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特許異議申立

2022-700857

注射器

審判番号
2022-700857
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-043041
登録番号
7026991
請求日
2022年09月01日
審決日
2024年07月18日
公報発行日
2025年03月28日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】ノバルティス アーゲー
  • 【権利者代理人】小林 浩
  • 【権利者代理人】片山 英二
  • 【権利者代理人】大森 規雄
  • 【権利者代理人】藤 拓也
  • 【権利者代理人】大川 亮
  • 【異議申立人】冨田 圭太郎
審判長/審判官
  • 審判長 佐々木 正章
  • 審判官 井上 哲男
  • 審判官 安井 寿儀
分類
P1651.537-ZAA(A61M) / P1651.121-ZAA(A61M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第7項、特許法第113条第2号、特許法第113条第4号、特許法第120条の8第1項
データ出所
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特許第7026991号発明「注射器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7026991号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-16〕について訂正することを認める。 特許第7026991号の請求項1~13、15、16に係る特許を取り消す。 特許第7026991号の請求項14に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7026991号(以下「本件特許」という。)の請求項1~16に係る特許についての出願は、2013年(平成25年) 5月30日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年 6月 1日、(EP)欧州特許庁)を国際出願日とする特願2015-514516号の一部を、令和 2年 3月12日に新たな特許出願としたものであって、令和 4年 2月18日にその特許権の設定登録がされ、同年 3月 1日に特許掲載公報が発行された。その後、令和 4年 9月 1日にその請求項1~16に係る特許について、特許異議申立人冨田 圭太郎(以下「特許異議申立人」という。)より特許異議申立書が提出された。 特許異議の申立て以降の手続の経緯は以下のとおりである。 令和 4年 9月 1日 特許異議申立書の提出 同年12月28日付け 取消理由通知書 令和 5年 4月26日 特許権者による意見書・訂正請求書の提出 同年 5月30日付け 訂正請求があった旨の通知書 (特許法第120条の5第5項) 同年 6月29日 特許異議申立人による意見書の提出 同年10月 3日付け 取消理由通知書(決定の予告) 令和 6年 1月24日 特許権者による意見書・訂正請求書の提出 同年 2月27日 訂正請求書の手続補正書の提出 同年 3月27日付け 訂正請求があった旨の通知書 (特許法第120条の5第5項) 同年 5月 1日 特許異議申立人による意見書の提出 なお、令和 5年 4月26日提出の訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 令和 6年 1月24日提出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の請求は、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-16〕について訂正することを求めるものであり、その内容は以下のとおりである(下線部は訂正箇所を示す。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「前記バックトップショルダとロッドショルダが接触するときに前記一端部から離れる向きへの前記プランジャロッドの移動を防止する」とあるのを、 「前記バックトップショルダとロッドショルダが接触するときに前記一端部から離れる向きへの前記プランジャロッドの移動を防止し、前記プランジャ接触面と前記ストッパが接触した状態で配置され、前記可変容量チャンバが注射可能な薬剤で充填されるとき、前記ロッドショルダと前記バックストップショルダとの間に0mmより大きく2mm以下の間隙が存在し、前記ストッパは、互いに少なくとも3mm、第1の軸に沿う方向に離隔される前側円周リブと後側円周リブを備え、前記バックストップは、前記本体から取り外し可能である」 に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項5に「前記ストッパは1つまたは複数の円周リブを含む」とあるのを、「前記ストッパは複数の円周リブを含む」に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項14を削除する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項15に「請求項1から14のいずれか一項」とあるのを、「請求項1から13のいずれか一項」に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項16に「請求項1から15のいずれか一項」とあるのを、「請求項1から13及び15のいずれか一項」に訂正する。 2 一群の請求項について 本件訂正は、一群の請求項〔1~16〕に対して請求されたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。 3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的の適否 訂正事項1は、訂正前の請求項1に「前記プランジャ接触面と前記ストッパが接触した状態で配置され、前記可変容量チャンバが注射可能な薬剤で充填されるとき、前記ロッドショルダと前記バックストップショルダとの間に0mmより大きく2mm以下の間隙が存在し、前記ストッパは、互いに少なくとも3mm、第1の軸に沿う方向に離隔される前側円周リブと後側円周リブを備え、前記バックストップは、前記本体から取り外し可能である」との構成を付加して減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項1により付加された「前記プランジャ接触面と前記ストッパが接触した状態で配置され、前記可変容量チャンバが注射可能な薬剤で充填されるとき、前記ロッドショルダと前記バックストップショルダとの間に0mmより大きく2mm以下の間隙が存在し、」との事項は、段落【0014】~【0019】の記載に基いて導き出される事項であるから、新たな技術的事項を導入するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項(以下「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてされたものである。 また、訂正事項1により付加された「前記ストッパは、互いに少なくとも3mm、第1の軸に沿う方向に離隔される前側円周リブと後側円周リブを備え、」との事項は、本件明細書等の段落【0016】の記載に基いて導き出される事項であるから、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。 さらに、訂正事項1により付加された「前記バックストップは、前記本体から取り外し可能である」との構成は、本件明細書等の段落【0013】の記載に基いて導き出される事項であるから、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。 以上より、訂正事項1は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。 (2)訂正事項2 ア 訂正の目的について 訂正事項2は、訂正前の特許請求の範囲の請求項5の「前記ストッパは1つまたは複数の円周リブを含む」との記載から、「1つまたは」との記載を削除し、「前記ストッパは複数の円周リブを含む」との記載に変更するものであって、ストッパが1つの円周リブに係る構成を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項2は、特許請求の範囲を減縮するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項2は、特許請求の範囲を減縮するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。 (3)訂正事項3 ア 訂正の目的について 訂正事項3は、訂正前の特許請求の範囲の請求項14を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項3は、特許請求の範囲を減縮するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項3は、特許請求の範囲を減縮するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。 (4)訂正事項4 ア 訂正の目的について 訂正事項4は、請求項15が「請求項1から14のいずれか一項」と引用していたところ、訂正事項3により請求項14が削除されたことに伴い、請求項14を引用しないものとする訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項4は、上記アのとおり、明瞭でない記載を釈明するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項4は、上記アのとおりであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。 (5)訂正事項5 ア 訂正の目的について 訂正事項5は、請求項16が「請求項1から15のいずれか一項」と引用していたところ、訂正事項3により請求項14が削除されたことに伴い、請求項14を引用しないものとする訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項5は、上記アのとおり、明瞭でない記載を釈明するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。 