特許異議申立
2024-700630
毛髪用組成物、及び毛髪処理方法
- 審判番号
- 2024-700630
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-146077
- 登録番号
- 7408267
- 請求日
- 2024年07月05日
- 審決日
- 2024年10月29日
- 公報発行日
- 2024年11月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社ミルボン
- 【権利者代理人】加藤 秀忠
- 【異議申立人】宮嶋 文子
- 審判長/審判官
- 審判長 木村 敏康
- 審判官 野田 定文
- 審判官 松元 麻紀子
- 分類
- P1651.111-Y (A61K) / P1651.112-Y (A61K) / P1651.121-Y (A61K) / P1651.536-Y (A61K) / P1651.537-Y (A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第1号、特許法第29条第1項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7408267号発明「毛髪用組成物、及び毛髪処理方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7408267号の請求項1、2に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7408267号(以下「本件特許」という。)の請求項1及び2に係る特許についての出願は、平成29年7月28日に出願され、令和5年12月22日にその特許権の設定登録がされ、令和6年1月5日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許の全請求項に係る特許に対し、同年7月5日に、特許異議申立人 宮嶋 文子(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、同年8月5日付けの手続補正指令に対し、同年8月28日に手続補正書(方式)が申立人により提出された。
第2 本件発明
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、各請求項に係る発明を請求項の番号順に「本件発明1」等という。)。
「【請求項1】
下記成分(A)及び(B)が配合され、洗い流すトリートメント、又は毛髪洗浄剤として用いられることを特徴とする毛髪用組成物。
(A)スクワラン
(B)イソステアリン酸イソステアリル
【請求項2】
請求項1に記載の毛髪用組成物を使用することを特徴とする毛髪処理方法。」
第3 申立理由の概要
申立人が特許異議申立書に記載した申立理由の概要及び添付した証拠方法は、以下に示すとおりである(以下、下記(6)に示す甲号証を、それぞれ番号順に「甲1」等という。)。
なお、以下の申立理由3に関し、特許異議申立書3ページ「理由の要点」の「理由3」における「本件特許発明1および2は、甲第1号証~甲第3号証に記載された発明および周知技術(甲第4号証~甲第12号証)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、進歩性がない。」との記載は、理由1及び2との関係、同4ページ「(3)申立ての根拠」の「・請求項1~2 条文 特許法第29条第2項(同法113条第2号) 証拠 甲第1号証、甲第2号証、甲第13号証、および甲第3号証~甲第12号証」との記載、同21~22ページ「(アー1-2)進歩性について」の記載、並びに、同26~27ページ「(アー3)」の記載から、「本件特許発明1および2は、理由1および2で示した発明(甲第1号証および甲第2号証の発明、甲第13号証)および周知技術(甲第3号証~甲第12号証)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、進歩性がない。」を意図した誤記であるとして、以下検討する。
(1)申立理由1(特許法第29条第1項第1号:新規性)
(1-1)本件発明1及び2は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、甲1及び甲2に記載の「いち髪 潤濃和草エッセンス」として公然知られた発明であって、特許法第29条第1項第1号に該当し、特許を受けることができないものであるから、請求項1及び2に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(1-2)本件発明1及び2は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、甲13に記載の「サテンソフトニングドライオイル」として公然知られた発明であって、特許法第29条第1項第1号に該当し、特許を受けることができないものであるから、請求項1及び2に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)申立理由2(特許法第29条第1項第2号:新規性)
