特許異議申立
2023-700696
導電性粒子、導電性粒子の製造方法、導電材料及び接続構造体
- 審判番号
- 2023-700696
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-122325
- 登録番号
- 7208194
- 請求日
- 2023年07月06日
- 審決日
- 2025年02月19日
- 公報発行日
- 2025年07月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】積水化学工業株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人お茶の水内外特許事務所
- 【権利者代理人】小林 均
- 【権利者代理人】林 司
- 【異議申立人】黒田 泰
- 【異議申立人】本間 裕美
- 審判長/審判官
- 審判長 恩田 春香
- 審判官 棚田 一也
- 審判官 三浦 みちる
- 分類
- P1651.113-YAA(H01B) / P1651.121-YAA(H01B) / P1651.536-YAA(H01B) / P1651.537-YAA(H01B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7208194号発明「導電性粒子、導電性粒子の製造方法、導電材料及び接続構造体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7208194号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。
特許第7208194号の請求項1、2、4~7に係る特許を維持する。
特許第7208194号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7208194号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての出願は、令和2年7月16日に出願され、令和5年1月10日にその特許権の設定登録がされ、同年同月18日に特許掲載公報が発行された。
その後、請求項1~7に係る特許について、同年7月6日に特許異議申立人黒田泰(以下、「申立人1」という。)により特許異議の申立てがされ、同年同月12日に特許異議申立人本間裕美(以下、「申立人2」という。)により特許異議の申立てがされた。
特許異議の申立て後の経緯は、次のとおりである。
令和5年11月 1日付け 取消理由通知
令和5年12月28日 訂正請求書・意見書(特許権者)の提出
令和6年 2月19日 意見書(申立人1)の提出
令和6年 2月21日 意見書(申立人2)の提出
令和6年 3月29日付け 訂正拒絶理由通知
令和6年 4月30日 手続補正書・意見書(特許権者)の提出
令和6年 6月25日付け 取消理由通知(決定の予告)
令和6年 8月27日 訂正請求書・意見書(特許権者)の提出
令和6年10月21日 意見書(申立人2)の提出
令和6年10月22日 意見書(申立人1)の提出
第2 訂正の適否
令和6年8月27日提出の訂正請求書(以下、「本件訂正請求書」という。)による訂正(以下、「本件訂正」という。)について検討する。なお、令和5年12月28日提出の訂正請求書は、本件訂正請求書の提出により、取り下げられたものとみなす。
1 本件訂正の趣旨
本件訂正の請求の趣旨は、特許第7208194号の明細書、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正した明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~7について訂正することを求める、とするものである。
2 訂正の内容
本件訂正の内容は、訂正事項1~13よりなるものであって、以下のとおりである(下線は当審にて付した)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に記載された「基材粒子と、前記基材粒子の表面上に配置された導電部とを備え、前記導電部の外表面に複数の突起を有し」を、
「基材粒子と、前記基材粒子の表面上に配置された導電部とを備え、
前記導電部は、ニッケル、パラジウム、ルテニウム、銅、タングステン、モリブデン、金、白金又は錫を少なくとも含み、
前記導電部の外表面に複数の突起を有し」と訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2、4~7も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に記載された「前記導電部の外表面に複数の突起を有し、
導電性粒子の全表面積100%中、前記突起がある部分の表面積が10%以上であり」を、
「前記導電部の外表面に複数の突起を有し、
前記導電部の外表面に複数の突起を形成するために、前記導電部中に芯物質が埋め込まれているか、または、芯物質は用いられず、前記芯物質は金属粒子であり、この金属としてニッケル、パラジウム、ルテニウム、銅、タングステン、モリブデン、金、白金又は錫を少なくとも含み、
導電性粒子の全表面積100%中、前記突起がある部分の表面積が10%以上であり」と訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2、4~7も同様に訂正する。)
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に記載された「樹脂粒子又は有機無機ハイブリッド粒子である」を、
「樹脂粒子又はコアシェル型以外の有機無機ハイブリッド粒子である」と訂正する。
(請求項4の記載を引用する請求項5~7も同様に訂正する。)
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項4に記載された「請求項1~3のいずれか1項に記載の導電性粒子」を、
「請求項1または2に記載の導電性粒子」と訂正する。
(請求項4の記載を引用する請求項5~7も同様に訂正する。)
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項5に記載された「請求項1~4のいずれか1項に記載の導電性粒子」を、
「請求項1~2または4のいずれか1項に記載の導電性粒子」と訂正する。
(請求項5の記載を引用する請求項6及び7も同様に訂正する。)
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項6に記載された「請求項1~5のいずれか1項に記載の導電性粒子」を、
「請求項1~2または4~5のいずれか1項に記載の導電性粒子」と訂正する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項7に記載された「請求項1~5のいずれか1項に記載の導電性粒子」を、
「請求項1~2または4~5のいずれか1項に記載の導電性粒子」と訂正する。
(9)訂正事項9
明細書の段落0095に記載された「[導電部]
上記導電部を形成するための金属は特に限定されない。該金属としては、例えば、金、銀、パラジウム、銅、白金、亜鉛、鉄、錫、鉛、ルテニウム、アルミニウム、コバルト、インジウム、ニッケル、クロム、チタン、アンチモン、ビスマス、タリウム、ゲルマニウム、カドミウム、ケイ素及びこれらの合金等が挙げられる。また、上記金属としては、錫ドープ酸化インジウム(ITO)及びはんだ等が挙げられる。なかでも、電極間の接続抵抗をより一層低くすることができるので、錫を含む合金、ニッケル、パラジウム、銅又は金が好ましく、ニッケル又はパラジウムが好ましい。」を、
「[導電部]
上記導電部を形成するための金属は特に限定されない。上記導電部は、ニッケル、パラジウム、ルテニウム、銅、タングステン、モリブデン、金、白金又は錫を少なくとも含む。なかでも、電極間の接続抵抗をより一層低くすることができるので、錫を含む合金、ニッケル、パラジウム、銅又は金が好ましく、ニッケル又はパラジウムが好ましい。」と訂正する。
(10)訂正事項10
明細書の段落0098に記載された「上記基材粒子の表面上に導電部を形成する方法は特に限定されない。導電部を形成する方法としては、例えば、無電解めっきによる方法、電気めっきによる方法、物理的蒸着による方法、並びに金属粉末もしくは金属粉末とバインダーとを含むペーストを基材粒子の表面にコーティングする方法等が挙げられる。なかでも、導電部の形成が簡便であるので、無電解めっきによる方法が好ましい。上記物理的蒸着による方法としては、真空蒸着、イオンプレーティング及びイオンスパッタリング等の方法が挙げられる。」を、
「上記基材粒子の表面上に導電部を形成する方法は特に限定されない。導電部を形成する方法としては、例えば、無電解めっきによる方法、電気めっきによる方法、物理的蒸着による方法、並びに金属粉末を含むペーストを基材粒子の表面にコーティングする方法等が挙げられる。なかでも、導電部の形成が簡便であるので、無電解めっきによる方法が好ましい。上記物理的蒸着による方法としては、真空蒸着、イオンプレーティング及びイオンスパッタリング等の方法が挙げられる。」と訂正する。
(11)訂正事項11
明細書の段落0164に記載された「(実施例2)」を、
「(参考例1)」と訂正する。
(12)訂正事項12
明細書の段落0211に記載された「(実施例11)」を、
「(参考例2)」と訂正する。
(13)訂正事項13
明細書の段落0246の表1の最左列に記載された「実施例2」および「実施例11」を、
それぞれ、「参考例1」及び「参考例2」と訂正する。
(14)一群の請求項について
訂正前の請求項1~7について、請求項2~7は、請求項1を引用するものであって、訂正事項1および2によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1~7に対応する訂正後の請求項1~7は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1による訂正は、訂正前の請求項1に記載された「導電部」について、「ニッケル、パラジウム、ルテニウム、銅、タングステン、モリブデン、金、白金又は錫を少なくとも含」むことを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件明細書等」という。)の請求項3に記載されているから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