ウ 願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項5は、上記アのとおりであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 4 独立特許要件について 請求項1~16について特許異議の申立てがされているので、訂正後の請求項1~13、15、16に係る訂正に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。 5 小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に規定する特許請求の範囲の減縮又は明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、かつ、同法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~16〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 本件訂正により訂正された請求項1~16に係る発明(以下「本件発明1~16」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~16に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 本体と、ストッパと、プランジャとを備える、最終的に滅菌済みの注射器であって、前記最終的に滅菌済みの注射器は、パッケージ内に封止された製品を滅菌することにより得られ、前記本体が、一端部にある出口を備え、前記ストッパが、前記ストッパの前面と前記本体とが可変容量チャンバを画定するように前記本体内部に配置され、前記可変容量チャンバから、前記出口を通して流体を押し出すことができ、前記プランジャが、第1の端部にあるプランジャ接触面と、前記プランジャ接触面と後部との間に延在するロッドとを備え、前記プランジャ接触面が、前記ストッパに接触するが、前記ストッパに結合はしないように構成され、それにより、前記ストッパを前記本体の前記一端部に向けて押し進めて前記可変容量チャンバの前記容量を減少するために前記プランジャを使用することができるが、前記一端部から離れる向きに前記ストッパを移動させるために前記プランジャを使用することができず、前記注射器は眼科用注射に適しており、前記可変容量チャンバが、注射可能な薬剤を含み、前記注射可能な薬剤は、ラニビズマブの10mg/ml溶液、投薬体積は0.05mlまたは0.03mlであり、または、前記注射可能な薬剤は、アフリベルセプトの40mg/ml溶液、投薬体積は0.05mlであり、前記ロッドが、前記一端部とは逆向きの少なくとも1つのロッドショルダを備え、前記注射器が、前記本体の後部に配置されたバックストップを含み、前記バックストップが、前記一端部に向いたバックストップショルダを含み、前記ロッドショルダと協働して、前記バックトップショルダとロッドショルダが接触するときに前記一端部から離れる向きへの前記プランジャロッドの移動を防止し、前記プランジャ接触面と前記ストッパが接触した状態で配置され、前記可変容量チャンバが注射可能な薬剤で充填されるとき、前記ロッドショルダと前記バックストップショルダとの間に0mmより大きく2mm以下の間隙が存在し、前記ストッパは、互いに少なくとも3mm、第1の軸に沿う方向に離隔される前側円周リブと後側円周リブを備え、前記バックストップは、前記本体から取り外し可能である 滅菌済みの注射器。 【請求項2】 前記ストッパは、液密シールを用いて可変容量チャンバの後部を画定することによって封止機能を提供し、前記液密シールは、滅菌性シールも提供する請求項1に記載の注射器。 【請求項3】 前記ストッパに結合しない前記プランジャが、使用者が前記プランジャおよび前記プランジャに接続されたストッパを移動させること、滅菌していない空気または他の流体を前記注射器内に引き込むこと、または滅菌していない領域に前記ストッパを移動させることを防止する請求項1または2に記載の注射器。 【請求項4】 前記出口から離れる向きへの前記ロッドの移動は制約される請求項1から3のいずれか一項に記載の注射器。 【請求項5】 前記ストッパは複数の円周リブを含む請求項1から4のいずれか一項に記載の注射器。 【請求項6】 前記可変容量チャンバは、3mmから6mmの内径を有する請求項1から5のいずれか一項に記載の注射器。 【請求項7】 前記注射器の本体の長さは、70mm未満である請求項1から6のいずれか一項に記載の注射器。 【請求項8】 前記注射器は、シリコーンを含まない請求項1から7のいずれか一項に記載の注射器。 【請求項9】 前記本体は、プラスチックまたはガラスからなる請求項1から8のいずれか一項に記載の注射器。 【請求項10】 0.4ml以上0.6ml以下の公称最大容量を有するように寸法設定される請求項1から9のいずれか一項に記載の注射器。 【請求項11】 0.5mlの公称最大充填容量を有する請求項1から10のいずれか一項に記載の注射器。 【請求項12】 前記注射器は、4.5mmから4.8mmの内径を有する請求項1から11のいずれか一項に記載の注射器。 【請求項13】 前記出口は、封止デバイスにより可逆的に封止される請求項1から12のいずれか一項に記載の注射器。 【請求項14】(削除) 【請求項15】 前記ラニビズマブは、脈絡膜新生血管、加齢黄斑変性、網膜静脈分枝閉塞症(bRVO)と網膜中心静脈閉塞症(cRVO)の両方を含む、網膜静脈閉塞症(RVO)に続発する黄斑浮腫、病的近視(PM)に続発する脈絡膜新生血管、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、糖尿病性網膜症、および増殖網膜症から選択される眼病の治療のために用いられる、請求項1から13のいずれか一項に記載の注射器。 【請求項16】 請求項1から13及び15のいずれか一項に記載の最終的に滅菌済みの注射器を組み立てる方法であって、前記最終的に滅菌済みの注射器は、パッケージ内に封止された製品を滅菌することにより得られ、前記方法は、以下のステップ: i)本体およびストッパを提供するステップであって、前記本体が、一端部にある出口を備え、前記ストッパが、前記ストッパの前面と前記本体とが可変容量チャンバを画定するように前記本体内部に配置され、前記可変容量チャンバから、前記出口を通して流体を押し出すことができ、前記出口が解放可能に封止され、前記可変容量チャンバが薬剤を含むステップと、 ii)第1の端部にあるプランジャ接触面と、前記プランジャ接触面と後部との間に延在するロッドとを備えるプランジャを提供し、前記プランジャを前記ストッパに結合させずに、前記プランジャ接触面と前記プランジャの少なくとも一部とを前記本体内部に配置するステップと iii)前記本体内部に前記ストッパと前記プランジャとを配置した後に、滅菌するステップと を含み、 前記ロッドが、前記一端部とは逆向きの少なくとも1つのロッドショルダを備え、前記注射器が、前記本体の後部に配置されたバックストップを含み、前記バックストップが、前記一端部に向いたバックストップショルダを含み、前記ロッドショルダと協働して、前記バックトップショルダとロッドショルダが接触するときに前記一端部から離れる向きへの前記プランジャロッドの移動を防止する 方法。」 第4 取消理由の概要 本件発明1~13、15、16に係る特許に対して、当審が令和 5年10月 3日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。 1 取消理由1(進歩性) (1)本件特許の請求項1~5に係る発明は、引用文献1に記載された発明と周知技術(引用文献2~6、12、13)とに基き、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (2)本件特許の請求項6に係る発明は、引用文献1に記載された発明、周知技術(引用文献2~6、12、13)及び引用文献9に記載された技術的事項に基き、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (3)本件特許の請求項7に係る発明は、引用文献1に記載された発明、周知技術(引用文献2~6、12、13)並びに引用文献9及び11に記載された技術的事項に基き、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (4)本件特許の請求項8及び9に係る発明は、引用文献1に記載された発明、周知技術(引用文献2~6、12、13)並びに引用文献7、9及び11に記載された技術的事項に基き、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (5)本件特許の請求項10~13及び15、16に係る発明は、引用文献1に記載された発明、周知技術(引用文献2~6、8、10、12、13)並びに引用文献7、9、11に記載された技術的事項に基き、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 よって、請求項1~16に係る特許は、取り消されるべきものである。 <引用文献一覧> 1.特表2006-528044号公報(特許異議申立人;冨田圭太郎が提出した甲第1号証) 2.H.Gerding, M.Timmermann,”Accuracy and Precision of Intravitreally Injected Ranibizumab Doses: An Experimental Study”,Klinische Monatsbla¨tter fu¨r Augenheilkunde,2010年,Volume227,p.269-272(同甲第2号証) 3.国際公開第2011/006877号(同甲第3号証) 4.米国特許出願公開第2012/0078224号明細書(同甲第4号証) 5.Rajvardhan Azad,Neelam Runda,Atul Kumar,Yograj Sharma,Parijat Chandra,”To Compare photodynamic Therapy with Ranibizmab vs Photodynamic Therapy with Pegaptanib for Subfoveal Choroidal Neovascularization in Age-related Macular Degeneration”,World Journal of Retina and Vitreous,2012年,vol.2,No.2,p.23-27(同甲第5号証) 6.The CATT Research Group,”Ranibizumab and Bevacizumab for Neovascular Age-Related Macular Degeneration”,The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE,2011年,vol.364,NO.20,p.1897-1908(同甲第6号証) 7.