特許異議申立
2025-700232
情報処理方法、プログラム、記憶媒体および情報処理装置
- 審判番号
- 2025-700232
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2024-520737
- 登録番号
- 7541212
- 請求日
- 2025年02月26日
- 審決日
- 2025年09月25日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社マクロミル
- 【権利者代理人】弁理士法人秀和特許事務所
- 【異議申立人】小林 寛史
- 審判長/審判官
- 審判長 相崎 裕恒
- 審判官 安藤 一道
- 審判官 松田 直也
- 分類
- P1652.113-Y (G06Q) / P1652.121-Y (G06Q)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7541212号発明「情報処理方法、プログラム、記憶媒体および情報処理装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7541212号の請求項1、2、3、4、5、7、8、9、12、13、14、15に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2023年(令和5年)11月1日(優先権主張 令和4年11月4日)を国際出願日とする出願であって、令和6年8月19日にその特許権の設定登録がされ、同年8月27日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和7年2月26日に特許異議申立人小林寛史(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされた。
本件特許異議申立て以後の経緯は、次のとおりである。
令和7年6月17日 取消理由通知書(起案日)
令和7年8月13日 意見書の提出
第2 本件発明
特許第7541212号の請求項1、2、3、4、5、7、8、9、12、13、14、15に係る特許に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」、「本件発明2」・・・という。また、これらの発明をまとめて「本件発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1、2、3、4、5、7、8、9、12、13、14、15に記載された事項により特定されるものであって、次のとおりのものである。
「【請求項1】
情報処理装置が、ユーザに関する複数の変数を有する第1のデータソースを取得する取得ステップであって、前記複数の変数には前記ユーザの属性情報に関する変数が含まれる、取得ステップと、
前記情報処理装置が、前記第1のデータソースに含まれる前記複数の変数から説明変数および目的変数を選択する選択ステップであって、前記説明変数には、前記属性情報に関する変数と、少なくとも1つの前記属性情報とは異なる変数が含まれており、前記目的変数は複数選択される、選択ステップと、
前記情報処理装置が、前記第1のデータソースを教師データとして、選択された前記説明変数から前記複数の目的変数を予測する予測モデルを作成する、作成ステップと、
前記情報処理装置が、前記予測モデルを、選択された前記説明変数を変数として含む第2のデータソースに適用して、疑似シングルソースデータを生成する、生成ステップと、を有することを特徴とする情報処理方法。
【請求項2】
前記疑似シングルソースデータは、同一の前記ユーザに関する複数の変数を有するシングルソースデータを擬似的に生成したものである
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項3】
前記生成ステップにおいては、前記情報処理装置が、前記ユーザの個人識別子を含まない前記第2のデータソースを用いて前記疑似シングルソースデータを生成する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の情報処理方法。
【請求項4】
前記作成ステップにおいては、前記情報処理装置が、選択された複数の前記説明変数と、選択された複数の前記目的変数と、の間の関係性を示す情報を利用して、前記予測モデルを作成し、
前記生成ステップにおいては、前記情報処理装置が、前記予測モデルを前記第2のデータソースに適用して、前記疑似シングルソースデータを生成する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の情報処理方法。
【請求項5】
前記作成ステップにおいては、前記情報処理装置が、選択された複数の前記説明変数と、選択された複数の前記目的変数と、の間の分散共分散構造を利用して、前記予測モデルを作成し、
前記生成ステップにおいては、前記情報処理装置が、前記予測モデルを前記第2のデータソースに適用して、前記第1のデータソースの分散共分散構造に類似する分散共分散構造を持つ疑似シングルソースデータを生成する
ことを特徴とする請求項4に記載の情報処理方法。」
「【請求項7】
前記作成ステップにおいては、前記情報処理装置が、前記選択ステップで前記第1のデータソースから選択された複数の前記変数のうち少なくとも1つの変数に対してノイズを付加したのち、前記予測モデルを作成する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の情報処理方法。
【請求項8】
前記作成ステップにおいては、前記情報処理装置が、ラプラスメカニズム、ガウシアンメカニズム、または指数メカニズムのいずれかを用いて、前記ノイズを付加する
ことを特徴とする請求項7に記載の情報処理方法。
【請求項9】
前記作成ステップにおいては、前記情報処理装置が、前記ユーザに対して差分プライバシーの機能を提供するように、前記第1のデータソースに含まれる前記変数に対して前記ノイズを付加する
ことを特徴とする請求項7に記載の情報処理方法。」
「【請求項12】
情報処理装置が、オブジェクトに関する複数の変数を有する第1のデータソースを取得する取得ステップであって、前記複数の変数には前記オブジェクトの属性情報に関する変数が含まれる、取得ステップと、
前記情報処理装置が、前記第1のデータソースに含まれる前記複数の変数から説明変数および目的変数を選択する選択ステップであって、前記説明変数には、前記属性情報に関する変数と、少なくとも1つの前記属性情報とは異なる変数が含まれており、前記目的変数は複数選択される、選択ステップと、
前記情報処理装置が、前記第1のデータソースを教師データとして、選択された前記説明変数から前記複数の目的変数を予測する予測モデルを作成する、作成ステップと、
前記情報処理装置が、前記予測モデルを、選択された前記説明変数を変数として含む第2のデータソースに適用して、疑似シングルソースデータを生成する、生成ステップと、を有することを特徴とする情報処理方法。
【請求項13】
請求項1、2、10、11および12のいずれか1項に記載の情報処理方法を情報処理装置に実行させるプログラム。
【請求項14】
請求項1、2、10、11および12のいずれか1項に記載の情報処理方法を情報処理装置に実行させるプログラムを格納した、前記情報処理装置により読み取り可能な非一時的な記憶媒体。
【請求項15】
請求項1、2、10、11および12のいずれか1項に記載の情報処理方法を実行する、情報処理装置。」
第3 令和7年6月17日付けの取消理由の概要
令和7年6月17日付けの取消理由の概要は次のとおりである。
「1.(新規性)請求項1~4、13~15に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~4、13~15に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
2.(進歩性)請求項1~4、7~9、12~15に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1、2に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4、7~9、12~15に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
<引用文献等一覧>
1.特開2015-35101公報(甲第1号証)
2.国際公開第2018/116366号(甲第7号証)
・・・
I 理由1(新規性)、理由2(進歩性)について
・請求項 1~4
・引用文献等 1
・・・
II 理由2(進歩性)について
・請求項 7~9
・引用文献等 1~2
・・・
III 理由1(新規性)、理由2(進歩性)について
・請求項 13~15
・引用文献等 1
・・・」
第4 引用文献等について
1 引用文献1について(引用文献1に記載されている事項、引用文献1に記載された発明)
(1)引用文献1に記載されている事項
本件特許の優先日(令和4年11月4日)前である平成27年2月19日に出願公開された引用文献1(特開2015-35101号公報、甲第1号証)には、次の事項が記載されている。なお、下線は、当審で付与した(以下、同様。)。
「【0001】
本発明は、汎用的データフュージョンシステム及び汎用的データフュージョン方法に係り、特にメディアプランニングに有用な情報データであって、多くの顧客の要望に個別に対応することが可能でメディアプランニングに有用な汎用的データフュージョンシステム及び汎用的データフュージョン方法に関する。」
「【0025】
また前記課題は、本発明の汎用的データフュージョンシステムによれば、少なくとも演算部と記憶部と出力部を有したコンピュータ装置によって構成され、基本データからなる基本データベースに追加調査データを融合させる汎用的データフュージョンシステムであって、前記コンピュータ装置の記憶部には、基本データとして全ての調査対象者に調査を行い広告メディアプランニングに有用な情報データとフュージョンキーとなる回答内容データを含んだ基本データベースが格納され、前記コンピュータ装置は、前記基本データベースからランダムに追加調査対象者を抽出する追加調査対象者抽出手段と、該追加調査対象者抽出手段によって抽出された対象者に追加調査を行って回答を得た回答内容データを追加調査データとして追加調査データベースを作成する追加調査データベース作成手段と、前記追加調査対象者抽出手段によって抽出された対象者の前記基本データベースに記憶されたフュージョンキーとなる回答内容データと、前記追加調査対象者抽出手段によって抽出されなかった前記基本データベースに記憶された対象者のフュージョンキーとなる回答内容データをそれぞれパターン化して、前記追加調査データベースの回答内容データごとに、前記フュージョンキーとする項目の回答パターンの関係式を作成する関係式作成手段と、を有し、前記コンピュータ装置の演算部は、前記基本データベースのうち前記追加調査対象者抽出手段によって抽出された対象者に含まれず追加調査を実施していない対象者データに、前記関係式作成手段によって作成された関係式に基づいた回答パターンに合わせて、前記追加調査データベースの回答内容データを仮想追加調査データとし、これを追加調査データとして特定し、追加調査を実施していない対象者データに、追加調査データとして付与し、前記基本データベースの追加調査対象者抽出手段で抽出した対象者と追加調査対象者抽出手段で抽出されない対象者の全てに特定した追加調査データを付与して基本データベースに追加調査データを融合させる、ことにより解決される。」
「【0037】