さらに、訂正事項1は、上記のとおり特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2による訂正は、訂正前の請求項1に記載された「導電部の外表面に複数の突起を有」することについて、「前記導電部の外表面に複数の突起を形成するために、前記導電部中に芯物質が埋め込まれているか、または、芯物質は用いられず、前記芯物質は金属粒子であり、この金属としてニッケル、パラジウム、ルテニウム、銅、タングステン、モリブデン、金、白金又は錫を少なくとも含」むことを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項2は、本件明細書等の段落0112、段落0114及び請求項3に記載されているから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
さらに、訂正事項2は、上記のとおり特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、特許請求の範囲の請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項3は、請求項を削除するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項4について
訂正事項4による訂正は、訂正前の請求項4に記載された「有機無機ハイブリッド粒子」について、「コアシェル型以外」であることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項4は、本件明細書等の段落0089、段落0213及び段落0214に記載されているから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
さらに、訂正事項4は、上記のとおり特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(5)訂正事項5~8について
訂正事項5~8は、訂正事項3により訂正前の請求項3が削除されたことに伴い、この請求項を引用していた請求項4~7について、引用する請求項の数を減少させて、引用形式を整理したものであるから、特許請求の範囲の減縮、及び、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項5~8は、特許請求の範囲の減縮、及び、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(6)訂正事項9及び10について
訂正事項9及び10は、訂正事項1による訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図ることを目的とする訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項9及び10は、本件明細書等の請求項3に記載されているから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、さらに、明瞭でない記載の釈明をするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(7)訂正事項11~13について
訂正事項11~13の「実施例2」を「参考例1」とし、「実施例11」を「参考例2」とする訂正は、訂正事項2および4に係る訂正に伴い、明細書の記載を明瞭なものとする訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項11~13は、「実施例」を「参考例」とするものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、明瞭でない記載の釈明をするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
4 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件においては、訂正前の請求項1~7について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項1~7に係る訂正事項1~8に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
5 まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、明細書、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正した明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2で検討したとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~7に係る発明(以下、「本件発明1~7」という。)は、訂正した特許請求の範囲の請求項1~7に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
基材粒子と、前記基材粒子の表面上に配置された導電部とを備え、
前記導電部は、ニッケル、パラジウム、ルテニウム、銅、タングステン、モリブデン、金、白金又は錫を少なくとも含み、
前記導電部の外表面に複数の突起を有し、
前記導電部の外表面に複数の突起を形成するために、前記導電部中に芯物質が埋め込まれているか、または、芯物質は用いられず、前記芯物質は金属粒子であり、この金属としてニッケル、パラジウム、ルテニウム、銅、タングステン、モリブデン、金、白金又は錫を少なくとも含み、
導電性粒子の全表面積100%中、前記突起がある部分の表面積が10%以上であり、
前記導電部が水素原子を含まないか、又は、前記導電部が水素原子を80μg/g以下で含む、導電性粒子。
【請求項2】
前記導電部のビッカース硬度が200以上である、請求項1に記載の導電性粒子。
【請求項3】(削除)
【請求項4】
前記基材粒子が、樹脂粒子又はコアシェル型以外の有機無機ハイブリッド粒子である、請求項1または2に記載の導電性粒子。
【請求項5】
前記導電部の外表面上に配置された絶縁性物質を備える、請求項1~2または4のいずれか1項に記載の導電性粒子。
【請求項6】
請求項1~2または4~5のいずれか1項に記載の導電性粒子と、バインダー樹脂とを含む、導電材料。
【請求項7】
第1の接続対象部材と、
第2の接続対象部材と、
前記第1の接続対象部材と、前記第2の接続対象部材とを接続している接続部とを備え、
前記接続部の材料が、請求項1~2または4~5のいずれか1項に記載の導電性粒子であるか、又は前記導電性粒子とバインダー樹脂とを含む導電材料である、接続構造体。」
第4 取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由について
1 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~7に係る特許に対して、当審が令和6年6月25日付けの取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由(以下、「取消理由」という。)の概要は、次のとおりである。
(1)取消理由1-1(実施可能要件)
導電性粒子の無機材料からなる導電部の突起を、無機材料からなる芯物質を用いて形成した場合、本件明細書等の発明の詳細な説明(以下、「発明の詳細な説明」という。)に記載された方法では、導電部のみの単位重量当たりの水素原子の含有量を得ることはできないから、「導電部が水素原子を80μg/g以下で含む」構成を実施することができない。
よって、発明の詳細な説明の記載は、当業者が請求項1~7に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定される要件を満たさないものである。
(2)取消理由1-2(実施可能要件)
導電性粒子が、ジビニルベンゼン共重合体樹脂粒子の表面を無機シェルにより被覆したコアシェル型の有機無機ハイブリッド粒子からなる基材粒子を備える場合、発明の詳細な説明に記載された方法では、導電部のみの単位重量当たりの水素原子の含有量を得ることはできないから、「導電部が水素原子を80μg/g以下で含む」構成を実施することができない。
よって、発明の詳細な説明の記載は、当業者が請求項4~7に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定される要件を満たさないものである。
(3)取消理由2-1(サポート要件)
請求項1に記載された「導電部」が錫ドープ酸化インジウム(ITO)、金属粉末とバインダーとを含むペースト、又は導電性高分子を含む任意の材料からなる場合、導電部に割れを生じ難くするという、発明の詳細な説明に記載した課題が解決されるとはいえない。
よって、請求項1、2、4~7に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないから、請求項1、2、4~7に係る発明は、特許法第36条第6項第1号に規定される要件を満たさないものである。
(4)取消理由2-2(サポート要件)
請求項3には、「導電部」がリン又はボロンの単体からなる構成を含むが、リン又はボロンの単体により導電部を構成できないことは技術常識であるから、発明の詳細な説明に記載された内容を、リン又はボロンの単体からなる導電部を含む構成に拡張、一般化できるとはいえない。
よって、請求項3~7に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないから、請求項3~7に係る発明は、特許法第36条第6項第1号に規定される要件を満たさないものである。
2 取消理由についての当審の判断
(1)取消理由1-1(実施可能要件)について
ア 本件発明1において、「導電部は、ニッケル、パラジウム、ルテニウム、銅、タングステン、モリブデン、金、白金又は錫を少なくとも含み」、「導電部中に芯物質が埋め込まれているか、または、芯物質は用いられず」、「芯物質は金属粒子であり、この金属としてニッケル、パラジウム、ルテニウム、銅、タングステン、モリブデン、金、白金又は錫を少なくとも含」むものである。
イ 発明の詳細な説明の段落0096には、「導電部は、ニッケル、パラジウム、ルテニウム、銅、タングステン、モリブデン、」「金、白金又は錫を少なくとも含む」と記載され、同じく段落0126には、「本発明に係る導電性粒子の製造方法は」「導電部を有する導電性粒子(アニール処理前導電性粒子)を用いて、上記導電性粒子を200℃以上にアニール処理する工程を備える。」「上記アニール処理によって、導電部が水素原子を含まないか、又は、導電部が水素原子を80μg/g以下で含む導電性粒子を得る。」と記載されている。
よって、ニッケル、パラジウム、ルテニウム、銅、タングステン、モリブデン、金、白金又は錫を少なくとも含む導電部は、200℃以上のアニール処理によって、水素原子を含まないか、又は、水素原子を80μg/g以下で含むものとなるといえる。