特表平8-504352号公報(同甲第7号証) 8.特表2009-508593号公報(同甲第8号証) 9.国際公開第2012/019176号(同甲第9号証) 10.国際公開第2011/122221号(同甲第10号証) 11.米国特許出願公開第2008/0262435号明細書(同甲第11号証) 12.国際公開第2010/103919号(同甲第13号証) 13.実公平7-25953号公報(同甲第15号公報) 2 取消理由2(明確性) (1)本件発明1~13、15、16について 本件特許の請求項1には「前記可変容量チャンバがその公称最大充填容量であるとき、前記ロッドショルダと前記バックストップショルダとの間に2mm以下の間隙が存在し」と記載されているが、一般に、「公称最大充填容量」とは、製造業者等が指定する注射器の最大充填容量であると解され、具体的な注射器の構造を特定するものではないから、上記請求項1の記載が特定する滅菌済み注射器としての構成が不明確である。 よって、本件発明1及び請求項1を引用する本件発明2~13、15、16は明確でなく、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 (2)本件発明5~13、15、16について 本件特許の請求項5には「前記ストッパは1つまたは複数の円周リブを含む」と記載されているが、請求項5が引用する請求項1には「前側円周リブと後側円周リブを備え」と特定されており、円周方向リブの個数について両記載が整合していない。 よって、本件発明5及び請求項5を引用する本件発明6~13、15、16は明確でなく、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 第5 当審の判断 1 取消理由1(進歩性)について 1-1 引用発明及び引用文献の記載 (1)引用文献1(甲第1号証)について ア 引用文献1の記載 引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審にて付与した。以下同様である。)。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、ピストンを具えたプレフィルドシリンジ型の医療用器具に関し、この器具は当該器具に例えば薬液が充填された場合、ピストンに対するアクセスおよびその抜き外しを防止するための手段を具えている。」 「【0004】 この型のシリンジの製造中、シリンジは無菌環境にて充填され、次いで包装されて場合によっては殺菌消毒される。これら充填および包装の2つのステップの間で、これらのシリンジの内部空間が外部にさらされてはならず、またはここに収容される薬剤が汚染されてはならない。」 「【0029】 図1は、ガラスから作られる筒状本体2と、この筒状本体内を摺動可能なピストン3とを具えた器具1を示している。筒状本体2は、その先端4に注射針、例えば中空の皮下注射針(図示せず)を取り付けるためのチップ5-このチップはキャップ6によって塞がれている-と、その基端12にフランジ13とを有する。 【0030】 ピストンの下部端7は、筒状本体2の内部に薬液9が充填される内部有効容積8を画成する。ピストン3から独立しているプラグ14は、筒状本体2の基端12から突出する操作ロッド11の先端36に固定されている。本発明の図示しない実施形態においては、操作ロッド11がプラグ14に固定されていない。このプラグ14は、これを先端方向に支持する前記ピストン3の基端側に対し、本体2内を自由に直線移動するように設定されている。そのため、プラグ14とピストン3との間に支承面10がある。」 「【0033】 図2は、本発明による器具の他の実施形態を示している。図1および図2において同じ部材を示す参照符号が繰り返される。操作ロッド11は、相互に逆方向に位置する径方向突起16が筒状本体2内に配される操作ロッドの部分に設けられている。ストッパ手段を形成するこれらの突起16は、ピストン3が筒状本体の基端12に向けてあらかじめ設定された限界を越えて動かされるのを阻止するように、カバー15と協力することができる。 【0034】 本発明のこの第2の実施形態によると、カバー15はステンレス鋼から作られ、フランジ13に対し環状のカラー17を使って確実にクリップ留めされる。このカバー15は、中央開口23へと延在する径方向タブ18をさらに具えており、基端方向への突起16の直線移動を停止することができる。 【0035】 図3は、ねじ、すなわちねじを切った部分19を使ってプラグ14内にねじ込まれる操作ロッド11を示している。ピストン3はプラグ14に連結されていない。このため、本発明のこの第1の実施形態によると、使用者はピストン3をシリンジの筒状本体2の基端に向けて動かすことができない。操作ロッド11がねじ込まれていない場合であっても、カバー15とピストン3との間のプラグ14の存在のため、ピストン3にアクセスすることも不可能である。」 引用文献1には、以下の図が記載されている。 【図2】 [図:0001420289000001.jpg] 【図3】 [図:0001420289000002.jpg] イ 引用文献1の記載事項 イ-1 主に本件発明1に係るもの (ア)段落【0001】の「本発明は、ピストンを具えたプレフィルドシリンジ型の医療用器具に関し、」なる記載、段落【0029】の「図1は、ガラスから作られる筒状本体2と、この筒状本体内を摺動可能なピストン3とを具えた器具1を示している。」なる記載、段落【0030】の「ピストン3から独立しているプラグ14は、筒状本体2の基端12から突出する操作ロッド11の先端36に固定されている。」なる記載から、 プレフィルドシリンジ型の医療用器具1は、筒状本体2と、ピストン3と、操作ロッド11及び操作ロッド11の先端36に固定されたプラグ14とを備えている。 (イ)段落【0004】の「この型のシリンジの製造中、シリンジは無菌環境にて充填され、次いで包装されて場合によっては殺菌消毒される。」なる記載から、 プレフィルドシリンジ型の医療用器具1は、包装されて殺菌消毒されることにより得られるものであるから、最終的に殺菌消毒されたものである。 (ウ)段落【0029】の「図1は、ガラスから作られる筒状本体2と、この筒状本体内を摺動可能なピストン3とを具えた器具1を示している。筒状本体2は、その先端4に注射針、例えば中空の皮下注射針(図示せず)を取り付けるためのチップ5-このチップはキャップ6によって塞がれている-と、その基端12にフランジ13とを有する。」なる記載を踏まえて図2をみると、 筒状本体2が、先端4に出口を備えることが看取できる。 (エ)段落【0030】の「ピストンの下部端7は、筒状本体2の内部に薬液9が充填される内部有効容積8を画成する。」なる記載を踏まえて図2をみると、 ピストン3が、ピストン3の下部端7と筒状本体2とが内部有効容積8を画成するように筒状本体2内部に配置されることが看取できる。 (オ)注射器の技術分野において、ピストンが薬液を押し出すことは技術常識であるから、上記(エ)も踏まえると、図2から、 ピストン3が、内部有効容積8から、出口を通して薬液9を押し出すことができることが看取できる。 (カ)図3において、操作ロッド11及び操作ロッド11の先端36に固定されたプラグ14の下端部にあるピストン3に対向する面は、プラグ14がピストン3を押圧する際の接触面となることは明らかであるから、プラグ接触面と表現できる。 また、図2において、操作ロッド11の上端部は、後部と表現できる。 以上を踏まえて、図2及び図3をみると、 操作ロッド11及び操作ロッド11の先端36に固定されたプラグ14が、下端部にあるプラグ接触面と、プラグ接触面と後部との間に延在する操作ロッド11とを備えることが看取できる。 (キ)段落【0035】の「図3は、ねじ、すなわちねじを切った部分19を使ってプラグ14内にねじ込まれる操作ロッド11を示している。ピストン3はプラグ14に連結されていない。このため、本発明のこの第1の実施形態によると、使用者はピストン3をシリンジの筒状本体2の基端に向けて動かすことができない。」なる記載から、上記(オ)、(カ)、図2及び図3も踏まえると、 プラグ接触面が、ピストン3に接触するが、ピストン3に連結されていないように構成され、それにより、ピストン3を筒状本体2の先端4に向けて押し進めて内部有効容積8の容積を減少するために操作ロッド11及び操作ロッド11の先端36に固定されたプラグ14を使用することができるが、筒状本体2の基端12に向けてピストン3を動かすために操作ロッド11及び操作ロッド11の先端36に固定されたプラグ14を使用することができないものである。 (ク)段落【0030】の「ピストンの下部端7は、筒状本体2の内部に薬液9が充填される内部有効容積8を画成する。」なる記載から、 内部有効容積8は、注射可能な薬液9が充填されるものである。 (ケ)段落【0033】の「操作ロッド11は、相互に逆方向に位置する径方向突起16が筒状本体2内に配される操作ロッドの部分に設けられている。ストッパ手段を形成するこれらの突起16は、ピストン3が筒状本体の基端12に向けてあらかじめ設定された限界を越えて動かされるのを阻止するように、カバー15と協力することができる。」なる記載、段落【0034】の「このカバー15は、中央開口23へと延在する径方向タブ18をさらに具えており、基端方向への突起16の直線移動を停止することができる。」なる記載を踏まえて、図2及び図3をみると、 操作ロッド11が、先端4とは逆方向の面に接触部を有する径方向突起16を備え、プレフィルドシリンジ型の医療用機器1が、筒状本体2の後部に配置されたカバー15を含み、カバー15が、先端4に向いた径方向タブ18を具えており、径方向突起16と協力して、径方向タブ18と径方向突起16が接触するときに先端4から離れる向きへの操作ロッド11及び操作ロッド11の先端36に固定されたプラグ14の直線移動を停止するものであることが看取できる。 (コ)図2を踏まえると、プレフィルドシリンジ型の医療用器具1が、長手方向に延びる中心軸を有することは明らかである。 また、ピストン3は「筒状本体2」に用いるものである円筒状であることは明らかであり、図2から、ピストン3が2つの円周リブを備えることが看取できる。 以上を踏まえると、ピストン3は、プレフィルドシリンジ型の医療用器具1の長手方向に延びる中心軸に沿う方向に離隔される2つの円周リブを備えている。 (サ)段落【0034】の「本発明のこの第2の実施形態によると、カバー15はステンレス鋼から作られ、フランジ13に対し環状のカラー17を使って確実にクリップ留めされる。」なる記載を踏まえると、 カバー15は、フランジ13に対し環状のカラー17を使って確実にクリップ留めされるものである。 イ-2 主に本件発明2に係るもの (シ)図2から、ピストン3は、液密シールを用いて内部有効容積8の後部を確定することによって封止機能を提供するものであることは技術常識である。 そして、段落【0004】に「この型のシリンジの製造中、シリンジは無菌環境にて充填され、次いで包装されて場合によっては殺菌消毒される。」と記載され、ピストン3は、シリンジが無菌環境にて充填された状態及び 殺菌消毒された状態を維持し得るものであるから、当該液密シールは滅菌性シールとしても機能することは明らかである。 以上を総合すると、ピストン3は、液密シールを用いて内部有効容積8の後部を画定することによって封止機能を提供し、液密シールは、滅菌性シールを提供するものである。 イ-3 主に本件発明3に係るもの (ス)段落【0004】の「この型のシリンジの製造中、シリンジは無菌環境にて充填され、次いで包装されて場合によっては殺菌消毒される。これら充填および包装の2つのステップの間で、これらのシリンジの内部空間が外部にさらされてはならず、またはここに収容される薬剤が汚染されてはならない。」なる記載、段落【0035】の「図3は、ねじ、すなわちねじを切った部分19を使ってプラグ14内にねじ込まれる操作ロッド11を示している。ピストン3はプラグ14に連結されていない。このため、本発明のこの第1の実施形態によると、使用者はピストン3をシリンジの筒状本体2の基端に向けて動かすことができない。操作ロッド11がねじ込まれていない場合であっても、カバー15とピストン3との間のプラグ14の存在のため、ピストン3にアクセスすることも不可能である。」なる記載からすれば、、操作ロッド11及び操作ロッド11の先端36に固定されたプラグ14はピストン3に連結しておらず、操作ロッド11の筒状本体2の基端に向けて動かす操作は、ピストン3を移動させないから、殺菌消毒されていない空気または他の流体をプレフィルドシリンジ型の医療用器具1内に引き込むこと、または殺菌消毒されていない領域にピストン3を移動させることを防止できることは自明である。 してみれば、ピストン3に連結されていない操作ロッド11及び操作ロッド11の先端36に固定されたプラグ14は、使用者が前記操作ロッド11及び操作ロッド11の先端36に固定されたプラグ14並びに操作ロッド11及び操作ロッド11の先端36に固定されたプラグ14に接続されたピストン3を移動させること、すなわち、殺菌消毒されていない空気または他の流体をプレフィルドシリンジ型の医療用器具1内に引き込むこと、または殺菌消毒されていない領域にピストン3を移動させることを防止するものである。 イ-4 主に本件発明4に係るもの (セ)段落【0033】の「図2は、本発明による器具の他の実施形態を示している。図1および図2において同じ部材を示す参照符号が繰り返される。操作ロッド11は、相互に逆方向に位置する径方向突起16が筒状本体2内に配される操作ロッドの部分に設けられている。ストッパ手段を形成するこれらの突起16は、ピストン3が筒状本体の基端12に向けてあらかじめ設定された限界を越えて動かされるのを阻止するように、カバー15と協力することができる。」なる記載、段落【0034】の「このカバー15は、中央開口23へと延在する径方向タブ18をさらに具えており、基端方向への突起16の直線移動を停止することができる。」なる記載から、 筒状本体2の基端12に向けての操作ロッド11の限界を越えた動きは阻止される。 イ-5 主に本件発明9に係るもの (ソ)段落【0029】の「図1は、ガラスから作られる筒状本体2と、」なる記載から、 筒状本体2は、ガラスから作られている。 イ-6 主に本件発明13に係るもの (タ)段落【0029】に「筒状本体2は、その先端4に注射針、例えば中空の皮下注射針(図示せず)を取り付けるためのチップ5-このチップはキャップ6によって塞がれている-と、その基端12にフランジ13とを有する。」と記載され、上記「キャップ6」が可逆的に着脱可能であることは明らかであるから、上記(オ)も踏まえると、 出口は、キャップ6により可逆的に塞がれている。 ウ 引用発明 上記アの引用文献1の記載及びイ-1の引用文献1の記載から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 【引用発明】 「筒状本体2と、ピストン3と、操作ロッド11及び操作ロッド11の先端36に固定されたプラグ14とを備える、最終的に殺菌消毒されたプレフィルドシリンジ型の医療用器具1であって、最終的に殺菌消毒されたプレフィルドシリンジ型の医療用器具1は、包装されて殺菌消毒されることにより得られ、筒状本体2が、先端4にある出口を備え、ピストン3が、ピストン3の下部端7と筒状本体2とが内部有効容積8を画成するように前記筒状本体2内部に配置され、内部有効容積8から、出口を通して薬液9を押し出すことができ、操作ロッド11及び操作ロッド11の先端36に固定されたプラグ14が、下端部にあるプラグ接触面と、プラグ接触面と後部との間に延在する操作ロッド11とを備え、プラグ接触面が、ピストン3に接触するが、ピストン3に連結されていないように構成され、それにより、ピストン3を筒状本体2の先端4に向けて押し進めて内部有効容積8の容積を減少するために操作ロッド11及び操作ロッド11の先端36に固定されたプラグ14を使用することができるが、筒状本体2の基端12に向けてピストン3を動かすために操作ロッド11及び操作ロッド11の先端36に固定されたプラグ14を使用することができず、内部有効容積8は、注射可能な薬液9が充填され、操作ロッド11が、先端4とは逆方向の面に接触部を有する径方向突起16を備え、プレフィルドシリンジ型の医療用機器1が、筒状本体2の後部に配置されたカバー15を含み、カバー15が、先端4に向いた径方向タブ18を具えており、径方向突起16と協力して、径方向タブ18と径方向突起16が接触するときに先端4から離れる向きへの操作ロッド11の直線移動を停止し、ピストン3は、互いにプレフィルドシリンジ型の医療用器具1の長手方向に延びる中心軸に沿う方向に離隔される2つの円周リブを備え、カバー15は、フランジ13に対し環状のカラー17を使って確実にクリップ留めされる 最終的に殺菌消毒されたプレフィルドシリンジ型の医療用器具1であって、 ピストン3は、液密シールを用いて内部有効容積8の後部を画定することによって封止機能を提供し、前記液密シールは、滅菌性シールも提供し、 ピストン3に連結されていない操作ロッド11及び操作ロッド11の先端36に固定されたプラグ14が、使用者が前記操作ロッド11及び操作ロッド11の先端36に固定されたプラグ14並びに操作ロッド11及び操作ロッド11の先端36に固定されたプラグ14に接続されたピストン3を移動させること、すなわち、殺菌消毒されていない空気または他の流体をプレフィルドシリンジ型の医療用器具1内に引き込むこと、または殺菌消毒されていない領域に前記ピストン3を移動させることを防止し、 筒状本体2の基端12に向けての操作ロッド11の限界を越えた動きは阻止され、 筒状本体2は、ガラスから作られ、 出口は、キャップ6により可逆的に塞がれている、 最終的に殺菌消毒されたプレフィルドシリンジ型の医療用器具1。」 (2)引用文献2(甲第2号証)について ア 引用文献2の記載事項 引用文献2には、以下の事項が記載されている(なお、以下では翻訳文のみを記載する。以下同様である。)。 (ア)「序文 少量の薬剤を硝子体内注射することは、様々な網膜疾患に対する現代の治療における主要な外科的介入となった。これらの治療法の多くは、「適応外」治療法として適用されてきた。ラニビズマブ(ルーセンティス(登録商標))の登場により、高いエビデンスレベルの第III相試験結果に基づいて、湿性AMD患者において視力の安定だけでなく機能の定量的な改善を可能にする治療法が登場した[1、2]。・・・ルセンティスの硝子体内注射用セットには、0.5mg(0.05ml)投与用の1mLシリンジ、あるいはこれまでの研究で使用されてきた0.03mlのシリンジが含まれており、このシリンジを使用してルセンティスの硝子体内注射を行うことができる。本研究の目的は、このセットを使用して、実験室環境におけるラニビズマブの注射の正確性、不正確性、精度を分析し、注入時に投与量を差動調整するシリンジのプレローディング後の注入データを比較することである。」(270頁左欄「Introduction」の欄参照。) (イ)「材料と方法 これらの実験では、臨床応用から過剰なラニビズマブ(10 mg/ml)をプールし、ベースと受け皿としての綿球(直径15mm)からなる人工眼への注入に使用した。」(270頁左欄「Material and Methods」の欄参照。) イ 引用文献2に記載された技術的事項 上記アから、引用文献2には、次の技術的事項(以下「引用文献2技術」 という。)が記載されている。 【引用文献2技術】 「硝子体内注射用として、ラニビズマブの10mg/ml溶液を0.05ml投与用の1mLシリンジを使用して、注射すること。」 (3)引用文献3(甲第3号証)について ア 引用文献3の記載事項 引用文献3には、以下の事項が記載されている。 (ア)「背景技術 ・・・ 事前充填シリンジは、無菌条件下で充填されるが、それらの二次包装に無菌環境で充填されないため、それらの外部が微生物汚染される可能性が高い。二次包装における事前充填容器の最終滅菌は、エンドユーザによる製品の安全な適用のために低生物汚染度(低バイオバーデン)および低汚染物リスクでデバイスをエンドユーザに提供するための1つの方法である。さらに、硝子体内注射に使用される事前充填シリンジなどの最終的に抗微生物処理される医療デバイスに対する強い市場ニーズが存在する。」(1頁9行~2頁19行参照。) (イ)「(事前充填容器の最終滅菌および表面除染) ・・・ 別の実施形態において、溶液は、医薬品容器表面の無菌性が必要とされるか、 望まれる任意の医薬品である。1つの特定の実施形態において、医薬品は、硝子体内注射のためのラニビズマブ(例えば6mg/mlまたは10mg/ml)溶液などのタンパク質溶液である。」(7頁21行~9頁14行参照。) イ 引用文献3に記載された技術的事項 上記アから、引用文献3には、次の技術的事項(以下「引用文献3技術」という。)が記載されていると認められる。 【引用文献3技術】 「ラニビズマブの10mg/ml溶液をシリンジにより硝子体内注射すること。」 (4)引用文献4(甲第4号証)について ア 引用文献4の記載事項 引用文献4には、以下の事項が記載されている。 (ア)「[0004] あるいは、眼球内に医薬製剤を局所的に送達するために、眼球内注射が行われてきた。急性黄斑変性症(AMD)の治療のための抗血管内皮増殖因子剤の利用可能性が高まったため、硝子体内注射の使用がより一般的になっている。AMDの治療薬としてFDAから承認されている薬剤には、ラニビズマブ(Lucentis(登録商標):Genetech社、カリフォルニア州サウスサンフランシスコ)、ペガプタニブナトリウム(Macugen(登録商標):Eyetech Pharmaceuticals社、ニューヨーク州ニューヨーク)などがある。」 (イ)「[0145] リザーバは、一般にハウジング内に収容され、本明細書に記載の作動機構を使用して活性薬剤を眼内腔に送達することができる限り、任意の適切な方法で構成することができる。リザーバは、眼内腔、例えば、硝子体内腔に、任意の適切な薬剤若しくは製剤、又は薬剤若しくは製剤の組み合わせを保持してもよい。用語「薬物」及び「薬剤」は、本明細書全体を通して交換可能に使用されることを理解されたい。1つの変形例では、薬剤リザーバは、シリコーン油フリー(シリコーン油またはその誘導体の1種を欠いている)であり、シリコーン油、その誘導体またはその修飾物で内部が覆われたり潤滑されたりしないので、シリコーン油が眼内に入り込んで浮腫または眼圧上昇を引き起こさないようにすることができる。別の変形例では、薬剤リザーバは、いかなる潤滑剤または密封物質も含まず、いかなる潤滑剤または密封物質で内部が覆われたり潤滑されたりせず、これにより、前記潤滑剤または密封物質が、浮遊物または眼圧上昇を引き起こす眼の中に入らないことが保証される。」 (ウ)「[0148] 単独で又は併用薬物療法の一部として使用され得る薬物の非限定的な具体例としては、ルセンティスTM(ラニビズマブ)、アバスチンTM(ベバシズマブ)、マクジェンTM(ペガプタニブ)、ステロイド、例えば、デキサメタゾン、デキサメタゾンリン酸ナトリウム、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、フルオシノロン、タキソール様薬剤、インテグリンまたは抗インテグリン剤、血管内皮増殖因子(VEGF)トラップ(アフリベルセプト)、アネコルタベ酢酸(レタアン)、リマス族化合物などが挙げられる。リムスファミリーの化合物のメンバーの非限定的な例としては、シロリムス(ラパマイシン)およびその水溶性アナログSDZ-RAD、タクロリムス、エベロリムス、ピメクロリムスおよびゾタロリムス、ならびにそれらのアナログ、誘導体、抱合体、塩および修飾体、ならびにそれらの組合せが挙げられる。」 イ 引用文献4に記載された技術的事項 上記ア(ア)、(ウ)から、引用文献4には、次の技術的事項(以下「引用文献4技術」という。)が記載されていると認められる。 【引用文献4技術】 「薬物をラニビズマブ又はアフリベルセプトとして硝子体内注射すること。」 (5)引用文献5(甲第5号証)について ア 引用文献5の記載事項 引用文献5には、以下の事項が記載されている。 (ア)「PDTと注射のプロトコール ・・・ PDTの48時間後に抗VEGFの硝子体内注射が行われた。ラニビズマブ0.5mgをツベルクリン注射器で0.05ml、ペガプタニブ0.3mgを90μlのプレフィルドシリンジで、下6時位置の辺縁後3.5~4mmにpars planaルートから注射した。」(24頁左欄「PDT AND INJECTION PROTOCOL」の欄参照。) イ 引用文献5に記載された技術的事項 上記アから、引用文献5には、次の技術的事項(以下「引用文献5技術」 という。)が記載されていると認められる。 【引用文献5技術】 「薬物をラニビズマブとして、投与量0.05mlをシリンジにより硝子体内注射すること。」 (6)引用文献6(甲第6号証)について ア 引用文献6の記載事項 引用文献6には、以下の事項が記載されている。 (ア)「ラニビズマブは、血管新生型加齢黄斑変性症(AMD)の治療薬として、臨床試験でその有効性が確立されている。」(1897頁「BACKGROUND」の欄参照。) (イ)「多施設共同単盲検非劣性試験において、新生血管性AMD患者1208人を、ラニビズマブまたはベバシズマブの硝子体内注射を毎月行う群と、毎月評価を行い必要に応じて行う群のいずれかに無作為に割り付けた。主要評価項目は1年後の視力変化の平均値で、非劣性限界は視力表で5文字とした。」(1897頁「METHODS」の欄参照。) (ウ)「試験群は、薬剤と最初の強制的な硝子体内注射後の投与レジメンによって定義された:ラニビズマブ28日ごと(ラニビズマブ毎月)、ベバシズマブ28日ごと(ベバシズマブ毎月)、活性新生血管の兆候があるときのみラニビズマブ(ラニビズマブ随時)、活性新生血管の兆候があるときのみ(ベバシズマブ随時)。ラニビズマブの投与量は0.50mg(液量0.05ml)であり、ベバシズマブが1.25mg(液量0.05ml)であった。」(1898頁右欄「TREATMENT」の欄参照。) イ 引用文献6に記載された技術的事項 上記アから、引用文献6には、次の技術的事項(以下それぞれ「引用文献6-1技術」、「引用文献6-2技術」という。)が記載されていると認められる。 【引用文献6-1技術】 「薬物をラニビズマブとして、投与量0.05mlを硝子体内注射すること。」 【引用文献6-2技術】 「ラニビズマブを、血管新生型加齢黄斑変性症(AMD)の治療薬として用いること。」 (7)引用文献7(甲第7号証)について ア 引用文献7の記載事項 引用文献7には、以下の事項が記載されている。 (ア)第5頁第3~6行 「発明の分野 本発明は、一般に容器部内に入れられた流体物質を放出するために、ピストンまたはプランジャーがその中で摺動し得る容器部を含む、注射器アセンブリーなどの放出装置に関する。」 (イ)第17ページ末行~第18ページ第4行 「全ての実施態様において、容器部、ピストン移動手段、およびピストン移動阻止手段は、好ましくは、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンまたは他の適当なポリマーなどのプラスチック材料を射出成型することにより、プラスチックで形成される。ピストンは、同様にして成型される適切なゴムまたはプラスチック材料で形成することが出来る。」 イ 引用文献7に記載された技術的事項 上記アから、引用文献7には、次の技術的事項(以下「引用文献7技術」 という。)が記載されていると認められる。 【引用文献7技術】 「注射器の容器部、ピストン移動手段、およびピストン移動阻止手段を、ポリプロピレン、ポリエチレンまたは他の適当なポリマーなどのプラスチック材料で形成し、ピストンをゴムまたはプラスチック材料で形成すること。」 (8)引用文献8(甲第8号証)について ア 引用文献8の記載事項 引用文献8には、以下の事項が記載されている。 (ア)「【0002】 本発明は、眼科薬の投与方法およびそれに関連する装置に関する。詳細には、本発明は、眼科用シリンジおよび針を用いた硝子体内注射に関する。」 (イ)「【0040】 シリンジ シリンジ筒は、通常、ガラス製または熱可塑性プラスチック製のものである。1つの実施形態では、シリンジは、ブロモブチルゴム製ストッパで密封された1mLタイプIガラス筒シリンジである。充填済みシリンジの例は、米国特許第4,252,118号に見出される。1つの実施形態では、シリンジは、BD Hypak(登録商標) SCFシリンジである。特定の実施形態では、シリンジは、単回用量の充填済みシリンジである。1つの実施形態では、シリンジ筒は、1mL以下の容量を有する。特定の実施形態では、シリンジ筒はマイクロリットル容量を有する。本発明のシリンジ筒には、さらに、筒の正確な充填を助けるための目盛が設けられてよい。」 イ 引用文献8に記載された技術的事項 上記アから、引用文献8には、次の技術的事項(以下「引用文献8技術」という。)が記載されていると認められる。 【引用文献8技術】 「シリンジ筒が1mL以下の容量を有すること。」 (9)引用文献9(甲第9号証)について ア 引用文献9の記載事項 引用文献9には、以下の事項が記載されている。 「【0434】 図11に、1mLシリンジのLuer-Lokチップを切断して作製した多孔質膜付きリザーバーを示す。注射器の先端は平滑にし、面取りをした。孔径0.2μmのナイロン膜を注射器の先端にかぶせ、シリコンチューブで固定した。注射器の内径は4.54mmであり、膜の露出面積は16mm2であった。」 イ 引用文献9に記載された技術的事項 上記アから、引用文献9には、次の技術的事項(以下「引用文献9技術」という。)が記載されていると認められる。 【引用文献9技術】 「1mLシリンジの内径が4.54mmであること。」 (10)引用文献10(甲第10号証)について ア 引用文献10の記載事項 引用文献10には、以下の事項が記載されている。 「[0039] 本実施の形態の筒部本体21の径は、7mmとなるように形成されている。この径の大きさは、通常の0.5mLや1.0mLの小容量の注射器の外径とほぼ同等である。しかし、皮膚上層部に薬剤を投与する際は、通常の小容量シリンジでは外径が小さいため、強い背圧に対抗して、シリンジを把持することが難しい。一方、本発明の薬剤投与器具1は、筒部本体21より大径の把持部4を設けているので、使用者は、把持部4を把持することで、背圧に対抗して皮膚に押しつけることができる。」 イ 引用文献10に記載された技術的事項 上記アから、引用文献10には、次の技術的事項(以下「引用文献10技術」という。)が記載されていると認められる。 【引用文献10技術】 「0.5mLの小容量の注射器。」 (11)引用文献11(甲第11号証)について ア 引用文献11の記載事項 引用文献11には、以下の事項が記載されている。 「[0024] シリンジ10の流体容量は、プランジャ部材30の投射長、及びシリンジ本体16の内径を含む多くの要因に依存する。プランジャ部材30の投射長は、シリンジ本体16の長さLに基づいて部分的に決定される。この長さは、シリンジ10の全体的な流体容量に応じて変化することができる。特定の実施形態では、例えば注射器本体16は、約4cm~7cmの長さLを有してもよい。より具体的には約5cm~6cmである。しかし、シリンジ本体16の長さLは、これらの範囲から変動してもよい。」 イ 引用文献11に記載された技術的事項 上記アから、引用文献11には、次の技術的事項(以下「引用文献11技術」という。)が記載されていると認められる。 【引用文献11技術】 「注射器本体の長さLを約4cm~7cmとすること。」 (12)引用文献12(甲第13号証)について ア 引用文献12の記載事項 引用文献12には、以下の事項が記載されている。 「[0041] ガスケット本体30の外周部36には、第1の突部31、第2の突部32が形成されている。第1の突部31、第2の突部32がシリンジ外筒2の内周面21に対し密着することで、液密性(気密性)を確実に保持することができる。 [0042] ガスケット3では、第1の突部31は、ガスケット本体30の最先端部に配置され、第2の突部32は、第1の突部31よりも基端側であってガスケット本体30の軸方向の途中(基端部近傍)に配置されている。すなわち、第1の突部31と第2の突部32とは、ガスケット本体30の軸方向に沿って互いに離間して配置されている。なお、第1の突部31と第2の突部32との離間距離は、1~10mmであるのが好ましく、2~6mmであるのがより好ましい。」 イ 引用文献12に記載された技術的事項 上記アから、引用文献12には、次の技術的事項(以下「引用文献12技術」という。)が記載されていると認められる。 【引用文献12技術】 「ガスケット本体30の外周部36に形成した第1の突部31と第2の突部32との離間距離を、2~6mmとすること。」 (13)引用文献13(甲第15号証)について ア 引用文献13の記載事項 引用文献13には以下の事項が記載されている。 (ア)第3ページ左欄第5~9行 「また、第3図に示した環状突起が2個の断面形状でピッチが4.8mm、摺動部長さが4~8mmでラミネート層を有する又は有しない比較品(表1の比較例1~4,なお比較例2,3,4は市販品である)を別に用意した。」 (当審注:上記「ピッチが4.8mm」なる記載は、表1の記載からみて「4~8mm」の誤記と認める。) (イ)第4ページ、表1(一部抜粋) 「 [図:0001420289000003.jpg] 」 (ウ)第3図 「 [図:0001420289000004.jpg] 」 イ 引用文献13に記載された技術的事項 上記表1には比較例1~4として、次の技術的事項(以下「引用文献13技術」という。)が記載されていると認められる。 【引用文献13技術】 「滑栓において、2個の環状突起のピッチを4~8mmとすること。」 1-2 対比・判断 (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と引用発明とを対比する。 引用発明の「筒状本体2」は本件発明1の「本体」に相当し、以下同様に、 「ピストン3」は「ストッパ」に、 「操作ロッド11及び操作ロッド11の先端36に固定されたプラグ14」は「プランジャ」に、 「最終的に殺菌消毒された」は「最終的に滅菌済みの」又は「滅菌済みの」に、 「プレフィルドシリンジ型の医療用器具1」は「注射器」に、 「包装されて殺菌消毒されること」は「パッケージ内に封止された製品を滅菌することに」、 「先端4」は「一端部」に、 「ピストン3の下部端7」は、引用文献1の図2において下側部7は前面と表現できるから「ピストン3の前面」に、 「内部有効容積8」は、ピストン3の移動により容量が可変であることは明らかであるから「可変容量チャンバ」に、 「画成する」は「画定する」に、 「薬液9」は「流体」又は「薬剤」に、 「下端部」は「第1の端部」に、 「プラグ接触面」は「プランジャ接触面」に、 「操作ロッド11」は「ロッド」又は「プランジャロッド」に、 「連結されていないように」は「結合はしないように」に 「容積」は「容量」に、 「筒状本体2の基端12に向けて」は、先端4から離れる向きであるから、「一端部から離れる向きに」に、 「動かすために」は「移動させるために」に、 「内部有効容積8は、注射可能な薬液9が充填され」ることは「可変容量チャンバが、注射可能な薬剤を含む」ことに、 「径方向突起16」は「少なくとも一つのロッドショルダ」に、 「先端4とは逆方向の面に接触部を有する径方向突起16」は「一端部とは逆向きの少なくとも1つのロッドショルダ」に、 「カバー15」は「バックストップ」に、 「径方向タブ18」は「バックストップショルダ」に、 「具えており」は「含み」に、 「協力して」は「協働して」に、 「直線移動を停止する」ことは「移動を防止する」ことに、 「プレフィルドシリンジ型の医療用器具1の長手方向に延びる中心軸」は、本件明細書等の図2から、第1の軸Aが注射器1の長手方向に延びる中心軸であると理解できるから、「第1の軸」に、 「2つの円周リブ」は「前側円周リブと後側円周リブ」に、 それぞれ相当する。 以上より、本件発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 【一致点】 「本体と、ストッパと、プランジャとを備える、最終的に滅菌済みの注射器であって、前記最終的に滅菌済みの注射器は、パッケージ内に封止された製品を滅菌することにより得られ、前記本体が、一端部にある出口を備え、前記ストッパが、前記ストッパの前面と前記本体とが可変容量チャンバを画定するように前記本体内部に配置され、前記可変容量チャンバから、前記出口を通して流体を押し出すことができ、前記プランジャが、第1の端部にあるプランジャ接触面と、前記プランジャ接触面と後部との間に延在するロッドとを備え、前記プランジャ接触面が、前記ストッパに接触するが、前記ストッパに結合はしないように構成され、それにより、前記ストッパを前記本体の前記一端部に向けて押し進めて前記可変容量チャンバの前記容量を減少するために前記プランジャを使用することができるが、前記一端部から離れる向きに前記ストッパを移動させるために前記プランジャを使用することができず、前記可変容量チャンバが、注射可能な薬剤を含み、前記ロッドが、前記一端部とは逆向きの少なくとも1つのロッドショルダを備え、前記注射器が、前記本体の後部に配置されたバックストップを含み、前記バックストップが、前記一端部に向いたバックストップショルダを含み、前記ロッドショルダと協働して、前記バックトップショルダとロッドショルダが接触するときに前記一端部から離れる向きへの前記プランジャロッドの移動を防止し、前記ストッパは、互いに第1の軸に沿う方向に離隔される前側円周リブと後側円周リブを備える、 滅菌済みの注射器。」 【相違点1】 本件発明1は「前記注射器は眼科用注射に適しており、」「前記注射可能な薬剤は、ラニビズマブの10mg/ml溶液、投薬体積は0.05mlまたは0.03mlであり、または、前記注射可能な薬剤は、アフリベルセプトの40mg/ml溶液、投薬体積は0.05mlであ」るのに対し、引用発明は、そのような構成を有するか明らかでない点。 【相違点2】 本件発明1は「前記プランジャ接触面と前記ストッパが接触した状態で配置され、前記可変容量チャンバが注射可能な薬剤で充填されるとき、前記ロッドショルダと前記バックストップショルダとの間に0mmより大きく2mm以下の間隙が存在し、」前記ストッパは、「互いに少なくとも3mm」、第1の軸に沿う方向に離隔される前側円周リブと後側円周リブを備えているのに対し、引用発明は「ピストン3は、互いにプレフィルドシリンジ型の医療用器具1の長手方向に延びる中心軸に沿う方向に離隔される2つの円周リブを備え」る点。 【相違点3】 本件発明1は「前記バックストップは、前記本体から取り外し可能である」のに対し、引用発明の「カバー15は、フランジ13に対し環状のカラー17を使って確実にクリップ留めされる」点。 イ 判断 上記相違点1について検討する。 注射器により、眼科用にラニビズマブ又はアフリベルセプトの薬剤の注射を行うことは、従来周知の技術である(例えば、引用文献2技術~引用文献5技術を参照。)。 また、上記薬剤の濃度や投薬体積をどの程度とするかは、病状等に応じて、当業者が適宜選択し得た設計的事項である(必要であれば、引用文献2技術のラニビズマブの10mg/ml溶液、引用文献3技術のラニビズマブの10mg/ml溶液、引用文献5技術のラニビズマブの投与量0.05ml、引用文献6-1技術のラニビズマブの投与量0.05mlを参照。)。 そして、注射器の形状やサイズは、用途に応じて最適化すべきことは自明な課題であるから、引用発明において、その用途を眼科用注射とするとともに、薬剤を上記周知のラニビズマブ又はアフリベルセプトとし、病状等に応じた濃度や投薬量を充填することで、上記相違点1に係る本件発明1の事項とすることは、当業者が格別の創意を要することなく容易になし得た程度のことである。 上記相違点2について検討する。 下記2で検討するように相違点2に係る構成は不明確である。 しかし、仮に相違点2に係る注射器の製作中の構成による構成の特定が認められるとしても、引用文献1の図2には、内部有効容積8に注射可能な薬剤で充填されるとき、ピストン3が薬剤9により移動されることで、プラグ接触面とピストン3が接触した状態で配置され、径方向突起16と径方向タブ18とが接触し、約0mmの間隙が存在する構成が記載されている。 そして、本件発明1では、ロッドショルダとバックストップショルダとの間に0mmより大きく2mm以下の間隙が存在するとされているが、注射器の組立上の誤差等を加味すれば、ロッドショルダとバックショルダの間にごく僅かな隙間が生じることは通常であり、「0mm」と「0mmより大きい」の間に実質的な差異はない。 一方、ピストン3のリブ間には引用文献1の図2、3の記載からすれば、0mmより大きくある程度離間しており、「ストッパの移動による滅菌領域が破られることを防止する」という課題を解決していると理解できる。 そして、引用発明のピストン3のリブ間の離間距離は、ロッドショルダとバックストップショルダとの間の間隙に比して十分に大きいのであるから、同様の作用効果を奏するものと認められ、引用文献12及び13技術も参照すれば、当該ピストン3のリブ間の離間距離の下限値を具体的に少なくとも3mmにしたことは、設計的事項にすぎない。 よって、引用発明に相違点2に係る構成を採用することは当業者にとって容易である。 上記相違点3について検討する。 引用発明の「カバー15は、フランジ13に対し環状のカラー17を使って確実にクリップ留めされる」ものであるところ、一般に「クリップ」は取り外し可能なものであり、さらに、引用文献1の図2から、フランジ13の端部に、環状のカラー17が僅かに引っかかる態様で係合していることが看取できることから、引用発明のカバー15のクリップ留めを、フランジ13、すなわち筒状本体2から取り外し可能とすることは、当業者にとって容易である。 ウ 効果について 本件発明1の効果は、引用発明と周知技術(引用文献2~6-1技術、引用文献12、13技術)とに基いて、当業者が予測し得た程度のものである。 