特許異議申立
2022-700706
粘着剤組成物及び粘着フィルム
- 審判番号
- 2022-700706
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-188686
- 登録番号
- 7014879
- 請求日
- 2022年07月22日
- 審決日
- 2024年03月19日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】藤森工業株式会社
- 【権利者代理人】田▲崎▼ 聡
- 【権利者代理人】大浪 一徳
- 【権利者代理人】貞廣 知行
- 【異議申立人】松永 健太郎
- 審判長/審判官
- 審判長 塩見 篤史
- 審判官 亀ヶ谷 明久
- 審判官 門前 浩一
- 分類
- P1651.113-YAA(C09J) / P1651.121-YAA(C09J) / P1651.537-YAA(C09J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条、特許法第36条、特許法第120条の5第4項、特許法第20条の5第9項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7014879号発明「粘着剤組成物及び粘着フィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許7014879号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
特許第7014879号の請求項1~5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7014879号(以下「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願は、平成29年6月29日に出願した特願2017-127545号の一部を令和2年11月12日に新たな特許出願としたものであって、令和4年1月24日に特許権の設定登録がされ、同年2月1日に特許掲載公報が発行されたところ、令和4年7月22日に特許異議申立人である松永 健太郎(以下「申立人」という。)により、請求項1~5に係る特許に対して特許異議の申立てがされたものである。
その後の経緯は、以下のとおりである。
令和 4年11月30日付け 取消理由通知(発送は同年12月5日)
令和 5年 2月 3日 意見書(特許権者)
令和 5年 3月 7日付け 取消理由通知(決定の予告)(発送は同年
同月10日)
令和 5年 5月 8日 訂正請求書、意見書(特許権者)
令和 5年 5月18日 訂正請求がされた旨の通知書(発送は同年
同月23日)
令和 5年 6月20日 意見書(申立人)
第2 特許異議の申立ての概要
申立人は、下記2の証拠方法(以下、甲第1号証を「甲1」などという。)により、下記1を申立ての理由とする特許異議の申立てをしている。
1 申立ての理由
(1)本件発明1、2、4及び5は、甲1に記載された発明であって、特許法29条1項3号の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、2、4及び5に係る特許は、同法113条2号に該当する。
(2)本件発明1~5は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~5に係る特許は、同法113条2号に該当する。
(3)本件発明1~5は、甲3に記載された発明と甲1及び4~6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~5に係る特許は、同法113条2号に該当する。
(4)本件発明1~5について、特許請求の範囲の記載が特許法36条6項1号に適合するものではないから、本件特許の請求項1~5に係る特許は、同法113条4号に該当する。
2 証拠方法
甲1:特開2017-110077号公報
甲2:J.Brandrup、E.H.Immergut、E.A.Grulke編、「POLYMER HANDBOOK」,JOHN WILEY & SONS,INC、1999年、198-201頁
甲3:国際公開第2016/163287号
甲4:田崎裕人企画編集、「粘着剤(フィルム・テープ)の材料設計と機能性付与」、技術情報協会、2009年9月30日、76-83頁、281-285頁、290-292頁
甲5:北崎寧昭,斎藤次雄、「初歩から学ぶ粘着剤」、工業調査会、2001年5月20日、16-17頁、21-31頁、76-79頁、120-125頁
甲6:日本接着学会編、「プロをめざす人のための接着技術教本」,日刊工業新聞社、2009年6月30日、152-155頁
以上、特許異議申立書に添付
甲7:特表2014-514387号公報
甲8:特開2018-76489号公報
以上、令和5年6月20日提出の意見書に添付
第3 本件訂正請求について
1 請求の趣旨
令和5年5月8日にされた訂正の請求(以下「本件訂正請求」ともいう。)の請求の趣旨は、「特許第7014879号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~5について訂正することを求める。」というものである。
2 本件訂正の内容
(1)本件訂正請求による訂正(以下「本件訂正」ともいう。)の内容は、特許請求の範囲の訂正に係る以下の訂正事項からなるものである。下線は、訂正箇所を示す。
訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「2.5~15重量部の割合で含有してなり、」とあるのを、
「3~15重量部の割合で含有してなり、」に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2~5も同様に訂正する。)
(2)一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~5について、請求項2~5はそれぞれ請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、本件訂正前の請求項1~5に対応する本件訂正後の請求項1~5は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、本件訂正は、一群の請求毎に請求されたものである。
3 訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項1は、「(E)帯電防止剤」の含有割合について「2.5~15重量部の割合」と特定されていたものを、「3~15重量部の割合」というより狭い範囲に限定するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書き1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無
本件特許の明細書(以下、「本件特許明細書」ともいう。)の段落【0034】には、「本実施形態に係わる粘着剤組成物は、帯電防止性能を得るために、(E)帯電防止剤を含有する。(E)帯電防止剤として、フルオロ基含有アニオンを有するアンモニウム系帯電防止剤を、アクリル系ポリマーの100重量部に対して、2.5~15重量部の割合で含有してなることが好ましく、3~15重量部の割合で含有してなることがより好ましく、4~15重量部の割合で含有してなることが特に好ましい。」と記載されている。
したがって、訂正事項1による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法120条の5第9項で準用する126条5項に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記アのとおり、訂正事項1は、「(E)帯電防止剤」の含有割合を、「2.5~15重量部の割合」から「3~15重量部の割合」に限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項で準用する特許法126条6項の規定に適合する。
(2)独立特許要件について
本件訂正においては、訂正前の全ての請求項である請求項1~5に対して特許異議の申立てがされているので、特許法第20条の5第9項により読み替えて準用する特許法126条7項の規定は課されない。
(3)本件訂正の適否についての小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法120条の5第2項ただし書き1号に掲げる事項を目的とするものであり、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5、6項の規定に適合するものである。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~5について訂正することを認める。
第4 本件発明
上記第3のとおり、本件訂正請求は認められたので、本件特許の請求項1~5に係る発明は、その特許の特許請求の範囲の請求項1~5に記載された以下のとおりのものである(以下、請求項1~5に係る発明を、それぞれ「本件発明1」~「本件発明5」といい、まとめて「本件発明」ともいう。)。
「【請求項1】
アクリル系ポリマーと、(E)帯電防止剤と、(F)架橋剤とを含有する粘着剤組成物であって、
前記アクリル系ポリマーが、
(A)n-ブチルアクリレートと、
(B)t-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、メチルアクリレートからなる群から選択された少なくとも1種と、
(C)水酸基を含有する共重合可能なモノマー及びカルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーからなる群から選択された少なくとも1種と、
(D)芳香族基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種と、
を共重合させた共重合体の重量平均分子量が100万~300万のアクリル系ポリマーであり、
前記(E)帯電防止剤として、フルオロ基含有アニオンとアンモニウムカチオンとからなる融点が25℃以上のイオン性化合物を、前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、3~15重量部の割合で含有してなり、
前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、前記(A)n-ブチルアクリレートを40~89重量部と、前記(B)t-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、メチルアクリレートからなる群から選択された少なくとも1種以上の合計を5~40重量部と、の割合で含有してなり、且つ、(A)と(B)との比率(A)/(B)が1.0~17.8であり、
前記(F)架橋剤として、3官能以上のイソシアネート化合物、2官能以上のエポキシ化合物からなる群から選択された少なくとも1種以上の架橋剤を含有してなり、
