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特許異議申立

2022-700673

改善された両親媒性種を使用する多孔質炭素材料の調製方法

審判番号
2022-700673
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-521330外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
7002650
請求日
2022年07月19日
審決日
2023年07月11日
公報発行日
2023年10月27日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1652.113-YAA(C01B) / P1652.121-YAA(C01B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条特許法113条2号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7002650号発明「改善された両親媒性種を使用する多孔質炭素材料の調製方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7002650号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔13-15〕について訂正することを認める。 特許第7002650号の請求項13に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7002650号の請求項1~15に係る特許についての出願は、2018年(平成30年)10月26日を国際出願日(優先権主張外国庁受理 2017年(平成29年)10月27日 (EP)欧州特許庁)とする国際出願であり、令和4年1月4日にその特許権の設定登録がされ、同年同月20日に特許掲載公報が発行され、その後、同年7月19日に、その請求項13に係る特許を対象として特許異議申立人前田洋志(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、同年10月25日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である令和5年1月26日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求があり、これに対し、同年3月16日に異議申立人より意見書の提出がなされたものである。 第2 訂正の適否 1 訂正事項 上記令和5年1月26日にされた訂正の請求(以下、その訂正を「本件訂正」という。)は、本件特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項13~15について訂正することを求めるものであって、その具体的な訂正事項は次のとおりである。 ・訂正事項 特許請求の範囲の請求項13に「以下の特徴のうちの少なくとも2つを有する多孔質炭素材料。 a. 10nm~10,000nmの範囲の直径を有する細孔について、0.4~2cm3/gの範囲の総細孔容積 b. 25~800m2/gの範囲のBET全 c. 0~650m2/gの範囲のBETミクロ d. 1.9~2.1g/cm3の範囲の骨格密度 e. 500nm~100μmの範囲の、一次粒子直径についてのd50」とあるのを、「以下の特徴のうちの少なくとも4つを有する多孔質炭素材料。 a. 10nm~10,000nmの範囲の直径を有する細孔について、0.4~2cm3/gの範囲の総細孔容積 b. 25~800m2/gの範囲のBET全 c. 5~650m2/gの範囲のBETミクロ d. 1.9~2.1g/cm3の範囲の骨格密度 e. 500nm~100μmの範囲の、一次粒子直径についてのd50」に訂正する。 (請求項13を引用する請求項14、15についても同様に訂正する。) 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 ア 上記訂正事項は、多孔質炭素材料が有する特徴をa~eのうち「少なくとも2つ」としていたのを、「少なくとも4つ」にすること(以下、「訂正事項1」とする。)と、多孔質炭素材料が有する特徴であるc.の「BETミクロ」の範囲を、「0~650m2/g」としていたのを「5~650m2/g」にすること(以下、「訂正事項2」とする。)を含むものである。 そして、上記訂正事項1によって、多孔質炭素材料が、a~eの特徴のうちより多くの特徴によって限定されることになるから、上記訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項2は、「BETミクロ」の範囲を「0~650m2/g」から「5~650m2/g」に狭めるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 訂正事項1について、多孔質炭素材料が有する特徴であるa~eのうち「少なくとも4つ」の場合が、「少なくとも2つ」の場合に含まれることは明らかであると共に、本件明細書の【0215】~【0219】に記載される本件発明の多孔質炭素材料に関する実施例において、その物性を示した【表4】及び【表5】によれば、細孔容積[cm3/g]、BET全[m2/g]、BETミクロ[m2/g]及び骨格密度[g/cm3]のa~dの4つの特徴において、訂正後の請求項13のa~dの範囲を満たすものも記載されているから、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 また、訂正事項2は、同【0042】の「c.0~650m2/gの範囲、好ましくは5~600m2/gの範囲、より10~550m2/gの範囲のBETミクロ、」との記載に基づいて、BETミクロの範囲の下限を5m2/gとしたものであるから、訂正事項2も、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 ウ 訂正事項1及び2は、上記アで述べたように、それぞれ、多孔質炭素材料をa~eの特徴のうちより多くの特徴によって限定するもの、及び「BETミクロ」の範囲をより狭めるものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 独立特許要件について 訂正事項は、請求項13を引用する請求項14、15についても同様に訂正するものであるから、訂正事項による請求項14、15に係る訂正は、請求項13に係る訂正と同様に、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。そして、これらの請求項は、特許異議の申立ての対象となっていない請求項であるから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合する(特許出願の際独立して特許を受けることができるものである)必要がある。 そこで検討するに、請求項14及び15に係る発明は、請求項11~13を引用し、これらの請求項に記載される発明特定事項を全て含み、請求項11~13に係る発明をさらに限定するものであるところ、訂正後の請求項13に係る発明は、後記第5の3で述べるとおり、特許法第29条第1項及び第2項の規定に違反するものではなく、本件訂正に起因する記載不備も認められないから、訂正後の請求項13を引用する場合、請求項14及び15に係る発明は、特許を受けることができないものではない。また、請求項11及び12(申立の対象外)を引用する場合、請求項14及び15に係る発明が特許を受けることができないとする理由や証拠は見当たらない。 そうすると、請求項14及び15に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであり、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合する。 4 訂正についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において読み替えて準用する同法第126条第5項から第7項までの規定に適合するものである。 よって、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔13~15〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 本件特許異議申立ての対象となる請求項13に係る発明(以下、請求項13に係る発明及び特許を、それぞれ「本件発明」及び「本件特許」などという。)は、訂正特許請求の範囲の請求項13に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項13】 以下の特徴のうちの少なくとも4つを有する多孔質炭素材料。 a. 10nm~10,000nmの範囲の直径を有する細孔について、0.4~2cm3/gの範囲の総細孔容積 b. 25~800m2/gの範囲のBET全 c. 5~650m2/gの範囲のBETミクロ d. 1.9~2.1g/cm3の範囲の骨格密度 e. 500nm~100μmの範囲の、一次粒子直径についてのd50」 (以下、aの「10nm~10,000nmの範囲の直径を有する細孔についての総細孔容積」、bの「BET全」、cの「BETミクロ」、dの「骨格密度」及びeの「一次粒子直径についてのd50」の特徴を、それぞれ、単にaの特徴、bの特徴、cの特徴、dの特徴及びeの特徴ということがある。) 第4 令和4年10月25日付けで通知した取消理由の概要 1 特許法第29条第1項第3号所定の規定違反(新規性欠如)(取消理由1) 訂正前の請求項13に係る発明は、下記甲第1号証~甲第5号証にそれぞれ記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、その特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。 2 特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)(取消理由2) 訂正前の請求項13に係る発明は、下記甲第1号証~甲第5号証にそれぞれ記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 なお、上記取消理由は、特許異議申立てで申し立てられた理由及び証拠をすべて採用しているところ、令和5年3月16日に提出された異議申立人からの意見書に添付して下記の参考資料1が提出されている。 記 甲第1号証:特開2016-28008号公報 甲第2号証:特表2015-516373号公報 甲第3号証:特表2014-522355号公報 甲第4号証:特開2017-135187号公報 甲第5号証:特表2017-519053号公報 参考資料1:国際公開第2015/152088号 (以下、甲第1号証を略して、「甲1」などという。) 第5 当審の判断 1 甲1~甲5に記載の事項 (1)甲1に記載の事項 ア 「【請求項1】 以下の方法段階 (a) 互いに接続されている孔を有する、無機材料のマトリックス製のモノリス状テンプレートを製造する段階、 (b) 該テンプレートの孔に、炭素または炭素前駆体物質を浸透させて、マトリックス材料で取り囲まれた炭素含有グリーン体骨格を形成する段階、および (c) 該グリーン体骨格をか焼して、多孔質炭素製品を形成する段階 を含む多孔質炭素製品の製造方法であって、テンプレートの製造がスート堆積プロセスを含み、その際、マトリックス材料の加水分解性または酸化性の出発化合物を反応ゾーンに供給し、該反応ゾーン内で、加水分解または熱分解によってマトリックス材料粒子に変換し、該マトリックス材料粒子をアグロメレート化またはアグリゲート化し、且つ、テンプレートに成形することを特徴とする、製造方法。 ・・・ 【請求項12】 多孔質の炭素薄片の形で存在することを特徴とする、階層的な孔構造を有する多孔質炭素を含有する炭素製品。」 イ 「【発明が解決しようとする課題】 【0019】 本発明は、多孔質炭素製の製品の安価な製造を可能にする方法を提供するという課題に基づいている。 【0020】 さらには、本発明は、階層的な孔構造を有し、且つ、リチウムイオン電池の電極における使用の際の高い急速充電能力の点において際立っている、多孔質の炭素製の製品を示すという課題に基づいている。 【0021】 さらには、本発明は、テンプレートとして使用するためのマトリックス材料を示すという課題に基づいている。」 