本実施形態の汎用的データフュージョンシステムSは、基本データからなる基本データベースDB1に追加調査データADを融合させ、或いは追加調査データADからなる追加調査データベースDB2を融合させる汎用的データフュージョンシステムであり、このシステムは、コンピュータ装置Cによって構成されている。」
「【0039】
コンピュータ装置Cには、図2及び図3で示すように、基本データベースDB1、追加調査データAD、追加調査データADからなる追加調査データベースDB2などのデータ類、基本データベース作成用のアプリケーション(基本データベース作成手段5)、追加調査データベース作成用のアプリケーション(追加調査データベース作成手段7)など市販の公知のデータベース構築用アプリケーション、その他のアプリケーション、追加調査の追加調査対象者抽出手段6、類似度算出手段8、関係式作成手段9、などが備えられており、これらによって、各データベースDB1,DB2などが構築されるようになっている。なお、上記のアプリケーションは独自に開発したものであってもよい。」
「【0042】
前述のように、記憶部20のHDD23には、「ACR」と称される基本データベースDB1と、追加調査データベースDB2とが格納されている。
ここで示す「ACR」とは、1人の人に多くの質問をしてシングルソースパネルデータを構築し、初期取得情報に「フュージョンする際にキーとなるフュージョンキーFKとするための設問」(近しい人を近しいと判断するための項目)を設置して全員から取得基本データ(初期取得情報や質問に対する回答内容データ)を含んで基本データベースDB1としたもので、予め10,000人に対して初期取得情報を得て、この初期取得情報をデータベース化したものである。具体的には、本実施形態では、10,000人(代表性あり)について、初期取得情報を得たものであり、複数の地域で、生活行動及び商品についての総合調査(生活行動・意識についてのアンケート、商品についてのアンケート)で、地域、街の情報、性別、年齢、職業、家族構成、通勤・通学、消費、旅行、ファッション、テレビ・新聞・ラジオ・インターネット・交通機関の利用、その他の日常生活などに関する多くのアンケートや利用記録について、初期取得情報を格納したものである。」
「【0044】
本実施形態の記憶部20に格納された基本データベースDB1は、基本データとして全ての調査対象者に調査を行い広告メディアプランニングに有用な情報データとフュージョンキーFKとなる回答内容データANを含んでいる。また本実施形態における「フュージョンキーFK」は、基本データには含まれていない追加調査を行って得られた加調査データADを、基本データに追加するときに利用するためのものである。
【0045】
本実施形態では、基本データを取得する際のフュージョンキーFKとする設問は、予め所定のルールに基づいてアンケートによって回答内容が得られるものと、デモグラフィックやサイコグラフィック、メディア関与、商品関与などに関する次述するアンケートなどによって得られる任意のものをそれぞれ選択することが可能である。このとき、上述の各種商品に関する調査(例えば利用有無・利用頻度など)、雑誌についての調査、テレビ・新聞・インターネット及び交通機関の利用の記録、ラジオ聴取の記録などもフュージョンキーFKとすることが可能であり、近しい人を近しいと判断するための項目は、フュージョンキーFKとする項目を直接利用(例えば性別、年齢など)できるが、本発明においては、既に取得した回答内容データANを用いたデータを利用した項目など多岐にわたって、自由に用いることが可能であり、「サンプル間類似度」として、さまざまな内容を利用ができるように汎用性を持たせることが可能となる。」
「【0051】
上記のようなアンケート質問に対して調査対象者がアンケート回答用端末2を通じて回答し、その回答内容を示す個別回答内容データANが同端末2から送信されると、コンピュータ装置Cが当該データを受信して記憶部20に記憶する。そして、全調査対象者からアンケートの全質問分の個別回答内容データANを受信した時点で、コンピュータ装置Cには図10に示す回答内容データANが生成されるようになる。図10は、回答内容データANのデータベースを表形式で表示した構築例を示す図である。」
「【0053】
すなわち、回答内容データANを含んだ基本データベースDB1は、複数の調査対象者を対象とし、各調査対象者から個人属性、購買、広告接触、ライフスタイル等の多面的情報を採取したデータ、いわゆるシングルソースパネルデータとなっている。なお、本実施形態において、回答内容データANは、コンピュータ装置Cに搭載された記憶装置20(HDD23)に記憶されているが、これに限定されるものではない。つまり、回答内容データANを含む基本データベースDB1を記憶する記憶装置については、コンピュータ装置Cとは別に設けられていることとしてもよく、例えば、コンピュータ装置Cと通信可能なデータベースサーバに回答内容データANを含む基本データベースDB1の記憶装置として用いることとしてもよい。
【0054】
(追加調査データベースDB2)
次に、追加調査データベースDB2について説明する。
追加調査データベースDB2は、基本データベースDB1に格納されていないもので、顧客の要望や基本データベースDB1をより広範なものにする必要性などによって、追加質問によって得られた回答内容を基本データベースDB1の対象者全員に対して追加調査を行なったものと同等になるようにして、データベース化したものである。なお本発明において追加調査データベースDB2とは、追加調査データADのそれぞれを記憶した集合だけのものも含まれるものとする。
この追加調査データADの取得は、前述のアンケートで説明したのと同様に追加質問に対する回答内容データANを得ることによって行うものであるが、後述するように、基本データベースDB1の全ての対象者に対して行うものではなく、追加調査対象者抽出手段6によって抽出された対象者によって行うものである。」
「【0059】
例えば、基本データベースDB1が10,000人分のシングルソースパネルデータの場合、1/10の1,000人の追加調査対象者を追加調査対象者抽出手段6によって、ランダムに抽出し、RAM(或いはHDD)に記憶する。そして、抽出された追加調査対象者に対して前述のアンケートと同様に、追加調査(追加質問)をアンケート回答用端末2を使って追加調査を行う。得られた追加調査に対する回答内容データANは追加調査データADとして記憶部20(RAM22或いはHDD23など)に一時的に格納するが、これらの追加調査データAD(回答内容データAN)を追加調査対象者の基本データベースDB1と紐付けて、追加調査データベースDB2として作成する。この作成は、前述の基本データベースDB1と同様に行うものである。」
「【0061】
つまり、演算部10は、類似度算出手段8によって、追加調査対象者抽出手段6で抽出された追加調査対象者の基本データベースDB1に記憶されたフュージョンキーFKとなる回答内容データANを読み出し、記憶部20(RAM22或いはHDD23など)に記憶する。
同時に、類似度算出手段8によって、追加調査対象者抽出手段6で抽出されなかった基本データベースDB1に記憶された対象者のフュージョンキーFKとなる回答内容データANを読み出し(抽出し)て、記憶部20(RAM22或いはHDD23など)に記憶する。
次に、演算部10は、類似度算出手段8によって、追加調査対象者と、追加調査対象者となっていない対象者(以下「非追加調査対象者」と称する。)のそれぞれ記憶された記憶部20(RAM22或いはHDD23など)からフュージョンキーFKとなる回答内容データANを、読み出し、それぞれフュージョンキーFKとする項目の各データを対比して、回答内容パターンが最も似ている対象者データの回答内容データANを取得する。
【0062】
そして、追加調査対象者と非追加調査対象者で、フュージョンキーFKとする項目の各データから回答内容パターンが最も似ている対象者の追加調査データADを追加調査データベースDB2から抽出し、この最も似ている非追加調査対象者に、最も似ている追加調査対象者の追加調査データADを仮想追加調査(追加調査データAD)として融合させる。
非追加調査対象者の一人に対して、追加調査対象者1~1,000人の中からフュージョンキーFKとする項目の回答パターンが最も似ている人の回答を付与する(9,000人分実施)、つまり、非回答者が回答者と似ている人の回答を付与するものである。このとき、フュージョンキーFKとして、複数項目を相対的に、距離として数値化し、これらの関係から重み付けをするように構成することもできる。
このように、追加調査対象者の全体と、非追加調査対象者の全体とを、フュージョンキーFKとする項目の各データから回答内容パターンが最も似ている対象者を一定の群とし、これら群を全体としてマッチングさせて、それぞれ恰も追加調査を行ったように追加調査データAD(仮想追加調査)として特定する。」
「【0064】
また上記類似度算出手段8の代わりに、関係式作成手段9を用いる例では、追加調査対象者抽出手段6によって抽出された対象者の基本データベースDB1に記憶されたフュージョンキーFKとなる回答内容データANと、追加調査対象者抽出手段6によって抽出されなかった基本データベースDB1に記憶された対象者のフュージョンキーFKとなる回答内容データANをそれぞれパターン化して、追加調査データベースDB2の回答内容データANごとに、フュージョンキーFKとする項目の回答パターンの関係式を作成するように構成すものである。
つまり、追加設問(追加調査)の追Q1、追Q2・・・ごとに、フュージョンキーFKとする項目の回答内容データANからの関係式を質問ごとに作成し、非追加調査対象者の回答パターンに応じて該当する回答内容データANを仮想の追加調査データADとして付与するものである。」
「【0079】
また、関係式の例として、追加設問の追Q1、追Q2・・・ごと、フュージョンキーFKとする項目の回答からの関係式を作成、非対象者の回答パターンに応じて該当する回答を付与する場合について説明する。
【0080】
例えば、「ビールの新ブランド利用有無」についての回答を推計する場合、ステップS4-21で追加設問の回答を推計するにあたり、基本データベースDB1のどの項目群を用いると精度が高くなるかを検討する。
【0081】
本例では、「ビールの新ブランド利用有無」であるので、ステップS4-22で、基本データベースDB1においてビールに関する設問(利用有無、利用頻度など)を用いると推計精度が高くなることを推測し項目を決定する。
【0082】
次に、ステップS4-23で、上記で決定した基本データベースDB1の項目群を説明変数、追加設問を目的変数として、重回帰分析などの手法を用いて予測式を作成する。このとき、追加調査を実施した追加調査対象者1,000人分のデータを用いて作成する。
なお、予測する方法は重回帰分析だけとは限らない。」
「【0084】
ステップS4-25では、予測式に、非追加対象者の基本データベースDB1の回答を代入する。ステップS4-26では、ステップS4-25の処理の後で追加調査の回答を推計する。このようにしてステップS4-21からステップS4-26を実行した後、ステップS4-27で追加設問があるかどうか判断する。追加設問がある場合(ステップS4-27:Yes)、ステップS4-25に戻り、追加設問個数分繰り返す。
【0085】
そして、ステップS4-1からステップS4-27の処理は、追加設問ごとに予測式を作成して行うもので、例えば追加設問が10あれば、10の予測式を作成して行うものである。
【0086】