前記粘着剤組成物が、さらに、(G)エポキシ基、メルカプト基、酸無水物基から選択された少なくとも1種以上の官能基を含有するモノマータイプ又はオリゴマータイプのシランカップリング剤を含有してなることを特徴とする粘着剤組成物。
【請求項2】
樹脂フィルムの片面に、請求項1に記載の粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層が積層されてなることを特徴とする粘着フィルム。
【請求項3】
離型フィルムの片面に、請求項1に記載の粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層が、1μm~25μmの厚みで形成された、離型フィルム/粘着剤層/離型フィルムの構成であることを特徴とする粘着フィルム。
【請求項4】
偏光板の片面に、請求項1に記載の粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層が積層されてなり、離型フィルム/粘着剤層/偏光板の構成であることを特徴とする粘着剤層付き偏光板。
【請求項5】
偏光板の片面に、請求項1に記載の粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層が積層された粘着剤層付き偏光板が、用いられていることを特徴とする液晶パネル。」
第5 令和5年3月7日付けで通知した取消理由(決定の予告)について
1 令和5年3月7日付けで通知した取消理由の概要
当審が、令和5年3月7日付けで通知した取消理由は、以下の取消理由1である。
取消理由1(進歩性)本件発明1~5は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。
2 当審合議体の判断
(1) 証拠等に記載されている事項、及び、証拠に記載された発明
ア 甲1の記載事項
甲1には、次の記載がある。
「【請求項1】
(メタ)アクリル系樹脂(A)、架橋剤(B)、及びシラン化合物(C)を含む粘着剤組成物であって、
前記(メタ)アクリル系樹脂(A)は、下記式(a1)
【化1】
[図:0001411238000001.jpg]
(式中、nは1~4の整数を示し、A1は水素原子又はアルキル基を示し、X1は置換基を有していてもよいメチレン基を示し、nが2以上のとき、前記置換基は同一又は異なっていてもよい)
で表されるヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート由来の構成単位と、下記式(a2)
【化2】
[図:0001411238000002.jpg]
(式中、mは5以上の整数を示し、A2は水素原子又はアルキル基を示し、X2は置換基を有していてもよいメチレン基を示し、前記置換基は同一又は異なっていてもよい)
で表されるヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート由来の構成単位とを含み、カルボキシル基含有(メタ)アクリレート由来の構成単位の割合が、(メタ)アクリル系樹脂を構成する全構成単位100重量部に対して、1.0重量部以下である、粘着剤組成物。」
「【0012】
すなわち、本発明の(メタ)アクリル系樹脂(A)は、異なる炭素鎖長(n及びm)のヒドロキシアルキル基を側鎖に有するため、粘着剤組成物から形成される粘着剤層において、(メタ)アクリル系樹脂間の架橋密度を最適化できると推定される。該架橋密度の最適化により、硬さと柔らかさのバランスに優れた(又は最適な硬さを有する)粘着剤層を形成できるため、耐久性を向上でき、高温環境であっても、界面の剥がれ(又は浮き)及び発泡を有効に抑制できる。しかも、強い収縮応力が生じても、粘着剤層が該応力を有効に緩和できるため、光学フィルム(例えば偏向板)の収縮に伴う白抜けを防止できる。さらに該架橋密度の最適化によりリワーク性(剥離性)も向上できる。なお、本明細書において、耐久性とは、例えば高温環境下、高温高湿環境下、高温と低温とが繰り返される環境下などにおいて、粘着剤層とこれに隣接する光学部材との界面での浮きや剥れを抑制できる特性(耐剥がれ性という場合がある)、及び粘着剤層の発泡等の不具合を抑制できる特性(耐発泡性というという場合がある)をいう。また、本発明において、耐凝集破壊性とは、粘着剤層の凝集破壊(又は破れ)を抑制できる特性をいう。」
「【0018】
(メタ)アクリル系樹脂(A)は、アルキルアクリレート(a3)由来の構成単位及び置換基含有アルキルアクリレート(a4)由来の構成単位を含んでいてもよい。
【0019】
アルキルアクリレート(a3)のうち、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が0℃未満のアルキルアクリレート(a3-1)としては、例えば、エチルアクリレート、n-及びi-プロピルアクリレート、n-及びi-ブチルアクリレート、n-ペンチルアクリレート、n-及びi-へキシルアクリレート、n-ヘプチルアクリレート、n-及びi-オクチルアクリレート、2-エチルへキシルアクリレート、n-及びi-ノニルアクリレート、n-及びi-デシルアクリレート、n-ドデシルアクリレートなどのアルキル基の炭素数が2~12程度の直鎖状又は分岐鎖状アルキルアクリレートなどが挙げられる。アルキルアクリレート(a3)は脂環式構造を有するアルキルアクリレート(シクロアルキルアクリレート)であってもよいが、光学フィルムに対する追従性(又は柔軟性や粘着性)などの観点から、炭素数が2~10のアルキルアクリレート、好ましくは炭素数が3~8のアルキルアクリレート、さらに好ましくは炭素数が4~6のアルキルアクリレート、特にn-ブチルアルキルアクリレートが好ましい。n-ブチルアルキルアクリレートを用いると、追従性を高くでき、例えば耐剥がれ性などに有利である。これらのアルキルアクリレート(a3-1)は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0020】
ホモポリマーのTgが0℃以上であるアルキルアクリレート(a3-2)としては、メチルアクリレート、シクロアルキルアクリレート(例えばシクロヘキシルアクリレート、イソボロニルアクリレート)、ステアリルアクリレート、t-ブチルアクリレートなどが挙げられ、特にメチルアクリレートが特に好ましい。メチルアクリレートを用いると、強度を高くでき、例えば凝集破壊に対して有利である。これらのアルキルアクリレート(a3-2)は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。なお、アルキルアクリレートのホモポリマーのTgは、例えばPOLYMER HANDBOOK(Wiley-Interscience)などの文献値を参照できる。
【0021】
(メタ)アクリル系樹脂(A)におけるアルキルアクリレート由来の構成単位の割合は、粘着剤層の耐久性及びリワーク性の観点から、(メタ)アクリル系樹脂(A)を構成する全構成単位100重量部に対して、例えば40重量部以上(例えば、50~98重量部)であり、好ましくは60重量部以上(例えば、70~95重量部)であり、さらに好ましくは70重量部以上(例えば80~90重量部)である。
【0022】
ホモポリマーのTgが0℃未満であるアルキルアクリレートと、ホモポリマーのTgが0℃以上のアルキルアクリレートを併用すると、耐凝集破壊性及び追従性(耐発泡性及び耐剥がれ性)を両立でき、光学フィルム(例えば偏光板)の寸法変化に対する耐久性を向上できる。
【0023】
ホモポリマーのガラス転移温度が0℃未満のアルキルアクリレート(a3-1)由来の構成単位と、ガラス転移温度が0℃以上のアルキルアクリレート(a3-2)由来の構成単位との割合(重量比)は、(a3-1)/(a3-2)=20/80~95/5(例えば、30/70~90/10)、好ましくは40/60~85/15、さらに好ましくは55/45~75/25である。上記範囲にあると、耐久性をさらに向上できる。ガラス転移温度が0℃未満のアルキルアクリレート(a3-1)由来の構成単位の割合が大きくなるほど、追従性が向上する。ガラス転移温度が0℃以上のアルキルアクリレート(a3-2)由来の構成単位の割合が大きくなるほど、耐凝集破壊性が向上する。」
「【0046】
[1-2]架橋剤(B)
粘着剤組成物は、架橋剤(B)を含む。該架橋剤(B)は、(メタ)アクリル系樹脂(A)中のヒドロキシ基を含む極性官能基と反応する。本発明では、(メタ)アクリル系樹脂(A)の側鎖に導入された所定の異なる炭素鎖を有するヒドロキシアルキル基のOH基(ヒドロキシル基)と架橋剤(B)とが反応し、耐久性及びリワーク性に有利な架橋構造を形成する。
【0047】
架橋剤(B)としては、慣用の架橋剤(例えば、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、金属キレート化合物、過酸化物など)が挙げられ、特に粘着剤組成物のポットライフ及び粘着剤層付光学フィルムの耐久性、架橋速度などの観点から、イソシアネート系化合物であることが好ましい。
【0048】
イソシアネート系化合物としては、分子内に少なくとも2個のイソシアナト基(-NCO)を有する化合物が好ましく、例えば、脂肪族イソシアネート系化合物(例えばヘキサメチレンジイソシアネートなど)、脂環族イソシアネート系化合物(例えばイソホロンジイソシアネート)、芳香族イソシアネート系化合物(例えばトリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等)などが挙げられる。また架橋剤(B)は、前記イソシアネート化合物の多価アルコール化合物による付加体(アダクト体)[例えば、グリセロール、トリメチロールプロパンなどによる付加体]、イソシアヌレート化物、ビュレット型化合物、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等と付加反応させたウレタンプレポリマー型のイソシアネート化合物などの誘導体であってもよい。架橋剤(B)は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、代表的には芳香族イソシアネート系化合物(例えばトリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート)、脂肪族イソシアネート系化合物(例えばヘキサメチレンジイソシアネート)又はこれらの多価アルコール化合物(グリセロール、トリメチロールプロパン)による付加体が挙げられる。架橋剤(B)が、芳香族イソシアネート系化合物及び/又はこれらの多価アルコール化合物による付加体であると、最適な架橋密度(又は架橋構造)の形成に有利なためか、粘着剤層の耐久性を向上できる。特に、トリレンジイソシアネート系化合物及び/又はこれらの多価アルコール化合物による付加体であると、耐久性(例えば粘着剤層をITO基板に適用した場合などの耐久性)をさらに向上することもできる。」
「【0050】
[1-3]シラン化合物(C)