ウ 発明の詳細な説明の段落0224には「導電性粒子をジルコニアボールによるボールミルを用いて粉砕し、導電部を基材粒子から完全に剥離した。導電部と基材粒子から完全に剥離した試料を篩により、導電部と基材粒子とに分離し、導電部のみを採取した。」と記載され、同じく段落0225には「水素原子の含有量の測定には、昇温脱離水素分析装置(エフアイエス社製「PDHA-1000」)を用いた。昇温脱離装置で導電部を昇温加熱し、発生する微量水素をセンサガスクロマトグラフで測定した。3GPaの一定圧力下で、50℃から400℃まで昇温速度5℃/分で、真空引きされた導電部を徐々に加熱した。放出された水素原子を検出器で測定した。」と記載され、同じく段落0226に「導電部の水素原子の含有量は、50℃から400℃までに放出された水素原子の量の総量とした。」と記載されている。
よって、発明の詳細な説明には、導電性粒子の導電部の水素原子の含有量の測定方法として、導電性粒子をジルコニアボールによるボールミルを用いて粉砕し、導電部を基材粒子から完全に剥離し、剥離した試料を篩により導電部と基材粒子とに分離して、導電部のみを採取し、昇温脱離装置で導電部を3GPaの一定圧力下で50℃から400℃まで昇温速度5℃/分で加熱し、発生する微量水素をセンサガスクロマトグラフで測定し、50℃から400℃までに放出された水素原子の量の総量を、導電部の水素原子の含有量とすることが記載されている。
エ 上記アによれば、本件発明1の「芯物質」は、「金属粒子であり、この金属としてニッケル、パラジウム、ルテニウム、銅、タングステン、モリブデン、金、白金又は錫を少なくとも含」むものであり、上記イの導電部が含む材料からなる金属を含むものであるから、200℃以上のアニール処理によって、「芯物質」の水素原子の含有量も、「導電部」の水素原子の含有量と同程度になると認められる。
オ 上記エによれば、上記ウの方法により導電部と芯物質とを分離することができないとしても、「芯物質」に含まれる水素原子の含有量は「導電部」と同程度になるから、「芯物質」と「導電部」との水素原子の含有量が80μg/g以下であれば、「導電部」の水素原子の含有量も80μg/g以下であるといえるから、本件発明1の「導電部が水素原子を80μg/g以下で含む」構成を実施することができるといえる。
また、請求項2、4~7の記載は、請求項1の記載を引用し、本件発明2、4~7は、上記アにおいて説示した本件発明1の構成を備えるものであることを踏まえると、本件発明2、4~7についても、同様に、「導電部が水素原子を80μg/g以下で含む」構成を実施することができるといえる。
よって、取消理由1-1は解消した。
(2)取消理由1-2(実施可能要件)について
本件訂正により、本件発明4は、「基材粒子が、樹脂粒子又はコアシェル型以外の有機無機ハイブリッド粒子である」「導電性粒子」となり、コアシェル型の有機無機ハイブリッド粒子を含まないものとなった。
したがって、取消理由1-2は解消した。
(3)取消理由2-1(サポート要件)について
ア 本件発明1は、「前記導電部は、ニッケル、パラジウム、ルテニウム、銅、タングステン、モリブデン、金、白金又は錫を少なくとも含」むものである。
イ 発明の詳細な説明の段落0012には「本発明の目的は、導電部に割れを生じ難くすることができ、耐酸性を高めることができ、従って接続信頼性を高めることができる導電性粒子及び導電性粒子の製造方法を提供することである。」と記載されている。
よって、本件発明が解決しようとする課題は、導電部に割れを生じ難くし、耐酸性を高めることである。
ウ 発明の詳細な説明の段落0028には「本発明に係る導電性粒子では、基材粒子の表面上に導電部が配置されており、上記導電部が水素原子を含まないか、又は、上記導電部が水素原子を80μg/g以下で含むので、導電部に割れを生じ難くすることができ、耐酸性を高めることができ、従って接続信頼性を高めることができる。」と記載され、段落0096には、「導電部の割れをより一層抑え、耐酸性をより一層高める観点からは、上記導電部は、ニッケル、パラジウム、ルテニウム、銅、タングステン、モリブデン」「金、白金又は錫を少なくとも含むことが好ましく」と記載され、段落0246に示された表1には、実施例1~5、7~15の「第1の導電部」として「NiP」が記載され、実施例6の「第1の導電部」として「NiB」が記載され、実施例4の「第2の導電部」として「Au」が記載され、実施例5、6、13、14の「第2の導電部」として「Pd」が記載され、実施例5、6、13、14の「第3の導電部」として「Au」が記載され、実施例1~15において、「接続構造体A」及び「接続構造体B」における「導電部の割れ」の評価が「○」、「○○」又は「○○○」であり、導電部に割れが生じている導電性粒子の個数の割合が50個中20個未満であったことが記載されている。
よって、発明の詳細な説明には、基材粒子の表面上に配置された、ニッケル、パラジウム、ルテニウム、銅、タングステン、モリブデン、金、白金又は錫を少なくとも含む導電部が、水素原子を含まないか、又は、水素原子を80μg/g以下で含むことにより、導電部に割れを生じ難くすることができることが記載され、実施例において、ニッケル、パラジウム又は金を含む導電部の水素原子を80μg/g以下で含む場合に、導電部の割れが少なかったことが示されている。
エ 上記アの「ルテニウム、銅、タングステン、モリブデン」、「白金又は錫」は、「ニッケル、パラジウム」又は「金」と、金属である点で共通し、同様の特性を有することが予想されるから、上記ウを踏まえると、当業者であれば、本件発明1は、「ニッケル、パラジウム、ルテニウム、銅、タングステン、モリブデン、金、白金又は錫を少なくとも含」む「導電部」が、水素原子を含まないか、又は、水素原子を80μg/g以下で含むことにより、導電部の割れを生じ難くできる点で、上記イの課題を解決できることを理解できる。
したがって、本件特許の請求項2、4~7の記載は、請求項1の記載を引用し、本件発明2、4~7は、上記アの本件発明1の構成を備えるものであることを踏まえると、本件発明1、2、4~7は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えることとなっていない。
よって、取消理由2-1は解消された。
(4)取消理由2-2(サポート要件)
請求項3は削除されたため、取消理由2-2は解消した。
第5 取消理由で採用しなかった特許異議申立理由について
1 申立人1による特許異議申立理由の概要
取消理由において採用しなかった、申立人1が主張する特許異議申立理由(以下、「申立理由1」という。)は、以下の申立理由1-1~申立理由1-10のとおりのものである。なお、申立人1が提出した甲第1号証~甲第9号証、甲第11号証~甲13号証を、以下、「甲1-1」~「甲1-9」、「甲1-11」~「甲1-13」という。(申立人1が提出した甲第10号証は、当審において、採用しなかった。)
(申立理由1-1)(新規性、進歩性)請求項1~7に係る発明は、甲1-1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、甲1-1に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件の請求項1~7に係る特許は、同法同条第1項又は第2項の規定に違反してされたものである。
(申立理由1-2)(新規性、進歩性)請求項1~7に係る発明は、甲1-2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、甲1-2に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件の請求項1~7に係る特許は、同法同条第1項又は第2項の規定に違反してされたものである。
(申立理由1-3)(新規性、進歩性)請求項1~7に係る発明は、甲1-3に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、甲1-3に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件の請求項1~7に係る特許は、同法同条第1項又は第2項の規定に違反してされたものである。
(申立理由1-4)(新規性、進歩性)請求項1~7に係る発明は、甲1-4に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、甲1-4に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件の請求項1~7に係る特許は、同法同条第1項又は第2項の規定に違反してされたものである。
(申立理由1-5)(新規性、進歩性)請求項1~7に係る発明は、甲1-5に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、甲1-5に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件の請求項1~7に係る特許は、同法同条第1項又は第2項の規定に違反してされたものである。
(申立理由1-6)(新規性、進歩性)請求項1~4に係る発明は、甲1-6に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、甲1-6に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件の請求項1~4に係る特許は、同法同条第1項又は第2項の規定に違反してされたものである。
(申立理由1-7)(進歩性)請求項5~7に係る発明は、甲1-6に記載された発明と、甲1-1~甲1-5に記載された事項とに基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件の請求項5~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(申立理由1-8)(サポート要件)請求項1~7に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないから、本件の請求項1~7に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定される要件を満たさないものである。
(申立理由1-9)(明確性要件)請求項1~7に係る発明は、明確でないから、本件の請求項1~7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定される要件を満たさないものである。