コンピュータ装置Cの演算部10は、基本データベースDB1のうち追加調査対象者抽出手段6によって抽出された対象者に含まれず追加調査を実施していない対象者(非追加調査対象者)のデータの各々に、類似度算出手段8によって算出された追加調査データベースDB2の回答内容データANを仮想追加調査データとし、これを追加調査データADとして特定し、追加調査を実施していない対象者データの各々に、追加調査データADとして付与し、基本データベースDB1の追加調査対象者抽出手段6で抽出した対象者と追加調査対象者抽出手段で抽出されない対象者(非追加調査対象者)の全てに特定した追加調査データADを付与して基本データベースDB1に追加調査データADを融合させる。」
なお、上記【0086】の「基本データベースDB1の追加調査対象者抽出手段6で抽出した対象者」は「追加調査対象者」であることは明らかである。
(2)引用文献1に記載された発明
上記(1)の記載から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているといえる。
「 基本データからなる基本データベースDB1に追加調査データADを融合させ、或いは追加調査データADからなる追加調査データベースDB2を融合させる汎用的データフュージョンシステムを構成するコンピュータ装置Cによって実行される方法であって(【0037】)、
コンピュータ装置Cには、基本データベースDB1、追加調査データベースDB2が備えられており(【0039】)、
基本データベースDB1は、初期取得情報に「フュージョンする際にキーとなるフュージョンキーFKとするための設問」(近しい人を近しいと判断するための項目)を設置して全員から取得基本データ(初期取得情報や質問に対する回答内容データ)を含んで予め10,000人に対して初期取得情報を得て、この初期取得情報をデータベース化したものであって、
10,000人(代表性あり)は、地域、街の情報、性別、年齢、職業、家族構成、通勤・通学、消費、旅行、ファッション、テレビ・新聞・ラジオ・インターネット・交通機関の利用、その他の日常生活などに関する多くのアンケートや利用記録について、初期取得情報を格納したものであり(【0042】)、
基本データを取得する際のフュージョンキーFKとする設問は、予め所定のルールに基づいてアンケートによって回答内容が得られるものと、デモグラフィックやサイコグラフィック、メディア関与、商品関与などに関するアンケートなどによって得られる任意のものをそれぞれ選択することが可能であり、各種商品に関する調査(例えば利用有無・利用頻度など)、雑誌についての調査、テレビ・新聞・インターネット及び交通機関の利用の記録、ラジオ聴取の記録などもフュージョンキーFKとすることが可能であり、近しい人を近しいと判断するための項目は、フュージョンキーFKとする項目を直接利用(例えば性別、年齢など)でき(【0045】)、
アンケート質問に対して調査対象者がアンケート回答用端末2を通じて回答し、その回答内容を示す個別回答内容データANが同端末2から送信されると、コンピュータ装置Cが当該データを受信し(【0051】)、
回答内容データANを含んだ基本データベースDB1は、複数の調査対象者を対象とし、各調査対象者から個人属性、購買、広告接触、ライフスタイル等の多面的情報を採取したシングルソースパネルデータとなっており(【0053】)、
追加調査データベースDB2は、基本データベースDB1に格納されていないもので、顧客の要望や基本データベースDB1をより広範なものにする必要性などによって、追加質問によって得られた回答内容を基本データベースDB1の対象者全員に対して追加調査を行なったものと同等になるようにして、データベース化したものであり(【0054】)、
基本データベースDB1が10,000人分のシングルソースパネルデータの場合、1/10の1,000人の追加調査対象者をランダムに抽出し、抽出された追加調査対象者に対して前述のアンケートと同様に、アンケート回答用端末2を使って追加調査(追加質問)を行い、追加調査データADを追加調査対象者の基本データベースDB1と紐付けて、追加調査データベースDB2として作成し(【0059】)、
追加設問の追Q1、追Q2・・・ごと、フュージョンキーFKとする項目の回答からの関係式を作成、非対象者の回答パターンに応じて該当する回答を付与する場合であって(【0079】)、「ビールの新ブランド利用有無」についての回答を推計する場合(【0080】)、基本データベースDB1においてビールに関する設問を用いると推計精度が高くなることを推測し項目を決定し(【0081】)、追加調査を実施した追加調査対象者1,000人分のデータを用いて、決定した基本データベースDB1の項目群を説明変数、追加設問を目的変数として、重回帰分析などの手法を用いて予測式を作成し(【0082】)、
予測式に、非追加対象者の基本データベースDB1の回答を代入し、追加調査の回答を推計し、追加設問ごとに予測式を作成して行うもので、追加設問が10あれば、10の予測式を作成して行い(【0084】、【0085】)、
コンピュータ装置Cは、非追加調査対象者のデータの各々に、追加調査データベースDB2の回答内容データANを仮想追加調査データとし、これを追加調査データADとして特定し、追加調査を実施していない対象者データの各々に、追加調査データADとして付与し、追加調査対象者と非追加調査対象者の全てに特定した追加調査データADを付与して基本データベースDB1に追加調査データADを融合させる(【0086】)、
汎用的データフュージョン方法。」
2 引用文献2について(引用文献2に記載されている事項)
本件特許の出願優先日(令和4年11月4日)前である2018年(平成30年)6月28日に国際公開された引用文献2(国際公開第2018/116366号、甲第7号証)には、次の事項が記載されている。
「[0003] このようなプライバシー情報の必要以上な漏洩を回避する技術として、データに乱数を加える技術がよく知られている(例えば、非特許文献1、非特許文献2)。
例えば、元データにガウス分布などから生成された乱数を単純に加えることで、元データと異なるデータへ変換してプライバシーを保護する方法がある。このように元データに乱数を単純に加えてプライバシーを保護する技術は、近年提案された「差分プライバシー」と呼ばれる、プライバシーレベルを定量的に評価できるフレームワークと密接な関係があることが知られている。このため、乱数を元データに追加する手法が再び脚光を浴びている。
[0004] 差分プライバシーを満たすプライバシー保護技術によれば、データベース中の個人データに関してどのような背景知識があっても統計値から個々の値を推測することが困難である。また、差分プライバシーを満たすプライバシー保護技術によれば、データベース全体に対する統計的分析が可能である。」
「[0016] ・・・
以下では、データ生成装置200は、図1に不図示のすべての家電機器の消費電力量の集約値である電力使用量データと、その電力使用量が生成された時刻が含まれる機器データ(D)を生成するものとする。」
「[0039] ・・・本実施の形態では、電力使用量データを「P」、その生成した時刻データを「TIME」と示し、また機器データ(D)をD=(P,TIME)と示す。」
「[0053] 乱数生成部404は、例えば、以下の確率密度関数を持つ、期待値=0、分散=2R2のラプラス分布LAPに従って乱数を生成する。
LAP(x|R)=(1/(2R))×(EXP(-|x|/R)
ただし、EXP(y)は自然対数eのy乗を意味する。
このとき、乱数生成部404は、オペレータが決めた、もしくはシステムで予め決められたプライバシーレベルを表すパラメーターεと、対象機器リスト(L)に含まれる家電機器うち取り得る最大の消費電力量の中で一番大きな消費電力量(E)に対して、シード(S)の一要素SIを用いて、乱数RIをLAP(x|E/ε)に従って生成する。ただし、Iは1以上かつK以下の整数である。このように、乱数生成部404は、シード(S=(S1,…,SK))を用いて、各(D,B,L)に対して、乱数(R=(R1,…,RK))を生成する。つまり、乱数生成部404は、1つの秘匿化対象の電力使用量データに対して複数の乱数を生成する。
なお、プライバシーレベルを表すパラメーターεは実数値である。パラメーターεは0に近い程プライバシーレベルが上がる。また、パラメーターεは0に近い程大きな乱数が生成される。オペレータは、データ分析装置500において分析データ(A)の分析ができるようにするためにパラメーターεを調節する必要がある。例えば、分析内容に応じてパラメーターεを事前に学習することで、パラメーターεの最適値を算出することができる。
[0054] また、乱数生成部404は、上記のようなラプラス分布ではなく、よく知られた期待値=μ、分散=σ2の正規分布N(μ,σ2)に従って乱数を生成してもよい。
正規分布N(μ,σ2)に従って乱数を生成する場合は、乱数生成部404は、オペレータが決めた、もしくはシステムで予め決められたプライバシーレベルを表すパラメーター(ε,δ)と、対象機器リスト(L)に含まれる家電機器うち取り得る最大の消費電力量の中で一番大きな消費電力量(E)に対して、まず以下のσを計算する。
σ=(E/ε)×(2×LOG(1.25/δ))1/2
ただし、LOG(y)は自然対数eを底としたyの対数を意味する。
その後、乱数生成部404は、シード(S)の一要素SIを用いて、乱数RIをN(0,σ2)に従って生成する。ただし、Iは1以上かつK以下の整数である。このように、シード(S=(S1,…,SK))を用いて、乱数(R=(R1,…,RK))を生成する。つまり、乱数生成部404は、1つの秘匿化対象の電力使用量データに対して複数の乱数を生成する。
ラプラス分布の場合と同様に、プライバシーレベルを表すパラメーターεとパラメーターδはそれぞれ実数値である。パラメーターεとパラメーターδは0に近いほどプライバシーレベルが上がる。パラメーターεとパラメーターδは0に近い程大きな乱数が生成される。オペレータは、データ分析装置500において分析データ(A)の分析ができるようにするためにパラメーターεとパラメーターδを調節する必要がある。例えば、分析内容に応じてパラメーターεとパラメーターδを事前に学習することで、パラメーターεの最適値を算出することができる。
[0055] 上記の例では、ラプラス分布や正規分布を用いた乱数の生成方法について述べたが、差分プライバシー技術でも用いられる指数分布や、その他の様々な分布を用いて、プライバシーレベルを表すパラメーター(ε,δ)に依存して乱数を生成する方法を用いてもよい。更に、本実施の形態で用いる乱数の生成には、シード(S)がわかれば生成した乱数(R)を復元できるような乱数生成技術を用いる。例えば、シード(S=(S1,…,SK))を用いて、ある機器データ(D=(P,TIME))に対して乱数(R=(R1,…,RK))を生成する場合、シード(S)と時刻データ(TIME)から一意的に(すなわち、確定的に)ラプラス分布または正規分布などに従った乱数(R)を生成できるものとする。より詳細には、入力に対して確定的に乱数を出力する関数Fを用いて、R1=F(S1,TIME),…,RK=F(SK,TIME)として乱数(R)を生成できる乱数生成技術を利用する。
[0056] データ攪乱部405は、受信部401により受信された機器データ(D)に、乱数生成部404により生成された乱数(R=(R1,…,RK))を付与して分析データ(A)を生成する。つまり、データ攪乱部405は、機器データ(D)の電力使用量データ(P)から保護対象機器リスト(L)に示される保護対象機器の消費電力量や稼働履歴を隠すために、複数の乱数を用いて秘匿化する。
具体的には、データ攪乱部405は、機器データ(D=(P,TIME))に対して、電力使用量データ(P)に複数の乱数を加算して保護対象機器の電力使用量データを秘匿化する。例えば、保護対象機器の電力使用量データの値が100であり、生成された乱数が11、32、65(K=3)である場合は、データ攪乱部405は、100+11+32+65=208を得る。