粘着剤組成物は、シラン化合物(C)を含む。該シラン化合物(C)を含むことにより、粘着剤層と、金属層、透明電極、ガラス基板等との密着性(又は接着性)を向上できる。シラン化合物(C)としては、(メタ)アクリル系樹脂(A)の反応性基(例えばヒドロキシル基のOH基)と結合可能なシラン化合物であればよく、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルエトキシジメチルシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、1,3-ビス(3’-トリメトキシプロピル)ウレアなどが挙げられる。
【0051】
また、シラン化合物(C)は、シリコーンオリゴマータイプの化合物であってもよく、該シリコーンオリゴマーをモノマー同士の組み合わせで表記すると、例えば、3-メルカプトプロピルジ又はトリメトキシシラン-テトラメトキシシランオリゴマー、3-メルカプトメチルジ又はトリメトキシシラン-テトラエトキシシランオリゴマー、3-メルカプトプロピルジ又はトリエトキシシラン-テトラメトキシシランオリゴマー、3-メルカプトメチルジ又はトリエトキシシラン-テトラエトキシシランオリゴマーなどのメルカプトアルキル基含有オリゴマー;該メルカプトアルキル基含有オリゴマーのメルカプトアルキル基を、他の置換基[3-グリジドキシプロピル基、(メタ)クリロイルオキシプロピル基、ビニル基、アミノ基など]に置き換えたオリゴマーなどが挙げられる。」
「【0056】
シラン化合物(C)の割合は、(メタ)アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、例えば、0.01~10重量部(例えば0.03~5重量部)、好ましくは0.05~3重量部、さらに好ましくは0.1~1重量部(例えば0.2~0.5重量部)である。上限値以下であると、粘着剤層からのシラン化合物(C)のブリードアウトの抑制に有利であり、下限値以上であると、粘着剤層と、金属層やガラス基板等との密着性(又は接着性)を向上しやすくなり、耐剥がれ性などの向上に有利である。
【0057】
[1-4]帯電防止剤
粘着剤組成物は、帯電防止剤をさらに含んでもよい。帯電防止剤を含むことで、粘着剤の帯電防止性を向上(例えば離形フィルム、保護フィルムなどを剥離した際に生じる静電気による不具合などを抑制)することができる。帯電防止剤としては、慣用のものが挙げられ、イオン性帯電防止剤が好適である。イオン性帯電防止剤を構成するカチオン成分としては、有機カチオン、無機カチオンなどが挙げられる。有機カチオンとしては、例えばピリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、アンモニウムカチオン、スルホニウムカチオン、ホスホニウムカチオンなどが挙げられる。無機カチオンとしては、例えばリチウムカチオン、カリウムカチオン、ナトリウムカチオン、セシウムカチオンなどのアルカリ金属カチオン、マグネシウムカチオン、カルシウムカチオンなどのアルカリ土類金属カチオンなどが挙げられる。イオン性帯電防止剤を構成するアニオン成分としては、無機アニオン及び有機アニオンのいずれでもよいが、帯電防止性能に優れるという点で、フッ素原子を含むアニオン成分が好ましい。フッ素原子を含むアニオン成分としては、例えばヘキサフルオロホスフェートアニオン(PF6-)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン[(CF3SO2)2N-]、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン[(FSO2)2N-]、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオン[(C6F5)4B-]などが挙げられる。これらの帯電防止剤は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。特に、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン[(CF3SO2)2N-]、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン[(FSO2)2N-]、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオン[(C6F5)4B-]が好ましい。
粘着剤組成物の帯電防止性能の経時安定性に優れるという点で、室温で固体であるイオン性帯電防止剤が好ましい。
帯電防止剤の割合は、(メタ)アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、例えば、0.01~10重量部、好ましくは0.1~5重量部、さらに好ましくは1~3重量であってもよい。」
「【0060】
[2]粘着剤層及び粘着剤層付光学フィルムの構成並びに製造方法
本発明の粘着剤組成物は、表面活性化処理(例えばプラズマ処理、コロナ処理等)などを施すことにより粘着剤層を形成できる。通常、該粘着剤層は光学フィルムの少なくとも一方の面に積層される。
図1は、本発明に係る粘着剤組成物から形成された粘着剤層付光学フィルムの一例を示す概略断面図である。図1に示される粘着剤層付光学フィルム1は、光学フィルム10と、該光学フィルムの片面に粘着剤層20が積層された光学フィルムである。該粘着剤層20は、通常、光学フィルム10の表面に直接積層される。なお、粘着剤層20は、光学フィルム10の両面に積層されてもよい。
粘着剤層20を光学フィルム10の表面に積層する際には、光学フィルム10の貼合面
及び/又は粘着剤層20の貼合面にプライマー層を形成させること、又は前記表面活性化処理(例えばプラズマ処理、コロナ処理など)を施すことが好ましく、特にコロナ処理を施すことが好ましい。
【0061】
光学フィルム10が図2に示されるように片面保護偏光板である場合、粘着剤層20は通常、偏光子面、すなわち、偏光子2における第1樹脂フィルム3とは反対側の面に、積層(好ましくは直接積層)される。光学フィルム10が図3に示されるように両面保護偏光板である場合、粘着剤層20を、第1,第2樹脂フィルム3,4のいずれかの外面に積層してもよく、両方の外面に積層してもよい。」
「【0063】
粘着剤層付光学フィルム1は、粘着剤層20の外面に積層されるセパレートフィルム(剥離フィルム)を含んでいてもよい。このセパレートフィルムは通常、粘着剤層20の使用時(例えば透明導電極やガラス基板への積層時)に剥離除去される。セパレートフィルムは、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアレートなどの各種樹脂からなるフィルムの粘着剤層20が形成される面に、シリコーン処理等の離型処理が施されたものであってもよい。」
「【0065】
粘着剤層の厚みは、通常2~40μmであり、粘着剤層付光学フィルムの耐久性や粘着剤層付光学フィルムのリワーク性などの観点から、好ましくは5~30μmであり、さらに好ましくは10~25μmである。上限値以下であると、光学フィルムの寸法変化に対する粘着剤層の追従性(又は追随性)が良好となり、下限値以上であると、リワーク性が良好となる。」
「【0069】
[2-1]光学フィルム
粘着剤層付光学フィルム1を構成する光学フィルム10は、液晶表示装置等の画像表示装置に組み込まれ得る各種の光学フィルム(光学特性を有するフィルム)であってもよい。該光学フィルム10は、単層構造(例えば偏光子、位相差フィルム、輝度向上フィルム、防眩フィルム、反射防止フィルム、拡散フィルム、集光フィルム等の光学機能性フィルムなど)であってもよく、多層構造(例えば偏光板、位相差板など)であってもよい。光学フィルム10は、偏光板、偏光子、位相差板又は位相差フィルムが好ましく、特に偏光板又は偏光子が好ましい。なお、本明細書において、光学フィルムとは、画像表示(表示画面等)のために機能するフィルム(例えば、画像の見やすさの向上のために機能するフィルム)を意味する。また、本明細書において偏光板とは、偏光子の少なくとも一方の面に樹脂フィルム又は樹脂層が積層されたものを意味し、位相差板とは、位相差フィルムの少なくとも一方の面に樹脂フィルム又は樹脂層が積層されたものを意味する。
【0070】
[2-2]偏光板
図2及び図3は、偏光板の層構成の例を示す概略断面図である。図2に示される偏光板10aは、偏光子2の一方の面に第1樹脂フィルム3が積層(又は積層貼合)された片面保護偏光板であり、図3に示される偏光板10bは、偏光子2の他方の面にさらに第2樹脂フィルム4が積層(又は積層貼合)された両面保護偏光板である。第1,第2樹脂フィルム3,4は、図示しない接着剤層や粘着剤層を介して偏光子2に貼合することができる。なお、偏光板10a,10bは、第1,第2樹脂フィルム3,4以外の他のフィルムや層を含んでいてもよい。」
「【0117】
[4]液晶表示装置
本発明に係る液晶表示装置は、上記本発明に係る粘着剤組成物から形成された粘着剤層付光学フィルム1を含むものであり、より典型的には上記光学積層体を含むものである。このため、本発明に係る液晶表示装置は、優れた耐久性を有する。
【0118】
本発明に係る液晶表示装置は、タッチパネル機能を有するタッチ入力式液晶表示装置であってもよい。タッチ入力式液晶表示装置は、液晶セルを含むタッチ入力素子と、バックライトとを備える。タッチパネルの構成は、公知の方式(例えばアウトセル型、オンセル型、インセル型など)であってもよく、またタッチパネルの動作方式は、公知の方式[例えば抵抗膜方式、静電容量方式(表面型静電容量方式、投影型静電容量方式)など]であってもよい。本発明に係る粘着剤層付光学フィルム1は、タッチ入力素子(液晶セル)の視認側に配置されてもよく、バックライト側に配置されてもよく、両方に配置されてもよい。液晶セルの駆動方式は、TN方式、VA方式、IPS方式、マルチドメイン方式、OCB方式等、従来公知のいかなる方式であってもよい。なお、本発明に係る液晶表示装置において、光学積層体が有する基板40は、上記液晶セルに含まれる基板(典型的にはガラス基板)であってもよい。」
「【0120】
<製造例1:粘着剤層用(メタ)アクリル系樹脂(A-1)の製造>
冷却管、窒素導入管、温度計及び攪拌機を備えた反応容器に、表1に示す組成(表1の数値は重量部である。)の単量体を酢酸エチル81.8部と混合して得られた溶液を仕込んだ。反応容器内の空気を窒素ガスで置換した後、内温を60℃にした。その後、アゾビスイソブチロニトリル0.12部を酢酸エチル10部に溶解させた溶液を添加した。1時間同温で保持した後、内温を54~56℃に保ちながら、添加速度17.3部/Hrで酢酸エチルを、重合体の濃度がほぼ35%となるように反応容器内へ連続的に加えた。酢酸エチルの添加開始から12時間経過するまで内温を54~56℃に保持した後、酢酸エチルをさらに加えて重合体の濃度が20%となるように調整し、(メタ)アクリル系樹脂(A-1)の酢酸エチル溶液を得た。得られた(メタ)アクリル系樹脂(A-1)の重量平均分子量Mwは139万、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比(Mw/Mn)は5.32であった。