(申立理由1-10)(実施可能要件)発明の詳細な説明の記載は、当業者が請求項1~7に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、本件の請求項1~7に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定される要件を満たさないものである。
<申立人1が提出した証拠>
甲1-1:特開2014-241278号公報
甲1-2:韓国公開特許2008-0061888号公報
甲1-3:特開2013-8474号公報
甲1-4:国際公開第2013/085039号
甲1-5:国際公開第2013/042785号
甲1-6:表面技術、Vol.48、No.4、429-432頁(1997)
甲1-7:マイクロエレクトロニクスシンポジウム論文集(2010年9月発行)第103~106頁
甲1-8:表面技術、Vo1.70、No.3、39-43頁(2019)
甲1-9:表面技術、Vol.53、No.1、第7-14頁(2002)
甲1-11:三新化学工業株式会社ホームページ(https://www.sanshin-ci.co.jp/products-cat/cation)、2022年掲載
甲1-12:昇温脱離水素分析装置「PDHA-1000」のパンフレット、NISSHAエフアイエス株式会社、2018年1月発行
甲1-13:特開2014-207223号公報
2 申立人2による特許異議申立理由の概要
取消理由において採用しなかった、申立人2が主張する特許異議申立理由(以下、「申立理由2」という。)は、以下の申立理由2-1~申立理由2-4のとおりのものである。なお、申立人2が提出した甲第1号証は、申立人1が提出した甲1-4であり、また、申立人2が提出した甲第2号証~甲第14号証を、以下、「甲2-2」~「甲2-14」という。
(申立理由2-1)(新規性、進歩性)請求項1~4、6、7に係る発明は、甲1-4に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、本件発明1~7は、甲1-4に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件の請求項1~7に係る特許は、同法同条第1項又は第2項の規定に違反してされたものである。
(申立理由2-2)(実施可能要件)発明の詳細な説明の記載は、当業者が請求項1~7に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、本件の請求項1~7に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定される要件を満たさないものである。
(申立理由2-3)(サポート要件)請求項1~7に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないから、本件の請求項1~7に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定される要件を満たさないものである。
(申立理由2-4)(明確性要件)請求項1~7に係る発明は、明確でないから、本件の請求項1~7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たさないものである。
<申立人2が提出した証拠>
甲1-4:国際公開第2013/085039号
甲2-2:特開2011-029179号公報
甲2-3:特開2011-066015号公報
甲2-4:「無電解ニッケルめっき皮膜の耐摩耗性」金属表面技術Vol.37,No.11,665-670頁(1986)
甲2-5:「無電解めっき技術」第2章第3節無電解ニッケル(Ni)めっき技術、発行所:サイエンス&テクノロジー株式会社、発行日:2012年11月29日
甲2-6:「無電解ニッケルめっきによる異方性導電微粒子の作製」表面技術Vol.48,No.4,429-432(1997)
甲2-7:特開平11-343592号公報
甲2-8:特開2000-198709号公報
甲2-9:特開2001-152366号公報
甲2-10:「無電解ニッケルめっき-機能分類と応用」表面技術Vol.53,No.1,7-14(2002)
甲2-11:「X線リソグラフィを利用した高効率高精度微細ふるいの研究」精密工学会誌Vol.78,No.1,77-80(2012)
甲2-12:NISSHAエフアイエス社製「PDHA-1000」のカタログ、2018年1月発行
甲2-13:「無電解ニッケル-リンめっき皮膜の初期析出における微細構造について」金属表面技術Vol.28,No.1,12-17(1977)
甲2-14:特開2006-302716号公報
3 申立理由についての当審の判断
(1)申立理由1-1について
ア 甲1-1について
(ア)甲1-1には、以下の記載がある。(下線は、当審にて付した。以下、同じ)
「【0021】
(導電性粒子)
本発明に係る導電性粒子は、基材粒子と、上記基材粒子の表面上に配置された導電層とを備える。上記基材粒子を10%圧縮したときの圧縮弾性率(10%K値)は1000N/mm2以上である。上記導電層は、外表面側にパラジウム層を有する。上記パラジウム層100重量%中、パラジウムの含有量は99.9重量%以上である。」
「【0043】
以下、本発明に係る導電性粒子の他の詳細を説明する。
【0044】
[基材粒子]
上記基材粒子としては、樹脂粒子、金属を除く無機粒子、有機無機ハイブリッド粒子及び金属粒子等が挙げられる。上記基材粒子は、金属粒子を除く基材粒子であることが好ましく、樹脂粒子、金属を除く無機粒子又は有機無機ハイブリッド粒子であることがより好ましい。」
「【0062】
[導電層]
上記導電層は外表面側にパラジウム層を有する。上記導電層は、パラジウム層以外の導電層(第1の導電層)と、パラジウム層(第2の導電層)とを有していてもよい。
・・・(中略)・・・
【0067】
なお、特に無電解めっきによりパラジウム層を形成する場合には、パラジウム層を形成する前の粒子の表面に触媒を多く付ける必要がある場合がある。従って、無電解めっき法によってパラジウム層を形成した場合には、一般に上記パラジウム層におけるパラジウムの含有量は99.9重量%未満になり、99.9重量%以上にはならない。また、無電解めっき法によってパラジウム層を形成した場合には、パラジウム層中に触媒残渣が多く含まれやすい。
【0068】
上記パラジウム層の内表面(上記基材粒子側の表面)から厚み方向に外側に向かって厚み5nmの領域において、上記パラジウム層がパラジウム以外の成分を含まないか、又は上記パラジウム層がパラジウム以外の成分を含みかつ上記パラジウム層に含まれるパラジウム以外の成分の含有量は50ppm以下であることが好ましい。この場合に、上記パラジウム以外の成分としては、例えば触媒残渣等が挙げられる。また、上記パラジウム以外の成分としては、硫黄、塩素、及びスズ等が挙げられる。
【0069】
上記導電層の厚み(導電層が多層である場合には、導電層全体の厚み)は、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上、更に好ましくは20nm以上、特に好ましくは50nm以上、好ましくは1000nm以下、より好ましくは800nm以下、更に好ましくは500nm以下、特に好ましくは400nm以下、最も好ましくは300nm以下である。上記パラジウム層の厚みは、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上、更に好ましくは20nm以上、特に好ましくは50nm以上、好ましくは1000nm以下、より好ましくは800nm以下、更に好ましくは500nm以下、特に好ましくは400nm以下、最も好ましくは300nm以下である。」
「【0076】
[芯物質]
上記芯物質が上記導電層中に埋め込まれていることによって、上記導電層が外表面に複数の突起を有するようにすることが容易である。但し、導電性粒子及び導電層の表面に突起を形成するために、芯物質を必ずしも用いなくてもよい。
・・・(中略)・・・
【0079】
上記芯物質を構成する物質としては、導電性物質及び非導電性物質が挙げられる。上記導電性物質としては、例えば、金属、金属の酸化物、黒鉛等の導電性非金属及び導電性ポリマー等が挙げられる。上記導電性ポリマーとしては、ポリアセチレン等が挙げられる。上記非導電性物質としては、シリカ、アルミナ、チタン酸バリウム及びジルコニア等が挙げられる。なかでも、導電性を高めることができ、更に接続抵抗を効果的に低くすることができるので、金属が好ましい。上記芯物質は金属粒子であることが好ましい。
【0080】
上記金属としては、例えば、金、銀、銅、白金、亜鉛、鉄、鉛、錫、アルミニウム、コバルト、インジウム、ニッケル、クロム、チタン、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム及びカドミウム等の金属、並びに錫-鉛合金、錫-銅合金、錫-銀合金、錫-鉛-銀合金及び炭化タングステン等の2種類以上の金属で構成される合金等が挙げられる。なかでも、ニッケル、銅、銀又は金が好ましい。上記芯物質を形成するための金属は、上記導電層を形成するための金属と同じであってもよく、異なっていてもよい。上記芯物質を形成するための金属は、上記導電層を形成するための金属を含むことが好ましい。上記芯物質を形成するための金属は、ニッケルを含むことが好ましい。」
(イ)上記(ア)によれば、甲1-1には、次の発明(以下、「甲1-1発明」という。)が記載されている。
<甲1-1発明>
「基材粒子と、
基材粒子の表面上に配置された導電層とを備える導電性粒子であって、(段落0021)
基材粒子は、樹脂粒子、金属を除く無機粒子、有機無機ハイブリッド粒子及び金属粒子のいずれかであり、(段落0044)
導電層は、外表面側にパラジウム層を有し、(段落0062)
パラジウム層の内表面(基材粒子側の表面)から厚み方向に外側に向かって厚み5nmの領域において、パラジウム層がパラジウム以外の成分を含まないか、又はパラジウム層がパラジウム以外の成分を含みかつパラジウム層に含まれるパラジウム以外の成分の含有量は50ppm以下であり、(段落0068)
上記導電層の厚みは、5nm以上であり、
パラジウム層の厚みは、5nm以上であり、(段落0069)
芯物質が導電層中に埋め込まれていることによって、導電層が外表面に複数の突起を有し、(段落0076)
上記芯物質は、金、銅、白金、錫又はニッケルからなる金属粒子である、(段落0079、段落0080)
導電性粒子。」
イ 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲1-1発明との対比
a 甲1-1発明の「基材粒子」は、本件発明1の「基材粒子」に相当する。
b 甲1-1発明の「導電層」は、「基材粒子の表面上に配置された」ものであるから、本件発明1の「前記基材粒子の表面上に配置された導電部」に相当する。
