特許異議申立
2022-701165
注射器
- 審判番号
- 2022-701165
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-064330
- 登録番号
- 7075521
- 請求日
- 2022年11月25日
- 審決日
- 2024年12月19日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】ノバルティス アーゲー
- 【権利者代理人】小林 浩
- 【権利者代理人】片山 英二
- 【権利者代理人】大森 規雄
- 【権利者代理人】藤 拓也
- 【権利者代理人】鈴木 康仁
- 【権利者代理人】大川 亮
- 【異議申立人】冨田 圭太郎
- 審判長/審判官
- 審判長 佐々木 正章
- 審判官 安井 寿儀
- 審判官 井上 哲男
- 分類
- P1651.121-ZAA(A61M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項特許法113条2号特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第6項第2号、特許法第113条第2号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7075521号発明「注射器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7075521号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~16〕について訂正することを認める。
特許第7075521号の請求項15に係る特許を取り消す。
特許第7075521号の請求項1~14、16に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7075521号(以下「本件特許」という。)の請求項1~16に係る特許についての出願は、2013年(平成25年) 5月30日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年 6月 1日 (EP)欧州特許庁)を国際出願日とする特願2015-514516号の一部を、令和 2年 3月12日に新たな特許出願とした特願2020-43041号の一部を、令和 3年 4月 5日に新たな特許出願としたものであって、令和 4年 5月17日にその特許権の設定登録がされ、令和 4年 5月25日に特許掲載公報が発行された。
その後、令和 4年11月25日に特許異議申立人 冨田 圭太郎(以下「異議申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。
特許異議の申立て以降の手続きの経緯は、以下のとおりである。
令和 4年11月25日提出 特許異議申立書
令和 5年 3月30日付け 取消理由通知書
同年 6月30日提出 意見書(特許権者)・訂正請求書
同年11月 2日提出 意見書(異議申立人)
令和 6年 2月22日付け 取消理由通知書(決定の予告)
同年 6月18日提出 意見書(特許権者)・訂正請求書
同年 8月15日提出 意見書(異議申立人)
なお、令和 5年 6月30日提出の訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和 6年 6月18日提出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の請求は、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~16〕について訂正することを求めるものであり、その内容は以下のとおりである(下線部は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1~14及び16を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項15に「請求項1から14のいずれか一項に記載の最終的に滅菌済みの注射器を組み立てる方法であって、前記方法は、以下のステップ:」とあるのを、
「封止パッケージと、最終的に滅菌済みの注射器とを備える注射器パックを組み立てて滅菌する方法であって、前記注射器は、本体と、ストッパと、プランジャとを備え、前記最終的に滅菌済みの注射器は、パッケージ内に封止された製品を滅菌することにより得られ、前記本体が、一端部にある出口を備え、前記ストッパが、前記ストッパの前面と前記本体とが可変容量チャンバを画定するように前記本体内部に配置され、前記可変容量チャンバから、前記出口を通して流体を押し出すことができ、前記プランジャが、第1の端部にあるプランジャ接触面と、前記プランジャ接触面と後部との間に延在するロッドとを備え、前記プランジャ接触面が、前記ストッパに接触するが、前記ストッパに結合はしないように構成され、それにより、前記ストッパを前記本体の前記一端部に向けて押し進めて前記可変容量チャンバの前記容量を減少するために前記プランジャを使用することができるが、前記一端部から離れる向きに前記ストッパを移動させるために前記プランジャを使用することができず、前記注射器は眼科用注射に適しており、前記可変容量チャンバが、注射可能な薬剤を含み、前記注射可能な薬剤は、ラニビズマブの10mg/ml溶液で、投薬体積は0.05ml若しくは0.03mlであり、又は、前記注射可能な薬剤は、アフリベルセプトの40mg/ml溶液で、投薬体積は0.05mlであり、前記ロッドが、前記一端部とは逆向きの少なくとも1つのロッドショルダを備え、前記注射器が、前記本体の後部に配置されたバックストップを含み、前記バックストップが、前記一端部に向いたバックストップショルダを含み、前記ロッドショルダと協働して、前記バックトップショルダとロッドショルダが接触するときに前記一端部から離れる向きへの前記プランジャロッドの移動を防止し、前記プランジャ接触面と前記ストッパが接触した状態で配置され、前記可変容量チャンバが注射可能な薬剤で充填されるとき、前記ロッドショルダと前記バックストップショルダとの間に0mmよりも大きく2mm以下の間隙が存在し、前記ストッパは、少なくとも第1の軸に沿って互いが3mm離間する前側円周リブと後側円周リブを備え、前記方法は、以下のステップ:」に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項15に「i)本体およびストッパを提供するステップであって、前記本体が、一端部にある出口を備え、前記ストッパが、前記ストッパの前面と前記本体とが可変容量チャンバを画定するように前記本体内部に配置され、前記可変容量チャンバから、前記出口を通して流体を押し出すことができ、前記出口が解放可能に封止され、前記可変容量チャンバが薬剤を含むステップと、」とあるのを、