【0121】
<製造例2-12:粘着剤層用(メタ)アクリル系樹脂(A-2~12)の製造>
単量体の組成を、表1に示す組成にしたこと以外は、製造例1と同様にして、(メタ)アクリル系樹脂(A-2~12)の酢酸エチル溶液を得た(樹脂濃度:20%)。得られた(メタ)アクリル系樹脂(A-2~12)の重量平均分子量Mwはいずれも130万~150万の範囲であり、Mw/Mnは4~6の範囲であった。」
「【0125】
【表1】
[図:0001411238000003.jpg]
【0126】
表1の「単量体組成」の欄にある略称は、次のモノマーを意味する。
BA:ブチルアクリレート(ホモポリマーのガラス転移温度:-54℃)、
MA:メチルアクリレート(ホモポリマーのガラス転移温度:10℃)、
HEA:2-ヒドロキシエチルアクリレート。
4HBA:4-ヒドロキシブチルアクリレート
5HPA:5-ヒドロキシペンチルアクリレート
PEA:フェノキシエチルアクリレート
PEA2:フェノキシジエチレングリコールアクリレート
BMAA:ブトキシメチルアクリルアミド
AA:アクリル酸
【0127】
<実施例1~12、比較例1~9>
(1)粘着剤組成物の調製
上記製造例で得られた(メタ)アクリル系樹脂の酢酸エチル溶液(樹脂濃度:20%)に、該溶液の固形分100部に対して、表2に示す量(重量部)の架橋剤(B)、シラン化合物(C)、及びイオン性化合物(D)を混合し、さらに固形分濃度が14%となるように酢酸エチルを添加して粘着剤組成物を得た。表2に示す各配合成分の配合量は、使用した商品が溶剤等を含む場合は、そこに含まれる有効成分としての重量部数である。
【0128】
【表2】
[図:0001411238000004.jpg]
【0129】
表2において略称で示される各配合成分の詳細は次のとおりである。
(架橋剤)
B-1:トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体の酢酸エチル溶液(固形分濃度75%)、東ソー(株)から入手した商品名「コロネートL」。
B-2:キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体の酢酸エチル溶液(固形分濃度75%)、三井化学(株)から入手した商品名「タケネート D-110N」。
【0130】
(シラン化合物)
C-1:1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、C-2:1,8-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、C-3:メチル基/メトキシ基含有シリコーンオリゴマー、信越化学工業(株)から入手した商品名「X-40-9250」、C-4:1,3-ビス(3’-トリメトキシプロピル)ウレア。
【0131】
(イオン性化合物)
D-1:N-デシルピリジニウム ビス(フロオロスルホニル)イミド、D-2:カリウム ビス(フロオロスルホニル)イミド、 D-3:リチウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、D-4:N-デシルピリジニウム テトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート。
【0132】
(2)粘着剤層の作製
上記(1)で調製した各粘着剤組成物を、離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートフィルムからなるセパレートフィルム〔リンテック(株)から入手した商品名「PLR-382051」〕の離型処理面に、アプリケーターを用いて乾燥後の厚みが20μmとなるように塗布し、100℃で1分間乾燥して粘着剤層(粘着剤シート)を作製した。
【0133】
(3)粘着剤層付光学フィルム(P-1)の作製
平均重合度約2400、ケン化度99.9モル%、厚み60μmのポリビニルアルコールフィルム〔(株)クラレ製の商品名「クラレビニロン VF-PE♯6000」〕を、37℃の純水に浸漬した後、ヨウ素とヨウ化カリウムとを含む水溶液(ヨウ素/ヨウ化カリウム/水(重量比)=0.04/1.5/100)に30℃で浸漬した。その後、ヨウ化カリウムとホウ酸とを含む水溶液(ヨウ化カリウム/ホウ酸/水(重量比)=12/3.6/100)に56.5℃で浸漬した。フィルムを10℃の純水で洗浄した後、85℃で乾燥して、ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向された厚み約23μmの偏光子を得た。延伸は、主に、ヨウ素染色及びホウ酸処理の工程で行い、トータルの延伸倍率は5.3倍であった。
【0134】
得られた偏光子の片面に、厚み25μmのトリアセチルセルロースフィルムからなる透明保護フィルム〔コニカミノルタオプト(株)製の商品名「KC2UA」〕を、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液からなる接着剤を介して貼合した。次に上記偏光子におけるトリアセチルセルロースフィルムとは反対側の面に、厚み23μmの環状ポリオレフィン系樹脂からなるゼロ位相差フィルム〔日本ゼオン(株)製の商品名「ZEONOR」〕を、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液からなる接着剤を介して貼り合わせ偏光板を作製した。次いで、ゼロ位相差フィルムにおける偏光子が接する面とは反対側の面に、密着性
向上のためのコロナ放電処理を施した後、上記(2)で作製した粘着剤層のセパレートフィルムとは反対側の面(粘着剤層面)をラミネーターにより貼り合わせた後、温度23℃、相対湿度65%の条件で7日間養生し、粘着剤層付光学フィルム(P-1)を得た。」
「【0142】
(6)粘着剤層付き光学フィルムの帯電防止性評価
得られた粘着剤層付き偏光フィルムのセパレーターを剥離したのちに、粘着剤の表面抵抗値を表面固有抵抗測定装置〔三菱化学(株)製の「ハイレスタ-up MCP-HT450」(商品名)〕により測定した。印加電圧250V、印加時間10秒の測定条件で実施した。表面抵抗値が1.0×1012Ω/□以下であれば、良好な帯電防止性が得られる。」
「【図1】
[図:0001411238000005.jpg]
」
「【図2】
[図:0001411238000006.jpg]
」
イ 甲1に記載された発明
甲1の実施例4(【0120】、【0121】及び【0124】~【0134】)に着目すると、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲1発明>
「単量体の組成が、製造例4として、
BA:ブチルアクリレート(ホモポリマーのガラス転移温度:-54℃)56.4重量部、
MA:メチルアクリレート(ホモポリマーのガラス転移温度:10℃)30重量部、
HEA:2-ヒドロキシエチルアクリレート3.0重量部、
5HPA:5-ヒドロキシペンチルアクリレート0.5重量部、
PEA:フェノキシエチルアクリレート10重量部及び
AA:アクリル酸0.1重量部であって、
重量平均分子量Mwは130万~150万の範囲である(メタ)アクリル系樹脂(A-4)100重量部、
B-1:トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体の酢酸エチル溶液(固形分濃度75%)、東ソー(株)から入手した商品名「コロネートL」である架橋剤0.3重量部、
C-1:1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサンであるシラン化合物0.3重量部、
D-1:N-デシルピリジニウム ビス(フロオロスルホニル)イミドであるイオン性化合物1.5重量部
を配合した粘着剤組成物。」
ウ 甲2の記載事項
甲2には、次の記載がある。なお、矢印は、申立人が付したものである。
「
[図:0001411238000007.jpg]
」
(p.199)
(タイトル及び矢印部分の当審訳)「表(続き)
高分子 CAS番号 Tg(K) 特記事項 参考
・・・
ポリブチルアクリレート 9003-49-0 219 機械的方法・・・
・・・
ポリイソブチルアクリレート 246・・・
・・・
ポリt-ブチルアクリレート 346・・・」
(2)本件発明1について
ア 対比
(ア)本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「(メタ)アクリル系樹脂」は、本件発明1の「アクリル系ポリマー」に相当するものであって、そのモノマーについて、次の甲1発明の欄に記載した甲1発明の(B′)~(D′)(記号は、当審合議体が付した。)は、それぞれ、本件発明1の欄に記載した本件発明1の(B)~(D)に相当する。
<甲1発明>
(B′)MA:メチルアクリレート(ホモポリマーのガラス転移温度:10℃)
(C′)HEA:2-ヒドロキシエチルアクリレート、5HPA:5-ヒドロキシペンチルアクリレート及びAA:アクリル酸
(D′)PEA:フェノキシエチルアクリレート
<本件発明1>
(B)t-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、メチルアクリレートからなる群から選択された少なくとも1種
(C)水酸基を含有する共重合可能なモノマー及びカルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーからなる群から選択された少なくとも1種
(D)芳香族基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種
(イ)甲1発明の「BA:ブチルアクリレート(ホモポリマーのガラス転移温度:-54℃)」と本件発明1の「n-ブチルアクリレート」とは、ブチルアクリレートである点で共通する。
(ウ)上記(イ)から、甲1発明の「BA:ブチルアクリレート(ホモポリマーのガラス転移温度:-54℃)56.4重量部」及び「MA:メチルアクリレート(ホモポリマーのガラス転移温度:10℃)30重量部」は、本件発明1の「(A)n-ブチルアクリレート」を「ブチルアクリレート」とみれば、「前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、前記(A)n-ブチリレートを40~89重量部と、前記(B)t-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、メチルアクリレートからなる群から選択された少なくとも1種以上の合計を5~40重量部と、の割合で含有してなり、且つ、(A)と(B)との比率(A)/(B)が1.0~17.8であり」を充足する。
(エ)さらに、甲1発明における「(メタ)アクリル系樹脂(A-4)」の「重量平均分子量Mwは130万~150万の範囲」は、本件発明1における「共重合体の重量平均分子量が100万~300万」も充足する。
