に対して直行する方向にBN一次粒子のab面が配向する割合がどれだけ少ないかを表現するものであり、大きいほうがBN凝集粒子の熱伝導性が向上するから、下限を0.40以上としたものである。
そして、各比較例のうち最大の熱伝導率11.4W/mKを示す比較例3(比較例10)のPTX60(表1、2)は、BN一次粒子の平均結晶子径が370Å(表1)であり、本件発明1で特定する下限375Åの近傍であるが、BN一次粒子のピーク面積強度比は0.16(2.54ton/cm2、表2)であって、本件発明1の下限より小さいところ、上記の説明によると、ピーク面積強度比を大きくすることで熱伝導度が向上することを理解できるから、本件発明1で特定した「BN一次粒子のピーク面積強度比」の下限を0.40以上とすることで、比較例3よりさらに熱伝導率が向上すると認識することができる。
また、上記記載によれば、本件発明1における「BN一次粒子のピーク面積強度比」の上限は、BN凝集粒子の成形性の観点から特定したことを理解できるから、実施例を超える範囲でも熱伝導率が向上することも認識することができる。
したがって、「BN一次粒子のピーク面積強度比」を、本件発明1で特定した範囲とすることで、当業者であればBN凝集粒子が高熱伝導性となることを認識することができる。
(イ)「BN一次粒子の平均結晶子径」について
本件発明1に係るBN凝集粒子において、「BN一次粒子の平均結晶子径」は、「375Å以上415Å以下」であることが特定され、下限値「375Å」は、発明の詳細な説明に記載された実施例において、最も低い値である実施例2(実施例5)の「383Å」の近傍の値であり、また、上限値「415Å」は、実施例1(実施例4)の値であって、実施例1、2(実施例4、5)のBN凝集粒子を使用した成形体は、高熱伝導性であることを把握できる。
そして、「BN一次粒子の平均結晶子径」について、発明の詳細な説明の【0033】に「・・・ BN凝集粒子を粉末X線回折測定して得られるBN一次粒子の(002)面ピークから求めたBN一次粒子の平均結晶子径は、特に制限はされないが、平均結晶子径は大きいことが熱伝導率の点から好ましい。 ・・・ より好ましくは375Å以上であり、・・・ 特に好ましくは400Å以上であり、 ・・・ 好ましくは1000Å以下である。上記平均結晶子径が大きすぎると、BN一次粒子が成長しすぎるため、BN凝集粒子内の間隙が多くなり、成形体とする際の成形性が悪化するとともに、間隙が多くなることにより熱伝導性が向上しなくなる傾向がある。上記平均結晶子径が小さすぎると、BN一次粒子内の粒界が増えるため、フォノン散乱が結晶粒界で発生し、低熱伝導になる傾向がある。」と記載されている。
以上の記載からすると、当業者であれば、BN一次粒子の平均結晶子径を、本件発明1で特定した大きさとすることで、BN凝集粒子が高熱伝導性となることを認識することができる。
(ウ)上記(ア)、(イ)のとおりであるから、上記アの判断手法に照らすと、本件発明1及びこれを引用する本件発明2~8は、サポート要件を満足するといえる。
エ 小括
以上のとおりであるから、取消理由1は理由がない。
(2) 取消理由2(実施可能要件違反)について
ア 事案に鑑みて、まず上記「1(2)イ」の原料BN粉末について検討する。
発明の詳細な説明には、【0056】に原料BN粉末については、市販のh-BNなどを使用することができることが記載され、所定の「結晶性」(【0057】)及び「酸素原子濃度」(【0058】)を有することが好適であることが記載されている。
また、所定の全細孔容積及び比表面積を有することが好ましいことが記載されている(【0060】)。
ここで、特許権者が提出した乙第1号証(特開2007-191339号公報)の【0037】には、(002)回折線の解析処理によって求めた半価幅が0.3であるh-BN粉末を、これを粉砕することにより半価幅を調整可能であることが記載され、同じく乙第2号証(“「超ハイブリッド材料技術開発(ナノレベル構造制御による相反機能材料技術開発)」事業原簿【公開】”、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 電子・材料・ナノテクノロジー部)、最終更新日 平成24年8月8日)の「3.2.1.3.2.1.Y2O3助剤の添加効果」の欄には、BNに焼結助剤として所定量のY2O3を添加して、h-BNの(002)面のピーク半値幅を調整することが記載され、また、発明の詳細な説明の【0059】には、原料BN粉末の全酸素濃度は、BN合成時の合成温度や原料BN粉末を熱処理する方法により調整可能であることが記載されている。
そして、発明の詳細な説明の実施例には、「原料h-BN粉末(粉末X線回折測定により得られる(002)面ピークの半値幅が2θ=0.67°、酸素濃度が7.5質量%)」(【0133】)と記載され、原料h-BN粉末の結晶性及び酸素原子濃度が記載されているところ、酸素濃度については、「原料BN粉末の全酸素濃度は、不活性ガス融解-赤外線吸収法により、株式会社堀場製作所製の酸素・窒素分析計を用いて測定することができる。」(【0059】)と記載され、粉末X線回折測定方法は、「なお、粉末X線回折測定方法は後述の実施例の項に記載する。」(【0057】)と記載され、実施例の欄には、「PANalytical社製X線回折装置「X‘Pert Pro MPD」を用い」て、「粉末X線回折測定」を行うこと(【0129】など)が記載されている。
そうすると、実施例には、使用した原料h-BN粉末の具体的な(002)面ピークの半値幅及び酸素濃度が記載されている上、当業者であれば、市販のh-BN粉末などから上記測定方法にしたがって、本件発明に使用可能なh-BN粉末を選択し、または公知の方法により調製可能であるといえるから、本件発明を実施するために、過度の試行錯誤が必要であるとまではいえない。
イ 次に、上記「1(2)ア」について検討すると、発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に適合するか否かは、明細書の発明の詳細な説明に、当業者が明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その発明を実施することができる程度に発明の構成等の記載があるか否かを検討して判断すべきものであるところ、「第3 2」に摘記したとおり、発明の詳細な説明の【0050】~【0079】には、本件発明に係るBN凝集粒子の製造方法の概要が記載され、また、同じく【0127】~【0167】には、本件発明の実施例(実施例1(実施例4)、実施例2(実施例5))及び比較例が記載されている。
そして、上記実施例は、上記BN凝集粒子の製造方法を具体的に実施して、本件発明に係る「ピーク面積強度比」及び「BN一次粒子の平均結晶子径」を充足し、高い熱伝導性を示すBN凝集粒子を製造できたことを理解することができる。
したがって、発明の詳細な説明の記載は、当業者が、本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。
ウ 小括
以上のとおりであるから、取消理由2は理由がない。
第5 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由について
1 異議申立人1による標記特許異議申立理由及び証拠方法
(1) 申立理由1-1(甲第1号証を主たる証拠とした新規性欠如)
設定登録時の請求項1~8に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、その特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(2) 申立理由1-2(甲第2号証を主たる証拠とした新規性欠如)
設定登録時の請求項1~8に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、その特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(3) 申立理由1-3(甲第1号証を主たる証拠とした進歩性欠如)
設定登録時の請求項1~8に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2、3号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規
定に違反してされたものである。
(4) 申立理由1-4(甲第4号証を主たる証拠とした進歩性欠如)
設定登録時の請求項1~8に係る発明は、甲第4号証に記載された発明及び甲第5~8号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(5) 申立理由1-5(サポート要件違反)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
記
ア 本件明細書の記載では、本件発明の「BN一次粒子のピーク面積強度比」の技術的意義や制御方法が不明であるところ、実施例は、カードハウス構造を有し、バインダーを用いたBN凝集粒子が記載されているのみであるから、カードハウス構造及びバインダー由来成分について特定していない本件発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