エ 小括 したがって、本件発明1は、引用発明と周知技術(引用文献2~6-1技術、引用文献12、13技術)とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2)本件発明2について ア 対比 本件発明2と引用発明とを対比すると、 両者は、上記(1)で検討した相違点1~3で相違し、その余の点で一致する。 イ 判断 よって、上記(1)で検討したのと同様の理由により、本件発明2は、引用発明と周知技術(引用文献2~6-1技術、引用文献12、13技術)とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)本件発明3について ア 対比 本件発明3と引用発明とを対比すると、 引用発明の「ピストン3に連結されていない」ことは本件発明3の「前記ストッパに結合しない」ことに相当し、以下同様に、 「殺菌消毒されていない」ことは「滅菌していない」ことに相当する。 よって、引用発明の「ピストン3に連結されていない操作ロッド11及び操作ロッド11の先端36に固定されたプラグ14が、使用者が前記操作ロッド11及び操作ロッド11の先端36に固定されたプラグ14並びに操作ロッド11及び操作ロッド11の先端36に固定されたプラグ14に接続されたピストン3を移動させること、すなわち、殺菌消毒されていない空気または他の流体をプレフィルドシリンジ型の医療用器具1内に引き込むこと、または殺菌消毒されていない領域に前記ピストン3を移動させることを防止」することは、本件発明3の「前記ストッパに結合しない前記プランジャが、使用者が前記プランジャおよび前記プランジャに接続されたストッパを移動させること、滅菌していない空気または他の流体を前記注射器内に引き込むこと、または滅菌していない領域に前記ストッパを移動させることを防止する」ことに相当する。 そうすると、両者は、上記(1)で検討した相違点1~3で相違し、その余の点で一致する。 イ 判断 よって、上記(1)で検討したのと同様の理由により、本件発明3は、引用発明と周知技術(引用文献2~6-1技術、引用文献12、13技術)とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)本件発明4について ア 対比 本件発明4と引用発明とを対比すると、 引用発明の「筒状本体2の基端12に向けての」は、引用文献1の図2を踏まえると、筒状本体2の出口から離れる向きへのと表現できるから、本件発明4の「前記出口から離れる向きへの」に相当し、以下同様に、 「操作ロッド11の限界を越えた動きは阻止され」ることは「前記ロッドの移動は制約される」ことに相当する。 そうすると、両者は、上記(1)で検討した相違点1~3で相違し、その余の点で一致する。 イ 判断 よって、上記(1)で検討したのと同様の理由により、本件発明4は、引用発明と周知技術(引用文献2~6-1技術、引用文献12、13技術)とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (5)本件発明5について ア 対比 本件発明5と引用発明とを対比すると、 引用発明の「ピストン3は、互いにプレフィルドシリンジ型の医療用器具1の長手方向に延びる中心軸に沿う方向に離隔される2つの円周リブを備え」ることは本件発明5の「前記ストッパは複数の円周リブを含む」ことに相当する。 そうすると、両者は、上記(1)で検討した相違点1~3で相違し、その余の点で一致する。 イ 判断 よって、上記(1)で検討したのと同様の理由により、本件発明5は、引用発明と周知技術(引用文献2~6-1技術、引用文献12、13技術)とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (6)本件発明6について ア 対比 本件発明6と引用発明とを対比すると、 両者は、上記(1)で検討した相違点1~3に加えて、以下の相違点4で相違し、その余の点で一致する。 【相違点4】 本件発明6は「前記可変容量チャンバは、3mmから6mmの内径を有する」のに対し、引用発明は「内部有効容積8」の内径が明らかでない点。 イ 判断 相違点1~3については、上記(1)のとおりである。 そこで、上記相違点4について検討する。 例えば、引用文献9技術のとおり、シリンジの内径を3mmから6mmの範囲内とすることは普通に行われていることであり、引用発明において、内部有効容積8の内径を3mmから6mmとすることは、当業者が必要に応じて適宜選択し得た設計的事項である。 したがって、本件発明6は、引用発明、周知技術(引用文献2~6-1技術、引用文献12、13技術)及び引用文献9技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (7)本件発明7について ア 対比 本件発明7と引用発明とを対比すると、 両者は、上記(1)で検討した相違点1~3、上記(6)で検討した相違点4に加えて、以下の相違点5で相違し、その余の点で一致する。 【相違点5】 本件発明7は「前記注射器の本体の長さは、70mm未満である」のに対し、引用発明は「プレフィルドシリンジ型の医療用器具1」の「筒状本体2」の長さが明らかでない点。 イ 判断 相違点1~4については、上記(1)、(6)のとおりである。 そこで、上記相違点5について検討する。 例えば、引用文献11技術のとおり、注射器本体の長さを70mm未満とすることは普通に行われていることであり、引用発明において、プレフィルドシリンジ型の医療用器具1の筒状本体2の長さを70mm未満とすることは、当業者が必要に応じて適宜選択し得た設計的事項である。 したがって、本件発明7は、引用発明、周知技術(引用文献2~6-1技術、引用文献12、13技術)、引用文献9技術及び引用文献11技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (8)本件発明8について ア 対比 本件発明8と引用発明とを対比すると、 両者は、上記(1)で検討した相違点1~3、上記(6)で検討した相違点4、上記(7)で検討した相違点5に加えて、以下の相違点6で相違し、その余の点で一致する。 【相違点6】 本件発明8は「前記注射器は、シリコーンを含まない」のに対し、引用発明はそのようなものであるか不明な点。 イ 判断 相違点1~5については、上記(1)、(6)、(7)のとおりである。 そこで、上記相違点6について検討する。 例えば、引用文献7技術のとおり、注射器を、シリコーン以外の材料から形成することは、普通に行われていることである。 また、引用発明においても、筒状本体2はガラスから作られており、また、引用文献1の段落【0023】には「好ましくは、プラグが作られる材料は、プラスチック,ポリオレフィンポリマー,ポリカーボネートおよびこれらの混合物から選択される。」と記載されており、いずれもシリコーンを含むことは記載されていない。 また、本件発明8の「シリコーン」がシリコーンオイルなどの潤滑剤を意味すると解釈しても、引用発明には、シリコーンオイルなどの潤滑剤を用いる記載はなく、さらに、注射器において、シリコーンオイルなどの潤滑剤を用いないことは、例えば、引用文献4(甲第4号証)の段落[0145]に記載されるとおり、従来周知の技術である。 以上より、引用発明において、プレフィルドシリンジ型の医療用器具1(注射器)を、シリコーンを含まないように構成することは、当業者にとって容易である。 したがって、本件発明8は、引用発明、周知技術(引用文献2~6-1技術、引用文献12、13技術)、引用文献7技術、引用文献9技術及び引用文献11技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (9)本件発明9について ア 対比 本件発明9と引用発明とを対比すると、 両者は、上記(1)で検討した相違点1~3、上記(6)で検討した相違点4、上記(7)で検討した相違点5、上記(8)で検討した相違点6で相違し、その余の点で一致する。 イ 判断 よって、上記(1)、(6)、(7)及び(8)で検討したのと同様の理由により、本件発明9は、引用発明と周知技術(引用文献2~6-1技術、引用文献12、13技術)、引用文献7技術、引用文献9技術及び引用文献11技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (10)本件発明10について ア 対比 本件発明10と引用発明とを対比すると、 両者は、上記(1)で検討した相違点1~3、上記(6)で検討した相違点4、上記(7)で検討した相違点5、上記(8)で検討した相違点6に加えて、以下の相違点7で相違し、その余の点で一致する。 【相違点7】 本件発明10は「0.4ml以上0.6ml以下の公称最大容量を有するように寸法設定される」のに対し、引用発明はそのようなものであるか不明な点。 イ 判断 相違点1~6については、上記(1)、(6)~(8)のとおりである。 そこで、上記相違点7について検討する。 例えば、引用文献8技術及び引用文献10技術のとおり、注射器の容量を0.4ml以上0.6ml以下とすることは、従来周知の技術である。 そうすると、引用発明において上記周知の注射器の容量を採用し、0.4ml以上0.6ml以下の公称最大容量を有するように寸法設定する程度のことは、当業者が適宜選択し得た設計的事項である。 したがって、本件発明10は、引用発明、周知技術(引用文献2~6-1技術、引用文献8、10技術、引用文献12、13技術)、引用文献7技術、引用文献9技術及び引用文献11技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (11)本件発明11について ア 対比 本件発明11と引用発明とを対比すると、 両者は、上記(1)で検討した相違点1~3、上記(6)で検討した相違点4、上記(7)で検討した相違点5、上記(8)で検討した相違点6、上記(10)で検討した相違点7に加えて、以下の相違点8で相違し、その余の点で一致する。 【相違点8】 本件発明11は「0.5mlの公称最大充填容量を有する」のに対し、引用発明はそのようなものであるか不明な点。 イ 判断 相違点1~7については、上記(1)、(6)~(8)、(10)のとおりである。 そこで、上記相違点8について検討する。 例えば、引用文献8技術及び引用文献10技術のとおり、注射器の容量を0. 5mlとすることは、従来周知の技術である。 そうすると、引用発明において上記周知の注射器の容量を採用し、0.5mlの公称最大容量を有するように構成する程度のことは、当業者が適宜選択し得た設計的事項である。 