特許異議申立
2022-700671
改善された炭素供給源を使用する多孔質炭素材料の調製方法
- 審判番号
- 2022-700671
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-102064外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6997832
- 請求日
- 2022年07月19日
- 審決日
- 2024年02月27日
- 公報発行日
- 2024年05月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ヘレウス バッテリー テクノロジー ゲーエムベーハー
- 【権利者代理人】林 一好
- 【権利者代理人】岩池 満
- 【異議申立人】前田 洋志
- 分類
- P1652.113-YAA(C01B) / P1652.121-YAA(C01B) / P1652.575-YAA(C01B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第7項、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6997832号発明「改善された炭素供給源を使用する多孔質炭素材料の調製方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6997832号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔4、5、7〕について訂正することを認める。
特許第6997832号の請求項4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6997832号の請求項1~7に係る特許についての出願は、2018年(平成30年)10月26日(優先権主張外国庁受理 2017年(平成29年)10月27日 (EP)欧州特許庁)を国際出願日とする特願2020-521404号の一部を新たな特許出願として令和2年6月12日に出願されたものであり、令和3年12月21日にその特許権の設定登録がされ、令和4年1月18日に特許掲載公報が発行され、その後、同年7月19日に、その請求項4に係る特許を対象として特許異議申立人前田洋志(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがなされたものである。以降の手続きは以下のとおりである。
令和4年10月25日付け 取消理由通知
令和5年 1月26日 意見書の提出及び訂正請求(特許権者)
同年 3月16日 意見書の提出(異議申立人)
同年 7月25日付け 取消理由通知(決定の予告)
同年10月20日 意見書の提出及び訂正請求(特許権者)
同年12月 4日 意見書の提出(異議申立人)
なお、令和5年1月26日にされた訂正の請求(以下、その訂正を「先の訂正」ということがある。)は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の適否
1 訂正事項
上記令和5年10月20日にされた訂正の請求(以下、その訂正を「本件訂正」という。)は、本件特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項4、5及び7について訂正することを求めるものであって、その具体的な訂正事項は次のとおりである。
・訂正事項
特許請求の範囲の請求項4に「以下の特徴のうちの少なくとも1つを有する多孔質炭素材料。
a. 10nm~10,000nmの範囲の直径を有する細孔について、0.4~2.8cm3/gの範囲の総細孔容積、
b. 10~1000m2/gの範囲のBET全、
c. 0~650m2/gの範囲のBETミクロ、
d. 1.8~2.3g/cm3の範囲の骨格密度、
e. 300nm~100μmの範囲の一次粒子直径についてのd50。」とあるのを、「10nm~10,000nmの範囲の直径を有する細孔について0.4~2.8cm3/gの範囲の総細孔容積、及び1.8~2.3g/cm3の範囲の骨格密度を有する多孔質炭素材料。」に訂正する。
(請求項4を引用する請求項5、7についても同様に訂正する。)
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 多孔質炭素材料が有する特徴が、aの「10nm~10,000nmの範囲の直径を有する細孔についての総細孔容積」、bの「BET全」、cの「BETミクロ」、dの「骨格密度」及びeの「一次粒子直径についてのd50」のうち「少なくとも1つ」とされ、a~eの特徴それぞれだけでなく、あらゆるa~eの特徴の組み合わせが、本件訂正前の請求項4に含まれていたところ、上記訂正事項は、選択肢の1つであったaの「10nm~10,000nmの範囲の直径を有する細孔についての総細孔容積」及びdの「骨格密度」の特徴を必須のものとし、多孔質炭素材料が有する特徴を、aの特徴及びdの特徴を有するものに限定するものである。
そうすると、上記訂正事項は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 上記訂正事項について、aの「10nm~10,000nmの範囲の直径を有する細孔についての総細孔容積」の特徴とdの「骨格密度」の特徴との組み合わせが、a、b、c、d及びeの特徴うち「少なくとも1つ」の特徴の組み合わせに含まれるものであることは明らかである。
また、本件明細書の【0212】~【0215】に記載される本件発明の多孔質炭素材料に関する実施例において、それら物性を示した【表4】~【表7】によれば、本件訂正後の請求項4の細孔容積[cm3/g](aの特徴)の条件、及び骨格密度[g/cm3](dの特徴)の条件を満たすものも記載されているから、上記訂正事項は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
ウ 上記訂正事項は、上記アで述べたように、本件訂正前の多孔質炭素材料が含む多数のa~eの特徴の組み合わせの範囲の中から、aの特徴及びdの特徴の組み合わせに限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 独立特許要件について
上記訂正事項は、請求項4を引用する請求項5及び7についても同様に訂正するものであるから、上記訂正事項による請求項5及び7に係る訂正は、請求項4に係る訂正と同様に、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。そして、これらの請求項は、特許異議の申立ての対象となっていない請求項であるから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合する(特許出願の際独立して特許を受けることができるものである)必要がある。
そこで検討するに、請求項5及び7に係る発明は、請求項1~4を引用し、これらの請求項に記載される発明特定事項を全て含み、請求項1~4に係る発明をさらに限定するものであるところ、訂正後の請求項4に係る発明は、後記第5の3で述べるとおり、特許法第29条第1項及び第2項の規定に違反するものではなく、本件訂正に起因する記載不備も認められないから、訂正後の請求項4を引用する場合、請求項5及び7に係る発明は、特許を受けることができないものではない。また、請求項1~3(申立の対象外)を引用する場合、請求項5及び7に係る発明が特許を受けることができないとする理由や証拠は見当たらない。
そうすると、請求項5及び7に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであり、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合する。
4 訂正についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において読み替えて準用する同法第126条第5項から第7項までの規定に適合するものである。
よって、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔4、5、7〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
本件特許異議申立ての対象となる請求項4に係る発明(以下、請求項4に係る発明及び特許を、それぞれ「本件発明」及び「本件特許」などという。)は、訂正特許請求の範囲の請求項4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項4】
10nm~10,000nmの範囲の直径を有する細孔について0.4~2.8cm3/gの範囲の総細孔容積、及び1.8~2.3g/cm3の範囲の骨格密度を有する多孔質炭素材料。」
第4 令和5年7月25日付けで通知した取消理由(決定の予告)、令和4年10月25日付けで通知した取消理由、及び異議申立人による特許異議の申立理由の概要
1 令和5年7月25日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要
(1)特許法第29条第1項第3号所定の規定違反(新規性欠如)(取消理由1)
先の訂正における請求項4に係る発明は、下記引用例1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、その特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。
(2)特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)(取消理由2)
先の訂正における請求項4に係る発明は、下記引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
なお、上記引用例1は、異議申立人が令和5年3月16日に提出した意見書に添付された参考資料1である。他に、同意見書に添付して参考資料2、同年12月4日に提出した意見書に添付して参考資料3~5が提出されている。
記
引用例1 :国際公開第2015/152088号
参考資料2:国際公開第2015/152091号
参考資料3:国際公開第2015/141853号
参考資料4:特表2016-526755号公報
参考資料5:特表2017-524634号公報
2 令和4年10月25日付けで通知した取消理由の概要
(1)特許法第29条第1項第3号所定の規定違反(新規性欠如)(取消理由3)
特許査定時の請求項4に係る発明は、下記甲第1号証~甲第5号証にそれぞれ記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、その特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。
(2)特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)(取消理由4)
特許査定時の請求項4に係る発明は、下記甲第1号証~甲第5号証にそれぞれ記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
なお、令和4年10月25日付けで通知した取消理由は、特許異議申立てで申し立てられた理由及び証拠をすべて採用している。
記
甲第1号証:特開2016-28008号公報
甲第2号証:特表2015-516373号公報
甲第3号証:特表2014-522355号公報
甲第4号証:特開2017-135187号公報
甲第5号証:特表2017-519053号公報
(以下、甲第1号証を略して、「甲1」などという。)
第5 当審の判断
1 引用例1及び甲1~甲5に記載された事項
(1)引用例1に記載された事項
ア 「請求の範囲
[請求項1] ブタノール法によって求められる真密度(ρBt)が1.55g/cm3以上1.75g/cm3未満、リチウム参照電極基準で0.05V~1.5Vにおける負極の放電容量が180mAh/g以上であり、
リチウム参照電極基準で0.2Vから1.1Vに相当する放電容量X(Ah/g)と電位差0.9(V)とから計算される放電曲線の傾き0.9/X(Vg/Ah)が0.75(Vg/Ah)以下であり、25℃50%RH空気雰囲気で100時間保存後の吸湿量が1.5wt%以下であることを特徴とする非水電解質二次電池負極用炭素質材料。
[請求項2] ヘリウム置換法によって求められる真密度(ρHe)が、1.76g/cm3以上である請求項1に記載の非水電解質二次電池負極用炭素質材料。
・・・
[請求項4] 窒素ガスの吸着によるBET法により求めた比表面積(BET)(m2/g)と、平均粒子径(単位:μm)をDv50とした場合に、計算式「6/(Dv50×ρBt)」から求められる比表面積(CALC)(m2/g)との比表面積比(BET/CALC)が、5.5超である請求項1から3のいずれかに記載の非水電解質二次電池負極用炭素質材料。
[請求項5] 平均粒子径が1μm以上15μm以下である請求項1から4のいずれかに記載の非水電解質二次電池負極用炭素質材料。」
イ 「技術分野
[0001] 本発明は、非水電解質二次電池負極用炭素質材料、非水電解質二次電池用負極電極、非水電解質二次電池及び車両に関する。
・・・
発明が解決しようとする課題
[0005] 本発明の目的は、体積当たり放電容量が高くかつ保存特性に優れる非水電解質二次電池負極用炭素質材料及び非水電解質二次電池用負極電極、並びにこの非水電解質二次電池用負極電極を備える非水電解質二次電池及び車両を提供することにある。