イ 本件発明1において、「該BN凝集粒子を0.2mm深さのガラス試料板に表面が平滑になるように充填し」と特定されているところ、当該特定を満たすためには粒子径の特定が必要であるし、また、本件明細書の【0042】の記載によると、種々の不都合を生じさせないためには、BN凝集粒子の平均粒子径を特定する必要があるから、BN凝集粒子の粒子径が規定されていない本件発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
ウ 本件明細書の【0032】には、BN一次粒子において「BNが主成分として含まれていればよい」と記載され、本件明細書中にはBNが主成分である場合のみを開示しているが、本件発明は、BN含有量を規定していないため、BN含有量が主成分ではない場合を含んでいるから、発明の詳細な説明に記載したものでない。
エ 耐崩壊性という課題の解決手段である「BN一次粒子のピーク面積強度比」、及び結晶子径の向上という課題の解決手段である「BN一次粒子の結晶子径」は甲第2号証に記載されているから、甲第1号証に記載の発明にこれらの手段を組み合わせることは容易であるが、これらの手段が二律背反(トレードオフ)の関係にあって組み合わせることができない場合は、発明の詳細な説明に二律背反を克服する手段に関する記載がないから、サポート要件違反である。
(6) 申立理由1-6(明確性要件違反)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
記
ア 本件発明1において、「該BN凝集粒子を0.2mm深さのガラス試料板に表面が平滑になるように充填し」と特定されているが、「平滑」という語句は不明確であるから、本件発明は明確ではない。
イ 本件発明1において、「平均結晶子径」が特定されているが、本件明細書には「平均」についての基準が記載されていないから、本件発明は明確ではない。
(7) 証拠方法一覧
甲第1号証:米国特許出願公開第2006/0127422号明細書
甲第2号証:特開2013-241321号公報
甲第3号証:本件特許の原出願(特願2015-561028号)の異議申 立事件(異議2019-700782号)の面接記録(面接日
:令和2年3月24日)
甲第4号証:特開2011-144234号公報
甲第5号証:特開2013-40062号公報
甲第6号証:国際公開第2013/167306号
(特表2015-518808号公報)
甲第7号証:国際公開第2014/003193号
甲第8号証:特許第4817785号公報
(以下、上記甲第1号証~甲第8号証を、それぞれ「甲1」~「甲8」という。)
2 異議申立人2による標記特許異議申立理由
(1) 申立理由2-1(明確性要件違反)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
記
本件発明1~8
本件発明1に「BN一次粒子が、h-BNを主成分として含む」と特定されているが、「主成分」が意味する具体的な含有量を明確に理解できず、h-BNがどれだけの量含まれているのか不明であるから、本件発明1及び本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2~8は明確でない。
(2) 申立理由2-2(サポート要件違反)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
記
ア 本件発明の課題は、「BN凝集粒子を構成するBN一次粒子が高熱伝導性でありながら、BN凝集粒子同士の接触抵抗も低減したBN凝集粒子を製造し、各種成形体への適用性に優れたBN凝集粒子」と提供すること(【0014】)であると認められるが、本件明細書に記載された実施例において具体的に評価されているのは、BN凝集粒子を含む成形体の厚み方向熱伝導率のみであるから、本件発明は、「BN凝集粒子を構成するBN一次粒子が高熱伝導性である」こと及び「BN凝集粒子同士の接触抵抗が低減する」という本件発明の課題が解決されることを認識できる範囲のものであるとはいえない。
イ 本件明細書の記載からすると、実施例は、カードハウス構造を有するBN凝集粒子のみであるから、本件発明が包含するカードハウス構造を有するBN凝集粒子以外のBN凝集粒子により課題が解決されることを認識できない。
(3) 申立理由2-3(実施可能要件違反)
本件特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
記
ア 本件明細書には、本件発明1で特定する「ピーク面積強度比」及び「平均結晶子径」は、スラリー粘度、酸素濃度等によって制御できる旨記載されているが、実施例以外のBN凝集粒子を製造するためには、過度の試行錯誤
を要するから、発明の詳細な説明は、本件発明について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。
イ 本件明細書に記載された実施例は、カードハウス構造を有するBN凝集粒子を製造したことのみ記載されているから、カードハウス構造を有さないBN凝集粒子であって、本件発明の「ピーク面積強度比」及び「平均結晶子径」を満たすBN凝集粒子をどのように製造すればよいのか、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。
3 当審の判断
(1) 異議申立人1による特許異議申立理由について
ア 各証拠の記載事項
(ア)甲1の記載事項
甲1の記載事項については、原文の摘記は省略し、当審による仮訳のみを示した。
「特許請求の範囲
1.窒化ホウ素板状体の球状凝集体からなる球状窒化ホウ素粉末。
2.前記粉末が0.3g/ccから約0.8g/ccのタップ密度である、請求項2に記載の球状窒化ホウ素粉末。
3.前記球状凝集体は、約1μmから約500μmの平均凝集直径を有する
、請求項2に記載の球状窒化ホウ素粉末。
4.前記球状凝集体は、約3μmから約150μmの平均凝集直径を有する
、請求項3に記載の球状窒化ホウ素粉末。
・・・
21.六方晶窒化ホウ素スラリーを準備し、前記スラリーを、窒化ホウ素板状体の球状凝集体からなる球状窒化ホウ素粉末を生成するために有効な条件で噴霧乾燥する、球状窒化ホウ素粉末の製造方法。
22.さらに、熱処理及び表面機能化処理の少なくとも1つによって、球状窒化ホウ素粉末の表面処理を行う、請求項21に記載の方法。
23.さらに、球状窒化ホウ素粉末を焼結することからなる、請求項21に記載の方法。
24.前記焼結は約1800℃から約2400℃の温度で行われる、請求項23に記載の方法。」
「[0023] 本発明では、不規則な非球状窒化ホウ素粒子の球状凝集体がバインダーによって互いに結合され、引き続いて噴霧乾燥される。このプロセスは、約0.5wt%から約10wt%のバインダーと約20wt%から約70wt%の六方晶窒化ホウ素粉末を、六方晶窒化ホウ素スラリーを生成するために有効な条件下に媒体中で混合することを含む。このスラリーは噴霧乾燥され、球状の窒化ホウ素凝集粒子を形成する。一実施形態では、噴霧乾燥された材料は、機械的および物理的特性を改善するために焼結される。
[0024] 非球状BN出発原料:一実施形態において、出発原料は、不規則な非球状六方晶窒化ホウ素(hBN)からなる。第2の実施形態において、出発原料は、乱層構造を有する不規則な非球状BNからなる。一実施形態において、出発原料は約2μmから約20μmの平均粒径の板状体を有するhBN粒子からなる。第2の実施形態において、約2μmから12μmの間であり、第3の実施形態において、約4μmと約10μmとの間である。一実施形態において、出発原料の非球状粒子の初期寸法は、形成される最終的な球状凝集体のための所望の粒度分布を変化させる/得るために制御される。
[0025]一実施形態において、出発原料は、約0wt%から約1.0wt%の酸素含有量である。第2の実施形態において、約0wt%から約0.5wt%の酸素含有量である。低酸素含有量のhBN出発原料を使用すると、より高いタップ密度の窒化ホウ素粉末が製造される。 ・・・ 」
「[0041] 球状BN凝集体の製造方法:本発明に係る方法の一実施形態にお
いて、バインダー及び溶媒が最初に混合される。それから、BN粉末及び任意の添加剤は、ゆっくりと添加されてスラリーが形成される。よく混合するために、スラリーは、良好なせん断特性を持つ粘性スラリー用の高せん断ミル又はミキサーを用いて処理してもよい。一実施形態において、BNと焼結助剤を均一に混合するために、焼結助剤などの添加剤は、出発原料であるBN粉末といっしょに添加することに代えて、後からスラリーに添加してもよい。
[0042] 一実施形態において、BN及びバインダー材料の量は、室温下で約5000cps未満の粘度となるように調整する。他の実施形態において、スラリーの粘度は3000cps未満である。第3の実施形態において、スラリーの粘度は2000cps未満である。第3の実施形態において、スラリーの粘度は1000cps未満である。
[0043] この実施形態の次の段階では、本発明の球状BN凝集体を製造するために、BNスラリーを噴霧乾燥する。噴霧乾燥は、当該技術分野において周知技術である。 ・・・
・・・