(2-1)本件発明1及び2は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、甲1及び甲2に記載の「いち髪 潤濃和草エッセンス」として公然実施をされた発明であって、特許法第29条第1項第2号に該当し、特許を受けることができないものであるから、請求項1及び2に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2-2)本件発明1及び2は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、甲13に記載の「サテンソフトニングドライオイル」として公然実施をされた発明であって、特許法第29条第1項第2号に該当し、特許を受けることができないものであるから、請求項1及び2に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)申立理由3(特許法第29条第2項:進歩性)
(3-1)本件発明1及び2は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、甲1及び甲2に記載の「いち髪 潤濃和草エッセンス」として公然知られた又は公然実施をされた発明並びに甲3~甲12に記載の周知技術に基いて、本件特許の出願前に本件特許の発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項1及び2に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(3-2)本件発明1及び2は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、甲13に記載の「サテンソフトニングドライオイル」として公然知られた又は公然実施をされた発明及び甲3~甲12に記載の周知技術に基いて、本件特許の出願前に本件特許の発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項1及び2に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(4)申立理由4(特許法第36条第4項第1号:実施可能要件)
本件発明1及び2は、「デカメチルシクロペンタンシロキサン」を含む特定がない点、及び、各成分の配合量の特定がない点で、発明の課題を解決できない場合を含み、発明の詳細な説明は、この場合の本件発明1及び2を当業者が容易に実施できる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえず、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件請求項1及び2に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(5)申立理由5(特許法第36条第6項第1号:サポート要件)
本件発明1及び2は、特許請求の範囲の記載が、「デカメチルシクロペンタンシロキサン」を含む特定がない点、及び、各成分の配合量の特定がない点で、発明の課題を解決できない場合を含み、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件請求項1及び2に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(6)甲号証等一覧
甲第1号証:クラシエホールディングス株式会社,“アウトバスシリーズ いち髪 潤濃和草エッセンス”,[online],2017年7月21日収録,Wayback Machine,令和6年7月5日印刷,インターネット
<URL: http://web.archive.org/web/20170721184329/http://www.ichikami.jp/detail/outbath/ >
甲第2号証:Hair Treatment Serum, ID#5110391, Mintel GNPD [online], 2017年9月掲載
甲第3号証:国際公開第2012/131848号
甲第4号証:Nature Biotechnology, 2004, Vol.22, No.2, p.165-167
甲第5号証:Clarence R. Robbins, "Chemical and Physical Behavior of Human Hair fourth Edition", Springer Link, 2002, p.49, 91-95
甲第6号証:Journal of Applied Polymer Science, 2004, Vol.92, p.3252-3259
甲第7号証:Journal of Cosmetic Science, 2007, Vol.58, p.11-17
甲第8号証:Journal of Cosmetic Science, 2011, Vol.62, p.565-577
甲第9号証:Biochimica et Biophysica Acta, 2008, Vol.1778, p.1517-1524