ウ 「【0071】 図3および4によるスート体のSEM写真は、多数の結びついた孔および種々の大きさの中空室を有する骨格構造を示す。図4から、殊に明らかに、骨格構造が個々の球状且つ互いに合体したSiO2二次粒子から構成されていることが識別可能である。これは、大きな中空室からチャネル状に張りめぐらされている、華奢な寸断された表面を形成する。BET法(DIN ISO 9277、2003年5月)によって内部の比表面積を測定すると、測定値20m2/g程度である。 【0072】 該スート体は、多孔質炭素製造のためのテンプレートとして使用される。このために、スート体を、メソフェーズピッチのTHF溶液の浸漬浴に入れる。浸透された材料を引き続き乾燥させる。この浸透および乾燥段階を、特記すべき空孔容積がもはや残らなくなるまで繰り返す。 【0073】 スート体および乾燥されたピッチ層からそのように得られたグリーン体骨格を、窒素中での加熱によってか焼する。それにより、比表面積(BETによる)約100m2/gを有する、石英ガラスおよび炭素製の骨格状の複合構造が形成される。SiO2スート体に対する比表面積の上昇は、炭素占有物の微細構造に起因するかもしれない。 【0074】 SiO2マトリックス材料の除去を、浸透されたスート体をフッ酸浴中に入れることによって行う。SiO2骨格をエッチング除去した後、そのように得られた、多孔質炭素製の成形体を濯ぎ、且つ乾燥させ、真空下、2500℃ほどの温度でのさらなるか焼段階に供して、さらに黒鉛化する。 【0075】 そのように得られた炭素製品は、黒鉛のような層状の造りを有し、且つ、曲げられ且つ容易に圧縮され得る小板状または薄片状の形成物の多数の層から構成される。約50μmの平均厚さを有する個々の紙のような層は、SiO2スート体の元の層構造に起因する。 【0076】 図5のSEM写真は、そのように得られた、多孔質炭素製の成形体の孔構造を示す。これは、元の球面のSiO2二次粒子の反転転写を示しており、且つそのほかに、テンプレートの孔構造に似ている。殊に、それは多数の比較的大きな孔のチャネル(マクロ孔)を有し、そのほかに華奢な寸断された表面構造が張りめぐらされている、階層的な孔構造の点で際立っている。BET法によって内部の比表面積を測定すると、測定値200m2/g程度、従って、炭素および石英ガラス製の複合体の比表面積のほぼ2倍である。 【0077】 図6のグラフは、多孔質炭素の孔径分布を示す。左の縦座標に累積の孔容積Vc[cm3/g]が、右の縦座標に相対孔容積Vr[%]が、孔の直径D[nm]に対してプロットされている。その際、示された測定結果は、水銀ポロシメトリーを用いて得られたことに留意すべきである。該技術は、非ぬれ性液体の水銀を多孔質の系に圧力下で貫入することに基づく。この方法は、孔径分布、孔容積、見かけおよび実際の密度についての信頼性のある情報を、マクロ孔から大きなメソ孔までの範囲でもたらすが、しかし、ナノメートル領域の孔についてはそうではない。 【0078】 多孔質炭素が、5nm~100000nmにわたり、且つ400nm周辺に孔径の最大値を示す、広い孔径分布の点で際立っていることが認識される。そこから算出される内部の比表面積は、約27m2/gである。BET法によって算出された、およそ200m2/gである値とのずれは、内部表面全体に対して最大割合を構成するナノメートル領域の孔が、この測定では検知され得ないからだと説明される。 【0079】 この炭素製品は、充電式リチウムイオン電池の電極製造用の出発材料として使用される。このために、それを粉砕し、且つ分散液に取り込み、且つ、通常の方法を用いて電極に加工する。その際、粒子の小板または薄片の形態、およびその広い孔径分布、並びに階層的な孔構造は、残って保たれている。このことは、リチウムイオン電池の高い急速充電能力のための前提条件である。」 エ 「【図6】 [図:0001402740000001.jpg] 」 (2)甲2に記載の事項 ア 「【請求項1】 全細孔容積の20%~90%が、2nm以下の平均直径を有する細孔から構成され、及び全細孔容積の残りの75%以上が、30nm~500nmの平均直径を有する細孔から構成される、肝疾患の治療又は予防における使用のための多孔性炭素粒子。」 イ 「【0001】 本発明は、直径が2nm以下のマイクロポア、及び直径が30nm~500nmのメソポア/小さなマクロポアを含むが、直径が2nmを超え且つ30nm未満のメソポアを実質上含まず、及び直径が500nmを超える大きなマクロポアを実質上含まない多孔性炭素粒子を使用する、肝疾患の治療又は予防に関する。また、本明細書では、全細孔容積の少なくとも20%が、2~200nmの平均直径を有する細孔から構成される多孔性炭素粒子を使用する肝疾患の治療又は予防が開示される。本発明は、また、このような多孔性炭素粒子を使用する、肝疾患の治療又は予防方法に関する。」 ウ 「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 本発明は、肝疾患の治療又は予防に関する。 【課題を解決するための手段】 【0006】 したがって、本発明は、全細孔容積の20%~90%は、2nm以下の平均直径を有する細孔から構成され、及び残りの全細孔容積の75%以上は、30nm~500nmの平均直径を有する細孔から構成される、肝疾患の治療又は予防における使用のための多孔性炭素粒子を提供する。 【0007】 本発明は、また、有効量のこのような多孔性炭素粒子を投与することを含む、肝疾患の治療又は予防方法を提供する。 【0008】 本発明は、また、肝疾患を治療又は予防するための医薬品の製造における、このような多孔性炭素粒子の使用を提供する。」 エ 「【0012】 本明細書中で使用する場合、用語「マイクロポア」は、窒素吸着法及び水銀ポロシメトリー法で測定した場合に、IUPACにより定義されているように直径が2nm以下の細孔を指す。 【0013】 本明細書中で使用する場合、用語「メソポア」は、窒素吸着法及び水銀ポロシメトリー法で測定した場合に、IUPACにより定義されているように直径が2nmを超え、50nm未満である細孔を指す。 【0014】 本明細書中で使用する場合、用語「マクロポア」は、窒素吸着法及び水銀ポロシメトリー法で測定した場合に、IUPACにより定義されているように直径が50nm以上の細孔を指す。」 オ 「【0024】 本発明で使用するための多孔性炭素粒子において、全細孔容積の20%~90%は、2nm以下の平均直径を有する細孔(マイクロポア)から構成され、残りの全細孔容積(すなわち、2nmを超える平均直径を有する細孔から構成される細孔容積)の75%以上が、30nm~500nmの平均直径を有する細孔(メソポア/小さなマクロポア)から構成される。 【0025】 したがって、多孔性炭素粒子は、細孔径の二峰性分布を有することができ、それによって、全細孔容積は、マイクロポア及び大きなメソポア/小さなマクロポアの範囲に分配され、直径が30nm未満のメソポア又は大きなマクロポアを実質上含まない。平均直径が500nmを超える細孔は粒子の物理的強度を低下させ、及び吸着性の向上をほとんど又は全く提供しないので、大きなマクロポアの存在は、好ましくは最小化される。 【0026】 典型的には、直径が30nm未満のメソポアは、全細孔容積の20%以下、より好ましくは15%以下、さらにより好ましくは10%以下を構成する。典型的には、大きなマクロポアは、全細孔容積の20%以下、より好ましくは15%以下、さらにより好ましくは10%以下を構成する。典型的には、直径が30nm未満のメソポア及び大きなマクロポアは、全体として、全細孔容積の20%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下を構成する。 【0027】 典型的には、全細孔容積の25%~70%、好ましくは35%~60%、より好ましくは45%~55%は、2nm以下の平均直径を有する細孔から構成される。 【0028】 典型的には、残りの全細孔容積の80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上が、30nm~500nm、好ましくは30nm~300nm、より好ましくは50~200nmの平均直径を有する細孔から構成される。」 カ 「【0039】 特に好ましい一実施形態において、本発明中で使用するための多孔性炭素粒子は、下記に示す特性を有する: ・マイクロポアの細孔径 0.5~2nm ・BET表面積 700~2000m2/g、好ましくは1000~1500m2/g ・マイクロポアの細孔容積 0.1~1.1cm3/g、好ましくは0.3~1.0cm3/g ・メソポア/小さなマクロポアの大きさ 30~500nm、好ましくは50~300nm ・メソポア/小さなマクロポアの容積 0.8~2.5cm3/g ・全細孔容積 0.9~3.5cm3/g、好ましくは1.1~2.0cm3/g ・マイクロポアの比率(%容積) 27%~29%。」 キ 「【0050】 好ましくは、多孔性炭素粒子は、2~2000μm、例えば、50~2000μm、200~1600μm、又は100~1000μmの平均直径を有する。適切な粒子は、したがって、例えば、200~600μm、好ましくは250~500μmの平均直径を有することができる。その他の適切な粒子は、1000~2000μm、好ましくは1000~1500μmの平均直径を有することができる。しかし、1000μm以下の平均直径を有する粒子が好ましい。粒径は、レーザー回折を使用して(例えば、Malvern Instruments社のMalvern粒度分布測定装置を使用して)測定することができる。」 ク 「【0059】 生じる樹脂を、不活性雰囲気中で少なくとも600℃の温度まで加熱することによって炭化して、二峰性分布の細孔を有する材料を得ることができ、窒素吸着によって評価した場合、細孔構造は、マイクロポア及びメソポア又はマクロポアを含む。メソポアについての細孔容積の細孔半径の対数に対する微分値(dV/dlogR)は、20~500Åの範囲の細孔径の少なくとも一部の値について0.2を超える。メソポア性炭素は、賦活なしで250~700m2/gのBET表面積を有することができる。その多孔性炭素を、二酸化炭素、蒸気又はこれらの混合物の存在下に高温度で加熱することによって、例えば、それを二酸化炭素中、800℃以上で加熱することによって、賦活することができる。次いで、それは、2000m2/gまでの、さらにより大きな例えば1000~2000m2/gの表面積を有することができる。本明細書中で使用する場合、用語「BET表面積」は、ASTM D1993-91に従い、ASTM D6556-04も参照して、Brunauer,Emmett and Teller(BET)法によって決定される。本発明の目的の場合、二酸化炭素を使用するのが好ましい。」 ケ 「【実施例】 【0141】 <材料及び方法> <炭素材料> [調製例1] 平均分子量が700~800Dの100重量部の工業用ノボラック樹脂(Hexion Specialty Chemicals)のエチレングリコール溶液を90~95℃に加熱し、同温度まで加熱された15~20重量部のヘキサメチレンテトラミン(ヘキサミン)のエチレングリコール溶液と2~5分間徹底的に混合した。生じた澄明溶液を、主要成分が多不飽和(酸化)植物油である工業用乾性油(デニッシュオイル)である0.2~1%(v/v)の分散剤を含む2.5~6倍容の熱い(150~155℃)撹拌された低粘度鉱油(絶縁油又は変圧器油)中に1本の流れの状態で注ぎ入れた。混合物の温度は、135~140℃に降下し、混合物を15~20分かけて150~155℃まで再加熱した。典型的には、硬化は、ほぼ140℃で1~2分以内に起こり、続いてかなりの気体が発生した。15~20分間の150~155℃までのさらなる加熱は、硬化の完結を確実にした。混合物を冷却し、生じたビーズを、濾過又は遠心分離により鉱油から分離した。エチレングリコールを、複数回の熱水抽出によって、又は真空乾燥(120℃、50mmHg)によって樹脂から除去した。上記方法で、ヘキサミン含有量は、国際公開第02/12380号の実施例3に比較して、100重量部のノボラックにつき先に例示された9重量部から15~20重量部まで増加され、樹脂溶液が注ぎ入れられる鉱油の温度は、115~120℃から150~155℃まで高められ、先に例示されたような「緩慢」な硬化よりもむしろ「急速」な硬化が引き起こされる。 【0142】 水洗されて湿った、乾燥された、又は真空乾燥された樹脂ビーズを、熱処理し、炭素材料を作り出した。典型的な方法は、限定はされないが、外界温度から800℃まで3℃/分で上昇する温度での二酸化炭素流中での炭化、粒径による分級、及び選択された画分の二酸化炭素流中での900℃でのさらなる「物理的」賦活から構成された。