課題を解決するための手段
[0006] 本発明者らは、ブタノール法によって求められる真密度(ρBt)が1.55g/cm3以上1.75g/cm3未満である炭素質材料において、リチウム参照電極基準で0.2Vから1.1Vの放電容量X(Ah/g)と電位差0.9(V)とから計算される放電曲線の傾き0.9/X(Vg/Ah)が大きいと、放電容量が高いにもかかわらず吸湿性が低く、その結果、保存特性に優れる炭素質材料が提供されることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的に、本発明は以下のようなものを提供する。
[0007] (1) ブタノール法によって求められる真密度(ρBt)が1.55g/cm3以上1.75g/cm3未満、リチウム参照電極基準で0.05V~1.5V負極の放電容量が180mAh/g以上であり、リチウム参照電極基準で0.2Vから1.1Vの放電容量X(Ah/g)と電位差0.9(V)とから計算される放電曲線の傾き0.9/X(Vg/Ah)が0.75(Vg/Ah)以下であり、25℃50%RH空気雰囲気で100時間保存後の吸湿量が1.5wt%以下である非水電解質二次電池負極用炭素質材料。」
ウ 「[0020] ρBtは、ブタノールが進入できる細孔の存在量に関係することから、微細な細孔が増し、吸湿性が過度に高まり保存安定性を損ないやすい点と、体積当たり放電容量の向上の点とのバランスから、1.55g/cm3以上であることが好ましく、より好ましくは1.59g/cm3以上、1.61g/cm3以上である。他方、真密度の増加は、結晶構造の規則性の高い材料になる傾向があるので、充放電に伴う膨張収縮を抑制する観点から、1.70g/cm3以下であることが好ましく、より好ましくは1.68g/cm3以下である。
・・・
[0023] 本発明において、ヘリウム置換法によって求められる真密度(ρHe)は、体積当たり放電容量の向上の点で、1.76g/cm3以上であることが好ましく、より好ましくは1.85g/cm3以上であり、吸湿性を抑える点で、2.09g/cm3以下であることが好ましく、より好ましくは2.03g/cm3以下である。ρHeは、ヘリウムが進入できる大きさの孔の多さに依存するところ、このような孔は、吸湿に大きく関与する比較的大きい孔だけでなく、Liの吸蔵放出への関与の度合いが高いと考えられる細孔も包含する。このため、ρHeは、体積当たり放電容量及び吸湿性の双方に影響を与える。
[0024] 本発明において、ρHeとρBtとの比(ρHe/ρBt)は、吸湿性が過度に高まり保存安定性を損ないやすい点と、体積当たり放電容量の向上の点とのバランスから、1.10以上であることが好ましい一方、1.37以下であることが好ましく、より好ましくは1.28以下である。この比率は、ブタノールは進入できないがヘリウムは進入できる大きさの細孔の多さを反映しており、このような細孔は、雰囲気中の吸湿への関与より、Liの吸蔵放出への関与の度合いが高いと考えられる。
・・・
[0026] 本発明の炭素質材料の窒素吸着のBET法により求めた比表面積(BET)は、過小であると電池の放電容量が小さくなる傾向があるため、1m2/g以上、好ましくは1.6m2/g以上、より好ましくは、2.0m2/g以上である。他方、BET比表面積が大きすぎると、得られる電池の不可逆容量が大きくなる傾向があるため、25m2/g以下が好ましい。より好ましくは、20m2/g以下である。
・・・
[0030] 出力特性を向上させるには電極の活物質層を薄くすることが重要であり、そのためには平均粒子径を小さくすることが重要である。しかし、平均粒子径が小さ過ぎると微粉が増加し安全性が低下するので好ましくない。また、粒子が小さすぎると電極にするために必要なバインダー量が多くなり、電極の抵抗が増加する。一方、平均粒子径が大きくなると、電極を薄く塗工することが困難になり、さらに粒子内でのリチウムの拡散自由行程が増加するため急速な充放電が困難となる。このため、平均粒子径Dv50(すなわち累積容積が50%となる粒子径)は、1~15μmであることが好ましく、より好ましくは1.5μm以上、2μm以上である一方、13μm以下、12μm以下である。」
エ 「[0032](炭素前駆体)
本発明の炭素質材料は、炭素前駆体から製造されるものである。炭素前駆体として、石油ピッチ若しくはタール、石炭ピッチ若しくはタール、熱可塑性樹脂、又は熱硬化性樹脂を挙げることができる。また、熱可塑性樹脂としては、ポリアセタール、ポリアクリロニトリル、スチレン/ジビニルベンゼン共重合体、ポリイミド、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、フッ素樹脂、ポリアミドイミド、又はポリエーテルエーテルケトンを挙げることができる。更に、熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂を挙げることができる。
なお、本明細書において、「炭素前駆体」は、未処理の炭素質の段階から、最終的に得られる非水電解質二次電池負極用炭素質材料の前段階までの炭素質を意味する。すなわち、最終工程の終了していないすべての炭素質を意味する。
・・・
[0044] また、空気などの酸化剤で処理して架橋反応を進める場合は、以下のような方法で炭素前駆体を得ることが好ましい。すなわち石油ピッチ又は石炭ピッチに対し、添加剤として沸点200℃以上の2乃至3環の芳香族化合物又はその混合物を加えて加熱混合した後、成形しピッチ成形体を得る。次にピッチに対し低溶解度を有しかつ添加剤に対して高溶解度を有する溶剤でピッチ成形体から添加剤を抽出除去して多孔性ピッチとした後、酸化剤を用いて酸化し、炭素前駆体を得る。前記の芳香族添加剤の目的は、成形後のピッチ成形体から該添加剤を抽出除去して成形体を多孔質とし、酸化による架橋処理を容易にし、また炭素化後に得られる炭素質材料を多孔質にすることにある。前記の添加剤としては、例えばナフタレン、メチルナフタレン、フェニルナフタレン、ベンジルナフタレン、メチルアントラセン、フェナンスレン、又はビフェニル等の1種又は2種以上の混合物から選択することができる。ピッチに対する芳香族添加剤の添加量は、ピッチ100質量部に対し30~70質量部の範囲が好ましい。」
オ 「[0062](ヘリウム法による真密度(ρHe))
ρHeの測定は、島津製作所社製乾式自動密度計アキュピックII1340を用いた。試料を予め200℃で5時間以上乾燥した後、測定を行った。10cm3のセルを用い、1gの試料をセルに入れ、周囲温度は23℃で測定を行った。パージ回数は10回とし、そのうち、体積値が繰り返し測定により0.5%以内で一致することを確認した5回(n=5)の平均値を用いて、ρHeとした。
[0063] 測定装置は試料室及び膨張室を有し、試料室は室内の圧力を測定するための圧力計を有する。試料室と膨張室はバルブを備える連結管により接続されている。試料室にはストップバルブを備えるヘリウムガス導入管が接続され、膨張室にはストップバルブを備えるヘリウムガス排出管が接続されている。
[0064] 具体的には、測定は以下のようにして行った。
試料室の容積(VCELL)及び膨張室の容積(VEXP)は体積既知の校正球を使用して予め測定しておく。試料室に試料を入れ、系内をヘリウムで満たし、その時の系内圧力をPaとする。次にバルブを閉じ、試料室のみヘリウムガスを加え圧力P1まで増加させる。その後バルブを開け、膨張室と試料室を接続すると、膨張により系内圧力はP2まで減少する。
このとき試料の体積(VSAMP)は次式で計算する。
[0065][数2]
[図:0001410177000001.jpg]
したがって、試料の質量をWSAMPとすると密度は
[0066][数3]
[図:0001410177000002.jpg]
となる。
[0067](窒素吸着による比表面積(BET))
以下にBETの式から誘導された近似式を記す。
[0068][数4]
[図:0001410177000003.jpg]
上記の近似式を用いて、液体窒素温度における、窒素吸着による1点法(相対圧力x=0.2)によりvmを求め、次式により試料の比表面積を計算した。
[0069][数5]
[図:0001410177000004.jpg]
このとき、vmは試料表面に単分子層を形成するに必要な吸着量(cm3/g)、vは実測される吸着量(cm3/g)、xは相対圧力である。
[0070] 具体的には、MICROMERITICS社製「Flow Sorb II2300」を用いて、以下のようにして液体窒素温度における炭素質材料への窒素の吸着量を測定した。粒子径約1~20μmに粉砕した炭素質材料を試料管に充填し、ヘリウム:窒素=80:20の混合ガスを流しながら、試料管を-196℃に冷却し、炭素質材料に窒素を吸着させる。つぎに試料管を室温に戻す。このとき試料から脱離してくる窒素量を熱伝導度型検出器で測定し、吸着ガス量vとした。
・・・
[0074](レーザー回折法による平均粒子径(Dv50))
試料約0.01gに対し、分散剤(カチオン系界面活性剤「SNウェット366」(サンノプコ社製))を3滴加え、試料に分散剤を馴染ませる。次に純水を加えて、超音波により分散させた後、粒径分布測定器(島津製作所社製「SALD-3000S」)で、複素屈折率パラメータ(実数部-虚数部)を2.0-0.1iとし、粒径0.08~3000μmの範囲の粒径分布を求めた。得られた粒径分布から、累積容積が50%となる粒径をもって、平均粒子径Dv50とした。」
カ 「[0083](実施例1)
軟化点205℃、H/C原子比0.65の石油ピッチ70kgと、ナフタレン30kgとを、撹拌翼および出口ノズルのついた内容積300リットルの耐圧容器に仕込み、190℃で加熱溶融混合を行った後、80~90℃に冷却し、耐圧容器内を窒素ガスにより加圧して、内容物を出口ノズルから押出し、直径約500μmの紐状成型体を得た。次いで、この紐状成型体を直径(D)と長さ(L)の比(L/D)が約1.5になるように粉砕し、得られた破砕物を93℃に加熱した0.53質量%のポリビニルアルコール(ケン化度88%)を溶解した水溶液中に投入し、撹拌分散し、冷却して球状ピッチ成型体スラリーを得た。大部分の水をろ過により取り除いた後、球状ピッチ成形体の約6倍量の質量のn-ヘキサンでピッチ成形体中のナフタレンを抽出除去した。このようにして得た多孔性球状ピッチを、流動床を用いて、加熱空気を通じながら、240℃まで昇温し、240℃に1時間保持して酸化し、熱に対して不融性の多孔性球状酸化ピッチを得た。
次に多孔性球状酸化ピッチ100gを直径50mmの縦型管状炉に入れて、600℃まで100℃/hの速度で昇温し、600℃で1時間保持して予備焼成を実施し、炭素前駆体を得た。予備焼成は流量5L/minの窒素雰囲気下で行った。得られた炭素前駆体を粉砕し、平均粒径4.8μmの粉末状炭素前駆体とした。続いて、この粉末状炭素前駆体10gを直径100mmの横型管状炉に入れ、250℃/hの昇温速度で1200℃まで昇温し、1200℃で1時間保持して、本焼成を行い、炭素質材料1を調製した。なお、本焼成は、流量10L/minの窒素雰囲気下で行った。
[0084](実施例2)
本焼成時の窒素流量を1L/minに変更した以外は、実施例1と同様の方法で炭素質材料2を得た。
・・・
[0088](実施例6)
炭素前駆体の粉砕粒径を3μmに変更した以外は、実施例1と同様の方法で炭素質材料6を得た。
・・・
[0101]
[表1]
[図:0001410177000005.jpg]
」
(2)甲1に記載された事項
ア 「【請求項1】
以下の方法段階
(a) 互いに接続されている孔を有する、無機材料のマトリックス製のモノリス状テンプレートを製造する段階、
(b) 該テンプレートの孔に、炭素または炭素前駆体物質を浸透させて、マトリックス材料で取り囲まれた炭素含有グリーン体骨格を形成する段階、および
(c) 該グリーン体骨格をか焼して、多孔質炭素製品を形成する段階
を含む多孔質炭素製品の製造方法であって、テンプレートの製造がスート堆積プロセスを含み、その際、マトリックス材料の加水分解性または酸化性の出発化合物を反応ゾーンに供給し、該反応ゾーン内で、加水分解または熱分解によってマトリックス材料粒子に変換し、該マトリックス材料粒子をアグロメレート化またはアグリゲート化し、且つ、テンプレートに成形することを特徴とする、製造方法。
・・・
【請求項12】
多孔質の炭素薄片の形で存在することを特徴とする、階層的な孔構造を有する多孔質炭素を含有する炭素製品。」
イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、多孔質炭素製の製品の安価な製造を可能にする方法を提供するという課題に基づいている。
【0020】
さらには、本発明は、階層的な孔構造を有し、且つ、リチウムイオン電池の電極における使用の際の高い急速充電能力の点において際立っている、多孔質の炭素製の製品を示すという課題に基づいている。
【0021】
さらには、本発明は、テンプレートとして使用するためのマトリックス材料を示すという課題に基づいている。」
ウ 「【0071】
図3および4によるスート体のSEM写真は、多数の結びついた孔および種々の大きさの中空室を有する骨格構造を示す。図4から、殊に明らかに、骨格構造が個々の球状且つ互いに合体したSiO2二次粒子から構成されていることが識別可能である。これは、大きな中空室からチャネル状に張りめぐらされている、華奢な寸断された表面を形成する。BET法(DIN ISO 9277、2003年5月)によって内部の比表面積を測定すると、測定値20m2/g程度である。
【0072】