[0045] 従来技術により製造されたBN粉末に典型的に行われる一実施形態において、熱拡散率、純度、及びBNの結晶構造を向上させるために、BN粉末は少なくとも1600℃以上で約1~12時間さらに焼結させる。一実施形態において、焼結は少なくとも1800℃で行う。第2の実施形態において、焼結は約2000℃で行う。第3の実施形態において、焼結は少なくとも 1800℃で約2~約3時間行う。第4の実施形態において、焼結は1800℃~2400℃の範囲で行い、第5の実施形態において焼結は2000℃~2200℃で行う。焼結に好適な雰囲気は、不活性ガス、窒素、及びアルゴンである。一実施形態において、焼結は真空で行う。さらに他の実施形態、焼結は少なくとも1気圧の条件下で行う。 」
「[0055] 本願発明の製品:一実施形態において、窒化ホウ素板状体の球状凝集体は、約1μm~約500μmの平均凝集体サイズ又は粒径である。他の実施形態において、多数のBN凝集体の平均粒径は約3μm~約150μmである。」
「[0083] 実施例において、従来品の非球状BN粉末を、水に原料固形分として19~50wt%を含むスラリーを調製した。いくつかの実施例では、Celanese社からCevol21-205として市販されているポリビニルアルコール(PVA)と 、Chattem Chemicals社から市販されている酢酸アルミニウムとを、バインダーとして使用した。いくつかの実施例では 、球状BN凝集体 を1900℃又は1950℃で熱処理した。
[0084] 粘度測定のために 、粉末とシリコーン流体(Dow Corning 200 fluid-100 CST)とを、FlackTekスピードミキサーを用いて約3500rpmで約20秒間混合した。粘度(poise)は、Advanced Rheometer 2000(TA Instruments)を用いて測定した。 熱伝導率の測定のために、60wt%(40vol%)の粉末と、35wt%のシリコーン樹脂Sylgard 184と、3.5wt%の硬化剤Sylgard 184とを、FlackTekスピードミキサー内で約3500rpmで混合した。混合物を3"×6 " の長方形の型に入れ、125℃で45分間加圧して、厚さ0.5~1.5mmの成形体を成形した。バルク熱伝導率(W/mK)を熱定数分析器Hot Disk(R)で測定した。Breakdownとは、Microtrac(R)分析器を用いた平均粒子径(D50)の変化の指標である。超音波処理しないで測定したD50と、1分間超音波処理した後で測定したD50とを比較する。これらの2つのD50の差が、粒子の%breakdownを示している。
[0085] 表6Aは、スラリーに用いた2種類のBN粉末の、表面積(SA)、酸素及び炭素の含有量 、可溶性ホウ素塩の含有量 、及び粒子径分布の物性値を示している。ここでD50は平均粒径、D10及びD90はそれぞれ10%及び90%の粒径分布の値を示している。
[図:0001411220000003.jpg]
[0086] 最初に、高強度ミキサーを用いて、脱イオン水中でポリビニルアルコール (PVA)又は酢酸アルミニウムと混合してスラリーを調製した。次に、BN1粉末80%とBN2粉末20%との混合物をスラリーに添加し、さらに混合した。このスラリーを安定化した後、噴霧乾燥を開始した。スラリー調製後は、撹拌を続けた。その後、スラリーは嬬動ポンプで噴霧乾燥機の原料セクションに輸送した。ファンを起動して、入口温度285℃で噴霧乾燥した。出口温度は約110℃だった。
[0087] 表6Bは、噴霧乾燥した実施例1~4のスラリーの特性を示している。
[図:0001411220000004.jpg]
[0088] 実施例1では、窒化ホウ素(BN)を水に分散した混合物を噴霧乾燥することで、球状BN凝集体が得られた。実施例1における球状BN凝集体の物性値を、表6Cに示した。
[0089] 実施例2において、実施例1の球状BN凝集体を1950℃で20時間熱処理した。サンプルは解砕し、100メッシュスクリーンで分級した。熱処理した球状BN凝集体の物性値を、実施例2として表6Cに示した。
[0090] 実施例3は、酢酸アルミニウム及び窒化ホウ素 を水に分散した混合物を噴霧乾燥して調製することで、球状BN/アルミナ複合体が得られた。噴霧乾燥した実施例3のBN凝集体の物性値を、表6Cに示した。
[0091] 実施例4において、実施例3の球状BN凝集体を1950℃で20時間熱処理した。熱処理後のサンプルを解砕し、100メッシュスクリーンにより分級した。熱処理した球状BN凝集体の物性値を、実施例4として表6Cに示した。
[図:0001411220000005.jpg]
」
(イ)甲2の記載事項
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化ホウ素凝集粒子であって、比表面積が10m2/g以上、全細孔容積が2.15cm3/g以下、且つ、該窒化ホウ素凝集粒子の表面が、平均粒子径0.05μm以上1μm以下の窒化ホウ素一次粒子から構成される、窒化ホウ素凝集粒子。
【請求項2】
球状の窒化ホウ素凝集粒子であって、該窒化ホウ素凝集粒子表面において、平均粒子径が1μm以下の窒化ホウ素一次粒子が放射状に配置されている窒化ホウ素凝集粒子。
・・・
【請求項5】
原料窒化ホウ素粉末を含有するスラリーを用いて造粒する工程を有する窒化ホウ素凝集粒子の製造方法であって、
前記スラリー中の原料窒化ホウ素粉末の体積基準の平均粒子径D50が、造粒された造粒粒子の体積基準の平均粒子径D50の1/5以下である、窒化ホウ素凝集粒子の製造方法。
【請求項6】
前記原料窒化ホウ素粉末の全酸素含有量が、1重量%以上10重量%以下である、請求項5に記載の窒化ホウ素凝集粒子の製造方法。
・・・
【請求項8】
前記原料窒化ホウ素粉末を含有するスラリーをスプレードライ法により球形に造粒した後、得られた造粒粒子を非酸化性ガス雰囲気下で加熱処理する、請求項5ないし7のいずれか1項に記載の窒化ホウ素凝集粒子の製造方法。
・・・
【請求項15】
120℃における溶融粘度が100Pa・s以下である樹脂(A)と、002面の結晶子径(Lc)が450[Å]以上であり、100面の結晶子径(La)が500[Å]以上であり、前記結晶子径(Lc)と前記結晶子径(La)が下記式(i)を満たし、酸素含有量が0.30重量%以下である窒化ホウ素よりなるフィラー(B)とを含有する組成物。
0.70≦Lc/La …(i)」
「【0014】
しかしながら、h-BNは、板状の粒子形状であり、その板面方向(C面方向あるいは(002)面方向)には高い熱伝導性を示すものの(通常、熱伝導率として250W/mK程度)、板厚方向(C軸方向)には低い熱伝導性(通常、熱伝導率として2~3W/mK程度)しか示さないため、これを樹脂に配合して組成物の塗布液として基板表面に塗布して塗膜を形成し、これを加熱してBステージ化し、更に仮接合及び本接合を行って三次元集積回路を製造すると、製造された三次元集積回路において、板状のBN粒子が塗膜の膜面方向に配向することとなり、形成された層間充填層は、層面方向には熱伝導率に優れるものの、厚み方向には低い熱伝導率しか示さないという課題があった。」
「【0022】
本発明は、特定の窒化ホウ素の粒子(以下、BN粒子と記すことがある。)を提供するものであって、特定の結晶構造を有する窒化ホウ素の粒子(以下、特定結晶BN粒子と記すことがある。)、表面に特定の平均粒子径を有する窒化ホウ素一次粒子を有する窒化ホウ素凝集粒子(以下、凝集BN粒子と記すことがある。)を提供するものであって、熱伝導の等方性、耐崩壊性、樹脂との混練性に優れたBN粒子を提供することを目的とする。また、このBN粒子を用いて、厚み方向の熱伝導性にも優れた層間充填層を形成することができる三次元集積回路用の組成物とその塗布液(組成物塗布液と称することもある。)、該塗布液を用いた三次元集積回路用積層体及び三次元集積回路の製造方法を提供することを目的とする。」
「【0035】
本発明の特定結晶BN粒子は、002面の結晶子サイズ(Lc:六角網面積層方向)が450[Å]以上である。このLcが450[Å]以上であることで、結晶子界面が十分に少なくなり、高い熱電導性を得られる。このLcは、熱伝導性をさらに高める観点から、470[Å]以上であることがより好ましく、500[Å]以上であることが特に好ましい。」
「【0056】
h-BN結晶成長の観点からは、原料となるh-BN等の原料BN粉末中に酸素がある程度存在することが好ましく、本発明の凝集BN粒子では、原料BN粉末として全酸素含有量が1重量%以上10重量%以下であるものを用いることが好ましく、より好ましくは全酸素含有量が3重量%以上10重量%以下、さらに好ましくは全酸素含有量が3重量%以上9重量%以下である。
・・・
【0058】
原料BN粉末の全酸素含有量が上記下限未満の場合、原料BN自体の純度、結晶性が良いために、C面の結晶成長が十分になされず、凝集BN粒子表面において、BN一次粒子を放射状に配置することができず、逆に上記上限を超えると、加熱処理後も酸素含有量が高い状態となって、組成物のフィラー(B)として用いた際に高熱伝導化が図れなくなるため好ましくない。」
「【0076】
加熱処理温度は通常1300℃~2100℃であるが、好ましくは1300℃~2000℃、更に好ましくは1400℃~2000℃である。加熱処理温度が下記下限未満では、h-BNの結晶化が不十分となり、結晶化が未