このように、データ攪乱部405は、C=P+R1+…+RKとして、電力使用量データ(P)を秘匿化して秘匿化後の電力使用量データ(C)を生成し、分析データ(A=(C,TIME))を生成する。・・・」
第5 当審の判断
1 本件発明1について
(1)本件発明1と引用発明1との対比
ア 本件発明1の「情報処理装置が、ユーザに関する複数の変数を有する第1のデータソースを取得する取得ステップであって、前記複数の変数には前記ユーザの属性情報に関する変数が含まれる、取得ステップと、」について
(ア)引用発明1の「コンピュータ装置C」は、本件発明1の「情報処理装置」に相当する。
(イ)引用発明1において、「基本データベースDB1」は、「予め10,000人に対して初期取得情報を得て、この初期取得情報をデータベース化したもの」である。そして、「10,000人(代表性あり)は、地域、街の情報、性別、年齢、職業、家族構成、通勤・通学、消費、旅行、ファッション、テレビ・新聞・ラジオ・インターネット・交通機関の利用、その他の日常生活などに関する多くのアンケートや利用記録について、初期取得情報を格納したもの」である。
また、引用発明1は、「基本データベースDB1が10,000人分のシングルソースパネルデータの場合、1/10の1,000人の追加調査対象者をランダムに抽出し、抽出された追加調査対象者に対して前述のアンケートと同様に、アンケート回答用端末2を使って追加調査(追加質問)」を行い、「追加調査データADを追加調査対象者の基本データベースDB1と紐付けて、追加調査データベースDB2として作成」し、「追加調査を実施した追加調査対象者1,000人分のデータを用いて、決定した基本データベースDB1の項目群を説明変数、追加設問を目的変数として、重回帰分析などの手法を用いて予測式を作成」するものである。
(ウ)引用発明1は、上記(イ)のとおり、「追加調査データADを追加調査対象者の基本データベースDB1」と紐付けて、追加調査データベースDB2として作成」するものであるから、引用発明1の「追加調査対象者」を含む「調査対象者」は、本願発明1の「ユーザ」に相当し、引用発明1のDB1の項目とDB2の項目は、いずれも、ユーザである追加調査対象者に応じて変化する複数の値を示すものであるから、本願発明1の「ユーザに関する複数の変数」に相当する。
(エ)そして、引用発明1では、上記(イ)のとおり、追加調査を実施した追加調査対象者1,000人分のデータを用いて、決定した基本データベースDB1の項目群を説明変数、追加設問を目的変数として、重回帰分析などの手法を用いて予測式を作成するところ、引用発明1の「追加調査対象者1,000人分のデータ」は、DB2の追加調査対象者のデータとDB1のうち追加調査対象者について紐付けられたデータを併せたものであるから、引用発明1の「追加調査対象者1,000人分のデータ」は、本件発明1の「ユーザに関する複数の変数を有する第1のデータソース」に相当する。
(オ)以上のとおりであるから、引用発明1の、コンピュータ装置Cの、1,000人分の基本データベースDB1と追加調査データベースDB2のデータを取得することは、本件発明1の「情報処理装置が、ユーザに関する複数の変数を有する第1のデータソースを取得する取得ステップであって、前記複数の変数には前記ユーザの属性情報に関する変数が含まれる、取得ステップ」に相当する。
イ 本件発明1の「前記情報処理装置が、前記第1のデータソースに含まれる前記複数の変数から説明変数および目的変数を選択する選択ステップであって、前記説明変数には、前記属性情報に関する変数と、少なくとも1つの前記属性情報とは異なる変数が含まれており、前記目的変数は複数選択される、選択ステップと、」について
(ア)引用発明1は、「追加調査を実施した追加調査対象者1,000人分のデータを用いて、決定した基本データベースDB1の項目群を説明変数、追加設問を目的変数として、重回帰分析などの手法を用いて予測式を作成」するものである。
(イ)引用発明1の「追加調査対象者1,000人分のデータ」は、上記ア(イ)のとおり、本件発明1の「ユーザに関する複数の変数を有する第1のデータソース」に相当し、引用発明1の「追加調査対象者1,000人分のデータを用いて、決定した基本データベースDB1の項目群」の「説明変数」は、本件発明1の「前記第1のデータソースに含まれる前記複数の変数」の「説明変数」に相当し、引用発明1の「追加設問」の「目的変数」は、本件発明1の「前記第1のデータソースに含まれる前記複数の変数」の「目的変数」に相当する。
(ウ)また、引用発明1は、「追加設問の追Q1、追Q2・・・ごと、フュージョンキーFKとする項目の回答からの関係式を作成」するものであって、「フュージョンキーFKとする項目」は、「「ビールの新ブランド利用有無」についての回答を推計する場合」、「基本データベースDB1においてビールに関する設問を用いると推計精度が高くなることを推測し項目を決定」することから、「追Q1」、「追Q2」ごとに特定されるものである。なお、引用発明1の「関係式」は、上記(ア)の「予測式」のことであることは明らかである。
(エ)そうすると、引用発明1の「追加設問の追Q1、追Q2・・・ごと」の「フュージョンキーFKとする項目」は、「予測式」を作成するために用いられる、「追加調査対象者1,000人分のデータを用いて、決定した基本データベースDB1の項目群」に対応するものであって、本件発明1の「説明変数」といえ、この説明変数に対応する引用発明1のそれぞれの「追加設問」は、本件発明1の「目的変数」といえることから、引用発明1において、これらの説明変数及び目的変数と特定することは、「前記説明変数には、前記属性情報に関する変数と、少なくとも1つの前記属性情報とは異なる変数が含まれて」いるか定かではなく、追加設問が、次のウ(ウ)で述べるとおり、追加設問と予測式とは一対一の関係である点で相違するものの、本件発明1の「選択ステップ」と、「前記情報処理装置が、前記第1のデータソースに含まれる前記複数の変数から説明変数および目的変数を選択する選択ステップ」である点で共通する。
ウ 本件発明1の「前記情報処理装置が、前記第1のデータソースを教師データとして、選択された前記説明変数から前記複数の目的変数を予測する予測モデルを作成する、作成ステップと、」について
(ア)上記イ(エ)を踏まえれば、引用発明1の「追加調査対象者1,000人分のデータを用いて、決定した基本データベースDB1の項目群」及び「追加設問」の項目で特定されるデータの対は、本件発明1の「教師データ」に相当する。
(イ)また、上記ア(ウ)のとおり、引用発明1の上記「1,000人のデータ」は、本件発明1の「ユーザに関する複数の変数を有する第1のデータソース」に相当することから、引用発明1の「追加調査を実施した追加調査対象者1,000人分のデータを用いて、決定した基本データベースDB1の項目群を説明変数、追加設問を目的変数として、重回帰分析などの手法を用いて予測式を作成」することにおける「重回帰分析などの手法」を用いた「予測式」は、本件発明1の「予測モデル」に相当する。
そうすると、引用発明1の「追加調査を実施した追加調査対象者1,000人分のデータを用いて、決定した基本データベースDB1の項目群を説明変数、追加設問を目的変数として、重回帰分析などの手法を用いて予測式を作成」することは、本件発明1の「前記第1のデータソースを教師データとして」、「前記説明変数から前記複数の目的変数を予測する予測モデルを作成する」ことに相当する。
(ウ)さらに、引用発明1の「追加設問ごと」に予測式を作成して行うもので、「追加設問が10あれば、10の予測式を作成」することは、追加設問と予測式とは一対一の関係になるように予測式を作成している点で相違するものの、本件発明1の「選択された前記説明変数から前記複数の目的変数を予測する予測モデルを作成する」ことと、「選択された前記説明変数から前記目的変数を予測する予測モデルを作成する」との点で共通する。
(エ)そうすると、引用発明1の「追加調査を実施した追加調査対象者1,000人分のデータを用いて、決定した基本データベースDB1の項目群を説明変数、追加設問を目的変数として、重回帰分析などの手法を用いて予測式を作成」し、「追加設問ごとに予測式を作成して行うもので、追加設問が10あれば、10の予測式を作成」することは、コンピュータ装置Cが実行することから、本件発明1の「前記情報処理装置が、前記第1のデータソースを教師データとして、選択された前記説明変数から前記複数の目的変数を予測する予測モデルを作成する、作成ステップ」と、「前記情報処理装置が、前記第1のデータソースを教師データとして、選択された前記説明変数から前記目的変数を予測する予測モデルを作成する、作成ステップ」との点で共通する。
エ 本件発明1の「前記情報処理装置が、前記予測モデルを、選択された前記説明変数を変数として含む第2のデータソースに適用して、疑似シングルソースデータを生成する、生成ステップと、」について
(ア)引用発明1の「予測式に、非追加対象者の基本データベースDB1の回答を代入し、追加調査の回答を推計」ときの「非追加対象者の基本データベースDB1」の「回答」は、本件発明1の「第2のデータソース」に相当する。
そして、引用発明1の予測式に代入される非追加調査対象者のデータに対応する項目は、予測式に代入するものであるから、本件発明1の「選択された説明変数」といえる。
(イ)引用発明1の「非追加調査対象者のデータ」は、「基本データベースDB1」の「10,000人分のシングルソースパネルデータ」のうちの追加調査対象者のデータを除いたものであって、この「非追加調査対象者のデータ」について仮想追加調査データを追加調査データADとして融合された基本データソースDB1のデータは、本件発明1の「疑似シングルソースデータ」に相当する。
(ウ)そうすると、引用発明1の「予測式に、非追加対象者の基本データベースDB1の回答を代入し、追加調査の回答を推計」するものであって、「コンピュータ装置Cは、非追加調査対象者のデータの各々に、追加調査データベースDB2の回答内容データANを仮想追加調査データとし、これを追加調査データADとして特定し、追加調査を実施していない対象者データの各々に、追加調査データADとして付与し、追加調査対象者と非追加調査対象者の全てに特定した追加調査データADを付与して基本データベースDB1に追加調査データADを融合させる」ことは、本件発明1の「前記情報処理装置が、前記予測モデルを、選択された前記説明変数を変数として含む第2のデータソースに適用して、疑似シングルソースデータを生成する、生成ステップ」に相当する。
オ 本件発明1の「情報処理方法」について
引用発明1の「汎用的データフュージョン方法」は、コンピュータ装置Cが上記ア~エの処理を実行する点で、後述する相違点は別にして、本件発明1の「情報処理方法」に相当する。
カ 一致点及び相違点について
上記ア~オのとおりであるから、本件発明1と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
情報処理装置が、ユーザに関する複数の変数を有する第1のデータソースを取得する取得ステップであって、前記複数の変数には前記ユーザの属性情報に関する変数が含まれる、取得ステップと、
前記情報処理装置が、前記第1のデータソースに含まれる前記複数の変数から説明変数および目的変数を選択する選択ステップと、
前記情報処理装置が、前記第1のデータソースを教師データとして、選択された前記説明変数から前記目的変数を予測する予測モデルを作成する、作成ステップと、
前記情報処理装置が、前記予測モデルを、選択された前記説明変数を変数として含む第2のデータソースに適用して、疑似シングルソースデータを生成する、生成ステップと、
を有する情報処理方法。
<相違点>
(相違点1)
