特許異議申立
2022-700682
包装容器
- 審判番号
- 2022-700682
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-090190
- 登録番号
- 7003831
- 請求日
- 2022年07月20日
- 審決日
- 2023年03月08日
- 公報発行日
- 2023年06月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】王子ホールディングス株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
- 【異議申立人】松島 美智子
- 審判長/審判官
- 審判長 藤原 直欣
- 審判官 石田 智樹
- 審判官 稲葉 大紀
- 分類
- P1651.113-YAA(B65D) / P1651.121-YAA(B65D) / P1651.537-YAA(B65D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7003831号発明「包装容器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7003831号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1について訂正することを認める。
特許第7003831号の請求項1に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7003831号(以下「本件特許」という。)の請求項1に係る特許についての出願は、平成30年5月8日の出願であって、令和4年1月6日にその特許権の設定登録がされ、令和4年1月21日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立て以降の経緯は、次のとおりである。
令和4年 7月20日 :特許異議申立人松島美智子(以下「申立人」 という。)による本件特許に対する特許異議 の申立て
同 年10月21日付け:取消理由通知書
同 年12月21日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和5年 2月 1日 :申立人による意見書の提出
第2 本件訂正
1 本件訂正の内容
訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)により、特許権者が求める訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、以下のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の
「前記側壁の上部には、前後方向に延びている封止用罫線が形成され、
前記封止用罫線の前後の端部は、前記側壁の上縁部の前後の端部に接続されており、
前記封止用罫線は、前後の端部から中央部に向かうに連れて下方に突出している」との記載を、
「前記側壁の上部には、前後方向に延びている線状の溝である第一封止用罫線が形成され、
前記第一封止用罫線の前後の端部は、前記側壁の上縁部の前後の端部に接続されており、
前記第一封止用罫線は、前後の端部から中央部に向かうに連れて下方に突出し、
前記側壁の上部および前記側板の前後方向の中央部には、上下方向に延びている線状の溝である第二封止用罫線が形成され、開封後に前記両シール部を閉じた状態で、前記両シール部を下方に押し下げたときに、前記頂部および前記本体部が前記第一封止用罫線および前記第二封止用罫線において折れ曲がり、前後の前記傾斜板が前記本体部の上端部に押し込まれる」と訂正する。
2 一群の請求項について
本件訂正は、一群の請求項について請求されたものである。
3 本件訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否
訂正前の請求項1に記載された「封止用罫線」を「線状の溝である第一封止用罫線」であると限定し、第一封止用罫線に加えて、「前記側壁の上部および前記側板の前後方向の中央部には、上下方向に延びている線状の溝である第二封止用罫線が形成され」ることを限定し、さらに包装容器の開封後の態様として、「開封後に前記両シール部を閉じた状態で、前記両シール部を下方に押し下げたときに、前記頂部および前記本体部が前記第一封止用罫線および前記第二封止用罫線において折れ曲がり、前後の前記傾斜板が前記本体部の上端部に押し込まれる」ことを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正前の請求項1に記載された「封止用罫線」を「線状の溝である第一封止用罫線」であると限定する点については、願書に最初に添付した明細書には、
「【0021】
