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特許異議申立

2022-700755

炭素繊維不織布複合体

審判番号
2022-700755
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-155257
登録番号
7019534
請求日
2022年08月02日
審決日
2022年11月02日
公報発行日
2022年12月28日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】三菱製紙株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
  • 【異議申立人】弁理士法人朝日奈特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 藤原 直欣
  • 審判官 當間 庸裕
  • 審判官 藤井 眞吾
分類
P1651.121-Y (B32B) / P1651.536-Y (B32B) / P1651.537-Y (B32B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7019534号発明「炭素繊維不織布複合体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7019534号の請求項1~3に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7019534号の請求項1~3に係る特許についての出願は、平成30年8月22日の出願であって、令和4年2月4日にその特許権の設定登録(特許掲載公報発行日:令和4年2月15日)がされ、その後、その特許に対し、令和4年8月2日に特許異議申立人弁理士法人朝日奈特許事務所(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件発明 特許7019534号の請求項1~3に係る発明(以下「本件発明1」等という。まとめて、「本件発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1~3に、それぞれ記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 炭素繊維と熱可塑性樹脂繊維を含有し、湿式抄紙法により形成されてなる炭素繊維不織布と、熱可塑性樹脂シートとを積層した 積層体の少なくとも最上部と最下部に熱可塑性樹脂シートを使用した複合体であり、複合体表面の粗さ曲線から求められる算術平均高さ(Ra)が1.0μm以下であり、かつ輪郭曲線要素の平均長さ(RSm)が200μm以下であり、複合体表面に塗膜を有することを特徴とする炭素繊維不織布複合体。 【請求項2】 炭素繊維不織布のフラジール通気度の変動率が8%以下である請求項1記載の炭素繊維不織布複合体。 【請求項3】 炭素繊維不織布がフィブリル化セルロース繊維を含有する請求項1又は2記載の炭素繊維不織布複合体。」 第3 申立理由の概要 申立人は、以下の証拠を提出し、概略、次のとおり、特許を取り消すべきものである旨を主張している(なお、甲第1号証等を以下「甲1」等という。また、特許異議申立書を以下「申立書」といい、行数に空行は含まない。)。 1 申立理由1(進歩性) 本件発明1~3は、甲1に記載された発明及び甲2~8に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29第2項の規定に違反して特許されたものであるから、同法第113条第2号の規定に基づき取り消されるべきものである(申立書9ページ16行~30ページ8行)。 2 申立理由2(実施可能要件) 熱可塑性樹脂繊維を含有することが規定された本件発明1は、いかにして「繊維」の状態の熱可塑性樹脂を含んでいるのか定かではないし、発明の詳細な説明を参照しても、そのような「繊維」の状態の熱可塑性樹脂を含む炭素繊維不織布複合体を得るための方法は、何ら開示も示唆もない。そのため、本件特許は、発明の詳細な説明の記載が、当業者が本件発明1~3の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでなく、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号の規定に基づき取り消されるべきものである(申立書30ページ9行~31ページ12行)。 