「i)前記本体および前記ストッパを提供するステップであって、前記本体が、一端部にある前記出口を備え、前記ストッパが、前記ストッパの前記前面と前記本体とが前記可変容量チャンバを画定するように前記本体内部に配置され、前記可変容量チャンバから、前記出口を通して前記流体を押し出すことができ、前記出口が解放可能に封止され、前記可変容量チャンバが前記薬剤を含むステップと」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項15に「ii)第1の端部にあるプランジャ接触面と、前記プランジャ接触面と後部との間に延在するロッドとを備えるプランジャを提供し、前記プランジャを前記ストッパに結合させずに、前記プランジャ接触面と前記プランジャの少なくとも一部とを前記本体内部に配置し、前記ストッパは、少なくとも第1の軸に沿って互いが3mm離間する前側円周リブと後側円周リブを備えるステップと」とあるのを、
「ii)前記第1の端部にある前記プランジャ接触面と、前記プランジャ接触面と前記後部との間に延在する前記ロッドとを備える前記プランジャを提供し、前記プランジャを前記ストッパに結合させずに、前記プランジャ接触面と前記プランジャの少なくとも一部とを前記本体内部に配置するステップと」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項15に「iii)前記本体内部に前記ストッパと前記プランジャとを配置した後に、滅菌するステップと」とあるのを、
「iii)前記本体内部に前記ストッパと前記プランジャとを配置した後に、前記注射器の最終アセンブリを前記封止パッケージ内に封止するステップと
iv)前記封止パッケージにパッケージングされた前記最終アセンブリを可変容量チャンバ内部または可変容量チャンバ外部の圧力が変わる中で最終滅菌するステップと」に訂正する。
2 一群の請求項について
本件訂正は、一群の請求項である請求項〔1~16〕について請求されたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1~14及び16を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1は、特許請求の範囲を減縮するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1~14及び16を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2は、訂正前の特許請求の範囲の請求項15の記載において、引用する訂正前の請求項13が訂正前の請求項1を引用するものを独立形式の請求項に訂正するものである。そのため、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
また、訂正事項2は、訂正前の特許請求の範囲の請求項15の「最終的に滅菌済みの注射器を組み立てる方法」について、「封止パッケージと、最終的に滅菌済みの注射器とを備える注射器パックを組み立てて滅菌する方法」に減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
さらに、訂正事項2は、訂正前の特許請求の範囲の請求項15の「注射器」について、「前記プランジャ接触面と前記ストッパが接触した状態で配置され、前記可変容量チャンバが注射可能な薬剤で充填されるとき、前記ロッドショルダと前記バックストップショルダとの間に0mmよりも大きく2mm以下の間隙が存在し、」との構成を付加して減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2は、上記アのとおりであるから、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2により付加された「封止パッケージと、最終的に滅菌済みの注射器とを備える注射器パックを組み立てて滅菌する方法」との事項は、訂正前の請求項16の「封止パッケージと、請求項1から14のいずれか一項に記載の最終的に滅菌済みの注射器とを備える注射器パック」との記載、及び、願書に添付した明細書の段落【0028】の「この方法は、組み立てられた注射器を、実質的に封止されたパッケージ内にパッケージングするステップiv)をさらに含むことがある。この方法は、パッケージング後の最終滅菌ステップ、すなわちステップv)をさらに含むことがある。」との記載に基づくものであるから、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。
さらに、訂正事項2により付加された「前記プランジャ接触面と前記ストッパが接触した状態で配置され、前記可変容量チャンバが注射可能な薬剤で充填されるとき、前記ロッドショルダと前記バックストップショルダとの間に0mmより大きく2mm以下の間隙が存在し、」との事項は、本件明細書等の段落【0019】の「注射器の一実施形態では、プランジャ接触面とストッパが接触した状態で配置され、可変容量チャンバがその所期の最大容量であるとき、ロッドショルダとバックストップショルダとの間に約2mm以下のギャップ(gap)が存在する。」との記載に基づくものであるから、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。
また、その他の事項は、訂正前の【請求項12】及び【請求項13】の記載に基づくものである。
したがって、訂正事項2は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的
訂正事項3は、訂正前の特許請求の範囲の請求項15の「本体」、「ストッパ」、「出口」、「前面」、「可変容量チャンバ」、「流体」及び「薬剤」のそれぞれの前に、「前記」との記載を追加するものであり、各用語の対応関係を明確にするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項3は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3は、上記アのとおりであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。
(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的
訂正事項4は、訂正前の特許請求の範囲の請求項15の「第1の端部」、「プランジャ接触面」、「後部」、「ロッド」及び「プランジャ」のそれぞれの前に、「前記」との記載を追加するものであり、各用語の対応関係を明確にするものである。
