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特許異議申立

2022-700856

評価方法、毛髪処理剤の選定方法、及び評価支援ツール

審判番号
2022-700856
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-113116
登録番号
7042699
請求日
2022年09月01日
審決日
2023年10月11日
公報発行日
2024年01月26日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社ミルボン
  • 【権利者代理人】加藤 秀忠
  • 【権利者代理人】合路 裕介
  • 【異議申立人】小林 寛史
審判長/審判官
  • 審判長 石井 哲
  • 審判官 加々美 一恵
  • 審判官 上田 泰
分類
P1651.121-YAA(A61B) / P1651.536-YAA(A61B) / P1651.537-YAA(A61B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第6項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7042699号発明「評価方法、毛髪処理剤の選定方法、及び評価支援ツール」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7042699号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。 特許第7042699号の請求項2~5に係る特許を維持する。 特許第7042699号の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯の概要 特許第7042699号の請求項1~5に係る特許についての出願は、平成29年9月15日に出願した特願2017-178044号の一部を平成30年6月13日に新たな特許出願としたものであって、令和4年3月17日にその特許権の設定登録がされ、令和4年3月28日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和4年 9月 1日 : 特許異議申立人小林寛史(以下「申立人」という。)による請求項1~5に係る特許に対する特許異議の申立て 令和4年12月19日付け: 取消理由通知書 令和5年 2月16日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和5年 4月10日 : 申立人による意見書の提出 令和5年 5月29日付け: 取消理由通知書(決定の予告) 令和5年 7月31日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 なお、令和5年4月10日に申立人による意見書の提出がされ、令和5年5月29日付け取消理由通知(決定の予告)がなされた後、以下第2で述べるように、令和5年7月31日提出の訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)によって特許請求の範囲が減縮されている。このため、すでに申立人には意見書の提出の機会が与えられており、また、本件において提出された全ての証拠や意見等を踏まえてさらに審理を進めたとしても特許を維持すべきとの結論となると合議体が判断したため、特許法第120条の5第5項ただし書における「申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないと認められる特別の事情」があるとして、令和5年7月31日付け訂正請求書の提出の後に申立人に対して意見書を提出する機会を与えないこととした。 また、令和5年2月16日提出の訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 本件訂正の内容は以下のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1を削除する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2の「前記被評価者の年齢に応じた頭皮の赤み又は赤みに関する指標の比較基準となる情報を用いて前記評価を行う、請求項1に記載の評価方法。」とあるものについて、「白髪の多さ、毛髪本数の少なさ、毛髪太さのばらつきの大きさの少なくともいずれかを被評価者の年齢に応じた頭皮の赤み又は赤みに関する指標の比較基準となる情報を用いて評価する、評価方法。」に訂正する。(請求項2の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3、4及び5も同様に訂正する。) (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3の「請求項1又は2に記載の評価方法により得られる評価結果に応じて前記被評価者に対して推奨する毛髪処理剤の選定を行う、毛髪処理剤の選定方法。」