c 甲1-1発明の「導電層は、外表面側にパラジウム層を有」することは、本件発明1の「前記導電部は」「パラジウム」「を少なくとも含」むことに相当する。
d 甲1-1発明の「芯物質が導電層中に埋め込まれていることによって、導電層が外表面に複数の突起を有」することは、本件発明1の「前記導電部は」「パラジウム」「を少なくとも含み、前記導電部の外表面に複数の突起を有し、前記導電部の外表面に複数の突起を形成するために、前記導電部中に芯物質が埋め込まれている」ことに相当する。
e 甲1-1発明の「上記芯物質は、金、銅、白金、錫又はニッケルからなる金属粒子である」ことは、本件発明1の「前記芯物質は金属粒子であり、この金属としてニッケル、銅、金、白金又は錫を少なくとも含む」ことに相当する。
f 甲1-1発明の「基材粒子と、基材粒子の表面上に配置された導電層とを備える導電性粒子」は、上記a~cによれば、本件発明1の「基材粒子」及び「前記基材粒子の表面上に配置された導電部」を備える点で、本件発明1の「導電性粒子」と一致する。
g 上記a~fによれば、本件発明1と甲1-1発明とは、以下の点で一致し、相違する。
<一致点>
「 基材粒子と、前記基材粒子の表面上に配置された導電部とを備え、
前記導電部は、パラジウムを少なくとも含み、
前記導電部の外表面に複数の突起を有し、
前記導電部の外表面に複数の突起を形成するために、前記導電部中に芯物質が埋め込まれ、前記芯物質は金属粒子であり、この金属としてニッケル、銅、金、白金又は錫を少なくとも含む、
導電性粒子。」
<相違点1>
本件発明1が、「導電性粒子の全表面積100%中、前記突起がある部分の表面積が10%以上であ」るのに対し、甲1-1発明は、導電性粒子の全表面積100%中、突起がある部分の表面積が特定されていない点。
<相違点2>
本件発明1が、「前記導電部が水素原子を含まないか、又は、前記導電部が水素原子を80μg/g以下で含む」のに対し、甲1-1発明は、「導電層の厚み」が「5nm」であり、「パラジウム層の厚み」が「5nm」であり、「パラジウム層の内表面(基材粒子側の表面)から厚み方向に外側に向かって厚み5nmの領域において、パラジウム層がパラジウム以外の成分を含まないか、又はパラジウム層がパラジウム以外の成分を含みかつパラジウム層に含まれるパラジウム以外の成分の含有量は50ppm以下で」ある構成を含むものの、「導電層」が含む水素原子の含有量について特定されていない点。
(イ)相違点についての検討
事案に鑑み、相違点2から検討する。
a 甲1-1発明において、「導電層の厚み」が「5nm」であり、「パラジウム層の厚み」が「5nm」であり、「パラジウム層の内表面(基材粒子側の表面)から厚み方向に外側に向かって厚み5nmの領域において、パラジウム層がパラジウム以外の成分を含まないか、又はパラジウム層がパラジウム以外の成分を含みかつパラジウム層に含まれるパラジウム以外の成分の含有量は50ppm以下で」ある場合、「導電層」は、「パラジウム層」からなり、「パラジウム以外の成分」を含まないか、50ppm以下で含むものであるといえる。
b ここで、甲1-1の段落0067には「無電解めっき法によってパラジウム層を形成した場合には、一般に上記パラジウム層におけるパラジウムの含有量は99.9重量%未満になり、99.9重量%以上にはならない。また、無電解めっき法によってパラジウム層を形成した場合には、パラジウム層中に触媒残渣が多く含まれやすい。」と記載され、同じく段落0068には、「パラジウム以外の成分の含有量は50ppm以下であることが好ましい。この場合に、上記パラジウム以外の成分としては、例えば触媒残渣等が挙げられる。また、上記パラジウム以外の成分としては、硫黄、塩素、及びスズ等が挙げられる。」と記載されており、無電解めっき法によって形成したパラジウム層は、パラジウムの含有量が99.9重量%未満になり、パラジウム以外の成分として硫黄、塩素、及びスズ等の触媒残渣等が50ppm以下の含有量で含まれるといえる。
c 上記bによれば、パラジウム層には、99.9重量%未満のパラジウムと、硫黄、塩素、及びスズ等の触媒残渣等である50ppm以下の「パラジウム以外の成分」と、0.095重量%以上(=「100重量%」-「99.9重量%未満」-「50ppm以下」)のその他の成分が含まれるといえる。そして、上記「0.095重量%以上」「のその他の成分」に、水素原子が含まれないとも、80μg/g以下で含まれるともいえないから、甲1-1発明において、「導電層」が水素原子を含まないか、又は、「導電層」が水素原子を80μg/g以下で含むとはいえない。よって、相違点2は、実質的なものである。
d そして、導電性粒子の導電部が水素原子を含まないか、又は、水素原子を80μg/g以下で含むことは、甲1-2~甲1-9、甲1-11、甲1-13のいずれにも記載されていないから、甲1-1発明において、相違点2に係る本件発明1の構成を採用することは、甲1-2~甲1-9、甲1-11、甲1-13の記載を参酌しても、当業者が容易に想到し得たことではない。
(ウ)小括
上記(イ)によれば、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1-1発明ではない。また、本件発明1は、甲1-2~甲1-9、甲1-11、甲1-13の記載を参酌しても、甲1-1発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
ウ 本件発明2、4~7について
請求項2、4~7の記載は、請求項1の記載を引用するものであるところ、本件発明2、4~7は、本件発明1の構成をすべて備えるものであるから、上記イ(ア)の相違点2と同様の点で、甲1-1発明と相違する。したがって、上記イ(イ)における検討と同様の理由により、本件発明2、4~7は、甲1-1発明ではない。また、本件発明2、4~7は、甲1-2~甲1-9、甲1-11、甲1-13の記載を参酌しても、甲1-1発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(2)申立理由1-2について
ア 甲1-2について
(ア)甲1-2には、以下の記載がある。なお、甲1-2の記載は、当審の訳文で示す。
「【請求項1】
(S1)高分子粉体を準備する段階;
(S2)リン系還元剤を用いた無電解メッキを実施して前記高分子粉体の表面にニッケル薄層が形成されたニッケル被覆粉体を製造する段階;及び
(S3)前記ニッケル被覆粉体を熱処理してニッケル薄層に含有されたリンの含量をニッケル薄層の総重量を基準として2重量%以下に減少させる段階を含む導電性粒子の製造方法。」
「<19>次に、得られたニッケル被覆粉体を熱処理してニッケル薄層に含有されたリンの含量をニッケル薄層の総重量を基準として2重量%以下に減少させる(S3段階)。ニッケル被覆粉体の熱処理は窒素、アルゴンなどの不活性雰囲気で200乃至250℃の温度にすることが好ましいが、200℃以上で熱処理時ニッケルの結晶化が進行されながらリンの含量が減少すると判断される。熱処理は1時間以上実施することが好ましい。」
(イ)上記(ア)によれば、甲1-2には、次の発明(以下、「甲1-2発明」という。)が記載されている。
<甲1-2発明>
「(S1)高分子粉体を準備する段階;
(S2)リン系還元剤を用いた無電解メッキを実施して前記高分子粉体の表面にニッケル薄層が形成されたニッケル被覆粉体を製造する段階;及び
(S3)前記ニッケル被覆粉体を熱処理してニッケル薄層に含有されたリンの含量をニッケル薄層の総重量を基準として2重量%以下に減少させる段階を含み、
熱処理は、窒素、アルゴンなどの不活性雰囲気で200乃至250℃の温度とし、熱処理時ニッケルの結晶化が進行されながらリンの含量が減少する、
製造方法により製造された導電性粒子。」
イ 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲1-2発明との対比
a 甲1-2発明は、「高分子粉体の表面にニッケル薄層が形成されたニッケル被覆粉体を製造」し、「ニッケル被覆粉体を熱処理して」「リンの含量を」「減少させ」たものであるから、「高分子粉体」の表面に「ニッケル薄層」が形成されたものである。よって、甲1-2発明の「高分子粉体」は、本件発明1の「基材粒子」に相当する。また、甲1-2発明の「ニッケル薄層」は、「前記基材粒子の表面上に配置された導電部とを備え、前記導電部は」「ニッケル」「を少なくとも含」む点で、本件発明1の「導電部」と共通する。
b また、甲1-2発明の「導電性粒子」は、上記aを踏まえると、本件発明1の「導電性粒子」と、「基材粒子」及び「導電部」を備える点で、一致する。
c 上記a及びbによれば、本件発明1と甲1-2発明とは、以下の点で一致し、相違する。
<一致点>
「基材粒子と、前記基材粒子の表面上に配置された導電部とを備え、
前記導電部は、ニッケルを少なくとも含む、
導電性粒子。」
<相違点3>
本件発明1が、「前記導電部の外表面に複数の突起を有し、前記導電部の外表面に複数の突起を形成するために、前記導電部中に芯物質が埋め込まれているか、または、芯物質は用いられず、前記芯物質は金属粒子であり、この金属としてニッケル、パラジウム、ルテニウム、銅、タングステン、モリブデン、金、白金又は錫を少なくとも含み、導電性粒子の全表面積100%中、前記突起がある部分の表面積が10%以上で」あるのに対し、甲1-2発明は、「ニッケル薄層」の外表面に突起を形成したものではない点。
<相違点4>
本件発明1が、「前記導電部が水素原子を含まないか、又は、前記導電部が水素原子を80μg/g以下で含む」のに対し、甲1-2発明は、「ニッケル薄層」が含む水素原子の含有量が、そのようなものではない点。
(イ)相違点についての検討
事案に鑑み、相違点4から検討する。
a 甲1-2発明は、「ニッケル薄層」が、水素原子を含まないか、又は、水素原子を80μg/g以下で含むものではなく、また、甲1-2には、ニッケル薄層の水素含有量について何ら記載されていない。よって、相違点4は、実質的なものである。
b そして、相違点4に係る本件発明1の構成は、甲1-1、甲1-3~甲1-9、甲1-11、甲1-13のいずれにも記載されておらず、また、本件特許の出願時の技術常識であるとも言えないから、本件発明1は、甲1-1、甲1-3~甲1-9、甲1-11、甲1-13を参酌しても、甲1-2発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
c 申立人1は、提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書1」という。)の第32頁下から4行~最下行において、本件明細書等の段落0126には、基材粒子表面の導電部を200℃以上の温度でアニール処理することにより導電部の水素原子を80μg/g以下にすることが記載されているところ、甲1-2発明は、200℃以上の温度でアニール処理するものであるから、「ニッケル薄層」の水素原子は80μg/g以下である蓋然性が高い旨主張している。