また、訂正事項4は、訂正前の特許請求の範囲の請求項15の「前記ストッパは、少なくとも第1の軸に沿って互いが3mm離間する前側円周リブと後側円周リブを備える」との記載を削除し、上記訂正事項2に係る記載と重複する記載を削除して当該請求項の記載を明確化するものである。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項4は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項4は、上記アのとおりであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。
(5)訂正事項5について
ア 訂正の目的
訂正事項5は、訂正前の特許請求の範囲の請求項15の「iii)前記本体内部に前記ストッパと前記プランジャとを配置した後に、滅菌するステップ」を、「iii)前記本体内部に前記ストッパと前記プランジャとを配置した後に、前記注射器の最終アセンブリを前記封止パッケージ内に封止するステップと iv)前記封止パッケージにパッケージングされた前記最終アセンブリを可変容量チャンバ内部または可変容量チャンバ外部の圧力が変わる中で最終滅菌するステップ」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項5は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項5は、本件明細書等の段落【0003】の「小容量注射器、・・・眼科用注射のための注射器に関して、滅菌は、より大きな注射器には必ずしも伴わない問題を生じ得る。注射器内外の圧力の変化により、注射器の一部分が予測不可能に移動することがある。」との記載、段落【0014】の「出口端部から離れる向きへのロッドの移動の制約は、最終滅菌操作中、または可変容量チャンバ内部またはチャンバ外部の圧力が変わることがある他の操作中に滅菌性を維持する一助となり得る。」との記載、及び段落【0028】の「この方法は、組み立てられた注射器を、実質的に封止されたパッケージ内にパッケージングするステップiv)をさらに含むことがある。この方法は、パッケージング後の最終滅菌ステップ、すなわちステップv)をさらに含むことがある。」との記載に基づくものであるから、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。
したがって、訂正事項5は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。
4 独立特許要件について
請求項1~16について特許異議の申立てがされているので、訂正後の請求項15に係る訂正に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。
5 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~16〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記のとおり本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~16に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明16」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~16に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
(削除)
【請求項8】
(削除)
【請求項9】
(削除)
【請求項10】
(削除)
【請求項11】
(削除)
【請求項12】
(削除)
【請求項13】
(削除)
【請求項14】
(削除)
【請求項15】
封止パッケージと、最終的に滅菌済みの注射器とを備える注射器パックを組み立てて滅菌する方法であって、前記注射器は、本体と、ストッパと、プランジャとを備え、前記最終的に滅菌済みの注射器は、パッケージ内に封止された製品を滅菌することにより得られ、前記本体が、一端部にある出口を備え、前記ストッパが、前記ストッパの前面と前記本体とが可変容量チャンバを画定するように前記本体内部に配置され、前記可変容量チャンバから、前記出口を通して流体を押し出すことができ、前記プランジャが、第1の端部にあるプランジャ接触面と、前記プランジャ接触面と後部との間に延在するロッドとを備え、前記プランジャ接触面が、前記ストッパに接触するが、前記ストッパに結合はしないように構成され、それにより、前記ストッパを前記本体の前記一端部に向けて押し進めて前記可変容量チャンバの前記容量を減少するために前記プランジャを使用することができるが、前記一端部から離れる向きに前記ストッパを移動させるために前記プランジャを使用することができず、前記注射器は眼科用注射に適しており、前記可変容量チャンバが、注射可能な薬剤を含み、前記注射可能な薬剤は、ラニビズマブの10mg/ml溶液で、投薬体積は0.05ml若しくは0.03mlであり、又は、前記注射可能な薬剤は、アフリベルセプトの40mg/ml溶液で、投薬体積は0.05mlであり、前記ロッドが、前記一端部とは逆向きの少なくとも1つのロッドショルダを備え、前記注射器が、前記本体の後部に配置されたバックストップを含み、前記バックストップが、前記一端部に向いたバックストップショルダを含み、前記ロッドショルダと協働して、前記バックトップショルダ(当審注:「前記バックトップショルダ」との記載は、「前記バックストップショルダ」の誤記と認めた。)とロッドショルダが接触するときに前記一端部から離れる向きへの前記プランジャロッドの移動を防止し、前記プランジャ接触面と前記ストッパが接触した状態で配置され、前記可変容量チャンバが注射可能な薬剤で充填されるとき、前記ロッドショルダと前記バックストップショルダとの間に0mmよりも大きく2mm以下の間隙が存在し、前記ストッパは、少なくとも第1の軸に沿って互いが3mm離間する前側円周リブと後側円周リブを備え、前記方法は、以下のステップ:
i)前記本体および前記ストッパを提供するステップであって、前記本体が、一端部にある前記出口を備え、前記ストッパが、前記ストッパの前記前面と前記本体とが前記可変容量チャンバを画定するように前記本体内部に配置され、前記可変容量チャンバから、前記出口を通して前記流体を押し出すことができ、前記出口が解放可能に封止され、前記可変容量チャンバが前記薬剤を含むステップと
ii)前記第1の端部にある前記プランジャ接触面と、前記プランジャ接触面と前記後部との間に延在する前記ロッドとを備える前記プランジャを提供し、前記プランジャを前記ストッパに結合させずに、前記プランジャ接触面と前記プランジャの少なくとも一部とを前記本体内部に配置するステップと