したがって、本件発明11は、引用発明、周知技術(引用文献2~6-1技術、引用文献8、10技術、引用文献12、13技術)、引用文献7技術、引用文献9技術及び引用文献11技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (12)本件発明12について ア 対比 本件発明12と引用発明とを対比すると、 両者は、上記(1)で検討した相違点1~3、上記(6)で検討した相違点4、上記(7)で検討した相違点5、上記(8)で検討した相違点6、上記(10)で検討した相違点7、上記(11)で検討した相違点8に加えて、以下の相違点9で相違し、その余の点で一致する。 【相違点9】 本件発明12は「前記注射器は、4.5mmから4.8mmの内径を有する」のに対し、引用発明はそのようなものであるか不明な点。 イ 判断 相違点1~8については、上記(1)、(6)~(8)、(10)、(11)のとおりである。 そこで、上記相違点9について検討する。 例えば、引用文献9技術のとおり、シリンジの内径を4.5mmから4.8mmの範囲内とすることは普通に行われていることであり、引用発明において、プレフィルドシリンジ型の医療用器具1を4.5mmから4.8mmの内径を有するように構成することは、当業者が必要に応じて適宜選択し得た設計的事項である。 したがって、本件発明12は、引用発明、周知技術(引用文献2~6-1技術、引用文献8、10技術、引用文献12、13技術)、引用文献7技術、引用文献9技術及び引用文献11技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (13)本件発明13について ア 対比 本件発明13と引用発明とを対比すると、 引用発明の「キャップ6により可逆的に塞がれている」ことは、本件発明13の「封止デバイスにより可逆的に封止される」ことに相当する。 そうすると、両者は、上記(1)で検討した相違点1~3、上記(6)で検討した相違点4、上記(7)で検討した相違点5、上記(8)で検討した相違点6、上記(10)で検討した相違点7、上記(11)で検討した相違点8、上記(12)で検討した相違点9で相違し、その余の点で一致する。 イ 判断 したがって、本件発明13は、上記(1)、(6)、(7)、(8)、(10)、(11)及び(12)で検討したのと同様の理由により、本件発明13は、引用発明、周知技術(引用文献2~6-1技術、引用文献8、10技術、引用文献12、13技術)、引用文献7技術、引用文献9技術及び引用文献11技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (14)本件発明15について ア 対比 本件発明15と引用発明とを対比すると、 両者は、上記(1)で検討した相違点1~3、上記(6)で検討した相違点4、上記(7)で検討した相違点5、上記(8)で検討した相違点6、上記(10)で検討した相違点7、上記(11)で検討した相違点8、上記(12)で検討した相違点9に加えて、以下の相違点10で相違し、その余の点で一致する。 【相違点10】 本件発明15は「前記ラニビズマブは、脈絡膜新生血管、加齢黄斑変性、網膜静脈分枝閉塞症(bRVO)と網膜中心静脈閉塞症(cRVO)の両方を含む、網膜静脈閉塞症(RVO)に続発する黄斑浮腫、病的近視(PM)に続発する脈絡膜新生血管、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、糖尿病性網膜症、および増殖網膜症から選択される眼病の治療のために用いられる」のに対し、引用発明はそのようなものであるか不明な点。 イ 判断 相違点1~9については、上記(1)、(6)~(8)、(10)~(12)のとおりである。 そこで、上記相違点10について検討する。 例えば、引用文献6-2技術のとおり、ラニビズマブを、加齢黄斑変性の眼病の治療のために用いることは、従来周知の技術である。 したがって、本件発明15は、引用発明、周知技術(引用文献2~6-1技術、引用文献6-2技術、引用文献8、10技術、引用文献12、13技術)、引用文献7技術、引用文献9技術及び引用文献11技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (15)本件発明16について ア 対比 引用文献1(甲第1号証)には、物の発明である引用発明が記載されているところ、引用文献1(甲第1号証)には、実質的に引用発明を組み立てる方法(以下「引用方法発明」という。)が記載されている。 そして、本件発明16と引用方法発明とを対比すると、 両者は、実質的に、上記(1)で検討した相違点1~3、上記(6)で検討した相違点4、上記(7)で検討した相違点5、上記(8)で検討した相違点6、上記(10)で検討した相違点7、上記(11)で検討した相違点8、上記(12)で検討した相違点9、上記(14)で検討した相違点10に加えて、以下の相違点11で相違し、その余の点で一致する。 【相違点11】 本件発明16は「前記方法は、以下のステップ: i)本体およびストッパを提供するステップであって、前記本体が、一端部にある出口を備え、前記ストッパが、前記ストッパの前面と前記本体とが可変容量チャンバを画定するように前記本体内部に配置され、前記可変容量チャンバから、前記出口を通して流体を押し出すことができ、前記出口が解放可能に封止され、前記可変容量チャンバが薬剤を含むステップと、 ii)第1の端部にあるプランジャ接触面と、前記プランジャ接触面と後部との間に延在するロッドとを備えるプランジャを提供し、前記プランジャを前記ストッパに結合させずに、前記プランジャ接触面と前記プランジャの少なくとも一部とを前記本体内部に配置するステップと iii)前記本体内部に前記ストッパと前記プランジャとを配置した後に、滅菌するステップと を含み、 前記ロッドが、前記一端部とは逆向きの少なくとも1つのロッドショルダを備え、前記注射器が、前記本体の後部に配置されたバックストップを含み、前記バックストップが、前記一端部に向いたバックストップショルダを含み、前記ロッドショルダと協働して、前記バックトップショルダとロッドショルダが接触するときに前記一端部から離れる向きへの前記プランジャロッドの移動を防止する」のに対し、引用方法発明は、そのようなステップを有するか明らかでない点。 イ 判断 相違点1~10については、上記(1)、(6)~(8)、(10)~(12)、(14)のとおりである。 そこで、上記相違点11について検討する。 (ア)引用方法発明は「筒状本体2」及び「ピストン3」を備えるから、その組立てに際し、i)筒状本体2およびピストン3を提供するステップを有することは明らかである。 そして、引用方法発明は「筒状本体2が、先端4にある出口を備え、ピストン3が、ピストン3の下部端7と筒状本体2とが内部有効容積8を画成するように前記筒状本体2内部に配置され、内部有効容積8から、出口を通して薬液9を押し出すことができ」、「出口は、キャップ6により可逆的に塞がれて」おり、「内部有効容積8は、注射可能な薬液9が充填され」ている。 (イ)また、引用方法発明は「第1の端部にあるプラグ接触面と、プラグ接触面と後部との間に延在する操作ロッド11とを備え」た「操作ロッド11及び操作ロッド11の先端36に固定されたプラグ14」を備えるから、その組み立てに際し、ii)操作ロッド11及び操作ロッド11の先端36に固定されたプラグ14を提供するステップを有することは明らかである。 そして、引用方法発明は「プラグ接触面」が「ピストン3に連結されていないように構成され」ており、その組み立てに際し、プラグ接触面と操作ロッド11及び操作ロッド11の先端36に固定されたプラグ14の少なくとも一部とを筒状本体に配置するステップを含むことは明らかである。 (ウ)さらに、引用方法発明は「最終的に殺菌消毒されたプレフィルドシリンジ型の医療用器具1」であって、引用文献1の段落【0004】に「この型のシリンジの製造中、シリンジは無菌環境にて充填され、次いで包装されて場合によっては殺菌消毒される。・・・」と記載されていることを踏まえると、その組み立てに際し、(iii)筒状本体2内部にピストン3と操作ロッド11及び操作ロッド11の先端36に固定されたプラグ14を配置した後に、殺菌消毒するステップを含むことは、当業者にとって容易である。 (エ)そして、引用方法発明は「操作ロッド11が、先端4とは逆向きの接触部を有する径方向突起16を備え、プレフィルドシリンジ型の医療用機器1が、筒状本体2の後部に配置されたカバー15を含み、カバー15が、先端4に向いた径方向タブ18を具えており、径方向突起16と協力して、径方向タブ18と径方向突起16が接触するときに先端4から離れる向きへの操作ロッド11の直線移動を停止」するものである。 (オ)したがって、本件発明16は、引用方法発明、周知技術(引用文献2~6-1技術、引用文献6-2技術、引用文献8、10技術、引用文献12、13技術)、引用文献7技術、引用文献9技術及び引用文献11技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 2 取消理由2(明確性)について 本件訂正により請求項1に「前記可変容量チャンバが注射可能な薬剤で充填されるとき、前記ロッドショルダと前記バックストップショルダとの間に0mmより大きく2mm以下の間隙が存在し、」の記載が加入された。 しかし、本件発明1は、「滅菌済みの注射器」に係る発明であるところ、請求項1の上記記載は、「滅菌済みの注射器」自体の構成ではなく、当該「滅菌済みの注射器」を製作する過程で「可変容量チャンバが注射可能な薬剤で充填されるとき」の構成を特定したにすぎず、「滅菌済みの注射器」として、どのような構造を特定しているのか不明確であって、本件訂正を加味しても依然、物の発明としての本件発明1に係る「滅菌済みの注射器」が、どのような構造であるのか不明確である。 よって、本件発明1及び請求項1を引用する本件発明2~13、15、16は明確でなく、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 第6 むすび 以上のとおり、本件発明1~13、15、16に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 また、本件発明1~13、15、16に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないものであり、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 さらに、本件発明14に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、特許異議申立人による特許異議の申立てについて、請求項14に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700857

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