該スート体は、多孔質炭素製造のためのテンプレートとして使用される。このために、スート体を、メソフェーズピッチのTHF溶液の浸漬浴に入れる。浸透された材料を引き続き乾燥させる。この浸透および乾燥段階を、特記すべき空孔容積がもはや残らなくなるまで繰り返す。
【0073】
スート体および乾燥されたピッチ層からそのように得られたグリーン体骨格を、窒素中での加熱によってか焼する。それにより、比表面積(BETによる)約100m2/gを有する、石英ガラスおよび炭素製の骨格状の複合構造が形成される。SiO2スート体に対する比表面積の上昇は、炭素占有物の微細構造に起因するかもしれない。
【0074】
SiO2マトリックス材料の除去を、浸透されたスート体をフッ酸浴中に入れることによって行う。SiO2骨格をエッチング除去した後、そのように得られた、多孔質炭素製の成形体を濯ぎ、且つ乾燥させ、真空下、2500℃ほどの温度でのさらなるか焼段階に供して、さらに黒鉛化する。
【0075】
そのように得られた炭素製品は、黒鉛のような層状の造りを有し、且つ、曲げられ且つ容易に圧縮され得る小板状または薄片状の形成物の多数の層から構成される。約50μmの平均厚さを有する個々の紙のような層は、SiO2スート体の元の層構造に起因する。
【0076】
図5のSEM写真は、そのように得られた、多孔質炭素製の成形体の孔構造を示す。これは、元の球面のSiO2二次粒子の反転転写を示しており、且つそのほかに、テンプレートの孔構造に似ている。殊に、それは多数の比較的大きな孔のチャネル(マクロ孔)を有し、そのほかに華奢な寸断された表面構造が張りめぐらされている、階層的な孔構造の点で際立っている。BET法によって内部の比表面積を測定すると、測定値200m2/g程度、従って、炭素および石英ガラス製の複合体の比表面積のほぼ2倍である。
【0077】
図6のグラフは、多孔質炭素の孔径分布を示す。左の縦座標に累積の孔容積Vc[cm3/g]が、右の縦座標に相対孔容積Vr[%]が、孔の直径D[nm]に対してプロットされている。その際、示された測定結果は、水銀ポロシメトリーを用いて得られたことに留意すべきである。該技術は、非ぬれ性液体の水銀を多孔質の系に圧力下で貫入することに基づく。この方法は、孔径分布、孔容積、見かけおよび実際の密度についての信頼性のある情報を、マクロ孔から大きなメソ孔までの範囲でもたらすが、しかし、ナノメートル領域の孔についてはそうではない。
【0078】
多孔質炭素が、5nm~100000nmにわたり、且つ400nm周辺に孔径の最大値を示す、広い孔径分布の点で際立っていることが認識される。そこから算出される内部の比表面積は、約27m2/gである。BET法によって算出された、およそ200m2/gである値とのずれは、内部表面全体に対して最大割合を構成するナノメートル領域の孔が、この測定では検知され得ないからだと説明される。
【0079】
この炭素製品は、充電式リチウムイオン電池の電極製造用の出発材料として使用される。このために、それを粉砕し、且つ分散液に取り込み、且つ、通常の方法を用いて電極に加工する。その際、粒子の小板または薄片の形態、およびその広い孔径分布、並びに階層的な孔構造は、残って保たれている。このことは、リチウムイオン電池の高い急速充電能力のための前提条件である。」
エ 「【図6】
[図:0001410177000006.jpg]
」
(3)甲2に記載された事項
ア 「【請求項1】
全細孔容積の20%~90%が、2nm以下の平均直径を有する細孔から構成され、及び全細孔容積の残りの75%以上が、30nm~500nmの平均直径を有する細孔から構成される、肝疾患の治療又は予防における使用のための多孔性炭素粒子。」
イ 「【0001】
本発明は、直径が2nm以下のマイクロポア、及び直径が30nm~500nmのメソポア/小さなマクロポアを含むが、直径が2nmを超え且つ30nm未満のメソポアを実質上含まず、及び直径が500nmを超える大きなマクロポアを実質上含まない多孔性炭素粒子を使用する、肝疾患の治療又は予防に関する。また、本明細書では、全細孔容積の少なくとも20%が、2~200nmの平均直径を有する細孔から構成される多孔性炭素粒子を使用する肝疾患の治療又は予防が開示される。本発明は、また、このような多孔性炭素粒子を使用する、肝疾患の治療又は予防方法に関する。」
ウ 「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、肝疾患の治療又は予防に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明は、全細孔容積の20%~90%は、2nm以下の平均直径を有する細孔から構成され、及び残りの全細孔容積の75%以上は、30nm~500nmの平均直径を有する細孔から構成される、肝疾患の治療又は予防における使用のための多孔性炭素粒子を提供する。
【0007】
本発明は、また、有効量のこのような多孔性炭素粒子を投与することを含む、肝疾患の治療又は予防方法を提供する。
【0008】
本発明は、また、肝疾患を治療又は予防するための医薬品の製造における、このような多孔性炭素粒子の使用を提供する。」
エ 「【0012】
本明細書中で使用する場合、用語「マイクロポア」は、窒素吸着法及び水銀ポロシメトリー法で測定した場合に、IUPACにより定義されているように直径が2nm以下の細孔を指す。
【0013】
本明細書中で使用する場合、用語「メソポア」は、窒素吸着法及び水銀ポロシメトリー法で測定した場合に、IUPACにより定義されているように直径が2nmを超え、50nm未満である細孔を指す。
【0014】
本明細書中で使用する場合、用語「マクロポア」は、窒素吸着法及び水銀ポロシメトリー法で測定した場合に、IUPACにより定義されているように直径が50nm以上の細孔を指す。」
オ 「【0024】
本発明で使用するための多孔性炭素粒子において、全細孔容積の20%~90%は、2nm以下の平均直径を有する細孔(マイクロポア)から構成され、残りの全細孔容積(すなわち、2nmを超える平均直径を有する細孔から構成される細孔容積)の75%以上が、30nm~500nmの平均直径を有する細孔(メソポア/小さなマクロポア)から構成される。
【0025】
したがって、多孔性炭素粒子は、細孔径の二峰性分布を有することができ、それによって、全細孔容積は、マイクロポア及び大きなメソポア/小さなマクロポアの範囲に分配され、直径が30nm未満のメソポア又は大きなマクロポアを実質上含まない。平均直径が500nmを超える細孔は粒子の物理的強度を低下させ、及び吸着性の向上をほとんど又は全く提供しないので、大きなマクロポアの存在は、好ましくは最小化される。
【0026】
典型的には、直径が30nm未満のメソポアは、全細孔容積の20%以下、より好ましくは15%以下、さらにより好ましくは10%以下を構成する。典型的には、大きなマクロポアは、全細孔容積の20%以下、より好ましくは15%以下、さらにより好ましくは10%以下を構成する。典型的には、直径が30nm未満のメソポア及び大きなマクロポアは、全体として、全細孔容積の20%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下を構成する。
【0027】
典型的には、全細孔容積の25%~70%、好ましくは35%~60%、より好ましくは45%~55%は、2nm以下の平均直径を有する細孔から構成される。
【0028】
典型的には、残りの全細孔容積の80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上が、30nm~500nm、好ましくは30nm~300nm、より好ましくは50~200nmの平均直径を有する細孔から構成される。」
カ 「【0039】
特に好ましい一実施形態において、本発明中で使用するための多孔性炭素粒子は、下記に示す特性を有する:
・マイクロポアの細孔径 0.5~2nm
・BET表面積 700~2000m2/g、好ましくは1000~1500m2/g
・マイクロポアの細孔容積 0.1~1.1cm3/g、好ましくは0.3~1.0cm3/g
・メソポア/小さなマクロポアの大きさ 30~500nm、好ましくは50~300nm
・メソポア/小さなマクロポアの容積 0.8~2.5cm3/g
・全細孔容積 0.9~3.5cm3/g、好ましくは1.1~2.0cm3/g
・マイクロポアの比率(%容積) 27%~29%。」
キ 「【0050】
好ましくは、多孔性炭素粒子は、2~2000μm、例えば、50~2000μm、200~1600μm、又は100~1000μmの平均直径を有する。適切な粒子は、したがって、例えば、200~600μm、好ましくは250~500μmの平均直径を有することができる。その他の適切な粒子は、1000~2000μm、好ましくは1000~1500μmの平均直径を有することができる。しかし、1000μm以下の平均直径を有する粒子が好ましい。粒径は、レーザー回折を使用して(例えば、Malvern Instruments社のMalvern粒度分布測定装置を使用して)測定することができる。」
ク 「【0059】
生じる樹脂を、不活性雰囲気中で少なくとも600℃の温度まで加熱することによって炭化して、二峰性分布の細孔を有する材料を得ることができ、窒素吸着によって評価した場合、細孔構造は、マイクロポア及びメソポア又はマクロポアを含む。メソポアについての細孔容積の細孔半径の対数に対する微分値(dV/dlogR)は、20~500Åの範囲の細孔径の少なくとも一部の値について0.2を超える。メソポア性炭素は、賦活なしで250~700m2/gのBET表面積を有することができる。その多孔性炭素を、二酸化炭素、蒸気又はこれらの混合物の存在下に高温度で加熱することによって、例えば、それを二酸化炭素中、800℃以上で加熱することによって、賦活することができる。次いで、それは、2000m2/gまでの、さらにより大きな例えば1000~2000m2/gの表面積を有することができる。本明細書中で使用する場合、用語「BET表面積」は、ASTM D1993-91に従い、ASTM D6556-04も参照して、Brunauer,Emmett and Teller(BET)法によって決定される。本発明の目的の場合、二酸化炭素を使用するのが好ましい。」
ケ 「【実施例】
【0141】
<材料及び方法>
<炭素材料>
[調製例1]
平均分子量が700~800Dの100重量部の工業用ノボラック樹脂(Hexion Specialty Chemicals)のエチレングリコール溶液を90~95℃に加熱し、同温度まで加熱された15~20重量部のヘキサメチレンテトラミン(ヘキサミン)のエチレングリコール溶液と2~5分間徹底的に混合した。生じた澄明溶液を、主要成分が多不飽和(酸化)植物油である工業用乾性油(デニッシュオイル)である0.2~1%(v/v)の分散剤を含む2.5~6倍容の熱い(150~155℃)撹拌された低粘度鉱油(絶縁油又は変圧器油)中に1本の流れの状態で注ぎ入れた。混合物の温度は、135~140℃に降下し、混合物を15~20分かけて150~155℃まで再加熱した。典型的には、硬化は、ほぼ140℃で1~2分以内に起こり、続いてかなりの気体が発生した。15~20分間の150~155℃までのさらなる加熱は、硬化の完結を確実にした。混合物を冷却し、生じたビーズを、濾過又は遠心分離により鉱油から分離した。エチレングリコールを、複数回の熱水抽出によって、又は真空乾燥(120℃、50mmHg)によって樹脂から除去した。上記方法で、ヘキサミン含有量は、国際公開第02/12380号の実施例3に比較して、100重量部のノボラックにつき先に例示された9重量部から15~20重量部まで増加され、樹脂溶液が注ぎ入れられる鉱油の温度は、115~120℃から150~155℃まで高められ、先に例示されたような「緩慢」な硬化よりもむしろ「急速」な硬化が引き起こされる。
【0142】
水洗されて湿った、乾燥された、又は真空乾燥された樹脂ビーズを、熱処理し、炭素材料を作り出した。典型的な方法は、限定はされないが、外界温度から800℃まで3℃/分で上昇する温度での二酸化炭素流中での炭化、粒径による分級、及び選択された画分の二酸化炭素流中での900℃でのさらなる「物理的」賦活から構成された。当技術分野で公知のこの定型的方法の多くの変形形態も適用することができる。これらのサンプルにおける賦活度は、ほぼ30%であった。」
(4)甲3に記載された事項
ア 「【請求項1】
炭素相と、
上記炭素相に配置される一つ以上の細孔相と、を含み、
粒子の炭素相が、上記細孔相とともに、ほぼ共連続で不規則な複数の相領域を形成し、細孔相の隣接する相領域の間の距離が実質的に50nm以下であることを特徴とする粒状多孔質炭素材料。」
イ 「【0001】
本発明は、炭素C相及び細孔相を含む新規な粒状多孔質炭素材料、及び当該材料のリチウム電池における使用方法に関する。また、本発明は、このような炭素材料の製造方法、並びに元素状硫黄及び一種以上の本発明の粒状多孔質炭素材料を含む複合材料に関する。」
ウ 「【発明が解決しようとする課題】
・・・
【0015】
本発明の目的は、特にリチウム-硫黄電池用のリチウム電池用正極材料の製造に適しており、従来技術の欠点を解消する電気活物質を提供することである。この電気活物質を用いて製造される正極材料は、一つ以上、特に二つ以上の下記の性質を有するべきである。
【0016】
-高い比容量、
-高サイクル安定性、
-自己放電が低い、
-優れた機械的安定性。
【0017】