iii)前記本体内部に前記ストッパと前記プランジャとを配置した後に、前記注射器の最終アセンブリを前記封止パッケージ内に封止するステップと
iv)前記封止パッケージにパッケージングされた前記最終アセンブリを可変容量チャンバ内部または可変容量チャンバ外部の圧力が変わる中で最終滅菌するステップと
を含む方法。
【請求項16】
(削除)」
第4 取消理由の概要
本件発明15に係る特許に対して、当審が令和 6年 2月22付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。
1 取消理由1(進歩性)
本件発明15は、引用文献1に記載された発明及び周知技術(引用文献2~6、13、14)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
<引用文献一覧>
1.特表2006-528044号公報(異議申立人が提出した甲第1号証)
2.Heinrich Gerding, 外1名, “Accuracy and Precision of Intravitreally Injected Ranibizumab Doses: An Experimental Study”, Klin Monatsbl Augenheilkd, 2010年, Vol.227, Issue 04, p.269-272(同甲第2号証)
3.国際公開第2012/019047号(同甲第4号証)
4.国際公開第2011/006877号(同甲第5号証)
5.米国特許出願公開第2012/0078224号明細書(同甲第6号証)
6.The CATT Research Group, “Ranibizumab and Bevacizumab for Neovascular Age-Related Macular Degeneration”, The New England Journal of Medicine, 2011年, Vol.364, NO.20, p.1897-1908(同甲第8号証)
13.実願昭63-33730号(実開平1-138454号)のマイクロフィルム(同甲第38号証)
14.実公平7-25953号公報(同甲第41号証)
2 取消理由2(明確性)
本件特許の請求項15には、「注射器」は、「前記可変容量チャンバがその公称最大充填容量であるとき、前記ロッドショルダと前記バックストップショルダとの間に約2mm以下の間隙が存在し」と記載されているが、一般に「公称最大充填容量」とは、製造業者等が指定する注射器の最大充填容量であると解され、具体的な注射器の構造を特定するものではないから、「注射器」がどのような構成であるのか明確でなく、その結果、請求項15で特定する「封止パッケージと、最終的に滅菌済みの注射器とを備える注射器パックを組み立てて滅菌する方法」が不明確である。
よって、本件発明15は明確でなく、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
第5 当審の判断
1 引用文献の記載事項及び引用発明
(1)引用文献1(甲第1号証)について
ア 引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審にて付与した。以下同様。)
「【0001】
本発明は、ピストンを具えたプレフィルドシリンジ型の医療用器具に関し、この器具は当該器具に例えば薬液が充填された場合、ピストンに対するアクセスおよびその抜き外しを防止するための手段を具えている。」
「【0004】
この型のシリンジの製造中、シリンジは無菌環境にて充填され、次いで包装されて場合によっては殺菌消毒される。これら充填および包装の2つのステップの間で、これらのシリンジの内部空間が外部にさらされてはならず、またはここに収容される薬剤が汚染されてはならない。」
「【0029】
図1は、ガラスから作られる筒状本体2と、この筒状本体内を摺動可能なピストン3とを具えた器具1を示している。筒状本体2は、その先端4に注射針、例えば中空の皮下注射針(図示せず)を取り付けるためのチップ5-このチップはキャップ6によって塞がれている-と、その基端12にフランジ13とを有する。
【0030】
ピストンの下部端7は、筒状本体2の内部に薬液9が充填される内部有効容積8を画成する。ピストン3から独立しているプラグ14は、筒状本体2の基端12から突出する操作ロッド11の先端36に固定されている。本発明の図示しない実施形態においては、操作ロッド11がプラグ14に固定されていない。このプラグ14は、これを先端方向に支持する前記ピストン3の基端側に対し、本体2内を自由に直線移動するように設定されている。そのため、プラグ14とピストン3との間に支承面10がある。」
「【0032】
従って、図1に示した器具の製造工程中に、筒状本体2を充填するステップの後でなおかつ器具が包装される前に、誰かが筒状本体からピストン3を作動させるロッド11を引き抜こうとした場合、これはプラグ14が硬質カバー15と接触状態にもたらされよう。このカバーは、操作ロッド11のプラグ14と、それ故に操作ロッド11自体とを停止させる。従って、操作ロッド11が筒状本体2から完全に引き抜かれてこれをプラグ14から分離したとしても、後者は筒状本体2内に残り、それに続くピストン3へのアクセスを阻止する。プラグ14の存在のため、鋭利な手段を開口23から導入してピストン3を突き破ることはできない。
【0033】
図2は、本発明による器具の他の実施形態を示している。図1および図2において同じ部材を示す参照符号が繰り返される。操作ロッド11は、相互に逆方向に位置する径方向突起16が筒状本体2内に配される操作ロッドの部分に設けられている。ストッパ手段を形成するこれらの突起16は、ピストン3が筒状本体の基端12に向けてあらかじめ設定された限界を越えて動かされるのを阻止するように、カバー15と協力することができる。
【0034】
本発明のこの第2の実施形態によると、カバー15はステンレス鋼から作られ、フランジ13に対し環状のカラー17を使って確実にクリップ留めされる。このカバー15は、中央開口23へと延在する径方向タブ18をさらに具えており、基端方向への突起16の直線移動を停止することができる。
【0035】
図3は、ねじ、すなわちねじを切った部分19を使ってプラグ14内にねじ込まれる操作ロッド11を示している。ピストン3はプラグ14に連結されていない。このため、本発明のこの第1の実施形態によると、使用者はピストン3をシリンジの筒状本体2の基端に向けて動かすことができない。操作ロッド11がねじ込まれていない場合であっても、カバー15とピストン3との間のプラグ14の存在のため、ピストン3にアクセスすることも不可能である。」
「【図2】
[図:0001425699000001.jpg]
」
「【図3】
[図:0001425699000002.jpg]
」
イ 上記アの記載及び図示内容から、引用文献1には次の事項が記載されている。