d 上記cの申立人1の主張について検討する。
(a)本件明細書等の段落0126には、「上記導電性粒子を200℃以上にアニール処理する工程を備える。本発明に係る導電性粒子の製造方法では、上記アニール処理によって、導電部が水素原子を含まないか、又は、導電部が水素原子を80μg/g以下で含む導電性粒子を得る。」と記載されている。
しかし、アニール処理による被処理体の状態の変化は、処理温度の他に、処理時間に依存することが技術常識であるところ、本件明細書等には、アニール処理の温度が200℃以上であれば、任意の処理時間により、導電部が水素原子を含まないか、又は、水素原子を80μg/g以下で含むものとなることは、記載も示唆もされていない。
(b)また、本件明細書等には実施例として、段落0159に「導電性粒子を100KPaの気圧雰囲気下、温度300℃で4時間(アニール処理条件)アニール処理を行い」と記載され、段落0207に「導電性粒子を10KPaの気圧雰囲気下、温度300℃で4時間アニール処理するようにアニール処理条件を変更した」と記載され、段落0208に「導電性粒子を100KPaの気圧雰囲気下、温度200℃で4時間アニール処理するようにアニール処理条件を変更した」と記載され、段落0212に「導電性粒子を100KPaの気圧雰囲気下、温度400℃で4時間アニール処理するようにアニール処理条件を変更した」と記載され、段落0214に「導電性粒子を100KPaの気圧雰囲気下、温度500℃で4時間アニール処理するようにアニール処理条件を変更した」と記載されており、導電性粒子は、200℃以上の所定の温度、所定の時間でアニール処理されるものである。
しかし、甲1-2発明の「200乃至250℃の温度」の「熱処理」は、本件明細書等に記載された実施例の上記所定の温度と所定の時間を満たすものではないから、「ニッケル薄層」が水素原子を含まないか、水素原子を80μg/g以下含むものとする条件であるともいえない。
(c)また、申立人1が特許異議申立書1の第33頁第1行~第8行で引用する甲1-7及び甲1-8の記載は、上記(a)及び(b)の判断を左右するものではない。
(d)上記(a)~(c)のとおりであるから、上記cの申立人1の主張を採用することはできない。
(ウ)小括
上記(イ)によれば、本件発明1は、相違点3について検討するまでもなく、甲1-2発明ではない。また、本件発明1は、甲1-1、甲1-3~甲1-9、甲1-11、甲1-13の記載を参酌しても、甲1-2発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
ウ 本件発明2、4~7について
請求項2、4~7の記載は、請求項1の記載を引用するものであるところ、本件発明2、4~7は、本件発明1の構成をすべて備えるものであるから、上記イ(ア)の相違点4と同様の点で、甲1-2発明と相違する。したがって、上記イ(イ)における検討と同様の理由により、本件発明2、4~7は、甲1-2発明ではない。また、本件発明1は、甲1-1、甲1-3~甲1-9、甲1-11、甲1-13の記載を参酌しても、甲1-2発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)申立理由1-3について
ア 甲1-3について
(ア)甲1-3には、以下の記載がある。
「【請求項1】
樹脂粒子の表面にニッケルを含む導電性金属層を形成して金属被覆粒子を製造する被覆工程、及び、
この金属被覆粒子を、非酸化性雰囲気下で180℃~350℃の温度で加熱処理を行う熱処理工程を含むことを特徴とする導電性微粒子の製造方法。」
「【0007】
本発明の製造方法は、被覆工程及び熱処理工程を含み、樹脂粒子の表面にニッケルを含む導電性金属層を形成した金属被覆粒子を、非酸化性雰囲気下で180℃~350℃の温度で加熱処理を行うことを要旨とする。非酸化性雰囲気下で熱処理することにより、導電性金属層の硬度が上昇し、得られる導電性微粒子の圧痕形成能が向上する。」
「【0051】
前記熱処理の温度は180℃以上、好ましくは200℃以上、より好ましくは230℃以上、さらに好ましくは260℃以上、特に好ましくは280℃以上である。熱処理温度が高いほど、得られる導電性微粒子の圧痕形成能が向上する。一方、熱処理温度が高くなり過ぎると、樹脂粒子が劣化してしまうため、熱処理温度は350℃以下が好ましく、より好ましくは330℃以下、さらに好ましくは300℃以下である。」
(イ)上記(ア)によれば、甲1-3には、次の発明(以下、「甲1-3発明」という。)が記載されている。
<甲1-3発明>
「樹脂粒子の表面にニッケルを含む導電性金属層を形成して金属被覆粒子を製造する被覆工程、及び、
この金属被覆粒子を、非酸化性雰囲気下で180℃~350℃の温度で加熱処理を行う熱処理工程を含む導電性微粒子の製造方法により製造され、(請求項1)
熱処理の温度は180℃以上、好ましくは200℃以上、より好ましくは230℃以上、さらに好ましくは260℃以上、特に好ましくは280℃以上である、(段落0007及び段落0051)
導電性微粒子。」
イ 本件発明1について
本件発明1と甲1-3発明とを対比すると、両者は、少なくとも上記相違点4と同じ点で相違し、当該相違点についての判断は、上記(2)イ(イ)において説示したとおりである。
よって、本件発明1は、他の相違点について検討するまでもなく、甲1-3発明ではない。また、本件発明1は、甲1-1、甲1-2、甲1-4~甲1-9、甲1-11、甲1-13の記載を参酌しても、甲1-3発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
ウ 本件発明2、4~7について
上記(2)ウにおける検討と同様の理由により、本件発明2、4~7は、甲1-3発明ではない。また、本件発明2、4~7は、甲1-1、甲1-2、甲1-4~甲1-9、甲1-11、甲1-13の記載を参酌しても、甲1-3発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4)申立理由1-4、申立理由2-1について
ア 甲1-4について
(ア)甲1-4には、以下の記載がある。
「[0054]1-4.導電性微粒子の製法
前記導電性微粒子は、無電解めっき法により製造でき、この微粒子中の二ッケル層において(200)面に垂直な方向に結晶を成長させるには、無電解めっき工程で特有の処理が必要となる。すなわち無電解めっき工程におけるめっき液(ニッケル塩含有めっき液)がグリシンと酢酸ナトリウムを含むこと、言い換えればニッケルめっき時にグリシンと酢酸ナトリウムが共存することが重要である。さらに、(i) グリシンに対する酢酸ナトリウムの質量割合(酢酸ナトリウム/グリシン)を1.8以下(好ましくは1.7以下、さらに好ましくは1.6以下)にすること、又は(ii) グリシンに対する酢酸ナトリウムの質量割合が1.8を超える場合(好ましくは1.9以上、さらに好ましくは2.0以上の場合)には、めっき後に、窒素などの不活性雰囲気下、270℃以上(好ましくは275℃以上、さらに好ましくは280℃以上)で熱処理することによって、本発明の導電性微粒子を得ることができる。」
「[0066]2.突起を有する導電性微粒子
導電性微粒子はその表面が平滑であっても凹凸状であっても良いが、バインダー樹脂を効果的に排除して電極との接続を行える点で複数の突起を有することが好ましい。突起を有することで、導電性微粒子を電極間の接続に用いた際の接続信頼性を高めることができる。」
「[0069] 前記突起の数は特に限定されないが、高い接続信頼性を確保する点から導電性微粒子の表面を電子顕微鏡で観察したときの任意の正投影面において、少なくとも1個以上の突起を有することが好ましく、より好ましくは5個以上、さらに好ましくは10個以上である。」
「[請求項1] 基材粒子と、該基材粒子の表面を被覆する導電性金属層とを有する導電性微粒子であって、
前記導電性金属層がニッケル層を含み、
前記導電性微粒子を粉末X線回折測定したとき、ニッケルの格子面(200)に帰属される回折線が観測されることを特徴とする導電性微粒子。」
(イ)上記(ア)によれば、甲1-4には、次の発明(以下、「甲1-4発明」という。)が記載されている。
<甲1-4発明>
「基材粒子と、該基材粒子の表面を被覆する導電性金属層とを有する導電性微粒子であって、
前記導電性金属層がニッケル層を含み、
前記導電性微粒子を粉末X線回折測定したとき、ニッケルの格子面(200)に帰属される回折線が観測され、(請求項1)
導電性微粒子はその表面が複数の突起を有し、(段落0066)
無電解めっき法により製造され、めっき液であるニッケル塩含有めっき液がグリシンと酢酸ナトリウムを含み、グリシンに対する酢酸ナトリウムの質量割合が1.8を超え、めっき後に、窒素などの不活性雰囲気下、270℃以上で熱処理することによって得られる、(段落0054)
導電性微粒子。」
イ 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲1-4発明とを対比すると、両者は、少なくとも上記相違点4と同じ点で相違し、当該相違点についての判断は、上記(2)イ(イ)において説示したとおりである。
なお、申立人2は、提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書2」という。)の第15頁第11行~最下行において、甲2-4~甲2-9の記載によれば、無電解ニッケルめっき皮膜は皮膜中に水素を必然的に含むこと、皮膜中の水素により水素脆化が起こること、熱処理により皮膜中の水素は容易に放出されること、及び、皮膜中の水素による脆化を防ぐために皮膜中の水素を50ppm(50μg/g)以下にすることは、周知技術であるから、甲1-4発明において、「導電性金属層」の水素原子含有量は80μg/g以下である蓋然性が高く、仮にそうでないとしても、甲1-4発明において、「導電性金属層」の水素原子含有量を80μg/g以下とすることは、当業者が容易になし得たことである旨主張している。
上記の申立人2の主張について検討する。
甲2-4~甲2-9を含む甲2-2~甲2-10のいずれにも、導電性粒子における基材の表面上に配置された導電部の水素原子の含有量について記載されていない。そうすると、申立人2が主張する周知技術における「無電解ニッケルめっき皮膜」は、導電性粒子を構成するものではないから、申立人2が主張する周知技術を甲1-4発明に適用して、導電性粒子における基材の表面上に配置された導電部の水素原子の含有量を80μg/g以下とすることはできない。
よって、上記の申立人2の主張を採用することはできない。
(イ)小括