発達のアモルファス部分が残り、熱伝導性フィラーとした場合の熱伝導率改善効果が小さくなる。加熱処理温度が、上記上限を超えると、添加したバインダー成分が溶融・分解して凝集BN粒子同士が凝集し、本来の形状を保てなくなったり、BNの分解などが生じてしまうおそれがある。
・・・
【0079】
例えば、窒素ガス雰囲気下で加熱処理を行う場合は、2000℃前後で5時間程度、アルゴンガス雰囲気の場合は、2000℃前後で5~15時間程度の条件とすることで、BN結晶の一次粒子を平均1μm以下とし、放射状に成長させることができる。
加熱処理を施す焼成炉は、マッフル炉、管状炉、雰囲気炉などのバッチ式炉やロータリーキルン、スクリューコンベヤ炉、トンネル炉、ベルト炉、プッシャー炉、竪型連続炉などの連続炉が挙げられ、目的に応じて使い分けられる。」
「【0086】
さらに、本発明の凝集BNをフィラー(B)として組成物に配合した場合、同一の充填量で比較すると、形成される層間充填層の厚み方向の熱伝導率が劇的に改善できる。これは、本発明のh-BNでは、球表面の微細なh-BN一次粒子の高熱伝導面(C面または002面)がa軸同士での接触を介して、層間充填層中で有効な熱伝導パスを形成しやすいことによると推察している。このような結晶成長は、原料h-BN粉末自体の全酸素含有量が比較的高く、結晶性の低い状態から再結晶化させることによって得られたものであり、全酸素含有量が低く、結晶性の良いh-BN原料を用いた場合には、放射状のh-BN結晶成長はほとんど起こらない。」
「【0091】
なお、本発明の凝集BN粒子の体積基準の平均粒子径D50については特に制限はないが、上記体積基準の最大粒子径の値と同様な理由から、1~20μm、特に1~10μmであることが好ましい。
特にフィラー(B)としての凝集BN粒子は、平均粒子径D50が0.1~5μm、かつ、最大粒子径が10μm以下であることが好ましく、より好ましくは平均粒子径D50が0.3~4.5μm、かつ、最大粒子径が9.5μm以下であり、更に好ましくは平均粒子径D50が0.5~4μm、かつ、最大粒子径が9μm以下である。」
「【0242】
[実施例1]
[実施例1-1、実施例1-2及び比較例1-1]
(BNスラリーの調製及び粉砕)
<BNスラリーA>
以下の配合割合でBNスラリーAを調製した。
(BNスラリーAの配合)
h-BN粉末(日新リフラテック社製「ABN」、全酸素含有量4重量%):500g、
純水:4250g、
バインダー(日産化学社製「アルミナゾル520」、固形分濃度20重量%):250g、
界面活性剤(花王社製アニオン系界面活性剤「デモールNL」):50g。
【0243】
得られたBNスラリーをよく混合し、フロイントターボ社製の「OBミル」に投入し、ローター回転数2000rpm、循環送液量0.5L/minで160分間循環粉砕を行った。粉砕には0.5mmφのジルコニア製ビーズを使用した。
BNスラリーAの調製に用いた原料h-BN粉末の全酸素含有量、全細孔容積、及び比表面積と、得られたBNスラリーA中のh-BNの分散粒子のD50は、表1-Aに示す通りである。
【0244】
<BNスラリーB>
以下の配合割合でスラリーBを調製した。
(BNスラリーB配合)
h-BN粉末(MARUKA社製「AP170S」、全酸素含有量7.5重量%):500g、
純水:4250g、
バインダー(日産化学社製「アルミナゾル520」、固形分濃度20重量%):250g、
界面活性剤(花王社製のアニオン系界面活性剤「デモールNL」):50g。
【0245】
得られたBNスラリーをよく混合し、フロイントターボ社製の「OBミル」に投入し、ローター回転数2000rpm、循環送液量0.5L/minで120分間循環粉砕を行った。粉砕には1.0mmφのジルコニア製ビーズを使用した。
BNスラリーBの調製に用いた原料h-BN粉末の全酸素含有量、全細孔容積、及び比表面積と、得られたスラリーB中のh-BNの分散粒子のD50は、表1-Aに示す通りである。」
「【0248】
[球状化]
BNスラリーA~Cを、藤崎電機社製のスプレードライヤー「MDL-0
50M」を用い、造粒粒子径D50として10μmを目標に造粒条件を設定し、それぞれ噴霧乾燥する
ことにより球状化した。何れのスラリーも送液量30ml/min(15ml/min×2)、圧空圧力0.7MPa、空気流量92L/min(46L/min×2)にて噴霧し、ノズル噴射後の乾燥温度は200℃に設定した。
【0249】
各スラリーから得られた造粒粒子のD50は、表1-Aに示す通りであった。
[加熱処理]
上記球状化後の各BN造粒粒子を、雰囲気炉を用いて2000℃で5時間、窒素ガス流通下に加熱処理した。
加熱処理時の昇温及び降温は、以下のように行った。
【0250】
室温から400℃まで真空引きをしながら20分で上げ、真空引きをしたまま400℃で30分保持した。真空度は、10-1~10-2Paとした。その後、2.0L/分の窒素ガスを導入して復圧し、そのまま窒素ガスを導入しながら、1500℃まで100℃/時で温度を上げ、更に1500~2000℃まで50℃/時で温度を上げた。2000℃到達後、5時間保持した。その後、7℃/分で室温まで冷却した。
【0251】
[分級]
上記加熱処理後の各BN造粒粒子を、日清エンジニアリング社製の旋回気流式分級機「エアロファインクラシファイアー(AC-20)」を用いて分級した。
以下、BNスラリーAより得られた凝集BN粒子を「BN-A」と記載し、BNスラリーBより得られた凝集BN粒子を「BN-B」と記載し、BNスラリーCより得られた凝集BN粒子を「BN-C」と記載する。
【0252】
なお、BN-Aは実施例1-1の凝集BN粒子であり、BN-Bは実施例1-2の凝集BN粒子であり、BN-Cは比較例1-1の凝集BN粒子に該当する。
各凝集BN粒子のD50、最大粒子径、全細孔容積及びバルク密度の測定結果を表1-Bに示す。
[凝集BN粒子の結晶性及び形態観察]
原料h-BN粉末による結晶成長方向の違いを確認するために、全酸素含有量が4重量%のh-BN粉末を使用して作製したBN-A、全酸素含有量が7.5重量%のh-BN粉末を使用して作製したBN-B、及び全酸素含有量が0.4重量%のh-BN粉末を使用して作製したBN-Cについて、加熱処理前後での結晶性の確認(XRD)、及びSEMによる形態変化の観察を行った。
【0253】
その結果、全酸素含有量が1重量%以上のh-BN粉末を原料としたBN-A、及びBN-Bでは、凝集BN粒子の表面でh-BNが放射状、即ち、BN結晶の一次粒子がa軸を外に向けるように法線方向に結晶成長し、かつ、平均1μm以下の微細なBN一次粒子の結晶が形成されていることがわかった。
一方、全酸素含有量が1重量%未満であるh-BN粉末を原料としたBN-Cは、結晶成長方向が円周方向、即ち、h-BNのC面を外に向けるようになることがわかった。
【0254】
・・・
また、上記の結果を表1-1Aおよび表1-1Bにまとめて示す。
【0255】
【表1】
[図:0001411220000006.jpg]
」
(ウ)甲3の記載事項
「(イ)カードハウス構造
対応:反論
BN凝集粒子がカードハウス構造であることは、本件発明の課題を解決する上で必須の事項ではない。
その理由は;
・カードハウス構造は 一定圧力による成型によっても凝集粒子が崩壊しにくい例である。カードハウス構造であっても、本件発明の課題を解決できないものもある(比較例1、2、7参照)
・一定圧力による成型によって凝集粒子が崩壊しにくいものは、カードハウス構造には限られず、圧壊強度が高い粒子であればよい。圧壊強度の高い粒子は、カードハウス構造を有する粒子でなくとも、技術常識を示す文献1~5(後日乙号証として提出する予定です。)などから、一次粒子間の摩擦を増加させる、一次粒子の回転を拘束するなど一次粒子形態・接合を制御する、BN凝集粒子に関しては特定の凝集構造ではなくても酸化ホウ素に加え希土類、カルシウム等アルカリ土類酸化物を助剤として焼結を促進する、ないしは、原料、助剤を選択してC軸方向に等軸成長させた粒子とする、BNの一次粒子と同様の板状である黒鉛に関しては球形化凝集粒子表面の特定の物質で被覆して焼成する、などにより製造できる。このような圧壊強度が高い凝集粒子であれば、必ずしもカードハウス構造である必要はない。
・さらに、BNの凝集粒子の強度を改善するためには、前述の通り焼結助剤が有効であり、焼結助剤の例は凝集粒子の例だけに留まらずBNの無加圧焼結体の事例をも参照することができる。BNの無加圧焼結において焼結助剤などの添加が有効であることは当時の技術常識(文献6~9参照)である。
・以上から、本件発明1のピーク強度面積比及び平均結晶子径を満たすBN凝集粒子を製造するためには、BN凝集粒子がカードハウス構造であることが必須の要件ではなく、また、本件発明1のピーク強度面積比及び平均結晶子径を満たす、カードハウス構造を有さないBN凝集粒子を製造することに、過大な試行錯誤を強いるものではない。」(「異議2019-700782の取消理由通知に対する意見骨子」1、2ページ)
(エ)甲4の記載事項
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径20~60μm、下記で定義された配向性指数が2~20の六方晶窒化ホウ素の凝集粉末と平均粒子径0.1~1μmの酸化アルミニウム粉末の熱伝導性フィラー60~73体積%、シリコーン樹脂27~40体積%を含有してなる樹脂組成物。