当技術分野で公知のこの定型的方法の多くの変形形態も適用することができる。これらのサンプルにおける賦活度は、ほぼ30%であった。」 (3)甲3に記載の事項 ア 「【請求項1】 炭素相と、 上記炭素相に配置される一つ以上の細孔相と、を含み、 粒子の炭素相が、上記細孔相とともに、ほぼ共連続で不規則な複数の相領域を形成し、細孔相の隣接する相領域の間の距離が実質的に50nm以下であることを特徴とする粒状多孔質炭素材料。」 イ 「【0001】 本発明は、炭素C相及び細孔相を含む新規な粒状多孔質炭素材料、及び当該材料のリチウム電池における使用方法に関する。また、本発明は、このような炭素材料の製造方法、並びに元素状硫黄及び一種以上の本発明の粒状多孔質炭素材料を含む複合材料に関する。」 ウ 「【発明が解決しようとする課題】 ・・・ 【0015】 本発明の目的は、特にリチウム-硫黄電池用のリチウム電池用正極材料の製造に適しており、従来技術の欠点を解消する電気活物質を提供することである。この電気活物質を用いて製造される正極材料は、一つ以上、特に二つ以上の下記の性質を有するべきである。 【0016】 -高い比容量、 -高サイクル安定性、 -自己放電が低い、 -優れた機械的安定性。 【0017】 さらに、材料は、経済的で且つ、特に再現可能な品質で製造可能であるべきである。 【課題を解決するための手段】 【0018】 上記目的は、驚くべきことに、以下で定義される炭素材料を含む硫黄複合材料により達成されることがわかった。 【0019】 本発明の炭素材料は、炭素相(以下、炭素C相又はC相とも記載する)と、一つ以上の細孔相(以下、細孔相P又はP相とも記載する)と、を含み、粒子の炭素相及びほぼ非整列の共連続相領域である細孔相を形成し、隣接する細孔相の領域の間の距離が、ほぼ、特に50nm以下、好ましくは20nm以下、又は10nm以下、例えば0.5~50nm、好ましくは0.7~20nm、及び特に1~10nmである粒状多孔質炭素材料である。」 エ 「【0036】 本発明の粒状炭素材料は、通常、微細孔を有している。これは、10nm未満、例えば1~5nmの平均孔径d(平均孔半径rの2倍に対応する)を有する細孔であることを意味している。微小孔の比容積、すなわち、炭素材料1gあたりの微小孔の容積は、一般的に0.1cm3/g以上、特に0.2cm3/g以上、特に0.3cm3/g以上、並びに通常、0.1~1.5cm3/g、しばしば0.2~1.2cm3/g、及び特に0.3~1.0cm3/gである。本発明の特定の実施の形態では、炭素材料の1g当たりの微小孔の容積は、0.5~1cm3/gの範囲である。細孔の比容積は、ドイツ工業規格DIN66134で規定された「Barrett, Joyner and Halenda」(BJH窒素吸着)の方法により測定することができる。そして、この比容積は、ここで報告される値の基礎となる(「E.P. Barrett, L.G. Joyner, P.P. Halenda, J. Am. Chem. Soc. 73 (1951) 373」も参照)。 【0037】 微小孔の場合と同様に、本発明の粒状炭素材料は、メソ細孔を有していても良い。これは、5~300nmの範囲、特に10~200nm、又は15~200nmの範囲の平均孔径dを有する細孔であることが理解される。メソ細孔の特定容積、すなわち、炭素材料の1g当たりのメソ細孔の容積は、一般的に0.1cm3/g以上、特に0.2cm3/g又は0.3cm3/gであり、例えば0.1~2.9cm3/gの範囲、特に0.2~2.7cm3/gの範囲、又は0.3~2.5cm3/gの範囲である。メソ細孔の比容積は、BJH窒素吸着法により、ドイツ工業規格DIN66134にしたがいBJH窒素吸着により測定される。 【0038】 本発明の炭素材料の全細孔比容積は、通常、0.3~3cm3/gの範囲、しばしば0.5~2.9cm3/gの範囲、及び特に0.6~2.8cm3/gの範囲であり、この値はドイツ工業規格DIN66134にしたがい測定される。 【0039】 微小孔及び任意のメソ細孔の容積が高いために、本発明の炭素材料は、通常、200~3000m2/gの範囲、しばしば500~3000m2/gの範囲、特に800~1500m2/gの範囲、及び特に900~1400m2/gの範囲の高いBET比表面積を有する。なお、このBET比表面積の測定は、DIN ISO69277において記載されている「Brunauer, Emmett and Teller」の窒素吸着法によって測定される。」 オ 「【0042】 通常、粒子の重量平均粒径は、20nm~50μm、しばしば50nm~50μm、好ましくは200nm~20μm、特に1μm~20μmの範囲である。ここで報告される粒子サイズ及び粒子サイズ分布は、23℃における遠心分離による測定に基づく質量比で判別される粒子径を基礎としている。この測定は、通常、遠心分離を用いた標準的な方法により実行される。」 カ 「【発明を実施するための形態】 ・・・ 【0169】 比表面積及び細孔径分布を、「Barret,Joyner and Halender」法によりドイツ工業規格DIN66134に基づき、窒素吸着・脱着等温線を測定することにより解析した。BET表面積を、窒素吸着を用いてDINISO9277にしたがい測定した。 ・・・ 【0172】 使用した粒状材料は、Aerosil(登録商標)300(一次粒子径7nm)及びAerosil(登録商標)OX50(一次粒子径40nm)のヒュームドシリカであった。 ・・・ 【0174】 実施例1~7:粒状材料を用いた一般的な炭素材料の製造方法 1)表1で示された1gの粒状材料を200mlのジクロロメタンに懸濁した。これに240mgのメタンスルホン酸を添加し、得られた分散液を22℃で15分間攪拌した。次に、溶媒を減圧下で除去した。このようにして得られた固体を200mlのトルエンで溶解させた。これに対して50mlのトルエンに2gの2,2’-スピロビ[4H-1,3,2-ベンゾジオキサシリン]を溶解させた溶液を滴下し、混合物を22℃で15分間攪拌した。続いて、粉末状固体を濾過し、40℃で一定質量になるまで減圧下において乾燥した。 【0175】 2)次に、工程(i)で得られた粉末を、管状炉内で、800℃又は1100℃のアルゴン流により2時間焼成した。このようにして黒色粉末を得た。 【0176】 3)その後、ステップ1で得られた粉体を、40%HF水溶液中で3日間保存した。次に、残りの粉末を濾別し、これを水とエタノールで洗浄し、一定質量となるまで減圧下において40℃で乾燥した。 【0177】 実施例8:粒状材料を使用しない炭素材料の製造のための一般的な方法 1)240mgのメタンスルホン酸を200mlのトルエンに溶解した。これに対して50mlのトルエンに2gの2,2’-スピロビ[4H-1,3,2-ベンゾジオキサシリン]を溶解させた溶液を滴下し、混合物を22℃で15分間攪拌した。続いて、粉末状固体を濾過し、40℃で一定質量になるまで減圧下において乾燥した。 【0178】 2)次に、工程(i)で得られた粉末を、管状炉内で、800℃又は1100℃のアルゴン流により2時間焼成した。このようにして黒色粉末を得た。 【0179】 3)その後、ステップ1で得られた粉体を、40%HF水溶液中で3日間保存した。次に、残りの粉末を濾別し、これを水とエタノールで洗浄し、一定質量となるまで減圧下において40℃で乾燥した。 ・・・ 【0182】 表1は、炭素質材料の製造について示している。 【0183】 【表1】 [図:0001402740000002.jpg] 」 (4)甲4に記載の事項 ア 「【請求項1】 負極集電体と、該負極集電体の片面又は両面にリチウムイオンを吸蔵・放出できる負極活物質を含む負極活物質層とを有し、 前記負極活物質は1次粒子径が0.005μm以上5μm以下の炭素材料であり、 前記負極集電体は、前記負極活物質層との接触面の少なくとも一部に凹部及び凸部から選択される形状を有する非平滑領域を含み、前記非平滑領域中の前記凹部及び凸部から選択される形状の頂点を10個以上含む直線について測定された十点平均粗さRzjisが5μm以上100μm以下であることを特徴とする、非水系リチウム型蓄電素子用の負極。 ・・・ 【請求項3】 前記負極活物質についてBET法により算出した比表面積が100m2/g以上600m2/g以下である、請求項1又は2に記載の負極。」 イ 「【発明が解決しようとする課題】 【0009】 低温において蓄電素子の抵抗が増加する要因としては、非水系電解液のイオン伝導度の低下により、負極活物質層内においてリチウムイオンの拡散抵抗が増大することが考えられる。これを改善するために、本発明者らは、負極活物質として炭素材料を用い、該炭素材料の1次粒子径を小さく調整することにより、低温における出力特性を向上させる技術を提案した(例えば特許文献4)。これは、1次粒子同士が形成する間隙の存在によって負極活物質層内のリチウムイオンの拡散が良好になるとともに、この間隙に十分な非水系電解液を保持できることによると考えられる。 【0010】 一方で、1次粒子径が小さくなることにより、粒子同士の界面が増え、界面における電気抵抗が増大する。また、殆どの炭素材料は、低温になるに伴い電子伝導性が低下する。 そのため、1次粒子径の小さい炭素材料を負極活物質として用いた非水系リチウム型蓄電素子は、低温で、且つ低電圧の領域(負極活物質層における電子密度が低い場合)においては、低温によって電子伝導性が低下して、粒子界面における電子抵抗の影響が顕著になることにより、良好な入力特性を発現することが困難となる。 【0011】 以上の状況に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、低温においても高い入出力特性を示す非水系リチウム型蓄電素子用の負極、及び該負極を用いて成る、低温において高い入出力特性を示す非水系リチウム型蓄電素子を提供することである。 負極活物質層の電子伝導性を向上させる方法として、特許文献2には負極集電体表面に突起を形成する技術が開示されている。また、特許文献3では十点平均粗さRzjisが1.5~7.5μmの凹凸を持つ負極集電体を用いることによって該集電体と活物質層との間の密着性を向上し、負極の内部抵抗を低下させる技術が開示されている。しかし、これらの特許文献では、集電体に凹凸を設けることによる低抵抗化の効果を十分に発揮できる好ましい1次粒子径については、検討されていない。 【課題を解決するための手段】 【0012】 本発明者らは、前記課題を解決すべく研究を進めた。その結果、負極活物質として1次粒子径の小さい炭素材料を用いた場合において、負極集電体に従来よりも大きい凹凸形状を設けることにより、負極活物質層の電子密度が低い低電圧の状態においても電子伝導性を十分に確保することができ、低温における入力特性が顕著に向上することを見出した。そして、この知見に基づいて本発明を完成させた。 すなわち、本発明は以下のとおりである。 【0013】 [1] 負極集電体と、該負極集電体の片面又は両面にリチウムイオンを吸蔵・放出できる負極活物質を含む負極活物質層とを有し、 前記負極活物質は1次粒子径が0.005μm以上5μm以下の炭素材料であり、 前記負極集電体は、前記負極活物質層との接触面の少なくとも一部に凹部及び凸部から選択される形状を有する非平滑領域を含み、前記非平滑領域中の前記凹部及び凸部から選択される形状の頂点を10個以上含む直線について測定された十点平均粗さRzjisが5μm以上100μm以下であることを特徴とする、非水系リチウム型蓄電素子用の負極。」 ウ 「【0033】 リチウムイオンを吸蔵放出できる炭素材料としては、例えば、難黒鉛化性炭素材料;易黒鉛化性炭素材料;カーボンブラック;活性炭;人工黒鉛;天然黒鉛;黒鉛化メソフェーズカーボン小球体;黒鉛ウイスカ;ポリアセン系物質等のアモルファス炭素質材料;石油系のピッチ、石炭系のピッチ、メソカーボンマイクロビーズ、コークス、合成樹脂(例えばフェノール樹脂等)等の炭素前駆体を熱処理して得られる炭素質材料;フルフリルアルコール樹脂又はノボラック樹脂の熱分解物;フラーレン;カーボンナノフォーン;及びこれらの複合炭素材料を挙げることができる。 【0034】 これらの中でも、BET法により算出した比表面積(以下、BET比表面積ともいう。)が100m2/g以上の多孔質炭素材料と、石油系のピッチ又は石炭系のピッチと、を共存させた状態で熱処理をして得ることができる、前記多孔質炭素材料と前記ピッチ由来の炭素質材料とから成る複合多孔質炭素材料が好ましい。熱処理を行う前に、ピッチの融点より高い温度において、多孔性炭素材料と該ピッチとを混合してもよい。熱処理温度は、使用するピッチが揮発又は熱分解して発生する成分が炭素質材料となる温度であればよい。