上記(ア)によれば、本件発明1は、他の相違点について検討するまでもなく、甲1-4発明ではない。また、本件発明1は、甲1-1~甲1-3、甲1-5~甲1-9、甲1-11、甲1-13、甲2-2~甲2-10の記載を参酌しても、甲1-4発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
ウ 本件発明2、4~7について
上記(2)ウにおける検討と同様の理由により、本件発明2、4~7は、甲1-4発明ではない。また、本件発明2、4~7は、甲1-1~甲1-3、甲1-5~甲1-9、甲1-11、甲1-13、甲2-2~甲2-10の記載を参酌しても、甲1-4発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(5)申立理由1-5について
ア 甲1-5について
(ア)甲1-5には、以下の記載がある。
「[0066] 前記態様1、2の製造方法において、得られた導電性微粒子に熱処理を施すことにより、結晶子径を大きくすることができる。この手法は、特に結晶子径を1.5nm以上3nm以下(好ましくは1.7nm以上3nm以下)の範囲に制御したい場合に特に有効である。前記熱処理は、導電性微粒子に対して、非酸化性雰囲気下で熱処理を施す。前記非酸化性雰囲気としては、不活性雰囲気又は還元性雰囲気が挙げられる。前記不活性雰囲気としては窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気が挙げられる。
[0067] 前記熱処理の温度は180℃以上、好ましくは200℃以上、より好ましくは230℃以上、さらに好ましくは260℃以上、特に好ましくは280℃以上である。熱処理温度が高いほど、結晶子径が大きくなる。一方、熱処理温度が高くなり過ぎると、基材粒子の熱分解が進むため、熱処理温度は350℃以下が好ましく、より好ましくは330℃以下、さらに好ましくは300℃以下である。前記熱処理の時間は、0.3時間以上が好ましく、より好ましくは0.5時間以上、さらに好ましくは0.7時間以上である。熱処理時間が長いほど、結晶子径が大きくなる。一方、熱処理時間が長くなり過ぎると、ニッケルの酸化が進む傾向があるため、熱処理時間は、10時間以下が好ましく、より好ましくは5.0時間以下、さらに好ましくは3.0時間以下である。
[0068]2.突起を有する導電性微粒子
導電性微粒子はその表面が平滑であっても凹凸状であっても良いが、バインダー樹脂を効果的に排除して電極との接続を行える点で複数の突起を有することが好ましい。突起を有することで、導電性微粒子を電極間の接続に用いた際の接続信頼性を高めることができる。」
「[請求項1] 基材粒子と、該基材粒子の表面を被覆する導電性金属層とを有する導電性微粒子であって、
前記導電性金属層が、ニッケル層を含み、
粉末X線回折法により測定されるニッケルの[111]方向の結晶子径が、3nm以下であることを特徴とする導電性微粒子。」
(イ)上記(ア)によれば、甲1-5には、次の発明(以下、「甲1-5発明」という。)が記載されている。
<甲1-5発明>
「基材粒子と、該基材粒子の表面を被覆する導電性金属層とを有する導電性微粒子であって、
前記導電性金属層が、ニッケル層を含み、
粉末X線回折法により測定されるニッケルの[111]方向の結晶子径が、3nm以下であり、(請求項1)
熱処理を施すことにより、結晶子径が大きくされ、
前記熱処理は、導電性微粒子に対して、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で施され、(段落0066)
熱処理の温度は180℃以上、好ましくは200℃以上、より好ましくは230℃以上、さらに好ましくは260℃以上、特に好ましくは280℃以上であり、350℃以下が好ましく、より好ましくは330℃以下、さらに好ましくは300℃以下であり、熱処理の時間は、0.3時間以上が好ましく、より好ましくは0.5時間以上、さらに好ましくは0.7時間以上であり、10時間以下が好ましく、より好ましくは5.0時間以下、さらに好ましくは3.0時間以下であり、(段落0067)
導電性微粒子はその表面が複数の突起を有する、(段落0068)
導電性微粒子。」
イ 本件発明1について
本件発明1と甲1-5発明とを対比すると、両者は、少なくとも上記相違点4と同じ点で相違し、当該相違点についての判断は、上記(2)イ(イ)において説示したとおりである。
よって、本件発明1は、他の相違点について検討するまでもなく、甲1-5発明ではない。また、本件発明1は、甲1-1~甲1-4、甲1-6~甲1-9、甲1-11、甲1-13の記載を参酌しても、甲1-5発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
ウ 本件発明2、4~7について
上記(2)ウにおける検討と同様の理由により、本件発明2、4~7は、甲1-5発明ではない。また、本件発明2、4~7は、甲1-1~甲1-4、甲1-6~甲1-9、甲1-11、甲1-13の記載を参酌しても、甲1-5発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(6)申立理由1-6、申立理由1-7について
ア 甲1-6について
(ア) 甲1-6には、以下の記載がある。
a 「この中で無電解めっきを適用することにより作製した導電微粒子は,高分子系の樹脂微粒子上に金属を成膜しているために,熱膨張や圧着接合時の寸法変化に対して弾性変形範囲が広く,接続部材として適している。」(第57頁左欄第19行~右欄第2行)
b 「本報では素材としてスチレン系の樹脂微粒子を用い,無電解ニッケルめっきによりニッケル導電膜を形成させ,その成膜状態や皮膜特性,また圧縮変形時の皮膜の柔軟性について評価した。
・・・(中略)・・・
2. 1 前処理
素材として,粒径が5~10μmのポリスチレン系樹脂微粒子(密度:1.02g/cm3)10gを使用した。この樹脂微粒子をノニオン系界面活性剤であるポリエチレングリコール(分子量:1000)を1OOppm添加した溶液で親水化し,次いでスズ-パラジウム二段法(SnCl,O.1g/L,PdCl2 0.05g/L)による触媒付与後,還元剤溶液(DMAB 0.005M) による活性化促進処理を行った。」(第57頁右欄第3行~最下行)
c 「そこで本研究では滴下法5).6)により樹脂微粒子上にニッケルを成膜した。めっき装置図を図2に,浴組成および操作条件を表1に示す。この滴下法は,あらかじめ金属塩溶液と還元剤溶液を別々に調製しておき,微粒子の分散液中に調製溶液を連続的に滴下することで無電解めっきを行う方法である。」(第58頁左欄第7行~第12行)
d 「3.1 めっき浴組成の検討
3.1.1 均一析出性におよぼす錯化剤,pHの影響
錯化剤としてグリシン,酒石酸ナトリウム,酢酸アンモニウムを用いためっき浴を使用し,pHを4~6の範囲で変化させニッケルめっきを行った。また浴温は70℃とし,めっき膜厚はめっき時間を変化させて0.2μmに統一した。めっき後の微粒子のSEM像を図3に示す。pH6のめっき浴では,ニッケルの皮膜形態はいずれの錯化剤を用いてもニッケルの初期析出が急激に起こるため,こぶ状析出となった7)。」(第58頁右欄第13行~第59頁左欄第2行)
(イ)上記(ア)によれば、甲1-6には次の発明(以下、「甲1-6発明」という。)が記載されている。
<甲1-6発明>
「素材としてスチレン系の樹脂微粒子を用い、無電解ニッケルめっきによりニッケル導電膜を形成させた導電微粒子であって、(a、b)
素材として、粒径が5~10μmのポリスチレン系樹脂微粒子(密度:1.02g/cm3)10gを、ノニオン系界面活性剤であるポリエチレングリコールを100ppm添加した溶液で親水化し、次いでスズ-パラジウム二段法(SnCl、O.1g/L、PdCl2 0.05g/L)による触媒付与後、還元剤溶液(DMAB 0.005M)による活性化促進処理を行い、(b)
滴下法により樹脂微粒子上にニッケル導電膜を成膜し、
この滴下法は、あらかじめ金属塩溶液と還元剤溶液を別々に調製しておき、微粒子の分散液中に調製溶液を連続的に滴下することで無電解めっきを行う方法であり、(c)
錯化剤としてグリシン、酒石酸ナトリウム、酢酸アンモニウムを用いためっき浴を使用し、pHを6とし、浴温は70℃とし、めっき膜厚はめっき時間を変化させて0.2μmに統一したニッケルめっきを行い、ニッケル導電膜の皮膜形態はこぶ状析出となった、(d)
導電性粒子。」
イ 本件発明1について
本件発明1と甲1-6発明とを対比すると、両者は、少なくとも上記相違点4と同じ点で相違し、当該相違点についての判断は、上記(2)イ(イ)において説示したとおりである。
よって、本件発明1は、他の相違点について検討するまでもなく、甲1-6発明ではない。また、本件発明1は、甲1-1~甲1-5、甲1-7~甲1-9、甲1-11、甲1-13の記載を参酌しても、甲1-6発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
ウ 本件発明2、4~7について
上記(2)ウにおける検討と同様の理由により、本件発明2、4~7は、甲1-6発明ではない。また、本件発明2、4~7は、甲1-1~甲1-5、甲1-7~甲1-9、甲1-11、甲1-13の記載を参酌しても、甲1-6発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(7)申立理由1-8(サポート要件)について
ア 申立人1は、特許異議申立書1の第52頁第14行~第24行において、本件発明1~7の「導電性粒子の全表面積100%中、前記突起がある部分の表面積が10%以上」の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない旨主張している。
しかし、発明の詳細な説明の段落0111には、「上記突起を有する導電性粒子の使用により、電極間に導電性粒子を配置した後、圧着させることにより、突起により酸化被膜が効果的に排除される。」と記載されている。そして、少なくとも一つの突起が酸化皮膜と接していれば、すなわち、「突起がある部分の表面積」がゼロでなければ、「酸化被膜を効果的に排除」する作用は生じうるから、「導電性粒子の全表面積100%中、前記突起がある部分の表面積が10%以上」であれば、上記作用により、上記第4の2(3)イの課題を解決できることを理解できる。
よって、本件発明1~7は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えることとなっておらず、上記主張を採用することはできない。