さらに、材料は、経済的で且つ、特に再現可能な品質で製造可能であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的は、驚くべきことに、以下で定義される炭素材料を含む硫黄複合材料により達成されることがわかった。
【0019】
本発明の炭素材料は、炭素相(以下、炭素C相又はC相とも記載する)と、一つ以上の細孔相(以下、細孔相P又はP相とも記載する)と、を含み、粒子の炭素相及びほぼ非整列の共連続相領域である細孔相を形成し、隣接する細孔相の領域の間の距離が、ほぼ、特に50nm以下、好ましくは20nm以下、又は10nm以下、例えば0.5~50nm、好ましくは0.7~20nm、及び特に1~10nmである粒状多孔質炭素材料である。」
エ 「【0036】
本発明の粒状炭素材料は、通常、微細孔を有している。これは、10nm未満、例えば1~5nmの平均孔径d(平均孔半径rの2倍に対応する)を有する細孔であることを意味している。微小孔の比容積、すなわち、炭素材料1gあたりの微小孔の容積は、一般的に0.1cm3/g以上、特に0.2cm3/g以上、特に0.3cm3/g以上、並びに通常、0.1~1.5cm3/g、しばしば0.2~1.2cm3/g、及び特に0.3~1.0cm3/gである。本発明の特定の実施の形態では、炭素材料の1g当たりの微小孔の容積は、0.5~1cm3/gの範囲である。細孔の比容積は、ドイツ工業規格DIN66134で規定された「Barrett, Joyner and Halenda」(BJH窒素吸着)の方法により測定することができる。そして、この比容積は、ここで報告される値の基礎となる(「E.P. Barrett, L.G. Joyner, P.P. Halenda, J. Am. Chem. Soc. 73 (1951) 373」も参照)。
【0037】
微小孔の場合と同様に、本発明の粒状炭素材料は、メソ細孔を有していても良い。これは、5~300nmの範囲、特に10~200nm、又は15~200nmの範囲の平均孔径dを有する細孔であることが理解される。メソ細孔の特定容積、すなわち、炭素材料の1g当たりのメソ細孔の容積は、一般的に0.1cm3/g以上、特に0.2cm3/g又は0.3cm3/gであり、例えば0.1~2.9cm3/gの範囲、特に0.2~2.7cm3/gの範囲、又は0.3~2.5cm3/gの範囲である。メソ細孔の比容積は、BJH窒素吸着法により、ドイツ工業規格DIN66134にしたがいBJH窒素吸着により測定される。
【0038】
本発明の炭素材料の全細孔比容積は、通常、0.3~3cm3/gの範囲、しばしば0.5~2.9cm3/gの範囲、及び特に0.6~2.8cm3/gの範囲であり、この値はドイツ工業規格DIN66134にしたがい測定される。
【0039】
微小孔及び任意のメソ細孔の容積が高いために、本発明の炭素材料は、通常、200~3000m2/gの範囲、しばしば500~3000m2/gの範囲、特に800~1500m2/gの範囲、及び特に900~1400m2/gの範囲の高いBET比表面積を有する。なお、このBET比表面積の測定は、DIN ISO69277において記載されている「Brunauer, Emmett and Teller」の窒素吸着法によって測定される。」
オ 「【0042】
通常、粒子の重量平均粒径は、20nm~50μm、しばしば50nm~50μm、好ましくは200nm~20μm、特に1μm~20μmの範囲である。ここで報告される粒子サイズ及び粒子サイズ分布は、23℃における遠心分離による測定に基づく質量比で判別される粒子径を基礎としている。この測定は、通常、遠心分離を用いた標準的な方法により実行される。」
カ 「【発明を実施するための形態】
・・・
【0169】
比表面積及び細孔径分布を、「Barret,Joyner and Halender」法によりドイツ工業規格DIN66134に基づき、窒素吸着・脱着等温線を測定することにより解析した。BET表面積を、窒素吸着を用いてDINISO9277にしたがい測定した。
・・・
【0172】
使用した粒状材料は、Aerosil(登録商標)300(一次粒子径7nm)及びAerosil(登録商標)OX50(一次粒子径40nm)のヒュームドシリカであった。
・・・
【0174】
実施例1~7:粒状材料を用いた一般的な炭素材料の製造方法
1)表1で示された1gの粒状材料を200mlのジクロロメタンに懸濁した。これに240mgのメタンスルホン酸を添加し、得られた分散液を22℃で15分間攪拌した。次に、溶媒を減圧下で除去した。このようにして得られた固体を200mlのトルエンで溶解させた。これに対して50mlのトルエンに2gの2,2’-スピロビ[4H-1,3,2-ベンゾジオキサシリン]を溶解させた溶液を滴下し、混合物を22℃で15分間攪拌した。続いて、粉末状固体を濾過し、40℃で一定質量になるまで減圧下において乾燥した。
【0175】
2)次に、工程(i)で得られた粉末を、管状炉内で、800℃又は1100℃のアルゴン流により2時間焼成した。このようにして黒色粉末を得た。
【0176】
3)その後、ステップ1で得られた粉体を、40%HF水溶液中で3日間保存した。次に、残りの粉末を濾別し、これを水とエタノールで洗浄し、一定質量となるまで減圧下において40℃で乾燥した。
【0177】
実施例8:粒状材料を使用しない炭素材料の製造のための一般的な方法
1)240mgのメタンスルホン酸を200mlのトルエンに溶解した。これに対して50mlのトルエンに2gの2,2’-スピロビ[4H-1,3,2-ベンゾジオキサシリン]を溶解させた溶液を滴下し、混合物を22℃で15分間攪拌した。続いて、粉末状固体を濾過し、40℃で一定質量になるまで減圧下において乾燥した。
【0178】
2)次に、工程(i)で得られた粉末を、管状炉内で、800℃又は1100℃のアルゴン流により2時間焼成した。このようにして黒色粉末を得た。
【0179】
3)その後、ステップ1で得られた粉体を、40%HF水溶液中で3日間保存した。次に、残りの粉末を濾別し、これを水とエタノールで洗浄し、一定質量となるまで減圧下において40℃で乾燥した。
・・・
【0182】
表1は、炭素質材料の製造について示している。
【0183】
【表1】
[図:0001410177000007.jpg]
」
(5)甲4に記載された事項
ア 「【請求項1】
負極集電体と、該負極集電体の片面又は両面にリチウムイオンを吸蔵・放出できる負極活物質を含む負極活物質層とを有し、
前記負極活物質は1次粒子径が0.005μm以上5μm以下の炭素材料であり、
前記負極集電体は、前記負極活物質層との接触面の少なくとも一部に凹部及び凸部から選択される形状を有する非平滑領域を含み、前記非平滑領域中の前記凹部及び凸部から選択される形状の頂点を10個以上含む直線について測定された十点平均粗さRzjisが5μm以上100μm以下であることを特徴とする、非水系リチウム型蓄電素子用の負極。
・・・
【請求項3】
前記負極活物質についてBET法により算出した比表面積が100m2/g以上600m2/g以下である、請求項1又は2に記載の負極。」
イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0009】
低温において蓄電素子の抵抗が増加する要因としては、非水系電解液のイオン伝導度の低下により、負極活物質層内においてリチウムイオンの拡散抵抗が増大することが考えられる。これを改善するために、本発明者らは、負極活物質として炭素材料を用い、該炭素材料の1次粒子径を小さく調整することにより、低温における出力特性を向上させる技術を提案した(例えば特許文献4)。これは、1次粒子同士が形成する間隙の存在によって負極活物質層内のリチウムイオンの拡散が良好になるとともに、この間隙に十分な非水系電解液を保持できることによると考えられる。
【0010】
一方で、1次粒子径が小さくなることにより、粒子同士の界面が増え、界面における電気抵抗が増大する。また、殆どの炭素材料は、低温になるに伴い電子伝導性が低下する。
そのため、1次粒子径の小さい炭素材料を負極活物質として用いた非水系リチウム型蓄電素子は、低温で、且つ低電圧の領域(負極活物質層における電子密度が低い場合)においては、低温によって電子伝導性が低下して、粒子界面における電子抵抗の影響が顕著になることにより、良好な入力特性を発現することが困難となる。
【0011】
以上の状況に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、低温においても高い入出力特性を示す非水系リチウム型蓄電素子用の負極、及び該負極を用いて成る、低温において高い入出力特性を示す非水系リチウム型蓄電素子を提供することである。
負極活物質層の電子伝導性を向上させる方法として、特許文献2には負極集電体表面に突起を形成する技術が開示されている。また、特許文献3では十点平均粗さRzjisが1.5~7.5μmの凹凸を持つ負極集電体を用いることによって該集電体と活物質層との間の密着性を向上し、負極の内部抵抗を低下させる技術が開示されている。しかし、これらの特許文献では、集電体に凹凸を設けることによる低抵抗化の効果を十分に発揮できる好ましい1次粒子径については、検討されていない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記課題を解決すべく研究を進めた。その結果、負極活物質として1次粒子径の小さい炭素材料を用いた場合において、負極集電体に従来よりも大きい凹凸形状を設けることにより、負極活物質層の電子密度が低い低電圧の状態においても電子伝導性を十分に確保することができ、低温における入力特性が顕著に向上することを見出した。そして、この知見に基づいて本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0013】
[1] 負極集電体と、該負極集電体の片面又は両面にリチウムイオンを吸蔵・放出できる負極活物質を含む負極活物質層とを有し、
前記負極活物質は1次粒子径が0.005μm以上5μm以下の炭素材料であり、
前記負極集電体は、前記負極活物質層との接触面の少なくとも一部に凹部及び凸部から選択される形状を有する非平滑領域を含み、前記非平滑領域中の前記凹部及び凸部から選択される形状の頂点を10個以上含む直線について測定された十点平均粗さRzjisが5μm以上100μm以下であることを特徴とする、非水系リチウム型蓄電素子用の負極。」
ウ 「【0033】
リチウムイオンを吸蔵放出できる炭素材料としては、例えば、難黒鉛化性炭素材料;易黒鉛化性炭素材料;カーボンブラック;活性炭;人工黒鉛;天然黒鉛;黒鉛化メソフェーズカーボン小球体;黒鉛ウイスカ;ポリアセン系物質等のアモルファス炭素質材料;石油系のピッチ、石炭系のピッチ、メソカーボンマイクロビーズ、コークス、合成樹脂(例えばフェノール樹脂等)等の炭素前駆体を熱処理して得られる炭素質材料;フルフリルアルコール樹脂又はノボラック樹脂の熱分解物;フラーレン;カーボンナノフォーン;及びこれらの複合炭素材料を挙げることができる。
【0034】
これらの中でも、BET法により算出した比表面積(以下、BET比表面積ともいう。)が100m2/g以上の多孔質炭素材料と、石油系のピッチ又は石炭系のピッチと、を共存させた状態で熱処理をして得ることができる、前記多孔質炭素材料と前記ピッチ由来の炭素質材料とから成る複合多孔質炭素材料が好ましい。熱処理を行う前に、ピッチの融点より高い温度において、多孔性炭素材料と該ピッチとを混合してもよい。熱処理温度は、使用するピッチが揮発又は熱分解して発生する成分が炭素質材料となる温度であればよい。好ましくは400℃℃以上1,500℃以下である。得られる炭素質材料は、熱処理温度が800℃以下の場合には多環芳香族系炭化水素、800℃以上の場合には低結晶性炭素が、それぞれ主成分であると考えられる。熱処理を行う雰囲気としては、非酸化性雰囲気が好ましい。
【0035】
負極活物質の1次粒子径は0.005μm以上5μm以下であることが好ましい。より好ましくは0.020μm以上、3.5μm以下、更に好ましくは0.025μm以上、3μm以下である。1次粒子径が0.005μm以上であれば、該負極活物質の取扱いが容易であり、且つ該負極活物質を含有する塗工液の溶媒量を少なくできるため、塗膜乾燥時の凝集による負極活物質層のヒビ割れを抑制できる。一方で、1次粒子径が5μm以下であれば、1次粒子同士が形成する間隙の存在によって、負極活物質層内のリチウムイオンの拡散を良好にできるとともに、この間隙に十分な非水系電解液を保持できるため、低温においても高い出力特性を発現することができる。」
エ 「【0075】
<負極活物質の調製>
[調製例1a]
BET比表面積が1,780m2/gのヤシ殻活性炭をボールミルにて粉砕し、分級して、1次粒子径を3.2μmに調整した。粉砕及び分級後のヤシ殻活性炭をステンレススチールメッシュ製の籠に150g入れ、石炭系ピッチ(軟化点:50℃)270gを入れたステンレス製バットの上に置き、両者を電気炉(炉内有効寸法300mm×300mm×300mm)内に設置して、熱反応を行うことにより、複合多孔質炭素材料1を得た。この熱処理は窒素雰囲気下で行い、600℃まで8時間で昇温し、同温度で4時間保持する方法によった。続いて自然冷却により60℃まで冷却した後、複合多孔質炭素材料1を炉から取り出した。
得られた複合多孔質炭素材料1について、走査電子顕微鏡を用いて上述した1)の方法で1次粒子径を求めた。また、ユアサアイオニクス社製細孔分布測定装置(AUTOSORB-1 AS-1-MP)を用いて、窒素を吸着質として吸脱着の等温線を測定し、上述した方法でBET比表面積を求めた。