(ア)段落【0001】及び【0004】の記載から、引用文献1に記載の医療用器具1は、殺菌消毒されたプレフィルドシリンジ型の医療用器具1であって、前記殺菌消毒されたプレフィルドシリンジ型の医療用器具1は、包装されて殺菌消毒されることにより得られたものである。
(イ)段落【0029】及び【0030】の記載から、プレフィルドシリンジ型の医療用器具1は、筒状本体2と、ピストン3と、操作ロッド11及び操作ロッド11の先端36に固定されたプラグ14とを備えている。
(ウ)段落【0029】の記載を踏まえて図2をみると、筒状本体2の先端4に出口が看て取れる。
(エ)段落【0030】の記載を踏まえて図2をみると、ピストン3が、ピストン3の下部端7と筒状本体2とが内部有効容積8を画成するように筒状本体2内部に配置されることが看て取れる。また、注射器の技術分野において、ピストンが薬液を押し出すことが技術常識であり、上記(ウ)も踏まえると、ピストン3は、内部有効容積8から、出口を通して薬液9を押し出すことができる。
(オ)段落【0030】の記載及び図2から、操作ロッド11の先端36に固定されたプラグ14は、その下端部のピストン3に対向する面がピストン3に接触して該ピストン3を押圧することが明らかであるから、前記プラグ14はピストン接触面を備えている。また、図2において、操作ロッド11の上端部は、後部といえる。したがって、操作ロッド11及び前記操作ロッド11の先端36に固定されたプラグ14は、プラグ14の下端部にあるピストン接触面を備え、ピストン接触面と操作ロッド11の後部との間に延在するものである。
(カ)段落【0035】の記載から、上記(オ)の事項並びに図2及び3を踏まえると、ピストン接触面は、ピストン3に接触するが、前記ピストン3に連結されていないように構成され、それにより、前記ピストン3を筒状本体2の先端4に向けて押し進めて内部有効容積8の容積を減少するために前記操作ロッド11及び前記操作ロッド11の先端36に固定されたプラグ14を使用することができるが、前記筒状本体2の基端12に向けて前記ピストン3を動かすために前記操作ロッド11及び前記操作ロッド11の先端36に固定されたプラグ14を使用することができない。
(キ)段落【0030】の「ピストンの下端部7は、筒状本体2の内部に薬液9が充填される内部有効容積8を画成する」との記載から、内部有効容積8は、注射可能な薬液9が充填される。
(ク)段落【0033】及び【0034】の記載並びに図2及び3から、操作ロッド11が、先端4とは逆方向の面に径方向タブ18との接触部を有する径方向突起16を備え、プレフィルドシリンジ型の医療用器具1は、筒状本体2の基端12にあるフランジ13にクリップ留めされたカバー15を含み、カバー15が、先端4に向いた径方向タブ18を具えており、径方向突起16と協力して、径方向タブ18と径方向突起16が接触するときに先端4から離れる向きへの操作ロッド11及び操作ロッド11の先端36に固定されたプラグ14の直線移動を停止するものである。
(ケ)図2の図示内容を踏まえると、プレフィルドシリンジ型の医療用器具1が、長手方向に延びる中心軸を有することは明らかである。
また、段落【0029】の「筒状本体内を摺動可能なピストン3」の記載から、ピストン3が筒状のものであることは自明であり、図2及び3から、ピストン3が離間する2つの円周リブを備えることが看て取れる。
以上のことから、ピストン3は、医療用器具1の長手方向に延びる中心軸に沿う方向に離間する2つの円周リブを備える。
(コ)上記(ア)を踏まえれば、引用文献1には、殺菌消毒されたプレフィルドシリンジ型の医療用器具1が包装されて殺菌消毒する方法が実質的に記載されている。
(サ)上記(コ)の「方法」に関し、上記(イ)~(エ)、(キ)及び段落【0029】の「筒状本体2は、その先端4に注射針・・・を取り付けるためのチップ5-このチップはキャップ6によって塞がれている-と、・・・とを有する。」との記載を踏まえれば、引用文献1には、筒状本体2が、先端4にある出口を備え、ピストン3が、ピストン3の下部端7と筒状本体2とが内部有効容積8を画成するように筒状本体2内部に配置され、内部有効容積8から、出口を通して薬液9を押し出すことができ、出口がキャップ6によって塞がれ、内部有効容積8が薬液9を含むステップが記載されている。
(シ)上記(コ)の「方法」に関し、上記(オ)~(カ)及び図2を踏まえれば、引用文献1には、プラグ14の下端部にあるピストン接触面を備え、ピストン接触面と操作ロッド11の後部との間に延在する操作ロッド11及び操作ロッド11の先端36に固定されたプラグ14を提供し、操作ロッド11及び操作ロッド11の先端36に固定されたプラグ14をピストン3に連結されないように、ピストン接触面と操作ロッド11及び操作ロッド11の先端36に固定されたプラグ14の少なくとも一部を筒状本体2内部に配置するステップが記載されている。
(ス)上記(コ)の「方法」に関し、段落【0032】の「器具の製造工程中に、筒状本体2を充填するステップの後でなおかつ器具が包装される前に、・・・ロッド11を引き抜こうとした場合」との記載を参酌すれば、医療器具1が包装される前に、ピストン3と操作ロッド11及び操作ロッド11の先端36に固定されたプラグ14とが配置されていることは明らかである。
したがって、引用文献1には、筒状本体2内部にピストン3と操作ロッド11及び操作ロッド11の先端36に固定されたプラグ14とを配置した後に、医療器具1を包装するステップが記載されている。
(セ)上記(コ)の「方法」に関し、上記(ア)及び(ス)を踏まえれば、引用文献1には、包装された医療用器具1を殺菌消毒するステップが記載されている。
ウ 上記ア及びイの事項を総合すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「殺菌消毒されたプレフィルドシリンジ型の医療用器具1が包装されて殺菌消毒する方法であって、前記医療用器具1は、筒状本体2と、ピストン3と、操作ロッド11及び操作ロッド11の先端36に固定されたプラグ14とを備え、前記殺菌消毒されたプレフィルドシリンジ型の医療用器具1は、包装されて殺菌消毒されることにより得られ、前記筒状本体2が、先端4にある出口を備え、前記ピストン3が、前記ピストン3の下部端7と前記筒状本体2とが内部有効容積8を画成するように前記筒状本体2内部に配置され、前記内部有効容積8から、前記出口を通して薬液9を押し出すことができ、操作ロッド11及び操作ロッド11の先端36に固定されたプラグ14が、プラグ14の下端部にあるピストン接触面を備え、前記ピストン接触面と操作ロッド11の後部との間に延在するものであり、前記ピストン接触面が、ピストン3に接触するが、前記ピストン3に連結されていないように構成され、それにより、前記ピストン3を