3 申立理由3(サポート要件) 本件特許は、次のとおり、本件発明1~3が発明の詳細な説明に記載したものでなく、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号の規定に基づき取り消されるべきものである。 (1)本件特許明細書の発明の詳細な説明には、加熱加圧処理により形成したはずの炭素繊維不織布複合体において、熱可塑性樹脂繊維を含有する発明は、開示も示唆もない(申立書31ページ13~27行)。 (2)本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「加熱加圧処理」を施すことなく、単に「積層した」だけの本件発明1は、課題を解決し得ることが当業者が把握できる程度に開示されているとはいえない(申立書32ページ1行~33ページ4行)。 4 申立理由4(明確性) 加熱加圧処理により形成したはずの本件特許発明1に関する炭素繊維不織布複合体において、いかにして熱可塑性樹脂繊維を含有しているのかが明確でない。そのため、本件特許は、本件発明1~3が明確でなく、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号の規定に基づき取り消されるべきものである(申立書33ページ20行~34ページ9行)。 <引用文献等一覧> 甲1:特開2017-114107号公報 甲2:特開2002-67070号公報 甲3:特開2008-202013号公報 甲4:特開2001-348440号公報 甲5:特開2009-13305号公報 甲6:国際公開第2013/035839号 甲7:特開2018-28151号公報 甲8:特開2004-353124号公報 第4 当審の判断 事案に鑑み、申立理由3(サポート要件)、申立理由2(実施可能要件)、申立理由4(明確性)、申立理由1(進歩性)の順に判断する。 1 申立理由3(サポート要件)について (1)発明の詳細な説明の記載 本件発明が解決しようとする課題は、「表面性が良好で塗膜の密着性に優れた炭素繊維不織布複合体を提供すること」(【0007】)である。 当該課題を解決する手段に関して、発明の詳細な説明には次の記載がある(「・・・」は、文の省略を意味する。)。 「【0036】 本発明の複合体は、上記の炭素繊維不織布と熱可塑性樹脂シートとを積層し、積層体の少なくとも最上部と最下部に熱可塑性樹脂シートを使用して、加熱加圧処理により形成した炭素繊維不織布複合体であって、複合体表面の粗さ曲線から求められる算術平均高さ(Ra)が、1.0μm以下であり、輪郭曲線要素の平均長さ(RSm)が、200μm以下である。・・・また、炭素繊維不織布複合体の輪郭曲線要素の平均長さ(RSm)を小さくするためには、(1)炭素繊維を水中で、高速回転せん断型分散機を使用して分散し、炭素繊維不織布の地合を良化させる。(2)加熱加圧成形で使用する、平板を形成できる金型の表面の輪郭曲線要素の平均長さ(RSm)を小さくする、という方法で調整することができる。」 「【0065】 (フラジール通気度の変動率の評価) 実施例及び比較例で得られた炭素繊維不織布から縦横500mm角のシートを切り取り、ここから50mm角の通気度測定用試料100枚を作製し、JIS L1096に規定される通気性A法(フラジール形法)に準じて、通気性試験機(装置名:KES-F8-AP1、カトーテック(株)製)で通気度を測定し、試料100枚の通気度の平均値(P1)と標準偏差(P2)を算出し、次の式(1)から変動率を求めた。結果を表3に示す。 変動率(%)=通気度の標準偏差(P2)/通気度の平均値(P1)×100 (1) 【0066】 (炭素繊維不織布複合体の表面性の評価) 複合体の表面性の評価として、複合体の塗料を塗布される面の塗料を塗布される前の面において、(株)東京精密製の表面粗さ測定機サーフコム1400D-13を使用し、カットオフ値0.8mm、送り速さ0.3mm/s、評価長さ25mmの条件で、粗さ曲線の算術平均高さ(Ra)及び輪郭曲線要素の平均長さ(RSm)を測定し、1つの複合体あたり、最表層に使用した炭素繊維不織布の繊維の配向方向に5箇所、また繊維の配向方向と直交する方向に5箇所測定し、合計10箇所の測定を行い、その平均値を求めた。結果を表3に示す。 【0067】 (複合体の塗装密着性の評価) 複合体の表面にアクリル樹脂系塗料を乾燥膜厚が15μmになるようにスプレー塗布したのち、80℃で20分間乾燥、23℃、50%の環境中で12時間静置して試験片を作成した。