甲第10号証:International Journal of Cosmetic Science, 2010, Vol,32, p.304-312
甲第11号証:International Journal of Cosmetic Science, 2012, Vol.34, p.502-510
甲第12号証:PeerJ, 2014, 2:e619; DOI 10.7717/peerj.619, p.1-19
甲第13号証:Satin Softening Dry Oil, ID#2972997, Mintel GNPD [online], 2015年4月掲載
第4 当審における判断
1 申立理由1(1-1)、申立理由2(2-1)及び申立理由3(3-1)について
(1)甲第1号証及び甲第2号証の記載事項
ア 甲第1号証には、次の記載がある(以下「・・・」は記載の省略を表す。)。
「
[図:0001416514000001.jpg]
・・・
[図:0001416514000002.jpg]
」
イ 甲第2号証には、次の記載がある(訳を併記)。
「
[図:0001416514000003.jpg]
・・・
[図:0001416514000004.jpg]
(訳)製品詳細
会社 クラシエホームプロダクト、日本
ブランド クラシエ いち髪
カテゴリー ヘアープロダクト>ヘアートリートメント
・・・
発行日 2017年9月
・・・
会社&ソース詳細
製造者 クラシエホームプロダクト、日本
東京、日本
店舗名 ココカラファイン
店舗住所 武蔵野 東京 日本184-0004
店舗タイプ ドラッグストア/薬局
購入源 実際の商品
・・・
製品詳細
クラシエ いち髪ヘアケアシリーズの特徴:ダメージを補修及び予防し、うるおい及び輝きを与える純・和草プレミアムエキス;並びに、山桜の香り。そのシリーズは、ヘアートリートメントセラムを含み、新処方及び新パッケージでリニューアルされた。リーブインヘアートリートメントは、コメスクワラン及び天然エゴマ油が配合され、髪の内側から潤いを与え、なめらかな髪に仕上げる。このリッチな処方は、紫外線からの保護もするように設計されている。当該製品は、2017年7月24日にオープン価格で上市された。
・・・
製品情報
・・・
成分
水、・・・スクワラン、・・・イソステアリン酸イソステアリル、・・・香料」
(2)「いち髪 潤濃和草エッセンス」の公然知られた日又は公然実施をされた日について
ア 甲2の製品詳細、製品写真及び成分によると、クラシエホームプロダクト製の「いち髪 潤濃和草エッセンス」は、「リーブインヘアートリートメント」であって、成分として、「スクワラン」及び「イソステアリン酸イソステアリル」を含有することが記載されている。そして、甲2であるID5110391(MINTEL)の情報は、東京都武蔵野のドラッグストア又は薬局で実際に購入した商品に基づいて作成され、2017年9月に発行されたものであって、本件特許の出願後に公知となったものであるが、その製品詳細には、本件特許の出願日前である2017年7月24日に上市されたことが記載されている。しかしながら、単に上市されたという日程の記載では、予定に遅れることなく実際に商品が店頭に配置され、一般消費者等が商品ラベル等の内容確認をできたという十分な証拠として直ちに認めることはできない。
イ ところで、甲1は「いち髪 潤濃和草エッセンス」を製造・販売している「クラシエホールディングス株式会社」の2017年7月21日時点におけるホームページアーカイブであると認められるところ、「アウトバスシリーズ」とされ、「スクワラン」である「コメスクワランEX」を含有する5つの製品のひとつとして、「いち髪 潤濃和草エッセンス」が記載されているものの、これらの商品の販売予定日や実際の販売開始日についての記載はない。なお、商品の販売予定日前や実際の販売開始日前であっても、ホームページにおいて商品情報の一部を事前に公開することは、商品の広告宣伝等のための一般的な商慣行でもある。
ウ ここで、「クラシエホームプロダクト」と「クラシエホールディングス株式会社」は同一会社であることや、甲1と甲2に記載の「いち髪 潤濃和草エッセンス」がともに「スクワラン」を含有していることを考慮すると、甲1と甲2に記載の「いち髪 潤濃和草エッセンス」は同一製品に関する商品説明であるものと認められる。
エ 上記ア~ウの事項を総合的に考慮しても、甲1及び2に記載の「いち髪 潤濃和草エッセンス」が、本件特許の出願日である平成29年(2017年)7月28日以前に、公然に知られ、及び、公然実施をされたとは認められないが、念のため、甲2に記載の上市日に、甲1及び甲2の「いち髪 潤濃和草エッセンス」が公然に知られ、又は、公然実施をされたものとして、以下検討する。
(3)甲1・2発明の認定
上記(1)エに述べたとおり、公然に知られ、かつ、公然実施をされた「いち髪 潤濃和草エッセンス」として、以下に示す甲1・2発明が認定できたものとする。
<甲1・2発明>
下記2成分を少なくとも含有し、アウトバス用のリーブインヘアートリートメントとして用いられるヘアートリートメント。
スクワラン
イソステアリン酸イソステアリル
(4)本件発明と甲1・2発明との対比・判断
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲1・2発明との対比