本件発明1は、「選択ステップ」において、「前記目的変数は複数選択される」ものであって、「作成ステップ」において、「前記複数の目的変数を予測する予測モデルを作成する」ものであるのに対して、引用発明1は、「追加設問の追Q1、追Q2・・・ごと」の「フュージョンキーFKとする項目」は、「予測式」を作成するために用いられ、「追加設問ごと」に予測式を作成するものの、「追加設問」と「予測式」とは一対一の関係であることから、追加設問を「複数」選択するものではなく、「複数の」追加設問を目的変数としたモデルを作成するものではない点。
(相違点2)
本件発明1は、「前記説明変数には、前記属性情報に関する変数と、少なくとも1つの前記属性情報とは異なる変数が含まれて」いるのに対して、引用発明1は、そのような構成になっているか定かではない点。
(2)新規性(特許法第29条第1項第3号)について
上記のとおり、本件発明1と引用発明1との間には、相違点1、2があり、少なくとも相違点1は、実質的な相違点である。
よって、本件発明1の発明特定事項と引用発明1の発明特定事項との間に差異があることから、本件発明1は引用発明1でない。
(3)相違点の判断(進歩性(特許法第29条第2項)について)
ア 相違点1の判断
引用発明1は「予測式に、非追加対象者の基本データベースDB1の回答を代入し、追加調査の回答を推計し、追加設問ごとに予測式を作成して行うもので、追加設問が10あれば、10の予測式を作成して行」うものであって、引用文献1には、10個の予測式を束ねて1つの予測式にすることは、記載も示唆もされていない。そのため、引用発明1において、10個の予測式を束ねて1つの予測式することで複数の目的変数を出力する構成としようとする動機付けはない。
したがって、上記相違点1の構成は、引用発明1に基づいて、当業者が容易に想到することができたものではない。
また、引用文献2には、上記「第4」の2のとおり、周知の、データに乱数を加える技術である「差分プライバシー技術」が記載されているものの、「選択ステップ」において、「前記目的変数は複数選択される」ものであり、「作成ステップ」において、「前記複数の目的変数を予測する予測モデルを作成する」ことは記載も示唆もされていないことから、引用発明1に引用文献2に記載されている事項を適用したとしても、上記相違点1の構成に至らないことは明らかである。
なお、引用文献2に記載された事項が主引用発明とならないことは明らかである。
したがって上記相違点1の構成は、引用発明1及び引用文献2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到することができたものではない。
イ 相違点2の判断
引用発明1は、「追加設問の追Q1、追Q2・・・ごと、フュージョンキーFKとする項目の回答からの関係式を作成」することができる。そして、引用発明1は、「近しい人を近しいと判断するための項目は、フュージョンキーFKとする項目を直接利用(例えば性別、年齢など)でき」、また、「ビールの新ブランド利用有無」についての回答を推計する場合(【0080】)、基本データベースDB1においてビールに関する設問を用いる」ことができるものであって、引用発明1の「性別、年齢など」、「ビールに関する設問」の項目は、それぞれ、本件発明1の「属性情報」、「少なくとも1つの前記属性情報とは異なる変数」に相当する。
そうすると、上記相違点2は、文言上の差違にすぎない。
仮に、相違点2が実質的な相違点であるとしても、引用発明1において、関係式である予測式への入力である説明変数として、「少なくとも1つの前記属性情報とは異なる変数が含まれ」る構成とすることは、当業者が容易に想到することができたものである。
ウ 効果について
本件発明1は、相違点1の構成を採用することで、「精度良く擬似的なシングルソースデータを生成する」(本件特許明細書【0015】)との格別顕著な作用効果を奏するものである。
(4)本件発明1についての小括
よって、本件発明1は、引用発明1でない(新規性)。また、本件発明1は、引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、引用発明1及び引用文献2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない(進歩性)。
2 本件発明2~5、7~9について
本件発明2~5、7~9は、本件発明1を直接的又は間接的に引用する発明である。そのため、本件発明2~5、7~9は、「選択ステップ」において、「前記目的変数は複数選択される」こと、及び、「作成ステップ」において、「前記複数の目的変数を予測する予測モデルを作成する」ことを発明特定事項に含むものである。
したがって、本件発明2~5、7~9と、引用発明1との間には、上記1(1)カのとおりの相違点1、2が存在する。
そして、本件発明2~4の新規性については、上記1(2)のとおり、少なくとも相違点1は実質的な相違点であるから、本件発明2~4の発明特定事項と引用発明1の発明特定事項との間に差異はあり、本件発明2~5、7~9の進歩性については、上記1(3)アのとおり、相違点1の構成は、引用発明1に基づいて当業者が容易に想到することができたものではなく、引用発明1及び引用文献2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到することができたものでもない。
よって、本件発明2~4は、引用発明1でない(新規性)。また、本件発明2~5、7~9は、引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、引用発明1及び引用文献2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない(進歩性)。
3 本件発明12について
「情報処理方法」の発明である、本件発明1と本件発明12と比較すると、本件発明1は、「ユーザに関する複数の変数を有する第1のデータソース」であるのに対して、本件発明12は「オブジェクトに関する複数の変数を有する第1のデータソース」である点でのみ相違する。
そうすると、本件発明12と引用発明1との対比は、実質的に上記1(1)ア~オのとおりであって、本件発明12と引用発明1との間には、1(1)カの相違点1、2に加えて、次の相違点3がある。
すなわち、本件発明12は、「複数の変数を有する第1のデータソース」は「オブジェクト」に関するものであるのに対して、引用発明1の「当該1,000人のデータ」であって、「オブジェクト」に関するものではない点で相違する(相違点3)。
相違点について検討すると、相違点1については、上記1(3)アのとおり、引用発明1に基づいて、当業者が容易に想到することができたものではなく、引用発明1及び引用文献2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到することができたものでもない。
相違点3については、引用発明1は「汎用的データフュージョン方法」であることから、対象をユーザに代えて「オブジェクト」として、相違点2の構成とすることは、当業者が容易に想到することができたものである。
よって、本件発明12は、引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、引用発明1及び引用文献2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
4 本件発明13~15について
本件発明13は、本件発明1又は12を引用する「情報処理方法を情報処理装置に実行させるプログラム」の発明であり、本件発明14は、本件発明1又は12を引用する「情報処理方法を情報処理装置に実行させるプログラムを格納した、前記情報処理装置により読み取り可能な非一時的な記憶媒体」の発明であり、本件発明15は、本件発明1又は12を引用する「情報処理方法を実行する、情報処理装置」の発明である。
そうすると、本件発明1、12については、それぞれ、上記1、3で検討したとおりであるから、本件発明13~15は、引用文献1に記載された発明ではない(新規性)。また、本件発明13~15は、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない(進歩性)。
第6 取消理由通知で採用しなかった申立理由について
1 申立理由の概要
取消理由通知で採用しなかった申立人が主張する申し立て理由の概要は、次のとおりである。
理由A.(進歩性)請求項1~4、7~9、12~15に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証、甲第2号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4、7~9、12~15に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
理由B.(進歩性)請求項4、5、7~9、12に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証、甲第2号証、甲第3~9号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項4、5、7~9、12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
2 証拠方法
甲第1号証 :特開2015-35101号公報(引用文献1)
甲第2号証 :特開2022-162668号公報
甲第3号証 :特開2017-54432号公報
甲第4号証 :特開2020-27319号公報
甲第5号証 :特開2015-106316号公報
甲第6号証の1:Susanne R▲a▼ssIer, “Statistical Matching”, pp. 71-127.(「▲a▼」は、a-ウムラウト)
甲第6号証の2:「springer」, https://link.springer.com/book/10.1007/978-1-4613-0053-3
甲第7号証 :国際公開第2018/116366号(引用文献2)
甲第8号証の1:Cynthia Dwork, Aaron Rotsh. “The algorithmic Foundations of Differential Privacy”, Foundations and Trends in Theoretical Computer Science, Vol.9, No.3-4, 2014, p.211-p.407
甲第8号証の2:「nowpublishers」, https://www.nowpublishers.com/article/Details/TCS-042
甲第9号証の1:Mengmeng Yang, Lingjuan Lyu, Jun Zhao, Tianqing Zhu, Kwok-Yan Lam, “Local Differential Privacy and Its Applications: A Comprehensive Survey", arXiv:2008.03686
甲第9号証の2:「arXiv:2008.03686」, https://arxiv.org/abs/2008.03686
甲第9号証の3:「Submission schedule and cutoff time」, https://info.arxiv.org/help/availability.html
甲第9号証の4:「arXiv identifier」, https://info.arxiv.org/help/arxiv_identifier.html
以下、甲第1号証~甲第9号証を、それぞれ、「甲1」~「甲9」という。
第7 甲1~甲9について
1 甲1について