複合多孔質炭素材料1の1次粒子径は3.4μm、BET比表面積は262m2/gであった。
【0076】
[調製例2a]
ヤシ殻活性炭を乾式ジェットミルで粉砕し、分級して、1次粒子径を0.65μmに調整して用いた以外は調整例1aと同様にして複合多孔質炭素材料2を製造し、評価を行った。複合多孔質炭素材料2の1次粒子径は0.68μm、BET比表面積は271m2/gであった。
【0077】
[調製例3a]
調製例2aで得た粉砕及び分級後のヤシ殻活性炭を、更に湿式ジェットミルで粉砕し、分級して1次粒子径を0.30μmに調整して用いた以外は調整例1aと同様にして複合多孔質炭素材料3を製造し、評価を行った。複合多孔質炭素材料3の1次粒子径は0.036μm、BET比表面積は286m2/gであった。
【0078】
[調製例4a]
軟化点が50℃の石炭系ピッチの代わりに軟化点が90℃の石炭系ピッチを用い、その使用量を150gとした他は調整例3aと同様にして複合多孔質炭素材料4を製造し、評価を行った。複合多孔質炭素材料4の1次粒子径は0.032μm、BET比表面積は307m2/gであった。
【0079】
[調製例5a]
BET比表面積が561m2/g、1次粒子径が0.46μmの黒鉛質を含むナノカーボン材料150gをステンレススチールメッシュ製の籠に入れ、石炭系ピッチ(軟化点:38℃)75gを入れたステンレス製バットの上に置き、両者を電気炉 (炉内有効寸法300mm×300mm×300mm)内に設置して、熱処理を行うことにより、複合多孔質炭素材料5を得た。この熱処理は、窒素雰囲気下で行い、680℃まで10時間で昇温し、同温度で4時間保持する方法によった。続いて自然冷却により60℃まで冷却した後、複合多孔質炭素材料5を炉から取り出した。得られた複合多孔質炭素材料5の1次粒子径は0.51μm、BET比表面積は405m2/gであった。」
(6)甲5に記載された事項
ア 「【請求項1】
乾燥によって非モノリス有機エアロゲルを形成することができるゲル化かつ架橋した未乾燥の水性高分子組成物であって、該水性高分子組成物が、ポリヒドロキシベンゼン(複数の場合もある)Rとホルムアルデヒド(複数の場合もある)Fとの重縮合から少なくとも部分的に得られる樹脂をベースとし、かつ少なくとも1つの水溶性カチオン性高分子電解質Pを含み、前記水性高分子組成物が、水性媒体中で架橋する剪断減粘性物理ゲルのミクロ粒子の水性分散液から形成されることを特徴とする、水性高分子組成物。
・・・
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のゲル化かつ架橋した未乾燥の水性高分子組成物を乾燥させることにより得られる非モノリス有機エアロゲルであって、該非モノリス有機エアロゲルが、炉内の加熱によって乾燥した前記ミクロ粒子の粉末から形成され、前記乾燥したミクロ粒子が、液体媒体中においてレーザー回折式粒度分析器を用いて測定した、10μm~80μmの体積中位粒径を有することを特徴とする、非モノリス有機エアロゲル。
【請求項8】
前記非モノリス有機エアロゲルの比表面積及び細孔容積がともに、主にミクロ多孔性、好ましくは60%より大きいミクロ多孔性を示すことを特徴とする、請求項7に記載の非モノリス有機エアロゲル。
【請求項9】
40mW/(m・K)以下の熱伝導率を有することを特徴とする、請求項7又は8に記載の非モノリス有機エアロゲル。
【請求項10】
請求項7~9のいずれか一項に記載の非モノリス有機エアロゲルの熱分解から得られる非モノリス多孔質炭素であって、該非モノリス多孔質炭素が、液体媒体中においてレーザー回折式粒度分析器を用いて測定した、10μm~80μm、好ましくは10μm~20μmの体積中位粒径を有するミクロスフェアの粉末から形成されることを特徴とする、非モノリス多孔質炭素。
【請求項11】
400m2/gより大きいミクロ多孔性比表面積及び200m2/g未満のメソ多孔性比表面積を含む、500m2/g以上の総比表面積、及び/又は、0.15cm3/gより大きいミクロ孔容積を含む0.25cm3/g以上の細孔容積を有することを特徴とする、請求項10に記載の非モノリス多孔質炭素。」
イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の目的は、非モノリス有機エアロゲルをミクロ粒子形態で直接形成することができるゲル化かつ架橋した未乾燥の水性高分子組成物を提供することであり、該水性高分子組成物は、上述の欠点を克服すると同時に、単純かつ費用のかからない方法、及び有機溶媒の使用又は超臨界乾燥による乾燥を必要としない急速乾燥によって得られる
【課題を解決するための手段】
【0021】
この目的は、本出願人が、驚くべきことに、RF前駆体及び水溶性カチオン性高分子電解質Pを水性相に先に溶解させた後に、この溶解により得られたプレポリマーを沈降させ、その後、プレポリマー溶液を水で希釈すると、ずり減粘性(剪断減粘性(shear-thinning))物理ゲルのミクロ粒子の水性分散液を得ることが可能となり、こうした分散液にもかかわらず多孔度及び比表面積がともにかなり大きく、主にミクロ多孔性であり、粉末状エアロゲル、及びその熱分解物である多孔質炭素が、高収率を伴って、架橋及びその後の単純な炉乾燥によってもたらされることを見出したことで実現される。」
ウ 「【実施例】
【0065】
「対照」例と比較した、エアロゲル及びそれに由来の多孔質炭素のゲル化かつ架橋した組成物の本発明による調製例:
以下の実施例は、本発明による3つのゲル化かつ架橋した未乾燥の組成物G1~G3、乾燥によりG1~G3にそれぞれ由来する粉末形態の本発明による3つのエアロゲルAG1~AG3、エアロゲルAG1~AG3の熱分解によってそれぞれ得られる本発明による3つの多孔質炭素C1~C3の調製を、ゲル化かつ架橋した「対照」組成物G0、同様に粉末形態のエアロゲルAG0、及びAG0に由来する多孔質炭素C0と比較して説明する。
・・・
【0067】
有機ゲルG0~G3を得るために、以下の試薬:
Acros Organicsによるレゾルシノール(R)、純度98%、
Acros Organicsによるホルムアルデヒド(F)、純度37%、
炭酸ナトリウム又は塩酸からなる触媒(C)、及び、
ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)(P)、純度35%(水溶液W中)、
を、触媒C及び高分子電解質Pの存在下で、レゾルシノールRとホルムアルデヒドFとの重縮合に使用した。
【0068】
これらの試薬は、
R/W:レゾルシノールと水との重量比、
R/F:レゾルシノールとホルムアルデヒドとのモル比、
R/C:レゾルシノールと触媒とのモル比、及び、
P/R:高分子電解質とレゾルシノールとの重量比、
とする、以下の表1に挙げられる量及び比率により使用した。
【0069】
1)ゲル化かつ架橋した組成物G1、エアロゲルAG1、及び多孔質炭素C1の調製:
a)ゲルG1を調製するために、初めにレゾルシノールをホルムアルデヒドに溶解した。その後これに、炭酸カルシウムの溶液、及びポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)の35%溶液からなる添加剤を15分間撹拌しながら添加した。得られた混合物のpHは6.5程であった。
【0070】
次に、この非粘性混合物を、70℃の油浴に浸したリアクタ内で30分間プレポリマー重合させた。形成したプレポリマーをその後、15℃まで冷却した後、25℃の水で25%に希釈した。RFゲルを完全に重合(架橋)させるために、得られた混合物を還流した。架橋されたゲルG1のミクロ粒子の水性分散液がその後得られた。希釈及び還流の条件は、以下の表2に示す。
【0071】
b)エアロゲルAG1を調製するため、分散液を放置し、ゲルG1の粒子を沈殿させた。分散剤の上澄みを除去し、得られた湿潤粉末を、70℃の炉に2時間入れ、これらのミクロ粒子を乾燥させた。
【0072】
c)多孔質炭素C1を調製するため、エアロゲルAG1を窒素下、800℃で熱分解させ、ミクロスフェアを得た。
【0073】
2)ゲル化かつ架橋した組成物G2、エアロゲルAG2及び多孔質炭素C2の調製:
a)ゲルG2を調製するため、初めにレゾルシノールをホルムアルデヒドに溶解した。その後これに、炭酸カルシウムの溶液、及びポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)の35%溶液からなる添加剤を15分間撹拌しながら添加した。得られた混合物のpHは6.5であった。
【0074】
次に、この非粘性混合物を、45℃の油浴に浸したリアクタ内で45分間プレポリマー重合させた。形成した混合物をその後、4℃の冷却器に24時間入れた。形成したプレポリマーをその後、水で希釈した。その後、得られた混合物を還流し、RFゲルを完全に重合(架橋)させた。架橋されたゲルG2のミクロ粒子の水性分散液がその後得られた。希釈及び還流の条件は表2に示す。
【0075】
b)エアロゲルAG2を調製するため、分散液を放置し、ゲルG2の粒子を沈殿させた。分散剤の上澄みを除去し、得られた湿潤粉末を、90℃の炉に12時間入れ、これらのミクロ粒子を乾燥させた。
【0076】
c)多孔質炭素C2を調製するため、エアロゲルAG2を窒素下、800℃で熱分解させ、ミクロスフェアを得た。
【0077】
3)ゲル化かつ架橋した組成物G3、エアロゲルAG3、及び多孔質炭素C3の調製:
a)ゲルG3を調製するため、初めにレゾルシノールを水に溶解した。その後これに、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)の35%溶液からなる添加剤、次にホルムアルデヒド、最後にHCl触媒を添加した。その後、混合物を15分間撹拌した。得られた混合物のpHは1.8であった。
【0078】
次に、この非粘性混合物を、70℃の油浴に浸したリアクタ内で45分間プレポリマー重合させた。形成した混合物をその後、4℃の冷却器に24時間入れた。形成したプレポリマーをその後、水で希釈した。その後、得られた混合物を還流し、RFゲルを完全に重合(架橋)させた。架橋されたゲルG3のミクロ粒子の水性分散液がその後得られた。希釈及び還流の条件は表2に示す。
【0079】
b)エアロゲルAG3を調製するため、分散液を放置し、ゲルG3のミクロ粒子を沈殿させた。分散剤の上澄みを除去し、得られた湿潤粉末を、90℃の炉に12時間入れ、これらのミクロ粒子を乾燥させた。
【0080】
c)多孔質炭素C3を調製するため、エアロゲルAG3を窒素下、800℃で熱分解させ、ミクロスフェアを得た。
【0081】
【表1】
[図:0001410177000008.jpg]
・・・
【0083】
得られた各ゲルG0~G3、エアロゲルAG0~AG3、及び多孔質炭素C0~C3について、MasterSizer3000レーザー回折式粒度分析器を用い、液体方式を介して体積中位粒径を測定した。以下の表3にこのように測定したこれらの粒径値を示す。
【0084】
[図:0001410177000009.jpg]
【0085】
これらの測定値から特に、本発明によるエアロゲルAG1及びAG3、並びに多孔質炭素C1及びC2が、50μm~70μmの体積平均径を有するミクロ粒子形態であることが示される。
【0086】
得られた各有機エアロゲルAG0~AG3及び各多孔質炭素C0~C3はまた、Micromeritics社によるTristar3020及びASAP2020の計器によって77Kで窒素吸着マノメトリー法を用いて特性決定した。比表面積(それぞれ、総、ミクロ多孔性及びメソ多孔性)及び細孔容積(それぞれ総及びミクロ孔)の結果は以下の表4に提示してある。
【0087】
【表4】
[図:0001410177000010.jpg]
」
2 引用例1、甲1~甲5に記載された発明
(1)引用例1に記載された発明
引用例1の上記1(1)アには、[請求項1]、[請求項2]及び[請求項4]を直列的に引用する[請求項5]として、「ブタノール法によって求められる真密度(ρBt)が1.55g/cm3以上1.75g/cm3未満、リチウム参照電極基準で0.05V~1.5Vにおける負極の放電容量が180mAh/g以上であり、
リチウム参照電極基準で0.2Vから1.1Vに相当する放電容量X(Ah/g)と電位差0.9(V)とから計算される放電曲線の傾き0.9/X(Vg/Ah)が0.75(Vg/Ah)以下であり、25℃50%RH空気雰囲気で100時間保存後の吸湿量が1.5wt%以下であり、
ヘリウム置換法によって求められる真密度(ρHe)が、1.76g/cm3以上であり、
窒素ガスの吸着によるBET法により求めた比表面積(BET)(m2/g)と、平均粒子径(単位:μm)をDv50とした場合に、計算式「6/(Dv50×ρBt)」から求められる比表面積(CALC)(m2/g)との比表面積比(BET/CALC)が、5.5超であり、
平均粒子径が1μm以上15μm以下である非水電解質二次電池負極用炭素質材料。」が記載されているといえる。
ここで、上記「ヘリウム置換法によって求められる真密度(ρHe)」として、同ウの[0023]の「本発明において、ヘリウム置換法によって求められる真密度(ρHe)は、体積当たり放電容量の向上の点で、1.76g/cm3以上であることが好ましく、より好ましくは1.85g/cm3以上であり、吸湿性を抑える点で、2.09g/cm3以下であることが好ましく、より好ましくは2.03g/cm3以下である。」との記載によれば、「1.85g/cm3以上2.09g/cm3以下」の範囲を認識できる。