本実施形態の包装容器1では、側壁14に第一封止用罫線L10が形成され、側板22および側壁14に第二封止用罫線L20が形成され、傾斜板21に第三封止用罫線L30が形成されている。
包装容器1の各罫線は、包装容器1のシートの外面を押し込んで形成された線状の溝(押罫)である。本実施形態では、罫線の深さが0.05mmから0.2mmの間に設定されている。」
と記載されており、第一封止用罫線に加えて、「前記側壁の上部および前記側板の前後方向の中央部には、上下方向に延びている線状の溝である第二封止用罫線が形成され」ることを限定する点については、上記【0021】に加えて、
「【0026】
第二封止用罫線L20は、側板22および側壁14の前後方向の中央部に形成されている。第二封止用罫線L20は、側壁14の上縁部(罫線L2)に直交して上下方向に延びている。第二封止用罫線L20は、側板22の上縁部から下縁部に亘って形成されるとともに、側板22から罫線L2を越えて側壁14の上部に形成されている。・・・」(「・・・」は摘記の省略を示す。以下同様。)
と記載されており、包装容器の開封後の態様として、「開封後に前記両シール部を閉じた状態で、前記両シール部を下方に押し下げたときに、前記頂部および前記本体部が前記第一封止用罫線および前記第二封止用罫線において折れ曲がり、前後の前記傾斜板が前記本体部の上端部に押し込まれる」ことを限定する点については、
「【0010】
本発明の包装容器では、開封後に両シール部を閉じた状態で、両シール部を下方に押し下げて、前後の傾斜板を本体部の上端部に押し込むと、シール部同士が圧接される。このとき、頂部や本体部が封止用罫線において折れ曲がることで、前後の傾斜板を容易に押し込むことができるとともに、両傾斜板が元の位置に戻り難くなる。・・・」
「【0030】
また、両シール部30,30を下方に押し下げると、側壁14の上部の折り込み片14aは側壁14に対して第一封止用罫線L10から内側に折れ曲がる。
また、折り込み片14aおよび側板22は、第二封止用罫線L20において谷折りに折り曲げられ、本体部10の内側に窪んだ状態となる。
また、側壁14において、第一封止用罫線L10よりも下側の部位は、第二封止用罫線L20において山折りに折り曲げられ、側壁14が外側に膨らんだ状態となる。・・・
【0031】
このように、頂部20や本体部10が各封止用罫線L10,L20,L30において折れ曲がることで、前後の傾斜板21,21を本体部10に対して容易に押し込むことができる。・・・」
と記載されているから、訂正事項1は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の事項である。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)小括
上記のとおり、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、並びに、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1について訂正することを認める。
第3 本件訂正後の本件発明
上記第2のとおり本件訂正が認められたことから、本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるものである。
「【請求項1】
有底筒状の本体部と、
前記本体部の上縁部に連設された切妻屋根型の頂部と、を備え、
前記頂部には、
前記本体部の前後の端壁に連設された前後一対の傾斜板と、
前記本体部の左右の側壁に連設され、内側に折り込まれた左右一対の側板と、
前記傾斜板の上縁部および前記側板の上縁部に連設された前後一対の帯状のシール部と、が形成されており、
前記側壁の上部には、前後方向に延びている線状の溝である第一封止用罫線が形成され、
前記第一封止用罫線の前後の端部は、前記側壁の上縁部の前後の端部に接続されており、
前記第一封止用罫線は、前後の端部から中央部に向かうに連れて下方に突出し、
前記側壁の上部および前記側板の前後方向の中央部には、上下方向に延びている線状の溝である第二封止用罫線が形成され、開封後に前記両シール部を閉じた状態で、前記両シール部を下方に押し下げたときに、前記頂部および前記本体部が前記第一封止用罫線および前記第二封止用罫線において折れ曲がり、前後の前記傾斜板が前記本体部の上端部に押し込まれることを特徴とする包装容器。」
第4 取消理由通知の概要
理由1(サポート要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
請求項1の「封止用罫線」に含まれ得る単なる描かれた線では、前後の傾斜板を容易に押し込むことができず、かつ、開封後に頂部の注ぎ口をしっかりと閉じることができないことから、請求項1には、発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えることとなる。