甲1・2発明の「ヘアートリートメント」は、本件発明1の「毛髪用組成物」に相当し、甲1・2発明のある成分を「少なくとも含有」するとは、本件発明1のある成分が「配合」されていることと同義といえる。
また、甲1・2発明の「アウトバス用のリーブインヘアートリートメント」は、洗い流すことの想定がない浴室外である「アウトバス」で使用するものであるから、本件特許の明細書【0001】に記載の「洗い流さないトリートメント」といえる。
そうすると、本件発明1と甲1・2発明とは、
「下記成分(A)及び(B)が配合される毛髪用組成物。
(A)スクワラン
(B)イソステアリン酸イソステアリル」である点で一致し、以下の相違点1で相違する。
相違点1:本件発明1は「洗い流すトリートメント、又は毛髪洗浄剤」であるのに対して、甲1・2発明は「洗い流さないトリートメント」である点
(イ) 相違点についての検討
a 新規性について
本件発明1の「洗い流すトリートメント」及び「毛髪洗浄剤」という用途は、本件特許の明細書【0043】からも把握できるとおり、毛髪用組成物の塗布後に「洗い流す」ことが必要であると認められ、甲1・2発明の用途とは実質的に異なるから、上記相違点1は実質的な相違点である。
よって、本件発明1は、甲1及び甲2の「いち髪 潤濃和草エッセンス」であるとはいえない。
b 進歩性について
(a)甲1には、「いち髪 潤濃和草エッセンス」を含むアウトバス5製品に関し、5製品の並列紹介の直下に「和草成分を抱え込んだとろみオイルがハイダメージをねらってスピーディに浸透&補修。さらっと軽い1日中うるおう艶髪へ」と記載されていることから、各製品が「オイル」による手早い処置を目的としていることが理解され、甲2の製品説明には、「リーブインヘアートリートメント」が「髪の内側から潤いを与え、なめらかな髪に仕上げる」と記載されるのみで、塗布後に「洗い流す工程」の追加を示唆したり、用途の変更をしたりするような動機付けの記載は甲1及び甲2には一切ないといえる。
(b)また、甲3の[0031]によると、特定の成分(A)~(D)よりなる群から選ばれる一つ以上の物質を含むダメージ毛髪改善剤が、シャンプー、ヘアートリートメント、ヘアワックス、ヘアオイル等に使用することができる旨が記載されているが、「洗い流さないトリートメント」である「ヘアワックス又はヘアオイル」自体を、「毛髪洗浄剤」である「シャンプー」又は洗い流す「ヘアートリートメント」として使用することは記載されていないし、「ヘアワックス又はヘアオイル」が含有する成分のうち、特に、「スクワラン」及び「イソステアリン酸イソステアリル」を選択して、「シャンプー」又は洗い流す「ヘアートリートメント」に採用することを示唆する記載はなく、これらの事項が周知技術であるとする根拠も確認できない。
なお、特許異議申立書に添付された証拠証明書における甲4~甲12についての「立証の趣旨」及び各「抄訳」を参照すると、甲4~甲12は、「洗い流さないトリートメント」自体を「洗い流すトリートメント、又は毛髪洗浄剤」に変更したり、「洗い流さないトリートメント」の組成の特定の一部成分を「洗い流すトリートメント、又は毛髪洗浄剤」に使用したりすることの動機付けと関係がある記載はない。
したがって、本件発明1は、甲1及び甲2の「いち髪 潤濃和草エッセンス」と甲3~甲12に記載の周知技術に基いて、当業者が容易になし得たものではない。
イ 本件発明2について
本件発明2は、物の発明である本件発明1を使用した方法の発明であって、本件発明1の発明特定事項を全て備えるから、本件発明2は、上記アと同様の理由により、甲1・2発明とは実質的に相違するし、また、甲1・2発明及び甲3~甲12に記載の周知技術に基いて、当業者が容易になし得たものではない。
(5)小括
よって、申立人が主張する申立理由1(1-1)、申立理由2(2-1)及び申立理由3(3-1)によっては、本件請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
2 申立理由1(1-2)、申立理由2(2-2)及び申立理由3(3-2)について
(1)甲第13号証の記載事項
甲第13号証には、次の記載がある(訳を併記)。
「
[図:0001416514000005.jpg]
・・・
[図:0001416514000006.jpg]
・・・
[図:0001416514000007.jpg]
(訳)製品詳細
会社 デクレオール、フランス
・・・
カテゴリー スキンケア>ボディケア
・・・
発行日 2015年4月
・・・
会社&ソース詳細
製造者 デクレオール、フランス
パリ、フランス
店舗名 Casualys
店舗タイプ インターネット/メールオーダー
購入源 購入者
・・・
製品詳細
・・・
デクレオールアロマ栄養素は、肌への潤い、栄養付与、柔軟化、及び柔軟性の提供を意図して、フランキンセンスエセンシャルオイルで再生し強化した幅広い栄養付与製品である。Huile Seche Satinante (サテンソフトニングドライオイル)は、顔、身体及び毛髪のための栄養付与ドライオイルであって、幅広い範囲で利用できる。
・・・
製品情報
・・・
成分