好ましくは400℃℃以上1,500℃以下である。得られる炭素質材料は、熱処理温度が800℃以下の場合には多環芳香族系炭化水素、800℃以上の場合には低結晶性炭素が、それぞれ主成分であると考えられる。熱処理を行う雰囲気としては、非酸化性雰囲気が好ましい。 【0035】 負極活物質の1次粒子径は0.005μm以上5μm以下であることが好ましい。より好ましくは0.020μm以上、3.5μm以下、更に好ましくは0.025μm以上、3μm以下である。1次粒子径が0.005μm以上であれば、該負極活物質の取扱いが容易であり、且つ該負極活物質を含有する塗工液の溶媒量を少なくできるため、塗膜乾燥時の凝集による負極活物質層のヒビ割れを抑制できる。一方で、1次粒子径が5μm以下であれば、1次粒子同士が形成する間隙の存在によって、負極活物質層内のリチウムイオンの拡散を良好にできるとともに、この間隙に十分な非水系電解液を保持できるため、低温においても高い出力特性を発現することができる。」 エ 「【0075】 <負極活物質の調製> [調製例1a] BET比表面積が1,780m2/gのヤシ殻活性炭をボールミルにて粉砕し、分級して、1次粒子径を3.2μmに調整した。粉砕及び分級後のヤシ殻活性炭をステンレススチールメッシュ製の籠に150g入れ、石炭系ピッチ(軟化点:50℃)270gを入れたステンレス製バットの上に置き、両者を電気炉(炉内有効寸法300mm×300mm×300mm)内に設置して、熱反応を行うことにより、複合多孔質炭素材料1を得た。この熱処理は窒素雰囲気下で行い、600℃まで8時間で昇温し、同温度で4時間保持する方法によった。続いて自然冷却により60℃まで冷却した後、複合多孔質炭素材料1を炉から取り出した。 得られた複合多孔質炭素材料1について、走査電子顕微鏡を用いて上述した1)の方法で1次粒子径を求めた。また、ユアサアイオニクス社製細孔分布測定装置(AUTOSORB-1 AS-1-MP)を用いて、窒素を吸着質として吸脱着の等温線を測定し、上述した方法でBET比表面積を求めた。 複合多孔質炭素材料1の1次粒子径は3.4μm、BET比表面積は262m2/gであった。 【0076】 [調製例2a] ヤシ殻活性炭を乾式ジェットミルで粉砕し、分級して、1次粒子径を0.65μmに調整して用いた以外は調整例1aと同様にして複合多孔質炭素材料2を製造し、評価を行った。複合多孔質炭素材料2の1次粒子径は0.68μm、BET比表面積は271m2/gであった。 【0077】 [調製例3a] 調製例2aで得た粉砕及び分級後のヤシ殻活性炭を、更に湿式ジェットミルで粉砕し、分級して1次粒子径を0.30μmに調整して用いた以外は調整例1aと同様にして複合多孔質炭素材料3を製造し、評価を行った。複合多孔質炭素材料3の1次粒子径は0.036μm、BET比表面積は286m2/gであった。 【0078】 [調製例4a] 軟化点が50℃の石炭系ピッチの代わりに軟化点が90℃の石炭系ピッチを用い、その使用量を150gとした他は調整例3aと同様にして複合多孔質炭素材料4を製造し、評価を行った。複合多孔質炭素材料4の1次粒子径は0.032μm、BET比表面積は307m2/gであった。 【0079】 [調製例5a] BET比表面積が561m2/g、1次粒子径が0.46μmの黒鉛質を含むナノカーボン材料150gをステンレススチールメッシュ製の籠に入れ、石炭系ピッチ(軟化点:38℃)75gを入れたステンレス製バットの上に置き、両者を電気炉 (炉内有効寸法300mm×300mm×300mm)内に設置して、熱処理を行うことにより、複合多孔質炭素材料5を得た。この熱処理は、窒素雰囲気下で行い、680℃まで10時間で昇温し、同温度で4時間保持する方法によった。続いて自然冷却により60℃まで冷却した後、複合多孔質炭素材料5を炉から取り出した。得られた複合多孔質炭素材料5の1次粒子径は0.51μm、BET比表面積は405m2/gであった。」 (5)甲5に記載の事項 ア 「【請求項1】 乾燥によって非モノリス有機エアロゲルを形成することができるゲル化かつ架橋した未乾燥の水性高分子組成物であって、該水性高分子組成物が、ポリヒドロキシベンゼン(複数の場合もある)Rとホルムアルデヒド(複数の場合もある)Fとの重縮合から少なくとも部分的に得られる樹脂をベースとし、かつ少なくとも1つの水溶性カチオン性高分子電解質Pを含み、前記水性高分子組成物が、水性媒体中で架橋する剪断減粘性物理ゲルのミクロ粒子の水性分散液から形成されることを特徴とする、水性高分子組成物。 ・・・ 【請求項7】 請求項1~6のいずれか一項に記載のゲル化かつ架橋した未乾燥の水性高分子組成物を乾燥させることにより得られる非モノリス有機エアロゲルであって、該非モノリス有機エアロゲルが、炉内の加熱によって乾燥した前記ミクロ粒子の粉末から形成され、前記乾燥したミクロ粒子が、液体媒体中においてレーザー回折式粒度分析器を用いて測定した、10μm~80μmの体積中位粒径を有することを特徴とする、非モノリス有機エアロゲル。 【請求項8】 前記非モノリス有機エアロゲルの比表面積及び細孔容積がともに、主にミクロ多孔性、好ましくは60%より大きいミクロ多孔性を示すことを特徴とする、請求項7に記載の非モノリス有機エアロゲル。 【請求項9】 40mW/(m・K)以下の熱伝導率を有することを特徴とする、請求項7又は8に記載の非モノリス有機エアロゲル。 【請求項10】 請求項7~9のいずれか一項に記載の非モノリス有機エアロゲルの熱分解から得られる非モノリス多孔質炭素であって、該非モノリス多孔質炭素が、液体媒体中においてレーザー回折式粒度分析器を用いて測定した、10μm~80μm、好ましくは10μm~20μmの体積中位粒径を有するミクロスフェアの粉末から形成されることを特徴とする、非モノリス多孔質炭素。 【請求項11】 400m2/gより大きいミクロ多孔性比表面積及び200m2/g未満のメソ多孔性比表面積を含む、500m2/g以上の総比表面積、及び/又は、0.15cm3/gより大きいミクロ孔容積を含む0.25cm3/g以上の細孔容積を有することを特徴とする、請求項10に記載の非モノリス多孔質炭素。」 イ 「【発明が解決しようとする課題】 【0020】 本発明の目的は、非モノリス有機エアロゲルをミクロ粒子形態で直接形成することができるゲル化かつ架橋した未乾燥の水性高分子組成物を提供することであり、該水性高分子組成物は、上述の欠点を克服すると同時に、単純かつ費用のかからない方法、及び有機溶媒の使用又は超臨界乾燥による乾燥を必要としない急速乾燥によって得られる 【課題を解決するための手段】 【0021】 この目的は、本出願人が、驚くべきことに、RF前駆体及び水溶性カチオン性高分子電解質Pを水性相に先に溶解させた後に、この溶解により得られたプレポリマーを沈降させ、その後、プレポリマー溶液を水で希釈すると、ずり減粘性(剪断減粘性(shear-thinning))物理ゲルのミクロ粒子の水性分散液を得ることが可能となり、こうした分散液にもかかわらず多孔度及び比表面積がともにかなり大きく、主にミクロ多孔性であり、粉末状エアロゲル、及びその熱分解物である多孔質炭素が、高収率を伴って、架橋及びその後の単純な炉乾燥によってもたらされることを見出したことで実現される。」 ウ 「【実施例】 【0065】 「対照」例と比較した、エアロゲル及びそれに由来の多孔質炭素のゲル化かつ架橋した組成物の本発明による調製例: 以下の実施例は、本発明による3つのゲル化かつ架橋した未乾燥の組成物G1~G3、乾燥によりG1~G3にそれぞれ由来する粉末形態の本発明による3つのエアロゲルAG1~AG3、エアロゲルAG1~AG3の熱分解によってそれぞれ得られる本発明による3つの多孔質炭素C1~C3の調製を、ゲル化かつ架橋した「対照」組成物G0、同様に粉末形態のエアロゲルAG0、及びAG0に由来する多孔質炭素C0と比較して説明する。 ・・・ 【0067】 有機ゲルG0~G3を得るために、以下の試薬: Acros Organicsによるレゾルシノール(R)、純度98%、 Acros Organicsによるホルムアルデヒド(F)、純度37%、 炭酸ナトリウム又は塩酸からなる触媒(C)、及び、 ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)(P)、純度35%(水溶液W中)、を、触媒C及び高分子電解質Pの存在下で、レゾルシノールRとホルムアルデヒドFとの重縮合に使用した。 【0068】 これらの試薬は、 R/W:レゾルシノールと水との重量比、 R/F:レゾルシノールとホルムアルデヒドとのモル比、 R/C:レゾルシノールと触媒とのモル比、及び、 P/R:高分子電解質とレゾルシノールとの重量比、 とする、以下の表1に挙げられる量及び比率により使用した。 【0069】 1)ゲル化かつ架橋した組成物G1、エアロゲルAG1、及び多孔質炭素C1の調製: a)ゲルG1を調製するために、初めにレゾルシノールをホルムアルデヒドに溶解した。その後これに、炭酸カルシウムの溶液、及びポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)の35%溶液からなる添加剤を15分間撹拌しながら添加した。得られた混合物のpHは6.5程であった。 【0070】 次に、この非粘性混合物を、70℃の油浴に浸したリアクタ内で30分間プレポリマー重合させた。形成したプレポリマーをその後、15℃まで冷却した後、25℃の水で25%に希釈した。RFゲルを完全に重合(架橋)させるために、得られた混合物を還流した。架橋されたゲルG1のミクロ粒子の水性分散液がその後得られた。希釈及び還流の条件は、以下の表2に示す。 【0071】 b)エアロゲルAG1を調製するため、分散液を放置し、ゲルG1の粒子を沈殿させた。分散剤の上澄みを除去し、得られた湿潤粉末を、70℃の炉に2時間入れ、これらのミクロ粒子を乾燥させた。 【0072】 c)多孔質炭素C1を調製するため、エアロゲルAG1を窒素下、800℃で熱分解させ、ミクロスフェアを得た。 【0073】 2)ゲル化かつ架橋した組成物G2、エアロゲルAG2及び多孔質炭素C2の調製: a)ゲルG2を調製するため、初めにレゾルシノールをホルムアルデヒドに溶解した。その後これに、炭酸カルシウムの溶液、及びポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)の35%溶液からなる添加剤を15分間撹拌しながら添加した。得られた混合物のpHは6.5であった。 【0074】 次に、この非粘性混合物を、45℃の油浴に浸したリアクタ内で45分間プレポリマー重合させた。形成した混合物をその後、4℃の冷却器に24時間入れた。形成したプレポリマーをその後、水で希釈した。その後、得られた混合物を還流し、RFゲルを完全に重合(架橋)させた。架橋されたゲルG2のミクロ粒子の水性分散液がその後得られた。希釈及び還流の条件は表2に示す。 【0075】 b)エアロゲルAG2を調製するため、分散液を放置し、ゲルG2の粒子を沈殿させた。分散剤の上澄みを除去し、得られた湿潤粉末を、90℃の炉に12時間入れ、これらのミクロ粒子を乾燥させた。 【0076】 c)多孔質炭素C2を調製するため、エアロゲルAG2を窒素下、800℃で熱分解させ、ミクロスフェアを得た。 【0077】 3)ゲル化かつ架橋した組成物G3、エアロゲルAG3、及び多孔質炭素C3の調製: a)ゲルG3を調製するため、初めにレゾルシノールを水に溶解した。その後これに、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)の35%溶液からなる添加剤、次にホルムアルデヒド、最後にHCl触媒を添加した。その後、混合物を15分間撹拌した。得られた混合物のpHは1.8であった。 【0078】 次に、この非粘性混合物を、70℃の油浴に浸したリアクタ内で45分間プレポリマー重合させた。形成した混合物をその後、4℃の冷却器に24時間入れた。形成したプレポリマーをその後、水で希釈した。その後、得られた混合物を還流し、RFゲルを完全に重合(架橋)させた。架橋されたゲルG3のミクロ粒子の水性分散液がその後得られた。希釈及び還流の条件は表2に示す。 【0079】 b)エアロゲルAG3を調製するため、分散液を放置し、ゲルG3のミクロ粒子を沈殿させた。分散剤の上澄みを除去し、得られた湿潤粉末を、90℃の炉に12時間入れ、これらのミクロ粒子を乾燥させた。 【0080】 c)多孔質炭素C3を調製するため、エアロゲルAG3を窒素下、800℃で熱分解させ、ミクロスフェアを得た。 【0081】 【表1】 [図:0001402740000003.jpg] ・・・ 【0083】 得られた各ゲルG0~G3、エアロゲルAG0~AG3、及び多孔質炭素C0~C3について、MasterSizer3000レーザー回折式粒度分析器を用い、液体方式を介して体積中位粒径を測定した。