この試験片の表面に、JIS K5600-5-6に準拠し、複合体まで達する6本の格子状の切り込みを入れた試験片を作成し、ニチバン製セロテープ(登録商標)を試験片に貼り付けた後、これを約0.8秒で引き剥がして、塗膜が剥離した格子の個数を数えた。この試験を各試験片で2回実施し、その平均値を求めた。結果を表3に示す。 【0068】 【表3】 [図:0001392086000001.jpg] 【0069】 実施例で得られた炭素繊維不織布複合体は、みな表面性が良好で、塗膜を形成した場合に、塗膜の密着性に優れた炭素繊維不織布複合体であった。」 「【0073】 実施例4~6を比較すると、粗さ曲線から求められる算術平均高さ(Ra)及び輪郭曲線要素の平均長さ(RSm)が小さい方が、剥離個数が少なく、塗膜の密着性に優れていてより好ましい。 【0074】 ・・・また、実施例7~11の中では、粗さ曲線から求められる算術平均高さ(Ra)及び輪郭曲線要素の平均長さ(RSm)が小さい方が、剥離個数が少なく、塗膜の密着性に優れていてより好ましい。」 (2)判断 【表3】の評価結果には、「複合体表面の粗さ曲線から求められる算術平均高さ(Ra)が、1.0μm以下であり、輪郭曲線要素の平均長さ(RSm)が、200μm以下である」という数値範囲内にある実施例1~12が、当該数値範囲外にある比較例1~4に比べて、塗膜の密着性に優れていることが示されている。よって、上記(1)に示した発明の詳細な説明の記載を総合すると、「複合体表面の粗さ曲線から求められる算術平均高さ(Ra)が、1.0μm以下であり、輪郭曲線要素の平均長さ(RSm)が、200μm以下である」ことで、表面性が良好で、剥離個数が少なく、塗膜の密着性に優れた炭素繊維不織布複合体を得ることができることが理解できる。他方、加熱加圧処理については、「炭素繊維不織布複合体の輪郭曲線要素の平均長さ(RSm)を小さくするため」の一手段として「加熱加圧成形で使用する、平板を形成できる金型の表面の輪郭曲線要素の平均長さ(RSm)を小さくする」ことが記載されている(【0036】)に留まり、他に「加熱加圧処理」が発明の課題を解決するための手段として必要であることの記載もないから、「加熱加圧処理」が発明の課題を解決するために必須の手段であるとはいえない。 そして、本件発明1は、「炭素繊維と熱可塑性樹脂繊維を含有し、湿式抄紙法により形成されてなる炭素繊維不織布と、熱可塑性樹脂シートとを積層した積層体の少なくとも最上部と最下部に熱可塑性樹脂シートを使用した複合体」であり「複合体表面に塗膜を有」したものにおいて、「複合体表面の粗さ曲線から求められる算術平均高さ(Ra)が1.0μm以下であり、かつ輪郭曲線要素の平均長さ(RSm)が200μm以下であ」ることを発明特定事項としており、これら発明特定事項により、本件発明の課題を解決できることが当業者であれば認識することができるといえる。 よって、本件発明1~3は、発明の詳細な説明に記載したものである。 (3)申立人の主張について ア 申立人は、熱可塑性樹脂繊維を含有する本件発明1がいかにして「繊維」の状態の熱可塑性樹脂を含んでいるのか定かではないし、発明の詳細な説明を参照しても、そのような「繊維」の状態の熱可塑性樹脂を含む炭素繊維不織布複合体を得るための方法が何ら開示も示唆もなく、そうすると、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、加熱加圧処理により形成したはずの炭素繊維不織布複合体において、熱可塑性樹脂繊維を含有する発明は、開示も示唆もない旨主張している。 実施例には、ポリプロピレン/ポリエチレン芯鞘型複合繊維又はポリビニルアルコール(ビニロン)繊維を熱可塑性樹脂繊維として用い、熱プレス機で、温度220℃、10MPa、5分間加熱加圧加工することが記載されている(【0041】、【0042】、【0048】)。 しかし、本件特許明細書には、熱可塑性樹脂繊維が繊維の状態でなくなるように加熱加圧加工することの記載はない。また、本件特許明細書には、「熱可塑性樹脂繊維が融点を示す場合、融点は60~260℃である」(【0018】)ことが記載されており、実施例における加熱加圧加工の温度220℃よりも高い融点を示す熱可塑性樹脂繊維を用い得ることが示唆されている。したがって、熱可塑性樹脂繊維の融点が加熱加圧加工の温度よりも高い場合は、「繊維」の状態の熱可塑性樹脂を含む炭素繊維不織布複合体を得ることできる。また、熱可塑性樹脂繊維の融点が加熱加圧加工の温度よりも高くない場合は、加熱加圧加工に伴い熱可塑性樹脂繊維に溶融して変形する部分が生じるとしても、炭素繊維不織布複合体を構成する炭素繊維及び熱可塑性樹脂シートと当該熱可塑性樹脂繊維との間には界面が残ると考えられ、繊維状の部分が残るといえる。 