配向性指数は、粉末X線回折法による(002)面の回折線の強度I002と(100)面の回折線の強度I100との比(I002/I100)である。
・・・
【請求項3】
請求項1または2に記載の樹脂組成物を用いた放熱部材。」
「【0008】
・・・
六方晶窒化ホウ素は、鱗片状又は多角板状の形態が一般的であり、六方晶窒化ホウ素の凝集粉末とは、その一次粒子を複合集合させた粉末である。六方晶窒化ホウ素の凝集状態は、粉末X線回折法による配向性指数で評価することができる。配向性指数とは、粉末X線回折法による(002)面の回折線の強度I002と(100)面の回折線の強度I100との比(I002/I100)である。六方晶窒化ホウ素粉末は一般的にI002≧I100で
あるため、配向性指数は1以上となる。配向性指数が小さくなるほど無配向性を示し、配向性指数が1のとき完全無配向となる。配向性が大きくなるにつれて、配向性指数は大きくなる。本願発明の六方晶窒化ホウ素の凝集粉末の配向性指数は2~20であり、好ましくは2~10である。配向性指数が20より大きくなると、熱伝導性が減少する傾向にある。
六方晶窒化ホウ素の凝集粉末の配向性指数は、六方晶窒化ホウ素の一次粒子を結合剤もしくは、熱処理を行うことによって、調整することができる。」
「【0023】
配向性指数は、六方晶窒化ホウ素の凝集粉末を成形し試料板を用いて、X線回折装置(理学電機社製「Geiger Flex 2013型」)にて2θ=30°~25°の範囲で測定し、2θ=27~28°付近((002)面)の回折線の強度I002、2θ=41°付近((100)面)の回折線の強度I100を求め、(002)面の回折線の強度I002と(100)面の回折線の強度I100との比である(I002/I100)とした。
配向性指数=(I002/I100)」
(オ)甲5の記載事項
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
002面の結晶子径(Lc)が450[Å]以上であり、
100面の結晶子径(La)が500[Å]以上であり、
前記結晶子径(Lc)と前記結晶子径(La)が以下の関係式(1)を満たし、
0.70≦Lc/La (1)
酸素含有量が0.30重量%以下である六方晶窒化ホウ素粉末。」
「【0014】
本発明の六方晶窒化ホウ素粉末は、002面の結晶子サイズ(Lc:六角網面積層方向)が450[Å]以上である。このLcが450[Å]以上であることで、結晶子界面が十分に少なくなり、高い熱電導性を得られる。このLcは、熱伝導性をさらに高める観点から、470[Å]以上であることがより好ましく、500[Å]以上であることが特に好ましい。
一方、工業的な生産性の観点から、このLcは2000[Å]以下であることが好ましく、1000[Å]以下であることがより好ましい。
このLcは、本発明の六方晶窒化ホウ素粉末の製造時において、例えばLcが450Å未満の六方晶窒化ホウ素を非酸化性ガス中、1800℃~2300℃の高温で熱処理を行うことによって調製することができ、Lcを大きくするには、前記原料の六方晶窒化ホウ素の酸素含有量が1.0重量%未満のものを使用する方法を取ることができる。」
(カ)甲6の記載事項
国際公開言語が外国語であるため、対応する公表公報の摘記部分のみ示した。
「【0017】
ここまでに記載した窒化ホウ素顆粒の製造方法には、達成可能な機械安定性が不十分なことがあるという共通点がある。そのため、ポリマー(例えば、熱可塑性物質、熱硬化性樹脂及びシリコーンなど)用の充填剤として使用すると、加工中に生じる高せん断力を受けて凝集体の部分分解或いは完全分解が生じる可能性がある。つまり、凝集体が、それを構成する窒化ホウ素一次粒子、すなわち窒化ホウ素板状晶にそれぞれ分解する可能性がある。これにより、無傷の凝集体が提供する熱伝導路が阻害される。最後に供給された窒化ホウ素充填剤粒子とポリマーとの間で新たな非常に多くの熱伝達が生じる。熱伝導回数が増えると、化合物内での熱伝導率が低下する。その上、凝集体が分解すると充填剤の表面積は増加し、その結果、化合物のレオロジー特性が、化合物中で生成され得る充填剤含有量が低下する程度まで悪化し、更には達成可能な熱伝導性も悪化する。」
「【0018】
したがって、本発明の目的は、機械安定性に優れ、特にポリマー用充填剤として用いられる窒化ホウ素凝集体を提供すると同時に、先行技術における不利益を克服することである。」
「【0028】
驚くことに、本発明の方法を用いて機械安定性に優れた凝集体を生成できることが分かった。凝集体の機械安定性は重要である。というのも、凝集体は(できれば分解せずに)例えば射出成型、鋳造又は圧縮により充填、輸送、投与、混合及び成形することに耐え、こうして、更には窒化ホウ素凝集体をポリマー-窒化ホウ素混合物及びポリマー-窒化ホウ素複合材料へと加工することにも耐える必要があるためである。混合中に凝集体が分解すれば、ポリマー-窒化ホウ素混合物のレオロジー特性が悪化して、ポリマー-窒化ホウ素複合材料の熱伝導性が低下するという危険がある。」
(キ)甲7の記載事項
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
BNの一次粒子が凝集した二次粒子からなるBN球状粒子であって、該BN球状粒子の表面に凹みを有する粒子の個数割合が50%以上で、かつ圧縮強さが0.1~100MPaであることを特徴とする凹部付きBN球状焼結粒子。
【請求項2】
平均粒径が1~100μmであることを特徴とする請求項1に記載の凹部付きBN球状焼結粒子。
【請求項3】
炭素含有量が0.1質量%以下、比表面積が1~20m2/gであることを特徴とする請求項1または2に記載の凹部付きBN球状焼結粒子。」
(ク)甲8の記載事項
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリカーボネート系樹脂100重量部に対し、(B)平均重合度2~15の芳香族ポリカーボネートオリゴマー1重量部以上40重量部以下、(C)黒鉛化されてなる炭素繊維であって、長さ方向の熱伝導率が100W/m・K以上、かつ繊維平均径5~20μmの炭素繊維5重量部以上40重量部未満、及び(D)平均粒子径が1~500μmの六方晶鱗片状窒化ホウ素5重量部以上100重量部以下含有する組成物であって、
該組成物を樹脂温度(パージ樹脂の実測温度)300℃、金型温度110℃、射出圧力147MPaの条件で射出成形して得た、縦100mm、横100mm、厚み3mmの成形品について
・・・
ことを特徴とするポリカーボネート系樹脂組成物。」
イ 申立理由1-1(甲1を主たる証拠とした新規性欠如)について
(ア)甲1に記載された発明(甲1発明)
上記ア(ア)の甲1の特許請求の範囲の記載によると、甲1には、窒化ホウ素板状体の球状凝集体からなる球状窒化ホウ素粉末、及び、当該球状窒化ホウ素粉末が、六方晶窒化ホウ素スラリーを噴霧乾燥し、約1800~2400℃で焼結することにより製造されることが記載されている。また、[0024][0025]によると、出発原料である六方晶窒化ホウ素の酸素含有量は、約0~1.0wt%であり、[0042]によると、スラリー粘度は3000cps未満であることが記載されている。
これらのことから、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「窒化ホウ素板状体の球状凝集体からなる球状窒化ホウ素粉末であって、
出発原料である六方晶窒化ホウ素の酸素含有量は、約0~1.0wt%であり、3000cps未満のスラリー粘度の六方晶窒化ホウ素スラリーを噴霧乾燥し、約1800~2400℃で焼結することにより製造される、球状窒化ホウ素粉末。」
(イ)本件発明1について
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「窒化ホウ素板状体」は、本件発明1の「窒化ホウ素一次粒子
」(「BN一次粒子」)に相当し、甲1発明の「球状窒化ホウ素粉末」は、本件発明1の「窒化ホウ素凝集粒子」(「BN凝集粒子」)に相当する。
そうすると、本件発明1は「10mmφの粉末錠剤成形機で2.54ton/cm2の成型圧力で成型して得られたペレット状の試料を粉末X線回折測定して得られる、BN一次粒子の(100)面と(004)面のピーク面積強度比((100)/(004))が0.40以上1.2以下」であること、及び「BN凝集粒子を0.2mm深さのガラス試料板に表面が平滑になるように充填し、粉末X線回折測定して得られる、BN一次粒子の(002)面ピークから求めたBN一次粒子の平均結晶子径が375Å以上415Å以下」であることが特定されているのに対して、甲1発明は、これらの値が不明である点で相違している。
当該相違点について検討すると、甲1の記載を子細にみても、甲1発明に係る球状窒化ホウ素粉末が、本件発明1の「BN一次粒子のピーク面積強度比」及び「BN一次粒子の平均結晶子径」を充足するという根拠が見出せないから、当該相違点は、実質的な相違点である。
したがって、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえない。