以下の表3にこのように測定したこれらの粒径値を示す。 【0084】 【表3】 [図:0001402740000004.jpg] 【0085】 これらの測定値から特に、本発明によるエアロゲルAG1及びAG3、並びに多孔質炭素C1及びC2が、50μm~70μmの体積平均径を有するミクロ粒子形態であることが示される。 【0086】 得られた各有機エアロゲルAG0~AG3及び各多孔質炭素C0~C3はまた、Micromeritics社によるTristar3020及びASAP2020の計器によって77Kで窒素吸着マノメトリー法を用いて特性決定した。比表面積(それぞれ、総、ミクロ多孔性及びメソ多孔性)及び細孔容積(それぞれ総及びミクロ孔)の結果は以下の表4に提示してある。 【0087】 【表4】 [図:0001402740000005.jpg] 」 2 甲1~甲5に記載された発明 (1)甲1に記載された発明 甲1の上記1(1)アの【請求項1】に記載される多孔質炭素製品の製造方法によって、同アの【請求項12】に記載される「多孔質の炭素薄片の形で存在することを特徴とする、階層的な孔構造を有する多孔質炭素を含有する炭素製品。」が製造されるところ、この炭素製品に関する同ウの【0076】の記載によれば、この炭素製品のBET法によって測定された内部の比表面積は、200m2/g程度である。 また、同ウの【0077】で、「図6のグラフは、多孔質炭素の孔径分布を示す。左の縦座標に累積の孔容積Vc[cm3/g]が、右の縦座標に相対孔容積Vr[%]が、孔の直径D[nm]に対してプロットされている。その際、示された測定結果は、水銀ポロシメトリーを用いて得られたことに留意すべきである。」とされている同エの図6を参照するに、多孔質炭素の孔径に対する累積の孔容積Vc[cm3/g]を示す曲線において、孔径Dが10000nmでの累積の孔容積Vcが約0.62cm3/g、孔径Dが10nmでの累積の孔容積Vcが約1.17cm3/gであることが読み取れる。 以上を踏まえると、甲1には、「多孔質の炭素薄片の形で存在することを特徴とする、階層的な孔構造を有する多孔質炭素を含有する炭素製品。」について、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 「BET法によって測定された内部の比表面積が、200m2/g程度であり、孔径Dが10000nmでの累積の孔容積Vcが約0.62cm3/g、孔径Dが10nmでの累積の孔容積Vcが約1.17cm3/gである、多孔質の炭素薄片の形で存在する、階層的な孔構造を有する多孔質炭素を含有する炭素製品。」 (2)甲2に記載された発明 甲2の上記1(2)イの「本発明は、直径が2nm以下のマイクロポア、及び直径が30nm~500nmのメソポア/小さなマクロポアを含むが、直径が2nmを超え且つ30nm未満のメソポアを実質上含まず、及び直径が500nmを超える大きなマクロポアを実質上含まない多孔性炭素粒子を使用する、肝疾患の治療又は予防に関する。」との記載によれば、甲2には、「直径が2nm以下のマイクロポア、及び直径が30nm~500nmのメソポア/小さなマクロポアを含むが、直径が2nmを超え且つ30nm未満のメソポアを実質上含まず、及び直径が500nmを超える大きなマクロポアを実質上含まない多孔性炭素粒子」が記載されているといえる。 そして、同カの「・BET表面積 700~2000m2/g、好ましくは1000~1500m2/g・・・・メソポア/小さなマクロポアの大きさ 30~500nm、好ましくは50~300nm ・メソポア/小さなマクロポアの容積 0.8~2.5cm3/g」との記載によれば、この多孔性炭素粒子における、BET表面積は、700~2000m2/g、大きさ30~500nmのメソポア/小さなマクロポアの容積は、0.8~2.5cm3/gであるといえる。 また、同キの「好ましくは、多孔性炭素粒子は、2~2000μm、例えば、50~2000μm、200~1600μm、又は100~1000μmの平均直径を有する。適切な粒子は、したがって、例えば、200~600μm、好ましくは250~500μmの平均直径を有することができる。」との記載には、多孔性炭素粒子の平均直径として、下限として2μm、上限として500μmが記載されているから、甲2には、多孔性炭素粒子の平均直径の範囲として、2μm~500μmが記載されているといえる。 以上を踏まえると、甲2には、多孔性炭素粒子について、以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されているといえる。 「直径が2nm以下のマイクロポア、及び直径が30nm~500nmのメソポア/小さなマクロポアを含むが、直径が2nmを超え且つ30nm未満のメソポアを実質上含まず、及び直径が500nmを超える大きなマクロポアを実質上含まない多孔性炭素粒子であって、大きさ30~500nmのメソポア/小さなマクロポアの容積が0.8~2.5cm3/gであり、平均直径が2μm~500μmであり、BET表面積が700~2000m2/gである、多孔性炭素粒子。」 (3)甲3に記載された発明 甲3の上記1(3)アには、「炭素相と、上記炭素相に配置される一つ以上の細孔相と、を含み、粒子の炭素相が、上記細孔相とともに、ほぼ共連続で不規則な複数の相領域を形成し、細孔相の隣接する相領域の間の距離が実質的に50nm以下であることを特徴とする粒状多孔質炭素材料」が記載されている。 そして、同エの【0036】の「本発明の粒状炭素材料は、通常、微細孔を有している。これは、10nm未満、例えば1~5nmの平均孔径d(平均孔半径rの2倍に対応する)を有する細孔であることを意味している。微小孔の比容積、すなわち、炭素材料1gあたりの微小孔の容積は、一般的に0.1cm3/g以上、特に0.2cm3/g以上、特に0.3cm3/g以上、並びに通常、0.1~1.5cm3/g、しばしば0.2~1.2cm3/g、及び特に0.3~1.0cm3/gである。」との記載によれば、上記粒状多孔質炭素材料について、10nm未満の平均孔径を有する微小孔の比容積が、特に0.3~1.0cm3/gであることの開示を、同エの【0037】の「本発明の粒状炭素材料は、メソ細孔を有していても良い。これは、5~300nmの範囲、特に10~200nm、又は15~200nmの範囲の平均孔径dを有する細孔であることが理解される。メソ細孔の特定容積、すなわち、炭素材料の1g当たりのメソ細孔の容積は、一般的に0.1cm3/g以上、特に0.2cm3/g又は0.3cm3/gであり、例えば0.1~2.9cm3/gの範囲、特に0.2~2.7cm3/gの範囲、又は0.3~2.5cm3/gの範囲である。」との記載によれば、上記粒状多孔質炭素材料について、特に10~200nmの平均孔径を有するメソ細孔の比容積が、0.3~2.5cm3/gであることの開示を、さらに、同エの【0038】の「本発明の炭素材料の全細孔比容積は、通常、0.3~3cm3/gの範囲、しばしば0.5~2.9cm3/gの範囲、及び特に0.6~2.8cm3/gの範囲であり」との記載によれば、上記粒状多孔質炭素材料について、全細孔比容積が、特に0.6~2.8cm3/gであることの開示を、それぞれ認めることができる。 また、同エの【0039】の「微小孔及び任意のメソ細孔の容積が高いために、本発明の炭素材料は、通常、200~3000m2/gの範囲、しばしば500~3000m2/gの範囲、特に800~1500m2/gの範囲、及び特に900~1400m2/gの範囲の高いBET比表面積を有する。」との記載によれば、甲3には、上記粒状多孔質炭素材料について、BET比表面積が、200~3000m2/gであることについて、さらには、同カの【0183】の【表1】の記載によれば、実施例4における具体的な値として、790m2/gのBET比表面積についての開示があるといえる。 さらに、同オの「通常、粒子の重量平均粒径は、20nm~50μm、しばしば50nm~50μm、好ましくは200nm~20μm、特に1μm~20μmの範囲である。」との記載によれば、甲3には、上記粒状多孔質炭素材料について、重量平均粒径が、特に1μm~20μmであることが記載されているといえる。 以上を踏まえると、甲3には、粒状多孔質炭素材料について、以下の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されているといえる。 「炭素相と、上記炭素相に配置される一つ以上の細孔相と、を含み、粒子の炭素相が、上記細孔相とともに、ほぼ共連続で不規則な複数の相領域を形成し、細孔相の隣接する相領域の間の距離が実質的に50nm以下である粒状多孔質炭素材料であって、10nm未満の平均孔径を有する微小孔の比容積が、0.3~1.0cm3/gであり、10~200nmの平均孔径を有するメソ細孔の比容積が、0.3~2.5cm3/gであり、全細孔比容積が、0.6~2.8cm3/gであり、BET比表面積が、790m2/gであり、重量平均粒径が、1μm~20μmである、粒状多孔質炭素材料。」 (4)甲4に記載された発明 甲4の上記1(4)アの【請求項1】には、非水系リチウム型蓄電素子用の負極について、「負極活物質は1次粒子径が0.005μm以上5μm以下の炭素材料であ」ることが、同アの【請求項3】には、その負極活物質が、「BET法により算出した比表面積が100m2/g以上600m2/g以下である」ことが、同エの【0075】等の記載には、上記負極活物質は、「複合多孔質炭素材料」であることが、それぞれ記載されている。 そして、同エには複合多孔質炭素材料の具体的な調製例として、[調製例1a]において、「複合多孔質炭素材料1の1次粒子径は3.4μm、BET比表面積は262m2/g」(【0075】)であること、[調製例2a]において、「複合多孔質炭素材料2の1次粒子径は0.68μm、BET比表面積は271m2/g」(【0076】)であること、[調製例3a]において、「複合多孔質炭素材料3の1次粒子径は0.036μm、BET比表面積は286m2/g」(【0077】)であること、[調製例4a]において、「複合多孔質炭素材料4の1次粒子径は0.032μm、BET比表面積は307m2/g」(【0078】)であること、[調製例5a]において、「複合多孔質炭素材料5の1次粒子径は0.51μm、BET比表面積は405m2/g」(【0079】)であることが、それぞれ記載されている。 ここで、上記の具体的な炭素材料の調製例を考慮すると、上記【請求項1】に記載された炭素材料の1次粒子径に関する0.005μm以上5μm以下という数値範囲中、実体のあるものとして、[調製例5a]における0.51μmから[調製例1a]における3.4μmの範囲を認識することができ、また、BET比表面積の100m2/g以上600m2/gの範囲についても同様に、[調製例1a]における262m2/gから[調製例5a]における405m2/gの範囲を認識することができる。 以上を踏まえると、甲4には、炭素材料について、以下の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されているといえる。 「非水系リチウム型蓄電素子用の負極に用いる炭素材料であって、1次粒子径が0.51μm以上3.4μm以下であり、BET比表面積が262m2/g以上405m2/g以下である複合多孔質炭素材料。」 (5)甲5に記載された発明 甲5の上記1(5)アの【請求項10】を引用する【請求項11】の記載から、「非モノリス有機エアロゲルの熱分解から得られる非モノリス多孔質炭素であって、該非モノリス多孔質炭素が、液体媒体中においてレーザー回折式粒度分析器を用いて測定した、10μm~80μm、好ましくは10μm~20μmの体積中位粒径を有するミクロスフェアの粉末から形成され、400m2/gより大きいミクロ多孔性比表面積及び200m2/g未満のメソ多孔性比表面積を含む、500m2/g以上の総比表面積、及び/又は、0.15cm3/gより大きいミクロ孔容積を含む0.25cm3/g以上の細孔容積を有する非モノリス多孔質炭素。」を把握することができる。 そして、同ウに記載される実施例における非モノリス多孔質炭素C1~C3では、体積中位粒径について、C1が50μm、C2が68μm(【0084】の【表3】)、総比表面積について、C1が532m2/g、C2が620m2/g、C3が620m2/g、ミクロ多孔性比表面積について、C1が470m2/g、C2が570m2/g、C3が520m2/g(【0087】の【表4】)であることが、それぞれ記載されている。 