カプリル/カプリン酸トリグリセリド、・・・スクワラン、・・・イソステアリン酸イソステアリル、・・・IL110514
・・・
使用方法
軽くなでる動作で、身体、顔及び毛髪に付与する。」
(2)「サテンソフトニングドライオイル」の公然知られた日又は公然実施をされた日について
甲13であるID2972997(MINTEL)の情報は、フランスの「Casualys」店舗からインターネット又はメールオーダーで実際に購入した商品に基づいて作成され、本件特許の出願前の2015年4月に発行されたものであるから、甲13のデクレオール製「サテンソフトニングドライオイル」は、本件特許の出願前に公然に知られ、かつ、公然実施をされたものといえる。
(3)甲13発明の認定
甲13の製品詳細及び成分によると、「サテンソフトニングドライオイル」は、「顔、身体及び毛髪のための栄養付与ドライオイル」であって、成分として、「スクワラン」及び「イソステアリン酸イソステアリル」を含有することが記載され、使用方法では、「軽くなでる動作で、身体、顔及び毛髪に付与する」ことが示されていることから、本件特許の出願前に公然に知られ、又は、公然実施をされた発明として、以下の甲13発明が認定できる。
<甲13発明>
下記2成分を少なくとも含有し、軽くなでる動作で、身体、顔及び毛髪に付与するための、栄養付与ドライオイル。
スクワラン
イソステアリン酸イソステアリル
(4)本件発明と甲13発明との対比・判断
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲13発明との対比
甲13発明の「栄養付与ドライオイル」は毛髪も付与対象としているから、本件発明1の「毛髪用組成物」に相当し、甲13発明のある成分を「少なくとも含有」するとは、本件発明1のある成分が「配合」されていることと同義といえる。
そうすると、本件発明1と甲13発明とは、
「下記成分(A)及び(B)が配合される毛髪用組成物。
(A)スクワラン
(B)イソステアリン酸イソステアリル」である点で一致し、以下の相違点2で相違する。
相違点2:本件発明1は「洗い流すトリートメント、又は毛髪洗浄剤」であるのに対して、甲13発明は「軽くなでる動作で毛髪に付与するための、栄養付与ドライオイル」である点
(イ) 相違点についての検討
a 新規性について
甲13には、「サテンソフトニングドライオイル」を付与した後に洗い流すことの記載も示唆もなく、かつ、「洗い流す」工程は、「栄養付与」の目的に直接沿うものではないし、さらに、水分を含まずに乾燥を必要としない「ドライオイル」自体の用途にも沿うものでもないから、甲13発明は「洗い流さない」「栄養付与ドライオイル」であるものといえる。
ここで、本件発明1の「洗い流すトリートメント」及び「毛髪洗浄剤」という用途は、本件特許の明細書【0043】から把握できるとおり、毛髪用組成物の塗布後に「洗い流す」ことが必要であると認められ、甲13発明の用途とは実質的に異なるから、上記相違点2は実質的な相違点である。
よって、本件発明1は、甲13の「サテンソフトニングドライオイル」であるとはいえない。
b 進歩性について
上記aで述べたとおり、甲13には、塗布後に「洗い流す工程」の追加を示唆したり、用途の変更をしたりするような動機付けの記載は一切ない。
また、上記1(4)ア(イ)b(b)で説示したとおり、「洗い流さないトリートメント」自体を「洗い流すトリートメント、又は毛髪洗浄剤」に変更したり、「洗い流さないトリートメント」の組成の特定の一部成分を「洗い流すトリートメント、又は毛髪洗浄剤」に使用したりすることの動機付けの記載は甲3~12にはなく、そのような周知技術も確認できない。
したがって、本件発明1は、甲13の「サテンソフトニングドライオイル」と甲3~甲12に記載の周知技術に基いて、当業者が容易になし得たものではない。
イ 本件発明2について
本件発明2は、物の発明である本件発明1を使用した方法の発明であって、本件発明1の発明特定事項を全て備えるから、本件発明2は、上記アと同様の理由により、甲13発明とは実質的に相違するし、また、甲13発明及び甲3~甲12に記載の周知技術に基いて、当業者が容易になし得たものではない。
(5)小括
よって、申立人が主張する申立理由1(1-2)、申立理由2(2-2)及び申立理由3(3-2)によっては、本件請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
3 申立理由4について
(1)実施可能要件の判断の前提
物の発明について実施可能要件を充足するためには、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を製造し、使用することができる程度の記載があることを要し、また、方法の発明について実施可能要件を充足するためには、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法の使用をすることができる程度の記載があることを要するものであり、実施可能要件はこれらを検討して判断すべきものである。
(2)検討