したがって、発明の詳細な説明には、炭素繊維不織布複合体が熱可塑性樹脂繊維を含有する発明が開示されている。 イ 申立人は、発明の詳細な説明には、「加熱加圧処理」を施すことなく、単に「積層した」だけの本件特許発明1は、課題を解決し得ることが当業者が把握できる程度に開示されているとはいえない旨主張している。 しかし、上記(2)で示したとおり、本件発明の発明特定事項により、本件発明の課題を解決できることが当業者であれば認識することができるから、申立人が主張する「加熱加圧処理」を施すことまで要しない。 2 申立理由2(実施可能要件)について (1)発明の詳細な説明の記載について 本件特許の発明の詳細な説明には、本件発明が解決しようとする課題(【0007】)、当該課題を解決するための手段(【0009】~【0011】)、本件発明の効果(【0012】)、本件発明を実施するための形態(【0013】~【0037】)、実施例(【0038】~【0077】)が記載されており、これら記載を参照することで、本件発明を実施することが可能である。 よって、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1~3の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。 (2)申立人の主張について 申立人は、本件特許明細書(【0036】、【0048】)によれば本件発明1に関する炭素繊維不織布複合体は、加熱加圧処理されて熱可塑性樹脂繊維が溶融するから、熱可塑性樹脂繊維を含有する本件発明1がいかにして「繊維」の状態の熱可塑性樹脂を含んでいるのか定かではないし、発明の詳細な説明を参照しても、そのような「繊維」の状態の熱可塑性樹脂を含む炭素繊維不織布複合体を得るための方法が何ら開示も示唆もない旨主張している。 しかし、上記1(3)アで示したとおり、発明の詳細な説明の記載は、炭素繊維不織布複合体が熱可塑性樹脂繊維を含有する発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。 3 申立理由4(明確性)について (1)判断 本件発明1の特定事項により、本件発明1は、「炭素繊維と熱可塑性樹脂繊維を含有し、湿式抄紙法により形成されてなる炭素繊維不織布と、熱可塑性樹脂シートとを積層した積層体の少なくとも最上部と最下部に熱可塑性樹脂シートを使用した複合体」であって、「複合体表面の粗さ曲線から求められる算術平均高さ(Ra)が1.0μm以下であり、かつ輪郭曲線要素の平均長さ(RSm)が200μm以下であり」、「複合体表面に塗膜を有する」、「炭素繊維不織布複合体」であり、文言上、特許請求の範囲に記載された発明は、不明瞭とするところはなく、明確なものといえる。 よって、本件発明1~3は明確である。 (2)申立人の主張について 申立人は、加熱加圧処理により形成したはずの本件特許発明1に関する炭素繊維不織布複合体において、いかにして熱可塑性樹脂繊維を含有しているのかが明確でない旨主張している。 しかし、上記1(3)アで示したとおり、本件特許明細書には、炭素繊維不織布複合体が熱可塑性樹脂繊維を含有する発明が開示されているから、本件発明1に関する炭素繊維不織布複合体が熱可塑性樹脂繊維を含有することは明確である。 4 申立理由1(進歩性)について (1)刊行物の記載 ア 甲1に記載された事項 甲1には、次の記載がある(下線は、当審で参考のため付与したものである。)。 「【請求項11】 コア層用不織布と、表面層用シートとを有し、 前記コア層用不織布は、強化繊維と熱可塑性樹脂繊維とを含み、 前記熱可塑性樹脂繊維は限界酸素指数が30以上の熱可塑性樹脂繊維であるか、もしくは、前記コア層用不織布は難燃剤を含み、 前記表面層用シートは、ポリオレフィン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド及びナイロンから選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする繊維強化プラスチック成形体用基材。」 「【0015】 図1は、本発明の繊維強化プラスチック成形体の構成を説明する断面図である。図1に示されているように、本発明の繊維強化プラスチック成形体1は、コア層10と、表面層14を有する。表面層14は、コア層10の一方の表面上に積層されることが好ましいが、コア層の両方の表面上に積層されてもよい。 