とあるものについて、引用する請求項を請求項2のみとし、「請求項2に記載の評価方法により得られる評価結果に応じて前記被評価者に対して推奨する毛髪処理剤の選定を行う、毛髪処理剤の選定方法。」に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項5の「白髪の多さ、毛髪本数の少なさ、毛髪太さのばらつきの大きさ、細毛率の少なくともいずれかの請求項1又は2に記載の評価方法を用いた評価を支援する評価支援ツールであって、被評価者の頭皮の赤み又は赤みに関する指標と比較するための比較基準の年代毎の情報が格納された記憶手段と、被評価者の年代情報を受け付ける入力手段と、ディスプレイと、を備え、前記入力手段が受け付けた前記年代情報に基づいて前記記憶手段に格納されている前記比較基準が前記ディスプレイに表示される、評価支援ツール。」とあるのを、「白髪の多さ、毛髪本数の少なさ、毛髪太さのばらつきの大きさの少なくともいずれかの請求項2に記載の評価方法を用いた評価を支援する評価支援ツールであって、被評価者の頭皮の赤み又は赤みに関する指標と比較するための比較基準の年代毎の情報が格納された記憶手段と、被評価者の年代情報を受け付ける入力手段と、ディスプレイと、を備え、前記入力手段が受け付けた前記年代情報に基づいて前記記憶手段に格納されている前記比較基準が前記ディスプレイに表示される、評価支援ツール。」に訂正する。 なお、訂正前の請求項1~5について、請求項2~5は、請求項1を直接的又は間接的に引用するものであって、本件訂正は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項1~5について請求されている。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1) 訂正事項1 ア 訂正の目的 訂正事項1は請求項1を削除するというものであるから、当該訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 訂正事項1は、請求項1を削除するというものであるから、明らかに願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項1は、請求項1を削除するというものであるから、明らかに願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 エ 小括 よって、訂正事項1は訂正要件を満たす。 (2)訂正事項2 ア 訂正の目的 訂正事項2は、訂正前の請求項2が請求項1の記載を引用する記載であるところ、請求項間の引用関係を解消して他の請求項の記載を引用しないもの(以下「独立形式請求項」という)へ改めるための訂正と、当該独立形式請求項へ改める際に、重複する表現を整理したり語順を入れ替えたりすることで、単に独立形式請求項へ改めると日本語として明瞭でない記載となるものを明瞭化した訂正と、訂正前の請求項1に択一的に記載されていた細毛率を削除するための訂正である。 独立形式請求項へ改めるための訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。独立形式請求項へ改める際に日本語として明瞭でない記載となるものを明瞭化した訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正である。訂正前の請求項2が引用する請求項1に択一的に記載されていた細毛率を削除するための訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。 イ 新規事項の有無 訂正事項2は、独立形式請求項へ改めるための訂正と、明瞭でない記載の釈明のための訂正と、択一的に記載されていた事項である細毛率を削除する訂正であって、明らかに願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項2は、独立形式請求項へ改めるための訂正と、明瞭でない記載の釈明のための訂正と、択一的に記載されていた事項である細毛率を削除する訂正であって、明らかに願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 エ 小括 よって、訂正事項2は訂正要件を満たす。 (3)訂正事項3 ア 訂正の目的 訂正事項3は、訂正前の請求項3が請求項1又は2の記載を引用する記載であるところ、訂正事項1で請求項1が削除されることに伴い、引用する請求項を請求項2のみにする訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。 