なお、異議申立人1は、本件発明1に係るBN凝集粒子は、本件明細書によると、BNスラリーの粘度、加熱処理温度、原料窒化ホウ素粉末中の酸素濃度を所定範囲に設定する(本件明細書【0018】)ことにより得られるものと考えられるところ、甲1に記載された球状窒化ホウ素粉末の製造工程において、原料である窒化ホウ素の酸素濃度(表6A、[0086])、造粒ステップにおけるスラリーの粘度([0042])及び加熱温度(請求項24、[0045])は、本件発明1に係るBN凝集粒子の製造条件と一致するから、甲1に記載された球状窒化ホウ素粉末は、上記相違点に係る「BN一次粒子のピーク面積強度比」及び「BN一次粒子の平均結晶子径」の値を充足すると主張している(異議申立人1による特許異議申立書(以下、「申立書1」という。):20~23ページ)。
しかし、本件発明1に係るBN凝集粒子の温度範囲などの製造条件は、単にその範囲内に収まればよいというものではなく、これらの製造条件を所定範囲内で所望のBN凝集粒子が得られるように適切に設定して(例えば、本件明細書の実施例1では、原料h-BN粉末の酸素濃度:7.5重量%、スラリーの粘度:810mPa・s、2000℃・5時間の加熱処理)、本件発明1に係るBN凝集粒子を製造していることは明らかであって、甲1に記載の球状窒化ホウ素粉末の実際の製造工程が、当該実施例と一致するものでもないから、甲1発明に係る球状窒化ホウ素粉末が、本件発明1の「BN一次粒子のピーク面積強度比」及び「BN一次粒子の平均結晶子径」の値を充足するとはいえない。
したがって、異議申立人1の主張は採用できない。
(ウ)本件発明2~8について
本件発明2~8は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであって、本件発明1の特定事項をすべて含むものであるから、本件発明1と同様に、本件発明2~8は、甲1に記載された発明であるとはいえない。
(エ)小括
以上のとおりであるから、申立理由1-1は理由がない。
ウ 申立理由1-2(甲2を主たる証拠とした新規性欠如)について
(ア)甲2に記載された発明(甲2発明)
上記ア(イ)の甲2の特許請求の範囲の記載によると、甲2には、窒化ホウ素一次粒子が凝集した窒化ホウ素凝集粒子について記載されている。また、全酸素含有量が1重量%以上10重量%以下である原料窒化ホウ素粉末を含有するスラリーを、スプレードライ法により球形に造粒した後、1300~2100℃で加熱処理することにより窒化ホウ素凝集粒子を製造することが記載されている(請求項5、6、8、【0076】)。
これらのことから、甲2には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「窒化ホウ素一次粒子が凝集した窒化ホウ素凝集粒子であって、
全酸素含有量が1重量%以上10重量%以下である原料窒化ホウ素粉末を含有するスラリーを、スプレードライ法により球形に造粒した後、1300~2100℃で加熱処理することにより製造される、窒化ホウ素凝集粒子。」
(イ)本件発明1について
本件発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「窒化ホウ素一次粒子」は、本件発明1の「窒化ホウ素一次粒子」(「BN一次粒子」)に相当し、甲2発明の「窒化ホウ素凝集粒子」は、本件発明1の「窒化ホウ素凝集粒子」(「BN凝集粒子」)に相当する。
そうすると、本件発明1は「BN一次粒子のピーク面積強度比」が「0.40以上1.2以下」であること、及び「BN一次粒子の平均結晶子径」が「375Å以上415Å以下」であることが特定されているのに対して、甲2発明は、これらの値が不明である点で相違している。
当該相違点について検討すると、甲2の記載を子細にみても、甲2発明に係る窒化ホウ素粉末が、上記相違点に係る上記「BN一次粒子のピーク面積強度比」及び「BN一次粒子の平均結晶子径」が本件発明1と同じ範囲の値であるという根拠は見出せないから、当該相違点は実質的な相違点である。
したがって、本件発明1は、甲2に記載された発明であるとはいえない。
なお、異議申立人1は、甲1と同様に、甲2に記載された窒化ホウ素凝集粒子の製造工程は、原料酸素濃度、焼成温度の範囲が、本願発明のものと共
通し、しかも、甲2の実施例は、造粒可能なBNスラリーを調製し、球状化し、窒素雰囲気下で2000℃、5時間焼成する点で、本件発明の実施例と一致することなどを理由として、甲2に記載された窒化ホウ素凝集粒子は、上記相違点に係る「BN一次粒子のピーク面積強度比」及び「BN一次粒子の平均結晶子径」の値を充足すると主張している(申立書1:34~37ページ)。
しかし、甲2の事情は甲1と同様であって、甲2にあっては、本件明細書の実施例1、2と焼成条件は一部一致するものの、原料の物性、スラリーの調製、及び造粒条件は一致せず、また、製造された凝集粒子の粒子径等の物性値も共通するものではないから(本件明細書:表1、甲2:【0255】 表1)、甲2発明に係る窒化ホウ素凝集粒子が、本件発明1の「BN一次粒子のピーク面積強度比」及び「BN一次粒子の平均結晶子径」の値を充足するとはいえない。
したがって、異議申立人1の主張は採用できない。
(ウ)本件発明2~8について
本件発明2~8は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであって、本件発明1の特定事項をすべて含むものであるから、本件発明1と同様に、本件発明2~8は、甲2に記載された発明であるとはいえない。
(エ)小括
以上のとおりであるから、申立理由1-2は理由がない。
エ 申立理由1-3(甲1を主たる証拠とした進歩性欠如)の検討
(ア)本件発明1について
本件発明1と甲1発明との相違点は、上記イ(イ)に記載したとおりである。
本件発明1に係る「BN一次粒子のピーク面積強度比」は、本件明細書の【0038】、【0039】を参照すると、所定圧力下であっても一定以上の一次粒子配向が保持される状態を示す指標であるといえる。
甲3にも同様の記載があるが、甲3は、本件特許の優先日後に公開されたものであり、その内容が当該優先日時点の技術常識を示すものでもないから、甲3に記載された内容を進歩性の判断に採用することはできない。
また、甲2には、熱伝導の等方性、耐崩壊性等に優れたBN粒子を提供することを目的とするものであるが、所定圧力下での「BN一次粒子のピーク面積強度比」を制御することについては、記載も示唆もされていない。
したがって、本件発明1は、甲1発明及び甲2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
上記相違点について、異議申立人1は、甲2、3の記載から、本件発明1に係る「BN一次粒子のピーク面積強度比」は、単なるBN凝集粒子の崩壊し難さを示す指標であって、BN凝集粒子を崩壊し難くすることは公知の課題であり、また、甲2に記載さているように、結晶子サイズが大きくする方法及びこれにより高い熱伝導性を得られることは公知であることを論拠として、本件発明1に係る「BN一次粒子のピーク面積強度比」及び「BN一次粒子の平均結晶子径」の値を設定することは当業者が容易になし得ると主張している(申立書1:40~50ページ)。
しかし、甲2に記載した結晶子サイズ(請求項15、【0035】)は、本件発明1の「BN一次粒子の平均結晶子径」の範囲外の値であるし、甲2を子細にみても、本件発明1に係る「BN一次粒子のピーク面積強度比」及び「BN一次粒子の平均結晶子径」の範囲に制御することは、その具体的手段について何ら記載も示唆もされておらず、当業者が容易になし得たとはいえない。
また、本件発明1の「BN一次粒子のピーク面積強度比」の制御手段が不明であることも主張しているが、実施例の欄をみれば、スラリー組成やその粘度、及び焼成条件(温度、時間)を設定することにより調製可能であることは明らかである。
したがって、異議申立人1の上記主張は採用できない。
(イ)本件発明2~8について
本件発明2~8は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであって、本件発明1の特定事項をすべて含むものであるから、本件発明1と同様に、本件発明2~8は、甲1発明及び甲2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(ウ)小括
以上のとおりであるから、申立理由1-3は理由がない。
オ 申立理由1-4(甲4を主たる証拠とした進歩性欠如)について
(ア)甲4に記載された発明(甲4発明)
上記ア(エ)の甲4の特許請求の範囲及び【0008】の記載によると、甲4には、六方晶窒化ホウ素の一次粒子が凝集した、配向性指数が2~20の六方晶窒化ホウ素凝集粉末について記載されている。そして、上記配向性指数は、粉末X線回折法による(002)面の回折線の強度I002と(100)面の回折線の強度I100との比(I002/I100)である。
これらのことから、甲4には、次の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。
「六方晶窒化ホウ素の一次粒子が凝集した六方晶窒化ホウ素の凝集粉末であって、粉末X線回折法による(002)面の回折線の強度I002と(100)面の回折線の強度I100との比(I002/I100)である配向性指数が2~20である、六方晶窒化ホウ素の凝集粉末。」
(イ)本件発明1について
本件発明1と甲4発明とを対比する。
甲4発明の「六方晶窒化ホウ素の一次粒子」は、本件発明1の「窒化ホウ素一次粒子」(「BN一次粒子」)に相当し、甲4発明の「六方晶窒化ホウ素の凝集粉末」は、本件発明1の「窒化ホウ素凝集粒子」(「BN凝集粒子」)に相当する。