(オ)甲1発明の「N-デシルピリジニウム ビス(フロオロスルホニル)イミドであるイオン性化合物」は、甲1の【0057】の記載からみて、本件発明1の「帯電防止剤」に相当する。
(カ)甲1発明の「トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体の酢酸エチル溶液(固形分濃度75%)、東ソー(株)から入手した商品名「コロネートL」である架橋剤」は、3つのイソシアネート基を有するから、本件発明1の「3官能以上のイソシアネート化合物、2官能以上のエポキシ化合物からなる群から選択された少なくとも1種以上の架橋剤」に相当する。
(キ)甲1発明の「1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサンであるシラン化合物」は、甲1の【0050】の記載からみて、本件発明1の「モノマータイプ又はオリゴマータイプのシランカップリング剤」に相当する。
(ク)してみると、本件発明1と甲1発明とは、以下の一致点及び相違点1~5を有している。なお、以下の一致点及び相違点を有する。
<一致点>
「アクリル系ポリマーと、(E)帯電防止剤と、(F)架橋剤とを含有する粘着剤組成物であって、
前記アクリル系ポリマーが、
(A)ブチルアクリレートと、
(B)t-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、メチルアクリレートからなる群から選択された少なくとも1種と、
(C)水酸基を含有する共重合可能なモノマー及びカルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーからなる群から選択された少なくとも1種と、
(D)芳香族基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種と、を共重合させた共重合体の重量平均分子量が100万~300万のアクリル系ポリマーであり、
前記(E)帯電防止剤として、フルオロ基含有アニオンを有するイオン性化合物を含有してなり、
前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、前記(A)ブチルアクリレートを40~89重量部と、前記(B)t-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、メチルアクリレートからなる群から選択された少なくとも1種以上の合計を5~40重量部と、の割合で含有してなり、且つ、(A)と(B)との比率(A)/(B)が1.0~17.8であり、
前記(F)架橋剤として、3官能以上のイソシアネート化合物、2官能以上のエポキシ化合物からなる群から選択された少なくとも1種以上の架橋剤を含有してなり、
前記粘着剤組成物が、さらに、(G)モノマータイプ又はオリゴマータイプのシランカップリング剤を含有してなる粘着剤組成物。
<相違点1>
ブチルアクリレートについて、本件発明1は、「n-ブチルアクリレート」であるのに対し、甲1発明は、その特定がされていない点。
<相違点2>
帯電防止剤について、本件発明1は、「フルオロ基含有アニオンとアンモニウムカチオンとからなる」ものであるのに対し、甲1発明は、「N-デシルピリジニウム ビス(フロオロスルホニル)イミド」であって、「フルオロ基含有アニオン」とピリジニウムカチオンとからなるものである点。
<相違点3>
帯電防止剤の融点について、本件発明1は、「25℃以上」であるのに対し、甲1発明は、その特定がされていない点。
<相違点4>
アクリル系ポリマーの100重量部に対する帯電防止剤の含有割合について、本件発明1は、「3~15重量部」であるのに対し、甲1発明は、「1.5重量部」である点。
<相違点5>
シランカップリング剤について、本件発明1は、「エポキシ基、メルカプト基、酸無水物基から選択された少なくとも1種以上の官能基を含有する」ものであるのに対し、甲1発明は、「1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン」である点。
イ 相違点の検討
(ア)相違点2及び4について
事案に鑑み、まず、相違点2及び4についてまとめて検討する。
相違点2は、帯電防止剤の種類に関するものであり、相違点4は、帯電防止剤の含有割合に関するものである。また、甲1発明は、甲1の実施例4の記載に基づいて認定した発明である(上記(1)イ)から、甲1の【請求項1】の発明の具体的な態様に係るものである。
しかし、甲1の【請求項1】には帯電防止剤に関する記載が何もないし、段落【0057】にも「粘着剤組成物は、帯電防止剤をさらに含んでもよい。」との記載に続けて、帯電防止剤の具体例や配合割合の例示が記載されている(上記(1)ア)にすぎない。
そうすると、当業者は、甲1発明の「D-1:N-デシルピリジニウム ビス(フロオロスルホニル)イミドであるイオン性化合物」が任意の成分であり、その目的(帯電防止)を達成できる限りにおいてその種類や含有割合がいかようであってもよいものであると理解する。また、甲1には、あえて甲1発明の「D-1:N-デシルピリジニウム ビス(フロオロスルホニル)イミドであるイオン性化合物 1.5重量部」に着目し、帯電防止剤の種類とその配合割合を「フルオロ基含有アニオンとアンモニウムカチオンとからなる」ものに限定すると同時に、その配合量を「アクリル系ポリマーの100重量部に対して、3~15重量部」に変更することを動機づけるような記載ないし示唆はない。
また、本件発明1は、その他の相違点に係る構成も同時に備えることによって、「粘着剤層の表面抵抗率が、9.0×10+10Ω/□以下の極めて優れた帯電防止性能を有し、かつ、耐久性を損なわない粘着剤組成物、及びそれを用いた粘着フィルムを提供することができる」(本件特許明細書の段落【0023】)という効果を奏するものである。
そうすると、相違点1、3及び5について検討するまでもなく、当業者であれば、甲1に記載された発明に基いて容易に本件発明1を発明することができたとは認められない。
(イ)申立人の主張について
申立人は、令和5年6月20日提出の意見書(4頁21行~6頁26行)において、相違点2について、概ね、甲1発明の「N-デシルピリジニウム ビス(フロオロスルホニル)イミド」のカチオン部分は、ピリジニウムであるから、当業者は、カチオンの選択に際して第一に有機カチオンに着目するし、また、甲7、8に記載されているとおり、イオン性化合物である帯電防止剤のカチオン成分としてアンモニウムカチオンが用いられているから、粘着剤層に含ませる帯電防止剤のカチオン成分としてアンモニウムカチオンを選択することは容易になし得たことであると主張し、また、相違点4について、訂正で帯電防止剤の含有割合の「下限値を3重量部」に変更しても、本件発明1の「3~15重量部」という範囲と、甲1の段落【0057】の「0.01~10重量部、好ましくは0.1~5重量部、さらに好ましくは1~3重量」という範囲に重複があるという状況は変わっていない、と主張している。
しかし、上記(ア)のとおり、甲1には、そもそも、当業者があえて甲1発明の「D-1:N-デシルピリジニウム ビス(フロオロスルホニル)イミドであるイオン性化合物 1.5重量部」に着目するような記載がないし、仮に、着目したとしても、帯電防止剤の種類とその配合割合を「フルオロ基含有アニオンとアンモニウムカチオンとからなる」ものに限定すると同時に、その配合量を「アクリル系ポリマーの100重量部に対して、3~15重量部」に変更することを動機づけるような記載ないし示唆がないのであるから、申立人の主張は、いずれも採用できない。
ウ 本件発明1についての小括
したがって、本件発明1は、当業者であれば、甲1に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
(3)本件発明2~5について
本件発明2~5は、本件発明1を直接又は間接的に引用し、さらに限定した発明に該当するところ、上記(2)ウのとおり、本件発明1は、当業者であれば、甲1に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとは認められないから、同様の理由により、本件発明2~5も、当業者であれば、甲1に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
(4)小括
以上のとおり、本件発明は、当業者であれば、甲1に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとは認められないから、その特許を取消理由1によって取り消されるべきものとすることはできない。
第6 取消理由通知で採用しなかった特許異議の申立理由について
取消理由通知で採用しなかった特許異議の申立理由は、上記第2の1の申立理由(1)、(3)及び(4)であるところ、以下検討する。
1 申立理由(1)について(甲1を主引例とした新規性欠如)
前記第5の2(2)ア(ク)のとおり、本件発明1と甲1発明とは、相違点1~5を有し、少なくとも相違点2及び4は実質的なものであるから、本件発明1は、甲1に記載された発明でない。
さらに、本件発明1を直接又は間接的に引用し、さらに限定した発明である本件発明2、4及び5についても同様である。
よって、本件発明1、2、4及び5は、甲1に記載された発明でない。
2 申立理由(3)について(甲3を主引例とした進歩性欠如)
(1)証拠に記載されている事項、及び、甲3に記載された発明
甲1、2に記載されている事項は、それぞれ、上記第5の2(1)ア、ウのとおりである。
ア 甲3の記載事項、及び、甲3に記載された発明
甲3には、次の記載がある。
「[0008] 本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、帯電防止剤の含有量を増やしてもブリードアウトが発生せず耐久性に悪影響を及ぼすことなく、様々な環境下においても帯電防止性能を長期にわたり安定して発揮することができ、かつエージング特性にも優れる粘着剤組成物、およびそれを用いてなる粘着剤並びに偏光板用粘着剤の提供を目的とするものである。
課題を解決するための手段
[0009] 本発明者等は、上記課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、アクリル系樹脂(A)と帯電防止剤(B)とを含有する粘着剤組成物において、上記帯電防止剤(B)としてアンモニウム系の帯電防止剤を特定量使用するとともに、アクリル系樹脂(A)として樹脂成分全体に対してアミド基とアミド基以外の官能基の2種を含有させ、この「アミド基以外の官能基」の含有量〔すなわち、アミド基以外の官能基を含有するモノマー(a1)由来の構造単位の含有量〕を、従来の技術常識で適切と考えられていた量より多くすることで、帯電防止剤の含有量を増やしてもブリードが発生せず、偏光板用粘着剤として使用した場合に、帯電防止性能と耐久性能とを、高いレベルでバランスよく維持でき、しかもアンモニウム塩系帯電防止剤を特定量用いることでエージング特性にも優れる粘着剤組成物が得られることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