イ 新規事項の有無 訂正事項3は、引用する請求項の択一肢の一部を削除するものであるから、明らかに願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項3は、引用する請求項の択一肢の一部を削除するものであるから、明らかに実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。したがって、訂正事項3は特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 エ 小括 よって、訂正事項3は訂正要件を満たす。 (4)訂正事項4 ア 訂正の目的 訂正事項4は、訂正前の請求項5が請求項1又は2の記載を引用する記載であるところ、訂正事項1で請求項1が削除されることに伴い、引用する請求項を請求項2のみにする訂正と、訂正前の請求項1に択一的に記載されていた細毛率を削除するための訂正である。 引用する請求項を請求項2のみにする訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。 訂正前の請求項1に択一的に記載されていた細毛率を削除するための訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。 イ 新規事項の有無 訂正事項4は、引用する請求項の択一肢の一部を削除する訂正と、択一的に記載されていた事項である細毛率を削除する訂正であって、明らかに願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項4は、引用する請求項の択一肢の一部を削除する訂正と、択一的に記載されていた事項を削除する訂正であるから、明らかに実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。したがって、訂正事項3は特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 エ 小括 よって、訂正事項4は訂正要件を満たす。 3 訂正の適否の小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号および第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。 第3 本件訂正発明 本件訂正は上記第2のとおり認められたので、本件訂正後の請求項2~5に係る発明(以下「本件訂正発明2」~「本件訂正発明5」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項2~5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 【本件訂正発明2】 白髪の多さ、毛髪本数の少なさ、毛髪太さのばらつきの大きさの少なくともいずれかを被評価者の年齢に応じた頭皮の赤み又は赤みに関する指標の比較基準となる情報を用いて評価する、評価方法。 【本件訂正発明3】 請求項2に記載の評価方法により得られる評価結果に応じて前記被評価者に対して推奨する毛髪処理剤の選定を行う、毛髪処理剤の選定方法。 【本件訂正発明4】 前記評価結果に基づいて抗炎症剤が配合された毛髪処理剤を選定する、 請求項3に記載の毛髪処理剤の選定方法。 【本件訂正発明5】 白髪の多さ、毛髪本数の少なさ、毛髪太さのばらつきの大きさの少なくともいずれかの請求項2に記載の評価方法を用いた評価を支援する評価支援ツールであって、 被評価者の頭皮の赤み又は赤みに関する指標と比較するための比較基準の年代毎の情報が格納された記憶手段と、 被評価者の年代情報を受け付ける入力手段と、 ディスプレイと、 を備え、 前記入力手段が受け付けた前記年代情報に基づいて前記記憶手段に格納されている前記比較基準が前記ディスプレイに表示される、 評価支援ツール 第4 取消理由(決定の予告)の概要 令和5年5月29日付けの取消理由通知(決定の予告)は、令和5年2月26日付けの訂正請求書により訂正された請求項2~5に対するものであって、その概要は以下のとおりである。 本件特許は、請求項2~5に係る特許のうち細毛率に係る部分について特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 第5 当審の判断 第2に記載したとおり、本件訂正により細毛率に係る部分は削除された結果、本件訂正発明2~5には細毛率に係る発明は存在せず、令和5年5月29日付けの取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由は明らかに解消している。 第6 取消理由通知書(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由(進歩性違反)について 申立人は、特許異議申立書で以下の引用文献1~6を根拠に、本件訂正前の請求項1~5に係る発明は特許法第29条第2項に該当する旨を主張しているので、これについて検討する。 