本件発明1の「毛髪用組成物」に配合される「(A)スクワラン」及び「(B)イソステアリン酸イソステアリル」は、当該毛髪用組成物の技術分野に限らずよく知られた化合物であって、購入などの通常の手法により取得できるものであり、配合は単に混合するものであるから、本件発明1は、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて当業者が過度の試行錯誤を要することなく、その物を製造し、使用することができるものである。また、本件発明2は、本件発明1の毛髪用組成物を使用した毛髪処理方法にすぎないから、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法の使用をすることができるといえる。
(3)小括
よって、申立人が主張する申立理由4によっては、本件請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
4 申立理由5について
(1)サポート要件の判断の前提
特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載を対比し、特許請求の範囲で特定された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
(2)特許請求の範囲の記載
特許請求の範囲には、上記第2に示したとおり、請求項1及び2の記載がある。
(3)本件特許明細書の記載
以下、下線は当審合議体が付与したものであり、「・・・」は記載の省略を表す。
(A)「【0001】
本発明は、洗い流すトリートメント、洗い流さないトリートメント、毛髪洗浄剤などに使用される毛髪用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ブラッシング、ドライヤー、熱アイロン、ヘアカラー、パーマネントウェーブなどの物理的処理、熱処理、又は化学的処理により、毛髪が損傷する。その損傷の結果、毛髪の水分保持性の低下、感触の悪化などの様々な変化が、毛髪に生じる。
【0003】
上記の損傷が生じさせる毛髪の変化に対して、その改善を目的とした数多くの提案が公開されている。例えば特許文献1~3には、スクワランと特定の成分とを配合した組成物により、毛髪の感触を改善する提案が開示されている。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献は、毛髪感触を変化させる組成物の評価を、官能で行ったことを開示するに留まり、実際の水分保持性を高める組成物を開示してはいない。また、毛髪における細胞膜複合体(CMC)は、水分保持性能に関与するといわれているが、そのCMCへの作用に関する記載は、上記特許文献には一切ない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、毛髪の水分保持性の向上、及び細胞膜複合体への作用の少なくとも一方を実現できる毛髪用組成物、並びに、その組成物を使用する毛髪処理方法の提供を目的とする。」
(B)「【0018】
毛髪の水分保持性は、成分(A)及び(B)の双方を配合すれば、いずれか一方を配合するよりも向上する。また、成分(A)及び(B)の双方の配合により、毛髪の細胞膜複合体(CMC)における脂質層(β層)の厚みの増加が確認されている。前者の水分保持性能の向上と、後者のβ層の厚みの増加は、相関すると考えられる。すなわち、CMCはβ層と当該β層内のタンパク質層(δ層)とで構成されているところ、水分保持の観点からは、δ層よりも疎水性が高いβ層の厚みが、水分保持性に関与する水分蒸散抑制に寄与すると考えられる。」
(C)「【0033】
本実施形態の毛髪用組成物には、上記の通り、公知の毛髪用組成物に配合されている原料を更に配合しても良い。その原料としては、毛髪用組成物の用途に応じて適宜選定され、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤、高級アルコール、多価アルコール、油脂、シリコーン、高分子化合物である。
・・・
【0041】
シリコーンとしては、例えば、ジメチルシリコーン、環状ジメチルシリコーン、アミノ変性シリコーンが挙げられる。毛髪用組成物にシリコーンを配合する場合、一種又は二種以上を配合すると良い。また、毛髪用組成物におけるシリコーンの配合濃度は、当該組成物の用途に応じて適宜設定されるものであるが、例えば0.1質量%以上50質量%以下である。」
(D)「【実施例】
【0047】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0048】
(毛髪用組成物)
スクワラン(オリーブ油由来のスクワレンを水素添加した植物性スクワラン)、イソステアリン酸イソステアリル、及び、デカメチルシクロペンタシロキサンを使用し、実施例1及び比較例1~2の毛髪用組成物を調製した。これら組成物の配合量は、下記表1の通りとした。
【0049】
【表1】
[図:0001416514000008.jpg]
【0050】
(水分保持性)
実施例1又は比較例1~2の毛髪用組成物で処理した毛髪、及び未処理毛髪の水分蒸散率を算出して、毛髪の水分保持性の試験を行った。試験の詳細は、下記の通りとした。
【0051】