甲1は、上記「第4」の1の引用文献1であって、甲1には、上記「第4」の1(1)のとおりの事項が記載されており、上記「第4」の1(2)のとおりの引用発明1が記載されている。
2 甲2について
甲2には、次の事項が記載されている。
「【0025】
図2は、人材管理システム1の機能構成を例示する図である。人材管理システム1は、装置として、サーバ10及びクライアント20を有する。人材管理システム1は、機能として、記憶手段11、取得手段12、取得手段13、取得手段14、分析手段15、提言生成手段16、記憶手段21、アクセス手段22、特定手段23、特定手段24、入力手段25、取得手段26、及び出力手段27を有する。これらの機能のうち、記憶手段11、取得手段12、取得手段13、取得手段14、分析手段15、及び提言生成手段16はサーバ10に、記憶手段21、アクセス手段22、特定手段23、特定手段24、入力手段25、取得手段26、及び出力手段27はクライアント20に、それぞれ実装される。
【0026】
サーバ10において、記憶手段11は、各種のデータ及びプログラムを記憶する。取得手段12は、管理システム4からモデル構築用第1情報を取得する(第1取得手段の一例)。モデル構築用第1情報は、グループに属する複数の構成員が当該集合研修を受講した状況に関する情報である。取得手段13は、管理システム2からモデル構築用第2情報を取得する(第2取得手段の一例)。モデル構築用第2情報は、複数の構成員が当該eラーニングを受講した状況に関する情報である。取得手段14は、管理システム3(より詳細には)データベース31(第1データベースの一例)からモデル構築用第3情報を取得する(第3取得手段の一例)。データベース31は、複数の構成員の属性に関する情報が記録されたデータベースである。モデル構築用第3情報は、複数の構成員の属性に関する情報である。
【0027】
分析手段15は、モデル構築用第1情報、モデル構築用第2情報、及びモデル構築用第3情報の少なくとも一部を目的変数として、別の少なくとも一部を説明変数として、目的変数と説明変数との相関を分析する。この分析には、例えば多変量解析又は機械学習が用いられる。この分析の結果として得られる、目的変数と説明変数との相関を示すモデル151(第1モデルの一例)は記憶手段11に記憶される。
【0028】
クライアント20において、記憶手段21は、各種のデータ及びプログラムを記憶する。アクセス手段22は、モデル151にアクセスする。特定手段23は、複数の構成員のうち提言の対象となる構成員(以下「対象構成員」という)を特定する(第1特定手段の一例)。特定手段24は、提言の出力先となるユーザ(以下「出力先ユーザ」という)を特定する(第2特定手段の一例)。入力手段25は、説明変数の値をモデル151に入力する。ここで入力される説明変数は、モデル151を構築(又は生成)する際に用いられた説明変数に対応する変数であって、対象構成員のみに関するデータである。モデル151は、入力された説明変数に対応する目的変数の値を出力する。取得手段26は、モデル151から目的変数の値を取得する。出力手段27は、目的変数の値に応じて、対象構成員が取るべき行動を示す提言情報を、出力先ユーザに出力する。
【0029】
図3は、サーバ10のハードウェア構成を例示する図である。この例において、サーバ10は、CPU(Central Processing Unit)101、メモリ102、ストレージ103、及び通信IF(Interface)104を有するコンピュータである。CPU101は、プログラムに従って各種の処理を行う処理装置である。メモリ102は、CPU101がプログラムを実行する際のワークエリアとして機能する主記憶装置であり、例えばRAM(Random Access Memory)を含む。ストレージ103は、各種のプログラム及びデータを記憶する補助記憶装置であり、例えばSSD(Solid State Drive)及びHDD(Hard Disk Drive)の少なくとも一方を含む。通信IF104は、所定の通信規格(例えばイーサネット)に従って他の装置と通信する通信装置である。
【0030】
この例において、ストレージ103は、コンピュータを人材管理システム1におけるサーバとして機能させるためのプログラム(以下「サーバプログラム」という)を記憶している。CPU101がサーバプログラムを実行することにより、コンピュータに図2の機能が実装される。CPU101がサーバプログラムを実行している状態において、メモリ102及びストレージ103の少なくとも一方が記憶手段11の一例である。通信IF104が、取得手段12、取得手段13、及び取得手段14の一例である。CPU101が分析手段15の一例である。」
「【0035】
取得手段12は、管理システム4からモデル構築用第1情報を取得する。モデル構築用第1情報は、具体的には、先の母集団に属する構成員全員について、各構成員が集合研修を受講した履歴である。この履歴は、例えば、受講した研修を特定する情報(例えば講座名)、受講した日時、理解度確認テストがあればその成績、及びテストを受けた日時を含む。
【0036】
取得手段13は、管理システム2からモデル構築用第2情報を取得する。モデル構築用第2情報は、具体的には、先の母集団に属する構成員全員について、各構成員がeラーニングを受講した履歴である。この履歴は、例えば、受講したeラーニングを特定する情報(例えば講座名)、受講した日時、理解度確認テストがあればその成績、及びテストを受けた日時を含む。
【0037】
取得手段14は、管理システム3(より具体的にはデータベース31)から先の母集団に属する構成員の属性に関するモデル構築用第3情報を取得する。
【0038】
図6は、データベース31に記録されている情報を例示する図である。データベース31は、複数のレコードを含む。各レコードは、一のユーザの属性を示す。この例では、各レコードには、そのユーザの氏名、性別、年齢、会社名、部署名、役職、勤続年数、実務経験年数、保有資格(詳細には、フィナンシャルプランナー、証券外務員、及び証券アナリスト)の有無、及び人事評価が記録される。例えば、図6の例において最上段のレコードには、氏名「山田花子」というユーザについて、性別「女」、年齢「38」、会社名「株式会社カンパニー」、部署名「証券営業部」、役職「課長」、勤続年数「5年」、実務経験年数「16年」、フィナンシャルプランナー資格保有、及び昨季の人事評価「A」であることが記録されている。」
「【0040】
この例において、ステップS12における分析は2段階で行われる。第1段階の分析は、成果と課題との相関に関する分析である。そもそも、ステップS12における分析は分析の対象となる組織の人材育成課題に基づいて定義される。」
「【0044】
第1段階の分析は、複数の評価尺度の各々を目的変数とし、課題に対応する変数を説明変数とした相関の分析である。この例では、説明変数は2つのグループに分けられる。このグループ分けは人材管理システム1において定義される。第1のグループは、「テスト結果」、「知識レベル評価」、及び「関連資格の有無」からなるグループである。分析手段15は、複数の評価尺度の各々と第1グループに含まれる説明変数との相関を、重回帰分析により分析する。具体的には、分析手段15は、「融資額」を目的変数とし、「テスト結果」、「知識レベル評価」、及び「関連資格の有無」を説明変数とする重回帰分析を行う。詳細には、分析手段15は、目的変数と説明変数との関係を表す式において、回帰係数を計算する。分析手段15は、計算により得られた回帰係数を記憶手段11に記憶する。次に分析手段15は、「融資件数」、「新規件数」、「顧客満足度」、及び「利ざや」の各々についても、複数の説明変数との相関を分析する。」
「【0046】
図8は、第2段階における分析を例示する図である。第2段階における分析は、小課題と要件との相関に関する分析である。この例においては、複数の小課題の各々に対応する変数に対して説明変数が定義されている。例えば、「知識レベルの向上」という小課題に対応する変数である「テスト結果」に対して、「科目A受講履歴(確認テスト結果含む)」、「科目B受講履歴(確認テスト結果含む)」、及び「科目C受講履歴」という3つのデータが説明変数として定義されている。同様に、他の小課題に対応する変数に対しても、それぞれ説明変数が定義されている。分析手段15は、これらの目的変数及び(複数の)説明変数の組に対して、データ形式に応じた分析を行う。分析としては、例えば、重回帰分析、判別分析、数量化1類、数量化2類、及び数量化3類のいずれかが用いられる。詳細には、分析手段15は、目的変数と説明変数との関係を表す式における係数を計算する。どのデータ形式の組に対してどの分析手法を用いるかは、分析手段15においてあらかじめ定義されている。
【0047】
再び図5を参照する。第1段階の分析で得られた関係式及び第2段階の分析で得られた関係式を合わせた数理モデルが、モデル151である。すなわちモデル151は、上記で説明した第2段階の説明変数(例えば、「科目A受講履歴」、「科目B受講履歴」、「科目C受講履歴」、及びユーザの属性等)の名前及び値が入力されると、第1段階の目的変数(例えば、「融資額」、「融資件数」、「新規件数」、「顧客満足度」、及び「利ざや」)を出力するモデルである。分析手段15は、計算により得られたモデル151を記憶手段11に記憶する(ステップS13)。以上でモデルの構築は終了である。以下、こうして構築されたモデルを用いた、ユーザへの提言について説明する。
【0048】
2-2.提言の出力
図9は、提言の出力動作を示すフローチャートである。ステップS21において、特定手段23は、対象構成員を特定する。一例において、対象構成員は、人材管理システム1(詳細にはサーバ10)にログインしているユーザ自身である。この例では、企業の従業員はあらかじめ人材管理システム1にユーザ登録される。各従業員は、自身のクライアント20からサーバ10にアクセスし、システムにログインすることができる。別の例において、クライアント20からログインしているユーザが管理職であり、対象構成員はその管理職の部下である従業員である。この場合、サーバ10が、構成員の職制を特定する情報を記憶しており、特定手段23はこの情報を参照して、ログインしているユーザの部下である構成員を対象構成員として特定する。あるいは、特定手段23は、ログインしているユーザにより指定された構成員を対象構成員として特定する。」
「【0050】
ステップS23において、入力手段25は、予測用の説明変数の名前及びその値をモデル151に入力する。クライアント20は、アクセス手段22を介してモデル151にアクセスする。予測用の説明変数は、予測用第1情報、予測用第2情報、及び予測用第3情報に含まれる変数の少なくとも一部である。具体的には、予測用の説明変数は、対象構成員に関する情報であって、分析手段15においてモデル151を構築する際に説明変数として用いられた変数と同じ名前を有する変数である。例えば、モデル151の構築において全ての構成員の「科目A受講履歴」、「科目B受講履歴」、及び「科目C受講履歴」が説明変数として用いられた場合、入力手段25は、対象構成員の「科目A受講履歴」、「科目B受講履歴」、及び「科目C受講履歴」を説明変数としてモデル151に入力する。
【0051】