イ 申立人1は、特許異議申立書1の第54頁第8行~第18行において、発明の詳細な説明には、実施例1~2、7~12、15における芯物質となる「ニッケル粒子スラリー」及び「アルミナ粒子スラリー」の濃度(含有量)が記載されておらず、また、実施例3~6、13~14における析出突起を形成するための「ニッケルめっき液」の滴下量が記載されていないため、本件発明1~7の「導電性粒子の全表面積100%中、前記突起がある部分の表面積」を10%以上にすることは記載されておらず、本件発明1~7は、発明の詳細な説明に記載したものではない旨主張している。
しかし、発明の詳細な説明に記載された上記「ニッケル粒子スラリー」、「アルミナ粒子スラリー」又は「ニッケルめっき液」の濃度(含有量)を増減することにより、導電性粒子が備える芯物質又は析出突起の数を増減させ、「導電性粒子の全表面積100%中、前記突起がある部分の表面積が10%以上」である構成とすることができることは、本件特許の出願時の技術常識を参酌すれば、明らかである。よって、上記主張を採用することはできない。
ウ 申立人1は、特許異議申立書1の第54頁第19行~第23行において、発明の詳細な説明には、実施例として導電部のビッカース硬度が記載されていないから、本件発明2は、発明の詳細な説明に記載したものではない旨主張している。
しかし、発明の詳細な説明の段落0095~0111に記載された「導電部」の材料の組成を選択することにより、「導電部」のビッカース硬度を200以上にできることは、当業者にとって明らかである。よって、本件発明2の「導電部のビッカース硬度が200以上である」ことは、発明の詳細な説明に記載されており、上記主張を採用することはできない。
(8)申立理由1-9(実施可能要件)及び申立理由1-10(明確性要件)について
ア 申立人1は、特許異議申立書1の第54頁下から3行~第55頁第15行において、発明の詳細な説明の段落0225には、「水素原子の含有量の測定には、昇温脱離水素分析装置(エフアイエス社製「PDHA-1000」)を用いた。・・・(中略)・・・真空引きされた導電部を徐々に加熱した。放出された水素原子を検出器で測定した。」と記載されているが、「昇温脱離水素分析装置(エフアイエス社製「PDHA-1000」)」は、真空チャンバーを不要とするものであるところ、上記「真空引きされた」状態でどのように測定するのか不明である旨主張している。
しかし、発明の詳細な説明の段落0129には、「導電部における水素原子の含有量を少なくするために、アニール処理は高圧雰囲気下で行うことが好ましい。アニール処理時の真空度は、好ましくは10kPa以上、より好ましくは50kPa以上、更に好ましくは100kPa以上である。」と記載され、導電部における水素原子量の含有量を少なくするために、所定の真空度でアニール処理を行うことが記載されている。そうすると、上記段落0225の記載は、導電部における水素原子量の含有量を少なくするために、所定の真空度で、すなわち真空引きされた状態で、アニール処理を行った後の導電部を、昇温脱離水素分析装置(エフアイエス社製「PDHA-1000」)を用いて、徐々に加熱して放出された水素原子を測定したことであると解され、真空引きされた状態で測定するものではないから、不明ではない。よって、上記主張を採用することはできない。
イ 申立人1は、特許異議申立書1の第55頁第16行~第56頁第8行において、甲1-7及び1-甲8に記載されているように、無電解めっき後にめっき層中の水素量が経時的に低減することは周知の技術事項であり、本件発明1~7の「前記導電部が水素原子を含まないか、又は、前記導電部が水素原子を80μg/g以下で含む」構成が、どの時点で測定したものであるのか不明である旨主張している。
しかし、めっき層中の水素量は経時的に低減するから、水素原子を測定する時点によらず、測定した導電部が水素原子を含まないか、又は、水素原子を80μg/g以下で含むものであれば、その後の導電部の水素量は増加しないから、上記本件発明1~7の構成を有するといえる。よって、上記本件発明1~7の構成、及び、その測定方法は明確である。よって、上記主張を採用することはできない。
ウ 申立人1は、特許異議申立書1の第56頁第9行~下から2行において、発明の詳細な説明の段落0225には「水素原子の含有量の測定には、昇温脱離水素分析装置(エフアイエス社製「PDHA-1000」)を用いた。」と記載されているが、甲1-12に記載されているように、昇温脱離水素分析装置「PDHA-1000」の測定濃度は、キャリアガス量に対する濃度として測定されるものであり、キャリアガス流量によって変動するものであるところ、発明の詳細な説明にはキャリアガスの流量について記載されていないため、導電部の水素量の測定方法が不明である旨主張している。
しかし、キャリアガス量に対する水素の濃度から、測定された水素の全体量を計算することにより、水素本件発明1~7の「導電部」が含む「水素原子」の量を求めることができることは、技術常識から明らかである。よって、上記主張を採用することはできない。
(9)申立理由2-2(実施可能要件)について
ア 申立人2は、特許異議申立書2の第19頁下から3行~第20頁第18行において、発明の詳細な説明の段落0129には「アニール処理は高圧雰囲気下で行うことが好ましい。アニール処理時の真空度は、好ましくは10kPa以上、より好ましくは50kPa以上、更に好ましくは100kPa以上である。」と記載されているが、「100kPa」が絶対圧力なのかゲージ圧なのか不明であり、「高圧雰囲気下で行うことが好ましい」との記載は、「大気圧より高い圧力下で行うことが好ましい」との意味に理解される一方で、「真空度は、好ましくは10kPa以上」との記載は「絶対圧力10kPa以上の低圧下が好ましい」の意味であると理解され、矛盾した記載となっている旨主張している。
しかし、上記「真空度は、好ましくは10kPa以上」との記載によれば、「10kPa」は、大気圧より低い圧力であると解されるから、上記記載において「kPa」は絶対圧力を意味することは明らかであり、また、「高圧雰囲気下」は、所定の圧力より高い圧力を意味すると解され、当該圧力として、「好ましくは10kPa以上、より好ましくは50kPa以上、更に好ましくは100kPa以上」が記載されていると理解できるから、矛盾はない。よって、上記主張を採用することはできない。
イ 申立人2は、特許異議申立書2の第20頁第19行~第21頁第13行において、発明の詳細な説明の段落0224には、「導電性粒子をジルコニアボールによるボールミルを用いて粉砕し、導電部を基材粒子から完全に剥離した。導電部と基材粒子から完全に剥離した試料を篩により、導電部と基材粒子とに分離し、導電部のみを採取した。」と記載されているところ、数μm程度の微粒子の分級には、電成ふるいを用いる必要があるが、甲2-11に記載されているように、電成ふるいのメッシュでは、発明の詳細な説明に記載された粒子径約3μmの導電性粒子をふるい分けできないから、上記記載の方法では、導電部と基材粒子とを分離できない旨主張している。
しかし、当業者であれば、電成ふるい以外の、所望の開孔径のふるいを用いることにより、導電性粒子をふるい分けできることは明らかである。よって、上記主張を採用することはできない。
ウ 申立人2は、特許異議申立書2の第21頁最下行~第22頁第20行において、上記(8)アにおける申立人1の主張と同様の主張をしているが、同項において検討したとおりであるから、当該主張を採用することはできない。
(10)申立理由2-3(サポート要件)について
ア 申立人2は、特許異議申立書2の第23頁第1行~第9行において、発明の詳細な説明には、導電部に割れを生じ難くすることができ、耐酸性を高めることができ、従って接続信頼性を高めることができるという課題を解決できる導電性粒子として、導電部の結晶子サイズが50nm以上である導電性粒子のみが具体的に記載されているが、上記課題を解決するためには、導電部の結晶子サイズを50nm以上とする必要があるのは明らかであり、このような特定がない本件発明1~7は、課題を解決するための手段が反映されていないものである旨主張している。
しかし、上記第4の2(3)ウにおいて説示したとおり、発明の詳細な説明には、基材粒子の表面上に配置された、ニッケル、パラジウム、ルテニウム、銅、タングステン、モリブデン、金、白金又は錫を少なくとも含む導電部が、水素原子を含まないか、又は、水素原子を80μg/g以下で含むことにより、導電部に割れを生じ難くすることができることが記載されている。そうすると、「導電部が、水素原子を含まないか、又は、水素原子を80μg/g以下で含む」ことが特定される本件発明1~7は、導電部に割れを生じ難くすることができ、従って接続信頼性を高めることができる点で、上記課題を解決できることを理解できる。よって、上記主張を採用することはできない。
(11)申立理由2-4(明確性要件)について
ア 申立人2は、特許異議申立書2の第23頁第11行~第20行において、請求項1では、水素原子の量の測定方法が特定されていないところ、測定方法によって検出される水素の量は異なるから、本件発明1~7の「導電部が、水素原子を含まないか、又は、水素原子2を80μg/g以下で含む」構成は明確でない旨主張している。
しかし、請求項1に記載された「導電部が、水素原子を含まないか、又は、水素原子を80μg/g以下で含む」は、測定結果を特定するものではなく、「水素原子を含まない」、又は、「水素原子を80μg/g以下で含む」という、「導電部」の構成を特定するものであり、「導電部」が上記構成を有するか否かは、当業者が最適な方法を選択して判別できるものであるから、明確である。よって、上記主張を採用することはできない。
イ 申立人2は、特許異議申立書2の第23頁第21行~第24頁第12行において、発明の詳細な説明には、突起がある部分と突起がない部分との境界を判別する方法が開示されていないから、「突起がある部分の表面積」が客観的に定まらず、本件発明1~7は不明確である旨主張している。
しかし、突起がある部分と突起がない部分との境界を判別する方法として、画像処理技術等の種々の方法を用いることができることは、本件特許の出願時の技術常識から明らかであり、請求項1に記載された「突起がある部分の表面積」を客観的に定めることはできるから、本件発明1~7は明確である。よって、上記主張を採用することはできない。
第6 まとめ
以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した申立理由及び当審から通知した取消理由によっては、本件の請求項1、2、4~7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件の請求項1、2、4~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項3が本件訂正により削除されたことにより、申立人1及び申立人2による請求項3に係る特許異議の申立てについては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700696