筒状本体2の先端4に向けて押し進めて内部有効容積8の容積を減少するために操作ロッド11及び操作ロッド11の先端36に固定されたプラグ14を使用することができるが、前記筒状本体2の基端12に向けて前記ピストン3を動かすために操作ロッド11及び操作ロッド11の先端36に固定されたプラグ14を使用することができず、前記内部有効容積8は、薬液9が充填され、前記操作ロッド11が、前記先端4とは逆方向の面に径方向タブ18との接触部を有する径方向突起16を備え、前記医療用器具1は、筒状本体2の基部12にあるフランジ13にクリップ留めされたカバー15を含み、前記カバー15が、前記先端4に向いた径方向タブ18を具えており、前記径方向突起16と協力して、前記径方向タブ18と前記径方向突起16が接触するときに前記先端4から離れる向きへの操作ロッド11及び操作ロッド11の先端36に固定されたプラグ14の直線運動を停止し、前記ピストン3は、前記医療用器具1の長手方向に延びる中心軸に沿う方向に離間する2つの円周リブを備え、前記方法は、以下のステップ:
i)筒状本体2及びピストン3を提供するステップであって、筒状本体2が、先端4にある出口を備え、ピストン3が、ピストン3の下部端7と筒状本体2とが内部有効容積8を画成するように筒状本体2内部に配置され、内部有効容積8から、出口を通して薬液9を押し出すことができ、出口がキャップ6によって塞がれ、内部有効容積8が薬液9を含むステップと
ii)プラグ14の下端部にあるピストン接触面を備え、前記ピストン接触面と操作ロッド11の後部との間に延在する操作ロッド11及び操作ロッド11の先端36に固定されたプラグ14を提供し、操作ロッド11及び操作ロッド11の先端36に固定されたプラグ14をピストン3に連結されないように、ピストン接触面と操作ロッド11及び操作ロッド11の先端36に固定されたプラグ14の少なくとも一部を筒状本体2内部に配置するステップと
iii)筒状本体2内部にピストン3と操作ロッド11及び操作ロッド11の先端36に固定されたプラグ14とを配置した後に、医療用器具1を包装するステップと
iv)包装された医療用器具1を殺菌消毒するステップと
を含む方法。」
(2)引用文献2(甲第2号証)について
引用文献2には、以下の事項が記載されている(なお、以下では翻訳文のみを記載する。以下同様。)。
第270ページ「序文」
「少量の薬剤を硝子体内注射することは、様々な網膜疾患に対する現代の治療における主要な外科的介入となった。・・・ラニビズマブ(ルーセンティス(R))の登場により、・・・湿性AMD患者において視力の安定だけでなく機能の定量的な改善を可能にする治療法が登場した[1、2]。・・・ルセンティスの硝子体内注射用セットには、0.5mg(0.05ml)投与用の1mLシリンジ、あるいはこれまでの研究で使用されてきた0.03mlのシリンジが含まれており、このシリンジを使用してルセンティスの硝子体内注射を行うことができる。・・・」
第270ページ「材料と方法」
「これらの実験では、臨床応用から過剰なラニビズマブ(10mg/ml)をプールし、ベースと受け皿としての綿球(Φ15mm)からなる人工眼への注入に使用した。・・・」
(3)引用文献3(甲第4号証)について
引用文献3には、以下の事項が記載されている。
「【0003】 本発明は、眼球の後セグメントに治療剤を送達することに関するものである。・・・」
「【0076】 多くの実施形態において、少なくとも1つの治療剤は、少なくとも抗体の断片と、少なくとも約10kダルトンの分子量とを含む。少なくとも1つの治療薬は、ラニビズマブを含んでいてもよい。・・・少なくとも1つの治療薬は、アフリベルセプト(Aflibercept(登録商標))を含んでもよい。」
「【0250】 例えば、アメリカ合衆国では、ルセンティスTM(有効成分ラニビズマブ)は防腐剤を含まない無菌溶液として、・・・10mg/mLルセンティスTM水性溶液0.05mLが供給できるように設計されている使い捨てガラスバイアルで提供されている。・・・」
(4)引用文献4(甲第5号証)について
引用文献4には、以下の事項が記載されている。
第9ページ第11~14行
「別の実施形態において、溶液は、医薬品容器表面の無菌性が必要とされるか、望まれる任意の医薬品である。1つの特定の実施形態において、医薬品は、硝子体内注射のためのラニビズマブ(例えば6mg/mlまたは10mg/ml)溶液などのタンパク質溶液である。」
(5)引用文献5(甲第6号証)について
引用文献5には、以下の事項が記載されている。
「【0148】 単独で又は併用薬物療法の一部として使用され得る薬物の非限定的な具体例としては、ルセンティスTM(ラニビズマブ)、・・・血管内皮増殖因子(VEGF)トラップ(アフリベルセプト)、・・・が挙げられる。」
(6)引用文献6(甲第8号証)について
引用文献6には、以下の事項が記載されている。
第1897ページ「背景」
「ラニビズマブは、血管新生型加齢黄斑変性症(AMD)の治療薬として、臨床試験でその有効性が確立されている。・・・」
第1898ページ「治療」
「・・・ラニビズマブの投与量は0.50mg(液量0.05ml)であり、ベバシズマブが1.25mg(液量0.05ml)であった。」
(7)引用文献13(甲第38号証)について
ア 引用文献13には、以下の事項が記載されている。
第5ページ第18行~第6ページ第14行
「ここで、滑栓1の摺動部分4の長さをLとし、滑栓1の摺動部分4のうちで注射器外筒8の内壁と接触する部分5の長さをYとすると、YがLの80~100%すなわちY/Lが0.80~1.00の範囲内にあり、・・・第2図のように接触部分51(長さY1)と52(長さY2)の間に、環状凹部6を設けてもよい。この場合はY1とY2の計がLの80~100%である。なお摺動部分長さLは6~15mm程度とする・・・」
第2図
「
[図:0001425699000003.jpg]
」
イ 引用文献13に記載された技術事項
上記アの記載事項から、滑栓1の接触部分51と52の間に設けられた環状凹部6の長さは、0~3mmと算出できる。
したがって、引用文献13には、次の技術事項(以下「引用文献13技術」という。)が記載されている。
「滑栓1において、2個の接触部分51、52の離間距離を0~3mmとすること。」
(8)引用文献14(甲第41号証)について
ア 引用文献14には、以下の事項が記載されている。
第3ページ左欄第2~9行
「環状突起の数を4~8個、ピッチ(x)を2mm又は1.5mm、摺動部長さ(l)を6~14mmの範囲内で変化させた形状で、・・・滑栓を作製した(表1の実施例1~9)。また、第3図に示した環状突起が2個の断面形状でピッチが4.8mm、摺動部長さが4~8mmでラミネート層を有する又は有しない比較品(表1の比較例1~4,なお比較例2,3,4は市販品である)を別に用意した。」