本発明の繊維強化プラスチック成形体の表面に塗装が施される場合は、表面層14上に塗装が施される。本発明の繊維強化プラスチック成形体1においては、このような表面層14を有するため、塗装適性を向上させることができる。また、本発明の繊維強化プラスチック成形体1は、表面層14を有するため、耐溶剤性や耐候性にも優れている。」 「【0031】 (強化繊維) コア層は、強化繊維を有する。強化繊維は、ガラス繊維、炭素繊維及びアラミド繊維から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、炭素繊維又はガラス繊維であることがより好ましく、炭素繊維であることがさらに好ましい。これらの強化繊維は、1種のみを使用してもよく、複数種を使用してもよい。また、PBO(ポリパラフェニレンベンズオキサゾール)繊維等の耐熱性に優れた有機繊維を含有していてもよい。」 「【0069】 (繊維強化プラスチック成形体用基材の製造方法) 本発明の繊維強化プラスチック成形体用基材の製造工程は、強化繊維と、熱可塑性樹脂繊維を混合し、湿式抄紙法又は乾式抄紙法によってコア層用不織布を形成する工程を含む。湿式抄紙法は、熱可塑性樹脂繊維、強化繊維のチョップドストランドを溶媒中に分散させ、その後溶媒を除去してウエブを形成する方法である。・・・ 【0074】 コア層用不織布を形成する工程の後には、コア層用不織布と表面層用シートを積層する工程を含むことが好ましい。この場合、コア層用不織布は複数枚積層してもよく、表面層用シートはコア層用不織布の積層体の少なくとも一方の表面に積層される。コア層用不織布と表面層用シートを積層する工程では、コア層用不織布と表面層用シートを軽く熱プレスをしてもよい。また、コア層用不織布と表面層用不織布を湿式抄紙法で製造する場合は、多層抄きが可能な抄紙機を使用して、ウエットウエブの状態で重ね合わせ、これらを一体として乾燥させて繊維強化プラスチック成形体用基材を得ることもできる。多層抄きが可能な抄紙機としては、傾斜ワイヤーを複数備えた抄紙機、円網ワイヤーを複数備えた抄紙機、或いは傾斜ワイヤーと円網ワイヤーの双方を複数備えた、いわゆるコンビネーション型抄紙機が例示される。」 「【0091】 (塗装層を有する繊維強化プラスチック成形体) 本発明は、塗装層を有する繊維強化プラスチック成形体に関するものであってもよい。具体的には、上述した繊維強化プラスチック成形体の表面層の一方の面側であって、コア層が設けられている面側とは反対側に塗装層を有する繊維強化プラスチック成形体であってもよい。このような、塗装層を有する繊維強化プラスチック成形体は、難燃性が高いことに加え、意匠性に優れているため、上述したような用途に好ましく用いられる。」 イ 甲1発明 上記アに示した事項を総合すると、甲1には、以下の「甲1発明」が記載されている。 「コア層用不織布と、表面層用シートとを有し、 前記コア層用不織布は、強化繊維と熱可塑性樹脂繊維とを含み、 強化繊維は、炭素繊維であり、 湿式抄紙法によってコア層用不織布を形成し、 表面層用シートは、ポリオレフィン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド及びナイロンから選択される少なくとも1種を含み、 表面層用シートは、コア層用不織布の両方の表面上に積層され、 表面層用シートの一方の面側であって、コア層用不織布が設けられている面側とは反対側に塗装層を有する繊維強化プラスチック成形体。」 (2)判断 ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲1発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。 ・甲1発明の「強化繊維と熱可塑性樹脂繊維とを含み」、「強化繊維は、炭素繊維であり」、「湿式抄紙法によって」形成される「コア層用不織布」は、本件発明1の「炭素繊維と熱可塑性樹脂繊維を含有し、湿式抄紙法により形成されてなる炭素繊維不織布」に相当する。 ・甲1発明の「ポリオレフィン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド及びナイロンから選択される少なくとも1種を含」む「表面層用シート」は、ポリオレフィン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド及びナイロンが熱可塑性樹脂であるから、本件発明1の「熱可塑性樹脂シート」に相当する。 ・甲1発明の「表面層用シート」が「コア層用不織布の両方の表面上に積層され」る「繊維強化プラスチック成形体」は、本件発明1の「炭素繊維不織布と、熱可塑性樹脂シートとを積層した積層体の少なくとも最上部と最下部に熱可塑性樹脂シートを使用した複合体」に相当する。 ・甲1発明の「表面層用シートの一方の面側であって、コア層用不織布が設けられている面側とは反対側に塗装層を有する」ことは、本件発明1の「複合体表面に塗膜を有する」ことに相当する。 したがって、両者は、「炭素繊維と熱可塑性樹脂繊維を含有し、湿式抄紙法により形成されてなる炭素繊維不織布と、熱可塑性樹脂シートとを積層した積層体の少なくとも最上部と最下部に熱可塑性樹脂シートを使用した複合体であり、複合体表面に塗膜を有する炭素繊維不織布複合体。」の点で一致し、次の点で相違している。 【相違点】 本件発明1は、「複合体表面の粗さ曲線から求められる算術平均高さ(Ra)が1.0μm以下であり、かつ輪郭曲線要素の平均長さ(RSm)が200μm以下であ」るのに対して、甲1発明は、複合体表面の粗さ曲線から求められる算術平均高さ(Ra)及び輪郭曲線要素の平均長さ(RSm)が明らかでない点。 (イ)相違点の判断 本件発明1は、「複合体表面の粗さ曲線から求められる算術平均高さ(Ra)が1.0μm以下であり、かつ輪郭曲線要素の平均長さ(RSm)が200μm以下であ」ることで、表面性が良好で、剥離個数が少なく、塗膜の密着性に優れた炭素繊維不織布複合体を得ることができるという顕著な効果を奏するものである(【0069】、【0073】、【0074】)。 これに対し、甲2~8には、上記相違点に係る本件発明1の特定事項及び効果について、記載も示唆もされていない。甲2(【0023】、【0024】)には、繊維強化プラスチック成形品表面の算術平均粗さが小さいと、パールクリア塗装のような加飾加工を施した場合にも成形品表面の微少な凹凸が現れにくく良好な表面外観を備えた外観品位を得ることができることが記載されているものの、「輪郭曲線要素の平均長さ(RSm)」を小さくすることについても、塗膜が剥離しにくく塗膜の密着性に優れるという効果についても、記載も示唆もされていない。甲3~5、7及び8についても同様のことがいえる。 また、甲6には、「最大谷深さPvが0.1μm以上であり、かつ輪郭曲線要素の平均長さRSmが10μm以下であれば、基材フィルムの表面の凹凸によって、硬化層との十分な密着性が得られる。」([0020])との記載があるが、甲6に記載されたものは、透明フィルムに関するものであって、塗装適性に優れる繊維強化プラスチック成形体に関する甲1発明とは技術分野が異なり、甲1発明に適用する動機付けも存在しない。 したがって、本件発明1は、甲1発明及び甲2~8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件発明2及び3について 本件発明2及び3は、直接的あるいは間接的に本件発明1を引用するものである。そうすると、本件発明1に特定事項を付加し、限定した本件発明2及び3は、上記アに示したように、甲1発明及び甲2~8に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)以上のとおりであるから、本件発明1~3は、甲1に記載された発明及び甲2~8に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでなく、特許法第29第2項の規定に違反して特許されたものでないから、同法第113条第2号の規定に基づき取り消すことはできない。 第5 むすび したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700755

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  • 2025-700921異議申立 / 2026-06-29 / 維持化粧材及び該表面保護層形成用樹脂組成物
    共通の審決分類: 121・B32B、536・B32B、537・B32B
  • 2025-700885異議申立 / 2026-06-09 / 訂正認容金属調加飾シート及びこれを備える金属調加飾成形体
    共通の審決分類: 121・B32B、536・B32B、537・B32B
  • 2025-700024異議申立 / 2026-05-21 / 訂正認容化粧シート、化粧材及び樹脂組成物
    共通の審決分類: 121・B32B、536・B32B、537・B32B

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