そうすると、本件発明1は「BN一次粒子のピーク面積強度比」が「0.40以上1.2以下」であること、及び「BN一次粒子の平均結晶子径」が「375Å以上415Å以下」であることが特定されているのに対して、甲4発明は、「粉末X線回折法による(002)面の回折線の強度I002と(100)面の回折線の強度I100との比(I002/I100)である配向性指数が2~20である」ことが規定され、窒化ホウ素一次粒子の平均結晶子径は規定されていない点で相違している。
当該相違点について検討すると、甲4には、本件発明1のように「BN一次粒子のピーク面積強度比」及び「BN一次粒子の平均結晶子径」を制御することについて何ら記載も示唆もない。
また、上記ア(オ)~(ク)によると、甲5には、高い熱伝導性のために、六方晶窒化ホウ素粉末の002面の結晶子径(Lc)が450[Å]以上とすることが、甲6には、窒化ホウ素凝集体の熱伝導性が低下しないためには機械的安定性が必要であることが、甲7には、所定の圧縮強さを有する凹部付きBN球状粒子が、甲8には、樹脂組成物を所定の成形圧力で成形することが、それぞれ記載されている。
しかし、これらの記載を参照しても、本件発明1に係る「BN一次粒子のピーク面積強度比」及び「BN一次粒子の平均結晶子径」を同時に制御することは、何ら導出できるものではない。
したがって、本件発明1は、甲4発明及び甲5~甲8に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
なお、異議申立人1は、甲6、8の記載から、BN凝集粒子が成形された状態の熱伝導率に影響を与える配向性に着目することができ、甲4発明で規定する(002)面と同じ方向である(004)面の数値を採用することも可能であるから、本件発明1に係る「BN一次粒子のピーク面積強度比」を設定することは、設計事項であると主張している(申立書1:56、57ページ)。
しかし、2.54ton/cm2の成型圧力で成型して得られたペレット状の試料についての窒化ホウ素凝集粒子の配向性を設定することは何ら示唆されていないから、本件発明1に係る「BN一次粒子のピーク面積強度比」を設定することは、単に当業者が容易になし得る設計事項であるとはいえない。
したがって、異議申立人1の主張は採用できない。
(ウ)本件発明2~8について
本件発明2~8は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであって、本件発明1の特定事項をすべて含むものであるから、本件発明1と同様に、本件発明2~8は、甲4発明及び甲5~甲8に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(エ)小括
以上のとおりであるから、申立理由1-4は理由がない。
カ 申立理由1-5(サポート要件違反)について
(ア)サポート要件違反について
上記「第4 2(1)」で検討したとおり、本件発明1の課題は、高い熱伝導性を有するBN凝集粒子を提供することを含むものであり、BN凝集粒子における「BN一次粒子のピーク面積強度比」及び「BN一次粒子の平均結晶子径」を特定した本件発明1によって、当該課題を解決できると認識できるものであるから、本件発明1~8は、サポート要件を満足するものである。
そこで、上記「1(5)ア~エ」の異議申立人1の主張について、以下検討する。
(イ)上記「1(5)ア」について
異議申立人1の主張は、実施例は、カードハウス構造を有し、バインダーを用いたBN凝集粒子のみであるから、上記解決手段について、さらにカードハウス構造を有すること及びバインダーを含有することについて特定する必要があるというものである。
これについて検討すると、本件発明1の「BN一次粒子のピーク面積強度比」に関して、発明の詳細な説明において【0037】の「小さすぎると、BN凝集粒子が崩壊し、厚み方向の熱伝導性が向上しない傾向がある。」、【0038】の「例えば、樹脂製の高放熱基板は、樹脂製基板内部の空隙低減や分散させたBN凝集粒子同士の完全な接触のために、0.85ton/cm2以上2.54ton/cm2以下のような比較的高い圧力で成形されると考えられる。このため、上記圧力範囲でもBN一次粒子の配向変化が少ないBN凝集粒子が熱伝導性向上には必要である。」、【0040】の「一定以上の一次粒子配向とは、例えば一次粒子の(100)面と(004)面のピーク面積強度比((100)/(004))によって表現されるが、これは(004)面、すなわち、圧力方向に対して直行する方向にab面が配向する割合がどれだけ少ないかを表現するものである。従って、上述のピーク面積強度比が大きいほど、成形圧力によるBN凝集粒子の変形が少ない。」などの記載からすると、本件発明1の「BN一次粒子のピーク面積強度比」により、熱伝導性に影響するBN凝集粒子におけるBN一次粒子の配向構造を特定しているといえる。
そして、【0039】に「本発明では、本明細書で規定する物性を満たすBN凝集粒子、好ましくはBN凝集粒子を構成するh-BN一次粒子がカードハウス構造、すなわち、h-BN一次粒子同士が一次粒子平面部と端面部で接触することによる相互補強構造を有することから、広い成形圧力範囲でBN凝集粒子の変形を抑制することが可能である。」と記載されているから、「カードハウス構造」は、本件発明1の「BN一次粒子のピーク面積強度比」で特定した配向構造を充足するBN凝集粒子の一形態であることが理解できる。
また、バインダーについては、【0066】に「BNスラリーは、原料BN粉末を効果的に粒子状に造粒するために、バインダーを含んでもよい。バインダーは、BN一次粒子を強固に結びつけ、造粒粒子を安定化するために作用する。」と記載されているから、バインダーを用いることは、成形圧力に対して一次粒子配向を保持するための、すなわち本件発明1の解決手段である「一次粒子のピーク面積強度比」を実現するための一つの具体的手段であるといえる。
そうすると、本件発明1は、上述のとおり「BN一次粒子のピーク面積強度比」及び「BN一次粒子の平均結晶子径」を特定することによってサポート要件を満足するものであるから、BN凝集粒子の配向構造の一形態である「カードハウス構造」を有すること及び「バインダー」を用いることを特定する必要はない。
(ウ)上記「1(5)イ」について
本件明細書の発明の詳細な説明は、BN凝集粒子の平均粒子径(D50)について、【0042】には「BN凝集粒子の平均粒子径(D50)は、通常5μm以上であり、好ましくは10μm以上、より好ましくは25μm以上、更に好ましくは26μm以上であり、特に好ましくは30μm以上、最も好ましくは40μm以上であり、45μm以上であっても好ましく、50μm以上であっても好ましい。また、通常200μm以下、好ましくは150μm以下、更に好ましくは100μm以下である。大きすぎると成形体とした際に表面の平滑性が悪くなる、BN凝集粒子間の間隙が多くなる等により、熱伝導性が向上しない傾向があり、小さすぎると成形体とした際にBN凝集粒子間の接触抵抗が大きくなる、BN凝集粒子自体の熱伝導性が低くなる等の傾向がある。」と記載されている。
当該記載に接した当業者であれば、BN凝集粒子の平均粒子径によっては、本件発明の「BN一次粒子のピーク面積強度比」を充足することが困難になるし、また、本件発明の範囲内において、BN凝集粒子の平均粒子径に応じて成形体とした際の熱伝導性に影響があることは技術常識からも明らかである。
したがって、本件発明の「BN一次粒子のピーク面積強度比」を充足できない平均粒子径は、本件発明に含まれていないことは明らかであるし、上記【0042】の記載は、平均粒子径を好適な範囲とすることにより、本件発明の範囲内において、さらに熱伝導性が改善されることを示唆する記載であることを理解できる。
したがって、本件発明において、BN凝集粒子の平均粒子径を特定する必
要はない。
(エ)上記「1(5)ウ」について
発明の詳細な説明の【0027】、【0032】には、次の記載がある。
「【0027】
[BN凝集粒子]
本発明のBN凝集粒子は、BN一次粒子が凝集して形成されたものであり、本願発明の効果を損なわない範囲で、上記BN一次粒子以外の成分を含有してもよい。BN一次粒子以外の成分としては、後記の[BN凝集粒子の製造方法]で述べる、スラリーに添加してもよいバインダー、界面活性剤、溶媒に由来する成分を挙げることができる。」
「【0032】
・BN凝集粒子を構成するBN一次粒子の結晶構造
・・・ また、バインダーとしてBN以外の無機成分が含まれる場合、熱処理の過程でそれらが結晶化するが、BNが主成分として含まれていればよい。 ・・・ 」
ここで、「主成分」という用語は、慣用されている技術用語であり、「ある材料において主要な成分」を意味することは当業者にとって明らかであるところ、当該記載によれば、本件発明に係る「BN凝集粒子」は、発明の詳細な説明に記載の本件発明の効果を発揮することができるようにBNが主成分として含まれることを前提としていることを理解することができる。
(オ)上記「1(5)エ」について
甲1を主引用例とする容易想到性が否定されることは、上記「エ」に記載されたとおりであるし、二律背反であるか否かは、本件発明のサポート要件の充足性の判断に何ら影響を及ぼさない。
(カ)小括
以上のとおりであるから、申立理由1-5は理由がない。