(当審注:上記「ピッチが4.8mm」との記載は、表1の記載からみて「4~8mm」の誤記であると認める。)
第4ページ「表1」(一部抜粋)
「
[図:0001425699000004.jpg]
」
第1図
「
[図:0001425699000005.jpg]
」
第3図
「
[図:0001425699000006.jpg]
」
イ 引用文献14に記載された技術事項
上記アの記載事項において、滑栓の摺動部長さ(l)は、複数個の環状突起のうち、両端にある環状突起の離間距離に等しいので、両端にある環状突起の離間距離は、4~14mmである。
したがって、引用文献14には、次の技術事項(以下「引用文献14技術」という。)が記載されている。
「複数個の環状突起を有する滑栓において、両端の環状突起の離間距離を4~14mmとすること。」
2 本件発明15について
(1)対比
本件発明15と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「殺菌消毒されたプレフィルドシリンジ型の医療用器具1」は、引用文献1の段落【0004】の記載から、シリンジに薬剤が充填され、次いで包装されて殺菌消毒されることにより得られるものであるので、本件発明15の「最終的に滅菌済みの注射器」に相当する。そして、引用発明の「滅菌消毒されたプレフィルドシリンジ型の医療用器具1が包装されて殺菌消毒する方法」は、本件発明15の「封止パッケージと、最終的に滅菌済みの注射器とを備える注射器パックを組み立てて滅菌する方法」に相当する。
イ 引用発明の「筒状本体2」は本件発明15の「本体」に相当し、以下同様に、
「ピストン3」は「ストッパ」に、
「操作ロッド11及び操作ロッド11の先端36に固定されたプラグ14」は「プランジャ」に、
「先端4」は「一端部」に、
「ピストン3の下端部7」は「ストッパの前面」に、
「内部有効容積8」は、ピストン3の移動により容量が可変であることが明らかであるから「可変容量チャンバ」に、
「薬液9」は「流体」又は「薬剤」に、
「プラグ14の下端部にあるピストン接触面」は「第1の端部にあるプランジャ接触面」に、
「操作ロッド11及び操作ロッド11の先端36に固定されたプラグ14が、プラグ14の下端部にあるピストン接触面を備え、前記ピストン接触面と操作ロッド11の後部との間に延在するものであ」ることは「プランジャが、第1の端部にあるプランジャ接触面と、前記プランジャ接触面と後部との間に延在するロッドとを備え」ることに、
「連結されていないように」は「結合はしないように」に、
「容積」は「容量」に、
「筒状本体2の基端12に向けて」は、先端4から離れる向きであるから、「一端部から離れる向きに」に、
「動かすために」は「移動させるために」に、
「内部有効容積8は、薬液9が充填され」ることは、薬液9が注射可能であることは明らかであるので、「可変容量チャンバが、注射可能な薬剤を含」むことに、
「先端4とは逆方向の面に径方向タブ18との接触部を有する径方向突起16」は「一端部とは逆向きの少なくとも一つのロッドショルダ」に、
「筒状本体2の基部12にあるフランジ13にクリップ留めされたカバー15」は「本体の後部に配置されたバックストップ」に、
「径方向タブ18」は「バックストップショルダ」に、
「具えており」は「含み」に、
「協力して」は「協働して」に、
「直線移動を停止」することは「移動を防止」することに、
「出口がキャップ6によって塞がれ」ることは「出口が解放可能に封止され」ることに、
「医療用器具1を包装する」ことは、医療用器具1を組み立てた最終製品を包装することは明らかなので、「注射器の最終アセンブリを前記封止パッケージ内に封止する」ことに、
それぞれ相当する。
ウ 引用発明の「医療用器具1の長手方向に延びる中心軸」は、本件明細書等の図2から、第1の軸Aが注射器1の長手方向に延びる中心軸であるといえるので、本件発明15の「第1の軸」に相当し、同様に、「2つの円周リブ」は「前側円周リブと後側円周リブ」に相当する。
そして、引用発明の「ピストン3は、前記医療用器具1の長手方向に延びる中心軸に沿う方向に離間する2つの円周リブを備え」ることと、本件発明15の「ストッパは、少なくとも第1の軸に沿って互いが3mm離間する前側円周リブと後側円周リブを備え」ることとは、「ストッパは、少なくとも第1の軸に沿って互いが離間する前側円周リブと後側円周リブを備え」ることの限りで一致する。
エ 引用発明の「包装された医療用器具1を殺菌消毒する」ことと、本件発明15の「前記本体内部に前記ストッパと前記プランジャとを配置した後に、前記注射器の最終アセンブリを前記封止パッケージ内に封止」し、「前記封止パッケージにパッケージングされた前記最終アセンブリを可変容量チャンバ内部または可変容量チャンバ外部の圧力が変わる中で最終滅菌する」こととは、「封止パッケージにパッケージングされた前記最終アセンブリを最終滅菌する」ことの限りで一致する。
オ してみると、本件発明15と引用発明とは、以下の一致点及び相違点を有する。
<一致点>
「封止パッケージと、最終的に滅菌済みの注射器とを備える注射器パックを組み立てて滅菌する方法であって、前記注射器は、本体と、ストッパと、プランジャとを備え、前記最終的に滅菌済みの注射器は、パッケージ内に封止された製品を滅菌することにより得られ、前記本体が、一端部にある出口を備え、前記ストッパが、前記ストッパの前面と前記本体とが可変容量チャンバを画定するように前記本体内部に配置され、前記可変容量チャンバから、前記出口を通して流体を押し出すことができ、前記プランジャが、第1の端部にあるプランジャ接触面と、前記プランジャ接触面と後部との間に延在するロッドとを備え、前記プランジャ接触面が、前記ストッパに接触するが、前記ストッパに結合はしないように構成され、それにより、前記ストッパを前記本体の前記一端部に向けて押し進めて前記可変容量チャンバの前記容量を減少するために前記プランジャを使用することができるが、前記一端部から離れる向きに前記ストッパを移動させるために前記プランジャを使用することができず、前記可変容量チャンバが、注射可能な薬剤を含み、前記ロッドが、前記一端部とは逆向きの少なくとも1つのロッドショルダを備え、前記注射器が、前記本体の後部に配置されたバックストップを含み、前記バックストップが、前記一端部に向いたバックストップショルダを含み、前記ロッドショルダと協働して、前記バックトップショルダとロッドショルダが接触するときに前記一端部から離れる向きへの前記プランジャロッドの移動を防止し、前記ストッパは、少なくとも第1の軸に沿って互いが離間する前側円周リブと後側円周リブを備え、前記方法は、以下のステップ:
i)前記本体および前記ストッパを提供するステップであって、前記本体が、一端部にある前記出口を備え、前記ストッパが、前記ストッパの前記前面と前記本体とが前記可変容量チャンバを画定するように前記本体内部に配置され、前記可変容量チャンバから、前記出口を通して前記液体を押し出すことができ、前記出口が解放可能に封止され、前記可変容量チャンバが前記薬剤を含むステップと
ii)前記第1の端部にある前記プランジャ接触面と、前記プランジャ接触面と前記後部との間に延在する前記ロッドとを備える前記プランジャを提供し、前記プランジャを前記ストッパに結合させずに、前記プランジャ接触面と前記プランジャの少なくとも一部とを前記本体内部に配置するステップと
iii)前記本体内部に前記ストッパと前記プランジャとを配置した後に、前記注射器の最終アセンブリを前記封止パッケージ内に封止するステップと
iv)前記封止パッケージにパッケージングされた前記最終アセンブリを最終滅菌するステップと
を含む方法。」
<相違点1>
本件発明15は、「前記注射器は眼科用注射に適しており」、「前記注射可能な薬剤は、ラニビズマブの10mg/ml溶液で、投薬体積は0.05ml若しくは0.03mlであり、又は、前記注射可能な薬剤は、アフリベルセプトの40mg/ml溶液で、投薬体積は0.05mlであ」るのに対し、引用発明は、そのような構成を有するか明らかでない点。
<相違点2>
本件発明15は、「前記プランジャ接触面と前記ストッパが接触した状態で配置され、前記可変容量チャンバが注射可能な薬剤で充填されるとき、前記ロッドショルダと前記バックストップショルダとの間に0mmよりも大きく2mm以下の間隙が存在し」、前記ストッパは、少なくとも第1の軸に沿って互いが「3mm」離間する前側円周リブと後側円周リブを備えるのに対し、引用発明は、径方向突起16と径方向タブ18とを備え、医療用器具1の長手方向に延びる中心軸に沿う方向に離間される2つの円周リブを備えるものの、それらの具体的配置が不明である点。
<相違点3>
封止パッケージにパッケージングされた最終アセンブリを最終滅菌することに関し、本件発明15は、「可変容量チャンバ内部または可変容量チャンバ外部の圧力が変わる中で」最終滅菌するのに対し、引用発明は、包装された医療用器具1を殺菌消毒する点。
(2)判断
上記各相違点について以下検討する。
<相違点1及び3について>
注射器により、眼科用にラニビズマブ又はアフリベルセプトを注射することは従来周知の技術である(例えば、引用文献2(第270ページ(上記1(2)))、引用文献3(段落【0003】、【0076】及び【0250】(上記1(3)))、引用文献4(第9ページ(上記1(4)))、引用文献5(段落【0148】(上記1(5)))、引用文献6(第1897~1898ページ(上記1(6)))を参照。)。
また、上記薬剤の濃度や投薬体積をどの程度とするかは、病状等に応じて当業者が適宜選択し得る事項である(必要であれば、引用文献2(第270ページ(上記1(2)))に記載のラニビズマブの10mg/ml溶液、引用文献3(段落【0250】(上記1(3)))に記載のラニビズマブの10mg/mL溶液0.05mL、引用文献4(第9ページ(上記1(4)))に記載のラニビズマブの10mg/ml溶液、引用文献6(第1898ページ(上記1(6)))に記載のラニビズマブの投与量0.05mlを参照。)。
そして、注射器の形状やサイズは、用途に応じて最適化することが自明な課題であるから、引用発明において、その用途を眼科用とするとともに、薬剤を上記周知のラニビズマブ又はアフリベルセプトとし、病状等に応じた濃度及び投薬体積を充填することで、上記相違点1に係る本件発明15の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
さらに、医療用器具を殺菌消毒する際、封入された薬剤や当該医療用器具に適した方法が採用されることは通常行われることであり、熱又は滅菌ガスによって注射器を滅菌することは例を挙げるまでもなく周知の事項である。そして、そのような滅菌は注射器の内外に圧力変化を生じることが自明であることに鑑みれば、上記のとおり構成した医療用器具1の殺菌消毒は、当該医療用器具1の内部有効容積8の内部または外部の圧力が変わる中で殺菌消毒するものとなる。
したがって、上記相違点1及び3に係る本件発明15の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
<相違点2について>
引用文献1の図2には、内部有効容積8が注射可能な薬剤で充填されるとき、ピストン3が薬剤9により移動されることで、ピストン接触面とピストン3が接触した状態で配置され、径方向突起16と径方向タブ18とが接触した状態で配置され、径方向突起16と径方向タブ18とが接触し、約0mmの間隔が存在する構成が記載されている。
そして、本件発明15は、ロッドショルダとバックストップショルダとの間に0mmより大きく2mm以下の間隙が存在するが、注射器の組立上の誤差等を加味すれば、ロッドショルダとバックショルダとの間にごく僅かな隙間が生じることは通常であり、「0mm」と「0mmより大きい」の間に実質的な差異はない。
一方、引用発明のピストン3は2つの円周リブを備えるところ、該2つの円周リブの間は、0mmより大きくある程度離間しており(引用文献1の図2及び3を参照。)、「ストッパの移動による滅菌領域が破られることを防止する」という課題を解決していると理解できる。
そして、引用発明のピストン3のリブ間の離間距離は、径方向突起16と径方向タブ18との間の間隙に比して十分に大きいものであり、リブ間の離間距離を0~10mm程度とすることが通常行われているのであるから(引用文献13技術(上記1(7))及び引用文献14技術(上記1(8))を参照。)、当該リブ間の離間距離を具体的に3mmとすることは、設計的事項にすぎない。
よって、引用発明において、上記相違点2に係る構成を採用することは当業者にとって容易である。
(3)効果について
本件発明15の奏する効果は、引用発明及び周知の技術(引用文献2~6、引用文献13、14)に基いて、当業者が予測し得た範囲内のものであり、格別顕著なものということはできない。
(4)小括
以上のとおりであるから、本件発明15は、引用発明及び周知の技術(引用文献2~6、引用文献13、14)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 むすび
以上のとおりであるから、本件発明15に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、本件の請求項1~14及び16に係る特許については、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、異議申立人による特許異議の申立てについて、請求項1~14及び16に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-701165