ここで、上記の非モノリス多孔質炭素の実施例を考慮すると、上記【請求項11】に記載された非モノリス多孔質炭素の体積中位粒径に関する10μm~80μmという数値範囲中、実体のあるものとして、C1における50μmからC2における68μmの範囲を認識することができ、同様に、総比表面積の500m2/g以上の数値範囲についても、C1における532m2/gからC2、C3における620m2/gの範囲を、ミクロ多孔性比表面積の400m2/gより大きい数値範囲についても、C1における470m2/gからC2における570m2/gの範囲を認識することができる。 以上を踏まえると、甲5には、非モノリス多孔質炭素について、以下の発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されているといえる。 「非モノリス有機エアロゲルの熱分解から得られる非モノリス多孔質炭素であって、該非モノリス多孔質炭素が、液体媒体中においてレーザー回折式粒度分析器を用いて測定した、50μm~68μmの体積中位粒径を有するミクロスフェアの粉末から形成され、 470m2/g~570m2/gのミクロ多孔性比表面積及び200m2/g未満のメソ多孔性比表面積を含む、532m2/g~620m2/gの総比表面積、及び/又は、 0.15cm3/gより大きいミクロ孔容積を含む0.25cm3/g以上の細孔容積を有する非モノリス多孔質炭素。」 3 取消理由1及び2について (1)甲1を主引用例とした場合 ア 対比 甲1発明は、「多孔質の炭素薄片の形で存在する、階層的な孔構造を有する多孔質炭素を含有する炭素製品」とされているが、例えば甲1の上記1(1)アの【請求項1】の記載によれば、炭素含有グリーン体骨格をか焼したものが多孔質炭素製品とされているから、甲1発明の「炭素製品」は、「多孔質の炭素薄片の形で存在する、階層的な孔構造を有する多孔質炭素」そのものであり、本件発明の「多孔質炭素材料」に相当する。 そして、条件等を限定することなく比表面積と記載される場合、それは、「全比表面積」を意味していると解されるから、甲1発明の「BET法によって測定された内部の比表面積」は、本件発明13の「BET全」に相当するといえ、本件発明の「25~800m2/gの範囲のBET全」の条件を満たしている。 また、甲1発明の「累積の孔容積Vc」は、本件発明の「総細孔容積」に相当するところ、甲1発明において、「孔径Dが10000nmでの累積の孔容積Vcが約0.62cm3/g、孔径Dが10nmでの累積の孔容積Vcが約1.17cm3/gであ」るということは、孔径Dが10nm~10000nmでの累積の孔容積Vcが約0.55cm3/g(1.17-0.62cm3/g)ということであるから、甲1発明は、本件発明の「10nm~10,000nmの範囲の直径を有する細孔について、0.4~2cm3/gの範囲の総細孔容積」の条件を満たしている。 そうすると、本件発明13と甲1発明は、「以下の特徴のうちの少なくとも2つ(aの特徴及びbの特徴)を有する多孔質炭素材料。 a. 10nm~10,000nmの範囲の直径を有する細孔について、0.4~2cm3/gの範囲の総細孔容積 b. 25~800m2/gの範囲のBET全 c. 5~650m2/gの範囲のBETミクロ d. 1.9~2.1g/cm3の範囲の骨格密度 e. 500nm~100μmの範囲の、一次粒子直径についてのd50」の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 <相違点1> 本件発明1は、a~eの特徴のうちの少なくとも4つを有するのに対し、甲1発明は、a~eの特徴のうちの少なくとも4つを有するのか否か明らかでない、すなわち、甲1発明は、a及びbの特徴を有しているため、c~eの特徴のうち少なくとも2つを有するのか否か明らかでない点。 イ 相違点に対する判断 (ア)上記相違点について判断を行うに先立ち、本事件における相違点の判断手法について確認する。甲1に、c~eの特徴に関する直接的な記載はもちろんのこと、c~eの特徴の導出につながるような間接的な記載もない場合は、甲1発明は、その特徴を有しないとして、この点は、実質的な相違点となる。 ここで、本件発明は、a~eの特徴を有することを技術的な特徴とすることはもちろんのことであるが、本件明細書の記載によれば、a~eの特徴を有する多孔質炭素材料を得る上で、同【0068】に「多孔質炭素材料の調製方法であって、 a. 第1炭素供給源化合物を含む炭素供給源を準備する工程と、 b. 第1両親媒性化合物を含む両親媒性種を準備する工程であって、この第1両親媒性化合物は、2以上の隣接するエチレンオキシドに基づく繰り返し単位を含む工程と、 c. 上記炭素供給源及び上記両親媒性種を接触させて、前駆体を得る工程と、 d. 上記前駆体を加熱して、上記多孔質炭素材料を得る工程とを備える方法である。」と記載される製造方法で多孔質炭素材料を製造することも技術的な特徴であるといえる。そして、このプロセスにより、a~eの特徴を有する多孔質炭素材料が製造されると考えた場合(実際のところは、各工程におけるさらなる具体的な製造条件が、製造される多孔質炭素材料のa~eに影響を与えるものではあるが)、甲1発明における炭素製品の製造方法が、本件発明における上記の製造方法に完全に一致すれば、甲1発明における炭素製品も、本件発明と同様のc~eの特徴を有している可能性があるので、甲1発明が、c~eの特徴のうち少なくとも2つを有しているか否かの判断においては、本件発明及び甲1発明における多孔質炭素材料(炭素製品)の製造方法の異同まで含めて判断を行う。 なお、後述する甲2~甲5発明との対比においても、同様の判断を行う。 (イ)上記(ア)で述べたように、本件発明は、a~eの特徴を有する多孔質炭素材料を得る上で、本件明細書の【0068】に「多孔質炭素材料の調製方法であって、 a. 第1炭素供給源化合物を含む炭素供給源を準備する工程と、 b. 第1両親媒性化合物を含む両親媒性種を準備する工程であって、この第1両親媒性化合物は、2以上の隣接するエチレンオキシドに基づく繰り返し単位を含む工程と、 c. 上記炭素供給源及び上記両親媒性種を接触させて、前駆体を得る工程と、 d. 上記前駆体を加熱して、上記多孔質炭素材料を得る工程とを備える方法である。」と記載される製造方法で多孔質炭素材料を製造することが重要であるところ、この製造方法で用いる両親媒性化合物は、2以上の隣接するエチレンオキシドに基づく繰り返し単位を含むものであって、同【0072】の記載によれば、「この両親媒性種は、好ましくは、ミセル及び三次元構造の形態で前駆体の中に存在し、好ましくは得られた多孔質炭素材料の中の細孔の形成を導く」ものである。以上の記載によれば、本件発明の多孔質炭素材料の細孔特性を得るには、製造段階において、少なくとも、2以上の隣接するエチレンオキシドに基づく繰り返し単位を含む両親媒性化合物を使用することが重要な役割を果たすことが理解できる。 本件発明における多孔質炭素材料の具体例である後記(カ)に摘示する同【0225】の【表4】及び同【0226】の【表5】によれば、両親媒製分子として、「Genapol PF10」~「Triton X100」を用いたものは、本件発明のaの「10nm~10,000nmの範囲の直径を有する細孔について、0.4~2cm3/gの範囲の総細孔容積」(【表4】の「細孔容積[cm3/g]」)、bの「25~800m2/gの範囲のBET全」、cの「5~650m2/gの範囲のBETミクロ」及びdの「1.9~2.1g/cm3の範囲の骨格密度」の条件を満たしているのに対し、両親媒製分子として、2以上の隣接するエチレンオキシドに基づく繰り返し単位を含むものではない(【表4】の「%EO」が0)「テトラデカノール」を用いた例では、本件発明のaの「総細孔容積」及びdの「骨格密度」がそれぞれ「<0.1」及び「1.88」となり本件発明の条件を満たしていない。 また、両親媒製分子として、2以上の隣接するエチレンオキシドに基づく繰り返し単位を含むものではない「Span 65」(トリステアリン酸ソルビタン、CAS番号:26658-19-5)を用いた例では、少なくとも、本件発明のaの「総細孔容積」及びdの「骨格密度」が両者共「n/a」となり本件発明の条件を満たしていない。 さらに、「Span 65」を用いた例では、炭素供給源である「Askofen 779 W 50」と両親媒製分子との混合比が、10:3である例では、bの「BET全」、cの「BETミクロ」がそれぞれ「76」及び「91」で、本件発明の条件を満たすのに対し、混合比が、10:6である例では、bの「BET全」、cの「BETミクロ」がそれぞれ「15」及び「0」で、本件発明の条件を満たしてはいない。 (ウ)以上によれば、aの「総細孔容積」、bの「BET全」、cの「BETミクロ」及びdの「骨格密度」に関する記載が甲1にある場合を除き、本件発明及び甲1発明の多孔質炭素材料の製造方法の異同の観点から、甲1発明の炭素製品が、細孔特性に関するa~dの特徴を有しているか否か考える場合、炭素製品の製造において、少なくとも、2以上の隣接するエチレンオキシドに基づく繰り返し単位を含む両親媒性化合物を用いていなければ、製造される炭素製品がa~dの特徴を有しているということはできない。 (エ)上記(ア)~(ウ)を踏まえて、上記相違点1を検討すると、まず、甲1には、上記相違点1に係る少なくともcの「BETミクロ」及びdの「骨格密度」に関する直接的な記載はもちろんのこと、c及びdの特徴の導出につながるような間接的も記載もない。 さらに、甲1には、甲1発明の炭素製品の製造方法について、甲1の上記1(1)アの【請求項1】等に記載があるが、何ら2以上の隣接するエチレンオキシドに基づく繰り返し単位を含む両親媒性化合物を用いるものではないから、上記(ウ)の観点に照らすと、本件発明及び甲1発明の製造方法の異同の観点から検討したとしても、甲1発明の炭素製品は、c及びdの特徴を有しているとはいえない。 そして、甲1発明の炭素製品が、c及びdの特徴を有しているとはいえなければ、甲1発明は、c~eの特徴のうち少なくとも2つを有しているということはできないから、上記相違点1は、実質的な相違点である。 (オ)最後に甲1発明を、c及びdの特徴を有するものとすることが当業者に容易に想到し得る事項であるか否かについて検討するに、甲1発明は、甲1の上記1(1)イの【0019】に記載されるように、「多孔質炭素製の製品の安価な製造を可能にする方法を提供する」ということを課題とし、その課題を、同アの【請求項1】に記載されるような製造方法を用いることにより解決するもので、炭素製品の物性の記載としてbの「BET全」に相当する「BET法によって測定された内部の比表面積」の記載まではあるものの、何ら、甲1発明の炭素製品におけるcの「BETミクロ」及びdの「骨格密度」に着目するものではないから、甲1発明に、c及びdの物性に着目し、この物性を本件発明の範囲に調整しようとする動機付けがあるとはいえない。 そうすると、甲1発明を、c及びdの特徴を有するものとすることは当業者にとり容易に想到し得ることであるとはいえないから、上記相違点1に係り、c~eの特徴のうち少なくとも2つを有するものとすること、ひいてはa~eの特徴のうちの少なくとも4つを有するものとすることは、当業者が容易に想到し得ることであるとはいえない。 (カ)本件明細書における【0225】の【表4】及び【0226】の【表5】 「【0225】の【表4】 [図:0001402740000006.jpg] 【0226】の【表5】 [図:0001402740000007.jpg] 」 ウ 小括 上記イで述べたとおり、上記相違点1は、実質的な相違点であるし、上記相違点1に係る本件発明の特定事項は当業者が容易に想到し得るものではないから、本件発明は、甲1発明ではないし、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明できたものでもない。 (2)甲2を主引用例とした場合 ア 対比 甲2発明の「多孔性炭素粒子」は、本件発明の「多孔質炭素材料」に相当する。 そして、条件等を限定することなく表面積と記載される場合、それは、「全比表面積」を意味していると解されるから、甲2発明の「BET表面積」は、本件発明の「BET全」に相当する。また、甲2発明の多孔性炭素粒子において、大きさ30~500nmのメソポア/小さなマクロポアの容積は、0.8~2.5cm3/gであるが、この多孔性炭素粒子は、「直径が2nmを超え且つ30nm未満のメソポアを実質上含まず、及び直径が500nmを超える大きなマクロポアを実質上含まない」ものであるから、大きさ10~10000nmの範囲のポアの容積を考えたとしても、その値は、0.8~2.5cm3/gであり、本件発明の総細孔容積とそのほとんどの範囲で一致しているのであるから、甲2発明は、本件発明のaの「0.4~2cm3/gの範囲」の条件を満たしていると解するのが相当である。 