また、上記「窒素ガスの吸着によるBET法により求めた比表面積(BET)」として、同ウの[0026]の「本発明の炭素質材料の窒素吸着のBET法により求めた比表面積(BET)は、過小であると電池の放電容量が小さくなる傾向があるため、1m2/g以上、好ましくは1.6m2/g以上、より好ましくは、2.0m2/g以上である。他方、BET比表面積が大きすぎると、得られる電池の不可逆容量が大きくなる傾向があるため、25m2/g以下が好ましい。より好ましくは、20m2/g以下である。」との記載によれば、「1m2/g以上」の範囲を認識できる。
以上によれば、引用例1には、以下の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されているといえる。
「ブタノール法によって求められる真密度(ρBt)が1.55g/cm3以上1.75g/cm3未満、リチウム参照電極基準で0.05V~1.5Vにおける負極の放電容量が180mAh/g以上であり、
リチウム参照電極基準で0.2Vから1.1Vに相当する放電容量X(Ah/g)と電位差0.9(V)とから計算される放電曲線の傾き0.9/X(Vg/Ah)が0.75(Vg/Ah)以下であり、25℃50%RH空気雰囲気で100時間保存後の吸湿量が1.5wt%以下であり、
ヘリウム置換法によって求められる真密度(ρHe)が、1.85g/cm3以上2.09g/cm3以下であり、
窒素ガスの吸着によるBET法により求めた比表面積(BET)(m2/g)と、平均粒子径(単位:μm)をDv50とした場合に、計算式「6/(Dv50×ρBt)」から求められる比表面積(CALC)(m2/g)との比表面積比(BET/CALC)が、5.5超であり、
平均粒子径が1μm以上15μm以下であり、
窒素ガスの吸着によるBET法により求めた比表面積(BET)が1m2/g以上である非水電解質二次電池負極用炭素質材料。」
(2)甲1に記載された発明
甲1の上記1(2)アの【請求項1】に記載される多孔質炭素製品の製造方法によって、同アの【請求項12】に記載される「多孔質の炭素薄片の形で存在することを特徴とする、階層的な孔構造を有する多孔質炭素を含有する炭素製品。」が製造されるところ、この炭素製品に関する同ウの【0076】の記載によれば、この炭素製品のBET法によって測定された内部の比表面積は、200m2/g程度である。
また、同ウの【0077】で、「図6のグラフは、多孔質炭素の孔径分布を示す。左の縦座標に累積の孔容積Vc[cm3/g]が、右の縦座標に相対孔容積Vr[%]が、孔の直径D[nm]に対してプロットされている。その際、示された測定結果は、水銀ポロシメトリーを用いて得られたことに留意すべきである。」とされている同エの図6を参照するに、多孔質炭素の孔径に対する累積の孔容積Vc[cm3/g]を示す曲線において、孔径Dが10000nmでの累積の孔容積Vcが約0.62cm3/g、孔径Dが10nmでの累積の孔容積Vcが約1.17cm3/gであることが読み取れる。
以上を踏まえると、甲1には、「多孔質の炭素薄片の形で存在することを特徴とする、階層的な孔構造を有する多孔質炭素を含有する炭素製品。」について、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
「BET法によって測定された内部の比表面積が、200m2/g程度であり、孔径Dが10000nmでの累積の孔容積Vcが約0.62cm3/g、孔径Dが10nmでの累積の孔容積Vcが約1.17cm3/gである、多孔質の炭素薄片の形で存在する、階層的な孔構造を有する多孔質炭素を含有する炭素製品。」
(3)甲2に記載された発明
甲2の上記1(3)イの「本発明は、直径が2nm以下のマイクロポア、及び直径が30nm~500nmのメソポア/小さなマクロポアを含むが、直径が2nmを超え且つ30nm未満のメソポアを実質上含まず、及び直径が500nmを超える大きなマクロポアを実質上含まない多孔性炭素粒子を使用する、肝疾患の治療又は予防に関する。」との記載によれば、甲2には、「直径が2nm以下のマイクロポア、及び直径が30nm~500nmのメソポア/小さなマクロポアを含むが、直径が2nmを超え且つ30nm未満のメソポアを実質上含まず、及び直径が500nmを超える大きなマクロポアを実質上含まない多孔性炭素粒子」が記載されているといえる。
そして、同カの「・BET表面積 700~2000m2/g、好ましくは1000~1500m2/g
・・・
・メソポア/小さなマクロポアの大きさ 30~500nm、好ましくは50~300nm
・メソポア/小さなマクロポアの容積 0.8~2.5cm3/g」との記載によれば、この多孔性炭素粒子における、BET表面積は、700~2000m2/g、大きさ30~500nmのメソポア/小さなマクロポアの容積は、0.8~2.5cm3/gであるといえる。
また、同キの「好ましくは、多孔性炭素粒子は、2~2000μm、例えば、50~2000μm、200~1600μm、又は100~1000μmの平均直径を有する。適切な粒子は、したがって、例えば、200~600μm、好ましくは250~500μmの平均直径を有することができる。」との記載には、多孔性炭素粒子の平均直径として、下限として2μm、上限として500μmが記載されているから、甲2には、多孔性炭素粒子の平均直径の範囲として、2μm~500μmが記載されているといえる。
以上を踏まえると、甲2には、多孔性炭素粒子について、以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されているといえる。
「直径が2nm以下のマイクロポア、及び直径が30nm~500nmのメソポア/小さなマクロポアを含むが、直径が2nmを超え且つ30nm未満のメソポアを実質上含まず、及び直径が500nmを超える大きなマクロポアを実質上含まない多孔性炭素粒子であって、大きさ30~500nmのメソポア/小さなマクロポアの容積が0.8~2.5cm3/gであり、平均直径が2μm~500μmであり、BET表面積が700~2000m2/gである、多孔性炭素粒子。」
(4)甲3に記載された発明
甲3の上記1(4)アには、「炭素相と、上記炭素相に配置される一つ以上の細孔相と、を含み、粒子の炭素相が、上記細孔相とともに、ほぼ共連続で不規則な複数の相領域を形成し、細孔相の隣接する相領域の間の距離が実質的に50nm以下であることを特徴とする粒状多孔質炭素材料」が記載されている。
そして、同エの【0036】の「本発明の粒状炭素材料は、通常、微細孔を有している。これは、10nm未満、例えば1~5nmの平均孔径d(平均孔半径rの2倍に対応する)を有する細孔であることを意味している。微小孔の比容積、すなわち、炭素材料1gあたりの微小孔の容積は、一般的に0.1cm3/g以上、特に0.2cm3/g以上、特に0.3cm3/g以上、並びに通常、0.1~1.5cm3/g、しばしば0.2~1.2cm3/g、及び特に0.3~1.0cm3/gである。」との記載によれば、上記粒状多孔質炭素材料について、10nm未満の平均孔径を有する微小孔の比容積が、特に0.3~1.0cm3/gであることの開示を、同エの【0037】の「本発明の粒状炭素材料は、メソ細孔を有していても良い。これは、5~300nmの範囲、特に10~200nm、又は15~200nmの範囲の平均孔径dを有する細孔であることが理解される。メソ細孔の特定容積、すなわち、炭素材料の1g当たりのメソ細孔の容積は、一般的に0.1cm3/g以上、特に0.2cm3/g又は0.3cm3/gであり、例えば0.1~2.9cm3/gの範囲、特に0.2~2.7cm3/gの範囲、又は0.3~2.5cm3/gの範囲である。」との記載によれば、上記粒状多孔質炭素材料について、特に10~200nmの平均孔径を有するメソ細孔の比容積が、0.3~2.5cm3/gであることの開示を、さらに、同エの【0038】の「本発明の炭素材料の全細孔比容積は、通常、0.3~3cm3/gの範囲、しばしば0.5~2.9cm3/gの範囲、及び特に0.6~2.8cm3/gの範囲であり」との記載によれば、上記粒状多孔質炭素材料について、全細孔比容積が、特に0.6~2.8cm3/gであることの開示を、それぞれ認めることができる。
また、同エの【0039】の「微小孔及び任意のメソ細孔の容積が高いために、本発明の炭素材料は、通常、200~3000m2/gの範囲、しばしば500~3000m2/gの範囲、特に800~1500m2/gの範囲、及び特に900~1400m2/gの範囲の高いBET比表面積を有する。」との記載によれば、甲3には、上記粒状多孔質炭素材料について、BET比表面積が、200~3000m2/gであることについて、さらには、同カの【0183】の【表1】の記載によれば、実施例4における具体的な値として、790m2/gのBET比表面積についての開示があるといえる。
さらに、同オの「通常、粒子の重量平均粒径は、20nm~50μm、しばしば50nm~50μm、好ましくは200nm~20μm、特に1μm~20μmの範囲である。」との記載によれば、甲3には、上記粒状多孔質炭素材料について、重量平均粒径が、特に1μm~20μmであることが記載されているといえる。
以上を踏まえると、甲3には、粒状多孔質炭素材料について、以下の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されているといえる。
「炭素相と、上記炭素相に配置される一つ以上の細孔相と、を含み、粒子の炭素相が、上記細孔相とともに、ほぼ共連続で不規則な複数の相領域を形成し、細孔相の隣接する相領域の間の距離が実質的に50nm以下である粒状多孔質炭素材料であって、10nm未満の平均孔径を有する微小孔の比容積が、0.3~1.0cm3/gであり、10~200nmの平均孔径を有するメソ細孔の比容積が、0.3~2.5cm3/gであり、全細孔比容積が、0.6~2.8cm3/gであり、BET比表面積が、790m2/gであり、重量平均粒径が、1μm~20μmである、粒状多孔質炭素材料。」
(5)甲4に記載された発明
甲4の上記1(5)アの【請求項1】には、非水系リチウム型蓄電素子用の負極について、「負極活物質は1次粒子径が0.005μm以上5μm以下の炭素材料であ」ることが、同アの【請求項3】には、その負極活物質が、「BET法により算出した比表面積が100m2/g以上600m2/g以下である」ことが、同エの【0075】等の記載には、上記負極活物質は、「複合多孔質炭素材料」であることが、それぞれ記載されている。
そして、同エには複合多孔質炭素材料の具体的な調製例として、[調製例1a]において、「複合多孔質炭素材料1の1次粒子径は3.4μm、BET比表面積は262m2/g」(【0075】)であること、[調製例2a]において、「複合多孔質炭素材料2の1次粒子径は0.68μm、BET比表面積は271m2/g」(【0076】)であること、[調製例3a]において、「複合多孔質炭素材料3の1次粒子径は0.036μm、BET比表面積は286m2/g」(【0077】)であること、[調製例4a]において、「複合多孔質炭素材料4の1次粒子径は0.032μm、BET比表面積は307m2/g」(【0078】)であること、[調製例5a]において、「複合多孔質炭素材料5の1次粒子径は0.51μm、BET比表面積は405m2/g」(【0079】)であることが、それぞれ記載されている。
ここで、上記の具体的な炭素材料の調製例を考慮すると、上記【請求項1】に記載された炭素材料の1次粒子径に関する0.005μm以上5μm以下という数値範囲中、実体のあるものとして、[調製例5a]における0.51μmから[調製例1a]における3.4μmの範囲を認識することができ、また、BET比表面積の100m2/g以上600m2/gの範囲についても同様に、[調製例1a]における262m2/gから[調製例5a]における405m2/gの範囲を認識することができる。
以上を踏まえると、甲4には、炭素材料について、以下の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されているといえる。
「非水系リチウム型蓄電素子用の負極に用いる炭素材料であって、1次粒子径が0.51μm以上3.4μm以下であり、BET比表面積が262m2/g以上405m2/g以下である複合多孔質炭素材料。」
(6)甲5に記載された発明
甲5の上記1(6)アの【請求項10】を引用する【請求項11】の記載から、「非モノリス有機エアロゲルの熱分解から得られる非モノリス多孔質炭素であって、該非モノリス多孔質炭素が、液体媒体中においてレーザー回折式粒度分析器を用いて測定した、10μm~80μm、好ましくは10μm~20μmの体積中位粒径を有するミクロスフェアの粉末から形成され、400m2/gより大きいミクロ多孔性比表面積及び200m2/g未満のメソ多孔性比表面積を含む、500m2/g以上の総比表面積、及び/又は、0.15cm3/gより大きいミクロ孔容積を含む0.25cm3/g以上の細孔容積を有する非モノリス多孔質炭素。」を把握することができる。
そして、同ウに記載される実施例における非モノリス多孔質炭素C1~C3では、体積中位粒径について、C1が50μm、C2が68μm(【0084】の【表3】)、総比表面積について、C1が532m2/g、C2が620m2/g、C3が620m2/g、ミクロ多孔性比表面積について、C1が470m2/g、C2が570m2/g、C3が520m2/g(【0087】の【表4】)であることが、それぞれ記載されている。