[0010] すなわち、本発明の要旨は、アクリル系樹脂(A)および帯電防止剤(B)を含有する粘着剤組成物であって、アクリル系樹脂(A)が、アミド基とアミド基以外の官能基とを含有し、かつ、アミド基以外の官能基を含有するモノマー(a1)由来の構造単位が、アクリル系樹脂(A)の1~10重量%を占め、帯電防止剤(B)が、アンモニウム系帯電防止剤からなり、この帯電防止剤(B)の含有量が、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して1.2~15重量部であることを特徴とする粘着剤組成物に関するものである。
さらに、本発明は、上記粘着剤組成物が、架橋剤(C)により架橋されてなる粘着剤、並びに粘着剤を用いてなる偏光板用粘着剤に関するものである。
本発明の粘着剤組成物およびそれを架橋して得られる粘着剤は、帯電防止性能の経時安定性に優れ、また従来品より多くの帯電防止剤を配合してもブリードアウトを生じることなく、優れた帯電防止性能と耐久性とを両立し、さらには、短時間でゲル分率が上昇するためエージング特性にも優れる。」
「[0016]<アクリル系樹脂(A)>
本発明の粘着剤組成物を構成するアクリル系樹脂(A)は、アミド基とアミド基以外の官能基とを含有し、アミド基以外の官能基を含有するモノマー(a1)由来の構造単位の含有量が、アクリル系樹脂(A)全体の1~10重量%である。アミド基以外の官能基を含有するモノマー(a1)由来の構造単位の含有量としては、好ましくは1.5~8重量%、より好ましくは2~5重量%、特に好ましくは2.5~4重量%である。アミド基以外の官能基を含有するモノマー(a1)由来の構造単位の含有量が多すぎると、官能基が多く残存するため、経時での物性変化が起こりやすい傾向があり、また、粘着剤の極性成分の割合が高くなり、粘着剤層が水分を吸収しやすくなるため、加熱により発泡する等、耐久性が低下する傾向がある。アミド基以外の官能基を含有するモノマー(a1)由来の構造単位の含有量が少なすぎると、架橋反応においてアクリル系樹脂が架橋剤と充分に反応せず、粘着剤として充分な凝集力が出ないため、耐久性が低下する傾向がある。
[0017] 前記アミド基以外の官能基を含有するモノマー(a1)としては、後述の架橋剤(C)と反応する官能基を有するモノマーがあげられ、例えば、水酸基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、アセトアセチル基含有モノマー、イソシアネート基含有モノマー、グリシジル基含有モノマー等があげられる。これらのなかでも、効率的に架橋反応ができる点で、水酸基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマーが好ましく、さらには、水酸基含有モノマーとカルボキシル基含有モノマーとを併用することが好ましい。
[0018] 上記水酸基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のアクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;カプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のカプロラクトン変性モノマー;ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のオキシアルキレン変性モノマー等があげられる。
[0019] 上記カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、アクリル酸ダイマー、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、グルタコン酸、イタコン酸、N-グリコール酸、ケイ皮酸等があげられる。なかでも、共重合性や耐久性の点から、(メタ)アクリル酸が好適に用いられる。」
「[0025] また、本発明のアクリル系樹脂(A)はアミド基を含有するものであり、アミド基含有モノマー(a2)由来の構造単位を1~25重量%含有することが好ましく、さらに好ましくは2~10重量%であり、特に好ましくは3~7重量%である。アミド基含有モノマー(a2)由来の構造単位の含有量が多すぎると、アクリル系樹脂の極性成分の割合が高くなり、それを架橋してなる粘着剤層が水分を吸収しやすくなるため、耐久性が低下する傾向があり、少なすぎると、粘着剤として充分な凝集力が出ず、加熱および加湿後の耐久性が低下する傾向がある。」
「[0028] 本発明のアクリル系樹脂(A)は、さらに(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a3)由来の構造単位を含有することが好ましく、また、必要に応じて、その他の共重合可能なエチレン性不飽和モノマー(a4)(以下、「他の共重合性モノマー(a4)」と記載することがある)由来の構造単位を含有してもよい。
[0029] (メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a3)由来の構造単位は、アクリル系樹脂(A)の主構造単位を占めるものであり、含有量が50~99重量%であることが好ましく、より好ましくは60~98重量%、さらに好ましくは70~95重量%、特に好ましくは70~93重量%である。(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a3)由来の構造単位の含有量が多すぎると、アミド基含有モノマー(a2)由来の構造単位およびアミド基以外の官能基を含有するモノマー(a1)由来の構造単位の含有量が減少し、本発明の効果が得られ難くなる傾向があり、少なすぎると、アクリル系樹脂の高分子量化が困難であったり、生産性が低下する傾向がある。
[0030] 上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a3)としては、例えば、アルキル基の炭素数が、通常1~20、好ましくは1~18、より好ましくは1~12、特には1~8であるものが好ましく、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等があげられる。なかでも、汎用性、粘着物性の点から、n―ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましい。これらは単独で、もしくは2種以上併せて用いられる。
[0031] 他の共重合性モノマー(a4)由来の構造単位の含有量としては、0~50重量%であることが好ましく、より好ましくは3~20重量%、さらに好ましくは5~20重量%、特に好ましくは6~15重量%である。他の共重合性モノマー(a4)の含有量が多すぎると、ガラス転移温度が高くなり、リワーク性が低下する傾向があり、少なすぎると、屈折率の調整効果が発現し難くなる傾向がある。
[0032] 上記、他の共重合性モノマー(a4)としては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、オルトフェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香環含有モノマー;シクロヘキシルオキシアルキル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の脂環含有モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、ステアリン酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ビニルトルエン、ビニルピロリドン、メチルビニルケトン、ジメチルアリルビニルケトン等があげられる。これらは単独で、もしくは2種以上併せて用いられる。」
「[0062] 本発明の粘着剤組成物は、上記特定のアクリル系樹脂(A)および帯電防止剤(B)を必須成分として含有するものであり、この粘着剤組成物を架橋剤(C)により架橋することにより本発明の粘着剤を得ることができる。」
「[0081] 本発明においては、上記本発明の粘着剤組成物を架橋してなる粘着剤層を光学部材(光学積層体)上に積層形成することにより、粘着剤層付き光学部材を得ることができる。
[0082] 上記粘着剤層付き光学部材には、粘着剤層の光学部材面とは逆の面に、さらに離型シートを設けることが好ましい。」
「[0094] また、粘着剤層付き光学部材における粘着剤層の厚みは、5~300μmであることが好ましく、より好ましくは10~50μm、さらに好ましくは10~30μmである。この粘着剤層の厚みが薄すぎると、粘着物性が安定しにくい傾向がみられ、厚すぎると、生産時に気泡が含まれるなど外観不良が増大する傾向がみられる。
[0095] 本発明における光学部材としては、特に限定されることなく、液晶表示装置、有機EL表示装置、PDP等の画像表示装置に好適に用いられる光学フィルム、例えば、偏光板や位相差板、楕円偏光板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、さらにはこれらが積層されているもの等があげられる。なかでも、偏光板であることが本発明においては有効であり、特に、偏光子の収縮に耐える等、高い耐久性が求められる偏光板であることが本発明では有効である。」
「[0104]〔アクリル系樹脂(A)の調製〕
以下の樹脂の製造において、物質名の後に付記した(a1)~(a4)はモノマーの種類を表し、それぞれ、(a1)はアミド基以外の官能基を含有するモノマー、(a2)はアミド基含有モノマー、(a3)は(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー、(a4)はその他の共重合性モノマーであることを示す。
[0105]<アクリル系樹脂(A-1)の製造>
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口および温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、ブチルアクリレート〔BA〕(a3)82.5部、ベンジルアクリレート〔BzA〕(a4)10部、2-ヒドロキシエチルアクリレート〔HEA〕(a1)0.5部、アクリル酸〔AAc〕(a1)7部、溶媒として酢酸エチル47.2部、アセトン42部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル〔AIBN〕0.013部を仕込み、適宜AIBNと酢酸エチルを追加しながら、還流温度で3.25時間反応後、酢酸エチルにて希釈して、アクリル系樹脂(A-1)(重量平均分子量150万,分散度3.3)の溶液を得た。」
「[0107]<アクリル系樹脂(A-3)の製造>