引用文献1:特開2010-200971号公報(甲第1号証) 引用文献2:特開2012-184220号公報(甲第2号証) 引用文献3:特開2014-80409号公報(甲第3号証) 引用文献4:特開2017-71600号公報(甲第4号証) 引用文献5:特表2016-518885号公報(甲第5号証) 引用文献6:新村出編、広辞苑第6版、2008年、第1457頁「診断」欄及び第2393頁「評価」欄(甲第6号証) 1 引用文献 (1)引用文献1について ア 引用文献1に記載された事項 引用文献1には、以下の事項が記載されている。 (引1a)「【0017】 (第1発明) 上記課題を解決するための本願第1発明の構成は、頭皮上に発現した紅斑の度合いを数値化して紅斑スコアを算出し、この紅斑スコアに基いて毛根に略円錐形状の物質が付着した毛髪の脱毛の発現の有無を予測し、あるいは既に発現している脱毛が毛根に略円錐形状の物質が付着した毛髪を主体とするものであるか否かを推定する、異常脱毛予測/推定方法である。 【0018】 ここで頭皮の「紅斑」とは、頭皮の皮膚の色が正常な部分と比較して常時赤みを帯びた状態となっているか、又は軽く押さえつける程度の物理的な刺激によって容易に赤みを生じる状態になっていることを指す。第1発明においては、頭皮における紅斑の発現度と全脱毛中における円錐形状物質付着毛髪の割合との間に正の相関があるという知見を利用している。実施例において後述するように、この相関は信頼性があるので、円錐形状物質付着脱毛を良好な信頼性のもとに簡易に予測できる手段となる。従って、頭皮における紅斑の発現度(紅斑の度合い)を数値化して定量的・客観的な紅斑スコアを算出すれば、この紅斑スコアに基いて円錐形状物質付着脱毛の発現の有無を予測したり、既に発現している脱毛が円錐形状物質付着毛髪を主体とするか否かの推定を行ったりすることが簡易に可能である。」 (引1b)「【0023】 (第3発明) 上記課題を解決するための本願第3発明の構成は、第1発明又は第2発明に記載された紅斑スコアに基き、毛根に略円錐形状の物質が付着した毛髪の脱毛の発現が予測され、あるいは既に発現している脱毛が毛根に略円錐形状の物質が付着した毛髪を主体とするものであると推定された場合は、毛根に略円錐形状の物質が付着した毛髪の脱毛に対する抑制効果が認められる有効成分を含有する低アルコール系の製剤を頭皮に適用する、異常脱毛予防/防止方法である。 【0024】 第3発明においては、信頼性のある紅斑スコアに基いて円錐形状物質付着脱毛の発現の有無を予測し、あるいは既に発現している脱毛が円錐形状物質付着毛髪を主体とするか否かを推定し、その結果に応じて、アルコール系製剤を適用すること自体が脱毛を悪化させる恐れがある場合には低アルコール系の製剤を適用するので、有効成分による異常脱毛の的確な予防/防止を図ることができる。」 (引1c)「【0037】 〔異常脱毛予防/防止方法〕 本発明に係る異常脱毛予防/防止方法は、上記した紅斑スコアに基き、以下(1)を行う方法である。更に、以下(2)の措置を行うことも可能である。 (1)紅斑スコアに基いて円錐形状物質付着脱毛の発現が予測され、あるいは既に発現している脱毛が円錐形状物質付着毛髪を主体とするものであると推定された場合は、円錐形状物質付着脱毛の抑制効果が認められる有効成分を含有する低アルコール系の製剤を頭皮に適用する。 (2)紅斑スコアに基いて円錐形状物質付着脱毛の発現が予測されず、あるいは既に発現 している脱毛が円錐形状物質付着毛髪を主体とするものではないと推定された場合には、適宜な有効成分を含有するアルコール系又は低アルコール系の製剤を頭皮に適用する。」 イ 引用文献1に記載された発明 上記(引1a)及び(引1b)より、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「頭皮上に発現した紅斑の度合いを数値化して紅斑スコアを算出し、 この紅斑スコアに基いて毛根に略円錐形状の物質が付着した毛髪の脱毛の発現の有無を予測し、 あるいは既に発現している脱毛が毛根に略円錐形状の物質が付着した毛髪を主体とするものであるか否かを推定する、異常脱毛予測/推定方法であって、 紅斑スコアに基き、毛根に略円錐形状の物質が付着した毛髪の脱毛の発現が予測され、あるいは既に発現している脱毛が毛根に略円錐形状の物質が付着した毛髪を主体とするものであると推定された場合は、 毛根に略円錐形状の物質が付着した毛髪の脱毛に対する抑制効果が認められる有効成分を含有する低アルコール系の製剤を頭皮に適用する、 異常脱毛予防/防止方法」 (2)引用文献2について ア 引用文献2に記載された事項 引用文献2には、以下の事項が記載されている。 (引2a)「【0002】 従来から育毛に関する研究が盛んに行われており、様々な脱毛や薄毛の原因が挙げられている。その原因のひとつとして、加齢が挙げられる。加齢によって生じる脱毛や薄毛などの症状は、男性のみならず女性においても大きな悩みの一因となっている。 また、最近の調査で、加齢に伴い頭皮が硬くなることを訴える人が増えていることがわかってきた。頭皮が硬くなると血流が悪くなるため、毛根部の細胞への栄養が行きわたりにくくなり、細毛化や薄毛化を加速することが知られている。 