ここで、上記の非モノリス多孔質炭素の実施例を考慮すると、上記【請求項11】に記載された非モノリス多孔質炭素の体積中位粒径に関する10μm~80μmという数値範囲中、実体のあるものとして、C1における50μmからC2における68μmの範囲を認識することができ、同様に、総比表面積の500m2/g以上の数値範囲についても、C1における532m2/gからC2、C3における620m2/gの範囲を、ミクロ多孔性比表面積の400m2/gより大きい数値範囲についても、C1における470m2/gからC2における570m2/gの範囲を認識することができる。
以上を踏まえると、甲5には、非モノリス多孔質炭素について、以下の発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されているといえる。
「非モノリス有機エアロゲルの熱分解から得られる非モノリス多孔質炭素であって、該非モノリス多孔質炭素が、液体媒体中においてレーザー回折式粒度分析器を用いて測定した、50μm~68μmの体積中位粒径を有するミクロスフェアの粉末から形成され、
470m2/g~570m2/gのミクロ多孔性比表面積及び200m2/g未満のメソ多孔性比表面積を含む、532m2/g~620m2/gの総比表面積、及び/又は、
0.15cm3/gより大きいミクロ孔容積を含む0.25cm3/g以上の細孔容積を有する非モノリス多孔質炭素。」
3 取消理由1~4について
(1)引用例1を主引用例として(取消理由1及び2)
ア 対比・判断
本件発明と引用例1発明を対比する。
(ア)引用例1の上記1(1)エの[0044]には、「すなわち石油ピッチ又は石炭ピッチに対し、添加剤として沸点200℃以上の2乃至3環の芳香族化合物又はその混合物を加えて加熱混合した後、成形しピッチ成形体を得る。次にピッチに対し低溶解度を有しかつ添加剤に対して高溶解度を有する溶剤でピッチ成形体から添加剤を抽出除去して多孔性ピッチとした後、酸化剤を用いて酸化し、炭素前駆体を得る。前記の芳香族添加剤の目的は、成形後のピッチ成形体から該添加剤を抽出除去して成形体を多孔質とし、酸化による架橋処理を容易にし、また炭素化後に得られる炭素質材料を多孔質にすることにある。」との記載があり、引用例1発明の「炭素質材料」の製造において、石油ピッチ又は石炭ピッチに対し、添加剤として沸点200℃以上の2乃至3環の芳香族化合物又はその混合物を加えるところ、この添加剤の目的は、炭素化後に得られる炭素質材料を多孔質にすることにあるとされている。そして、この炭素質材料は、引用例1発明では、「非水電解質二次電池負極用炭素質材料」に他ならないから、引用例1発明の「非水電解質二次電池負極用炭素質材料」は「多孔質」であり、本件発明の「多孔質炭素材料」に相当する。
(イ)本件発明の「骨格密度」については、本件明細書の【0182】に「骨格密度(skeletal density)(物質密度又は骨格密度(backbone density)とも呼ばれる)
骨格密度測定は、DIN 66137-2に従って実施した。0.49g~0.51gの粉末試料を試料セルの中に秤り取り、測定に先だち、真空下、200℃で1時間乾燥した。乾燥後の質量を算出のために使用した。サーモフィッシャーサイエンティフィック(Themo Fisher Scientific,Inc.)製のPycnomatic ATCヘリウム比重瓶を、測定のために使用し、「少量」試料体積及び「少量」基準体積を採用した。この比重瓶は、約3cm3の既知体積の「極小」球体を使用して毎月較正されている。測定は、DIN規格及び上記デバイスの標準作業手順書(SOP)に従って、4.6の純度のヘリウムを使用し、20.00℃の温度、約2barのガス圧力で実施した。」との記載があり、「骨格密度」は、「物質密度」と同義であることが記載されている。一方、「真密度」とは、物質の真実の状態の密度であり、物体の表面や内部の気孔の部分を除いた物体そのものの体積で、物体の質量を割った値であり、「物質密度」と同義である。しかも、引用例1発明の「1.85g/cm3以上2.09g/cm3以下」の範囲としている真密度は、本件発明の「骨格密度」の測定と同様にヘリウムを用いて測定が行われているから、引用例1発明の「ヘリウム置換法によって求められる真密度(ρHe)」は、本件発明の「骨格密度」に相当し、その数値範囲は、本件発明の「1.8~2.3g/cm3の範囲」の条件を満たしている。
(ウ)そうすると、本件発明と引用例1発明は、「1.8~2.3g/cm3の範囲の骨格密度を有する多孔質炭素材料。」の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。
<相違点1>
多孔質炭素材料について、本件発明では、10nm~10,000nmの範囲の直径を有する細孔の総細孔容積が0.4~2.8cm3/gの範囲であるのに対し、引用例1発明では、10nm~10,000nmの範囲の直径を有する細孔の総細孔容積が明らかでない点。
イ 相違点1に対する判断
(ア)引用例1には、10nm~10,000nmの範囲の直径を有する細孔の総細孔容積に関する何らの記載もないし、これを示唆する記載もないことから、上記相違点1は、実質的な相違点であり、本件発明は、引用例1発明であるとはいえない。
(イ)次に、上記相違点1に係る本件発明の構成が、当業者が容易に想到し得るものであるか否かについて検討する。
a 上記2(2)で述べたように、甲1の図6(上記1(2)エ)の、多孔質炭素の孔径に対する累積の孔容積Vc[cm3/g]を示す曲線において、孔径Dが10000nmでの累積の孔容積Vcが約0.62cm3/g、孔径Dが10nmでの累積の孔容積Vcが約1.17cm3/gであることが読み取れることから、孔径Dが10nm~10000nmでの累積の孔容積Vcは、約0.55cm3/g(1.17-0.62cm3/g)である。
すなわち、10nm~10,000nmの範囲の直径を有する細孔について、0.4~2.8cm3/gの範囲の総細孔容積である多孔質炭素材料自体は、公知のものであるといえる。
b しかしながら、引用例1には、上記(ア)で述べたように、10nm~10,000nmの範囲の直径を有する細孔の総細孔容積に着目する何らの記載もないし、これを示唆する記載もない。また、引用例1発明は、引用例1の上記1(1)イの[0005]の記載によれば、体積当たり放電容量が高くかつ保存特性に優れる非水電解質二次電池負極用炭素質材料を提供することを課題としているところ、放電容量が高くかつ保存特性に優れる非水電解質二次電池負極用炭素質材料を提供しようとする際に、10nm~10,000nmの範囲の直径を有する細孔の総細孔容積に着目する技術的な常識があるともいえないから、引用例1発明には、10nm~10,000nmの範囲の直径を有する細孔の総細孔容積を何らかの範囲に調整しようとする動機付けがあるとはいえない。
そうすると、引用例1発明には、10nm~10,000nmの範囲の直径を有する細孔の総細孔容積を何らかの範囲に調整しようとする動機付けがあるとはいえないのであるから、上記aで述べたように、その総細孔容積を、0.4~2.8cm3/gの範囲とする多孔質炭素材料が既に知られていたとしても、引用例1発明の炭素質材料を、10nm~10,000nmの範囲の直径を有する細孔の総細孔容積が0.4~2.8cm3/gの範囲のものとすることが、当業者にとり容易に想到し得ることであるとはいえない。
c 上記bで述べたとおり、上記相違点1に係る本件発明の構成は、当業者が容易に想到し得るものではないが、さらに検討を進める。
引用例1発明は、「ブタノール法によって求められる真密度(ρBt)」、「リチウム参照電極基準で0.05V~1.5Vにおける負極の放電容量」、「リチウム参照電極基準で0.2Vから1.1Vに相当する放電容量X(Ah/g)と電位差0.9(V)とから計算される放電曲線の傾き0.9/X(Vg/Ah)」、「25℃50%RH空気雰囲気で100時間保存後の吸湿量」、「ヘリウム置換法によって求められる真密度(ρHe)」、「窒素ガスの吸着によるBET法により求めた比表面積(BET)(m2/g)と、平均粒子径(単位:μm)をDv50とした場合に、計算式「6/(Dv50×ρBt)」から求められる比表面積(CALC)(m2/g)との比表面積比(BET/CALC)」、「平均粒子径」及び「窒素ガスの吸着によるBET法により求めた比表面積(BET)」を所定の範囲にすることにより、上記bで述べた発明の課題を解決するものであるところ、引用例1発明における二つの「真密度」(「ブタノール法によって求められる真密度(ρBt)」、「ヘリウム置換法によって求められる真密度(ρHe)」)については、引用例1の上記1(1)ウに以下の記載があるので再掲する。
「[0020] ρBtは、ブタノールが進入できる細孔の存在量に関係することから、微細な細孔が増し、吸湿性が過度に高まり保存安定性を損ないやすい点と、体積当たり放電容量の向上の点とのバランスから、1.55g/cm3以上であることが好ましく、より好ましくは1.59g/cm3以上、1.61g/cm3以上である。他方、真密度の増加は、結晶構造の規則性の高い材料になる傾向があるので、充放電に伴う膨張収縮を抑制する観点から、1.70g/cm3以下であることが好ましく、より好ましくは1.68g/cm3以下である。」
「[0023] 本発明において、ヘリウム置換法によって求められる真密度(ρHe)は、体積当たり放電容量の向上の点で、1.76g/cm3以上であることが好ましく、より好ましくは1.85g/cm3以上であり、吸湿性を抑える点で、2.09g/cm3以下であることが好ましく、より好ましくは2.03g/cm3以下である。ρHeは、ヘリウムが進入できる大きさの孔の多さに依存するところ、このような孔は、吸湿に大きく関与する比較的大きい孔だけでなく、Liの吸蔵放出への関与の度合いが高いと考えられる細孔も包含する。このため、ρHeは、体積当たり放電容量及び吸湿性の双方に影響を与える。
[0024] 本発明において、ρHeとρBtとの比(ρHe/ρBt)は、吸湿性が過度に高まり保存安定性を損ないやすい点と、体積当たり放電容量の向上の点とのバランスから、1.10以上であることが好ましい一方、1.37以下であることが好ましく、より好ましくは1.28以下である。この比率は、ブタノールは進入できないがヘリウムは進入できる大きさの細孔の多さを反映しており、このような細孔は、雰囲気中の吸湿への関与より、Liの吸蔵放出への関与の度合いが高いと考えられる。」
以上の記載によれば、「真密度」の値は、ブタノール法によって求められる場合とヘリウム置換法によって求められる場合で相違し、それぞれの値が異なる炭素質材料の特性を反映していることが理解でき、ヘリウム置換法によって求められる「真密度」の値は、ヘリウムが進入できる大きさの孔の多さに依存するものであり、このような孔は、吸湿に大きく関与する比較的大きい孔だけでなく、Liの吸蔵放出への関与の度合いが高いと考えられる細孔も包含することから、体積当たり放電容量及び吸湿性の双方に影響を与えるものであるとされていることが理解できる。
そうすると、引用例1発明において、ヘリウム置換法によって求められる「真密度ρHe」の値は、体積当たり放電容量及び吸湿性の双方に影響を与えるヘリウムが進入できる大きさの孔の量を反映しているものであるといえる。
d 上記cで述べたように、引用例1発明において、ヘリウム置換法によって求められる「真密度ρHe」の値は、体積当たり放電容量及び吸湿性の双方に影響を与えるヘリウムが進入できる大きさの孔の量を反映しているものであるところ、仮に、引用例1発明に、上記aで述べた公知技術を適用し、炭素材料を、10nm~10,000nmの範囲の直径を有する細孔の総細孔容積が0.4~2.8cm3/gの範囲のものとした場合は、炭素材料における細孔の分布が変化することになるから、引用例1発明におけるヘリウム置換法によって求められ、ヘリウムが進入できる大きさの孔の量を反映している「真密度ρHe」の値の範囲も変化してしまうことになる。そして、引用例1発明において、「真密度ρHe」が特定の範囲にあることによってもたらされていた体積当たり放電容量及び吸湿性の特性が損なわれる可能性が生じることになる。
また、炭素材料における細孔分布が変化すれば、引用例1発明におけるヘリウム置換法によって求められる「真密度ρHe」以外のパラメータの値も変化してしまい、「真密度ρHe」の場合と同じく、これらのパラメータが特定の範囲にあることによって解決することができていた引用例1発明の課題を達成できない可能性が生じる。
以上によれば、当業者は、引用例1発明において、炭素材料における細孔分布が変化するような改変を試みることはないから、この点からしても、引用例1発明において、上記aで述べた公知技術を採用することはなく、上記相違点1に係る本件発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものではない。
e なお、令和5年3月16日に提出された意見書に添付された参考資料2(国際公開第2015/152091号)には、上記相違点1に係る本件発明の構成に関する何らの事項も記載されていない。
ウ 小括
上記イで述べたとおり、上記相違点1は、実質的な相違点であるし、上記相違点1に係る本件発明の構成は当業者が容易に想到し得たものではないから、本件発明は、引用例1発明ではないし、引用例1発明に基づいて当業者が容易に発明できたものでもない。
エ 異議申立人の主張について
(ア)異議申立人の主張の概要
引用例1には、「10nm~10,000nmの範囲の直径を有する細孔」の「総細孔容積」に関する具体的な記載はない。
ところで、引用例1の[0003]には、「炭素質材料」の「細孔」が、「放電容量」や「保存安定性」に影響を与えることが記載されている。