理由2(明確性)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
請求項1には、「前記側壁の上部には、前後方向に延びている封止用罫線が形成され、」と記載されているが、「封止用罫線」が、包装容器の開封前の製造時の包装容器を封止することを目的とする罫線(例えば、従来の切妻屋根型の頂部を有する包装容器の製造時に、包装材料を折り畳み、組み立てるための包装材料の折り曲げ線は、切妻屋根型の頂部のシール部を封止するための罫線であるといえる。)なのか、包装容器の開封後の封止を目的とする罫線なのかが明確でない。
理由3(新規性)
本件発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、その発明に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
理由4(進歩性)
本件発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、その発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
記
引用文献1:実願平4-48211号(実開平6-1219号)のCD-ROM
第5 取消理由についての当審の判断
1 理由1(サポート要件)について
本件特許の発明の詳細な説明には、本件発明の課題として「開封後に頂部の注ぎ口を容易にしっかりと閉じることができる包装容器を提供すること」(【0006】)が記載されており、課題を解決するための手段として「頂部や本体部が封止用罫線において折れ曲がることで、前後の傾斜板を容易に押し込むことができる」(【0010】)と記載されている。
本件発明が、「前記側壁の上部には、前後方向に延びている線状の溝である第一封止用罫線が形成され」ていることから、封止用罫線において折れ曲がることで、前後の傾斜板を容易に押し込むことができ、開封後に頂部の注ぎ口を容易にしっかりと閉じることができる包装容器を提供することができることから、本件発明には、発明の課題を解決するための手段が反映されているといえる。
よって、本件発明は、発明の詳細な説明に記載されたものである。
2 理由2(明確性)について
本件発明は、「開封後に前記両シール部を閉じた状態で、前記両シール部を下方に押し下げたときに、前記頂部および前記本体部が前記第一封止用罫線および前記第二封止用罫線において折れ曲がり、前後の前記傾斜板が前記本体部の上端部に押し込まれる」ことが特定されており、開封後に、第一及び第二封止用罫線は、包装容器の開封後の封止を目的とする罫線であることが把握でき、発明は明確である。
3 理由3、4(新規性、進歩性)について
(1)引用文献1及び引用発明
ア 引用文献1には、次の事項が記載されている。下線は当審が付した。以下同様。
「 【0002】
【従来の技術】
従来のこの種の一般的な紙容器は、例えば図4に示す如く、前板1,後板2,両側板3,該前板1及び後板2の上下端に連設された蓋板4及び底板5,2本の斜折罫線6を有する折込耳板7及び貼着片8等を夫々順に連設したブランク板9より構成されていた。
【考案が解決しようとする課題】
然るに、前述の図4に示すブランク板9を折り曲げて図5に示すような切妻型の紙容器を構成した場合には、2本の斜折罫線6を介して三角形状に折り畳まれかつ切妻部に折り込まれた折込耳板7と、屋根状に両側に傾斜して形成された蓋板4とは夫々相互に遊離してしまっていた。
従って、多数の紙容器を積層して保管或いは搬送する場合には、紙容器の切妻部が上方からの外圧に弱く、強い圧力がかかった場合にはこの切妻部が押しつぶされ易い等の問題があった。」
「 【0007】
【作用】
本考案に係る液体紙容器は、上述の如く、切妻型液体紙容器に於いて、上方折込耳板の2本の斜折罫線を夫々外方に円孤上に突出した斜円孤折罫線で形成したので、この上方折込耳板を三角形状に折り畳んだ際に、上方折込耳板の両側の稜線を外方に円孤上に突出させることが出来る。」
「 【0010】
図2に於いて、10は本考案に係る液体紙容器のブランク板であって、折罫線を介して、前板11,両側板12,後板13,蓋板14,底板15,2本の斜円孤折罫線16と水平円孤折罫線17とを有する上方折込耳板18aと、2本の斜折罫線19を有する下方折込耳板18bと、貼着片20とより形成されている。
【0011】
上記ブランク板10は、2本の斜円孤折罫線16と水平円孤折罫線17とを有する上方折込耳板18aが、両側板12の上端に連設されている以外は、前述の図4に示す従来の紙容器のブランク板9と全く同一であるので、その他の詳細については説明を省略する。
上述の構造を有するブランク板10は、図1及び図3に示す如く、折り畳み組み立てることによって紙容器を構成することが出来る。