【0003】 一般に、頭皮を健康に保つことにより健やかな毛髪を育成することができることは広く知られている。頭皮を健常な状態に保つために、保湿剤や抗炎症剤を含む頭皮頭髪化粧料を使用することは、従来から行われてきた。また、保湿効果を有するが、べたつきがないことが、使用感の上で好まれている。」 (引2b)「【0008】 これまで加齢に伴う頭皮の状態変化については、ほとんど研究されてこなかった。本発明者らは、男女ともに加齢により頭皮の赤みや乾燥が進むこと、この頭皮の赤みや乾燥は、毛根部の細胞のアポトーシスを引き起こし、更には抜け毛に繋がるという新たな課題を見出した。」 イ 引用文献2に記載された技術事項 a 上記(引2a)には、「加齢に伴い頭皮が硬くなることを訴える人が増えていること・・・・頭皮が硬くなると血流が悪くなるため、毛根部の細胞への栄養が行きわたりにくくなり、細毛化や薄毛化を加速すること・・・」が記載され、(引2b)には、「加齢により頭皮の赤みや乾燥が進むこと、この頭皮の赤みや乾燥は、毛根部の細胞のアポトーシスを引き起こし、更には抜け毛に繋がる」旨、きさいされていることから、引用文献2には、「加齢により進む頭皮の赤みが細毛化や薄毛化と関連している」という技術事項(以下「技術事項2-1」という。)が記載されているといえる。 b また、上記(引2a)より、引用文献2には、「頭皮を健常な状態に保つために」、「抗炎症剤を含む頭皮頭髪化粧料を使用する」という技術事項(以下の技術事項2-2)という。)が記載されている。 (3)引用文献3について ア 引用文献3に記載された事項 引用文献3には、以下の事項が記載されている。 (引3a)「【0012】 本発明でいう「炎症」とは、何らかの内因性又は外因性の刺激を受けることで免疫応答が働き、それによって生体に出現した症候をいい、例えば肌に生じた場合、肌荒れ、かさつき、痒み、などといった症状が現われる。また、特に頭皮に炎症が生じた場合、頭皮の赤み、かさつき(乾燥)、吹き出物、フケなどの症状が現れるだけでなく、その影響で抜け毛、薄毛化、細毛化、さらに毛髪のはり、こしの衰えといった症状も現われる。本発明でいう炎症とは主として炎症性サイトカインといった炎症性物質、例えばインターロイキン-1α、インターロイキン-1β、インターロイキン-8などの過剰産生を伴う炎症状態をいう。」 イ 引用文献3に記載された技術事項 上記(引3a)より、引用文献3には「・・・頭皮に炎症が生じた場合、頭皮の赤み、・・・が現れるだけでなく、・・・抜け毛、薄毛化、細毛化、・・・も現われる。」と記載されていることから、引用文献3には、「頭皮の赤みと、抜け毛、薄毛化、細毛化は関連している」という技術事項(以下「技術事項3」という。)が記載されている。 (4)引用文献4について ア 引用文献4に記載された事項 引用文献4には、以下の事項が記載されている。 (引4a)「【0004】 また、慢性疾患だけでなく、加齢とともに増加するくすぶり炎症が原因で、さまざまな生理的予備能の衰え環境因子に対する脆弱性が高まり、疲れやすくなり、皮膚は弾力性を失って皺が刻まれ、白髪が増え毛髪が薄くなり、身体機能が低下していく。外因として、紫外線、気候変化、乾燥、汚染物質、食品や添加物、内因として、精神ストレス、睡眠や疲労などが挙げられる。」 イ 引用文献4に記載された技術事項 上記(引4a)より、引用文献4には「・・・加齢とともに増加するくすぶり炎症が原因で、・・・白髪が増え毛髪が薄くなり」と記載されており「加齢とともに増加するくすぶり炎症」は、頭皮の赤みであることから、引用文献4には、「加齢とともに増加するくすぶり炎症による頭皮の赤みと、白髪の多さと毛髪の薄さとは関連している」という技術事項(以下「技術事項4」という。)が記載されているといえる。 (5)引用文献5について ア 引用文献5に記載された事項 引用文献5には、以下の事項が記載されている。 (引5a)「【0023】 本発明は皮膚領域又は粘膜領域の光反射率の測定と紅斑値を算出するための新規の式を用いることによる前記測定の分析に基づく皮膚色を分析するための方法と紅斑を評価するための方法を提供する。その皮膚赤色値又は紅斑値は皮膚の発赤又は紅斑についての全強度範囲にわたる客観的で連続的な測定値を提供する。したがって、皮膚赤色紅斑値が大きいほど紅斑の強度が高くなる。 【0024】 「紅斑」という用語は、本明細書において使用される場合、あらゆる皮膚又は粘膜の発赤、又は皮膚若しくは粘膜の炎症、又は皮膚損傷を含み得る。例えば、紅斑は皮膚炎(例えば、放射線皮膚炎)、湿疹、上皮融解、落屑、潮紅、発赤、及び/又は発疹を含み得る。紅斑はあらゆる種類の紅斑、例えば、日焼け紅斑、慢性遊走性紅斑、硬結性紅斑、伝染性紅斑、輪状紅斑、遊走性紅斑、多型性紅斑、結節性紅斑、中毒性紅斑、角質溶解性冬期紅斑、手掌紅斑、スティーブンス・ジョンソン症候群、及び中毒性表皮壊死症(TEN、「ライエル症候群」としても知られる)及び頂部火炎状母斑も含み得る。