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口および温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、ブチルアクリレート(a3)93部、メチルメタクリレート〔MMA〕(a3)2部、ジメチルアクリルアミド〔DMAA〕(a2)5部、溶媒として酢酸エチル43部、アセトン42部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル〔AIBN〕0.011部を仕込み、適宜AIBNと酢酸エチルを追加しながら、還流温度で3.25時間反応後、酢酸エチルにて希釈して、アクリル系樹脂(A-3)(重量平均分子量140万,分散度4.6)の溶液を得た。」
「[0110] 上記のようにして作製したアクリル系樹脂(A-1)~(A-5)について、原料モノマー成分の含有量、重量平均分子量(Mw)および分散度を下記の表1に示す。
[0111]
[表1]
[図:0001411238000008.jpg]
[0112]<帯電防止剤(B)>
また、帯電防止剤(B)として、以下のものを用意した。
(B-1):メチルトリ-n-ブチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド 融点27.5℃(メーカー公表値)(3M社製、「FC-4400」)
・・・
[0113]<架橋剤(C)>
そして、架橋剤(C)として、以下のものを用意した。
(C-1):トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート付加物の55%酢酸エチル溶液(日本ポリウレタン社製、「コロネートL-55E」)
(C-2)1,3-ビス(N,N’-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(三菱ガス化学社製、「テトラッド-C」)
[0114]<シランカップリング剤(D)>
また、シランカップリング剤(D)として、以下のものを用意した。
(D-1):エポキシ系シランカップリング剤〔3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、「KBM-403」)〕
[0115]〔実施例1~10、比較例1~7〕
〔粘着剤組成物(溶液)の調製〕
上記のようにして調製、準備した各配合成分を、下記の表2に示す割合で配合することにより、粘着剤組成物を調製し、これを酢酸エチルにて希釈して、粘着剤組成物溶液を作製した(固形分濃度13%)。なお、下記の表2において、帯電防止剤(B),架橋剤(C),シランカップリング剤(D)の各配合量は、アクリル系樹脂(A)全体を100重量部として換算した値である。
[0116]
[表2]
[図:0001411238000009.jpg]
[0117] つぎに、実施例および比較例の粘着剤組成物溶液を、ポリエステル系離型シートに、乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、100℃で3分間乾燥した後、形成された粘着剤組成物層を偏光板(保護フィルム:富士フィルム社製TACフィルム)に転写し、23℃×65%RHの条件下で7日間エージングさせて、供試用の粘着剤層付き偏光板を得た。」
「[請求項1] アクリル系樹脂(A)および帯電防止剤(B)を含有する粘着剤組成物であって、アクリル系樹脂(A)が、アミド基とアミド基以外の官能基とを含有し、かつ、アミド基以外の官能基を含有するモノマー(a1)由来の構造単位が、アクリル系樹脂(A)の1~10重量%を占め、帯電防止剤(B)が、アンモニウム系帯電防止剤からなり、この帯電防止剤(B)の含有量が、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して1.2~15重量部であることを特徴とする粘着剤組成物。」
甲3の実施例6の粘着剤組成物の配合について[0116]の[表2]を参照し、そのアクリル樹脂(A)を構成するモノマーの配合について[0111]の[表1]を参照し、そのアクリル樹脂(A)以外の配合物について関連する記載を参照すると、甲3の実施例6の粘着剤組成物の記載に基づき、甲3には次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。なお、下記の甲3発明は、上記(1)アの甲3発明と同じものである。
<甲3発明>
「アクリル系樹脂A-1として、
重量平均分子量が150万で、
ブチルアクリレート(BA)82.5重量部、
2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)0.5重量部、
アクリル酸(AAc)7重量部、
ベンジルアクリレート(BzA)10重量部、
の共重合体100部と、
アクリル系樹脂A-3として、
重量平均分子量が140万で、
ブチルアクリレート(BA)93重量部、
メチルメタクリレート(MMA)2重量部、
ジメチルアクリルアミド(DMMA5重量部、
の共重合体50部と、
帯電防止剤B-1として、メチルトリ-n-ブチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(融点が27.5℃、FC-4400)3部と、
架橋剤C-1として、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート付加物の55%酢酸エチル溶液(コロネートL-55E)5部と、
架橋剤C-2として、1,3-ビス(N,N’-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(テトラッドC)0.06部と、
シランカップリング剤D-1として、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-403)0.2部と、
を配合した粘着剤組成物。」
イ 甲4の記載事項
甲4には、次の記載がある。なお、枠、下線、及び矢印は申立人が付したものである。
「
[図:0001411238000010.jpg]
」(76頁)
「
[図:0001411238000011.jpg]
」(77頁)
「
[図:0001411238000012.jpg]
[図:0001411238000013.jpg]
」(80~81頁)
「
[図:0001411238000014.jpg]
[図:0001411238000015.jpg]
」(284~285頁)
「
[図:0001411238000016.jpg]
[図:0001411238000017.jpg]
」(290~291頁)
ウ 甲5の記載事項
甲5には、次の記載がある。なお、枠、及び、下線は申立人が付したものである。
「
[図:0001411238000018.jpg]
・・・
[図:0001411238000019.jpg]
」(17頁)
「
[図:0001411238000020.jpg]
」(22頁)
「
[図:0001411238000021.jpg]
[図:0001411238000022.jpg]
[図:0001411238000023.jpg]
[図:0001411238000024.jpg]
[図:0001411238000025.jpg]
[図:0001411238000026.jpg]
」(120~123頁)
エ 甲6の記載事項
甲6には、次の記載がある。なお、枠、及び、下線は申立人が付したものである。
「
[図:0001411238000027.jpg]
」(153頁)
「
[図:0001411238000028.jpg]
」(154頁)
(2)対比
甲3発明の「アクリル系樹脂A-1」と本件発明1のアクリル系ポリマーは、「(A)n-ブチルアクリレートと、
(C)水酸基を含有する共重合可能なモノマー及びカルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーからなる群から選択された少なくとも1種と、
(D)芳香族基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種と、
を共重合させた共重合体の重量平均分子量が100万~300万のアクリル系ポリマーであり、
前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、前記(A)n-ブチルアクリレートを40~89重量部含有している共重合体」である点で一致している。
また、甲3発明は、「アクリル系樹脂A-1」100部に対して、「帯電防止剤B-1として、メチルトリ-n-ブチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(融点が27.5℃、FC-4400)3部」を含むものである。
そうすると、本件発明1と甲3発明とを対比すると、一致点、相違点は以下のとおりである。
<一致点>
「 アクリル系ポリマーと、(E)帯電防止剤と、(F)架橋剤とを含有する粘着剤組成物であって、
前記アクリル系ポリマーが、
(A)n-ブチルアクリレートと、
(C)水酸基を含有する共重合可能なモノマー及びカルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーからなる群から選択された少なくとも1種と、
(D)芳香族基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種と、
を共重合させた共重合体の重量平均分子量が100万~300万のアクリル系ポリマーであり、
前記(E)帯電防止剤として、フルオロ基含有アニオンとアンモニウムカチオンとからなる融点が25℃以上のイオン性化合物を、前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、3~15重量部の割合で含有してなり、
前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、前記(A)n-ブチルアクリレートを40~89重量部の割合で含有してなり、
前記(F)架橋剤として、3官能以上のイソシアネート化合物、2官能以上のエポキシ化合物からなる群から選択された少なくとも1種以上の架橋剤を含有してなり、
前記粘着剤組成物が、さらに、(G)エポキシ基、メルカプト基、酸無水物基から選択された少なくとも1種以上の官能基を含有するモノマータイプ又はオリゴマータイプのシランカップリング剤を含有してなることを特徴とする粘着剤組成物。」
<相違点6>
アクリル系ポリマーを構成するモノマーについて、本件発明1は、「(B)t-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、nーブチルメタクリレート、メチルアクリレートからなる群から選択された少なくとも1種」を「前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、(B)t-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、メチルアクリレートからなる群から選択された少なくとも1種以上の合計を5~40重量部」の割合で含有するとともに、「(A)n-ブチルアクリレート」と「(B)t-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、メチルアクリレートからなる群から選択された少なくとも1種以上の合計」の比について、「(A)と(B)との比率(A)/(B)が1.0~17.8であり」と特定されているのに対し、甲3発明は、そのような特定をいずれも備えていない点