【0012】
特に、本考案のブランク板10では、上方折込耳板18aに2本の外方に円孤状に突出した斜円孤折罫線16が設けられているので、上方折込耳板18aを三角形状に折り畳むと、上方折込板18aの両側の稜線を自動的に外方に円孤状に突出した稜線に形成することが出来る。」
「【図1】
[図:0001398273000001.jpg]
【図2】
[図:0001398273000002.jpg]
【図3】
[図:0001398273000003.jpg]
」
イ 【0010】、【0012】と図1~3より、切妻型液体紙容器は、有底筒状の本体部と、本体部の上縁部に連設された切妻型の頂部を備えており、当該頂部には、前板11及び後板13に連設された蓋板14,14と、両側板12,12に連設され、折り畳まれた上方折込耳板18a,18aと、蓋板14,14の上縁部および上方折込耳板18a,18aの上縁部に連設された貼着片20,20が形成されていることが看取できる。
【0010】と図1~3より、両側板12の上部には、前後方向に延びている水平円孤折罫線17が形成され、水平円孤折罫線17の前後の端部は、両側板12の上縁部の前後の端部に接続されており、水平円孤折罫線17は、前後の端部から中央部に向かうに連れて下方に突出していることが看取できる。
【0011】と図1~3より、ブランク板10を水平円孤折罫線17に沿って折り畳み組み立てることにより、紙容器の切妻型の頂部を構成することから、水平円孤折罫線17は切妻型の頂部のシール部を封止するための罫線であるといえる。
ウ 上記記載事項を総合すると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
<引用発明>
「有底筒状の本体部と、
本体部の上縁部に連設された切妻型の頂部とを備え、
前記頂部には、
当該頂部には、前板11及び後板13に連設された蓋板14,14と、
両側板12,12に連設され、折り畳まれた上方折込耳板18a,18aと、
蓋板14,14の上縁部および上方折込耳板18a,18aの上縁部に連設された貼着片20,20が形成されており、
両側板12の上部には、前後方向に延びている水平円孤折罫線17が形成され、
水平円孤折罫線17の前後の端部は、両側板12の上縁部の前後の端部に接続されており、
水平円孤折罫線17は、前後の端部から中央部に向かうに連れて下方に突出しており、
水平円孤折罫線17は封止をするための罫線である、切妻型液体紙容器。」
(2)対比
引用発明の「有底筒状の本体部」は本件発明の「有底筒状の本体部」に相当し、以下同様に、「切妻型の頂部」は「切妻屋根型の頂部」に、「前板11」は「前」の「端壁」に、「両側板12,12」は「左右一対の側壁」に、「後板13」は「後」の「端壁」に、「蓋板14,14」は「前後一対の傾斜板」に、「上方折込耳板18a,18a」は「左右一対の側板」に、「貼着片20,20」は「前後一対の帯状のシール部」にそれぞれ相当する。
引用発明の「封止をするための罫線である」「水平円孤折罫線17」は、「折り曲げ可能な第一封止用罫線」である限りにおいて、本件発明の「線状の溝である第一封止用罫線」に一致する。
引用発明の「両側板12の上部には、前後方向に延びている水平円孤折罫線17が形成され、水平円孤折罫線17の前後の端部は、両側板12の上縁部の前後の端部に接続されており、水平円孤折罫線17は、前後の端部から中央部に向かうに連れて下方に突出して」いる態様は、本件発明の「前記側壁の上部には、前後方向に延びている線状の溝である第一封止用罫線が形成され、前記第一封止用罫線の前後の端部は、前記側壁の上縁部の前後の端部に接続されており、前記第一封止用罫線は、前後の端部から中央部に向かうに連れて下方に突出している」態様に相当する。
以上を踏まえると、本件発明と引用発明とは、以下の一致点で一致し、相違点1~3で相違する。
<一致点>
「有底筒状の本体部と、
前記本体部の上縁部に連設された切妻屋根型の頂部と、を備え、
前記頂部には、
前記本体部の前後の端壁に連設された前後一対の傾斜板と、
前記本体部の左右の側壁に連設され、内側に折り込まれた左右一対の側板と、
前記傾斜板の上縁部および前記側板の上縁部に連設された前後一対の帯状のシール部と、が形成されており、
前記側壁の上部には、前後方向に延びている折り曲げ可能な第一封止用罫線が形成され、
前記第一封止用罫線の前後の端部は、前記側壁の上縁部の前後の端部に接続されており、
前記第一封止用罫線は、前後の端部から中央部に向かうに連れて下方に突出している包装容器。」
<相違点1>
第一封止用罫線について、本願発明では、「線状の溝である」のに対して、引用発明では、水平円孤折罫線17は折罫線ではあるものの、「線状の溝である」ことが特定されていない点。
<相違点2>