また、参考資料3の【0018】には、「炭素成形体」の「細孔直径」および「細孔容積」が、「リチウムイオンの移動速度」(「イオン伝導度」)や「電極成形体の強度」(「成形体の電極としての体積エネルギー密度」)に影響を与えることが記載されている。
すなわち、これらの記載を踏まえると、「多孔質炭素材料」が有する「細孔」(「直径」および「総細孔容積」)の値によっては、「放電容量」等が不当に劣化してしまうおそれがあることが把握される。
このため、これらの記載に接した当業者は、引用例1に記載された「多孔質炭素材料」の「細孔」(「直径」および「総細孔容積」)として、極端な値を避けて、少なくとも公知の値となるように、調整するはずである。
そして、例えば、甲1、参考資料4および参考資料5には、「10nm~10,000nmの範囲の直径を有する細孔」の「総細孔容積」として、それぞれ、「0.55cm3/g」、「2.25cm3/g」および「2.26cm3/g」が記載されている。
そうすると、当業者であれば、「放電容量」等に関して不測の事態を避けるため、引用例1に記載された「多孔質炭素材料」の「10nm~10,000nmの範囲の直径を有する細孔」の「総細孔容積」を、これらの記載に基づいて、「0.55cm3/g」~「2.26cm3/g」の範囲に調整するはずである。
この範囲は、本件発明の「1.8~2.3cm3/gを満たす。
したがって、本件発明は、引用例1に記載された発明、ならびに、参考資料3、甲1、参考資料4および参考資料5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到できたものである。
(イ)異議申立人の主張に対する判断
異議申立人の主張は、要は、「多孔質炭素材料」が有する「細孔」(「直径」および「総細孔容積」)の値によっては、「放電容量」等が不当に劣化してしまうおそれがあるから、当業者は、引用例1に記載された「多孔質炭素材料」の「細孔」として、極端な値を避けて、少なくとも公知の値である、甲1、参考資料4および参考資料5に記載されている値に調整するはずである、というものである。
しかしながら、引用例1に記載された「多孔質炭素材料」の「細孔」として、極端な値を避けるとしても、極端な値ではない「多孔質炭素材料」の「細孔」の値には、様々な値が存在するといえ、公知の値が、甲1、参考資料4および参考資料5に記載されている値だけであるとはいえないから、引用例1に記載された「多孔質炭素材料」の「細孔」として、甲1、参考資料4および参考資料5に記載されている値に調整するはずであるとはいえない。
また、引用例1発明には、甲1に記載の「細孔」(「直径」および「総細孔容積」)を採用しようとする動機付けがないことは、上記イ(イ)で述べたとおりであり、参考資料4及び参考資料5に記載の事項についても、事情は同じである。
そうすると、上記(ア)における異議申立人の主張は、妥当なものではないから、採用することができない。
オ 取消理由1及び2に関するまとめ
以上のとおり、本件発明について、取消理由1及び2には理由がない。
(2)甲1~甲5を主引用例として(取消理由3及び4)
上記2(2)~(6)で述べた甲1発明から甲5発明を再掲する。
甲1発明:「BET法によって測定された内部の比表面積が、200m2/g程度であり、孔径Dが10000nmでの累積の孔容積Vcが約0.62cm3/g、孔径Dが10nmでの累積の孔容積Vcが約1.17cm3/gである、多孔質の炭素薄片の形で存在する、階層的な孔構造を有する多孔質炭素を含有する炭素製品。」
甲2発明:「直径が2nm以下のマイクロポア、及び直径が30nm~500nmのメソポア/小さなマクロポアを含むが、直径が2nmを超え且つ30nm未満のメソポアを実質上含まず、及び直径が500nmを超える大きなマクロポアを実質上含まない多孔性炭素粒子であって、大きさ30~500nmのメソポア/小さなマクロポアの容積が0.8~2.5cm3/gであり、平均直径が2μm~500μmであり、BET表面積が700~2000m2/gである、多孔性炭素粒子。」
甲3発明:「炭素相と、上記炭素相に配置される一つ以上の細孔相と、を含み、粒子の炭素相が、上記細孔相とともに、ほぼ共連続で不規則な複数の相領域を形成し、細孔相の隣接する相領域の間の距離が実質的に50nm以下である粒状多孔質炭素材料であって、10nm未満の平均孔径を有する微小孔の比容積が、0.3~1.0cm3/gであり、10~200nmの平均孔径を有するメソ細孔の比容積が、0.3~2.5cm3/gであり、全細孔比容積が、0.6~2.8cm3/gであり、BET比表面積が、790m2/gであり、重量平均粒径が、1μm~20μmである、粒状多孔質炭素材料。」
甲4発明:「非水系リチウム型蓄電素子用の負極に用いる炭素材料であって、1次粒子径が0.51μm以上3.4μm以下であり、BET比表面積が262m2/g以上405m2/g以下である複合多孔質炭素材料。」
甲5発明:「非モノリス有機エアロゲルの熱分解から得られる非モノリス多孔質炭素であって、該非モノリス多孔質炭素が、液体媒体中においてレーザー回折式粒度分析器を用いて測定した、50μm~68μmの体積中位粒径を有するミクロスフェアの粉末から形成され、
470m2/g~570m2/gのミクロ多孔性比表面積及び200m2/g未満のメソ多孔性比表面積を含む、532m2/g~620m2/gの総比表面積、及び/又は、
0.15cm3/gより大きいミクロ孔容積を含む0.25cm3/g以上の細孔容積を有する非モノリス多孔質炭素。」
ア 対比
本件発明と甲1発明~甲5発明をそれぞれ対比する。
甲1発明は、「多孔質の炭素薄片の形で存在する、階層的な孔構造を有する多孔質炭素を含有する炭素製品」とされているが、例えば甲1の上記1(2)アの【請求項1】の記載によれば、炭素含有グリーン体骨格をか焼したものが多孔質炭素製品とされているから、甲1発明の「炭素製品」は、「多孔質の炭素薄片の形で存在する、階層的な孔構造を有する多孔質炭素」そのものであり、本件発明の「多孔質炭素材料」に相当する。
また、甲2発明の「多孔性炭素粒子」、甲3発明の「粒状多孔質炭素材料」、甲4発明の「複合多孔質炭素材料」及び甲5発明の「非モノリス多孔質炭素」も、それぞれ、本件発明の「多孔質炭素材料」に相当する。
そうすると、本件発明と甲1発明~甲5発明は、それぞれ、少なくとも「多孔質炭素材料。」の点で一致し、少なくとも、以下の点で相違しているといえる。
<相違点2>
多孔質炭素材料について、本件発明では、1.8~2.3g/cm3の範囲の骨格密度を有するものであるのに対し、甲1発明~甲5発明では、骨格密度が明らかでない点。
イ 相違点2に対する判断
(ア)甲1~甲5には、骨格密度に関する何らの記載もないし、これを示唆する記載もないことから、上記相違点2は、実質的な相違点であり、本件発明は、甲1発明~甲5発明であるとはいえない。
(イ)次に、上記相違点2に係る本件発明の構成が、甲1発明~甲5発明、それぞれにおいて、当業者が容易に想到し得るものであるか否かについて検討する。
a 上記(1)ア(イ)で述べたように、引用例1発明には、「炭素質材料」について、「ヘリウム置換法によって求められる真密度(ρHe)が、1.85g/cm3以上2.09g/cm3以下であり」との構成があり、これは、本件発明の「骨格密度」の条件を満たすものであるから、1.8~2.3g/cm3の範囲の骨格密度を有する多孔質炭素材料自体は、引用例1に記載されるように公知のものであるといえる。
b しかしながら、甲1~甲5には、上記(ア)で述べたように、骨格密度に関する何らの記載もないし、骨格密度に着目することを示す記載もない。
また、甲1発明は、甲1の上記1(2)イの【0020】の記載によれば、特に、「階層的な孔構造を有し、且つ、リチウムイオン電池の電極における使用の際の高い急速充電能力の点において際立っている、多孔質の炭素製の製品を示す」ことを課題とし、甲2発明は、甲2の上記1(3)ウの【0005】、【0006】の記載によれば、肝疾患の治療又は予防に関し、全細孔容積の20%~90%は、2nm以下の平均直径を有する細孔から構成され、及び残りの全細孔容積の75%以上は、30nm~500nmの平均直径を有する細孔から構成される、肝疾患の治療又は予防における使用のための多孔性炭素粒子を提供することを課題とし、甲3発明は、甲3の上記1(4)ウの【0015】、【0016】の記載によれば、特にリチウム-硫黄電池用のリチウム電池用正極材料の製造に適し、高い比容量、高サイクル安定性、低い自己放電、優れた機械的安定性の二つ以上の性質を有する電気活物質を提供することを課題とし、甲4発明は、甲4の上記1(5)イの【0011】の記載によれば、低温においても高い入出力特性を示す非水系リチウム型蓄電素子用の負極等を提供することを課題とし、甲5発明は、甲5の上記1(6)イの【0020】の記載によれば、非モノリス有機エアロゲルをミクロ粒子形態で直接形成することができるゲル化かつ架橋した未乾燥の水性高分子組成物を提供すること等を課題としている。
しかしながら、甲1発明~甲5発明におけるこれらの課題、すなわち、甲1発明におけるリチウムイオン電池の電極での急速充電能力の向上、甲2発明における肝疾患の治療又は予防、甲3発明におけるリチウム-硫黄電池用のリチウム電池用正極材料での高い比容量、高サイクル安定性、低い自己放電、優れた機械的安定性、甲4発明における非水系リチウム型蓄電素子用の負極での低温における高い入出力特性、甲5発明における非モノリス有機エアロゲルをミクロ粒子形態で直接形成することができることと、「骨格密度」との間の関連を示す技術常識があるとはいえないのであるから、当業者が、甲1発明~甲5発明におけるこれらの課題を考慮し、その課題を解決する方向性での何らかの改変を意図したとしても、「骨格密度」に着目することがあるとはいえない。
そうすると、甲1発明~甲5発明には、甲1発明~甲5発明の多孔質炭素材料の骨格密度を何らかの範囲に調整しようとする動機付けがあるとはいえないのであるから、上記aで述べたように、1.8~2.3g/cm3の範囲の骨格密度を有する多孔質炭素材料が既に知られていたとしても、甲1発明~甲5発明の多孔質炭素材料を、1.8~2.3g/cm3の範囲の骨格密度を有するものとすることは、当業者にとり容易に想到し得ることであるとはいえない。
c 上記bで述べたとおり、上記相違点2に係る本件発明の構成は、当業者が容易に想到し得るものではないが、さらに検討を進める。
上記aで述べたように、引用例1には、「炭素質材料」について、「ヘリウム置換法によって求められる真密度(ρHe)が、1.85g/cm3以上2.09g/cm3以下であ」ることが記載されているといえるが、上記(1)イ(イ)cで述べたように、引用例1において、ヘリウム置換法によって求められる「真密度ρHe」の値は、体積当たり放電容量及び吸湿性の双方に影響を与えるヘリウムが進入できる大きさの孔の量を反映しているものであるといえる。
ここで、仮に、甲1発明~甲5発明それぞれに、上記aで述べた引用例1に記載される公知技術を適用し、多孔質炭素材料を、「ヘリウム置換法によって求められる真密度(ρHe)が、1.85g/cm3以上2.09g/cm3以下であ」るものとした場合は、多孔質炭素材料における、ヘリウムが進入できる大きさの孔の量が新たに特定される、すなわち、甲1発明~甲5発明における多孔質炭素材料の細孔分布が変化することになる。そして、これに伴い、甲1発明における「BET法によって測定された内部の比表面積」、「孔径Dが10000nmでの累積の孔容積Vc」、「孔径Dが10nmでの累積の孔容積Vc」、甲2発明における「多孔性炭素粒子」のマイクロポア、メソポア、マクロポアの分布、「BET表面積」、甲3発明における粒状多孔質炭素材料の「10nm未満の平均孔径を有する微小孔の比容積」、「10~200nmの平均孔径を有するメソ細孔の比容積」、「全細孔比容積」、「BET比表面積」、甲4発明における「BET比表面積」、甲5発明における「ミクロ多孔性比表面積」、「メソ多孔性比表面積」、「総比表面積」、「ミクロ孔容積」、「細孔容積」の値の範囲も変化することになるから、甲1発明~甲5発明において、これらのパラメータを適切な範囲とすることによりもたらされていた、発明の課題を解決する上で必要であった多孔性炭素材料における特性が損なわれる可能性が生じ、甲1発明~甲5発明の課題を達成できない可能性が生じる。
以上によれば、当業者は、甲1発明~甲5発明において、多孔質炭素材料の細孔分布が変化するような改変を試みることはないから、この点からしても、甲1発明~甲5発明において、上記aで述べた公知技術を採用することはなく、上記相違点2に係る本件発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものではない。
ウ 小括
上記イで述べたとおり、上記相違点2は、実質的な相違点であるし、上記相違点2に係る本件発明の構成は当業者が容易に想到し得たものではないから、本件発明は、甲1発明~甲5発明ではないし、甲1発明~甲5発明に基づいて当業者が容易に発明できたものでもない。
エ 取消理由3及び4に関するまとめ
以上のとおり、本件発明について、取消理由3及び4には理由がない。
第6 むすび
上記第5で検討したとおり、本件特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるということはできず、同法第113条第2号に該当するものではないから、上記取消理由1~4及び特許異議の申立ての理由では、本件特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
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2022-700671