そうすると、本件発明13と甲2発明は、「以下の特徴のうちの少なくとも1つ(aの特徴)を有する多孔質炭素材料。 a. 10nm~10,000nmの範囲の直径を有する細孔について、0.4~2cm3/gの範囲の総細孔容積 b. 25~800m2/gの範囲のBET全 c. 5~650m2/gの範囲のBETミクロ d. 1.9~2.1g/cm3の範囲の骨格密度 e. 500nm~100μmの範囲の、一次粒子直径についてのd50」の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 <相違点2> 本件発明1は、a~eの特徴のうちの少なくとも4つを有するのに対し、甲2発明は、a~eの特徴のうちの少なくとも4つを有するのか否か明らかでない、すなわち、甲2発明は、aの特徴を有しているため、b~eの特徴のうち少なくとも3つを有するのか否か明らかでない点。 イ 相違点に対する判断 (ア)甲2発明においても、上記(1)イ(ア)~(ウ)で述べた判断手法に従って上記相違点2を検討するが、まず、甲2には、上記相違点2に係る少なくともcの「BETミクロ」及びdの「骨格密度」に関する直接的な記載はもちろんのこと、c及びdの特徴の導出につながるような間接的な記載もない。 さらに、甲2には、甲2発明の多孔性炭素粒子に関する製造方法について、甲2の上記1(2)ケ等に記載があるが、何ら2以上の隣接するエチレンオキシドに基づく繰り返し単位を含む両親媒性化合物を用いるものではないから、上記(1)イ(ウ)の観点に照らすと、本件発明及び甲2発明の製造方法の異同の観点から検討したとしても、甲2発明の多孔性炭素粒子は、c及びdの特徴を有しているとはいえない。 そして、甲2発明の多孔性炭素粒子が、c及びdの特徴を有しているとはいえなければ、甲2発明は、b~eの特徴のうち少なくとも3つを有しているということはできないから、上記相違点2は、実質的な相違点である。 (イ)次に甲2発明を、c及びdの特徴を有するものとすることが当業者に容易に想到し得る事項であるか否かについて検討するに、甲2発明は、甲2の上記1(2)ウの【0005】に記載されるように、「肝疾患の治療又は予防に関する」ことを課題とし、その課題を、同ウの【0006】に記載される「全細孔容積の20%~90%は、2nm以下の平均直径を有する細孔から構成され、及び残りの全細孔容積の75%以上は、30nm~500nmの平均直径を有する細孔から構成される、肝疾患の治療又は予防における使用のための多孔性炭素粒子」を用いることにより解決するもので、この多孔性炭素粒子の物性の記載としてbの「BET全」に相当する「BET表面積」の記載まではあるものの、何ら、甲2発明の多孔性炭素粒子におけるcの「BETミクロ」及びdの「骨格密度」に着目するものではないから、甲2発明に、c及びdの物性に着目し、この物性を本件発明の範囲に調整しようとする動機付けがあるとはいえない。 そうすると、甲2発明を、c及びdの特徴を有するものとすることは当業者にとり容易に想到し得ることであるとはいえないから、上記相違点2に係り、b~eの特徴のうち少なくとも3つを有するものとすること、ひいてはa~eの特徴のうちの少なくとも4つを有するものとすることは、当業者が容易に想到し得ることであるとはいえない。 ウ 小括 上記イで述べたとおり、上記相違点2は、実質的な相違点であるし、上記相違点2に係る本件発明の特定事項は当業者が容易に想到し得るものではないから、本件発明は、甲2発明ではないし、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明できたものでもない。 (3)甲3を主引用例とした場合 甲3発明の「粒状多孔質炭素材料」は、本件発明の「多孔質炭素材料」に相当する。 そして、条件等を限定することなく比表面積と記載される場合、それは、「全比表面積」を意味していると解されるから、甲3発明の「BET比表面積」は、本件発明の「BET全」に相当するとともに、甲3発明のBET比表面積は、本件発明13の「25~800m2/gの範囲のBET全」の条件を満たしている。 また、甲3発明の粒状多孔質炭素材料において、10nm未満の平均孔径を有する微小孔の比容積が、0.3~1.0cm3/gであり、10~200nmの平均孔径を有するメソ細孔の比容積が、0.3~2.5cm3/gであるのに対し、これらの比容積を含む全細孔比容積が、0.6~2.8cm3/gでしかなく、甲3発明の粒状多孔質炭素材料の細孔は、10nm未満の平均孔径を有する微小孔と10~200nmの平均孔径を有するメソ細孔がそのほとんどを占めていること、すなわち、200nm超の細孔は少ないことが理解できるから、甲3発明の粒状多孔質炭素材料において、10~10,000nmの平均孔径を有する細孔の比容積を考慮しても、その値は、0.3~2.5cm3/gとほぼ変わらないといえる。そして、この範囲は、本件発明の「0.4~2cm3/gの範囲」と大部分で重複しているから、甲3発明は、本件発明13の「a. 10nm~10,000nmの範囲の直径を有する細孔について、0.4~2cm3/gの範囲の総細孔容積」の条件を満たしていると解するのが相当である。 なお、特許権者は、令和5年1月26日提出の意見書で、粒状多孔質炭素材料における各平均孔径の範囲における細孔の比容積について、甲3発明の比容積を測定したBJH(窒素吸着法)を含め、様々な方法(二酸化炭素収着(左)、窒素収着(中央)、及び水銀ポロシメトリー(右))で測定された多孔質炭素材料サンプルの細孔サイズの比較を示しているとされる参考図4を用い、気体収着による方法が、10nm以上の細孔の情報を提供しないことから、BJH(窒素吸着法)を用いている甲3発明において、10nm以上の範囲での細孔の比容積は認定できない旨を主張している(意見書9頁14行~10頁1行)。 しかしながら、参考図4は、何を出所とするものであるのか、具体的にどの様なサンプルを対象として測定したものであるのか、また、どのような測定条件のもとで測定を行ったのか等不明なものであり、特許権者の主張を裏付けるものとはならない。また、甲3には、10nm以上の範囲での細孔の比容積の値が、その測定方法と共に明確に記載されているのであるから、特許権者の上記の主張は、甲3の記載を疑うに足るものではない。 そうすると、本件発明と甲3発明は、「以下の特徴のうちの少なくとも2つ(aの特徴及びbの特徴)を有する多孔質炭素材料。 a. 10nm~10,000nmの範囲の直径を有する細孔について、0.4~2cm3/gの範囲の総細孔容積 b. 25~800m2/gの範囲のBET全 c. 5~650m2/gの範囲のBETミクロ d. 1.9~2.1g/cm3の範囲の骨格密度 e. 500nm~100μmの範囲の、一次粒子直径についてのd50」の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 <相違点3> 本件発明は、a~eの特徴のうちの少なくとも4つを有するのに対し、甲3発明は、a~eの特徴のうちの少なくとも4つを有するのか否か明らかでない、すなわち、甲3発明は、a及びbの特徴を有しているため、c~eの特徴のうち少なくとも2つを有するのか否か明らかでない点。 イ 相違点に対する判断 (ア)甲3発明においても、上記(1)イ(ア)~(ウ)で述べた判断手法に従って上記相違点3を検討するが、まず、甲3には、上記相違点3に係る少なくともcの「BETミクロ」及びdの「骨格密度」に関する直接的な記載はもちろんのこと、c及びdの特徴の導出につながるような間接的な記載もない。 さらに、甲3には、甲3発明の粒状多孔質炭素材料に関する製造方法について、甲3の上記1(3)カの【0174】~【0179】等に記載があるが、何ら2以上の隣接するエチレンオキシドに基づく繰り返し単位を含む両親媒性化合物を用いるものではないから、上記(1)イ(ウ)の観点に照らすと、本件発明及び甲3発明の製造方法の異同の観点から検討したとしても、甲3発明の粒状多孔質炭素材料は、c及びdの特徴を有しているとはいえない。 そして、甲3発明の粒状多孔質炭素材料が、c及びdの特徴を有しているとはいえなければ、甲3発明は、c~eの特徴のうち少なくとも2つを有しているということはできないから、上記相違点3は、実質的な相違点である。 (イ)次に甲3発明を、c及びdの特徴を有するものとすることが当業者に容易に想到し得る事項であるか否かについて検討するに、甲3発明は、甲3の上記1(3)ウの【発明が解決しようとする課題】に続く【0015】に記載されるように、特にリチウム-硫黄電池用のリチウム電池用正極材料の製造に適しており、従来技術の欠点を解消する電気活物質を提供すること、この電気活物質を用いて製造される正極材料を、高い比容量、高サイクル安定性、自己放電が低い、優れた機械的安定性のうち一つ以上、特に二つ以上の性質を有するものとすることを課題とし、この課題を、【0018】及び【0019】の記載によれば、炭素相(以下、炭素C相又はC相とも記載する)と、一つ以上の細孔相(以下、細孔相P又はP相とも記載する)と、を含み、粒子の炭素相及びほぼ非整列の共連続相領域である細孔相を形成し、隣接する細孔相の領域の間の距離が、ほぼ、特に50nm以下、好ましくは20nm以下、又は10nm以下、例えば0.5~50nm、好ましくは0.7~20nm、及び特に1~10nmである粒状多孔質炭素材料を含む硫黄複合材料を用いることにより解決するもので、この粒状多孔質炭素材料の物性の記載としてbの「BET全」に相当する「BET」の記載まではあるものの、何ら、甲3発明の粒状多孔質炭素材料におけるcの「BETミクロ」及びdの「骨格密度」に着目するものではないから、甲3発明に、c及びdの物性に着目し、この物性を本件発明の範囲に調整しようとする動機付けがあるとはいえない。 そうすると、甲3発明を、c及びdの特徴を有するものとすることは当業者にとり容易に想到し得ることであるとはいえないから、上記相違点3に係り、b~eの特徴のうち少なくとも3つを有するものとすること、ひいてはa~eの特徴のうちの少なくとも4つを有するものとすることは、当業者が容易に想到し得ることであるとはいえない。 ウ 小括 上記イで述べたとおり、上記相違点3は、実質的な相違点であるし、上記相違点3に係る本件発明の特定事項は当業者が容易に想到し得るものではないから、本件発明は、甲3発明ではないし、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明できたものでもない。 (4)甲4を主引用例とした場合 甲4発明の「複合多孔質炭素材料」は、本件発明の「多孔質炭素材料」に相当する。 そして、条件等を限定することなく比表面積と記載される場合、それは、「全比表面積」を意味していると解されるから、甲4発明の「BET比表面積」は、本件発明の「BET全」に相当するといえ、本件発明の「25~800m2/gの範囲のBET全」の条件を満たしている。 そうすると、本件発明と甲4発明は、「以下の特徴のうちの少なくとも1つ(bの特徴)を有する多孔質炭素材料。 a. 10nm~10,000nmの範囲の直径を有する細孔について、0.4~2cm3/gの範囲の総細孔容積 b. 25~800m2/gの範囲のBET全 c. 5~650m2/gの範囲のBETミクロ d. 1.9~2.1g/cm3の範囲の骨格密度 e. 500nm~100μmの範囲の、一次粒子直径についてのd50」の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 <相違点4> 本件発明は、a~eの特徴のうちの少なくとも4つを有するのに対し、甲4発明は、a~eの特徴のうちの少なくとも4つを有するのか否か明らかでない、すなわち、甲2発明は、bの特徴を有しているため、a、c~eの特徴のうち少なくとも3つを有するのか否か明らかでない点。 イ 相違点に対する判断 (ア)甲4発明においても、上記(1)イ(ア)~(ウ)で述べた判断手法に従って上記相違点4を検討するが、まず、甲4には、上記相違点4に係る少なくともcの「BETミクロ」及びdの「骨格密度」に関する直接的な記載はもちろんのこと、c及びdの特徴の導出につながるような間接的な記載もない。 さらに、甲4には、甲4発明の複合多孔質炭素材料に関する製造方法について、甲4の上記1(4)エの【0075】~【0079】等に記載があるが、何ら2以上の隣接するエチレンオキシドに基づく繰り返し単位を含む両親媒性化合物を用いるものではないから、上記(1)イ(ウ)の観点に照らすと、本件発明及び甲4発明の製造方法の異同の観点から検討したとしても、甲4発明の複合多孔質炭素材料は、c及びdの特徴を有しているとはいえない。 