第二封止用罫線について、本願発明は、「前記側壁の上部および前記側板の前後方向の中央部には、上下方向に延びている線状の溝である第二封止用罫線が形成され」ているのに対して、引用発明は、そのような封止用罫線を有しない点。
<相違点3>
開封後の態様について、本願発明は、「開封後に前記両シール部を閉じた状態で、前記両シール部を下方に押し下げたときに、前記頂部および前記本体部が前記第一封止用罫線および前記第二封止用罫線において折れ曲がり、前後の前記傾斜板が前記本体部の上端部に押し込まれる」のに対して、引用文献には、そのような態様が記載されていない点。
(3)理由3(新規性)についての判断
事案に鑑み、まず相違点2について検討する。
上記相違点2は実質的なものである。
よって、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明は引用発明ではない。
(4)理由4(進歩性)についての判断
引き続き相違点2について検討する。
引用文献1には、「前記側壁の上部および前記側板の前後方向の中央部には、上下方向に延びている線状の溝である第二封止用罫線」について記載も示唆もされていない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明は、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第6 取消理由通知で採用しなかった特許異議申立理由について
1 甲1を主引用例とした新規性及び進歩性に係る申立理由について
申立人は、申立書及び意見書において、甲1の開口補助罫線bは本件請求項1の封止用罫線に該当するとして、本件発明は、甲1に記載された発明であるから進歩性を有せず、または甲1に記載された発明に基づき進歩性を有しないと主張する(申立書の第5ページ第1行~第7ページ第14行、令和5年2月1日に提出された申立人による意見書の第4ページ第3行~第5ページ第2行)。
しかし、甲1の【0005】には、「頂部分の開口がし易いゲーブルトップ型紙容器を提供すること」を課題として、開口補助罫線bを設けることで、「折り曲げ線を押すことにより、折り曲げ線と開口補助罫線に挟まれた側板は凹んで、折り込み片と折り込み片の両側に設けられた折り返し片で形成される空洞部は広くなり、空洞部に指が入り易くなる」(同【0007】)ことが記載されているものの、開口補助罫線bを「封止用」とすることは記載も示唆もされておらず、同構成とすることの動機付けもない。
また、甲1には、本件発明の「前記側壁の上部には、前後方向に延びている線状の溝である第一封止用罫線が形成され、
前記第一封止用罫線の前後の端部は、前記側壁の上縁部の前後の端部に接続されており、
前記第一封止用罫線は、前後の端部から中央部に向かうに連れて下方に突出し、
前記側壁の上部および前記側板の前後方向の中央部には、上下方向に延びている線状の溝である第二封止用罫線が形成され、開封後に前記両シール部を閉じた状態で、前記両シール部を下方に押し下げたときに、前記頂部および前記本体部が前記第一封止用罫線および前記第二封止用罫線において折れ曲がり、前後の前記傾斜板が前記本体部の上端部に押し込まれる」という構成について、記載も示唆もない。
したがって、本件発明は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に想到し得たことではない。
よって、上記申立人の上記主張は採用できない。
2 明確性に係る申立理由について
申立人は、申立書において、「「前記側壁の上部には、前後方向に延びている封止用罫線が形成され、」における「前記側壁」は、「前記本体部の左右の両方の側壁」を指すのか、あるいは「前記本体部の左右の何れか一方の側壁」を指すのか明確に把握することができない。」とし、「前記側壁」が「前記本体部の左右の何れか一方の側壁」である場合は、本件発明の作用効果が生じないと主張する(申立書の第7ページ第15行~第8ページ第16行)。
しかし、本件発明において、「前記側壁の上部には、前後方向に延びている封止用罫線が形成され」ることは明確であり、封止用罫線が、「前記本体部の左右の両方の側壁」に形成されるか「前記本体部の左右の何れか一方の側壁」に形成されるかに関わらず、「開封後に両シール部を閉じた状態で、両シール部を下方に押し下げて、前後の傾斜板を本体部の上端部に押し込むと、シール部同士が圧接される。このとき、頂部や本体部が封止用罫線において折れ曲がることで、前後の傾斜板を容易に押し込むことができるとともに、両傾斜板が元の位置に戻り難くなる」(本件特許の明細書の【0010】)から、本件発明は明確である。
よって、上記申立人の上記主張は採用できない。
第7 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。また、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700682