なお、図5で説明したモデルの構築と図9で説明している提言の出力とは必ずしも時間的に近接して行われる訳では無い。したがって、対象構成員が、モデル151を構築する際の分析に用いられるデータの母集団に属している場合であっても、モデル151を構築した時点における対象構成員の状況と、提言を出力しようとする時点における対象構成員の状況とは必ずしも同一ではない。例えば、1年前にA社の社員のデータを用いてモデル151が構築された場合において、その1年後にA社の社員に対して提言を出力しようとするとき、この1年でA社の社員は研修の受講を進めたり、新たな資格を取得したり、新たな職務経験を積んだりしている。モデル151を用いれば、このように更新された状況に対しても、提言を出力することができる。さらにいうと、対象構成員は、モデル151を構築する際の分析に用いられるデータの母集団に属していなくてもよい。例えば、人材管理システム1においては、昨年度までに在籍した社員のデータを用いて構築されたモデル151が、今年度新たに入社した社員に対する提言を出力するために用いられてもよい。あるいは、A社の社員のデータを用いて構築されたモデル151が、A社と異なるB社の社員に対する提言を出力するために用いられてもよい。
【0052】
説明変数の名前及び値が入力されると、モデル151は,対応する目的変数を出力する。ステップS24において、取得手段26は、モデル151から出力された目的変数の名前及び値を取得する。例えば、取得手段26は、モデル151から「融資額」、「融資件数」、「新規件数」、「顧客満足度」、及び「利ざや」の値を取得する。これらの変数の値は、対象構成員が将来的に産み出すであろう結果の予測値を示している。
【0053】ステップS25において、取得手段26は、ステップS24において取得された予測値に対応する提言情報を取得する。この提言情報は、サーバ10において提言生成手段16により生成される。一例において、記憶手段11はデータベース111(第2データベースの一例)を記憶しており、提言生成手段16はデータベース111を参照して提言を生成
する。」
「
[図:0001427988000001.jpg]
」(【図2】)
「
[図:0001427988000002.jpg]
」(【図6】)
「
[図:0001427988000003.jpg]
」(【図8】)
3 甲3について
甲3には、次の事項が記載されている。
「【0004】
人の心理状態をできるだけ正しく分析するためには、様々な角度から調査したデータの分析をする必要がある。このため、統計分析の際に必要となる説明変数の種類は膨大となる上、予測したい目的変数も複数になることが多い。心理学の分析では、独立した目的変数であっても、「好き嫌い」と「尊敬軽蔑」のように、目的変数間には、“尊敬しているから好き、軽蔑しているから嫌い“といったような相関が少なからずあると考えられる。このような場合、2つの目的変数に対して独立に回帰分析を行うより、2つの目的変数間の相関を考慮して予測する方が、劇的に精度が向上することがある。
【0005】
一方で、説明変数間にも相関がある場合、多重共線性の問題が出てきて予測結果が不安定になる。多重共線性とは、説明変数間に強い相関があることにより、計算ができなかったり、計算結果の信頼性が低くなったりすることである。」
「【0018】
以下、この発明に係わる実施形態を説明する。
本発明は、目的変数と説明変数の両方の変数間に相関がある場合でも、3項以上からなる目的変数であっても、また、大量のデータ欠損がある場合でも、目的変数を高い精度で予測することと、入力情報を少なくすることの両方を実現するための技術である。」
「【0020】
まず、本発明におけるデータ分析のための各種のアルゴリズムについて説明する。
(第1のアルゴリズム)
第1のアルゴリズムでは、目的変数を説明変数に含めた因子回帰モデルを用いる。この因子回帰モデルは、因子分析モデル(式(1))と回帰モデル(式(2))とから成る。図1は、本発明におけるデータ分析のための因子回帰モデルの一例を示す図である。この図1におけるFnはn次元潜在変数ベクトルである。
【0021】
【数1】
[図:0001427988000004.jpg]
【0022】
いま、q次元目的変数ベクトルを式(2)の左辺とし、p次元説明変数ベクトルを式(1)の左辺とする。
因子分析モデル(式(1))におけるμはp次元平均ベクトルであり、Λはp×mの因子負荷行列であり、fnはn次元潜在変数ベクトルであり、ξはp次元独自因子ベクトルである。
【0023】
回帰モデル(式(2))におけるαは切片項であり、Θは回帰係数であり、εは誤差項である。上記の、目的変数を説明変数に含めたというのは、上記の式(1)、式(2)の共通部分fnが対応する。
【0024】
この回帰モデルは、説明変数から目的変数を回帰させるわけでなく、説明変数から共通因子を見つけ出し、この共通因子からダイレクトに目的変数に回帰させるという仕組みを入れている。このため、目的変数間に相関があり、この目的変数に影響を与える説明変数の数が少ない場合においても、精度よくパラメータを推定できる。また、式(1)と式(2)を式(3)へ変換し、この式(3)を式(4)に変換することで、回帰モデルを因子分析モデルに帰着させることができるため、因子分析モデルと回帰モデルとを1つの式(式(4))で記述することができ、分析モデルを単純化できる。
【0025】
【数2】
[図:0001427988000005.jpg]
」
4 甲4について
甲4には、次の事項が記載されている。
「【0002】
従来、多変数間の共変関係を求める方法として共分散構造分析が知られている。共分散構造分析では、他変数間の相関係数を算出可能な分散共分散行列を求める。しかしながら、分散共分散行列の要素の数は、変数の数の二乗のオーダーで大きくなるため、変数の数が大きくなると分散共分散行列を求める労力が大きくなる。そこで、より少ない変数で構造モデルを作成することが可能なスパース構造学習が提案されている。例えば、特許文献1には、グラフィカルラスーのアルゴリズムを用いたスパース構造学習におけるガウス分布の最尤推定値と構造モデルの特性を規定する罰則値との関係が開示されている。また、特許文献2には、精度行列がスパース行列となる解を得るためグラフィカルラスーのアルゴリズムによって条件付きガウス分布を算出する技術が開示されている。」
「【0007】
(1)本発明の一形態によれば、製品の品質を表す目的変数と、前記製品の製造工程で得られる前記製品に関連する説明変数との共変関係を表す構造モデルを評価する評価装置が提供される。評価装置は、前記目的変数と前記説明変数との対応関係が示された対応データを用いて構造学習によって前記構造モデルを作成するモデル作成部と、前記対応データを用いて前記目的変数を既知とした条件付きガウス分布の最尤推定値を算出する最尤推定値演算部と、前記最尤推定値に基づいて前記構造モデルを評価するモデル評価部と、を備える。」
「【0009】
(2)上記形態の評価装置において、前記モデル作成部は、前記構造モデルの特性に関連する特性値を変更することによって前記対応データから前記特性値の異なる複数の前記構造モデルを作成し、前記最尤推定値演算部は、前記特性値の異なる前記複数の構造モデルのそれぞれについて、条件付きガウス分布の尤度推定値を算出するとともに、算出した複数の前記尤度推定値のうちの最大値を前記最尤推定値とし、前記モデル評価部は、前記最尤推定値に対応する前記構造モデルを選択することによって前記構造モデルを評価してもよい。この構成によれば、モデル作成部は、特性値を変更することによって複数の構造モデルを作成することができる。最尤推定値演算部は、複数の構造モデルのそれぞれについて算出される条件付きガウス分布の尤度推定値のうちの最大値を最尤推定値とする。これにより、モデル評価部は、特性値が異なる複数の構造モデルのうちから目的変数と説明変数との共変関係を良好に表した構造モデルを機械的に選択することができる。」
5 甲5について
甲5には、次の事項が記載されている。
「【0014】
本実施形態のエネルギー管理システムは、予測対象地域内の1または複数の施設におけるエネルギー需要量及び/または供給量のうち2以上であるM種類を予測対象とし、前記予測対象に対してN種類の入力データを予測条件とし、前記入力データと前記予測対象との相関関係、及び前記予測対象間の相関関係を演算する相関係数演算部と、前記個々の入力データに関して平均及び分散の値が等しくなり、前記入力データの相互に対して相関係数が等しくなるような、M種類の乱数の組を多数生成する乱数生成部と、前記相関関係と前記乱数との組より前記予測対象の予測計算を行う予測結果算出部と、前記予測結果と、前記施設におけるエネルギー需要量及び/または供給量と、予測対象地域内全体のエネルギー需要量及び/または供給量の比から、前記地域内全体のエネルギー需要量及び/または供給量を演算する合計値演算部と、を有することを特徴とする。」
「【0029】
相関係数演算部16は、予測対象選択部14で選択した施設のM種類の予測対象に対する入力データ抽出部13で抽出したN種類の入力データから、入力データと予測対象との相関関係、及び予測対象間の相関関係を演算する。入力データと予測対象との相関関係は、M種類の予測対象に対するN種類の入力データにおける予測結果の平均及び分散である。また、予測対象間の相関関係は、M種類の予測対象に対するN種類の入力データにおけるN-1種類の予測結果の共分散である。これらの相関関係をM行M列の分散共分散行列をして表わす。相関係数演算部16では、スマートコミュニティー2内のあるM種類の予測対象に対して、類似日選択部15で過去実績データをK日分選択した場合には、過去実績データM*K個から予測結果をM個求める。このM種類の内1つの予測対象について、K日分の平均値μと、分散vとを計算する。そして、M種類の施設の過去実績データ間の共分散について計算する。共分散は、M*(M-1)/2個求められる。これらの分散v、共分散より分散共分散行列を作成する。」
6 甲6について
甲6の1には、次の事項が記載されている。
「
[図:0001427988000006.jpg]
[図:0001427988000007.jpg]
[図:0001427988000008.jpg]
[図:0001427988000009.jpg]
[図:0001427988000010.jpg]
[図:0001427988000011.jpg]
[図:0001427988000012.jpg]
(訳文)
[図:0001427988000013.jpg]
[図:0001427988000014.jpg]
[図:0001427988000015.jpg]
[図:0001427988000016.jpg]
[図:0001427988000017.jpg]
[図:0001427988000018.jpg]
[図:0001427988000019.jpg]
」(78頁21行(数式行含む)~84頁12行)
7 甲7について
甲7は、上記「第4」の2の引用文献2であって、甲7には、上記「第4」の2のとおりの事項が記載されている。
8 甲8について
甲8の1には、次の事項が記載されている。
「
[図:0001427988000020.jpg]
[図:0001427988000021.jpg]
[図:0001427988000022.jpg]
[図:0001427988000023.jpg]
[図:0001427988000024.jpg]
[図:0001427988000025.jpg]
[図:0001427988000026.jpg]
[図:0001427988000027.jpg]
[図:0001427988000028.jpg]
[図:0001427988000029.jpg]
[図:0001427988000030.jpg]
[図:0001427988000031.jpg]
[図:0001427988000032.jpg]
(訳文)
[図:0001427988000033.jpg]
[図:0001427988000034.jpg]
[図:0001427988000035.jpg]
[図:0001427988000036.jpg]
[図:0001427988000037.jpg]
[図:0001427988000038.jpg]
[図:0001427988000039.jpg]
[図:0001427988000040.jpg]