そして、甲4発明の複合多孔質炭素材料が、c及びdの特徴を有しているとはいえなければ、甲4発明には、a、c~eの特徴のうち少なくとも3つを有しているということはできないから、上記相違点4は、実質的な相違点である。 (イ)次に甲4発明を、c及びdの特徴を有するものとすることが当業者に容易に想到し得る事項であるか否かについて検討するに、甲4発明は、甲4の上記1(4)イの【0011】に記載されるように、「低温においても高い入出力特性を示す非水系リチウム型蓄電素子用の負極、及び該負極を用いて成る、低温において高い入出力特性を示す非水系リチウム型蓄電素子を提供すること」を課題とし、この課題を、同イの【0012】に記載されるように、「負極活物質として1次粒子径の小さい炭素材料を用いた場合において、負極集電体に従来よりも大きい凹凸形状を設けることにより、負極活物質層の電子密度が低い低電圧の状態においても電子伝導性を十分に確保することができ、低温における入力特性が顕著に向上すること」に着目し、同イの【0013】に記載されるように「非水系リチウム型蓄電素子用の負極」を、「負極集電体と、該負極集電体の片面又は両面にリチウムイオンを吸蔵・放出できる負極活物質を含む負極活物質層とを有し、前記負極活物質は1次粒子径が0.005μm以上5μm以下の炭素材料であり、前記負極集電体は、前記負極活物質層との接触面の少なくとも一部に凹部及び凸部から選択される形状を有する非平滑領域を含み、前記非平滑領域中の前記凹部及び凸部から選択される形状の頂点を10個以上含む直線について測定された十点平均粗さRzjisが5μm以上100μm以下である」「非水系リチウム型蓄電素子用の負極。」とすることにより解決するもので、この炭素材料の物性の記載としてbの「BET全」に相当する「BET比表面積」の記載まではあるものの、何ら、甲4発明の炭素材料におけるcの「BETミクロ」及びdの「骨格密度」に着目するものではないから、甲4発明に、c及びdの物性に着目し、この物性を本件発明の範囲に調整しようとする動機付けがあるとはいえない。 そうすると、甲4発明を、c及びdの特徴を有するものとすることは当業者にとり容易に想到し得ることであるとはいえないから、上記相違点4に係り、a、c~eの特徴のうち少なくとも3つを有するものとすること、ひいてはa~eの特徴のうちの少なくとも4つを有するものとすることは、当業者が容易に想到し得ることであるとはいえない。 ウ 小括 上記イで述べたとおり、上記相違点4は、実質的な相違点であるし、上記相違点4に係る本件発明の特定事項は当業者が容易に想到し得るものではないから、本件発明は、甲4発明ではないし、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明できたものでもない。 (5)甲5を主引用例とした場合 甲5発明の「非モノリス多孔質炭素」は、本件発明の「多孔質炭素材料」に相当する。 そして、甲5発明の「比表面積」は、甲5の上記1(5)ウの【0086】の記載によれば、窒素吸着マノメトリー法により決定されるものであり、窒素の吸着を用いて測定されているものであるから、BET法により求められた比表面積であるといえる。また、甲5発明の「総比表面積」は、「全比表面積」を意味しているといえるから、甲5発明の「総比表面積」は、本件発明の「BET全」に相当し、本件発明の「25~800m2/gの範囲のBET全」の条件を満たしている。 さらに、甲5発明の「ミクロ多孔性比表面積」は、本件発明の「BETミクロ」に相当し、本件発明の「5~650m2/gの範囲のBETミクロ」の条件を満たしている。 そして、甲5発明の非モノリス多孔質炭素の体積中位粒径は、「50μm~68μm」であり、本件発明の「500nm~100μmの範囲」に含まれていることと、体積中位粒径とd50の値がそう大きく異なることはないことを考慮すると、甲5発明も、本件発明の「e. 500nm~100μmの範囲の、一次粒子直径についてのd50」の条件を満たしていると理解するのが合理的である。 そうすると、本件発明と甲5発明は、「以下の特徴のうちの少なくとも3つ(bの特徴、cの特徴及びeの特徴)を有する多孔質炭素材料。 a. 10nm~10,000nmの範囲の直径を有する細孔について、0.4~2cm3/gの範囲の総細孔容積 b. 25~800m2/gの範囲のBET全 c. 5~650m2/gの範囲のBETミクロ d. 1.9~2.1g/cm3の範囲の骨格密度 e. 500nm~100μmの範囲の、一次粒子直径についてのd50」の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 <相違点5> 本件発明は、a~eの特徴のうちの少なくとも4つを有するのに対し、甲5発明は、a~eの特徴のうちの少なくとも4つを有するのか否か明らかでない、すなわち、甲3発明は、b、c及びeの特徴を有しているため、a及びdの特徴のうち少なくとも1つを有するのか否か明らかでない点。 イ 相違点に対する判断 (ア)甲5発明においても、上記(1)イ(ア)~(ウ)で述べた判断手法に従って上記相違点5を検討するが、まず、甲5には、上記相違点5に係る少なくともaの「10nm~10,000nmの範囲の直径を有する細孔についての総細孔容積」及びdの「骨格密度」に関する直接的な記載はもちろんのこと、a及びdの特徴の導出につながるような間接的な記載もない。 さらに、甲5には、甲5発明の非モノリス多孔質炭素に関する製造方法について、甲5の上記1(5)ウの【0065】~【0080】等に記載があるが、何ら2以上の隣接するエチレンオキシドに基づく繰り返し単位を含む両親媒性化合物を用いるものではないから、上記(1)イ(ウ)の観点に照らすと、本件発明及び甲5発明の製造方法の異同の観点から検討したとしても、甲5発明の非モノリス多孔質炭素は、a及びdの特徴を有しているとはいえない。 そして、甲5発明の非モノリス多孔質炭素が、a及びdの特徴を有しているとはいえなければ、甲5発明は、a及びdの特徴のうち少なくとも1つを有しているということはできないから、上記相違点5は、実質的な相違点である。 (イ)次に甲5発明を、a及びdの特徴を有するものとすることが当業者に容易に想到し得る事項であるか否かについて検討するに、甲5発明は、甲5の上記1(5)イの【発明が解決しようとする課題】に続く【0020】に記載されるように、非モノリス有機エアロゲルをミクロ粒子形態で直接形成することができるゲル化かつ架橋した未乾燥の水性高分子組成物を提供することを課題とし、この課題を、同イの【0021】の記載によれば、「RF前駆体及び水溶性カチオン性高分子電解質Pを水性相に先に溶解させた後に、この溶解により得られたプレポリマーを沈降させ、その後、プレポリマー溶液を水で希釈すると、ずり減粘性(剪断減粘性(shear-thinning))物理ゲルのミクロ粒子の水性分散液を得ることが可能となり、こうした分散液にもかかわらず多孔度及び比表面積がともにかなり大きく、主にミクロ多孔性であり、粉末状エアロゲル、及びその熱分解物である多孔質炭素が、高収率を伴って、架橋及びその後の単純な炉乾燥によってもたらされること」により解決するものであり、この多孔質炭素の物性の記載として比表面積の記載まではあるものの、何ら、甲5発明の非モノリス多孔質炭素におけるaの「10nm~10,000nmの範囲の直径を有する細孔についての総細孔容積」及びdの「骨格密度」に着目するものではないから、甲5発明にa及びdの物性に着目し、この物性を本件発明の範囲に調整しようとする動機付けがあるとはいえない。 そうすると、甲5発明を、a及びdの特徴を有するものとすることは当業者にとり容易に想到し得ることであるとはいえないから、上記相違点5に係り、a及びdの特徴のうち少なくとも1つを有するものとすること、ひいてはa~eの特徴のうちの少なくとも4つを有するものとすることは、当業者が容易に想到し得ることであるとはいえない。 ウ 小括 上記イで述べたとおり、上記相違点5は、実質的な相違点であるし、上記相違点5に係る本件発明の特定事項は当業者が容易に想到し得るものではないから、本件発明は、甲5発明ではないし、甲5発明に基づいて当業者が容易に発明できたものでもない。 (6)令和5年3月16日提出の意見書における異議申立人の主張について ア 異議申立人の主張 異議申立人は、上記意見書に、参考資料1として国際公開第2015/152088号を添付し、「参考資料1の段落[0062]~[0066]の記載を踏まえると、参考資料1の「真密度(ρHe)」は、本件の請求項13で規定する「骨格密度」・・・に相当することが看取される。」(4頁3~5行)としている。 そして、「以下の甲第1~5号証(それぞれ「甲1」等とも呼ぶ)には、下記表(省略)に示すように、本件の請求項13に記載された「a 総細孔容積」、「b BET全」、「c BETミクロ」および「e d50」の少なくとも3つを満たす多孔質炭素材料が開示されている。」ことを前提として、甲第1~5号証に明記のない「骨格密度」に相当する「真密度(ρHe)」に関して、「参考資料1には、「体積当たりの放電容量の向上の点で、1.76g/cm3以上」が好ましいこと、および、「吸湿性を抑える点で、2.09g/cm3以下」が好ましいことが記載されている([0023])。「放電容量の向上」や「吸湿性を抑える」ことは、甲第1~5号証に開示された多孔質炭素材料に当然に要求される特性である。そうすると、参考資料1に接した当業者が、甲第1~5号証に開示された多孔質炭素材料の特性改善を目的として、その「真密度(ρHe)」を「1.76g/cm3以上」かつ「2.09g/cm3以下」にすることについては、特段の困難性は見出せない。」(4頁7行~5頁8行)と主張している。 イ 異議申立人の主張に対する判断 仮に、「放電容量の向上」や「吸湿性を抑える」ことが、甲1~甲5に記載された多孔質炭素材料に当然に要求される特性であるのであれば、甲1~甲5に記載された多孔質炭素材料にもこれらの特性がある程度備わっていると解されるから、「放電容量の向上」や「吸湿性を抑える」ことが、甲1~甲5に記載された多孔質炭素材料に当然に要求される特性であることは、甲1~5発明に対して、「放電容量の向上」や「吸湿性を抑える」ことについて、さらなる改良を加えようとすることに直結するものではない。 また、「放電容量の向上」や「吸湿性を抑える」ことは、多孔質炭素材料の「骨格密度」の値の調整のみで達成されるものではなく、これらの特性を向上させるのに様々な手段がある中で、甲1~甲5発明において、cの「骨格密度」という物性に着目し、この物性を本件発明の範囲に調整しようとする動機付けが甲1~5発明にあるとはいえないことは、上記(1)イ(オ)、(2)イ(イ)、(3)イ(イ)、(4)イ(イ)及び(5)イ(イ)で述べたとおりである。 さらに、本件発明における多孔質炭素材料の具体例である上記(1)イ(カ)に摘示した同【0225】の【表4】及び同【0226】の【表5】によれば、両親媒製分子の種類及び炭素供給源である「Askofen 779 W 50」と両親媒製分子との混合比を変更した場合、【表4】及び【表5】の「骨格密度」の値が変化するだけではなく、「細孔容積」(本件発明のaの「10nm~10,000nmの範囲の直径を有する細孔についての総細孔容積」)、「BET全」及び「BETミクロ」の値も変化していることから、仮に、多孔質炭素材料において、「骨格密度」の値を変更しようとすれば、「細孔容積」(本件発明のaの「10nm~10,000nmの範囲の直径を有する細孔についての総細孔容積」)、「BET全」及び「BETミクロ」の値も変化してしまうことが理解できる。 そうすると、当業者であれば、所定の値に調整されているといえる、a~cの特徴における数値が変わってしまうという恐れがありながら、dの「骨格密度」の値のみを調整しようとはしないから、甲1~5発明の多孔質炭素材料を、参考資料1に記載の「真密度(ρHe)」の範囲を有するものとすることができるとはいえない。 以上のとおりであるから、異議申立人の意見書での上記アの主張は採用できない。 第6 むすび 上記第5で検討したとおり、本件特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるということはできず、同法第113条第2号に該当するものではないから、上記取消理由1、2及び特許異議の申立ての理由では、本件特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。

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2022-700673

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