「紅斑」という用語は皮膚損傷又は創傷をさらに指す。「紅斑」という用語はあらゆるステージの創傷、すなわち、新しい創傷、並びに様々な創傷治癒ステージの創傷も含み得る。」 (引5b)「【0066】 別の実施形態では紅斑値は1つより多くの基準紅斑値及び/又は基準領域の2つ以上の紅斑値の間の1つ以上の基準勾配値と比較され得る。前記基準紅斑値及び/又は基準勾配値は同じ対象の基準紅斑値又は1人以上の異なる対象の基準紅斑値を含み得る。例えば、同一又は類似の種類の紅斑及び/又は同一若しくは類似の等級の紅斑を有する対象、例えば、同じ疾患を有する、又は同じ治療を受けている対象から基準紅斑勾配値又は評価曲線又は基準曲線が決定され得る。したがって、本発明に従って1つ以上の紅斑値を算出し、且つ、前記1つ以上の紅斑値を1つ以上の基準紅斑値、2つ以上の基準紅斑値の間の基準紅斑勾配値、及び/又は評価曲線若しくは基準曲線に対して比較することにより対象の紅斑を評価することができる。」 イ 引用文献5に記載された技術事項 上記(引5a)及び(引5b)より引用文献5には、「紅斑を評価するための方法」として、「1つ以上の紅斑値を算出し、且つ、前記1つ以上の紅斑値を1つ以上の基準紅斑値、2つ以上の基準紅斑値の間の基準紅斑勾配値、及び/又は評価曲線若しくは基準曲線に対して比較することにより対象の紅斑を評価する」技術事項(以下「技術事項5」という。)が記載されている。 2 対比・判断 (1)本件訂正発明2について ア 対比 本件訂正により請求項1は削除されたので、本件訂正発明2と引用発明とを対比する。 a 引用発明の「毛根に略円錐形状の物質が付着した毛髪の脱毛の発現の有無を予測し、あるいは既に発現している脱毛が毛根に略円錐形状の物質が付着した毛髪を主体とするものであるか否かを推定する、異常脱毛予測/推定方法」は、毛髪の状態を評価する評価方法であるといえるから、本件訂正発明2の「白髪の多さ、毛髪本数の少なさ、毛髪太さのばらつきの大きさの少なくともいずれかを」「評価する、評価方法」と、毛髪の状態を評価する、評価方法である点で共通する。 b 引用発明の「頭皮」は、「異常脱毛」を「予測/推定」される被評価者の「頭皮」であるから、「頭皮上に発現した紅斑の度合いを数値化して」「算出」された「紅斑スコア」は、本件訂正発明2の「被評価者の頭皮の」「赤みに関する指標」に相当する。 c 以上a及びbより、本件発明1と引用発明との間には、以下の一致点及び相違点がある。 (一致点)「毛髪の状態を被評価者の頭皮の赤み又は赤みに関する指標に応じて評価する、評価方法。」 (相違点)評価する毛髪の状態が、本件訂正発明2は、「白髪の多さ、毛髪本数の少なさ、毛髪太さのばらつきの大きさの少なくともいずれか」であるのに対し、引用発明は、「毛根に略円錐形状の物質が付着した毛髪の脱毛の発現の有無」あるいは「既に発現している脱毛が毛根に略円錐形状の物質が付着した毛髪を主体とするものであるか否か」であり、評価方法が、本件訂正発明2は、「前記被評価者の年齢に応じた」頭皮の赤み又は赤みに関する指標の比較基準となる情報を用いて前記評価を行うのに対し、引用発明は、被評価者の年齢に応じた評価ではない点。 イ 判断 上記相違点について検討する。 引用発明は「脱毛」という現象に着目しているものの、「頭皮の赤みに関する指標」との相関関係を見ているのは「毛根に略円錐形状の物質が付着した毛髪の脱毛」であって、いわば特定の態様の脱毛に着目したもので「全体の脱毛毛髪の本数」ではない。また、引用文献1全体を参酌しても、「頭皮の赤みに関する指標」と「全体の脱毛毛髪の本数」との相関関係を窺わせる記載はない。また、引用発明は被評価者の年齢に応じた評価を行うものでもない。 とすると、技術事項2-1は「加齢により進む頭皮の赤みが細毛化や薄毛化と関連している」ということであり、技術事項3は「頭皮の赤みと、抜け毛、薄毛化、細毛化は関連している」ということであって、技術事項4は「加齢とともに増加するくすぶり炎症による頭皮の赤みと、白髪の多さと毛髪の薄さとは関連している」ということであって、技術事項5は「1つ以上の紅斑値を算出し、且つ、前記1つ以上の紅斑値を1つ以上の基準紅斑値、2つ以上の基準紅斑値の間の基準紅斑勾配値、及び/又は評価曲線若しくは基準曲線に対して比較することにより対象の紅斑を評価する」ということであるとしても、引用発明に接した当業者が、「頭皮の赤みに関する指標」から「全体の脱毛毛髪の本数」を評価することを容易に想到し得たということはできない。ましてや本件訂正発明2の「毛髪本数の少なさ」は「全体の毛髪の本数」から「全体の脱毛毛髪の本数」を減じたものであって、引用発明からは「全体の毛髪の本数」も「全体の脱毛毛髪の本数」も不明なのであるから、引用発明から「毛髪本数の少なさ」を評価することを当業者が容易に想到し得たということはできない。さらに、年齢に応じた評価を行うことについても容易に想到し得たということも当然できない。 そして、引用発明は、白髪の多さや毛髪太さのばらつきの大きさについては、関連がないことは明らかである。 