(3)相違点6の検討
甲3発明は、甲3の実施例6の記載に基づいて認定した発明である(上記ア(ア))から、甲3の[請求項1]の発明の具体的な態様に係るものであり、甲3発明の「アクリル系樹脂A-1」は、[請求項1]の「アクリル系樹脂(A)」に対応すると認められるところ、[請求項1]の「アクリル系樹脂(A)」について、「アミド基とアミド基以外の官能基とを含有し、かつ、アミド基以外の官能基を含有するモノマー(a1)由来の構造単位が、アクリル系樹脂(A)の1~10重量%」を占めるものとすることが記載されている。また、「アミド基以外の官能基を含有するモノマー(a1)」の具体例として2-ヒドロキシエチルアクリレート、及び、アクリル酸が例示されている(甲3の[0018])。
したがって、甲3発明の「アクリル系樹脂A-1」を構成するモノマーのうち、「2-ヒドロキシエチルアクリレート」、及び、「アクリル酸」は、「アミド基以外の官能基を含有するモノマー(a1)」に相当するモノマーであると認められる。
また、甲3には「アクリル系樹脂(A)」を構成するその他のモノマーについて「さらに(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a3)由来の構造単位を含有することが好ましく、また、必要に応じて、その他の共重合可能なエチレン性不飽和モノマー(a4)(以下、「他の共重合性モノマー(a4)」と記載することがある)由来の構造単位を含有してもよい」(甲3の[0028])との説明に続けて、「上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a3)としては・・・具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート・・・」(甲3の[0030])、「上記、他の共重合性モノマー(a4)としては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート・・・」(甲3の[0032])と記載されているから、甲3発明の「アクリル系樹脂A-1」を構成するモノマーのうち、「ブチルアクリレート」、及び、「ベンジルアクリレート」は、それぞれ、「(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a3)」、「他の共重合性モノマー(a4)」に相当するモノマーであると認められる。
しかしながら、甲3においては、本件発明1の「(B)t-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、nーブチルメタクリレート、メチルアクリレートからなる群から選択された少なくとも1種」に該当するモノマーが、n-ブチルアクリレートと区別されることなく「(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a3)」と同列のモノマーとして記載されており、甲3発明の「アクリル系樹脂A-1」を構成する4種類のモノマー(ブチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸、ベンジルアクリレート)のうち、特に「ブチルアクリレート」に着目した上で、ブチルアクリレートと同列のモノマーとして記載されているt-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、nーブチルメタクリレート、メチルアクリレートからなる群から選択された少なくとも1種を用いることとするとともに、その含有割合を相違点6に係る事項を充足するように、その配合割合を「アクリル系樹脂A-1」の100重量部に対して、(A)n-ブチルアクリレートを40~89重量部と、(B)t-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、メチルアクリレートからなる群から選択された少なくとも1種以上の合計を5~40重量部と、の割合とし、且つ、(A)と(B)との比率(A)/(B)が1.0~17.8」とすることを動機づけるような記載や示唆はない。
申立人は、特許異議申立書の34頁23行~36頁14行において、甲3の[0008]、[0016]及び[0025]の記載から、粘着剤として凝集力を高めることが動機づけられるところ、甲4~6に基づき、アクリル樹脂を主成分とするアクリル系粘着剤の凝集力を高める方法としてガラス転移点が高いコモノマーと共重合させることが周知であって、甲3発明のアクリル系樹脂は、主成分がn-ブチルアクリレートであるので、甲3の[0030]に挙げられているコモノマーの中からこれよりもガラス転移点が高いモノマーとして、t-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、メチルアクリレートと共重合させることは、当業者が容易に想到し得ることや、甲1の段落【0023】や実施例4の記載に基づき、(A)と(B)との比率(A)/(B)が1.88程度のものとする動機もある旨主張している。
しかしながら、甲3の[0030]に多数例示されているコモノマーの中からt-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、メチルアクリレートを選択する動機付けがあるとはいえないから、申立人の主張を採用することはできない。
(4)小括
以上のとおり、本件発明1は、当業者であれば、甲3に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとは認められないから、さらに本件発明2~5について検討するまでもなく、申立理由3を採用することはできない。
3 申立理由(4)(サポート要件違反)について
(1)申立理由(4)の概要
ア 主張1
本件発明には、その「アクリル系ポリマー」の「(C)水酸基を含有する共重合可能なモノマー及びカルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーからなる群から選択された少なくとも1種」が「カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマー」のみからなる態様を含んでいるところ、この態様に該当する実施例がないから、そのような態様について課題を解決できる結果が得られるのかどうか当業者が理解することができない。
イ 主張2
本件発明の「比率(A)/(B)が1.0~17.8であり」という事項は、「前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、前記(A)n-ブチルアクリレートを40~89重量部と、前記(B)t-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、メチルアクリレートからなる群から選択された少なくとも1種以上の合計を5~40重量部と、の割合で含有してなり」という事項と完全に重複する規定であり、また、実施例において「1.25~8.0」の範囲しか現れていないので、(A)成分と(B)成分は、それぞれ、40~89重量部、5~40重量部という範囲内の自由な値をとることはできない。
したがって、(A)成分と(B)成分の重量比について十分に特定されていない。
(2)当審合議体の判断
ア 判断規範
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
イ 本件発明の課題と解決手段
本件明細書における【0005】の記載から、本件発明が解決しようとする課題(以下「本件課題」という。)は、「粘着剤層の表面抵抗率が、9.0×10+10Ω/□以下の極めて優れた帯電防止性能を有し、かつ、耐久性を損なわない粘着剤組成物、及びそれを用いた粘着フィルムを提供すること」である。
そして、本件課題を解決する手段は、【0007】及び【0008】の記載からみて、「極めて優れた帯電防止性能を得るために、帯電防止剤の含有量を多くして」も、「アンモニウム系帯電防止剤が、粘着剤層の表面に析出せず、耐久性を維持できる粘着剤層にするため、粘着剤組成物に含まれるアクリル系ポリマーが、n-ブチルアクリレート(BA)を主体とし、BAと共重合性の良いモノマーを選択して共重合させてなること」であると認められる。
ウ 主張1について
本件発明の「(C)水酸基を含有する共重合可能なモノマー及びカルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーからなる群から選択された少なくとも1種」は、前記イの解決手段からみて、「BAと共重合性の良いモノマー」であると認められる。そして、【0053】【表1】の実施例2~4、6及び7において、(C)が「水酸基を含有する共重合可能なモノマー」及び「カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマー」である場合に、【0063】【表3】から、本件課題が解決できることが示されているから、「水酸基を含有する共重合可能なモノマー」及び「カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマー」のいずれもが「BAと共重合性の良いモノマー」であるといえ、(C)が「カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマー」のみからなる場合も、「BAと共重合性の良いモノマー」として、本件課題を解決できるものと推認できる。
また、申立人は、(C)が「カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマー」のみからなる場合に、本件課題が解決できないことを具体的な証拠をもって主張しているものでもない。
したがって、申立人の主張1を採用することはできない。
エ 主張2について
本件発明の「(B)t-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、メチルアクリレートからなる群から選択された少なくとも1種」についても、前記イの解決手段からみて、「(A)n-ブチルアクリレート」と「共重合性の良いモノマー」であると認められるところ、「比率(A)/(B)」によって「共重合性」が変わることはないと認められるから、「比率(A)/(B)」によらず本件課題を解決できるものと推認できる。
また、申立人は、「比率(A)/(B)」が「1.25~8.0」の範囲外である場合に、本件課題が解決できないことを具体的な証拠をもって主張しているものでもない。
したがって、申立人の主張2を採用することもできない。
オ 以上のとおりであるから、申立理由(4)を採用することはできない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700706