無作為に選定した日本人女性5名から採取した毛髪を「未処理毛髪」として、準備した。それぞれの未処理毛髪を実施例1の毛髪用組成物に10分間浸漬した後、水洗し、温風乾燥させて、毛髪処理を行った。同様の毛髪処理を、比較例1又は比較例2の毛髪用組成物を使用して行った。
【0052】
上記未処理の毛髪及び処理した毛髪を1mm程度に細断し、25℃、湿度50%の室内に6時間以上放置してから、細断後の毛髪各100mgを収集した。この収集した毛髪を、25℃、湿度85質量%の恒温恒湿槽内に6時間以上放置した。次いで、25℃、湿度50%の室内に移動させてから、35~45秒の時間内に毛髪質量を測定し、この測定値を毛髪質量の初期(Wini)とした。Wini測定後、室内に毛髪を継続して放置し、放置時間30分後の毛髪質量(W30)と、60分後の毛髪質量(W60)を測定した。
【0053】
そして、放置時間30分後の水分蒸散率(T30)と、60分後の水分蒸散率(T60)とを下記式により算出した(下記式におけるW30、W60、Winiは、上記参照。)。
T30=100-W30/Wini×100
T60=100-W60/Wini×100
【0054】
下記表2に、放置時間30分後の水分蒸散率に関する結果を示す。なお、下記表2における「毛髪質量」及び「水分蒸散率」は、上記採取した5名の毛髪に基づく平均値である。
【表2】
[図:0001416514000009.jpg]
【0055】
上記表2に示す通り、成分(A)であるスクワラン又は成分(B)であるイソステアリン酸イソステアリルを配合した比較例1~2は、未処理毛髪よりも水分蒸散率が低い値であった。成分(A)及び(B)の双方を配合した実施例1は、比較例1~2よりも水分蒸散率が低く、水分保持性に優れるものであった。
【0056】
下記表3に、30分後の水分蒸散率に関する結果を示す。なお、上記表2と同様、下記表3における「毛髪質量」及び「水分蒸散率」は平均値である。
【表3】
[図:0001416514000010.jpg]
【0057】
上記表3に示す通り、上記表2と同様、成分(A)及び(B)の双方を配合した実施例1は、水分蒸散率が最も低く、水分保持性に優れるものであった。
【0058】
(細胞膜複合体における脂質層及びタンパク質層の厚み)
ブリーチ処理および実施例1の毛髪用組成物で処理した毛髪、ブリーチ処理後の毛髪、未処理毛髪について、毛髪キューティクルの細胞膜複合体(CMC)における脂質層(β層)及びタンパク質層(δ層)の厚みを測定した。この測定までの詳細は、以下の通りとした。
【0059】
酸化染毛処理などの化学的処理の履歴がない20~50代の日本人女性18名から採取した毛髪を「未処理毛髪」として準備した。それぞれの未処理毛髪を、ブリーチ剤(過酸化水素が3質量%であり、アンモニア水でpHを10.0に調整した水溶液)に20分間浸漬した後、水洗し、温風乾燥させて、ブリーチ処理を行った。また、ブリーチ処理後の毛髪を、実施例1の毛髪用組成物に10分間浸漬した後、水洗し、温風乾燥させて、毛髪処理を行った。
【0060】
上記の未処理毛髪、ブリーチ処理後の毛髪、実施例1の毛髪用組成物を使用した毛髪処理後の毛髪のキューティクルにおけるCMCのβ層、δ層について、大型放射光施設SPring-8のビームラインBL24XUを使用して測定した。この測定では、毛髪の軸に垂直にして、X線マイクロビームを毛髪のキューティクルに照射した。他の測定条件は、次の通りである。
ビームサイズ:5.6μm×4.8μm
カメラ長:1122mm
露光時間:30秒
【0061】
公知の報告(N.Ohta,et al.,J.Appl.Crystal.38,274-279(2005).)を参考に、SPring-8による測定結果である散乱プロファイルからβ層とδ層の厚みを算出した。算出した結果は、下表4~5の「毛髪処理後」、「ブリーチ処理後」、「未処理」の値の通りである。
【0062】
【表4】
[図:0001416514000011.jpg]
【0063】
【表5】
[図:0001416514000012.jpg]
【0064】
上記表4~5において、β層及びδ層の値が「ブリーチ処理」は「未処理」よりも小さく、化学的処理(ブリーチ処理)により、β層及びδ層の厚みが減少していた。しかし、β層については、成分(A)及び(B)を配合した実施例1の毛髪用組成物の処理により、大きく増加していた(表4~5の『厚みの差(nm):「毛髪処理後」-「ブリーチ処理後」』参照)。」
(4)サポート要件の判断
ア 本件発明の解決すべき課題について
本件請求項1及び2の記載並びに摘記(A)によると、本件発明1及び2の課題は、「髪の水分保持性の向上、及び細胞膜複合体への作用の少なくとも一方を実現できる、洗い流すトリートメント又は毛髪洗浄剤である毛髪用組成物、並びに、その組成物を使用する毛髪処理方法」の提供をすることであると認める。
イ 判断
摘記(B)によると、「成分(A)及び(B)の双方」の配合は、「毛髪の水分保持性」の向上と、「毛髪の細胞膜複合体(CMC)における脂質層(β層)の厚み」の増加に寄与することが理解される。また、摘記(C)によると、「シリコーン」などの「公知の毛髪用組成物に配合されている原料」は、「毛髪用組成物の用途に応じて適宜選択され」、「配合しても良い」ものとされ、「配合する場合」の説明も記載されている。