このため、本件訂正発明2は、引用発明および引用文献2~5に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないし、「診断」や「評価」といった語句の一般的意味を単に示すに過ぎない文献6を参酌しても、その判断に影響はない。 (2)本件訂正発明3~5 本件訂正発明2を引用する本件訂正発明3~5についても、上記(1)で記載した相違点に係る構成を含んでいるから、本件訂正発明2で検討したのと同じ理由により、引用発明および引用文献2~6に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第7 取消理由通知書(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由(実施可能要件違反、サポート要件違反)について 1 実施可能要件違反 申立人は特許異議申立書において、本件訂正前の請求項1~5に係る発明は、白髪の多さ、毛髪本数の少なさ、毛髪太さのばらつきの大きさ、細毛率について、当業者が被評価者の頭皮の赤みに応じて評価することができる程度に明確かつ十分に発明の詳細な説明に記載されておらず、実施可能要件を満たさないと主張するので、これについて検討する。 本件発明の詳細な説明の【0044】や図8には、頭皮の赤みと白髪率の年代別の関係について、【0044】や図9には、頭皮の赤みと単位面積当たりの毛髪の総本数の年代別の関係について、【0044】や図10には、頭皮の赤みと毛径の標準偏差の年代別の関係について、それぞれ実測したデータを伴った開示がされている。そして、それらデータからは【0045】に記載されているように、いずれの年代においても、頭皮の赤みが強い者ほど白髪率が高く、特に、頭皮の赤みが強い者については40歳を超えてから白髪率が急激な増大する傾向にあること(図8における矢印参照)、いずれの年代においても、頭皮の赤みが強い者ほど単位面積当たりの毛髪の総本数が少ない傾向にあること(図9における矢印参照)、20代を除く各年代において頭皮の赤みが強い者ほど毛径の標準偏差が大きくなる傾向にあり、毛径にばらつきが生じやすい傾向があること、が確認できる。 また、細毛率については、本件訂正により本件訂正発明2~5から削除されている。 とすると、本件訂正発明2~5に関して、白髪の多さ、毛髪本数の少なさ、毛髪太さのばらつきの大きさについて、当業者が被評価者の頭皮の赤みに応じて評価することができる程度に明確かつ十分に発明の詳細な説明に記載されているといえる。 なお、請求項1は削除されており、請求項1に係る発明の実施可能要件違反は明らかに存在しない。 2 サポート要件違反 申立人は特許異議申立書において、本件訂正前の請求項1、3、4に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されていないため、サポート要件を満たさないと主張し、請求項3、4については白髪の多さ、毛髪本数の少なさ、毛髪太さのばらつきの大きさ、細毛率に応じて毛髪処理剤を選定することは記載されていないため、サポート要件を満たさないと主張するので、これについて検討する。 上記1で述べたように、本件発明の詳細な説明や図面から、いずれの年代においても、頭皮の赤みが強い者ほど白髪率が高く、特に、頭皮の赤みが強い者については40歳を超えてから白髪率が急激な増大する傾向にあること(図8における矢印参照)、いずれの年代においても、頭皮の赤みが強い者ほど単位面積当たりの毛髪の総本数が少ない傾向にあること(図9における矢印参照)、20代を除く各年代において頭皮の赤みが強い者ほど毛径の標準偏差が大きくなる傾向にあり、毛径にばらつきが生じやすい傾向があること、が確認できる。そして、本件明細書の【0028】、【0029】には頭皮の赤みに応じた毛髪処理剤の選定について記載されている。とすると、頭皮の赤みと関連のある白髪の多さ、毛髪本数の少なさ、毛髪太さのばらつきの大きさに基づいて、毛髪処理剤の選定を行うことについても、本件の発明の詳細な説明に記載されていないとはいえない。 なお、請求項1は削除されており、請求項1に係る発明のサポート要件違反は明らかに存在しない。 第8 むすび 以上のとおり、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項2~5に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項2~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、請求項1に係る特許に対する特許異議の申立ては、本件訂正により請求項1が削除されたことにより、特許異議の申立ての対象が存在しないものとなったため、却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700856

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