[図:0001427988000041.jpg]
[図:0001427988000042.jpg]
[図:0001427988000043.jpg]
[図:0001427988000044.jpg]
[図:0001427988000045.jpg]
」(30頁下から3行~41頁29行)
「
[図:0001427988000046.jpg]
(訳文)
[図:0001427988000047.jpg]
」(53頁3~12行(数式行含む))
9 甲9について
甲9の1には、次の事項が記載されている。
「
[図:0001427988000048.jpg]
(訳文)
[図:0001427988000049.jpg]
」(アブストラクト)
「
[図:0001427988000050.jpg]
(訳文)
[図:0001427988000051.jpg]
」(4頁左欄1~3行)
「
[図:0001427988000052.jpg]
(訳文)
[図:0001427988000053.jpg]
」(8頁左欄3~7行)
第8 取消理由通知で採用しなかった申立理由についての判断
1 本件発明1について
(1)本件発明1と引用発明1との対比
本件発明1と引用発明1(甲1に記載された発明)との対比は、上記「第5」の1(1)ア~オのとおりであるから、その一致点及び相違点は、上記「第5」の1(1)カのとおりである。
すなわち、本件発明1と引用発明1との相違点は次のとおりである。
(相違点1)
本件発明1は、「選択ステップ」において、「前記目的変数は複数選択される」ものであって、「作成ステップ」において、「前記複数の目的変数を予測する予測モデルを作成する」ものであるのに対して、引用発明1は、「追加設問の追Q1、追Q2・・・ごと」の「フュージョンキーFKとする項目」は、「予測式」を作成するために用いられ、「追加設問ごと」に予測式を作成するものの、「追加設問」と「予測式」とは一対一の関係であることから、追加設問を「複数」選択するものではなく、「複数の」追加設問を目的変数としたモデルを作成するものではない点。
(相違点2)
本件発明1は、「前記説明変数には、前記属性情報に関する変数と、少なくとも1つの前記属性情報とは異なる変数が含まれて」いるのに対して、引用発明1は、そのような構成になっているか定かではない点。
(2)相違点の判断
ア 相違点1の判断
(ア)甲2には、上記「第7」の2のとおり、モデルを構築するための第1段階及び第2段階において、いずれも、1つの目的変数と複数の説明変数との関係を表す式(関係式)における係数を計算することが記載され(段落【0044】【0046】、【図8】等参照)、これらの関係式を組み合わせたものを数理モデルとすることが記載される(【0047】参照)のみであって、この「数理モデル」は関係式の束といえ、本件発明1のような複数の目的変数を予測する1つのモデルとはいえず、甲2には、「選択ステップ」において、「前記目的変数は複数選択される」ものであり、「作成ステップ」において、「前記複数の目的変数を予測する予測モデルを作成する」ことは記載も示唆もされていないことから、引用発明1に甲2に記載されている事項を適用したとしても、上記相違点1の構成に至らないことは明らかである。
なお、甲2に記載された事項を主引用発明として、引用発明1を適用しても、上記相違点1の構成に至らないことは明らかである。
(イ)また、上記「第5」の1(3)のとおり、引用発明1において、10個の予測式を束ねて1つの予測式することで複数の目的変数を出力する構成としようとする動機付けはないことから、説明変数から目的変数を予測する技術分野において、変数間の分散共分散構造を用いて、分散共分散構造に適合するように、複数の説明変数から複数の目的変数を予測する技術が、甲4、甲5及び甲6の1に記載されるように周知技術であるとしても、これを適用して上記相違点1の構成とすることは、当業者であっても、容易に想到することはできない。なお、周知技術を示す文献である甲4、甲5及び甲6の1には、擬似的シングルソースデータを精度よく生成することについて記載されていないことから、周知技術が主引用発明にならないことは明らかである。
(ウ)さらに、甲8の1、甲9の1には、「選択ステップ」において、「前記目的変数は複数選択される」ものであり、「作成ステップ」において、「前記複数の目的変数を予測する予測モデルを作成する」ことは記載も示唆もされていないことから、引用発明1に甲8の1及び甲9の1に記載されている事項を適用したとしても、上記相違点1の構成に至らないことは明らかである。
イ 相違点2の判断
上記「第5」の1(3)イのとおり、上記相違点2は、文言上の差違にすぎず、仮に、相違点2が実質的な相違点であるとしても、引用発明1において、関係式である予測式への入力である説明変数として、「少なくとも1つの前記属性情報とは異なる変数が含まれ」る構成とすることは、当業者が容易に想到することができたものである。
ウ 効果について
本件発明1は、相違点1の構成を採用することで、「精度良く擬似的なシングルソースデータを生成する」(本件特許明細書【0015】)との格別顕著な作用効果を奏するものである。
(3)申立人の主張について
ア 申立人の主張の概要
申立人は、特許異議申立書で次のように主張する。
上記相違点1について、申立人は、「甲第2号証は、構成2a,2b,2c,2dを備える甲2発明方法を記載する。構成2cは、「前記第1のデータソースを教師データとして、選択された複数の前記目的変数と複数の前記説明変数との相関を多変量解析又は機械学習を用いて分析し、複数の前記目的変数と複数の前記説明変数との相関を示す予測モデルを作成する」・・・構成2bは、「前記情報処理装置が、前記第1のデータソースに含まれる前記複数の変数の少なくとも一部を目的変数として選択し、別の少なくとも一部を説明変数として選択する選択ステップであって、前記説明変数には、前記属性情報に関する変数と、少なくとも1つの前記属性情報とは異なる変数が含まれており、前記目的変数は、複数選択され、組織の人材育成課題に応じて指定される、選択ステップ」というものである」から、「甲1発明方法1に甲第2号証記載の技術を適用すること」で、「本件特許発明1と同様の構成に想到することができる。」旨主張する。(特許異議申立書51~54頁)
イ 申立人の主張についての判断
申立人の上記主張について検討をする。
上記(2)ア(ア)のとおり、甲2には、モデルを構築するための第1段階及び第2段階において、いずれも、1つの目的変数と複数の説明変数との関係を表す式(関係式)における係数を計算することが記載され(段落【0044】【0046】、【図8】等参照)、これらの関係式を組み合わせたものを数理モデルとすることが記載される(【0047】参照)のみであって、この「数理モデル」は関係式の束といえ、本件発明1のような複数の目的変数を予測する1つのモデルとはいえず、甲2には、「選択ステップ」において、「前記目的変数は複数選択される」ものであり、「作成ステップ」において、「前記複数の目的変数を予測する予測モデルを作成する」ことは記載も示唆もされていない。
してみると、甲2には、申立人が主張する構成2c(「前記第1のデータソースを教師データとして、選択された複数の前記目的変数と複数の前記説明変数との相関を多変量解析又は機械学習を用いて分析し、複数の前記目的変数と複数の前記説明変数との相関を示す予測モデルを作成する」点)が記載されているとはいえない。
そして、上記(2)ア(ア)のとおり、引用発明1に甲2に記載された事項を適用しても、上記相違点1の構成に至らないことは明らかである。
よって、申立人の上記主張に理由はない。
(4)本件発明1についての小括
本件発明1は、引用発明1(甲1に記載された発明)及び甲2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 本件発明2~5、7~9について
本件発明2~5、7~9は、本件発明1を直接的又は間接的に引用する発明である。そのため、本件発明2~5、7~9は、「選択ステップ」において、「前記目的変数は複数選択される」こと、及び、「作成ステップ」において、「前記複数の目的変数を予測する予測モデルを作成する」ことを発明特定事項に含むものである。
したがって、本件発明2~5、7~9と、引用発明1との間には、上記1(1)のとおりの相違点1、2が存在する。
そして、上記1(2)アのとおり、相違点1の構成は、引用発明1及び甲2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到することができたものではない。
よって、本件発明2~5、7~9は、引用発明1及び甲2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、甲3~9について、上記1(2)ア(イ)及び(ウ)のとおりであるから、本件発明4、5、7~9は、引用発明1、甲2~9に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
3 本件発明12について
上記「第5」の3のとおりであるから、本件発明12と引用発明1との間には、上記1(1)の相違点1、2に加えて、上記「第5」の3と同じ次の相違点3がある。
すなわち、本件発明12は、「複数の変数を有する第1のデータソース」は「オブジェクト」に関するものであるのに対して、引用発明1の「当該1,000人のデータ」であって、「オブジェクト」に関するものではない点で相違する(相違点3)。
相違点について検討すると、相違点1については、上記1(2)アのとおり、引用発明1及び甲2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到することができたものではない。
相違点3については、引用発明1は「汎用的データフュージョン方法」であることから、対象をユーザに代えて「オブジェクト」として、相違点3の構成とすることは、当業者が容易に想到することができたものである。
よって、本件発明12は、引用発明1及び甲2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、甲3~9について、上記1(2)ア(イ)及び(ウ)のとおりであるから、本件発明12は、引用発明1、甲2~9に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
4 本件発明13~15について
本件発明13は、本件発明1又は12を引用する「情報処理方法を情報処理装置に実行させるプログラム」の発明であり、本件発明14は、本件発明1又は12を引用する「情報処理方法を情報処理装置に実行させるプログラムを格納した、前記情報処理装置により読み取り可能な非一時的な記憶媒体」の発明であり、本件発明15は、本件発明1又は12を引用する「情報処理方法を実行する、情報処理装置」の発明である。
そうすると、本件発明1、12については、それぞれ、上記1、3で検討したとおり、引用発明1及び甲2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、同様に、本件発明13~15は、引用文献1に記載された発明及び甲2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第9 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1、2、3、4、5、7、8、9、12、13、14、15に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1、2、3、4、5、7、8、9、12、13、14、15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700232