そして、実施例では、「水分保持性」及び「細胞膜複合体における脂質層及びタンパク質層の厚み」について具体的に実験を行い、「成分(A)及び(B)の双方を配合した実施例1」が、「成分(B)を配合していない比較例1」や「成分(A)を配合していない比較例2」よりも、両特性に優れていたことを確認している。
そうすると、成分(A)及び(B)の双方を配合することが本件発明1及び2の特徴であって、そのことにより本件発明1及び2の課題を解決できることが当業者は理解でき、「デカメチルシクロペンタシロキサン」といった「シリコーン」は任意成分にすぎないものであって、本件発明1及び2の課題解決に必須の成分であるとはいえないし、成分(A)及び(B)がある特定の配合量のときのみに、本件発明1及び2の課題が解決されるものともいえない。
よって、本件発明1及び2は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、かつ、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものといえる。
(5)小括
よって、申立人が主張する申立理由5によっては、本件請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
5 申立人の主張について
(1)申立人は、特許異議申立書において、以下の主張をしている。
ア 「洗い流すトリートメント、又は毛髪洗浄剤として用いられる」という用途は、「スクワラン及び特定の液状エステル」により「毛髪の水分保持性の向上、又は、細胞膜複合体における脂質層(β層)の厚みの増加を実現できる」という属性を発見したことにより見いだされたものであると理解できるが、この属性により見いだされた用途が、「スクワラン及び特定の液状エステル」について従来知られている用途とは異なる新たなものであるとは言えない。(19ページ)
イ 当該技術分野において、毛髪組成物における保湿剤、エモリエント剤、水分蒸散抑制剤などが、ヘアコンディショナー・リンス等の流すタイプのトリートメント、ヘアクリーム等の流さないタイプのトリートメント、シャンプーなどのも洗浄剤などにおいて同様に用いることができることは証拠を示すまでもなく技術常識である。(20ページ)
ウ 現代人の生活スタイルに当てはめると、日々入浴を繰り返し、毛髪を洗い流すサイクルが一般的であるから、トリートメントを適用して洗い流すことと、入浴後にトリートメントを付与して、その後入浴し洗い流されることとなるアウトバストリートメントでも、それらで最終的に期待できる結果は同じであると予測される。(20ページ)
エ 「スクワラン、イソステアリン酸イソステアリルおよびデカメチルシクロペンタシロキサンからなる組成物」のみならず、スクワラン及びイソステアリン酸イソステアリル以外にも様々な成分を、様々な配合量で配合した組成物を包含する請求項1及び2に係る発明は、上記課題を解決できない場合をも含んでいる。(27及び28ページ)
(2)申立人の主張の検討
ア 「毛髪用組成物」自体の用途を、「毛髪用組成物」の各成分について知られている用途に基づいて、新たな用途かどうかを判断する前提が妥当ではないので、上記(1)アの主張は採用できない。
イ 上記1(4)ア(イ)b(b)で説示したとおり、「洗い流さないトリートメント」自体を「洗い流すトリートメント、又は毛髪洗浄剤」に変更したり、「洗い流さないトリートメント」の組成の特定の一部成分を「洗い流すトリートメント、又は毛髪洗浄剤」に使用したりすることの動機付けの記載は、甲3~12にはなく、そのような周知技術も確認できないから、具体的な商品である「いち髪 潤濃和草エッセンス」及び「サテンソフトニングドライオイル」のある成分について、ヘアコンディショナー・リンス等の洗い流すタイプのトリートメント、シャンプーなどのも洗浄剤などにおいて同様に用いることが周知技術の適用であるとはいえないから、上記(1)イの主張は採用できない。
ウ 日々入浴を繰り返し、翌日には毛髪を洗い流すサイクルが一般的であったとしても、翌日などに毛髪を洗い流すことをもって、「洗い流す」トリートメントとは称しないし(「洗い流さないトリートメント」という区分が実質的に存在し得ないことになるともいえる。)、洗い流しの有無による結果が同じであるとする根拠もないから、上記(1)ウの主張は採用できない。
エ 上記4(4)イで説示したとおり、成分(A)及び(B)の双方を配合することが本件発明1及び2の特徴であって、そのことにより本件発明1及び2の課題を解決できることが当業者は理解でき、「デカメチルシクロペンタシロキサン」といった「シリコーン」は任意成分にすぎないものであって、本件発明1及び2の課題解決に必須の成分であるとはいえないし、成分(A)及び(B)がある特定の配合量のときのみに、本件発明1及び2の課題が解決されるものともいえないから、上記(1)エの主張は採用できない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
また、ほかに本件請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700630