キ 申立理由1-6(明確性要件違反)について
(ア)上記「1(6)ア」について
本件発明1には、「BN凝集粒子を0.2mm深さのガラス試料板に表面が平滑になるように充填し、粉末X線回折測定して得られる、BN一次粒子の(002)面ピークから求めた・・・」と特定され、発明の詳細な説明には、「【0034】 尚、粉末X線回折測定は、0.2mm深さのガラス試料板に表面が平滑になるようにBN凝集粒子を充填し、測定される。」
などと記載されている。
そうすると、「平滑」に充填するということは、通常の粉末X線測定において、0.2mm深さのガラス試料板に測定に支障なく粉末を充填して測定することができることを特定したことは明らかであって、発明の詳細な説明の記載に接した当業者であれば、技術常識に鑑み、本件発明を理解できるものであり、当該特定事項が第三者に不測の不利益を生じさせるほどに不明確であるとはいえないから、特許請求の範囲の記載は、明確性要件を満足する。
(イ)上記「1(6)イ」について
本件発明の「平均結晶子径」については、本件明細書の発明の詳細な説明に以下の記載がある。
「【0033】
・BN一次粒子の平均結晶子径
・・・
【0034】
尚、粉末X線回折測定は、0.2mm深さのガラス試料板に表面が平滑になるようにBN凝集粒子を充填し、測定される。
なお、ここで、「平均結晶子径」とは、粉末X線回折測定によって得られるBN一次粒子の(002)面ピークから、後述の実施例において記載の通り、Scherrer式にて求められる結晶子径である。」
「【0127】
{測定条件}
本発明における特性は以下に記載の方法にて測定した。
・・・
【0129】
・BN一次粒子の平均結晶子径:
粉末X線回折測定によって得られたBN一次粒子の(002)面由来のピークから、Scherrer式を用いて平均結晶子径を求めた。粉末X線回折測定は、PANalytical社製X線回折装置「X‘Pert Pro MPD」を用いた。Scherrer式とは次の式である。
D=(K・λ)/(β・cosθ)
ここで、D:結晶子径、K:Scherrer定数、λ:X線(CuKα1)波長、β:ピーク半値幅、θ:CuKα1由来のブラッグ角、である。またβは、次の補正式を用いて求めた。
β=(βo2-βi2)0.5
ここで、βiは、標準Siにより求めておいた装置由来の半価幅であり、βoは、h-BNの(002)面由来のピーク半値幅である。各定数の値は、以下を用いた。
K=0.9、λ=1.54059Å」
上記記載によると、「BN一次粒子の平均結晶子径」は、粉末X線回折測定を用いて、発明の詳細な説明に記載された方法(【0127】)により得られることを理解することができるから、「平均」という用語の技術的意味は明確である。
(ウ)小括
以上のとおりであるから、申立理由1-6は理由がない。
(2) 異議申立人2による特許異議申立理由について
ア 申立理由2-1(明確性要件違反)について
「主成分」という用語は、上記「(1) カ(エ)」に記載したように、当業者にとって明らかであるところ、本件発明では、BN凝集粒子に層状構造を有するh-BN粒子を十分な量になるように含有させて特定の「BN一次粒子のピーク面積強度比」を所定の値としたことを発明の詳細な説明により理解することができるから、h-BNの含有量が特定されていなくとも、本件発明は明確である。
したがって、申立理由2-1は理由がない。
イ 申立理由2-2(サポート要件違反)について
(ア)サポート要件違反について
上記「第4 2(1)」で検討したとおり、本件発明はサポート要件を満足する。
そこで、上記「2(2)ア、イ」の異議申立人2の主張について、以下検討する。
(イ)上記「2(2) ア」について
上記「第4 2(1)イ」で検討したとおり、本件発明1の課題は、結局のと
ころ、高い熱伝導性を有するBN凝集粒子を提供することであり、BN凝集
粒子における「BN一次粒子のピーク面積強度比」及び「BN一次粒子の平
均結晶子径」を特定した本件発明1によって、当該課題を解決できると認識
できるものである。
他方、異議申立人2の主張は、発明の詳細な説明の【0014】の「BN
凝集粒子を構成するBN一次粒子が高熱伝導性でありながら、BN凝集粒子
同士の接触抵抗も低減したBN凝集粒子を製造」するとの記載に基づくもの
であるが、接触抵抗についての記載は、高い熱伝導性を有するBN凝集粒子
を提供するという課題を解決する際のBN凝集粒子の具体的な作用を記載し
たものであって、本件発明1の課題とはいえない。
また、接触抵抗を低減することが本件発明1の課題であったとしても、同
【0037】の「BN凝集粒子を10mmφの粉末錠剤成形機で0.85t
on/cm2以上2.54ton/cm2以下の成形圧力で成形して得ら
れたペレット状の試料中のBN凝集粒子を構成するh-BN一次粒子の(1
00)面と(004)面のピーク面積強度比((100)/(004))は
、 ・・・ 大きすぎると、成形体とした際にBN凝集粒子間の接触抵抗が
大きくなる傾向があり、小さすぎると、BN凝集粒子が崩壊し、厚み方向の
熱伝導性が向上しない傾向がある。」との記載により、本件発明1の上記「
一次粒子のピーク面積強度比」を特定することで、BN凝集粒子同士の接触
抵抗が低減されるという作用効果を奏することを当業者であれば理解するこ
とができる。
(ウ)上記「2(2)イ」について
本件発明において、「カードハウス構造」を特定する必要がないことは、上記「(1)カ(イ)」に記載したとおりである。
(エ)小括
以上のとおりであるから、申立理由2-2は理由がない。
ウ 申立理由2-3(実施可能要件違反)について
上記「第4 2(2)」で検討したとおり、発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を満足する。
そこで、上記「2(3)ア、イ」の異議申立人2の主張について検討する。
上記「第4 2(2)イ」に記載したとおり、「BN一次粒子のピーク面積強度比」及び「BN一次粒子の平均結晶子径」の調整方法が発明の詳細な説明に記載されているから、当該記載にしたがって当業者は、本件発明に係るBN凝集粒子を製造することができる。
また、本件発明1において、カードハウス構造の特定が必要ないことは、
上記「(1)カ(イ)」に記載したとおりのものであるところ、発明の詳細な説明は、本件発明の「BN一次粒子のピーク面積強度比」及び「BN一次粒子の平均結晶子径」を充足する実施例1(実施例4)、実施例2(実施例5)が記載されているから、カードハウス構造でないBN凝集粒子の具体的な製造例が記載されていないことをもって、実施可能要件違反であるとはいえない。
よって、申立理由2-3は理由がない。
(3) 異議申立人の意見書について
ア 異議申立人の主張
異議申立人1の意見書1ー1、1-2、及び異議申立人2の意見書2-1における主張は、概ね以下のとおりである。
(ア)成形圧力が増加した時のBN凝集粒子の配向維持率(「ピーク面積強度比」の比)について、実施例のものは、比較例のものより低下しているから、「ピーク面積強度比」は、BN凝集粒子の粒子強度をBN一次粒子の配向で表現したものではない(意見書1-1)。
(イ)本件明細書の【0033】に「平均結晶子径は大きいことが熱伝導率の点から好ましい。」と記載されているが、比較例3、5は、ピーク面積強度比が同じであるが結晶子径が大きい比較例5の方がかえって熱伝導率が低下しており、熱伝導率に与える指標(物性)は他に様々な要因があるといえるから、他の指標を加入する必要がある(意見書1-1、1-2)。
(ウ)実施例に具体的に示されている範囲を超えて、本件発明に係るBN凝集粒子を調製可能であるとはいえないし、h-BN原料粉末の全細孔容積及び比表面積等の値が記載されていないから、所望のh-BN原料粉末を得るために過度の試行錯誤を有する(意見書1-1)。
(エ)本件明細書には、所定のバインダーを用いた実施例が記載されているのみであるから、当該バインダーを規定していない本件発明は、発明の詳細な説明に記載された発明ということができない(意見書1-1)。
(オ)「ピーク面積強度比」が、実施例と比べて著しく広範囲となっている(意見書1-2、意見書2―1)。
イ 上記主張についての判断
(ア)上記「ア(ア)」について
各凝集粒子の物性の違いにより、成型圧力が変化した時の配向維持率は異なることは当然であり、本件明細書の表2に記載されているように、一般的に成型圧力が増加するとピーク面積強度比が減少することを把握できるから、BN凝集粒子の粒子強度を配向により表現したということを理解することができる。
(イ)上記「ア(イ)、(エ)、(オ)」について
比較例3、5は、ピーク面積強度比が異なるから単純に比較できない。また、結晶子径及びピーク面積強度比を特定した本件発明がサポート要件を満足していることは、上記「第4 2(1)」で検討したとおりである。
(ウ)上記「ア(ウ)」について
本件発明が実施可能要件を満足していることは、上記「第4 2(2)」で検討したとおりである。
ウ 小括
以上のとおりであるから、異議申立人1、2の主張は、いずれも採用できない。
第6 むすび
以上で検討したとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1~8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700345